説明

制御装置

【課題】負荷の電力線の本数、電力調整器等の個数を削減するとともに、負荷電流を制限できるようにする。
【解決手段】熱板1を加熱する9個の第1〜第9のヒータ2−1〜2−9を、行方向の3本の第1の電力線L1−1〜L1〜3と、列方向の3本の第2の電力線L2−1〜L2−3との間に、マトリックス接続し、第1〜第6の電力調整器3−1〜3−6を制御して、ヒータ2−1〜2−9を選択して駆動し、ヒータに流れる負荷電流をCT11によって検出し、負荷電流が制限値を越えるときには、ヒータに対する操作量を制限することによって、負荷電流を制限している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒータなどの負荷の駆動を制御する温度調節器などの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、被加熱物を、熱板上に載置して加熱処理するような温度制御においては、温度調節器は、熱板に配設された温度センサからの検出温度に基づいて、熱板の温度が目標温度になるように、熱板に配設されたヒータの通電を制御することにより行なわれる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−274069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記熱板に、複数のヒータおよび複数の温度センサを配設して複数の制御点、すなわち、複数チャンネルの温度制御を行なう場合には、各ヒータを個別に駆動できるように、各ヒータと電源とを、スイッチング素子を内蔵した電力調整器を介してそれぞれ接続し、電力調整器のスイッチング素子の開閉を制御して各ヒータを個別に駆動できるようにしている。
【0005】
このため、チャンネル数が多くなる程、電力調整器の個数およびヒータの電力線の本数が増大し、電力線は、熱板と電力調整器との間を長く引き回されることになり、空間設計や配線作業が煩雑になる。
【0006】
更に、温度制御の開始時、すなわち、立ち上げ時には、複数のヒータの全てが同時にオンするために、その間の電力消費が著しく大きくなり、また、その大きな電力消費に耐え得る大きな容量の電源や電力調整器等が必要になり、その分、大きな設置スペースを確保する必要があるとともに、コストも高くつく。
【0007】
また、負荷の変動、例えば、ハロゲンヒータでは、常温の立ち上げ時には、抵抗値が非常に低いために、過大な電流が流れてしまう。
【0008】
本発明は、上述のような課題に鑑みて為されたものであって、負荷の電力線の本数、電力調整器等の個数を削減するとともに、負荷電流を制限できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の制御装置は、複数の第1の電力線と複数の第2の電力線との間に、複数の負荷が接続され、前記複数の第1の電力線が、複数の第1の開閉手段をそれぞれ介して電源に接続される一方、前記複数の第2の電力線が、複数の第2の開閉手段をそれぞれ介して前記電源に接続され、前記複数の第1の電力線と前記複数の第2の電力線とを、それぞれ仮想的に横方向と縦方向とに平行に配列したときに、両電力線が交差する部分で、前記複数の各負荷の一端が前記第1の電力線に接続されるとともに、他端が前記第2の電力線に接続され、前記複数の負荷に対する供給電力を調整する前記第1,第2の開閉手段の開閉量を制御して、前記複数の負荷を駆動する制御装置であって、駆動する負荷を選択するとともに、選択した負荷に対応する前記第1,第2の開閉手段の開閉量を制御する操作量を算出する駆動制御手段と、前記電源と前記負荷との間の電力線に流れる電流を検出する電流センサの出力に基づいて、負荷に流れる負荷電流値が制限値を越えるときに、前記操作量算出手段の操作量を制限する電流制限手段とを備えている。
【0010】
負荷としては、例えば、ヒータ、ランプ、あるいはモータなどがある。
【0011】
電源は、直流電源であってもよいし、交流電源であってもよい。
【0012】
開閉手段は、リレーであってもよいし、トランジスタ、サイリスタあるいはトライアック等の半導体素子であってもよい。
【0013】
「前記複数の第1の電力線と前記複数の第2の電力線とを、それぞれ仮想的に横方向と縦方向とに平行に配列」とは、複数の第1の電力線、複数の第2の電力線および複数の負荷の実際の物理的な配列に拘らず、両電力線と負荷との接続状態を定義するための仮想的な配列をいう。したがって、この仮想的な配列は、両電力線および負荷の実際の物理的な配列を制約するものではない。
【0014】
また、「横方向と縦方向とに平行に配列」とは、複数の第1の電力線を横方向(行方向)に平行に配列し、複数の第2の電力線を縦方向(列方向)に平行に配列することをいい、したがって、両電力線が交差する部分が生じる。
【0015】
「両電力線が交差する部分で、前記複数の各負荷の一端が前記第1の電力線に接続されるとともに、他端が前記第2の電力線に接続され」とは、仮想的に配列された両電力線が交差する部分に対応して、各負荷が両電力線間に電気的に接続されることをいう。
【0016】
複数の第1の電力線および複数の第2の電力線は、それぞれ横方向(行方向)および縦方向(列方向)に平行に仮想的に配列され、それらの交点に対応して各負荷が、両電力線間に接続されるので、複数の各負荷は、行方向の複数の第1の電力線と列方向の複数の第2の電力線との間に、マトリックス接続されることになる。
【0017】
両電力線が交差する部分の全てに、負荷をそれぞれ接続して完全なマトリックス接続とするのが好ましいが、前記交差する部分の全てに負荷をそれぞれ接続するのではなく、負荷が接続されない前記交差する部分があってもよい。すなわち、不完全なマトリックス接続であってもよい。また、前記交差する部分に、負荷を接続しない場合には、前記両電力線とは別の電力線に接続される負荷を、前記交差する部分に対応して設けてもよい。
【0018】
当該制御装置は、開閉手段の開閉量を制御して負荷に供給する電力を制御するものであり、この電力制御は、ON/OFF制御、位相制御、あるいは、サイクル制御などが好ましい。
【0019】
駆動する負荷を選択するとは、複数の負荷の内、1個の負荷を選択して駆動してもよいし、複数の負荷を選択して同時に駆動してもよいし、全ての負荷を選択して同時に駆動してもよい。
【0020】
電流センサは、複数の第1の電力線および複数の第2の電力線の各電力線にそれぞれ設けてもよいし、複数の第1の電力線の各電力線のみにそれぞれ設けてもよいし、あるいは、複数の第2の電力線の各電力線のみにそれぞれ設けてもよいし、少なくとも1個の電流センサを、共通化された電力線に設ければよい。
【0021】
電流制限手段は、操作量算出手段の操作量を直接制限するのが好ましいが、目標値などを補正することによって、操作量算出手段の操作量を間接的に制限してもよい。
【0022】
本発明の制御装置によると、第1,第2の開閉手段の開閉を制御することによって、仮想的に横方向(行方向)に平行に配列された複数の第1の電力線と、仮想的に縦方向(列方向)に平行に配列された複数の第2の電力線との交差部分に接続された負荷、すなわち、行方向の複数の第1の電力線と、列方向の複数の第2の電力線との間に、マトリックス接続された複数の負荷を選択して駆動することができ、負荷毎に、スイッチング素子を含む電力調整器を介して電源に個別に接続して駆動する従来例に比べて、電力線の本数を削減できるとともに、電力調整器等の開閉手段の個数も削減することができる。
【0023】
更に、負荷に流れる負荷電流を電流センサで検出し、制限値を越えるときには、開閉手段の開閉量を制御する操作量を制限して負荷電流を制限するので、負荷の変動によって過大な電流が流れるのを制限できる。また、複数の負荷を選択して同時に駆動する場合のピーク電力を制限することが可能となり、これによって、大きな容量の電源や電力調整器等を必要とせず、その分、設置スペースを削減できるとともに、コストを低減できる。
【0024】
(2)本発明の他の実施形態では、前記電流制限手段は、駆動する負荷を選択するタイミングに応じて前記電流センサの出力に基づく前記負荷電流値を取得する。
【0025】
負荷を選択するタイミングに応じて負荷電流値を取得するとは、負荷が選択されるタイミングと同じタイミングで負荷電流値を取得してもよいが、負荷が選択されるタイミングから一定期間遅れたタイミング、例えば、次の負荷が選択される直前のタイミングで負荷電流値を取得することをいい、前記一定期間は、負荷を選択した後、電流値が安定するのに要する期間であるのが好ましい。
【0026】
電流センサの出力に基づく負荷電流値とは、電流センサの出力を全波整流し、平均化した負荷電流値などをいう。
【0027】
この実施形態によると、負荷が選択されて駆動される度に、電流センサの出力に基づく安定した負荷電流値をサンプリングし、負荷電流値が制限値を越えているか否かを判断することができる。
【0028】
(3)本発明の一つの実施形態では、前記駆動制御手段は、前記複数の負荷の内の1個の負荷を順番に選択して駆動するものである。
【0029】
当該制御装置は、複数の負荷の内の1個の負荷を順番に選択して駆動する以外に、2個以上の負荷を選択して同時に駆動するモードや複数の負荷の全てを同時に駆動するモードを有してもよい。
【0030】
この実施形態によると、負荷を1個ずつ順番に選択して駆動するので、複数の第1の電力線または複数の第2の電力線を共通化した1本の電力線に、1個の電流センサを設けて各負荷の負荷電流を検出することが可能となり、電流センサの個数を1個にすることができる。
【0031】
(4)本発明の制御装置は、複数の第1の電力線と複数の第2の電力線との間に、複数の負荷が接続され、前記複数の第1の電力線が、複数の第1の開閉手段をそれぞれ介して電源に接続される一方、前記複数の第2の電力線が、複数の第2の開閉手段をそれぞれ介して前記電源に接続され、前記複数の第1の電力線と前記複数の第2の電力線とを、それぞれ仮想的に横方向と縦方向とに平行に配列したときに、両電力線が交差する部分で、前記複数の各負荷の一端が前記第1の電力線に接続されるとともに、他端が前記第2の電力線に接続され、前記複数の負荷に対する供給電力を調整する前記第1,第2の開閉手段の開閉量を制御して、前記複数の負荷を駆動する制御装置であって、駆動する負荷を選択するとともに、選択した負荷に対応する前記第1,第2の開閉手段の開閉量を制御する操作量を算出する駆動制御手段と、前記操作量および前記複数の負荷の駆動状態に基づいて、負荷に流れる負荷電流を推定し、推定される負荷電流値が制限値を越えるときに、前記駆動制御手段の操作量を制限する電流制限手段とを備えている。
【0032】
本発明の制御装置によると、第1,第2の開閉手段の開閉を制御することによって、行方向の複数の第1の電力線と、列方向の複数の第2の電力線との間に、マトリックス接続された複数の負荷を選択して駆動することができ、負荷毎に、スイッチング素子を含む電力調整器を介して電源に個別に接続して駆動する従来例に比べて、電力線の本数を削減できるとともに、スイッチング素子を含む電力調整器等の開閉手段の個数も削減することができる。
【0033】
更に、負荷に流れる負荷電流を推定し、推定した負荷電流が制限値を越えるときには、開閉手段の開閉量を制御する操作量を制限して負荷電流を制限するので、実際に負荷電流を計測することなく、負荷の変動によって過大な電流が流れるのを事前に防止することができる。また、複数の負荷を同時に駆動する場合のピーク電力を制限することが可能となり、これによって、大きな容量の電源や電力調整器等を必要とせず、その分、設置スペースを削減できるとともに、コストを低減できる。
【0034】
(5)本発明の他の実施形態では、前記電流制限手段は、前記操作量および前記複数の負荷の駆動状態に応じた抵抗値に基づいて、負荷電流を推定するものである。
【0035】
負荷の駆動状態とは、いずれの負荷が選択されて駆動されているかという負荷の選択の状態などをいう。
【0036】
この実施形態によると、操作量に基づく印加電圧と、いずれの負荷を選択しているかという負荷の駆動状態に応じた抵抗値とに基づいて、負荷に流れる負荷電流を推定することができる。
【0037】
(6)本発明の一つの実施形態では、前記電流制限手段は、選択されて駆動される複数の負荷に対応する操作量を、同じ割合で制限する。
【0038】
この割合は、例えば、負荷電流の制限値と負荷電流の推定値との割合としてもよい。
【0039】
この実施形態では、駆動される複数の負荷に流れる負荷電流の推定値が制限値を越えるときには、複数の負荷にそれぞれ対応する操作量を同じ割合で一律に制限することができる。
【0040】
(7)本発明の他の実施形態では、前記電流制限手段は、選択されて駆動される複数の負荷に対応する操作量を、制御量と目標値との偏差の絶対値が大きな方から順に制限する。
【0041】
この実施形態によると、選択して駆動される複数の負荷に流れる負荷電流の推定値が制限値を越えるときには、制御量と目標値との偏差の絶対値が大きなチャンネルの負荷から順に操作量を制限することができる。
【0042】
(8)本発明の更に他の実施形態では、前記複数の負荷は、制御対象を加熱するものであって、前記電流制限手段は、選択されて駆動される複数の負荷に対応する操作量を、制御量−目標値の値が大きな方から順に制限する。
【0043】
この実施形態によると、加熱制御において、選択して駆動される複数の負荷に流れる負荷電流の推定値が制限値を越えるときには、制御量−目標値の値が大きなチャンネルの負荷から順に操作量を制限することができる。例えば、既に目標値を上回って目標値よりも高温のチャンネルと、未だ目標値に到達していない低温のチャンネルとがある場合には、制御量−目標値の値が、正の値となる高温のチャンネルの方が、前記値が負の値となる低温のチャンネルよりも大きいので、高温のチャンネルの負荷に対応する操作量を制限することになる。
【0044】
(9)本発明の他の実施形態では、前記複数の負荷は、制御対象を冷却するものであって、前記電流制限手段は、選択されて駆動される複数の負荷に対応する操作量を、制御量−目標値の値が小さな方から順に制限する。
【0045】
この実施形態によると、冷却制御において、選択して駆動される複数の負荷に流れる負荷電流の推定値が制限値を越えるときには、制御量−目標値の値が小さなチャンネルの負荷から順に操作量を制限することができる。例えば、既に目標値に到達して目標値よりも低温のチャンネルと、未だ目標値に到達していない高温のチャンネルとがある場合には、制御量−目標値の値が、負の値となる低温のチャンネルの方が、前記値が正の値となる高温のチャンネルよりも小さいので、低温のチャンネルの負荷に対応する操作量を制限することになる。
【0046】
(10)本発明の更に他の実施形態では、前記電流制限手段は、選択されて駆動される複数の負荷に対応する操作量を、その絶対値の小さな方から順に制限する。
【0047】
この実施形態によると、選択して駆動される複数の負荷に流れる負荷電流の推定値が制限値を越えるときには、操作量の絶対値の小さい方から順に操作量を制限することができる。
【0048】
(11)本発明の更に他の実施形態では、前記電流制限手段によって、負荷電流値が制限値を越えるとされたときに、それを報知する過電流状態報知手段を備えている。
【0049】
過電流状態報知手段は、表示や接点出力などによって過電流状態を報知するのが好ましい。
【0050】
この実施形態によると、過電流状態が検出されたときには、それを報知するので、ユーザは、直ちに過電流状態が生じたことを把握することができる。
【0051】
(12)本発明の制御装置は、複数の負荷の各一端が、共通の電力線を介して電源に接続されるとともに、各他端が、複数の開閉手段をそれぞれ介して前記電源に接続され、前記複数の負荷に対する供給電力を調整する前記複数の開閉手段の開閉量を制御して、前記複数の負荷を駆動する制御装置であって、駆動する負荷を選択するとともに、選択した負荷に対応する前記複数の開閉手段の開閉量を制御する操作量を算出する駆動制御手段と、前記電源と前記負荷との間の電力線に流れる電流を検出する電流センサの出力に基づいて、負荷に流れる負荷電流値が制限値を越えるときに、前記操作量算出手段の操作量を制限する電流制限手段とを備えている。
【0052】
本発明の制御装置によると、開閉手段の開閉を制御することによって、共通の電力線と前記開閉手段との間に接続された複数の負荷を選択して駆動することができ、負荷毎に、スイッチング素子を含む電力調整器を介して電源に個別に接続して駆動する従来例に比べて、電力線の本数を削減できるとともに、スイッチング素子を含む電力調整器等の開閉手段の個数も削減することができる。
【0053】
更に、負荷に流れる負荷電流を電流センサで検出し、制限値を越えるときには、開閉手段の開閉量を制御する操作量を制限して電流を制限するので、負荷の変動によって過大な電流が流れるのを制限することができる。また、複数の負荷を同時に駆動する場合のピーク電力を制限することが可能となり、これによって、大きな容量の電源や電力調整器等を必要とせず、その分、設置スペースを削減できるとともに、コストを低減できる。
【0054】
(13)本発明の制御装置は、複数の負荷の各一端が、共通の電力線を介して電源に接続されるとともに、各他端が、複数の開閉手段をそれぞれ介して前記電源に接続され、前記複数の負荷に対する供給電力を調整する前記複数の開閉手段の開閉量を制御して、前記複数の負荷を駆動する制御装置であって、駆動する負荷を選択するとともに、選択した負荷に対応する前記複数の開閉手段の開閉量を制御する操作量を算出する駆動制御手段と、前記操作量および前記複数の負荷の駆動状態に基づいて、負荷電流を推定し、推定される負荷に流れる負荷電流値が制限値を越えるときに、前記駆動制御手段の操作量を制限する電流制限手段とを備えている。
【0055】
本発明の制御装置によると、開閉手段の開閉を制御することによって、共通の電力線と前記開閉手段との間に接続された複数の負荷を選択して駆動することができ、負荷毎に、スイッチング素子を含む電力調整器を介して電源に個別に接続して駆動する従来例に比べて、電力線の本数を削減できるとともに、スイッチング素子を含む電力調整器等の開閉手段の個数も削減することができる。
【0056】
更に、負荷に流れる負荷電流を推定し、推定した負荷電流が制限値を越えるときには、開閉手段の開閉量を制御する操作量を制限して負荷電流を制限するので、実際に負荷電流を計測することなく、負荷の変動によって過大な電流が流れるのを事前に防止することができる。また、複数の負荷を同時に駆動する場合のピーク電力を制限することが可能となり、これによって、大きな容量の電源や電力調整器等を必要とせず、その分、設置スペースを削減できるとともに、コストを低減できる。
【発明の効果】
【0057】
本発明によれば、複数の電力線を複数の負荷で共用化しているので、従来例に比べて、電力線の本数やスイッチング素子を含む電力調整器の個数を削減することができ、電力線を引き回すための空間設計や配線作業が容易になるとともに、コストを低減することができる。更に、負荷の変動によって過大な電流が流れるのを制限できる。また、複数の負荷を同時に駆動する場合のピーク電力を制限することが可能となり、これによって、大きな容量の電源や電力調整器等を必要とせず、その分、設置スペースを削減できるとともに、コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、本発明の実施形態の温度調節器を備えるシステムの概略構成図である。
【図2】図1の9個のヒータの時分割駆動を示す図である。
【図3】図1の実施形態のステップ応答波形を示す図である。
【図4】図1の電流検出部の構成を示す図である。
【図5】図4の各部の波形を示す図である。
【図6】ヒータの印加電圧と電流検出部で検出される平均電流を示す図である。
【図7】図1の電流制限部の構成を示す図である。
【図8】図1の実施形態の動作説明に供するフローチャートである。
【図9】本発明の他の実施形態の概略構成図である。
【図10】図9の電流制限部の構成を示す図である。
【図11】図10の負荷電流推定部の構成を示す図である。
【図12】位相制御された印加電圧を示す図である。
【図13】第1のヒータを選択した状態を示す図である。
【図14】電流の回り込みによる合成抵抗値を説明する図である。
【図15】複数のヒータの同時駆動の例を示す図である。
【図16】複数のヒータの同時駆動の他の例を示す図である。
【図17】複数のヒータに対応する接続用端子のオン(1)/オフ(0)状態と合成抵抗値との関係を示す図である。
【図18】図9の実施形態の動作説明に供するフローチャートである。
【図19】本発明の他の実施形態の電流制限部の構成を示す図である。
【図20】図19の実施形態の動作説明に供するフローチャートである。
【図21】図19の実施形態の動作説明に供するフローチャートである。
【図22】本発明の他の実施形態の図1に対応する図である。
【図23】図22の9個のヒータの時分割駆動を示す図である。
【図24】本発明の他の実施形態の図1に対応する概略構成図である。
【図25】図24の9個のヒータの時分割駆動を示す図である。
【図26】本発明の他の実施形態の概略構成図である。
【図27】図26の3個のヒータの時分割駆動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0060】
(実施形態1)
図1は、本発明の一つの実施形態に係る制御装置としての温度調節器5を備える温度制御システムの概略構成図である。
【0061】
この温度制御システムは、熱板1の9つの制御点の温度を制御する、9チャンネルの制御を行うものであり、熱板1には、負荷として9個の第1〜第9のヒータ2−1〜2−9および図示しない9個の温度センサが配設されている。
【0062】
この実施形態では、第1〜第9のヒータ2−1〜2−9は、行方向の3本の第1の電力線L1−1〜L1〜3と、列方向の3本の第2の電力線L2−1〜L2−3との間に、マトリックス接続される。
【0063】
すなわち、第1〜第3のヒータ2−1〜2−3の各一端が、上側の行方向の第1の電力線L1−1に接続され、各他端が、3本の列方向の第2の電力線L2−1〜L2−3にそれぞれ接続される。また、第4〜第6のヒータ2−4〜2−6の各一端が、中間の行方向の第1の電力線L1−2に接続され、各他端が、3本の列方向の第2の電力線L2−1〜L2−3にそれぞれ接続される。更に、第7〜第9のヒータ2−7〜2−9の各一端が、下側の行方向の第1の電力線L1−3に接続され、各他端が、3本の列方向の第2の電力線L2−1〜L2−3にそれぞれ接続される。
【0064】
つまり、3本の第1の電力線L1−1〜L1−3を行方向に平行に配列し、3本の第2の電力線L2−1〜L2−3を列方向に平行に配列したときに、両電力線L1−1〜L1−3,L2−1〜L2−3が交差する部分、すなわち、9箇所の交差部分で、第1〜第9のヒータ2−1〜2−9の各一端が第1の電力線L1−1〜L1−3にそれぞれ接続されるとともに、各他端が第2の電力線L2−1〜L2−3にそれぞれ接続されている。
【0065】
なお、3本の第1の電力線L1−1〜L1−3を行方向に平行に配列し、3本の第2の電力線L2−1〜L2−3を列方向に平行に配列しているが、かかる配列は、必ずしも両電力線L1−1〜L1−3,L2−1〜L2−3の実際の物理的配列を示すものではなく、両電力線L1−1〜L1−3,L2−1〜L2−3と各ヒータ2−1〜2−9との接続状態を明確に示すための仮想的な配列である。
【0066】
熱板1から引き出された3本の行方向の第1の電力線L1−1〜L1−3の各接続用端子X1〜X3は、第1の開閉手段としての第1〜第3の電力調整器3−1〜3−3を介して交流電源4の一端に接続される。また、熱板1から引き出された3本の列方向の第2の電力線L2−1〜L2−3の各接続用端子Y1〜Y3は、第2の開閉手段としての第4〜第6の電力調整器3−4〜3−6を介して交流電源4の他端に接続される。
【0067】
このように9個のヒータ2−1〜2−9は、3本の行方向の第1の電力線L1−1〜L1−3と3本の列方向の第2の電力線L2−1〜L2−3との間に、マトリックス接続されているので、行方向に対応する第1〜第3の電力調整器3−1〜3−3と、列方向に対応する第4〜第6の電力調整器3−4〜3−6とを制御することにより、いずれかのヒータ2−1〜2−9を選択して交流電源4からの電力によって駆動することができる。
【0068】
この温度制御システムは、熱板1に配設された9個の図示しない温度センサからの検出温度(PV)と目標温度とに基づいて、PID演算等を行って算出される9チャンネル分の操作量を上述の第1〜第6の電力調整器3−1〜3−6に振り分けて出力する温度調節器5と、この温度調節器5からの操作量に基づいて、9個のヒータ2−1〜2−9への交流電力を位相制御する上述の第1〜第6の電力調整器3−1〜3−6とを備えている。
【0069】
温度調節器5は、熱板1に配設された図示しない9個の温度センサからの検出温度が入力される制御量入力部6と、例えば、上位機器から目標温度が入力される目標値入力部7と、制御量入力部6からの検出温度に基づいて、駆動するヒータを選択する駆動対象選択部8と、制御量入力部6からの検出温度と目標値入力部7からの目標温度とに基づいて、PID演算等を行って9チャンネル分の操作量を算出するとともに、駆動対象選択部8で後述のように選択されるヒータに応じて、9チャンネル分の操作量を、第1〜第6の電力調整器3−1〜3−6に振り分けて出力する操作量算出部9とを備えている。駆動対象選択部8と操作量算出部9とによって、第1〜第9のヒータ2−1〜2−9を選択して駆動する駆動制御手段が構成される。
【0070】
この実施形態では、チャンネル毎に、ヒータに流れる負荷電流を計測し、負荷変動などによって負荷電流が過大になったときには、予め定めた電流値に制限するようにしている。
【0071】
すなわち、図1に示すように、温度調節器5は、行方向の電力調整器3−1〜3−3よりも交流電源4側の電力線に設けられた電流センサとしてのCT(カレントトランス)11の出力に基づいて、ヒータに流れる負荷電流を検出する電流検出部12と、負荷電流の制限値が入力される負荷電流制限値入力部10と、制限値を越える負荷電流が検出されたときに、それを報知する過電流状態報知部14とを備えている。更に、操作量算出部9は、制限値を越える負荷電流が電流検出部12で検出されたときには、後述のように操作量を制限して負荷電流を制限する電流制限部13としての機能を有している。
【0072】
負荷電流制限値入力部10には、予め、チャンネル毎の負荷電流の制限値が、ユーザによって設定入力される。
【0073】
過電流状態報知部14では、例えば、表示部によるエラー表示や接点出力によって過電流状態を報知する。
【0074】
この実施形態では、温度調節器5は、第1〜第9のヒータ2−1〜2−9を、1個ずつ順番に時分割で駆動する、すなわち、1個ずつ順番にスキャン(走査)する。
【0075】
図2は、この時分割駆動を説明するための図であり、同図(a)は駆動対象選択部8によって選択されるヒータ2−1〜2−9に対応する接続用端子X1,Y1〜X3,Y3の選択状態を、同図(b)は操作量算出部9による接続用端子X1用の操作量の例を、同図(c)は操作量算出部9による接続用端子Y1用の操作量の例を、同図(d)は電流検出部12の出力をそれぞれ示し、併せて、後述の過電流判定のタイミングを矢印で示している。なお、この図2では、第1〜第9のヒータ2−1〜2−9に個別的に対応する接続用端子X1,Y1〜X3,Y3の内、第1のヒータ2−1に対応する接続用端子X1,Y1用の操作量のみを代表的に示している。
【0076】
先ず、同図(a)に示すように、駆動対象選択部8によって、第1のチャンネル、すなわち、第1のヒータ2−1に対応する接続用端子X1,Y1が、一定期間t、例えば、100msecの期間に亘って選択され、次に、第2のチャンネル、すなわち、第2のヒータ2−2に対応する接続用端子X1,Y2が、同じく100msecの期間tに亘って選択され、次に、第3のヒータ2−3に対応する接続用端子X1,Y3が、同じく100msecの期間tに亘って選択され、以下同様にして、第4のヒータ2−4から第9のヒータ2−9まで順番に100msecの期間tに亘って選択され、制御周期Tにおいて、各ヒータ2−1〜2−9が1個ずつ順番に選択される。
【0077】
第1のチャンネル、すなわち、第1のヒータ2−1に対応する接続用端子X1,Y1が、選択されている期間tでは、操作量算出部9によって、接続用端子X1用の操作量は、同図(b)に示す第1のチャンネルの操作量とされ、接続用端子Y1用の操作量は、同図(c)に示すようにオンに対応する100%とされる。これによって、第1の電力調整器3−1で、第1のチャンネルの操作量に応じた位相制御が行われる一方、第4の電力調整器3−4のスイッチング素子がオン状態とされ、交流電力が位相制御されて第1のヒータ2−1に与えられて駆動される。
【0078】
次に、第2のチャンネル、すなわち、第2のヒータ2−2に対応する接続用端子X1,Y2が、選択された期間tでは、操作量算出部9によって、接続用端子X1用の操作量は、同図(b)に示す第2のチャンネルの操作量とされ、図示しない接続用端子Y2用の操作量は、オンに対応する100%とされる。なお、接続用端子Y1用の操作量は、同図(c)に示すようにオフに対応する0%とされる。これによって、第1の電力調整器3−1で、第2のチャンネルの操作量に応じた位相制御が行われる一方、第5の電力調整器3−5のスイッチング素子がオン状態とされ、交流電力が位相制御されて第2のヒータ2−2に与えられて駆動される。
【0079】
次に、第3のヒータ2−3に対応する接続用端子X1,Y3が、選択されている期間tでは、操作量算出部9によって、接続用端子X1用の操作量は、同図(b)に示す第3のチャンネルの操作量とされ、図示しない接続用端子Y3用の操作量は、オンに対応する100%とされる。なお、接続用端子Y1用の操作量は、同図(c)に示すようにオフに対応する0%とされる。これによって、第1の電力調整器3−1で、第3のチャンネルの操作量に応じた位相制御が行われる一方、第6の電力調整器3−6のスイッチング素子がオン状態とされ、交流電力が位相制御されて第3のヒータ2−3に与えられて駆動される。
【0080】
以下、同様にして、第4のヒータ2−4から第9のヒータ2−9まで順番に時分割で選択されて駆動される。
【0081】
なお、図3に、目標温度SPを10℃変化させたときのステップ応答波形を示しており、同図(a)は目標温度SPを、同図(b)は各チャンネルの検出温度PVをそれぞれ示している。チャンネル毎に順番に駆動するので、同図(b)に示すように、多少のチャンネル間の温度のばらつきは認められるものの、高い精度が要求されない汎用的な用途の温度制御の性能としては、十分である。
【0082】
図4は、図1の電流検出部12の構成を示す図であり、図5は、各部の波形の例を示す図である。
【0083】
この実施形態の電流検出部12は、ローパスフィルタ(LPF)を用いて平均電流から負荷電流の実効値を求めるものである。この電流検出部12は、電流センサであるCT11からの図5(a)に示される出力を、図5(b)に示すように全波整流する全波整流部15と、この全波整流部15の出力から図5(c)に示すように、直流成分のみを取り出して平均電流にするローパスフィルタ16と、このローパスフィルタ16の出力をA/D変換するA/D変換部17と、このA/D変換部17からのディジタルデータから負荷電流の実効値を算出するCPU18とを備えている。
【0084】
なお、A/D変換部17およびCPU18は、過電流の判定、操作量の算出、および、駆動対象の選択等の各種機能を有するマイクロコンピュータ25に含まれている。
【0085】
このようにローパスフィルタ16を用いて平均電流にするので、電源ノイズの影響を低減することができる。このローパスフィルタ16のカットオフ周波数は、例えば、20Hz程度が好ましい。
【0086】
この実施形態では、第1〜第9のヒータ2−1〜2−9を1個ずつ時分割に選択して順番に駆動しており、駆動するヒータを選択した瞬間、すなわち、駆動するヒータを切換えた瞬間には、ローパスフィルタ16の時定数のために電流が未だ安定しておらず、正確に負荷電流を検出することができない虞がある。
【0087】
図6(a),(b)は、電流検出部12で検出される平均電流およびヒータへの印加電圧を示す図であり、上述の各チャンネルのヒータが選択されて駆動される期間t(100msec)を併せて示している。
【0088】
操作量に応じて位相制御された電圧の印加を、同図(b)に示すように開始した後、電流検出部12で検出される平均電流が安定するまでには、同図(a)に示すように、50msec程度必要である。
【0089】
そこで、この実施形態では、上述の図2(d)の矢印で示す過電流判定のタイミングのように、駆動するヒータを選択するタイミングに応じて、切換えた後一定期間、例えば、70msecが経過した時、すなわち、次に駆動するヒータに切換える前に、平均電流をサンプリングして過電流の有無を判定するようにしている。
【0090】
図7は、図1の電流制限部13を含む操作量算出部9の要部の構成を示す図である。
【0091】
操作量算出部9は、目標値入力部7からの各チャンネルの目標温度SPと、制御量入力部6からの制御量である各チャンネルの検出温度PVとの偏差に基づいて、各チャンネルの操作量をそれぞれ演算するPID演算部21−1〜21−9を備えており、各PID演算部21−1〜21−9には、駆動対象選択部8によって制御される選択部22を介して、各チャンネルの目標温度SPが順番に与えられ、各チャンネルの操作量が順番に演算される。
【0092】
各PID演算部21−1〜21−9で順番に演算された各チャンネルの操作量に基づいて、上述の図2のように、各電力調整器3−1〜3−6を制御して各チャンネルのヒータを順番に駆動する。
【0093】
電流制限部13は、電流検出部12で検出される各チャンネルの負荷電流から負荷電流制限値入力部10の各チャンネルの電流制限値をそれぞれ減算する減算部23−1〜23−9と、駆動対象選択部8によって各チャンネルを順番に選択する選択部24と、各減算部23−1〜23−9の出力を、それぞれPI演算するPI演算部19−1〜19−9と、その演算結果の負側を制限する下限リミッタ20−1〜20−9とを備えており、下限リミッタ20−1〜20−9の出力を、各PID演算部21−1〜21−9の積分操作量から減算したPIDの操作量を出力操作量としている。
【0094】
電流検出部12では、順番に選択されて駆動されるヒータに流れる負荷電流を検出する。選択部24は、駆動対象選択部8によって制御され、選択部22と同じチャンネルが選択される。
【0095】
この図7では、第2のチャンネルが選択されている状態を示している。例えば、この第2のチャンネルが選択されている状態では、第2のPID演算部21−2によってPIDの操作量が演算され、このPIDの操作量が、上述の図2に示すように、接続用端子X1用の操作量とされ、接続用端子Y2用の操作量は、オンに対応する100%とされる。これによって、第1の電力調整器3−1で、第2のチャンネルの操作量に応じた位相制御が行われる一方、第5の電力調整器3−5のスイッチング素子がオン状態とされ、交流電力が位相制御されて第2のヒータ2−2に与えられて駆動される。
【0096】
この第2のヒータ2−2に流れる負荷電流が、電流検出部12で検出され、負荷電流制限値入力部10の制限値を越えているときには、減算部23−2の出力が、正となる。この減算部23−2の出力が、PI演算部19−2でPI演算され、下限リミッタ20−2を介して第2のPID演算部21−2に与えられて、PID演算部21−2の積分操作量から減算され、PID操作量が制限され、これによって、ヒータ2−2に流れる負荷電流が制限される。
【0097】
また、ヒータ2−2に流れる負荷電流が制限値を越えていないときには、PI演算部19−2の出力は、下限リミッタ20−2によって「0」に制限されるので、PID演算部21−2のPID操作量は制限されることがない。
【0098】
このようにして、各チャンネルのヒータを順番に駆動し、ヒータに流れる負荷電流が制限値を越えると、その分だけ操作量を減らして、負荷電流を制限する。
【0099】
図8は、上述の電流制限の動作を説明するためのフローチャートである。
【0100】
各チャンネルのヒータを順番に選択して駆動し、駆動しているヒータに流れる実際の負荷電流を計測し(ステップn1)、計測された負荷電流が、制限値以内であるか否かを判断し(ステップn2)、制限値以内であるときには、終了する。
【0101】
ステップn2において、計測された負荷電流が制限値以内でないときには、電流制限部13で操作量を制限するための制限操作量を積算し(ステップn3)、PID演算部で演算された積分操作量から制限操作量を減算したものを、出力操作量として終了する(ステップn4)。
【0102】
以上のように、行方向の第1の電力線L1−1〜L1−3と列方向の第2の電力線L2−1〜L2−3との間に、第1〜第9のヒータ2−1〜2−9をマトリックス接続して順番に選択的に駆動するので、ヒータ毎に、スイッチング素子を含む電力調整器を介して電源に個別に接続して駆動する従来例に比べて、電力線の本数およびスイッチング素子を含む電力調整器の個数を削減することができる。これによって、電力線を引き回すための空間設計や配線作業が容易になるとともに、コストを低減することができる。
【0103】
更に、ヒータに流れる負荷電流が制限値を越えるときには、操作量を制限して負荷電流を制限するので、負荷の変動などによって過大な電流が流れるのを制限することができる。
【0104】
(実施形態2)
図9は、本発明の他の実施形態に係る温度調節器5−1を備える温度制御システムの概略構成図であり、上述の図1に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0105】
上述の実施形態では、負荷電流を実際に計測して過電流を制限したけれども、この実施形態では、負荷電流を実際に計測するのではなく、負荷電流を予測して過電流が流れるのを防止するものである。
【0106】
この実施形態では、操作量算出部9−1は、電流制限部13−1としての機能を有しており、電流制限部13−1は、操作量に基づいて、後述のように負荷電流を推定し、推定した負荷電流が制限値を越えるときには、操作量を制限して制限値を越える負荷電流が流れないようにしている。
【0107】
図10は、図9の電流制限部13−1を含む操作量算出部9−1の要部の構成を示す図である。
【0108】
この実施形態の電流制限部13−1は、第1〜第9のヒータ2−1〜2−9の抵抗値を基準抵抗値として予め記憶する基準抵抗値記憶部26と、この基準抵抗値記憶部26の基準抵抗値および各PID演算部21−1〜21−9からのPIDの操作量に基づいて、各チャンネルの負荷電流を推定する負荷電流推定部27と、負荷電流制限値入力部10の負荷電流の制限値と負荷電流の推定値との比率を算出する除算部28と、算出される比率を1以下に制限する上限リミッタ29と、上限リミッタ29で上限が制限された比率が設定される乗算器30−1〜30−9とを備えている。
【0109】
基準抵抗値記憶部26には、予め、ヒータ2−1〜2−9を1個ずつ順番に選択して駆動し、その操作量(出力位相角)に基づく印加電圧と、図9のCT11の出力から電流検出部12で検出される電流値とに基づいて、各ヒータ2−1〜2−9の抵抗値を算出し、算出した抵抗値を基準抵抗値として記憶する。
【0110】
負荷電流推定部27は、図11に示すように、PID演算部21−1〜21−9からのPIDの操作量に基づいて、ヒータの印加電圧の割合を示す出力位相角を算出する出力位相角算出部31と、出力位相角からヒータの印加電圧を算出する印加電圧算出部32と、基準抵抗値記憶部26の基準抵抗値およびヒータの駆動状態に応じて、合成抵抗値を算出する合成抵抗算出部部33と、この合成抵抗値と印加電圧とから負荷電流の推定値を演算する負荷電流推定演算部34とを備えている。
【0111】
図12は、位相制御されたヒータの印加電圧を示しており、出力位相角算出部31では、操作量に基づいて、図12に示される出力位相角を算出する。
【0112】
図13は、合成抵抗算出部33における合成抵抗値の算出を説明するための図である。
【0113】
ここでは、簡略化のために、各ヒータ2−1〜2−9の抵抗値を20Ωとし、第1のヒータ2−1に対応する接続用端子X1,Y1の第1,第4のスイッチ35−1,35−4がオンされて第1のヒータ2−1を選択して駆動している状態を想定する。
【0114】
この状態において、図14(a)に示すように、電流の回り込みによって回り込みのループが形成され、同図(b)、(c)に示すように、第1のヒータ2−1の抵抗値20Ωに、並列に他のヒータによる抵抗値25Ωが接続されているのと等価となり、合成抵抗値は、11.1Ωとなる。
【0115】
このようにいずれのヒータを駆動しているかに応じて、合成抵抗算出部33では、基準抵抗値に基づいて、合成抵抗値を算出することができる。
【0116】
図11の印加電圧算出部32では、操作量に基づいて、印加電圧を算出するので、この印加電圧と合成抵抗値とに基づいて、負荷電流推定演算部34では、各チャンネルの負荷電流の推定値を算出することができる。
【0117】
この実施形態では、図10に示すように、駆動するヒータに対応するチャンネルの操作量が、対応するPID演算部21−1〜21−9で算出されると、負荷電流推定部27によって、算出された操作量に基づく印加電圧と基準抵抗値記憶部26の基準抵抗値に基づく合成抵抗とから、上述のように、駆動するヒータに流れる負荷電流が推定され、除算部28によって、負荷電流制限値入力部10の対応するヒータの負荷電流の制限値と負荷電流の推定値との比率r(=負荷電流の制限値/負荷電流の推定値)が算出され、この比率rが、上限リミッタ29を介して対応するチャンネルの乗算器30−1〜30−9に設定され、対応するPID演算部21−1〜21−9からのPIDの操作量に乗算される。また、この比率rは、対応するチャンネルのPID演算部21−1〜21−9にフィードバックされ、乗算器30−1〜30−9で補正される操作量分が調整される。
【0118】
例えば、上述の実施形態1と同様に、第2のチャンネルが選択されている状態では、第2のPID演算部21−2によってPIDの操作量が演算され、この操作量が、負荷電流推定部27に与えられる。負荷電流推定部27では、操作量と基準抵抗値記憶部26の基準抵抗値とに基づいて、第2のチャンネルの負荷電流を推定し、除算部28で第2のチャンネルの制限値と負荷電流の推定値との比率rが算出され、上限リミッタ29を介して乗算器30−2に設定するとともに、PID演算部21−2にフィードバックする。
【0119】
負荷電流推定部27で推定される負荷電流が、負荷電流制限値入力部10の制限値を越えるときには、上述の比率r(=負荷電流の制限値/負荷電流の推定値)は、「1」未満となり、上限リミッタ29で制限されることなく、この比率rが、乗算器30−2に設定され、PID演算部21−2からのPIDの操作量に、比率rが乗じられてPIDの操作量が制限される。
【0120】
なお、PID演算部21−2からのPIDの操作量と、実際に出力される、比率rを乗じたPIDの操作量とには、差があるので、PID演算部21−2では、フィードバックされる比率rに基づいて、前記差分を積分操作量から減算する。
【0121】
このように各チャンネルのヒータ2−1〜2−9を順番に選択して駆動するとともに、合成抵抗値と操作量(出力位相角)に基づく印加電圧とから各チャンネルの負荷電流を推定し、推定した負荷電流が制限値を越えるときには、その比率に応じて、乗算器30−1〜30−9で操作量を減じるようにしている。
【0122】
これによって、負荷電流を計測することなく、制限値を越える負荷電流が流れるのを事前に防止することができる。
【0123】
その他の構成は、上述の実施の形態と同様である。
【0124】
以上は、各ヒータ2−1〜2−9を時分割で順番に1個ずつ選択して駆動する場合であったけれども、この実施形態では、複数のヒータを同時に選択して駆動する場合にも適用することができる。
【0125】
ここで、複数のヒータを同時に駆動する例を、図15および図16に示す。
【0126】
図15は、同時に駆動するヒータが行方向に並んでいる場合の例を示しており、例えば、第1,第2のヒータ2−1,2−2を、操作量50%,70%でそれぞれ駆動する場合の例を示している。この場合、該当行の電力調整器3−1に操作量100%出力し、列方向の該当する電力調整器3−4,3−5に操作量50%,70%をそれぞれ出力する。
【0127】
同時に駆動するヒータが列方向に並んでいる場合も同様に、該当列の電力調整器に操作量100%出力し、行方向の該当する電力調整器に、駆動するヒータの操作量をそれぞれ出力する。
【0128】
図16は、同時に駆動するヒータ2−1,2−3,2−7,2−9が行方向および列方向に並んでいる場合であって、列方向に並んでいるヒータ2−1,2−7;2−3,2−9の操作量が同じ場合の例を示しており、例えば、第1のヒータ2−1と第7のヒータ2−7の操作量が共に90%であり、第3のヒータ2−3と第9のヒータ2−9の操作量が共に70%である場合を示している。この場合、該当行の電力調整器3−1,3−3に操作量100%を出力し、列方向の該当する電力調整器3−4,3−6に操作量90%,70%を出力する。
【0129】
行方向に並んでいるヒータの操作量が同じ場合も同様に、該当列の電力調整器に操作量100%を出力し、行方向の該当する電力調整器に駆動するヒータの操作量をそれぞれ出力する。
【0130】
なお、以上は駆動の一例に過ぎず、様々な組み合わせで複数のヒータを同時に駆動してもよい。
【0131】
このように複数のヒータを同時に選択して駆動した場合も、上述の図14に示される1個のヒータ2−1を選択して駆動した場合と同様に、電流の回り込みによる合成抵抗値を算出することができる。
【0132】
図17は、上述の図13の行方向の接続用端子X1〜X3に接続されたスイッチ35−1〜35−3および列方向の接続用端子Y1〜Y3に接続されたスイッチ35−4〜35−6のオン「1」/オフ「0」状態、すなわち、いずれのヒータを選択して駆動しているかに応じた合成抵抗値の例を示すものであり、この図17は、上述とは異なり、各ヒータ2−1〜2−9の抵抗値を10Ωとして算出した例を示している。
【0133】
この図17に示すように、例えば、行方向の接続用端子X1〜X3のいずれか一つのスイッチがオンされる、すなわち、X1〜X3のいずれか一つが「1」であって、列方向の接続用端子Y1〜Y3のいずれか一つのスイッチがオンされる、すなわち、Y1〜Y3のいずれか一つが「1」であるときには、合成抵抗値は、5.6Ωとなる。また、例えば、行方向の接続用端子X1〜X3のいずれか二つのスイッチがオンされ、列方向の接続用端子Y1〜Y3のいずれか一つのスイッチがオンされたとき、あるいは、行方向の接続用端子X1〜X3のいずれか一つのスイッチがオンされ、列方向の接続用端子Y1〜Y3のいずれか二つのスイッチがオンされたときには、合成抵抗値は、3.9Ωとなる。また、例えば、行方向の接続用端子X1〜X3のいずれか二つのスイッチがオンされ、列方向の接続用端子Y1〜Y3のいずれか二つのスイッチがオンされたときには、2.2Ωとなる。更に、行方向の接続用端子X1〜X3のすべてのスイッチがオンされ、列方向の接続用端子Y1〜Y3のいずれか一つのスイッチがオンされたとき、あるいは、行方向の接続用端子X1〜X3のいずれか一つのスイッチがオンされ、列方向の接続用端子Y1〜Y3のすべてのスイッチがオンされたときには、3.3Ωとなる。また、行方向の接続用端子X1〜X3のすべてのスイッチがオンされ、列方向の接続用端子Y1〜Y3のいずれか二つのスイッチがオンされたとき、あるいは、行方向の接続用端子X1〜X3のいずれか二つのスイッチがオンされ、列方向の接続用端子Y1〜Y3のすべてのスイッチがオンされたときには、1.7Ωとなる。更に、行方向の接続用端子X1〜X3のすべてのスイッチがオンされ、列方向の接続用端子Y1〜Y3のすべてのスイッチがオンされたときには、1.1Ωとなる。
【0134】
以上のように行方向の接続用端子X1〜X3と、列方向の接続用端子Y1〜Y3のスイッチのオン/オフF状態、すなわち、ヒータを選択して駆動する状態に応じて、予め計測した各ヒータの基準抵抗値から合成抵抗値を算出することができる。すなわち、第1〜第9のヒータ2−1〜2−9の1個以上が選択されて駆動されたときには、その駆動状態に応じて、基準抵抗値から合成抵抗値を算出することができる。
【0135】
したがって、上述の図10において、駆動対象選択部8が、1個以上のヒータを選択して同時に駆動する場合には、選択されたチャンネルに対応する複数のPID演算部21−1〜1−9でそれぞれPID操作量が演算される。演算されたPID操作量に基づく印加電圧と、基準抵抗値記憶部26の基準抵抗値に基づく合成抵抗値とから、負荷電流推定部27によって、選択されたチャンネルのトータルの負荷電流が推定される。負荷電流制限値入力部10には、予め、複数のヒータを同時に駆動する場合のトータルの負荷電流の制限値が設定入力されている。
【0136】
負荷電流推定部27で推定された負荷電流が、選択されたチャンネルのヒータを同時に駆動したときのトータルの負荷電流の制限値を越えているときには、その比率r(=選択されているチャンネルのトータルの負荷電流の制限値/選択されているチャンネルのトータルの負荷電流の推定値)によって、上述と同様に、選択されているチャンネルのPID操作量が、乗算器30−1〜30−9によって同じ比率rで一律に制限される。
【0137】
図18は、この1個以上のヒータを同時に駆動する場合の電流制限の動作を説明するためのフローチャートである。
【0138】
駆動対象選択部8で選択された1個以上の駆動対象のヒータのリストを作成し(ステップn1)、選択されたヒータについての合成抵抗値とPIDの操作量に基づく印加電圧とからトータルの負荷電流の推定値を算出し(ステップn2)、推定された負荷電流が、トータルの負荷電流の制限値以内であるか否かを判断し(ステップn3)、制限値以内であるときには、終了する。ステップn3において、制限値を越えるときには、トータルの負荷電流の制限値とトータルの負荷電流の推定値との比率r(=トータルの負荷電流の制限値/トータルの負荷電流の推定値)を算出し、選択しているヒータに対応するPID演算部21−1〜21−9からのPIDの操作量に、対応する乗算器30−1〜30−9によって比率rを乗じて操作量を制限することによって電流を制限する。また、比率rを、対応するPID演算部21−1〜21−9にフィードバックして積分操作量を減算する(ステップn4)。
【0139】
以上のように、複数のヒータを選択して同時に駆動する場合には、トータルの負荷電流を推定し、推定したトータルの負荷電流が制限値を越えるときには、複数のヒータに対する操作量を制限するので、例えば、温度制御の開始時、すなわち、立ち上げ時のピーク電力を制限することが可能となり、これによって、大きな容量の電源や電力調整器等を必要とせず、その分、設置スペースを削減できるとともに、コストを低減することができる。
【0140】
この実施形態では、比率rを、選択している複数のヒータのPIDの操作量に一律に乗じて操作量を制限したけれども、本発明の他の実施形態として、図19に示すように、制限量分配部36を設けて、操作量の制限量をチャンネルに応じて異ならせてもよい。
【0141】
この制限量分配部36には、図示を省略しているが、選択して駆動するチャンネルに対応する目標温度、検出温度、操作量が入力され、それらに基づいて、操作量の制限量をチャンネルに応じて分配する、すなわち、チャンネルに対応する乗算器30−1〜30−9の比率r〜rを設定する。
【0142】
図20は、この制限量分配部36による動作を説明するためのフローチャートである。
【0143】
駆動対象選択部8で選択された駆動対象のヒータのリストを作成し(ステップn1)、選択されたヒータについての合成抵抗値と操作量に基づく印加電圧とからトータルの負荷電流の推定値を算出し(ステップn2)、推定されたトータルの負荷電流が、選択されているヒータのトータルの負荷電流の制限値以内であるか否かを判断し(ステップn3)、制限値以内であるときには、終了する。
【0144】
ステップn3において、制限値を越えるときには、駆動対象のヒータが1個であるか否かを判断し(ステップn4)、1個であるときには、負荷電流を越えない操作量を求め(ステップn5)、対応するPID演算部の操作量を制限して終了する(ステップn6)。
【0145】
ステップn4で駆動対象のヒータが1個でないとき、すなわち、複数のヒータを選択しているときには、目標温度を越えている量が大きなチャンネルのヒータを探索し、目標温度を越えているチャンネルがなければ、偏差が小さいチャンネルを探索する。探索によって選択されたチャンネルのヒータをリストから外し、リストから外したヒータの操作量を「0」にする、すなわち、そのヒータに対応する乗算器30−1〜30−9の比率r〜rを「0」にするとともに、そのヒータに対応するPID演算部21−1〜21−9の積分量を減算し、ステップn2に戻り(ステップn7)、リストに残っている駆動対象のヒータについて同様の処理を行なう。
【0146】
以上のようにして、負荷電流の推定値が制限値内に収まるまで、目標温度を越えているチャンネルのヒータ、あるいは、偏差が小さいチャンネルのヒータの操作量を制限するので、不要な熱量を削減して負荷電流を制限することができる。
【0147】
また、他の実施形態として、図21のフローチャートに示すようにして操作量を制限してもよい。
【0148】
すなわち、駆動対象選択部8で選択された駆動対象のヒータのリストを作成し(ステップn1)、選択されたヒータについての合成抵抗値と操作量に基づく印加電圧とから選択されているヒータのトータルの負荷電流の推定値を算出し(ステップn2)、推定されたトータルの負荷電流が、選択されているヒータのトータルの負荷電流の制限値以内であるか否かを判断し(ステップn3)、制限値以内であるときには、終了する。
【0149】
ステップn3で負荷電流の推定値が、制限値を越えるときには、駆動対象のヒータが1個であるか否かを判断し(ステップn4)、1個であるときには、負荷電流を越えない操作量を求め(ステップn5)、対応するPID演算部の操作量を制限する(ステップn6)。
【0150】
ステップn4で駆動対象のヒータが1個でないとき、すなわち、複数のヒータを選択しているときには、操作量が小さいチャンネルのヒータを探索し、探索によって選択されたチャンネルのヒータをリストから外し、リストから外した駆動対象の操作量を「0」にするとともに、そのヒータに対応するPID演算部の積分量を減算し、ステップn2に戻り(ステップn7)、リストに残っている駆動対象のヒータについて同様の処理を行なう。
【0151】
以上のようにして、負荷電流の推定値が制限値内に収まるまで、操作量の小さなヒータの操作量を制限するので、操作量を制限されたチャンネルの温度が回復するまでの時間も短いものとなる。
【0152】
(実施形態3)
図22は、本発明の他の実施形態の図1に対応する概略構成図であり、対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0153】
この実施形態では、上述の第1〜第6の電力調整器3−1〜3−6に代えて、第1〜第6のSSR37−1〜37−6およびそれらを制御する電力調整器としてのPWMコントローラ38を設けたものである。このPWMコントローラ38は、サイクル制御、すなわち、交流電源のゼロ電圧時に合わせてスイッチング素子を導通させ、導通サイクル数と非導通サイクル数との比率を変えることにより負荷への平均供給電力を制御するものである。
【0154】
図23は、この実施形態の時分割駆動を説明するための図であり、上述の図2に対応する図である。同図(a)は駆動対象選択部8によって選択される各ヒータ2−1〜2−9に対応する接続用端子X1,Y1〜X3,Y3の選択状態を、同図(b)は操作量算出部9−1による接続用端子X1用の操作量の例を、同図(c)は操作量算出部9−1による接続用端子Y1用の操作量の例を、同図(d)は電流検出部12の出力をそれぞれ示し、併せて、異常判定のタイミングを矢印で示している。なお、この図23では、第1〜第9のヒータ2−1〜2−9に個別的に対応する接続用端子X1,Y1〜X3,Y3の内、第1のヒータ2−1に対応する接続用端子X1,Y1用の操作量のみを代表的に示している。
【0155】
先ず、同図(a)に示すように、第1のチャンネル、すなわち、第1のヒータ2−1に対応する接続用端子X1,Y1が、一定期間t、例えば、100msecの期間に亘って選択され、次に、第2のチャンネル、すなわち、第2のヒータ2−2に対応する接続用端子X1,Y2が、同じく100msecの期間tに亘って選択され、次に、第3のヒータ2−3に対応する接続用端子X1,Y3が、同じく100msecの期間tに亘って選択され、以下同様にして、第4のヒータ2−4から第9のヒータ2−9まで順番に100msecの期間tに亘って選択され、制御周期Tにおいて、各ヒータ2−1〜2−9が順番に選択される。
【0156】
第1のチャンネル、すなわち、第1のヒータ2−1に対応する接続用端子X1,Y1が、選択された期間tでは、接続用端子X1用の操作量は、同図(b)に示す第1のチャンネルの操作量とされ、接続用端子Y1用の操作量は、同図(c)に示すようにオンに対応する100%とされる。これによって、PWMコントローラ38は、第1のSSR37−1に対して、第1のチャンネルの操作量に応じたサイクル制御を行う一方、第4のSSR37−4の接点をオン状態に制御し、サイクル制御された電力に応じて第1のヒータ2−1が駆動される。
【0157】
次に、第2のチャンネル、すなわち、第2のヒータ2−2に対応する接続用端子X1,Y2が、選択された期間tでは、接続用端子X1用の操作量は、同図(b)に示す第2のチャンネルの操作量とされ、図示しない接続用端子Y2用の操作量は、オンに対応する100%とされる。なお、接続用端子Y1用の操作量は、同図(c)に示すようにオフに対応する0%とされる。これによって、PWMコントローラ38は、第1のSSR37−1に対して、第2のチャンネルの操作量に応じたサイクル制御を行う一方、第5のSSR37−5の接点をオン状態に制御し、サイクル制御された電力に応じて第2のヒータ2−2が駆動される。
【0158】
次に、第3のヒータ2−3に対応する接続用端子X1,Y3が、選択されている期間tでは、接続用端子X1用の操作量は、同図(b)に示す第3のチャンネルの操作量とされ、図示しない接続用端子Y3用の操作量は、オンに対応する100%とされる。なお、接続用端子Y1用の操作量は、同図(c)に示すようにオフに対応する0%とされる。これによって、PWMコントローラ38は、第1のSSR37−1に対して、第3のチャンネルの操作量に応じたサイクル制御を行う一方、第6のSSR37−6の接点をオン状態に制御し、サイクル制御された電力に応じて第3のヒータ2−3が駆動される。
【0159】
以上のようにして1番目の行方向の第1〜第3のヒータ2−1〜2−3が、時分割に、かつ、操作量に応じたサイクル制御によって駆動される。
【0160】
2番目および3番目の行方向の第4〜第9のヒータ2−4〜2−9も同様にして、時分割で、かつ、操作量に応じたサイクル制御によって駆動される。
その他の構成は、上述の実施形態1と同様である。
【0161】
(実施形態4)
図24は、本発明の他の実施形態の図1に対応する概略構成図であり、図1に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0162】
この実施形態では、上述の第1〜第6の電力調整器3−1〜3−6に代えて、第1〜第6のスイッチ39−1〜39−6を設けるとともに、1個の電力調整器40によって操作量に応じた位相制御を行うものである。
【0163】
第1〜第6のスイッチ39−1〜39−6は、例えば、半導体素子からなり、操作量算出部9−2によって、第1〜第9のヒータ2−1〜2−9を時分割で順番に駆動するようにオンオフ制御される。電力調整器40は、操作量算出部9−2からの操作量に応じて位相制御を行う。
【0164】
図25は、この実施形態の時分割駆動を説明するための図であり、上述の図2に対応する図である。同図(a)は駆動対象選択部8によって選択されるヒータに対応する接続用端子X1,Y1〜X3,Y3の選択状態を、同図(b)は操作量算出部9−2によって制御される接続用端子X1用の第1のスイッチ39−1のオンオフ状態を、同図(c)は操作量算出部9−2によって制御される接続用端子Y1用の第4のスイッチ39−4のオンオフ状態を、同図(d)は操作量算出部9−2による操作量の例を、同図(e)は電流検出部12の出力を、それぞれ示し、併せて、異常判定のタイミングを矢印で示している。なお、この図25では、第1のヒータ2−1に対応する接続用端子X1,Y1用の第1,第4のスイッチ39−1,39−4のオンオフ状態のみを代表的に示している。
【0165】
先ず、同図(a)に示すように、第1のチャンネル、すなわち、第1のヒータ2−1に対応する接続用端子X1,Y1が、一定期間t、例えば、100msecの期間に亘って選択され、このとき、接続用端子X1用の第1のスイッチ39−1は、同図(b)に示すようにオン状態とされ、接続用端子Y1用の第4のスイッチ39−4も同図(c)に示すようにオン状態とされる。これによって、電力調整器40は、第1,第4のスイッチ39−1,39−4によって選択された第1のヒータ2−1に対して、同図(d)に示される第1のチャンネルの操作量に応じた位相制御を行って第1のヒータ2−1を駆動する。
【0166】
次に、同図(a)に示すように、第2のチャンネル、すなわち、第2のヒータ2−2に対応する接続用端子X1,Y2が、100msecの期間tに亘って選択され、このとき、接続用端子X1用の第1のスイッチ39−1は、同図(b)に示すようにオン状態に維持され、図示しない接続用端子Y2用の第5のスイッチ39−5がオン状態とされる一方、接続用端子Y1用の第4のスイッチ39−4は、同図(c)に示すようにオフ状態される。これによって、電力調整器40は、第1,第5のスイッチ39−1,39−5によって選択された第2のヒータ2−2に対して、同図(d)に示される第2のチャンネルの操作量に応じた位相制御を行って第2のヒータ2−2を駆動する。
【0167】
次に、同図(a)に示すように、第3のチャンネル、すなわち、第3のヒータ2−3に対応する接続用端子X1,Y3が、100msecの期間tに亘って選択され、このとき、接続用端子X1用の第1のスイッチ39−1は、同図(b)に示すようにオン状態に維持され、図示しない接続用端子Y3用の第6のスイッチ39−6がオン状態とされる一方、接続用端子Y1用の第4のスイッチ22−4は、同図(c)に示すようにオフ状態される。これによって、電力調整器40は、第1,第6のスイッチ39−1,39−6によって選択された第3のヒータ2−3に対して、同図(d)に示される第3のチャンネルの操作量に応じた位相制御を行って第3のヒータ2−3を駆動する。
【0168】
以上のようにして1番目の行方向の第1〜第3のヒータ2−1〜2−3が、時分割に、かつ、操作量に応じた位相制御によって駆動される。
【0169】
2番目および3番目の行方向の第4〜第9のヒータ2−4〜2−9も同様にして、時分割で、かつ、操作量に応じて駆動される。
その他の構成は、上述の実施形態1と同様である。
【0170】
(実施形態5)
上述の各実施形態では、熱板1の各ヒータ2−1〜2−9をマトリックス接続したけれども、本発明の他の実施形態として複数のヒータを1列あるいは1行として接続してもよく、例えば、図26に示すように、3個のヒータ2−1〜2−3を、一列に接続し、各ヒータ2−1〜2−3の各一端の電力線の接続用端子X1,X2,X3を、PWMコントローラ38によって制御される第1〜第3のSSR37−1〜37−3をそれぞれ介して交流電源4の一端に接続する一方、各ヒータ3−1〜3−3の各他端を共通に接続した電力線の接続用端子Yを、交流電源4の他端に接続してもよい。
【0171】
図27は、この実施形態の時分割駆動を説明するための図であり、上述の図23に対応する図である。同図(a)は駆動対象選択部8によって選択される各ヒータ2−1〜2−3に対応する接続用端子X1〜X3の選択状態を、同図(b)は操作量算出部9−1による接続用端子X1用の操作量の例を、同図(c)は操作量算出部9−1による接続用端子X2用の操作量の例を、同図(d)は操作量算出部9−1による接続用端子X3用の操作量の例を、同図(e)は電流検出部12の出力をそれぞれ示し、併せて、異常判定のタイミングを矢印で示している。
【0172】
先ず、同図(a)に示すように、第1のチャンネル、すなわち、第1のヒータ2−1に対応する接続用端子Xが、一定期間t、例えば、100msecの期間に亘って選択され、次に、第2のチャンネル、すなわち、第2のヒータ2−2に対応する接続用端子X2が、同じく100msecの期間tに亘って選択され、次に、第3のヒータ2−3に対応する接続用端子X3が、同じく100msecの期間tに亘って選択される。
【0173】
第1のチャンネル、すなわち、第1のヒータ2−1に対応する接続用端子X1が、選択された期間tでは、接続用端子X1用の操作量は、同図(b)に示す第1のチャンネルの操作量とされ、接続用端子X2,X3用の操作量は、同図(c),(d)に示すように、オフに対応する0%とされる。これによって、PWMコントローラ38は、第1のSSR37−1に対して、第1のチャンネルの操作量に応じたサイクル制御を行う一方、第2,第3のSSR37−2,37−3の接点をオフ状態に制御し、サイクル制御された電力に応じて第1のヒータ2−1が駆動される。
【0174】
次に、第2のチャンネル、すなわち、第2のヒータ2−2に対応する接続用端子X2が、選択された期間tでは、接続用端子X2用の操作量は、同図(c)に示す第2のチャンネルの操作量とされ、接続用端子X1,X3用の操作量は、同図(b),(d)に示すように、オフに対応する0%とされる。これによって、PWMコントローラ38は、第2のSSR37−2に対して、第2のチャンネルの操作量に応じたサイクル制御を行う一方、第1,第3のSSR37−1,37−3の接点をオフ状態に制御し、サイクル制御された電力に応じて第2のヒータ2−2が駆動される。
【0175】
次に、第3のヒータ2−3に対応する接続用端子X3が、選択されている期間tでは、接続用端子X3用の操作量は、同図(d)に示す第3のチャンネルの操作量とされ、接続用端子X1,X2用の操作量は、同図(b),(c)に示すように、オフに対応する0%とされる。これによって、PWMコントローラ38は、第3のSSR37−3に対して、第3のチャンネルの操作量に応じたサイクル制御を行う一方、第1,第2のSSR37−1,37−2の接点をオフ状態に制御し、サイクル制御された電力に応じて第3のヒータ2−3が駆動される。
【0176】
その他の構成は、上述の実施形態1と同様である。
【0177】
(その他の実施形態)
上述の実施形態1,3〜5では、複数のヒータの内、1個のヒータを選択して順番に駆動したけれども、他の実施形態として、複数のヒータを選択して同時に駆動してもよい。この場合、複数のヒータのトータルの負荷電流を検出し、トータルの負荷電流の制限値を越えたときに、操作量を制限するようにしてもよいし、あるいは、各ヒータの負荷電流を検出できるようにし、負荷電流が、制限値を越えたときに、操作量を制限するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0178】
本発明は、複数の負荷を駆動するシステムなどに有用である。
【符号の説明】
【0179】
1 熱板
2−1〜2−9 ヒータ
3−1〜3−6 電力調整器
4 交流電源
5,5−1 温度調節器
8 駆動対象選択部
11 CT
12 電流検出部
13,13−1 電流制限部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1の電力線と複数の第2の電力線との間に、複数の負荷が接続され、前記複数の第1の電力線が、複数の第1の開閉手段をそれぞれ介して電源に接続される一方、前記複数の第2の電力線が、複数の第2の開閉手段をそれぞれ介して前記電源に接続され、前記複数の第1の電力線と前記複数の第2の電力線とを、それぞれ仮想的に横方向と縦方向とに平行に配列したときに、両電力線が交差する部分で、前記複数の各負荷の一端が前記第1の電力線に接続されるとともに、他端が前記第2の電力線に接続され、前記複数の負荷に対する供給電力を調整する前記第1,第2の開閉手段の開閉量を制御して、前記複数の負荷を駆動する制御装置であって、
駆動する負荷を選択するとともに、選択した負荷に対応する前記第1,第2の開閉手段の開閉量を制御する操作量を算出する駆動制御手段と、
前記電源と前記負荷との間の電力線に流れる電流を検出する電流センサの出力に基づいて、負荷に流れる負荷電流値が制限値を越えるときに、前記操作量算出手段の操作量を制限する電流制限手段とを備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記電流制限手段は、駆動する負荷を選択するタイミングに応じて前記電流センサの出力に基づく前記負荷電流値を取得する請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記駆動制御手段は、前記複数の負荷の内の1個の負荷を順番に選択して駆動する請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
複数の第1の電力線と複数の第2の電力線との間に、複数の負荷が接続され、前記複数の第1の電力線が、複数の第1の開閉手段をそれぞれ介して電源に接続される一方、前記複数の第2の電力線が、複数の第2の開閉手段をそれぞれ介して前記電源に接続され、前記複数の第1の電力線と前記複数の第2の電力線とを、それぞれ仮想的に横方向と縦方向とに平行に配列したときに、両電力線が交差する部分で、前記複数の各負荷の一端が前記第1の電力線に接続されるとともに、他端が前記第2の電力線に接続され、前記複数の負荷に対する供給電力を調整する前記第1,第2の開閉手段の開閉量を制御して、前記複数の負荷を駆動する制御装置であって、
駆動する負荷を選択するとともに、選択した負荷に対応する前記第1,第2の開閉手段の開閉量を制御する操作量を算出する駆動制御手段と、
前記操作量および前記複数の負荷の駆動状態に基づいて、負荷に流れる負荷電流を推定し、推定される負荷電流値が制限値を越えるときに、前記駆動制御手段の操作量を制限する電流制限手段とを備えることを特徴とする制御装置。
【請求項5】
前記電流制限手段は、前記操作量および前記複数の負荷の駆動状態に応じた抵抗値に基づいて、負荷電流を推定する請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記電流制限手段は、選択されて駆動される複数の負荷に対応する操作量を、同じ割合で制限する請求項4または5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記電流制限手段は、選択されて駆動される複数の負荷に対応する操作量を、制御量と目標値との偏差の絶対値が大きな方から順に制限する請求項4または5に記載の制御装置。
【請求項8】
前記複数の負荷は、制御対象を加熱するものであって、
前記電流制限手段は、選択されて駆動される複数の負荷に対応する操作量を、制御量−目標値の値が大きな方から順に制限する請求項4または5に記載の制御装置。
【請求項9】
前記複数の負荷は、制御対象を冷却するものであって、
前記電流制限手段は、選択されて駆動される複数の負荷に対応する操作量を、制御量−目標値の値が小さな方から順に制限する請求項4または5に記載の制御装置。
【請求項10】
前記電流制限手段は、選択されて駆動される複数の負荷に対応する操作量を、その絶対値の小さな方から順に制限する請求項4または5に記載の制御装置。
【請求項11】
前記電流制限手段によって、負荷電流値が制限値を越えるとされたときに、それを報知する過電流状態報知手段を備える請求項1ないし10のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項12】
複数の負荷の各一端が、共通の電力線を介して電源に接続されるとともに、各他端が、複数の開閉手段をそれぞれ介して前記電源に接続され、前記複数の負荷に対する供給電力を調整する前記複数の開閉手段の開閉量を制御して、前記複数の負荷を駆動する制御装置であって、
駆動する負荷を選択するとともに、選択した負荷に対応する前記複数の開閉手段の開閉量を制御する操作量を算出する駆動制御手段と、
前記電源と前記負荷との間の電力線に流れる電流を検出する電流センサの出力に基づいて、負荷に流れる負荷電流値が制限値を越えるときに、前記操作量算出手段の操作量を制限する電流制限手段とを備えることを特徴とする制御装置。
【請求項13】
複数の負荷の各一端が、共通の電力線を介して電源に接続されるとともに、各他端が、複数の開閉手段をそれぞれ介して前記電源に接続され、前記複数の負荷に対する供給電力を調整する前記複数の開閉手段の開閉量を制御して、前記複数の負荷を駆動する制御装置であって、
駆動する負荷を選択するとともに、選択した負荷に対応する前記複数の開閉手段の開閉量を制御する操作量を算出する駆動制御手段と、
前記操作量および前記複数の負荷の駆動状態に基づいて、負荷電流を推定し、推定される負荷に流れる負荷電流値が制限値を越えるときに、前記駆動制御手段の操作量を制限する電流制限手段とを備えることを特徴とする制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate


【公開番号】特開2010−198749(P2010−198749A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38880(P2009−38880)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】