説明

制動装置

【課題】 回転体を連携した移動体が、通常の使用状態では、制動力が作用することなく、楽に移動ができ、地震や、急に押された場合などの非常時には、高速移動を防止して、安全性を確保できるようにすること。
【解決手段】 移動体の車輪100と相対回転可能な回転体6と、通常走行時には上記回転体6と車輪100とを相対回転させるロック解放状態を維持し、急加速時には回転体6と車輪100とを一体化し、これらを一体的に回転させるロック状態を維持するロック機構7,10と、上記ロック状態において回転体と車輪とが一体回転したとき、回転体を介して車輪の回転に制動力を付与する制動機構4とを備えた

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子やキャスターつきの家具などが外力によって急に高速で移動することを防止する制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地震や人に押されるなどして、キャスターを取り付けた家具やサッシ、椅子などに、予想以上の外力が作用した場合、それが高速で移動し、移動した家具などが人や壁に衝突してしまうといった危険性がある。例えば、病院のベッドなどは、通常時、患者を寝かせた状態で移動する際には、軽い力で移動できるようになっていることが望ましいが、地震などで予想外の大きな外力が作用したときに、急に高速で移動してしまうと、壁などに激突し、患者が大怪我をしてしまうことになる。また、医療機器なども、上記と同様に、通常時には軽く移動できることが望ましいが、地震などによって急に移動して壁などに激突すると、機器が破損して使用できなくなってしまう恐れがある。
その他、家庭にあるピアノや家具などの重量物が軽く移動できるようにキャスターをつけることも一般に行なわれるが、地震などによって予想外の大きな外力が作用した場合に、上記ピアノなどが急に高速で移動すると、壁との間に人が挟まれて大怪我をする事態にもなりかねない。
【0003】
さらに、地震だけでなく、キャスター付きの椅子や車椅子に人が座った状態で、何らかのアクシデントにより、これが強く押されて急に移動した場合にも、大変危険な状態となる。
このような危険を回避するために、高速回転を抑制するキャスターが知られている。
例えば、特許文献1に記載されたブレーキ機能を備えたキャスターは、常時キャスターの回転に緩やかなブレーキ力を作用させ、高速移動を抑制するものである。
また、特許文献2に記載されたキャスターは、下り坂での急降下を防止したり、ブレーキを掛けたときに、そのブレーキ作用を助けたりする機構を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−081105号公報
【特許文献2】特開平11−059113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のブレーキ機構付きキャスターは、常時ブレーキ力が作用するものであり、通常の使用状態におけるキャスターのスムーズな回転も阻害される。そのため、このようなキャスターを用いた乳母車や車椅子などを押すために、大きな力が必要になるという問題があった。また、ピアノやキャビネットなどの重量物の移動を容易にする目的でキャスターを取り付けても、上記ブレーキ機構付きキャスターでは、キャスターの回転が常時重く、期待通りの楽な移動ができないという問題があった。
また、特許文献2に記載のキャスターは、下り坂を転がり落ちることを防止できるが、水平面上での急加速には対応できないものである。
一方、急加速を検出したときに、キャスターを急停止させる構造も考えられるが、急速移動中にキャスターが急停止したのでは、乳母車や車椅子、ベッドなどに載っている人が、飛び出してしまう危険もある。
【0006】
この発明の目的は、車輪を連携した移動体が、通常の使用状態では、制動力が作用することなく、楽に移動ができ、地震や、急に押された場合などの非常時には、車輪の回転に対して制動力を付与することで急な高速移動や急停止を防止して、安全性を確保できる制動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、移動体の車輪と相対回転可能な回転体と、通常走行時には上記回転体と車輪とを相対回転させるロック解放状態を維持し、急加速時には回転体と車輪とを一体化し、これらを一体的に回転させるロック状態を維持するロック機構と、上記ロック状態において回転体と車輪とが一体回転したとき、回転体を介して車輪の回転に制動力を付与する制動機構とを備えた点を特徴とする。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明の制動機構に、移動体側に固定するとともに上記回転体と相対回転する制動部材を設け、この制動部材と回転体との間に粘性流体を介在させ、この粘性流体の粘性抵抗で回転体に制動力を付与する構成にした点を特徴とする。
【0009】
第3の発明は、上記第1の発明の制動機構に、移動体側に固定するとともに上記回転体と相対回転する制動部材を設け、この制動部材と回転体との接触部分の摩擦力で回転体に制動力を付与する構成にした点を特徴とする。
【0010】
第4の発明は、上記第1の発明の制動機構に、移動体側に固定した制動部材と、上記回転体とともに回転し、かつ上記制動部材と相対回転する伝達部材とを設け、この伝達部材と上記制動部材との間に粘性流体を介在させ、この粘性流体の粘性抵抗で回転体に上記制動力を付与する構成にした点を特徴とする。
【0011】
第5の発明は、上記第1の発明の制動機構に、移動体側に固定した制動部材と、上記回転体とともに回転し、かつ上記制動部材と相対回転する伝達部材とを設け、この伝達部材と上記制動部材との接触部分の摩擦力で回転体に制動力を付与する構成にした点を特徴をとする。
なお、上記第4、第5の発明における「回転体とともに回転し、かつ上記制動部材と相対回転する伝達部材」の回転は、上記回転体と同方向回転であっても逆回転であってもかまわない。要するに、上記伝達部材は回転体の回転力が伝達されることによって回転する部材であればよく、上記回転力の伝達機構も特に限定しないものとする。
【0012】
第6の発明は、上記第2〜第5の発明を前提とし、上記移動体側に設けるとともに車輪の軸を支持する支持部材に制動機構を着脱自在に設け、この制動機構は、上記支持部材の側面に設けた筒状のケーシングからなる制動部材と、この制動部材内に相対回転可能に設けた上記伝達部材と、この伝達部材に上記回転体の回転を伝達する回転伝達部材とを備えた点を特徴とする。
【0013】
第7の発明は、上記ロック機構が、上記車輪と相対回転可能にするとともに上記回転体との相対回転を規制されたロック部材と、このロック部材と上記車輪とが相まって車輪に摺接可能に保持されるコマ部材と、ロック部材に設けるとともにコマ部材の移動を規制する制動部とを備え、この制動部は、上記車輪が水平面に沿っていずれか一方へ移動する際の回転方向後方あるいは前方においてコマ部材を自由移動可能にする幅広部と、回転方向前方あるいは後方においてコマ部材を回転体に圧接させる幅狭部とを備えるとともに、上記制動部を上記幅広部から上記幅狭部に向かう楔状にするとともに、上記幅広部を上記幅狭部よりも下方に位置させてなり、急加速時には、上記コマ部材が上記制動部の幅狭部に嵌って上記ロック部材と車輪とを一体化し、このロック部材を介して上記回転体と車輪とを一体化する上記ロック状態を維持する構成にした点を特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1〜第7の発明によれば、大きな外力が作用しない通常時には、ロック機構がロック開放状態を維持し、回転体と車輪とが相対回転し、車輪には制動力が作用せず、移動体のスムーズな移動が可能である。
一方、急加速時には、ロック機構が、回転体と車輪とが一体化して一体的に回転させるロック状態を維持し、制動機構が、回転する回転体を介して車輪の回転に制動力を付与するので、移動体の急加速移動を防止できる。
しかも、回転体とともに車輪が回転している状態で制動力が付与されるので、移動体が急停止することもなく、急停止した移動体から人やものが飛び出してしまうことも防止できる。
【0015】
第2、第4の発明では、制動力として粘性流体の粘性抵抗を利用するようにしたので、流体の選定によって様々な制動力を設定できる。
第3、第5の発明では、制動力として接触部分の摩擦力を利用するようにしたので、例えば、流体を用いる場合のようにシールが必要なく、構造を単純化できる。
【0016】
第6の発明は、制動機構を、車輪の支持部材に対して着脱自在にしたので、制動機構の交換が容易にできる。例えば、制動機構が破損した場合や制動力を変更したい場合には、制動機構だけを取り替えることで対応できる。
【0017】
第7の発明では、急加速時には制動部がコマ部材を車輪に圧接させることによって車輪とロック部材とが一体化し、さらにロック部材に連携した回転体と車輪とが一体化され、回転体を介して車輪に制動力が作用するので、回転体の急回転を停止させることができ、回転体に連結した移動体の急な高速移動を防止できる。
また、ロック機構が、急加速を機械的に検出する構造なので、例えば、急加速を電気的に検出するものと比べて信頼性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態の斜視図である。
【図2】図1のII-II線断面図である。
【図3】図1のIII-III線断面図である。
【図4】図3の部分拡大図である。
【図5】第1実施形態の連結部材及びカバーをはずした状態の正面図である。
【図6】第2実施形態の斜視図である。
【図7】図6のVII-VII線断面図である。
【図8】図7のVIII-VIII線断面図である。
【図9】第2実施形態の連結部材及びカバーをはずした状態を示す正面図である。
【図10】第3実施形態の斜視図である。
【図11】図10のXI-XI線断面図である。
【図12】図10のXII-XII線断面図である。
【図13】第3実施形態の連結部材及びカバーをはずした状態を示す正面図である。
【図14】第3実施形態のロック機構のロック状態を示す図である。
【図15】第4実施形態の斜視図である。
【図16】図15のXVI-XVI線断面図である。
【図17】第4実施形態の連結部材及びカバーをはずした状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1〜図5に、この発明の第1実施形態を示す。
この第1実施形態の制動装置は、例えば、家具などの底面に取り付けるキャスターとして用いるものであるが、地震などによって急に高速で移動することを防止できる装置である。
この第1実施形態の制動装置は、図1に示すように、回転軸1にキャスターを構成する車輪100を取り付けている。車輪100にはこの発明のロック機構及び制動機構を設けているが、これらロック機構及び制動機構については後で詳細に説明する。
【0020】
上記車輪100には車輪100と同心の円形凹部100aを形成するとともに、その開口側表面に円形穴を有するドーナツ状のカバー2を固定している。
また、上記回転軸1には車輪100と相対回転可能にした連結部材3を取り付けている。この連結部材3は、所定の間隔を保って対向する一対の連結片3a,3bと、これらの間に渡した固定面3cとからなる。そして、上記連結片3a,3bを車輪100の両面を挟むように配置して回転軸1を支持するとともに、上方の固定面3cを家具などの移動体側に固定する。
【0021】
さらに、上記連結片3aの内側には、上記車輪100と同心のドーナツ状の制動部材4を止めビス5によって固定している。
図2、図3は図1の断面図、図4は図3の部分拡大図であり、図5は、上記車輪100の内部を説明するために、上記カバー2、上記連結部材3及び制動部材4をはずした状態を示した図である。
そして、上記制動部材4は、車輪100と対向する側面の中心穴4aの近くを、後で説明する回転体6とかみ合う形状にしている。具体的には、図4に示すように中心穴4a側から外周へ向かって、環状のシール保持段部4b、環状凸部4c、環状のシール溝4d、環状凹部4eを備えている。
【0022】
一方、回転体6は、回転軸1に回転可能に取り付けられた円盤状の部材で、その外周付近に、上記制動部材4とかみ合う凹凸を形成している。具体的には、回転体6の外周側から、上記制動部材4の環状凹部4eに一致する環状凸部6a、上記制動部材4の環状凸部4cが嵌る環状凹部6b及びシール保持段部6cを形成している。
そして、上記制動部材4の凹凸と回転体6の凹凸とをはめ合わせている。このとき、上記制動部材4のシール保持段部4bと回転体6のシール保持段部6cとが相まって形成する空間とに、それぞれシール部材101,101を設けるとともに、これらシール部材101,101間であって、上記制動部材4の環状凸部4cと回転体6の環状凹部6bとの間には粘性流体を充填している。
【0023】
上記のように、連結部材3に固定した制動部材4に組みつけられた回転体6は、通常時には回転せず、制動部材4と一体化している。このとき、後で説明するロック機構が、上記回転体6と車輪100とが相対回転可能にするロック開放状態を維持していることになる。
しかし、ロック機構がロック状態を維持して回転体6と車輪100とが一体回転した場合には、回転体6と上記制動部材4とが相対回転し、この相対回転時には、上記制動部材4と回転体6との間に充填した粘性流体の粘性抵抗が回転体6に制動力を付与する。
【0024】
このように、ロック状態で、回転体6と車輪100とが一体回転しているときには、回転体6に付与された制動力が回転体6を介して車輪100に付与されることになるので車輪100は高速回転せず、結果としてこの車輪100を取り付けた移動体も高速移動はしない。つまり、この第1実施形態では、上記制動部材4及び粘性流体が、回転体6を介して車輪100の回転に制動力を付与する制動機構を構成している。
なお、図3,図5中の符号6dは、上記回転体6に形成し、回転体6と同心の円弧状の長穴6dであり、この長穴6dには後で説明するロック部材7に固定した規制ピン11を挿入する。
【0025】
次に、通常走行時には、上記回転体6と車輪100とを相対回転させるが、急加速時には回転体6と車輪100とを一体化するロック機構について説明する。
図2,図3,図5に示すように、車輪100には同心の円形凹部100aを形成し、この円形凹部100a内に板状のロック部材7を設けている。
このロック部材7は扇型の板状部材であり、通常は図5に示す状態を維持し、外力が作用した場合には、ロック部材7を重りとする振り子運動をする。
【0026】
また、上記ロック部材7は、上記扇型の円弧を上記円形凹部100aの内側面100bに対向させるとともに、円周方向両端付近に、それぞれ制動溝8,9を備え、各制動溝8,9にころ10,10を収容している。これら制動溝8,9は、上記ロック部材7の円弧部の円周方向外側を、上記内側面100bからの距離が上記ころ10の外径よりわずかに小さい幅狭部8b,9bとし、反対側を、上記内側面100bからの距離が上記ころ10の外径よりも大きい幅広部8a,9aとし、ロック部材7が自重で下がっている図5の自然状態では、上記幅広部8a,9aが上記幅狭部8b,9bよりも下方に位置するように構成している。この状態では、ころ10が幅広部8a,9a内で自由移動可能であり、ロック部材7と車輪100との相対回転はスムーズに行なわれる。
【0027】
さらに、このロック部材7の側面には規制ピン11を起立させて固定し、この規制ピン11を上記回転体6の長穴6dに挿入している。従って、この規制ピン11は上記長穴6dの範囲で移動可能で、この範囲でロック部材7と回転体6との相対回転は可能である。言い換えれば、規制ピン11が上記長穴6dの端部に達した時点で、ロック部材7と回転体6とは相対回転が規制され、一体的に回転することになる。つまり、上記規制ピン11及び上記長穴6dとが回転体6とロック部材7との相対回転を規制する手段となる。
【0028】
そして、上記ころ10が上記制動溝8,9の幅広部8a,9a側に位置しているときには、上記ころ10は自由移動可能であり、車輪100とロック部材7との相対回転を妨げることはない。従って、車輪100が回転しても、ロック部材7は図5の状態を維持している。
しかし、上記ころ10が幅狭部8b,9bに入り込んだときには、車輪100の内側面100bに圧接して車輪100とロック部材7とが一体化されることになる。
このように、上記車輪100とロック部材7とが一体化した状態で車輪100が回転し、上記規制ピン11が上記長穴6dの端部に当接すれば、回転体6が車輪100と一体的に回転するロック状態となる。すなわち、この第1実施形態では、上記ロック部材7、制動溝8,9、ころ10及び規制ピン11によってこの発明のロック機構を構成している。
【0029】
次に、この第1実施形態のロック機構において、大きな外力が作用する非常時に、ころ10が上記制動溝8,9の幅狭部8b,9bに入り込んで、楔効果により車輪100とロック部材7とを一体化するメカニズムを説明する。
例えば、車輪100が図5の矢印A方向に移動するとき、車輪100は矢印α方向に回転する。
なお、上記矢印αで示す車輪100の回転方向とは、車輪100が水平の平面S上を転がりながら全体として矢印Aへ移動する際の、車輪100の中心を除く任意の点の、中心Oに対する移動方向のことであり、ここでは反時計回りである。従って、この矢印αは、中心Oを中心とする円周を描くものであるが、図では矢印αの一部のみを記載している。このことは、以下の実施形態においても同様である。
【0030】
上記のように車輪100がころがりながら、矢印A方向へ移動するとき、その移動が等速運動なら、回転軸1に揺動可能に取り付けられているロック部材7には、水平方向の外力が作用しない。そのため、ロック部材7は揺動せず、図5に示す状態を保つ。
車輪100が、停止状態から発進する際には加速度を生じるため、ロック部材7の中心には、上記加速度に相当する外力が作用することになるが、その大きさが小さければ、ロック部材7の揺れも小さく、すぐに減衰して図示の状態を保つことになる。つまり、車輪100の加速度がそれほど大きくならない通常走行時には、上記ころ10は、制動溝8,9の上記幅広部8a,9a側に留まり、ロック部材7と車輪100との相対回転を阻害することはない。
【0031】
これに対し、急加速する非常時では、大きな外力が作用し、上記ロック部材7、及びころ10,10は、それぞれ慣性によって、上記矢印Aとは反対方向である矢印B方向に振れる。この振れは、ロック部材7を、上記車輪100と同様の回転方向である矢印αで示す反時計回りに回転させることになる。
上記のように矢印A方向の急加速度が発生したとき、ロック部材7は上記回転軸1の中心Oを定点とする扇型の剛体振り子として運動し、上記ころ10,10は、上記円形凹部100aの半径を振り子の長さとする単振り子として運動する。
【0032】
つまり、急加速度を発生する外力に基づいて、上記両振り子は同じ方向に振れ始める。しかし、上記両振り子の重心位置は異なるため、両者の周期には差ができるはずである。具体的には、ロック部材7による剛体振り子の方が、ころ10による単振り子よりも、中心Oから重心までの距離が短いため、ころ10よりも周期が短く、より早く回転方向を変えるものと考えられる。そのため、最大振幅近傍では、上記ロック部材7に比べて、ころ10の方が矢印α方向の回転速度が大きくなり、上記矢印α方向前方側の制動溝8内では、ころ10が制動溝8に対して前方である幅狭部8b側へ移動して幅狭部8bへ入り込む。このようにして、急加速発生の非常時には、上記ころ10がロック部材7の制動溝8内で、上記幅広部8aから幅狭部8bへ移動し、楔効果によって車輪100とロック部材7とを一体化する。
【0033】
この第1実施形態では、車輪100が矢印α方向である反時計回りに回転する場合には、その回転方向前方の制動溝8が、この発明の制動部であり、回転方向後方に幅広部8a、回転方向前方に幅狭部8bを備えている。また、車輪100が、上記矢印αとは反対方向である時計回りに回転する場合には、その回転方向前方となる制動溝9がこの発明の制動部となる。
【0034】
上記のように非常時には、ロック部材7と車輪100とが一体となって上記中心O周りに回転するが、上記ロック部材7に固定された規制ピン11が上記回転体6に形成された長穴6dの端部に当接したときに、ロック部材7と回転体6とが一体回転を始め、結果的に車輪100と回転体6とが一体的に回転するロック状態となる。このように、車輪100と回転体6とが一体的に回転すれば、回転体6と制動部材4とは相対回転するが、その際には、上記粘性流体による制動力が、回転体6を介して車輪100に作用して車輪100の回転を緩やかにする。
従って、この第1実施形態において、通常走行時には、車輪100のスムーズな回転を維持しながら、車輪100を取り付けた移動体が地震などの外力によって予期しない高速で移動してしまう危険を防止できる。しかも、上記制動機構は車輪100を回転させながら制動力を発揮する構成なので、車輪100を急停止させることがなく、急停止による危険も排除できる。
【0035】
なお、どのくらいの大きさの外力が作用したときに、非常時として車輪100と回転体6とを一体回転させるロック状態とするかは、この装置の利用態様によって決めることができる。具体的には、上記ロック部材7の振幅がどのくらいになったときに、車輪100にころ10を圧接させるかということであり、上記中心Oを通る鉛直線Nと制動溝8,9との距離や、ロック部材7の重心位置を調整することなどによって任意に設計可能である。
【0036】
なお、この第1実施形態において、コマ部材としてころ10を用いているが、コマ部材は非常時に回転体6の内側面100bに沿って上方へ跳ね上がり、制動溝8の幅狭部8bに入り込む部材ならば、どのようなものでもかまわないし、コマ部材が上記内側面100bに沿って転動する必要もない。
さらに、上記ロック状態を維持しているときに、車輪100に対して付与する制動力の大きさは、上記粘性流体の粘度、粘性流体の量などで、調整可能である。
【0037】
図6〜図9は、車輪100の軸である回転軸1を支持するこの発明の支持部材である上記連結部材3に、制動機構を着脱自在に設けた第2実施形態である。
なお、この第2実施形態において、上記第1実施形態と同じ符号をつけた構成要素は、第1実施形態と同じ機能を有する要素である。
この第2実施形態も、連結部材3の一対の連結片3a,3bで支持した回転軸1に車輪100を設けている。そして、車輪100に形成した円形凹部100a内にロック部材7及びころ10を設けている。このロック部材7は、第1実施形態のロック部材7と同じ形状の部材であり、急加速時に車輪100とロック部材7とが一体化する機構は上記した第1実施形態と同じである。
【0038】
以下には上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
この第2実施形態では、上記回転軸1に回転体12を回転可能に設けている。この回転体12は円盤状の部材であり、その外周にギア12aを形成している。
また、この回転体12には上記ロック部材7に固定した規制ピン11を挿入する長穴12bを設けている。従って、上記回転体12は上記規制ピン11が長穴12bの端部に当接しない範囲で、ロック部材7と相対回転可能であるが、ロック部材7と回転体12とが相対回転する過程で、上記規制ピン11が長穴12bの端部に当接した時点で、相対回転が規制され両者が一体回転する。
【0039】
一方、連結部材3の一方の連結片3aに制動機構を設けている。
この制動機構は、ケーシング13とこのケーシング13内に回転自在に挿入した伝達部材14と、ケーシング13の開口をふさぐキャップ15とを備え、これらケーシング13と伝達部材14の外周との間には粘性流体を充填している。
なお、上記伝達部材14は、回転体12とともに回転し、かつ上記制動部材と相対回転するこの発明の伝達部材であり、ケーシング13の内周に沿って回転する制動部14aと、軸部14bとからなる。制動部14aは、図7,図8に示すようにその外周にケーシング13に充填した粘性流体の液溜め部となる一対の切り欠14c,14cを形成している。また、上記制動部14aの内部には、図8に示すように、伝達部材14を軽量化するとともに、粘性流体を充填したケーシング13に伝達部材14を挿入する工程において流体の逃げ場となる複数の軸方向穴14dを形成している。
【0040】
さらに、軸部14bを上記キャップ15から突出させ、その突出部分の外周には、上記回転体12に設けたギヤ12aとかみ合うギア16aを有するギア部材16を取り付けている。
なお、図7中の符号18はワッシャーであり、キャップ15とともにシール部材101を支持している。
このようにした上記伝達部材14がケーシング13に対して回転したとき、上記粘性流体の粘性抵抗によって伝達部材14の回転に制動力が付与される。
【0041】
さらに、ケーシング13には一対の取り付け部13a,13aを設け、この取り付け部13a,13aを止めビス17,17によって連結片3aに着脱自在に固定しているが、ケーシング13を取り付けるとき、上記ギア部材16のギア16aが上記回転体12のギア12aにかみ合うようにする。
なお、上記連結片3aには、上記ギア部材16を貫通し、ギア部16aに接触しない大きさの穴が形成されている。
【0042】
以下に、この第2実施形態の制動装置の作用を説明する。
この第2実施形態の制動装置においても、急加速度が生じない移動体の通常走行時には、上記ロック部材7は大きく振れることが無く、ほぼ図9のように下方に下がった状態を維持する。そのため、ころ10,10が制動溝8,9の下方の幅広部8a,9a内にとどまり、車輪100が回転すると、ころ10,10が上記円形凹部100aの内側面100bに沿って転動し、車輪100は制動力を受けずにロック部材7に対して相対回転する。
このようにロック部材7が回転しなければ、回転体12も回転しない、すなわち、回転体12と車輪100とが相対回転するロック開放状態が維持される。
【0043】
これに対し、車輪100の急加速時には、上記第1実施形態と同様に上記ロック部材7及びころ10,10が振れて、幅狭部8b,9bに嵌ったころ10,10がロック部材7と車輪100とを一体化する。ロック部材7が車輪100と一体化して回転すれば、ロック部材7に固定した規制ピン11が回転体12の長穴12bの端部に当接し、回転体12と車輪100とを一体回転させるロック状態を維持する。
このロック状態では、回転体12が回転軸1を中心に回転するので、その回転力がギア12aにかみ合ったギア16aを介して伝達部材14に伝達される。つまり、この第2実施形態では、上記ギア部材16が、筒状のケーシングからなる制動部材内に相対回転可能に設けた上記伝達部材に回転体12の回転を伝達するこの発明の回転伝達部材である。
【0044】
伝達部材14が回転すれば、上記粘性流体の粘性抵抗により制動部14aに制動力が付与され、この制動力が軸部14b、ギア部材16及びギア12aを介して回転体12へ伝達されるので、この回転体12と一体回転する車輪100に制動力が付与されることになる。
この第2実施形態では、上記ケーシング13が、移動体側に固定するとともに回転体12と相対回転するこの発明の制動部材を構成し、上記伝達部材14が、回転体12とともに回転し、かつ上記制動部材であるケーシング13と相対回転するこの発明の伝達部材を構成している。
【0045】
以上のように、この第2実施形態においても、通常走行時には、車輪100に制動力が付与されることはなく、スムーズな移動が保たれるとともに、急加速時には、上記粘性流体による制動力が、伝達部材14及び回転体12を介して車輪100に作用して車輪100の回転を緩やかにする。
従って、車輪100を取り付けた移動体が地震などの外力によって予期しない高速で移動してしまう危険を防止できる。しかも、上記制動機構は車輪100を回転させながら制動力を発揮する構成なので、車輪100を急停止させることがなく、急停止による危険も排除できる。
【0046】
また、この第2実施形態では、制動機構を構成する部材をケーシング13に組み込んで、連結部材3の連結片3aに止めビス17によって着脱自在に取り付けているため、上記ケーシング13を取り外すことによって制動機構を簡単に取り替えることができる。例えば、制動機構が破損した場合や、制動力を調整したい場合などに有利である。
制動力の調整は、上記ケーシング13に充填する粘性流体の粘度変更のほか、回転体14の制動部14aとケーシング13の内壁との対向面積の変更などによっても可能である。従って、この第2実施形態のように、制動機構を取り替えることができれば、制動力の調整が容易にできる。
【0047】
図10〜図14に示す第3実施形態は、ロック部材19の形状が上記第1実施形態のロック部材7と異なるが、その他の構成は、上記第1実施形態と同じである。
この第3実施形態でも、車輪100には車輪100と同心の円形凹部100aを形成し、この円形凹部100a内に板状のロック部材19を設けている。このロック部材19は、上下それぞれに、扇型部19a,19bを備え、その中心を上記回転軸1の中心Oと一致させて回転自在に取り付けている。さらに、回転軸1には、回転体6を回転可能に取り付けている。
【0048】
また、上記ロック部材19は、図13において上記回転軸1より上側の扇型部19aを、下側の扇型部19bよりも小さくするとともに、上側の扇型部19aにはくりぬき穴19cを形成して重量を軽減している。そのため、ロック部材19は下側の扇型部19bが重り部となって、外力が作用しない状態では、図13に示す状態を維持するが、水平方向の外力が作用したとき、下側の扇型部19bを重りとする振り子として上記中心Oを中心に揺動する。
【0049】
さらに、上記上側の扇型部19aには、その円周方向両端付近に、一対の制動溝8,9を形成し、これら制動溝8,9内には、この発明のコマ部材であるころ10,10を収容している。
上記制動溝8,9は、上記円形凹部100aの内側面100bに対向する側を開放するとともに、上記内側面100bまでの距離をころ10の外径よりも大きくした幅広部8a,9aと、ころ10の外径よりわずかに小さくした幅狭部8b,9bとを備えた楔状部を備え、上記幅広部8a,9aを、幅狭部8b,9bよりも下方に位置させている。従って、外力が作用しない通常走行時には、各ころ10,10は自重によって下方の幅広部8a,9aに位置し、上記車輪100の内側面100bにはほとんど接触せず、ロック部材19と車輪100との相対回転を阻害することはない。
このとき、車輪100の回転力は回転体6には伝達されないので、回転体6は回転せず、回転体6と車輪100とが相対回転するロック開放状態が維持される。
【0050】
また、ロック部材19の下側の扇型部19bには、規制ピン11を固定し、この規制ピン11を回転体6に形成した円弧状の長穴6dに挿入している。この規制ピン11は、ロック部材19が揺動したとき、上記長穴6d内をその円弧に沿って移動するが、制御ピン11が長穴6dの端部に当接したとき、上記ロック部材19と回転体6との相対回転が規制される。言い換えれば、上記制御ピン11を介して、ロック部材19と回転体6とが一体化する。
【0051】
このような制動装置において所定以上の加速度が発生するとロック部材19が大きく揺動し、制動溝8あるいは9内のころ10が上記幅狭部8bあるいは9bへ押しこまれてロック部材19と車輪100とを一体化する。さらに車輪100と一体化したロック部材19が上記規制ピン11を介して回転体6と一体化されるため、車輪100と回転体6とが一体化される。
このように、この第3実施形態でも、車輪100の急加速時には、回転体6と車輪100とが一体回転するロック状態となるが、そのメカニズムは以下のように考えられる。
【0052】
ここでは、車輪100が、図13に示す平面S上を矢印A方向へ移動する場合について説明する。
上記車輪100は、平面S上を矢印A方向へ移動するとき、車輪100は矢印α方向に回転する。
上記のように車輪100がころがりながら、矢印A方向へ移動するとき、その移動が等速運動なら、回転軸1に揺動可能に取り付けられているロック部材19には、水平方向の外力が作用しない。そのため、ロック部材19は揺動せず、図13に示す状態を保つ。
【0053】
車輪100が、停止状態から発進する際には加速度を生じるため、ロック部材19の中心には、上記加速度に相当する外力が作用することになるが、その大きさが小さければ、ロック部材19の揺れも小さく、すぐに減衰して図示の状態を保つことになる。つまり、車輪100及び回転体6の加速度がそれほど大きくならない通常走行時には、上記ころ10は、制動溝8,9の上記幅広部8a,9a側に留まり、ロック部材19と車輪100との相対回転を阻害することはない。
【0054】
これに対し、車輪100が急加速する非常時では、ロック部材19の振れが大きくなり、ロック部材19は、図13の状態から矢印α方向へ回転して図14に示す状態になる。
なお、この図14は、ロック部材19の作用を分かり易くするために、図13から回転体6を取り除いた図である。そして、図14中には、二点鎖線で上記回転体6に形成した長穴6dを示している。
【0055】
上記のように、急加速時にロック部材19が振れれば、各制動溝8、9に収容されたころ10,10もロック部材19とともに移動する。上記ロック部材19が中心Oを中心に矢印α方向へ回転して、図14に示すように、一対の制動溝8,9のうち、回転方向(矢印α方向)後方の制動溝8が鉛直線Nを超えると、上記幅広部8aが幅狭部8bよりも上方に位置する。このように上記幅広部8aが幅狭部8bよりも上方に位置すると、この幅広部8a内のころ10が自重で、二点鎖線の位置から幅狭部8b側の実線で示す位置へ移動する。このように、幅狭部8b側へ移動したころ10は、回転体6の内側面100bに接触する。このとき、ころ10は回転体6の矢印α方向の回転力を受けて、自転してさらに幅狭部8b内に押し込まれることになる。
【0056】
上記ころ10が幅狭部8b内に押し込まれると、ころ10が回転体6に圧接し、楔効果によってロック部材19と車輪100とを一体化する。
つまり、図14において上方の制動溝8が、この発明におけるコマ部材を移動自由にする幅広部8aと、コマ部材を回転体に圧接させる幅狭部8bとを備えた制動部である。
このように上記車輪100とロック部材19とが一体化した状態で、上記ロック部材19に固定された規制ピン11が回転体6の長穴6dの端部に当接するので、この規制ピン11を介して回転体6と車輪100とが一体回転するロック状態となる。
この第3実施形態では、上記制動溝8と、コマ部材であるころ10と、上記ロック部材19と、規制ピン11と、長穴6dとでこの発明のロック機構を構成している。
【0057】
上記ロック状態になって車輪100と回転体6とが一体回転すれば、上記第1実施形態と同様に、回転体6と制動部材4とのかみ合わせ部間に介在させた粘性流体の粘性抵抗が回転体6の回転に制動力を付与する。そして、この制動力が、回転体6及びロック部材19を介して車輪100に付与されるので、車輪100の高速回転を防止できる。
そのため、この第3実施形態においても、通常走行時には、車輪100に制動力が付与されることはなく、スムーズな移動が保たれるとともに、急加速時には、上記粘性流体による制動力が、回転体6及びロック部材19を介して車輪100に作用して車輪100の回転を緩やかにする。
従って、車輪100を取り付けた移動体が地震などの外力によって予期しない高速で移動してしまう危険を防止できる。しかも、上記制動機構は車輪100を回転させながら制動力を発揮する構成なので、車輪100を急停止させることがなく、急停止による危険も排除できる。
【0058】
また、この第3実施形態のロック機構においても、どのくらいの大きさの外力が作用したときに、非常時として回転体6と車輪100とを一体回転させるかは、この装置の利用態様によって決めることができる。具体的には、上記ロック部材19の振幅がどのくらいになったときに、車輪100の内側面100bにころ10を圧接させるかということであり、図13に示す自然状態における上記中心Oを通る鉛直線Nと制動溝8,9との距離や、ロック部材19の重心位置を調整することなどによって任意に設計可能である。
【0059】
なお、上記回転体6が、図13の矢印Aと反対方向に移動する場合には、上記矢印αと反対方向である時計回りの回転方向後方における制動溝9がこの発明の制動部となり、上記制動溝8と同様に機能する。
【0060】
図15〜図17に示す第4実施形態は、第2実施形態と同様に、連結片3aに制動機構を取り付けた制動装置であるが、上記第3実施形態と同様のロック部材19を車輪100に形成した円形凹部100a内に設けている点が第2実施形態と異なる。
すなわち第2実施形態と同様の制動機構と、第3実施形態と同様のロック機構とを備えた装置である。
そして、上記他の実施形態と同様の構成要素には、同じ符号を用いるとともに、ここでは各要素の詳細な説明は省略する。
なお、図17は、連結部材3及びカバー2を取り外した状態を示した正面図である。
【0061】
以下に、この第4実施形態の制動装置の作用を説明する。
車輪100に大きな外力が作用しない通常走行時には、ロック部材19がほとんど揺動しないので、図17に示すように、制動溝8,9内に収容されたころ10,10が、幅広部8a,9a側に位置する。そのため、車輪100は、ロック部材19と相対回転する。また、回転体12には、車輪100の回転が伝達されないので、回転体12は回転せず、回転体12と車輪100とが相対回転するロック開放状態を維持し、車輪100のスムーズな移動が可能である。
【0062】
一方、地震などによる急加速時には、ロック部材19が回転し、第3実施形態と同様に図14に示す状態となり制動溝8あるいは9に保持されたころ10が幅狭部8bあるいは9bに嵌って、車輪100とロック部材19とを一体化する。車輪100とロック部材19とが一体化して回転すれば、規制ピン11を介して、ロック部材19と回転体12とが一体化され、その結果、回転体12と車輪100とが一体回転するロック状態を維持する。
【0063】
上記ロック状態になれば、回転体12が回転するので、その回転力をギア12a及びギア16aを介してギア部材16に伝達する。その結果、回転伝達部材であるギア部材16を取り付けた伝達部材14が、この発明の制動部材であるケーシング13と相対回転する。従って、ケーシング13と伝達部材14の制動部14a間に充填された粘性流体の粘性抵抗によって伝達部材14に制動力が作用する。この制動力は、ギア部材16、回転体12及びロック部材19を介して車輪100に付与される。
【0064】
このように、この第4実施形態においても、通常走行時には、車輪100のスムーズな回転を維持しながら、車輪100を取り付けた移動体が地震などの外力によって予期しない高速で移動してしまう危険を防止できる。しかも、上記制動機構は車輪100を回転させながら制動力を発揮する構成なので、車輪100を急停止させることがなく、急停止による危険も排除できる。
さらに、この第4実施形態も、上記ケーシング13を止めビス17によって着脱自在にしているので、制動機構の取り替えが容易で、制動力の調整も簡単にできる。
【0065】
なお、上記第1〜第4実施形態の制動機構は、粘性流体の粘性抵抗を利用して制動力を付与するようにしているが、粘性流体を用いないで、制動部材と回転体あるいは伝達部材とを接触させて、この接触面間の摩擦抵抗を制動力として利用するようにしてもよい。
また、上記第1、第3実施形態では、回転体6と制動部材4とを直接対向させているが、回転体6とともに回転し、かつ上記制動部材4と相対回転する伝達部材を設け、この伝達部材と制動部材とを対向させ、その間で制動力を発生させるようにしてもよい。
さらに、上記制動機構としての具体的構成は上記実施形態に限らず、公知の無限角ダンパ装置や、トルクリミッタ等で利用される種々の構成を利用できる。
特に、上記第2、第4実施形態のように連結部材の外方に制動機構を取り付ける場合には、制動機構として採用可能な構成はより様々なものとなり、これらを取り替えて利用することもできる。
【符号の説明】
【0066】
100 車輪
1 回転軸
3 連結部材
3a,3b 連結片
4 制動部材
6 回転体
6d 長穴
7 ロック部材
8,9 制動溝
8a,9a 幅広部
8b,9b 幅狭部
10 ころ
11 規制ピン
12 回転体
12a ギア
12b 長穴
13 ケーシング
14 伝達部材
14a 制動部
14b 軸部
16 ギア部材
16a ギア
17 止めビス
19 ロック部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の車輪と相対回転可能な回転体と、通常走行時には上記回転体と車輪とを相対回転させるロック解放状態を維持し、急加速時には回転体と車輪とを一体化し、これらを一体的に回転させるロック状態を維持するロック機構と、上記ロック状態において回転体と車輪とが一体回転したとき、回転体を介して車輪の回転に制動力を付与する制動機構とを備えた制動装置。
【請求項2】
上記制動機構には、移動体側に固定するとともに上記回転体と相対回転する制動部材を設け、この制動部材と回転体との間に粘性流体を介在させ、この粘性流体の粘性抵抗で回転体に制動力を付与する構成にした請求項1に記載の制動装置。
【請求項3】
上記制動機構には、移動体側に固定するとともに上記回転体と相対回転する制動部材を設け、この制動部材と回転体との接触部分の摩擦力で回転体に制動力を付与する構成にした請求項1に記載の制動装置。
【請求項4】
上記制動機構には、移動体側に固定した制動部材と、上記回転体とともに回転し、かつ上記制動部材と相対回転する伝達部材とを設け、この伝達部材と上記制動部材との間に粘性流体を介在させ、この粘性流体の粘性抵抗で回転体に上記制動力を付与する構成にした請求項1に記載の制動装置。
【請求項5】
上記制動機構には、移動体側に固定した制動部材と、上記回転体とともに回転し、かつ上記制動部材と相対回転する伝達部材とを設け、この伝達部材と上記制動部材との接触部分の摩擦力で回転体に制動力を付与する構成にした請求項1に記載の制動装置。
【請求項6】
移動体側に設けるとともに車輪の軸を支持する支持部材に制動機構を着脱自在に設け、この制動機構は、上記支持部材の側面に設けた筒状のケーシングからなる制動部材と、この制動部材内に相対回転可能に設けた上記伝達部材と、この伝達部材に上記回転体の回転を伝達する回転伝達部材とを備えた請求項2〜5に記載の制動装置。
【請求項7】
上記ロック機構は、上記車輪と相対回転可能にするとともに上記回転体との相対回転を規制されたロック部材と、このロック部材と上記車輪とが相まって車輪に摺接可能に保持されるコマ部材と、ロック部材に設けるとともにコマ部材の移動を規制する制動部とを備え、この制動部は、上記車輪が水平面に沿っていずれか一方へ移動する際の回転方向後方あるいは前方においてコマ部材を自由移動可能にする幅広部と、回転方向前方あるいは後方においてコマ部材を回転体に圧接させる幅狭部とを備えるとともに、上記制動部を上記幅広部から上記幅狭部に向かう楔状にするとともに、上記幅広部を上記幅狭部よりも下方に位置させてなり、急加速時には、上記コマ部材が上記制動部の幅狭部に嵌って上記ロック部材と車輪とを一体化し、このロック部材を介して上記回転体と車輪とを一体化する上記ロック状態を維持する構成にした請求項1〜6のいずれか1に記載の制動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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