説明

前立腺癌の診断および病期分類のための非侵襲的マーカーとなる血中miRNA

本発明は、前立腺癌に罹患した被験体において前立腺癌を病期分類するための方法に関するものであり、この方法は、(a)前記患者由来のサンプル中の、miRNA-375, miRNA-141, miRNA-200b, miRNA-516a-3pおよびmiRNA9*からなる一群から選択される少なくとも1つのmiRNAの量、または前駆体分子の量を測定すること、ならびに(b)そうして測定された量を基準の量と比較することを含む。さらに、本発明は、前立腺癌の治療に反応しやすい被験体を識別するための方法、ならびに前立腺癌を診断するための方法に関する。さらに、本発明は、本発明の方法を実施するのに適したキットおよびデバイスを想定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前立腺癌に罹患した被験体において前立腺癌を病期分類するための方法に関するものであり、この方法は、(a)前記患者由来のサンプル中の、miRNA-375, miRNA-141, miRNA-200b, miRNA-516a-3pおよびmiRNA9*からなる一群から選択される少なくとも1つのmiRNAの量、または前駆体分子の量を測定すること、ならびに(b)そうして測定された量を基準の量と比較することを含む。さらに、本発明は、前立腺癌の治療に反応しやすい被験体を識別するための方法、ならびに前立腺癌を診断するための方法に関する。本発明はさらに、本発明の方法を実施するのに適したキットおよびデバイスを想定する。
【背景技術】
【0002】
前立腺癌は、西洋人男性でもっとも診断されることの多い悪性腫瘍であり、癌関連死の2番目に多い死因である。癌の発生および進行は、分子の変異によって進められるので、分子の特徴を分析すれば、最終的に個別の癌の性状についてよりよい予測が可能となる。
【0003】
前立腺癌は、発生率は高いが、腫瘍の悪性度および長期転帰はさまざまである。治療法を決定するために高リスクと低リスクの前立腺腫瘍を区別することは、今なお臨床の現場で未解決の問題である。前立腺癌の一般的分類法は、臨床的および病理学的パラメーター、たとえば術前前立腺特異抗原(PSA)、直腸指診(DRE)、経直腸超音波検査、および前立腺生検の組織学的悪性度分類(グリーソン(Gleason)スコア)などに基づいている。しかしながら、これらのパラメーターはいずれも、その予測力に限界がある。
【0004】
PCAを検出するために前立腺特異抗原(PSA)が広範に普及した結果、臓器に限局されたグリーソンスコアの低いPCAと診断される人数が増加したが、このような人たちは治癒する可能性がある。しかしながら、PSA検査の高感度には低い特異性が付随するので、多くの患者が不必要な生検採取に苦しむことになる。正常な前立腺症状を有するヒトは、総じて血液中のPSAレベルが4ng/ml未満である。4ng/mlから10ng/mlまでのPSAレベル(「グレーゾーン」)は、前立腺癌を有する確率が25%である。結果として、症例の75%で、異常なDREおよびこのグレーゾーンのPSAを有するヒトが、陰性の、言い換えれば不要と思われる生検を受けている。
【0005】
PSAは前立腺体積の指標であるので、前立腺癌の予後診断に役立てるには限界がある。したがって、診断を確認し、腫瘍の悪性度を評価するために前立腺組織生検が採取される。腫瘍組織は、グリーソンスコア(GS)システムを用いて、その細胞分化の状態に応じて分類される。現在、GSは臨床的リスクを等級別に分類するための、もっとも信頼性のある予後マーカーである。しかしながら、前立腺癌は多病巣疾患である。このため、生検採取の際に腫瘍を見逃すことも多く、生検試料中の腫瘍病巣が、癌の進行した病巣であるかどうか不明である。したがって、腫瘍の大部分は、根治的前立腺全摘除術後に悪性度分類を上げる必要がある。この悪性度分類の引き上げは、治療法の決定に影響を及ぼす可能性があるが、それは、GSの高い腫瘍が術後の生化学的再発および生存不良を伴うためである。
【0006】
個々の患者に関する治療法の決定は、その個体に存在する前立腺癌の病期と関連付けられる。前立腺癌の広がりの一般的な分類は、American Urological Association (AUA)によって開発された。AUA方式は、前立腺腫瘍をAからDまで、4つの段階に分ける。ステージAは、前立腺内部の顕微鏡的癌であって、さらにステージA1およびA2に分けられる。サブステージA1は前立腺内部の一部位に限局された高分化癌である。治療は一般的に、観察、根治的前立腺全摘除術、または放射線照射である。サブステージA2は、前立腺内部の複数部位にある中分化から低分化癌である。治療は根治的前立腺全摘除術または放射線照射である。ステージBは前立腺内部の触知可能な塊であって、やはりサブステージB1およびB2にさらに分けられる。サブステージB1では、癌は前立腺の一方の葉に小さな腫瘤を形成する。サブステージB2では、癌は大きい、もしくは複数の腫瘤を形成し、または前立腺の両葉に存在する。サブステージB1およびB2のための治療は、根治的前立腺全摘除術または放射線照射のいずれかである。ステージCは、前立腺の大半もしくは全体を侵す大きな癌の塊であって、やはり、さらに2つのサブステージに分けられる。サブステージC1では、癌は、前立腺を越えて広がっていてもよいが1つの途切れない塊を形成している。サブステージC2では、癌は、周囲の組織に浸潤した1つの途切れない塊を形成する。これら2つのステージの治療は、癌に対処する薬物を併用する、または併用しない、放射線照射である。第4の段階、ステージDは転移癌であり、やはりさらに2つのステージに分けられる。サブステージD1において、癌は骨盤のリンパ節に現れる。サブステージD2では、癌はリンパ節を越えて複数の組織を侵す。これら2つのステージの治療は、癌、および疼痛にも対処する全身薬である。
【0007】
しかしながら、現行の前立腺癌の病期分類法には限界がある。最初はA2、B、もしくはCと病期分類された前立腺癌のうち、50%もの癌が実際にはステージD、転移性である。転移癌を有する患者は、限局性の癌を有する患者より、予後が不良で、かなり異なる治療法を必要とするので、転移の発見は重要である。限局性および転移性の前立腺癌患者の5年生存率は、それぞれ93%および29%である。
【0008】
miRNAは短いRNA分子(19-26ヌクレオチド)であって、生物学的機能の重要な制御因子であることが示唆されている(Bushati N, Cohen SM. microRNA functions. Annu Rev Cell Dev Biol 2007;23:175-205)。miRNA発現の変化は、細胞周期、増殖、またはアポトーシスなどの重要な細胞プロセスに影響を及ぼす可能性があるので、癌の発生および進行への直接的な結び付きをもたらす(Calin GA, Croce CM. MicroRNA signatures in human cancer. Nat Rev Cancer 2006;6(11):857-66; Rosenfeld N, Aharonov R, Meiri E, et al. MicroRNAs accurately identify cancer tissue origin. Nat Biotechnol 2008;26(4):462-9)。
【0009】
血清中の安定な遊離miRNAを抽出して測定することができる可能性が最近明らかになったが、これは有望なバイオマーカーのためのリソースを示している。Lawrieらが、最初に、B細胞リンパ腫に罹患した患者の体液中でmiRNAの存在を明らかにした(Lawrie CH, Gal S, Dunlop HM, et al. Detection of elevated levels of tumour-associated microRNAs in serum of patients with diffuse large B-cell lymphoma. Br J Haematol 2008;141(5):672-5)。
【0010】
Mitchellらは、マウスモデルを用いて、腫瘍由来miRNAが上皮癌型から生じた場合であっても、血流に入ることを実証した。この研究において、かれらはさらに、転移性前立腺癌において、健康な対照と比較して、血中miRNA-141が上昇していることを明らかにした(Mitchell PS, Parkin RK, Kroh EM, et al. Circulating microRNAs as stable blood-based markers for cancer detection. Proc Natl Acad Sci U S A 2008;105(30):10513-89)。
【0011】
血中miRNAは、他のさまざまな癌において、腫瘍患者と健康な対照との間で異なるレベルで存在することも明らかになった(Tanaka M, Oikawa K, Takanashi M, et al. Down-regulation of miR-92 in human plasma is a novel marker for acute leukemia patients. PLoS ONE 2009;4(5):e5532; Chen X, Ba Y, Ma L, et al. Characterization of microRNAs in serum: a novel class of biomarkers for diagnosis of cancer and other diseases. Cell Res 2008;18(10):997-1006; Taylor DD, Gercel-Taylor C. MicroRNA signatures of tumor-derived exosomes as diagnostic biomarkers of ovarian cancer. Gynecol Oncol 2008;110(1):13-21)。しかしながら、無細胞miRNAが上皮癌の異なる病期の間で異なるレベルで存在することは認められなかった(Resnick KE, Alder H, Hagan JP, Richardson DL, Croce CM, Cohn DE. The detection of differentially expressed microRNAs from the serum of ovarian cancer patients using a novel real-time PCR platform. Gynecol Oncol 2008; Ng EK, Chong WW, Jin H, et al. Differential expression of microRNAs in plasma of colorectal cancer patients: A potential marker for colorectal cancer screening. Gut 2009)。
【0012】
したがって、前立腺癌の臨床管理を強化するために、腫瘍の進行を反映する新規の分子マーカーを特定する必要性は大いにある。特に、簡単で確実な前立腺癌の病期分類を可能にする手段および方法が必要であり、前立腺癌の診断を可能にする手段および方法、ならびに前立腺癌の治癒を目指す治療法に対して反応しやすい被験体の識別を可能にする手段および方法も必要である。このような信頼性のある手段および方法は未だ報告されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Bushati N, Cohen SM. microRNA functions. Annu Rev Cell Dev Biol 2007;23:175-205
【非特許文献2】Calin GA, Croce CM. MicroRNA signatures in human cancer. Nat Rev Cancer 2006;6(11):857-66;
【非特許文献3】Rosenfeld N, Aharonov R, Meiri E, et al. MicroRNAs accurately identify cancer tissue origin. Nat Biotechnol 2008;26(4):462-9
【非特許文献4】Lawrie CH, Gal S, Dunlop HM, et al. Detection of elevated levels of tumour-associated microRNAs in serum of patients with diffuse large B-cell lymphoma. Br J Haematol 2008;141(5):672-5
【非特許文献5】Mitchell PS, Parkin RK, Kroh EM, et al. Circulating microRNAs as stable blood-based markers for cancer detection. Proc Natl Acad Sci U S A 2008;105(30):10513-89
【非特許文献6】Tanaka M, Oikawa K, Takanashi M, et al. Down-regulation of miR-92 in human plasma is a novel marker for acute leukemia patients. PLoS ONE 2009;4(5):e5532;
【非特許文献7】Chen X, Ba Y, Ma L, et al. Characterization of microRNAs in serum: a novel class of biomarkers for diagnosis of cancer and other diseases. Cell Res 2008;18(10):997-1006;
【非特許文献8】Taylor DD, Gercel-Taylor C. MicroRNA signatures of tumor-derived exosomes as diagnostic biomarkers of ovarian cancer. Gynecol Oncol 2008;110(1):13-21
【非特許文献9】Resnick KE, Alder H, Hagan JP, Richardson DL, Croce CM, Cohn DE. The detection of differentially expressed microRNAs from the serum of ovarian cancer patients using a novel real-time PCR platform. Gynecol Oncol 2008;
【非特許文献10】Ng EK, Chong WW, Jin H, et al. Differential expression of microRNAs in plasma of colorectal cancer patients: A potential marker for colorectal cancer screening. Gut 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の根底にある技術的問題は、前記の必要を満たすための手段および方法を提供することであると見なすことができる。技術的問題は、請求項、および本明細書の下記において特徴付けられる実施形態によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、本発明は、前立腺癌に罹患した被験体において、前立腺癌を病期分類するための方法に関するものであって、その方法は
a) 前記被験体由来のサンプル中の、miRNA-375、miRNA-141、miRNA-200b、miRNA-516a-3pおよびmiRNA9* からなる一群から選択される少なくとも1つのmiRNAの量、または前記の少なくとも1つのmiRNAの前駆体分子の量を測定すること、
b) ステップa)で測定された、前記の少なくとも1つのmiRNAの量、または前記の前駆体分子の量を基準の量(1つもしくは複数)と比較すること、ならびに
c) ステップb)で得られた情報に基づいて、前記被験体の前立腺癌を病期分類すること
を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】前立腺癌患者の血清中の血中miRNAレベル。368個の血中miRNAのMAプロット。赤はLimma解析で特定された69個のmiRNA(p < 0.05、多重検定なし)。
【図2】転移性PCaの患者(n=7)および原発性PCaの患者(n=13)から採取された血清サンプル中の血中miRNA-375のCt値。fdr = 0.036(発現差異に関するテスト;多重検定補正後)。
【図3】5つの血中miRNAの発現レベルに基づく45個の血清サンプルのクラスタリング。発現レベルは、ヒートマップにおいて色分けされている。グリーソンスコア:黒、≧8またはM+;ダークグレー、グリーソン7;ライトグレー、グリーソン6;NM(リンパ節の状態または転移):黒、N1またはM+;ライトグレー、N0;白、NX;M(転移):黒、M+;ライトグレー、MX。
【図4A】45サンプル中のmiRNA-375の予測的バリデーション。血清サンプル中のmiRNA-375 Ct値を、a)リスク[9個の高リスク腫瘍(グリーソン≧8またはM+)、21個の中リスク腫瘍(グリーソン7)、および15個の低リスク腫瘍(グリーソン6)];およびb)リンパ節の状態(12個の腫瘍N1またはM+に対して21個の腫瘍N0)で分類した。統計的に有意な相違はウィルコクソンの検定を用いて判定した。
【図4B】45サンプル中のmiRNA-375の予測的バリデーション。血清サンプル中のmiRNA-375 Ct値を、a)リスク[9個の高リスク腫瘍(グリーソン≧8またはM+)、21個の中リスク腫瘍(グリーソン7)、および15個の低リスク腫瘍(グリーソン6)];およびb)リンパ節の状態(12個の腫瘍N1またはM+に対して21個の腫瘍N0)で分類した。統計的に有意な相違はウィルコクソンの検定を用いて判定した。
【図5】血中miRNAのバリデーション。a)リスク群[9個の高リスク腫瘍(グリーソン≧8またはM+)、21個の中リスク腫瘍(グリーソン7)、および15個の低リスク腫瘍(グリーソン6)]により分類された血清サンプル中のmiRNAのCt値。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の方法は好ましくは、in vitro法である。さらに、本発明の方法は上記で明記されたステップに加えて、いくつかのステップを含んでいてもよい。たとえば、追加のステップは、サンプルの前処理、またはその方法によって得られた結果の評価に関するものとすることができる。本発明の方法は、前立腺癌に罹患した被験体において前立腺癌を病期分類するために使用することが好ましい。しかしながら、本発明の方法は、前記被験体をモニタリング、確認、および細分類するために使用することもできる。本方法は、手動で行うことができるが、自動化の助けを借りてもよい。好ましくは、ステップ(a)および(b)は、全体として、または一部について、自動化の助けを借りることができるが、これはたとえば、ステップ(a)の測定については、適当なロボット設備もしくはセンサー装置、ステップ(b)では、コンピューターで実施される比較によるアシストである。
【0018】
当業者には当然のことながら、前記の病期分類は通常、分析すべき被験体の100%について正しいことを目的としているわけではない。しかしながら、この用語は、分析すべき被験体の統計上有意な部分について評価が妥当であることを必要とする。部分が統計上有意であるかどうかは、さまざまな周知の統計評価ツール、たとえば信頼区間の決定、p値の決定、スチューデントのt検定、マン・ホイットニー検定などを用いて、当業者は容易に決定することができる。詳細は、Dowdy and Wearden, Statistics for Research, John Wiley & Sons, New York 1983に見いだされる。好ましい信頼区間は、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98% または少なくとも99 %である。p値は好ましくは0.1、0.05、0.01、0.005、または0.001である。好ましくは、本発明によって想定される確率は、所与のコホートの被験体のうち少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%について病期分類が正しいことを許容する。
【0019】
本明細書で使用される「被験体」という用語は、雄の動物、好ましくは雄の哺乳動物、より好ましくはヒト男性に関する。しかしながら、本発明の前記方法によれば、被験体は前立腺癌に罹患していることが想定される。
【0020】
「前立腺癌」という用語は当技術分野で知られている。本明細書で使用されるように、この用語は、好ましくは、前立腺の増殖性病変または異常に関する。したがって、この用語には、好ましくは、前癌病変、悪性病変、ならびに固形腫瘍、および転移性疾患(局所転移も広範な転移も)が含まれる。
【0021】
被験体が前立腺癌に罹患しているかどうかを評価する方法は当技術分野で知られている。PCAのリスクが高い男性を臨床的に判断するプロセスは、科学的根拠に基づく臨床ガイドラインで決定される(Heidenreich A, Aus G, Bolla M, et al. EAU guidelines on prostate cancer. Eur Urol 2008;53:68-80)。
【0022】
本明細書で使用される「前立腺癌の病期分類」という用語は、好ましくは、前立腺癌のさまざまな病期を区別することを意味する。前立腺腫瘍の病期の一般的な分類法は、当業者によく知られている。手短に述べると、最もよく使用される病期分類法は、Tumour(原発腫瘍)、Nodes(所属リンパ節転移)、Metastasis(遠隔転移)(TNM)分類法であって、このシステムは、局所の腫瘍増殖についてT1(偶発的事象)からT4(隣接臓器の浸潤)までの4段階を識別する。それぞれの病期は、腫瘍の病理学的な成長の状態を表す。T1は、「偶発的」状態であって、経尿道的電気切除術後に、またはPSA検査後の生検によって、偶然、腫瘍が検知される状態を表す。この段階では、触診(DRE)でも超音波でも腫瘍は検知できないが、本発明の方法によれば診断することができる。T4は、進行した疾患であって、腫瘍が隣接臓器に浸潤した疾患を表す。リンパ節ステージ(N0-N1)および転移ステージ(M0-M1C)はそれぞれ、リンパ節および遠隔部位への病気の臨床的広がり(転移)を反映する。悪性度分類方式は、腫瘍における、細胞の退形成(大きさ、形および染色特性の変化)および分化(細胞がどれほどよく分化しているか)の程度を評価することができる。グリーソンの悪性度分類方式は、腫瘍細胞が明確に腺構造となるように配置される度合い、および細胞分化のレベルに基づいている。グリーソン方式は、病気の悪性度の高さについて6段階以上を識別するが、グレード1はもっとも悪性度が低く、グレード6以上は、もっとも悪性の癌である。
【0023】
本明細書で使用される「前立腺癌の病期分類」という用語は、好ましくは、軽度の前立腺癌と重篤な前立腺癌を識別することを意味する。本発明の文脈において軽症型の前立腺癌は、好ましくは、原発性前立腺癌である。重症型の前立腺癌は、好ましくは、転移した前立腺癌である。したがって、本発明の前記の方法は、原発性前立腺癌と転移した前立腺癌との区別を可能にすることが好ましい。
【0024】
本発明の方法において、「原発性前立腺癌」という用語は、好ましくは限局された前立腺癌に関する(たとえばpT2以下)。
【0025】
本発明の方法において、「転移した前立腺癌」という用語は、好ましくは転移した腫瘍、好ましくは骨転移腫瘍を伴う、前立腺癌に関する(たとえば、前立腺癌pN+、M+、全身的な病期)。
【0026】
本発明の方法の好ましい実施形態において、それは、高リスク、中リスク、および低リスクに区別される。
【0027】
本発明の方法において「低リスク」である被験体は、グリーソンスコア6以下の前立腺癌に罹患した被験体に関する。
【0028】
本発明の方法において「中リスク」である被験体は、グリーソンスコア7の前立腺癌に罹患した被験体に関する。
【0029】
本発明の方法において「高リスク」である被験体は、グリーソンスコア8以上の前立腺癌に罹患した被験体に関する。
【0030】
「サンプル」という用語は、体液サンプル、分離された細胞サンプル、または組織もしくは臓器由来サンプルを意味する。体液サンプルは周知の技術によって得ることができ、好ましくは、血液、血漿、血清、もしくは尿サンプル、より好ましくは血液、血漿、もしくは血清サンプルが挙げられる。組織もしくは臓器サンプルは、任意の組織もしくは臓器から、たとえば生検によって得られる。好ましい組織および臓器サンプルは前立腺から得られるが、これは周知の方法により、好ましくは針生検によって、採取することができる。分離された細胞は、体液、または組織もしくは臓器から、遠心分離もしくは細胞選別などの分離技術によって得られる。本発明の方法において好ましい細胞は、前立腺細胞である。本発明の方法において、もっとも好ましいサンプルは、血液、血清、もしくは血漿サンプルである。
【0031】
本発明の方法の好ましい実施形態において、サンプルは、本明細書に記載のmiRNA分子もしくはその前駆体分子をさらに富化および/または精製するために、周知の方法でさらに処理される。追加の処理は、マーカーの性質、すなわち測定すべきマーカーがmiRNAであるのか、それとも前駆体分子であるのかに応じて決まってくる。好ましくは、マーカーがmiRNAであれば、(サンプル採取後に)低分子RNA(たとえば、18から24ヌクレオチドの長さ)は当業者に周知の方法により富化および/または精製することができる。好ましくは、バイオマーカーが前駆体分子であれば、(サンプル採取後に)前記の全RNAを当業者に周知の方法により富化および/または精製することができる。
【0032】
サンプルからmiRNA分子を富化するために、第1段階としてサンプルから全RNAを精製することができる。第2段階では、全RNAをポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離することができる。第3段階において、低分子RNA(18から24ヌクレオチドの長さ)の画分を、ポリアクリルアミドゲルから精製することができる。本発明の文脈において、サンプルからmiRNAを単離することも考えられる。具体的には、血清サンプルから無細胞RNAを単離するために、フェノール/グアニジンによる溶解、およびシリカ膜による精製を組み合わせて使用することができる。
【0033】
さらに、さまざまなmiRNAミミック(たとえば、c. elegans cel-miRNA-39、cel-miRNA-54、cel-miRNA-238由来、実施例を参照されたい)を、精製の効率性のために、spike-inコントロールとしてサンプルに添加することができる(Mitchell PS, Parkin RK, Kroh EM, et al. Circulating microRNAs as stable blood-based markers for cancer detection. Proc Natl Acad Sci U S A 2008;105(30):10513-89)。
【0034】
(特に、定量的RT-PCRによってRNAを定量するために)RNAサンプルの採取後に逆転写を行うことがさらに考えられる(下記を参照されたい)。
【0035】
マイクロRNA(miRNA)は、遺伝子の発現を制御する約21-23ヌクレオチドの長さの一本鎖RNA分子である。前記miRNAは、成熟miRNAと呼ばれることも多い。miRNAは非コードRNAであり、したがって、タンパク質に翻訳されない。miRNAは、一次転写物(pri-miRNA)に由来するが、この転写物ははじめに短いステムループ(ヘアピン)構造(pre-miRNA)となり、次に機能的なmiRNAへとプロセシングされる。成熟miRNA分子は、対応する標的mRNAと部分的に相補的であるので、結合は、翻訳阻害もしくはmRNA分解をもたらす。
【0036】
本発明において、miRNA-375、miRNA-141、miRNA-200b、miRNA-516a-3pおよびmiRNA9*からなる一群から選択される少なくとも1つのmiRNAの量、またはその前駆体分子の量を、被験体由来サンプル中で測定すべきである。
【0037】
前記miRNAは、一本鎖RNA分子である。miRNA-375の配列を配列番号1に、miRNA-141の配列を配列番号2に、miRNA-200bの配列を配列番号3に、miRNA-516a-3pの配列を配列番号4に、そしてmiRNA9*の配列を配列番号5に示す。
【0038】
本明細書で使用される「少なくとも1つ」という表現は、好ましくは「1つのmiRNA」または「2つ以上」、具体的には2、3、4、もしくは5つのmiRNA、またはその前駆体を意味する。したがって、さまざまなmiRNAもしくはその前駆体の量を測定することによって前立腺癌を病期分類することが考えられる。
【0039】
前記のmiRNAの前駆体分子は、好ましくは、対応するpri-miRNAであるが、より好ましくは、対応するpre-miRNAである。miRNA-375のpre-miRNA前駆体の配列を配列番号6に、miRNA-141のpre-miRNA前駆体の配列を配列番号7に、miRNA-200bのpre-miRNA前駆体の配列を配列番号8に、miRNA-516a-3pのpre-miRNA前駆体の配列を配列番号9に、そしてmiRNA9*のpre-miRNA前駆体の配列を配列番号10に示す。
【0040】
被験体のサンプル中の、前記配列番号のいずれかのバリアントの量を測定することも考えられる。こうしたバリアントは、好ましくは、配列番号1から10のいずれか1つと、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98% または少なくとも99% 同一な核酸配列を有する。2つ以上の核酸配列間の同一性の程度(百分率、%)は、好ましくはNeedleman-WunschアルゴリズムまたはSmith-Watermanアルゴリズムによって決定される。配列アラインメントを実行するために、PileUpプログラム (J. Mol. Evolution., 25, 351-360, 1987, Higgins 1989, CABIOS, 5: 151-153)、またはGapプログラムおよびBestFitプログラム(Needleman 1970, J. Mol. Biol. 48; 443-453 およびSmith 1981, Adv. Appl. Math. 2; 482-489)が使用されることになるが、これらはGCGソフトウェアパケット(Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, Wisconsin, USA 53711, vers. 1991)の一部である。上記の配列同一性の値(パーセント(%))は、好ましくは、配列領域全体にわたって下記の設定でGAPプログラムを用いて決定されるが、この設定は、他に特に断らない限り、配列アラインメントの標準設定として常に使用されるものとする:Gap Weight: 50、Length Weight: 3、Average Match: 10.000ならびにAverage Mismatch: 0.000。
【0041】
当然のことながら、本発明に関する診断/鑑別は、pre-miRNAの一部分の量を測定することによっても行うことができる。たとえば、診断は、被験体由来のサンプルにおいて、対応するmiRNA分子のmiRNA前駆体分子のループの量、すなわち、成熟miRNAとは反対側のヘアピンアームからプロセシングされた低分子RNAの量を測定することによって行ってもよい。
【0042】
miRNA分子もしくはその前駆体分子の量の測定は、適切と見なされる任意の方法によって行うことができる。前記の量を測定するための好ましい方法は実施例に記載する。好ましい方法は、Mitchellらも記載しており、それはその記述内容全体について参考として本明細書に含めるものとする(Mitchell PS, Parkin RK, Kroh EM, et al. Circulating microRNAs as stable blood-based markers for cancer detection. Proc Natl Acad Sci U S A 2008;105(30):10513-89)。
【0043】
miRNAもしくはその前駆体分子の量は、分析すべきmiRNAもしくは前駆体分子、または前記miRNAもしくは前記前駆体の増幅産物を特異的に検出するオリゴヌクレオチドプローブを用いて、決定することができる(「増幅産物」という用語の説明については、下記を参照されたい)。
【0044】
特異的なオリゴヌクレオチドプローブによるmiRNAもしくはその前駆体の量の測定は、好ましくは、miRNAもしくはその前駆体分子またはその増幅産物を、それらの転写物もしくは増幅産物と特異的に結合するオリゴヌクレオチドプローブと、ハイブリッド形成させるステップを含んでなる。本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、好ましくは、前記miRNAもしくはその前駆体分子に特異的な一本鎖核酸分子であって、好ましくは、標的と特異的にハイブリダイズする一連のヌクレオチドを含んでおり、したがって、標的ポリヌクレオチドに対して相補的である。前記の一連のヌクレオチドは、標的ポリヌクレオチドに含まれる配列領域に対して、好ましくは、85%、90%、95%、99% 同一、より好ましくは100% 同一である。標的分子がmiRNAであるならば、プローブオリゴヌクレオチドは、前記miRNAに対して、好ましくは、85%、90%、95%、99% 同一、より好ましくは100% 同一である。2つ以上の核酸配列間の同一性の程度(百分率、%)は、好ましくは、Needleman-WunschアルゴリズムまたはSmith-Watermanアルゴリズムによって決定される。配列アラインメントを実行するために、PileUpプログラム (J. Mol. Evolution., 25, 351-360, 1987, Higgins 1989, CABIOS, 5: 151-153)、またはGapプログラムおよびBestFitプログラム(Needleman 1970, J. Mol. Biol. 48; 443-453 およびSmith 1981, Adv. Appl. Math. 2; 482-489)が使用されるが、これらはGCGソフトウェアパケット(Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, Wisconsin, USA 53711, vers. 1991)の一部である。上記の配列同一性の値(パーセント(%))は、好ましくは、配列領域全体にわたって下記の設定でGAPプログラムを用いて決定されるが、この設定は、他に特に定めない限り、配列アラインメントの標準設定として常に使用されるものとする:Gap Weight: 50、Length Weight: 3、Average Match: 10.000ならびにAverage Mismatch: 0.000。
【0045】
オリゴヌクレオチドプローブは標識されていてもよく、miRNAもしくはその前駆体分子(またはその増幅産物)の量の測定を可能にする酵素などの、他の修飾を含有していてもよい。標識化は、当技術分野で周知のさまざまな技術によって、使用すべき標識に応じて行うことができる。好ましい標識は、本明細書において別に記載する。
【0046】
本発明の方法の好ましい実施形態において、miRNAの(またはその前駆体分子の)量の測定は、サンプルに含まれるmiRNA(またはその前駆体分子)を増幅し、そうして生成された増幅産物の量を測定するステップを含んでなる。前記増幅産物の量を測定することによって、miRNA分子の量(またはその前駆体分子の量)を評価することができる。好ましくは、増幅産物の量は上記のようなオリゴヌクレオチドプローブを用いて測定される。
【0047】
miRNAの増幅産物の量をサンプル中で測定すべき場合、miRNAはMitchellらによる記載のように増幅することができる(上記引用文中、たとえばMitchellの報文の図1aを参照されたい)。miRNAは3'および5'末端で、逆転写およびPCRのための普遍的配列を含有する一本鎖オリゴヌクレオチドにライゲートされる。ライゲーション産物の逆転写を実行する。逆転写後、得られた産物をPCRによって増幅する。
【0048】
本発明の方法のより好ましい実施形態において、前記PCRはリアルタイムPCR(RT-PCR)である。したがって、miRNAの量は、好ましくは定量的リアルタイムPCRによって測定される。
【0049】
「リアルタイムPCR」という用語は、当技術分野で知られている。PCR反応の終了時点で増幅産物を検出する従来のPCR法とは対照的に、リアルタイムPCRを実行する場合、PCRアッセイから放射されるシグナルを、それぞれのPCR増幅サイクル時間の増幅産物の量の指標として、PCR反応の間、モニターする。リアルタイムPCRは、通常、蛍光レポーターの検出および数量化に基づく。シグナルは反応におけるPCR産物の量に比例して増加する。
【0050】
リアルタイムPCRを実行する場合、miRNAまたはその前駆体分子の量は、あらかじめ決められた量の前記マーカーの段階希釈物(たとえば、無希釈、1:4、1:16、1:64、1:128)のリアルタイムPCRによって作製された標準曲線と、結果を比較することにより決定することができる。さらに、量を正確に測定するために、測定された量を、ノーマライゼーションRNA(もしくはDNA)の量で割り算することがあるが、このノーマライゼーションRNA(もしくはDNA)は、異なるサンプル間で起こりうるRNA量の変動を基準化することができる。ノーマライゼーションRNAは、好ましくはサンプルに添加されるRNA(もしくはDNA)である(spike-in、実施例を参照されたい)。
【0051】
さらに、本発明のマーカー量を、好ましくは前立腺組織サンプルにおいて、in situハイブリダイゼーションによって測定することも考えられる。
【0052】
本明細書で使用される「量」という用語は、miRNAもしくは前駆体分子(またはその増幅産物)の絶対量、それらの相対量もしくは濃度、ならびにそれらに相関する任意の値もしくはパラメーターを含んでいる。こうした値もしくはパラメーターは、特異的なあらゆる物理的もしくは化学的性質に由来する強度シグナルの値であって、直接測定によりそれらから得られる前記の値を含んでおり、たとえば強度値である。さらに、本明細書において別に記載される間接的な測定によって得られる、あらゆる値もしくはパラメーター、たとえば、生物学的読み取り系から測定される発現レベルが含まれる。当然のことながら、前記の量と相関する値、もしくはパラメーターは、あらゆる標準的な数学的操作によって得ることもできる。リアルタイムPCRを実行する場合、Ct値(Ct:Cycle threshold(閾値に達するサイクル数))を決定することが特に好ましいが、このCt値は、分析すべきマーカーの相対量を示すものである。Ct値を決定する方法は当技術分野でよく知られている。概して、サンプル中のマーカー量が多いほど、Ct値は低い。
【0053】
本明細書で使用される「比較する」という用語は、分析すべきサンプルに含まれるmiRNA、その前駆体分子(または前記miRNAもしくは前駆体分子の増幅産物)の量と、本明細書において別に特定される適当な基準源の量とを比較することを含んでいる。当然のことながら、本明細書で使用される「比較」は、対応するパラメーターもしくは値の比較を指しており、たとえば、絶対量は、基準の絶対量と比較するが、濃度は基準濃度と比較し、あるいは検査サンプルから得られた強度シグナルは、基準サンプルの同タイプの強度シグナルと比較する。本発明の方法のステップ(b)において言及される比較は、手動で行うことができるが、コンピューターを利用して実行することもできる。コンピューターを使った比較のために、測定された量の値は、コンピュータープログラムによりデータベース中に保存されている適当な基準に相当する値と比較することができる。コンピュータープログラムは、比較の結果をさらに評価することも可能であって、すなわち、適当な出力フォーマットで、求める評価を自動的に提供することができる。ステップ(a)で測定された量と基準の量との比較に基づいて、前立腺癌に罹患した被験体由来サンプルで、前立腺癌を病期分類することができる。
【0054】
「基準の量」という用語は、前立腺癌に罹患した被験体において前立腺癌を病期分類することを可能にする量を表す。基準の量(1つもしくは複数)は、さまざまな病期の前立腺癌に罹患した被験体のサンプルから導くことができる。
【0055】
たとえば、原発性前立腺癌と転移した前立腺癌を鑑別すべき場合、基準の量は (i) 原発性前立腺癌に罹患した被験体、および/または(ii)転移性前立腺癌に罹患した被験体のサンプルから導くことができる。
【0056】
たとえば、低リスク、中リスク、および高リスクを鑑別すべき場合には、基準の量は、(i)低リスクの被験体、(ii)中リスクの被験体、および/または(iii)高リスクの被験体のサンプルから導くことができる。
【0057】
基準は、一群のそうしたサンプルから得られる平均値であってもよい。好ましくは前記基準は、血液、血漿もしくは血清サンプルから得られる。基準が生検組織サンプルから得られる場合、前記サンプルは前立腺癌組織を含んでいるべきであり、または基本的に前立腺癌組織からなっているべきである。
【0058】
基準の結果は、本発明の方法を適用することによって得ることができる。基準は、一群の前記サンプルから得られる平均値とすることもできる。さらに、基準はまた、前立腺癌に関してさまざまな病期(好ましくは前記の病期)にある個体の代表的集団、好ましくは米国、アジアもしくは欧州人集団の、本発明の方法に記載のマーカーの相対量もしくは絶対量に関する、計算された基準値が好ましいが、もっとも好ましいのは平均値もしくは中央値である。前記集団の個体の前記マーカーの絶対量もしくは相対量は、本明細書で別に記載されるように測定することができる。適当な基準値、好ましくは平均値もしくは中央値、を計算する方法は当技術分野でよく知られている。前記の被験体集団は、複数の被験体、好ましくは少なくとも5、10、50、100、1,000、もしくは10,000人の被験体を含んでいるべきである。当然のことながら、本発明の方法で診断されるべき被験体と、前記の多数の被験体のなかの被験体は、同一人種に属するものとする。
【0059】
より好ましくは、「基準」は、一群の基準被験体、たとえば原発性前立腺癌に罹患した一群の被験体、転移性前立腺癌に罹患した一群の被験体、検査すべき被験体を含む集団について特有の少なくとも1つの特徴に関する値を測定すること;ならびに中央値、平均値、変位値、PLS-DA、ロジスティック回帰法、ランダムフォレスト分類法、または閾値を与える他の方法など、本明細書で別に言及されるものを含めて、適当な統計的算定基準によって基準を算出すること、により得ることができる。閾値は、診断および予後検査の感度および特異性に関する望ましい臨床状況を考慮に入れるべきである。
【0060】
個々の被験体に適用可能な基準量は、年齢もしくは亜集団などのさまざまな生理的パラメーターに応じて、ならびに本明細書に記載のマーカー測定に使用された手法に応じて、さまざまとなる。適当な基準量は、検査サンプルとともに、すなわち検査サンプルと同時に、または検査サンプルに続いて、分析される基準サンプルから、本明細書の方法によって測定することができる。
【0061】
本明細書に記載の診断マーカーの基準の量を確立することができるので、被験体由来サンプル中のマーカー量をその基準の量と簡単に比較することができる。診断および/または予後検査の感度および特異性は、単に、分析上の検査の「質」に左右されるだけでなく、異常な結果であるとされる定義によっても左右される。実際には、「正常」および「疾病」集団において、変数値をその相対頻度に対してプロットすることによって、受信者操作特性曲線、すなわち「ROC」曲線が算定される。任意の特定のマーカーについて、前立腺癌のさまざまな病期にある被験体のマーカーレベルの分布は、オーバーラップしている可能性がある。こうした条件下で、検査は100%の正確さで完全に識別できるわけではなく、重なり合った面積は、検査が病気と正常を区別できない領域を示している。閾値が選択され、それより上なら(または、マーカーが病気とともにどう変化するかに応じて、それより下なら)検査は異常であると見なされ、それより下なら検査は正常と見なされる。ROC曲線の下側の面積は、認知された測定値が疾患の正しい識別を可能にする確率の尺度となる。検査結果が必ずしも正確な数字を与えない場合でも、ROC曲線を使用することができる。結果をランク付けすることができれば、ROC曲線を作製することができる。
【0062】
好ましくは、原発性前立腺癌と転移性前立腺癌を区別すべき場合、ならびに、基準結果が(i)原発性前立腺癌に罹患した被験体、および(ii)転移性前立腺癌に罹患した被験体から得られる場合、前立腺癌の病期分類は、検査サンプルから得られた検査結果と前記の基準結果の間の同一性もしくは類似性の程度に基づいて、すなわち、少なくとも1つのmiRNAマーカーもしくはその前駆体分子に関する、同一の、もしくは類似した、定性的もしくは定量的組成に基づいて、行うことができる。特有の特徴に関する値が同一であり、定量的測定の場合には強度値が同一であるならば、検査サンプルの結果、および基準結果は同一である。特有の特徴に関する値は同一であるが、強度値は異なっている場合、前記結果は類似している。このような相違は、好ましくは有意でなく、当然、強度に関する値が少なくとも基準値の1から99パーセンタイル、5から95パーセンタイル、10から90パーセンタイル、20から80パーセンタイル、30から70パーセンタイル、40から60パーセンタイルの区間内にあり、基準値の50、60、70、80、90、または95パーセンタイルであるという特徴を有する。
【0063】
好ましくは、低リスク、中リスク、および高リスクを識別すべき場合、ならびに基準結果が(i)低リスクの被験体、(ii)中リスクの被験体、および(iii)高リスクの被験体から得られる場合にも、同じことが当てはまる。
【0064】
また本発明の方法において、病期分類は、検査サンプルから得られた検査結果と、前記基準結果との相違、すなわち少なくとも1つのマーカーに関する定量的組成の相違に基づいていてもよいと考えられる。上記の計算された基準を使用する場合、同じことが当てはまる。この相違は、好ましくは、本発明の診断マーカーの絶対量もしくは相対量の増加であるべきである。好ましくは相対量もしくは絶対量の増加は有意であって、すなわち基準値の45から55パーセンタイル、40から60パーセンタイル、30から70パーセンタイル、20から80パーセンタイル、10から90パーセンタイル、5から95パーセンタイル、1から99パーセンタイルまでの区間の外側にある。
【0065】
さらに、閾値は、基準量として用いることもできると考えられる。閾値を超える、検査サンプル中の本明細書に記載のマーカーの量は、重症型の前立腺癌の指標となるが、閾値を下回る量は、軽症の前立腺癌を示すことになる。
【0066】
有利なことに、本発明で実施された研究から、前記被験体由来の血漿サンプルにおいて、miRNA-375、miRNA-141、miRNA-200b、miRNA-516a-3p、およびmiRNA9*からなる一群から選択される少なくとも1つのmiRNA、もしくは前記の少なくとも1つのmiRNAの前駆体分子の量を測定し、そうして測定された量を基準の量と比較することによって、前立腺癌に罹患した被験体における前立腺癌の確実な病期分類が可能となることが明らかになった。具体的には、前立腺腫瘍の進行と相関性のある血清中のmiRNAを特定するために、2つの臨床的リスク群において667個のヒトmiRNAをモニターすることによって、スクリーニング研究を行った。miRNA-375、miRNA-9*、miRNA-141、miRNA-200bおよびmiRNA-516a-3pは、原発性前立腺癌と比較すると、転移性前立腺癌患者の血清中に非常に多くあることが確認された。
【0067】
さらに、特定されたmiRNA(miRNA-375、miRNA-9*、miRNA-141、miRNA-200bおよびmiRNA-516a-3p)を、独立した患者コホートの血清サンプルを用いた予測的バリデーション研究で分析した(実施例を参照されたい)。バリデーション研究は、選択された血中miRNAが腫瘍の進行と大いに相関することを証明した。したがって、血中miRNAは、前立腺癌の臨床病理学的エンドポイントと相関することが明らかになった。
【0068】
特定されたmiRNAは腫瘍の進行と相関しており、特にmiRNA-375はグリーソンスコア、リンパ節状態、およびpTステージと相関していた。本発明の基礎的研究において、血中miRNA-375を術前PSA値と比較した。miRNA-375は、高リスクの腫瘍(グリーソンスコア>=8)を有する患者、または転移性前立腺癌を有する患者の血清中で、低リスク腫瘍と比べて、相当高いレベルを示すことが明らかになった。これに対して、PSAレベルのグリーソン7とグリーソン>=8の腫瘍間の比較、ならびにリンパ節状態の比較に関して、有意な相違は検出されなかった。したがって、miRNA-375は、PSAより信頼性のある前立腺癌の病期分類を可能にする。
【0069】
miRNA-375は、低、中、および高リスク間の3グループごとの比較において、有意な相違を明らかにした。それに加えて、miRNA-375は、リンパ節陽性状態または病理ステージpT3の患者の血清中に、有意に非常に大量に存在していた。PSAおよびmiRNA-375の、病理学的エンドポイントに及ぼす影響を評価するために、ANOVA解析を行った(実施例を参照されたい)。全体として、ANOVA解析は、miRNA-375が前立腺癌の追加的な非侵襲的マーカーとなることを示したが、このことは、もし適用されれば、臨床状況における治療決定の改善に寄与するであろう。
【0070】
本発明の方法は、小量の血液、血清、もしくは血漿サンプルを用いて行うことができるので、特に有利である。したがって、生検を回避できる。
【0071】
本明細書上記で与えられる説明および定義は、変更すべきは変更して、以下の方法に適用される(特に明記される場合を除く)。
【0072】
さらに、本発明は、前立腺癌に罹患している疑いのある被験体において、前立腺癌を診断するための方法に関するが、前記方法は下記を含んでなる:
a) 前記被験体由来の血液、血清もしくは血漿サンプル中の、miRNA-375、miRNA-141、miRNA-200b、miRNA-516a-3p、およびmiRNA9* からなる一群から選択される少なくとも1つのmiRNAの量、または前記の少なくとも1つのmiRNAの前駆体分子の量を測定すること、
b) ステップa)で測定された、前記の少なくとも1つのmiRNA、もしくは前記前駆体分子の量を、(1つもしくは複数の)基準量と比較すること、ならびに
c) ステップb)で得られた情報に基づいて、前記被験体の前立腺癌を診断すること。
【0073】
前記方法の被験体は、当然、前立腺癌に罹患している疑いがある。さらに、被験体は前立腺癌の素因を有する可能性があることも想定される。
【0074】
本明細書で用いられる、前立腺癌に罹患している疑いのある被験体、もしくはその素因を有する被験体は、好ましくは、前立腺癌の指標となる症状もしくは臨床徴候もしくはパラメーターを示す被験体のことを指す。しかしながら、この用語は、外見上健康な被験体、すなわち前記の症状、臨床徴候もしくはパラメーターをいずれも示さない被験体にも関係がある。外見上健康な被験体は、予防的ケアの指標として、または集団検診の目的で、本発明の方法による検査を受ける可能性がある。
【0075】
前記方法に関連して使用される「基準量」という用語は、前立腺癌に罹患している疑いのある被験体において、前立腺癌の診断を可能にする量を意味する。基準の量は、(i)前立腺癌に罹患した被験体、または(ii)前立腺癌に罹患していないことが判明している被験体由来のサンプルから、導き出すことができる。
【0076】
基準は、そうしたサンプル群から得られる平均値とすることもできる。基準結果は、本発明の方法を適用することによって得ることができる。その代わりに、しかしそれでもやはり好ましいが、基準結果は、前立腺癌に罹っていないことが判明している被験体、またはそうした素因を持たないことが判明している被験体、すなわち前立腺癌に関して健康であり、その上、より好ましくは、他の疾病、特に癌疾患に関して健康な被験体に由来するサンプルから得ることができる。同様に、基準が生検組織サンプルから得られる場合、そのサンプルは基本的に、外見上健康な前立腺組織からなっているべきである。基準はそうしたサンプル群から得られる平均値とすることもできる。好ましくは、生検組織サンプルが想定される場合、基準の元になるサンプル、および検査サンプルは、同じ被験体から、すなわち、外見から見て前立腺癌に冒されている領域、および前立腺癌に冒されている疑いのある領域から、得ることができる。さらに、基準は、外見上健康であるか、または前立腺癌に罹患している個体からなる代表的集団の、本明細書に記載のマーカーの相対量もしくは絶対量に関する、計算された基準であっても好ましく、もっとも好ましいのは平均値もしくは中央値であるが、この場合前立腺癌に罹っている被験体は、所与の集団、好ましくは米国人、アジア人または欧州人集団、におけるその疾患の有病率の範囲内である。集団に属する前記個体の、前記マーカーの絶対量もしくは相対量は、本明細書において別に記載するように測定することができる。適当な基準値、好ましくは平均値もしくは中央値を計算する方法は、当技術分野でよく知られている。前記の被験体集団は、多数の被験体、好ましくは、少なくとも5、10、50、100、1,000もしくは10,000人の被験体を含んでいるべきである。当然のことながら、本発明の方法で診断されるべき被験体と、前記の多数の被験体のなかの被験体は同一人種である。
【0077】
より好ましくは、「基準」は、基準被験体の一群、すなわち、前立腺癌に罹患していることが判明している被験体の一群、前立腺癌に罹患していないことが判明している被験体の一群、検査すべき被験体からなる集団、または前立腺癌組織もしくは外見上健康な組織の生検組織サンプルの一群に特有の少なくとも1つの特徴に関する値を測定すること、ならびに本明細書において他に言及されるものを含めて、適当な統計的尺度によって基準を算出することによって、得られる。
【0078】
個々の被験体に適用可能な基準量は、年齢もしくは亜集団などのさまざまな生理的パラメーターに応じて、ならびに本明細書に記載のマーカー測定に使用された手法に応じて、さまざまとなる。適当な基準量は、検査サンプルとともに、すなわち検査サンプルと同時に、または検査サンプルに続いて分析される基準サンプルから、本明細書の方法によって測定することができる。
【0079】
本明細書に記載の診断マーカーの基準量を確立することができるので、被験体由来サンプル中のマーカー量をその基準量と簡単に比較することができる。診断および/または予後検査の感度および特異性は、単に、分析上の検査の「質」に左右されるだけでなく、異常な結果であるとされる定義によっても左右される。実際には、変数値を、「正常」および「疾病」集団におけるその相対頻度に対してプロットすることにより、受信者操作特性曲線、すなわち「ROC」曲線が典型的に算定される(上記も参照されたい)。
【0080】
基準結果が、前立腺癌に罹患していることが判明した被験体もしくは被験体群から得られる場合、前記疾患は、検査サンプルから得られた検査結果と、前記の基準結果との間の、同一性もしくは類似性の程度に基づいて、すなわち、少なくとも1つの本明細書に記載のマーカーに関する、同一の、もしくは類似した、定性的もしくは定量的組成に基づいて、診断することができる。特有の特徴に関する値、ならびに、定量的測定の場合には強度値が、同一であるならば、検査サンプルの結果、および基準結果は同一である。特有の特徴に関する値は同一であるが、強度値は異なっている場合、前記結果は類似している。このような相違は、好ましくは有意でなく、当然、強度に関する値が少なくとも基準値の1から99パーセンタイル、5から95パーセンタイル、10から90パーセンタイル、20から80パーセンタイル、30から70パーセンタイル、40から60パーセンタイルの区間内にあり、基準値の50、60、70、80、90、または95パーセンタイルであるという特徴を有する。
【0081】
基準結果が、前立腺癌に罹患していないことが判明している被験体もしくはグループから得られる場合、前記疾患は、検査サンプルから得られた検査結果と前記基準結果との相違、すなわち、本明細書に記載の少なくとも1つのマーカーに関する定性的もしくは定量的組成の相違に基づいて診断することができる。上記の計算された基準値が使用される場合、同じことが当てはまる。この相違は、好ましくは、本発明の診断マーカーの絶対量もしくは相対量の増加であるべきである。好ましくは、相対量もしくは絶対量の増加は有意であって、すなわち、45から55パーセンタイルの間、40から60パーセンタイルの間、30から70パーセンタイルの間、20から80パーセンタイルの間、10から90パーセンタイルの間、5から95パーセンタイルの間、1から99パーセンタイルの間の区間の外側にある。
【0082】
したがって、基準は、前立腺癌に罹患していることが判明している被験体から導くことができる。好ましくは、検査サンプルと基準に関する同一の、もしくは類似した結果は、前立腺癌に罹患した被験体の指標となる。
【0083】
上記のように、基準は、前立腺癌に罹患していないことが判明している被験体から導くこともできる。本発明の診断マーカー量が前記基準より多いことは、好ましくは、その被験体が前立腺癌に罹患していることを示す。
【0084】
さらに、基準値として閾値を用いることができると考えられる。検査サンプル中の、本明細書に記載のマーカー量が閾値を超えていれば、被験体が前立腺癌に罹患ていることを示すであろうし、その量が閾値を下回れば、被験体が前立腺癌に罹患していないことを示しているであろう。
【0085】
有利なことに、本明細書に記載のマーカーは、前立腺癌に罹患した被験体由来のサンプル中では、前立腺癌に罹患していない被験体由来サンプルより増加している。したがって、前記マーカーの測定によって、前立腺癌に罹患している疑いのある被験体において、前立腺癌の確実な診断が可能となる。前記マーカーの量が血液、血漿、もしくは血清サンプル中で測定されるならば、こうしたサンプルは容易に採取できるので、前記方法は特に有利である。
【0086】
本明細書においてすでに記載したように、進行に関する分類および判定は、効果的で適切な治療的介入を可能にするために重要である。具体的には、前立腺癌が進行して転移の生じるステージ、たとえばステージ3aおよび3bに入る前に、治療的介入を始めることが望ましい。
【0087】
さまざまなmiRNA(もしくはその前駆体分子)の測定は、信頼性のある前立腺癌の病期分類を可能にする(上記を参照されたい)。前立腺癌の治療は、前立腺癌の病期によって決まってくるので、こうしたマーカーの測定によって、前立腺癌に罹患した患者の治療に関して決断を下すことができる。
【0088】
したがって、本発明は、前立腺癌治療に反応しやすい被験体を識別するための方法に関するが、その方法は下記を含んでなる:
a) miRNA-375、miRNA-141、miRNA-200b、miRNA-516a-3pおよびmiRNA9*からなる一群から選択される、少なくとも1つのmiRNAの量、または前記の少なくとも1つのmiRNAの前駆体分子の量を、前立腺癌に罹患した被験体由来サンプル中で、測定すること、
b)ステップa)で測定された、前記の少なくとも1つのmiRNA、もしくは前記の前駆体分子の量を、(1つもしくは複数の)基準量と比較すること、ならびに
c)前立腺癌治療に反応しやすい被験体を特定すること。
【0089】
本明細書でなされた定義および説明は、変更すべきは変更して、前記方法に適用される(特に指示のある場合を除く)。
【0090】
前記方法は、前立腺癌治療に反応しやすい、または反応しにくい被験体を識別することを可能にするので、前立腺癌に罹患した被験体が、前立腺癌治療から利益を得られるか否かを判定することができる。適当な前立腺癌治療には、外科手術、放射線照射、および、より好ましくは全身化学療法がある。前記治療法は当技術分野でよく知られており、たとえば、Heidenreich A, Aus G, Bolla M, et al. EAU guidelines on prostate cancer. Eur Urol 2008;53:68-80 、またはNCCN Clinical Practice Guidelines in OncologyTM Prostate Cancer, Version 1.2008に記載されている。
【0091】
当然のことながら、前立腺癌治療に反応しやすい被験体を識別する前記方法に使用されることが好ましい基準は、局所進行性前立腺癌(pT3)または全身的病期の前立腺癌(pN+、M+)に罹患していることが判明している被験体から導き出されるべきである。より好ましくは、検査サンプルと基準について同一の、もしくは類似した結果は、こうした場合に前立腺癌治療に対して反応しやすい被験体を示している。あるいはまた、基準は、好ましくは、局所進行性前立腺癌(pT3)にも全身的病期の前立腺癌(pN+、M+)にも罹患していないことが判明している被験体から、したがって、たとえば限局性前立腺癌(pT2)に罹患している被験体から、導くこともできる。より好ましくは、前記基準と比較して増加した(好ましくは統計上有意に増加した)miRNAの量、もしくはその前駆体の量は、前立腺癌治療に反応しやすい被験体を示している。増加が統計上有意であるかどうかを、当業者は容易に判定することができる。
【0092】
本発明はさらに、下記を含んでなる、前立腺癌の進行を診断する方法に関する:
(a) miRNA-375、miRNA-141、miRNA-200b、miRNA-516a-3pおよびmiRNA9*からなる一群から選択される、少なくとも1つのmiRNAの量、または前記の少なくとも1つのmiRNAの前駆体分子の量を、前立腺癌に罹患した被験体由来の第1のサンプル中で、測定すること、
(b) 少なくとも1つのmiRNA、もしくは前記の少なくとも1つのmiRNAの前記前駆体分子の量を、前記被験体の第2のサンプル中で、測定すること、ならびに
(c) 前記第1サンプル中の量と前記第2サンプル中の前記量を比較すること。
【0093】
第1サンプル中の量と比べて第2サンプル中のマーカー量が、好ましくは、増加、より好ましくは、統計上有意に増加することは、進行前立腺癌を示す。
【0094】
「前立腺癌の進行」および「進行前立腺癌」という用語は、前立腺癌があるステージから別のステージに、好ましくはより進んだ病期に変わることに関する。好ましくは、本発明の方法で想定される前立腺癌の進行は、限局されたステージ(pT2)から局所進行性
ステージ(pT3)もしくは全身性ステージ(pN+、M+)への進行である。本明細書においてすでに記載されているように、進行の分類および判定は、効果的で適切な治療的介入を可能にするために重要である。
【0095】
好ましくは、第2サンプルは、前記第1サンプルの後、4から6ヶ月以内、6から12ヶ月以内、12から24ヶ月以内、より好ましくは24から48ヶ月以内に得られる。
【0096】
上記のように、前記第2のサンプル中のマーカー量が前記第1のサンプル中の前記マーカーの量と比べて増加すれば、前立腺癌の進行を示している。前記増加は統計上有意であることが好ましい。増加が統計上有意であるかどうかは、当業者により容易に決定される。前立腺癌の進行を示す、好ましい増加は、20%、30%、40%、50%であるが、より好ましくは100%である。
【0097】
本発明はさらに、前立腺癌治療、もしくは前立腺癌の進行に対する治療の成功をモニターするための方法を検討する。その方法は、やはり本発明の前記方法のステップを含んでなるものであって、診断結果に基づいて治療の成功を確認する。当然のことながら、治療の成功は、病的な、もしくは進行したステージから、健康な、もしくは進行度の低い病期へと、少なくとも1つのバイオマーカーが減少する(好ましくは有意に減少する)結果をもたらすはずである。
【0098】
さらに、本発明は、本発明の方法を実行するのに適したキットおよびデバイスに関する。
【0099】
したがって、本発明は、前立腺癌に罹患した被験体において前立腺癌を病期分類するために適したデバイスに関するが、そのデバイスは以下を含んでなる:
a) miRNA-375、miRNA-141、miRNA-200b、miRNA-516a-3pおよびmiRNA9*からなる一群から選択される少なくとも1つのmiRNA、またはその前駆体分子のための検出物質を含んでなる分析ユニットであって、その分析ユニットが、検出物質により検出される、サンプル中の前記の少なくとも1つのmiRNA分子、もしくはその前駆体分子の(1つもしくは複数の)量を測定するために適合化されている、前記分析ユニット、および
b) 分析ユニットから得られた(1つもしくは複数の)測定値と(1つもしくは複数の)基準値との比較を実行するための、具体的に組み込まれたコンピュータープログラムコードを有する、コンピューターを含んでなる評価ユニット。
【0100】
さらに、本発明は、前立腺癌に罹患している疑いのある被験体において、前立腺癌を診断するのに適したデバイスに関するが、そのデバイスを下記を含んでなる:
a) miRNA-375、miRNA-141、miRNA-200b、miRNA-516a-3pおよびmiRNA9*からなる一群から選択される、少なくとも1つのmiRNA、またはその前駆体分子のための検出物質を含んでなる分析ユニットであって、その分析ユニットが、検出物質により検出される、サンプル中の前記の少なくとも1つのmiRNA分子、もしくはその前駆体分子の(1つもしくは複数の)量を測定するために適合化されている、前記分析ユニット、および
b) 分析ユニットから得られた(1つもしくは複数の)測定値と(1つもしくは複数の)基準値との比較を実行するための、具体的に組み込まれたコンピュータープログラムコードを有する、コンピューターを含んでなる評価ユニット。
【0101】
さらに、本発明は、前立腺癌治療に反応しやすい被験体を識別するのに適したデバイスに関するが、そのデバイスは下記を含んでなる:
a) miRNA-375、miRNA-141、miRNA-200b、miRNA-516a-3pおよびmiRNA9*からなる一群から選択される、少なくとも1つのmiRNA、またはその前駆体分子のための検出物質を含んでなる分析ユニットであって、その分析ユニットが、検出物質により検出される、サンプル中の前記の少なくとも1つのmiRNA分子、もしくはその前駆体分子の(1つもしくは複数の)量を測定するために適合化されている、前記分析ユニット、および
b) 分析ユニットから得られた(1つもしくは複数の)測定値と(1つもしくは複数の)基準値との比較を実行するための、具体的に組み込まれたコンピュータープログラムコードを有する、コンピューターを含んでなる評価ユニット。
【0102】
本明細書で使用される「デバイス」という用語は、予測を可能にするように、互いに動作可能となるよう連結された、少なくとも前記の手段を含んでなる、手段のシステムに関する。本明細書に記載のマーカーの量を測定するための好ましい手段、および比較を実行するための手段は、本発明の方法と関連して上記に記載されている。動作可能となるように手段を結び付ける方法は、デバイスに含められる手段のタイプに応じて決まってくる。たとえば、前記マーカーの量を自動的に測定する手法が適用される場合、本明細書に記載の疾患を診断もしくは鑑別するために、前記の自動操作法によって得られたデータを、たとえば、コンピュータープログラムで処理することができる。そうした場合、その手段は、1つのデバイスに含まれていることが好ましい。したがって、前記デバイスは、サンプル中のマーカー量を測定するための分析ユニット、および結果として得られたデータを鑑別診断用に処理するためのコンピューターユニットを含んでいてもよい。好ましい検出手段は、上記の本発明の方法に関わる実施形態に関連して記載される。このような場合、これらの手段が動作可能となるように連結されるのは、システムのユーザーが、マニュアルで与えられた指示および解釈により、量の測定結果、およびそれに関する診断値を一つに結びつけるからである。手段は、そうした実施形態において、別々のデバイスとして存在していてもよく、好ましくは、キットとして合わせてパックされる。当業者は、容易に手段を結びつける方法を認識している。好ましいデバイスは、専門的な臨床医の特別な知識なしで使用できるもの、たとえば、サンプルをロードするだけでよい電子デバイスである。結果は、診断パラメーターに関する生データのアウトプットとして、好ましくは絶対量もしくは相対量として、与えられてもよい。当然のことながら、こうしたデータは臨床医による解釈を必要とする。しかしながら、アウトプットが処理された診断生データからなり、その解釈には専門医を必要としないような、エキスパートシステムデバイスも考えられる。さらに、好ましいデバイスは、本発明の方法による、上記の、分析ユニット/デバイス、または評価ユニット/デバイスを含んでいる。
【0103】
さらに、本発明は、前立腺癌に罹患した被験体において前立腺癌を病期分類するのに適したキットに関するが、そのキットは下記を含んでなる:
a) miRNA-375、miRNA-141、miRNA-200b、miRNA-516a-3pおよびmiRNA9*からなる一群から選択される、少なくとも1つのmiRNA、またはその前駆体分子のための検出物質、および
b) 前記検出物質により検出される、前記の少なくとも1つのmiRNA分子、もしくはその前駆体分子の量を測定するのに適したデバイスであって、このデバイスが、(1つもしくは複数の)前記の量と(1つもしくは複数の)基準の量との比較を行うためにも適合化されている、前記デバイス。
【0104】
さらに、本発明は、前立腺癌に罹っている疑いのある被験体において前立腺癌を診断するのに適したキットに関するが、そのキットは下記を含んでなる:
a) miRNA-375、miRNA-141、miRNA-200b、miRNA-516a-3pおよびmiRNA9*からなる一群から選択される、少なくとも1つのmiRNA、またはその前駆体分子のための検出物質、および
b) 前記検出物質により検出される、前記の少なくとも1つのmiRNA分子、もしくはその前駆体分子の量を測定するのに適したデバイスであって、このデバイスが、(1つもしくは複数の)前記の量と(1つもしくは複数の)基準の量との比較を行うためにも適合化されている、前記デバイス。
【0105】
さらに、本発明は、前立腺癌治療に反応しやすい被験体を識別するのに適したキットに関するが、そのキットは下記を含んでなる:
a) miRNA-375、miRNA-141、miRNA-200b、miRNA-516a-3pおよびmiRNA9*からなる一群から選択される、少なくとも1つのmiRNA、またはその前駆体分子のための検出物質、および
b) 前記検出物質により検出される、前記の少なくとも1つのmiRNA分子、もしくはその前駆体分子の量を測定するのに適したデバイスであって、このデバイスが、(1つもしくは複数の)前記の量と(1つもしくは複数の)基準の量との比較を実施するためにも適合化されている、前記デバイス。
【0106】
本明細書で使用される「キット」という用語は、前記手段を集めたものを表し、好ましくは、別々に、もしくは一つの容器に入れて提供される。容器はまた、本発明の方法を実行するための使用説明書を含んでいることが好ましい。このように、本発明は、本明細書に記載のマーカーを測定するための手段もしくは物質を含んでなるキットに関する。こうした手段もしくは物質、ならびにそれらを使用するための方法の例は、本明細書において与えられる。キットは、好ましくは、前記手段もしくは物質をすぐに使えるように含んでいる。好ましくは、キットは、使用説明書、たとえば、本発明の方法により与えられる、診断に関するあらゆる測定結果を解釈するための、ユーザーズマニュアルを追加して含んでいてもよい。具体的には、そうしたマニュアルは、測定されたマーカーの量を診断のタイプに当てはめるための情報を含んでいてもよい。詳細は本明細書において別に記載される。さらに、こうしたユーザーズマニュアルは、個々のバイオマーカーの(1つもしくは複数の)量を測定するために、キットの構成要素を正しく使用することに関する説明を提供することができる。ユーザーズマニュアルは、紙の形で、または電子的形態で与えられ、たとえば、CDもしくはCD ROMに保存されていてもよい。本発明はまた、本発明の方法のいずれかにおいて前記キットを使用することに関する。
【0107】
結局、本発明は、前立腺癌を病期分類するために、前立腺癌に罹患した被験体由来のサンプル中のmiRNA-375、miRNA-141、miRNA-200b、miRNA-516a-3pおよびmiRNA9*からなる一群から選択される少なくとも1つのmiRNA、またはその前駆体分子を使用することに関する。
【0108】
前立腺癌治療に反応しやすい被験体を識別するために、前立腺癌に罹患した被験体由来のサンプル中のmiRNA-375、miRNA-141、miRNA-200b、miRNA-516a-3pおよびmiRNA9*からなる一群から選択される少なくとも1つのmiRNA、またはその前駆体分子を使用することも本発明によって検討される。
【0109】
最後に、本発明は、前立腺癌を診断するために、前立腺癌に罹っている疑いのある被験体由来の血液、血漿、もしくは血清サンプル中の、miRNA-375、miRNA-141、miRNA-200b、miRNA-516a-3pおよびmiRNA9*からなる一群から選択される少なくとも1つのmiRNA、またはその前駆体分子を使用することに関する。
【0110】
上記の参考文献はすべて、その開示内容の全体について、ならびに上記に明記された具体的な開示内容についても、参考として本明細書に含めるものとする。
【0111】
本発明は以下の実施例で説明されるが、この実施例は本発明の範囲を制限もしくは限定するものではない。
【実施例1】
【0112】
前立腺癌の進行と関連付けられる血中miRNAをスクリーニングするために、21個の血清サンプルを分析した。RNAを精製し、667個のmiRNAをTaq-Man低密度アレイを用いて測定した。あるサンプル(IGPS-20)は、未確定の値が多数あるため(768のうち610)、外れ値として破棄した。血中miRNAの全体の存在量は、転移した腫瘍を有する患者から採取された血清サンプル中の無細胞miRNAが、原発性前立腺癌を有する患者と比較して、有意に高レベルであることが明らかになった(p=0.02、ウィルコクソン検定)。Limma解析は、このグループの中で存在量の多い69個のmiRNAを特定した(p<0.05、多重検定のための補正なし;図1)。miRNA-375は最高のマーカーであり、遠隔転移のある患者の血清中に有意に多量に存在する唯一の血中miRNAであった(fdr = 0.036;図2)。転移性前立腺癌患者の血清と、原発癌の患者の血清との間のlog fold changeは、かなり高かった(〜4 Ct値)。すべてのサンプルが測定可能な範囲に含まれていた(Ct < 40; 図1および2)。
【実施例2】
【0113】
miRNA-375、およびさらに4つの血中miRNA(miRNA-9*、miRNA-141、miRNA-200bおよびmiRNA-516a-3p)を、独立した患者コホートの45個の血清サンプルでのバリデーションのためにスクリーニング研究から選択した。階層的クラスタ分析から、5人の患者が、選択された血中miRNAを高レベルで示すことが明らかになった(図3)。これらの患者の腫瘍は、少なくとも1つの有害なリスクファクター(高いグリーソンスコア、リンパ節転移、もしくは遠隔転移)という特徴を有していた。これに対して、低リスクの特徴(悪性度の低い腫瘍、臓器に限局された腫瘍)を有する患者は、選択された5つのmiRNAを低レベルで示した。miRNA-141およびmiRNA-200bは、サンプル集合において高度に相関していた(Pearson; r = 0.8; 95%CI = 0.66)。
【0114】
分析のために、すべての血清サンプルを、患者のグリーソンスコア、リンパ節、およびpTの状態にしたがって分類した。遠隔転移のある患者の血清サンプルは、グリーソンスコア≧8の腫瘍およびリンパ節陽性患者の分類群に含まれた。腫瘍のグリーソンスコアが6(低リスク)、7(中リスク)、および≧8(高リスク;図5)である患者において、血中miRNAのレベルの相違が検出された。しかしながら、miRNA-375だけが、3つすべての分類群ごとの比較で有意な相違を示した(図4A)。さらに、miRNA-375は、リンパ節陽性状態(p = 0.034; 図4b)、または病理学的病期pT3(p=0.021)の患者の血清中で、有意に多く存在していた。骨転移した3人の患者は、血清中のmiRNA-375の4つの最大存在量の値を示す分類群の中に含まれていた。
【0115】
血中miRNA-375をPSAと共に、バリデーション研究において分析した。miRNA-375レベルは、高リスク腫瘍を有する患者(グリーソンスコア≧8、または転移した前立腺癌の患者)の血清では、かなり高かった(図4a)。それに対して、PSAレベルはグリーソン7とグリーソン≧8の腫瘍を区別することができず、異なるリンパ節状態を区別することもできなかった。しかしながら、PSAレベルは、低リスク腫瘍(グリーソンスコア3+3)の患者では、グリーソンスコア7の腫瘍を有する患者と比べてかなり低かった。
【0116】
臨床病理学的エンドポイントの予測に及ぼす2つの(miRNA-375およびPSA)マーカーの影響を評価するために、ANOVA解析を用いた。PSAはグリーソン6とグリーソン7の腫瘍を有意に識別した(表1)が、miRNA-375の添加は、さらに有意に、予測精度を改善した。それに対して、PSAに基づくグリーソン7とグリーソン≧8の腫瘍の比較は、ANOVA解析では有意な差を示さなかった。しかしながら、miRNA-375をモデルに導入することによって、予測力の改善がもたらされた。さらに、miRNA-375は、PSA予測モデルに加えると、リンパ節および病理学的状態の予測を改善した(表1)。
【0117】
表1:ANOVA解析
ANOVAモデルにおいて有意な効果を有するパラメーターが与えるp値
1行目:異なる病理学的パラメーターの識別に及ぼすPSA単独の効果
2行目:すでにPSAを含むモデルへのmiRNA-375の追加効果
【表1】

【実施例3】
【0118】
バリデーション
本発明者らは、中リスク(N0またはグリーソン7)の腫瘍と比較して、血中miRNA(miRNA-375、miRNA-141、およびmiRNA-200b)の血清レベルをさらに分析するために、高リスク腫瘍疾患(N1またはグリーソン8以上)を有する原発性前立腺癌患者から、より大きな独立したサンプル集団(n=71)を採取した。最初のバリデーション研究と同様に、血中miRNA-200bは、高リスク腫瘍と中リスク前立腺癌とを比べると、血清存在量に有意な差異を示さなかった(データは示さない)。しかしながら、血中miRNA-375およびmiRNA-141は、やはり高リスク前立腺癌患者においてより高レベルで検出された。miRNA-375およびmiRNA-141は、リンパ節陽性前立腺癌患者の血清中に、かなり多量に存在した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前立腺癌に罹患した被験体において、前立腺癌を病期分類するための方法であって、
a) 前記被験体由来サンプル中の、miRNA-375、miRNA-141、miRNA-200b、miRNA-516a-3pおよびmiRNA9* からなる一群から選択される少なくとも1つのmiRNAの量、または前記の少なくとも1つのmiRNAの前駆体分子の量を測定すること、
b) ステップa)で測定された、前記の少なくとも1つのmiRNAの量もしくは前記前駆体分子の量を、基準の量(1つもしくは複数)と比較すること、ならびに
c) ステップb)で得られた情報に基づいて、前記被験体の前立腺癌を病期分類すること
を含んでなる前記方法。
【請求項2】
前記サンプルが、血液、血漿、もしくは血清サンプルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の量が、定量的リアルタイムPCRによって測定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記の病期分類が、原発性前立腺癌と転移性前立腺癌の鑑別を含んでいる、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記の少なくとも1つのmiRNAの量、もしくはその前駆体分子の量が基準の量より大きいと、前記被験体が転移性前立腺癌に罹っていることを示し、前記の少なくとも1つのmiRNAの量、もしくはその前駆体分子の量が基準の量より低ければ、前記被験体が原発性前立腺癌に罹っていることを示す、請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記の病期分類が、高リスク、中リスク、および低リスクの鑑別を含んでいる、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前立腺癌の進行を診断するための方法であって、
a) 前立腺癌に罹患した被験体由来の第1のサンプルにおいて、miRNA-375、miRNA-141、miRNA-200b、miRNA-516a-3p、およびmiRNA9* からなる一群から選択される少なくとも1つのmiRNAの量、または前記の少なくとも1つのmiRNAの前駆体分子の量を測定すること、
b) 前記被験体の第2のサンプルにおいて、少なくとも1つのmiRNAの量、または前記の少なくとも1つのmiRNAの前駆体分子の量を測定すること、ならびに
c) 前記の第1のサンプル中の量と、前記の第2のサンプル中の量とを比較すること
を含んでなる前記方法。
【請求項8】
前立腺癌治療に反応しやすい被験体を識別するための方法であって、
a) 前立腺癌に罹患した被験体由来サンプル中の、miRNA-375、miRNA-141、miRNA-200b、miRNA-516a-3pおよびmiRNA9*からなる一群から選択される少なくとも1つのmiRNAの量、または前記の少なくとも1つのmiRNAの前駆体分子の量を測定すること、
b) ステップa)で測定された、前記の少なくとも1つのmiRNAの量、もしくは前記の前駆体分子の量を、(1つもしくは複数の)基準の量と比較すること、ならびに
c) 前立腺癌治療に反応しやすい被験体を識別すること
を含んでなる前記方法。
【請求項9】
前立腺癌に罹患している疑いのある被験体において、前立腺癌を診断するための方法であって、
a) 前記被験体由来のサンプルにおいて、miRNA-375、miRNA-141、miRNA-200b、miRNA-516a-3p、およびmiRNA9* からなる一群から選択される少なくとも1つのmiRNAの量、または前記の少なくとも1つのmiRNAの前駆体分子の量を測定すること、
b) ステップa)で測定された、前記の少なくとも1つのmiRNAの量、もしくは前記前駆体分子の量を、(1つもしくは複数の)基準の量と比較すること、ならびに
c) ステップb)で得られた情報に基づいて、前記被験体の前立腺癌を診断すること
を含んでなる前記方法。
【請求項10】
前立腺癌に罹患した被験体において前立腺癌を病期分類するのに適したデバイスであって、
a) 請求項1に記載の、少なくとも1つのmiRNA分子、またはその前駆体分子のための検出物質を含んでなる分析ユニットであって、その分析ユニットが、検出物質により検出される、サンプル中の前記の少なくとも1つのmiRNA分子の量、もしくはその前駆体分子の(1つもしくは複数の)量を測定するために適合化されている、前記分析ユニット、および
b) 分析ユニットから得られた測定値の比較を実行するための、具体的に組み込まれたコンピュータープログラムコードを有する、コンピューターを含んでなる評価ユニット
を含んでなる前記デバイス。
【請求項11】
前立腺癌に罹患した被験体において前立腺癌を病期分類するのに適したキットであって、
a) 請求項1に記載の少なくとも1つのmiRNA分子、またはその前駆体分子のための検出物質、および
b) 前記検出物質により検出される、前記の少なくとも1つのmiRNA分子、もしくはその前駆体分子の量を測定するのに適したデバイスであって、請求項1〜6のいずれか1つに記載の前記の量の比較を行うためにも適合化されている、前記デバイス
を含んでなる前記キット。
【請求項12】
前立腺癌を病期分類するための、前立腺癌に罹患した被験体由来のサンプル中のmiRNA-375、miRNA-141、miRNA-200b、miRNA-516a-3pおよびmiRNA9*からなる一群から選択される少なくとも1つのmiRNA、またはその前駆体分子の使用。
【請求項13】
前立腺癌の治療に反応しやすい被験体を識別するための、前立腺癌に罹患した被験体由来のサンプル中のmiRNA-375、miRNA-141、miRNA-200b、miRNA-516a-3pおよびmiRNA9*からなる一群から選択される少なくとも1つのmiRNA、またはその前駆体分子の使用。
【請求項14】
前立腺癌を診断するための、前立腺癌に罹っている疑いのある被験体由来のサンプル中のmiRNA-375、miRNA-141、miRNA-200b、miRNA-516a-3pおよびmiRNA9*からなる一群から選択される少なくとも1つのmiRNA、またはその前駆体分子の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−509169(P2013−509169A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535858(P2012−535858)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066515
【国際公開番号】WO2011/051471
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(512113803)
【出願人】(512111957)ウニヴェルシテートスクリニクム ハンブルク−エッペンドルフ (1)
【Fターム(参考)】