説明

副作用プロファイルを最小限にしながら片頭痛の迅速な緩和を可能にするDHEの治療上の投与方法

ジヒドロエルゴタミン(DHE)を含む医薬組成物と、副作用または有害作用なしに片頭痛を処置するためDHEを患者に投与する方法とを開示する。DHEにより片頭痛を速やかに処置する方法であって、ピーク血漿濃度(Cmax)を下げ、ピークをやや遅延させて、ドーパミン作動性受容体およびアドレナリン作動性受容体の活性化を抑えるようにしながら、片頭痛の症状の速やかな消散を可能にする時間枠内でセロトニン受容体に対して十分に活発な結合が得られ、片頭痛の症状が緩和することを含む、方法を開示する。この方法に好適な吸入器装置も開示する。本発明の方法を実施するキットも開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片頭痛を処置する方法に関する。本発明は特に、片頭痛の症状を緩和する薬物の投与に伴う副作用または有害作用を最小限にとどめながら片頭痛および関連する症状を処置する方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、ジヒドロエルゴタミン(DHE:dihydroergotamine)を含む医薬組成物と、副作用なしに片頭痛(migraine headache)を処置するためにこうした医薬組成物を患者に投与する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
片頭痛は、患者が医師を受診する最も一般的な頭痛である。米国片頭痛調査IIによれば、米国では12歳以上の約2800万人(人口の約13パーセント)が、国際頭痛学会が定めた片頭痛の医学的定義に当てはまる頭痛に悩んでいる。米国では4家庭に1人の片頭痛罹患者がいることになる。頭痛が片頭痛の医学的定義に当てはまり、片頭痛と診断される患者の割合は、10年前に比べて上昇している。すべての片頭痛罹患者の多く(53パーセント)には、重度の機能障害を引き起こすような疼痛、あるいは、場合によっては数日の間寝込まざるを得ないような疼痛が見られる。過去10年において片頭痛の処置に取り組む医師の方法に劇的な変化はなかった。(非特許文献1)
片頭痛の診断では、3項目の片頭痛診断(ID Migraine)臨床判断ルールが策定されている。(非特許文献2)。片頭痛は一次性頭痛の一種で、一部の人では周期的に繰り返される。片頭痛は、悪心、嘔吐または光過敏などの症状を伴うため、他の頭痛とは異なる。ほとんどの人の場合、頭の片側だけに拍動痛を感じる。片頭痛は、「前兆を伴う」片頭痛か、「前兆を伴わない」片頭痛かのいずれかに分類される。前兆は一群の神経学的症状であり、通常、警告のサインになる視覚障害である。前兆が現れた患者は一般に、頭痛(headache pain)が始まる少し前に鮮やかな閃光または点滅する閃光が見える。しかしながら、片頭痛の人のほとんどは、そうした警告のサインを発しない。
【0003】
片頭痛の主な要因として複数の液性因子が想定されている。そうした因子には、セロトニン、ヒスタミン、プロスタグランジン、血小板因子、エンドルフィンおよび血管作動性神経ペプチドがある。片頭痛の原因については、多くの研究者により研究されてきた。現在の研究では、血管拡張因子/血管収縮因子を病因とする血管性頭痛のメカニズム(すなわち、動脈拡張により疼痛が起こり、収縮により軽減される)が十分に妥当とは考えられなくなっている。また、ここに来て、硬膜に起こると考えられる無菌性炎症が血管性頭痛(head pain)の原因因子として知られている。未知の要素が血管周囲の三叉神経軸索を活性化し、血管作動性神経ペプチド(サブスタンスP、カルシトニン遺伝子関連ペプチドなど)が放出される。これらの因子が局所の炎症、すなわち、血管拡張、血漿の血管外漏出、マスト細胞の脱顆粒を引き起こすことで、インパルスが脳幹および高次中枢に伝達されて、頭痛(head pain)として認識される(非特許文献3)。
【0004】
片頭痛治療は、予防治療あるいは対症治療のいずれかである。頭痛が毎月2回から4回以上起こり、日常生活を妨げるほど重度である場合、患者に予防投与を選択してもよい。プロプラノロール(INDERAL(登録商標))などのβ遮断薬が最も多く使われる。頻用される他の薬物として、マレイン酸メチセルギド(SANSERT(登録商標))などのセロトニンアンタゴニスト、カルシウムチャネル遮断薬(VERAPAMIL(登録商標))、アミトリプチリン(ELAVIL(登録商標))、およびベラドンナアルカロイド類(belladona alkaloids)とフェノバルビタールとを含むエルゴタミン調製物が挙げられる。これらの薬物にはすべて、鎮静、活力と欲動の低下、口内乾燥、便秘、体重増加ならびに胃腸の痙攣および障害などの著しい副作用がある。対症的処置の場合、カフェインを含むエルゴタミン(CAFERGOT(登録商標))が多く使用される。片頭痛の処置に使用される他の薬物として、イソメテプテンムカート(MIDRIN(登録商標))、非ステロイド系抗炎症剤(MOTRIN(登録商標)、NAPROXEN(登録商標)などのNSAID(non−steroidal anti−inflammatory drug))、ジヒドロエルゴタミンおよびスマトリプタン(IMITREX(登録商標))などの新規のトリプタンが挙げられる。FIORINAL WITH CODEINE(登録商標)(コデインを含むブタルビタール)などの麻薬を頻繁に使用する場合、リバウンド頭痛および習慣性が生じる可能性が高いなど、さらなる危険が見られる。
【0005】
片頭痛(migraine headache)の処置には、セロトニンアゴニストの投与が十分に確立されている。最も広く用いられているセロトニンアゴニストは、スマトリプタン、ゾルミトリプタン、ナラトリプタン、リザトリプタン、エレトリプタン、フロバトリプタンおよびアルモトリプタンなどのトリプタンである。これらの化合物は、セロトニン5−HT1D/1B受容体に特異的に結合する。使用頻度は下がるが、エルゴタミンタルトラート(本明細書ではエルゴタミンという)およびジヒドロエルゴタミンメシラート(ジヒドロエルゴタミンまたはDHEともいう)などの麦角アルカロイド類も、以下に限定されるものではないが、急性片頭痛の処置など、様々な病状に用いられる。
【0006】
エルゴタミンおよびDHEは、直腸、経口、舌下および鼻腔のバイオアベイラビリティーが非常に低い(投与用量が体循環に到達する割合はわずか2%〜10%にとどまる)。また、これらの投与経路では薬効の発現も比較的遅く、鼻腔内送達でも45分、経口送達または舌下送達では2時間である。静脈内(IV:intravenous)投与は、バイオアベイラビリティーが高く、薬効発現までの時間が、ほとんどの場合、30分をはるかに下回る。しかしながら、注射は疼痛を伴ううえ、局所の炎症を引き起こし、コンプライアンスを低下させる。さらに、IVによる投与には、高価な臨床管理が必要になるため、麦角アルカロイド類の投与は肺吸入であれば極めて望ましいと考えられる。肺には代謝機構があまり存在せず、肺胞上皮から毛細血管循環に迅速に輸送されるため、麦角アルカロイド類の肺吸入であれば、薬剤が循環血中に到達する前の代謝が最小限に抑えられるであろう。エルゴタミンタルトラートの場合、経肺送達のバイオアベイラビリティーは最大92%であることが明らかになっている。さらに、肺吸入による投与であれば、片頭痛薬に典型的な胃腸不耐性を回避し、麦角アルカロイド類の苦みが原因で鼻腔投与および舌下投与で経験する不快な味も最小限に抑えられるであろう。肺吸入であれば、注射の侵襲性に伴う処置剤投与に対する抵抗感および臨床管理の費用を最小限に抑えられると考えられる。さらに、肺吸入では、侵襲的性質を持つ注射を用いずに、30分未満というIVボーラスのような速さで薬剤が体循環に送達されるため、片頭痛の症状が速やかに軽減され得るであろう。
【0007】
ジヒドロエルゴタミン(DHE)は、片頭痛の有効な処置剤として約50年前に同定された(Raskin,Neurology 36:995 997(1986);Silbersteinら、Headache 30:334 339(1990);Saadah,Headache 32:18 20(1992);および非特許文献4)。肺吸入用のエルゴタミンタルトラート(エルゴタミンともいう)のエアロゾル送達については多くの参考文献に記載されているが、肺吸入によるDHEの送達に関する教示はほとんどなく、あったとしてもわずかである。DHEは上記のいずれの製剤においても安定化させるのが非常に難しいため、エルゴタミンタルトラートと同じ要領でDHEを送達するのは容易ではない。DHE(D.H.E.45(登録商標)−Novartis)については、50年以上にわたり筋肉内または静脈内(IV)注射で投与されている(Belgradeら、Neurology 39:590 592(1989);Winner,Headache 33:471 475(1993))。DHE(MIGRANAL(登録商標)−Novartis)については、10年にわたり鼻腔投与で投与されている。また、DHEは、皮下投与するときにも有用である(Klapperら、Headache 32:21 23(1992);非特許文献4;およびBeckerら、Headache 36:144 148(1996))。しかしながら、その投与には、悪心、嘔吐、胸部圧迫感などの好ましからぬ副作用プロファイルが伴ううえ、その使用に関連して血圧不安定および動脈収縮などの心血管系への影響が報告されている。
【0008】
DHEの投与は、片頭痛の処置に有効ではあるが、悪心、嘔吐および胸痛などの副作用を伴うことが多い(非特許文献4)。USP(United States Pharmacopeia)D.H.E.45(登録商標)(ジヒドロエルゴタミンメシラート)注射液を投与された患者の市販後の経験から観察される他の副作用として、ジヒドロエルゴタミンの長期使用後に見られる血管痙攣、感覚異常、高血圧、眩暈、不安症、呼吸困難、頭痛、潮紅、下痢、発疹、発汗増加、心弁膜症、胸膜線維症および後腹膜線維症が挙げられる。悪心のような少なくとも1つの副作用は、筋肉内または鼻腔投与後よりも静脈内投与後に起こりやすくなる。DHEについては、わずか1.5mMの濃度で皮下投与しても、処置を受けた患者の約16%が悪心を起こすことが報告されている(非特許文献4)。DHEの注射用またはIV用の現在受け入れられている処置アルゴリズム(図6を参照)では、悪心を防ぐためDHEの投与前または投与と同時に制吐薬を投与する必要がある。周知の循環器疾患を持つ患者は、DHE処置の対象外となる。
【0009】
これらの好ましからぬ副作用にもかかわらず、DHEは依然として重度の片頭痛、群発頭痛、慢性習慣性頭痛の処置の「基準薬」とされている。DHEは、スマトリプタンよりも作用持続時間が長いため、使用による頭痛の再発率が低い。(非特許文献4)。したがって、投与に伴う従来の副作用を引き起こさずに、求められる時間以内に治療有効量のDHEを送達する手順が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Lipton RBら、Headache,(2001)41:638−645,646−657
【非特許文献2】Stewart WFら、Neurology(1994);44(6 suppl 4):S17−23
【非特許文献3】Moskowitz,M.A.、Neurogenic versus vascular mechanisms of sumatriptan and ergot alkaloids in migraine.Trends Pharmacol.Sci(1992)13,307−311
【非特許文献4】Winner Pら、A double blind study of subcutaneous dihydroergotamine versus subcutaneous sumatriptan in the treatment of acute migraine.Arch Neurol(1996)53:180−184
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、(a)1種または複数種の第1の受容体に結合し、第1の受容体に対する化合物の結合により疾患または状態が緩和され、かつ(b)1種または複数種の第2の受容体に結合し、第2の受容体に対する化合物の結合により副作用が引き起こされる化合物を用いて個体の疾患または状態を速やかに処置する方法であって、化合物が第1の受容体に対してアゴニストとして働き、疾患または状態が緩和されるような化合物の循環血漿濃度レベルを生じるのに十分な速度で一定量の化合物を個体に投与することを含み、化合物の循環血漿濃度レベルは、第2の受容体に対する結合が副作用を引き起こすのに必要なレベル未満にとどまる、方法に関する。
【0012】
一実施形態では、本発明は、副作用を最小限にとどめながらDHEにより片頭痛を速やかに処置する方法であって、ピーク血漿濃度(Cmax)を抑制し、ドーパミン作動性受容体およびアドレナリン作動性受容体が飽和しないようにピークをやや遅延させる一方、片頭痛の症状の速やかな消散を可能にする時間枠内でセロトニン受容体に対して十分な結合が得られ、片頭痛の症状が緩和されることを含む、方法に関する。
【0013】
一実施形態では、本発明は、副作用を起こさずに2時間以内に片頭痛の症状が軽減する十分な量のDHEまたはその塩、水和物、多形、プロドラッグ、イオン対および代謝産物を、それを必要とする患者に投与する、方法に関する。
【0014】
本発明は、片頭痛の症状の緩和に関係するセロトニン受容体に対してDHEがアゴニストとして働くうえで効果的な循環血漿濃度レベルを生じるには十分な量だが、悪心および他の副作用に関係するアドレナリン作動性受容体またはドーパミン作動性受容体に対して活発に結合するには不十分な量のDHEを個体に与える、方法に関する。
【0015】
いくつかの実施形態では、DHEは、Dなどのドーパミン作動性受容体に対する活発な結合の低下(<50%)または消失(<20%)を示す。いくつかの実施形態では、DHEは、5−HT受容体に対する活発な結合の消失(<20%)を示す。いくつかの実施形態では、いくつかの実施形態では、DHEは、アドレナリン作動性受容体に対する活発な結合の低下(<60%)または消失(<20%)を示す。
【0016】
一実施形態では、ヒトの循環血漿中のCmaxが40,000pg/ml未満の濃度であり、かつ投与後にピーク血漿濃度に達する時間(Tmax)が投与後30分以内になるような速度で任意の方法によりDHEを投与する。
【0017】
いくつかの実施形態では、循環血漿中のDHEのCmaxは、20,000pg/mL未満または15,000pg/mL未満または10,000pg/mL未満または7,500pg/mL未満である。いくつかの実施形態では、循環血漿中のDHEのTmaxは、好ましくは20分未満、最も好ましくは15分未満である。
【0018】
本発明の一態様によれば、本発明の方法により投与されるDHEのCmaxは、直接的な静脈内送達またはスローボーラス静脈内送達により投与されるDHEのCmaxよりも少なくとも5倍、10倍または15倍低下する。
【0019】
本発明の一態様によれば、本発明の方法により投与されるDHEのTmaxは、直接的な静脈内送達により投与されるDHEのTmaxより少なくとも1分遅延し、かつ本発明の方法により送達される薬剤のAUC(area under the curve)(すなわち、体循環血液中の薬剤濃度と時間との曲線の面積)は、匹敵するIV送達用量の75%以内である。
【0020】
本発明の一態様によれば、ヒトの循環血漿中のピーク血漿濃度(Cmax)が10,000pg/ml未満の濃度であり、かつ投与後にピーク血漿濃度に達する時間(Tmax)が投与後20分未満であるような速度で、さらに制吐薬を投与せずにDHE製剤を呼吸作動型定量吸入器により個体に投与する。
【0021】
本発明の方法によれば、上記のようなCmaxおよびTmaxが得られるDHEの投与により、以下に限定されるものではないが、疼痛、悪心、音恐怖および光恐怖などの片頭痛症候群の少なくとも一部が30分以内に緩和され、緩和は24時間持続する一方、薬剤によって誘発される悪心、心血管系副作用または他の有害作用は起こらない。
【0022】
一実施形態によれば、片頭痛症候群の少なくとも一部が緩和されたことを、DHE投与の時点で「0」を超える片頭痛の症状のIHSスコアが投与30分後、60分後、90分後または120分後に≦1に低下することで測定する。
【0023】
本発明の方法によれば、投与の結果、以下に限定されるものではないが、8−ヒドロキシジヒドロエルゴタミンなどの一次活性代謝産物のピーク血漿濃度が、Cmaxで40,000pg/ml未満になる。いくつかの実施形態では、循環血漿中の一次代謝産物のCmaxは、好ましくは1,000pg/mL未満、一層好ましくは500pg/mL未満、最も好ましくは200pg/mL未満である。いくつかの実施形態では、循環血漿中の一次代謝産物のTmaxは、好ましくは90分未満、最も好ましくは60分である。。
【0024】
本発明の一態様では、本方法は、3.0mg未満の単位用量のDHEまたはその塩、水和物、多形 プロドラッグ、イオン対および代謝産物を体循環投与することを含む。好ましい実施形態では、1.0mgの単位用量を投与する。
【0025】
本発明はさらに、個体に投与したときに所望の送達プロファイルを得るのに好適なDHE製剤にも関する。
【0026】
本発明の方法によれば、DHE製剤を、以下に限定されるものではないが、静脈内送達、動脈内送達、腹腔内送達、肺内送達、経口送達、舌下送達、頬粘膜送達、鼻腔内送達、経口吸入送達、膀胱内送達、筋肉内送達、気管内送達、皮下送達、イオン導入送達、経皮送達、眼内送達、髄膜内送達、経粘膜的送達および経皮送達など、任意の様式で投与してもよい。
【0027】
好ましい様式では、投与方法は、エアロゾル、乾燥粉末吸入器、ネブライザー、気化器、加圧式定量吸入器(pMDI:pressurized metered dose inhaler)および同種のものを用いた肺吸入による方法である。より好ましい実施形態では、呼吸作動型定量吸入器(たとえば、Map Pharmaceuticals,Mountain View,California製のTEMPO(商標)吸入器)などのpMDIを用いてDHEを投与する。
【0028】
本発明はさらに、DHE製剤およびその使用説明書を含むキットに関する。好ましい実施形態では、吸入器装置が含まれている。このキットの一実施形態では、吸入器装置にDHE製剤を充填する。別の実施形態では、キットは、1つまたは複数の単位用量のDHE製剤を含む。一実施形態では、吸入器装置は、呼吸作動型定量吸入器(TEMPO(商標)吸入器)などのpMDIである。
【0029】
本発明はさらに、1つまたは複数の単位用量のDHE製剤を含み、各単位用量を、ヒトの循環血漿中のピーク血漿濃度(Cmax)が10,000pg/ml未満の濃度であり、かつ投与後にピーク血漿濃度に達する時間(Tmax)が投与後30分未満であるような速度で投与する、吸入器装置に関する。
【0030】
本発明ならびに本発明の他の目的、特徴および利点については、以下の発明の詳細な説明ならびに付随する図および実施形態からさらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】DHEとプラセボにより疼痛の緩和が得られた被験者の割合を示す。
【図2】副作用をほとんど伴わずに鎮痛効果が得られる薬物動態プロファイルを示す。
【図3】用量および投与経路別のセロトニン作動性受容体サブタイプの放射性リガンド受容体結合プロファイルを示す。20%未満を不活性な結合に分類した。「(h)」はヒトクローン受容体サブタイプを表す。
【図4】用量および投与経路のアドレナリン作動性受容体サブタイプおよびドーパミン作動性受容体サブタイプの放射性リガンド受容体結合プロファイルを示す。20%未満を不活性な結合に分類した。「(h)」はヒトクローン受容体サブタイプを表し、「NS」は、非特異的結合を示す。
【図5】様々な濃度のDHEにおける5−HT1B受容体および5−HT2B受容体の選択的アゴニズムを示す。
【図6】DHEの注射またはIV投与で現在許容されている処置のアルゴリズムを示す。
【図7】吸入経路および静脈内(IV)経路によるDHE投与後の8’OH−DHEの幾何平均濃度を経時的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の方法によれば、ジヒドロエルゴタミン(DHE)という語を使用する場合、DHEまたはその塩、水和物、多形 プロドラッグ、イオン対および代謝産物を含む。
【0033】
本発明は、副作用を起こさずに所定の時間以内に片頭痛の症状が軽減する十分な量のDHEまたはその塩、水和物、多形 プロドラッグ、イオン対および代謝産物を、それを必要とする患者に投与する方法に関する。
【0034】
所定の時間以内に片頭痛の症状が軽減するとは、30分、60分、90分、120分または180分以内に、以下に限定されるものではないが、疼痛、悪心、音恐怖および光恐怖など、少なくとも1つの片頭痛症候群の一部が緩和することを含んでもよい。片頭痛の症状の軽減には、緩和が6時間、12時間、18時間、24時間または36時間持続することをさらに含めてもよい。
【0035】
片頭痛の症状のいずれかの軽減効果については、DHE投与の時点で「0」(疼痛のスコアは>1)を上回るIHSスコアが、投与後30分、60分、90分、120分または180分で≦1のスコアに低下することで測定する。ただし、疼痛(または他の重度の症状)からの解放の場合、その症状のグレード分類が最初の結果>0(疼痛のスコアは>1)から該当する時点で0に低下している必要がある。
【0036】
副作用を起こさずに片頭痛の症状を軽減するとは、治療有効量のDHEを投与しても薬剤によって誘発される悪心、嘔吐、胸部圧迫感、および血圧不安定および動脈収縮などの心血管系への影響、またはDHEによる片頭痛の処置に関連することが知られている他の任意の有害作用が起こらないことを含む場合がある。
【0037】
本発明は、片頭痛の症状の緩和に関係するセロトニン受容体に対してDHEがアゴニストとして働くうえで効果的な循環血漿濃度レベルを生じるのに十分な量のDHEを個体に与える方法であって、30分、60分、90分、120分または180分以内に、以下に限定されるものではないが、疼痛、悪心、音恐怖および光恐怖など、少なくとも1つの片頭痛症候群の一部を緩和するか、あるいは、緩和が6時間、12時間、18時間、24時間または36時間持続するのに十分なCmaxに一定時間(Tmax)内に達する、方法に関する。
【0038】
さらに、本発明の投与方法により一定時間(Tmax)内に達するCmaxは、アドレナリン作動性受容体またはドーパミン作動性受容体に対してDHEが活発に結合し、悪心および他の副作用を引き起こすには不十分である。
【0039】
アドレナリン作動性受容体またはドーパミン作動性受容体に対するDHEの結合が悪心および他の副作用を引き起こすには不十分である場合、DHEは、Dなどのドーパミン作動性受容体に対して低結合(50%未満)または結合の不在(20%以下)を示し、アドレナリン作動性受容体に対しても低結合(60%未満)または結合の不在(20%以下)を示す。
【0040】
本発明によれば、DHEを、ヒトの循環血漿中のCmaxが5,000pg/ml未満の濃度、10,000pg/ml未満の濃度、20,000pg/ml未満の濃度、30,000pg/ml未満の濃度、40,000pg/ml未満の濃度、50,000pg/ml未満の濃度または60,000pg/ml未満の濃度であり、かつ投与からピーク血漿濃度に達する時間(Tmax)が投与10分後、15分後、20分後、30分後、45分後または60分後であるような速度で任意の方法により投与する。
【0041】
本発明の方法によれば、投与の結果、これに限定されないが、8−ヒドロキシジヒドロエルゴタミンなどの一次活性代謝産物のピーク血漿濃度は、Cmaxで5,000pg/ml未満、10,000pg/ml未満、20,000pg/ml未満、30,000pg/ml未満、40,000pg/ml未満、50,000pg/ml未満、60,000pg/ml未満、100,000pg/ml未満または200,000pg/ml未満となる。一次代謝産物のTmaxは、投与後30分未満、45分未満、60分未満、90分未満または120分未満になる。
【0042】
本発明の一態様によれば、本発明の方法により投与されるDHEのCmaxは、直接的な静脈内送達により投与されるDHEのCmaxよりも少なくとも5倍、10倍または15倍低下する。
【0043】
本発明の一態様によれば、本発明の方法により投与されるDHEのTmaxは、直接的な静脈内送達により投与されるDHEのTmaxよりも少なくとも1分、2分、5分、10分または15分遅延し、本発明の方法により送達される薬剤のAUC(すなわち、体循環血液中の薬剤濃度対時間の曲線の面積)は、匹敵するIV送達用量の75%以内である。
【0044】
本発明の一態様では、本方法は、約0.5mg、1.0mg、2.0mg、3.0mgまたは5.0mgのDHEまたはその塩、水和物、多形 プロドラッグ、イオン対および代謝産物を含有する単位用量を投与することを含む。
【0045】
本発明は、1つまたは複数のDHEの単位用量を含むパッケージ化されたバイアル、キャニスター、アンプル、パックまたはパッチに関する。単位用量については、静脈内送達、動脈内送達、腹腔内送達、肺内送達、経口送達、舌下送達、頬粘膜送達、鼻腔内送達、経口吸入送達、膀胱内送達、筋肉内送達、気管内送達、皮下送達、イオン導入(iontophoretic)送達、経皮送達による投与に好適なように配合し、パッケージ化してもよい。好ましい実施形態では、静脈内送達または肺吸入に好適な形でDHEの用量をパッケージ化する。
【0046】
本発明はさらに、適切な条件下で哺乳動物に投与したときに、上記のAUC、CmaxおよびTmaxの値により規定される所望の送達プロファイルを得るのに好適なDHEの固形製剤、液体製剤またはエアロゾル製剤に関する。
【0047】
本発明の方法によれば、以下に限定されるものではないが、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、肺内投与、経口投与、舌下投与、口腔投与、鼻腔内投与、経口吸入投与、膀胱内(intravesicular)投与、筋肉内投与、気管内投与、皮下投与、イオン導入(iontophoretic)投与、経皮投与など、上記のCmax値およびTmax値により規定される所望の送達プロファイルを得るのに必要な任意の様式でDHE製剤を投与してもよい。
【0048】
DHE製剤については一般に、投与キットに入れて診療所、医師あるいは患者に販売され、本発明は、そうした片頭痛処置キットを提供する。そうしたキットは、1つまたは複数の投与装置(たとえば、シリンジおよび針、吸入機など)および複数の単位投薬量または上記のような組成物の複数の単位用量を送達するように形成されたリザーバーまたはキャッシュを含む。一実施形態では、投与装置にDHE製剤を充填する キットは、キャリアまたは希釈液と、ケースと、適切な投与装置の使用説明書とをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、吸入器装置が含まれる。このキットの一実施形態では、DHE製剤を含むリザーバーを吸入器装置に充填する。別の実施形態では、キットは、DHE製剤の1つまたは複数の単位用量を含む。一実施形態では、吸入器装置は、呼吸作動型定量吸入器(TEMPO(商標)吸入器)などのpMDIである。
【0049】
片頭痛を処置するジヒドロエルゴタミン(DHE)
ジヒドロエルゴタミン(DHE)は、1946以来片頭痛の処置に使用されている半合成麦角アルカロイドである。DHEは、生理的分子との構造類似性があるため、生体アミン受容体、特にセロトニン(5−HT)サブタイプ、アドレナリン(αおよびβ)サブタイプおよびドーパミン(D)サブタイプ)に対する作用を介した様々な薬理作用を持っている(表1)。
【0050】
ジヒドロエルゴタミンは、群発性片頭痛、小児片頭痛、片頭痛発作重積および以前「変容性」片頭痛と呼ばれていた慢性習慣性頭痛の処置に広く使われている。DHEは現在、経口投与および鼻腔内投与されている(MIGRANAL(登録商標)−Novartis、米国特許第5942251号、欧州特許出願公開第0865789A3号およびベルギー特許第1006872A号)。一方、臨床現場では、DHE(D.H.E.45(登録商標)−Novartis)は、ほとんどの場合、筋肉内/皮下注射または静脈内注射により投与される。(Raskin NH,Neurol Clin.1990 Nov;8(4):857−65)。
【0051】
ジヒドロエルゴタミンは、高親和性で5−HT1Dα受容体および5−HT1Dβ受容体と結合する。また、セロトニン5−HT1A受容体、5−HT2A受容体および5−HT2C受容体、ノルアドレナリンα2A受容体、α2B受容体およびα受容体ならびにドーパミンD2L受容体およびD受容体とも高親和性で結合する。
【0052】
片頭痛におけるジヒドロエルゴタミンの治療活性は通常、5−HT1D受容体へのアゴニスト作用による。片頭痛における5−HT1D受容体アゴニストの有効性の説明には、現在2つの説が提唱されている。1つの説では、動静脈吻合の5−HT1D受容体など、頭蓋内血管にある5−HT1D受容体が活性化されると、片頭痛(migraine headache)の緩和に関係する血管収縮が起こると考えられている。別の仮説では、三叉神経系の感覚神経終末上の5−HT1D受容体が活性化されると、プロ炎症性神経ペプチドの放出が阻害されると考えられている。また、ジヒドロエルゴタミンは、子宮収縮特性を持っている。
【0053】
麦角アルカロイド類は、5−HT1D受容体、5−HT1A受容体、5−HT2A受容体、5−HT2C受容体、ノルアドレナリンα2A受容体、α2B受容体およびα受容体、ドーパミンD2L受容体およびD受容体に結合するとき、トリプタンより選択性が低い。急性片頭痛治療では、DHEは、5−HT1B受容体(脳外の頭蓋内血管の収縮)および5−HT1D受容体(三叉神経による伝達の阻害)を介してその作用に介在していると考えられる。
【0054】
DHEは、表1に示すように受容体に特異的に結合することが知られている。表1は、特定の生体アミン受容体に対するDHEの親和性(IC50で測定)を示す。DHEには5−HT1B受容体および5−HT1D受容体への強力な活性と、広範な受容体結合活性とが観察される。(Silberstein,S.D.,McCrory,D.C.Ergotamine and dihydroergotamine:history,pharmacology,and efficacy.Headache(2003)43:144−166)。
【0055】
以下にDHEの化学構造を示す:
【0056】
【化1】

【0057】
【表1】

製剤および剤形
静脈内DHEの有効性および安全性を証明するため、成人を対象とした多く研究が行われてきた。重度の片頭痛を処置するためDHEの反復静脈内投与を用いてDHEを静脈内投与する現在の方法は、Raskinにより紹介された。(Raskin NH.Repetitive intravenous dihydroergotamine as therapy for intractable migraine.Neurology 1986;36:995−997)。本明細書において「直接的な静脈内送達」という場合、Raskin(Neurology 36:995−997(1986))に記載された手順に従ってDHEを直接IV投与することを指すと解釈する。
【0058】
近年、筋肉内自動注射器用のDHE自体の製剤および非ステロイド系鎮痛薬と組み合わせたDHE製剤が開発されている(米国特許出願公開第2003/0040537号、米国特許第6077539号、国際公開第005781A3号、欧州特許出願公開第1165044A2号、中国特許第1347313T号およびオーストラリア特許第0038825A5号)。また、鼻腔投与による処置用に強力な鎮痛薬と組み合わせたDHEも製剤化されたことがあった(米国特許第5756483号、欧州特許出願公開第0689438A1号、オーストラリア特許第6428894A1号および国際公開第9422445A3号)。さらに、DHEの舌下投与用にスプレー製剤またはエアロゾル製剤も開発されている(米国特許出願公開第2003/0017994号)。エルゴタミンタルトラートについては、注射による投与、坐剤を用いた直腸内投与および定量吸入器(MEDIHALER−ERGOTAMINE(登録商標);3M Health Care,Northridge,California)を用いた吸入による投与が行われているが、経口投与または舌下投与が最も多く使われている。
【0059】
最近、吸入により投与するエルゴタミンタルトラート製剤(米国特許第6488648号、米国特許第6451287号、米国特許第6395300号、米国特許第6395299号、米国特許第6390291号、米国特許第6315122号、米国特許第6179118号、米国特許第6119853号、米国特許第6406681号)、特に噴射剤を用いる定量吸入器(MDI:metered dose inhaler)用の製剤(米国特許第5720940号、米国特許第5683677号、米国特許第5776434号、米国特許第5776573号、米国特許第6153173号、米国特許第6309624号、米国特許第6013245号、米国特許第6200549号、米国特許第6221339号、米国特許第6236747号、米国特許第6251368号、米国特許第6306369号、米国特許第6253762号、米国特許第6149892号、米国特許第6284287号、米国特許第5744123号、米国特許第5916540号、米国特許第5955439号、米国特許第5992306号、米国特許第5849265号、米国特許第5833950号、米国特許第5817293号、米国特許第6143277号、米国特許第6131566号、米国特許第5736124号、米国特許第5696744号)について多く言及されている。1980年代後半には、3Mがエルゴタミンタルトラート(MEDIHALER−ERGOTAMINE(登録商標))の肺吸入製剤を開発し、承認を取得して販売したが、1990年代には不安定な製剤に問題があったため市場から回収された。
【0060】
エルゴタミンタルトラートを用いた乾燥粉末吸入装置の吸入用粉末についても記載されてきた(米国特許第6200293号、米国特許第6120613号、米国特許第6183782号、米国特許第6129905号、米国特許第6309623号、米国特許第5619984号、米国特許第4524769号、米国特許第5740793号、米国特許第5875766号、米国特許第6098619号、米国特許第6012454号、米国特許第5972388号、米国特許第5922306号)。さらに、経肺投与用の水性エアロゾルエルゴタミンタルトラート製剤についても記載されている(米国特許第5813597号)。
【0061】
本発明は、単位用量形態の医薬組成物であって、1つまたは複数の単位用量を患者に投与したときに片頭痛(migraine headache)の対症的処置に効果的であるような量でDHEを含む、医薬組成物を対象とする。組成物は、賦形剤を含んでもよい。組成物の酸化分解反応速度を遅延させるため、1種または複数種の酸化防止剤を加えても構わない。DHEの任意の塩を用いてもよいが、好ましいのはメシラート塩である。製剤については、すべての場合において、当該技術分野において標準的な方法により調製して構わない(たとえば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st ed.,Lippincott Williams & Wilkins(2005)を参照されたい)。患者には片頭痛の発作毎に総投薬量で0.1〜10.0mg、好ましくは0.5〜5.0mg、一層好ましくは1.0〜2.0mgを投与するのが一般的である。個体(ヒトなど)に投与されるDHE製剤の用量は、たとえば、副作用または有害作用を引き起こさずに片頭痛を処置するのに要求される不可欠な生体アミン受容体結合プロファイルを得るため、個々の組成物および投与方法によって異なる。
【0062】
「単位投与量形態」という語は、個体の単位投与量として好適な物理的に分離した単位をいい、各単位は、好適な薬学的キャリア、希釈液または賦形剤と一緒になって所望の治療有効なと計算された所定量の活性材料を含む。これらの単位投与量形態については、単一または複数の単位投薬量で好適なパッケージングに保存してもよいし、さらに滅菌してシールしてもよい。
【0063】
さらに、好適なパッケージングに本明細書に記載の組成物を入れた製品も提供する。本明細書に記載の組成物の好適なパッケージングは、当該技術分野において公知であり、たとえば、バイアル(密封バイアルなど)、絞り弁の付いたキャニスター、容器(vessel)、アンプル、ビン、ジャー、可撓性パッケージング(たとえば、密封Mylarまたはプラスチックバッグ)および同種のものが挙げられる。これらの製品をさらに滅菌および/またはシールしてもよい。
【0064】
本組成物は、追加成分、たとえば、防腐剤、緩衝液、等張化剤、酸化防止剤および安定剤、非イオン性湿潤剤または清澄剤、粘度上昇剤、吸収促進剤および同種のものをさらに含んでもよい。
【0065】
好適な吸収促進薬として、N−アセチルシステイン、ポリエチレングリコール、カフェイン、シクロデキストリン、グリセロール、アルキル糖類、脂質、レシチン、ジメチルスルホキシドおよび同種のものが挙げられる。
【0066】
溶液に使われる好適な防腐剤として、ポリクアテルニウム−1、ベンザルコニウムクロリド、チメロサール、クロロブタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、エデト酸二ナトリウム、ソルビン酸、塩化ベンゼトニウムおよび同種のものが挙げられる。一般に(必ずではないが)、そうした防腐剤を0.001重量%〜1.0重量%のレベルで用いる。
【0067】
好適な緩衝液は、pH約6〜pH8、好ましくはpH約7〜pH7.5のpHを維持する十分な量でホウ酸、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウム、ホウ酸ナトリウムおよびホウ酸カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、重リン酸ナトリウムならびに同種のものを含む。
【0068】
好適な等張化剤は、点眼液の塩化ナトリウム相当量が0.9プラスマイナス0.2%の範囲になるようなデキストラン40、デキストラン70、デキストロース、グリセリン、塩化カリウム、プロピレングリコール、塩化ナトリウムおよび同種のものである。
【0069】
好適な酸化防止剤および安定剤として、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ亜硫酸ナトリウム、チオ尿素、カフェイン、クロモグリカート塩、シクロデキストリンおよび同種のものが挙げられる。好適な湿潤剤および清澄剤には、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポロキサマー282およびチロキサポールがある。好適な粘度上昇剤には、デキストラン40、デキストラン70、ゼラチン、グリセリン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキスメチルプロピルセルロース、ラノリン、メチルセルロース、ペトロラタム、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースおよび同種のものがある。
【0070】
投与様式
本明細書に記載の組成物については、たとえば、静脈内、動脈内、腹腔内、肺内、経口、吸入、膀胱内、筋肉内、気管内、皮下、眼内、髄膜内、経粘膜および経皮など、様々な経路により個体(ヒトなど)に投与できる。本発明の一実施形態では、以下に限定されるものではないが、経口、筋肉内、経皮、静脈内、吸入器または他の経気道送達系および同種のものなど許容可能な任意の経路により、本発明の化合物のナノ粒子(薬剤と一緒に製剤化されたタンパク質ナノ粒子または炭水化物ナノ粒子など)を投与してもよい。
【0071】
注射用組成物、特に静脈内送達用の組成物を調製する場合、連続相は、約4〜約8.5のpH範囲に緩衝した張性調整剤の水溶液を含むことが好ましい。pHは、7未満でも6未満でもよい。いくつかの実施形態では、組成物のpHは、たとえば、約6.5、7または8のいずれか以上(約7.5または8など)など、約6以上である。
【0072】
好ましい実施形態では、吸入治療剤によりDHEを送達する。吸入化合物を用いた多くの前臨床試験および臨床試験から、その有効性が肺内だけでなく全身的にも得られることが明らかにされている。さらに、経肺送達に関しては、迅速な発現、患者による自己投与の簡便性、薬剤副作用が低下する可能性、吸入送達のしやすさ、針の不使用および同種のものなど、多くの利点がある。
【0073】
乾燥粉末吸入器、ネブライザー、気化器および加圧式定量吸入器の吸入エアロゾルは一般に、エアロゾル形態のこうした薬剤の安定性または送達能を向上させるため、賦形剤または溶媒を含む。加えて、本発明の方法に沿った取り込み特性が得られるように、薬剤エアロゾルの粒度を調節してもよい。一般に、当業者が知っている望ましい大きさに粒度を調節する。たとえば、乾燥粉末吸入器(DPI:dry powder inhaler)を用いる場合、噴射剤に分散できる粉末を生成するため研磨、微粉化、粉砕などの摩擦プロセスにより、あるいは、噴霧乾燥、溶液沈殿、、超臨界抽出/沈殿または凍結乾燥などの沈殿の多相プロセスにより、肺への送達に許容可能な粒度を得て、バルク薬剤から薬剤粒子を作製する。乾燥粉末製剤は凝集して流動性が低下しやすいため、効率が低下する恐れがある。そのため、乾燥粉末エアロゾルを確実に送達でき、粒度分布が肺への送達に適したものになるように、粉砕、ブレンド、粉末流動、充填、さらに投与の各過程で細心の注意が必要となる。
【0074】
ネブライザーは、液体からエアロゾルを発生させるもので、液体ジェットの吹き出しにより発生させるものもあれば、ノズルを用いてあるいは用いずに液体を超音波振動させて発生させるものもある。液体製剤については、微生物を保有している場合があるので、無菌または滅菌条件下で調製して保存する。防腐剤および単位用量パッケージングの使用を意図している。さらに、薬剤製剤を安定化させるため、溶媒、洗浄剤および他の薬も使用する。
【0075】
加圧式定量吸入器すなわちpMDIは、エアロゾル分配装置のもう1つのクラスである。pMDIでは、加圧下のキャニスターに化合物を溶媒と噴射剤の混合物、ほとんどの場合、クロロフルオロカーボン(CFC:chlorofluorocarbon)またはヒドロフロウロアルカン(HFA:hydroflouroalkane)と一緒に入れる。分配時にバルブおよびノズルを通じて混合物のジェットを放出させると、噴射剤が「フラッシュオフ」し、化合物のエアロゾルが残る。ノズルからのエアロゾル放出が高速なため、薬剤の一部は舌、口およびのどに弾丸のように激突し、肺に到達しない恐れがある。
【0076】
肺吸入用のエルゴタミンタルトラートのエアロゾル送達は広く知られているのに対し、DHEは経肺送達に好適な製剤中で安定化させるのが非常に難しいため、DHEの肺吸入による送達が用いられることはほとんどない。効力および活性を維持するには、賦形剤を用いずに、あるいは、肺に有毒でない賦形剤を用いて、安定化が可能な溶液、粉末または懸濁液中でDHEを製剤化しなければならない。DHEは極めて感受性が高く、光、酸素、熱に曝露されると、医薬製剤に一般に用いられる多くの化学物質の存在下で分解するため、安定化を実現するのは容易ではない。水性鼻スプレーまたは注射によりDHEを送達する現在の製剤には、溶液中のDHEを安定化させるためデキストランまたはシクロデキストリンなどのキレート化剤または錯化剤が不可欠である。DHE溶液の分解を防ぐには、複雑なオープナーで開けなければならない不便な濃色ガラスバイアル内にシールし、使用の直前に注射器またはスプレーアプリケーターに移す。DHE経肺送達用の安定な製剤については、つい最近になって、米国特許出願第10/572,012号および国際公開第2005/025506A2号に記載された。
【0077】
国際公開第2005/025506A2号には、エアロゾル肺吸入または鼻スプレー吸入による乾燥粉末および噴射剤懸濁液の投与に好適かつ安定なジヒドロエルゴタミンまたはその薬学的に許容される塩の製剤が記載されている。一実施形態では、DHEをメシラート塩として用いる。このDHE粉末については、超臨界流体プロセスを用いて生成する。このプロセスには、吸入送達用のDHE粒子を作製するうえで特筆すべき利点があり、単一のステップで所望の大きさの呼吸性粒子が作製される。米国特許出願第10/572,012号および国際公開第2005/025506A2号の開示内容については、参照によってその全体を本明細書に援用する。
【0078】
好ましい実施形態では、Tempo(商標)吸入器(Map Pharmaceuticals,Inc.,Mountain View,California)などの呼吸作動性吸入器で吸入投与を行う。Tempo(商標)吸入器は加圧式定量吸入器(pMDI)で、不安定な投薬および薬物送達の非効率性という標準的なpMDI吸入器の制約に対処している。Tempo吸入器は、呼吸により作動し、患者のコンプライアンスを向上させるほか、吸入流量に関係なく各用量が安定しており効率的で信頼性が高い。この吸入器のこうした利点は、呼吸同期トリガーおよび流量制御チャンバーなどの独自に開発した特徴と用量カウンター/ロックアウトとを使いやすい小型装置に組み合わせて実現している。これらの高度な空気力学的制御要素は、患者の呼吸によってのみ作動し、電力を消費する高価な電子機器を省いた結果、手頃で信頼性の高い使い捨てプラットフォームになっている。
【0079】
DHE投与の効率の測定
本発明は、疼痛、悪心、音恐怖および光恐怖という片頭痛症候群の4つの主な症状を効果的かつ迅速に緩和する十分な投薬プロファイルが得られると同時に副作用を最小限にとどめるか消失させる、DHEの投与方法を教示する。発明者らが行った臨床試験では、予想外の現象が観察された。DHEを前述の要領で投与すると、意外にもピーク血漿濃度の著しい「急上昇」が回避され、悪心、胸部圧迫感または疼痛、血圧変動、嘔吐の副作用が最小限にとどまるか、あるいは、完全に消失しても、なお片頭痛の症状の迅速な緩和が得られた。
【0080】
片頭痛治療レジメンの有効性については、主要および副次的評価項目に基づき評価することができる。主要有効性評価項目は、投与から約2時間後の無痛反応率であってもよい。副次的有効性評価項目では、注目すべき3分野(投与から2時間後より早い時点での無痛反応;頭痛の非進行;および通常の生活への影響)を調べる。
【0081】
4つの片頭痛の症状(疼痛、悪心、音恐怖および光恐怖)をすべて、国際頭痛学会が作成した4段階(IHS;International Headache Society Committee on Clinical Trials in Migraine.Guidelines for controlled clinical trials of drugs in migraine,1st ed.Cephalalgia 1991 ;11:1−12):
0=症状なし
1=軽度の症状(通常の日常生活を妨げない)
2=中等度の症状(通常の生活が一部制限される)
3=重度(通常の日常生活を送ることができなくなる)
の各段階でスコア評価する
頭痛(headache pain)の強度は、4段階の重症度スケール(0=疼痛なし、1=軽度、2=中等度、3=重度)で測定する。頭痛の改善(当初の強度よりも1段階下がる)までの平均経過時間、軽度の頭痛までの平均経過時間および頭痛なしまでの平均経過時間を測定する。効果的な片頭痛治療であれば、1.5〜2時間後には頭痛症状が軽度または頭痛なしに軽減されるであろう。
【0082】
4つの症状のいずれかの緩和には、片頭痛発作の発現を報告した時点での>0のスコア(疼痛のスコアは>1)が、該当する時点で≦1のスコアに下がる必要がある。ただし、疼痛(または他の症状)から解放の場合は、その症状のグレード分類が最初の結果>0(疼痛のスコアは>1)から該当する時点で0に下がる必要がある。
【0083】
機能障害(普通の日常生活を送る能力)については、
0=障害なし
1=やや障害がある
2=中等度の障害がある
3=重度または完全な障害がある
の4段階で測定する。
【0084】
一定の時点ではさらなる質問(治験薬が十分に効いたか)を行い、以下の7段階の分類スケールを用いて被験者に治験薬の「総合的な効果」を評価してもらう:
0=著しく改善
1=かなり改善
2=やや改善
3=変化なし
4=やや悪化
5=かなり悪化
6=著しく悪化
作用機序
実施例2および3に詳細に記載したCmax濃度で結合する受容体の調査から、有害作用プロファイルで観察される相違の根拠が得られた。理論に束縛されるものではないが、ドーパミン作動性受容体およびアドレナリン作動性受容体結合を最小限に抑えるようにCmax濃度を調節し、それにより副作用を回避しながら、片頭痛の症状の処置に効果があるセロトニン受容体への十分な結合を達成することで、副作用を起こさずにDHEで片頭痛を処置する方法を実現できると考えられる。
【0085】
臨床データ(表2)は、ジヒドロエルゴタミンの吸入では静脈内投与と比べて悪心の発生率が低下することを示す(それぞれ8%と63%)。5−HT受容体は、悪心に関与していることが知られている。この受容体のアンタゴニスト、オンダンセトロンおよびグラニセトロンなどは、化学療法によって誘発される悪心および嘔吐を抑制する。一方、5−HT受容体のアゴニストとしてのDHEの潜在的役割については、調査対象のDHEの送達経路すべてで結合が不活性(<20%)であることから無視することができる(図3)。その後の機能アッセイでも、5−HT受容体のアゴニスト活性またはアンタゴニスト活性がないことが確認された。
【0086】
DHEで起こり得る有害作用プロファイルは、5−HT1A、5−HT2AおよびドーパミンD受容体のアゴニスト活性による二次的なものである。(Silberstein,S.D.,McCrory,D.C.Ergotamine and dihydroergotamine:history,pharmacology,and efficacy.Headache(2003)43:144−166)。すべての用量および投与経路で5−HT1A受容体結合が類似レベルであることから、この受容体が示差的有害作用プロファイルの原因、特に眩暈の原因ではないと判断される。実際には、5−HT1A受容体は、DHEによる片頭痛の予防に関わっていると考えられる。(Hanoun,N.ら、Dihydroergotamine and its metabolite,8−hydroxy−dihydroergotamine,as 5−HT1A receptor agonists in the rat brain.British Journal of Pharmacology 2003;139:424−434)。
【0087】
DHEには、血管のαアドレナリン作動性受容体の興奮作用および収縮因子5−HT2A受容体のアゴニスト活性がある。これらの作用は、末梢血管収縮作用、特に冠動脈平滑筋に対する作用の根底にある。そのため、DHEおよび関連する麦角化合物は、冠疾患および末梢血管疾患には禁忌とされている。ただし、Cmaxでの5−HT2A受容体に対する結合活性については、高用量吸入投薬(14%)の方が静脈内投薬(83%)よりも低いことは注目に値する。他のセロトニン作動性サブタイプおよびアドレナリンタイプが有害作用プロファイルに与える作用については不明である。しかしながら、静脈内投与後のCmaxにおける結合性は、吸入によるCmaxより著しく高くなり(図3〜図5)、このことは、悪心、特にアドレナリン作用遮断に役割を果たしているかもしれない。
【0088】
片頭痛における5−HTの作用の基礎として、ニューロンのメカニズムと血管のメカニズムの2つが提唱されている。片頭痛の血管拡張説は、発作における頭蓋外動脈の拡張が片頭痛(migraine pain)に関係しているとしている。片頭痛の硬膜の神経原性炎症説では、脳を囲んでいる硬膜(dural membrane)の炎症は、一次感覚神経終末からの神経ペプチドの放出が原因とする。サブスタンスP、カルシトニン遺伝子関連ペプチドおよびNOはすべて硬膜の炎症カスケードに関わっている。NOドナーには片頭痛の特徴をいくつか持った用量依存性の頭痛が起こるため、NOは片頭痛に重要な役割を果たしていると思われている。片頭痛の原因は、NOによって引き起こされた一連の反応における酵素の増加および/または親和性の向上である可能性がある(Olesenら、Trends Pharmacol.Sci.1994;15:149−153)。
【0089】
5−HT2B受容体は細胞系におけるNO産生(Manivet P.ら、PDZ−dependent activation of nitric−oxide synthases by the serotonin 2B receptor.J.Biol.Chem.2000;275:9324−9331)およびブタ大脳動脈の弛緩(Schmuckら、Eur.J.Neurosci.1996;8:959−967)を刺激することが明らかになっている。したがって、髄膜の血管の内皮細胞にある5−HT2B受容体(receptorss)は、NOの形成により片頭痛(migraine headache)を誘発すると提唱されている。DHEは半減期が長く、その主な活性代謝産物8’−OH−DHEを介して血管の5−HT2B依存性セカンドメッセンジャー(NO)を永続的に阻害することで、頭痛再発率が低いことに少なくとも部分的に関係しているかもしれない。(Schaerlinger B.ら、British Journal of Pharmacology(2003)140,277−284)。
【0090】
D2受容体アンタゴニスト、すなわち、メトクロプラミドおよびドンペリドンは、効果的な嘔吐抑制剤である。D2アッセイにおいて、DHEはIV投与のCmaxレベルで50%受容体結合を示し(図5)、したがって、アゴニスト活性が介在する悪心および眩暈が臨床的に報告される場合がある。これに対し、吸入投薬後には結合親和性が報告されなかった。本明細書に報告したデータに加えて、DHEは、ムスカリン(M)受容体の結合活性もほとんどなく、したがって、化学受容器引金帯M受容体を介した悪心と無関係である。(McCarthy,B.G.,Peroutka,S.J.,Comparative neuropharmacology of dihydroergotamine and sumatriptan(GR 43175).Headache 1989;29:420−422)。
【0091】
実施例2および3に記載の受容体結合の研究によって、副作用を最小限にとどめながらDHEにより片頭痛を速やかに処置する新規な方法の予想外の結果を説明できるかもしれない。本方法は、ピーク血漿濃度(Cmax)を抑制し、ドーパミン作動性受容体およびアドレナリン作動性受容体が飽和しないようにピークをやや遅延させる一方、片頭痛の処置に所望の治療効果を持つセロトニン受容体には十分な結合が得られる。
【実施例】
【0092】
これ以上詳述しなくても、当業者であれば先行する記述により本発明を最大限に利用できると考えられる。以下の実施例は、単に例示のためのものであり、いかなる意味においてもこれ以降の開示内容を限定するものではない。
【0093】
(実施例1)
鎮痛の達成に必要なDHEの薬物動態プロファイル。
【0094】
図1は、図2に示すピーク血漿濃度の低い2つのプロファイルが得られる方法でDHEを投与することにより実現される速やかな鎮痛作用(10分以内)を示す。
【0095】
図2は、それぞれDHEの6回の吸入(1.22mg吸入/ファインパーティクルドース)、4回の吸入(0.88mg吸入/ファインパーティクルドース)および2回の吸入(0.44mg吸入/ファインパーティクルドース)と比較した、IV投与したDHE(1mg)の血漿プロファイルを示す。DHEのIV投与後には血漿中で大きな急上昇が観察されたが、DHEの吸入送達では観察されなかった。この血漿中の急上昇の差(少なくとも「10」倍)は、副作用プロファイルの低下と関連していると考えられた。だたし、1mgのIVと0.88mgの吸入DHEとのAUCの差は比較的小さかった。
【0096】
図7は、DHEの静脈内送達および吸入送達後のDHEの一次代謝産物、8’−OHジヒドロエルゴタミンの血漿プロファイルを示す。DHEのIV投与後に血漿中の8’−OHジヒドロエルゴタミンの大きな急上昇が観察されたが、DHEの吸入送達では観察されなかった。この血漿中の急上昇の差も副作用プロファイルの低下と関連していると考えられる。吸入により投与した結果、8−ヒドロキシ−ジヒドロエルゴタミンのピーク血漿濃度は、循環血漿中のCmaxで1,000pg/ml未満、好ましくは500pg/mL未満、一層好ましくは200pg/mL未満になる。また、吸入による投与の結果、循環血漿中の一次代謝産物(たとえば、8’−OHジヒドロエルゴタミン)のTmaxは90分未満になる。
【0097】
このように薬物動態プロファイルにおいてピークの若干の遅延および低下が見られたが、発明者らは、これが副作用の最小化に関連していることを発見した。上記の投与プロファイルにより惹起される副作用を表2に示す。図2の下の2本の曲線、0.88mgおよび0.44mgのDHEでは30分以内に薬効が得られ、0.88mg用量では軽微な副作用生じたが、0.44mg用量では副作用が観察されなかった。一番上の曲線、1.0mgIVによるDHE(診療所で現在行われる典型的な治療レジメン)では、悪心および嘔吐などの著しい副作用が起きた。Cmaxすなわちピーク血漿濃度の差が観察され、IVより約10倍低下した。これは、観察された示差的副作用プロファイルとの関連を理論付けるものである。一方、1mgのIVと0.88mgの吸入とのAUCの差はより小さく、「1.2」倍にとどまっていることで薬効の発現が可能になった。この例では、図2に示す送達プロファイルを吸入投与により得たが、ピーク血漿濃度への到達を同じようにやや遅延させ、ピーク濃度を同じように抑制しつつ、類似のAUCが得られるように調整されたインフュージョンポンプ、経鼻もしくはイオン導入(iontopheric)経皮または他の経路もしくは投与により得ることもできた。
【0098】
【表2】

(実施例2)
max濃度における受容体結合
IV投与されたDHE(1mg)と吸入されたDHEとを比較した、臨床研究の示差的有害作用プロファイルを報告した(表2)。IV投薬後に有害作用の頻度が増大することが明白となった。ジヒドロエルゴタミンメシラート(DHE)の(1)静脈内注射と(2)吸入との間で薬理学的に生じる有害作用の相違を調べるため、臨床研究において吸入投薬および静脈内(IV)投薬後に報告されたCmaxレベルに一致する濃度に基づき、ジヒドロエルゴタミンメシラートの生体アミン受容体(セロトニン(5−HT)、アドレナリン、ドーパミン作動性)結合をインビトロで判定した。
【0099】
DHEの急上昇の低下により受容体結合プロファイルが変わり、それにより有効性が得られ、副作用が回避された可能性があるという予想外の結果を調べるため、Cmax濃度での受容体結合の臨床調査を行った。
【0100】
3分間の注入による静脈内投与(1mg)後の血漿サンプル(LC−MS/MS)と、各用量(0.88mg用量および0.44mg用量)を2〜4分間かけて吸入器を複数回作動させることで投与する吸入投与後の血漿サンプル(LC−MS/MS)とから、DHEのピーク血漿濃度(Cmax)を判定した。吸入用量は予想される全身送達用量であり、ファインパーティクルドース送達のアクチュエーター外から推計した。DHEの確認されたCmaxデータを図2に示す。一次代謝産物8’−OH−DHEの場合も類似のアプローチをとった。
【0101】
表3は、Cmaxに相当するインビトロでの濃度を示す。DHEでも8’−OH−DHEでも受容体結合の調査にはこれらの濃度を選択した。
【0102】
【表3】

(実施例3)
ピーク血漿濃度に相当する濃度でのDHEによるセロトニン受容体、アドレナリン作動性受容体およびドーパミン作動性受容体への結合
放射性リガンド受容体結合アッセイを行うと、DHEが複数の受容体部位で広範囲な薬理作用を示すことが明確に明らかになる。(図3〜図5)。IVのCmaxに相当する濃度ではDHEは大部分の受容体に対して顕著な結合が認められるのに対し、吸入の結合では、各用量で異なるプロファイルが得られる。IVでない方法を用いて投与すると、ほとんどの場合、結合が減少する。
【0103】
DHEが片頭痛を抑える有効性は、5−HT1B受容体および5−HT1D受容体のアゴニスト活性による。図3は、様々なセロトニン作動性受容体サブタイプの受容体結合データであり、静脈内投与では、Cmaxで複数のサブタイプの反応がより大きくなることが示される。記号「(h)」は、ヒトクローン受容体サブタイプを表す。アドレナリンサブタイプおよびドーパミン作動性サブタイプでも同様の傾向が観察された。これらの受容体の結合からは、1mgの静脈内投与後でも0.88mgの吸入投与後でも5−HT1Bの結合が100%になることが明らかにされる。(図3。)一方、吸入後では、5−HT1D受容体の結合がIVよりも低いことが明らかである。Cmaxを示した後、循環血中にDHEが長時間存在するのは、おそらく二相性の消失に起因する。(Wyss,P.A.,Rosenthaler,J.,Nuesch,E.,Aellig,W.H.Pharmacokinetic investigation of oral and IV dihydroergotamine in healthy subjects.Eur.J.Clin.Pharmacol.1991 ;41:597−602)。これらの結果から、臨床反応の持続には必ずしも最大受容体結合が必要なわけではない。
【0104】
図3〜図5に見られるように、副作用を引き起こしたCmaxの高いIV投与法では、IV投与法により生じるピーク血漿濃度の急上昇(Cmax)に相当する濃度でのドーパミン作動性受容体およびアドレナリン作動性受容体の著しい結合が示された。図4は、アドレナリン作動性受容体(左パネル)およびドーパミン作動性受容体(右パネル)の受容体結合データを示す。静脈内投与の場合、Cmaxで複数のサブタイプの反応がより大きいことが明らかにされる。記号「(h)」は、ヒトクローン受容体サブタイプを表し、「NS」は、非特異的結合を示す。
【0105】
ドーパミン作動性受容体D1およびD2は、主に悪心および嘔吐に関与している。図2に示すように、ピークを抑制し、かつ遅延させる新規な投与方法により生じるピーク血漿濃度の急上昇(Cmax)に相当する濃度では、ドーパミン作動性受容体結合、特に図4に示すようにD2およびD1の結合が著しく低下し、最終的に患者の悪心および嘔吐が緩和された。
【0106】
同様に、図4に示すようにアドレナリン結合が低下すると、患者の血管収縮が抑制され、血圧または心血管の変動が低下した。新規な投与方法により生じるピーク血漿濃度の急上昇(Cmax)に相当する濃度では、アドレナリン作動性受容体およびドーパミン作動性受容体の受容体結合が低下したのに対し、こうした投与方法により得られるセロトニン受容体の結合、特に5HT1a/dの結合は、片頭痛の処置に有効であるには十分であった。(図3。)
5−HT1Bサブタイプ受容体のアゴニストは、片頭痛および関連する症状の処置に有用であることが知られている。5−HT2B受容体は、片頭痛の発症において引き金の役割を果たしていることが知られている。図5は、高濃度対照(5μm)、IVのCmax(77.6nM)、4回の吸入のCmax(6.25nM)および非常に低濃度(0.25nM)における5−HT1Bおよび5−HT2B受容体の選択的アゴニズムを示す。5−HT1Bのアゴニズムはすべての濃度において維持され、効力が高いこと示されるのに対し、経口吸入のDHEでは5−HT2B受容体のアゴニズムは存在しない。
【0107】
3つの投与方法がすべてセロトニン受容体に結合し、片頭痛の速やかな処置を行うのに十分な濃度を持つ血漿レベルに20分以内にすぐに達していることに留意されたい。(図2)。
【0108】
(実施例4)
TEMPO(商標)吸入器を用いたDHE製剤の経肺投与
吸入送達用のDHE粒子の製造に大きな利点がある超臨界流体プロセスを用いてDHE粉末を作製し、単一のステップで所望の大きさの呼吸性粒子を製造する。(国際公開第2005/025506A2号を参照されたい。)処理後のDHE原薬の特徴は、超臨界流体処理した結晶の表面が極めて滑らかで表面エネルギーが小さく、したがって、噴射剤を用いた系で効果的に分散する傾向があることである。DHEのかなりの割合が確実に肺に沈着するように、微結晶の制御粒度を選択した。
【0109】
この製剤の製剤開発の一部として、不活性で不燃性の2種類のHFA噴霧剤(HFA 134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)およびHFA 227ea(1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン))のブレンドを選択した)。最終生成物は、HFA 227eaとHFA 134aの70:30の噴射剤ブレンドを含んでいた。このブレンドについては、pMDI懸濁液の物理的安定性を向上させるためDHEの結晶密度に合わせた。得られた懸濁液は、沈殿物またはクリーム(不可逆的凝集が起こる場合がある)ではなく、むしろ緩やかに凝集した懸濁系として存在し、振盪すると容易に分散する。緩やかに凝集した系は、pMDIキャニスターの安定性に最適であることがよく知られている。この製剤は、その製剤特性のため、エタノールおよび界面活性剤/安定化剤を一切含有していなかった。
【0110】
新規な呼吸作動型定量吸入器TEMPO(商標)を用いて、DHE製剤を患者に投与した。TEMPO(商標)は、標準的な加圧式定量吸入器(pMDI)に伴うばらつきを解決し、肺末梢への薬剤の一定送達を実現している。肺末梢では薬剤が全身性に吸入される。これを実現するため、TEMPO(商標)は、1)呼吸同期トリガー−吸気サイクルの特定部分で薬剤を送達するように様々な薬剤および標的集団に応じて調整が可能、2)プルーム制御−アクチュエーター内のエアロゾルプルームを抑制する衝突噴流、3)ボルテックスチャンバー−抑制されたエアロゾルプルームを懸濁状態に維持するためのエアクッションとなる孔壁と、抑制されたエアロゾルプルームをボルテックスパターンに送り込み、エアロゾルを懸濁させておき、HFA噴射剤が蒸発すると粒度が小さくなる後壁の空気吸入口とで構成、4)用量カウンター−用量が維持されていることを判定し、あるキャニスターから投与される予定の最大用量を超えるのを防止する、という4つの新規な特徴を導入している。特徴2および3は、ファインパーティクルフラクション(FPF:Fine Particle Fraction)を上げることで、吸入器からの薬剤の放出量(ED:Emitted Dose)の沈着を劇的に遅延させ、肺吸着を促進することが明らかになっている。
【0111】
本明細書に引用する刊行物および特許出願についてはすべて、参照によって援用するために1つ1つの刊行物または特許出願を具体的に個々に示しているかのように、参照によってその全体を本明細書に援用する。
【0112】
前述の発明について理解しやすいように図面および実施例によりある程度詳細に記載してきたが、本発明の教示内容に照らして、添付の特許請求の範囲の精神および範囲を逸脱することなく、本発明のある種の変形形態および修正形態をなし得ることが当業者に容易に明らかになるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
副作用を最小限にとどめながらDHEまたはその塩、水和物、多形、プロドラッグ、イオン対および代謝産物により個体の片頭痛を速やかに処置する方法であって、
片頭痛の症状の緩和が得られる十分な速度で一定量のDHE製剤を該個体に投与することを含み、
DHE投与の量および速度は副作用の有意な軽減の原因となる、
方法。
【請求項2】
DHE投与の量および速度は、DHEがセロトニン受容体に対してアゴニストとして働き片頭痛の症状が緩和されるような、DHEの循環血漿濃度レベルを生じるのに十分であり、
さらに、DHEの該循環血漿濃度レベルは、アドレナリン作動性受容体またはドーパミン作動性受容体または動脈収縮筋(arterial constrictor)セロトニン受容体に対して活発に結合して副作用を引き起こすのに必要なレベル未満にとどまる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記副作用は、悪心、嘔吐、血管痙攣、感覚異常、高血圧、眩暈、不安症、呼吸困難、頭痛、潮紅、下痢、発疹、発汗増加、心弁膜症、胸膜および後腹膜線維症、有害な心血管作用、血圧不安定ならびに動脈収縮からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記副作用は、悪心および嘔吐からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記循環血漿濃度レベルのDHEは、ドーパミン作動性受容体の50%未満に活発に結合する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記ドーパミン作動性受容体は、DおよびDからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記副作用は、悪心および嘔吐からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記循環血漿濃度レベルのDHEは、ドーパミン作動性受容体の20%未満に活発に結合する、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記ドーパミン作動性受容体は、DおよびDからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記副作用は、悪心および嘔吐からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記循環血漿濃度レベルのDHEは、5−HT受容体の20%未満に活発に結合する、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記副作用は悪心である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記循環血漿濃度レベルのDHEは、動脈収縮筋セロトニン受容体の20%未満に活発に結合する、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記動脈収縮筋セロトニン受容体は、5−HT2A受容体である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記動脈収縮筋セロトニン受容体は、5−HT2B受容体である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記副作用は、血管収縮状態および心血管系状態からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記循環血漿濃度レベルのDHEは、アドレナリン作動性受容体の60%未満に活発に結合する、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
前記循環血漿濃度レベルのDHEは、アドレナリン作動性受容体の20%未満に活発に結合する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記副作用は、血管収縮状態、血圧上昇状態および心血管系状態からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記循環血漿濃度レベルのDHEは、片頭痛の症状の緩和が得られる十分なレベルで5−HT1A、5、−HT1Bおよび5−HT1Dからなる群から選択されるセロトニン受容体に活発に結合する、請求項2に記載の方法。
【請求項21】
前記DHEは、ピーク血漿濃度(Cmax)がヒトの循環血漿中15,000pg/ml未満の濃度であり、かつ投与後に該ピーク血漿濃度に達する時間(Tmax)が投与後30分未満であるような速度で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
DHEの前記Cmaxが循環血漿中10,000pg/mL未満である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
DHEの前記Cmaxが循環血漿中7,500pg/mL未満である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記DHEは、循環血漿中のDHEのTmaxが20分未満であるような速度で投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記DHEは、DHEのピーク血漿濃度(Cmax)が、直接的な静脈内送達により投与されるDHEのCmaxから少なくとも10分の1に低減するような速度で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記DHEは、DHEのピーク血漿濃度(Cmax)が、直接的な静脈内送達により投与されるDHEのTmaxよりも少なくとも1分遅延するような速度で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記CmaxレベルおよびTmaxレベルが得られるDHEの前記投与により、疼痛、悪心、音恐怖および光恐怖からなる群から選択される片頭痛症候群の少なくとも一部が緩和し、該緩和は30分以内に得られ、さらに薬剤によって誘発される悪心、心血管系副作用または他の有害作用が軽減される、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
片頭痛症候群の前記緩和は、DHEの投与時に「0」を超える片頭痛症状についてのIHSスコアが投与30分後、60分後、90分後または120分後に≦1のスコアに低下することで測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
2.0mg未満のDHEまたはその塩、水和物、多形 プロドラッグ、イオン対および代謝産物の単位用量が投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
2.0mg未満のDHEまたはその塩、水和物、多形 プロドラッグ、イオン対および代謝産物の単位用量が投与され、送達された薬剤の体循環中の該薬剤の濃度対時間の曲線の面積(AUC)が匹敵する静脈内(IV)送達用量の75%以内である、請求項14に記載の方法。
【請求項31】
前記投与の結果、DHEの一次活性代謝産物におけるピーク血漿濃度がCmaxで1,000pg/ml未満となる、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
DHEの前記一次活性代謝産物は、8−ヒドロキシ−ジヒドロエルゴタミンである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記一次代謝産物のCmaxが循環血漿中500pg/mL未満である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記一次代謝産物のCmaxが循環血漿中200pg/mL未満である、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記一次代謝産物のTmaxが循環血漿中90分未満である、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
DHEまたはその塩、水和物、多形、プロドラッグ、イオン対および代謝産物を含む製剤であって、請求項1に記載の方法による投与に好適な製剤。
【請求項37】
片頭痛の症状が緩和されるように、セロトニン受容体に対するアゴニストとして有効なDHEの循環血漿濃度レベルを生じるのに十分な量での前記DHE製剤の投与は、該循環血漿濃度レベルのDHEが、副作用を引き起こすレベルでアドレナリン作動性受容体またはドーパミン作動性受容体または動脈収縮筋セロトニン受容体に結合することを引き起こさない、請求項36に記載の製剤。
【請求項38】
前記DHE製剤は、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、肺内投与、経口投与、舌下投与、口腔投与、鼻腔内投与、経口吸入投与、膀胱内投与、筋肉内投与、気管内投与、皮下投与、イオン導入投与および経皮投与からなる群から選択される様式で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記DHE製剤は、エアロゾル、乾燥粉末吸入器、ネブライザー、気化器または加圧式定量吸入器(pMDI)を含む肺吸入により投与される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記DHE製剤は、呼吸作動型定量吸入器により投与される、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記DHE製剤は、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、肺内投与、経口投与、舌下投与、口腔投与、鼻腔内投与、経口吸入投与、膀胱内投与、筋肉内投与、気管内投与、皮下投与、イオン導入投与および経皮投与からなる群から選択される様式で投与され、
さらに、前記DHEは、ピーク血漿濃度(Cmax)がヒトの循環血漿中10,000pg/ml未満の濃度であり、かつ投与後に該ピーク血漿濃度に達する時間(Tmax)が投与後30分未満であるような速度で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記DHE製剤は、エアロゾル、乾燥粉末吸入器、ネブライザー、気化器または加圧式定量吸入器(pMDI)を含む肺吸入により投与される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記DHE製剤は、呼吸作動型定量吸入器により投与される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記DHE製剤は、前記個体に制吐薬を投与せずに投与される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記DHE製剤は、呼吸作動型定量吸入器により個体に投与され、
前記DHEは、ピーク血漿濃度(Cmax)がヒトの循環血漿中10,000pg/ml未満の濃度であり、投与後に該ピーク血漿濃度に達する時間(Tmax)が投与後20分未満であるような速度で投与され、
さらに、該DHE製剤は、制吐薬を該個体に投与せずに投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項46】
単位用量のDHEまたはその塩、水和物、多形、プロドラッグ、イオン対および代謝産物を含むキットであって、該単位用量は、ヒト個体に投与される場合、DHE投与の量および速度が副作用を引き起こさない条件下で片頭痛の症状の緩和を得るのに十分である、キット
【請求項47】
吸入器装置をさらに含む、請求項46に記載のキット。
【請求項48】
ネブライザーをさらに含む、請求項46に記載のキット。
【請求項49】
加圧式定量吸入器をさらに含む、請求項46に記載のキット。
【請求項50】
1つまたは複数の単位用量のDHE製剤を含む吸入器装置であって、各単位用量は、ピーク血漿濃度(Cmax)がヒトの循環血漿中10,000pg/ml未満の濃度であり、かつ投与後に該ピーク血漿濃度に達する時間(Tmax)が投与後30分未満であるような速度で投与される、吸入器装置。
【請求項51】
前記DHE製剤は密封容器で提供される、請求項50に記載の吸入器装置。
【請求項52】
化合物を用いて個体の疾患または状態を速やかに処置するための方法であって、
ここで、該化合物は(a)1種または複数種の第1の受容体に結合し、該第1の受容体への該化合物の結合は該疾患または状態を緩和し、かつ(b)1種または複数種の第2の受容体に結合し、該第2の受容体への該化合物の結合は副作用を引き起こし、
該方法は、
化合物が該第1の受容体に対してアゴニストとして働き、該疾患または状態の緩和を提供するように、該化合物の循環血漿濃度レベルを生じるのに十分な速度で一定量の該化合物を該個体に投与することを含み、
該化合物の該循環血漿濃度レベルは、該第2の受容体に対する結合が副作用を引き起こすのに必要なレベル未満にとどまる、
方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−518095(P2010−518095A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549138(P2009−549138)
【出願日】平成20年2月11日(2008.2.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/001829
【国際公開番号】WO2008/097664
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(509225616)マップ ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】