説明

前十字靭帯組織およびその製造方法

【課題】 生体外で靭帯組織製造に用いるための、配向性エラスチン繊維束の製造方法および、その組織培養方法を提供する。
【解決手段】 本発明はエラスチン繊維束を用いた骨結合部位を有する前十字靭帯組織の製造方法であり、該各繊維が同一方向に形成する水溶性エラスチンの静電紡糸技術と動的細胞培養技術からなり、詳しくは水中で不溶化したエラスチン繊維束の製造方法と、加圧下におけるねじれ刺激を同時に与えて細胞培養を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエラスチン繊維束を用いた骨結合部位を有する前十字靭帯組織の製造方法であり、該各繊維が同一方向に形成する水溶性エラスチンの静電紡糸技術と動的細胞培養技術からなり、詳しくは水中で不溶化したエラスチン繊維束の製造方法と、加圧下におけるねじれ刺激を与える複合型細胞培養方法に関わる。
【背景技術】
【0002】
前十字靭帯損傷治療の患者は世界中で年間25万人、国内でも年間2万人を超える。特にスポーツや加齢による影響および交通事故等により受ける損傷がその多くを占めている。靭帯は骨と骨をつないで、前後、左右にうごかす運動や、ひねり運動を行う膝を安定させるために重要で、力学的な刺激のバランスが組織の修復と損傷に影響する組織である。従って、組織再生と運動刺激との関連性について数多く研究されている。
【0003】
靭帯は、関節の動き方に依存した細胞外基質タンパク質含有比率を有している。即ち、可動性が大きな部位ではエラスチンが多く、可動性が小さな部位ではコラーゲンが多いとされる。こうした細胞外基質タンパク質から形成される数μm程度の繊維が数多く配向性を有して集合し束状構造を形成し、その繊維を産生・補強あるいは再構成するために、繊維束を取り囲むように靭帯細胞が存在する構造を有している。更に靭帯と骨との接合部分に近づくに従って、徐々に骨芽様細胞の細胞分布が高まり、強固に骨と接着している。
【0004】
こうした繊維状の靭帯の重度の損傷は自然には再生されにくいとされる。靭帯損傷の治療としては、以前はポリエステルなどの合成繊維による人工靭帯が主な再建方法として行われたが、生体内に移植した人工靭帯の摩耗粉や変性・断裂などで異物反応が生じ、劣化が著しく生じやすく長期の結果は必ずしも良好ではなく、現在ではほとんど行われていない。その方法に代わって、患者自身(自家)の腱組織などの移植で靭帯化させる治療方法が多く行われている。しかしながら、本来別の目的で使われている患者自身の腱を生体から採取することで、膝自体の不安定性が増し、加えて疼痛などの影響から患者によっては自家腱が利用できない例も多い。腱の組成は靭帯と異なり、そのほとんどがコラーゲンで構成されることも、靭帯細胞が生着しにくい原因と考えられる。加えてコラーゲン繊維は、本来剛直な腱の力学特性を担うことから、腱組織の利用による膝可動域が減少し運動障害などの問題を生じる場合もある。そこで、こうした方法に替わるべく生体組織工学的な手法による靭帯再生への要望は大きい。
【0005】
組織工学的な研究開発の現状は、例えば、靭帯細胞を播種した膝前十字靭帯(ACL)再建のためのコラーゲン繊維やポリ乳酸、ポリグリコール酸などの生体吸収性材料との複合体による靭帯組織へのリモデリングの報告(非特許文献1、特許文献1)や、コラーゲン糸の靭帯修復能を述べている(特許文献2)などがある。こうした材料は靭帯として即使用できることを優先的に考慮する傾向から、材料の引っ張り張力を向上させるため、繊維径が比較的太く剛直な素材を用いているのが特徴である。
【0006】
一般に、人工靭帯に用いる材料の形状加工法には、生体組織構造を模倣した繊維構造であることが多く、コラーゲンなどで繊維状の構造体を製造する方法においても、種々の工夫がなされてきた。例えば、溶解したコラーゲン溶液を、細いノズルからアルコールなどの貧溶媒に押し出すことにより、析出および脱水することで繊維化し、その後、化学架橋する方法(特許文献3)などが報告されているが、繊維直径が数十〜数百μm程度で、実際の靭帯繊維に比較すると太い。
【0007】
近年、ナノサイズからサブミクロンサイズの繊維直径を有する医療用繊維として、合成高分子を用いた静電紡糸法を応用する方法が数多く報告されている(特許文献4)。またコラーゲンやエラスチンなどを用いて極細繊維を製造する方法などが報告されている(非特許文献2)。しかしながら、これらに記載の繊維径の太さは十分使用できるレベルではあるが、繊維の配向性および伸縮性に関しては適したものがなかった。特許文献5によりエラスチンの繊維化方法が示され、伸縮性を有するエラスチンを用いた構造体が靭帯作成のためのマトリックスとして適していることが述べられている。この方法は静電紡糸技術と綿状化専用装置および水溶性エラスチンの架橋技術からなり、それを用いる細胞培養方法を述べている。しかしながら、エラスチンマトリックスの靭帯再生用の加工方法として綿状構造を提案し、線維密度を下げることに重点があるため、靭帯組織としての力学強度は著しく低下していることが伺われる。
【0008】
またコラーゲンやエラスチン以外のタンパク質としては、例えば特許文献6に血漿成分であるフィブリンを用いた人工靭帯が示されている。細胞培養担体として従来のフィブリンゲルよりは高強度としているが、本来の靭帯組織強度(弾性率で約0.2〜2MPa)から著しく弱く、フィブリンゲル状構造物で弾性率が10kPa程度とあり、高強度とは言い難い。
【0009】
靭帯組織は関節内で骨の動きを支援するため加圧、伸展およびねじり等の力学刺激を常に受けている。こうした複数刺激の中でこそ正常な発達が可能になると考えられている。この力学刺激を与える靭帯細胞培養方法は、これまでにもいくつか考案されている。例えば特許文献7ではコラーゲンで作成したマトリックスの両端にアンカーを付着させ、両端を伸展運動や捩り運動により培養することで靭帯を製造する方法が示されている。この方法は生体外で機械的刺激を供して培養する方法で、靭帯作成に大きく期待が持てるが、骨接合部分に対応するアンカー部位がサンゴを加工した骨様物質で代用している点が、材料と解離し骨芽形成を伴わないため、人工靭帯の接合部分としての再生には程遠い。また力学刺激に関しても引っ張り、捻じれ、せん断、化学刺激等の多肢にわたり記述があるものの、骨・関節内に加わる圧力刺激に対す記載は無い。
【0010】
圧力に対する効果は、これまでに靭帯細胞を骨芽細胞様に分化させる等の効果が報告されている(非特許文献3)。こうした圧力を付加する培養装置に関する研究も多く、例えば特許文献8によると回転荷重加圧培養装置が記載されている。この方法は、ピストンによる加圧の方法が紹介されているが、母体の歩行運動時に発生する荷重状態を再現した細胞培養方法であり靭帯細胞の培養方法ではない。また特許文献9に示されるような静水圧培養装置などがあるが、軟骨細胞の再生を目的とした方法であるため本課題とは異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2003−530912
【特許文献2】WO95/2550
【特許文献3】特開平7−97714
【特許文献4】WO 2004/087232
【特許文献5】特開2009−39401
【特許文献6】特開2009−297212
【特許文献7】特表2002−543916
【特許文献8】特開2006−212017
【特許文献9】特開2003−125755
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Dunnら Journal of orthopaedic research、12巻、128−137頁、1994年
【非特許文献2】ButtafocoらBiomaterials 27巻、724−734頁、2006年
【非特許文献3】Zhaoら Europian Journal of Oral Sciences、116巻、199−206頁、2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明において解決しようとする課題は、上述の公知の技術が抱える問題点を解決することであり、具体的には生体靭帯組織と同様の繊維配向性構造と力学強度を有する繊維束を作成し、播種した靭帯細胞あるいは間葉系幹細胞が、繊維束の両端の骨結合部位で骨芽様細胞に、また中央部で靭帯細胞に選択的に分化を誘導した前十字靭帯を提供することである。また該前十字靭帯を作成するための、加圧―ねじれ刺激複合型細胞培養を用いる製造方法と、その製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は上記の課題を解決するため、靭帯細胞がエラスチン繊維束を足場として、加圧刺激で骨芽様細胞に分化、ねじれ刺激により靭帯細胞として分化維持して生育するという知見を応用するものであり、加えて本発明者が従来から研究開発しているエラスチン架橋体(特許文献 WO02/096978)およびエラスチン繊維(特許文献5)を基本技術として、これを改良することにより本発明に到達した。
【0015】
エラスチンは、動脈や肺、靭帯など生体組織の運動が重要な機能に結び付いている器官・臓器等に多く存在する細胞外基質タンパク質として知られる。しかしながら、靭帯再生用材料としての適用はこれまでにほとんど無い。特に靭帯と骨の骨結合部位に関しては、高い強度が必要とされることから、人工靭帯のみでの骨結合性機能を達成した報告例は少ない。本発明者らは、エラスチンを静電紡糸法と配向繊維を形成する装置を用いることで繊維化することに成功している。静電紡糸法(またはエレクトロスピニング法)とは高電圧、低電流で電極付きシリンジから溶液を一定速度で押し出すと同時に放電処理をすることで、ファイバー捕集電極で繊維状に堆積させる方法で、近年では再生医療用マトリックス作成法として注目されているが、エラスチン繊維で配向性を高めて、繊維束の強度を増加させた例は少ない。
【0016】
また、水溶性エラスチンそのものを繊維化しただけでは、再度水に投入した際に溶解するため、不溶化する工程が必要になる。従来から発明者らが行っている方法にその架橋方法があり、その詳細は特許文献4に公開されている。通常の市販架橋剤による架橋では、エラスチンの力学特性が硬く、脆くなる傾向が見られることも示され、適していない。
【0017】
即ち、本発明は前記エラスチン繊維束による少なくとも次の(a),(b)の工程を含み製造される前十字靭帯に関する
(a)エラスチン繊維が同一方向に束ねられて成形される繊維束構造を有してなる細胞培養用支持担体に、靭帯細胞または間葉系幹細胞を播種する第1の工程。
(b)該繊維束の両端を一対のロータリーアクチュエーターに接続した治具で固定し、ひねり刺激かつ、培養器内にシリンダー型培養液注入機により培養器内に加圧刺激を与えながら培養する第2の工程。
【0018】
より詳しくは、前記エラスチン繊維束の各繊維径は0.5から5μm、これらが同一方向に配向し、該繊維束の直径が0.1〜5μmで、該繊維束の弾性率が0.2〜5MPaであることを特徴とする請求項1に記載の前十字靭帯に関する。
【0019】
さらに前記培養条件として、該各繊維のひねり角度は10〜90度、ひねり周期が1〜10cpmであり、同時に負荷する加圧刺激は0.1〜2MPaであることを特徴とする請求項1に記載の前十字靭帯に関する。
【0020】
さらに前記エラスチン繊維束による少なくとも次の(a),(b)の工程を含み製造される前十字靭帯の製造方法に関する。
(a)エラスチン繊維が同一方向に束ねられて成形される繊維束構造を有してなる細胞培養用支持担体に、靭帯細胞または間葉系幹細胞を播種する第1の工程、
(b)該繊維束の両端を一対のロータリーアクチュエーターに接続した治具で固定し、ひねり刺激かつ、同時にシリンダー型培養液注入機による培養器内への加圧刺激を与えて培養する第2の工程。
【0021】
繊維束の両端を一対のロータリーアクチュエーターに接続した治具で固定し、ひねり刺激かつ、同時にシリンダー型培養液注入機による培養器内への加圧刺激を与えて培養する、請求項1に記載の前十字靭帯の製造装置に関する。
【発明の効果】
【0022】
配向性エラスチン繊維束を用いて、靭帯細胞を加圧環境下でねじれ刺激を負荷する動的培養することにより、繊維構造上に接着させた細胞の骨分化誘導を促し、更には繊維束両端ではねじれ効果を受けずに加圧刺激効果の影響で骨芽様細胞を分化誘導させ、繊維束中央部では靭帯細胞分化・増殖を促した前十字靭帯を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明による配向性エラスチン繊維束を製造させる場合の、システム概念図を図3に示す。この図は高電圧発生装置1と高速回転電極4の位置関係を表している。高速回転電極4は高速回転が可能なモーターを取り付けることで可能になる。高速回転電極4の幅は1〜5cm程度が好ましく、これ以上幅が大きくなると電極表面に堆積しようとするエラスチン繊維を風圧で乱し配向性を下げる。回転方向は繊維が飛行する手前から奥(図中の矢印の方向)に回転させるのが望ましい。回転速度は速い方が望ましいが、風圧を発生させると前述の理由で配向性を低下させる。電極の大きさにもよるが、およそ5000回転/分〜10,000回転/分(線速度換算では500m/分〜2,000m/分)で行うと、無回転電極による従来法よりも繊維密度が高くかつ配向性繊維束を作成することが可能になる。
【0024】
本発明の第一の主題は、水溶性エラスチンを上述の配向性繊維製造装置によりエラスチン繊維束を製造する技術に関する。その一つの態様は、水溶性エラスチンと架橋剤を、トリフロロエタノールもしくはヘキサフロロプロパノールを溶媒として溶解しシリンジポンプ2にて0.1〜10ml/時間の速度で送出し、同時に5〜30kVの高電圧発生装置に高速回転電極をつないだ状態で電圧をかけることで、水溶性エラスチンの配向性の堆積化を誘導することである。送出位置と電極間距離が繊維の集合形態を変えてしまうため、望ましくは1〜30cm程度の距離が必要で、より望ましくは10〜20cm程度であるが、当然電圧の大きさや、シリンジポンプからの溶液の排出速度、溶液の粘性の条件などが関与することから必ずしも記載した条件でなくても良い。
【0025】
作成する繊維の直径は乾燥状態で0.5〜5μmであることが望ましい。繊維直径はこれより細いと播種した細胞が接着できなく、またこの範囲より太い場合は細胞が繊維表面上で繊維方向とは別の向きを向いて接着する可能性があり、その場合は靭帯組織の様な繊維性構造の作成に不向きであることがその理由である。
【0026】
本発明の第二の主題は、エラスチン繊維束を作成する場合に用いる水溶性エラスチンが、残存する架橋構造を有する水溶性エラスチンに関する。通常、入手可能な水溶性エラスチンには、生体から抽出した不溶性エラスチンをシュウ酸分解したECML社製のエラスチンA、エラスチンB、エラスチンCおよびエラスチンD、またはEPC社製のα―エラスチンやβ―エラスチンおよびアルカリエタノール処理したκ―エラスチン、SIGMA社製のトロポエラスチンなどがある。本発明には、こうした水溶性エラスチンの利用が可能であるが、特にエラスチンAが好適に用いることができる。より望ましくは、エラスチンの架橋構造として知られるデスモシンあるいはイソデスモシン誘導アミノ酸含有率が2〜4モル%含まれる水溶性エラスチンAであり、伸縮性と弾性に優れ力学強度を発揮するのに好適であることがその理由である。
【0027】
更に本発明において用いられる水溶性エラスチンを、架橋剤で架橋するエラスチン繊維束は、公知の方法で製造できる。たとえば特開2009−129033にある水溶性エラスチンの架橋剤を用いると好適に製造可能である。静電紡糸法により作成したエラスチン繊維束は、乾燥状態で50〜130℃の加熱処理を行うことで、容易に水不溶性に変換することも可能である。
【0028】
本発明の第三の主題は、上述のように作成したエラスチン繊維束に、靭帯細胞または間葉系幹細胞を播種する工程と、加圧刺激およびねじれ刺激を同時に付加させることを特徴とする両端に骨結合部位を有する靭帯組織の培養技術に関する。
【0029】
以下にエラスチン繊維束を用い、加圧―ねじれ複合培養を行うことによる靭帯細胞の培養方法を例にして説明する。平均乾燥繊維0.5〜5μmで、膨潤直径5〜10μmの繊維からなる長さ4cm、直径2mmに加工した繊維束構造の末端を治具で固定し、細胞培養液を浸したシャーレ内で、靭帯細胞を播種して、エラスチン繊維表面に接着させ、その状態で12時間以上COインキュベーター内にて37℃、5%CO濃度条件で培養させる。その際、繊維束の両端を固定でき、かかる状態で培養液に浸すことの出来る動的培養装置を用いて、靭帯の動きでもあるひねり運動を細胞に与えながら、加圧環境下で培養する。動的培養装置の概念図を図7に示す。
動的培養装置は、ひねりを発生させることが可能であればいかなるものでも使用可能である。例えば、一対のロータリーアクチュエーター(図中2)とその回転制御装置(図中7)を組み合わせ、両端部分に配置される一対の治具13で繊維束構造を固定する装置を持ち、その状態が培養液中でかつ加圧下無菌状態で維持できる構造に配置させる。回転制御装置には例えばプログラマブルコントローラーを用いてもよい。加圧状態は、圧力センサー(図中5)と連動して動くシリンダー型ポンプ(図中6)で、培養液を耐圧型培養器内(図中4)に送液することで加圧状態にする。この際の圧力は0.1〜1.5MPaになるように設定する、好ましくは0.4〜1.0MPaにする。この一対のロータリーアクチュエーターをそれぞれ逆方向に回転させることで、繊維束にひねりを与えることが可能になる。こうした装置を37℃、5%CO濃度条件で用いることで、容易に加圧―ねじれ複合型細胞培養が可能になる。
【0030】
靭帯細胞は、継代を繰り返すことにより骨芽様細胞に分化誘導されやすいことが知られている。またエラスチンA上では通常の培養よりも骨芽様細胞への分化誘導性が大きいことが知られていた。加えて加圧下では骨芽様細胞化が促進される傾向にある。ところが、加圧下でねじれ運動をあたえることで、骨芽様細胞の分化が抑制されることがわかり、これが本発明に到った重要な事項になった。従来報告されていた加圧刺激のみや、伸展刺激のみの動的培養技術では、靭帯の骨結合部位から靭帯部位の階層組織構造を再現できなかった。本発明による加圧―ねじれ培養下では、基本的にはねじれ刺激を与える場合でも、エラスチン繊維束の両端のみではねじられていない状態で、加圧のみの刺激を受けていることになる。それに対して繊維束の中央部ではひねり刺激が大きいため、結果的に両端部分では骨芽様細胞に分化誘導され、中央部分では靭帯細胞の分化維持が可能になる。
【0031】
また、エラスチン繊維の配向性がほぼ同一方向に向いている場合は、靭帯組織の強度を向上させることが可能になる。さらに、靭帯細胞は繊維上に接着し、生体の靭帯組織構造と同一の配向状態にすることが可能になる。
【0032】
上述のようにして靭帯細胞あるいは間葉系幹細胞を培養して得られた培養靭帯を、膝関節へ移植する方法としては、スポーツなどで特に損傷しやすい部位である例えば、膝の前十字靭帯、後十字靭帯などに対して以下の手技で導入することが考えられる。損傷した膝関節の十字靭帯の近くの骨にドリルで穴をあけ、細胞を組み込んだ靭帯再生用材料の末端をはめ込むことで培養靭帯の骨結合部位を作成し、関節をはさんでもう片側の骨にも同様に穴を開けて、培養靭帯を組み込む方法が考えられる。こうした方法で移植できる箇所としては、前十字靭帯に限らずあらゆる部位がその対象として適当と思われる。穴をあけた骨に接合する部分には、既に骨芽細胞などの骨自体との適合性が良好と思われる組織状態にあるため、骨と骨を強固に繋ぐことが可能で移植した生体へ生着が速いと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、実施例をもって本発明を詳細に説明するが、以下によって示される方法は、作用確認において用いたものであり、これに限定されるものではなく、その要旨を変更することなく様々に改変して実施することができる。
【0034】
(製造例1−水溶性エラスチンの作製)
豚大動脈由来の不溶性エラスチン(ECML社製)10gに対し0.25Mシュウ酸を45mL加え100℃で1時間加熱した。分解反応液を氷水で冷やした後3,000rpmで10分間遠心分離し不溶部分を集めた。この不溶部分に0.25Mシュウ酸を30ml加え100℃で1時間加熱した。加熱後に溶液を冷却し、遠心分離した後不溶部分を集めた。以上の操作を繰り返し、不溶部分がシュウ酸水溶液を含み膨潤する状態になるまで、可溶部分を除いた。5〜6回程度でこの状態になる。その状態に再度0.25Mシュウ酸を加え100℃に加熱することで分解した分画を、同様に冷却後、遠心分離して上澄み液を集め、カットオフ分子量が10,000〜14,000の透析チューブを用い、4℃に冷却した脱イオン水に対し、外液のpHが5〜6程度になるまで透析を行ってシュウ酸および低分子化したエラスチン分解物を除去した。上澄み液を孔サイズが0.45μmのフィルターで吸引ろ過し、ろ液を凍結乾燥して分解処理ごとに分けて水溶性エラスチンを得た。精製した水溶性エラスチンは、1%水溶液の凝集温度により表1の条件で5種類に分類した。凝集温度は10℃から1℃/分で上昇させ、透過光強度が50%になる温度と定義した。
【表1】

【0035】
(製造例2−架橋剤の製造)
水溶性エラスチンを用いてエラスチン構造体を作製するための化学架橋剤を以下のように作製した。この方法は、ドデカンジカルボン酸のカルボキシル基を4−ヒドロキキシフェニルジメチル−スルホニウムメチルサルフェート(以下DSP)により活性エステル化させるものである。具体的には1モルのドデカンジカルボン酸と2モルのDSPおよび2モルのジシクロヘキシルカルボジイミド(以下DCCD)をアセトニトリルに溶解し25℃で5時間撹拌し反応させる。反応過程で生じたジシクロヘキシル尿素をガラスフィルターで除去した。更に反応溶液(ろ液)をエーテルに滴下して固化させた。該固形物を減圧乾燥して目的の架橋剤を得た。化学構造および純度は1H−NMRにより確認した。
【0036】
(実施例1−靭帯細胞のエラスチンコーティングシャーレ上での細胞増殖性試験)
エラスチンのコーティングは市販の浮遊細胞培養用シャーレ表面に対し90秒間コロナ放電処理を行い、その後、製造例1にて作製した水溶性エラスチン溶液(エラスチンA、エラスチンB、エラスチンC、エラスチンD、エラスチンE)と水溶性I型コラーゲン溶液を各100μg/mlを1.5ml加え、6時間以上4℃の状態で静置して行った。その後、脱イオン水で洗浄を繰り返し、結合していないエラスチンを除いたものを使用した。まず市販の正常ヒト歯周靭帯繊維芽細胞(HPdLF、Lonza社)を無血清の専用培地と共に、7.5×10(cells/ml)で、各コーティングシャーレ上に播種した。5%CO培養装置(OLIMPUS MI−IBC)で24時間培養した後、光学顕微鏡(OLIMPUS
IMT−2)でパソコンのXCAPソフトに画像を取り込み、撮影枚数や撮影インターバルを設定した。播種してから24時間後を計測時間0とし72時間撮影し、撮影した画像は画像解析ソフトにて解析処理した。細胞数は、撮影した画像の解析より算出した。経時間的に撮影した細胞画像から各時間における細胞接着総数を測定し、細胞増殖度=[72時間後の細胞数(N)/撮影開始時(0時間)の細胞数(No)]として算出した。
【0037】
結果を図1に示す。水溶性エラスチンコーティングシャーレに接着した靭帯細胞は接着時に、エラスチンAは接着速度が低く播種後4時間で接着率は、播種した細胞数の50%程度であった。エラスチンB〜Eに関しては、ほぼ100%接着した。エラスチンAも12時間では90%以上接着した。播種して24時間後を時間0時間とした場合の72時間後の細胞接着比(N/No)に関しては、エラスチンAで約1.5倍、エラスチンBおよびエラスチンC、I型コラーゲン、非コート(コントロール)で約2倍、エラスチンDおよびエラスチンEで約3.5倍の細胞増加がみられた。即ち、エラスチンAでは細胞増殖性が抑制され、エラスチンDおよびエラスチンEでは細胞増殖が促進されていることがわかり、細胞に与える効果がエラスチンの種類により顕著であるといえる。特にエラスチンAは細胞増殖性を抑制することが特徴として見られる。
【0038】
(実施例2−エラスチン上での靭帯細胞表面マーカー解析)
足場材料に接着した靭帯細胞に与える影響として、エラスチンコーティングシャーレに播種した細胞の表面マーカー抗原発現量をフローサイトメトリー解析で検証した。比較としてコラーゲンコーティングおよび非コーティングシャーレで培養した。詳しくは、市販の正常ヒト歯周靭帯線維芽細胞をそれぞれ10%血清を含む専用培地と共に、5.0×10(cells/ml)で2mlを播種し、5%CO培養装置でサブコンフルエントになるまで培養した。0.1Mリン酸塩緩衝液で洗浄後、トリプシン溶液を2ml加え1分間静置し、細胞を剥離した。100G(800rpm)で1分間遠心分離し、上澄みを除き70%エタノールを加え5分間固定した。2%ウシ血清アルブミン/リン酸塩緩衝液を加え5分間静置した後、遠心分離し上澄みを除去した。調整した細胞懸濁液に抗CD抗体-FITC(BECKMAN COULTER社製)を2ml加え、暗所、室温で30分間反応させた。その後、0.1Mリン酸塩緩衝液で洗浄し、FACSCalibur(Becton Dickinson社製)の装置で発現量を測定した。用いたCD抗原は靭帯細胞のネガテイブマーカーであるCD14、CD34、ポジティブマーカーであるCD29、CD44およびCD45の5種類で行った。
【0039】
結果を図2に示す。図2はコラーゲンコーティングシャーレ、コントロールシャーレ、エラスチンAコーティングシャーレ
についての発現応答パターンである。エラスチンA上に接着し培養した靭帯細胞のCD29、CD44およびCD45発現量はコントロールやコラーゲンと同等であり、特に靭帯細胞から脱分化を促進してはいないことが分かる。このCDマーカーのエラスチンAに対する発現応答パターンは間葉系幹細胞も同等であった。
【0040】
[実施形態1]
図3を参照して、本発明に関わるエラスチン繊維束の製造方法およびその製造装置の好適な実施形体について詳細に説明する。なお図面の寸法比は必ずしも、説明のものと一致していない。図3の配向性繊維製造装置は、高電圧発生装置1をエラスチン水溶液噴出器2の金属ノズル部分3に接続し、ノズルより噴霧されたエラスチン溶液は、高速回転電極4をターゲットに繊維が噴霧され堆積する。電極の材質はステンレス製で回転軸に電極をつなぐことで通電する仕組みとした。回転電極のサイズは特に限定はしないが電極の幅は5cm程度以上の場合は高速回転時に風圧で繊維が乱れることから、回転数を調節することが必要になる。
【0041】
(実施例3−エラスチン繊維束の製造)
製造例1で作製した水溶性エラスチンAを250mg、製造例2で作製した架橋剤20mgおよびそれらを溶解させる溶媒トリフロロエタノール5mlおよびトリエチルアミン5mgを混合して、実施形態1で示した配向性繊維製造装置を用いて繊維化した。溶液の噴出速度は1.8ml/hで電圧は18kVとした。繊維ノズルは金属製注射針G21(テルモ社製)を用いた。電極の幅は4cmとし、回転電極の回転速度は0〜5,000回転/時間、線速度にして0〜1,200m/分で行った。得られたエラスチン繊維束は電極より注意深く外し、120℃で30分間静置して加熱架橋を行い水不溶性繊維束に変換した。作製した繊維の配向角度は、繊維化した後に走査型電子顕微鏡像を撮影し、回転方向に対して各繊維のずれ角度を測定した。
【0042】
(実施例4−エラスチン繊維束の配向性解析)
実施例3により電極の回転速度を変えてエラスチン繊維束を製造し、その後配向角度を測定し平均値を算出し、線速度に対してプロットした結果を図4に示す。電極の線速度が1,000m/分で配向角度ほぼ90度の条件、つまり同一方向に揃ったエラスチン繊維束が作成できることがわかった。図5にはエラスチン繊維束の形状を示した。A,B.C各写真のスケールバーは、Aが
1cm,Bが720μm, Cが100μmである。走査型電子顕微鏡像(C)に示すように同一方向に各繊維が配向している様子がわかる。図5中の繊維表面には静電気で斜めになった繊維が数本観察されるが、内部構造は全て同一方向の繊維構造であった。
【0043】
(実施例5−エラスチン繊維束の力学強度測定)
作成したエラスチン配向繊維束の力学強度を、引っ張り弾性率(Pa)と破断伸張率(%)を測定することにより評価した。繊維束直径1mmで長さ3cmの試験片の両断を引っ張り試験機に固定し、破断するまで0.1mm/秒の速度で引っ張り、その際の応力を測定し以下の式により弾性率を算出した。弾性率(Pa)=[測定時の応力変化(N)/試験片断面積(m)]/[{測定時の長さL−自然長Lo}/自然長Lo]。また破断した際の長さを破断伸張とし、自然長Loで比した値を破断伸張率とし、以下の式より算出した。破断伸張率(%)=破断長さL’(m)/自然長Lo(m)測定結果を表2に示した。配向させることによりエラスチン繊維束およびコラーゲン繊維束とも強度が上昇し、伸張率はやや低下した。エラスチン比率の大きい靭帯の生体組織での弾性率は約0.2〜0.4MPa、コラーゲン比率が大きい場合は2MPa程度である点から比較して、本技術により作成した繊維束は、初期状態で生体組織に極めて近い物性を持つと言える。また繊維径は配向および無配向の差が無く、エラスチン繊維で約1〜5μm程度のリボン状構造、コラーゲン線維で0.5〜3μm程度の円柱状構造であった。
【表2】

【0044】
(実施例6−エラスチン繊維束への靭帯細胞播種)
実施例3にて製造したエラスチン繊維束に対して、靭帯細胞を播種して接着させた際の接着状況を免疫蛍光染色法にて確認した。詳しくは、作成したエラスチン繊維束を高圧蒸気滅菌装置にて滅菌し、専用培地中に置き、その上から市販の正常ヒト歯周靭帯線維芽細胞を10%血清を含む専用培地と共に、1.0×10(cells/ml)で播種し、5%CO培養装置で1〜2週間培養した。培養後に培地を除去し、リン酸緩衝液で洗浄し、−20℃に冷却したアセトン/メタノール(1:1)溶液中にて5分間細胞を固定した。その後溶液を除去し風乾した。細胞に1次抗体として抗αSMA抗体を加え、4℃で飽和蒸気環境で一夜静置した。洗浄後、2次抗体(Goat anti-Mouse IgG FITC, Cy5)および核を染色するためPI(ヨウ化ピロリドン)溶液を1ml加え90分間暗所で静置し、再度リン酸緩衝液にて数回洗浄した。こうして作成した観察用試料を共焦点レーザー顕微鏡(FV1000,オリンパス社)にて観察し撮影した。
【0045】
結果を図6に示す。図6(A)では無配向エラスチン繊維束に接着した靭帯細胞を示しているが、白色に見えるアクチンが細胞骨格の向きを示しているとすると、方向性は全くない接着状態であることが分かる。それに対して図6(B)で示した配向性エラスチン繊維束に接着した靭帯細胞は、ほぼ全ての細胞が繊維方向に沿った接着をしていることが分かる。なお、図6(A)、(B)のスケールバーは50μmである。
【0046】
[実施形態2]複合培養法
図7を参照して、本発明に関わる加圧―ねじり複合型培養装置の好適な実施形体について詳細に説明する。なお図面の寸法比は必ずしも、説明のものと一致していない。図7の装置は、靭帯細胞あるいは間葉系幹細胞を播種・接着させたエラスチン繊維束11の両端を一対のロータリーアクチュエーター12に取り付けた治具13に固定し、密閉型培養器14内に設置し、圧力コントローラー15を接続した加圧用シリンダー型ポンプ16から培養液を送液して目的の加圧状態を培養器内に発生させる。ねじり刺激は一対のロータリーアクチュエーター12を制御するプログラマブルコントローラー17を接続して発生させる。一対の回転方向は逆方向になるように設定し、エラスチン繊維束11の中央部付近でねじり状態になる。培養器全体がCOインキュベーター18内に設置される。以上の状態で加圧―ねじり複合型刺激を発生させながら細胞培養を行う。
【0047】
(実施例7−繊維束上の靭帯細胞の骨芽様試験)
実施形態2に示した培養方法の検証方法として、実施例6に示した方法で靭帯を播種した配向性エラスチン繊維束に対して加圧―ねじれ刺激培養を行った。培養後の繊維束は、骨芽細胞マーカーとして知られるアルカリフォスファターゼ(ALP)活性を測定することで分化誘導効果を評価した。詳しくは、ALPラボアッセイキットにより活性値(unit/μl)を測定し、抽出した総タンパク質濃度(μg/μl)で規格化して、細胞数の影響を低減させ、単位タンパク重量当たりのALP活性値として換算した。
【0048】
結果を図8に示す。コントロールに比べて加圧のみの条件下(圧力0.8MPa、培養時間約12時間)ではALP活性値が上昇し、骨化に分化が促進されていることが分かる。特にエラスチンA繊維束での効果がコラーゲンでの効果より大きいことが分かる。更に、ねじり刺激のみの条件下(ねじり角50度、ねじり周期5cpm、培養時間12時間)ではALP活性がコントロールより著しく低下していることが分かる。この効果はコラーゲン繊維束でも同様の効果が見られ、力学刺激の分化誘導効果が明確に示された。
【0049】
(実施例8−複合培養によるマッピング)
実施例7に見られた繊維束の加圧刺激とねじり刺激2種の力学培養効果を同時に行うため、実施形態2に示した加圧−ねじり刺激複合培養を行った際の、繊維束の位置選択的な階層構造の評価を行った。条件は実施例7と同様に行い、配向性エラスチンA繊維束の端と中央部に分けて骨芽細胞マーカーをALPとし、靭帯細胞マーカーをIII型コラーゲンとし、抗体を用いて実施例6に示した免疫染色により各発現マーカーを検出した。
【0050】
表3にその繊維束に接着した細胞の分化状況の位置情報(マッピング)結果を示す。エラスチン繊維束の端の部分では、ALP発現が観測され骨芽化が進んでいることが示された。また中央部ではALP発現が少なく、代わりにIII型コラーゲンの発現が観察されたことから靭帯細胞として維持がされていることがわかった。即ち、ねじり刺激と加圧刺激が同時に加わる部分では、ねじり運動の効果が大きいため靭帯細胞として分化維持し増殖し、靭帯基質としてのコラーゲンの産生をしていることを明らかにした。この方法により、繊維束の両端部分では骨芽化し、骨結合部位として機能することが充分に期待でき、中央部分では靭帯組織として有効な構造であることを明らかにした。
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】細胞増殖比(72時間後)
【図2】各細胞外マトリックス上に接着した靭帯細胞の表面抗原
【図3】配向性エラスチン繊維製造システム
【図4】電極回転線速度と繊維配向角度
【図5】配向エラスチン繊維束
【図6】配向エラスチン繊維束に接着した靭帯細胞の配向性
【図7】加圧・ねじり複合型培養装置
【図8】繊維束上での靭帯細胞の動的培養後のALP活性
【符号の説明】
【0052】
1 高電圧発生装置
2 シリンジポンプ
3 ノズル
4 高速回転電極
11 エラスチン繊維束(靭帯)
12 ロータリーアクチュエーター
13 治具
14 耐圧培養器
15 圧力コントローラー
16 加圧用シリンダー型ポンプ(培地供給用)
17 プログラマブルコントローラ―(PCL)
18 COインキュベーター


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラスチン繊維束による少なくとも次の(a),(b)の工程を含み製造される前十字靭帯。
(a)エラスチン繊維が同一方向に束ねられて成形される繊維束構造を有してなる細胞培養用支持担体に、靭帯細胞または間葉系幹細胞を播種する第1の工程、
(b)該繊維束の両端を一対のロータリーアクチュエーターに接続した治具で固定し、ひねり刺激かつ、同時にシリンダー型培養液注入機による培養器内への加圧刺激を与えて培養する第2の工程。
【請求項2】
前記エラスチン繊維束の各繊維径は0.5〜5μm、繊維束径は0.1〜5mmで、該各繊維は同一方向に配向し、該繊維束の弾性率が0.2〜5MPaであることを特徴とする請求項1に記載の前十字靭帯。
【請求項3】
前記培養条件として、該各繊維のひねり角度は10〜90度、ひねり周期が1〜10cpmであり、同時に負荷する加圧刺激は0.1〜2MPaであることを特徴とする請求項1に記載の前十字靭帯。
【請求項4】
前記エラスチン繊維束による少なくとも次の(a),(b)の工程を含み製造される前十字靭帯の製造方法。
(a)エラスチン繊維が同一方向に束ねられて成形される繊維束構造を有してなる細胞培養用支持担体に、靭帯細胞または間葉系幹細胞を播種する第1の工程、
(b)該繊維束の両端を一対のロータリーアクチュエーターに接続した治具で固定し、ひねり刺激かつ、同時にシリンダー型培養液注入機による培養器内への加圧刺激を与えて培養する第2の工程。
【請求項5】
繊維束の両端を一対のロータリーアクチュエーターに接続した治具で固定し、ひねり刺激かつ、同時にシリンダー型培養液注入機による培養器内への加圧刺激を与えて培養する、請求項1に記載の前十字靭帯の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−192061(P2012−192061A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58771(P2011−58771)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(304026696)国立大学法人三重大学 (270)
【Fターム(参考)】