説明

剥ぎ取り表土のリサイクル方法

【課題】硝酸性窒素の溶脱を効果的に防止し、また、アルミニウム酸化物の溶脱を効果的に防止した剥ぎ取り表土のリサイクル方法を提供すること。
【解決手段】本実施の形態における剥ぎ取り表土のリサイクル方法では、剥ぎ取り表土の表土土壌を養分分析し、植物性有機物や動物性有機物を調合設計して、硝酸性窒素分やアルミニウム酸化物などの養分溶脱を防止することが可能な塩基飽和度60〜100質量%に設計管理することが可能となる。このため、土木土工工事・建築外構工事において道路・河川の法面等の剥ぎ取り表土を再利用するとき、一般廃棄物扱いで廃棄物処分することなく、有効にリサイクルできる可能性がある。従来のように廃棄物処分として廃棄物運搬費や処分費が不要となり時代のニーズにあった工事コストの削減が達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路、河川等の植物性有機物を含む土壌の表土を剥ぎ取った剥ぎ取り表土をリサイクルする剥ぎ取り表土のリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路、河川等の植物性有機物を含む土壌の表土を剥ぎ取った剥ぎ取り表土は、一般廃棄物処理に関する法律が適用されおり、植物残渣等の植物性有機物を含んだ剥ぎ取り表土有機物は、一般廃棄物として中間処理場で表土土壌から選別処理され堆肥等になり圃場へ還元されている。廃棄物扱い以前は、土木工事現場毎に剥ぎ取り表土として土砂扱いされ、残地に埋立処分されていた。
【0003】
然しながら、剥ぎ取り表土における植生のイラクサ、ダイオウ、ヨモギ、オオイタドリ等の植物質残渣には、窒素などが多く含まれており、これらと同じ様な有機物の植物質残渣が再利用されて土壌に混合されると、土壌でアンモニア態(性)窒素→亜硝酸態(性)窒素→硝酸態(性)窒素に消化され、地下水や河川へこの消化された硝酸態(性)窒素の硝酸イオンが過剰となって土壌に保持できずに溶出し硝酸汚染の原因となる。
【0004】
その硝酸汚染の主たる原因は、例えば、北海道網走地方における畜産地帯では、秋になるとアンモニア臭で鼻を塞ぎたくなる程の家畜糞尿からなる堆厩肥を、採草地へ未熟状態で過剰散布する畜産業の作業行為にある。然しながら、1998年10月の肥料取締法の改正により、特殊肥料である堆厩肥を、農林水産省の指導で、2004年には完熟状態で畑地に還元できる施設が殆ど完成を見ており問題は今後起きないと推察される。
【0005】
然し、畜産業における堆厩肥の原因が解消しても、剥ぎ取り表土には、堆厩肥と同じ様な陰イオンである窒素、硫酸、塩酸、リン酸などの養分が含まれており、リサイクル業者等の事業者自らが再利用するには、陽イオン、陰イオン等の養分を把握することが必要である。
【0006】
又、芝草が植生している土壌においても、過剰となった陽イオン、陰イオンが地下水や河川へ溶出しており、その傾向は、粘質土よりも砂質土の方が大きい、植生植物についてはマメ科よりイネ科の方が大きい。北海道網走地方の畑作では、タマネギ畑の土壌分析を肥料メーカーに委託し、陽イオン交換容量(CEC)と、作物に必要な微量要素は把握しているが、窒素、リン酸分については標準施肥により行っており分析が行われていないのが現状である。又、火山灰土壌のアルミニウム酸化物については全く注目されていない。剥ぎ取り表土については、土木工事において、土質の力学的性質について試験を行っているが、土木工事では利用分野が異なるので土壌分析は行っていないのが現状である。
【0007】
上述の通り、畑作の土壌分析は行われていても、剥ぎ取り表土については、土壌分析も植物性有機物である植物残渣の養分分析も行われていないのが現状である。近年、閉鎖性水域における富栄養化の問題や農村地域の地下水中の硝酸性窒素濃度の高まりは、多肥集約型農業における化学肥料の多量施用や畜産廃棄物の投棄的な土壌還元が原因とされ、その責任を問われる状況に至っている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0008】
又、土木工事において、剥ぎ取り表土の再利用を行うとすれば、上述の通り、農業における堆厩肥の土壌還元と同一であり、多肥集約型農業は、収穫物を収奪する土壌養分の収奪型であるのに対し、土木工事は、自然還元型植生であり降雨や融雪により、植物性有機物の窒素、硫酸、塩酸、リン酸養分が法面土壌に還元されず溶脱している。又、酸性雨の影響で土壌が酸性化し酸化アルミニウム(Al23)が20ppm程度土壌溶液に溶出している。同じく剥ぎ取り表土の植物性有機物を堆厩肥に換算すると、図2のステップS204に示すように、生有機物で21t/10aとなる。堆厩肥標準施肥5t/10a施用と比べれば如何に過剰であるかが判る。生有機物の過剰投入は塩酸(HCl)の過剰でカリ分の溶出が進行しリン酸が固定される。
【0009】
道路・河川の法面等の植生から、10a当たりわずかな陽イオン、陰イオン養分の溶脱であっても、道路・河川の占用面積規模が平方キロ単位となれば、この単位に応じて換算すれば陽イオン、陰イオン養分を多量に溶脱していることになる。
【0010】
この陰イオンである硝酸性窒素の環境基準への格上げには、地下水中の硝酸性窒素を始めとして、新鮮野菜中の硝酸塩含量が問題になっている背景があり、硝酸塩を多量に摂取するヒトでは乳児、家畜では反すう動物の牛などに致命的な影響を及ぼすことがある。
【0011】
過剰な硝酸を含んだ牧草は、牛に腰抜け症のような障害を与える(例えば、非特許文献2参照。)。硝酸を含んだ牧草は、サイレージ発酵の過程で、種々の微生物や硝酸還元菌の働きによって硝酸は還元される。しかし、硝酸塩減少率の高いサイレージはpHが高く発酵品質が低いものであるとの報告がある。下記に示す表1によれば、試験サンプルの充分に発酵したサイレージでは、乾物計算で硝酸態窒素(NO−N)濃度は68ppmであった。下記に示す表2によれば、アメリカのメリーランド大学のガイドラインでは1000ppm以下は充分な飼料と水が給与されていれば安全であると公表されている。
【0012】
【表1】

【0013】
【表2】

【0014】
水道原水として利用されている地下水の硝酸汚染は、肥料のやり過ぎが原因であると報じられている。肥料のやり過ぎは、化学肥料や農薬の問題だけでなく堆厩肥の過剰散布も問題であり、言い換えれば、剥ぎ取り表土の植物質有機物の自然還元過程も問題となる(例えば、非特許文献3参照。)。
【0015】
硝酸性窒素および亜硝酸性窒素の濃度が、公共用水域及び、地下水水質汚濁にかかる人の健康保護に関する環境基準の項目に格上げされている。今までは、水中に硝酸性窒素および亜硝酸性窒素が10mg/l以上存在したとしても飲用しなければ問題はなかった。
【0016】
極端な言い方をすれば10mg/l以上の硝酸性窒素が環境に存在すること自体が問題であると位置づけされたことになる。表3によれば、北海道網走地方のタマネギ産地、散村半径300mにおける浅井戸試料サンプル試験よれば、何れも10mg/lを超える硝酸性窒素が存在した。表4によれば、アメリカのペンシルバニヤ大学の牛の飲水中の硝酸性窒素濃度に関するガイドラインによると23ppmまでは影響がないと公表されている。
【0017】
【表3】

【0018】
【表4】

【0019】
新鮮野菜中の硝酸塩含量及び、サイレージの硝酸塩含量、飲用水の硝酸性窒素濃度を測定する方法として、インドフェノール青吸光光度法や下記の非特許文献4に記載されている中和滴定法、下記の特許文献1の分光光度計を利用した土壌イオン交換容量の速成測定方法がある。この方法では試験設備と時間・コストが必要となる。
【0020】
下記の特許文献2には密閉容器のなかで加熱処理し、有機物のセルロースやリグニンを灰化、分解させない方法で土壌改良材を製造すれば陽イオンを吸着、保持させることが述べられている。特許文献2中の段落番号「0030」と図1に記載されているデータによれば、陽イオン交換容量は低下し、pHは上昇した。下記の非特許文献5に記載されていることとは正反対の理論が述べられている。
【0021】
下記の特許文献3では、炭酸カルシウムと硫黄を重量比で1:1にすれば、CaCO3のアルカリ分が硫黄細菌であるバクテリヤの活動を抑制しながら効率良くアンモニア性窒素分を消化還元することが述べられている。すでに浄化槽排水の高度処理で実用化されている。ゼオライトのアルミニウムと珪酸の負のイオンに吸着したNaがNH4と置き換わることが述べられている。
【0022】
下記の特許文献4では、酸化ケイ素および酸化アルミニウムを主成分とする製紙汚泥の焼却灰の酸と、水酸化ナトリウムの塩基を反応させて、陽イオン交換容量が大きいフィリップサイトの土質改良材の製造方法が述べられている。陽イオン交換容量が大きいと云うことは、比表面積が大きいので水酸化ナトリウム(NaOH)が溶質して陽イオン交換容量が大きいことも考えられる。
【0023】
下記の特許文献5に記載されている発明は、古畳床を細かく裁断すると、コスト高になるので裁断及び粉砕を繰り返し、培地の比表面積を大きくし陽イオン交換容量を55meq/100g以下にした茸用培地を造る製造方法である。古畳である稲ワラの培地、おがくず、フスマ、米ぬかをそれぞれ混合し、陰イオンである窒素分を増やし陽イオン交換容量を最良の形態である20〜50meq/100gに調整した茸用培地の製造方法が述べられている。
【0024】
下記の特許文献6〜8では、剥ぎ取り表土を再利用した緑化方法が述べられている。特許文献6では、現地の植生や腐植土を採取し分解するヤシ繊維でできた植生袋に植生基材を密着させる方法が述べられている。
【0025】
下記の特許文献7では、剥ぎ取り表土を採取し、レキや除根を行い、二次フルイ網目20mmでレキや根を除去する該生育基盤材と接合剤を撹拌調合した吹き付け材料について述べられている。
【0026】
下記の特許文献8では、種子付き植生や種子含有腐植を採取すると、現地の植生環境を破壊するので、現地採取植生材料を少なくする方法として、生育基材と繁殖基材を二層に吹き付け緑化できる機械装置のことが述べられている。
【0027】
下記の特許文献9では、法面上部に厚みを持たせて土壌に保水力を確保し、草本類や木本類を繁茂させる方法が述べられている。
【0028】
下記の特許文献10ではアルミニウム鉱滓を芝用の土壌改良材として利用した場合について述べられている。アルミニウム鉱滓の元素組成は、N、Mg、C、Si、K、Na、Ca、Cu、S、Zn、Mn、P、で陰イオンおよび陽イオンのバランスが良い、又、植物の成長に必要とする微量要素が含まれている。アルミニウム鉱滓の水処理後のNaが増加している。アルミニウム鉱滓現物ではNに大きな数値が測定されているので、水処理後にNイオンを現物の1/3に減ずることで、冬場の芝枯れが防止できるように徒長を抑え成長時期を調整することで、緩衝的に土壌養分が芝に吸収されることが述べられている。
【0029】
下記の特許文献11では、アルファルファ抽出液には、土壌微生物の栄養源である粗タンパク質や全窒素量が多く含まれているので、土壌微生物を増殖させることができることが述べられている。
【0030】
【特許文献1】特開2001−324499号公報
【特許文献2】特開2001−299082号公報
【特許文献3】特許3430364号公報
【特許文献4】特開平07−113075号公報
【特許文献5】特開2003−259725号公報
【特許文献6】特開2004−278229号公報
【特許文献7】特開2002−167763号公報
【特許文献8】特開2004−360246号公報
【特許文献9】特開2005−16237号公報
【特許文献10】特開2004−59734号公報
【特許文献11】特開平07−126620号公報
【非特許文献1】地下水の硝酸汚染と農法転換 小川吉雄著 (社)農山漁村文化協会 2000年7月15日第1刷発行 p20〜21
【非特許文献2】土壌診断の方法と活用 藤原俊六郎他著 (社)農山漁村文化協会 1996年3月31日第1刷発行 p241
【非特許文献3】硫黄カルシウム剤による脱窒法 新日鐵化学(株)技術開発本部開発企画部編 化学工業日報社 2004年4月28日初版1刷発行 p86
【非特許文献4】詳解工場排水試験方法 改訂3版第5刷発行 並木博著 (財)日本規格協会 2003年4月16日第1刷発行 p276〜278
【非特許文献5】土のはたらき 岩田進午著 (社)家の光協会 2004年2月9日第10刷発行 p86
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
上述のように、水道原水として利用されている地下水が硝酸汚染されており、硝酸イオンは煮沸しても取り除くことが出来ない地下水の汚染源となっている問題があった。硝酸イオンを逆透過膜法によって除去することもできるが、同時にミネラル分も取り除くので地下水が軟水となってしまい地下水の有効活用が図れない。
【0032】
この硝酸汚染の影響により、地下水(井水)を利用している一般家庭では、温水ボイラーの銅パイプから濃緑色の硝酸銅(II)が溶出して、飲料水中に溶け込み飲用されて人間の生体内に取り込まれている。これは、地下水中の硝酸イオンと銅パイプの銅イオンが化合し濃緑色の硝酸銅(II)ができて生体内に取り込まれるためである。この取り込まれた硝酸銅(II)と、酸化ストレスによる脳神経系疾患・うつ病・若年性認知症との関係が問題視されるに至っている。
【0033】
そして、硝酸汚染の発生源として、畜産業から排出される未熟糞尿の採草地への散布と、化学肥料施用による硝酸性窒素の土壌中への溶脱が主な硝酸性窒素汚染源と考えられている。更に、剥ぎ取り表土の表土土壌中からも硝酸性窒素の溶脱が考えられている。
【0034】
剥ぎ取り表土が腐植化し、その表土土壌から硝酸性窒素が溶脱する他に、剥ぎ取り表土の植生そのものの生有機物から硝酸性窒素が溶脱する場合も考えられている。
【0035】
硝酸性窒素の溶脱は、多様な土壌そのものからも溶脱する。法面覆土、植生衣土、盛土材料は、芝草などの植生に充分な養分が含まれておらず、盛土材料は、レキ質土、重粘土、ローム、砂質土などの複数種類に土性分類され多様であり、養分を保持できる能力や水の通りに違いがある。土の物理的、化学的性質を分析することが必要である。剥ぎ取り表土に含まれる盛土材料が、陽イオン交換容量不足により硝酸性窒素が溶脱することがある。
【0036】
法面覆土、植生衣土、盛土材料にも養分を保持できる能力や保水力が必要であり、黒ぼく土のように水をよく通し、養分が保持できる土壌とすることが必要である。養分の保持力がなくなり水の通りが悪いと、物理的、化学的には緩衝能力のない吸着相の盛土材料から、硝酸性窒素が溶脱することがある。
【0037】
畑作物や牧草は、収穫物を通じ土壌養分を収奪することにより、土壌養分の施肥量と収穫物の収奪でバランスを取っており、計算上では土壌養分の収支が取れているはずである。しかし、慣行農法を継続し化学肥料に依存した土壌では、養分吸着の緩衝能力がなくなり硝酸性窒素の溶脱を招いている。また、法面植生物の茎、葉などが腐植することにより硝酸性窒素が溶脱することがある。
【0038】
肥料等において窒素の多量施用は硝酸などの陰イオンを生じるとともに、(例えば、土壌診断の方法と活用 藤原俊六郎他著 (社)農山漁村文化協会 1996年3月31日第1刷発行 p231参照。)これと結合した塩基の溶脱を促進し、土壌の酸性化を促すことになる。このため、法面覆土、植生衣土、盛土材料や植生芝草から、硝酸イオン、カルシウムイオンを溶脱させないで地下水、潅漑水の水質を保全することが必要である。強いては、水質基準を保全することが、牧草や野菜中の硝酸汚染を防止することになり、ヒトや牛を硝酸汚染から守ることになる。
【0039】
また更に、陰イオンの硫酸イオン、塩酸イオンによる土壌酸性化現象でアルミニウム酸化物が溶脱するという問題があった。
【0040】
土壌酸性化現象は、石油等の石化エネルギーの消費による、SOx・NOxの排出で地球規模の大気汚染進行による酸性雨の影響が大きく、また、剥ぎ取り表土の植生による硫酸イオン、塩酸イオンの影響もある。
【0041】
その影響により、硝酸イオン・硫酸イオン・塩酸イオンの土壌溶液が以下の化学式1のように酸化アルミニウムAlや水酸化アルミニウムAl(OH)を溶かす反応が起こり、土壌酸性化がアルミニウムイオン溶脱に関わっていることが明らかとなっている。
【0042】
【化1】

【0043】
剥ぎ取り表土の土壌酸性化現象を引き起こす代表的な植生は、以下の表5のオオイタドリ、ヨモギ、ダイオウ、イラクサ、ムラサキツメクサ、シロツメクサ、カラマツ(新芽)などが挙げられている。オオイタドリ、ヨモギ、イラクサ、カラマツなどは下草も生えない程の酸性土壌の出現を引き起こす。これは主に、硝酸(HNO3)・硫酸(H2SO4)・塩酸(HCl)が土壌菌により分解されることで酸性土壌となる。リン酸吸収はヨモギ、ヨシに多く、又、ナトリウム吸収は塩田などのアッケシソウに多い。リン酸及びナトリウムは、剥ぎ取り表土の法面などへの再利用では問題となる量ではない。
【0044】
【表5】

【0045】
そして、酸性土壌が出現すると、水素イオン濃度pHが5以下(H2O)でアルミニウムイオン(Al3+)が溶脱する(例えば、低pH土壌と植物 日本土壌肥料学会編 (株)博友社 1994年10月28日初版第1刷発行 p14〜40参照。)という問題が発生する。
【0046】
酸性土壌中の酸化アルミニウムAlは、少量の水(H)と反応して、以下の化学式2のようにアルミニウムイオン(Al3+)と水(H2O)になり土壌溶液に溶出する。又、アルミニウムイオン(Al3+)と少量の水(OH)が反応して水酸化アルミニウムAl(OH)が沈澱する。
【0047】
【化2】

【0048】
その他に、図6のように農業における硫安などの化学肥料施肥により土壌が酸性化し、中和するために消石灰投入などで酸性酸化物・塩基性酸化物とアルミニウム化合物の配位子交換(ステップS601)が行われ、溶脱するアルミニウムイオン(Al3+)によりアルツハイマー認知症(例えば、狂牛病BSEの化学−金属イオンと神経疾患 西田雄三著 牧歌舎 2004年2月10日初版第1刷発行 p23〜31、p74〜80参照。)との因果関係が問題となっている。又、以下の化学式3(a)のように消石灰過剰投入は、水素イオンの増加となり塩酸イオン(HCl)などの陰イオン溶脱を招くことが明らかとなっている。
【0049】
【化3】

【0050】
上述のように、100グラムの土がもつ負の電気量を示す陽イオン交換容量(CEC)と、100グラムの土がもつ正の電気量を示す陰イオン交換容量(AEC)に関する特許文献2〜5までに述べられている明細書、要約、請求項、発明の課題においては、硝酸イオン、アルミニウムイオン溶脱について明確に述べられているものはない。
【0051】
また、特許文献6〜8に記載されている剥ぎ取り表土の再利用では、植生土嚢を用いた方法、現地採取植生・種子の再利用、それを吹き付ける機械装置について述べられている。然し、述べられてはいないが、剥ぎ取り表土を再利用することにより、腐植には土壌微生物が繁殖し、肥沃となった土壌には土壌動物が生息し、食物連鎖の頂点いる猛禽類が生息できる。世界遺産に登録された北海道斜里町の知床ではこの緑化方法を採用しているが、硝酸イオン、アルミニウムイオン溶脱について明確に述べられているものはない。
【0052】
以上、本発明は上述の過大に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、硝酸性窒素の溶脱を効果的に防止し、また、アルミニウム酸化物の溶脱を効果的に防止した剥ぎ取り表土のリサイクル方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0053】
以上の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、植物性有機物を含む土壌の表土を剥ぎ取った剥ぎ取り表土をリサイクルする剥ぎ取り表土のリサイクル方法において、
塩基飽和度を60〜100質量%にするように植物性有機物を表土土壌に調合設計したことを特徴とする。
【0054】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の剥ぎ取り表土のリサイクル方法において、
前記植物性有機物は、破砕、選別、加熱、圧縮の工程を行った植物残渣、バーク、チッパーのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0055】
請求項3に係る発明は、請求項1または2のうちのいずれか一項に記載の剥ぎ取り表土のリサイクル方法において、
塩基飽和度を60〜100質量%にするように動物性有機物を表土土壌に調合設計したことを特徴とする。
【0056】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のうちのいずれか一項に記載の剥ぎ取り表土のリサイクル方法において、
前記表土土壌における植生には、イネ科、マメ科のうちの少なくとも1つの草本類が含まれていることを特徴とする。
【0057】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の剥ぎ取り表土のリサイクル方法において、
前記表土土壌におけるマメ科の植生には、ムラサキツメクサ、レンゲ、シロツメクサ、アルファルファのうちの少なくとも1つの草本類が含まれていることを特徴とする。
【0058】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載の剥ぎ取り表土のリサイクル方法において、
前記植物性有機物は、破砕、選別の工程を行ったイラクサ、オオイタドリ、ヨモギ、シロツメクサ、ムラサキツメクサ、ヨシのうちの少なくとも1つの草本類を含むことを特徴とする。
【0059】
請求項7に係る発明は、請求項4乃至6のうちのいずれか一項に記載の剥ぎ取り表土のリサイクル方法において、
前記表土土壌における植生に対して、青刈り収奪および/または畜産放牧の工程を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0060】
本発明に係る剥ぎ取り表土のリサイクル方法によれば、硝酸性窒素の溶脱を効果的に防止し、また、アルミニウム酸化物の溶脱を効果的に防止することが可能である。
【0061】
請求項1に係る発明によれば、土木工事現場の植物性有機物等を含む剥ぎ取り表土を一般廃棄物として処分することなくリサイクルでき、また、この剥ぎ取り表土の表土土壌を土壌分析し塩基飽和度を60〜100質量%とするように植物性有機物を表土土壌に調合設計することにより、塩基飽和度60質量%、即ちpH5.5以上として剥ぎ取り表土からのアルミニウム酸化物の溶脱を防止し、また、塩基飽和度100質量%、即ちpH7.0以下として硝酸性窒素の溶脱を防止することが可能となる。そして、水道原水として利用されている地下水への硝酸イオンやアルミニウムイオンの混入を低減することが可能である。
【0062】
請求項2に係る発明によれば、塩基飽和度を60〜100質量%とするように植物性有機物を表土土壌に調合設計することにより、植物性有機物が破砕、加熱、圧縮の工程を行った植物残渣、バーク、チッパーのうちの少なくとも1つを含んでいても剥ぎ取り表土からの硝酸性窒素、アルミニウム酸化物の溶脱を防止することができる。また、産業廃棄物であるバーク、チッパー等を有効にリサイクルすることができる。
【0063】
請求項3に係る発明によれば、土木工事現場の動物性有機物等を含む剥ぎ取り表土を一般廃棄物として処分することなくリサイクルでき、また、この剥ぎ取り表土の表土土壌を土壌分析し塩基飽和度を60〜100質量%とするように動物性有機物を表土土壌に調合設計することにより、塩基飽和度60質量%、即ちpH5.5以上として剥ぎ取り表土からのアルミニウム酸化物の溶脱を防止し、また、塩基飽和度100質量%、即ちpH7.0以下として硝酸性窒素の溶脱を防止することが可能となる。そして、水道原水として利用されている地下水への硝酸イオンやアルミニウムイオンの混入を低減することが可能である。また、動物性有機物であるカキやホタテ殻等を有効にリサイクルすることができる。
【0064】
請求項4に係る発明によれば、表土土壌における植生にイネ科、マメ科のうちの少なくとも1つの草本類が含まれていることにより、剥ぎ取り表土を畜産業における放牧地の土壌にリサイクルすることができる。また、植生のイネ科、マメ科の草本類を家畜の牛馬等が捕食することによって表土土壌から養分としてこれらの草本類に取り込まれた陽イオン、陰イオン等の収奪を図ることができ、陽イオン、陰イオン等が過剰となって剥ぎ取り表土から溶出することを防止できる。
【0065】
請求項5に係る発明によれば、マメ科の植生にムラサキツメクサ、レンゲ、シロツメクサ、アルファルファのうちの少なくとも1つの草本類が含まれていることにより、表土土壌が団粒化されて保水力が向上し、表土土壌が干ばつ化されることを防止して、植生の草本類を干ばつの被害から守ることができる。また、剥ぎ取り表土を調節して酸性化させ塩基飽和度100質量%以上となることを防止できる。
【0066】
請求項6に係る発明によれば、剥ぎ取り表土の塩基飽和度が100質量%以上となった場合に、イラクサ、オオイタドリ、ヨモギ、シロツメクサ、ムラサキツメクサ、ヨシのうちの少なくとも1つの草本類を含むことにより土壌酸性化現象を起こさせて、調節を行い100質量%以上となることを防止できる。
【0067】
請求項7に係る発明によれば、表土土壌における植生が青刈り収奪および/または畜産放牧の工程を行っていることにより、表土土壌から養分としてこれらの植生の草本類に取り込まれた陽イオン、陰イオン等の収奪を図ることができ、陽イオン、陰イオン等が過剰となって剥ぎ取り表土から溶出することをより効果的に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。本発明に係る剥ぎ取り表土のリサイクル方法は、土木土工工事・建築外構工事において道路・河川の法面等の植物性有機物を含む土壌の表土を剥ぎ取った剥ぎ取り表土をリサイクルする剥ぎ取り表土を、その塩基飽和度を60〜100質量%、即ち、水素イオン濃度pHを5.5〜7.0とするように、植物性有機物を剥ぎ取り表土の表土土壌に調合設計し、裸地等の対象領域にこの剥ぎ取り表土を造成するリサイクル方法である。
【0069】
ここで、剥ぎ取り表土とは、土木土工工事・建築外構工事等から発生する工事現場の土壌での植物性の有機物を含む表土のことをいう。ここでは、工事現場の植物等によりスキ取り・スキトリ伐開物・伐採木等の根・茎・葉・末木枝条を含んだ植物性有機物からなる表土を剥ぎ取り表土と定義する。
【0070】
植物性有機物を剥ぎ取り表土の表土土壌に調合設計する際には、図1に示す剥ぎ取り表土の循環図のステップS1のように、例えば小型反射式光度計を用いて表土土壌の土壌分析を行い、表土土壌の陽イオン交換容量(CEC)、陰イオン交換容量(AEC)を計測する。まず、十分に攪拌した表土土壌の一部から採取した試料を分析に用いる適切な量に調整し、その重さを計量する。そして、電子レンジ等による加熱で試料を十分に乾燥させ、これをミキサ等で破砕および攪拌し、試料の成分を抽出するための試料抽出液と混合させて小型反射式光度計で、硝酸イオン、アルミニウムイオン、陽イオン交換容量(CEC)、陰イオン交換容量(AEC)等の分析を行う。
【0071】
そして、これらの分析により求めた硝酸イオン、アルミニウムイオン、陽イオン交換容量(CEC)、陰イオン交換容量(AEC)等の数値に基づいて、所要の関係式やグラフ等から水素イオン濃度pHを算出し、このpHを用いて剥ぎ取り表土の塩基飽和度が60〜100質量%となるように、複数回上述の土壌分析を行ってpHを算出および確認を行いながら、植物性有機物を剥ぎ取り表土の表土土壌に調合設計していき、所望の剥ぎ取り表土が得られる。図3、図4、図5は、塩基飽和度が60質量%、80質量%、100質量%の場合の剥ぎ取り表土の例を示すグラフである。好適には、図4に示すように、塩基飽和度が80質量%であることが、硝酸性窒素、アルミニウム酸化物の溶出を防止できる安定した数値であり望ましい。
【0072】
なお、この植物性有機物を剥ぎ取り表土の表土土壌に調合設計していく際や、陽イオン交換容量数値が低く、陰イオン吸着緩衝能が不足している場合には、必要に応じて、粉末状とする破砕工程、不純物や不要物を除去する選別工程、殺菌等を行う加熱工程、ペレット状とする圧縮工程を行った植物残渣、バーク、チッパー等の植物性有機物を剥ぎ取り表土に調合設計していくようになっている。このようにすることで陰イオン吸着緩衝能を補強することも可能である。図1に示すように、剥ぎ取り表土土壌とこの表土土壌に含まれる表土有機物の陽イオン交換容量(CEC)が、両方とも共にCEC×0.2N>Nの関係が成り立つ場合には、剥ぎ取り表土の再利用は可能である。ここで、Nとは、硝酸性窒素(N)の容量を示す数値である。
【0073】
また、植物性有機物に限られず、必要に応じて、粉末状とする破砕工程、不純物や不要物を除去する選別工程、殺菌等を行う加熱工程、十分に腐敗をさせる発酵工程、ペレット状とする圧縮工程を行った貝化石、カキ(牡蠣)貝殻、ホタテ貝殻等の動物性有機物を剥ぎ取り表土に調合設計していくことも可能である。このようにすることで陰イオン吸着緩衝能を補強することも可能である。
【0074】
この剥ぎ取り表土の陽イオン交換容量(CEC)が大きく不足している、または、長期的に不足することが見込まれる場合には、植生の植物として、マメ科やイネ科等の草本類植物を剥ぎ取り表土に混播する。剥ぎ取り表土中の陽イオン、陰イオン等の養分がこれらの植生に取り込まれて減少させることが可能である。
【0075】
マメ科の植生の植物には、ムラサキツメクサ・レンゲ・シロツメクサ・アルファルファなどを含めるようにすることも可能である。これらのマメ科の植物は、剥ぎ取り表土が乾燥しても生育させることが可能であり、表土土壌を団粒化させて保水力を向上し、表土土壌が干ばつ化されることを防止することができる。
【0076】
剥ぎ取り表土のpHが7以上となり、塩基飽和度が100質量%を超える、または、長期的に超えることが見込まれる場合には、植生の植物として、上述の破砕、選別の工程を行ったイラクサ、オオイタドリ、ヨモギ、シロツメクサ、ムラサキツメクサ、ヨシ等の青刈り有機物の草本類植物を剥ぎ取り表土に混播する。剥ぎ取り表土中において土壌酸性化現象を起こさせて、pHの調節を行い100質量%以下となるようにすることが可能である。
【0077】
剥ぎ取り表土は、調合設計した結果、図2に示すように、表土有機物成分が20%、25m/m以下の細粒土成分が65%、80〜25m/mの粗粒土成分が14%、80m/m以上のレキ分の成分が1%程度の割合で調合設計されていることが望ましい。
【0078】
剥ぎ取り表土を塩基飽和度が60〜100質量%となるように調合設計すると、図1の硝酸性窒素(N)の条件式が、「1式」のCEC×0.2N>Nならば土壌から硝酸性窒素の溶脱が起こらない。逆に、「2式」のCEC×0.2N<Nならば土壌から硝酸性窒素の溶脱が起こる。また、以下の表6に示すように、剥ぎ取り表土の塩基飽和度が60〜100質量%から外れると、植生の植物が繁茂せず地面が剥きだしになり、陰イオンと共にアルミニウムイオンが溶脱することになる。
【0079】
【表6】

【0080】
続いて、本実施の形態における剥ぎ取り表土のリサイクル方法の作用効果について詳細に説明する。まず、土木土工工事・建築外構工事において道路・河川の法面等の植物性有機物を含む土壌の表土を剥ぎ取ると、この剥ぎ取った剥ぎ取り表土を仮置きして乾燥等させたあと、表土土壌の土壌分析を行う(ステップS1)。
【0081】
次に、土壌分析の結果に応じて、剥ぎ取り表土の塩基飽和度を60〜100質量%とするように、植物性有機物や動物性有機物等を用いて調合設計する作業を行う(ステップS2、S3)。図1に示すように、剥ぎ取り表土土壌とこの表土土壌に含まれる表土有機物の陽イオン交換容量(CEC)が、「1式」のCEC×0.2N<Nの関係が成り立つ場合には、上述のように、植物残渣、バーク、チッパー等の植物性有機物や貝化石、カキ(牡蠣)貝殻、ホタテ貝殻等の動物性有機物等を用いて塩基飽和度を60〜100質量%とするように調合設計する、または、陽イオン交換容量数値を調整する作業を行う(ステップS11、S12)。そして、陽イオン交換容量(CEC)が、「2式」のCEC×0.2N>Nの関係が成り立つように調合設計した後にこの剥ぎ取り表土の再利用をリサイクルとして利用する。
【0082】
次に、所望の剥ぎ取り表土が得られると(ステップS4)、この剥ぎ取り表土の破砕、選別の工程を行い、裸地等の対象領域に客土材料としてこの剥ぎ取り表土を造成する作業を行う(ステップS5)。剥ぎ取り表土を造成する作業は、例えば吹き付け作業により行われる。得られた所望の剥ぎ取り表土をダンプトラック等に積み込み対象領域付近まで運搬し、集積する。吹付ホースが接続された圧送ポンプによって吹付ホースの先端まで送り出し、吹付ホース先端の吹付ノズルにおいてコンプレッサから送気された圧縮空気と共に対象領域に吹き付けて剥ぎ取り表土の造成を行う。
【0083】
ここで、この剥ぎ取り表土を対象領域で法面覆土、植生衣土や盛土材料として利用する場合には、破砕、選別の工程を行わずにそのまま対象領域で利用する(ステップS6)。
【0084】
次に、この対象領域の剥ぎ取り表土の表土土壌が火山灰等を多く含むこと等により剥ぎ取り表土に含まれる陽イオン、陰イオン、硝酸イオン、アルミニウムイオン等の各種の養分の容量が、溶脱することにより低下し痩せ地である場合には(ステップS7)、剥ぎ取り表土にマメ科の植物として、ムラサキツメクサ・レンゲ・シロツメクサ・アルファルファなどを混播する(ステップS8)。剥ぎ取り表土の団粒化させるようにする。マメ科の植物として、陰イオン等の養分を吸着相に保持しうるランナー(葡萄茎)性のシロツメクサとイネ科の草本類を用いて混播を行っても良い。
【0085】
次に、長期期間の経過後、風雨や植生植物の腐植により剥ぎ取り表土の表土土壌から硝酸性窒素が溶脱し、ステップS1と同様にして定期的に表土土壌の土壌分析を行った結果、表土土壌の陽イオン交換容量(CEC)が、「2式」のCEC×0.2N>Nの関係が成立した場合には、刈取機等による植生植物の青刈り収奪の工程を行う(ステップS9)、または、剥ぎ取り表土の表土土壌を畜産業の採草地に解放し、家畜の牛馬等の畜産放牧に利用して、家畜の捕食活動によって植生植物の収奪を図る工程を行い、植生の植物の腐植化による硝酸性窒素分やアルミニウム酸化物などの養分溶脱を防止する。
【0086】
次に、ステップS9の青刈り収奪の工程により刈り取った植生植物は、植物性有機物として、ステップS3、S11、S12における調合設計の作業に用いる(ステップS13)。
【0087】
以上のように、本実施の形態における剥ぎ取り表土のリサイクル方法では、剥ぎ取り表土の表土土壌を養分分析し、植物性有機物や動物性有機物を調合設計して、硝酸性窒素分やアルミニウム酸化物などの養分溶脱を防止することが可能な塩基飽和度60〜100質量%に設計管理することが可能となる。このため、土木土工工事・建築外構工事において道路・河川の法面等の剥ぎ取り表土を再利用するとき、一般廃棄物扱いで廃棄物処分することなく、有効にリサイクルできる可能性がある。従来のように廃棄物処分として廃棄物運搬費や処分費が不要となり時代のニーズにあった工事コストの削減が達成できる。
【0088】
更に、水道原水に利用されている地下水の硝酸性窒素汚染源やアルミニウム金属を含む酸性土壌の発生を、コスト・時間・費用の面で有利に防止することが可能である。また、過剰な窒素・リンの剥ぎ取り土壌の表土土壌からの溶出による河川・湖沼の青潮発生を抑制し浄化できる可能性がある。又、表7のように金属イオンのアルミニウム・マンガン・銅・鉄イオン等が剥ぎ取り土壌の表土土壌から水道原水に利用されている地下水に溶出することを防止して、アルツハイマー認知症等の脳神経疾患(例えば、狂牛病BSEの化学−金属イオンと神経疾患 西田雄三著 牧歌舎 2004年2月10日初版第1刷発行 p74〜80参照。)の発生を減らすことが可能性としてある。
【0089】
【表7】

【0090】
なお、デントコーンは(例えば、塩集積土壌と農業 日本土壌肥料学会編 (株)博友社 1991年12月20日初版第1刷発行 p89〜94参照。)イネ科作物と共にCaO、MgO、K2Oなどを除塩する緑肥用に栽培されており、デントコーンはクリーニングクロップ効果のある作物とされている。デントコーン種子や小麦などの穀物に比較的多くのアルミニウムイオンが含まれている。デントコーン耕地への継続的牛糞堆肥循環は、表7のようにデントコーン種子への比較的高いアルミニウムイオンの残留濃度となる。上述のようなアルミニウムイオン濃度は改善しなければならない。又、硝酸性窒素を多投するタマネギなどは、硝酸カルシウムと酸化アルミニウムが配位子交換されて生体内へ取り込まれるため、植生の植物としては適切ではない。
【0091】
農業においては、潅漑水として使用される地下水の硝酸性窒素濃度を下げることにより、化学肥料から農法転換し、有機物栽培を促進することで、硝酸性窒素に汚染しない新鮮野菜を供給できる可能性がある。
【0092】
日本の農地の60%は火山灰土壌である。図6に示すように、この農地が硫黄酸化物や窒素酸化物により土壌の酸性化が進行している。この酸性土壌を中和するために消石灰(ステップS601)などの土壌中和材が多投されている。多投された土壌中和材の硝酸・硫酸・塩酸・リン酸や水酸化カルシウム等の成分が酸化アルミニウム・水酸化アルミニウム(ステップS602)と配位子交換され、穀物・根菜類や草本類に循環され捕食、食事などで生体に吸収される。また、アルミニウムイオンの溶脱は、石化エネルギーによる投入で酸性雨による土壌酸性化の影響が最も大きく、農業における硫安などの化学肥料や、下記の化学式4のように家畜糞尿による土壌酸性化がそれに続き影響が大きい。
【0093】
【化4】

【0094】
剥ぎ取り表土の表土土壌の土壌分析で小型反射式光度計により、塩基飽和度、硝酸イオン、アルミニウムイオンを迅速に把握し、植物性有機物や動物性有機物を用いて調合設計することで、酸化アルミニウム・水酸化アルミニウムの発生を防止し食の安全を確保できる可能性が生まれる。
【0095】
この様子を下記の化学式5で説明すると、図6に示すように、土壌中和材(ステップS601)を投入すると、硝酸・硫酸・塩酸・リン酸の陽イオン交換基が水酸化カルシウムと土壌溶液で配位子交換され難溶性の水酸化アルミニウム(ステップS602)として沈澱する。又、キレート結合していたリン酸が配位子交換され利用されるようになる。しかし、水酸化アルミニウム(ステップS602)は一時的に難溶性となるが、剥ぎ取り表土や未熟堆肥が循環されると化学式1のように塩化物イオンの影響で溶解しやすい塩化アルミニウムとなり土壌溶液に溶出する。
【0096】
【化5】

【0097】
又、公共土木工事の土工盛土材料に良く使用される火山灰についても同じである。一旦、地山から掘り出された火山灰は、透水性が良くなり酸性雨の影響で土壌の酸性化を招きアルミニウムイオンの溶脱が起こる。pH5以下の土壌では、粘土に吸着されていたアルミニウムイオンが目に見えない形で放出される。pH4以下では、(例えば、土のはたらき 岩田進午著 (社)家の光協会 2004年2月9日第10刷発行 p66〜67参照。)人類を含む全生物が生きていくことができない。法面覆土、植生衣土、盛土材料及び法面吹付植生・育成客土材料として、剥ぎ取り表土の表土土壌に火山灰を利用することは適切ではない。
【0098】
畜産業においては、1960年頃まで河川敷きを解放し放牧による表土土壌の植生の捕食による収奪を行っていたが、大規模畜産が行われるようになってからは、放牧が殆ど行われていない。しかし、植生からの養分溶出量は莫大なものであり、牛馬等による収奪はかなり期待できる可能性がある。表8、9は、牧草の1番草収量であり、表10は放牧後の2番草収量であることから、剥ぎ取り表土の表土土壌で植生の植物からの硝酸性窒素溶脱を半減することが可能である。
【0099】
【表8】

【0100】
【表9】

【0101】
【表10】

【0102】
なお、水産業において、行政特区制度で、ホタテ・カキ貝殻を泥が沈殿している海底へ戻す試みがなされているが、貝殻には硝酸態窒素(コンキリオン)などの成分が含まれており海底の富栄養化が起こる。カキ貝殻を分析実験した結果、殻の成長過程で養分が濃縮され硝酸態窒素(コンキリオン)が初期において31mg/100g溶出した事実が得られている。貝殻にバーク、チッパーを調合し、加熱、圧縮成形することで、陽イオンが貝殻の硝酸態窒素(コンキリオン)と吸着する。硝酸態窒素(コンキリオン)は、消化化成されて海藻の人工漁礁として還元できる可能性がある。
【0103】
(他の実施の形態)
上述の実施の形態において、剥ぎ取り表土の塩基飽和度が60〜100質量%となるように、植物性有機物を用いて剥ぎ取り表土の表土土壌に調合設計していたが、塩基飽和度が60質量%以下となり、pHが5.5以下となった場合に剥ぎ取り表土のpH値を向上させるために甜菜の製造から排出される産業廃棄物の炭酸カルシウムからなるライムケーキが有効である。これは炭酸カルシウムが溶解するときに炭酸水素イオンを土壌溶液供給するので土壌pHを改善することに有効である。酸性土壌を改善するために消石灰や生石灰を使用すると炭酸塩の影響で土壌微生物が死滅する。軟弱地盤改良に消石灰、生石灰を大量に使用し環境被害を与えている事例があり避けなければならない工法である。炭酸カルシウムであるライムケーキ、カキ貝殻、ホタテ貝殻から溶出するカルシウムが塩基飽和度100質量%を超えると硝酸カルシウムが生成され溶出する。これが産業廃棄物のリサイクルの影響で硝酸汚染が進行する一因であり考え方を改める必要がある。産業廃棄物であるライムケーキ、カキ貝殻、ホタテ貝殻を産業廃棄物再生利用業の指定を受けてリサイクルできる可能性がある。
【0104】
また、ステップ5において、この剥ぎ取り表土を造成する作業は、吹き付け作業により行われているが、これに限られず、剥ぎ取り表土を充填した植生袋を対象領域に設置する作業によって行われても良い。対象領域の表土の表面に接触する下側部分を天然繊維やポリ乳酸樹脂等の素材とし、風雨等にさらされる上側部分を下側部分よりも分解速度が遅い素材とした生分解性の植生袋に剥ぎ取り表土を充填し、所定の間隔で対象領域に分布させるように設置する。設置後所定の期間が経過すると、下側部分が上側部分よりも早く分解して内部の剥ぎ取り表土が植生袋から散乱して対象領域に溶け込むように分布し、上側部分は、遅れて分解することにより剥ぎ取り表土を乾燥や流失防止の役目を果たして最終的に対象領域の表土に溶け込む。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本実施の形態における剥ぎ取り表土の循環図である。
【図2】本実施の形態における剥ぎ取り表土の物質収支図である。
【図3】本実施の形態における剥ぎ取り表土の塩基飽和度60質量%の陽イオン円グラフを示す説明図である。
【図4】本実施の形態における剥ぎ取り表土の塩基飽和度80質量%の陽イオン円グラフを示す説明図である。
【図5】本実施の形態における剥ぎ取り表土の塩基飽和度100質量%の陽イオン円グラフを示す説明図である。
【図6】本実施の形態における剥ぎ取り表土の硝酸イオンとアルミニウムイオンの生体への移動の様子を示す説明図である。
【図7】本実施の形態における剥ぎ取り表土の土壌分析の手順を示す説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物性有機物を含む土壌の表土を剥ぎ取った剥ぎ取り表土をリサイクルする剥ぎ取り表土のリサイクル方法において、
塩基飽和度を60〜100質量%にするように植物性有機物を表土土壌に調合設計したことを特徴とする剥ぎ取り表土のリサイクル方法。
【請求項2】
請求項1に記載の剥ぎ取り表土のリサイクル方法において、
前記植物性有機物は、破砕、選別、加熱、圧縮の工程を行った植物残渣、バーク、チッパーのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする剥ぎ取り表土のリサイクル方法。
【請求項3】
請求項1または2のうちのいずれか一項に記載の剥ぎ取り表土のリサイクル方法において、
塩基飽和度を60〜100質量%にするように動物性有機物を表土土壌に調合設計したことを特徴とする剥ぎ取り表土のリサイクル方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちのいずれか一項に記載の剥ぎ取り表土のリサイクル方法において、
前記表土土壌における植生には、イネ科、マメ科のうちの少なくとも1つの草本類が含まれていることを特徴とする剥ぎ取り表土のリサイクル方法。
【請求項5】
請求項4に記載の剥ぎ取り表土のリサイクル方法において、
前記表土土壌におけるマメ科の植生には、ムラサキツメクサ、レンゲ、シロツメクサ、アルファルファのうちの少なくとも1つの草本類が含まれていることを特徴とする剥ぎ取り表土のリサイクル方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載の剥ぎ取り表土のリサイクル方法において、
前記植物性有機物は、破砕、選別の工程を行ったイラクサ、オオイタドリ、ヨモギ、シロツメクサ、ムラサキツメクサ、ヨシのうちの少なくとも1つの草本類を含むことを特徴とする剥ぎ取り表土のリサイクル方法。
【請求項7】
請求項4乃至6のうちのいずれか一項に記載の剥ぎ取り表土のリサイクル方法において、
前記表土土壌における植生に対して、青刈り収奪および/または畜産放牧の工程を行うことを特徴とする剥ぎ取り表土のリサイクル方法。










【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−190476(P2007−190476A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10094(P2006−10094)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(503320740)
【Fターム(参考)】