説明

制御された炎症のための(−)−ヒドロキシクエン酸

本発明は、炎症を減少させ、かつ炎症性反応および進行を調節するために有用な(-)-ヒドロキシクエン酸を含む組成物に関する。具体的には、本発明は、例えば、心臓血管疾患、癌、関節炎、および過剰な炎症を伴う様々な他の状態など、炎症を伴う状態を予防し、処置し、かつ改善するために有用な、炎症を減少させる方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、炎症を減少させて、炎症性反応および進行を調節するために有用な(-)- ヒドロキシクエン酸を含む薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
慢性炎症は、種々の疾患状態の疑わしい原因としておよび/または寄与因子として最近関心を集めている。同様に、しばしば癌が慢性炎症と発生的に関連するように見られるにもかかわらず、このような状態の中でおそらく最も顕著なものは、心臓血管疾患である。全ての心血管事象の少なくとも半分は、任意の血清脂質異常の非存在下で生じる(Koenig W. Inflammation and coronary heart disease: an overview. Cardiol Rev. 2001 Jan-Feb; 9(1): 31-5)。炎症のマーカーは、典型的に、これらの場合だけでなく、糖尿病ならびに関連した代謝状態および循環状態においても存在する(Festa A, et al. Chronic subclinical inflammation as part of the insulin resistance syndrome: the Insulin Resistance Atherosclerosis Study (IRAS). Circulation. 2000 Jul 4; 102(1): 42-7)。慢性炎症の一次的かつ感受性だが非特異的なマーカーである、C-反応性タンパク質(CRP)は結果として現在考慮すべき注目の対象である。さらに、長年、たとえばインターロイキン6(IL-6)のように、免疫系の他の成分が心臓血管疾患に同じように関係していると理解されてきた(Staels B. et al. Activation of human aortic smooth-muscle cells is inhibited by PPARalpha but not by PPARgamma activators. Nature. 1998 Jun 25; 393(6687): 790-3)。腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、インターロイキン-1(IL-1)、フィブリノーゲン、プラスミノーゲン活性化阻害剤-1、およびマイクロアルブムリア(microabuminuria)は、おそらくこれらの最も重要なTNF-αを伴う、炎症における他の認識されたマーカーおよび原因因子に含まれる。
【0003】
ガルシニア種の果実において主に見られる天然の物質、(-)-ヒドロキシクエン酸(本明細書においてHCAと省略される)、およびクエン酸のいくつかの合成誘導体は、炭水化物からの脂肪酸の生成を阻害し、食欲を抑制し、かつ体重増加を阻害するそれらの能力に関して、広範囲に研究されてきた(Sullivan AC, Triscari J. Metabolic regulation as a control for lipid disorders. I. Influence of (-)-hydroxycitrate on experimentally induced obesity in the rodent. American Journal of Clinical Nutrition 1977; 30:767-775)。
【0004】
体重減少の利点は、最初に1973年John M. Lowensteinに付与された米国特許第3,764,692号におけるHCA、その塩、およびそのラクトンに基づく。その大半が本来Hoffmann-La Rocheの製薬会社で研究者によって出されたHCAのための特許請求の作用機構は、少なくとも2つの米国特許にまとめられた。米国特許第5,626,849号において、これらの機構は、以下のように示される:「(-) HCAは、炭水化物カロリーの脂肪への転換を減少させる。それは、ATPクエン酸分解酵素(体内の脂肪合成の一次経路においてクエン酸塩を脂肪酸およびコレステロールに変換する酵素)の活性を阻害することによって、これを行う。(-) HCAの活性は、グリコーゲンの生成および貯蔵を増加させ(それは、哺乳動物の肝臓、小腸、および筋肉において見られる)、一方で食欲および体重増加を減少させる。(-) ヒドロキシクエン酸によって、カロリーは熱産生と同様のエネルギーサイクルにおいて燃焼される...(-) HCAはまた、LDLコレステロールのクリアランスを増加させる...」。米国特許5,783,603号は、HCAが化合物マロニル補酵素Aに対するその効果を経て燃料のための貯蔵脂肪の代謝性分解および酸化を脱抑制するのに役立ち、かつ糖新生がこの活性の結果として起こることをさらに主張している。HCAが、結果として糖新生を伴うマロニル補酵素Aの効果を無効にすることによって、脂肪酸酸化を誘発するよう作用するという見解(McCarty MF. Promotion of hepatic lipid oxidation and gluconeogenesis as a strategy for appetite control. Medical Hypotheses 1994; 42:215-225)は、米国特許第5,914,326号において維持される。
【0005】
HCAについて行われた一次調査はほぼ全て、約30年前、Hoffman-La Rocheによって実施された。Roche研究者の結論は以下の通りである:「グルコース、インスリンまたは遊離脂肪酸の血漿レベルの有意差は、対照と比較して、(-)-ヒドロキシクエン酸処置ラットにおいて検出されなかった。これらのデータは、代謝産物流動として本文脈において定義される末梢性の代謝が、食欲調節に関与しうることを示唆する...」(Sullivan, Ann C. and Joseph Triscari. Possible interrelationhip between metabolite flux and appetite. In D. Novin, W. Wyriwicka and G. Bray, eds., Hunger: Basic Mechanisms and Clinical Implications (New York: Raven Press, 1976) 115-125)。
【0006】
当技術分野において、被検体における炎症を減少させる組成物が必要とされる。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
本発明において、(-)-ヒドロキシクエン酸を伴う補充は炎症を減少させる新規の手段を構成し、および炎症を含む状態を予防し、処置し、かつ改善するために有用であることが発見された。炎症の減少におけるHCAの利点は、好ましい酸の塩であるヒドロキシクエン酸カリウムを用いて特に言明され、かつ化合物の徐放形状の使用によって、さらに強化され得る。HCAが炎症緩和効果を有するという発見は、過剰な炎症を含む心臓血管疾患、癌、関節炎、および種々の他の状態を予防し、かつ改善する新規な、およびより有効なアプローチを作成し得る。進出年に共通の1つの要素が全身性炎症の増加レベルである限り、本発明はさらに、筋肉減少症として公知であるものの1つの因子である、老化のこの局面を減少させるかまたは遅延させることに向けられる。さらに、この発見は、他の処置化合物によって実現される結果を改善するために用いることができるアジュバントモダリティの開発を可能にし、同時に、このような薬物によって通常見られる副作用を減少させる。そのカリウム塩の形状で送達されるHCAは、750mg〜10グラムの間の1日の用量(ビッド(bid)またはチッド(tid))、好ましくは大部分の個体に対して3〜6グラムの間の用量で有効である。10グラムより上の1日の用量は、極めて大きいかまたは抵抗力のある個体のような、ある条件下では望ましいと判明するかもしれないが、この摂取レベルが標準条件下で必要であるとは考えない。
【0008】
詳細な説明
概略
非常に驚くべきことに、本発明において、HCAが炎症を減少させることが発見された。この用途は、少なくとも3つの理由のために特に驚くべきことである。第1に、既存の文献は、化合物の30年以上の活発な研究にもかかわらず、このような役割を開示していない。
【0009】
第2に、Majeed, et al.による米国特許出願(IPN WO 02/14477 A2を伴うCIP 60/225,821)はHCAおよびアントシアニン・ガルシノール(garcinol)の同時投与を提唱し、炎症プロモーターチャレンジに対してガルシノールの活性に注目したが、これをHCAまで拡張しなかった。(実施例2、11頁14〜30行目に見られる。)当業者は、HCAが炎症に影響しないことを実際に示すように、この出願に記載された研究を行ったと考えられる。たとえ出願人が炎症に関して明らかに関心を持っていたとしても、彼らは、HCAが抗炎症性を有するをことを、評価、開示または示唆しなかった。
【0010】
ガルシノールは、抗酸化剤としてみなされることができ、かつこれは抗酸化剤および抗炎症性化合物の間に有用な差異をもたらす。抗酸化剤は、電子供与体として作用し、およびしばしば抗炎症性であるとみなされる。2つの誤りは、この考え方に続いて生じる。第1に、多くの強力な抗炎症性化合物は、抗酸化剤、たとえばω-3 脂肪酸ではない。第2に、抗酸化剤のいくつかは動物およびヒトにおいて炎症誘発性であり、実際、有毒であることを忘れがちである。それ故、抗酸化剤BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、BHT(ブチルヒドロキシトルエン)、およびエトキシキンの食料品の慣用が懸念され、これらは全て、アレルギーおよび腎臓疾患を引き起こすことが可能であり、最初の2つはまた肝臓毒性を所有し、および後者はまた甲状腺の毒性を有している。さらに、医学的に認められた抗酸化剤(例えばα‐トコフェロールおよびビタミンC)さえ、様々な状況下で酸化促進剤として作用し得る。α‐トコフェロールが抗炎症として作用するそれらの状況下では、極めて高い用量においてのみ、この効果を示す(Thomas SR, et al. Dietary cosupplementation with vitamin E and coenzyme Q(10) inhibits atherosclerosis in apolipoprotein E gene knockout mice. Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2001 Apr; 21 (4): 585-93)。心疾患を減少させるために、ビタミンEを用いたいくつかの長期試験の最近のめざましい失敗について、多くの研究者は、多くの抗酸化剤の慢性的に摂取された高用量が、実際には、逆効果につながらないかどうか疑問視している。さらに、心臓血管疾患の減少の局面における抗酸化剤の利点は、長期使用を伴ってさえ改善され得ない炎症に無関係であり得る(Bruunsgaard H. et al. Long-term combined supplementations with alpha-tocopherol and vitamin C have no detectable anti-inflammatory effects in healthy men. J Nutr. 2003 Apr; 133(4): 1170-3)。
【0011】
本発明が驚くべきである第3の理由は、少なくとも一つの会社(InterHealth Nutraceuticals)が、脳および末梢の両方において、HCAがセロトニンの生成を増加させると主張したことである。InterHealthに関係する研究者は、HCAが脳および腸においてセロトニンの放出を増加させると報告した(Ohia SE, et al. Safety and mechanism of appetite suppression by a novel hydroxycitric acid extract (HCA-SX). Mol Cell Biochem. 2002 Sep; 238(1-2) : 89-103)。このような所見は、HCAが抗炎症効果よりむしろ炎症誘発性効果を有することを意味することが、当業者によって理解される。この所見は、それ自体非常に問題を含む。しかしながら、真実だとすれば、それらは本発明者の発見をいっそう予想外なものにする。
【0012】
セロトニンは、直接的および間接的な動きの両方を有する炎症誘発性化合物である(Harbuz MS, et al. Alteration of central serotonin modifies onset and severity of adjuvant-induced arthritis in the rat. Br J Rheumatol. 1998 Oct; 37(10): 1077-83)。直接の催炎物質はセロトニンだけでなく、その血清レベルが関係しない場合でさえ、特定の体区画におけるその上昇は、炎症のより大きな速度を維持する方へ、免疫機能を変える物質(例えばIL-6)の増加と連結している(Pichler R. et al. Pro-inflammatory role of serotonin and interleukin-6 in arthritis and spondyloarthropathies - measurement of disease activity by bone scan and effect of steroids. Scand J Rheumatol. 2002; 31 (1): 41-3)。TNF-αのダウンレギュレーションにおけるセロトニンの可能な明らかな利点は、極端なレベルにおいてのみ、および広範囲に及ぶ外傷に応答してのみ現れる(Cloez-Tayarani I, et al. Differential effect of serotonin on cytokine production in lipopolysaccharide-stimulated human peripheral blood mononuclear cells: involvement of 5-hydroxytryptamine(2A) receptors. Int Immunol. 2003 Feb; 15(2): 233-40)。
【0013】
全身性炎症に対する現在最も広く認められたマーカーは、C-反応性タンパク質(CRP)である。心血管事象のための危険因子としての血漿C-反応性タンパク質の高い予測値により、一部の研究者は主要な心血管危険事前評価ツールとしてCRPの使用を支持している。一部の研究者は、単独で利用されるCRPが、総コレステロール:HDL比率のそれに相当する予測力を示すと主張する。同様に、C-反応性タンパク質レベルを低下させるHMG-CoA還元酵素阻害剤の能力はスタチン薬剤の作用機構に懸案をもたらす。低下したLDLコレステロールの効果が生じると予測され得る前に、これらの薬剤が十分に罹患率および死亡率を減少させるのと同様に、急性心血管事象の発生率を低下させることから、それらがLDL低下機構に独立して作用し得るということが論点となる。さらに一般的にいえば、CRP血清レベルは、例えば白血球増加症、グルココルチコイド生成の増加などといった全身反応を誘発する、さまざまなサイトカイン(具体的には、IL-1、TNF-α、IL-6、およびインターフェロン)の活性化の指標である。下流で関連する効果は、フィブリノーゲン、Th1対Th2比率、ミクロアルブミン尿症、COX-2、血小板活性化因子(PAF)、プラスミノーゲン活性化阻害剤-1などの効果を含む。
【0014】
本発明は、例えば、血漿CRPの低下によって示されるように、HCAが炎症を調節するために作用することを見出した。
【0015】
目的および利点
本発明の目的は、過剰な炎症を予防、処置、または改善する方法を提供することである。本発明のさらなる目的は、過剰な炎症に起因する状態を処置または改善する手段を提供することである。これらは、心臓血管疾患、癌、関節炎、筋肉減少症の局面などを含む。本発明のさらなる利点は、特別食に頼らずにこのような改良された状態を維持する手段(ほとんどまたは全く副作用を伴わないもの)を提供することである。本発明についての知識は、特に、心臓血管薬剤、および炎症性反応を安定させるかまたは改善するために設計された薬剤に対するアジュバントとして、徐放性製剤を通すことを含む、(-)-ヒドロキシクエン酸の形状の使用を許すという利点を有する。
【0016】
選択された態様の説明
(-)-ヒドロキシクエン酸の遊離酸型および多様な塩類(カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムおよびこれらの混合物)は数年来市販されている。任意のこれらの物質は、完成度を変化させるが、ここで明らかにされる本発明を履行するために用いることができる。これらの物質は、一般に、有効性の高い順に並べると、以下のものが有用である:カリウム塩、ナトリウム塩、二重金属塩、遊離酸、マグネシウム塩、カルシウム塩。本明細書において用いられるように、用語「有効量」は、所望の治療的および/または予防的効果を達成するのに十分なHCA含有組成物の量、例えば、心臓血管疾患、癌、関節炎、および過剰な炎症を含む様々な他の状態といった疾患、障害もしくは治療されるべき状態と関連する症状を予防または減少させる量である。被検体に投与される本発明のHCA含有組成物の量は、疾患、障害または状態の型および重症度、ならびに健康状態、年齢、性別、体重および薬剤に対する耐性または被検体の食事の他成分に対する耐性のような、個体の特性に依存する。当業者は、これらおよび他の因子によって適切な投与量を決めることが可能である。典型的に、治療的または予防的効果を達成するために充分な本発明のHCA含有化合物の有効量は、約0.000001mg/kg体重/日〜約1,000mg/kg体重/日の範囲である。好ましくは、用量範囲は、約0.0001mg/kg体重/日〜約100mg/kg体重/日までである。本発明のHCA含有化合物を、単独で、または1つもしくは複数の付加的な治療的化合物と組み合わせて投与してもよい。
【0017】
一つには糖尿病患者でこの血糖降下薬の放出を制御する必要性のために、徐放性製剤が好まれる。徐放はまた、治療のために必要とされるように、薬剤への継続した曝露維持を助けることによって結果を改善することが期待され得る。以前に特許を付与されたヒドロキシクエン酸誘導体(大部分は、ヒドロキシクエン酸のアミドおよびエステルであり、現在消滅した特許、すなわち米国特許3,993,668号;同第3,919,254号;および同第3,767,678号)はおそらく、有効性においてHCAナトリウム塩におおよそ等しく、かつ当業者によって本明細書に開示されるように適用され得る。
【0018】
実施例1
C-反応性タンパク質に対する効果
ヒトの治験において見出される条件と同様の条件下で、さまざまな形状のHCAの特性を試験するため、本発明者は、ラットに、単糖として供給されているカロリーのさらに約20%と共に、カロリーの30%を標準条件下で脂肪から得た食餌を与えるよう計画した。脂肪および単糖のそのような食餌の組合せは、種々の代謝平衡失調および機能不全を促進するとして言及される。ラットに5つのHCA塩または偽薬のうちの1つを1日2回挿管した。週末に、HCAを、適切な用量で食品に加えた。8匹の動物の各々のアームにおけるHCAの量は、70%のグルコース食(すなわち1日2回与えられる0.33 mmol/kg体重のHCA)を摂取している動物において、Hoffmann-La Rocheによる試験でHCAの純粋な三ナトリウム塩の形状で有効であると見出された最小限の用量に基づいた。使用したHCA塩:KCaHCA=完全に水溶性かつ比較的高い純度であるものとして市販されている、混合カリウムおよびカルシウムまたは二重金属HCA塩;KHCA=100 gの原料当たり4467mgカリウムを供給する良好な鉱物のリガンド付加を有するHCAの比較的純粋な市販のカリウム塩;KMgHCA=胃酸に曝露されるときに比較的不安定であると疑われるが、特別な性質を有する3つの異なる用量レベルの実験的なカリウムおよびマグネシウム塩。KCaHCAおよびKHCA塩は、約76mg/日の割合で送達される60%HCAであった。KMgHCA塩は、76mg/日(r)、38mg/日(I)、および228mg/日(h)の割合で送達されが、結晶水の初期の誤算のために、この塩は60%ではなく45%のHCAのみであった。KMgHCA(r)のための適当な用量は、100mg/日であるべきであった;半用量(I)は、50mg/日であるべきであり、および3倍用量(h)は市販の塩に適合する300mg/日であるべきであった。
【0019】
試験は、C-反応性タンパク質に対して実施された。データは、動物に対して、開始時および4週目に血清に基づき得られた。用いた試験キットにおける光学濃度(OD)表示は、1単位が50ピコグラム/mLに相当するとした。各アーム対対照について4週にわたるδ変化を示す。
【0020】

【0021】
5つの活性アーム中4つは、対照と比較して、CRPの変化(デルタΔ)の有意な改善を示した。KMgHCA(r)および同様にKHCA(h)の場合においても、アームの絶対表示は、開始時よりも4週目に低く、これらが幼若動物であり、かつヒト同様にラットにおいても、対照において真実であったように、炎症が経時的に着実に増加する傾向があるという興味深い事実が見出された。KCaHCAアームだけは、有意な結果を得ることができなかった。KCaHCAおよびKMgHCA(I)アームはまた、絶対CRPレベルがわずかだが増加した2つの活性アームだけであった。
【0022】
ラットでは、血圧は年齢と共に着実に上昇し、これはこの短い期間でさえ制御アームにおいて見られたものである。全ての活性アームが4週目に対照に対して有意に低下する収縮期血圧を示す点に留意する必要がある(データは示していない)。同様に、最も大きな傾向差を示しているKHCAおよびKCaHCAアームと共に、6週目に全ての活性アームは、より低い体重(データは示していない)を有する対照と相違し始めた。
【0023】
これらの結果は、HCA塩によるその食欲調節が、炎症のような代謝の他の要素であるように、各特定の塩を有する同じ機構と同程度または少なくとも同程度まで制御され得ないことを示唆する。この実験において使用したKMgHCA塩としてのHCAの極めて低い用量でさえ、使用した市販のKCaHCA塩が体重増加に対してより強い効果を有したにもかかわらず、その市販の塩よりCRPレベルに対してより強い効果を有した。しかしながら、明白なことは、結果が生じ得る短い期間にもかかわらず、異なる用量レベルで、いくつかの異なるHCA塩が、この実験において明らかにCRPを調節したということである。
【0024】
実施例2
多数の方法が、必要に応じて本発明によってHCAを送達する手段として与えられ得る。以下の調製法は、安定で簡便な剤形を提供すると考えられる。
【0025】

【0026】
A、滑らかかつ均一になるまで混合ボウルで材料1〜5を混合する。
B、白い粉末形態になるまで、液体およびスプレーを300℃で噴霧乾燥オーブンにかける。粉末を形成した時に、適切な充填剤と混和し、必要に応じて、10〜15kgの硬度を有する800mgの錠剤に圧縮する。これは、62%のKHCAポリマー粉末から始める場合、各錠剤が約31%のKHCAを有することを意味する。しかしながら、錠剤が1600mgまで圧縮成形される場合、用量は800×62%のKHCAと同等となる。
C、スクリーンを通して顆粒を圧縮成形した後、それがよく流動することを確認し、かつ長方形の錠剤に圧縮する。
D、錠剤は、1600mgの重量および14の±3 kg破砕力の硬度を有するべきである。錠剤が完成する時、pH 6.8での崩壊について0.05MのKH2PO4を調べる。崩壊は、4〜5時間以上、ゆっくり起こらなければならない。
【0027】
結論
(-)-ヒドロキシクエン酸は多数の代謝機能を有する。文献は、化合物が血液脂質を減少させ、体重減少を誘発し、かつ動物およびヒトの両方において食欲を減少させることを開示する。しかしながら、本発明者は、この化合物を炎症に明らかに影響を与えるよう用いることができるということを発見した。炎症のこの安全で効果的な改善は、完全に予想外であり、かつ(-) ヒドロキシクエン酸、その誘導体およびその塩形状の新規な用途である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(-)-ヒドロキシクエン酸の有効量を経口投与する段階を含む、それを必要とする個体の炎症を予防、処置、または改善する方法。
【請求項2】
(-)-ヒドロキシクエン酸が、遊離酸またはそのラクトンの治療的有効量において供給される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
(-)-ヒドロキシクエン酸が、アルカリ金属塩である(-)-ヒドロキシクエン酸カリウムまたは(-)-ヒドロキシクエン酸ナトリウムの治療的有効量において供給される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
(-)-ヒドロキシクエン酸が、アルカリ土類金属塩である(-)-ヒドロキシクエン酸カルシウムまたは(-)-ヒドロキシクエン酸マグネシウムの治療的有効量において供給される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
(-)-ヒドロキシクエン酸が、(-)-ヒドロキシクエン酸のアルカリ金属塩および/もしくはアルカリ土類金属塩の混合物、もしくは(-)-ヒドロキシクエン酸のアルカリ金属塩および/もしくはアルカリ土類金属塩の混合物の一部の治療的有効量において、または治療的に有効な(-)-ヒドロキシクエン酸のアミドおよび/もしくはエステル誘導体の形状で供給される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
(-)-ヒドロキシクエン酸が、遊離酸として、そのラクトンとして、または1つもしくは複数の遊離酸の塩もしくは他の誘導体として、治療的有効量において供給され、かつ徐放の形状で送達される、請求項1記載の方法。

【公表番号】特表2007−522090(P2007−522090A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518832(P2006−518832)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/021541
【国際公開番号】WO2005/002565
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(505440756)グリュコン テクノロジーズ グループ エルエルシー (3)
【Fターム(参考)】