説明

削孔機

【課題】営業中の鉄道トンネルの覆工背面に存在する空洞を充填材で充填するための注入
孔を短時間で効率的に削孔することのできる削孔機を提供する。
【解決手段】本削孔機1は、既設鉄道トンネル内に敷設された軌道13上を駆動車に牽引
されて走行する台車12の上に、覆工コンクリートを削孔するための設備を備えている。
削孔設備は、先端にビットを有するロッドに回転を加えるドリフター3と、ドリフター3
が前後に移動する際のガイドとなるガイドセル4と、ガイドセル4を支持し、軸方向に伸
縮するとともに鉛直面内で回動するブームと、ブームを支持する旋回部6とから構成され
ている。旋回部6は、水平面内で旋回およびスライドする第一架台6bと、第一架台6b
上に設置され、ブームを鉛直面内で回動可能に支持するトルクアクチュエータ6aから
構成されており、旋回軸受7を介して台車12上に設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は削孔機に関し、特に、既設鉄道トンネルの覆工コンクリートの背面に存在する
空洞を充填材で充填するために覆工コンクリートを削孔する削孔機に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル覆工は、覆工コンクリートと地山を密着させ、均等な荷重が働くようにすると
ともに、地盤反力を十分期待できるものとしなければならない。しかしながら、NATM
が導入される以前に建設されたトンネルは、建設当時の施工法や地質等の理由により、天
端を中心とする覆工の背面に空洞が存在する場合がある。この空洞を放置すると、地震等
の外力を受けた場合、覆工天端部に圧縮破壊や肩部にせん断破壊等が発生し、トンネルの
安定性が損なわれることになる。従って、既設トンネルの安定性を向上させるためには、
このような空洞を充填材で確実に充填することが必要となる。
【0003】
他方、営業中の鉄道トンネル内における補修工事では、深夜の限られた時間帯の中で設
備を素早く設置・撤去し、実作業時間を少しでも長く確保する必要がある。特許文献1で
は、営業中の鉄道トンネルにおけるロックボルト補強工を、電車が通過しない深夜等の短
時間の間に、トンネル内の狭い空間から、効率的に行うことのできるロックボルト打設機
が開示されている。
【特許文献1】特開2005−240517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
営業中の鉄道トンネルの覆工背面に空洞が存在する場合、電車が通過しない深夜等の短
時間の間に、トンネル内の狭い空間から、空洞を充填材で充填するための注入孔を効率的
に削孔しなければならない。
上記事情に鑑み、本発明は、営業中の鉄道トンネルの覆工背面に存在する空洞を充填材
で充填するための注入孔を短時間で効率的に削孔することのできる削孔機を提供すること
を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、既設の鉄道トンネルの覆工コンクリートの背面に
存在する空洞を充填材で充填するために覆工コンクリートを削孔する削孔機であって、先
端にビットを有するロッドに回転を加えるドリフターと、当該ドリフターをガイドするガ
イドセルと、当該ガイドセルを支持し、軸方向に伸縮するとともに鉛直面内で回動するブ
ームと、当該ブームを支持し、水平面内で旋回およびスライドする旋回部と、当該旋回部
に装着された転倒防止用の支持部とを、前記鉄道トンネル内に敷設された軌道上を走行す
る台車上に備えることを特徴とする。
本発明では、覆工コンクリートを削孔するための設備が、鉄道トンネル内に敷設された
軌道上を走行する台車上に備えられている。そのため、鉄道トンネル内の軌道を利用して
、削孔機が移動でき、営業中の鉄道トンネルにおける削孔作業を、電車が通過しない深夜
等の短時間の間に、トンネル内の狭い空間から、効率的に行うことができる。しかも、削
孔機が上り側の軌道上あるいは下り側の軌道上いずれにあっても、旋回部を旋回およびス
ライドさせた後、ブームを回動および伸縮させることにより、トンネル全周面の覆工コン
クリートに対して削孔作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る削孔機では、覆工コンクリートを削孔するための設備が、鉄道トンネル内
に敷設された軌道上を走行する台車上に備えられている。そのため、鉄道トンネル内の軌
道を利用して、削孔機が移動でき、営業中の鉄道トンネルにおける削孔作業を、電車が通
過しない深夜等の短時間の間に、トンネル内の狭い空間から、効率的に行うことができる

【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1に本発明に係る削孔機の側面図を、また図2に同削孔機の平面図をそれぞれ示す。
本削孔機1は、既設鉄道トンネル内に敷設された軌道13上を、図示しない駆動車に牽
引されて走行する台車12の上に、覆工コンクリートを削孔するための設備を備えている

【0008】
削孔設備は、先端にビットを有するロッド2に回転を加えるドリフター3と、ドリフタ
ー3が前後に移動する際のガイドとなるガイドセル4と、ガイドセル4を支持し、軸方向
に伸縮するとともに鉛直面内で回動するブーム5と、ブーム5を支持する旋回部6とから
構成されている。
【0009】
旋回部6は、水平面内で旋回およびスライドする第一架台6bと、第一架台6b上に設
置され、ブーム5を鉛直面内で回動可能に支持するトルクアクチュエータ6aから構成さ
れており、旋回軸受7を介して台車12上に設置されている。また、第一架台6b上には
、穿孔水を供給するための水ポンプ17や、削孔機1を操縦するためのコントロールスタ
ンド10などが設置されている。
【0010】
第一架台6bの端部には、削孔作業中の転倒を防止するために、不使用時には水平に折
り畳むことのできる折畳み式ジャッキ(支持部)11が装着されている。
【0011】
また、台車12上には、台車12の進行方向およびその逆方向にスライド可能な第二架
台16が設けられており、バスケットブーム9および発電機15が第二架台16上に設置
されている。バスケットブーム9は水平旋回および伏仰・伸縮自在とされ、その先端には
作業員を乗せるためのバスケット8が取り付けられている。
【0012】
図3は本削孔機1の削孔範囲を示したものである。
同図より明らかなように、本削孔機1によれば、削孔機1が上り側の軌道13上あるい
は下り側の軌道13上いずれにあっても、旋回部6を旋回およびスライドさせた後、ブー
ム5を回動および伸縮させることにより、トンネル全周面の覆工コンクリート14に対し
て削孔作業を行うことができる。
【0013】
次に、既設鉄道トンネルの覆工コンクリートの天端中央部に注入孔を形成する作業手順
について説明する。
削孔機1は、鉄道トンネル内を、図示しない駆動車に牽引されて削孔地点まで軌道13
上を走行する。所定の地点に到達すると停止し、第一架台6bを水平面内で旋回させるた
めに、第二架台16を後方へスライドさせるとともに、バスケットブーム9を上昇させる

そして、第一架台6bを水平面内で90度旋回させた後、削孔機1の転倒を防止するた
めに、折畳み式ジャッキ11を垂直にして地面に接地させる。
その後、トルクアクチュエータ6aの回転軸が削孔位置の下方に来るように第一架台6
bを水平方向にスライドさせた後、ブーム5を鉛直面内で90度回動させて垂直に立て、
さらにブーム5を上方に伸ばしてロッド2の先端部を削孔位置へセットする。この際、ガ
イドセル4と覆工面が略直角になるように、ガイドセル4をしっかり固定する。
そして、ロッド2にドリフター3で回転と打撃を加えると同時に、水ポンプ17から送
水ホース(図示省略)を経て圧送される穿孔水をロッド2先端のビットから噴射しながら
覆工コンクリート14を削孔し、充填材を注入するための注入孔を形成する。
覆工コンクリート14に注入孔が形成されると、ブーム5を縮め、第一架台6bを元の
位置へスライドさせた後、ブーム5を鉛直面内で90度回動させて水平にする。
【0014】
次いで、バスケットブーム9を動かして、作業員の乗ったバスケット8を注入孔の位置
まで移動させ、作業員の手作業により、充填材を注入するための注入管(図示省略)を注
入孔に取り付ける。
その後、バスケットブーム9を後退させ、折畳み式ジャッキ11を収納した後、第一架
台6bを元の位置まで旋回させる。そして、バスケットブーム9を降下させ所定の位置に
収納した後、第二架台16を元の位置までスライドさせる。
【0015】
なお、充填材としては、セメント、ベントナイト、特殊吸水性ポリマー、急結剤、およ
び水からなる混合材料を使用する(特許第3447529号、特許第3447530号参
照)。この充填材の主な特徴を以下に示しておく。
1.限定注入に適した揺変性を有している。
2.水に対する材料分離抵抗性が大きく、均一な品質が確保できる。
3.充填材料として充分な強度を有している。
なお、揺変性(チキソトロピック)とは、物質が静止状態では粘性が高くて形状が変化
しないが、加圧したり揺らすと粘性が低くなり流動性を示す性質のことである。
【0016】
本削孔機1では、覆工コンクリートを削孔するための設備が、鉄道トンネル内に敷設さ
れた軌道13上を走行する台車12上に備えられている。そのため、鉄道トンネル内の軌
道13を利用して、削孔機1が移動でき、営業中の鉄道トンネルにおける削孔作業を、電
車が通過しない深夜等の短時間の間に、トンネル内の狭い空間から、効率的に行うことが
できる。
また、削孔設備がシンプルな機構とされているため、従来の削孔機に比べて軽量化を図
ることができる。
【0017】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるも
のではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記の実施形態
では、覆工コンクリートの天端中央部に注入孔を形成する作業手順について説明したが、
覆工コンクリートの他の位置に注入孔を形成する場合も同様の手順で形成できることは言
うまでもない。ただし、ブームの回転角度は90度に限定する必要はなく、注入孔の位置
によって変えればよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る削孔機の側面図である。
【図2】本発明に係る削孔機の平面図である。
【図3】本発明に係る削孔機の削孔範囲を示す図である。
【符号の説明】
【0019】
1 削孔機
2 ロッド
3 ドリフター
4 ガイドセル
5 ブーム
6 旋回部
6a トルクアクチュエータ
6b 第一架台
7 旋回軸受
8 バスケット
9 バスケットブーム
10 コントロールスタンド
11 折畳み式ジャッキ(支持部)
12 台車
13 軌道
14 覆工コンクリート
15 発電機
16 第二架台
17 水ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設鉄道トンネルの覆工コンクリートの背面に存在する空洞を充填材で充填するために
覆工コンクリートを削孔する削孔機であって、
先端にビットを有するロッドに回転を加えるドリフターと、当該ドリフターをガイドす
るガイドセルと、当該ガイドセルを支持し、軸方向に伸縮するとともに鉛直面内で回動す
るブームと、当該ブームを支持し、水平面内で旋回およびスライドする旋回部と、当該旋
回部に装着された転倒防止用の支持部とを、前記鉄道トンネル内に敷設された軌道上を走
行する台車上に備えることを特徴とする削孔機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−262651(P2007−262651A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−84872(P2006−84872)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(593106860)株式会社昭和技興 (1)
【Fターム(参考)】