削孔装置
【課題】ケーシング等の設備の小型化を図るとともに、先行削孔としての口径を維持しながら掘削量および排土量を少なくして、経済性に優れた削孔装置を提供する。
【解決手段】硬質地盤の掘削に先立ってそれよりの軟質の土質地盤に置換する先行削孔工法に好適な削孔装置である。外周に螺旋状の破砕・切削翼8を備えたケーシングチューブ3を旋回させながら地中に圧入して、ケーシング3内部の土をハンマーグラブ14にて掘削・排土しながら所定深度まで削孔する。同時に、ケーシング3とともに旋回する破砕・切削翼8によりケーシング3の外周側の土を所定深度まで砕土化ほぐし処理を施して軟質原土層Gとする。その後、ケーシング3の内部に置換土Mを投入しながらケーシングチューブ3を逆転旋回させて引き抜く。
【解決手段】硬質地盤の掘削に先立ってそれよりの軟質の土質地盤に置換する先行削孔工法に好適な削孔装置である。外周に螺旋状の破砕・切削翼8を備えたケーシングチューブ3を旋回させながら地中に圧入して、ケーシング3内部の土をハンマーグラブ14にて掘削・排土しながら所定深度まで削孔する。同時に、ケーシング3とともに旋回する破砕・切削翼8によりケーシング3の外周側の土を所定深度まで砕土化ほぐし処理を施して軟質原土層Gとする。その後、ケーシング3の内部に置換土Mを投入しながらケーシングチューブ3を逆転旋回させて引き抜く。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質地盤の掘削に先立ってそれよりの軟質の土質地盤に置換する先行削孔工法に好適な削孔装置に関し、例えば鋼製セグメント圧入工法等による圧入ケーソンの構築に先立って、ケーソン刃先抵抗を軽減するために小径で且つ多数の削孔をもって軟質の砂地盤に置換する際に用いられる削孔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として、例えば非特許文献1に記載のように、全旋回式のケーシング削孔機にて削孔しながらケーシング(ケーシングチューブとも言う)内部の土をハンマーグラブ等にて掘削・排土し、所定深度に達したならばケーシング内に山砂等を投入しながらそのケーシングを引き抜くことにより砂地盤に置き換えるようにしたいわゆる砂置換先行削孔工法が知られている。なお、かかる先行削孔は、構築すべきケーソンの径に内接もしくは交差するように同心円上の複数箇所に所定のピッチで施工することになる。
【非特許文献1】山口、外1名、「市街地における狭隘な用地での大規模立坑の施工」、土木施工、株式会社山海堂、平成12年10月1日、第41巻、第13号、通巻533号、p.8−15
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
非特許文献1に代表されるような従来の技術では、ケーシングの口径寸法が掘削された孔径にほかならないから、相対的にケーシングとして大口径のものが、旋回駆動装置として能力の大きなものがそれぞれ必要とされるほか、ケーシング内の全ての土を掘削する必要があるためにハンマーグラブとして大容量のものが、それを支持するクレーンとして能力の大きなものがそれぞれ必要となり、全体としてコストアップが余儀なくされる。
【0004】
また、先に述べたようにケーシングの口径寸法が掘削された孔径にほかならないことから、掘削量とともに排土量が多くなり、周囲に及ぼす環境悪化が危惧される。
【0005】
加えて、全旋回式のケーシング掘削機では、そのケーシングのサイズ(ケーシング径)として1500mm、2000mmおよび3000mmの三種類のものが一般的によく使われている。ところが、削孔径がケーシング径に制約される故に、例えば一定サイズのケーソンの構築に先立つ先行削孔では、相対的に径の小さなケーシングにて削孔した場合には削孔数が多くなり、先行削孔に要する工数の増加とともにコストアップが余儀なくされる。逆に相対的に径の大きなケーシングにて削孔した場合には削孔数は少なくなるものの、置換土量が必要以上に多くなり、上記と同様に先行削孔に要する工数の増加とともに置換土のコストアップが余儀なくされ、いずれの場合にも不経済なものとなっていた。
【0006】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、とりわけケーシングをはじめとする付帯設備それぞれの小型化を図るとともに、先行削孔としての孔径を維持しながら掘削量および排土量を少なくして、経済性に優れ、しかも周囲の環境への影響を最小限にとどめることができる削孔装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、円筒状のケーシングを旋回させながら地中に圧入するとともに、それと並行してケーシング内部の土を掘削・排土することで所定深度まで削孔する装置として、ケーシングの下部外周にケーシング外周側の土を破砕・切削するための翼を設けたことを特徴とする。
【0008】
この削孔装置は、多くの場合に硬質地盤の掘削に先立ってそれよりの軟質の土質地盤に置換するべく先行削孔するための装置として使用される。
【0009】
翼のより具体的な構造としては、翼そのものの交換容易性を考慮して、請求項2に記載のように、ケーシングの旋回,圧入に伴いケーシングの外周側の土を破砕・切削して砕土化しつつほぐすための翼の全部または一部をケーシングに対して着脱可能に装着することが望ましい。
【0010】
また、上記以外にも翼またはケーシングに関して、下記(a)〜(g)の条件のなかから単一または複数のものを選択して付加することももちろん可能である。
【0011】
(a)翼はケーシングの円周方向において単一または複数枚のものとして形成すること。
【0012】
(b)翼を螺旋状のものとして形成すること。
【0013】
(c)ケーシングの外周面における翼の総周長をケーシングの円周の1/3以上に設定すること。
【0014】
(d)翼の少なくとも旋回方向先端側にそれぞれカッタービットを装着すること。
【0015】
(e)翼を内周翼とその内周翼の外周側に張り出す外周翼とから構成し、内周翼に対して外周翼を着脱可能とすること。
【0016】
(f)ケーシング外周の翼に加えて、ケーシングの内周にも翼を設けること。
【0017】
(g)ケーシング内周に設けた翼をケーシングに対して着脱可能なものとすること。
【0018】
(h)ケーシングは正逆転可能とすること。
【0019】
(i)ケーシングの先端にカッタービットを装着すること。
【0020】
(j)ケーシングの外周に設けた翼の近傍に、ケーシングの内外を連通させる通水孔を1個以上設けること。
【0021】
(k)ケーシングは全旋回式のケーシング削孔機にて旋回駆動されるものであること。
【0022】
特に、上記翼本来の効果を十二分に得るためには、請求項7に記載のように、カッタービットの一部が翼の外周側に突出していて、ケーシングの外径をD1、ケーシングの旋回に伴いカッタービットが描く軌跡円の最大直径をD2としたとき、D2をD1の1.1倍以上に設定することが望ましい。
【0023】
同様に、請求項8に記載のように、ケーシングの旋回に伴いカッタービットが描く軌跡円の最大直径をD2、同じくケーシングの旋回に伴い翼が描く軌跡円の最大直径をD3としたとき、D2≧D3となるように設定することが望ましい。
【0024】
したがって、本発明の削孔装置を例えば先に述べたように硬質地盤の掘削に先立ってそれよりの軟質の土質地盤に置換する先行削孔工法に用いた場合、下部外周に翼を備えた円筒状のケーシングを旋回させながら地中に圧入して、ケーシング内部の土を掘削・排土しながら所定深度まで削孔し、その掘削・排土処理と並行して、ケーシングとともに旋回する翼によりケーシングの外周側の土を所定深度まで破砕・切削して砕土化しつつほぐした上で、最後にケーシングの内部に置換土を投入してケーシングを旋回させながら引き抜くことになる。
【0025】
この場合には、先に述べたように翼が螺旋状であることが好都合であり、ケーシングを地中に圧入する際の旋回を正転動作とし、ケーシングを引き抜く際の旋回を逆転動作とする。その結果として、ケーシングに翼を装着してあるが故に、ケーシング内部の掘削・排土処理とケーシング外周側の土の砕土化ほぐし処理とが並行して行われことになり、最終的にはケーシング内部が砂等の置換土に置き換えられる一方で、ケーシング外周側にて一旦砕土化ほぐし処理が施された土は排土されることなくそのまま残されることになる。そして、置換土とケーシングの外周側にて一旦砕土化ほぐし処理が施された土との総和をもって、すなわち翼の直径に相当する削孔径をもって当初よりも軟質の地盤と化することになる。
【0026】
このことは、軟質地盤と化した翼の直径に相当する円筒状の地盤に対してケーシングそのものの直径は置換土相当部の直径があれば足りることを意味し、従来よりも相対的に径の小さなケーシングで済むことになるほか、必然的に排土量も少なくて済むことになる。また、ケーシングを引き抜く際に、翼付きのそのケーシングを逆転旋回させれば、少なくともケーシング外周側にて一旦砕土化ほぐし処理が施された土の翼による転圧もしくは締め固め効果も期待できるようになる。
【発明の効果】
【0027】
請求項1,2に記載の発明によれば、ケーシングの下部外周に翼を設けたことにより、小径のケーシングによる削孔で大径の削孔を行った場合と同等の効果が得られることから、ケーシングをはじめとする付帯設備としては小型のもので所期の目的を達成することができ、コストダウンを図ることができて経済的な施工が行える。
【0028】
また、ケーシングが小さくなることによって掘削・排土量のほか必要とされる置換土の量も少なくなるため、コストダウンを図ることができるとともに、周囲の環境への影響を最小限におさえることができ、一段と経済的な施工を行える。
【0029】
請求項3に記載の発明によれば、着脱可能とした翼を任意のサイズのものと交換することにより、ケーシングはそのままで任意の孔径の削孔に容易に対応でき、設備としての汎用性に優れる効果がある。
【0030】
さらに、請求項4,12に記載の発明のように、翼を螺旋状のものとした上でケーシングの引き抜きの際に当該ケーシングを逆転旋回させることにより、ケーシング外周側にて一旦砕土化ほぐし処理が施された土の翼による転圧もしくは締め固め効果が期待できるため、後処理としての転圧もしくは締め固めを必要としない利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1〜8は本発明のより具体的な実施の形態を示す図であり、特に図1は先に例示した先行削孔工法の施工に必要とされる設備全体の概略説明図を、図2〜4は図1の要部拡大図をそれぞれ示し、さらに図5〜8は施工の手順の詳細を示している。
【0032】
図1に示すように、先行削孔のための設備として、全旋回式オールケーシング削孔機(以下、単に「削孔機」という)1とクローラクレーン(以下、単に「クレーン」という)2が用意される。
【0033】
削孔機1は所定直径のケーシングたる円筒状のケーシングチューブ3を主要素とするもので、周知のようにそのケーシングチューブ3は油圧式の駆動装置4に内挿されているとともに、ケーシングチューブ3の先端には図2の(A)に示すように複数のカッタービット5を装着してある。そして、ケーシングチューブ3は駆動装置4にて旋回駆動されながら同時に地中への圧入推力が付与されて削孔に供される。なお、ケーシングチューブ3は駆動装置4による正転と逆転が可能となっている。また、ケーシングチューブ3は施工の途中で必要に応じて何回かチューブピースが継ぎ足されて、最終的に所定深度まで圧入される。
【0034】
ここで、図2,3に示すように、ケーシングチューブ3の先端(下端)には同直径のエクステンションチューブ6を複数のボルト穴7,7‥に対応する図示外のボルト・ナットにて着脱可能に連結してある。そして、エクステンションチューブ6の先端部(下端部)外周には、そのほぼ全周にわたり螺旋状の単一の破砕・切削翼8を装着してあるとともに、破砕・切削翼8の旋回方向先端側には複数のカッタービット9を装着してある。
【0035】
より詳しくは、図3,4に示すようにエクステンションチューブ6の外周にはそのほぼ全周にわたり破砕・切削翼8の螺旋形状に沿うかたちで翼取付フランジ10を予め溶接等にて固定してあり、この翼取付フランジ10に対して破砕・切削翼8を複数のボルト・ナット11をもって着脱可能に装着してある。そして、ケーシングチューブ3の時計回り方向の旋回を正転、反時計回り方向の旋回を逆転とした場合に、ケーシングチューブ3の正転時に破砕・切削翼8が積極的に土中に食い込むように予めその破砕・切削翼8における螺旋形状の捻れ角が考慮されているとともに、破砕・切削翼8の正転方向での先端側には先に述べたように複数のカッタービット9を装着してある。
【0036】
したがって、上記のようにケーシングチューブ3が正転方向に旋回駆動されながら地中に圧入されることで、ケーシングチューブ3内に入り込む土を周囲の土から切り離すような削孔処理と、ケーシングチューブ3の外周の破砕・切削翼8にてそのケーシングチューブ3の周囲の土を定位置にて破砕・切削処理により切断破砕して砕土化しつつほぐすことになる砕土化ほぐし処理とが並行して行われることになる。
【0037】
なお、破砕・切削翼8は、上記のようにケーシングチューブ3の外側の土の砕土化ほぐし処理を目的として付加されたものであるから、その破砕・切削翼8の直径(ケーシングチューブ3の旋回に伴い破砕・切削翼8が描く軌跡円の最大直径)D3は仕事効率を考慮すればケーシングチューブ3の直径D1の1.1倍以上に設定することが望ましい(ただし、最も外側に位置するカッタービット9の外周面は破砕・切削翼8の外周面と面一であって、ケーシングチューブ3の旋回に伴いカッタービット9が描く軌跡円の最大直径は破砕・切削翼8の直径と等しいものとする)。また、直径が1500mm〜3000mm程度の標準的なケーシングチューブ3を想定した場合、破砕・切削翼8の取付位置は図3に示すようにエクステンションチューブ6の下端からの距離bとしてb=100〜1000mm程度、望ましくは300〜700mm程度の位置とするのが望ましい。
【0038】
図1に示したクレーン2はそのジブ12の先端から垂下したロープ13にハンマーグラブ14を吊り下げ支持しており、後述するようにケーシングチューブ3内への投下と吊り上げとを繰り返して、ケーシングチューブ3内の土の掘削と排土処理を行うことになる。同時に、ハンマーグラブ14は削孔された孔Hへの置換土の投入作業をも司っている。
【0039】
施工の手順としては、図5の(A)に示すように、ケーシングチューブ3の真上にハンマーグラブ14を待機させた状態で、駆動装置4により破砕・切削翼8付きのケーシングチューブ3に正転による旋回と圧入推力とを与えて削孔を開始する。
【0040】
すなわち、図5の(A)に示すように、ケーシングチューブ3が徐々に地中に圧入されると、ケーシングチューブ3の内径に相当する部分の現土が周りの土から切り取られるようにしてケーシングチューブ3の内部に入り込む一方、ケーシングチューブ3の外周側では破砕・切削翼8によって定位置にて先に述べた砕土化ほぐし処理が並行して行われて軟質原土層Gと化しながら削孔が進行する。
【0041】
さらに、上記のような削孔時にハンマーグラブ14を併用し、同図(B)に示すように、ケーシングチューブ3内へのハンマーグラブ14の投下とその引き上げを繰り返すことで、ケーシングチューブ3内の原土の掘削と排土処理とが行われる。なお、ケーシングチューブ3の外周側では先に述べた破砕・切削翼8による原土の砕土化ほぐし処理が施されても、その原土が排土されることはない。
【0042】
ケーシングチューブ3が所定深度まで圧入されて且つそのケーシングチューブ3の内部の原土が排土されることにより削孔が完了した状態を図6(A)に示す。この状態では、駆動装置4によるケーシングチューブ3への旋回力および圧入推力の付与が一旦中断されるとともに、先に述べたように原土のうちケーシングチューブ3の外周側であって且つ破砕・切削翼8よりも上方では、その破砕・切削翼8が通過したことによって砕土化ほぐし処理が施されて軟質原土層Gとなっている。なお、図5の(A)の状態から図6の(A)の状態に移行するまでの間に、必要に応じて何回かのチューブピースの継ぎ足しが行われる。
【0043】
ケーシングチューブ3の直径に等しい削孔が完了したならば、同図(B)のほか図7の(A),(B)に示すように、ハンマーグラブ14を使ってケーシングチューブ3の内部に置換土Mとして山砂等の購入土を投入して、ケーシングチューブ3内の底部、ひいては掘削された孔Hの孔底側から順に埋め戻す。この場合、先にケーシングチューブ3内の掘削時に排土した土に砂質土が含まれている場合にはその砂質土のみを購入土とともに再利用することもある。
【0044】
上記のようにケーシングチューブ3内の底部に所定量の置換土Mが投入されたならば、図7の(B)に示すように、ケーシングチューブ3を逆転旋回動作させながら、置換土Mにて埋め戻された分だけケーシングチューブ3を引き上げる。この場合、ケーシングチューブ3とともに破砕・切削翼8が逆転動作することにより、一旦は破砕・切削翼8にて砕土化ほぐし処理が施された軟質原土層G、すなわちケーシングチューブ3の周囲の軟質原土層Gの転圧もしくは締め固め効果が期待できる。
【0045】
そして、このような所定量の置換土Mの投入による孔Hの埋め戻しとケーシングチューブ3の逆転による引き抜きとを交互に繰り返すことにより、図8の(A)に示すように孔Hの埋め戻し深さを漸次大きくする。
【0046】
この後、図8の(B)に示すように、一旦はケーシングチューブ3にて掘削された孔Hが全て置換土Mで埋め戻されたならば、地上に引き抜かれたケーシングチューブ3とともに駆動装置4を撤去し、これをもっていわゆる砂置換を目的とした先行削孔が完了する。すなわち、一旦はケーシングチューブ3にて掘削された孔Hが原土に代わる山砂等の置換土Mで置換されるとともに、置換土Mの周囲は原土のままでありながらも、破砕・切削翼8による砕土化ほぐし処理と転圧もしくは締め固め効果によって従前よりも軟質ないわゆるN値の小さな軟質原土層Gと化し、この軟質原土層Gも実質的に置換土Mと同等の機能を発揮することになり、結果的には破砕・切削翼8の直径と同等の削孔径をもって削孔した上で砂置換した場合と同等の状態となる。
【0047】
このように本実施の形態によれば、置換土Mのほかその置換土Mの周囲の軟質原土層Gも実質的に置換土Mと同等の機能を発揮することから、ケーシングチューブ3にて削孔する孔Hの径およびケーシングチューブ3の直径は従来のものより著しく小さくて済むほか、そのケーシングチューブ3を駆動する駆動装置4も小型のもので十分に対応できることになる。
【0048】
その上、ケーシングチューブ3そのものの直径が小さくて済むことは排土量も少ないことを意味し、周囲環境に及ぼす影響を最小限に抑えつつ、ハンマーグラブ14やクレーン2も小型のもので十分に対応できることになり、きわめて経済的な施工を行える。
【0049】
ここで、上記の実施の形態では、ケーシングチューブ3に対して着脱可能に連結したエクステンションチューブ6にさらに破砕・切削翼8を着脱可能に装着しているが、必要に応じてエクステンションチューブ6を廃止して破砕・切削翼8を直接ケーシングチューブ3に着脱可能に装着してもよく、さらに破砕・切削翼8をケーシングチューブ3もしくはエクステンションチューブ6に対して着脱不能に固定するようにしてもよい。
【0050】
また、図2,3に示すように、エクステンションチューブ6の外周に設けた破砕・切削翼8の近傍、特に破砕・切削翼8の上下であって且つエクステンションチューブ6の直径方向でほぼ正対する位置にエクステンションチューブ6の内外を連通させる複数の通水孔35を形成することが、破砕・切削翼8による破砕・切削時の抵抗を低減する上で望ましい。これはエクステンションチューブ6の内外に自然泥水が存在する場合に、破砕・切削翼8が押しのけようとする自然泥水と破砕・切削翼8の背面側に存在する自然泥水を上記通水孔35を通してそれぞれエクステンションチューブ6の内外で積極的に出入りさせることにより、エクステンションチューブ6の外周側の自然泥水を破砕・切削翼8にてひたすら押しのけようとする場合に比べてその抵抗を低減することができるためである。
【0051】
さらに、破砕・切削翼8は必ずしも図2,3に示したような一枚構成のものである必要はなく、例えば図9〜11に示すようにエクステンションチューブ6(ケーシングチューブ3)の円周方向において2〜4枚構成の螺旋状の破砕・切削翼8,8‥の組み合わせとしてもよい。
【0052】
この場合において、例えば図11の破砕・切削翼8の構造を基本とした上で、図12の(A),(B)に示すように破砕・切削翼8の旋回方向先端に設けたカッタービット9のうち破砕・切削翼8の最も外周側に位置するものを破砕・切削翼8の外周面よりも所定量αだけ突出させて、ケーシングチューブ3の旋回に伴いカッタービット9が描く軌跡円の最大直径(削孔径)D2を破砕・切削翼8そのものの直径(ケーシングチューブ3の旋回に伴い破砕・切削翼8が描く軌跡円の最大直径)D3よりも大きくなるようにD2>D3の関係とすることが破砕・切削抵抗を減ずる上で望ましい。
【0053】
その上で、図13,14に示すように、ケーシングチューブ3およびエクステンションチューブ6の直径φを一定としたままで破砕・切削翼8(ここでは、先に図9に基づいて説明した二枚構成の破砕・切削翼8の例を示してある)をその外径寸法の異なるものと積極的に交換することにより、異なる削孔径Dのもとでの先行削孔にも容易に対応することが可能となる。例えば、図13,14共にケーシングチューブ3およびエクステンションチューブ6の直径φを1500mmとする一方、そのエクステンションチューブ6に対し着脱可能な破砕・切削翼8として図13の(A),(B)に示すような外径寸法が2000mm(=削孔径D)のものと、図14の(A),(B)に示すような外径寸法が2500mm(=削孔径D)のものとを予め用意しておき、それらを適宜交換するだけで二種類の削孔径の先行削孔に対応することが可能となる。
【0054】
図15〜17には本発明の第2の実施の形態を示し、先の実施の形態と共通する部分には同一符号を付してある。
【0055】
この第2の実施の形態では、破砕・切削翼15をエクステンションチューブ6のほぼ全周にわたって配置された内周翼16とそれとは別の外周翼17とで構成し、内周翼16に対して局部的に外周翼17を着脱可能に装着したものである。
【0056】
より詳しくは、エクステンションチューブ6の外周ほぼ全周にわたり二枚の螺旋状の内周翼16を溶接等にて固定してある。そして、それぞれの内周翼16の旋回方向先端部側は外周翼17の取付フランジ部として機能させるべく斜めに配置されてはいてもそれ自体では捻れ角を有しない単純平板状の取付プレート19をもって構成してあり、その取付プレート19の旋回方向先端には複数のカッタービット20を溶接等にて固定してある。
【0057】
他方、外周翼17は翼本体21の上下両面に当て板22をオフセットさせて配置した上で溶接等にて固定して、双方の当て板22,22同士の間に翼本体21の板厚に相当するスロット23を形成したものであり、このスロット23は先に述べた内周翼16側の取付プレート19を受容し得る大きさに設定してある。また、この外周翼17の旋回方向先端側には複数のカッタービット24を溶接等にて固定してある。そして、図16に示すように、内周翼16の取付プレート19に対して外周翼17のスロット23を挿入した上で、外周翼17側の上下の当て板22と内周翼16側の取付プレート19とを複数のボルト,ナット25にて着脱可能に共締め固定してある。なお、図6ではエクステンションチューブ6そのものの先端のカッタービット5は図示省略してある。また、通水孔35は各外周翼17ごとにその外周翼17の上下二箇所に形成してある。
【0058】
この第2の実施の形態によれば、先の実施の形態と同様の効果が得られるほか、内周翼16を共通して使用することを前提とした上で、外周翼17のみ翼長eの異なるものを予め複数種類用意しておいて、必要に応じて外周翼17のみを翼長eの異なるものと交換することにより、破砕・切削翼15による破砕・切削径の変更に容易に対応できる利点がある。
【0059】
また、破砕・切削翼8または15が図2,3のように一枚構成であるか図9〜12および図15のように複数枚構成であるかにかかわらず、図18に示すようにエクステンションチューブ6の円周方向での破砕・切削翼8または15の総周長Lをエクステンションチューブ6(ケーシングチューブ3)の円周の50%以上とすることが仕事量もしくは作業効率確保の上で望ましい。つまり、図9〜12および図15に示したような複数枚構成の破砕・切削翼8または15の場合、隣接する破砕・切削翼8,8同士または15,15同士の間の欠損部分は破砕・切削翼8または15としての仕事量に貢献しないことから、図18に示したようにそれらの欠損部分を除いた破砕・切削翼8または15の総周長Lがケーシングチューブ6の円周の50%以上とすることが望ましい。
【0060】
特に、図15〜17に示した第2の実施の形態では、内周翼16とともに破砕・切削翼15を構成している外周翼17の周長が角度βにして60°であるとすると、エクステンションチューブ6に対する内周翼16の周長Lはほぼ100%であり、その内周翼16に対する外周翼17の周長が1/3であることから、エクステンションチューブ6に対する破砕・切削翼15の総周長Lを一段と大きく確保できる利点がある。
【0061】
図19,20は本発明の第3の実施の形態を示し、先に図15〜17に示した第2の実施の形態と共通する部分には同一符号を付してある。
【0062】
この第3の実施の形態では、破砕・切削翼15が内周翼16と外周翼17とで構成されている点では第2の実施の形態と同一であるものの、内周翼16を円周方向で相互に独立した3枚構成のものとする一方、それらの各内周翼16に対して個別に外周翼17を着脱可能に装着したものである。この第3の実施の形態においても第2の実施の形態のものと同様の効果が得られることになる。
【0063】
図21は本発明の第4の実施の形態を示し、この第4の実施の形態では図15〜17の外周翼17に相当する単板状の一対の破砕・切削翼26をエクステンションチューブ6に対して着脱可能もしくは着脱不能に直接的に固定するようにしたものである。なお、破砕・切削翼26の周長は角度βにして60°であり、エクステンションチューブ6に対する破砕・切削翼16の総周長Lは1/3となる。
【0064】
図22には、破砕・切削翼8を有しない従来のケーシングチューブと上記実施の形態の一枚構成の破砕・切削翼8付きのケーシングチューブ3とで削孔土量(排土量)を比較した結果を示す。ただし、図2〜4に示した翼取付フランジ10は図示省略してある。
【0065】
同図は砂置換の深さ1m当たりで比較したものであり、従来のケーシングチューブの場合にはケーシングチューブの直径φをφ=削孔径Dとして例えば2000mmに設定してあり、削孔土量Q1=排土量Q2で共に3.14m3となる。一方、上記実施の形態の破砕・切削翼8付きのケーシングチューブ3の場合にはその直径φを従来例と同じ1500mmに設定するも、削孔径Dに等しい破砕・切削翼8の直径としては、先に述べた「ケーシングチューブ3の直径φの1.1倍以上」という条件を満たすために、D=φ×1.33として破砕・切削翼8の直径および削孔径Dを2000mmに設定してあり、削孔土量Q1は従来のものと同じ3.14m3となるものの、排土量Q2は1.77m3と大幅に少なくなる。つまり、先行削孔による砂置換に必要な排土量Q1をもって両者を比較すれば、従来のケーシングチューブの場合の排土量Q1を1.0とした場合に、上記実施の形態での破砕・切削翼8付きのケーシングチューブ3の場合には0.56となり、先行削孔時の排土量Q2ひいては置換土量を大幅に削減することが可能となる。
【0066】
同様に図23は破砕・切削翼8を有しない従来のケーシングチューブと上記実施の形態の一枚構成の破砕・切削翼8付きのケーシングチューブ3とで削孔面積を比較した結果を示す。
【0067】
同図はケーシングチューブ3の直径φを共に1500mmで統一した場合の例であり、従来のケーシングチューブの場合にはケーシングチューブの直径φ=削孔径Dであるが故に、削孔面積Sは1.77m2となる。一方、上記実施の形態の破砕・切削翼8付きのケーシングチューブ3の場合には、破砕・切削翼8の直径に等しい削孔径Dとして先に述べた「ケーシングチューブ3の直径φの1.1倍以上」という条件を満たすために、D=φ×1.1として破砕・切削翼8の直径および削孔径Dを共に1650mmに設定してあり、その削孔面積Sは2.14m2となる。つまり、先行削孔時の削孔面積Sをもって両者を比較すれば、従来のケーシングチューブの場合の削孔面積Sを1.0とした場合に、上記実施の形態での破砕・切削翼8付きのケーシングチューブ3の場合には1.21となり、ケーシングチューブ3の直径φが同じであっても先行削孔時の仕事量である削孔面積Sを大幅に増大させることが可能となる。
【0068】
図24,25は本発明の第5の実施の形態を示し、先の第1の実施の形態と共通する部分には同一符号を付してある。
【0069】
この実施の形態では、エクステンションチューブ6の外周に着脱可能に装着した破砕・切削翼8とは別に、エクステンションチューブ6の先端内周側にもカッタービット18a付きの内面破砕・切削翼18を放射状に且つ着脱可能に装着したものである。もちろん、内面破砕・切削翼18は着脱不能に固定する構造としてもよい。
【0070】
この内面破砕・切削翼18の配置は、図25のように平面視にていわゆる横一文字の配置のほか、必要に応じて図26のような十字状の配置、あるいは図27のようなY字状の配置としてもよい。
【0071】
このようにエクステンションチューブ6の内周側にも内面破砕・切削翼18を装着することにより、ケーシングチューブ3の内側における土の掘削・排土効率が飛躍的に向上するようになる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係る削孔装置を用いた先行削孔工法における削孔設備全体の概略構造を示す説明図。
【図2】図1に示すケーシングチューブの詳細を示す図で、(A)はその要部拡大正面図、(B)は同図(A)の平面図。
【図3】図2の(A)に示すケーシングチューブの分解説明図。
【図4】図3のa部拡大断面図。
【図5】(A),(B)共に先行削孔工法の施工手順の詳細を示す工程説明図。
【図6】(A),(B)共に図5に続く先行削孔工法の施工手順の詳細を示す工程説明図。
【図7】(A),(B)共に図6に続く先行削孔工法の施工手順の詳細を示す工程説明図。
【図8】(A),(B)共に図7に続く先行削孔工法の施工手順の詳細を示す工程説明図。
【図9】図2の(B)に示した破砕・切削翼の変形例を示す平面説明図。
【図10】図2の(B)に示した破砕・切削翼の別の変形例を示す平面説明図。
【図11】図2の(B)に示した破砕・切削翼のさらなる別の変形例を示す平面説明図。
【図12】(A)は図11に示した破砕・切削翼の変形例を示す平面説明図、(B)は同図(A)のa部拡大説明図。
【図13】図2の構造を基本としてケーシングチューブの直径を一定とした上で、破砕・切削翼の直径を相対的に小さくした場合の説明図。
【図14】図2の構造を基本としてケーシングチューブの直径を一定とした上で、破砕・切削翼の直径を図13に比べて相対的に大きくした場合の説明図。
【図15】本発明の第2の実施の形態を示すケーシングチューブの平面図。
【図16】(A)は図15の分解説明図、(B)は同図(A)におけるエクステンションチューブの正面図。
【図17】図16の(B)のb−b線に沿う拡大断面図。
【図18】図9〜12に示した破砕・切削翼のケーシングチューブの円周に対する周長の平面説明図。
【図19】(A)は本発明の第3の実施の形態を示すケーシングチューブの平面図、(B)は同図(A)の正面図。
【図20】図19の(A)の分解説明図。
【図21】(A)は本発明の第4の実施の形態を示すケーシングチューブの平面図、(B)は同図(A)におけるエクステンションチューブの正面図。
【図22】図2の構造を基本として破砕・切削翼がある場合とない場合とで掘削土量(排土量)を比較した説明図。
【図23】図2の構造を基本として破砕・切削翼がある場合とない場合とで削孔面積を比較した説明図。
【図24】本発明の第5の実施の形態を示す図で、(A)は破砕・切削翼に加えて内面破砕・切削翼を備えたケーシングチューブの要部正面説明図、(B)は同図(A)の全断面図。
【図25】図24の(A)の平面説明図。
【図26】図24に示したケーシングチューブの変形例を示す平面説明図。
【図27】図24に示したケーシングチューブの別の変形例を示す平面説明図。
【符号の説明】
【0073】
1…全旋回式オールケーシング削孔機
2…クローラクレーン
3…ケーシングチューブ(ケーシング)
4…駆動装置
5…カッタービット
6…エクステンションチューブ
8…破砕・切削翼
9…カッタービット
14…ハンマーグラブ
15…破砕・切削翼
16…内周翼
17…外周翼
18…内面破砕・切削翼
20…カッタービット
24…カッタービット
26…破砕・切削翼
35…通水孔
G…軟質現土層
H…孔
M…置換土
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質地盤の掘削に先立ってそれよりの軟質の土質地盤に置換する先行削孔工法に好適な削孔装置に関し、例えば鋼製セグメント圧入工法等による圧入ケーソンの構築に先立って、ケーソン刃先抵抗を軽減するために小径で且つ多数の削孔をもって軟質の砂地盤に置換する際に用いられる削孔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として、例えば非特許文献1に記載のように、全旋回式のケーシング削孔機にて削孔しながらケーシング(ケーシングチューブとも言う)内部の土をハンマーグラブ等にて掘削・排土し、所定深度に達したならばケーシング内に山砂等を投入しながらそのケーシングを引き抜くことにより砂地盤に置き換えるようにしたいわゆる砂置換先行削孔工法が知られている。なお、かかる先行削孔は、構築すべきケーソンの径に内接もしくは交差するように同心円上の複数箇所に所定のピッチで施工することになる。
【非特許文献1】山口、外1名、「市街地における狭隘な用地での大規模立坑の施工」、土木施工、株式会社山海堂、平成12年10月1日、第41巻、第13号、通巻533号、p.8−15
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
非特許文献1に代表されるような従来の技術では、ケーシングの口径寸法が掘削された孔径にほかならないから、相対的にケーシングとして大口径のものが、旋回駆動装置として能力の大きなものがそれぞれ必要とされるほか、ケーシング内の全ての土を掘削する必要があるためにハンマーグラブとして大容量のものが、それを支持するクレーンとして能力の大きなものがそれぞれ必要となり、全体としてコストアップが余儀なくされる。
【0004】
また、先に述べたようにケーシングの口径寸法が掘削された孔径にほかならないことから、掘削量とともに排土量が多くなり、周囲に及ぼす環境悪化が危惧される。
【0005】
加えて、全旋回式のケーシング掘削機では、そのケーシングのサイズ(ケーシング径)として1500mm、2000mmおよび3000mmの三種類のものが一般的によく使われている。ところが、削孔径がケーシング径に制約される故に、例えば一定サイズのケーソンの構築に先立つ先行削孔では、相対的に径の小さなケーシングにて削孔した場合には削孔数が多くなり、先行削孔に要する工数の増加とともにコストアップが余儀なくされる。逆に相対的に径の大きなケーシングにて削孔した場合には削孔数は少なくなるものの、置換土量が必要以上に多くなり、上記と同様に先行削孔に要する工数の増加とともに置換土のコストアップが余儀なくされ、いずれの場合にも不経済なものとなっていた。
【0006】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、とりわけケーシングをはじめとする付帯設備それぞれの小型化を図るとともに、先行削孔としての孔径を維持しながら掘削量および排土量を少なくして、経済性に優れ、しかも周囲の環境への影響を最小限にとどめることができる削孔装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、円筒状のケーシングを旋回させながら地中に圧入するとともに、それと並行してケーシング内部の土を掘削・排土することで所定深度まで削孔する装置として、ケーシングの下部外周にケーシング外周側の土を破砕・切削するための翼を設けたことを特徴とする。
【0008】
この削孔装置は、多くの場合に硬質地盤の掘削に先立ってそれよりの軟質の土質地盤に置換するべく先行削孔するための装置として使用される。
【0009】
翼のより具体的な構造としては、翼そのものの交換容易性を考慮して、請求項2に記載のように、ケーシングの旋回,圧入に伴いケーシングの外周側の土を破砕・切削して砕土化しつつほぐすための翼の全部または一部をケーシングに対して着脱可能に装着することが望ましい。
【0010】
また、上記以外にも翼またはケーシングに関して、下記(a)〜(g)の条件のなかから単一または複数のものを選択して付加することももちろん可能である。
【0011】
(a)翼はケーシングの円周方向において単一または複数枚のものとして形成すること。
【0012】
(b)翼を螺旋状のものとして形成すること。
【0013】
(c)ケーシングの外周面における翼の総周長をケーシングの円周の1/3以上に設定すること。
【0014】
(d)翼の少なくとも旋回方向先端側にそれぞれカッタービットを装着すること。
【0015】
(e)翼を内周翼とその内周翼の外周側に張り出す外周翼とから構成し、内周翼に対して外周翼を着脱可能とすること。
【0016】
(f)ケーシング外周の翼に加えて、ケーシングの内周にも翼を設けること。
【0017】
(g)ケーシング内周に設けた翼をケーシングに対して着脱可能なものとすること。
【0018】
(h)ケーシングは正逆転可能とすること。
【0019】
(i)ケーシングの先端にカッタービットを装着すること。
【0020】
(j)ケーシングの外周に設けた翼の近傍に、ケーシングの内外を連通させる通水孔を1個以上設けること。
【0021】
(k)ケーシングは全旋回式のケーシング削孔機にて旋回駆動されるものであること。
【0022】
特に、上記翼本来の効果を十二分に得るためには、請求項7に記載のように、カッタービットの一部が翼の外周側に突出していて、ケーシングの外径をD1、ケーシングの旋回に伴いカッタービットが描く軌跡円の最大直径をD2としたとき、D2をD1の1.1倍以上に設定することが望ましい。
【0023】
同様に、請求項8に記載のように、ケーシングの旋回に伴いカッタービットが描く軌跡円の最大直径をD2、同じくケーシングの旋回に伴い翼が描く軌跡円の最大直径をD3としたとき、D2≧D3となるように設定することが望ましい。
【0024】
したがって、本発明の削孔装置を例えば先に述べたように硬質地盤の掘削に先立ってそれよりの軟質の土質地盤に置換する先行削孔工法に用いた場合、下部外周に翼を備えた円筒状のケーシングを旋回させながら地中に圧入して、ケーシング内部の土を掘削・排土しながら所定深度まで削孔し、その掘削・排土処理と並行して、ケーシングとともに旋回する翼によりケーシングの外周側の土を所定深度まで破砕・切削して砕土化しつつほぐした上で、最後にケーシングの内部に置換土を投入してケーシングを旋回させながら引き抜くことになる。
【0025】
この場合には、先に述べたように翼が螺旋状であることが好都合であり、ケーシングを地中に圧入する際の旋回を正転動作とし、ケーシングを引き抜く際の旋回を逆転動作とする。その結果として、ケーシングに翼を装着してあるが故に、ケーシング内部の掘削・排土処理とケーシング外周側の土の砕土化ほぐし処理とが並行して行われことになり、最終的にはケーシング内部が砂等の置換土に置き換えられる一方で、ケーシング外周側にて一旦砕土化ほぐし処理が施された土は排土されることなくそのまま残されることになる。そして、置換土とケーシングの外周側にて一旦砕土化ほぐし処理が施された土との総和をもって、すなわち翼の直径に相当する削孔径をもって当初よりも軟質の地盤と化することになる。
【0026】
このことは、軟質地盤と化した翼の直径に相当する円筒状の地盤に対してケーシングそのものの直径は置換土相当部の直径があれば足りることを意味し、従来よりも相対的に径の小さなケーシングで済むことになるほか、必然的に排土量も少なくて済むことになる。また、ケーシングを引き抜く際に、翼付きのそのケーシングを逆転旋回させれば、少なくともケーシング外周側にて一旦砕土化ほぐし処理が施された土の翼による転圧もしくは締め固め効果も期待できるようになる。
【発明の効果】
【0027】
請求項1,2に記載の発明によれば、ケーシングの下部外周に翼を設けたことにより、小径のケーシングによる削孔で大径の削孔を行った場合と同等の効果が得られることから、ケーシングをはじめとする付帯設備としては小型のもので所期の目的を達成することができ、コストダウンを図ることができて経済的な施工が行える。
【0028】
また、ケーシングが小さくなることによって掘削・排土量のほか必要とされる置換土の量も少なくなるため、コストダウンを図ることができるとともに、周囲の環境への影響を最小限におさえることができ、一段と経済的な施工を行える。
【0029】
請求項3に記載の発明によれば、着脱可能とした翼を任意のサイズのものと交換することにより、ケーシングはそのままで任意の孔径の削孔に容易に対応でき、設備としての汎用性に優れる効果がある。
【0030】
さらに、請求項4,12に記載の発明のように、翼を螺旋状のものとした上でケーシングの引き抜きの際に当該ケーシングを逆転旋回させることにより、ケーシング外周側にて一旦砕土化ほぐし処理が施された土の翼による転圧もしくは締め固め効果が期待できるため、後処理としての転圧もしくは締め固めを必要としない利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1〜8は本発明のより具体的な実施の形態を示す図であり、特に図1は先に例示した先行削孔工法の施工に必要とされる設備全体の概略説明図を、図2〜4は図1の要部拡大図をそれぞれ示し、さらに図5〜8は施工の手順の詳細を示している。
【0032】
図1に示すように、先行削孔のための設備として、全旋回式オールケーシング削孔機(以下、単に「削孔機」という)1とクローラクレーン(以下、単に「クレーン」という)2が用意される。
【0033】
削孔機1は所定直径のケーシングたる円筒状のケーシングチューブ3を主要素とするもので、周知のようにそのケーシングチューブ3は油圧式の駆動装置4に内挿されているとともに、ケーシングチューブ3の先端には図2の(A)に示すように複数のカッタービット5を装着してある。そして、ケーシングチューブ3は駆動装置4にて旋回駆動されながら同時に地中への圧入推力が付与されて削孔に供される。なお、ケーシングチューブ3は駆動装置4による正転と逆転が可能となっている。また、ケーシングチューブ3は施工の途中で必要に応じて何回かチューブピースが継ぎ足されて、最終的に所定深度まで圧入される。
【0034】
ここで、図2,3に示すように、ケーシングチューブ3の先端(下端)には同直径のエクステンションチューブ6を複数のボルト穴7,7‥に対応する図示外のボルト・ナットにて着脱可能に連結してある。そして、エクステンションチューブ6の先端部(下端部)外周には、そのほぼ全周にわたり螺旋状の単一の破砕・切削翼8を装着してあるとともに、破砕・切削翼8の旋回方向先端側には複数のカッタービット9を装着してある。
【0035】
より詳しくは、図3,4に示すようにエクステンションチューブ6の外周にはそのほぼ全周にわたり破砕・切削翼8の螺旋形状に沿うかたちで翼取付フランジ10を予め溶接等にて固定してあり、この翼取付フランジ10に対して破砕・切削翼8を複数のボルト・ナット11をもって着脱可能に装着してある。そして、ケーシングチューブ3の時計回り方向の旋回を正転、反時計回り方向の旋回を逆転とした場合に、ケーシングチューブ3の正転時に破砕・切削翼8が積極的に土中に食い込むように予めその破砕・切削翼8における螺旋形状の捻れ角が考慮されているとともに、破砕・切削翼8の正転方向での先端側には先に述べたように複数のカッタービット9を装着してある。
【0036】
したがって、上記のようにケーシングチューブ3が正転方向に旋回駆動されながら地中に圧入されることで、ケーシングチューブ3内に入り込む土を周囲の土から切り離すような削孔処理と、ケーシングチューブ3の外周の破砕・切削翼8にてそのケーシングチューブ3の周囲の土を定位置にて破砕・切削処理により切断破砕して砕土化しつつほぐすことになる砕土化ほぐし処理とが並行して行われることになる。
【0037】
なお、破砕・切削翼8は、上記のようにケーシングチューブ3の外側の土の砕土化ほぐし処理を目的として付加されたものであるから、その破砕・切削翼8の直径(ケーシングチューブ3の旋回に伴い破砕・切削翼8が描く軌跡円の最大直径)D3は仕事効率を考慮すればケーシングチューブ3の直径D1の1.1倍以上に設定することが望ましい(ただし、最も外側に位置するカッタービット9の外周面は破砕・切削翼8の外周面と面一であって、ケーシングチューブ3の旋回に伴いカッタービット9が描く軌跡円の最大直径は破砕・切削翼8の直径と等しいものとする)。また、直径が1500mm〜3000mm程度の標準的なケーシングチューブ3を想定した場合、破砕・切削翼8の取付位置は図3に示すようにエクステンションチューブ6の下端からの距離bとしてb=100〜1000mm程度、望ましくは300〜700mm程度の位置とするのが望ましい。
【0038】
図1に示したクレーン2はそのジブ12の先端から垂下したロープ13にハンマーグラブ14を吊り下げ支持しており、後述するようにケーシングチューブ3内への投下と吊り上げとを繰り返して、ケーシングチューブ3内の土の掘削と排土処理を行うことになる。同時に、ハンマーグラブ14は削孔された孔Hへの置換土の投入作業をも司っている。
【0039】
施工の手順としては、図5の(A)に示すように、ケーシングチューブ3の真上にハンマーグラブ14を待機させた状態で、駆動装置4により破砕・切削翼8付きのケーシングチューブ3に正転による旋回と圧入推力とを与えて削孔を開始する。
【0040】
すなわち、図5の(A)に示すように、ケーシングチューブ3が徐々に地中に圧入されると、ケーシングチューブ3の内径に相当する部分の現土が周りの土から切り取られるようにしてケーシングチューブ3の内部に入り込む一方、ケーシングチューブ3の外周側では破砕・切削翼8によって定位置にて先に述べた砕土化ほぐし処理が並行して行われて軟質原土層Gと化しながら削孔が進行する。
【0041】
さらに、上記のような削孔時にハンマーグラブ14を併用し、同図(B)に示すように、ケーシングチューブ3内へのハンマーグラブ14の投下とその引き上げを繰り返すことで、ケーシングチューブ3内の原土の掘削と排土処理とが行われる。なお、ケーシングチューブ3の外周側では先に述べた破砕・切削翼8による原土の砕土化ほぐし処理が施されても、その原土が排土されることはない。
【0042】
ケーシングチューブ3が所定深度まで圧入されて且つそのケーシングチューブ3の内部の原土が排土されることにより削孔が完了した状態を図6(A)に示す。この状態では、駆動装置4によるケーシングチューブ3への旋回力および圧入推力の付与が一旦中断されるとともに、先に述べたように原土のうちケーシングチューブ3の外周側であって且つ破砕・切削翼8よりも上方では、その破砕・切削翼8が通過したことによって砕土化ほぐし処理が施されて軟質原土層Gとなっている。なお、図5の(A)の状態から図6の(A)の状態に移行するまでの間に、必要に応じて何回かのチューブピースの継ぎ足しが行われる。
【0043】
ケーシングチューブ3の直径に等しい削孔が完了したならば、同図(B)のほか図7の(A),(B)に示すように、ハンマーグラブ14を使ってケーシングチューブ3の内部に置換土Mとして山砂等の購入土を投入して、ケーシングチューブ3内の底部、ひいては掘削された孔Hの孔底側から順に埋め戻す。この場合、先にケーシングチューブ3内の掘削時に排土した土に砂質土が含まれている場合にはその砂質土のみを購入土とともに再利用することもある。
【0044】
上記のようにケーシングチューブ3内の底部に所定量の置換土Mが投入されたならば、図7の(B)に示すように、ケーシングチューブ3を逆転旋回動作させながら、置換土Mにて埋め戻された分だけケーシングチューブ3を引き上げる。この場合、ケーシングチューブ3とともに破砕・切削翼8が逆転動作することにより、一旦は破砕・切削翼8にて砕土化ほぐし処理が施された軟質原土層G、すなわちケーシングチューブ3の周囲の軟質原土層Gの転圧もしくは締め固め効果が期待できる。
【0045】
そして、このような所定量の置換土Mの投入による孔Hの埋め戻しとケーシングチューブ3の逆転による引き抜きとを交互に繰り返すことにより、図8の(A)に示すように孔Hの埋め戻し深さを漸次大きくする。
【0046】
この後、図8の(B)に示すように、一旦はケーシングチューブ3にて掘削された孔Hが全て置換土Mで埋め戻されたならば、地上に引き抜かれたケーシングチューブ3とともに駆動装置4を撤去し、これをもっていわゆる砂置換を目的とした先行削孔が完了する。すなわち、一旦はケーシングチューブ3にて掘削された孔Hが原土に代わる山砂等の置換土Mで置換されるとともに、置換土Mの周囲は原土のままでありながらも、破砕・切削翼8による砕土化ほぐし処理と転圧もしくは締め固め効果によって従前よりも軟質ないわゆるN値の小さな軟質原土層Gと化し、この軟質原土層Gも実質的に置換土Mと同等の機能を発揮することになり、結果的には破砕・切削翼8の直径と同等の削孔径をもって削孔した上で砂置換した場合と同等の状態となる。
【0047】
このように本実施の形態によれば、置換土Mのほかその置換土Mの周囲の軟質原土層Gも実質的に置換土Mと同等の機能を発揮することから、ケーシングチューブ3にて削孔する孔Hの径およびケーシングチューブ3の直径は従来のものより著しく小さくて済むほか、そのケーシングチューブ3を駆動する駆動装置4も小型のもので十分に対応できることになる。
【0048】
その上、ケーシングチューブ3そのものの直径が小さくて済むことは排土量も少ないことを意味し、周囲環境に及ぼす影響を最小限に抑えつつ、ハンマーグラブ14やクレーン2も小型のもので十分に対応できることになり、きわめて経済的な施工を行える。
【0049】
ここで、上記の実施の形態では、ケーシングチューブ3に対して着脱可能に連結したエクステンションチューブ6にさらに破砕・切削翼8を着脱可能に装着しているが、必要に応じてエクステンションチューブ6を廃止して破砕・切削翼8を直接ケーシングチューブ3に着脱可能に装着してもよく、さらに破砕・切削翼8をケーシングチューブ3もしくはエクステンションチューブ6に対して着脱不能に固定するようにしてもよい。
【0050】
また、図2,3に示すように、エクステンションチューブ6の外周に設けた破砕・切削翼8の近傍、特に破砕・切削翼8の上下であって且つエクステンションチューブ6の直径方向でほぼ正対する位置にエクステンションチューブ6の内外を連通させる複数の通水孔35を形成することが、破砕・切削翼8による破砕・切削時の抵抗を低減する上で望ましい。これはエクステンションチューブ6の内外に自然泥水が存在する場合に、破砕・切削翼8が押しのけようとする自然泥水と破砕・切削翼8の背面側に存在する自然泥水を上記通水孔35を通してそれぞれエクステンションチューブ6の内外で積極的に出入りさせることにより、エクステンションチューブ6の外周側の自然泥水を破砕・切削翼8にてひたすら押しのけようとする場合に比べてその抵抗を低減することができるためである。
【0051】
さらに、破砕・切削翼8は必ずしも図2,3に示したような一枚構成のものである必要はなく、例えば図9〜11に示すようにエクステンションチューブ6(ケーシングチューブ3)の円周方向において2〜4枚構成の螺旋状の破砕・切削翼8,8‥の組み合わせとしてもよい。
【0052】
この場合において、例えば図11の破砕・切削翼8の構造を基本とした上で、図12の(A),(B)に示すように破砕・切削翼8の旋回方向先端に設けたカッタービット9のうち破砕・切削翼8の最も外周側に位置するものを破砕・切削翼8の外周面よりも所定量αだけ突出させて、ケーシングチューブ3の旋回に伴いカッタービット9が描く軌跡円の最大直径(削孔径)D2を破砕・切削翼8そのものの直径(ケーシングチューブ3の旋回に伴い破砕・切削翼8が描く軌跡円の最大直径)D3よりも大きくなるようにD2>D3の関係とすることが破砕・切削抵抗を減ずる上で望ましい。
【0053】
その上で、図13,14に示すように、ケーシングチューブ3およびエクステンションチューブ6の直径φを一定としたままで破砕・切削翼8(ここでは、先に図9に基づいて説明した二枚構成の破砕・切削翼8の例を示してある)をその外径寸法の異なるものと積極的に交換することにより、異なる削孔径Dのもとでの先行削孔にも容易に対応することが可能となる。例えば、図13,14共にケーシングチューブ3およびエクステンションチューブ6の直径φを1500mmとする一方、そのエクステンションチューブ6に対し着脱可能な破砕・切削翼8として図13の(A),(B)に示すような外径寸法が2000mm(=削孔径D)のものと、図14の(A),(B)に示すような外径寸法が2500mm(=削孔径D)のものとを予め用意しておき、それらを適宜交換するだけで二種類の削孔径の先行削孔に対応することが可能となる。
【0054】
図15〜17には本発明の第2の実施の形態を示し、先の実施の形態と共通する部分には同一符号を付してある。
【0055】
この第2の実施の形態では、破砕・切削翼15をエクステンションチューブ6のほぼ全周にわたって配置された内周翼16とそれとは別の外周翼17とで構成し、内周翼16に対して局部的に外周翼17を着脱可能に装着したものである。
【0056】
より詳しくは、エクステンションチューブ6の外周ほぼ全周にわたり二枚の螺旋状の内周翼16を溶接等にて固定してある。そして、それぞれの内周翼16の旋回方向先端部側は外周翼17の取付フランジ部として機能させるべく斜めに配置されてはいてもそれ自体では捻れ角を有しない単純平板状の取付プレート19をもって構成してあり、その取付プレート19の旋回方向先端には複数のカッタービット20を溶接等にて固定してある。
【0057】
他方、外周翼17は翼本体21の上下両面に当て板22をオフセットさせて配置した上で溶接等にて固定して、双方の当て板22,22同士の間に翼本体21の板厚に相当するスロット23を形成したものであり、このスロット23は先に述べた内周翼16側の取付プレート19を受容し得る大きさに設定してある。また、この外周翼17の旋回方向先端側には複数のカッタービット24を溶接等にて固定してある。そして、図16に示すように、内周翼16の取付プレート19に対して外周翼17のスロット23を挿入した上で、外周翼17側の上下の当て板22と内周翼16側の取付プレート19とを複数のボルト,ナット25にて着脱可能に共締め固定してある。なお、図6ではエクステンションチューブ6そのものの先端のカッタービット5は図示省略してある。また、通水孔35は各外周翼17ごとにその外周翼17の上下二箇所に形成してある。
【0058】
この第2の実施の形態によれば、先の実施の形態と同様の効果が得られるほか、内周翼16を共通して使用することを前提とした上で、外周翼17のみ翼長eの異なるものを予め複数種類用意しておいて、必要に応じて外周翼17のみを翼長eの異なるものと交換することにより、破砕・切削翼15による破砕・切削径の変更に容易に対応できる利点がある。
【0059】
また、破砕・切削翼8または15が図2,3のように一枚構成であるか図9〜12および図15のように複数枚構成であるかにかかわらず、図18に示すようにエクステンションチューブ6の円周方向での破砕・切削翼8または15の総周長Lをエクステンションチューブ6(ケーシングチューブ3)の円周の50%以上とすることが仕事量もしくは作業効率確保の上で望ましい。つまり、図9〜12および図15に示したような複数枚構成の破砕・切削翼8または15の場合、隣接する破砕・切削翼8,8同士または15,15同士の間の欠損部分は破砕・切削翼8または15としての仕事量に貢献しないことから、図18に示したようにそれらの欠損部分を除いた破砕・切削翼8または15の総周長Lがケーシングチューブ6の円周の50%以上とすることが望ましい。
【0060】
特に、図15〜17に示した第2の実施の形態では、内周翼16とともに破砕・切削翼15を構成している外周翼17の周長が角度βにして60°であるとすると、エクステンションチューブ6に対する内周翼16の周長Lはほぼ100%であり、その内周翼16に対する外周翼17の周長が1/3であることから、エクステンションチューブ6に対する破砕・切削翼15の総周長Lを一段と大きく確保できる利点がある。
【0061】
図19,20は本発明の第3の実施の形態を示し、先に図15〜17に示した第2の実施の形態と共通する部分には同一符号を付してある。
【0062】
この第3の実施の形態では、破砕・切削翼15が内周翼16と外周翼17とで構成されている点では第2の実施の形態と同一であるものの、内周翼16を円周方向で相互に独立した3枚構成のものとする一方、それらの各内周翼16に対して個別に外周翼17を着脱可能に装着したものである。この第3の実施の形態においても第2の実施の形態のものと同様の効果が得られることになる。
【0063】
図21は本発明の第4の実施の形態を示し、この第4の実施の形態では図15〜17の外周翼17に相当する単板状の一対の破砕・切削翼26をエクステンションチューブ6に対して着脱可能もしくは着脱不能に直接的に固定するようにしたものである。なお、破砕・切削翼26の周長は角度βにして60°であり、エクステンションチューブ6に対する破砕・切削翼16の総周長Lは1/3となる。
【0064】
図22には、破砕・切削翼8を有しない従来のケーシングチューブと上記実施の形態の一枚構成の破砕・切削翼8付きのケーシングチューブ3とで削孔土量(排土量)を比較した結果を示す。ただし、図2〜4に示した翼取付フランジ10は図示省略してある。
【0065】
同図は砂置換の深さ1m当たりで比較したものであり、従来のケーシングチューブの場合にはケーシングチューブの直径φをφ=削孔径Dとして例えば2000mmに設定してあり、削孔土量Q1=排土量Q2で共に3.14m3となる。一方、上記実施の形態の破砕・切削翼8付きのケーシングチューブ3の場合にはその直径φを従来例と同じ1500mmに設定するも、削孔径Dに等しい破砕・切削翼8の直径としては、先に述べた「ケーシングチューブ3の直径φの1.1倍以上」という条件を満たすために、D=φ×1.33として破砕・切削翼8の直径および削孔径Dを2000mmに設定してあり、削孔土量Q1は従来のものと同じ3.14m3となるものの、排土量Q2は1.77m3と大幅に少なくなる。つまり、先行削孔による砂置換に必要な排土量Q1をもって両者を比較すれば、従来のケーシングチューブの場合の排土量Q1を1.0とした場合に、上記実施の形態での破砕・切削翼8付きのケーシングチューブ3の場合には0.56となり、先行削孔時の排土量Q2ひいては置換土量を大幅に削減することが可能となる。
【0066】
同様に図23は破砕・切削翼8を有しない従来のケーシングチューブと上記実施の形態の一枚構成の破砕・切削翼8付きのケーシングチューブ3とで削孔面積を比較した結果を示す。
【0067】
同図はケーシングチューブ3の直径φを共に1500mmで統一した場合の例であり、従来のケーシングチューブの場合にはケーシングチューブの直径φ=削孔径Dであるが故に、削孔面積Sは1.77m2となる。一方、上記実施の形態の破砕・切削翼8付きのケーシングチューブ3の場合には、破砕・切削翼8の直径に等しい削孔径Dとして先に述べた「ケーシングチューブ3の直径φの1.1倍以上」という条件を満たすために、D=φ×1.1として破砕・切削翼8の直径および削孔径Dを共に1650mmに設定してあり、その削孔面積Sは2.14m2となる。つまり、先行削孔時の削孔面積Sをもって両者を比較すれば、従来のケーシングチューブの場合の削孔面積Sを1.0とした場合に、上記実施の形態での破砕・切削翼8付きのケーシングチューブ3の場合には1.21となり、ケーシングチューブ3の直径φが同じであっても先行削孔時の仕事量である削孔面積Sを大幅に増大させることが可能となる。
【0068】
図24,25は本発明の第5の実施の形態を示し、先の第1の実施の形態と共通する部分には同一符号を付してある。
【0069】
この実施の形態では、エクステンションチューブ6の外周に着脱可能に装着した破砕・切削翼8とは別に、エクステンションチューブ6の先端内周側にもカッタービット18a付きの内面破砕・切削翼18を放射状に且つ着脱可能に装着したものである。もちろん、内面破砕・切削翼18は着脱不能に固定する構造としてもよい。
【0070】
この内面破砕・切削翼18の配置は、図25のように平面視にていわゆる横一文字の配置のほか、必要に応じて図26のような十字状の配置、あるいは図27のようなY字状の配置としてもよい。
【0071】
このようにエクステンションチューブ6の内周側にも内面破砕・切削翼18を装着することにより、ケーシングチューブ3の内側における土の掘削・排土効率が飛躍的に向上するようになる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係る削孔装置を用いた先行削孔工法における削孔設備全体の概略構造を示す説明図。
【図2】図1に示すケーシングチューブの詳細を示す図で、(A)はその要部拡大正面図、(B)は同図(A)の平面図。
【図3】図2の(A)に示すケーシングチューブの分解説明図。
【図4】図3のa部拡大断面図。
【図5】(A),(B)共に先行削孔工法の施工手順の詳細を示す工程説明図。
【図6】(A),(B)共に図5に続く先行削孔工法の施工手順の詳細を示す工程説明図。
【図7】(A),(B)共に図6に続く先行削孔工法の施工手順の詳細を示す工程説明図。
【図8】(A),(B)共に図7に続く先行削孔工法の施工手順の詳細を示す工程説明図。
【図9】図2の(B)に示した破砕・切削翼の変形例を示す平面説明図。
【図10】図2の(B)に示した破砕・切削翼の別の変形例を示す平面説明図。
【図11】図2の(B)に示した破砕・切削翼のさらなる別の変形例を示す平面説明図。
【図12】(A)は図11に示した破砕・切削翼の変形例を示す平面説明図、(B)は同図(A)のa部拡大説明図。
【図13】図2の構造を基本としてケーシングチューブの直径を一定とした上で、破砕・切削翼の直径を相対的に小さくした場合の説明図。
【図14】図2の構造を基本としてケーシングチューブの直径を一定とした上で、破砕・切削翼の直径を図13に比べて相対的に大きくした場合の説明図。
【図15】本発明の第2の実施の形態を示すケーシングチューブの平面図。
【図16】(A)は図15の分解説明図、(B)は同図(A)におけるエクステンションチューブの正面図。
【図17】図16の(B)のb−b線に沿う拡大断面図。
【図18】図9〜12に示した破砕・切削翼のケーシングチューブの円周に対する周長の平面説明図。
【図19】(A)は本発明の第3の実施の形態を示すケーシングチューブの平面図、(B)は同図(A)の正面図。
【図20】図19の(A)の分解説明図。
【図21】(A)は本発明の第4の実施の形態を示すケーシングチューブの平面図、(B)は同図(A)におけるエクステンションチューブの正面図。
【図22】図2の構造を基本として破砕・切削翼がある場合とない場合とで掘削土量(排土量)を比較した説明図。
【図23】図2の構造を基本として破砕・切削翼がある場合とない場合とで削孔面積を比較した説明図。
【図24】本発明の第5の実施の形態を示す図で、(A)は破砕・切削翼に加えて内面破砕・切削翼を備えたケーシングチューブの要部正面説明図、(B)は同図(A)の全断面図。
【図25】図24の(A)の平面説明図。
【図26】図24に示したケーシングチューブの変形例を示す平面説明図。
【図27】図24に示したケーシングチューブの別の変形例を示す平面説明図。
【符号の説明】
【0073】
1…全旋回式オールケーシング削孔機
2…クローラクレーン
3…ケーシングチューブ(ケーシング)
4…駆動装置
5…カッタービット
6…エクステンションチューブ
8…破砕・切削翼
9…カッタービット
14…ハンマーグラブ
15…破砕・切削翼
16…内周翼
17…外周翼
18…内面破砕・切削翼
20…カッタービット
24…カッタービット
26…破砕・切削翼
35…通水孔
G…軟質現土層
H…孔
M…置換土
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のケーシングを旋回させながら地中に圧入するとともに、それと並行してケーシング内部の土を掘削・排土することで所定深度まで削孔する装置であって、ケーシングの下部外周にケーシング外周側の土を破砕・切削するための翼を設けたことを特徴とする削孔装置。
【請求項2】
ケーシングの旋回,圧入に伴いケーシングの外周側の土を破砕・切削して砕土化しつつほぐすための翼の全部または一部をケーシングに対して着脱可能に装着したことを特徴とする請求項1に記載の削孔装置。
【請求項3】
翼はケーシングの円周方向において単一または複数枚のものとして形成してあることを特徴とする請求項1または2に記載の削孔装置。
【請求項4】
翼を螺旋状のものとして形成してあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の削孔装置。
【請求項5】
ケーシングの外周面における翼の総周長をケーシングの円周の1/3以上に設定してあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の削孔装置。
【請求項6】
翼の少なくとも旋回方向先端側にカッタービットを装着してあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の削孔装置。
【請求項7】
カッタービットの一部が翼の外周側に突出していて、ケーシングの外径をD1、ケーシングの旋回に伴いカッタービットが描く軌跡円の最大直径をD2としたとき、D2をD1の1.1倍以上に設定してあることを特徴とする請求項6に記載の削孔装置。
【請求項8】
ケーシングの旋回に伴いカッタービットが描く軌跡円の最大直径をD2、同じくケーシングの旋回に伴い翼が描く軌跡円の最大直径をD3としたとき、D2≧D3となるように設定してあることを特徴とする請求項6に記載の削孔装置。
【請求項9】
翼は内周翼とその内周翼の外周側に張り出す外周翼とから構成されていて、内周翼に対して外周翼が着脱可能となっていることを特徴とする請求項2〜8のいずれかに記載の削孔装置。
【請求項10】
ケーシング外周の翼に加えて、ケーシングの内周にケーシング内部の土を破砕・切削するための翼を設けてあることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の削孔装置。
【請求項11】
ケーシングの内周に設けた翼をケーシングに対して着脱可能としたことを特徴とする請求項10に記載の削孔装置。
【請求項12】
ケーシングは正逆転可能であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の削孔装置。
【請求項13】
ケーシングの先端にカッタービットを装着してあることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の削孔装置。
【請求項14】
ケーシングの外周に設けた翼の近傍に、ケーシングの内外を連通させる通水孔を1個以上設けたことを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の削孔装置。
【請求項15】
ケーシングは全旋回式のケーシング削孔機にて旋回駆動されるものであることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の削孔装置。
【請求項1】
円筒状のケーシングを旋回させながら地中に圧入するとともに、それと並行してケーシング内部の土を掘削・排土することで所定深度まで削孔する装置であって、ケーシングの下部外周にケーシング外周側の土を破砕・切削するための翼を設けたことを特徴とする削孔装置。
【請求項2】
ケーシングの旋回,圧入に伴いケーシングの外周側の土を破砕・切削して砕土化しつつほぐすための翼の全部または一部をケーシングに対して着脱可能に装着したことを特徴とする請求項1に記載の削孔装置。
【請求項3】
翼はケーシングの円周方向において単一または複数枚のものとして形成してあることを特徴とする請求項1または2に記載の削孔装置。
【請求項4】
翼を螺旋状のものとして形成してあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の削孔装置。
【請求項5】
ケーシングの外周面における翼の総周長をケーシングの円周の1/3以上に設定してあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の削孔装置。
【請求項6】
翼の少なくとも旋回方向先端側にカッタービットを装着してあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の削孔装置。
【請求項7】
カッタービットの一部が翼の外周側に突出していて、ケーシングの外径をD1、ケーシングの旋回に伴いカッタービットが描く軌跡円の最大直径をD2としたとき、D2をD1の1.1倍以上に設定してあることを特徴とする請求項6に記載の削孔装置。
【請求項8】
ケーシングの旋回に伴いカッタービットが描く軌跡円の最大直径をD2、同じくケーシングの旋回に伴い翼が描く軌跡円の最大直径をD3としたとき、D2≧D3となるように設定してあることを特徴とする請求項6に記載の削孔装置。
【請求項9】
翼は内周翼とその内周翼の外周側に張り出す外周翼とから構成されていて、内周翼に対して外周翼が着脱可能となっていることを特徴とする請求項2〜8のいずれかに記載の削孔装置。
【請求項10】
ケーシング外周の翼に加えて、ケーシングの内周にケーシング内部の土を破砕・切削するための翼を設けてあることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の削孔装置。
【請求項11】
ケーシングの内周に設けた翼をケーシングに対して着脱可能としたことを特徴とする請求項10に記載の削孔装置。
【請求項12】
ケーシングは正逆転可能であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の削孔装置。
【請求項13】
ケーシングの先端にカッタービットを装着してあることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の削孔装置。
【請求項14】
ケーシングの外周に設けた翼の近傍に、ケーシングの内外を連通させる通水孔を1個以上設けたことを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の削孔装置。
【請求項15】
ケーシングは全旋回式のケーシング削孔機にて旋回駆動されるものであることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の削孔装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図13】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2006−233748(P2006−233748A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−6872(P2006−6872)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(000140694)株式会社加藤建設 (50)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(000140694)株式会社加藤建設 (50)
【Fターム(参考)】
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