説明

制限されたオゾン発生器転写装置

【課題】オゾン発生量の少ない非接触型の転写装置およびそれを用いた画像形成装置を提供する。
【解決手段】導電ライン208を有するセラミック基板201と、誘電体層202と、下層にある導電ラインと位置がそろっている細長いすき間210を有する上端導電層206とを備えたオゾン発生器転写装置であって、電極を横切って約2.5kVp−pのAC電圧を印加することにより細長いすき間内にコロナを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、静電グラフィック印刷装置内の帯電したトナー粒子の転写システムに関し、さらに詳細には、このような機械で使用される非接触型の制限されたオゾン生成転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、引用することにより本開示を実施するのに必要な範囲で本明細書の一部となっている米国特許第6,033,452号のようなプリンタの静電グラフィック印刷プロセスでは、光伝導性部材が、それの表面を感光性にするために実質的に均一なポテンシャルに帯電する。光伝導性部材の帯電部分を露出して、照射領域内で光伝導性部材上の電荷を選択的に放散させる。これにより光伝導性部材上に静電潜像を記録する。光伝導性部材上に静電潜像を記録した後に、現像材料と接触させることにより潜像を現像する。一般に、現像材料は、キャリア顆粒に摩擦電気的に付着しているトナー粒子を含む。トナー粒子は、キャリア顆粒から、ドナーロールの方へ、または光伝導性部材上の潜像の方へ引き付けられる。その後、ドナーロールに引き付けられたトナーは、通常、感光体である電荷保持面上の潜在静電像上に蒸着される。その後、トナー粉末画像は光伝導性部材からコピー基板へ転写される。
【0003】
熱によりトナー材料を支持部材上に恒久的に固定または定着させるために、トナー材料の成分が凝集して粘着性になる点までトナー材料の温度を上げる必要がある。この動作は、支持部材の繊維もしくは細孔上に、またはそうでなければ支持部材の表面上に、トナーがある程度流れてしまうことを引き起こす。その後、トナー材料が冷えると、トナー材料の凝固が起こり、トナー材料が支持部材に固着する。
【0004】
転写は、ACおよびDCバイアスの「転写デタック領域」(単に「転写領域」と略す場合が多い)の生成により通常実行され、この転写デタック領域では、印刷用紙が光伝導性部材に接触している、またはそうでなければ、光伝導性部材に隣接している。転写領域内の紙または他の基板の裏面に(すなわち、光伝導性部材から離れた面上に)印加されたDCバイアスにより、光伝導性部材から、転写領域に提示された紙または他の基板に、トナーを静電的に転写する。トナー粒子を加熱して、コピー基板に粉末画像を恒久的に貼り付ける。また、光伝導性部材から媒体に画像を転写するために、バイアスされた転写ロール、例えば、米国特許第3,847,478号に記載のセグメント化されたバイアスロールを使用する。
【0005】
これらの従来の画像転写は、オゾンを生成し、転写媒体に直接圧力をかけて光伝導性部材から画像を取り除く帯電装置を用いて行われる。このオゾンの除去は、追加費用をプリンタに付加する大規模な空気処理システムを利用して通常行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、オゾンを除去するのに必要な空気システム量を減少させ、転写システム媒体圧力接触をなくし、転写システム内の構成要素の劣化を低減する転写装置に対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この必要性に応えて、セラミック基板と、導電ラインと、誘電体層と、下層にある導電ラインと位置がそろっている細長いすき間を有する上端導電層と、の連続層を含む制限されたオゾン発生器転写装置を以下に提供する。誘電体を横切って約2.5kVp−pのAC電圧を印加することにより細長いすき間内にコロナを生成する。この装置は、従来の転写装置よりも大幅に少ないオゾンしか生成しないという点で「環境に優しく」、したがって、オゾン回収システムの要件を軽くする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本開示の制限されたオゾン発生器転写装置を含む例示的なモジュール式静電プリンタの部分正面図である。
【図2】図1の印刷装置で使用される本開示の制限されたオゾン発生器転写装置の斜視図である。
【図3】図2に示す電極のイオン生成を制御するための電気回路図である。
【図4】異なる転写装置に対するオゾン生成を示す図である。
【図5】本開示の制限されたオゾン発生器転写装置と、典型的な転写装置とを比較している図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示はそれの好ましい実施形態に関連して下記に説明されるであろうが、本開示をその実施形態に限定する意図はないことが分かるであろう。それどころか、添付クレームで定義されるような本開示の要旨および範囲内に含まれる可能性があるようなすべての代替、変更、および均等物を含むことを意図するものである。
【0010】
ここで、トナーを媒体に転写している間、オゾン生成を限定するための方法および装置を含む好ましい実施形態の静電写真印刷装置を引用することにより本開示を説明するであろう。
【0011】
ここで図面のプリンタ10を参照すると、他の静電写真機械のように、および周知のように、本開示の、画像部材から媒体供給源への画像上の転写の間、オゾン生成を減少させるための改良された方法および装置を含む電子写真印刷システムを示している。本明細書で使用するように用語「印刷システム」は、任意の関連する周辺装置またはモジュール装置を含むプリンタ装置を含んでおり、本明細書で使用するように用語「プリンタ」は、目的に応じて印刷出力機能を実行するデジタルコピー機、製本機械、ファクシミリ装置、多機能機などの任意の装置を含んでいる。マーキングモジュール12は電荷保持基板を含み、この電荷保持基板はベルト14の経路の周囲のさまざまな処理ステーションの中を通って矢印16の方向に前進する感光体ベルトまたは光伝導性部材14である可能性がある。充電器18がベルト14の領域を、比較的高く、実質的に均一のポテンシャルに帯電させる。次に、ベルト14の帯電領域はレーザ20を通過して、ベルト14の選択された領域を光のパターンに露出し、選択された領域を放電させて静電潜像を生成する。次に、ベルトの照射された領域は、ベルトの帯電領域上に赤紫色トナーを蒸着する現像ユニットMを通過する。
【0012】
続いて、充電器22がベルト14の領域を、比較的高く、実質的に均一のポテンシャルに帯電させる。次に、ベルト14の帯電領域はレーザ24を通過して、ベルト14の選択された領域を光のパターンに露出し、選択された領域を放電させて静電潜像を生成する。次に、ベルトの照射された領域は、ベルトの帯電領域上に黄色トナーを蒸着する現像ユニットYを通過する。
【0013】
続いて、充電器26がベルト14の領域を、比較的高く、実質的に均一のポテンシャルに帯電させる。次に、ベルト14の帯電領域はレーザ28を通過して、ベルト14の選択された領域を光のパターンに露出し、選択された領域を放電させて静電潜像を生成する。次に、ベルトの照射された領域は、ベルトの帯電領域上に青緑色トナーを蒸着する現像ユニットCを通過する。
【0014】
続いて、充電器30がベルト14の領域を、比較的高く、実質的に均一のポテンシャルに帯電させる。次に、ベルト14の帯電領域はレーザ32を通過して、ベルト14の選択された領域を光のパターンに露出し、選択された領域を放電させて静電潜像を生成する。次に、ベルトの照射された領域は、ベルトの帯電領域上に黒色トナーを蒸着する現像ユニットKを通過する。
【0015】
上述の処理の結果として、今やフルカラートナー像がベルト14上を動いている。ベルト14上のフルカラートナー像の動きと同期して、従来の見当合わせシステムがシート・フィーダ・モジュール100からシートを受け取って、シートと、ベルト14上のフルカラートナー像を接触させる。シート・フィーダ・モジュール100は、媒体供給台107および109上に設置されたシートスタック106および108からシートを供給する供給ヘッド110を備えた大容量フィーダ102および104を含んでおり、シートをシート経路120に沿って撮像モジュールまたはマーキングモジュール12へ誘導する。シート経路120に沿ってシートを供給するために、必要に応じて、さらなる大容量媒体トレイを追加できる。
【0016】
シートをベルト14に仮止めするために、制限されたオゾン発生器転写装置200がシートを帯電させて、トナーをベルト14からシートへ移動させる。続いて、デタックコロトロン36が反対極性にシートを帯電させてシートをベルト14からはずす。プリフューザ搬送38はシートを定着器Eに送り、この定着器Eでは熱および圧力を用いてトナーをシートに恒久的に貼り付ける。その後、シートはスタッカモジュールFまたは両面印刷ループDに進む。
【0017】
ベルト14の画像領域上に残っている可能性があるトナーを掃除機40が除去する。両面印刷複写を達成するために、両面印刷ループDはシートを元へ戻して、シートの反対側にトナー粉末画像を転写する。前の通過転写時にはシートの上面であった側が次の通過転写時にはシートの底面になるように、両面印刷ループD内の両面印刷反転器90がシートを反転させる。前の通過転写時にはシートの前縁であった側が次の通過転写時にはシートの後縁になるように、両面印刷反転器90が各シートを反転させる。
【0018】
図2を参照すると、本開示によって2つの導電層206および208の間に位置する誘電体層202を支持するセラミック基板201を含むハイブリッド厚膜装置200を備えたプリンタ10内の「環境に優しい」制限されたオゾン発生器転写装置により生成されるオゾン量を限定するための方法および装置を開示している。導電層206は細長いすき間210および212を含んでおり、他方、導体208は上部電極の細長いすき間210および212の下にある2枚の導電性帯板の形をしている。コロナ生成は細長いすき間210および212の中で引き起こされる。非接触厚膜装置200は転写媒体にごく接近して転写媒体の下方に設置されており、光伝導面14の真下に位置合わせされている。導電層206および208に通電することにより転写媒体を帯電させ、その結果、光伝導面14からトナー潜像を移動させて、トナー潜像を媒体上に付着させる。転写帯電と、オゾン減衰率を増加させるのに必要であるが、一方で転写媒体を劣化させる温度限度をかなり下回る熱エネルギーと、を生成するように、転写システムに通電するのに必要な電力を選択する。
【0019】
図3の電気回路図は、2ライン動作モードの転写装置200を示している。各ラインは1つの電極(下部導体)を有しており、すべての電極は共通の上部導体(図2)を有している。電極の個数は転写装置応用、セラミック基板の物理的寸法、および応用に必要な電力量に依存している。
【0020】
転写装置の選択された材料は、厚膜回路で3000ボルトものACおよびDC高電圧を取り扱うことを可能にする。試験では、セラミック材料は1650mmの帯電領域を有するように選択された。セラミックの剛性は、端部で支持した状態で転写装置を転写ベルトの下に吊るすことを可能にする。
【0021】
スイッチS−Aは第1の電極に供給されるAC高電圧を制御し、他方、スイッチS−Bは第2の電極にAC高電圧を供給する。転写装置の動作は、コロナを消すために1800ボルトよりも高いAC電圧を必要とした。上部導体は可変DC電圧源に接続してある。
【0022】
電極がAC高電圧を受けると、コロナ生成が起こる。電極を取り囲む電場により、上部導体の指状突起の間の細長いすき間210および212(図2)内の誘電体の表面上で空気分子がイオン化する。転写媒体上の帯電を確立して制御するDC電圧を上部導体にさらに通電する。
【0023】
イオン化された空気分子からのイオンは転写媒体の方へ押し返される。上部導体の構造が転写装置200全体にわたって平坦でかつ硬いことが、転写媒体全体にわたる帯電の均一性を保証している。帯電した転写媒体は、図1の回転する光伝導性部材の表面からトナーを引き付ける。コロナと上部導体電圧との強度のせいで、転写装置は転写媒体の下面から最大3mm離して設置できる。バイアス転写ロールと同様に、転写媒体または光伝導性部材と接触する必要はない。
【0024】
図4のグラフに示すように、コロナ生成時には、厚膜機構の構造は、セラミック基板が1000℃付近の温度を実現するようになっている。これらの温度では、オゾン減衰率が上昇するため、コロナ生成により産生されるオゾンは減少する。セラミックおよび表面導体の物理的、化学的、および電気的特性は、高温でも劣化しない。電極に連続的な高いAC電圧を印加して、コロナを適切な適用レベルに維持している場合、典型的な転写装置(1〜4)が400mg/hr以上のオゾンレベルを維持している状態でも、オゾンレベルは200mg/hrをかなり下回っているであろう。
【0025】
図5のグラフは、時間に対して、制限されたオゾン発生器転写装置200のオゾンレベルと、典型的な転写装置のオゾンレベルとを、100万分の1(ppm)対時間で比較している。図示のように、低オゾン発生器転写装置のオゾンレベルは、約40秒以内に0.03ppm未満まで低下するであろうが、対照的に、典型的な帯電装置はオゾンを放出し続けるため、空気処理装置、オゾン耐性の金属、シール、およびブッシングを必要とするであろう。
【0026】
本開示は画像を光伝導性部材からシートに転写することに関して説明されたが、トナーを光伝導性部材から中間転写媒体に転写するために制限されたオゾン発生器転写装置を使用できることも等しく意図していることを理解すべきである。
【0027】
要約すると、本開示の実施形態は、好ましくない量のオゾンを生成し、転写媒体に直接圧力をかけて光伝導性部材から画像を取り除く転写装置を用いて行われる従来の画像転写の問題に対処する。従来の転写装置よりも大幅に少ないオゾンしか生成しないため「環境に優しく」、したがって、安価なオゾン回収システムを利用できるためオゾン回収システムおよび費用の要件を軽くする転写装置を本明細書に開示している。制限されたオゾン発生器転写装置はセラミック基板と、導電ラインと、誘電体層と、下層にある導電ラインと位置がそろっている細長いすき間を有する上端導電層と、の連続層を含んでおり、これらの細長いすき間内でコロナを生成する。電極を横切って約2.5kVp−pのAC電圧を印加することによりコロナを生成する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート上に画像を印刷するように構成された静電写真装置であって、
前記シート上に画像を処理して記録する画像装置と、
前記画像を現像する画像現像装置と、
前記シート上に前記画像を転写する転写装置と、
前記シート上に前記画像を定着させる定着器と、を含み、
前記転写装置は、その上に取り付けられた下部導体を有するセラミック基板と、前記下部導体の上に取り付けられた誘電体層と、前記誘電体層の上に取り付けられた上部導体と、を備えたハイブリッド厚膜装置を含む、
静電写真装置。
【請求項2】
前記下部導体が前記セラミック基板上に少なくとも1つの導電性帯板を含む、請求項1に記載の静電写真装置。
【請求項3】
前記上部導体が、前記少なくとも1つの導電性帯板の真上に位置する少なくとも1つの細長いすき間を含み、前記上部および下部導体に通電するとき前記少なくとも1つの細長いすき間の中でコロナ生成が起こるようになっている、請求項2に記載の静電写真装置。
【請求項4】
前記上部導体の前記少なくとも1つの細長いすき間の中でコロナ生成を引き起こすために、前記導体のうちの一方に供給されるAC電圧を制御するために作動されるように構成された第1のスイッチと、前記導体のうちのもう一方にAC電圧を供給するために作動されるように構成された第2のスイッチと、を有する回路を含む、請求項3に記載の静電写真装置。
【請求項5】
前記シート上の帯電を確立して制御するDC電圧を前記上部導体に通電する、請求項4に記載の静電写真装置。
【請求項6】
セラミック基板を含み、
複数の導電ラインと、誘電体層と、前記導電ラインと位置がそろっている細長いすき間を有する上端導電層と、を含む前記セラミック基板上の連続層を含み、前記導電ラインと前記導電層との通電により前記導電層内の前記細長いすき間の中でコロナ生成を引き起こすようになっている、
制限されたオゾン発生器転写装置。
【請求項7】
前記導電ラインと前記導電層とを横切って約2.5kVp−pのAC電圧を印加することにより前記上端導電層の前記細長いすき間の中でコロナを生成する、請求項6に記載の制限されたオゾン発生器転写装置。
【請求項8】
前記制限されたオゾン発生器転写装置が静電写真装置に組み込まれている、請求項6に記載の制限されたオゾン発生器転写装置。
【請求項9】
シート上に画像を印刷するように構成された印刷機であって、
前記シート上に画像を処理して記録する画像装置と、
前記画像を現像する画像現像装置と、
前記シート上に前記画像を転写する転写装置と、
前記シート上に前記画像を定着させる定着器と、を含み、
前記転写装置は、その上に取り付けられた下部導体を有するセラミック基板と、前記下部導体の上に取り付けられた誘電体層と、前記誘電体層の上に取り付けられた上部導体と、を備えたハイブリッド厚膜装置を含む、
印刷機。
【請求項10】
前記下部導体が、前記セラミック基板上に位置する少なくとも1つの導電性帯板を含む、請求項9に記載の印刷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−173741(P2012−173741A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−25559(P2012−25559)
【出願日】平成24年2月8日(2012.2.8)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】