説明

刷版誤装着検出装置

【課題】輪転機に装着する刷版の識別を刷版に印字した記号やバーコードで行う場合に、刷版の汚れで読取れない問題が発生し、また付加できる情報量が少ないために同一頁に対し短時間に何度も更新された刷版がつくられた場合に誤装着を認識できない問題を解決する。
【解決手段】RFIDタグ等の非接触記憶素子を使用することで刷版の汚れによらず確実に刷版識別情報の読取りが可能となる。またRFIDタグに記憶する刷版識別情報を紙面情報で構成し、紙面情報の記事内容が異なることを表す紙面更新履歴情報で構成することにより、同一頁に対し短時間に何度も更新された刷版がつくられる場合でも問題なく装着良否の認識をおこなう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、刷版を版胴に装着して印刷する輪転機において、刷版の版胴への誤装着を検出し警告する刷版誤装着検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば新聞印刷においては、販売地域のニーズに合せて最新記事や地域向け記事など、一部内容の異なる多種類の新聞を短時間のうちに印刷する。この地域向け記事替えのために、記事替えする頁毎に輪転機に装着する刷版を交換する作業が短時間のうちに高頻度で行われるが、人手で交換装着を行うため誤装着の可能性がある。
【0003】
刷版の誤装着を防止する技術として、従来例えば特許文献1では、刷版に設けたバーコードに刷版識別情報を記録し、これを読み出して版胴上の正しい位置に装着したか否かの識別を行う。また、特許文献2では、刷版に位置指定表示を印刷し同様に読み出して位置合わせを行う。さらに特許文献3では、刷版に印刷したページ番号を基に位置合わせを行っている。しかしこれら従来技術はいずれも、刷版識別情報の読取り精度の問題や、識別情報の情報量不足の問題が解決されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−300594号公報
【特許文献2】特開2007−8118号公報
【特許文献3】特開2008−93929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
刷版の誤装着を防ぐために、従来から刷版に識別情報を直接印字する種々の方法が提案されているが、この方法の場合には、刷版に印字した文字が輪転機のインキなどによるの汚れで読取れないという問題が発生する。また、印字スペースが刷版端辺の狭い領域に限られるため文字内容に制限があり、刷版対応の紙面情報と完全な対応付けを行うには不十分な情報量となる。従って例えば、同一頁に対し短時間に何度も記事内容が更新された刷版がつくられた場合、紙面更新履歴情報を刷版識別情報にすべて反映できず、装着すべき刷版を認識できない問題が発生する。本発明は上記の問題を解決し、正確で処理すべき情報量に対し柔軟に対応可能な刷版誤装着検出装置を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、製版装置により製版された複数の刷版を版胴に装着して印刷を行う輪転機システムの刷版誤装着検出装置において、刷版識別情報を記録した非接触記憶素子と、前記製版装置により製版された刷版に非接触記憶素子を貼付ける非接触記憶素子貼付け装置を設け、輪転機の前記版胴の刷版装着部近傍に各刷版毎に対応した非接触記憶素子読取装置と刷版装着警告装置を設け、前記製版装置で製版された刷版に非接触記憶素子貼付け装置により非接触記憶素子を貼付け、前記製版装置と非接触記憶素子貼付け装置と非接触記憶素子読取装置と刷版装着警告装置に接続されるとともに、前記製版装置から供給される刷版識別情報を受信して非接触記憶素子貼付け装置に送信し、前記非接触記憶素子読取装置により読み取った刷版識別情報に基づき刷版装着警告装置を作動させる刷版誤装着検出制御装置を設け、前記刷版を輪転機に装着する際に、刷版に貼付けた非接触記憶素子から読み取った刷版識別情報により前記版胴へ装着する刷版の良否を刷版装着警告装置に表示することを特徴とする。
【0007】
また、前記非接触記憶素子に記憶される刷版識別情報は、前記製版装置による刷版の製版に合わせて前記製版装置から刷版誤装着検出制御装置を介して受信した当該刷版の刷版識別情報であることを特徴とする。
【0008】
また、前記非接触記憶素子に記憶される刷版識別情報は、各刷版毎の刷版識別番号及び紙面情報を含むことを特徴とする。
【0009】
また、前記非接触記憶素子に記憶する刷版識別情報は各刷版が識別できる紙面情報を有し、該紙面情報はさらに異なる記事内容であることを示す紙面更新履歴情報を含むことを特徴とする。
【0010】
また、前記刷版の版胴装着時に非接触記憶素子の刷版識別情報から求める刷版装着の良否判断は、あらかじめ刷版誤装着検出制御装置に記録された、印刷により作成する輪転機毎の版胴位置別の紙面情報を基準とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、輪転機の版胴の正しい位置に正しい刷版が装着されたことを認識するためにRFIDタグ等の非接触形記憶素子を使用することで、刷版の汚れによる誤読取りを解消する。
【0012】
また、製版後の刷版に合わせて刷版認識情報を記載した非接触形記憶素子を貼付けるため、刷版と刷版認識情報が完全に対応し、刷版をどの輪転機に搬送しても刷版と紙面の対応付けを正確に行うことができる。
【0013】
さらに、刷版認識情報を非接触形記憶素子に記憶することで、媒体、版、頁、更新履歴などの多様な紙面情報を記憶することができるため、同一頁で短時間に何度も記事内容が更新された刷版がつくられた場合でも、装着すべき正しい刷版を認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の刷版誤装着検出装置の概要を示す模式図である。
【図2】本発明の刷版誤装着検出装置を搭載した輪転機システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施例を図面について説明する。
【実施例】
【0016】
図1に刷版誤装着検出装置の概要を示す。刷版誤装着検出装置は、刷版誤装着検出制御装置1、RFIDタグ貼付け装置2、RFIDタグ読取装置3、刷版装着警告装置4から構成される。5は刷版11の上にRFIDタグ貼付け装置2によって貼付けられた非接触記憶素子としてのRFIDタグである。11は刷版、12は版胴である。15は製版装置から供給される刷版識別番号、紙面情報を含む刷版識別情報である。
【0017】
図2に本発明の刷版誤装着検出装置を適用した輪転機システムの概要を示す。13は製版装置、14は製版装置13における刷版の脱荷部である。
【0018】
図1、2において、製版装置13の脱荷部14に隣接してRFIDタグ貼付け装置2を設置する。RFIDタグ貼付け装置2は、製版装置13で製版された刷版11が脱荷部14に排出された後、直ちに刷版11の上部にRFIDタグ5の貼付けを行う。輪転機における版胴12の刷版装着位置に対応して、RFIDタグ読取装置3と刷版装着警告装置4を設置する。
【0019】
RFIDタグ読取装置3は、輪転機の版胴12の刷版装着部上部に設置する。刷版装着警告装置4をRFIDタグ読取装置3に隣接して設置し、読取り位置に正しい刷版が装着されたか否かに対応して装着の良否を表示する。RFIDタグ貼付け装置2、RFIDタグ読取装置3、装着位置良否警告装置4、及び製版装置13と接続して刷版誤装着検出制御装置1を設ける。
【0020】
刷版誤装着検出制御装置1は、各種情報を処理する制御回路を有し、製版動作に合わせて製版装置13から各刷版毎の刷版識別番号及び紙面情報を含む刷版識別情報を受け取り、RFIDタグ貼付け装置2に対し対応する刷版に刷版識別情報を記憶したRFIDタグを貼付けるよう指示する。
【0021】
上記によりRFIDタグ5を貼付け済みの刷版11は、オペレータにより輪転機の版胴12に装着される。RFIDタグ読取装置3はRFIDタグ5を貼付けた刷版11が版胴12に装着されたタイミングで刷版識別情報をRFIDタグ5から読み取り、刷版誤装着検出制御装置1に送る。刷版誤装着検出制御装置1は読取った輪転機の版胴12上の刷版11の装着位置および刷版紙面情報を、刷版誤装着検出制御装置1内に輪転機毎にあらかじめ用意されている版胴位置別の紙面情報と照合し、適切な刷版11が版胴12上の正しい装着位置に装着されたかの良否を判断する。
【0022】
装着位置の正・誤により、装着位置警告装置4の正・誤対応の表示灯を、例えば正しく装着された場合は緑灯、誤って装着された場合は橙灯を点灯する。なお、表示灯は刷版装着が無い場合、正・誤対応の両表示灯とも消灯する。オペレータはこの刷版装着警告装置4により誤装着を認識し、正しい刷版を装着し直す操作を行う。刷版装着警告装置4は、液晶表示装置等により文字や絵を組み合わせて警告内容をオペレータに伝えてもよい。
【0023】
RFIDタグに代えて磁気記憶素子を用い、磁気読み取りヘッドで情報を読み取ってもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 刷版誤装着検出制御装置
2 RFIDタグ貼付け装置
3 RFIDタグ読取装置
4 刷版装着警告装置
5 RFIDタグ
11 刷版
12 版胴
13 製版装置
14 脱荷部
15 刷版識別情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製版装置により製版された複数の刷版を版胴に装着して印刷を行う輪転機システムにおいて、刷版識別情報を記録した非接触記憶素子と、前記製版装置により製版された刷版に非接触記憶素子を貼付ける非接触記憶素子貼付け装置を設け、輪転機の前記版胴の刷版装着部近傍に各刷版毎に対応した非接触記憶素子読取装置と刷版装着警告装置を設け、前記製版装置で製版された刷版に非接触記憶素子貼付け装置により非接触記憶素子を貼付け、前記製版装置と非接触記憶素子貼付け装置と非接触記憶素子読取装置と刷版装着警告装置に接続されるとともに、前記製版装置から供給される刷版識別情報を受信して非接触記憶素子貼付け装置に送信し、前記非接触記憶素子読取装置により読み取った刷版識別情報に基づき刷版装着警告装置を作動させる刷版誤装着検出制御装置を設け、
前記刷版を輪転機に装着する際に、刷版に貼付けた非接触記憶素子から読み取った刷版識別情報により前記版胴へ装着する刷版の良否を刷版装着警告装置に表示することを特徴とする刷版誤装着検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載された刷版誤装着検出装置において、前記非接触記憶素子に記憶される刷版識別情報は、前記製版装置による刷版の製版に合わせて前記製版装置から刷版誤装着検出制御装置を介して受信した当該刷版の刷版識別情報であることを特徴とする刷版誤装着検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載された刷版誤装着検出装置において、前記非接触記憶素子に記憶される刷版識別情報は、各刷版毎の刷版識別番号及び紙面情報を含むことを特徴とする刷版誤装着検出装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載された刷版誤装着検出装置において、前記非接触記憶素子に記憶する刷版識別情報は各刷版が識別できる紙面情報を有し、該紙面情報はさらに異なる記事内容であることを示す紙面更新履歴情報を含むことを特徴とする刷版誤装着検出装置。
【請求項5】
請求項1に記載された刷版誤装着検出装置において、前記刷版の版胴装着時に非接触記憶素子の刷版識別情報から求める刷版装着の良否判断は、あらかじめ刷版誤装着検出制御装置に記録された、印刷により作成する輪転機毎の版胴位置別の紙面情報を基準とすることを特徴とする刷版誤装着検出装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−247484(P2010−247484A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101581(P2009−101581)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000153443)株式会社日立情報制御ソリューションズ (359)
【Fターム(参考)】