説明

制御棒駆動機構

【課題】スクラム配管の破断時における制御棒の炉心からの引き抜きを阻止できる制御棒駆動機構を提供する。
【解決手段】CRD1は、アウターチューブ5の下端部に設けられるフランジ13内にボールチェック弁14を設置している。ボールチェック弁14は、フランジ13内に形成された弁流路18を有し、ボール15、円筒状のリテーナ16及び棒状のボール支持部材17を弁流路18内に配置する。フランジ13に取り付けられるスクラム配管22が弁流路18の上端部に連絡される。弁流路18の下端部に連絡される下部開口部27は下部流路20によりアウターチューブ5内に連絡される。下部開口部27の中心に棒状のボール支持部材17が配置される。リテーナ16内に配置されるボール15は、ボール支持部材17の上端で支持されるので、下部開口部27の上部角部に着座せず、その上部角部に固着することはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御棒駆動機構に係り、特に、沸騰水型原子炉(BWR)に適用するのに好適な制御棒駆動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
BWRは、原子炉圧力容器(以下、RPVという)の底部に設けられる制御棒駆動機構ハウジング(以下、CRDハウジングという)内に、制御棒駆動機構(以下、CRDという)を設置している。CRDは、制御棒をRPV内に配置された炉心内に出し入れする操作を行う。
【0003】
CRDは、特開2007−40728号公報の図21に記載されているように、アウターチューブを有し、このアウターチューブ内にガイドチューブを設置している。ボールナット及びボールナットに取り付けられて上方に延びる中空ピストンが、ガイドチューブ内に配置される。中空ピストンの上端部が制御棒に連結される。中空ピストン内に配置されるボールスピンドルがボールナットと噛み合っている。ボールスピンドルは電動機によって回転される。ボールナットは、ボールスピンドルの回転によって上下動し、中空ピストンを上下動させる。これにより、制御棒が炉心に出し入れされ、原子炉出力が制御される。
【0004】
アウターチューブの下端部に設けられるフランジがCRDハウジングに取り付けられ、CRDがRPVに保持される。ボールチェック弁がこのフランジ内に設けられている。スクラム配管が、フランジに取り付けられ、ボールチェック弁内の流路(弁流路という)に接続される。この弁流路は、中央流路及び下部流路によりアウターチューブ内に連絡される。
【0005】
通常時には、スクラム配管から供給されるパージ水が、ボールチェック弁を介し中央流路を通ってアウターチューブ内に導かれる。このとき、ボールチェック弁のボールが下部流路の開口部の角部(以下、下部着座面という)の全周に亘って押し付けられ、パージ水は下部流路内に流入しない。制御棒の緊急挿入時には、アキュムレータからの高圧駆動水が、スクラム配管を通ってフランジ内流路に流入し、中央流路からアウターチューブ内に供給される。アウターチューブ内に供給された高圧駆動水は、中空ピストンを上方に向かって急速に移動させる。制御棒が炉心に急速挿入され、原子炉がスクラムされる。このときも、ボールは下部着座面に押し付けられる。
【0006】
スクラム配管が破断した場合には、アウターチューブ内の水が中央流路を介してスクラム配管の破断口から流出する。このため、アウターチューブ内で中空ピストンに下方より作用する圧力が中空ピストンに上方より作用する圧力も低くなり、中空ピストンが下方に押し下げられ、制御棒が炉心から引き抜かれる可能性がある。しかしながら、ボールチェック弁のボールは、ボールの上方の圧力がボールの下方の圧力よりも低下するため、上方に向かって押し上げられる。ボールは、スクラム配管に連絡される、弁流路の上部開口部の角部(以下、上部着座面という)に下方より押し付けられ、スクラム配管の破断口からの水の流出が防止される。この結果、制御棒の炉心からの引き抜きが阻止される。
【0007】
【特許文献1】特開2007−40728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
通常時及び制御棒の緊急挿入時に下部着座面に押し付けられているボールが、万が一、その着座面に固着した場合を想定する。この状態で、スクラム配管の破断が生じたとき、ボールが上部着座面に押し付けられないので、スクラム配管の破断口からの水の流出を阻止することができない。
【0009】
本発明の目的は、スクラム配管の破断時における制御棒の炉心からの引き抜きを阻止できる制御棒駆動機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、下端部にフランジを有するハウジングと、前記ハウジング内に配置されて水圧により制御棒を上昇させるピストン装置と、前記ハウジング内に形成され、前記ピストン装置に前記水圧を加える駆動水を導く第1通路と、前記ハウジング内に設けられて前記第1通路の第1開口部に連絡され、前記ハウジング内の水が前記第1通路に向かって逆流するときに前記第1開口部を塞ぐボールを有するボールチェック弁と、前記ボールチェック弁に開口する第2開口部を有し、前記駆動水を前記ハウジング内に導く第2通路と、前記第2開口部よりも下方で前記ボールチェック弁に開口する第3開口部を有し、前記逆流時に前記ボールを押し上げる前記ハウジング内の前記水が流れる第3通路と、前記フランジ内に設けられ、前記ボールと前記第3開口部を形成する構造部材との間に隙間を形成するように前記ボールを支持するボール支持部材とを備えたことにある。
【0011】
ボール支持部材がボールチェック弁のボールを第3開口部を形成する構造部材との間に隙間を形成するように支持しているので、原子炉の運転時においてボールが第3開口部を封鎖することを避けることができる。このため、ボールが、第3開口部を形成する構造部材(例えばフランジの構造部材)に固着することを回避できる。第1通路に連絡される駆動水供給管が破断してハウジング内の水が第1開口部に向って逆流するとき、ボールによって第1開口部を確実に封鎖することができるので、制御棒の炉心からの引き抜きを阻止することができる。
【0012】
ボール支持部材を設ける替りにボールチェック弁のボールを中空にすることによっても、ボールが、第3開口部を形成するフランジ構造部材に固着することを回避できる。このため、駆動水供給管の破断時において、制御棒の炉心からの引き抜きを阻止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スクラム配管の破断時において制御棒が炉心から引き抜きかれることを阻止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0015】
本発明の好適な一実施例である実施例1の制御棒駆動機構(CRD)を、図1〜図3を用いて説明する。本実施例のCRD4は、沸騰水型原子炉(BWR)に適用され、アウターチューブ(ハウジング)5、ガイドチューブ6、ボールナット7、ボールスピンドル(回転軸)8、中空ピストン(ピストン手段)9、電動機ユニット10、フランジ13及びボールチェック弁14を備えている。
【0016】
CRD4は、BWRのRPV1の底部に設けられるCRDハウジング2に取り付けられる。CRDハウジング2は、RPV1の底部を貫通しており、その底部よりも下方に伸びている。アウターチューブ5はCRDハウジング2内に配置される。アウターチューブ5の下端に設けられるフランジ13が、スプールピース12のフランジとCRDハウジング2の下端部に設けられるフランジ23の間に配置される。これら3つのフランジはボルト30によって結合される。これによって、アウターチューブ5はCRDハウジング2に取り付けられる。ガイドチューブ6がアウターチューブ5内に配置されている。ボールナット7、ボールスピンドル8及び中空ピストン9は、ガイドチューブ6内に配置される。ボールナット7は、アウターチューブ5の軸方向に伸びるボールスピンドル8と噛み合っている。中空ピストン9がボールナット7の上面に置かれている。ボールスピンドル8は中空ピストン9内に形成される細長い孔部内に挿入されている。中空ピストン9の上端部は、RPV1内に達しており、制御棒3に着脱自在に連結されている。
【0017】
電動機ユニット10がスプールピース12に取り付けられ、電動機ユニット10に回転軸26によって連結されるアウター電磁カップリング24はスプールピース12の外側に配置されている。インナー電磁カップリング25が、スプールピース12内に配置され、スプールピース12を間に挟んでアウター電磁カップリング24に向き合っている。回転軸11はインナー電磁カップリング25に連結される。
【0018】
ボールチェック弁14がフランジ13内に設けられる。ボールチェック弁14の詳細構成を図2及び図3を用いて説明する。ボールチェック弁14は、金属製である中実のボール15、側壁に複数の貫通孔を有する円筒状のリテーナ(筒状体)16及び棒状のボール支持部材17を有する。ボールチェック弁14は、フランジ13をケーシングとして利用し、フランジ13内に形成された弁流路18を有する。弁流路18は、フランジ13内に形成された水導入通路(第1通路)21を介してスクラム配管22に連絡され、中央流路(第2通路)19を介してアウターチューブ5内に連絡される。水導入通路21の開口部(第1開口部)は弁流路18に開口し、中央流路19の開口部(第2開口部)も弁流路18に開口している。アウターチューブ5内に連絡される下部流路(第3通路)20は、下部開口部27を介して弁流路18に連絡される。ボール15を支持するボール支持部材17は、下部開口部27の中心線上に配置され、その下端が下部流路20の内面のうち下側に位置する部分に設置されている。ボール支持部材17の上端は、弁流路18の、リテーナ16の下端が接触する下端面よりも上方に位置している。ボール15はリテーナ16内に配置されている。
【0019】
原子炉の起動時等における原子炉出力の上昇は、RPV1内の炉心から制御棒3を引き抜くことによって行われる。制御棒の引き抜きは、電動機ユニット10を回転させることによって行われる。電動機ユニット10の回転力は、回転軸26及びアウター電磁カップリング24に伝えられる。アウター電磁カップリング24の回転によって、インナー電磁カップリング25が回転し、回転軸11及びボールスピンドル8が例えば正回転する。ボールナット7は、ボールスピンドル8の正回転によって、下方に移動する。ボールナット7は、ガイドチューブ6の内面に形成されて軸方向に伸びるガイドレールによって、回転運動が拘束され、ガイドチューブ6の軸方向への移動が許容される。ボールナット7の下降に伴って制御棒3が炉心から引き抜かれ、原子炉出力が上昇する。原子炉出力を低下させる場合は、電動機ユニット10の逆回転によってボールスピンドル8を逆回転させ、ボールナット7を上昇させる。
【0020】
BWRの通常運転時では、復水貯蔵タンク(図示せず)からのパージ水が、スクラム配管22から水導入通路21を介して弁流路18内に流入する。このパージ水は、中央流路19を通ってアウターチューブ5内に供給される。弁流路18内を下降するパージ水の流れによって、ボール15はボール支持部材の上端に押し付けられる。しかしながら、ボール支持部材の上端は前述したように弁流路18の下端面よりも上方に位置しているので、下部開口部27はボール15によって封鎖されることはない。弁流路18内に流入したパージ水の一部は、下部開口部27を通って下部流路20内に流入し、アウターチューブ5内に導かれる。
【0021】
地震等により原子炉を緊急停止する必要が生じたとき、アキュムレータ(図示せず)内の高圧水(駆動水)がスクラム配管22を通って弁流路18内に供給される。この高圧水は、中央流路19を通ってアウターチューブ5内に供給され、その高圧水の一部が下部流路20を通ってアウターチューブ5内に導かれる。これらの高圧水の作用により、ボールナット7の上面に置かれている中空ピストン9がボールナット7から離れて急速に上昇し、制御棒3が炉心内に緊急挿入される。原子炉はスクラムされる。高圧水が弁流路18内に供給されても、ボール支持部材17の作用によりボール15が下部開口部27を封鎖することはない。その高圧水が弁流路18内に供給されると同時に、電動機ユニット20が駆動され、ボールナット7の上面が中空ピストン9の下端面に接触するまで、ボールナット7を上昇させる。その後、中空ピストン9はボールナット7によって支持される。制御棒3の自重が中空ピストン9を介してボールナット7に加わりボールスピンドル8が回転して制御棒3が下降する現象は、制御棒3が炉心軸方向の所定位置に保持されている状態では電磁ブレーキ(図示せず)によりボールスピンドル8の回転が阻止されるので、起こりえない。
【0022】
万が一、スクラム配管22が破断した場合、弁流路18内の圧力、すなわち、ボール15より上方の圧力が急激に減少する。このため、アウターチューブ5内の高圧の水が、中央流路19を通って弁流路18内に逆流し、スクラム配管22の破断箇所からスクラム配管22の外部に流出する。弁流路18内ではボール15より上方の圧力がボール15より下方の圧力よりも低下するので、ボール15は上方に向って移動する。下部流路20から弁流路18内にアウターチューブ5内の高圧の水が流入するので、ボール15は急速に上昇して水導入通路21の開口部を封鎖する。この結果、アウターチューブ5内の水がスクラム配管22の破断口から流出することを防止することができる。したがって、スクラム配管22の破断時に電磁ブレーキが故障した場合においても、制御棒3が炉心から引き抜かれることを阻止することができる。
【0023】
本実施例は、BWRの通常運転時における弁流路18内へのパージ水の供給によっても、ボール15がボール支持部材17の上端と接触するので、ボール15が下部開口部27の周囲に存在する構造部材(フランジ13の構造部材)の上部角部(以下、下部開口部27の上部角部という)に着座することを防止することができる。すなわち、ボール15は接触面積が小さいボール支持部材17の上端面と接するので、ボール15とその構造部材の上部角部との間に隙間が形成され、ボール15とその上部角部との固着の可能性を解消することができる。また、ボール15とボール支持部材17の固着も、ボール15とボール支持部材17が点接触であるため、防止することができる。すなわち、本実施例ではボール支持部材17の上端面は平面であるため、ボール15とボール支持部材17の上端面の接触は点接触になる。したがって、スクラム配管22が破断した場合に水導入通路21の開口部をボール15によって確実に封鎖することができる。ボール支持部材17は、少なくともボール15と接触する先端部が下部開口部27の中心線上に位置していればよい。
【0024】
ボール支持部材17の上端部は上に凸になっている球面にしてもよい。ボール支持部材17の上端部が球面になっている場合には、ボール支持部材17によるボール15の支持がより不安定になる。このため、ボール15の固着がさらに起きづらくなる。
【0025】
ボール支持部材17の上端は、ボール15がボール支持部材17に接触している状態でボール15と下部開口部27の上部角部の間に隙間が形成されるという条件の下で、弁流路18の下端面よりも下方に位置させることも可能である。このようにボール支持部材17の上端を位置させることによっても、ボール15の下部開口部27の上部角部への固着が発生しない。本実施例は、スクラム配管22の判断時において、スクラム配管22へのアウターチューブ5内の水の流出をボール15により確実に阻止することができる。
【0026】
ボール支持部材17は、下部開口部27の中心から偏心した位置に配置することも可能である。このようにボール支持部材17が偏心して配置された場合には、ボール15はボール支持部材17上の一点とリテーナ16の内面上の一点で支持される。ボール支持部材17が偏心して配置されることによって、ボール支持部材17によるボール15の支持が不安定になる。このため、BWRの通常運転時に弁流路18内に供給されるパージ水の流れにより、ボール15がボール支持部材17の周囲を回転しやすくなり、ボール15の固着が生じない。少なくともボール支持部材17のボール15と接触する先端部が、下部開口部27の中心から偏心した位置に配置されていればよい。
【0027】
ボール支持部材17を設けないで、下部開口部27の上部角部に複数の傾斜した切り欠きを形成し、これらの切り欠き間にそれぞれ突起部を形成し、これらの突起部にボール15を着座させることも可能である。しかしながら、下部開口部27の上部角部に上記のように複数の突起部を形成した場合には、ボール15は、最少で2つの突起部とリテーナ16の内面の3点に接触して支持される。また、ボール15がそれらの突起部上に着座した場合、ボール15が移動する自由度が小さくなり、ボール支持部材17を偏心させて配置した場合に比べてボール15がそれらの突起部と固着しやすくなる。
【0028】
上記した実施例のCRD4は、スプールピース12を設けて電動ユニット10の回転力をボールスピンドル8に伝える回転軸を分割し、アウターチューブ5ナイト外部との気密性を高める構造を有している。しかしながら、CRD4に適用されているボールチェック弁14及びボール支持部材17の構成は、電動ユニット10の回転力をボールスピンドル8に伝える1本の回転軸を有し、この回転軸の周囲に軸封構造でシールを施した構造を有するCRDに適用することもできる。
【実施例2】
【0029】
本発明の他の実施例である実施例2のCRDを、図4を用いて以下に説明する。本実施例のCRD1Aは、実施例1のCRD1において、ボール支持部材17の替りにボール支持部材17Aを用いた構成を有する。CRD1AもBWRに適用される。ボール支持部材17Aは、実施例1のように下部流路20の内面ではなく、リテーナ16の下端部でその内面に取り付けられている。ボール支持部材17Aは、リテーナ16の内面から水平方向で下部開口部27の中心線まで延びる水平部31及び下部開口部27の中心線に沿って上方に伸びる垂直部32を有するL字上の棒部材である。BWRの通常運転時において、ボール15はボール支持部材17Aの垂直部32の上端に接触している。このため、実施例1と同様に、ボール15と下部開口部27の上部角部の間に隙間が形成されるので、ボール15はその上部角部に固着しない。
【0030】
したがって、本実施例も、スクラム配管22の破断時において、制御棒3が炉心から引抜かれることを阻止することができる。
【実施例3】
【0031】
本発明の他の実施例である実施例3のCRDを、図5を用いて以下に説明する。本実施例のCRD1Bは、実施例1のCRD1において、ボール支持部材17を削除し、ボール15を金属製である中空のボール15Aに替えた構成を有する。ボール15Aは、弁流路18内でリテーナ16内に配置され、内部に密封された空間28を有する。
【0032】
BWRの通常運転時では、前述したように、パージ水が、スクラム配管22から弁流路18内に供給され、中央流路19及び下部流路20を通ってアウターチューブ5内に導入される。ボール15Aは、内部が中空になっている関係上、パージ水が弁流路18内に供給されても、浮遊し、弁流路18の下端面と上端面との間に位置している。このため、パージ水が供給されている状態でボール15Aは下部開口部27の上部角部に着座しない。したがって、ボール15Aは、下部開口部27の上部角部に固着することはない。原子炉をスクラムさせる事象が発生したとき、実施例1と同様に、アキュムレータから高圧水が、スクラム配管22を介して弁流路18内に導かれ、中央流路19を通ってアウターチューブ5内に供給される。これにより、中空ピストン9が急速に上昇し、制御棒3が炉心に急速に挿入される。ボール15Aは、下部開口部27の上部角部に押し付けられる。この場合には、実施例1で述べたように、電動機ユニット10が駆動されてボールナット7が上昇し、中空ピストン9の下端面がボールナット7の上端面と接触して中空ピストン9はボールナット7により支持される。その後、スクラム配管22を通しての高圧水の供給が停止されるので、ボール15Aは上記の上部角部から離れて浮上する。
【0033】
本実施例において、万が一、スクラム配管22が破断した場合、弁流路18内の圧力、すなわち、ボール15Aより上方の圧力が急激に減少する。このため、ボール15Aは、上方に向って移動し、水導入通路21の開口部を封鎖する。この結果、アウターチューブ5内の水がスクラム配管22の破断口から流出することを防止することができる。したがって、スクラム配管22の破断時において制御棒3が炉心から引き抜かれることを阻止することができる。
【0034】
本実施例は、BWRの通常運転時において、ボール15Aが、弁流路18内で浮遊した状態にあり、下部開口27の上部角部に着座しない。したがって、ボール15Aのその上部角部への固着が発生することはない。本実施例も、スクラム配管22の判断時において、スクラム配管22へのアウターチューブ5内の水の流出をボール15により確実に阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の制御棒駆動機構の縦断面図である。
【図2】図1に示すボールチェック弁の拡大図である。
【図3】図2のIII−III断面図である。
【図4】本発明の他の実施例である実施例2の制御棒駆動機構のボールチェック弁の拡大図である。
【図5】本発明の他の実施例である実施例3の制御棒駆動機構のボールチェック弁の拡大図である。
【符号の説明】
【0036】
2…制御棒駆動機構ハウジング、3…制御棒、4,4A,4B…制御棒駆動機構、5…アウターチューブ、6…ガイドチューブ、7…ボールナット、8…ボールスピンドル、9…中空ピストン、10…電動機ユニット、13…ハウジング、14,14A…ボールチェック弁、15,15A…ボール、17,17A…ボール支持部材、18…弁流路、19…中央流路、20…下部流路、22…スクラム配管、27…下部開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端部にフランジを有するハウジングと、前記ハウジング内に配置されて水圧により制御棒を上昇させるピストン装置と、前記ハウジング内に形成され、前記ピストン装置に前記水圧を加える駆動水を導く第1通路と、前記ハウジング内に設けられて前記第1通路の第1開口部に連絡され、前記ハウジング内の水が前記第1通路に向かって逆流するときに前記第1開口部を塞ぐボールを有するボールチェック弁と、前記ボールチェック弁に開口する第2開口部を有し、前記駆動水を前記ハウジング内に導く第2通路と、前記第2開口部よりも下方で前記ボールチェック弁に開口する第3開口部を有し、前記逆流時に前記ボールを押し上げる前記ハウジング内の前記水が流れる第3通路と、前記フランジ内に設けられ、前記ボールと前記第3開口部を形成する構造部材との間に隙間を形成するように前記ボールを支持するボール支持部材とを備えたことを特徴とする制御棒駆動機構。
【請求項2】
前記ボール支持部材が前記第3通路の内面に設置されている請求項1に記載の制御棒駆動機構。
【請求項3】
前記ボールと接触する、前記ボール支持部材の先端部が、前記第3開口部の中心線上に位置している請求項2に記載の制御棒駆動機構。
【請求項4】
前記ボールと接触する、前記ボール支持部材の先端部が、前記第3開口部の中心線から偏心した位置に配置されている請求項2に記載の制御棒駆動機構。
【請求項5】
前記ボールチェック弁は、複数の貫通穴を有する筒状体を内部に配置し、前記ボールを前記筒状体内に配置している請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の制御棒駆動機構。
【請求項6】
前記ハウジング内に配置され、前記ピストン装置が載置されるナット装置と、前記ハウジング内に配置されて前記ナット装置に噛み合い、回転によって前記ナット装置を上下動させる回転軸と、前記ハウジングに取り付けられて前記回転軸を回転させる駆動装置とを備えた請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の制御棒駆動機構。
【請求項7】
下端部にフランジを有するハウジングと、前記ハウジング内に配置されて水圧により制御棒を上昇させるピストン装置と、前記ハウジング内に形成され、前記ピストン装置に前記水圧を加える駆動水を導く第1通路と、前記ハウジング内に設けられて前記第1通路の第1開口部に連絡され、前記ハウジング内の水が前記第1通路に向かって逆流するときに前記第1通路の前記第1開口部を塞ぐ中空のボールを有するボールチェック弁と、前記ボールチェック弁に連絡され、前記駆動水を前記ハウジング内に導く第2通路と、前記ボールチェック弁における前記第2通路の第2開口部よりも下方で前記ボールチェック弁に開口する第3開口部を有し、前記逆流時に前記ボールを押し上げる前記ハウジング内の前記水が流れる第3通路とを備えたことを特徴とする制御棒駆動機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−97909(P2009−97909A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267751(P2007−267751)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)