制御棒引抜き監視方法
【課題】原子炉の運転上の制約を少なくし、定格出力付近での制御棒の誤引き抜きによる熱的余裕の変化幅をさらに低減できる制御棒引抜き監視方法を提供する。
【解決手段】連続引抜する選択制御棒の引抜き選択時点での原子炉出力Pが設定原子炉出力P0以下であり(S3)、(P+γ(出力上昇制限幅))がP0以下である(S5)とき、(P+γ)を原子炉出力上昇上限値(RBL´値)に設定する(S6)。原子炉出力(P1+γ)が原子炉出力P2であるので、RBL´値として原子炉出力P2が設定される。S5が「No」のとき、P0をRBL´値に設定する(S7)。S3が「Yes」のとき、(P+α(出力上昇制限幅))をRBL´値に設定する(S4)。γ及びαはγ>αの関係にある。選択制御棒は、RBL´≦RBM(制御棒引抜き監視出力)を満足しないときに連続引抜きが継続され、RBL´≦RBMのときに連続引抜が阻止される。
【解決手段】連続引抜する選択制御棒の引抜き選択時点での原子炉出力Pが設定原子炉出力P0以下であり(S3)、(P+γ(出力上昇制限幅))がP0以下である(S5)とき、(P+γ)を原子炉出力上昇上限値(RBL´値)に設定する(S6)。原子炉出力(P1+γ)が原子炉出力P2であるので、RBL´値として原子炉出力P2が設定される。S5が「No」のとき、P0をRBL´値に設定する(S7)。S3が「Yes」のとき、(P+α(出力上昇制限幅))をRBL´値に設定する(S4)。γ及びαはγ>αの関係にある。選択制御棒は、RBL´≦RBM(制御棒引抜き監視出力)を満足しないときに連続引抜きが継続され、RBL´≦RBMのときに連続引抜が阻止される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御棒引抜き監視方法に係り、特に、沸騰水型原子炉に適用するのに好適な制御棒引抜き監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の制御棒引抜き監視システムは、制御棒引抜き監視装置及び制御棒操作監視装置を有する。制御棒引抜き監視装置は、選択した制御棒の過剰な引抜によって当該制御棒付近の出力が上昇し、燃料棒の熱的余裕、すなわち、最小限界出力比(MCPR)が安全限界値を下回ることがないように、炉心内に均等に配置されている複数の局部出力領域モニタ(以下「LPRM」と称する)でそれぞれ検出された炉心内の中性子束に関する、中性子検出信号であるLPRM信号、原子炉内に設置される炉心流量検出器からの炉心流量信号、及び制御棒操作監視装置(以下、RC&IS又はRMCSと称する。本明細書では、RC&ISのみ記載)から出力される操作対象の制御棒の位置信号を入力し、制御棒の引抜操作の監視を行う。
【0003】
制御棒引抜き監視装置は、操作する制御棒が選択されると、RC&ISから選択制御棒の位置信号を入力して、選択制御棒の周囲のLPRM信号を制御棒引抜き監視の為に選択する。制御棒引抜き監視装置は、選択したLPRM信号に基づいて制御棒引抜き監視に用いる原子炉出力である制御棒引抜き監視出力(以下、RBM値と称する)を求める。また、制御棒引抜き監視装置は、炉心流量検出器の出力である炉心流量信号を入力し、この信号に基づいた炉心流量を関数とした制御棒引抜き阻止設定出力(以下、RBL値と称する)を求める。制御棒引抜き監視装置は、算出したRBM値とRBL値を比較器で比較し、オペレータの誤操作による制御棒の過剰な引抜によりRBM値が上昇し、RBL値に到達した場合は、RC&ISへ制御棒引抜き阻止信号を出力する。RC&ISは、制御棒引抜き阻止信号を入力したとき、制御棒駆動装置による制御棒の引抜き操作を停止させる。制御棒の引抜き操作が停止されることによって、過剰な制御棒の引抜きが阻止されるので、燃料棒の健全性を保つことができる。制御棒引抜き監視装置は、複数のRBL値(通常は3つ)を有しており、オペレータの要求または制御棒引抜き監視装置が有するRBL値のセットアップ機能によりRBL値を上位レベルに変更し、制御棒引抜き阻止を除外する機能を有する。
【0004】
特開昭57−136197号公報及び特開2000−162356号公報は、上記した制御棒引抜き監視装置について説明している。
【0005】
従来の制御棒引抜き監視装置は、炉心流量を変数としたRBL値を複数(通常は3つ)有している。これらRBL値は、原子炉の定格出力付近に設定され、オペレータによる変更要求が無い限り固定された値である。従来の制御棒引抜き監視装置ではRBL値が定格出力近傍に設定されているので、仮に、原子炉出力が低出力である状態で、オペレータの誤操作等による過剰な制御棒の引抜き操作が発生した場合、RBM値に余裕があったとしても、炉心内の燃料集合体の状態によって熱的余裕の変化が大きくなる。このため、一部の燃料棒が熱的に厳しい状態になることも考えられる。
【0006】
特開2008−256548号公報は、このような問題点を解消するために、炉心からの制御棒の引抜き時における最小限界出力比が最小限界出力比設定値以下であるときに生成される引抜き阻止信号、及びに配置された局部出力領域モニタから出力される中性子検出信号に基づいて生成される引抜き阻止信号のいずれか一方の引抜き阻止信号に基づいて制御棒の引抜きを停止させる制御棒引抜き監視システムを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭57−136197号公報
【特許文献2】特開2000−162356号公報
【特許文献3】特開2008−256548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特開2008−256548号公報に記載された制御棒引抜き監視システムも、炉心流量を変数としたRBL値を複数(通常は3つ)有している。これらRBL値は、原子炉の定格出力付近に設定され、オペレータによる変更要求が無い限り固定値である。その制御棒引抜き監視システムは、このRBL値の幅の内側であれば制御棒の連続引抜が可能である。しかしながら、炉心に装荷された燃料集合体に含まれる燃料棒を保護する観点から、定格出力付近で制御棒の引抜き量をより小さい幅に制限し、熱的余裕の変化をより小さくしたいという要求があった。特開2008−256548号公報では、原子炉出力が出力設定値(例えば、95%出力)以上になったとき、制御棒の連続引抜きを停止し、ノッチ操作またはステップ操作で制御棒の引き抜きを行っている。
【0009】
上記の要求に対処するために、そのRBL値の幅を従来の設定幅よりも小さい固定値(後述の図6のレベルA,B及びCの相互間の間隔を狭める固定値)にした場合には、原子炉運転上の制約が大きくなるという新たな問題が生じることを、発明者らが見出した。このため、発明者らは、原子炉運転上の制約及び熱的余裕の変化を小さくできる制御棒の連続引抜きを可能にする制御棒引抜き監視システムを実現することが必要であるとの認識を持った。
【0010】
本発明の目的は、原子炉の運転上の制約を少なくし、定格出力付近での制御棒の誤引き抜きによる熱的余裕の変化幅をさらに低減できる制御棒引抜き監視方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、原子炉の定格出力よりも低い原子炉出力である設定原子炉出力以下の出力領域では、原子炉の炉心からの制御棒の連続引抜きによって上昇する原子炉出力が、この制御棒の引抜き開始時点における原子炉出力及び第1出力上昇制限幅に基づいて設定された第1原子炉出力上限以下であるとき、制御棒の連続引抜きを継続し、
設定原子炉出力を超える出力領域では、炉心からの制御棒の連続引抜きによって上昇する原子炉出力が、この制御棒の引抜き開始時点における原子炉出力、及び第1出力上昇制限幅よりも狭い第2出力上昇制限幅に基づいて設定された第2原子炉出力上限を超えるとき、制御棒の連続引抜きを阻止することにある。
【0012】
設定原子炉出力を超える出力領域では、炉心からの制御棒の連続引抜きによって上昇する原子炉出力が、この制御棒の引抜き開始時点における原子炉出力、及び第1出力上昇制限幅よりも狭い第2出力上昇制限幅に基づいて設定された第2原子炉出力上限を超えるとき、制御棒の連続引抜きが阻止されるので、設定原子炉出力を超える出力領域における制御棒の連続引抜きによる原子炉出力の上昇幅が、設定原子炉出力以下の出力領域における制御棒の連続引抜きによる原子炉出力の上昇幅よりも小さくすることができる。このため、設定原子炉出力を超える出力領域で制御棒の連続引抜による原子炉出力の上昇が可能になり、原子炉の運転上の制約を低減することができる。また、設定原子炉出力を超える出力領域における制御棒の連続引抜きによる原子炉出力の上昇幅を小さくすることができるので、原子炉の定格出力付近での制御棒の誤引抜きによる熱的余裕の変化幅をさらに低減することができる。
【0013】
好ましくは、制御棒の引抜き開始時点における原子炉出力を基点として第1出力上昇制限幅で設定された第1原子炉出力上限以下で原子炉出力を上昇させる制御棒の連続引抜きによって、上昇する原子炉出力が、設定原子炉出力に到達したとき、制御棒の連続引き抜きを阻止し、設定原子炉出力を超える出力領域では、連続引抜きが停止された制御棒の連続引抜きの再開によって上昇する原子炉出力が、制御棒の連続引き抜き再開時の原子炉出力及び第2出力上昇制限幅に基づいて設定された第2原子炉出力上限を超えるとき、連続引抜きを再開した制御棒の連続引抜きを阻止することが望ましい。
【0014】
制御棒の引抜き開始時点における原子炉出力を基点として第1出力上昇制限幅で設定された第1原子炉出力上限以下で原子炉出力を上昇させる制御棒の連続引抜きによって、上昇する原子炉出力が、設定原子炉出力に到達したとき、制御棒の連続引き抜きを阻止するので、原子炉出力が設定原子炉出力未満で設定原子炉出力付近の原子炉出力(例えば、設定原子炉出力よりも僅かに低い原子炉出力)になっている状態で制御棒の連続引抜きを行った場合でも、原子炉出力が設定原子炉出力になったときにその制御棒の連続引抜が阻止される。また、原子炉出力が設定原子炉出力を超える領域では、原子炉出力が、設定原子炉出力を基点とする、第1出力上昇制限幅よりも小さい第2出力上昇制限幅に到達するまではその制御棒の連続引抜きが許容される。しかしながら、原子炉出力が設定原子炉出力を基点とする第2出力上昇制限幅を超えるとき、その制御棒の連続引抜きが再度阻止され、設定原子炉出力を基点とする第2出力上昇制限幅を超える原子炉出力の上昇を阻止することができる。このため、設定原子炉出力を超える高出力領域での熱的余裕の変化幅をさらに低減することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、原子炉の運転上の制約を少なくし、定格出力付近での制御棒の誤引き抜きによる熱的余裕の変化幅をさらに低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の制御棒引抜き監視方法に用いられる制御棒引抜き監視システムの構成図である。
【図2】図1に示す制御棒引抜き監視補助装置で実行される処理を中心とした、実施例1における選択制御棒の引抜き時における制御棒引抜き監視システムでの処理を示すフローチャートである。
【図3】実施例1の制御棒引抜き監視方法におけるBWRの運転領域を示す説明図である。
【図4】実施例1の制御棒引抜き監視方法において設定原子炉出力P0を超えた出力領域における原子炉出力上昇制限幅αを示す説明図である。
【図5】実施例1の制御棒引抜き監視方法において設定原子炉出力P0以下の出力領域及び設定原子炉出力P0を超えた出力領域での選択制御棒の引抜き操作を示す説明図である。
【図6】従来例及び実施例1における選択制御棒の連続引抜き操作を示す説明図である。
【図7】本発明の他の実施例である実施例2の制御棒引抜き監視方法に用いられる制御棒引抜き監視システムの構成図である。
【図8】図2に示す制御棒引抜き監視補助装置で実行される処理を中心とした、実施例2における選択制御棒の引抜き時における制御棒引抜き監視システムでの処理を示すフローチャートである。
【図9】実施例2の制御棒引抜き監視方法におけるBWRの運転領域を示す説明図である。
【図10】実施例2の制御棒引抜き監視方法において設定原子炉出力P0を超えた出力領域における原子炉出力上昇制限比βを示す説明図である。
【図11】実施例2の制御棒引抜き監視方法において設定原子炉出力P0以下の出力領域及び設定原子炉出力P0を超えた出力領域での選択制御棒の引抜き操作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施例を、以下に説明する。
【実施例1】
【0018】
本発明の好適な一実施例である実施例1の制御棒引抜き監視方法を、図1及び図2を用いて説明する。
【0019】
まず、制御棒引抜き監視システム1が適用される沸騰水型原子炉(BWR)の概要を説明する。原子炉16は、原子炉圧力容器17、複数の燃料集合体18が装荷された炉心(図示せず)及び複数の制御棒19を備えている。1本の制御棒19の周りを4体の燃料集合体18が取り囲んでいる。炉心は原子炉圧力容器17内に配置され、制御棒19が、炉心に装荷された隣り合う燃料集合体18の相互間に挿入される。それぞれの制御棒19は、別々に制御棒駆動機構(以下、CRDという)12に連結される。CRD12は、原子炉圧力容器17の底部に取り付けられた制御棒駆動機構ハウジング(図示せず)内に設置され、制御棒19の炉心への挿入操作及び制御棒19の炉心からの引抜操作を行う。炉心の軸方向に配置された4つの局部出力領域モニタ(以下、LPRMという)21を含む複数のLPRM集合体22が、炉心内で燃料集合体18の相互間で制御棒19の操作に支障にならない位置に配置される。LPRM21は中性子検出器である。これらのLPRM集合体22は、炉心内で1/4回転対象になる位置に配置されている。炉心流量検出器20が原子炉圧力容器17に設置される。
【0020】
本実施例の制御棒引抜き監視方法に用いられる制御棒引抜き監視システム1は、図1に示すように、制御棒引抜き監視装置(以下、RBMという)2、制御棒引抜き監視補助装置3、制御棒操作監視装置(以下、RC&ISという)10及び制御棒駆動補助盤11を有する。
【0021】
各LPRM21に1本ずつ接続された配線23−1〜23−nは、RBM2及び平均出力領域モニタ(以下、APRMという)13に接続される。炉心流量検出器20が配線36によってRBM2に接続される。制御棒引抜き監視補助装置3が、配線38によってRBM2に接続され、さらに、配線41によってRC&IS10に接続される。表示装置15を有する操作盤14が配線40によって制御棒引抜き監視補助装置3に接続される。RC&IS10が配線44,46によっても操作盤14に接続される。制御棒駆動補助盤11が、配線42によってRC&IS10に接続され、配線43によってCRD12に接続される。
【0022】
制御棒引抜き監視システム1を用いて行われる本実施例の制御棒引抜き監視方法を以下に説明する。
【0023】
BWRの起動時には、制御棒19が、CRD12の操作により、炉心から引抜かれて未臨界状態から臨界状態になる。その後、制御棒19がさらに引抜かれる昇温昇圧過程を経て、原子炉出力が定格出力まで上昇される。このような制御棒19の引抜きに際して、制御棒引抜きシーケンスの制御棒引抜き情報が、順次、操作盤14の表示装置15に表示される。引抜き対象の制御棒(以下、選択制御棒という)19に関する制御棒引抜き情報は、選択制御棒19の炉心横断面における位置情報及び設定引抜き量の情報を含んでいる。オペレータは、表示装置15に表示された制御棒引抜き情報に基づいて、次に引抜く選択制御棒19の炉心横断面での位置情報及び設定引抜き量情報を操作盤14から入力する(ステップS1(図2参照))。これらの情報を入力することによって、操作盤14から、該当する選択制御棒19を操作するCRD12に対する制御棒引抜き指令53が出力される。制御棒引抜き指令53は、選択制御棒19の上記位置情報及び設定引抜き量情報を含んでいる。制御棒引抜き指令53が、配線40を経て制御棒引抜き監視補助装置3に入力され、配線44によりRC&IS10に入力される。
【0024】
制御棒引抜き指令53を入力したRC&IS10は、選択制御棒19に対する制御棒連続引抜き要求信号58を制御棒駆動補助盤11に出力する(ステップS13(図2参照))。制御棒連続引抜き要求信号58に基づいて制御棒駆動補助盤11から出力された制御棒連続引抜き信号61が、上記位置情報で指定された選択制御棒19を操作するCRD12を駆動させる。これによって、選択制御棒19が設定引抜き量だけ炉心から引抜かれる。選択制御棒19の引抜き量は、CRD12に設けられた制御棒位置検出器24で検出された、炉心軸方向における制御棒の位置に基づいて把握することができる。制御棒位置検出器24で検出された制御棒19の炉心軸方向の位置が、RC&IS10に入力される。
【0025】
原子炉出力の上昇過程では、選択制御棒19の引抜きによって、原子炉出力が上昇する。特に、選択制御棒19に隣接する4体の燃料集合体18で出力が増大する。
【0026】
BWRの運転中、炉心には冷却水が供給され、燃料集合体18に含まれる各燃料棒を冷却する。炉心に供給される冷却水流量は、再循環ポンプ(図示せず)(またはインターナルポンプ)によって制御され、炉心流量検出器20によって検出される。その冷却水流量を検出した炉心流量検出器20は、炉心流量信号51を配線36に出力する。この炉心流量信号51がRBM2に入力される。各燃料棒に含まれた核燃料物質の核分裂で発生した熱によってその冷却水が加熱され、冷却水の一部が蒸気になる。この蒸気は、原子炉圧力容器27に接続された主蒸気配管(図示せず)によりタービン(図示せず)に導かれる。
【0027】
炉心内に配置された各LPRM集合体22に設けられたそれぞれのLPRM21は、BWRの起動後において、選択制御棒19の炉心からの引抜きにより、燃料集合体18に含まれる核燃料物質の核分裂によって発生した中性子束を検出し、この中性子束の検出信号(以下、LPRM信号という)を出力する。それぞれのLPRM21から出力されたLPRM信号(中性子検出信号)50−1〜50−nは、配線23−1〜23−nを通ってRBM2に入力され、配線23−1〜23−n及び配線37を通ってAPRM13に入力される。APRM13はLPRM信号50−1〜50−nを平均して原子炉出力を求める。
【0028】
RBM2は、オペレータの操作盤14での誤操作等により、選択制御棒19の過剰引抜が発生し、選択制御棒19の周りに位置する燃料集合体18における出力の増加幅が大きくなる場合にその燃料集合体18の熱的余裕を確保するために、その選択制御棒19の引抜きを阻止する機能を有する。このため、RBM2は、配線23−1〜23−nによってLPRM信号50−1〜50−nを、及び配線36によって炉心流量信号51を入力する。RBM2は、選択制御棒19の引抜きを監視するために、選択制御棒19の周囲に位置するLPRM集合体22内に存在する各LPRM21から出力された各LPRM信号のうち、該当するLPRM信号を用いてRBM値を算出する(ステップS14(図2参照))。
【0029】
具体的には、RBM2のLPRM信号選択部(図示せず)は、選択制御棒19が炉心の中央部に位置している場合には、その選択制御棒19に隣接している4つのLPRM集合体22内に存在する合計16個のLPRM21から出力されたLPRM信号50を、選択制御棒19が炉心の周辺部に位置している場合には、その選択制御棒19に隣接している3つまたは2つのLPRM集合体22内に存在する全てのLPRM21から出力されたLPRM信号50を、LPRM信号50−1〜50−nから選択する。そして、LPRM信号選択部は、入力した炉心流量信号36及び選択した全てのLPRM信号50を用いてRBM値を算出する。このRBM値の算出はLPRM信号選択部の演算周期ごとに行われ、RBM値は新たに算出されたRBM値によって更新される。
【0030】
選択制御棒19の引抜き操作によりRBM値がRBL値に到達したとき、RBM2は、配線38を通して、ロッドブロックのための制御棒引抜き阻止信号55を制御棒引き抜監視補助装置3に出力する。この制御棒引抜き阻止信号55は、制御棒引抜き監視補助装置3、RC&IS10及び制御棒駆動補助盤11を経て該当するCRD12に伝えられる。該当するCRD12は選択制御棒19の引抜きを阻止する。
【0031】
RBM2は、複数のRBL値(通常は3つ)を有している。すなわち、これらは、3つの制御棒引抜阻止設定ライン(RBライン)、具体的には、正RBラインA、中間RBラインB及び低RBラインCの3つのライン、及び炉心流量で定まるそれぞれのRBL値である。オペレータが、操作盤14に設けられたマンマシンインターフェイス(以下、MMIと称する)から入力したRBL値セットアップ要求により、RBL値を上位のRBL値に変更する機能を有する。このため、RBM値がRBL値に到達し、選択制御棒19の引抜き阻止が発生した時は、セットアップ要求によって、上位のRBL値にセットアップし(例えば、中間RBラインBを正RBラインAにセットアップする)、選択制御棒19の引抜き阻止を除外させる。但し、最上位のRBM値(正RBラインAのRBM値)はセットアップすることができない。このRBLセットアップ機能は、RBM2の拡張機能である。RBM2のLPRM信号処理部がRBM値及び炉心流量信号51を監視することによって、RBM2が、オペレータのMMIからの操作を介さずに、RBLセットアップを自ら行うこともできる。また、制御棒19を炉心に挿入する原子炉出力の降下時では、RBM2は、RBM値及び炉心流量信号51を監視し、RBL値のセットダウンを自ら行い、RBL値を低位RBL値に変更する(例えば、中間RBラインBを低RBラインCに変更する)ことができる。
【0032】
本実施例におけるBWRの運転領域の一例を、炉心流量と原子炉出力の関係で示すと、図3のようになる。図3において、設定原子炉出力P0は、定格出力よりも低く、選択制御棒19の連続引抜きを停止させる原子炉出力の閾値である。すなわち、選択制御棒19の連続引抜き操作中に、APRM13で求められた原子炉出力が設定原子炉出力P0を超える場合には、その原子炉出力が設定原子炉出力P0になったとき、選択制御棒19の連続引抜きを停止させる。
【0033】
α%及びγ%は原子炉出力の上昇制限幅を示しており、α<γの関係にある。原子炉出力上昇制限幅γ%は、制御棒引抜きシーケンスで設定されている各選択制御棒19の引抜き量のうち最大の引抜き量で上昇する原子炉出力の上昇幅以上に設定されている。本実施例では、原子炉出力上昇制限幅γ%は、その最大の引抜き量で上昇する原子炉出力の上昇幅に設定されている。本実施例では、原子炉出力上昇制限幅α%は、5%であり、図4に示すように、設定原子炉出力P0を超える原子炉出力領域での、選択制御棒19の連続引抜きによる出力上昇に対して適用される。ちなみに、設定原子炉出力P0以下の原子炉出力領域での、選択制御棒19の連続引抜きによる出力上昇に対しては、原子炉出力上昇制限幅γ%が適用される。本実施例における設定原子炉出力P0は、例えば、95%である。
【0034】
前述したように、RC&IS10から出力された、選択制御棒19に対する制御棒連続引抜き要求信号58に基づいて、選択制御棒19が炉心から引抜かれることにより、原子炉出力が上昇する。各LPRM集合体22に含まれるLPRM21からそれぞれ出力されたLPRM信号50−1〜50−nがAPRM13に入力される。APRM13は、LPRM信号50−1〜50−nを平均して原子炉出力を求め、この原子炉出力を配線39に出力する。APRM13から出力された原子炉出力が、制御棒引抜き監視補助装置3に入力される。APRM13は、常時、LPRM信号50−1〜50−nを入力して原子炉出力を求めている。
【0035】
制御棒シーケンスで設定された選択制御棒19の一部が、例えば、図5に示された、原子炉出力P1を原子炉出力P2まで上昇させる設定引抜き量が設定された選択制御棒19A、原子炉出力P2を原子炉出力P3まで上昇させる設定引抜き量が設定された選択制御棒19B、及び原子炉出力P3を原子炉出力100%まで上昇させる設定引抜き量が設定された選択制御棒19Cであると想定する。
【0036】
本実施例の制御棒引抜き監視システム1に用いられた制御棒引抜き監視補助装置3の機能を、図5に示された出力上昇を例にして、図2を用いて説明する。制御棒引抜き監視補助装置3は、図2において一点差線で囲んだステップS2〜S9の各処理を実行する。図2に示されたステップS10〜S13の各処理は、RC&IS10で実行される。
【0037】
操作盤14から出力された選択制御棒19Aに対する制御棒引抜き指令53が、制御棒引抜き監視補助装置3及びRC&IS10に入力される。RC&IS10が選択制御棒19Aに関する制御棒連続引抜き要求信号58を制御棒駆動補助盤11に出力する(ステップS13)。制御棒連続引抜き要求信号58の出力により、選択制御棒19Aを操作するCRD12が駆動され、選択制御棒19Aが炉心から連続的に引抜かれる。
【0038】
引抜き制御棒選択時における原子炉出力Pを入力する(ステップS2)。選択制御棒19Aに対する制御棒引抜き指令53が制御棒引抜き監視補助装置3に入力された時点(制御棒の引抜き開始時点)においてAPRM13から入力した原子炉出力P1を、引抜き制御棒選択時における原子炉出力Pとする。原子炉出力Pが設定原子炉出力P0以下であるかを判定する(ステップS3)。原子炉出力P1が設定原子炉出力P0以下である(図5参照)ので、ステップS3の判定は「No」になる。このため、原子炉出力(P+γ)が設定原子炉出力P0以下であるかを判定する(ステップS5)。図5に示すように、原子炉出力(P1+γ)である原子炉出力P2が設定原子炉出力P0以下であるので、ステップS5の判定が「Yes」になる。次に、原子炉出力(P+γ)を原子炉出力上昇上限値(原子炉出力上限)(以下、RBL´値という)に設定する(ステップS6)。原子炉出力(P1+γ)が原子炉出力P2であるので、RBL´値として原子炉出力P2が設定される。
【0039】
RBM値がRBL´値以上であるかを判定する(ステップS8)。選択制御棒19Aが連続引抜きされているときにRBM2で求められたRBM値が、RBM信号として配線38により制御棒引抜き監視補助装置3に入力される。このRBM値は、前述したように、RBM2において、選択制御棒19Aの周囲に位置するLPRM集合体22内に存在する各LPRM21から出力された各LPRM信号のうち、該当するLPRM信号を用いて求められる(ステップS14)。選択制御棒19Aの引抜きに伴って、この選択制御棒19Aの周囲に存在する燃料集合体18を中心に出力が上昇し、RBM2で求められるRBM値も増大する。しかしながら、選択制御棒19Aが、制御棒引抜きシーケンスで設定された引抜き量まで引抜かれるまでの期間では、RBM2で求められたRBM値がRBL´値である原子炉出力P2よりも低い。このため、ステップS8の判定が「No」になる。
【0040】
ステップS8の判定が「No」である場合、制御棒引抜き監視補助装置3は、この判定結果に対しては何もしなく、今までの状態を継続する。制御棒引抜き監視補助装置3は、ステップS8の判定に対しては、「Yes」のときだけ、後述するような選択制御棒の連続引抜き阻止信号56を出力する。図2において、ステップS8の判定に対して「No」を記入したのは、BWRの運転に関する説明を分かりやすくするためである。また、ステップS12の判定に対して「No」を記入したのも、同じ理由である。
【0041】
ステップS8の判定が「No」の場合には、換言すれば、ステップS8の判定が「Yes」にならない場合には、選択制御棒19Aが連続的に引抜かれている。CRD12に設けられた制御棒位置検出器24で、時々刻々、検出された、炉心軸方向における選択制御棒19Aの位置信号66が配線47によりRC&IS10に入力される。RC&IS10が、選択制御棒の引抜きが完了したかを判定する(ステップS12)。入力した選択制御棒19Aの位置信号66に基づいて、選択制御棒19Aの引抜き量が、選択制御棒19Aに対する制御棒引抜き指令53に含まれた設定引抜き量になったかを判定する。選択制御棒19Aの引抜き量が、設定引抜き量になっていない場合には、ステップS12の判定は「No」である。ステップS12の判定が「No」であるとき、RC&IS10はこの判定結果に対しては何もしなく、今までの状態を継続する。すなわち、選択制御棒19Aの連続引抜き及びステップS8の判定が継続して行われる。
【0042】
選択制御棒19Aの引抜き操作が継続されると、やがて、ステップS12の判定が「Yes」になる。ステップS12の判定が「Yes」になったとき、RC&IS10は、引抜き停止要求信号59を制御棒駆動補助盤11に出力する。引抜き停止要求信号59を入力した制御棒駆動補助盤11は、選択制御棒19Aを操作するCRD12に対して引抜き停止信号62を出力する。選択制御棒19Aを操作するCRD12は、引抜き停止信号62に基づいて選択制御棒19Aの引抜きを中止する。このとき、選択制御棒19Aは設定引抜き量だけ炉心から引抜かれている。ステップS12の判定が「Yes」になったとき、RC&IS10から操作盤12に配線45を通して「選択制御棒19Aの引抜き完了」を示す引抜き完了信号が出力される。この引抜き完了信号が表示装置15に表示される。選択制御棒19Aが設定引抜き量だけ引抜かれたとき、原子炉出力が原子炉出力P2まで上昇する。
【0043】
選択制御棒19Aの引抜き完了信号の表示を見たオペレータは、表示装置15に表示された制御棒引抜き情報に基づいて、次に引抜く選択制御棒19Bの炉心横断面での位置情報及び設定引抜き量情報を操作盤14から入力する。操作盤14から出力された選択制御棒19Bに対する制御棒引抜き指令53が、選択制御棒19Aの場合と同様に、制御棒引抜き監視補助装置3及びRC&IS10に入力される。RC&IS10が選択制御棒19Bに関する制御棒連続引抜き要求信号58を制御棒駆動補助盤11に出力する(ステップS13)ので、選択制御棒19Bを操作するCRD12が駆動され、選択制御棒19Bが炉心から連続的に引抜かれる。
【0044】
ステップS2では、選択制御棒19Bに対する制御棒引抜き指令53が制御棒引抜き監視補助装置3に入力された時点においてAPRM13から入力した原子炉出力P2を、引抜き制御棒選択時における原子炉出力Pとする。原子炉出力P2が設定原子炉出力P0以下である(図5参照)ので、ステップS3の判定が「No」になり、ステップS5の判定が行われる。原子炉出力(P2+γ)が原子炉出力P3であって設定原子炉出力P0を超える(図5参照)ので、ステップS5の判定が「No」になる。このため、設定原子炉出力P0をRBL´値に設定する(ステップS7)。原子炉出力P2が設定原子炉出力P0以下であってステップS5の判定が「No」になることは、選択制御棒19Bの引抜きの途中で、原子炉出力が設定原子炉出力P0に到達する可能性があることを示している。
【0045】
選択制御棒19Bの引抜き操作によって原子炉出力が上昇する。RBM2で求められた新たなRBM値が制御棒引抜き監視補助装置3に入力される。ステップS8では、RBM値がRBL´値である設定原子炉出力P0よりも低いため、ステップS8の判定が「No」になる。RC&IS10で実行されるステップS12の判定も「No」であるので、選択制御棒19Aと同様に、選択制御棒19Bの連続引抜きが継続して行われる。選択制御棒19Bの引抜きにより原子炉出力がさらに上昇してRBM2で求められたRBM値が設定原子炉出力P0になったとき、ステップS8の判定が「Yes」になる。
【0046】
選択制御棒の連続引抜きが阻止される(ステップS9)。ステップS8の判定が「Yes」であるので、制御棒引抜き監視補助装置3が、選択制御棒19Bの連続引抜き阻止信号56をRC&IS10に出力する。RC&IS10は連続引抜き阻止信号56に基づいて連続引抜き阻止要求信号60を出力する。連続引抜き阻止要求信号60を入力し制御棒駆動補助盤11は、選択制御棒19Bを操作するCRD12に対して連続引抜き引抜き停止信号63を出力する。選択制御棒19Bを操作するCRD12は、連続引抜き引抜き停止信号63に基づいて選択制御棒19Bの引抜きを阻止する。
【0047】
連続引抜き阻止信号56を入力したRC&IS10は、選択制御棒の引抜きが完了したかを判定する(ステップS10)。入力した選択制御棒19Bの位置信号66に基づいて、選択制御棒19Bの引抜き量が、選択制御棒19Bに対する制御棒引抜き指令53に含まれた設定引抜き量になったかを判定する。選択制御棒19Aの引抜き量が、設定引抜き量になっていない場合には、ステップS10の判定は「No」である。もし、ステップS10の判定が「Yes」である場合には、RC&IS10が操作盤14に「選択制御棒19Bの引抜き完了」を示す引抜き完了信号が出力される。この引抜き完了信号が表示装置15に表示される。
【0048】
ステップS10の判定は「No」であるので、RC&IS10はステップS11の、連続引抜き中止情報及び選択制御棒引抜き未完了を示す情報を配線46により操作盤14に出力する。ステップS10の判定が「No」であるとき、RC&IS10は、該当する選択制御棒の連続引抜きが中止された時点におけるこの選択制御棒の位置信号66を用いて、この選択制御棒に対する設定引抜き量のうち、引抜かれずに残っている引抜き量(以下、引抜き残量という)を算出する。具体的には、選択制御棒19Bに対する引抜き残量が求められる。RC&IS10は、選択制御棒引抜き未完了を示す情報に引抜き残量を含めて出力する。操作盤14に伝えられた、選択制御棒19Bに関する連続引抜き中止情報、及び引抜き残量を含む選択制御棒引抜き未完了を示す情報が表示装置15に表示される。
【0049】
オペレータは、表示装置15に表示されたこれらの情報を見て、選択制御棒19Bの連続引抜きが阻止されたこと、及び選択制御棒19Bが引抜き途中であることを認識する。このため、オペレータは、操作盤14に、選択制御棒19Bの位置情報、及び引抜き量である引抜き残量を入力する。操作盤14から、選択制御棒19Bに対する位置情報及び引抜き残量を含む制御棒引抜き指令53が、制御棒引抜き監視補助装置3及びRC&IS10にそれぞれ入力される。
【0050】
RC&IS10は、その制御棒引抜き指令53に基づいて選択制御棒19Bに対する制御棒連続引抜き要求信号58を制御棒駆動補助盤11に出力する(ステップS13)。このため、選択制御棒19Bの引抜きが再開される。選択制御棒19Bに対する制御棒引抜き指令53が制御棒引抜き監視補助装置3に、再度、入力された時点においてAPRM13から入力した原子炉出力P0を、引抜き制御棒選択時における原子炉出力Pとする(ステップS2)。原子炉出力Pが原子炉出力P0であるので、ステップS3の判定が「Yes」になる。次に、(P+α)%をRBL´値に設定する(ステップS4)。ステップS4では、(P0+α)%がRBL´値に設定される。ここでは、原子炉出力上昇制限幅α%を、例えば、5%とする。(P0+α)%をRBL´値としたステップS8の判定が行われる。このとき、RBM2から入力するRBM値は(P0+α)%よりも小さいので、ステップS8の判定が「No」となり、制御棒引抜き監視補助装置3から連続引抜き阻止信号56が出力されない。この結果、選択制御棒19Bの連続引抜きが継続して行われる。
【0051】
選択制御棒19Bの連続引抜きが行われている間、RC&IS10では、ステップS12の処理が行われる。入力した選択制御棒19Bの位置信号66に基づいて、選択制御棒19Bの引抜き残量が引抜かれたかが判定される。ステップS12の判定が「Yes」になったとき、選択制御棒19Bが引抜き残量だけ引抜かれたことになる。原子炉出力は原子炉出力P3まで上昇する(図5参照)。
【0052】
ステップS12の判定が「Yes」になったとき、RC&IS10は、引抜き停止要求信号59を制御棒駆動補助盤11に出力する。この結果、選択制御棒19Bを操作するCRD12の駆動が停止され、選択制御棒19Bの引抜きが中止される。ステップS12の判定が「Yes」になったとき、RC&IS10から操作盤12に「選択制御棒19Bの引抜き完了」を示す引抜き完了信号が出力され、この引抜き完了信号が表示装置15に表示される。
【0053】
選択制御棒19Bの引抜き完了信号の表示を見たオペレータは、表示装置15に表示された制御棒引抜き情報に基づいて、次に引抜く選択制御棒19Cの炉心横断面での位置情報及び設定引抜き量情報を操作盤14から入力する。この設定引抜き量情報は、原子炉出力を、原子炉出力P3を定格出力100%まで上昇させるための選択制御棒19Cの引抜き量である。操作盤14から出力された選択制御棒19Cに対する制御棒引抜き指令53が、選択制御棒19Aの場合と同様に、制御棒引抜き監視補助装置3及びRC&IS10に入力される。RC&IS10が選択制御棒19Cに関する制御棒連続引抜き要求信号58を制御棒駆動補助盤11に出力する(ステップS13)ので、選択制御棒19Cを操作するCRD12が駆動され、選択制御棒19Cが炉心から引抜かれる。
【0054】
ステップS2では、選択制御棒19Cに対する制御棒引抜き指令53が制御棒引抜き監視補助装置3に入力された時点においてAPRM13から入力した原子炉出力P3を、引抜き制御棒選択時における原子炉出力Pとする。原子炉出力P3が設定原子炉出力P0を超えている(図5参照)ので、ステップS3の判定が「Yes」になり、ステップS4で(P3+α)%がRBL´値に設定される。(P3+α)%をRBL´値としたステップS8の判定が行われる。このとき、RBM2から入力するRBM値は(P3+α)%よりも小さいので、ステップS8の判定が「No」となり、制御棒引抜き監視補助装置3から連続引抜き阻止信号56が出力されない。この結果、選択制御棒19Bの連続引抜きが継続して行われる。
【0055】
RC&IS10では、ステップS12の処理が行われる。入力した選択制御棒19Cの位置信号66に基づいて、選択制御棒19Cに対する設定引抜き量が引抜かれたかが判定される。ステップS12の判定が「Yes」になったとき、選択制御棒19Cが設定引抜き量だけ引抜かれたことになる。原子炉出力は定格出力100%まで上昇する。
【0056】
ステップS12の判定が「Yes」になったとき、RC&IS10は、引抜き停止要求信号59を制御棒駆動補助盤11に出力する。この結果、選択制御棒19Cを操作するCRD12の駆動が停止され、選択制御棒19Bの引抜きが中止される。ステップS12の判定が「Yes」になったとき、RC&IS10から操作盤12に「選択制御棒19Cの引抜き完了」を示す引抜き完了信号が出力され、この引抜き完了信号が表示装置15に表示される。
【0057】
以上の選択制御棒の引抜き操作により、BWRは定格出力100%で運転される。
【0058】
もし、オペレータが、間違えて、選択制御棒19Cの設定引抜き量を、原子炉出力が(P3+α)%を超えるP4になるような引抜量に設定したとする。このときには、ステップS8の判定が「Yes」になるので、制御棒引抜き監視補助装置3から連続引抜き阻止信号56が出力され、選択制御棒19Cの連続引抜きが阻止される。
【0059】
本実施例の制御棒引抜き監視方法における選択制御棒の連続引抜きの要点を、図6を用いて説明する。従来例における選択制御棒の操作では、図6の左側に示したように、原子炉出力に関係なく選択制御棒の連続引抜きが可能である。本実施例の制御棒引抜き監視方法では、選択制御棒を選択した時点、すなわち、操作盤14から選択制御棒に対する制御棒引抜き指令53が出力された時点での原子炉出力(以下、選択制御棒選択時の原子炉出力という)Pが、選択制御棒の連続引抜きを停止させる原子炉出力の閾値である設定原子炉出力P0以下の原子炉出力か、設定原子炉出力P0を超える原子炉出力かによって、選択制御棒の操作の仕方が異なっている。
【0060】
選択制御棒選択時の原子炉出力Pが設定原子炉出力P0以下である場合、例えば、選択制御棒選択時の原子炉出力Pが図6に示されたレベルCの原子力出力である場合には、原子炉出力を原子力出力Pから(P+γ)%まで上昇させる際に、(P+γ)%が設定原子炉出力P0を超えない範囲で、選択制御棒の連続引抜きを許可する。選択制御棒選択時の原子炉出力Pが設定原子炉出力P0を超えている場合、例えば、選択制御棒選択時の原子炉出力Pが図6に示されたレベルBの原子力出力である場合には、原子炉出力を原子力出力Pから(P+α)%までの範囲で、選択制御棒の連続引抜きを許可する。選択制御棒の引抜きによって原子炉出力が設定原子炉出力P0を超えて上昇する場合には、原子炉出力が設定原子炉出力P0になった時点で、その選択制御棒の連続引き抜きを停止する。この選択制御棒に対する残りの引抜き量だけこの選択制御棒を引抜いて原子炉出力を上昇させる場合は、選択制御棒の連続引き抜きが設定原子炉出力P0で停止された後、設定原子炉出力P0から(P+α)%までの範囲内であれば、選択制御棒の連続引き抜きを許可する。
【0061】
本実施例は、設定原子炉出力P0を超える出力領域では、炉心からの選択制御棒19の連続引抜きによって上昇する原子炉出力が、この選択制御棒19Aに対する制御棒引抜き指令53が制御棒引抜き監視補助装置3に入力された時点(選択制御棒19の引抜き開始時点)における原子炉出力P、及び原子炉出力上昇制限幅γ(第1出力上昇制限幅)よりも狭い原子炉出力上昇制限幅α(第2出力上昇制限幅)に基づいて設定されたRBL´値を超えるとき、選択制御棒19の連続引抜きが阻止されるので、設定原子炉出力P0を超える出力領域における選択制御棒19の連続引抜きによる原子炉出力の上昇幅が、設定原子炉出力P0以下の出力領域における選択制御棒19の連続引抜きによる原子炉出力の上昇幅よりも小さくすることができる。このため、設定原子炉出力P0を超える出力領域で選択制御棒19の連続引抜による原子炉出力の上昇が可能になり、原子炉の運転上の制約を低減することができる。また、設定原子炉出力P0を超える出力領域における選択制御棒19の連続引抜きによる原子炉出力の上昇幅を小さくすることができるので、原子炉16の定格出力(100%出力)付近での選択制御棒19の誤引抜きによる熱的余裕の変化幅をさらに低減することができる。
【0062】
本実施例では、制御棒引抜き指令53が制御棒引抜き監視補助装置3に入力された時点(制御棒の引抜き開始時点)における原子炉出力Pが設定原子炉出力P0以下であっても(P+α)%が設定原子炉出力P0を超える場合には、設定原子炉出力P0をRBL´値に設定するので、もし、原子炉出力Pが設定原子炉出力P0未満で設定原子炉出力P0付近の原子炉出力になっている状態で選択制御棒19の連続引抜きを行った場合でも、この選択制御棒19の連続引き抜き開始時点の原子炉出力Pから原子炉出力上昇制限幅γ%の原子炉出力の上昇を阻止することができる。このため、設定原子炉出力P0を超える高出力領域(例えば、原子炉16の定格出力付近)での熱的余裕の変化幅をさらに低減することができる。
【0063】
本実施例では、制御棒引抜き指令53が制御棒引抜き監視補助装置3に入力された時点における原子炉出力Pが設定原子炉出力P0以下である状態で、選択制御棒19の連続引抜きを行ったときに(P+γ)%が設定原子炉出力P0を超える場合には、その選択制御棒19の連続引抜きにより上昇する原子炉出力が設定原子炉出力P0になったとき、選択制御棒19の連続引抜きが阻止される。この連続引抜きが阻止された選択制御棒19の引抜き残量が、制御棒位置検出器24から出力される位置信号に基づいて求められ、表示装置15に表示される。このため、オペレータが、連続引抜が停止された選択制御棒19を引抜き残量だけ引抜くために、この選択制御棒19の上記位置情報及び設定引抜き量(引抜き残量)の操作盤14への入力を容易に行うことができる。
【0064】
特開2008−256548号公報では、設定原子炉出力(例えば95%)出力以上において十分な熱的余裕が確保されている炉心状態であっても、制御棒の連続引抜きがその設定原子炉出力で停止される。そして、設定原子炉出力を超える原子炉出力の上昇は、制御棒のノッチ操作またはステップ操作によって行われる。これに対し、本実施例では、設定原子炉出力P0を超える原子炉出力の上昇においても、熱的余裕が確保される範囲で予め設定した出力上昇制限幅内での制御棒19の連続引抜きが可能であり、高出力領域における制御棒操作の運用性が優れている。
【0065】
こので、制御棒の連続引抜きとは、制御棒引抜きを制御するRC&IS10にて制御棒引抜きモードを「連続引抜き」に設定された状態で行われる制御棒引抜き操作である。具体的には、この連続引抜きモードでは、オペレータが操作盤14に設けられた制御棒引抜きボタンを押している間、RC&IS10から制御棒連続引抜き信号58が出力され、制御棒19が炉心から連続的に引抜かれる。制御棒のノッチ操作(またはステップ操作)は、操作盤14からオペレータによって設定され、RC&IS10にて制御棒引抜きモードを「ノッチ操作(またはステップ操作)」に設定された状態で行う制御棒引抜き操作である。この場合、制御棒を炉心から1ノッチ(または1ステップ)引抜くたびに、オペレータは操作盤14に設けられた制御棒引抜きボタンを押す必要がある。なお、燃料集合体18に含まれる燃料棒の熱的余裕への影響は、制御棒19の引抜きが(短時間に)連続的に行われる場合に顕著に現れる。ノッチ操作(またはステップ操作)は、操作盤14に設けられたボタンの操作ごとにオペレータによる判断及び操作が介在することから、熱的余裕への影響はない操作であるとし、本実施例では、この二つを制御棒操作を使い分けている。
【0066】
設定原子炉出力P0としては任意の出力レベルを設定することが可能であり、設定原子炉出力P0に応じた出力上昇制限幅αを設定することによって、上記の実施例と同等の効果が期待できる。
【実施例2】
【0067】
本発明の他の実施例である実施例2の制御棒引抜き監視方法を、図7及び図8を用いて説明する。
【0068】
本実施例の制御棒引抜き監視方法に用いられる制御棒引抜き監視システム1Aは、図7に示すように、実施例1に用いられる制御棒引抜き監視システム1において制御棒引抜き監視補助装置3を制御棒引抜き監視補助装置3Aに替えた構成を有する。制御棒引抜き監視システム1Aの他の構成は制御棒引抜き監視システム1と同じである。制御棒引抜き監視補助装置3Aは、図8に示す一点差線で囲まれた範囲の各処理を実行する。制御棒引抜き監視補助装置3Aで実行される処理は、制御棒引抜き監視補助装置3で実行される処理のうちステップS4、S5,S6の各処理をステップS4A,S5A,S6Aの各処理に替えた処理である。制御棒引抜き監視補助装置3Aで実行されるステップS4A,S5A,S6A以外の処理は、制御棒引抜き監視補助装置3で実行されるステップS4、S5,S6以外の処理と同じである。
【0069】
本実施例におけるBWRの運転領域の一例を、炉心流量と原子炉出力の関係で示すと、図9のようになる。実施例1と同様に、原子炉出力が設定原子炉出力P0になったとき、選択制御棒の連続引き抜きが停止される。本実施例では、原子炉出力上昇制限幅α%及びγ%の替りに、原子炉出力上昇制限比β及びδを用いる。β及びδはβ<δの関係にある。原子炉出力上昇制限比βは、例えば、1.05であり、図10に示すように、設定原子炉出力P0を超える原子炉出力領域での、選択制御棒の連続引抜きによる出力上昇に対して適用される。ちなみに、設定原子炉出力P0以下の原子炉出力領域での、選択制御棒の連続引抜きによる出力上昇に対しては、原子炉出力上昇制限比δが適用される。原子炉出力上昇制限比δは、選択制御棒選択時の原子炉出力Pにδ%を掛けて得られる原子炉出力が、制御棒引抜きシーケンスで設定されている各選択制御棒19の引抜き量のうち最大の引抜き量で上昇した後における原子炉出力以上になるように設定される。本実施例では、原子炉出力上昇制限比δは、例えば、選択制御棒選択時の原子炉出力Pにδ%を掛けて得られる原子炉出力が、制御棒引抜きシーケンスで設定されている各選択制御棒19の引抜き量のうち最大の引抜き量で上昇した後における原子炉出力になるように設定される。本実施例における設定原子炉出力P0は、例えば、95%である。
【0070】
本実施例の制御棒引抜き監視方法を、実施例1のそれと異なる部分について、図8及び図11を用いて説明する。選択制御棒として、選択制御棒19A,19B,19Cが用いられる。
【0071】
選択制御棒19Aに対する制御棒引抜き指令53が、操作盤14から制御棒引抜き監視補助装置3A及びRC&IS10に入力される。RC&IS10から出力された、選択制御棒19Aに対する制御棒連続引抜き要求信号58により、選択制御棒19Aを操作するCRD12が駆動される。これにより、選択制御棒19Aが炉心から引抜かれる。
【0072】
原子炉出力P1が原子炉出力Pとなり、ステップS3の判定が「No」になる。(P1×δ)が設定原子炉出力P0以下であるので、ステップS5Aの判定が「Yes」となる。このため、(P1×δ)%がRBL´値に設定される(ステップS6A)。(P1×δ)をRBL´値としてステップS8の判定が行われる。ステップS8の判定が「No」であるので、制御棒引抜き監視補助装置3Aが選択制御棒19Aの連続引抜き阻止信号56を出力せず、選択制御棒19Aの連続引抜きが継続して行われる。ステップS12の判定が「Yes」になったとき、選択制御棒19Aの引抜きが停止される。
【0073】
その後、選択制御棒19Bに対する制御棒引抜き指令53が、操作盤14から制御棒引抜き監視補助装置3A及びRC&IS10に入力される。そして、選択制御棒19Bが引抜かれる。制御棒引抜き監視補助装置3Aでは、選択制御棒19Bに対する制御棒引抜き指令53を入力した時点での原子炉出力P2が、引抜き制御棒選択時における原子炉出力Pとされる(ステップS2)。ステップS3,S5Aの各判定が「No」になり、設定原子炉出力P0がRBL´値に設定される(ステップS7)。設定原子炉出力P0をRBL´値としてステップS8の判定が行われる。ステップS8の判定が「No」であるので、制御棒引抜き監視補助装置3Aが選択制御棒19Aの連続引抜き阻止信号56を出力せず、選択制御棒19Aの連続引抜きが継続して行われる。やがて、実施例1と同様に、ステップS12の判定が「Yes」になる。このため、制御棒引抜き監視補助装置3Aから選択制御棒19Aの連続引抜き阻止信号56が出力され(ステップS9)、選択制御棒19Bの連続引抜きが停止される。
【0074】
選択制御棒19Bは、設定引抜き量まで引抜かれていないので、選択制御棒19Bの連続引抜きが停止された後、再度、操作盤14から、選択制御棒19Bに対する制御棒引抜き指令53が、操作盤14から制御棒引抜き監視補助装置3A及びRC&IS10に、再度、入力される。このため、選択制御棒19Bは、原子炉出力が(P0+β)%に上昇するまで連続引抜きされる。
【0075】
選択制御棒19Bに対する制御棒引抜き指令53が制御棒引抜き監視補助装置3に、再度、入力された時点でAPRM13から入力した原子炉出力P0を、引抜き制御棒選択時における原子炉出力Pとする(ステップS2)。ステップS3の判定が「Yes」となるので、(P0×β)%がRBL´値に設定される(ステップS4A)。(P0×β)をRBL´値としてステップS8の判定が行われる。ステップS8の判定が「No」であるので、制御棒引抜き監視補助装置3Aが選択制御棒19Bの連続引抜き阻止信号56を出力せず、選択制御棒19Bの連続引抜きが継続して行われる。やがて、実施例1と同様に、選択制御棒19Bが引抜き量の残量だけ引抜かれたとき、ステップS12の判定が「Yes」になる。このため、選択制御棒19Bの引抜きが停止される。
【0076】
操作盤14から、選択制御棒19Cに対する制御棒引抜き指令53が、操作盤14から制御棒引抜き監視補助装置3A及びRC&IS10に入力される。このため、選択制御棒19Cは、実施例1と同様に、原子炉出力が定格出力(100%出力)に上昇するまで連続引抜きされる。
【0077】
選択制御棒19Cに対する制御棒引抜き指令53が制御棒引抜き監視補助装置3に入力された時点でAPRM13から入力した原子炉出力P3を、引抜き制御棒選択時における原子炉出力Pとする(ステップS2)。ステップS3の判定が「Yes」となるので、(P3×β)%がRBL´値に設定される(ステップS4A)。(P3×β)をRBL´値としてステップS8の判定が行われる。ステップS8の判定が「No」であるので、制御棒引抜き監視補助装置3Aが選択制御棒19Cの連続引抜き阻止信号56を出力せず、選択制御棒19Cの連続引抜きが継続して行われる。やがて、実施例1と同様に、選択制御棒19Cが引抜き量の残量だけ引抜かれたとき、ステップS12の判定が「Yes」になる。このため、選択制御棒19Cの引抜きが停止される。
【0078】
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる
【符号の説明】
【0079】
1,1A…制御棒引抜き監視システム、2…制御棒引抜き監視装置(RBM)、3,3A…制御棒引抜き監視補助装置、10…制御棒操作監視装置(RC&IS)、11…制御棒駆動補助盤、12…制御棒駆動機構(CRD)、13…平均出力領域モニタ(APRM)、14…操作盤、15…表示装置、16…原子炉、17…原子炉圧力容器、18…燃料集尾具体、19…制御棒、20…炉心流量検出器、21…局部出力領域モニタ(LPRM)、24…位置検出器。
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御棒引抜き監視方法に係り、特に、沸騰水型原子炉に適用するのに好適な制御棒引抜き監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の制御棒引抜き監視システムは、制御棒引抜き監視装置及び制御棒操作監視装置を有する。制御棒引抜き監視装置は、選択した制御棒の過剰な引抜によって当該制御棒付近の出力が上昇し、燃料棒の熱的余裕、すなわち、最小限界出力比(MCPR)が安全限界値を下回ることがないように、炉心内に均等に配置されている複数の局部出力領域モニタ(以下「LPRM」と称する)でそれぞれ検出された炉心内の中性子束に関する、中性子検出信号であるLPRM信号、原子炉内に設置される炉心流量検出器からの炉心流量信号、及び制御棒操作監視装置(以下、RC&IS又はRMCSと称する。本明細書では、RC&ISのみ記載)から出力される操作対象の制御棒の位置信号を入力し、制御棒の引抜操作の監視を行う。
【0003】
制御棒引抜き監視装置は、操作する制御棒が選択されると、RC&ISから選択制御棒の位置信号を入力して、選択制御棒の周囲のLPRM信号を制御棒引抜き監視の為に選択する。制御棒引抜き監視装置は、選択したLPRM信号に基づいて制御棒引抜き監視に用いる原子炉出力である制御棒引抜き監視出力(以下、RBM値と称する)を求める。また、制御棒引抜き監視装置は、炉心流量検出器の出力である炉心流量信号を入力し、この信号に基づいた炉心流量を関数とした制御棒引抜き阻止設定出力(以下、RBL値と称する)を求める。制御棒引抜き監視装置は、算出したRBM値とRBL値を比較器で比較し、オペレータの誤操作による制御棒の過剰な引抜によりRBM値が上昇し、RBL値に到達した場合は、RC&ISへ制御棒引抜き阻止信号を出力する。RC&ISは、制御棒引抜き阻止信号を入力したとき、制御棒駆動装置による制御棒の引抜き操作を停止させる。制御棒の引抜き操作が停止されることによって、過剰な制御棒の引抜きが阻止されるので、燃料棒の健全性を保つことができる。制御棒引抜き監視装置は、複数のRBL値(通常は3つ)を有しており、オペレータの要求または制御棒引抜き監視装置が有するRBL値のセットアップ機能によりRBL値を上位レベルに変更し、制御棒引抜き阻止を除外する機能を有する。
【0004】
特開昭57−136197号公報及び特開2000−162356号公報は、上記した制御棒引抜き監視装置について説明している。
【0005】
従来の制御棒引抜き監視装置は、炉心流量を変数としたRBL値を複数(通常は3つ)有している。これらRBL値は、原子炉の定格出力付近に設定され、オペレータによる変更要求が無い限り固定された値である。従来の制御棒引抜き監視装置ではRBL値が定格出力近傍に設定されているので、仮に、原子炉出力が低出力である状態で、オペレータの誤操作等による過剰な制御棒の引抜き操作が発生した場合、RBM値に余裕があったとしても、炉心内の燃料集合体の状態によって熱的余裕の変化が大きくなる。このため、一部の燃料棒が熱的に厳しい状態になることも考えられる。
【0006】
特開2008−256548号公報は、このような問題点を解消するために、炉心からの制御棒の引抜き時における最小限界出力比が最小限界出力比設定値以下であるときに生成される引抜き阻止信号、及びに配置された局部出力領域モニタから出力される中性子検出信号に基づいて生成される引抜き阻止信号のいずれか一方の引抜き阻止信号に基づいて制御棒の引抜きを停止させる制御棒引抜き監視システムを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭57−136197号公報
【特許文献2】特開2000−162356号公報
【特許文献3】特開2008−256548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特開2008−256548号公報に記載された制御棒引抜き監視システムも、炉心流量を変数としたRBL値を複数(通常は3つ)有している。これらRBL値は、原子炉の定格出力付近に設定され、オペレータによる変更要求が無い限り固定値である。その制御棒引抜き監視システムは、このRBL値の幅の内側であれば制御棒の連続引抜が可能である。しかしながら、炉心に装荷された燃料集合体に含まれる燃料棒を保護する観点から、定格出力付近で制御棒の引抜き量をより小さい幅に制限し、熱的余裕の変化をより小さくしたいという要求があった。特開2008−256548号公報では、原子炉出力が出力設定値(例えば、95%出力)以上になったとき、制御棒の連続引抜きを停止し、ノッチ操作またはステップ操作で制御棒の引き抜きを行っている。
【0009】
上記の要求に対処するために、そのRBL値の幅を従来の設定幅よりも小さい固定値(後述の図6のレベルA,B及びCの相互間の間隔を狭める固定値)にした場合には、原子炉運転上の制約が大きくなるという新たな問題が生じることを、発明者らが見出した。このため、発明者らは、原子炉運転上の制約及び熱的余裕の変化を小さくできる制御棒の連続引抜きを可能にする制御棒引抜き監視システムを実現することが必要であるとの認識を持った。
【0010】
本発明の目的は、原子炉の運転上の制約を少なくし、定格出力付近での制御棒の誤引き抜きによる熱的余裕の変化幅をさらに低減できる制御棒引抜き監視方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、原子炉の定格出力よりも低い原子炉出力である設定原子炉出力以下の出力領域では、原子炉の炉心からの制御棒の連続引抜きによって上昇する原子炉出力が、この制御棒の引抜き開始時点における原子炉出力及び第1出力上昇制限幅に基づいて設定された第1原子炉出力上限以下であるとき、制御棒の連続引抜きを継続し、
設定原子炉出力を超える出力領域では、炉心からの制御棒の連続引抜きによって上昇する原子炉出力が、この制御棒の引抜き開始時点における原子炉出力、及び第1出力上昇制限幅よりも狭い第2出力上昇制限幅に基づいて設定された第2原子炉出力上限を超えるとき、制御棒の連続引抜きを阻止することにある。
【0012】
設定原子炉出力を超える出力領域では、炉心からの制御棒の連続引抜きによって上昇する原子炉出力が、この制御棒の引抜き開始時点における原子炉出力、及び第1出力上昇制限幅よりも狭い第2出力上昇制限幅に基づいて設定された第2原子炉出力上限を超えるとき、制御棒の連続引抜きが阻止されるので、設定原子炉出力を超える出力領域における制御棒の連続引抜きによる原子炉出力の上昇幅が、設定原子炉出力以下の出力領域における制御棒の連続引抜きによる原子炉出力の上昇幅よりも小さくすることができる。このため、設定原子炉出力を超える出力領域で制御棒の連続引抜による原子炉出力の上昇が可能になり、原子炉の運転上の制約を低減することができる。また、設定原子炉出力を超える出力領域における制御棒の連続引抜きによる原子炉出力の上昇幅を小さくすることができるので、原子炉の定格出力付近での制御棒の誤引抜きによる熱的余裕の変化幅をさらに低減することができる。
【0013】
好ましくは、制御棒の引抜き開始時点における原子炉出力を基点として第1出力上昇制限幅で設定された第1原子炉出力上限以下で原子炉出力を上昇させる制御棒の連続引抜きによって、上昇する原子炉出力が、設定原子炉出力に到達したとき、制御棒の連続引き抜きを阻止し、設定原子炉出力を超える出力領域では、連続引抜きが停止された制御棒の連続引抜きの再開によって上昇する原子炉出力が、制御棒の連続引き抜き再開時の原子炉出力及び第2出力上昇制限幅に基づいて設定された第2原子炉出力上限を超えるとき、連続引抜きを再開した制御棒の連続引抜きを阻止することが望ましい。
【0014】
制御棒の引抜き開始時点における原子炉出力を基点として第1出力上昇制限幅で設定された第1原子炉出力上限以下で原子炉出力を上昇させる制御棒の連続引抜きによって、上昇する原子炉出力が、設定原子炉出力に到達したとき、制御棒の連続引き抜きを阻止するので、原子炉出力が設定原子炉出力未満で設定原子炉出力付近の原子炉出力(例えば、設定原子炉出力よりも僅かに低い原子炉出力)になっている状態で制御棒の連続引抜きを行った場合でも、原子炉出力が設定原子炉出力になったときにその制御棒の連続引抜が阻止される。また、原子炉出力が設定原子炉出力を超える領域では、原子炉出力が、設定原子炉出力を基点とする、第1出力上昇制限幅よりも小さい第2出力上昇制限幅に到達するまではその制御棒の連続引抜きが許容される。しかしながら、原子炉出力が設定原子炉出力を基点とする第2出力上昇制限幅を超えるとき、その制御棒の連続引抜きが再度阻止され、設定原子炉出力を基点とする第2出力上昇制限幅を超える原子炉出力の上昇を阻止することができる。このため、設定原子炉出力を超える高出力領域での熱的余裕の変化幅をさらに低減することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、原子炉の運転上の制約を少なくし、定格出力付近での制御棒の誤引き抜きによる熱的余裕の変化幅をさらに低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の制御棒引抜き監視方法に用いられる制御棒引抜き監視システムの構成図である。
【図2】図1に示す制御棒引抜き監視補助装置で実行される処理を中心とした、実施例1における選択制御棒の引抜き時における制御棒引抜き監視システムでの処理を示すフローチャートである。
【図3】実施例1の制御棒引抜き監視方法におけるBWRの運転領域を示す説明図である。
【図4】実施例1の制御棒引抜き監視方法において設定原子炉出力P0を超えた出力領域における原子炉出力上昇制限幅αを示す説明図である。
【図5】実施例1の制御棒引抜き監視方法において設定原子炉出力P0以下の出力領域及び設定原子炉出力P0を超えた出力領域での選択制御棒の引抜き操作を示す説明図である。
【図6】従来例及び実施例1における選択制御棒の連続引抜き操作を示す説明図である。
【図7】本発明の他の実施例である実施例2の制御棒引抜き監視方法に用いられる制御棒引抜き監視システムの構成図である。
【図8】図2に示す制御棒引抜き監視補助装置で実行される処理を中心とした、実施例2における選択制御棒の引抜き時における制御棒引抜き監視システムでの処理を示すフローチャートである。
【図9】実施例2の制御棒引抜き監視方法におけるBWRの運転領域を示す説明図である。
【図10】実施例2の制御棒引抜き監視方法において設定原子炉出力P0を超えた出力領域における原子炉出力上昇制限比βを示す説明図である。
【図11】実施例2の制御棒引抜き監視方法において設定原子炉出力P0以下の出力領域及び設定原子炉出力P0を超えた出力領域での選択制御棒の引抜き操作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施例を、以下に説明する。
【実施例1】
【0018】
本発明の好適な一実施例である実施例1の制御棒引抜き監視方法を、図1及び図2を用いて説明する。
【0019】
まず、制御棒引抜き監視システム1が適用される沸騰水型原子炉(BWR)の概要を説明する。原子炉16は、原子炉圧力容器17、複数の燃料集合体18が装荷された炉心(図示せず)及び複数の制御棒19を備えている。1本の制御棒19の周りを4体の燃料集合体18が取り囲んでいる。炉心は原子炉圧力容器17内に配置され、制御棒19が、炉心に装荷された隣り合う燃料集合体18の相互間に挿入される。それぞれの制御棒19は、別々に制御棒駆動機構(以下、CRDという)12に連結される。CRD12は、原子炉圧力容器17の底部に取り付けられた制御棒駆動機構ハウジング(図示せず)内に設置され、制御棒19の炉心への挿入操作及び制御棒19の炉心からの引抜操作を行う。炉心の軸方向に配置された4つの局部出力領域モニタ(以下、LPRMという)21を含む複数のLPRM集合体22が、炉心内で燃料集合体18の相互間で制御棒19の操作に支障にならない位置に配置される。LPRM21は中性子検出器である。これらのLPRM集合体22は、炉心内で1/4回転対象になる位置に配置されている。炉心流量検出器20が原子炉圧力容器17に設置される。
【0020】
本実施例の制御棒引抜き監視方法に用いられる制御棒引抜き監視システム1は、図1に示すように、制御棒引抜き監視装置(以下、RBMという)2、制御棒引抜き監視補助装置3、制御棒操作監視装置(以下、RC&ISという)10及び制御棒駆動補助盤11を有する。
【0021】
各LPRM21に1本ずつ接続された配線23−1〜23−nは、RBM2及び平均出力領域モニタ(以下、APRMという)13に接続される。炉心流量検出器20が配線36によってRBM2に接続される。制御棒引抜き監視補助装置3が、配線38によってRBM2に接続され、さらに、配線41によってRC&IS10に接続される。表示装置15を有する操作盤14が配線40によって制御棒引抜き監視補助装置3に接続される。RC&IS10が配線44,46によっても操作盤14に接続される。制御棒駆動補助盤11が、配線42によってRC&IS10に接続され、配線43によってCRD12に接続される。
【0022】
制御棒引抜き監視システム1を用いて行われる本実施例の制御棒引抜き監視方法を以下に説明する。
【0023】
BWRの起動時には、制御棒19が、CRD12の操作により、炉心から引抜かれて未臨界状態から臨界状態になる。その後、制御棒19がさらに引抜かれる昇温昇圧過程を経て、原子炉出力が定格出力まで上昇される。このような制御棒19の引抜きに際して、制御棒引抜きシーケンスの制御棒引抜き情報が、順次、操作盤14の表示装置15に表示される。引抜き対象の制御棒(以下、選択制御棒という)19に関する制御棒引抜き情報は、選択制御棒19の炉心横断面における位置情報及び設定引抜き量の情報を含んでいる。オペレータは、表示装置15に表示された制御棒引抜き情報に基づいて、次に引抜く選択制御棒19の炉心横断面での位置情報及び設定引抜き量情報を操作盤14から入力する(ステップS1(図2参照))。これらの情報を入力することによって、操作盤14から、該当する選択制御棒19を操作するCRD12に対する制御棒引抜き指令53が出力される。制御棒引抜き指令53は、選択制御棒19の上記位置情報及び設定引抜き量情報を含んでいる。制御棒引抜き指令53が、配線40を経て制御棒引抜き監視補助装置3に入力され、配線44によりRC&IS10に入力される。
【0024】
制御棒引抜き指令53を入力したRC&IS10は、選択制御棒19に対する制御棒連続引抜き要求信号58を制御棒駆動補助盤11に出力する(ステップS13(図2参照))。制御棒連続引抜き要求信号58に基づいて制御棒駆動補助盤11から出力された制御棒連続引抜き信号61が、上記位置情報で指定された選択制御棒19を操作するCRD12を駆動させる。これによって、選択制御棒19が設定引抜き量だけ炉心から引抜かれる。選択制御棒19の引抜き量は、CRD12に設けられた制御棒位置検出器24で検出された、炉心軸方向における制御棒の位置に基づいて把握することができる。制御棒位置検出器24で検出された制御棒19の炉心軸方向の位置が、RC&IS10に入力される。
【0025】
原子炉出力の上昇過程では、選択制御棒19の引抜きによって、原子炉出力が上昇する。特に、選択制御棒19に隣接する4体の燃料集合体18で出力が増大する。
【0026】
BWRの運転中、炉心には冷却水が供給され、燃料集合体18に含まれる各燃料棒を冷却する。炉心に供給される冷却水流量は、再循環ポンプ(図示せず)(またはインターナルポンプ)によって制御され、炉心流量検出器20によって検出される。その冷却水流量を検出した炉心流量検出器20は、炉心流量信号51を配線36に出力する。この炉心流量信号51がRBM2に入力される。各燃料棒に含まれた核燃料物質の核分裂で発生した熱によってその冷却水が加熱され、冷却水の一部が蒸気になる。この蒸気は、原子炉圧力容器27に接続された主蒸気配管(図示せず)によりタービン(図示せず)に導かれる。
【0027】
炉心内に配置された各LPRM集合体22に設けられたそれぞれのLPRM21は、BWRの起動後において、選択制御棒19の炉心からの引抜きにより、燃料集合体18に含まれる核燃料物質の核分裂によって発生した中性子束を検出し、この中性子束の検出信号(以下、LPRM信号という)を出力する。それぞれのLPRM21から出力されたLPRM信号(中性子検出信号)50−1〜50−nは、配線23−1〜23−nを通ってRBM2に入力され、配線23−1〜23−n及び配線37を通ってAPRM13に入力される。APRM13はLPRM信号50−1〜50−nを平均して原子炉出力を求める。
【0028】
RBM2は、オペレータの操作盤14での誤操作等により、選択制御棒19の過剰引抜が発生し、選択制御棒19の周りに位置する燃料集合体18における出力の増加幅が大きくなる場合にその燃料集合体18の熱的余裕を確保するために、その選択制御棒19の引抜きを阻止する機能を有する。このため、RBM2は、配線23−1〜23−nによってLPRM信号50−1〜50−nを、及び配線36によって炉心流量信号51を入力する。RBM2は、選択制御棒19の引抜きを監視するために、選択制御棒19の周囲に位置するLPRM集合体22内に存在する各LPRM21から出力された各LPRM信号のうち、該当するLPRM信号を用いてRBM値を算出する(ステップS14(図2参照))。
【0029】
具体的には、RBM2のLPRM信号選択部(図示せず)は、選択制御棒19が炉心の中央部に位置している場合には、その選択制御棒19に隣接している4つのLPRM集合体22内に存在する合計16個のLPRM21から出力されたLPRM信号50を、選択制御棒19が炉心の周辺部に位置している場合には、その選択制御棒19に隣接している3つまたは2つのLPRM集合体22内に存在する全てのLPRM21から出力されたLPRM信号50を、LPRM信号50−1〜50−nから選択する。そして、LPRM信号選択部は、入力した炉心流量信号36及び選択した全てのLPRM信号50を用いてRBM値を算出する。このRBM値の算出はLPRM信号選択部の演算周期ごとに行われ、RBM値は新たに算出されたRBM値によって更新される。
【0030】
選択制御棒19の引抜き操作によりRBM値がRBL値に到達したとき、RBM2は、配線38を通して、ロッドブロックのための制御棒引抜き阻止信号55を制御棒引き抜監視補助装置3に出力する。この制御棒引抜き阻止信号55は、制御棒引抜き監視補助装置3、RC&IS10及び制御棒駆動補助盤11を経て該当するCRD12に伝えられる。該当するCRD12は選択制御棒19の引抜きを阻止する。
【0031】
RBM2は、複数のRBL値(通常は3つ)を有している。すなわち、これらは、3つの制御棒引抜阻止設定ライン(RBライン)、具体的には、正RBラインA、中間RBラインB及び低RBラインCの3つのライン、及び炉心流量で定まるそれぞれのRBL値である。オペレータが、操作盤14に設けられたマンマシンインターフェイス(以下、MMIと称する)から入力したRBL値セットアップ要求により、RBL値を上位のRBL値に変更する機能を有する。このため、RBM値がRBL値に到達し、選択制御棒19の引抜き阻止が発生した時は、セットアップ要求によって、上位のRBL値にセットアップし(例えば、中間RBラインBを正RBラインAにセットアップする)、選択制御棒19の引抜き阻止を除外させる。但し、最上位のRBM値(正RBラインAのRBM値)はセットアップすることができない。このRBLセットアップ機能は、RBM2の拡張機能である。RBM2のLPRM信号処理部がRBM値及び炉心流量信号51を監視することによって、RBM2が、オペレータのMMIからの操作を介さずに、RBLセットアップを自ら行うこともできる。また、制御棒19を炉心に挿入する原子炉出力の降下時では、RBM2は、RBM値及び炉心流量信号51を監視し、RBL値のセットダウンを自ら行い、RBL値を低位RBL値に変更する(例えば、中間RBラインBを低RBラインCに変更する)ことができる。
【0032】
本実施例におけるBWRの運転領域の一例を、炉心流量と原子炉出力の関係で示すと、図3のようになる。図3において、設定原子炉出力P0は、定格出力よりも低く、選択制御棒19の連続引抜きを停止させる原子炉出力の閾値である。すなわち、選択制御棒19の連続引抜き操作中に、APRM13で求められた原子炉出力が設定原子炉出力P0を超える場合には、その原子炉出力が設定原子炉出力P0になったとき、選択制御棒19の連続引抜きを停止させる。
【0033】
α%及びγ%は原子炉出力の上昇制限幅を示しており、α<γの関係にある。原子炉出力上昇制限幅γ%は、制御棒引抜きシーケンスで設定されている各選択制御棒19の引抜き量のうち最大の引抜き量で上昇する原子炉出力の上昇幅以上に設定されている。本実施例では、原子炉出力上昇制限幅γ%は、その最大の引抜き量で上昇する原子炉出力の上昇幅に設定されている。本実施例では、原子炉出力上昇制限幅α%は、5%であり、図4に示すように、設定原子炉出力P0を超える原子炉出力領域での、選択制御棒19の連続引抜きによる出力上昇に対して適用される。ちなみに、設定原子炉出力P0以下の原子炉出力領域での、選択制御棒19の連続引抜きによる出力上昇に対しては、原子炉出力上昇制限幅γ%が適用される。本実施例における設定原子炉出力P0は、例えば、95%である。
【0034】
前述したように、RC&IS10から出力された、選択制御棒19に対する制御棒連続引抜き要求信号58に基づいて、選択制御棒19が炉心から引抜かれることにより、原子炉出力が上昇する。各LPRM集合体22に含まれるLPRM21からそれぞれ出力されたLPRM信号50−1〜50−nがAPRM13に入力される。APRM13は、LPRM信号50−1〜50−nを平均して原子炉出力を求め、この原子炉出力を配線39に出力する。APRM13から出力された原子炉出力が、制御棒引抜き監視補助装置3に入力される。APRM13は、常時、LPRM信号50−1〜50−nを入力して原子炉出力を求めている。
【0035】
制御棒シーケンスで設定された選択制御棒19の一部が、例えば、図5に示された、原子炉出力P1を原子炉出力P2まで上昇させる設定引抜き量が設定された選択制御棒19A、原子炉出力P2を原子炉出力P3まで上昇させる設定引抜き量が設定された選択制御棒19B、及び原子炉出力P3を原子炉出力100%まで上昇させる設定引抜き量が設定された選択制御棒19Cであると想定する。
【0036】
本実施例の制御棒引抜き監視システム1に用いられた制御棒引抜き監視補助装置3の機能を、図5に示された出力上昇を例にして、図2を用いて説明する。制御棒引抜き監視補助装置3は、図2において一点差線で囲んだステップS2〜S9の各処理を実行する。図2に示されたステップS10〜S13の各処理は、RC&IS10で実行される。
【0037】
操作盤14から出力された選択制御棒19Aに対する制御棒引抜き指令53が、制御棒引抜き監視補助装置3及びRC&IS10に入力される。RC&IS10が選択制御棒19Aに関する制御棒連続引抜き要求信号58を制御棒駆動補助盤11に出力する(ステップS13)。制御棒連続引抜き要求信号58の出力により、選択制御棒19Aを操作するCRD12が駆動され、選択制御棒19Aが炉心から連続的に引抜かれる。
【0038】
引抜き制御棒選択時における原子炉出力Pを入力する(ステップS2)。選択制御棒19Aに対する制御棒引抜き指令53が制御棒引抜き監視補助装置3に入力された時点(制御棒の引抜き開始時点)においてAPRM13から入力した原子炉出力P1を、引抜き制御棒選択時における原子炉出力Pとする。原子炉出力Pが設定原子炉出力P0以下であるかを判定する(ステップS3)。原子炉出力P1が設定原子炉出力P0以下である(図5参照)ので、ステップS3の判定は「No」になる。このため、原子炉出力(P+γ)が設定原子炉出力P0以下であるかを判定する(ステップS5)。図5に示すように、原子炉出力(P1+γ)である原子炉出力P2が設定原子炉出力P0以下であるので、ステップS5の判定が「Yes」になる。次に、原子炉出力(P+γ)を原子炉出力上昇上限値(原子炉出力上限)(以下、RBL´値という)に設定する(ステップS6)。原子炉出力(P1+γ)が原子炉出力P2であるので、RBL´値として原子炉出力P2が設定される。
【0039】
RBM値がRBL´値以上であるかを判定する(ステップS8)。選択制御棒19Aが連続引抜きされているときにRBM2で求められたRBM値が、RBM信号として配線38により制御棒引抜き監視補助装置3に入力される。このRBM値は、前述したように、RBM2において、選択制御棒19Aの周囲に位置するLPRM集合体22内に存在する各LPRM21から出力された各LPRM信号のうち、該当するLPRM信号を用いて求められる(ステップS14)。選択制御棒19Aの引抜きに伴って、この選択制御棒19Aの周囲に存在する燃料集合体18を中心に出力が上昇し、RBM2で求められるRBM値も増大する。しかしながら、選択制御棒19Aが、制御棒引抜きシーケンスで設定された引抜き量まで引抜かれるまでの期間では、RBM2で求められたRBM値がRBL´値である原子炉出力P2よりも低い。このため、ステップS8の判定が「No」になる。
【0040】
ステップS8の判定が「No」である場合、制御棒引抜き監視補助装置3は、この判定結果に対しては何もしなく、今までの状態を継続する。制御棒引抜き監視補助装置3は、ステップS8の判定に対しては、「Yes」のときだけ、後述するような選択制御棒の連続引抜き阻止信号56を出力する。図2において、ステップS8の判定に対して「No」を記入したのは、BWRの運転に関する説明を分かりやすくするためである。また、ステップS12の判定に対して「No」を記入したのも、同じ理由である。
【0041】
ステップS8の判定が「No」の場合には、換言すれば、ステップS8の判定が「Yes」にならない場合には、選択制御棒19Aが連続的に引抜かれている。CRD12に設けられた制御棒位置検出器24で、時々刻々、検出された、炉心軸方向における選択制御棒19Aの位置信号66が配線47によりRC&IS10に入力される。RC&IS10が、選択制御棒の引抜きが完了したかを判定する(ステップS12)。入力した選択制御棒19Aの位置信号66に基づいて、選択制御棒19Aの引抜き量が、選択制御棒19Aに対する制御棒引抜き指令53に含まれた設定引抜き量になったかを判定する。選択制御棒19Aの引抜き量が、設定引抜き量になっていない場合には、ステップS12の判定は「No」である。ステップS12の判定が「No」であるとき、RC&IS10はこの判定結果に対しては何もしなく、今までの状態を継続する。すなわち、選択制御棒19Aの連続引抜き及びステップS8の判定が継続して行われる。
【0042】
選択制御棒19Aの引抜き操作が継続されると、やがて、ステップS12の判定が「Yes」になる。ステップS12の判定が「Yes」になったとき、RC&IS10は、引抜き停止要求信号59を制御棒駆動補助盤11に出力する。引抜き停止要求信号59を入力した制御棒駆動補助盤11は、選択制御棒19Aを操作するCRD12に対して引抜き停止信号62を出力する。選択制御棒19Aを操作するCRD12は、引抜き停止信号62に基づいて選択制御棒19Aの引抜きを中止する。このとき、選択制御棒19Aは設定引抜き量だけ炉心から引抜かれている。ステップS12の判定が「Yes」になったとき、RC&IS10から操作盤12に配線45を通して「選択制御棒19Aの引抜き完了」を示す引抜き完了信号が出力される。この引抜き完了信号が表示装置15に表示される。選択制御棒19Aが設定引抜き量だけ引抜かれたとき、原子炉出力が原子炉出力P2まで上昇する。
【0043】
選択制御棒19Aの引抜き完了信号の表示を見たオペレータは、表示装置15に表示された制御棒引抜き情報に基づいて、次に引抜く選択制御棒19Bの炉心横断面での位置情報及び設定引抜き量情報を操作盤14から入力する。操作盤14から出力された選択制御棒19Bに対する制御棒引抜き指令53が、選択制御棒19Aの場合と同様に、制御棒引抜き監視補助装置3及びRC&IS10に入力される。RC&IS10が選択制御棒19Bに関する制御棒連続引抜き要求信号58を制御棒駆動補助盤11に出力する(ステップS13)ので、選択制御棒19Bを操作するCRD12が駆動され、選択制御棒19Bが炉心から連続的に引抜かれる。
【0044】
ステップS2では、選択制御棒19Bに対する制御棒引抜き指令53が制御棒引抜き監視補助装置3に入力された時点においてAPRM13から入力した原子炉出力P2を、引抜き制御棒選択時における原子炉出力Pとする。原子炉出力P2が設定原子炉出力P0以下である(図5参照)ので、ステップS3の判定が「No」になり、ステップS5の判定が行われる。原子炉出力(P2+γ)が原子炉出力P3であって設定原子炉出力P0を超える(図5参照)ので、ステップS5の判定が「No」になる。このため、設定原子炉出力P0をRBL´値に設定する(ステップS7)。原子炉出力P2が設定原子炉出力P0以下であってステップS5の判定が「No」になることは、選択制御棒19Bの引抜きの途中で、原子炉出力が設定原子炉出力P0に到達する可能性があることを示している。
【0045】
選択制御棒19Bの引抜き操作によって原子炉出力が上昇する。RBM2で求められた新たなRBM値が制御棒引抜き監視補助装置3に入力される。ステップS8では、RBM値がRBL´値である設定原子炉出力P0よりも低いため、ステップS8の判定が「No」になる。RC&IS10で実行されるステップS12の判定も「No」であるので、選択制御棒19Aと同様に、選択制御棒19Bの連続引抜きが継続して行われる。選択制御棒19Bの引抜きにより原子炉出力がさらに上昇してRBM2で求められたRBM値が設定原子炉出力P0になったとき、ステップS8の判定が「Yes」になる。
【0046】
選択制御棒の連続引抜きが阻止される(ステップS9)。ステップS8の判定が「Yes」であるので、制御棒引抜き監視補助装置3が、選択制御棒19Bの連続引抜き阻止信号56をRC&IS10に出力する。RC&IS10は連続引抜き阻止信号56に基づいて連続引抜き阻止要求信号60を出力する。連続引抜き阻止要求信号60を入力し制御棒駆動補助盤11は、選択制御棒19Bを操作するCRD12に対して連続引抜き引抜き停止信号63を出力する。選択制御棒19Bを操作するCRD12は、連続引抜き引抜き停止信号63に基づいて選択制御棒19Bの引抜きを阻止する。
【0047】
連続引抜き阻止信号56を入力したRC&IS10は、選択制御棒の引抜きが完了したかを判定する(ステップS10)。入力した選択制御棒19Bの位置信号66に基づいて、選択制御棒19Bの引抜き量が、選択制御棒19Bに対する制御棒引抜き指令53に含まれた設定引抜き量になったかを判定する。選択制御棒19Aの引抜き量が、設定引抜き量になっていない場合には、ステップS10の判定は「No」である。もし、ステップS10の判定が「Yes」である場合には、RC&IS10が操作盤14に「選択制御棒19Bの引抜き完了」を示す引抜き完了信号が出力される。この引抜き完了信号が表示装置15に表示される。
【0048】
ステップS10の判定は「No」であるので、RC&IS10はステップS11の、連続引抜き中止情報及び選択制御棒引抜き未完了を示す情報を配線46により操作盤14に出力する。ステップS10の判定が「No」であるとき、RC&IS10は、該当する選択制御棒の連続引抜きが中止された時点におけるこの選択制御棒の位置信号66を用いて、この選択制御棒に対する設定引抜き量のうち、引抜かれずに残っている引抜き量(以下、引抜き残量という)を算出する。具体的には、選択制御棒19Bに対する引抜き残量が求められる。RC&IS10は、選択制御棒引抜き未完了を示す情報に引抜き残量を含めて出力する。操作盤14に伝えられた、選択制御棒19Bに関する連続引抜き中止情報、及び引抜き残量を含む選択制御棒引抜き未完了を示す情報が表示装置15に表示される。
【0049】
オペレータは、表示装置15に表示されたこれらの情報を見て、選択制御棒19Bの連続引抜きが阻止されたこと、及び選択制御棒19Bが引抜き途中であることを認識する。このため、オペレータは、操作盤14に、選択制御棒19Bの位置情報、及び引抜き量である引抜き残量を入力する。操作盤14から、選択制御棒19Bに対する位置情報及び引抜き残量を含む制御棒引抜き指令53が、制御棒引抜き監視補助装置3及びRC&IS10にそれぞれ入力される。
【0050】
RC&IS10は、その制御棒引抜き指令53に基づいて選択制御棒19Bに対する制御棒連続引抜き要求信号58を制御棒駆動補助盤11に出力する(ステップS13)。このため、選択制御棒19Bの引抜きが再開される。選択制御棒19Bに対する制御棒引抜き指令53が制御棒引抜き監視補助装置3に、再度、入力された時点においてAPRM13から入力した原子炉出力P0を、引抜き制御棒選択時における原子炉出力Pとする(ステップS2)。原子炉出力Pが原子炉出力P0であるので、ステップS3の判定が「Yes」になる。次に、(P+α)%をRBL´値に設定する(ステップS4)。ステップS4では、(P0+α)%がRBL´値に設定される。ここでは、原子炉出力上昇制限幅α%を、例えば、5%とする。(P0+α)%をRBL´値としたステップS8の判定が行われる。このとき、RBM2から入力するRBM値は(P0+α)%よりも小さいので、ステップS8の判定が「No」となり、制御棒引抜き監視補助装置3から連続引抜き阻止信号56が出力されない。この結果、選択制御棒19Bの連続引抜きが継続して行われる。
【0051】
選択制御棒19Bの連続引抜きが行われている間、RC&IS10では、ステップS12の処理が行われる。入力した選択制御棒19Bの位置信号66に基づいて、選択制御棒19Bの引抜き残量が引抜かれたかが判定される。ステップS12の判定が「Yes」になったとき、選択制御棒19Bが引抜き残量だけ引抜かれたことになる。原子炉出力は原子炉出力P3まで上昇する(図5参照)。
【0052】
ステップS12の判定が「Yes」になったとき、RC&IS10は、引抜き停止要求信号59を制御棒駆動補助盤11に出力する。この結果、選択制御棒19Bを操作するCRD12の駆動が停止され、選択制御棒19Bの引抜きが中止される。ステップS12の判定が「Yes」になったとき、RC&IS10から操作盤12に「選択制御棒19Bの引抜き完了」を示す引抜き完了信号が出力され、この引抜き完了信号が表示装置15に表示される。
【0053】
選択制御棒19Bの引抜き完了信号の表示を見たオペレータは、表示装置15に表示された制御棒引抜き情報に基づいて、次に引抜く選択制御棒19Cの炉心横断面での位置情報及び設定引抜き量情報を操作盤14から入力する。この設定引抜き量情報は、原子炉出力を、原子炉出力P3を定格出力100%まで上昇させるための選択制御棒19Cの引抜き量である。操作盤14から出力された選択制御棒19Cに対する制御棒引抜き指令53が、選択制御棒19Aの場合と同様に、制御棒引抜き監視補助装置3及びRC&IS10に入力される。RC&IS10が選択制御棒19Cに関する制御棒連続引抜き要求信号58を制御棒駆動補助盤11に出力する(ステップS13)ので、選択制御棒19Cを操作するCRD12が駆動され、選択制御棒19Cが炉心から引抜かれる。
【0054】
ステップS2では、選択制御棒19Cに対する制御棒引抜き指令53が制御棒引抜き監視補助装置3に入力された時点においてAPRM13から入力した原子炉出力P3を、引抜き制御棒選択時における原子炉出力Pとする。原子炉出力P3が設定原子炉出力P0を超えている(図5参照)ので、ステップS3の判定が「Yes」になり、ステップS4で(P3+α)%がRBL´値に設定される。(P3+α)%をRBL´値としたステップS8の判定が行われる。このとき、RBM2から入力するRBM値は(P3+α)%よりも小さいので、ステップS8の判定が「No」となり、制御棒引抜き監視補助装置3から連続引抜き阻止信号56が出力されない。この結果、選択制御棒19Bの連続引抜きが継続して行われる。
【0055】
RC&IS10では、ステップS12の処理が行われる。入力した選択制御棒19Cの位置信号66に基づいて、選択制御棒19Cに対する設定引抜き量が引抜かれたかが判定される。ステップS12の判定が「Yes」になったとき、選択制御棒19Cが設定引抜き量だけ引抜かれたことになる。原子炉出力は定格出力100%まで上昇する。
【0056】
ステップS12の判定が「Yes」になったとき、RC&IS10は、引抜き停止要求信号59を制御棒駆動補助盤11に出力する。この結果、選択制御棒19Cを操作するCRD12の駆動が停止され、選択制御棒19Bの引抜きが中止される。ステップS12の判定が「Yes」になったとき、RC&IS10から操作盤12に「選択制御棒19Cの引抜き完了」を示す引抜き完了信号が出力され、この引抜き完了信号が表示装置15に表示される。
【0057】
以上の選択制御棒の引抜き操作により、BWRは定格出力100%で運転される。
【0058】
もし、オペレータが、間違えて、選択制御棒19Cの設定引抜き量を、原子炉出力が(P3+α)%を超えるP4になるような引抜量に設定したとする。このときには、ステップS8の判定が「Yes」になるので、制御棒引抜き監視補助装置3から連続引抜き阻止信号56が出力され、選択制御棒19Cの連続引抜きが阻止される。
【0059】
本実施例の制御棒引抜き監視方法における選択制御棒の連続引抜きの要点を、図6を用いて説明する。従来例における選択制御棒の操作では、図6の左側に示したように、原子炉出力に関係なく選択制御棒の連続引抜きが可能である。本実施例の制御棒引抜き監視方法では、選択制御棒を選択した時点、すなわち、操作盤14から選択制御棒に対する制御棒引抜き指令53が出力された時点での原子炉出力(以下、選択制御棒選択時の原子炉出力という)Pが、選択制御棒の連続引抜きを停止させる原子炉出力の閾値である設定原子炉出力P0以下の原子炉出力か、設定原子炉出力P0を超える原子炉出力かによって、選択制御棒の操作の仕方が異なっている。
【0060】
選択制御棒選択時の原子炉出力Pが設定原子炉出力P0以下である場合、例えば、選択制御棒選択時の原子炉出力Pが図6に示されたレベルCの原子力出力である場合には、原子炉出力を原子力出力Pから(P+γ)%まで上昇させる際に、(P+γ)%が設定原子炉出力P0を超えない範囲で、選択制御棒の連続引抜きを許可する。選択制御棒選択時の原子炉出力Pが設定原子炉出力P0を超えている場合、例えば、選択制御棒選択時の原子炉出力Pが図6に示されたレベルBの原子力出力である場合には、原子炉出力を原子力出力Pから(P+α)%までの範囲で、選択制御棒の連続引抜きを許可する。選択制御棒の引抜きによって原子炉出力が設定原子炉出力P0を超えて上昇する場合には、原子炉出力が設定原子炉出力P0になった時点で、その選択制御棒の連続引き抜きを停止する。この選択制御棒に対する残りの引抜き量だけこの選択制御棒を引抜いて原子炉出力を上昇させる場合は、選択制御棒の連続引き抜きが設定原子炉出力P0で停止された後、設定原子炉出力P0から(P+α)%までの範囲内であれば、選択制御棒の連続引き抜きを許可する。
【0061】
本実施例は、設定原子炉出力P0を超える出力領域では、炉心からの選択制御棒19の連続引抜きによって上昇する原子炉出力が、この選択制御棒19Aに対する制御棒引抜き指令53が制御棒引抜き監視補助装置3に入力された時点(選択制御棒19の引抜き開始時点)における原子炉出力P、及び原子炉出力上昇制限幅γ(第1出力上昇制限幅)よりも狭い原子炉出力上昇制限幅α(第2出力上昇制限幅)に基づいて設定されたRBL´値を超えるとき、選択制御棒19の連続引抜きが阻止されるので、設定原子炉出力P0を超える出力領域における選択制御棒19の連続引抜きによる原子炉出力の上昇幅が、設定原子炉出力P0以下の出力領域における選択制御棒19の連続引抜きによる原子炉出力の上昇幅よりも小さくすることができる。このため、設定原子炉出力P0を超える出力領域で選択制御棒19の連続引抜による原子炉出力の上昇が可能になり、原子炉の運転上の制約を低減することができる。また、設定原子炉出力P0を超える出力領域における選択制御棒19の連続引抜きによる原子炉出力の上昇幅を小さくすることができるので、原子炉16の定格出力(100%出力)付近での選択制御棒19の誤引抜きによる熱的余裕の変化幅をさらに低減することができる。
【0062】
本実施例では、制御棒引抜き指令53が制御棒引抜き監視補助装置3に入力された時点(制御棒の引抜き開始時点)における原子炉出力Pが設定原子炉出力P0以下であっても(P+α)%が設定原子炉出力P0を超える場合には、設定原子炉出力P0をRBL´値に設定するので、もし、原子炉出力Pが設定原子炉出力P0未満で設定原子炉出力P0付近の原子炉出力になっている状態で選択制御棒19の連続引抜きを行った場合でも、この選択制御棒19の連続引き抜き開始時点の原子炉出力Pから原子炉出力上昇制限幅γ%の原子炉出力の上昇を阻止することができる。このため、設定原子炉出力P0を超える高出力領域(例えば、原子炉16の定格出力付近)での熱的余裕の変化幅をさらに低減することができる。
【0063】
本実施例では、制御棒引抜き指令53が制御棒引抜き監視補助装置3に入力された時点における原子炉出力Pが設定原子炉出力P0以下である状態で、選択制御棒19の連続引抜きを行ったときに(P+γ)%が設定原子炉出力P0を超える場合には、その選択制御棒19の連続引抜きにより上昇する原子炉出力が設定原子炉出力P0になったとき、選択制御棒19の連続引抜きが阻止される。この連続引抜きが阻止された選択制御棒19の引抜き残量が、制御棒位置検出器24から出力される位置信号に基づいて求められ、表示装置15に表示される。このため、オペレータが、連続引抜が停止された選択制御棒19を引抜き残量だけ引抜くために、この選択制御棒19の上記位置情報及び設定引抜き量(引抜き残量)の操作盤14への入力を容易に行うことができる。
【0064】
特開2008−256548号公報では、設定原子炉出力(例えば95%)出力以上において十分な熱的余裕が確保されている炉心状態であっても、制御棒の連続引抜きがその設定原子炉出力で停止される。そして、設定原子炉出力を超える原子炉出力の上昇は、制御棒のノッチ操作またはステップ操作によって行われる。これに対し、本実施例では、設定原子炉出力P0を超える原子炉出力の上昇においても、熱的余裕が確保される範囲で予め設定した出力上昇制限幅内での制御棒19の連続引抜きが可能であり、高出力領域における制御棒操作の運用性が優れている。
【0065】
こので、制御棒の連続引抜きとは、制御棒引抜きを制御するRC&IS10にて制御棒引抜きモードを「連続引抜き」に設定された状態で行われる制御棒引抜き操作である。具体的には、この連続引抜きモードでは、オペレータが操作盤14に設けられた制御棒引抜きボタンを押している間、RC&IS10から制御棒連続引抜き信号58が出力され、制御棒19が炉心から連続的に引抜かれる。制御棒のノッチ操作(またはステップ操作)は、操作盤14からオペレータによって設定され、RC&IS10にて制御棒引抜きモードを「ノッチ操作(またはステップ操作)」に設定された状態で行う制御棒引抜き操作である。この場合、制御棒を炉心から1ノッチ(または1ステップ)引抜くたびに、オペレータは操作盤14に設けられた制御棒引抜きボタンを押す必要がある。なお、燃料集合体18に含まれる燃料棒の熱的余裕への影響は、制御棒19の引抜きが(短時間に)連続的に行われる場合に顕著に現れる。ノッチ操作(またはステップ操作)は、操作盤14に設けられたボタンの操作ごとにオペレータによる判断及び操作が介在することから、熱的余裕への影響はない操作であるとし、本実施例では、この二つを制御棒操作を使い分けている。
【0066】
設定原子炉出力P0としては任意の出力レベルを設定することが可能であり、設定原子炉出力P0に応じた出力上昇制限幅αを設定することによって、上記の実施例と同等の効果が期待できる。
【実施例2】
【0067】
本発明の他の実施例である実施例2の制御棒引抜き監視方法を、図7及び図8を用いて説明する。
【0068】
本実施例の制御棒引抜き監視方法に用いられる制御棒引抜き監視システム1Aは、図7に示すように、実施例1に用いられる制御棒引抜き監視システム1において制御棒引抜き監視補助装置3を制御棒引抜き監視補助装置3Aに替えた構成を有する。制御棒引抜き監視システム1Aの他の構成は制御棒引抜き監視システム1と同じである。制御棒引抜き監視補助装置3Aは、図8に示す一点差線で囲まれた範囲の各処理を実行する。制御棒引抜き監視補助装置3Aで実行される処理は、制御棒引抜き監視補助装置3で実行される処理のうちステップS4、S5,S6の各処理をステップS4A,S5A,S6Aの各処理に替えた処理である。制御棒引抜き監視補助装置3Aで実行されるステップS4A,S5A,S6A以外の処理は、制御棒引抜き監視補助装置3で実行されるステップS4、S5,S6以外の処理と同じである。
【0069】
本実施例におけるBWRの運転領域の一例を、炉心流量と原子炉出力の関係で示すと、図9のようになる。実施例1と同様に、原子炉出力が設定原子炉出力P0になったとき、選択制御棒の連続引き抜きが停止される。本実施例では、原子炉出力上昇制限幅α%及びγ%の替りに、原子炉出力上昇制限比β及びδを用いる。β及びδはβ<δの関係にある。原子炉出力上昇制限比βは、例えば、1.05であり、図10に示すように、設定原子炉出力P0を超える原子炉出力領域での、選択制御棒の連続引抜きによる出力上昇に対して適用される。ちなみに、設定原子炉出力P0以下の原子炉出力領域での、選択制御棒の連続引抜きによる出力上昇に対しては、原子炉出力上昇制限比δが適用される。原子炉出力上昇制限比δは、選択制御棒選択時の原子炉出力Pにδ%を掛けて得られる原子炉出力が、制御棒引抜きシーケンスで設定されている各選択制御棒19の引抜き量のうち最大の引抜き量で上昇した後における原子炉出力以上になるように設定される。本実施例では、原子炉出力上昇制限比δは、例えば、選択制御棒選択時の原子炉出力Pにδ%を掛けて得られる原子炉出力が、制御棒引抜きシーケンスで設定されている各選択制御棒19の引抜き量のうち最大の引抜き量で上昇した後における原子炉出力になるように設定される。本実施例における設定原子炉出力P0は、例えば、95%である。
【0070】
本実施例の制御棒引抜き監視方法を、実施例1のそれと異なる部分について、図8及び図11を用いて説明する。選択制御棒として、選択制御棒19A,19B,19Cが用いられる。
【0071】
選択制御棒19Aに対する制御棒引抜き指令53が、操作盤14から制御棒引抜き監視補助装置3A及びRC&IS10に入力される。RC&IS10から出力された、選択制御棒19Aに対する制御棒連続引抜き要求信号58により、選択制御棒19Aを操作するCRD12が駆動される。これにより、選択制御棒19Aが炉心から引抜かれる。
【0072】
原子炉出力P1が原子炉出力Pとなり、ステップS3の判定が「No」になる。(P1×δ)が設定原子炉出力P0以下であるので、ステップS5Aの判定が「Yes」となる。このため、(P1×δ)%がRBL´値に設定される(ステップS6A)。(P1×δ)をRBL´値としてステップS8の判定が行われる。ステップS8の判定が「No」であるので、制御棒引抜き監視補助装置3Aが選択制御棒19Aの連続引抜き阻止信号56を出力せず、選択制御棒19Aの連続引抜きが継続して行われる。ステップS12の判定が「Yes」になったとき、選択制御棒19Aの引抜きが停止される。
【0073】
その後、選択制御棒19Bに対する制御棒引抜き指令53が、操作盤14から制御棒引抜き監視補助装置3A及びRC&IS10に入力される。そして、選択制御棒19Bが引抜かれる。制御棒引抜き監視補助装置3Aでは、選択制御棒19Bに対する制御棒引抜き指令53を入力した時点での原子炉出力P2が、引抜き制御棒選択時における原子炉出力Pとされる(ステップS2)。ステップS3,S5Aの各判定が「No」になり、設定原子炉出力P0がRBL´値に設定される(ステップS7)。設定原子炉出力P0をRBL´値としてステップS8の判定が行われる。ステップS8の判定が「No」であるので、制御棒引抜き監視補助装置3Aが選択制御棒19Aの連続引抜き阻止信号56を出力せず、選択制御棒19Aの連続引抜きが継続して行われる。やがて、実施例1と同様に、ステップS12の判定が「Yes」になる。このため、制御棒引抜き監視補助装置3Aから選択制御棒19Aの連続引抜き阻止信号56が出力され(ステップS9)、選択制御棒19Bの連続引抜きが停止される。
【0074】
選択制御棒19Bは、設定引抜き量まで引抜かれていないので、選択制御棒19Bの連続引抜きが停止された後、再度、操作盤14から、選択制御棒19Bに対する制御棒引抜き指令53が、操作盤14から制御棒引抜き監視補助装置3A及びRC&IS10に、再度、入力される。このため、選択制御棒19Bは、原子炉出力が(P0+β)%に上昇するまで連続引抜きされる。
【0075】
選択制御棒19Bに対する制御棒引抜き指令53が制御棒引抜き監視補助装置3に、再度、入力された時点でAPRM13から入力した原子炉出力P0を、引抜き制御棒選択時における原子炉出力Pとする(ステップS2)。ステップS3の判定が「Yes」となるので、(P0×β)%がRBL´値に設定される(ステップS4A)。(P0×β)をRBL´値としてステップS8の判定が行われる。ステップS8の判定が「No」であるので、制御棒引抜き監視補助装置3Aが選択制御棒19Bの連続引抜き阻止信号56を出力せず、選択制御棒19Bの連続引抜きが継続して行われる。やがて、実施例1と同様に、選択制御棒19Bが引抜き量の残量だけ引抜かれたとき、ステップS12の判定が「Yes」になる。このため、選択制御棒19Bの引抜きが停止される。
【0076】
操作盤14から、選択制御棒19Cに対する制御棒引抜き指令53が、操作盤14から制御棒引抜き監視補助装置3A及びRC&IS10に入力される。このため、選択制御棒19Cは、実施例1と同様に、原子炉出力が定格出力(100%出力)に上昇するまで連続引抜きされる。
【0077】
選択制御棒19Cに対する制御棒引抜き指令53が制御棒引抜き監視補助装置3に入力された時点でAPRM13から入力した原子炉出力P3を、引抜き制御棒選択時における原子炉出力Pとする(ステップS2)。ステップS3の判定が「Yes」となるので、(P3×β)%がRBL´値に設定される(ステップS4A)。(P3×β)をRBL´値としてステップS8の判定が行われる。ステップS8の判定が「No」であるので、制御棒引抜き監視補助装置3Aが選択制御棒19Cの連続引抜き阻止信号56を出力せず、選択制御棒19Cの連続引抜きが継続して行われる。やがて、実施例1と同様に、選択制御棒19Cが引抜き量の残量だけ引抜かれたとき、ステップS12の判定が「Yes」になる。このため、選択制御棒19Cの引抜きが停止される。
【0078】
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる
【符号の説明】
【0079】
1,1A…制御棒引抜き監視システム、2…制御棒引抜き監視装置(RBM)、3,3A…制御棒引抜き監視補助装置、10…制御棒操作監視装置(RC&IS)、11…制御棒駆動補助盤、12…制御棒駆動機構(CRD)、13…平均出力領域モニタ(APRM)、14…操作盤、15…表示装置、16…原子炉、17…原子炉圧力容器、18…燃料集尾具体、19…制御棒、20…炉心流量検出器、21…局部出力領域モニタ(LPRM)、24…位置検出器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉の定格出力よりも低い原子炉出力である設定原子炉出力以下の出力領域では、前記原子炉の炉心からの制御棒の連続引抜きによって上昇する原子炉出力が、この制御棒の引抜き開始時点における原子炉出力を基点として第1出力上昇制限幅で設定された第1原子炉出力上限以下であるとき、前記制御棒の前記連続引抜きを継続し、
前記設定原子炉出力を超える出力領域では、前記炉心からの制御棒の連続引抜きによって上昇する原子炉出力が、この制御棒の引抜き開始時点における原子炉出力を基点として、前記第1出力上昇制限幅よりも狭い第2出力上昇制限幅で設定された第2原子炉出力上限を超えるとき、前記制御棒の連続引抜きを阻止することを特徴とする制御棒引抜き監視方法。
【請求項2】
前記制御棒の引抜き開始時点における前記原子炉出力を基点として前記第1出力上昇制限幅で設定された前記第1原子炉出力上限以下で原子炉出力を上昇させる前記制御棒の連続引抜きによって、上昇する前記原子炉出力が、前記設定原子炉出力に到達したとき、前記制御棒の連続引き抜きを阻止し、
前記設定原子炉出力を超える出力領域では、前記連続引抜きが停止された制御棒の連続引抜きの再開によって上昇する前記原子炉出力が、前記制御棒の連続引き抜き再開時の原子炉出力及び前記第2出力上昇制限幅に基づいて設定された前記第2原子炉出力上限を超えるとき、前記連続引抜きを再開した制御棒の連続引抜きを阻止する請求項1に記載の制御棒引抜き監視方法。
【請求項3】
原子炉の炉心に配置された中性子検出器から出力された中性子検出信号に基づいて、制御棒引抜き監視装置において、前記炉心に配置されて前記炉心から引抜かれる制御棒の引抜き阻止の判定に用いる原子炉出力である制御棒引抜き監視出力を求め、
前記炉心から連続引抜きされる前記制御棒の引抜き開始時点における原子炉出力が前記原子炉の定格出力よりも低い原子炉出力である設定原子炉出力以下であるとき、前記連続引抜きされる制御棒の前記引抜き開始時点における原子炉出力、及び第1出力上昇制限幅に基づいて得られた原子炉出力を、第1原子炉出力上限に設定し、
前記設定原子炉出力以下の出力領域で前記制御棒の連続引抜きが行われているときに制御棒引抜き監視装置で求められた第1の前記制御棒引抜き監視出力が、前記第1原子炉出力上限未満であるとき、前記制御棒の連続引抜きを継続し、
前記連続引抜きされる前記制御棒の引抜き開始時点における原子炉出力が前記設定原子炉出力を超えているときに、前記連続引抜きされる制御棒の前記引抜き開始時点における前記原子炉出力及び前記第1出力上昇制限幅よりも狭い第2出力上昇制限幅に基づいて得られた原子炉出力を、第2原子炉出力上限に設定し、
前記制御棒の連続引抜きにより上昇する前記原子炉出力が前記設定原子炉出力を超えているときに前記制御棒引抜き監視装置で求められた第2の前記制御棒引抜き監視出力が、前記第2原子炉出力上限を超えるとき、前記制御棒の連続引抜きを阻止することを特徴とする制御棒引抜き監視方法。
【請求項4】
前記設定原子炉出力以下の出力領域で連続引抜きされる前記制御棒の引抜き開始時点における前記原子炉出力及び前記第1出力上昇制限幅に基づいて得られる前記原子炉出力が前記設定原子炉出力を超えるとき、前記設定原子炉出力を前記第1原子炉出力上限に設定し、
前記第1の制御棒引抜き監視出力が、前記設定原子炉出力である前記第1原子炉出力上限になったとき、前記制御棒の連続引抜きを阻止し、
前記連続引抜きが停止された前記制御棒の連続引抜き再開後に上昇する前記原子炉出力が前記設定原子炉出力を超えているときに求められた前記第2の制御棒引抜き監視出力が、前記制御棒の連続引き抜き再開時の原子炉出力及び前記第2出力上昇制限幅に基づいて設定された前記第2原子炉出力上限を超えるとき、前記制御棒の連続引抜きを阻止する請求項3に記載の制御棒引抜き監視方法。
【請求項5】
原子炉の定格出力よりも低い原子炉出力である設定原子炉出力以下の出力領域では、前記原子炉の炉心からの制御棒の連続引抜きによって上昇する原子炉出力が、この制御棒の引抜き開始時点における原子炉出力及び第1出力上昇制限比に基づいて設定された第1原子炉出力上限以下であるとき、前記制御棒の前記連続引抜きを継続し、
前記設定原子炉出力を超える出力領域では、前記炉心からの制御棒の連続引抜きによって上昇する原子炉出力が、この制御棒の引抜き開始時点における原子炉出力、前記第1出力上昇制限比よりも小さい第2出力上昇制限比に基づいて設定された第2原子炉出力上限を超えるとき、前記制御棒の連続引抜きを阻止することを特徴とする制御棒引抜き監視方法。
【請求項6】
前記制御棒の引抜き開始時点における前記原子炉出力及び前記第1出力上昇制限比に基づいて設定された前記第1原子炉出力上限以下で原子炉出力を上昇させる前記制御棒の連続引抜きによって、上昇する前記原子炉出力が、前記設定原子炉出力に到達したとき、前記制御棒の連続引き抜きを阻止し、
前記設定原子炉出力を超える出力領域では、前記連続引抜きが停止された制御棒の連続引抜きの再開によって上昇する前記原子炉出力が、前記制御棒の連続引き抜き再開時の原子炉出力及び前記第2出力上昇制限比に基づいて設定された前記第2原子炉出力上限を超えるとき、前記連続引抜きを再開した制御棒の連続引抜きを阻止する請求項5に記載の制御棒引抜き監視方法。
【請求項7】
連続引抜きによって上昇する前記原子炉出力が前記設定原子炉出力になったときに連続引抜が阻止された前記制御棒の残りの引抜き量を、連続引抜が阻止された時点における、この制御棒の前記炉心の軸方向における位置に基づいて求め、求められた前記残りの引抜き量を表示装置に表示する請求項2または6に記載の制御棒引抜き監視方法。
【請求項8】
原子炉の炉心に配置された中性子検出器から出力された中性子検出信号に基づいて、制御棒引抜き監視装置において、前記炉心に配置されて前記炉心から引抜かれる制御棒の引抜き阻止の判定に用いる原子炉出力である制御棒引抜き監視出力を求め、
前記炉心から連続引抜きされる前記制御棒の引抜き開始時点における原子炉出力が前記原子炉の定格出力よりも低い原子炉出力である設定原子炉出力以下であるとき、前記連続引抜きされる制御棒の前記引抜き開始時点における原子炉出力、及び第1出力上昇制限比に基づいて得られた原子炉出力を、第1原子炉出力上限に設定し、
前記設定原子炉出力以下の出力領域で前記制御棒の連続引抜きが行われているときに制御棒引抜き監視装置で求められた第1の前記制御棒引抜き監視出力が、前記第1原子炉出力上限未満であるとき、前記制御棒の連続引抜きを継続し、
前記連続引抜きされる前記制御棒の引抜き開始時点における原子炉出力が前記設定原子炉出力を超えているときに、前記連続引抜きされる制御棒の前記引抜き開始時点における前記原子炉出力及び前記第1出力上昇制限比よりも小さい第2出力上昇制限比に基づいて得られた原子炉出力を、第2原子炉出力上限に設定し、
前記制御棒の連続引抜きにより上昇する前記原子炉出力が前記設定原子炉出力を超えているときに前記制御棒引抜き監視装置で求められた第2の前記制御棒引抜き監視出力が、前記第2原子炉出力上限を超えるとき、前記制御棒の連続引抜きを阻止することを特徴とする制御棒引抜き監視方法。
【請求項9】
前記設定原子炉出力以下の出力領域で連続引抜きされる前記制御棒の引抜き開始時点における前記原子炉出力及び前記第1出力上昇制限比に基づいて得られる前記原子炉出力が前記設定原子炉出力を超えるとき、前記設定原子炉出力を前記第1原子炉出力上限に設定し、
前記第1の制御棒引抜き監視出力が、前記設定原子炉出力である前記第1原子炉出力上限になったとき、前記制御棒の連続引抜きを阻止し、
前記連続引抜きが停止された前記制御棒の連続引抜き再開後に上昇する前記原子炉出力が前記設定原子炉出力を超えているときに求められた前記第2の制御棒引抜き監視出力が、前記制御棒の連続引き抜き再開時の原子炉出力及び前記第2出力上昇制限幅に基づいて設定された前記第2原子炉出力上限を超えるとき、前記制御棒の連続引抜きを阻止する請求項10に記載の制御棒引抜き監視方法。
【請求項10】
連続引抜きによって上昇する前記原子炉出力が前記第1原子炉出力上限になったときに連続引抜が阻止された前記制御棒の残りの引抜き量を、連続引抜が阻止された時点における、この制御棒の前記炉心の軸方向における位置に基づいて求め、求められた前記残りの引抜き量を表示装置に表示する請求項4または9に記載の制御棒引抜き監視方法。
【請求項1】
原子炉の定格出力よりも低い原子炉出力である設定原子炉出力以下の出力領域では、前記原子炉の炉心からの制御棒の連続引抜きによって上昇する原子炉出力が、この制御棒の引抜き開始時点における原子炉出力を基点として第1出力上昇制限幅で設定された第1原子炉出力上限以下であるとき、前記制御棒の前記連続引抜きを継続し、
前記設定原子炉出力を超える出力領域では、前記炉心からの制御棒の連続引抜きによって上昇する原子炉出力が、この制御棒の引抜き開始時点における原子炉出力を基点として、前記第1出力上昇制限幅よりも狭い第2出力上昇制限幅で設定された第2原子炉出力上限を超えるとき、前記制御棒の連続引抜きを阻止することを特徴とする制御棒引抜き監視方法。
【請求項2】
前記制御棒の引抜き開始時点における前記原子炉出力を基点として前記第1出力上昇制限幅で設定された前記第1原子炉出力上限以下で原子炉出力を上昇させる前記制御棒の連続引抜きによって、上昇する前記原子炉出力が、前記設定原子炉出力に到達したとき、前記制御棒の連続引き抜きを阻止し、
前記設定原子炉出力を超える出力領域では、前記連続引抜きが停止された制御棒の連続引抜きの再開によって上昇する前記原子炉出力が、前記制御棒の連続引き抜き再開時の原子炉出力及び前記第2出力上昇制限幅に基づいて設定された前記第2原子炉出力上限を超えるとき、前記連続引抜きを再開した制御棒の連続引抜きを阻止する請求項1に記載の制御棒引抜き監視方法。
【請求項3】
原子炉の炉心に配置された中性子検出器から出力された中性子検出信号に基づいて、制御棒引抜き監視装置において、前記炉心に配置されて前記炉心から引抜かれる制御棒の引抜き阻止の判定に用いる原子炉出力である制御棒引抜き監視出力を求め、
前記炉心から連続引抜きされる前記制御棒の引抜き開始時点における原子炉出力が前記原子炉の定格出力よりも低い原子炉出力である設定原子炉出力以下であるとき、前記連続引抜きされる制御棒の前記引抜き開始時点における原子炉出力、及び第1出力上昇制限幅に基づいて得られた原子炉出力を、第1原子炉出力上限に設定し、
前記設定原子炉出力以下の出力領域で前記制御棒の連続引抜きが行われているときに制御棒引抜き監視装置で求められた第1の前記制御棒引抜き監視出力が、前記第1原子炉出力上限未満であるとき、前記制御棒の連続引抜きを継続し、
前記連続引抜きされる前記制御棒の引抜き開始時点における原子炉出力が前記設定原子炉出力を超えているときに、前記連続引抜きされる制御棒の前記引抜き開始時点における前記原子炉出力及び前記第1出力上昇制限幅よりも狭い第2出力上昇制限幅に基づいて得られた原子炉出力を、第2原子炉出力上限に設定し、
前記制御棒の連続引抜きにより上昇する前記原子炉出力が前記設定原子炉出力を超えているときに前記制御棒引抜き監視装置で求められた第2の前記制御棒引抜き監視出力が、前記第2原子炉出力上限を超えるとき、前記制御棒の連続引抜きを阻止することを特徴とする制御棒引抜き監視方法。
【請求項4】
前記設定原子炉出力以下の出力領域で連続引抜きされる前記制御棒の引抜き開始時点における前記原子炉出力及び前記第1出力上昇制限幅に基づいて得られる前記原子炉出力が前記設定原子炉出力を超えるとき、前記設定原子炉出力を前記第1原子炉出力上限に設定し、
前記第1の制御棒引抜き監視出力が、前記設定原子炉出力である前記第1原子炉出力上限になったとき、前記制御棒の連続引抜きを阻止し、
前記連続引抜きが停止された前記制御棒の連続引抜き再開後に上昇する前記原子炉出力が前記設定原子炉出力を超えているときに求められた前記第2の制御棒引抜き監視出力が、前記制御棒の連続引き抜き再開時の原子炉出力及び前記第2出力上昇制限幅に基づいて設定された前記第2原子炉出力上限を超えるとき、前記制御棒の連続引抜きを阻止する請求項3に記載の制御棒引抜き監視方法。
【請求項5】
原子炉の定格出力よりも低い原子炉出力である設定原子炉出力以下の出力領域では、前記原子炉の炉心からの制御棒の連続引抜きによって上昇する原子炉出力が、この制御棒の引抜き開始時点における原子炉出力及び第1出力上昇制限比に基づいて設定された第1原子炉出力上限以下であるとき、前記制御棒の前記連続引抜きを継続し、
前記設定原子炉出力を超える出力領域では、前記炉心からの制御棒の連続引抜きによって上昇する原子炉出力が、この制御棒の引抜き開始時点における原子炉出力、前記第1出力上昇制限比よりも小さい第2出力上昇制限比に基づいて設定された第2原子炉出力上限を超えるとき、前記制御棒の連続引抜きを阻止することを特徴とする制御棒引抜き監視方法。
【請求項6】
前記制御棒の引抜き開始時点における前記原子炉出力及び前記第1出力上昇制限比に基づいて設定された前記第1原子炉出力上限以下で原子炉出力を上昇させる前記制御棒の連続引抜きによって、上昇する前記原子炉出力が、前記設定原子炉出力に到達したとき、前記制御棒の連続引き抜きを阻止し、
前記設定原子炉出力を超える出力領域では、前記連続引抜きが停止された制御棒の連続引抜きの再開によって上昇する前記原子炉出力が、前記制御棒の連続引き抜き再開時の原子炉出力及び前記第2出力上昇制限比に基づいて設定された前記第2原子炉出力上限を超えるとき、前記連続引抜きを再開した制御棒の連続引抜きを阻止する請求項5に記載の制御棒引抜き監視方法。
【請求項7】
連続引抜きによって上昇する前記原子炉出力が前記設定原子炉出力になったときに連続引抜が阻止された前記制御棒の残りの引抜き量を、連続引抜が阻止された時点における、この制御棒の前記炉心の軸方向における位置に基づいて求め、求められた前記残りの引抜き量を表示装置に表示する請求項2または6に記載の制御棒引抜き監視方法。
【請求項8】
原子炉の炉心に配置された中性子検出器から出力された中性子検出信号に基づいて、制御棒引抜き監視装置において、前記炉心に配置されて前記炉心から引抜かれる制御棒の引抜き阻止の判定に用いる原子炉出力である制御棒引抜き監視出力を求め、
前記炉心から連続引抜きされる前記制御棒の引抜き開始時点における原子炉出力が前記原子炉の定格出力よりも低い原子炉出力である設定原子炉出力以下であるとき、前記連続引抜きされる制御棒の前記引抜き開始時点における原子炉出力、及び第1出力上昇制限比に基づいて得られた原子炉出力を、第1原子炉出力上限に設定し、
前記設定原子炉出力以下の出力領域で前記制御棒の連続引抜きが行われているときに制御棒引抜き監視装置で求められた第1の前記制御棒引抜き監視出力が、前記第1原子炉出力上限未満であるとき、前記制御棒の連続引抜きを継続し、
前記連続引抜きされる前記制御棒の引抜き開始時点における原子炉出力が前記設定原子炉出力を超えているときに、前記連続引抜きされる制御棒の前記引抜き開始時点における前記原子炉出力及び前記第1出力上昇制限比よりも小さい第2出力上昇制限比に基づいて得られた原子炉出力を、第2原子炉出力上限に設定し、
前記制御棒の連続引抜きにより上昇する前記原子炉出力が前記設定原子炉出力を超えているときに前記制御棒引抜き監視装置で求められた第2の前記制御棒引抜き監視出力が、前記第2原子炉出力上限を超えるとき、前記制御棒の連続引抜きを阻止することを特徴とする制御棒引抜き監視方法。
【請求項9】
前記設定原子炉出力以下の出力領域で連続引抜きされる前記制御棒の引抜き開始時点における前記原子炉出力及び前記第1出力上昇制限比に基づいて得られる前記原子炉出力が前記設定原子炉出力を超えるとき、前記設定原子炉出力を前記第1原子炉出力上限に設定し、
前記第1の制御棒引抜き監視出力が、前記設定原子炉出力である前記第1原子炉出力上限になったとき、前記制御棒の連続引抜きを阻止し、
前記連続引抜きが停止された前記制御棒の連続引抜き再開後に上昇する前記原子炉出力が前記設定原子炉出力を超えているときに求められた前記第2の制御棒引抜き監視出力が、前記制御棒の連続引き抜き再開時の原子炉出力及び前記第2出力上昇制限幅に基づいて設定された前記第2原子炉出力上限を超えるとき、前記制御棒の連続引抜きを阻止する請求項10に記載の制御棒引抜き監視方法。
【請求項10】
連続引抜きによって上昇する前記原子炉出力が前記第1原子炉出力上限になったときに連続引抜が阻止された前記制御棒の残りの引抜き量を、連続引抜が阻止された時点における、この制御棒の前記炉心の軸方向における位置に基づいて求め、求められた前記残りの引抜き量を表示装置に表示する請求項4または9に記載の制御棒引抜き監視方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−208960(P2011−208960A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74147(P2010−74147)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】
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