説明

剪枝装置

【課題】剪枝屑を円滑に畝間に排出すると共に、剪枝機体上に剪枝屑が溜まるのを防止して良好な剪枝作業を行うことが可能な剪枝装置を提供する。
【解決手段】剪枝機体41にカバー44,44を茶畝の横幅方向に向かって開動可能、または伸縮可能かつ伸縮量を調整可能なアーム部材によって連接し、カバー44,44の張り出し量を調整可能とする。さらに、張り出したカバー44,44によって、隣の茶畝の裾部を押し拡げて剪枝屑が畝間に落下する空間を拡げるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、茶樹を剪枝する剪枝装置に関し、さらに詳しくは、茶畝を跨いで走行する刈取機、茶園管理機、摘採機等に装着される剪枝装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の剪枝装置にあっては、刈取機、茶園管理機、摘採機等の走行機体後部に着脱可能に装着されるアタッチメントの1つであって、茶畝の上面(横幅方向)に沿うように形成された板状の剪枝機体の下面側に、上下一対の刈刃(バリカン刃)が左右方向に往復動可能に設けられていると共に、剪枝機体の上面側には、刈刃が剪枝した剪枝屑を左右の畝間に向かって移送するブロワやチェーンコンベア等の移送手段と、移送手段により移送されてきた剪枝屑を畝間に向かって落下させるための板状のカバーとが設けられていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−270657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の剪枝装置にあっては、カバーは、移送手段によって移送されてきた剪枝屑を狭い畝間に落とし込むために剪枝機体から側方に張り出された状態で固定支持されている。そのため、剪枝機体とカバーとの間の限られた空間から剪枝屑が落下することとなるので、大量の剪枝屑が移送されてくると畝間に落としきれず、剪枝機上に剪枝屑が溜まってしまうという問題があった。
また、従来の剪枝装置に設けられていた飛散防止カバーは、ビニールなどで畝間に沿ってガイドするように設けられていたため、傾斜地では山側の飛散防止カバーが剪枝屑が落下する空間を塞いでしまい、剪枝機体上に剪枝屑が溜まってしまうという問題があった。
【0005】
そこで、この発明は、上記した従来技術が有している問題点を解決するためになされたものであって、剪枝屑を円滑に畝間に排出すると共に、剪枝機体上に剪枝屑が溜まるのを防止して良好な剪枝作業を行うことが可能な剪枝装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、茶畝を跨ぎながら走行可能な走行機体に装着され、前記茶畝の上面に沿うように形成された剪枝機体に刈刃が設けられていると共に、前記刈刃の後方に、前記刈刃が剪枝した剪枝屑を畝間に向かって移送する移送手段と、前記移送手段により移送されてきた剪枝屑を畝間に向かって落下させるため前記剪枝機体の側部から張り出された誘導部材とを備えた剪枝装置において、
前記剪枝機体に前記誘導部材を前記茶畝の横幅方向に向かって開動可能、または伸縮可能かつ伸縮量を調整可能な連接部材によって連接し、前記誘導部材の張り出し量を調整可能としたことを特徴とする。
【0007】
上記目的を達成するため請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明の構成に加えて、前記誘導部材は、隣の茶畝の裾部を押し拡げて前記剪枝屑が畝間に落下する空間を拡げることを特徴とする。
【0008】
請求項1,2に記載の発明によれば、剪枝機体に誘導部材を茶畝の横幅方向に向かって開動可能、または伸縮可能かつ伸縮量を調整可能な連接部材によって連接することによって、誘導部材の張り出し量を調整できるようにした。さらに、誘導部材は、隣の茶畝の裾部を押し拡げて剪枝屑が畝間に落下する空間を拡げるように張り出される。これにより、剪枝機体と誘導部材との間の空間をより拡げることができるようになるうえに、剪枝作業を行っている茶畝の隣の茶畝の裾部を誘導部材が押して畝間を充分拡げることができるようになるので、大量の剪枝屑が移送されてきても、また、傾斜地であっても剪枝屑を剪枝機体上に剪枝屑を溜めることなく、畝間に落下させることができるようになる。
【0009】
上記目的を達成するため請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明の構成に加えて、前記連接部材は、一端部側にスリットが設けられ、他端部側は前記誘導部材に揺動可能に連接したアーム部材であって、前記本体部と前記アーム部材の一端部側とは、前記剪枝機体に螺合し、かつ前記スリットを挿通した軸部を備えた締め具によって接離可能とされていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、剪枝装置の構造を大幅に変更することなく、簡素な構成で茶畝を充分拡げることができるようになるので、既存の剪枝装置にも容易に適用することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の剪枝装置によれば、剪枝機体に誘導部材を茶畝の横幅方向に向かって開動可能、または伸縮可能かつ伸縮量を調整可能な連接部材によって連接することによって、誘導部材の張り出し量を調整できるすると共に、誘導部材によって隣の茶畝の裾部を押し拡げて剪枝屑が畝間に落下する空間を拡げるようにした。これにより、剪枝屑を円滑に畝間に排出すると共に、剪枝機体上に剪枝屑が溜まるのを防止して良好な剪枝作業を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の剪枝装置を備えた刈取機の一実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の剪枝装置を備えた刈取機の側面図、図2は、同例における剪枝装置の正面図、図3は、同例における剪枝装置の平面図、図4は、同例における剪枝装置のカバーを最大に張り出させた状態を示した平面図である。
【0013】
図1〜4に示されるように、刈取機100は、フレーム本体10、走行装置20、細断装置30、剪枝装置40を備えて構成されている。
【0014】
詳述すると、図1に示されるように、フレーム本体10は、茶畝を跨ぐために正面視門型に形成された前側フレーム11及び後側フレーム12と、これら前側及び後側フレーム11,12を連結する連結フレーム13、14(但し、図中にあっては機体右側のみ図示、以下同様)と、を備えて構成されている。
【0015】
前側及び後側フレーム11,12は、前後方向に離間した状態で対向配置されていると共に、軌間伸縮が可能となるように、左右方向に延びる図示しない横フレーム部が伸縮自在とされている。そして、これら前側及び後側フレーム11,12は、前後方向に延びる連結フレーム13,14によって、前側フレーム11と後側フレーム12とが連結固定されている。
【0016】
さらに、フレーム本体10の下端、つまり前側フレーム11の左右脚部11aの下端と後側フレーム12の左右脚部12aの下端とには、前後方向に延びる左右一対の補剛フレーム15を介して走行装置20が取り付け固定されており、これにより、走行機体が構成されるようになっている。
【0017】
走行装置20は、油圧式の走行モータ(図示せず)が組み込まれた駆動輪21、従動輪22、ゴム製或いは鉄製のクローラ23を備えて構成されており、クローラ23の張り調整は、グリススプリング方式の採用によりグリースガンで容易に行うことができるようになっている。また、機体右側の走行装置20の上方には油圧タンク50、機体左側の走行装置20の上方には燃料タンク(図示せず)が、それぞれ前側及び後側フレーム11,12に跨って取り付けられている。
なお、走行装置20は、クローラを用いたものに限定されるものではなく、例えば、車輪、レール式等であってもよい。
【0018】
前側及び後側フレーム11,12の横フレーム間には、前後方向に延びる補剛フレーム16や板状のフロア部材17が敷設されることによって、オペレータや重量物を搭載可能とする上部デッキが形成されている。
【0019】
この上部デッキには、操縦部51、操作ハンドル52、操縦席(図示せず)、油圧ポンプ一体型のエンジンが配設されている。
【0020】
操縦部51は、上部デッキの右前部に設けられており、機体操作及び茶園管理作業(この場合、剪枝作業)を行うための制御手段としての制御ユニットが組み込まれたタッチパネル式(例えば、入力数値としては細断装置及び剪枝装置の高さ、軌間伸縮量等)の入力操作表示部、イグニションスイッチ、作業形態に応じて入力操作表示部の表示高さと実際の剪枝高さとに誤差を生じさせないための作動切換スイッチ等(いずれも図示せず)が備えられている。
【0021】
さらに、この操縦部51の制御ユニットは、車載された各種検出手段からの検出値や走行履歴情報、入力情報等に基づいて細断装置30、剪枝装置40の姿勢制御、例えばきめ細かな高さ制御等を行うように予め設定されていると共に、GPS(Global Positioning System、ナビゲーションシステムのこと)による走行履歴情報、例えば走行距離情報、走行スピード情報等を記憶、表示、かつ通信回線を介して送出可能とする機能が備えられている。
【0022】
なお、GPSの構成に代えて、制御ユニットから送出された走行距離情報、走行スピード情報及び作業内容(例えば、日付・時間・作業時間・天候・作業場所・作業の種類・作業条件等の情報データ)を、刈取機100に搭載した図示しない制御機器(例えば、PCL:プログラマブルロジックコントローラ)に自動的に記憶格納するように構成することが可能である。そして、この制御機器とパソコンとを無線や有線で接続することによって、制御機器内部に記憶格納した情報データがパソコンから取り出される。これにより、GPSを用いることなく作業の内容を容易に管理することが可能となるだけでなく、刈取機100の価格上昇を抑えることもできる。
【0023】
そして、この操縦部51の後方に、正面視T字状の操作ハンドル52、オペレータが着座して機体操作及び茶園管理作業を行うための操縦席や各種機体操作レバー(図示せず)が配設されている。この操縦席の左横には、刈取機100の動力源としてのエンジン(図示せず)が、側面に通気孔があけられた箱型のエンジンカバー53内に格納配置されている。このエンジンには、走行駆動・昇降駆動・軌間伸縮・剪枝作業用の各油圧アクチュエータに作動油を供給するための油圧ポンプが一体化されており、エンジン動力によって油圧ポンプが駆動されるようになっている。また、このエンジンには、走行装置20の上方に設けられた燃料タンクから燃料が供給されるようになっている。そして、油圧ポンプから圧送された作動油は各油圧アクチュエータに送られたのち、後側フレーム12の上部に取り付けられたファン式のオイルクーラ54で冷却されてから油圧タンク50にリターンされるようになっている。
【0024】
後側フレーム12の背面側、すなわち走行機体の後部には、アタッチメントの1つである細断装置30及び剪枝装置40が一体的に連なった状態で着脱可能、かつ昇降可能に設けられている。
【0025】
まず、細断装置30及び剪枝装置40を昇降させる昇降装置60,60について説明する。昇降装置60,60は、それぞれ走行機体の左右側部に配設される一対の長尺フレーム61,61、昇降用シリンダ62,62、昇降体63,63を備えている。
なお、昇降装置60,60は、走行機体の左右側に等しく設けられるものであるから、以下にあっては、走行機体右側の昇降装置60についてのみ説明する。
【0026】
図1に示されるように、長尺フレーム61は、後側フレーム12の脚部12aの背面側に、上下2つのアタッチ取付部18a,18bを介して着脱可能に取り付け固定される長尺状のフレーム部材である。この長尺フレーム61が後側フレーム12に取り付けられた状態にあっては、後側フレーム12の脚部12aと平行かつ適宜距離をあけて配置されるようになっている。この長尺フレーム12の上部と後側フレーム12の脚部12aの上部との対向面間には、昇降用シリンダ62が配設されている。
【0027】
昇降用シリンダ62は、制御ユニットの制御下でロッド部62aが伸縮動作する油圧式シリンダが用いられており、ロッド部62aがシリンダ部62bの下方側において伸張動作するように、シリンダ部62bの上部が長尺フレーム62に、シリンダ62bの下部がアタッチ取付部18aに取り付け固定されている。ロッド部62aの先端は、長尺フレーム61のアタッチ取付部18a,18b間に上下移動可能に配設された昇降体63の上部に連接されており、ロッド部62aの伸張動作に応じて昇降体63がアタッチ取付部18a,18b間を昇降移動するようになっている。
【0028】
昇降体63は、細断装置30および剪枝装置40を機体後方に張り出した状態で支持しながら長尺フレーム61の長手方向に沿って昇降する昇降部材であって、長尺フレーム61を前後から挟み込むように、その内部4隅に設けられた4つのコロ(図示せず)が長尺フレーム61の前、後面部に摺動しながら回転することによって、スムーズに昇降移動するようになっている。
【0029】
また、長尺フレーム61の側面下部には、昇降体63、すなわち細断装置30及び剪枝装置40の下限位置を示す複数の位置決め孔64が、長尺フレーム61の長手方向に沿って設けられている。また、昇降体63の側面下部には、アタッチ取付部18bに干渉することなく位置決めボルト(図示せず)に当接するように切り欠かれた接合部63aが形成されている。そして、剪枝作業時に所望する刈取高さの位置決め孔64に位置決めボルトを「かんぬき」として差し込むと、昇降体63が位置決めボルト以下に下降しなくなるので、細断装置30及び剪枝装置40の下限位置、言い換えれば茶畝の刈取高さの調整(刈取調整)を容易化することのできる下限位置ストッパーとして機能するようになっている。
【0030】
なお、位置決めボルトに昇降体63が当接し、昇降用シリンダ62の油圧回路に負荷が掛かると直ちに油圧を逃がすことによってロッド部62aの伸張動作が直ちに停止するようになっている。
また、昇降体63の下限位置は、位置決めボルトによってのみ調整されるものではなく、操縦部51に所望する高さ位置情報を入力することによっても調整することができるようになっている。
さらに、昇降用シリンダ62は油圧式に限定されるものではなく、空気式であってもよい。また、昇降用シリンダ62の代わりに、油圧式モータ、電動式モータとチェーン、ワイヤを用いた巻取り機構やボールネジを用いて昇降体63を昇降させるように構成してもよい。
【0031】
そして、走行機体右側の昇降装置60と同様の態様により走行機体左側の昇降装置60も構成されていると共に、左右の昇降体63,63は同期して昇降移動するように制御ユニットにより制御されるようになっている。
【0032】
次に、細断装置30について説明する。
細断装置30は、フレール刃、駆動用エンジン(いずれも図示せず)を備えている。
【0033】
フレール刃は、茶畝の幅方向に延びた水平回転軸(図示せず)の径方向に立設されたL字状、T字状またはY字状の刈刃であって、これら複数のフレール刃が高速回転することによって茶樹の枝葉を細かく粉砕する。水平回転軸は、図1に示されるように、フレール刃の回転軌跡31(図中にあっては二点鎖線で示す)よりも上方に配置された駆動用エンジンから駆動ベルト(図示せず)を介して回転動力が伝達されるようになっている。これら駆動ベルト及び駆動用エンジンは、ボックス状のカバー32,33によって覆われていると共に、フレール刃及び水平回転軸は、下方が開口したカバー(図示せず)によって覆われている。
【0034】
駆動用エンジンは、操縦部51の制御下にある小型のガソリンエンジンが用いられており、刈取機100の動力源としてのエンジンがガソリンエンジンの場合には、走行装置20上方の燃料タンクから燃料が供給されるが、刈取機100の動力源としてのエンジンがディーゼルエンジンの場合には、走行装置20上方の燃料タンクとは異なる燃料タンクから燃料が供給されるようになっている。
【0035】
また、細断装置30の後部には、上下2つの調整ボルト34,34によって、細断装置30と剪枝装置40との相対高さを調整可能とする左右一対の相対高さ調整部35,35(但し、図1中にあっては機体右側のみ図示)が設けられている。そして、この相対高さ調整部35,35を介して細断装置30から後方に張り出すようにして剪枝装置40が一体的に支持されている。
【0036】
次に、剪枝装置40について図1〜図4を用いて説明する。
図1〜図4に示されるように、剪枝装置40は、剪枝機体41、刈刃42、移送装置としてのチェーンコンベア43,43、誘導部材としてのカバー44,44を備えている。
【0037】
本体部41は、図1〜4に示されるように、茶畝の上面(横幅方向)に沿うように形成された板状部材であって、剪枝機体41と相対高さ調整部35,35とは門型パイプフレーム45によって連結されていると共に、剪枝機体41上面と門型パイプフレーム45との間には、前方から下方に向かって湾曲した左右一対の補剛パイプフレーム46,46が介設されている。さらに、補剛パイプフレーム46,46は、チェーンコンベア43,43の上方に配置されるパイプフレーム460によって一体的に連なっている。これにより、門型パイプフレーム45、補剛パイプフレーム46,46、パイプフレーム460は、剪枝機体41の一部とみなすことができるようになっている。
【0038】
剪枝機体41の下面前側には、図3に示されるように、上下一対の刈刃(バリカン刃)42が左右方向に往復動可能に設けられている。これら刈刃42を駆動する油圧モータ47は、図2〜4に示されるように、剪枝機体41の上面片側(本実施形態にあっては機体右側)に設けられていると共に、上部デッキ上の油圧ポンプから作動油が供給されるようになっている。
【0039】
さらに、剪枝機体41の上面側には、図2〜4に示されるように、刈刃42が剪枝した剪枝屑を左右の畝間に向かって移送する左右一対のチェーンコンベア43,43が剪枝機体41の上面部よりも高い位置において循環可能に設けられている。チェーンコンベア43,43を駆動する2つの油圧モータ48,48は、剪枝機体41の左右中心側に設けられていると共に、上部デッキ上の油圧ポンプから作動油が供給されるようになっている。これにより、チェーンコンベア用の油圧モータが剪枝機体41の機体左右にある場合に比べると、剪枝屑の吐き出し空間を広くとることができるので、剪枝屑の吐き出し効率が向上すると共に剪枝屑を溜まりにくくすることができる。
また、チェーンコンベア43,43には、図3,4に示されるように、複数のウレタンゴム板43aが所定間隔をあけた状態でボルト固定されている。ウレタンゴム板を用いるのは、剪枝屑を畝間に向かって移送する際の過大な負荷から油圧モータ48,48を保護するためであり、これらウレタンゴム板の代わりに弾性体、例えばゴム板を用いてもよい。
【0040】
なお、図3,4中の符号43b,43bは、チェーンコンベア43,43の張力を一定に保つためのテンショナである。また、移送手段は、チェーンコンベア43,43にのみ限定されるものではなく、ブロワを用いてもよい。
また、同図中の符号49,49は、カバー44,44がウレタンゴム板43aに干渉するのを未然に防止したり、油圧モータ47に剪枝屑がかからないようにするための保護部材である。
【0041】
さらに、剪枝機体41の上面左右側部には、チェーンコンベア43,43により移送されてきた剪枝屑を畝間に向かって落下させるための左右一対の縦板状のカバー44,44が、剪枝機体41から左右側方に張り出した状態で、その張り出し量をそれぞれ個別に調節することができるように設けられている。
【0042】
具体的には、カバー44,44は、剪枝屑の飛散を防止すると共に隣の茶畝の裾部を押し拡げることができるような剛性を持った材質(例えば、金属、木、合成樹脂)から形成されている。これらカバー44,44の前端部側は、剪枝機体41の一部とみなされている門型パイプフレーム45に揺動可能に支持されている。また、カバー44,44の後部側は、剪枝機体41の一部とみなされている補剛パイプフレーム46,46から側方(外側)に向かって伸縮自在に張り出し支持された伸縮部材としてのアーム部材440,440の突出端部に揺動可能に連接されている。このアーム部材440,440の基端部側には、スリット441,441がアーム部材440,440の長手方向に向かって形成されていると共に、アーム部材440,440の基端部側と補剛パイプフレーム46,46との間には、補剛パイプフレーム46,46のフランジ部(図示せず)に螺合し、かつアーム部材440,440の各スリット441,441を挿通した軸部を備えた締め具としてのノブナット442,442が設けられている。そして、ノブナット442を緩めると、補剛パイプフレーム46との連接位置を基点としてアーム部材440を外側に張り出したり、機体左右中心側に引っ込めたりすることができるようになっていると共に、ノブナット442を締め付けると、アーム部材440を固定することができるようになっている。すなわち、手動で左右のカバー44,44の張り出し量を個別に調節することができるようになっている。
なお、締め具はノブナットのみに限定されるものではなく、例えば、ノブボルトや蝶ネジを用いてもよい。
【0043】
これにより、図4に示されるように、左右のカバー44,44を最大に張り出させた状態にあっては、カバー44,44を張り出していない元の状態(図3参照)よりも、剪枝機体41とカバー44,44との間の空間をより拡げることができるようになると共に、隣の茶畝の裾部を押し拡げて剪枝屑が畝間に落下する空間を拡げる。これにより、大量の剪枝屑が移送されてきても、また、傾斜地であっても剪枝屑を剪枝機体41上に剪枝屑を溜めることなく、畝間に落下させることができるようになる。
【0044】
なお、カバー44は、アーム部材440、ノブナット442によってのみ張り出されるものではなく、制御ユニットの制御下にある油圧式シリンダやエアシリンダを補剛パイプフレーム46とカバー44との間に介設し、ロッドを伸縮動作させることによって張り出し量を調節するようにしてもよい。この場合、カバー44の張り出し量は、カバー44の位置を検出する位置センサ、またはカバー44の揺動中心位置に設けた角度センサの検出値に基づいて制御ユニットがフィードバック制御するのが好ましい。
また、補剛パイプフレーム46とカバー44との間にボールネジを介設してカバー44の張り出し量を調節するようにしてもよい。ネジ軸の回転は、手動、油圧モータ、電動モータの何れかによって行われるようにしてもよい。
また、カバー44の揺動中心位置に制御ユニットの制御下にあるステッピングモータを配設してカバー44を回動させるようにしてもよい。この場合、カバー44の張り出し量は、カバー44の位置を検出する位置センサ、またはカバー44の揺動中心位置に設けた角度センサの検出値に基づいて制御ユニットがフィードバック制御するのが好ましい。
【0045】
以上説明したように本発明の摘採装置によれば、剪枝機体41にカバー44,44を茶畝の横幅方向に向かって開動可能、または伸縮可能かつ伸縮量をノブナット442,442によって調整可能なアーム部材440,440によって連接することによって、カバー44,44の張り出し量を調整できるようにした。さらに、カバー44,44は、隣の茶畝の裾部を押し拡げて剪枝屑が畝間に落下する空間を拡げるように張り出される。これにより、剪枝機体41とカバー44,44との間の空間をより拡げることができるようになるうえに、剪枝作業を行っている茶畝の隣の茶畝の裾部をカバー44,44が押して畝間を充分拡げることができるようになるので、大量の剪枝屑が移送されてきても、また、傾斜地であっても剪枝屑を剪枝機体41上に剪枝屑を溜めることなく、畝間に落下させることができるようになる。
また、剪枝装置40の構造を大幅に変更することなく、簡素な構成で茶畝を充分拡げることができるようになるので、既存の剪枝装置にも容易に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の剪枝装置を備えた刈取機の側面図である。
【図2】同例における剪枝装置の正面図である。
【図3】同例における剪枝装置の平面図である。
【図4】同例における剪枝装置のカバーを最大に張り出させた状態を示した平面図である。
【符号の説明】
【0047】
100…刈取機
10…フレーム本体
20…走行装置
30…細断装置
40…剪枝装置
41…剪枝機体
42…刈刃
43…チェーンコンベア(移送装置)
44…カバー(誘導部材)
440…アーム部材(連接部材)
441…スリット
442…ノブナット(締め具)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶畝を跨ぎながら走行可能な走行機体に装着され、前記茶畝の上面に沿うように形成された剪枝機体に刈刃が設けられていると共に、前記刈刃の後方に、前記刈刃が剪枝した剪枝屑を畝間に向かって移送する移送手段と、前記移送手段により移送されてきた剪枝屑を畝間に向かって落下させるため前記剪枝機体の側部から張り出された誘導部材とを備えた剪枝装置において、
前記剪枝機体に前記誘導部材を前記茶畝の横幅方向に向かって開動可能、または伸縮可能かつ伸縮量を調整可能な連接部材によって連接し、前記誘導部材の張り出し量を調整可能としたことを特徴とする剪枝装置。
【請求項2】
前記誘導部材は、隣の茶畝の裾部を押し拡げて前記剪枝屑が畝間に落下する空間を拡げることを特徴とする請求項1に記載の剪枝装置。
【請求項3】
前記連接部材は、一端部側にスリットが設けられ、他端部側は前記誘導部材に揺動可能に連接したアーム部材であって、前記本体部と前記アーム部材の一端部側とは、前記剪枝機体に螺合し、かつ前記スリットを挿通した軸部を備えた締め具によって接離可能とされていることを特徴とする請求項1または2に記載の剪枝装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−11251(P2009−11251A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177682(P2007−177682)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(000250270)落合刃物工業株式会社 (28)
【Fターム(参考)】