説明

副作用が軽減された治療抗体

治療標的へのタンパク質の結合を阻害するペプチドで修飾され、それによってタンパク質に起因する副作用を軽減する、治療抗体等の治療タンパク質。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療抗体及びその副作用(特に、サイトカイン放出に起因するもの)を軽減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗体治療等のタンパク質治療において、抗体の使用は、望まれない副作用(例えば、サイトカイン放出に起因するもの)を生じる。結果として、副作用が軽減された治療タンパク質が必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本出願は、2002年7月23日に出願された、仮出願であるシリアル番号60/397,934に基づく優先権を主張するものであり、その内容は、全体的に参考のために援用される。
【0004】
本発明の1つの側面によれば、修飾されていない抗体に比べて、修飾された治療抗体が、その標的抗原に対する制限され減弱された結合(limited reduced binding)を有し、減弱された結合がサイトカインの放出に起因する様な、その副作用を軽減する、修飾された治療抗体が提供される。好ましい実施態様において、減弱された結合は、時間と共に、標的に対する抗体の結合が増加されるようになっている。
【0005】
1つの側面によると、本発明は、特定の治療的効果を有する治療抗体を含み、ここで、該抗体が、天然の標的に対する抗体の結合を減弱する抗体結合部位(antibody−combining site)の制限された妨害を受け、後の宿主への抗体の投与が、前記治療的効果を達成することが可能であり、それによって、天然の標的に対する抗体の結合の減弱が抗体の副作用を軽減する、治療抗体に関する。
【0006】
従って、本発明の1つの側面によれば、治療抗体が治療標的に対する抗体結合部位(ACS)を含み、抗体が、制限された様式において、治療標的に対する治療抗体の結合を阻害する化合物で修飾された治療抗体の形態である医薬が提供される。
【0007】
1つのそのような実施態様において、抗体の抗体結合部位に可逆的に結合する化合物を含むように、抗体の投与の際にACSに結合する化合物と競合する標的抗原で修飾され、又は、そうでなければ該化合物によって抗原の結合が阻害され、それによって、標的に対する抗体の結合が阻害される、治療抗体が提供される。この様式において、投与後の初期期間において標的抗原に結合するようになる修飾抗体の量は、該抗体が非修飾の形態で投与された場合に起こるであろう結合よりも小さい。競合的結合の結果、該化合物がACSから置換される(displace)につれて、又は、そうでなければ該化合物阻害作用が減弱され、標的抗原に結合するようになる抗体の量は増加する。抗体の結合を阻害することによって、時間と共に増加する標的に結合された抗体の量を伴い、修飾された抗体は、サイトカイン放出に起因するような副作用を軽減及び/又は本質的に排除することができ、また、所望の治療的効果を達成することもできる。
【0008】
1つの実施態様において、修飾された抗体は、修飾されていない抗体の標的に対するアビディティよりも弱い、標的に対するアビディティを有する。このアビディティは、治療抗体に対する副作用を軽減及び/又は排除する一方、治療標的に結合することによって所望の治療的効果を生み出すために有効な量において、減弱される。
【0009】
ここで使用される用語“治療(therapeutic)”は、存在する疾患、病気又は障害を処置すること、ならびに疾患、病気又は障害の重症度を予防及び/又は軽減することの両方を含む。
【0010】
治療標的(therapeutic target)は、抗体が結合する抗原であり、抗原は、組織又は細胞上に存在するかもしれないし、存在しないかもしれない。標的への結合を阻害するための治療抗体に結合される化合物は、ACSへの結合によって及び/又はACSへの結合又はACSへの接近を阻害することによって(例、立体障害によって)、そのような結合を阻害し得る。
【0011】
この化合物は、抗体に化合物を連結することによって及び/又はACSへの化合物の結合によって、抗体と結合され得る。1つの実施態様において、該化合物は、抗体に連結又は固定され、また、ACSにも結合する。他の実施態様において、化合物は、ACSに結合することなく抗体に連結され、ACSへの接近を阻害することによって(例、立体障害によって)標的への抗体の結合を阻害する。1つの限定されない実施態様において、該化合物は、抗体の鎖の1つにのみ連結される。結合を阻害するために使用される化合物は、リンカーが、標的抗原への抗体の結合を最初に阻害する場合、ACSに結合する化合物を含まないリンカー化合物であり得る。
【0012】
治療抗体は、ヒトにおいて治療剤として使用され得、非ヒト抗体(例、齧歯類において惹起されたもの)であり得る。
【0013】
この化合物は、標的への抗体の結合を阻害するように機能し、それによって、投与後すぐに、該化合物の存在なしに結合するであろう抗体の量に比べて、標的に結合する抗体の量の制限された減少が起こる。標的に結合するようになる抗体の量は、時間と共に増加し、それによって、実質的に、標的に結合する抗体の量を阻害するACSの一時的な遮断が起こる。
【0014】
ACSの一時的な遮断(時間と共に増加する標的に結合する抗体の量を、最初に減少する遮断)は、以下;
(i)結合定数及び解離定数が、“妨害的な”因子と比べて有利である場合、細胞結合又は他の“標的”抗原上に徐々に抗体が蓄積するように、in vivoにおいて徐々に解離し得る、in vitroでのプレインキュベーションによる、規定された抗原又はそのドメイン、低親和性抗原性ペプチド又はミモトープ(mimotope)等の分子による、一時的な占有;又は
(ii)フレキシブルリンカー(flexible linker)によって結合され得る、規定された抗原又はそのドメイン、低親和性抗原性ペプチド又はミモトープ(mimotope)等の分子による一時的な占有。いったんin vivoに投与されれば、結合定数及び解離定数が、“妨害的な”因子と比べて有利である場合、抗体は、徐々に細胞結合又は他の“標的”抗原上に蓄積するであろう;又は
(iii)ACSにおいて非共有的に結合し得、in vivoにおいて解離することが可能である化学的薬剤;又は
(iv)一時的にACSを妨害し得る他の変化;例えば、ACSに結合する化合物なしに、ACSへの接近を一次的にブロッキングすること
によって、影響され得る。
【0015】
そのような修飾は、制限された期間の間、標的抗原上への抗体蓄積を妨げ、それは、投与された治療抗体が、軽減された副作用を有する一方、該抗体が所望の治療的効果を達成することを可能にする(すなわち、そのような効果を生み出す量において標的抗原上に蓄積する)ことを確実にするために充分であろう。修飾の除去は、pH変化、宿主内での酵素切断(enzymatic cleavage)、細胞に結合する宿主抗原との天然の競合(natural competition)等の宿主自身の生理学的及び生化学的プロセスによっても起こり得る。例えば、ペプチドミモトープは、例えば、白血球エステラーゼ等のin vivoでの宿主酵素による切断をうけやすい酵素分解モチーフを有するリンカーによって、抗体のH鎖又はL鎖に連結され得る。
【0016】
本発明の1つの特に有利な実施態様によれば、リンカーは、酵素によって切断され、これは、治療抗体の所望の作用部位においてのみ又は優先的に起こり、それによって、所望の作用部位に治療抗体の選択的送達を提供する。例えば、白血球エステラーゼによって切断されるリンカーは、その目的とする作用部位が炎症を起こした関節である抗体に対して適当であろう。或いは、可溶性抗原又はミモトープが、腫瘍部位内の低いpHにおいて、より容易に解離し得、これは所望の作用部位への抗体の選択的送達をも提供し得る。或いは、不活性リンカーによって結合された低親和性ミモトープは、in vivoにて自然に解離し得、再結合(reassociation)は、宿主細胞上の天然抗原と相互作用するACSによって抑制され得る。
【0017】
リンカーは、治療酵素の投与によって切断可能な部位を含むようにも設計され得る。例えば、リンカーは、TPA又はストレプトキナーゼに対して切断可能な部位含むように設計され得る。切断速度(rate of cleavage)(従って、細胞上への蓄積速度(rate of accumulation on cells))は、TPA又はストレプトキナーゼの量及び投与速度を制御することによって制御され得る。同じ方針で、リンカーが、in vivoにて自然に生じる酵素によって切断される場合、同様の制御が、切断を阻害するであろう酵素阻害剤の投与によって達成され得る。
【0018】
好ましくは、天然抗原、そのドメイン、及びペプチド断片又はミモトープが、ACSを修飾するために使用される。後者は、合成的に又は生物学的に誘導されたいずれかのペプチドライブラリーから産生され得る。非共有結合の化学物質は、その抗原又は等価なサロゲート(surrogate equivalent)に結合する抗体を阻害する能力について、天然又は合成ライブラリー又は他の入手可能な製品からスクリーニングされ得る。使用され得るリンカーは、好ましくは、フレキシブル(flexible)であるが、身体(body)によって又は設定された時間が経てば、酵素的に切断可能及び/又は分解可能であり得る。
【0019】
本発明は、さらに、補体システム及び免疫グロブリンのFc領域に対する特殊化された細胞受容体(FcR受容体)との相互作用を減少するように設計されたFc領域を含む、上記のような抗体にも関する。これは、ブロッキング抗体又はアゴニスト抗体等の細胞溶解が必須ではない、多くの抗体に対して有用であろう。
【0020】
さらなる側面によれば、本発明は、治療における使用のための上記の抗体を提供する。
【0021】
さらなる側面によれば、本発明は、前記治療効果を達成するために、哺乳類の処置での使用のための医薬(medicament)の製造における、上記抗体の使用を提供する。この処置は、所望の治療効果を達成するために充分な用量の医薬を投与することを含む。この処置は、抗体の反復的投与を含み得る。
【0022】
さらなる側面によれば、本発明は、所望の治療効果を達成し、例えば即時の及び大規模な標的細胞上の抗体の蓄積;特に、サイトカイン放出に起因する副作用を軽減及び/又は排除するために充分な用量の上記抗体の投与を含む、ヒトの処置方法を提供する。この治療効果は、ガン、関節リウマチのような慢性炎症性疾患、糖尿病、乾癬、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス(systemic lupus)等の自己免疫疾患、喘息等のアレルギー性疾患、心筋梗塞、脳梗塞等の循環器疾患及び感染性疾患を含み得る疾患の緩和又は予防であり得る。実際に、治療抗体の継続的又は反復的投薬(doses)が行われるあらゆる疾患である。
【0023】
上記のタイプの一時的な修飾は、抗体の他に、その活性が一時的に遮断され得、この部位の活性が免疫原性を決定する、生物学的に活性な部位に依存する治療タンパク質にも適用され得る。そのような治療タンパク質の例は、ホルモン、酵素、凝固因子、サイトカイン、ケモカイン及び免疫グロブリンに基づく(immunoglobulin−based)融合タンパク質を含む。
【0024】
抗体に化合物を共有結合した場合、1つの実施態様において、この化合物は、好ましくは、抗体の2つのアームの1つのみに連結される。
【0025】
ここで使用される用語“抗体”は、リコンビナント抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、モノクローナル抗体等の全ての形態の抗体を含む。本発明は、治療標的に結合することが可能な抗体断片にも適用することができる。
【0026】
1つの実施態様において、化合物(該化合物は、抗体のACSに結合可能なペプチド又は他の分子であり得る)は、個人に投与される抗体の抗体結合(binding)部位又は抗体結合(combining)部位に可逆的に結合される。該化合物は、抗原に対する抗体の結合部位を占有し、それによって、抗原に対する抗体の結合を阻害する。該化合物は、抗体結合部位に可逆的に結合され、抗体結合において制限された減弱(limited reduction)を有するように選択されることから、該抗体は、この抗体が方向付けられた(directed)抗原に対して結合することが可能である。
【0027】
1つの実施態様において、抗体の抗体結合部位に結合するように選択される化合物は、それによって、抗体の化合物に対するアビディティが、抗原に対する抗体のアビディティよりも小さいものである。このように、抗体が最初に投与された場合には、該化合物が存在しない場合に起こるであろう結合に比べて、抗原に対する抗体の減弱された結合が生じ、そのような結合は時間と共に増加する。
【0028】
本出願人は、抗体の投与のすぐあとの期間において、抗原に結合する抗体の量が減少され、そのような量が、時間と共に、減少された量から増加すれば、所望の治療効果を生み出す、抗原に有効に結合することができる抗体を投与することによって治療抗体に対する副作用(サイトカイン放出の結果によるもの等)の軽減が達成され得ることを見出した。
【0029】
従って、従来技術とは異なり、本発明に従って、その治療的機能を示す抗体は、最初に抗原に結合する治療抗体の量を減少した後、治療抗体結合量を増加することによって、抗体により引き起こされるサイトカイン放出等の副作用をも軽減する
最初に抗原に結合する抗体の量を減少させるという態様における、抗体結合部位に結合するために使用される化合物は、ペプチドであり得る。該ペプチドは、治療抗体が結合する抗原の対応するペプチド部分と同一又は異なり得る。抗体に対する適切なペプチドは、抗体及びその抗原に関する結合阻害アッセイ(inhibition of binding assay)においてペプチドのパネルを試験することによって選択され得る。これら及び他の手順は、本明細書の教示に基づいて、当業者にとって公知である。
【0030】
1つの実施態様において、該化合物に結合される抗体は、標的抗原に対する非−修飾抗体のアビディティよりも低い、標的抗原に対するアビディティを有する。修飾抗体及び非修飾抗体の相対的アビディティは、終点(end point)として50パーセント結合阻害を用いた結合阻害アッセイによって決定され得る。修飾抗体は、標的抗原に対する標識非修飾抗体の結合の50パーセント阻害を生じるために必要な非修飾抗体の量に比べて、修飾抗体の量に増加があった場合、減弱したアビディティを有する。
【0031】
修飾抗体のアビディティは、副作用(特にサイトカイン放出に起因するもの)を軽減及び/又は本質的に排除するために有効な量において、減弱され、修飾された抗体は、所望の治療効果を生み出すために有効な標的に対するアビディティを有する。一般に、アビディティは、少なくとも4倍、一般に、100倍まで減弱される。より大きなアビディティの減少があり得ることが、理解される。従って、本発明の側面によれば、抗体は、副作用を軽減するために修飾され、軽減された副作用のみを所望される場合、結合における減弱は、そのような結果を達成するための量に制限される(すなわち、副作用軽減は、修飾抗体に対する抗体反応を減弱又は排除することなく、達成され得る)。
【0032】
1つの限定されない実施態様において、該化合物は、非修飾抗体に比べて減弱した標的抗原に対する親和性を有する修飾抗体を提供することによって、修飾抗体の結合を阻害し得る。1つの限定されない実施態様において、修飾抗体は、非修飾抗体の親和性よりも少なくとも2倍又は少なくとも5倍小さい、結合される抗原に対する親和性を有し得る。本発明の1つの実施態様によれば、副作用は、制限された量における親和性を減弱することによって(例えば100倍まで、修飾抗体に対する抗体反応を排除することなしに)軽減され得る。しかしながら、この親和性は、より多くの量において減弱され得るが、そのような大きな減弱は、サイトカイン放出によって引き起こされる副作用を軽減するために必要とされないことが理解される。
【0033】
修飾抗体は、所望の治療効果を生み出すこと及び副作用の軽減の両方に有効な量において使用される。一般に、本発明を限定することなく、修飾抗体は、抗体が最初に投与された時から始まる24時間の期間の間に、投与された抗体の量が、少なくとも50mg及び一般的に少なくとも100mg及びさらに一般的に少なくとも200mgであるような量で投与される。
【0034】
治療抗体は、薬学的に許容される担体と組み合わせて使用され得る。好適な担体の使用は、本明細書中の教示から当業者の範囲内と考えられる。
【0035】
本発明は、特定の治療効果を有するタンパク質を含む治療タンパク質にも関し、ここで、該タンパク質は、その天然の標的に対するタンパク質の結合を減少させる一時的な妨害を受ける生物学的活性部位を有し、続く宿主へのタンパク質の投与は、前記治療効果を達成し、それによって、その天然の標的に対するタンパク質結合の減少は、副作用を軽減する。
【0036】
本発明は、以下:
(a)治療標的に結合する治療タンパク質(前記タンパク質が治療標的への該タンパク質の結合を阻害する化合物で修飾されており、前記修飾タンパク質が該タンパク質によって引き起こされる副作用を軽減すること及び治療標的に結合することによって治療効果を生み出すために有効である);ならびに
(b)薬学的担体
を含む医薬をも提供する。
【0037】
好ましくは、治療タンパク質は、治療標的に結合する抗体結合部位を含む抗体である。より好ましくは、該化合物は、抗体の抗体結合部位に結合される。さらに好ましくは、該化合物はまた、抗体に連結される。
【0038】
該化合物が、ペプチドであることも想定される。このペプチドと結合された修飾抗体のアビディティは、非修飾抗体のアビディティよりも少なくとも4倍少なく及び100倍まで少ないことが好ましい。好ましくは、該抗体は、アグリコシル化抗体(aglycosylated antibody)である。さらに好ましくは、抗体の鎖の1つのみが、それに連結した、抗体結合部位に結合するペプチドを有する。
【0039】
また、該化合物は、可逆的に抗体結合部位に結合し、それによって、標的に結合する抗体の量は、化合物が抗体結合部位から置換されるにつれて、増加することが好ましい。好ましくは、抗体結合部位に結合された該化合物はまた、抗体に連結される。さらに好ましくは、該化合物は、ペプチドである。抗体のFc部分は、アグリコシル化されていて、さらに好ましくは、Fc受容体への抗体の結合が本質的に排除されていることが好ましい。
【0040】
好ましくは、該抗体は、非ヒト抗体である。また、該抗体は、キメラ抗体であることが好ましい。
【0041】
さらに、本発明は、哺乳類を処置するため及びタンパク質に対する副作用を軽減するための両方に有効な量の上記の医薬を哺乳類に投与することを含む、哺乳類を処置する方法をも提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下の限定されない実施例は、本発明を説明する。
【0043】
ヒト化抗−CD52抗体、CAMPATH−1Hを、以下の試験に用いた。様々なコンストラクトを、CAMPATH−1H抗体及び以下の方法を用いて作製した。
【0044】
CAMPATH−1Hの減弱された結合変異体の生成:
ヒトCD52抗原に対して特異的なヒト化抗体CAMPATH−1HのV領域のクローニングを、Gilliland et al.1999 The Journal of Immunology 162:33663−3671に記載のように行う。この方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いたOrlandi et al.1989 PNAS 86:3833のものに基づく。野生型ヒト化CAMPATH−1軽鎖を、ベクターpGEM9(Promega)中にクローニングし、部位指定変異導入(site−directed mutagenesis)のためのPCRテンプレートとして使用した。
【0045】
フレキシブルリンカー(Gly4Serx2)を、CAMPATH−1Hのリーダー配列及びCAMPATH−1H VL配列間の軽鎖のアミノ末端に、オリゴヌクレオチドプライマーPUCSE2及びLink L−3‘+Link−L−5’ならびにPUCSE REVを用いて付加した。結果として得られた断片を、Hind III/Hind III断片として発現ベクター中にクローニングされ得る、全長Linker−CP−1H軽鎖を得るため、プライマーPUCSE2+PUCSE REVを用いてPCR会合した(PCR assembled)。
【0046】
その後、Linker−CP−1H軽鎖コンストラクトを、CD52ミモトープ(QTSSPSAD)及びCD52ミモトープ突然変異体9(QTSAAAVD)コンストラクトを生成するためにPCRテンプレートとして使用した。プライマーPUCSE2及びCD52MIM−3’+CD52MIM−5’ならびにPUCSE REVを、ミモトープ−CP−1H軽鎖コンストラクトを得るために使用した。プライマーPUCSE2及びMIMMut9−3’+MIMMut9−5’ならびにPUCSE REVを、ミモトープ突然変異体9−CP−1H軽鎖コンストラクトを得るために使用した。
【0047】
Linker−Only−CP−1H、ミモトープ−CP−1H及びMimMut9−CP−1H突然変異体を、pBAN−2、ネオマイシン選択を含むpNH316哺乳類発現ベクター(Page et al. 1991 Biotechnology 9:64−68)及び選択のためグルタミン合成酵素遺伝子を含む哺乳類発現ベクターであるPEE12(Bebbington et al. 1992 Biotechnology 10:169−175)に移した(transfer)。
【0048】
サブコンフルエント(subconfluent)dhfr-チャイニーズハムスター卵巣細胞(Page et al. 1991 Biotechnology 9:64−68)又はNSOマウスミエローマ細胞(ECACC cat no 8511503, Meth Enzymol 1981,73B,3)を、軽鎖突然変異体及びCAMPATH−1H重鎖コンストラクト ヒトIgG1不変領域と共にコトランスフェクションを行った。
【0049】
CAMPATH−1H重鎖コンストラクトを、dhfr選択可能なマーカーを有するpLD9哺乳類発現ベクターの変異体である、pRDN−1(Page et al. 1991 Biotechnology 9:64−68)及びPEE12中に発現させた。トランスフェクションを、LipofectAMINE PLUS試薬(Life Technologies)を用い、取り扱い説明書に従って行った。
【0050】
ヒトIgG1不変領域を、Takahashi et al. 1982 Cell 29:671−679によって記載される野生型G1m(1,17)遺伝子から誘導した。
【0051】
重鎖及び軽鎖トランスフェクタント(transfectant)を、1mg/ml G418+5%(v/v)透析されたウシ胎児血清を含む、ヒポキサンチン−フリーIMDM中で選択した。結果として選択された細胞を、ELISAによって抗体産生について、ならびにヒトT細胞クローンHUT78(Gootenberg JE et al. 1981 J.Exp.Med.154:1403−1418)及びCD52トランスジェニックマウスに対して結合する抗原についてスクリーニングした。
【0052】
抗体を産生する細胞を、限外希釈によってクローニングし、その後、ローラーボトル培養(roller bottle culture)に拡大した。各細胞株由来のおよそ15リットルの組織培養上清からの免疫グロブリンを、プロテインA上で精製し、PBSで透析し、そして定量化した。
【0053】
使用されたプライマーのリスト
【0054】
【化1】

【0055】
産生されたコンストラクト及び細胞株
TF CHO/CP−1H IgG1/MIM及びTF NSO/CP−1H IgG1/MIM(MIM IgG1)
フレキシブルグリシン4セリンx2リンカ−+野生型ヒトIgG1不変領域を有するCampath−1H重鎖によって、CAMPATH−1H軽鎖V領域につながれたCD52ミモトープQTSSPSAD。NSO−産生抗体についての発現ベクターPEE12(Celltech)、ならびにCHO−産生抗体についてのpRDN−1及びpBAN−2発現ベクターWellcome中へのクローニング。
【0056】
TF CHO/CP−1H IgG1/Link(リンカー)
CAMPATH−1H軽鎖V領域上のフレキシブルグリシン4セリンx2リンカー+野生型ヒトIgG1不変領域を有するCAMPATH−1H重鎖。CHO−産生抗体についての、pRDN−1及びpBAN−2発現ベクタ−(Wellcome)中へのクローニング。
【0057】
TF CHO/CP−1H IgG1/MIM−MUTANT9(MIM−MUTANT9−IgG1)
野生型ヒトIgG1不変領域を有するCAMPATH−1H重鎖+フレキシブルグリシン4セリンx2リンカーによって、CAMPATH−1H軽鎖V領域につながれたCD52ミモトープ突然変異体9(QTSAAAVD)。CHO−産生抗体についての発現ベクタ−pRDN−1及びpBAN(Wellcome)中へのクローニング。
【0058】
TF CHO/CO−1H IgG1(CAMPATH−1H)
野生型CAMPATH−1H軽鎖V領域+野生型ヒトIgG1不変領域を有するCAMPATH−1H重鎖。CHO−産生抗体についての発現ベクターpRDN−1及びpBAN−2(Wellcome)中へのクローニング。
【0059】
図1は、CD52を有するHUT細胞に対する様々な抗体コンストラクトの結合能力を示す。CP−1H野生型は、CP−1Hリンカーのみの結合よりもおよそ5倍大きく、CP−MIMmut9よりもおよそ100倍大きく、及びCP−CD52MIMよりもおよそ10,000倍大きい結合能力(binding efficiency)を有する。
【0060】
エフェクター機能評価
CP−1H MIMmut9エフェクター機能を、補体溶血によるCD52保有T細胞株HUT78を殺す能力を試験することにより、評価した。CP−1H野生型を、陽性コントロールとして用いた。106細胞/mlのHUT78細胞100μlを、0.4ug/ml〜300ug/mlの範囲の様々な濃度の各抗体と混合した。この後、補体の供給源(source)としての新鮮な、不希釈(ニート(neat))ヒト血清100μlを添加した。37℃にて45分間インキュベーションした後、プロピジウムアイオダイドを、混合物に加え、フローサイトメトリーによって細胞を解析した。PI染色(溶解した)細胞のパーセンテージを、各条件について測定した。図2に示される結果は、CP−1H MIMmut9が、抗体エフェクター機能を媒介(mediate)する能力を維持することを示す。
【0061】
修飾及び非修飾抗体を、以下のように、サイトカインの誘導を測定するために試験した:
サイトカイン計測
精製抗体を、エンドトキシンを除去するためにDetoxi−Gelカラム(Pierce)に通した。その後、全ての抗体のバッチを、QCL 1000 LALアッセイ(Bio−Whittaker)を用いて、エンドトキシンについて試験した。
【0062】
Ex−Vivo全血アッセイ
健康な研究者からの血液を、新鮮なまま(freshly)ヘパリン中に導かれた(darwn into)。全血試料を、100、10又は1μg/mlの治療抗体と共に、37℃にて5時間、激しく振とうしながらインキュベーションを行った。その後、血漿及び細胞を、遠心分離によって分離した。
【0063】
血漿TNF−αレベルをヒトTNF−αイムノアッセイ(R&D Systems)によって測定し、血漿IFN−γレベルをヒトIFN−γElisa(BD Bioscience)によって測定し、そして、血漿IL−6レベルをヒトIL−6Elisa(BD Bioscience)によって測定した。
【0064】
以下の表1及び2は、サイトカインの放出を減少する修飾抗体を用いた、そのような試験の結果を報告する。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
ここに記載される実施態様の多くの修飾及び変化が、この中の教示に基づいて可能である;従って、本発明の範囲は、そのような実施態様に限定されない。

【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、CD52を有するHUT細胞に対する様々な抗体コンストラクトの結合能力を示す。
【図2】PI染色(溶解した)細胞のパーセンテージを、各条件について測定した。
【配列表フリーテキスト】
【0069】
配列番号1〜7は、PCRプライマーである。
【0070】
配列番号8は、PCTプライマーである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
(a)治療標的に結合する治療タンパク質(前記タンパク質が治療標的への該タンパク質の結合を阻害する化合物で修飾されており、前記修飾タンパク質が該タンパク質によって引き起こされる副作用を軽減すること及び治療標的への結合により治療効果を生み出すために有効である);ならびに
(b)薬学的担体
を含む医薬。
【請求項2】
治療タンパク質が、治療標的に結合する抗体結合部位を含む抗体である、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
該化合物が抗体の抗体結合部位に結合する、請求項2に記載の医薬。
【請求項4】
該化合物はまた抗体に連結される、請求項3に記載の医薬。
【請求項5】
該化合物がペプチドである、請求項3に記載の医薬。
【請求項6】
ペプチドと結合した、修飾された抗体のアビディティが、修飾されていない抗体のアビディティよりも少なくとも4倍小さく、100倍まで小さい、請求項5に記載の医薬。
【請求項7】
抗体がアグリコシル化抗体である、請求項6に記載の医薬。
【請求項8】
抗体の鎖の1つのみが、抗体結合部位に結合する、そこに連結されたペプチドを有する、請求項7に記載の医薬。
【請求項9】
該化合物が抗体結合部位に可逆的に結合され、それによって標的に結合する抗体の量が、該化合物が抗体結合部位から置換(displace)されるにつれて増加する、請求項3に記載の医薬。
【請求項10】
抗体結合部位に結合する化合物はまた、抗体に連結される、請求項9に記載の医薬。
【請求項11】
該化合物がペプチドである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
抗体のFc部分がアグリコシル化されている、請求項11に記載の医薬。
【請求項13】
Fc受容体への抗体の結合が本質的に排除されている、請求項11に記載の医薬。
【請求項14】
抗体が非ヒト抗体である、請求項10に記載の医薬。
【請求項15】
抗体がキメラ抗体である、請求項10に記載の医薬。
【請求項16】
哺乳類を処置すること及びタンパク質に対する副作用を軽減することの両方に対する有効量の請求項1に記載の医薬を哺乳類に投与することを含む、哺乳類を処置する方法。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−506333(P2006−506333A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−522335(P2004−522335)
【出願日】平成15年7月23日(2003.7.23)
【国際出願番号】PCT/GB2003/003156
【国際公開番号】WO2004/009638
【国際公開日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【出願人】(503455558)イシス イノベーション リミテッド (2)
【Fターム(参考)】