説明

列車

【課題】簡易で、かつ、安価に製作可能な操舵機構を有する無軌道方式用の列車を提供する。
【解決手段】列車1は、動力車10と、複数の貨車20A〜20Cと、操舵手段30と、を備える。動力車10は、軌道上を走行するための車輪13を有する一般的なディーゼル機関車11に、動力車用タイヤ14を取り付けたものである。貨車20A〜20Cは、軌道上を走行するための車輪23を有する一般的なセグメント台車21に、貨車用タイヤ24を取り付けたものである。操舵手段30は、動力車10と貨車20との間及び隣接する貨車20間に設けられた油圧ジャッキ35A〜35Cと、油圧ジャッキ35A〜35Cを作動させるための駆動装置40と、油圧ジャッキ35A〜35Cの伸縮を制御するための制御装置50と、から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無軌道方式で走行する列車に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、シールドトンネル内で資機材等を運搬する列車の走行方法として、軌道上を走行する軌道方式が採用されている。
軌道方式では、労働安全衛生規則で千分の五十以上の急勾配箇所に、例えば、ラック・ピニオン等の補助機構を設置することが義務づけられている。
しかしながら、補助機構の設置は手間がかかるため、軌道方式の採用を止めて無軌道方式を採用することがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、無軌道方式で走行する列車が開示されている。この列車は、動力車と貨車とから構成され、これらは共にタイヤを備えており、シールドトンネル内を無軌道方式で走行可能である。動力車には、シールドトンネル内のカーブ区間を走行できるように、タイヤを操舵するための操舵機構が備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−311997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、タイヤを備えた動力車及び貨車は一般的なものではないため、動力車及び貨車を新規製作しなければならず、設備投資費が高くなるという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、簡易で、かつ、安価に製作可能な操舵機構を有する無軌道方式用の列車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、タイヤで自走可能な動力車と、前記動力車に連結されて、タイヤで走行可能な貨車と、からなる列車であって、
前記動力車と前記貨車との連結部位から幅方向にずれた位置に設けられて一端が前記貨車に、他端が前記動力車に接続されて伸縮可能な第一の伸縮装置を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明において、複数の前記貨車が互いに連結され、前記貨車同士の連結部位から幅方向にずれた位置に設けられて一端が一方の前記貨車に、他端が他方の前記貨車に接続されて伸縮可能な第二の伸縮装置を備えることとしてもよい。
【0009】
また、本発明において、前記第一の伸縮装置及び前記第二の伸縮装置の伸縮動作を制御するための制御装置を更に備えることとしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡易で、かつ、安価に製作可能な操舵機構を有する無軌道方式用の列車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)は本発明の第一実施形態にかかる列車の構成を示す平面図、(b)は(a)にセグメントを追記した側面図である。
【図2】動力車の車軸部分を拡大して示す正面図である。
【図3】貨車の車軸部分を拡大して示す正面図である。
【図4】(a)は動力車と貨車との連結部分を拡大して示す側面図、(b)は(a)の平面図である。
【図5】(a)は隣接する貨車間の連結部分を拡大して示す側面図、(b)は(a)の平面図である。
【図6】駆動装置の構成を示す概念図である。
【図7】制御装置を動力車に設置した状態を示す概念図である。
【図8】列車の進行方向を示す図である。
【図9】列車の進行状況を示す図である。
【図10】列車の進行状況を示す図である。
【図11】本発明の第二実施形態にかかる制御装置を動力車に設置した状態を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の列車の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0013】
図1(a)は本発明の第一実施形態にかかる列車1の構成を示す平面図、(b)は(a)にセグメント2を追記した側面図である。
【0014】
本図に示すように、列車1は、動力車10と、複数の貨車20A〜20Cと、進行方向を制御するための操舵手段30と、を備え、セグメント2を積載してシールドトンネル3内を無軌道方式で走行する。
【0015】
動力車10と貨車20A、貨車20Aと貨車20B、貨車20Bと貨車20Cは、それぞれ連結手段4により連結されている。したがって、動力車10を自走させることにより、貨車20A〜20Cを走行させることができる。
連結手段4はピン結合からなり、ピン4aを中心に動力車10、貨車20A〜20Cがそれぞれ水平方向へ回動することができる。
【0016】
動力車10は、軌道上を走行するための車輪13を有する一般的なディーゼル機関車11に、動力車用タイヤ14を取り付けたものである。
なお、本実施形態では、ディーゼル機関車11を用いたが、これに限定されるものではなく、バッテリーカーでもよい。要は、トンネル工事で一般的に使用されている自走可能なものであればよい。
【0017】
図2は、動力車10の車軸12部分を拡大して示す正面図である。本図に示すように、車軸12の両端部は、車輪13の外側にそれぞれ突出しており、その突出部に車輪13よりも大径の動力車用タイヤ14が接続されている。したがって、車軸12が回転することによって動力車用タイヤ14が回転する。
【0018】
車軸12が回転すると、この車軸12に接続されている車輪13も動力車用タイヤ14の回転と共に回転するが、動力車用タイヤ14は車輪13より大径であるため、動力車用タイヤ14のみが底盤5に接地している。したがって、車輪13は走行用として機能せず、動力車10は動力車用タイヤ14で走行することとなる。
【0019】
なお、動力車10を停止させる際は、ディーゼル機関車11に備え付けの車輪踏面ブレーキ17(図1参照)で車輪13を制動することにより、動力車用タイヤ14の回転を止める。
【0020】
次に、貨車20A〜20Cについて説明する。
【0021】
図1に示すように、貨車20A〜20Cは、軌道上を走行するための車輪23を有する一般的なセグメント台車21に、貨車用タイヤ24を取り付けたものである。
なお、本実施形態では、セグメント台車21を用いたが、これに限定されるものではなく、ずり用台車でもよい。要は、トンネル工事で一般的に使用されている台車であればよい。
【0022】
図3は、貨車20Aの車軸22部分を拡大して示す正面図である。本図に示すように、車輪23に、この車輪23よりも大径の貨車用タイヤ24がカップリング25を介して取り付けられている。したがって、車輪23が回転することによって貨車用タイヤ24が回転する。
【0023】
車軸22が回転すると、この車軸22に接続されている車輪23及び貨車用タイヤ24が回転するが、貨車用タイヤ24は車輪23よりも大径であるため、貨車用タイヤ24のみが底盤5に接地している。したがって、車輪23は走行用として機能せず、貨車20A〜20Cは貨車用タイヤ24で走行することとなる。
【0024】
なお、本実施形態では、動力車用タイヤ14及び貨車用タイヤ24として、パンクしないノーパンクタイヤを用いたが、これに限定されるものではなく、空気入りタイヤ等を現場条件に応じて適宜、選択してよい。
【0025】
次に、列車1の操舵手段30について説明する。
【0026】
図1に示すように、操舵手段30は、油圧ジャッキ35A(第一の伸縮装置に相当)と、油圧ジャッキ35B、35C(第二の伸縮装置に相当)と、油圧ジャッキ35A〜35Cを作動させるための駆動装置40と、油圧ジャッキ35A〜35Cの伸縮を制御するための制御装置50と、から構成される。
【0027】
図4(a)は動力車10と貨車20Aとの連結部分を拡大して示す側面図、(b)は(a)の平面図である。
本図に示すように、油圧ジャッキ35Aは、動力車10と貨車20Aとの間に介在し、連結手段4よりも動力車10の幅方向にずれた位置で、一端が動力車10に、他端が貨車20Aに接続されている。
【0028】
図5(a)は貨車20Aと貨車20Bとの連結部分を拡大して示す側面図、(b)は(a)の平面図である。
本図に示すように、油圧ジャッキ35Bは、貨車20Aと貨車20Bとの間に介在し、連結手段4よりも貨車20Aの幅方向にずれた位置で、一端が貨車20Aに、他端が貨車20Bに接続されている。
また、油圧ジャッキ35Cは、貨車20Bと貨車20Cとの間に介在し、連結手段4よりも貨車20Bの幅方向にずれた位置で、一端が貨車20Bに、他端が貨車20Cに接続されている(図1参照)。
【0029】
本実施形態では、油圧ジャッキ35A〜35Cはすべて同じものを用いた。なお、これに限定されるものではなく、ストローク長や出力の異なるものを適宜、組み合わせて用いてもよい。
【0030】
次に、駆動装置40について説明する。
【0031】
図6は、駆動装置40の構成を示す概念図である。本図に示すように、駆動装置40は、圧油を各油圧ジャッキ35A〜35Cに供給するための油圧ポンプ41と、油圧ポンプ41を駆動するためのモータ42と、油圧ポンプ41から送給される圧油の流向を制御する電磁バルブ43A〜43Cと、を備える。
【0032】
電磁バルブ43A〜43Cは、各油圧ジャッキ35A〜35Cにそれぞれ1台ずつ設けられており、電磁バルブ43A〜43Cを切り替えることにより、圧油を各油圧ジャッキ35A〜35Cの押側又は引側のいずれか一方に送給することができる。
【0033】
次に、制御装置50について説明する。
【0034】
図7は、制御装置50を動力車10に設置した状態を示す概念図である。本図に示すように、制御装置50は、油圧ジャッキ35A〜35Cの伸縮動作を操作するための操作盤51と、電磁バルブ43A〜43Cの切り替えを制御するCPU等の制御器53と、を備え、これらは運転席に設置されている。
【0035】
操作盤51には、各油圧ジャッキ35A〜35Cの伸縮をそれぞれ操作可能なレバー52A〜52Cが設けられている。
例えば、レバー52Aを図中矢印Sの向きに倒すとそのレバー52Aに対応した油圧ジャッキ35Aが収縮する。一方、図中矢印Lの向きに倒すと伸張する。
【0036】
操作盤51は、動力車10の運転席に設置されており、運転者が動力車10を走行させながらレバー52A〜52Cを操作することにより、油圧ジャッキ35A〜35Cをそれぞれ伸縮させることができる。
【0037】
制御器53は、レバー52A〜52Cの操作に基づいてそのレバー52A〜52Cに対応した電磁バルブ43A〜43Cを切り替える。
【0038】
次に、図8に示すように、進行方向へ貨車20A〜20Cを動力車10で押しながら走行して進行方向に向かって右側へ曲がったカーブ区間を通過する際の操舵手段30の操作方法について説明する。
【0039】
<列車1がカーブ区間に進入する場合>
列車1を走行させながら、先頭の貨車20Cがカーブ区間の入口付近に到達したら、油圧ジャッキ35Cを伸張する。油圧ジャッキ35Cを伸張すると、図9に示すように、貨車20Bに対して貨車20Cの向きが変わる。かかる際に、貨車20Cの向きがカーブの曲率に沿うように油圧ジャッキ35Cの伸縮量を調整する。
【0040】
次に、貨車20Bがカーブ区間の入口付近に到達したら、油圧ジャッキ35Bを伸張する。油圧ジャッキ35Bを伸張すると、貨車20Aに対して貨車20B及び貨車20Cの向きが変わる。かかる際に、貨車20Bの向きがカーブの曲率に沿うように油圧ジャッキ35Bの伸縮量を調整する。また、同時に、油圧ジャッキ35Cも伸縮して貨車20Cの位置を調整してもよい。
【0041】
次に、貨車20Aがカーブ区間の入口付近に到達したら、油圧ジャッキ35Aを伸張する。油圧ジャッキ35Aを伸張すると、貨車20A〜20Cの向きが変わる。かかる際に、貨車20Aの向きがカーブの曲率に沿うように油圧ジャッキ35Aの伸縮量を調整する。また、同時に、油圧ジャッキ35B及び油圧ジャッキ35Cも伸縮して貨車20B及び貨車20Cの位置を調整してもよい。
【0042】
最後に、カーブ区間の入口付近に到達する動力車10は、図10に示すように、既にカーブ区間を走行する貨車20A〜20Cに引っぱられながら向きを変えてカーブ区間に進入する。
【0043】
上述したように、油圧ジャッキ35A〜35Cを進行方向前側から後側へ順番に伸張することにより、列車1は直線区間からカーブ区間に進入することができる。
【0044】
なお、本実施形態では、各油圧ジャッキ35A〜35Cを順番に伸張する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、急カーブ区間等に進入する際は、すべての油圧ジャッキ35A〜35Cを同時に伸張してもよい。
【0045】
<列車1がカーブ区間から抜け出す場合>
列車1を走行させながら、先頭の貨車20Cがカーブ区間の出口付近に到達したら、油圧ジャッキ35Cを収縮する。油圧ジャッキ35Cを収縮すると、貨車20Bに対して貨車20Cの向きが変わる。かかる際に、貨車20Cの向きがトンネルに沿うように油圧ジャッキ35Cの伸縮量を調整する。
【0046】
次に、貨車20Bがカーブ区間の出口付近に到達したら、油圧ジャッキ35Bを収縮する。油圧ジャッキ35Bを収縮すると、貨車20Aに対して貨車20B及び貨車20Cの向きが変わる。かかる際に、貨車20Bの向きがトンネルに沿うように油圧ジャッキ35Bの伸縮量を調整する。また、同時に、油圧ジャッキ35Cも伸縮して貨車20Cの位置を調整してもよい。
【0047】
次に、貨車20Aがカーブ区間の出口付近に到達したら、油圧ジャッキ35Aを収縮する。油圧ジャッキ35Aを収縮すると、貨車20A〜20Cの向きが変わる。かかる際に、貨車20Aの向きがトンネルに沿うように油圧ジャッキ35Aの伸縮量を調整する。また、同時に、油圧ジャッキ35B及び油圧ジャッキ35Cも伸縮して貨車20B及び貨車20Cの位置を調整してもよい。
【0048】
最後に、カーブ区間の出口付近に到達する動力車10は、既に直線区間を走行する貨車20A〜20Cに引っぱられながら向きを変えてカーブ区間を抜け出す。
【0049】
上述したように、油圧ジャッキ35A〜35Cを進行方向前側から後側へ順番に収縮することにより、列車1はカーブ区間から抜け出すことができる。
【0050】
なお、本実施形態では、各油圧ジャッキ35A〜35Cを順番に収縮する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、急カーブ区間等から抜け出す際は、すべての油圧ジャッキ35A〜35Cを同時に収縮してもよい。
【0051】
なお、本実施形態においては、進行方向に向かって右側へ曲がったカーブ区間を通過する際の操舵手段30の操作方法について説明したが、左側へ曲がったカーブ区間へ進入する際は、各油圧ジャッキ35A〜35Cを収縮し、その後、このカーブ区間から抜け出す際は、各油圧ジャッキ35A〜35Cを伸張することとなる。
【0052】
次に、本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態の制御装置60は、第一実施形態の制御装置50に新たな機能を追加したものである。
【0053】
以下の説明において、第一実施形態に対応する部分には同一の符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
【0054】
図11は、本発明の第二実施形態にかかる制御装置60を動力車10に設置した状態を示す概念図である。
本図に示すように、制御装置60は、操作盤51と、位置検出器61と、CPU等の制御器63と、表示器62と、を備えている。
【0055】
位置検出器61は、シールドトンネル3内を走行する動力車10の位置情報を検出し、その結果を制御器63及び表示器62へ出力する。
【0056】
制御器63は、動力車10の走行位置及び走行速度に基づく演算を行い、その演算結果に応じて各電磁バルブ43A〜43Cを切り替える制御信号を出力する。
制御器63には、シールドトンネル3内のカーブの位置及びその曲率半径等が予め記憶されており、位置検出器61からの出力が制御器63に記憶された位置に一致したら、スピードメーターから出力された動力車10の走行速度に基づいて各電磁バルブ43A〜43Cを切り替える時間遅れを算出し、この算出された時間間隔で各電磁バルブ43A〜43Cを切り替えるための制御信号を出力する。
【0057】
表示器62には、位置検出器61から出力された動力車10の走行位置及び各電磁バルブ43A〜43Cの切り替え状態が表示され、運転手が目視することができる。
【0058】
次に、第一実施形態と同様に、貨車20A〜20Cを動力車10で押しながら走行して進行方向に向かって右側へ曲がったカーブ区間を通過する際の操作方法について説明する。
【0059】
<列車1がカーブ区間に進入する場合>
列車1を走行させながら、先頭の貨車20Cがカーブ区間の入口付近に到達したら、制御器63が、動力車10の走行位置及び走行速度に基づいて各電磁バルブ43A〜43Cを切り替える時間遅れを算出するとともに、算出された時間間隔で各電磁バルブ43A〜43Cを切り替えるための制御信号を出力する。これにより、列車1の走行にあわせて各油圧ジャッキ35A〜35Cが進行方向前側から後側へ順番に伸張し、各貨車20A〜20Cの向きが適宜、カーブの曲率に沿った状態となり、列車1は直線区間からカーブ区間に進入する。
【0060】
制御器63からの制御信号の出力は、列車1が走行中に自動的に行われるため、運転手は各油圧ジャッキ35A〜35Cの伸縮操作を行う必要がない。
なお、底盤5の凹凸等によって貨車20A〜20Cや動力車10が所望の向きに変わらない場合は、運転手が操作盤51のレバー52A〜52Cを操作して調整する。
【0061】
<列車1がカーブ区間から抜け出す場合>
列車1を走行させながら、先頭の貨車20Cがカーブ区間の出口付近に到達したら、制御器63が、カーブ区間に進入する際と同様に、動力車10の走行位置及び走行速度に基づいて各電磁バルブ43A〜43Cを切り替える時間遅れを算出するとともに、算出された時間間隔で各電磁バルブ43A〜43Cを切り替えるための制御信号を出力する。これにより、列車1の走行にあわせて各油圧ジャッキ35A〜35Cが進行方向前側から後側へ順番に収縮し、各貨車20A〜20Cの向きが適宜、トンネルに沿った状態となり、列車1はカーブ区間から抜け出す。
【0062】
なお、本実施形態においては、第一実施形態と同様に、進行方向に向かって右側へ曲がったカーブ区間を通過する際の操舵手段30の操作方法について説明したが、左側へ曲がったカーブ区間へ進入する際は、各油圧ジャッキ35A〜35Cを収縮し、その後、このカーブ区間から抜け出す際は、各油圧ジャッキ35A〜35Cを伸張することとなる。
【0063】
上述した各実施形態における列車1によれば、動力車用タイヤ14及び貨車用タイヤ24を有する動力車10及び貨車20A〜20Cを備えているので、シールドトンネル3内を無軌道方式で走行することができる。したがって、千分の五十以上の急勾配箇所も背景技術の欄に記載した補助装置無しで走行可能である。
【0064】
また、動力車10は、シールドトンネル3内での搬送に一般的に用いられている入手が容易なディーゼル機関車11やバッテリーカーに動力車用タイヤ14を取り付けるだけなので、簡単に製作することができる。
【0065】
また、動力車用タイヤ14は、車軸12に接続されているので、大きな駆動力を動力車用タイヤ14に伝達することができる。したがって、駆動力の大きい、すなわち急勾配箇所を走行可能な高トルクの動力車10を使用することができる。
【0066】
また、貨車20A〜20Cも、シールドトンネル3内での搬送に一般的に用いられている入手が容易なセグメント台車21やずり代車に貨車用タイヤ24を取り付けるだけなので、簡単に製作することができる。
【0067】
そして、動力車10と貨車20Aとの間、貨車20Aと貨車20Bとの間、貨車20Bと貨車20Cとの間に、それぞれ油圧ジャッキ35A〜35Cを備えているので、列車1を操舵することができる。
【0068】
なお、上述した各実施形態においては、進行方向へ貨車20A〜20Cを動力車10で押しながら走行させる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、動力車10が後方の貨車20A〜20Cを牽引する場合にも適用可能である。ただし、動力車10は各貨車20A〜20Cよりも重いため、動力車10で貨車20A〜20Cを牽引しながら走行する場合は、動力車10で貨車20A〜20Cを押して走行する場合と比べて、貨車20A〜20Cの向きが変化するために必要な反応時間が長くなるので、列車1の走行速度を落としたり、早めに各油圧ジャッキ35A〜35Cを操作するなどの調整が必要である。
【0069】
なお、上述した各実施形態においては、伸縮装置として油圧ジャッキ35A〜35Cを用いたが、これに限定されるものではなく、空圧式ジャッキやねじジャッキを用いてもよい。ねじジャッキを使用した場合には、手動で操作が可能なので制御装置50、60が不要となる。
【0070】
なお、上述した各実施形態においては、シールドトンネル3内で列車1を走行させた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、地上等で走行させる場合にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 列車
2 セグメント
3 シールドトンネル
4 連結手段
4a ピン
5 底盤
10 動力車
11 ディーゼル機関車
12 車軸
13 車輪
14 動力車用タイヤ
17 車輪踏面ブレーキ
20A 貨車
20B 貨車
20C 貨車
21 セグメント台車
22 車軸
23 車輪
24 貨車用タイヤ
25 カップリング
30 操舵手段
35A 油圧ジャッキ
35B 油圧ジャッキ
35C 油圧ジャッキ
40 駆動装置
41 油圧ポンプ
42 モータ
43A 電磁バルブ
43B 電磁バルブ
43C 電磁バルブ
50 制御装置
51 操作盤
52A レバー
52B レバー
52C レバー
53 制御器
60 制御装置
61 位置検出器
62 表示器
63 制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤで自走可能な動力車と、前記動力車に連結されて、タイヤで走行可能な貨車と、からなる列車であって、
前記動力車と前記貨車との連結部位から幅方向にずれた位置に設けられて一端が前記貨車に、他端が前記動力車に接続されて伸縮可能な第一の伸縮装置を備えることを特徴とする列車。
【請求項2】
複数の前記貨車が互いに連結され、前記貨車同士の連結部位から幅方向にずれた位置に設けられて一端が一方の前記貨車に、他端が他方の前記貨車に接続されて伸縮可能な第二の伸縮装置を備えることを特徴とする請求項1に記載の列車。
【請求項3】
前記第一の伸縮装置及び前記第二の伸縮装置の伸縮動作を制御するための制御装置を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の列車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−255798(P2011−255798A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132318(P2010−132318)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)