説明

制御装置及び方法、並びに信号処理装置

【課題】信号処理部が備える波形整形機能に対して、使用環境の変化に応じて適切な設定を行う。
【解決手段】制御装置は、筐体)内に実装された信号処理部であって且つ入力された信号に対する波形整形処理を行う波形整形部を備える信号処理部を制御する制御装置であって、(i)信号処理部の実装状態を示す実装情報、(ii)信号処理部の温度を示す温度情報、及び(iii)信号処理部に固有の特性を示す処理部特性情報を取得する取得手段と、実装情報、温度情報及び処理部特性情報に基づいて、波形整形部における波形整形特性を調整する調整手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば信号の送受信処理等の信号処理を行う信号処理部の動作を制御する制御装置及び方法、並びに信号処理部と制御装置とを備える信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
伝送装置や交換機などの通信用の通信装置として、金属製シェルフ(つまり、筐体)の背面に搭載したバックワイヤリングボード(BWB:Back Wiring Board)に、電子回路パッケージ等の信号処理回路を有する複数のプリント基板ユニット(以下、「プラグインユニット(PIU:Plug In Unit)」という)が実装されたブックシェルフ型の通信装置が使用されている。
【0003】
近年では、より多くの数のプラグインユニットを1台の通信装置に実装することが要求されている。これに伴い、バックワイヤリングボード上における信号の伝送に対して、長距離化や高速化(言い換えれば、伝送性能の向上)が要求されている。伝送性能の向上のための対応策の一例として、信号の送受信を行う際に用いられるSerdes(Serializer / De-Sirializer)回路を備えるプラグインユニットに対して、信号の送信側で実行されるFFE(Feed Forward Equalizer)機能や信号の受信側で実行されるDFE(Decision Feedback Equalizer)機能等の波形整形機能を実装する対応策が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−268978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
信号の送信側で実行されるFFE機能における波形整形特性(例えば、イコライザ設定値)と信号の受信側で実行されるDFE機能に対する波形整形特性との組み合わせの種類は、プラグインユニットの使用環境に応じて数万通りにも及びかねない。このとき、FFE機能又はDFE機能が実現している実際の波形整形特性が適切な若しくは最適な波形整形特性からずれてしまうと、波形歪みやジッタ成分の増加ないしは信号成分の埋もれこみを引き起こし易くなるという技術的な問題点が生じ得る。この問題点は、信号の伝送速度が高速になるほど顕著になる。従って、FFE機能やDFE機能をプラグインユニットに実装する場合には、正常な又は最適な通信を行うことができるように適切に波形整形特性を決定することが好ましい。
【0006】
一方で、プラグインユニットの個体バラツキやプラグインユニットの温度やプラグインユニットの実装状態などの使用環境は、通信装置の使用に伴って逐次変化し得る。しかしながら、使用環境の逐次の変化に応じた波形整形特性の決定を行っていないのが現状である。このため、波形整形特性の決定当初には最適な波形整形特性であったにも関わらず、その後の使用環境の変化によっては適切に信号を伝送することができなくなるという技術的な問題点が発生しかねない。
【0007】
上述した問題点は、通信装置に限らず、任意の信号処理を行う信号処理装置(例えば、ある信号処理部で所定の信号処理を行った信号を、バックワイヤリングボードを介して他の信号処理部へ伝送する信号処理装置)においてもが発生し得る。
【0008】
本発明が解決しようとする課題には上記のようなものが一例として挙げられる。本発明は、例えば信号処理部が備える波形整形機能に対して、使用環境の変化に応じて適切な設定を行うことが可能な制御装置及び方法、並びに信号処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、取得手段と調整手段とを備える制御装置によって解決され得る。制御装置は、筐体内に実装された信号処理部を制御する。信号処理部は、信号処理部に入力された信号に対する波形整形処理を行う波形整形部を備える。取得手段は、(i)筐体内における信号処理部の実装状態を示す実装情報、(ii)信号処理部の温度である処理部温度を示す温度情報、及び(iii)信号処理部に固有の特性を示す処理部特性情報の少なくとも一つを取得する。取得手段が実装情報、温度情報及び処理部特性情報の少なくとも一つを取得する態様は任意でよく、他の手段から供給される実装情報、温度情報又は処理部特性情報を取得してもよいし、取得手段自身が行う演算動作によって実装情報、温度情報又は処理部特性情報を取得(つまり、算出)してもよいし、制御装置内部に格納された実装情報、温度情報又は処理部特性情報を取得してもよい。調整手段は、取得手段により取得された実装情報、温度情報及び処理部特性情報の少なくとも一つに基づいて、波形整形部における波形整形特性を調整する。
【0010】
上記課題は、取得工程と調整工程とを備える制御方法によって解決される。取得工程では、上述した取得手段が行う動作と同様の動作が行われる。調整工程では、上述した調整手段が行う動作と同様の動作が行われる。
【0011】
上記課題は、筐体と上述した信号処理部と上述した制御装置とを備える信号処理装置によって解決され得る。
【発明の効果】
【0012】
以上説明した伝送装置によれば、実装情報、温度情報及び処理部特性情報の少なくとも一つに基づいて、波形整形部における波形整形特性を調整することができる。従って、制御装置は、使用環境の変化(例えば、信号処理部の実装状態の変化や、信号処理部の処理部温度の変化や、これらの変化に影響を与え得る信号処理部の特性等)に応じて波形整形特性を適切に調整することができる。
【0013】
以上説明した制御方法及び信号処理装置によれば、上述した制御装置が享受する効果と同様の効果を享受することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態の通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】本実施形態の通信装置の筐体の外観を示す模式図である。
【図3】PVT情報の一例を示すグラフである。
【図4】本実施形態の通信装置1が備える装置制御カードユニットの構成の一例を示すブロック図である。
【図5】本実施形態の通信装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】デバイス温度の算出方法をデバイス温度算出用データベースと対応付けて示す説明図である。
【図7】イコライザ設定値の算出方法をイコライザ設定値算出用データベース422と対応付けて示す説明図である。
【図8】第1変形例の通信装置の構成の一部を示すブロック図である。
【図9】第2変形例の通信装置の構成の一部を示すブロック図である。
【図10】第3変形例の通信装置の構成の一部を示すブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、「信号処理部」及び「信号処理装置」の一例として、バックワイヤリングボードを介して信号の送受信を行う「プラグインカードユニット」及び当該プラグインカードユニットが複数実装される「通信装置」について説明する。但し、通信装置に限らず、内部の伝送路を介して2つの信号処理部が信号を互いに送受信する任意の信号処理装置に対して、以下に説明する構成を適用してもよい。
【0016】
(1)通信装置の構成
図1及び図2を参照して、本実施形態の通信装置1の構成について説明する。図1は、本実施形態の通信装置1の構成の一例を示すブロック図である。図2は、本実施形態の通信装置1の筐体70の外観を示す模式図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の通信装置1は、「信号処理部」の一例に相当する複数の送信用プラグインカードユニット10(以降、“送信ユニット10”と称する)と、「信号処理部」の一例に相当する複数の受信用プラグインカードユニット20(以降、“受信ユニット20”と称する)と、「信号処理部」の一例に相当するスイッチユニット30と、「制御装置」の一例に相当する装置制御カードユニット40(以降、“制御ユニット40”と称する)と、「測定手段」の一例に相当する温度監視部50と、「伝送路」の一例に相当するバックワイヤリングボード60とを備えている。複数の送信ユニット10及び複数の受信ユニット20の夫々は、図2に示すように、通信装置1の筐体70が備える複数のスロット71(具体的には、スロット#1からスロット#24)に対して実装される。スイッチユニット30は、図2に示すように、通信装置1の筐体70が備えるスイッチ用スロット72に対して実装される。図2では、通信装置1の外部に敷設されている不図示の現用回線及び予備回線と通信装置1とが接続されていると共に、現用回線に対する信号の送受信を制御するスイッチユニット30を実装するスイッチ用スロット72及び予備回線に対する信号の送受信を制御するスイッチユニット30を実装するスイッチ用スロット72を備える例を示している。制御ユニット40は、図2に示すように、通信装置1の筐体70が備える制御系スロット73に対して実装される。
【0018】
複数の送信ユニット10の夫々は、バックワイヤリングボード60に対して、コネクタ61を介して接続されている。複数の送信ユニット10の夫々は、SERDES送信器11と、PVT(Process Voltage Temperature)情報格納部12と、エイジングカウンタ13と、カード制御部14とを備えている。
【0019】
SERDES送信器11は、バックワイヤリングボード60(例えば、その内部のデータバス)を介して、受信ユニット20やスイッチユニット30に対して信号を送信する。本実施形態では、SERDES送信器11は、SERDES送信器11から送信される信号の波形を整形するためのFFE(Feed Forward Equalizer:フィードフォワードイコライザ)15を備えている。FFE15のイコライザ設定値は、制御ユニット40により設定される。FFE15は、「波形整形部」の一例に相当する。
【0020】
PVT情報格納部12は、送信ユニット10に固有の特性を示すPVT情報を格納する。例えば、PVT情報格納部12には、送信ユニット10が製造された時点で、送信ユニット10の製造者等によって生成される又は用意されるPVT情報が予め格納される。PVT情報に代えて、送信ユニット10に固有の特性を示す任意の情報を用いてもよい。
【0021】
ここで、図3を参照して、PVT情報について説明する。図3は、PVT情報の一例を示すグラフである。図3に示すように、PVT情報は、例えば、送信ユニット10(或いは、後述する受信ユニット20又はスイッチユニット30)の動作速度(Process)と消費電力(Voltage)とを対応付けたグラフないしは関数等であってもよい。或いは、PVT情報は、送信用ユニット10(或いは、後述する受信ユニット20又はスイッチユニット30)の動作速度(Process)、消費電力(Voltage)及び使用温度(Temperature)のうちの少なくとも2つを対応付けたグラフないしは関数等であってもよい。
【0022】
再び図1において、エイジングカウンタ13は、送信ユニット10が使用されている間、カウンタ値をカウントする。言い換えれば、エイジングカウンタ13は、送信ユニット10が使用されていない間は、カウンタ値をカウントしない。つまり、エイジングカウンタ13は、送信ユニット10の経年劣化の度合いを示すエイジング情報(本実施形態では、カウント値)を生成する。尚、エイジング情報がカウント値に限定されることはなく、送信ユニット10の経年劣化の度合いを示す任意の情報をエイジング情報として用いてもよい。
【0023】
カード制御部14は、送信ユニット10の動作を制御する。カード制御部14は、バックワイヤリングボード60(例えば、その内部の制御バス62)を介して、受信ユニット20やスイッチユニット30や制御ユニット40に対して各種制御情報を送信することができる。本実施形態では、制御情報として、PVT情報格納部12が格納するPVT情報や、エイジングカウンタ13がカウントするエイジング情報が一例としてあげられる。カード制御部14は、送信ユニット10の筐体70への実装に同期して、送信ユニット10の実装状態を示す実装情報を生成する。カード制御部14は、生成した実装情報を、バックワイヤリングボード60(例えば、その内部の制御バス62)を介して、制御情報として受信ユニット20やスイッチユニット30や制御ユニット40に対して送信する。実装情報は、例えば、送信ユニット10のカードタイプや、送信ユニット10が実装されたスロット位置や、送信ユニット10の周囲に実装されている他のユニットのカードタイプ及びスロット位置等を示す。
【0024】
複数の受信ユニット20の夫々は、バックワイヤリングボード60に対して、コネクタ61を介して接続されている。複数の受信ユニット20の夫々は、SERDES受信器21と、PVT情報格納部22と、エイジングカウンタ23と、カード制御部24とを備えている。
【0025】
SERDES受信器21は、バックワイヤリングボード60(例えば、その内部のデータバス)を介して、送信ユニット10やスイッチユニット30から送信される信号を受信する。本実施形態では、SERDES受信器21は、当該SERDES受信器21により受信される信号の波形を整形するためのDFE(Decision Feedback Equalizer:デシジョンフィードバックイコライザ)25を備えている。DFE25のイコライザ設定値は、制御ユニット40により設定される。DFE25は、「波形整形部」の一例に相当する。
【0026】
PVT情報格納部22は、上述したPVT情報格納部12と同様の構成を有している。具体的には、PVT情報格納部22は、受信ユニット20に固有の特性を示すPVT情報を格納する。
【0027】
エイジングカウンタ23は、上述したエイジングカウンタ13と同様の構成を有している。具体的には、エイジングカウンタ23は、受信ユニット20の経年劣化の度合いを示すエイジング情報(本実施形態では、カウント値)を生成する。
【0028】
カード制御部24は、上述したカード制御部14と同様の構成を有している。具体的には、カード制御部24は、受信ユニット20の動作を制御する。カード制御部24は、バックワイヤリングボード60(例えば、その内部の制御バス62)を介して、送信ユニット10やスイッチユニット30や制御ユニット40に対して各種制御情報を送信することができる。制御情報として、PVT情報格納部22が格納するPVT情報や、エイジングカウンタ23がカウントするエイジング情報や、受信ユニット20の実装状態を示す実装情報が一例としてあげられる。
【0029】
スイッチユニット30は、バックワイヤリングボード60に対して、コネクタ61を介して接続されている。また、スイッチユニット30は、上述した複数の受信ユニット20に対応する複数のSERDES送信器11と、上述した複数の送信ユニット10に対応する複数のSERDES受信器21と、PVT情報格納部32と、エイジングカウンタ33と、カード制御部34とを備えている。
【0030】
スイッチユニット30が備えるSERDES送信器11は、送信ユニット10が備えるSERDES送信器11と同様の構成を有している。また、スイッチユニット30が備えるSERDES受信器21は、受信ユニット20が備えるSERDES受信器21と同様の構成を有している。
【0031】
PVT情報格納部32は、上述したPVT情報格納部12及び22と同様の構成を有している。具体的には、PVT情報格納部32は、スイッチユニット30に固有の特性を示すPVT情報を格納する。
【0032】
エイジングカウンタ33は、上述したエイジングカウンタ13又は23と同様の構成を有している。具体的には、エイジングカウンタ33は、スイッチユニット30の経年劣化の度合いを示すエイジング情報(本実施形態では、カウント値)を生成する。
【0033】
カード制御部34は、上述したカード制御部14又は24と同様の構成を有している。具体的には、カード制御部34は、スイッチユニット30の動作を制御する。カード制御部34は、バックワイヤリングボード60(例えば、その内部の制御バス62)を介して、送信ユニット10や受信ユニット20や制御ユニット40に対して各種制御情報を送信することができる。制御情報として、PVT情報格納部32が格納するPVT情報や、エイジングカウンタ33がカウントするエイジング情報や、スイッチユニット30の実装状態を示す実装情報が一例としてあげられる。
【0034】
制御ユニット40は、装置制御部41と、設定値算出用データベース42とを備えている。装置制御部41は、通信装置1の動作を制御する。本実施形態では、装置制御部41は、SERDES送信器11が備えるFFE15のイコライザ設定値やSERDES受信器21が備えるDFE25のイコライザ設定値を算出する。設定値算出用データベース42は、装置制御部41が行なうイコライザ設定値の算出動作(更には、後述する送信ユニット10、受信ユニット20及びスイッチユニット30のデバイス温度の算出動作)に用いられる各種データベースを格納する。
【0035】
ここで、図4を参照して、制御ユニット40の構成についてより詳しく説明する。図4は、本実施形態の通信装置1が備える制御ユニット40の構成の一例を示すブロック図である。
【0036】
図4に示すように、制御ユニット40が備える装置制御部41は、「取得手段」の一例に相当する情報取得部411と、「取得手段」の一例に相当するデバイス温度算出部412と、「調整手段」の一例に相当するイコライザ設定値算出部413と、「調整手段」の一例に相当するイコライザ設定指示部414とを備えている。設定値算出用データベース42は、デバイス温度算出用データベース421と、イコライザ設定値算出用データベース422とを備えている。
【0037】
情報取得部411は、送信ユニット10、受信ユニット20又はスイッチユニット30から送信される制御情報(つまり、PVT情報や、エイジング情報や、実装情報等)を取得する。
【0038】
デバイス温度算出部412は、情報取得部411により取得された制御情報(例えば、PVT情報や実装情報)及び温度監視部50により測定された環境温度に基づいて、送信ユニット10、受信ユニット20又はスイッチユニット30の温度を示すデバイス温度を算出する。デバイス温度は、例えば、送信ユニット10、受信ユニット20又はスイッチユニット30の個々の温度(或いは、個々の動作温度)を示す。
【0039】
イコライザ設定値算出部413は、情報取得部411により取得された制御情報(例えば、PVT情報やエイジング情報)及びデバイス温度算出部412により算出されたデバイス温度に基づいて、送信ユニット10若しくはスイッチユニット30が備えるSERDES送信器11が備えるFFE15又は受信ユニット20若しくはスイッチユニット30が備えるSERDES受信器21が備えるDFE25のイコライザ設定値を算出する。
【0040】
イコライザ設定指示部414は、イコライザ設定値算出部413により算出されたイコライザ設定値にてFFE15及びDFE25が動作するように、イコライザ設定値を通知し且つ適用させるための制御信号をFFE15及びDFE25に対して送信する。
【0041】
デバイス温度算出用データベース421は、情報取得部411により取得された制御情報(例えば、PVT情報や実装情報)及び温度監視部50により測定された環境温度と、デバイス温度との対応付けを示すデータベースを備える。デバイス温度算出用データ421については、後に図面を用いて詳述する(図5参照)。
【0042】
イコライザ設定値算出用データベース422は、情報取得部411により取得された制御情報(例えば、PVT情報やエイジング情報)及びデバイス温度算出部412により算出されたデバイス温度と、イコライザ設定値との対応付けを示すデータベースを備える。イコライザ設定値算出用データ422については、後に図面を用いて詳述する(図6参照)。
【0043】
再び図1において、温度監視部50は、通信装置1の環境温度を測定する。環境温度は、例えば、通信装置1の筐体70内の任意の地点の温度ないしは通信装置1の周辺の温度を示す。
【0044】
(2)通信装置の処理例
図5を参照して、本実施形態の通信装置1の処理の流れについて説明する。ここに、図5は、本実施形態の通信装置1の処理の流れを示すフローチャートである。
【0045】
図5に示すように、制御ユニット40が備える情報取得部411は、送信ユニット10、受信ユニット20又はスイッチユニット30の実装状態が変化したか否かを判定する(ステップS101)。例えば、送信ユニット10、受信ユニット20又はスイッチユニット30が筐体70に対して新たに実装された場合には、新たに実装された送信ユニット10、受信ユニット20又はスイッチユニット30から制御ユニット40に対して実装情報が送信される。従って、当該実装状態の送信を受けた場合には、情報取得部411は、送信ユニット10、受信ユニット20又はスイッチユニット30の実装状態が変化したと判定してもよい。
【0046】
ステップS101における判定の結果、送信ユニット10、受信ユニット20又はスイッチユニット30の実装状態が変化していないと判定された場合には(ステップS101:No)、情報取得部411は、ステップS101の処理を継続する。
【0047】
ステップS101における判定の結果、送信ユニット10、受信ユニット20又はスイッチユニット30の実装状態が変化したと判定された場合には(ステップS101:Yes)、情報取得部411は、実装状態が変化した送信ユニット10、受信ユニット20又はスイッチユニット30から、PVT情報やエイジング情報や実装情報を取得する(ステップS102)。更に、情報取得部411は、実装状態が変化していない送信ユニット10、受信ユニット20又はスイッチユニット30からも、PVT情報やエイジング情報や実装情報を改めて取得してもよい。情報取得部411は、取得したPVT情報やエイジング情報や実装情報を、デバイス温度算出部412に対して出力する。
【0048】
続いて、温度監視部50は、通信装置1の環境温度を測定する(ステップS103)。温度監視部50は、特定のタイミングで環境温度を測定することに加えて又は代えて、常時環境温度を測定していてもよい。温度監視部50は、測定した環境温度を、デバイス温度算出部412に対して出力する。
【0049】
続いて、デバイス温度算出部412は、送信ユニット10、受信ユニット20又はスイッチユニット30のデバイス温度を算出する(ステップS104)。適切な通信のためには送信側(つまり、FFE15側)及び受信側(つまり、DFE25側)の双方のイコライザ設定値を算出することが好ましいということを考慮して、デバイス温度算出部412は、実装状態が変化したユニット(送信ユニット10、受信ユニット20若しくはスイッチユニット30)及び当該実装状態が変化したユニットに対向する他のユニット(送信ユニット10、受信ユニット20若しくはスイッチユニット30)の夫々のデバイス温度を算出してもよい。或いは、デバイス温度算出部412は、通信装置1が備える全ての送信ユニット10、受信ユニット20及びスイッチユニット30のうち、イコライザ設定値を変更したいFFE15及びDFE25を備える少なくとも2つのユニット(送信ユニット10、受信ユニット20若しくはスイッチユニット30)の夫々のデバイス温度を算出してもよい。或いは、デバイス温度算出部412は、通信装置1が備える全ての送信ユニット10、受信ユニット20及びスイッチユニット30の夫々のデバイス温度を算出してもよい。デバイス温度算出部412は、算出したデバイス温度を、イコライザ設定値算出部413に対して出力する。
【0050】
ここで、図6を参照して、デバイス温度の算出方法についてより詳細に説明する。図6は、デバイス温度の算出方法をデバイス温度算出用データベース421と対応付けて示す説明図である。尚、図6は、送信ユニット10のデバイス温度を算出する例について説明するが、受信ユニット20及びスイッチユニット30のデバイス温度を算出する場合にも同様のデバイス温度算出用データベースを用いることができる。
【0051】
図6に示すように、デバイス温度算出用データベース421は、送信ユニット10のカードタイプ毎に、実装情報が示すスロット位置及びPVT情報の双方を特定することで一意に定まるデバイス温度算出式を示す。例えば、図6に示す例では、デバイス温度算出用データベース421は、「#1」から「#M」にて特定されるスロット位置及び「1」から「N」にて特定されるPVT情報の双方を特定することで一意に定まるデバイス温度算出式を示している。より具体的には、図6に示す例では、カードタイプが「Type Atx」であり、実装情報が示すスロット位置が「スロット#13」であり且つPVT情報が「Dtx」である場合には、デバイス温度算出式が「F13Dtx(t)」となる例が示されている。
【0052】
デバイス温度算出用データベース421は、送信ユニット10のカードタイプ毎に、実装情報が示すスロット位置と、送信ユニット10の吸気温度に対するカード内の温度上昇値を示すカード内温度情報算出式及び送信ユニット10が上段スロットに対して与える風量を示す上段への風量係数との対応付けを示す。例えば、図6に示す例では、デバイス温度算出用データベース421は、「#1」から「#M」にて特定されるスロット位置に対応するカード内温度情報算出式及び上段スロットへの風量係数を示している。より具体的には、図6に示す例では、カードタイプが「Type Ctx」であり且つ実装情報が示すスロット位置が「スロット#1」である場合には、カード内温度情報算出式が「Fa1(t)」となり且つ上段スロットへの風量係数が「α1」となる例が示されている。
【0053】
図6の最上段に示すPVT情報及び実装情報が取得された場合の、デバイス温度の算出動作について具体的に説明する。実装情報は、(i)カードタイプが「Type Atx」となる送信ユニット10が、「スロット#13」に実装されており、且つ(ii)当該送信ユニット10の周囲(例えば、スロット#13の下段に位置するスロット#1:図2参照)に、カードタイプが「Type Ctx」となる送信ユニット10が実装されていることを示している。また、PVT情報は、カードタイプが「Type Atx」となる送信ユニット10のPVT情報が、「Dtx」となることを示している。
【0054】
デバイス温度算出部412は、実装情報が示すカードタイプ「Type Atx」に基づいて、デバイス温度算出用データベース421内の「Type Atx」用のテーブルを参照する。更に、デバイス温度算出部412は、実装情報が示す「スロット#13」及びPVT情報が示す「Dtx」に基づいて、「Type Atx」用のテーブルから、実装情報が示す「スロット#13」とPVT情報が示す「Dtx」とに対応付けられたデバイス温度算出式「F13Dtx(t)」を取得する。
【0055】
また、デバイス温度算出部412は、実装情報が示す周囲カードタイプ「Type Ctx(スロット#1)」に基づいて、デバイス温度算出用データベース421内の「Type Ctx」用のテーブルから、実装情報が示す「スロット#1」に対応付けられたカード内温度情報算出式「Fa1(t)」及び上段への風量係数「α1」を取得する。
【0056】
また、デバイス温度算出部412は、温度監視部50により測定された環境温度「T」を更に取得する。
【0057】
その後、デバイス温度算出部412は、デバイス温度算出式「F13Dtx(t)」に対して、カード内温度情報算出式「Fa1(t)」及び上段への風量係数「α1」ならびに環境温度「T」を変数として代入することで得られる数値を、デバイス温度として算出する。具体的には、デバイス温度算出部412は、F13Dtx(α1×(T+Fa1(T))という数式を演算することで得られる数値を、カードタイプが「Type Atx」となる送信ユニット10のデバイス温度として算出する。
【0058】
再び図5において、イコライザ設定値算出部413は、送信ユニット10、受信ユニット20又はスイッチユニット30が備えるFFE15又はDFE25のイコライザ設定値を算出する(ステップS105)。適切な通信のためのは送信側(つまり、FFE15側)及び受信側(つまり、DFE25側)の双方のイコライザ設定値を算出することが好ましいということを考慮して、イコライザ設定値算出部413は、実装状態が変化したユニット(送信ユニット10、受信ユニット20若しくはスイッチユニット30)及び当該実装状態が変化したユニットに対向する他のユニット(送信ユニット10、受信ユニット20若しくはスイッチユニット30)が備えるFFE15及びDFE25の夫々のイコライザ設定値を算出してもよい。或いは、イコライザ設定値算出部413は、通信装置1が備える全ての送信ユニット10、受信ユニット20及びスイッチユニット30が備えるFFE15及びDFE25のうち、イコライザ設定値を変更したい一対のFFE15及びDFE25の夫々のイコライザ設定値を算出してもよい。イコライザ設定値算出部413は、算出したイコライザ設定値を、イコライザ設定指示部414に対して出力する。
【0059】
ここで、図7を参照して、イコライザ設定値の算出方法についてより詳細に説明する。図7は、イコライザ設定値の算出方法をイコライザ設定値算出用データベース422と対応付けて示す説明図である。尚、図7は、送信ユニット10に対応するイコライザ設定値算出用データベース422について説明するが、受信ユニット20及びスイッチユニット30に対しても同様のイコライザ設定値算出用データベース422を用いることができる。
【0060】
図7に示すように、イコライザ設定値算出用データベース422は、送信ユニット10のカードタイプ(つまり、SERDES送信器11の種類)毎に、PVT情報及びエイジング情報の双方を特定することで一意に定まるTx条件を示す。例えば、図7に示す例では、イコライザ設定値算出用データベース422は、「1」から「M」にて特定されるPVT情報及び「1」から「N」にて特定されるエイジング情報の双方を特定することで一意に定まるTx条件を示している。より具体的には、図7に示す例では、PVT情報が「Dtx」であり且つエイジング情報が「Etx」である場合には、Tx条件Z−Zが特定される例を示している。
【0061】
加えて、図7に示すように、イコライザ設定値算出用データベース422は、送信ユニット10のカードタイプ(つまり、SERDES送信器11の種類)毎に、Tx条件及びデバイス温度の双方を特定することで定まると共に夫々が所定のイコライザ設定値(イコライザ条件)に対応付けられた複数の送信側出力特性を示す。例えば、図7に示す例では、イコライザ設定値算出用データベース422は、「Tx条件1」から「Tx条件M」にて特定されるTx条件及び「Ttx」から「TN」にて特定されるデバイス温度の双方を特定することで定まると共に夫々が所定のイコライザ設定値「1」から「N」に対応付けられた複数の送信側出力特性を示している。より具体的には、図7に示す例では、Tx条件が「Z−Z」であり且つデバイス温度が「Ttx」である場合には、イコライザ設定値「1」から「N」に対応付けられた「送信側出力特性Ttx−1」から「送信側出力特性Ttx−N」が特定される例を示している。
【0062】
図7の最上段に示すPVT情報、実装情報、エイジング情報及びデバイス温度が取得された場合の、イコライザ設定値の算出動作について具体的に説明する。実装情報は、カードタイプが「Type Atx」となる送信ユニット10(言い換えれば、種類が「Type A」となるSERDES送信器11)が実装されていることを示している。PVT情報は、送信ユニット10のPVT情報が、「Dtx」となることを示している。エイジング情報は、送信ユニット10のエイジング情報が、「「Etx」となることを示している。デバイス温度は、送信ユニット10のデバイス温度が、「Ttx」となることを示している。
【0063】
イコライザ設定値算出部413は、実装情報が示すカードタイプ「Type Atx」に基づいて、イコライザ設定値算出用データベース422内の「Type Atx」用のテーブル(言い換えれば、「SERDES Type A」用のテーブル)を参照する。イコライザ設定値算出部413は、PVT情報が示す「Dtx」及びエイジング情報が示す「Etx」に基づいて、「Type A」用のテーブルから、PVT情報が示す「Dtx」とエイジング情報が示す「Etx」とに対応付けられた「Tx条件Z−Z」を取得する。
【0064】
続いて、イコライザ設定値算出部413は、取得されたTx条件が示す「Tx条件Z−Z」及びデバイス温度が示す「Ttx」に基づいて、「Type A」用のテーブルから、Tx条件が示す「Tx条件Z−Z」とデバイス温度が示す「Ttx」と対応付けられると共に、FFE15のイコライザ設定値「1」から「N」に対応付けられた「送信側出力特性Ttx−1」から「送信側出力特性Ttx−N」を取得する。
【0065】
同様の手法を用いて、受信ユニット20に対応する受信側出力特性もまた取得される。以下、「送信側出力特性Ttx−1」から「送信側出力特性Ttx−N」が取得された送信ユニット10に対向する受信ユニット20に対応する出力特性として、DFE25のイコライザ設定値「1」から「N」に対応付けられた「受信側出力特性Rtx−1」から「受信側出力特性Rtx−N」が取得されたものとして説明を進める。
【0066】
イコライザ設定値算出部413は、バックワイヤリングボード60における伝送路特性を示すSパラメータ(つまり、S(x))を用いて、「S(送信側出力特性)≧受信側出力特性」という条件式を満たすイコライザ設定値の組み合わせを算出する。伝送路特性を示すSパラメータは、情報取得部411によって予め取得されていてもよいし、実際にイコライザ設定値を算出する時点で取得されてもよい。これにより、イコライザ設定値算出部413は、FFE15のイコライザ設定値及びDFE25のイコライザ設定値の双方を算出することができる。
【0067】
再び図5において、イコライザ設定指示部414は、ステップS105において算出されたイコライザ設定値にてFFE15及びDFE25が動作するように、イコライザ設定値を指示するための制御信号を、当該制御信号の対象となるFFE15及びDFE25に対して送信する(ステップS106)。その結果、FFE15及びDFE25は、新たなイコライザ設定値に応じた波形整形特性を実現しながら動作する。つまり、FFE15及びDFE25は、イコライザ設定値の変更を適用した上で動作する。尚、ステップS105において新たに算出されたイコライザ設定値と、現在のFFE15又はDFE25のイコライザ設定値とが同一となる場合には、イコライザ設定指示部414は、新たに算出されたイコライザ設定値を指示するための制御信号をFFE15及びDFE25に対して送信しなくともよい。
【0068】
以上説明したように、本実施形態の通信装置1によれば、制御ユニット40は、送信ユニット10、受信ユニット20若しくはスイッチユニット30から取得する実装情報、PVT情報及びエイジング情報、並びに温度監視部50から取得する環境温度に基づいて、FFE15及びDFE25のイコライザ設定値を算出することができる。従って、制御ユニット40は、通信装置1の使用環境の変化(例えば、送信ユニット10、受信ユニット20若しくはスイッチユニット30の実装状態の変化や、デバイス温度の変化や、これらの変化に影響を与え得るPVT情報等)に応じてFFE15及びDFE25における波形整形特性を適切に調整することができる。
【0069】
本実施形態の通信装置1によれば、制御ユニット40は、通信装置1内を伝送する各種信号を実際にモニタリングしなくとも、FFE15及びDFE25における波形整形特性を適切に調整することができる。従って、制御ユニット40は、処理負荷を大幅に増大させることなく、FFE15及びDFE25における波形整形特性を適切に調整することができる。
【0070】
本実施形態の通信装置1によれば、制御ユニット40は、送信ユニット10、受信ユニット20若しくはスイッチユニット30から取得する実装情報及びPVT情報、並びに温度監視部50から取得する環境温度に基づいて、送信ユニット10、受信ユニット20若しくはスイッチユニット30のデバイス温度を算出することができる。従って、制御ユニットは、通信装置1が備える全ての送信ユニット10、受信ユニット20及びスイッチユニット30のデバイス温度を直接的に監視しなくとも、送信ユニット10、受信ユニット20及びスイッチユニット30の実装状態や特性等を考慮して、送信ユニット10、受信ユニット20及びスイッチユニット30のデバイス温度を適切に算出することができる。
【0071】
本実施形態の通信装置1によれば、制御ユニット40は、通信装置1の環境温度に対して、送信ユニット10、受信ユニット20及びスイッチユニット30の実装状態や特性等に起因した温度変動分を加算する又は減算することで、送信ユニット10、受信ユニット20及びスイッチユニット30のデバイス温度を算出できる。従って、制御ユニット40は、送信ユニット10、受信ユニット20及びスイッチユニット30のデバイス温度を適切に算出することができる。
【0072】
本実施形態の通信装置1によれば、制御ユニット40は、送信ユニット10、受信ユニット20及びスイッチユニット30の経年劣化の度合い(つまり、エイジング情報)も考慮してイコライザ設定値を算出することができる。このため、制御ユニット40は、より適切なイコライザ設定値を算出することができる。
【0073】
本実施形態の通信装置1によれば、制御ユニット40は、バックワイヤリングボード60の伝送路特性(例えば、Sパラメータ等)も考慮してイコライザ設定値を算出することができる。このため、制御ユニット40は、より適切なイコライザ設定値を算出することができる。
【0074】
本実施形態の通信装置1によれば、PVT情報が送信ユニット10、受信ユニット20及びスイッチユニット30内に予め格納されている。このため、制御ユニット40は、送信ユニット10、受信ユニット20及びスイッチユニット30のPVT情報を確実に取得することができる。
【0075】
本実施形態の通信装置1によれば、設定値算出用データベース42を用いてデバイス温度やイコライザ設定値を算出することができる。このため、設定値算出用データベース42を容易に改変しやすいことを考慮すれば、設計ないしは仕様が異なる複数種類の通信装置1に対して本実施形態の構成を容易に適用することができる。
【0076】
(3)変形例
図8から図10を参照して、本実施形態の通信装置1の変形例について説明する。
【0077】
(3−1)第1変形例
図8を参照して、本実施形態の通信装置1の第1変形例について説明する。図8は、第1変形例の通信装置2の構成の一部を示すブロック図である。図8では、説明の簡略化ないしは明確化のため、1対の送信ユニット10及び受信ユニット20の組に着目して説明を進める。
【0078】
図8に示すように、第1変形例の通信装置2は、上述した通信装置1と比較して、カード制御部14及び24が、イコライザ設定値の変更を適用するタイミングを互いに同期させるという点で異なっている。具体的には、第1変形例の通信装置2では、送信ユニット10が備えるカード制御部14及び当該送信ユニット10に対向する受信ユニット20が備えるカード制御部24のいずれか一方がマスタとなって、イコライザ設定値の変更タイミングを同期させる。第2変形例では、送信ユニット10が備えるカード制御部14がマスタとなる例について説明をする。
【0079】
カード制御部14は、イコライザ設定値を指示するための制御信号をイコライザ設定指示部414から受信した場合には、カード制御部24に対して、イコライザ設定値の変更を要求する「イコライザ制御要求(REQ)」メッセージを送信する。
【0080】
カード制御部24は、イコライザ設定値を指示するための制御信号をイコライザ設定指示部414から受信し且つ「イコライザ制御要求(REQ)」メッセージをカード制御部14から受信した場合には、カード制御部14に対して、イコライザ設定値の変更の要求を受領したことを示す「イコライザ制御確認(ACK)」メッセージを返送する。
【0081】
カード制御部14は、「イコライザ制御確認(ACK)」メッセージをカード制御部24から受信した場合には、カード制御部24に対して、イコライザ設定値を変更する基準タイミングを示す「基準タイミング通知」メッセージを送信する。
【0082】
カード制御部24は、「基準タイミング通知」メッセージをカード制御部14から受信した場合には、カード制御部14に対して、基準タイミングを受領したことを示す「基準タイミング確認」メッセージを返送する。
【0083】
その後、送信ユニット10及び当該送信ユニット10に対向する受信ユニット20の双方において、基準タイミングが示すタイミングで、イコライザ設定値の変更が適用される。
【0084】
第1変形例の通信装置2によれば、上述した通信装置1が享受する各種効果と同様の効果を享受することができる。第1変形例の通信装置2によれば、送信ユニット10が備えるFFE15におけるイコライザ設定値の変更の適用タイミングと、当該送信ユニット10に対向する受信ユニット20が備えるDFE25におけるイコライザ設定値の変更の適用タイミングとを揃えることができる。従って、FFE15におけるイコライザ設定値の変更の適用タイミングとDFE25におけるイコライザ設定値の変更の適用タイミングとがずれることに起因する伝送特性の悪化を好適に防止することができる。
【0085】
(3−2)第2変形例
図9を参照して、本実施形態の通信装置1の第2変形例について説明する。図9は、第2変形例の通信装置3の構成の一部を示すブロック図である。図9では、説明の簡略化ないしは明確化のため、1対の送信ユニット10及び受信ユニット20の組に着目して説明を進める。
【0086】
図9に示すように、第2変形例の通信装置3は、上述した通信装置1と比較して、イコライザ設定値の変更を適用するタイミングを示す基準タイミングを生成すると共に、当該生成した基準タイミングをカード制御部14及び24へ通知する基準タイミング生成部415を装置制御部41が更に備えるという点で異なっている。また、第2変形例の通信装置3は、上述した通信装置1と比較して、カード制御部14及び24が、基準タイミング生成部415から通知された基準タイミングに同期してイコライザ設定値の変更を適用するという点で異なっている。
【0087】
第2変形例の通信装置3によれば、上述した通信装置1が享受する各種効果と同様の効果を享受することができる。第2変形例の通信装置3によれば、送信ユニット10が備えるFFE15におけるイコライザ設定値の変更の適用タイミングと、当該送信ユニット10に対向する受信ユニット20が備えるDFE25におけるイコライザ設定値の変更の適用タイミングとを揃えることができる。従って、FFE15におけるイコライザ設定値の変更の適用タイミングとDFE25におけるイコライザ設定値の変更の適用タイミングとがずれることに起因する伝送特性の悪化を好適に防止することができる。
【0088】
(3−3)第3変形例
図10を参照して、本実施形態の通信装置1の第3変形例について説明する。図10は、第3変形例の通信装置4の構成の一部を示すブロック図である。
【0089】
図10に示すように、第3変形例の通信装置4は、上述した通信装置1と比較して、(i)送信ユニット10が、PVT情報格納部12及びエイジングカウンタ13に代えて、PVT情報測定部16及び測定基準クロック供給部17を備えており、(ii)受信ユニット20が、PVT情報格納部22及びエイジングカウンタ23に代えて、PVT情報測定部26及び測定基準クロック供給部27を備えており、(iii)スイッチユニット30が、PVT情報格納部32及びエイジングカウンタ33に代えて、PVT情報測定部36及び測定基準クロック供給部37を備えており、且つ(iv)通信装置4が温度監視部50を備えていないという点で異なっている。
【0090】
測定基準クロック供給部17は、所定周期のクロック信号をPVT情報測定部16に対して出力する。より具体的には、PVT情報測定部16は、測定基準クロック供給部17から供給されるクロック信号を用いて、送信ユニット10内の不図示の信号回路に入力した信号が出力されるまでの時間(伝搬遅延時間)を定期的に測定する。その結果、PVT情報測定部16は、送信ユニット10に固有の特性を測定することができると共に、当該測定した固有の情報を示すPVT情報を生成することができる。PVT情報生成部16は、生成したPVT情報を、制御ユニット40に対して送信する。尚、PVT情報測定部26及び測定基準クロック供給部27、並びにPVT情報測定部36及び測定基準クロック供給部37においても同様の処理が行われる。
【0091】
制御ユニット40は、PVT情報測定部16、26及び36から取得するPVT情報に基づいて、送信ユニット10、受信ユニット20又はスイッチユニット30が備えるFFE15又はDFE25のイコライザ設定値を算出する。このため、第3変形例では、イコライザ設定値算出用データベース422は、PVT情報とイコライザ設定値との対応付けを示すテーブルを備えていることが好ましい。
【0092】
第3変形例の通信装置4によれば、上述した通信装置1が享受する各種効果と同様の効果を享受することができる。第3変形例の通信装置4によれば、送信ユニット10、受信ユニット20及びスイッチユニット30がPVT情報を生成することができる。送信ユニット10、受信ユニット20及びスイッチユニット30内の伝搬遅延は、送信ユニット10、受信ユニット20及びスイッチユニット30使用環境(例えば、温度や経年劣化状態や印加されている電源電圧等)によって変化することを考慮すれば、生成されたPVT情報は使用環境の変化を考慮したPVT情報となっている。このため、制御ユニット40は、送信ユニット10、受信ユニット20又はスイッチユニット30のデバイス温度の算出(言い換えれば、通信装置1の環境温度の測定を伴うデバイス温度の算出)やエイジング情報の取得を行わなくとも、FFE15又はDFE25のイコライザ設定値を算出することができる。
【0093】
以上説明した実施形態に関して、更に以下の付記を開示する。
【0094】
(付記1)
筐体内に実装された信号処理部であって且つ入力された信号に対する波形整形処理を行う波形整形部を備える信号処理部を制御する制御装置であって、(i)前記筐体内における前記信号処理部の実装状態を示す実装情報、(ii)前記信号処理部の温度である処理部温度を示す温度情報、及び(iii)前記信号処理部に固有の特性を示す処理部特性情報の少なくとも一つを取得する取得手段と、前記取得手段により取得された前記実装情報、前記温度情報及び前記処理部特性情報の少なくとも一つに基づいて、前記波形整形部における波形整形特性を調整する調整手段とを備えることを特徴とする制御装置。
【0095】
(付記2)
前記取得手段は、(i)前記実装情報及び前記処理部特性情報を取得すると共に、(ii)取得した前記実装情報及び前記処理部特性情報に基づいて前記処理部温度を算出することで前記温度情報を取得し、前記調整手段は、前記温度情報及び前記処理部特性情報に基づいて前記波形整形特性を調整することを特徴とする付記1に記載の制御装置。
【0096】
(付記3)
前記筐体周辺又は前記筐体内部の環境温度を測定する測定手段を更に備え、前記取得手段は、前記環境温度に対して前記実装情報及び前記処理部特性情報に応じた温度変動分を加味することで前記処理部温度を算出することを特徴とする付記2に記載の制御装置。
【0097】
(付記4)
前記取得手段は、前記信号処理部の経年劣化の度合いを示す経年情報を更に取得し、前記調整手段は、前記実装情報、前記温度情報、前記処理部特性情報、及び前記経年情報の少なくとも一つに基づいて、前記波形整形特性を調整することを特徴とする付記1に記載の制御装置。
【0098】
(付記5)
前記筐体は、前記信号処理部から信号が供給される伝送路を内部に備えており、前記取得手段は、前記伝送路に固有の特性を示す伝送路特性情報を更に取得し、前記調整手段は、前記実装情報、前記温度情報、前記処理部特性情報、及び前記伝送路情報の少なくとも一つに基づいて、前記波形整形特性を調整することを特徴とする付記1に記載の制御装置。
【0099】
(付記6)
前記処理部特性情報は、前記信号処理部内部に予め格納されており、前記取得手段は、予め格納された前記処理部特性情報を取得することを特徴とする付記1に記載の制御装置。
【0100】
(付記7)
前記信号処理部は、当該信号処理部自身の特性を測定する測定部を更に備えており、
前記取得手段は、前記測定部により測定された特性を取得することで、前記処理部特性情報を取得し、前記調整手段は、前記処理部特性情報に基づいて、前記波形整形特性を調整することを特徴とする付記1に記載の制御装置。
【0101】
(付記8)
前記筐体内には、少なくとも2つの前記信号処理部が実装されており、前記少なくとも2つの信号処理部の一方は、前記少なくとも2つの信号処理部の他方に対して前記信号を送信し、前記調整手段は、前記波形整形特性を調整するための調整情報を前記信号処理部に対して出力することで前記波形整形特性を調整し、前記少なくとも2つの信号処理部は、互いに同期するタイミングで、前記調整情報を前記波形整形部に対して適用することを特徴とする付記1に記載の制御装置。
【0102】
(付記9)
前記筐体内には、少なくとも2つの前記信号処理部が実装されており、前記少なくとも2つの信号処理部の一方は、前記少なくとも2つの信号処理部の他方に対して前記信号を送信し、前記調整手段は、前記波形整形特性を設定するための調整情報を前記信号処理部に対して出力することで前記波形整形特性を調整し、前記調整手段は、前記調整情報を前記波形整形部に対して適用するタイミングを示すタイミング情報を前記少なくとも2つの信号処理部に出力し、前記少なくとも2つの信号処理部は、前記タイミング情報が示すタイミングで、前記調整情報を前記波形整形部に対して適用することを特徴とする付記1に記載の制御装置。
【0103】
(付記10)
前記実装情報が示す前記実装状態及び前記処理部特性情報が示す前記信号処理部に固有の特性と前記処理部温度との対応関係を示す温度対応情報を格納する格納手段を更に備え、
前記取得手段は、前記実装情報及び前記処理部特性情報、並びに前記温度対応情報に基づいて前記処理部温度を算出することを特徴とする付記2に記載の制御装置。
【0104】
(付記11)
前記処理部温度及び前記処理部特性情報が示す前記信号処理部に固有の特性と前記波形整形特性の調整態様とを対応付ける波形整形対応情報を格納する格納手段を更に備え、前記調整手段は、前記温度情報及び前記処理部特性情報、並びに前記波形整形対応情報に基づいて前記波形整形特性を調整することを特徴とする付記2に記載の制御装置。
【0105】
(付記12)
前記信号処理部は、前記筐体に対して任意に着脱可能であり、前記取得手段は、前記信号処理部が前記筐体に装着されることを契機として、前記実装情報、前記温度情報、及び前記処理部特性情報の少なくとも一つを取得し、前記調整手段は、前記信号処理部が前記筐体に装着されることを契機として、前記実装情報、前記温度情報及び前記処理部特性情報の少なくとも一つに基づいて、前記波形整形部における波形整形特性を調整することを特徴とする付記1に記載の制御装置。
【0106】
(付記13)
前記筐体は、伝送路としてのバックワイヤリングボードを含む筐体であることを特徴とする付記1に記載の制御装置。
【0107】
(付記14)
筐体内に実装された信号処理部であって且つ入力された信号に対する波形整形処理を行う波形整形部を備える信号処理部を制御する制御方法であって、(i)前記筐体内における前記信号処理部の実装状態を示す実装情報、(ii)前記信号処理部の温度である処理部温度を示す温度情報、及び(iii)前記信号処理部に固有の特性を示す処理部特性情報の少なくとも一つを取得する取得工程と、前記取得工程において取得された前記実装情報、前記温度情報及び前記処理部特性情報の少なくとも一つに基づいて、前記波形整形部における波形整形特性を調整する調整工程とを備えることを特徴とする制御方法。
【0108】
(付記15)
筐体と、前記筐体内に実装された信号処理部であって且つ入力された信号に対する波形整形処理を行う波形整形部を備える信号処理部と、(i)前記筐体内における前記信号処理部の実装状態を示す実装情報、(ii)前記信号処理部の温度である処理部温度を示す温度情報、及び(iii)前記信号処理部に固有の特性を示す処理部特性情報の少なくとも一つを取得する取得手段、並びに前記取得手段により取得された前記実装情報、前記温度情報及び前記処理部特性情報の少なくとも一つに基づいて、前記波形整形部における波形整形特性を調整する調整手段を備える制御装置とを備えることを特徴とする信号処理装置。
【0109】
(付記16)
前記信号処理部は、前記信号の送受信を行う信号送受信部であり、当該信号処理装置は、前記筐体内に備えられる伝送路を介して前記信号処理部間での前記信号の通信を行う通信装置であることを特徴とする付記15に記載の信号処理装置。
【符号の説明】
【0110】
1、2、3、4 通信
10 送信側プラグインカードユニット
11 SERDES送信器
12 PVT情報格納部
13 エイジングカウンタ
14 カード制御部
15 FFE
16 PVT情報測定部
20 受信側プラグインカードユニット
21 SERDES受信器
22 PVT情報格納部
23 エイジングカウンタ
24 カード制御部
25 DFE
26 PVT情報測定部
30 スイッチユニット
32 PVT情報格納部
33 エイジングカウンタ
34 カード制御部
36 PVT情報測定部
40 装置制御カードユニット
41 装置制御部
411 情報取得部
412 デバイス温度算出部
413 イコライザ設定地算出部
414 イコライザ設定指示部
42 設定値算出用データベース
421 デバイス温度算出用データベース
422 イコライザ設定値算出用データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に実装された信号処理部であって且つ入力された信号に対する波形整形処理を行う波形整形部を備える信号処理部を制御する制御装置であって、
(i)前記筐体内における前記信号処理部の実装状態を示す実装情報、(ii)前記信号処理部の温度である処理部温度を示す温度情報、及び(iii)前記信号処理部に固有の特性を示す処理部特性情報の少なくとも一つを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記実装情報、前記温度情報及び前記処理部特性情報の少なくとも一つに基づいて、前記波形整形部における波形整形特性を調整する調整手段と
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記取得手段は、(i)前記実装情報及び前記処理部特性情報を取得すると共に、(ii)取得した前記実装情報及び前記処理部特性情報に基づいて前記処理部温度を算出することで前記温度情報を取得し、
前記調整手段は、前記温度情報及び前記処理部特性情報に基づいて前記波形整形特性を調整することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記筐体周辺又は前記筐体内部の環境温度を測定する測定手段を更に備え、
前記取得手段は、前記環境温度に対して前記実装情報及び前記処理部特性情報に応じた温度変動分を加味することで前記処理部温度を算出することを特徴とする請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記取得手段は、前記信号処理部の経年劣化の度合いを示す経年情報を更に取得し、
前記調整手段は、前記実装情報、前記温度情報、前記処理部特性情報、及び前記経年情報の少なくとも一つに基づいて、前記波形整形特性を調整することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記筐体は、前記信号処理部から信号が供給される伝送路を内部に備えており、
前記取得手段は、前記伝送路に固有の特性を示す伝送路特性情報を更に取得し、
前記調整手段は、前記実装情報、前記温度情報、前記処理部特性情報、及び前記伝送路情報の少なくとも一つに基づいて、前記波形整形特性を調整することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記処理部特性情報は、前記信号処理部内部に予め格納されており、
前記取得手段は、予め格納された前記処理部特性情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
前記信号処理部は、当該信号処理部自身の特性を測定する測定部を更に備えており、
前記取得手段は、前記測定部により測定された特性を取得することで、前記処理部特性情報を取得し、
前記調整手段は、前記処理部特性情報に基づいて、前記波形整形特性を調整することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項8】
前記筐体内には、少なくとも2つの前記信号処理部が実装されており、
前記少なくとも2つの信号処理部の一方は、前記少なくとも2つの信号処理部の他方に対して前記信号を送信し、
前記調整手段は、前記波形整形特性を調整するための調整情報を前記信号処理部に対して出力することで前記波形整形特性を調整し、
前記少なくとも2つの信号処理部は、互いに同期するタイミングで、前記調整情報を前記波形整形部に対して適用することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項9】
前記筐体内には、少なくとも2つの前記信号処理部が実装されており、
前記少なくとも2つの信号処理部の一方は、前記少なくとも2つの信号処理部の他方に対して前記信号を送信し、
前記調整手段は、前記波形整形特性を設定するための調整情報を前記信号処理部に対して出力することで前記波形整形特性を調整し、
前記調整手段は、前記調整情報を前記波形整形部に対して適用するタイミングを示すタイミング情報を前記少なくとも2つの信号処理部に出力し、
前記少なくとも2つの信号処理部は、前記タイミング情報が示すタイミングで、前記調整情報を前記波形整形部に対して適用することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項10】
筐体内に実装された信号処理部であって且つ入力された信号に対する波形整形処理を行う波形整形部を備える信号処理部を制御する制御方法であって、
(i)前記筐体内における前記信号処理部の実装状態を示す実装情報、(ii)前記信号処理部の温度である処理部温度を示す温度情報、及び(iii)前記信号処理部に固有の特性を示す処理部特性情報の少なくとも一つを取得する取得工程と、
前記取得工程において取得された前記実装情報、前記温度情報及び前記処理部特性情報の少なくとも一つに基づいて、前記波形整形部における波形整形特性を調整する調整工程と
を備えることを特徴とする制御方法。
【請求項11】
筐体と、
前記筐体内に実装された信号処理部であって且つ入力された信号に対する波形整形処理を行う波形整形部を備える信号処理部と、
(i)前記筐体内における前記信号処理部の実装状態を示す実装情報、(ii)前記信号処理部の温度である処理部温度を示す温度情報、及び(iii)前記信号処理部に固有の特性を示す処理部特性情報の少なくとも一つを取得する取得手段、並びに前記取得手段により取得された前記実装情報、前記温度情報及び前記処理部特性情報の少なくとも一つに基づいて、前記波形整形部における波形整形特性を調整する調整手段を備える制御装置と
を備えることを特徴とする信号処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−217162(P2011−217162A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84049(P2010−84049)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】