説明

剥離した層状複水酸化物を含む難燃性合成樹脂組成物

【課題】難燃化のため層状複水酸化物を剥離した状態でマトリックス樹脂に分散させた難燃性合成樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
式(I):
M(II)1−xM(III)(OH) (I)
(式中、M(II)はMg,Znまたはその混合物、M(III)はAl,xは0.2ないし0.33である。)の金属複水酸化物よりなる基本層と、該基本層の中間層にインターカレートされたMg,ZnまたはCeの酢酸塩および層間水より構成され、水中において可逆的に剥離する層状複水酸化物の難燃化有効量を含んでいる難燃性合成樹脂組成物であって、該合成樹脂はその製造において前記層状複水酸化物が剥離する原料が含まれる重縮合型樹脂であり、前記層状複水酸化物は前記合成樹脂の製造過程において前記原料に添加されることにより剥離した状態で前記合成樹脂に均一に分散していることを特徴とする難燃性合成樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲンやリンを含まない無機化合物を難燃化のために配合した難燃化合成樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
可燃性プラスチックの難燃化は難燃剤の添加によって行われる。近年焼却時に発生する環境有害物質への懸念から、層状複水酸化物(LDH)を難燃化のために配合することが試みられている。この時問題となるのはLDHがプラスチックマトリックス中に均一に分散していなければならないことである。
【0003】
層状複水酸化物(LDH)は、一般式〔M2+1−x3+(OH)x+〔An−x/n・yHO〕で表される陰イオン交換能をもつ層状化合物である。その結晶構造は、2価金属イオンの一部を3価金属イオンが置換した正八面体の水酸化物層(基本層)と、陰イオンと層間水からなる中間層からできている。LDHの特徴は、基本層の金属イオンの種類とその比ならびに中間陰イオンの種類の組み合わせが多様なことである。これまで多くの種類のLDHが合成され、また無機および有機陰イオンインターカレーションによる取り込みについて多くの研究が行われている。
【0004】
一般にLDHでは基本層の電荷密度が大きく、基本層と中間層との間の静電引力が強いため、多くの粘土鉱物に見られるような層間の剥離現象は起こりにくいとされている。従って水中で容易に剥離するLDHに関する報告は少ないが、その一つとして特開2004−189671号公報がある。ここでは中間層の陰イオンとして芳香族アミノカルボン酸、特にp−アミノ安息香酸をインターカレートすることにより、水またはエタノール等の低級アルコール中で剥離した状態で分散している分散液が得られることを報告している。これは芳香族アミノカルボン酸イオンをインターカレートすることにより、CO2−イオンをインターカレートしたLDHに比べて基本層の距離が拡大された結果であると説明されている。しかしながらこのLDHの剥離現象は、p−アミノ安息香酸のような芳香族アミノカルボン酸の良溶媒であるエタノール中では完全であるが、溶解度が小さい水中では不完全である。
【0005】
特開2005−89269号公報および同2005−238194号公報では中間層にアミノ酸イオンまたはアミノ酸イオンとカルボン酸イオンをインターカレーションさせた水または或種の極性有機溶媒中で基本層に剥離するLDHを開示している。これらのLDHをプラスチック中に均一に分散させるためには、それらが基本層に剥離する溶媒中でLDHとプラスチックを湿式混合し、その後溶媒を留去することを要する。
【0006】
特開2001−261927号公報は、フェノール樹脂の製造段階で炭酸型LDHと、酸触媒を兼ねたp−ヒドロキシ安息香酸をフェノール樹脂原料と混合し、この混合物から初期縮合物を製造することによりLDHが剥離した状態で分散している難燃性樹脂組成物が得られるとしている。この方法は当然ながらレゾール型には適用できない。
【特許文献1】特開2004−189671号公報
【特許文献2】特開2005−89269号公報
【特許文献3】特開2005−238194号公報
【特許文献4】特開2001−261927号公報
【0007】
これら先行技術において難燃化のために配合するLDHはすべて遊離カルボキシル基を有する化合物を中間層に含んでいる。最近本発明者らは、中間層に遊離酸としてではなく、Mg,ZnまたはCe塩の形で酢酸をインターカレートさせたLDHが水中、または低分子量アルカノールもしくはアルキレングリコール中で殆ど完全にナノサイズの基本層に剥離することを見出した。このためこのLDHは水系樹脂組成物、例えばポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、CMC、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプンのような水溶性高分子の水溶液や、エマルジョンまたはディスパージョンの形の水溶性高分子組成物に剥離して分散し、塗布して紙、不織布などの難燃化に使用することができる。しかしながらこの方法は水やアルコール類などの上記LDHが剥離可能な液体に不溶な高分子自体を難燃化するために剥離状態で高分子に分散させることはできないであろう。
また、PVAなどに上記LDHを添加することにより金属板などへの密着性が向上することが確認されている。
【0008】
本発明の課題は、これまで困難であったまたは複雑なステップが必要であった、剥離した状態で均一に分散させたLDHを含む難燃性合成樹脂組成物を提供することである。
【発明の開示】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、
式(I):
M(II)1−xM(III)(OH) (I)
(式中、M(II)はMg,Znまたはその混合物、M(III)はAl,xは0.2ないし0.33である。)の金属複水酸化物よりなる基本層と、該基本層の中間層にインターカレートされたMg,ZnまたはCeの酢酸塩および層間水より構成され、水中において可逆的に剥離する層状複水酸化物の難燃化有効量を含んでいる難燃合成樹脂組成物を提供する。
【0010】
本発明によれば、前記合成樹脂はその製造において前記層状複水酸化物が剥離する原料が含まれる重縮合型樹脂であり、前記層状複水酸化物は前記合成樹脂の製造過程において前記原料に添加されることにより剥離した状態で前記合成樹脂に均一に分散していることを特徴とする。
【0011】
一具体例において、前記合成樹脂はホルムアルデヒドまたはその重合体(パラホルムアルデヒド)が原料であるフェノール樹脂またはアミノ樹脂である。
【0012】
他の具体例においては、前記合成樹脂は原料がエチレングリコールであるポリエチレンテレフタレート(PET)である。
【0013】
さらなる具体例においては、前記層状複水酸化物は合成樹脂固形分に対して1〜50重量%配合される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
水中で剥離するLDH
本発明の水中で剥離するLDHは、炭酸型LDHとインターカレートすべき酢酸の多価金属塩から出発し、アニオンをインターカレートしたLDHの製造のための再構築法に類似した方法に従って製造することができる。
【0015】
再構築法とは、炭酸型LDHを予め400℃〜800℃の温度で焼成して炭酸イオンの大部分を除去した熱分解物を水中で他のアニオンと反応させ、再構築されたLDHを生成させる方法である。本発明においては、炭酸型LDHの熱分解物と、Mg,ZnまたはCeより選ばれた多価金属酢酸塩を水中において反応させる。
【0016】
出発原料の炭酸型LDHは式(II):
〔M(II)2+1−xM(III)3+(OH)〕〔(COx/2・yHO〕
を有し、M(II)はMg,Znまたはその混合物であり、M(III)はAlであり、xは0.2ないし0.33の数である。これらはハイドロタルサイト類として天然に存在し、公知の方法に従って合成することもできる。また合成ハイドロタルサイト類のいくつかは、例えば協和化学工業株式会社(日本東京)から市販されている。
【0017】
反応は、多価金属酢酸塩の水溶液へ炭酸型LDHの熱分解物を加え、攪拌下室温で行うことができる。炭酸型LDHの熱分解物に対する多価金属酢酸塩の比は、Alに換算した熱分解物中のAl含量と少なくとも等モルである。一般に反応生成物はゲル状である。このゲルを反応混合物から濾過、遠心等によって分離し、60℃以上の温度で乾燥し、粉砕することによって本発明LDHが得られる。このもののX線回折パターンは原料の炭酸型LDHおよび多価金属酢酸塩の代りにナトリウム塩を再構築に使用したLDHのX線回折パターンと比較すると、ピークが低角度側にシフトしており、基本層間の距離が大きくなったことを示唆する。また、本発明のLDHの赤外線吸収スペクトルは、再構築において酢酸ナトリウムを使用したLDHのIRスペクトルのカルボキシル基に由来する1360〜1390cm−1付近の吸収が見られず、1390〜1430cm−1に特徴的なピークが見られる。このことから、再構築によって取り込まれた多価金属塩は酢酸ナトリウムを使用して再構築したLDHとは異なる態様で基本層に化学結合していることが示唆される。しかしながらこの結合様式は未だ解明されていない。
【0018】
本発明のLDHは、公知の芳香族アミノカルボン酸をインターカレートしたLDHと違って水中で実質上完全に剥離(デラミネーション)し、粘稠なコロイド溶液またはゾルを形成する。このことは本発明のLDH(乾燥品)を異なる量の水で水和(湿潤)し、その状態でX線回折分析を行うと、水の量が増大するにつれピークが次第に低角度側に移動し、最終的にはこのピークが消失することによって証明される。このピークの低角度側への移動は、中間層へ水分子が侵入し、基本層間の層間距離を次第に拡大し、ついには結晶構造が破壊されることを示している。しかしながら水和および剥離により結晶構造を失ったLDHを完全に乾燥すると、元の乾燥LDHと同じX線回折パターンを取り戻し、剥離は可逆的であることを示す。
【0019】
本発明のLDHの水分散液は、同じ濃度の炭酸型LDHの水分散液と比較して、可視光に対して遥かに高い透過率を示す。これは剥離の結果LDHがより小さいナノサイズの粒子として分散しているからである。
【0020】
マトリックス合成樹脂
本発明に使用されるマトリックス合成樹脂の第1の典型例はフェノール樹脂である。周知のようにフェノール樹脂(フェノール−ホルムアルデヒド樹脂)は、フェノール、クレゾールのようなフェノール化合物とホルムアルデヒドとの付加重縮合反応生成物である。フェノール樹脂の歴史は古く1907年に溯り、その製造法は確立されている。フェノール化合物、ホルムアルデヒドまたはその重合体および触媒(ノボラックの場合は酸、レゾールの場合は塩基)の混合物へ加熱前に本発明のLDHを加えることを除いて周知の製造法が採用される。生成したオリゴマー(初期縮合物)はこの時剥離状態で分散したLDHを含んでおり、これをプリント配線基板製造のためのプリプレグの含浸に使用したり、圧縮成形用のコンパウンドの製造に使用することができる。
【0021】
マトリックス樹脂の第2の典型例は、アミノ樹脂と総称される尿素、メラミン、ジシアンジアミド等のアミノ化合物と、ホルムアルデヒドとの付加重縮合物である。アミノ樹脂の場合もフェノール樹脂と同様に、加熱反応前に原料混合物へ本発明のLDHを混合することにより、剥離した状態でLDHが分散した樹脂組成物を製造することができる。
【0022】
マトリックス樹脂のさらなる典型例はポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂である。PETは、テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチルと過剰のエチレングリコールからテレフタル酸ジ(ヒドロキシエチル)エステルを合成し、これを溶融状態で触媒の存在下でエステル交換を行い、生成するエチレングリコールを真空下で留去することにより、高分子量のポリマーとして製造される。エチレングリコールに本発明のLDHをあらかじめ添加混合して使用することにより、剥離状態で分散したLDHを含んでいる組成物が得られる。
【0023】
樹脂組成物
本発明のLDHの配合量は、マトリックス樹脂の種類、樹脂組成物の用途および求められる難燃度によって大幅に変動し得るが、一般に樹脂固形分に対して1〜50重量%の範囲内である。しかしながら最適量は、特定の樹脂、組成物の用途および求められる他の物性を考慮して決定すべきである。
【0024】
プラスチック用の無機難燃剤としては三酸化アンチモン、水和酸化アルミニウムなどが一般に使用されている。これらはその配合量に反比例して樹脂の本来の物性、特に機械的強度を低下させる。本発明のLDHは適当に配合した場合、樹脂の強度、特に曲げ強度をむしろ向上させる補強効果が認められる。またこの時組成物のフィルムはガスバリアー効果を保持している。従って単に難燃性のみではなく、補強効果および/またはガスバリアー性を同時に望む場合には、最適配合量は樹脂固形分に対して20重量%以下、特に5〜10重量%の範囲内にあるであろう。
【実施例】
【0025】
以下の実施例は、本発明を例証する目的で提供され、限定を意図しない。実施例中「部」および「%」は特記しない限り重量基準による。
【0026】
第I部 水中で剥離するLDHの製造
実施例I−1
Mg−Al系炭酸型LDH(協和化学工業(株)製DHT−6)を700℃において20時間加熱して熱分解物を得た。この熱分解物96.3gを酢酸マグネシウム・4水塩0.28mol/L(60g/L)水溶液1Lへ加え、室温で15時間攪拌した後、生成した固体(ゲル)を濾過して分離し、90℃で10時間乾燥し、粉砕して再構築したLDHを得た。このものをLDH I−1と呼ぶ。
【0027】
実施例I−2
酢酸マグネシウム水溶液を酢酸セリウム・1水塩0.28mol/L(94g/L)水溶液に変更したことを除き、実施例I−1の操作を繰り返し、LDH I−2を得た。
【0028】
実施例I−3
酢酸マグネシウム水溶液を酢酸亜鉛・2水塩0.28mol/L(61.5g/L)水溶液に変更したことを除き、実施例I−1の操作を繰り返し、LDH I−3を得た。
【0029】
実施例I−4
NaCOの1mol/L水溶液2Lに、ZnClの1mol/L水溶液2.6Lと、AlClの1mol/L水溶液1.4Lを、反応液のpHを7に保ちながら滴下した。40℃で1時間熟成した。デカンテーションにより反応混合物から塩化イオンを除去した後、NaCO1mol/L水溶液2Lを加え、5時間加熱還流した。固体生成物を濾過分離し、水洗後60℃で24時間減圧乾燥・粉砕し,Zn−Al系炭酸型LDHとした。
次にこのZn−Al系炭酸型LDHを450℃において20時間加熱して熱分解物を得た。この熱分解物115.1gを酢酸亜鉛0.28mol/L(61.5g/L)水溶液1Lへ加え、室温で15時間攪拌した後、固体を含む反応混合物を100℃で蒸発乾固し、粉砕した。得られた生成物をLDH I−4と呼ぶ。
【0030】
実施例I−5
Mg−Zn−Al系炭酸型LDH(協和化学工業(株)製アルカマイザー)を700℃において20時間加熱して熱分解物を得た。この熱分解物65.3gを酢酸マグネシウム・4水塩0.14mol/L(30.0g/L)水溶液1Lへ加え、室温で48時間攪拌した後、生成した固体(ゲル)を濾過して分離し、 90℃で10時間乾燥した後粉砕し、LDH I−5を製造した。
【0031】
以下の第II部、第III部においてはすべて実施例I−1で製造したLDH−1を使用した。
【0032】
第II部 剥離したLDHを分散したフェノール樹脂
実験例1 ブランク
フェノール100gと37%ホルムアルデヒド157gを混合し、これに10%水酸化ナトリウムを5.0g入れ、70℃で2時間撹拌混合した後、常圧脱水及び真空脱水し、フェノール樹脂Aを得た。
【0033】
実験例2 比較例
フェノール100gと37%ホルムアルデヒド157gを混合し、これにさらに協和化学工業社製DHT−6:6.94g及び10%水酸化ナトリウム5.0gを入れ、70℃で2時間撹拌混合した後、常圧脱水及び真空脱水し、フェノール樹脂Bを得た。
【0034】
実験例3 本発明
37%ホルムアルデヒド157gに、6.94gの剥離型複水酸化物を混合撹拌し層剥離後、フェノール100gを加え70℃で2時間撹拌混合した後、常圧脱水及び真空脱水し、フェノール樹脂Cを得た。
【0035】
フェノール樹脂の強度試験サンプルの作成
実験例1〜3で作成したフェノール樹脂A〜Cを、それぞれ強度試験サンプル作成用金型に入れ、190℃−20分間プレスすることにより、6.4×13.4×108.8mmの試験片A〜Cを得た。
【0036】
ガス透過性試験サンプルの作成
実験例1および3で作成したフェノール樹脂AおよびCを、それぞれガス透過性試験サンプル作成用金型に入れ、190℃−20分間プレスすることにより、厚み0.3mm、直径100mm試験片DおよびEを得た。
フェノール樹脂B(比較例)については歪みが生じ、測定可能な試験片を作成することは出来なかった。
試験片A、D:樹脂のみ
試験片B:比較例
試験片C、E:本発明
【0037】
曲げ強度試験
試験片A〜Cを用いて、曲げ強度試験を行った。試験には、島津製作所製オートグラフAG−ISを使用した。結果は以下表−1参照。
【0038】
【表1】

【0039】
荷重たわみ温度の測定
試験片A〜Cを用いて、荷重たわみ温度測定を行った。試験には、安田精機社製HEAT DISTORTION TESTER HD−500を使用した。結果は以下表−2参照。
【0040】
【表2】

【0041】
酸素指数の測定
試験片A〜Cを用いて、酸素指数の測定を行った。試験には、スガ試験器株式会社製 燃焼性試験器 ONI METER (ON−1M型)を使用した。結果は以下表−3参照。
【0042】
【表3】

【0043】
ガス透過性試験
試験片D、Eを用いて、ガス透過性試験(JIS K7126 B法準拠)を行った。
試験には、MOCON社製OXTRAN10/50Aを使用した。結果は以下表−4参照。
【0044】
【表4】

【0045】
第III部 剥離したLDHを分散したPET樹脂
実験例4 ブランク
テレフタル酸ジメチル450.0g(2.3モル)とエチレングリコール320.3g(5.16モル)を、1L容量の3つ口フラスコに入れ、そこに酸化アンチモン0.2g及び酢酸カルシウムを入れて液温を220℃まで上昇させ、反応により生成したメタノールを留出させた後、50%リン酸を0.5g添加後再び加熱を行い、液温が260℃に到達後槽内を真空状態にし、重合反応により形成されたエチレングリコールを除き、ポリエチレンテレフタレート樹脂Aを得た。
【0046】
実験例5 比較例
テレフタル酸ジメチル450.0gと、予め炭酸型複水酸化物(協和化学工業社製DHT−6)6.5gを添加混合したエチレングリコール326.8gとを、1L容量の3つ口フラスコに入れ、そこに酸化アンチモン0.2g及び酢酸カルシウムを入れ液温を220℃まで上昇させ、反応により生成したメタノールを留出させた後、50%リン酸を0.5g添加後再び加熱を行い、液温が260℃に到達後槽内を真空状態にして重合反応により形成された不要なエチレングリコールを除き、ポリエチレンテレフタレート樹脂Bを得た。
【0047】
実験例6 本発明
テレフタル酸ジメチル450.0gと、予め剥離型複水酸化物6.5gを添加混合したエチレングリコール326.8gとを、1L容量の3つ口フラスコに入れ、そこに酸化アンチモン0.2g及び酢酸カルシウムを入れ液温を220℃まで上昇させ、反応により生成したメタノールを留出させた後、50%リン酸を0.5g添加後再び加熱を行い、液温が260℃に到達後槽内を真空状態にして重合反応により形成された不要なエチレングリコールを除き、ポリエチレンテレフタレート樹脂Cを得た。
【0048】
ポリエチレンテレフタレート樹脂の強度試験サンプルの作成
実験例4〜6で作成したポリエチレンテレフタレート樹脂A〜Cを、それぞれ300ml容量の3つ口フラスコにいれ、260℃まで温度を上げた後、フェノール樹脂に使用したものと同じ強度試験サンプル作成用金型に流し込み、室温にて冷却後試験片F、G、Hを得た。
試験片F:ブランク
試験片G:比較例
試験片H:本発明
【0049】
酸素指数の測定
試験片F、G、Hをそれぞれ用いて、酸素指数の測定を行った。試験には、スガ試験器株式会社製 燃焼性試験器 ONI METER(ON−1M型)を使用した。結果は下表参照。
【0050】
【表5】

【0051】
曲げ強度試験
試験片F、G、Hを用いて、曲げ強度試験を行った。試験には、島津製作所製オートグラフAGS500Bを使用した。結果は以下表−6参照。
【0052】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
M(II)1−xM(III)(OH) (I)
(式中、M(II)はMg,Znまたはその混合物、M(III)はAl,xは0.2ないし0.33である。)の金属複水酸化物よりなる基本層と、該基本層の中間層にインターカレートされたMg,ZnまたはCeの酢酸塩および層間水より構成され、水中において可逆的に剥離する層状複水酸化物の難燃化有効量を含んでいる難燃性合成樹脂組成物であって、該合成樹脂はその製造において前記層状複水酸化物が剥離する原料が含まれる重縮合型樹脂であり、前記層状複水酸化物は前記合成樹脂の製造過程において前記原料に添加されることにより剥離した状態で前記合成樹脂に均一に分散していることを特徴とする難燃性合成樹脂組成物。
【請求項2】
前記合成樹脂は原料がホルムアルデヒドまたはその重合体であるフェノール樹脂またはアミノ樹脂である請求項1の難燃性合成樹脂組成物。
【請求項3】
前記合成樹脂は原料がエチレングリコールであるポリエチレンテレフタレートである請求項1の難燃性合成樹脂組成物。
【請求項4】
前記層状複合水酸化物は、合成樹脂固形分に対し1〜50重量%配合される請求項1ないし3のいずれかの難燃性合成樹脂組成物。

【公開番号】特開2008−1806(P2008−1806A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−172827(P2006−172827)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(000215800)テイカ株式会社 (108)
【Fターム(参考)】