説明

列車位置検知装置

【課題】シンプルな装置構成で列車位置を高精度に検知する列車位置検知装置の提供。
【解決手段】列車に搭載された車上装置、および、地上に設置された地上装置を有する列車位置検知装置であって、車上装置は、所定の電波である呼出信号を受信して当該呼出信号に応答して所定の情報を含んだ応答信号を電波発信する電波発信機を備え、地上装置は、アンテナ部を含んで呼出信号を発信して応答信号を受信する電波送受信機と、応答信号に含まれる所定の情報に基づいて電波発信機を同定することで列車の存在を検知する検知部と、電波送受信機が受信した応答信号に基づいて、電波発信機の電波受信機に対する相対位置を算出する電波発信機位置算出部と、電波発信機位置算出部が算出した相対位置と、応答信号の所定の情報に含まれる電波発信機の列車における搭載位置に関する情報に基づいて列車の列車位置を算出する列車位置算出部と、を備えた、列車位置検知装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車の位置を検知する列車位置検知装置に関し、特に、ICタグを用いた列車位置検知装置に関する。
【0002】
列車位置検知装置は、列車が在線する鉄道線路上の位置を特定することに用いられ、列車の運行制御に必要な情報を提供する。また、列車位置検知装置は、駅ホームにおいて列車が停止した位置を検知することも可能である。この場合、列車位置検知装置は、駅ホームに設置されたホームドアの開閉制御に必要な情報を提供することができる。
【0003】
従来の列車位置検知装置として、例えば特許文献1や特許文献2に記載された技術がある。これら列車位置検知装置従来例においては、装置は、列車に搭載された車上子と、駅の停止位置許容範囲となる軌道内に設置された地上子とで構成される。地上子は、列車の進行方向に沿って設置した3つのコイル(コイル1、コイル2、コイル3)を備えている。(例えば、特許文献1[図1]、[図3]等参照。)軌道内のコイルの位置は、コイル1が列車停止許容領域より手前の領域、コイル2が列車停止許容領域、コイル3が列車停止許容位置より先の領域となるようにしている。
【0004】
列車が停止した時、車上子は地上子上に存在し、地上子では、車上子から放射された電波の各コイルによる受信レベルを計測し、受信レベルの強弱から車上子がどのコイル上に位置するのかを判定する。判定の結果、車上子がコイル1上に位置する場合には列車が停止許容領域よりも手前に位置(ショート)し、また、コイル2上に位置する場合には列車が停止許容領域に位置(ジャスト)し、また、コイル3上に位置する場合には列車が停止許容領域よりも先に位置(オーバー)していると検知している。停止許容領域は、中心位置を基準にしてプラスマイナス35センチメートル程度の範囲である。(特許文献2[0020]等参照。)
【0005】
上述の列車位置検知装置においては、例えば乗車人数の変動、車上子の取付け位置の変動等により地上子と車上子の軌道鉛直方向の間隔が変動した場合、各コイルの受信レベルが変動する。当該変動は、列車の停止位置の検知精度に悪影響を及ぼす。そのため、特許文献1の発明にあっては、地上子は、コイルを列車停止位置の前後に設置する2つとし、各コイルの出力電圧差の絶対値が所定の範囲内であるか否かによって列車の停止位置が許容範囲内か、許容範囲外かを検知すると共に、電圧差の極性が正のときは列車の停止位置が停止位置許容範囲の手前、負のときは先に位置していると検知するようにして、車両条件が変動した場合でも安定かつ正確に列車の停止位置を検知することができるようにしている。
【0006】
また、従来の列車位置検知装置として、例えば特許文献3に記載された技術がある。当該文献の列車位置検知装置は、列車に搭載された超音波検出器と、駅の軌道脇に列車の進行方向に沿って配置された2つの超音波発生器(超音波発生器1、超音波発生器2)とで構成される。(特許文献3[図3]、[図5]等参照。)そして、超音波発生器が発した超音波が、超音波検出器に到達するのに要した伝搬時間を計測し、伝搬時間に音速を乗算することで、超音波発生器1と超音波検出器間の距離1と超音波発生器2と超音波検出器間の距離2を求め、2つの超音波発生器に対する超音波検出の相対位置を算出し列車の位置を検知する。
【0007】
また、従来の列車位置検知装置として、例えば特許文献4に記載された技術がある。当該文献の列車位置検知装置は、列車の軌道脇に設置され、所定の周波数、振幅あるいは位相を持つ送信信号を電波にして放射する固定無線機と、列車に搭載され、前記固定無線機の電波を受信する移動無線機とで構成される。(特許文献4[図1]、[図3]等参照。)移動無線機は、アレイアンテナにより、固定無線機からの電波を受信して受信信号に基づいて電波到来角を演算により求める。そして、固定無線機の軌道からの鉛直方向の間隔および算出された電波到来角に基づいて、軌道上の予め決めた基準列車位置に対する列車位置を算出する。
【0008】
特許文献1(および特許文献2)に係る従来の列車位置検知装置は、列車停止領域に対してショート、ジャスト、オーバーのどの領域に列車が位置しているか判定するものであるが、各領域は、コイルの大きさに相当する距離の幅を有する。故に、当該装置にあっては、列車の位置を、当該幅よりも小さな距離の精度で数値的に正確に求めることが困難である。そのため、列車が一旦停止した後で、何らかの理由により列車が進行方向もしくは後進方向へわずかに移動した場合に、検知装置における列車位置についても、列車位置を微小距離だけ移動させる処置を行う必要があるが、移動した距離を数値化できないため適切な処置を即座に行えないおそれがある。また、地上子は複数のコイルを軌道内に設置する構成のため、設置工事や保守管理は容易とはいえない。
【0009】
また、特許文献3に係る従来の列車位置検知装置は、超音波が伝播する時間を計測して距離を算出する構成のため、超音波発生器と超音波検出器との間で時刻の同期をとる必要がある。故に、超音波発生器が超音波を発した時刻を、超音波検出器へ情報伝達する装置が別途必要である。また、風の影響により超音波が流され、距離測定誤差が生じ位置検出誤差となるという課題や、列車や駅に設置された装置からの騒音がノイズとなり伝播時間計測の誤差となり位置検知誤差となるという課題がある。
【0010】
また、特許文献4に係る従来の列車位置検知装置は、移動無線機を列車に搭載する必要があるので、設置の際に車両の改造が必要になる。また、電波をアレイアンテナで受信しているので、アンテナの本数だけ受信回路が必要となる。さらには、各受信回路の特性がそろっていないと電波到来角を算出した際に誤差が生じるという課題があり、そのため、各受信回路の特性をそろえるために、別途校正用の装置を設ける必要がある。故に、装置構成は不可避的に複雑化する。また、電波到来角を算出するのに要する演算時間と列車位置検知に要求される時間との兼ね合いから、高速演算器が必要となり装置のコストがかかるという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−151112号公報
【特許文献2】特開2007−276533号公報
【特許文献3】特開2009−073397号公報
【特許文献4】特開2000−016290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記従来技術における課題等を鑑み、本発明は、シンプルな装置構成で、列車位置を高精度に検知する列車位置検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、その一態様においては、列車に搭載された車上装置、および、地上に設置された地上装置を有する列車位置検知装置であって、車上装置は、所定の電波である呼出信号を受信して当該呼出信号に応答して所定の情報を含んだ応答信号を電波発信する電波発信機を備え、地上装置は、アンテナ部を含んで呼出信号を発信して応答信号を受信する電波送受信機と、応答信号に含まれる所定の情報に基づいて電波発信機を同定することで列車の存在を検知する検知部と、電波送受信機が受信した応答信号に基づいて、電波発信機の電波受信機に対する相対位置を算出する電波発信機位置算出部と、電波発信機位置算出部が算出した相対位置と、応答信号の所定の情報に含まれる電波発信機の列車における搭載位置に関する情報に基づいて列車の列車位置を算出する列車位置算出部と、を備えた、列車位置検知装置である。
【0014】
本発明は、その別の一態様においては、列車に搭載された車上装置、および、地上に設置された地上装置を有する列車位置検知装置であって、地上装置は、所定の電波である呼出信号を受信して当該呼出信号に応答して所定の情報を含んだ応答信号を電波発信する電波発信機を備え、車上装置は、アンテナ部を含んで呼出信号を発信して応答信号を受信する電波送受信機と、応答信号に含まれる所定の情報に基づいて電波発信機を同定することで地上装置の存在を検知する検知部と、電波送受信機が受信した応答信号に基づいて、電波発信機の電波受信機に対する相対位置を算出する電波発信機位置算出部と、電波発信機位置算出部が算出した相対位置と、応答信号の所定の情報に含まれる電波発信機の設置位置に関する情報基づいて列車の列車位置を算出する列車位置算出部と、を備えた、列車位置検知装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、シンプルな装置構成により、高精度に列車位置を検出可能な列車位置検知装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1を示す列車位置検知装置のブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1を示す列車位置検知装置の処理のフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態1を示す列車位置検知装置の列車位置検知の模式図である(通常モード列車位置測定)。
【図4】本発明の実施の形態1を示す列車位置検知装置の列車位置検知の模式図である(故障モード列車位置測定)。
【図5】本発明の実施の形態2を示す列車位置検知装置の列車位置検知の模式図である。
【図6A】本発明の実施の形態3を示す列車位置検知装置の列車位置検知の模式図である。
【図6B】本発明の実施の形態3を示す列車位置検知装置の列車位置検知の模式図である。
【図7】本発明の実施の形態4を示す列車位置検知装置の列車位置検知の模式図である。
【図8】本発明の実施の形態5を示す列車位置検知装置の列車位置検知の模式図である。
【図9】本発明の実施の形態6を示す列車位置検知装置の列車位置検知の模式図である。
【図10】本発明の実施の形態7を示す列車位置検知装置のブロック図である。
【図11】本発明の実施の形態8を示す列車位置検知装置のブロック図である。
【図12】本発明の実施の形態9を示す列車位置検知装置のブロック図である。
【図13】実施の形態1ないし9のいずれかの列車位置検知装置を用いて、列車の停止基準位置付近の列車位置を検知し、運転手の運転支援およびホームドア開閉制御を支援する場合の適用例である。
【図14】実施の形態1ないし9のいずれかの列車位置検知装置を用いて、駅構内における列車位置を検出する場合の適用例である。
【図15】実施の形態1ないし9のいずれかの列車位置検知装置を用いて、駅間における列車位置を検出する場合の適用例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0018】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1による列車位置検知装置の構成を示すブロック図である。
【0019】
図1を参照し、列車位置検知装置は、軌道脇や駅ホームなど地上に設置される地上装置1と、列車に搭載される車上装置2を有する。
【0020】
地上装置1は、所定の間隔で配置された2本のアンテナ11aとアンテナ11bを備えるRF−IDタグリーダ(タグリーダ)11と、無線伝送路を介してICタグ21a等より受け取った情報(ICタグ情報)等を保持するICタグ情報記憶部12と、地上装置1近傍における列車の有無を判断する列車検知部13と、列車検知および列車位置算出に用いるデータを、各ICタグを識別するための情報と関係づけて保持するメモリ14と、ICタグ21a等のタグリーダ11に対する相対位置を算出するICタグ位置算出部15と、算出されたICタグの相対位置に基づいて列車の軌道(鉄道線路)上の位置(「軌道位置」)を算出する列車位置算出部16と、列車の停止/走行を検知する列車停止検知部17と、列車検知部13、列車位置算出部16、および、列車停止検知部17からの出力を監視して列車状態にかかる情報を編成する監視部18と、監視部19が出力する列車状態情報表示するための表示部19と、を有する。
【0021】
一方、車上装置2は、所定の間隔で設置された2つのICタグ(RF−IDタグ)21aと、ICタグ(RF−IDタグ)21bと、を有する。ここで、ICタグ21a等は、所定の電波(呼出信号)を受信すると、所定の情報(ICタグ情報)を含んだ応答信号を発信する電波発信機である。
【0022】
地上装置1のタグリーダ11は、ICタグを呼び出す質問信号(呼出信号)を示す電波を、所定の時間周期で、発信する。タグリーダ11から送信された質問信号が車上装置2のICタグ(21a、21b)によって受信されると、当該質問信号を受信したICタグ(21a、21b)が、応答信号を、電波として、発信する。ここで、タグリーダ11は、所定の電波である呼出信号を発信し応答信号を受信する電波送受信機である。
【0023】
タグリーダ11の2本のアンテナ11a、11bは、列車進行方向に沿って、(列車進行方向と平行に)所定の間隔で配置されることが望ましい。ただし、ただし2本のアンテナ11a、11bは、必ずしも列車進行方向と平行に配置されなくともよい。また、2本のアンテナ11aおよび11bの間隔は、受信信号(上記応答信号)の波長よりも小さいことが望ましい。
【0024】
タグリーダ11は、受信した応答信号を復調し、応答信号に含まれるICタグ情報を抽出し、当該ICタグ情報をICタグ情報記憶部12へ出力する。そして、ICタグ情報記憶部12は、当該ICタグ情報を保持するとともに、列車検知部13へ出力する。
【0025】
ICタグ情報には、ICタグを認証するための情報、ICタグを同定するための情報、当該ICタグが取り付けられた列車を同定するための情報、当該ICタグが取り付けられている列車上での位置に関する情報、等が含まれる。
【0026】
ICタグを認証するための情報は、当該応答信号が、真に、ICタグから出力された信号であることを地上装置1が認証するための情報を含む。
【0027】
ICタグを同定するための情報は、応答信号を発したICタグに固有の識別子を含み、車上装置2においてICタグが複数設置されている場合においては、当該ICタグが複数のICタグのうちのいずれの(何番目の)ICタグであるかを地上装置1が区別可能とする情報を含むこともできる。
【0028】
ICタグが取り付けられた列車を同定するための情報は、当該列車を識別するための情報であり、列車種別(特急、急行等)、使用される車両の種別、ドアの設置位置、列車編成(10両編成、8両編成等)、を含むことができる。
【0029】
ICタグが取り付けられている列車上位置に関する情報は、列車上の所定の基準位置(「列車基準位置」)(たとえば、先頭車両先端部や、ドア等)とICタグとの、列車進行方向に沿った位置関係に関する情報を含むことができる。また、当該情報には、ICタグが取り付けられている列車内の位置の、列車進行方向に垂直な方向に関する位置の情報を含むことができる。またさらには、当該情報には、ICタグが取り付けられている列車内の位置の、地上(例えば、鉄道線路の上端面)からの高さに関する情報を含むこともできる。
【0030】
ICタグ情報記憶部12から列車検知部13に送られたICタグ情報は、列車検知部13においては、メモリ部14に構成されるデータベースに保持された情報の抽出の用に供される。そして、列車検知部13は、列車の検知、および、検知された列車の種別、使用車両種別、編成車両数、ドア位置、等を決定する。なお、メモリ部14は、列車検知部13の動作に必要なデータを、例えば、ICタグを同定するための情報と関係づけて保持するデータベースを含み、かつ、列車検知部13からの問い合わせに応じて当該データを適宜出力可能である。また、データベースは、過去に検知した列車に関する情報、すなわち、過去に検知したICタグに関する情報を、検知履歴として保持し、順次更新することもできる。
【0031】
また、タグリーダ11は、受信した応答信号を、受信信号としてICタグ位置算出部15へ出力する。そして、ICタグ位置算出部15は、受信信号の振幅、位相、波長(周波数)、質問信号を発信してから当該質問信号に応答して発信された受信信号を受信するまでの時間間隔等を検出することができる。ICタグ位置算出部15は、検出した受信信号の振幅、位相、波長(周波数)、上記時間間隔等の情報を用いて、当該受信信号にかかるICタグとタグリーダ11との相対位置を算出し、当該相対位置を列車位置算出部16へ出力する。なお、ICタグ位置算出部15は、必要に応じて、ICタグ情報に含まれるICタグが取り付けられている列車上位置に関する情報をも参照し、上記相対位置を算出する。
【0032】
列車位置算出部16は、ICタグとタグリーダ11との相対位置と、予め保持されたタグリーダ11の軌道(鉄道線路)に対する位置に関する情報と、ICタグと列車の「列車基準位置」に対する位置関係に関する情報と、に基づき、列車の「列車基準位置」の軌道上における位置(「列車位置」)を決定する。算出した列車位置は、列車停止検知部17および監視部18へ出力される。
【0033】
列車停止検知部17は、列車位置算出部16から出力される列車位置の情報に基づいて、列車状態(停止、または、走行中)を検知する。例えば、列車停止検知部17は、異なる時刻における列車位置の情報を比較し、当該列車位置の差がゼロあるいは所定値未満である場合に、当該列車は停止状態にあると判定する。
【0034】
監視部18は、列車位置算出部16から受け取る列車位置の情報、列車停止検知部17から受け取る列車状態の情報、列車検知部13から受け取る列車にかかる情報に基づき、当該列車にかかる情報を編成し、図示しない地上側列車運行装置へ出力する。また、当該情報を、表示部19に表示することも可能である。
【0035】
一方、車上装置2は、上述のように、2つのICタグ(RF−IDタグ)21aおよび21bを有する。当該2つのICタグ21aおよび21bは、列車進行方向に沿って(列車進行方向と平行に)所定の間隔で設置されることが望ましい。ただし、ただし2つのICタグ21a、21bは、必ずしも列車進行方向と平行に配置されなくともよい。また、ICタグは、各列車において、少なくとも1つ、配置されればよい。2つ以上のICタグが一列車に設置される場合におけるICタグ同士の間隔は、上記したICタグ情報に含まれるICタグが取り付けられている列車上位置に関する情報から、地上装置1側で認識することが可能である。
【0036】
次に、列車の検知、列車の位置検知(算出)、および、列車の停止検知にかかる処理について、図2のフローチャートを用いて説明する。なお、当該処理は、地上装置1において実行され、地上装置1は、コンピュータを備えることができる。この場合、地上装置1を構成するコンピュータは、当該コンピュータにおいて実行可能なプログラムを実行することにより、図2の処理を実行することができる。当該プログラムは、コンピュータの記憶手段において保持され、コンピュータの処理装置において実行される。また、プログラムは、記憶媒体や通信回線等を通じて、当該コンピュータにインストールされる。あるいは、通信回線等を通じて、別のコンピュータに保持されるプログラムを、当該コンピュータが実行することも可能である。
【0037】
ステップS101において、地上装置1のタグリーダ11は、所定の時間周期で、ICタグを呼び出す質問信号(呼出信号)を、そのどちらか一方のアンテナ(11aまたは11b)から電波として送信する。ICタグ21a等は、質問信号を受信した場合には、応答信号を電波として返信する。しかしながら、この、質問信号が発信された時点において、タグリーダ11とICタグ21aおよびICタグ21bが通信可能なエリア内に含まれない場合には、ICタグ21aおよびICタグ21bは質問信号を受信できないため、タグリーダ11に対して応答信号を発信することはない。逆に、質問信号が発信された時点において、タグリーダ11とICタグ21aおよびICタグ21bが通信可能なエリア内に含まれる場合には、ICタグ21aおよびICタグ21bは、タグリーダ11からの質問信号を受信することができ、所定の処理を行って応答信号を発信する。発信された応答信号は、タグリーダ11において受信される。
【0038】
ステップS103において、タグリーダ11は、ICタグ21aあるいは21bから応答信号を受信したか、否か、について判定を行う。
【0039】
タグリーダ11が、ICタグ21aあるいは21bから応答信号を受信した、と判定した場合(ステップS103における「YES」)、処理は、ステップS105へ進む。つまり、列車の車上装置2が、地上装置1の付近まで接近し、タグリーダ11とICタグ21a(および/または21b)とが互いに通信可能なエリアに含まれると、タグリーダ11から発信された質問信号は、車上装置2のICタグ21a(および/または21b)で受信され、ICタグ21a(および/または21b)は、列車ID情報(ICタグが取り付けられた列車を同定するための情報)やICタグ取付位置情報(ICタグが取り付けられている列車上位置に関する情報)やICタグ識別情報(ICタグを認証/同定するための情報)などのICタグ情報を含んだ応答信号を、電波として、発信する。タグリーダ11が当該応答信号を受信した場合に、処理はステップS105へ進む。
【0040】
タグリーダ11が、ICタグ21aおよび21bからの応答信号を受信しなかった、と判定した場合(ステップS103における「NO」)、処理は、ステップS101へ戻る。つまり、タグリーダ11は、列車が存在しないと判定し、再度、上記所定の時間周期の後に質問信号を発信する。
【0041】
ステップS105において、地上装置1は、受信した信号を解析し、当該信号が列車(のICタグ)からの応答信号であるか否かを判断し、もって、列車が検知されたか、否か、を判定する。
【0042】
具体的には、地上装置1は、タグリーダ11が受信した応答信号からICタグ情報を抽出し、当該ICタグ情報をICタグ情報記憶部12へ送る。ICタグ情報記憶部12は、受け取ったICタグ情報を保持するとともに、当該ICタグ情報を列車検知部13へ送る。列車検知部13は、ICタグ情報に含まれるICタグ識別情報等を、メモリ14に記録されたデータベースと照合し、データベースとの照合から当該ICタグ情報および応答信号が、列車に搭載されたICタグからの情報および信号であるか、否か、を判定する。列車検知部13が、当該情報および信号は、列車からのICタグ情報および応答信号であると判断した場合には、地上装置1は、列車が検知されたと判断する。逆に、列車検知部13が、受信信号に含まれるICタグ情報のICタグ識別情報等を、メモリ14に記録されたデータベースと照合し、当該データベースとの照合から当該ICタグ情報が、列車に搭載されたICタグからの応答信号に含まれるものではないと判断した場合、列車検知部13は、列車不在と判断する。
地上装置1が、列車を検知したと判断した場合(ステップS105における「YES」)、処理は、ステップS107へ進む。
地上装置1が、列車を検知しなかったと判断した場合(ステップS105における「NO」)、処理は、ステップS101へ戻る。
【0043】
ステップS107において、列車検知部13は、タグリーダ11において受信された応答信号およびそれに含まれるICタグ情報等を参照し、列車位置測定を、通常モードで行うか、あるいは、故障モードで行うか、を判断する。ここで、通常モードとは、一列車に配置された複数のICタグからの応答信号が受信された場合に実行する列車位置測定の動作モードである。故障モードとは、一列車に配置された複数のICタグのうち、ただ1つのICタグからの応答信号のみが受信された場合に実行する列車位置測定の動作モードである。図1に示した構成を有する車上装置2は、2つのICタグ21aおよび21bを備える。この場合、2つのICタグ21aおよび21bからの応答信号がタグリーダ11において受信された場合には、列車位置測定は、通常モードで実行され、いずれか1つの応答信号のみがタグリーダ11において受信された場合には、列車位置測定は、故障モードで実行される。
【0044】
つまり、図1の構成にあっては、列車検知部13は、2つのICタグのICタグ情報(ICタグ21aおよび21bのICタグ情報)を正しく読み取れたか、否か、を判定し、列車位置測定を、2つのICタグからの2つのICタグ情報を用いて行うか、1つのICタグからの1つのICタグ情報のみを用いて行うか、決定する。
【0045】
列車検知部13が、両方のICタグ情報を読み取れたと判定した場合(ステップS107における「YES」)、処理は、ステップS109aへ進む。
列車検知部13が、一方のICタグ情報のみが読み取れたと判定した場合(ステップS107における「NO」)、処理は、ステップS109bへ進む。
また、列車位置検知部13は、本ステップS107の判定結果(「通常モード」、または、「故障モード」)を、列車検知判定信号としてICタグ位置算出部15および列車位置算出部16、および、監視部18へ出力する。
【0046】
次に、ステップS109aにおいて実行される通常モード列車位置測定について説明する。なお、ステップS109a(およびS109b)と関連し、タグリーダ11は、受信した応答信号を、受信信号として、ICタグ位置算出部15へ出力する。
【0047】
実施の形態1にかかるICタグ位置算出部15は、各ICタグからの受信信号それぞれの位相、および、周波数(波長)を検出し、これら各受信信号の位相および周波数から、当該受信信号を発信したICタグそれぞれについて、タグリーダ11に対する相対位置を算出する。
【0048】
列車検知部13が通常モードで列車位置測定を行うと決定した場合には、ICタグ位置算出部15は、ICタグ21aおよび21bから受信した受信信号を用いて、タグリーダ11の位置を基準としたICタグ21aおよび21bの相対位置を、列車進行方向および列車進行方向に対する垂直方向の2次元位置として求める。あるいは、ICタグ位置算出部15は、ICタグ21aおよび21bの相対位置を、列車進行方向および列車進行方向に対する垂直方向ならびに高さ方向(鉛直方向)について、求めることも可能である。
【0049】
図3は、実施の形態1において通常モード(ステップS109a)で行われる列車位置測定を説明する模式図である。
【0050】
タグリーダ11は各ICタグ(21aまたは21b)からの応答信号を2つのアンテナ(アンテナ11aとアンテナ11b)でそれぞれ独立的に受信し、それぞれ第1受信信号および第2受信信号として、ICタグ位置算出部15へ出力する。
【0051】
ICタグ位置算出部15は、第1受信信号の位相(第1位相)と第2受信信号の位相(第2位相)の位相差ΔΦを算出する。そして、ICタグ位置算出部15は、位相差ΔΦと受信信号の波長λより次式(式1)を用いて距離ΔLを算出する。
ΔL=(ΔΦ/2π)λ ・・・ (式1)
【0052】
距離ΔLは、ICタグ21aと第1アンテナ11aまでの距離(第1距離L1)とICタグ21aと第2アンテナ11bまでの距離(第2距離L2)の差であるから、次式(式2)の関係が成り立つ。
ΔL=L1−L2 ・・・ (式2)
なお、第1距離L1と第2距離L2は、各々、厳密にはICタグ21aのアンテナ部分とタグリーダ11のアンテナ(11aまたは11b)までの距離である。だが、ICタグ21aのIC部分がアンテナ部分よりも十分に小さく、ICタグ21aのサイズとアンテナ部分のサイズがほぼ等しいような場合には、第1距離L1および第2距離L2は、それぞれ、ICタグ21aとタグリーダ11のアンテナ11aおよび11bまでの距離とみなすことができる。
【0053】
ICタグ21aは、タグリーダ11の2つのアンテナ11aおよび11bからの距離の差(式2)が一定(ΔL)となる点が構成する曲線(双曲線)(あるいは、3次元的に相対的位置を計測する場合には、曲面(双曲面)とタグリーダ11のアンテナ11aおよび11bならびにICタグ21aが張る面の交わり部分に現れる双曲線)上のどこかに存在する。この場合、双曲線は、アンテナ11aとアンテナ11bを焦点とした双曲線31となり、ICタグ位置算出部15は、アンテナ11aの位置およびアンテナ11bの位置、ならびに、距離差ΔLから双曲線31の式を導出できる。同様にして、ICタグ21bについても双曲線32の式を導出する。
【0054】
ICタグ位置算出部15は、双曲線31の式、および、双曲線32の式、ならびに、ICタグ情報から導出されるICタグ21aおよび21bの位置関係(ICタグ21aおよび21bの間の距離)を表す式を用いて連立方程式を構成し、当該連立方程式からICタグ21aおよび21bの列車進行方向、および、その垂直方向の2次元位置を導出する。そして、この位置を、ICタグ21aのタグリーダ11に対する相対位置、ICタグ21bのタグリーダ11に対する相対位置、とする。
【0055】
次に、ステップS109bにおいて実行される故障モード列車位置測定について説明する。
【0056】
列車検知部13が故障モードで列車位置測定を行うと決定した場合には、ICタグ位置算出部15は、ICタグ21aまたは21bのいずれか一方から受信した受信信号を用いて、タグリーダ11の位置を基準としたICタグ21aまたは21bの相対位置を、列車進行方向および列車進行方向に対する垂直方向の2次元位置として求める。あるいは、ICタグ位置算出部15は、ICタグ21aまたは21bの相対位置を、列車進行方向および列車進行方向に対する垂直方向ならびに高さ方向(鉛直方向)について、求めることも可能である。
【0057】
図4は、実施の形態1において故障モード(ステップS109b)で行われる列車位置測定を説明する模式図である。
【0058】
タグリーダ11は、ICタグ21aまたは21bのいずれか一方(図4においては21a)のみの応答信号を、アンテナ11aおよび11bでそれぞれ受信できたとする。受信した信号は、それぞれ第1受信信号および第2受信信号として、ICタグ位置算出部15へ出力される。
【0059】
ICタグ位置算出部15は、第1受信信号の位相(第1位相)と第2受信信号の位相(第2位相)の位相差ΔΦを算出する。そして、ICタグ位置算出部15は、位相差ΔΦと受信信号の波長λより次式(式1)を用いて距離ΔLを算出する。
ΔL=(ΔΦ/2π)λ ・・・ (式1)
【0060】
距離ΔLは、ステップS109aにおけるΔLと同様、ICタグ21aと第1アンテナ11aまでの距離(第1距離L1)とICタグ21aと第2アンテナ11bまでの距離(第2距離L2)の差である。よって、ステップS109aと同様、次式(式2)の関係が成り立つ。
ΔL=L1−L2 ・・・ (式2)
【0061】
ICタグ21aは、タグリーダ11の2つのアンテナ11aおよび11bからの距離の差(式2)が一定(ΔL)となる点が構成する曲線(双曲線)(あるいは、3次元的に相対的位置を計測する場合には、曲面(双曲面)とタグリーダ11のアンテナ11aおよび11bならびにICタグ21aが張る面の交わり部分に現れる双曲線)上のどこかに存在する。この場合、双曲線は、アンテナ11aとアンテナ11bを焦点とした双曲線31となり、ICタグ位置算出部15は、アンテナ11aの位置およびアンテナ11bの位置、ならびに、ΔLから双曲線31の式を導出する。そして、当該双曲線31の式と、地上装置1(タグリーダ11)からICタグ21aの列車進行方向に下ろした垂線の足の距離33を表す式を用いて連立方程式を構成し、当該連立方程式からICタグ21aの列車進行方向の位置を導出する。なお、ここで用いる距離33は、ICタグ21aから送信された応答信号に含まれるICタグ情報のICタグ取付位置情報を用いてよい。あるいは、距離33は、以前に受信され、メモリ14に保持されているICタグ21aの過去の検知履歴から決定してもよい。
【0062】
このようにして、ICタグ位置算出部15は、通常モードおよび故障モード(ステップS109aおよびS109b)において、ICタグ21a(およびICタグ21b(通常モード))と、タグリーダ11との相対位置を算出し、算出結果を列車位置算出部16へ出力する。
【0063】
次に、列車位置算出部16は、ICタグ位置算出部15が算出した相対位置と、予め保持されたタグリーダ11の軌道(鉄道線路)に対する位置に関する情報と、ICタグ情報に含まれる、ICタグと列車の「列車基準位置」に対する位置関係に関する情報と、に基づいて、列車の「列車基準位置」の軌道上における位置(「列車位置」)を算出する。なお、タグリーダ11(のアンテナ11aおよび11b)と駅ホームあるいは軌道(鉄道線路)上の基準位置(「軌道基準位置」)との位置関係は、既知であり、メモリ14等に保持されているものとする。当該列車位置は、列車停止検知部17および監視部18へ出力される。また、上記した、ICタグと列車の「列車基準位置」に対する位置関係に関する情報に加え、列車のドアと「列車基準位置」との位置関係に関する情報をICタグ情報等に含めることにより、列車のドアの軌道上における位置を求めることができる。また、駅ホームの乗車位置(「乗車基準位置」)の軌道上における位置を予め保持することにより、列車のドアと、駅ホームのドアとの位置関係もまた容易に求めることができる。
【0064】
例えば、列車先頭車両のドア中心位置からICタグ21a等までの距離と、駅ホームにおける乗車基準位置とタグリーダ11設置位置の距離と、を用いて、列車のドア中心位置と、駅ホームにおける乗車基準位置との位置関係を算出する。
【0065】
ステップS111において、列車停止検知部17は、2以上の時刻において測定された列車位置の時間変化が所定の範囲内であるか判定し、列車がわずかに移動することなく停止しているか判定して、その結果を列車停止検知信号として監視部18へ出力する。
【0066】
監視部18は、列車検知信号、列車停止検知信号、列車位置を表示部19と地上側列車制御装置へ出力する。
【0067】
表示部19は、ICタグ情報、列車検知信号、列車停止検知信号、列車位置を表示する。具体的な表示方法として、列車位置は数値で表示され、列車検知の有無にしたがって所定のランプが点灯/消灯する。さらに、列車停止と判定すると別のランプが点灯される。また、ICタグ情報およびメモリ部14のデータベースの情報から、列車の種類等を表示することも可能である。
【0068】
このように、本発明にかかる実施の形態1によれば、列車に搭載した1つ以上のICタグと、軌道脇に設置したタグリーダ11の相対位置を列車の進行方向(軌道方向)とその鉛直方向の2次元位置として求めて列車位置を算出することができるので、数値化した高精度の列車位置を求めることが可能である。
【0069】
特許文献4では±35センチメートルの精度(特許文献4[0020]等参照。)であったが、本実施の形態によれば、ICタグとタグリーダの設置を最適化し、良好な電波送受信環境を実現すれば±5センチメートル以下の精度で列車位置を数値化して表示することが可能である。
【0070】
また、本実施の形態によれば、地上装置1を軌道内に設置する必要はない。よって、保守や設置のために作業員が軌道内に立ち入る必要がなく、作業員の作業にかかる安全性が向上される。
【0071】
また、本実施の形態によれば、電波を使って列車の位置を求めているため、気温の変化や騒音、さらに外乱光や塵や埃の影響を受けずに、列車の位置を高精度に検知することができる。
【0072】
また、本実施の形態によれば、列車に設置される車上装置2は、ICタグ(RF−IDタグ)を車両に取り付けるだけで実現されるので、シンプルな装置構成で高精度に列車位置を検知することができる。
【0073】
また、本実施の形態によれば、タグリーダ11の2つのアンテナ11aおよび11bで受信した信号の位相差、信号の波長からICタグの位置を検知するので、簡易な信号処理で高精度に列車位置を検知することができる。
【0074】
また、本実施の形態によれば、1台のタグリーダと複数ICタグを使用するシンプルな装置構成で高精度に列車位置を検知することができる。
【0075】
また、本実施の形態によれば、複数のICタグを用いることで、いずれかのICタグが故障しても列車位置を検知することができる。
【0076】
また、本実施の形態によれば、列車情報、列車検知情報、列車停止判定情報、列車位置情報等を表示することができるので、運転士、駅職員の業務を支援し、列車運行効率および安全性が向上するという効果が期待される。
【0077】
実施の形態2.
以下、本発明の第2の実施の形態による列車位置検知装置について説明する。
【0078】
実施の形態2による列車検知装置は、ICタグ位置算出部15の構成およびICタグのタグリーダに対する相対位置の算出の方法において、実施の形態1の列車検知装置と相違する。その余の点において、実施の形態2による列車検知装置と、実施の形態1による列車検知装置とは同等であってよい。
【0079】
図5は、実施の形態2によるICタグ42aおよび42bのタグリーダ41に対する相対位置の算出を説明するための図である。
【0080】
図5は、列車の進行方向に対し所定の角度をなして2つのアンテナ(アンテナ41a、アンテナ41b)が所定の間隔で搭載されたタグリーダ41と、列車上に、所定の間隔で設置された2つのICタグ(ICタグ42a、ICタグ42b)との位置関係を示す図である。なお、タグリーダ41の2つのアンテナ41aおよび41bの間隔は電波の波長よりも小さいとする。
【0081】
タグリーダ41からICタグ42aへ質問信号をアンテナ41aあるいは41bから、電波として送信する。質問信号を受信したICタグ42a等は、応答信号を、電波として返信する。
【0082】
タグリーダ41は、各ICタグからの応答信号を、2つのアンテナ41aおよび41bで、それぞれ独立に、第1受信信号と第2受信信号として受信し、ICタグ位置算出部15へ出力する。
【0083】
ICタグ位置算出部15は、各ICタグ(例えば、タグ42a)の第1受信信号および第2受信信号の振幅と位相と周波数を検出し、電波到来角度θ1を算出する。電波到来角度θ1を算出する技術は、レーダなどで用いる測角方法と同様でよく、例えば、ビームフォーマ法、モノパルス法などを用いてよい。電波到来角度θ1とタグリーダ41の基準位置(例えば、アンテナ41aおよび41bの中間点)から、タグリーダ41の基準位置を通る傾きtan(π/2−θ1)の直線43aが得られ、ICタグ42aは、直線43a上のいずれかに存在することが分かる。同様の手法により、ICタグ42bにおいて、直線43bの式が求まり、ICタグ42bは直線43b上のいずれかに存在することがわかる。
【0084】
ICタグ位置算出部15は、直線43aの式、および、直線43bの式、ならびに、ICタグ情報から導出されるICタグ42aおよび42bの位置関係(ICタグ42aおよび42bの間の距離)を表す式を用いて連立方程式を構成し、当該連立方程式からICタグ42aおよび42bの列車進行方向、および、その垂直方向の2次元位置を導出する。そして、この位置を、ICタグ42aのタグリーダ41に対する相対位置、ICタグ42bのタグリーダ41に対する相対位置、とする。
【0085】
また、実施の形態1と同様に、どちらか一方のICタグ(例えば、タグ42a)のみICタグ情報が得られた場合には、例えば、直線43aと、距離44を用いてICタグ42aの相対位置を導出する。この距離44は、実施の形態1における距離33と同様にして決定すればよい。
【0086】
実施の形態2は、以上説明したICタグの相対位置の算出にかかる構成を除き、実施の形態1と同様の構成を有せばよい。ここでは、それらの構成についての説明は、省略する。
【0087】
したがって、実施の形態2による列車位置検知装置は、実施の形態1による列車位置検知装置と同様の効果を奏することができる。
【0088】
実施の形態3.
以下、本発明の第3の実施の形態による列車位置検知装置について説明する。
【0089】
実施の形態3による列車検知装置は、ICタグ位置算出部15の構成およびICタグのタグリーダに対する相対位置の算出の方法において、実施の形態1および2の列車検知装置と相違する。また、タグリーダ51は、1つ以上のアンテナを有せばよい。その余の点において、実施の形態3による列車検知装置は、実施の形態1および2による列車検知装置と同等の構成を有せばよい。
【0090】
図6Aおよび図6Bは、実施の形態3によるICタグ52aおよび52bのタグリーダ51に対する相対位置の算出を説明するための図である。
【0091】
図6Aを参照し、タグリーダ51と、列車に搭載された2つのICタグ52aおよび52bが示される。ここで、タグリーダ51は、1つのアンテナ51a(または51b)を有せばよく、2つのアンテナ51aおよび51bを備えることは、両アンテナでそれぞれ受信された受信信号の振幅の差からICタグの存在する方向を推定することを容易にする点で有利である。
【0092】
他の実施の形態と同様、タグリーダ51から質問信号をアンテナ51aあるいは51bから、電波として送信する。質問信号を受信したICタグ52a等は応答信号を電波として返信する。タグリーダ51は、応答信号を受信し、質問信号を送信してから応答信号を受信するまでに要した通信時間をICタグ位置算出部15へ出力する。
【0093】
ICタグ位置算出部15は、通信時間からICタグ52aの内部での処理に要す時間を引いた電波伝搬往復時間を求め、電波伝搬往復時間に光速を乗算して得られた値の半分の値からタグリーダ51とICタグ52a間の距離を算出する。つまり、ICタグ52aを中心とし、半径が上記距離の円53aの式が求まり、円周上にタグリーダ51が存在する。同様に、ICタグ52bを中心とし、半径が、ICタグ52bに関する電波伝搬往復時間に光速を乗算して得られた値の半分の値の円53bの式が求まり、円周上にタグリーダ51が存在する。
【0094】
ICタグ位置算出部15は、円53aの式、および、円53bの式、ならびに、ICタグ情報から導出されるICタグ52aおよび52bの位置関係(ICタグ52aおよび52bの間の距離)を表す式を用いて連立方程式を構成し、当該連立方程式からICタグ52aおよび52bの列車進行方向、および、その垂直方向の2次元位置を導出する。そして、この位置を、ICタグ52aのタグリーダ51に対する相対位置、ICタグ52bのタグリーダ51に対する相対位置、とする。
【0095】
図6Bは、タグリーダ51を中心とした同心円として、上記電波伝搬往復時間より導出した距離を表現した図である。本図は、図6Aの図と本質的には同義である。本図では、ICタグ52aは、半径155aの円153a上に位置し、ICタグ52bは、半径155bの円153b上に位置することになる。この場合も、円153aの式、および、円153bの式、ならびに、ICタグ情報から導出されるICタグ52aおよび52bの位置関係(ICタグ52aおよび52bの間の距離)を表す式を用いて連立方程式を構成し、当該連立方程式からICタグ52aおよび52bの列車進行方向、および、その垂直方向の2次元位置が導出される。
【0096】
また、実施の形態1および2と同様に、どちらか一方のICタグ(例えば、タグ52a)のみICタグ情報が得られた場合には、例えば、円53aと、距離54を用いてICタグ52aの相対位置を導出する。この距離54は、実施の形態1における距離33と同様にして決定すればよい。
【0097】
実施の形態3は、以上説明したICタグの相対位置の算出にかかる構成を除き、実施の形態1および2と同様の構成を有せばよい。ここでは、それらの構成についての説明は、省略する。
【0098】
したがって、実施の形態3による列車位置検知装置は、実施の形態1および2による列車位置検知装置と同様の効果を奏することができる。
【0099】
さらに、実施の形態3によれば、列車に搭載した1つ以上のICタグと軌道脇に設置した1つ以上のアンテナを備えたタグリーダの相対位置を列車の進行方向(軌道方向)とその鉛直方向の2次元位置を求め列車位置を算出するので、数値化した高精度の列車位置を検知することができる。
【0100】
実施の形態4.
以下、本発明の第4の実施の形態による列車位置検知装置について説明する。
【0101】
実施の形態4による列車検知装置は、ICタグ位置算出部15の構成およびICタグのタグリーダに対する相対位置の算出の方法において、実施の形態1等の既に述べた列車検知装置と相違する。また、タグリーダ61は、1つ以上のアンテナを有せばよい。車上装置2に含まれるICタグは、3つ以上であればよい。その余の点において、実施の形態4による列車検知装置と、実施の形態1、2、3による列車検知装置とは同等であってよい。
【0102】
図7は、実施の形態4によるICタグ62a、62b、62cのタグリーダ61に対する相対位置の算出を説明するための図である。
【0103】
図7は、1つのアンテナ61aが搭載されたタグリーダ61と、列車上に、所定の間隔で設置された3つのICタグ(ICタグ62a、ICタグ62b、ICタグ62c)との位置関係を示す図である。なお、ICタグの間隔は、応答信号の波長よりも小さいものとする。
【0104】
タグリーダ61は、そのアンテナ61aから、3つのICタグ(62a、62b、62c)に対し、同時に質問信号を発信する。当該質問信号を受信したICタグ(62a、62b、62c)は、応答信号を、電波として返信する。
【0105】
タグリーダ61は、各ICタグ(62a、62b、62c)からの応答信号を、第1、第2、および、第3受信信号としてICタグ位置算出部15へ出力する。
【0106】
第1ないし第3受信信号を受け取ったICタグ位置算出部15は、ICタグ62aからの応答信号である第1受信信号と、ICタグ62bからの応答信号である第2受信信号との位相差ΔΦ12を算出する。そして、ICタグ位置算出部15は、位相差ΔΦ12と受信信号の波長λより次式(式3)を用いて距離ΔLを算出する。
ΔL=(ΔΦ12/2π)λ ・・・ (式3)
【0107】
距離ΔLは、ICタグ62aとアンテナ61aまでの距離(L1)と、ICタグ62bとアンテナ61aまでの距離(L2)の差の2倍に等しい。よって、次式(式4)の関係が成り立つ。
ΔL/2=L1−L2 ・・・ (式4)
タグリーダ61は、ICタグ62aからの距離(L1)とICタグ62bからの距離(L2)の差がΔL/2であり、ICタグ62aとICタグ62bを焦点とした双曲線63a上のいずれかに存在する。同様に、第2受信信号と第3受信信号の位相差ΔΦ23から双曲線63bが求まる。
【0108】
ICタグ位置算出部15は、双曲線63aの式、および、双曲線63bの式、ならびに、ICタグ情報から導出されるICタグ62a、62bおよび62cの位置関係(ICタグ62a、62b、および、62cの間の距離)を表す式を用いて連立方程式を構成し、当該連立方程式からICタグ62a、62b、および、62cの列車進行方向、および、その垂直方向の2次元位置を導出する。そして、この位置を、ICタグ62aのタグリーダ61に対する相対位置、ICタグ62bのタグリーダ61に対する相対位置、ICタグ62cのタグリーダ61に対する相対位置、とする。
【0109】
また、2つのタグ情報しか読取れなかった場合には、1つの双曲線と距離64から当該2つのICタグのタグリーダに対する相対位置を導出する。この距離64は、実施の形態1における距離33と同様にして決定すればよい。
【0110】
実施の形態4は、以上説明したICタグの相対位置の算出にかかる構成を除き、実施の形態1、2、3等と同様の構成を有せばよい。ここでは、それらの構成についての説明は、省略する。
【0111】
したがって、実施の形態4による列車位置検知装置は、実施の形態1、2、および3による列車位置検知装置と同様の効果を奏することができる。
【0112】
さらに、実施の形態4によれば、列車に搭載した3つ以上のICタグと軌道脇に設置した1つ以上のアンテナを備えたタグリーダの相対位置を列車の進行方向(軌道方向)とその鉛直方向の2次元位置を求め列車位置を算出するので、数値化した高精度の列車位置を検知することができる。
【0113】
実施の形態5.
実施の形態5による列車検知装置は、ICタグ位置算出部15の構成およびICタグのタグリーダに対する相対位置の算出の方法において、実施の形態1等の既に述べた列車検知装置と相違する。また、タグリーダ71は、3つ以上のアンテナを有せばよい。車上装置2に含まれるICタグは、1つ以上であればよい。その余の点において、実施の形態5による列車検知装置と、実施の形態1、2、3、4による列車検知装置とは同等であってよい。
【0114】
図8は、実施の形態5によるICタグ72のタグリーダ71に対する相対位置の算出を説明するための図である。
【0115】
図8は、3つのアンテナ71a、71b、71cが搭載されたタグリーダ71と、列車上に設置された1つのICタグ72との位置関係を示す図である。なお、アンテナ71aとアンテナ71bの間隔、および、アンテナ71bとアンテナ71cの間隔は、応答信号の波長よりも小さいものとする。
【0116】
タグリーダ71は、ICタグ72へ質問信号をいずれか1つのアンテナから、電波として送信する。質問信号を受信したICタグ72は応答信号を電波として返信する。タグリーダ71は応答信号を3つのアンテナでそれぞれ第1受信信号、第2受信信号、第3受信信号として受信しICタグ位置算出部15へ出力する。
【0117】
第1ないし第3受信信号を受け取ったICタグ位置算出部15は、アンテナ71aで受信した応答信号である第1受信信号と、アンテナ71bで受信した応答信号である第2受信信号との位相差ΔΦ12を算出する。そして、ICタグ位置算出部15は、位相差ΔΦ12と受信信号の波長λより次式(式5)を用いて距離ΔL12を算出する。
ΔL12=(ΔΦ/2π)λ ・・・ (式5)
【0118】
距離ΔL12は、ICタグ72とアンテナ71aまでの距離(L1)とICタグ72とアンテナ71bまでの距離(L2)の差に等しい。よって、次式(式6)の関係が成り立つ。
ΔL12=L1−L2 ・・・ (式6)
ICタグ72は、2つのアンテナ71aおよび71bからの距離の差(式6)が一定(Δ12)となる点が集合した曲線(双曲線73a)上のどこかに存在する。双曲線73aの式は、アンテナ71aの位置とアンテナ71bの位置と距離ΔL12から得られる。
【0119】
同様の手法により、第2受信信号と第3受信信号の位相差Φ23から、ICタグ72とアンテナ71bまでの距離(L2)と、ICタグ72とアンテナ71cまでの距離(L3)の差ΔL23が導出され、アンテナ71bとアンテナ71cを焦点とした双曲線73bの式が導出される。そして、ICタグ位置算出部15は、双曲線73aの式および双曲線73bの式から双曲線73aと双曲線73bの交点を求め、当該交点を、ICタグ72のタグリーダ71に対する相対位置、とする。
【0120】
実施の形態5は、以上説明したICタグの相対位置の算出にかかる構成を除き、実施の形態1、2、3、4等と同様の構成を有せばよい。ここでは、それらの構成についての説明は、省略する。
【0121】
実施の形態5は、列車に搭載した1つ以上のICタグ72と、3つ以上のアンテナを備えたタグリーダ71とから、ICタグ72と軌道脇に設置したタグリーダ71の相対位置を列車の進行方向(軌道方向)とその鉛直方向の2次元位置を求めて列車位置を算出するので、数値化した高精度の列車位置を検知することができる。
【0122】
したがって、実施の形態5による列車位置検知装置は、実施の形態1、2、3、および4による列車位置検知装置と同様の効果を奏することができる。
【0123】
実施の形態6.
実施の形態6による列車検知装置は、ICタグ位置算出部15の構成およびICタグのタグリーダに対する相対位置の算出の方法において、実施の形態1等の既に述べた列車検知装置と相違する。また、タグリーダ81は、2つ以上のアンテナを有せばよい。車上装置2に含まれるICタグ82は、1つ以上であればよい。その余の点において、実施の形態5による列車検知装置と、実施の形態1、2、3、4、5による列車検知装置とは同等であってよい。
【0124】
図9は、実施の形態6によるICタグ82のタグリーダ81に対する相対位置の算出を説明するための図である。
【0125】
図8は、2つのアンテナ81a、81bが搭載されたタグリーダ81と、列車上に設置された1つのICタグ82との位置関係を示す図である。なお、アンテナ81aとアンテナ81bの間隔は、応答信号の波長よりも小さいものとする。
【0126】
タグリーダ81は、ICタグ82へ質問信号をいずれか1つのアンテナから、電波として送信する。質問信号を受信したICタグ82は応答信号を電波として返信する。タグリーダ81は応答信号を2つのアンテナでそれぞれ第1受信信号、第2受信信号として受信しICタグ位置算出部15へ出力する。
【0127】
第1および第2受信信号を受け取ったICタグ位置算出部15は、アンテナ81aで受信した応答信号である第1受信信号と、アンテナ81bで受信した応答信号である第2受信信号との位相差ΔΦを算出する。そして、ICタグ位置算出部15は、位相差ΔΦと受信信号の波長λより次式(式7)を用いて距離ΔL12を算出する。
ΔL12=(ΔΦ/2π)λ ・・・ (式7)
【0128】
距離ΔL12は、ICタグ82とアンテナ81aまでの距離(L1)とICタグ82とアンテナ81bまでの距離(L2)の差に等しい。よって、次式(式8)の関係が成り立つ。
ΔL12=L1−L2 ・・・ (式8)
ICタグ82は、2つのアンテナ81aおよび81bからの距離の差(式8)が一定(ΔL12)となる点が集合した曲線(双曲線83)上のどこかに存在する。双曲線83の式は、アンテナ81aの位置とアンテナ81bの位置と距離ΔL12から得られる。
【0129】
タグリーダ81からICタグ82の列車進行方向へ下ろした垂線の足までの垂線距離84は、実施の形態1における距離33と同様にして決定すればよい。また、垂線距離84は、ICタグ情報に含まれる列車情報と予め設置の際に計測等をして作成した垂線距離に関するデータベースとを照合することにより得てもよい。
【0130】
実施の形態6は、以上説明したICタグの相対位置の算出にかかる構成を除き、実施の形態1、2、3、4、5等と同様の構成を有せばよい。ここでは、それらの構成についての説明は、省略する。
【0131】
実施の形態6は、列車に搭載した1つ以上のICタグ82と、2つ以上のアンテナを備えたタグリーダ81とから、ICタグ82と軌道脇に設置したタグリーダ81の相対位置を列車の進行方向(軌道方向)とその鉛直方向の2次元位置を求めて列車位置を算出するので、数値化した高精度の列車位置を検知することができる。
【0132】
したがって、実施の形態6による列車位置検知装置は、実施の形態1、2、3、4、および5による列車位置検知装置と同様の効果を奏することができる。
【0133】
実施の形態7.
以下、本発明の第7の実施の形態による列車位置検知装置について説明する。
【0134】
実施の形態7による列車位置検知装置は、実施の形態1ないし6のいずれかと同等の列車位置検知にかかる構成を有し、かつ、駅のホームドアの開閉制御にかかる構成を追加してなる列車位置検知装置である。
【0135】
図10は、実施の形態7による列車位置検知装置のブロック図である。図10を参照し、列車位置検知装置は、地上に設置される地上装置100、列車に搭載される車上装置2を有する。
【0136】
地上装置100は、先に図1に示した車上装置1に含まれる構成に加え、列車のドアの開閉状態を検知する列車ドア開閉検知部103と、閾値保持部102と、を有する。一方、車上装置2は、先に図1に示した構成と同等の構成を有する。なお、図10において、先の図における参照符号と同一の符号を付したものは、先の図における構成要素と同一またはこれに同等の機能を有するものである。このことは明細書の全文において共通する。また、明細書全文に表されている構成要素の形容はあくまで例示であってこれらの記載に限定されるものではない。
【0137】
次に、実施の形態7による列車位置検知装置の動作について説明する。先ず、列車の位置検知の方法は、先の実施の形態1ないし実施の形態6で述べた方法のいずれかの方法でよい。
【0138】
監視部101は、列車停止検知部17から列車停止判定信号を受けると、閾値保持部102に予め設定された列車停止許容位置に列車位置があるか、否か、を判定し、当該判定結果を列車停止位置判定信号として表示部19および図示しないホームドア開閉制御部へ出力する。
【0139】
また、列車ドア開閉検知部103は、列車ドアの開閉を検知する。列車ドア開閉検知部103は、列車ドアが開いたことを検知すると、列車ドア開信号を監視部101へ出力する。監視部101は、列車ドア開信号が入力されると、ホームドア開信号を表示部19と図示しないホームドア開閉制御部へ出力する。列車ドア開閉検知部103は、列車ドアが閉まったことを検知すると列車ドア閉信号を監視部101へ出力する。監視部101は、列車ドア閉信号が入力されると、ホームドア閉信号を表示部19と図示しないホームドア開閉制御部へ出力する。
【0140】
ここで、列車ドア開閉検知部103は、例えば、列車ドアの開閉を、ホーム監視画像の画像処理によって検知すればよい。また、駅員が手動的に監視部101へ、列車ドアの開閉の検知にかかる情報を入力してもよい。また、車両の扉にICタグを取り付けて、ドアの開閉によって移動するICタグの位置を検知することで列車ドア開閉を検知するようにしてもよい。ICタグを利用してドアの開閉を検知する場合、ICタグを各車両に搭載して、各車両のICタグの列車の進行方向とその鉛直方向距離を計測し、ICタグの進行方向の鉛直方向取付位置を加減算することにより、ホームと車両の距離が分かる。当該距離の大小に基づき、隙間を所定の閾値で判定し、隙間が広い場合に乗客に車両乗降時に注意するように喚起することができる。当該閾値もまた閾値保持部102に保持することができる。
【0141】
本実施の形態もまた、先に述べた実施の形態1ないし6と同等の効果を奏することができる。さらに、本実施の形態においては、検知した列車位置に基づき、駅のホームドアの開閉制御を支援することが可能となる。また、列車と駅のホームとの間隔が大きく開いている場合には、乗客に対し、注意を喚起することが可能となる。
【0142】
実施の形態8.
以下、本発明の第8の実施の形態による列車位置検知装置について説明する。
【0143】
実施の形態8による列車位置検知装置は、概ね、実施の形態1ないし6のいずれかの構成と、車上装置、および、地上装置の構成が逆になるように構成されてなる列車位置検知装置である。
【0144】
図11は、の実施の形態8による列車位置検知装置の構成を示すブロック図である。
【0145】
図11を参照すればわかるように、本実施の形態による列車位置検知装置は、地上側に設置される地上装置300と、列車に搭載される車上装置400と、を有する。
【0146】
地上装置300は、ICタグ301aとICタグ301bと、を有する。一方、車上装置400は、タグリーダ401、ICタグ情報記憶部402、地上装置検知部403、メモ襟部404、ICタグ位置算出部405、列車位置算出部406、列車停止検知部407、監視部408、表示部409、を有する。
【0147】
次に、列車の位置を検知する動作について説明する。
【0148】
車上装置400において、タグリーダ401は、ICタグ301a等を呼び出す呼出信号を、所定の周波数と振幅と位相をもった電波として所定の周期で送信する。列車が地上装置300の付近にまで接近すると、タグリーダ401から送信された呼出信号は、地上装置300のICタグ301a等で受信され、ICタグ301a等は、ICタグを認証/同定するための情報であるICタグ識別情報、ICタグ取付位置情報、制限速度情報等の地上情報等を含んだICタグ情報を応答信号に含めて、電波として返信する。なお、本実施の形態におけるICタグ情報のICタグ取付位置情報は、そのICタグが取り付けられている軌道上の位置等を表す情報である。また、例えば、当該情報は、駅ホームの基準位置からの距離であってもよい。地上情報は、ICタグが設置された近傍の軌道の制限速度や、位置情報(次の駅までの距離等)を含んでよい。また、例えば、地上情報は、駅のホームドアの位置を示す情報であってもよい。
【0149】
タグリーダ401は、ICタグ301a等からの応答信号を受信し、ICタグ情報をICタグ情報記憶部402へ出力する。また、受信した応答信号を受信信号として、ICタグ位置算出部405へ出力する。
【0150】
ICタグ情報記憶部403は、既に説明した実施の形態と同様、ICタグ情報を記憶するとともに、ICタグ情報を地上装置検知部403へ出力する。
【0151】
ICタグ検知部(地上装置検知部403)は、ICタグ情報とメモリ404のデータベースとの照合を行い地上装置300に含まれるICタグ301a等を検知し、また、複数のICタグ301aおよび301b等からのICタグ情報が読取れているか、否か、を判定し、通常モードでICタグ位置算出部405を動作させるか、故障モードでICタグ位置算出部405を動作させるか、を判定し、当該判定結果をICタグ検知信号としてICタグ位置算出部405と監視部408へ出力する。
【0152】
ICタグ位置算出部405は、ICタグ301a等の、列車進行方向とその垂直方向の2次元位置を、既に述べた先の実施の形態と同様に、受信信号の周波数と振幅と位相等から算出し、ICタグ301a等のタグリーダ401に対する相対位置を、列車位置算出部406へ出力する。ICタグ位置を算出する具体的な方法は他の実施の形態で述べた方法のいずれかと同様でよい。
【0153】
列車位置算出部406は、ICタグ位置算出部405が算出した相対位置と、ICタグ情報等から得たICタグ301a等の軌道(鉄道線路)における位置に関する情報と、タグリーダ401と列車の「列車基準位置」に対する位置関係に関する情報と、に基づいて、列車の「列車基準位置」の軌道上における位置(「列車位置」)を算出する。算出された列車位置は、監視部408へ出力される。
【0154】
監視部408は、列車位置を列車運行制御と表示部409へ出力する。また、表示部409は、列車位置に加え、地上装置のICタグ301aから得たICタグ情報を表示することができる。
【0155】
このようにして、実施の形態8による列車位置検知装置もまた、実施の形態1ないし7による列車位置検知装置と同様の効果を奏することができる。
【0156】
実施の形態9.
以下、本発明の第9の実施の形態による列車位置検知装置について説明する。
【0157】
実施の形態9による列車位置検知装置は、実施の形態8と同等の列車位置検知にかかる構成を有し、かつ、駅のホームドアの開閉制御にかかる構成を地上装置に追加してなる列車位置検知装置である。
【0158】
図12は、実施の形態9による列車位置検知装置のブロック図である。図12を参照し、列車位置検知装置は、地上に設置される地上装置300、列車に搭載される車上装置400を有する。
【0159】
地上装置300は、先に図11に示した地上装置300に含まれる構成に加え、列車のドアの開閉状態を検知する列車ドア開閉検知部102を有し、車上装置400は、先に図11に示した車上装置400に含まれる構成に加え、閾値保持部410を有する。なお、図12において、先の図における参照符号と同一の符号を付したものは、先の図における構成要素と同一またはこれに同等の機能を有するものである。このことは明細書の全文において共通する。また、明細書全文に表されている構成要素の形容はあくまで例示であってこれらの記載に限定されるものではない。
【0160】
次に、実施の形態9による列車位置検知装置の動作について説明する。先ず、列車の位置検知の方法は、先の実施の形態1ないし実施の形態8で述べた方法のいずれかの方法でよい。
【0161】
監視部408は、列車停止検知部407から列車停止判定信号を受けると、閾値保持部410に予め保持された列車停止許容位置に列車位置があるか、否か、を判定し、当該判定結果を列車停止位置判定信号として表示部409および図示しない列車運行制御部へ出力する。
【0162】
また、列車ドア開閉検知部302は、列車ドアの開閉を検知する。列車ドア開閉検知部302は、列車ドアが開いたことを検知すると、列車ドア開信号を図示しないホームドア開閉制御部へ出力する。また、列車ドア開閉検知部302は列車ドアが閉まったことを検知すると列車ドア閉信号を図示しないホームドア開閉制御部へ出力する。
【0163】
ここで、列車ドア開閉検知部302は、例えば、列車ドアの開閉を、ホーム監視画像の画像処理によって検知すればよい。また、駅員が手動的に列車ドア開閉検知部302へ、列車ドアの開閉の検知にかかる情報を入力してもよい。また、車両の扉にICタグを取り付けて、ドアの開閉によって移動するICタグの位置をタグリーダ401によって検知することで列車ドア開閉を検知するようにしてもよい。ICタグを利用してドアの開閉を検知する場合、ICタグを各車両に搭載して、各車両のICタグの列車の進行方向とその鉛直方向距離を計測し、ICタグの進行方向の鉛直方向取付位置を加減算することにより、ホームと車両の距離が分かる。当該距離の大小に基づき、隙間を所定の閾値で判定し、隙間が広い場合に乗客に車両乗降時に注意するように喚起することができる。当該閾値もまた閾値保持部410に保持することができる。
【0164】
本実施の形態もまた、先に述べた実施の形態1ないし6と同等の効果を奏することができる。さらに、本実施の形態においては、検知した列車位置に基づき、駅のホームドアの開閉制御を支援することが可能となる。また、列車と駅のホームとの間隔が大きく開いている場合には、乗客に対し、注意を喚起することが可能となる。
【0165】
列車位置検知装置の適用例1.
運転手運転支援および駅ホームドア開閉制御支援
以下、本発明の実施の形態1ないし9の列車位置検知装置のいずれかを、列車の停止基準位置付近の列車位置を検知し、運転手の運転支援およびホームドア開閉制御を支援する場合の適用例を示す。
【0166】
図13は、駅ホームの停止基準位置から所定の距離を隔てて設置された地上装置と、列車基準位置から所定の距離を隔てて設置された車上装置の例を示す図である。
【0167】
この場合、タグリーダを備えた地上装置をホーム柵に設置し、ICタグを備えた車上装置を車両の両側面に搭載する。なお、列車の車両数やホーム構造によって列車毎に停止位置が異なる場合には、ICタグ情報に含まれる列車ID情報等関連付けて、軌道上の基準位置を予めデータベース化しておき、データベースを参照して基準位置を変更し列車位置を算出すればよい。また、地上装置を複数設置し、列車情報からいずれの地上装置で列車位置を検知すればよい。
【0168】
また、タグリーダを備えた車上装置を列車の両側面に搭載し、ICタグを備えた地上装置をホーム柵に設置した場合は、上記を逆の処理をすればよい。
【0169】
列車位置検知装置の適用例2.
駅構内における列車位置検出例
図14は、列車が駅に新入してきてから列車の位置を検知する場合の適用例を示す。この場合、タグリーダを備えた車上装置を列車の両側面に搭載し、ICタグを備えた地上装置を複数設置した状態を示している。この例の場合、ICタグを検知した列車位置の時間変化から列車の走行速度を求めるようにしてもよい。また、ICタグの応答信号を受信し、次のICタグの応答信号を受信するまでの時間を計測し、ICタグ間の距離に基づいて列車の走行速度を求めるようにしてもよい。
【0170】
ここで得られた列車速度や列車位置はATO(自動列車制御装置)やTASC(列車自動停止装置)などの列車制御装置へ出力してもよい。
【0171】
列車位置検知装置の適用例3.
駅間における列車位置検出例
図15は、列車の走行位置と停止位置を検知し列車の運行を支援する場合の適用例を示す。この場合、タグリーダを備えた車上装置を列車の両側面に搭載し、ICタグを備えた複数の地上装置が鉄道線路に沿って設置された状態を示している。列車が駅間を走行中に、地上装置のICタグから列車位置を検知し、ATO(自動列車制御装置)やTASC(列車自動停止装置)などの列車運行制御装置へ出力してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0172】
本発明は、鉄道事業において列車の運行の制御、特に、駅のホームドアのための列車位置検知等に利用することができ、有用である。
【符号の説明】
【0173】
1 地上装置、2 車上装置、11 タグリーダ、11a アンテナ部、11b アンテナ部、12 ICタグ情報記憶部、13 列車検知部、14 メモリ部(データベース部)、15 ICタグ位置算出部、16 列車位置算出部、17 列車停止検知部、18 監視部、19 表示部、21a ICタグ、21b ICタグ、41 タグリーダ、43a ICタグ、43b ICタグ、51 タグリーダ、52a ICタグ、52b ICタグ、61 タグリーダ、62a ICタグ、62b ICタグ、62c ICタグ、71 タグリーダ、72 ICタグ、81 タグリーダ、82 ICタグ、100 地上装置、101 監視部、102 閾値保持部、103 列車ドア開閉検知部、300 地上装置、301a ICタグ、301b ICタグ、302 列車ドア開閉検知部、400 車上装置、401 タグリーダ、401a アンテナ部、401b アンテナ部、402 ICタグ情報記憶部、403 地上装置検知部、404 メモリ部(データベース部)、405 ICタグ位置算出部、406 列車位置算出部、407 列車停止検知部、408 監視部、409 表示部、410 閾値保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車に搭載された車上装置、および、地上に設置された地上装置を有する列車位置検知装置であって、
前記車上装置は、所定の電波である呼出信号を受信して当該呼出信号に応答して所定の情報を含んだ応答信号を電波発信する電波発信機を備え、
前記地上装置は、
アンテナ部を含んで前記呼出信号を発信して前記応答信号を受信する電波送受信機と、
前記応答信号に含まれる前記所定の情報に基づいて前記電波発信機を同定することで列車の存在を検知する検知部と、
前記電波送受信機が受信した前記応答信号に基づいて、前記電波発信機の前記電波受信機に対する相対位置を算出する電波発信機位置算出部と、
前記電波発信機位置算出部が算出した相対位置と、前記応答信号の前記所定の情報に含まれる前記電波発信機の前記列車における搭載位置に関する情報に基づいて前記列車の列車位置を算出する列車位置算出部と、を備えた、列車位置検知装置。
【請求項2】
前記地上装置は、さらに、相異なる時刻において前記列車位置算出部が算出した複数の列車位置の差に基づいて、前記列車の停止を検知する列車停止検知部を備える、請求項1に記載の列車位置検知装置。
【請求項3】
前記電波送受信機の前記アンテナ部は、複数のアンテナを互いに所定の間隔で配してなり、
前記電波発信機位置算出部は、前記複数のアンテナそれぞれが受信した前記応答信号における位相差に基づいて、前記電波発信機の前記電波受信機に対する相対位置を算出する、請求項1に記載の列車位置検知装置。
【請求項4】
前記車上装置は、複数の前記電波発信機を備え、
前記地上装置の前記電波送受信機の前記アンテナ部は、単一のアンテナを配してなり、
前記電波発信機位置算出部は、前記単一のアンテナが発信した呼出信号に対する応答である応答信号を、前記複数の電波発信機それぞれから受信し、
前記複数の電波発信機からの複数の応答信号の間の位相差に基づいて、前記電波発信機の前記電波受信機に対する相対位置を算出する、請求項1に記載の列車位置検知装置。
【請求項5】
前記電波発信機位置算出部は、前記呼出信号を発信してから前記呼出信号に応答した前記応答信号を受信するまでの時間間隔に基づいて、前記電波発信機の前記電波受信機に対する相対位置を算出する、請求項1に記載の列車位置検知装置。
【請求項6】
前記電波発信機は、ICタグであり、
前記電波送受信機は、タグリーダである、請求項1に記載の列車位置検知装置。
【請求項7】
列車に搭載された車上装置、および、地上に設置された地上装置を有する列車位置検知装置であって、
前記地上装置は、
所定の電波である呼出信号を受信して当該呼出信号に応答して所定の情報を含んだ応答信号を電波発信する電波発信機を備え、
前記車上装置は、
アンテナ部を含んで前記呼出信号を発信して前記応答信号を受信する電波送受信機と、
前記応答信号に含まれる前記所定の情報に基づいて前記電波発信機を同定することで前記地上装置の存在を検知する検知部と、
前記電波送受信機が受信した前記応答信号に基づいて、前記電波発信機の前記電波受信機に対する相対位置を算出する電波発信機位置算出部と、
前記電波発信機位置算出部が算出した相対位置と、前記応答信号の前記所定の情報に含まれる前記電波発信機の設置位置に関する情報基づいて前記列車の列車位置を算出する列車位置算出部と、を備えた、列車位置検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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