説明

副甲状腺ホルモンアナログおよび使用法

本発明は骨欠乏障害を持つ被験体を処置する新規方法に向けられる。本方法は、概して、副甲状腺ホルモン(PTH)ペプチドアナログを含む薬学的に許容できる製剤を、2μg〜60μgの1日量で、処置を必要とする被験体に投与することを含み、前記PTHペプチドアナログは低下したホスホリパーゼ−C活性を持ち、かつアデニル酸シクラーゼ活性を維持している。本明細書に記載するPTHペプチドアナログは、骨形成を誘発する一方で、それが引き起こす骨吸収は既知のPTHアナログよりも少なく、それが示す高カルシウム血症の発生率および重症度も低い。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
骨リモデリング(代謝回転)は、二つの対立する活動、すなわち破骨細胞による古い骨の破壊(吸収)と、骨芽細胞による新しい骨の形成とからなる。骨量の減少は自然の老化過程の一部として起こる。カルシウムは絶えず骨に加えられ、かつ骨から取り去られている。カルシウムが、加えられる速度よりも速く取り去られると、骨は軽くなり、密度が低下し、多孔性が増す。これは骨を弱くし、骨折のリスクを増加させる。
【0002】
人々が歳をとるにつれて、骨は自然と希薄になる(骨減少症と呼ばれる)。新しい骨が作られるよりも速く既存の骨が破壊されるからである。これが起こると、骨は無機質、重さ(質量)、および構造を失って、骨の弱さおよび脆さが増す。さらなる骨量減少が起こると、骨減少症は骨粗鬆症へと進展する。したがって、ある人の骨が濃密であるほど、骨粗鬆症を発症するまでに時間がかかる。骨粗鬆症は男性でも起こりうるが、骨粗鬆症は65歳を超える女性に最もよくみられる。
【0003】
骨粗鬆症は、しばしば、荷重骨の特発性骨折と、運動を抑制する傷害に特有の肉体的および精神的劣化とをもたらす。特に、閉経後骨粗鬆症は、骨代謝回転の加速を惹起するエストロゲンの消失によって引き起こされ、古い骨の吸収と新しい骨の形成の間の不均衡の増大を伴う。古い骨を破壊する細胞である破骨細胞(骨の吸収)が、新しい骨を構築する細胞である骨芽細胞(骨の形成)をしのぐことから、骨量は安定したままではなくなり、骨量減少が起こる。骨形成による十分な補償を伴わない吸収に起因するこの加速された骨量減少は、荷重骨の漸進的希薄化、多孔性の増加、および消耗をもたらす。
【0004】
末期腎疾患は常に、腎性骨異栄養症(ROD)と呼ばれる骨疾患に関連する。RODは、副甲状腺ホルモン(PTH)の高い循環レベルと過活動骨組織とを特徴とする高代謝回転型として存在しうる。低回転骨疾患とも呼ばれるこの疾患の低代謝回転型は、PTHの正常なまたは低い循環レベルを特徴とする。組織学的には、骨表面は細胞活動がほとんどまたは全くない静止状態にあり、骨軟化症も存在しうる。この状態の発生率は、高齢、コルチコステロイド療法の存在、カルシミメティック療法の存在、カルシウム含有リン酸塩結合剤および高用量のビタミンDステロール類によって増加する。しかし、血清カルシウムの許容できない増加をもたらさずに低回転骨疾患を処置することは、今のところ困難である。したがって、有効な治療が常に求められていながら、その必要はまだ満たされていない。
【0005】
骨粗鬆症の治療薬(歴史的には、食餌性カルシウムの増加、エストロゲン療法、および高用量のビタミンDが含まれてきた)のうち、ヒト副甲状腺ホルモン(hPTH)処置は、骨粗鬆症による骨量減少を補償する目的で骨を構築するために用いられる。副甲状腺ホルモンは副甲状腺によって産生され、血中カルシウムレベルの制御に関与する。これは血中カルシウムレベルを上昇させる高カルシウム血性ホルモンである。PTHはポリペプチドであり、非特許文献1に開示された方法を、好ましくは非特許文献2の方法による変更、または非特許文献3による変更を加えて使用することにより、合成ポリペプチドを製造することができる。血清カルシウムが「正常」レベル未満に低下すると、副甲状腺がPTHを放出し、骨カルシウムの吸収および小腸からのカルシウム吸収の増加、ならびに腎臓におけるカルシウムの再吸収が起こる。PTHのアンタゴニストはカルシトニンであり、これは循環カルシウムレベルを低下させるように作用する。高レベルのPTHは骨からカルシウムを除去しうるが、間欠的な低用量であれば、実際に骨成長を促進することができる。例えば、ネイティブhPTH−(1−84)およびそのフラグメントhPTH−(1−34)(Eli Lilly and Co.によりFORTEO(登録商標)という商標で販売されているもの)は、骨粗鬆症の処置に有用であることが示されている。しかし、ネイティブhPTH−(1−84)およびhPTH−(1−34)フラグメントには、それらが骨形成を促進すると同時に骨吸収を活性化するという短所がある。結果として、hPTH−(1−34)は海綿骨(これは中軸骨格の骨を構成し、胸郭、背骨および頭骨、ならびに脊椎骨を含む)の骨折頻度を低下させるのには有効であるが、皮質骨(これはねじり荷重から保護する役割を果たし、例えば股関節および手首などを含む)に対するその骨折減少効力はかなり低い。
【非特許文献1】EricksonおよびMerrifield、The Proteins、Neurathら編、Academic Press、ニューヨーク、1976、257頁
【非特許文献2】Hodgesら、Peptide Research、(1988)1、19
【非特許文献3】Atherton,E.およびSheppard,R.C.、Solid Phase Peptide Synthesis、IRL Press、オックスフォード、1989
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
骨粗鬆症または他の骨変性/欠乏障害を持つ患者において、適切なPTHアナログを使用して骨を修復し、海綿骨と皮質骨の両方で骨塩密度を増加させるための治療的アプローチが、依然として必要とされている。さらに、骨粗鬆症または他の骨変性障害を持つ患者において、適切なPTHアナログを使用して、骨吸収を刺激せず、血清カルシウムレベルを有意に増加させることもなく、骨を修復し、骨塩密度および骨形成を増加させるための治療的アプローチも、依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、さまざまな骨変性障害または骨欠乏障害を患っている患者を処置するための方法に使用される、適切なPTHペプチドアナログを含有する医薬組成物および医薬製剤を提供する。本明細書に記載するPTHペプチドアナログ化合物は、海綿骨と皮質骨の両方で骨形成を誘発し、それによって、骨塩密度を増加させ、骨を修復する。予想外なことに、本明細書に記載するPTHペプチドアナログは、骨形成を誘発する一方で、それが引き起こす骨吸収は既知のPTHアナログよりも少なく、それが示す高カルシウム血症の発生率および重症度も低い。
【0008】
本明細書に開示するPTHアナログは、指定した投薬量範囲内で投与した場合、動物において骨粗鬆症が皮質骨に及ぼす作用を逆転させるのに有効である。これらのPTHアナログは、古い皮質骨の吸収と新しい皮質骨の形成の間の不均衡を矯正することにより、骨粗鬆症が骨に及ぼす作用を逆転させることが示された。したがって本明細書に記載する方法は、動物における皮質骨形成を、皮質骨の多孔性を有意に増加させることなく、促進する。
【0009】
これらのPTHアナログは骨傷害からの回復も促進する。したがって、本発明のPTHアナログを指定した投薬量で投与すると、骨粗鬆症の皮質骨が修復され、さまざまな状況(例えば骨折の処置)における骨治癒が促進される。
【0010】
一態様として、本発明は、骨粗鬆症を処置するための方法であって、処置を必要とする被験体に、副甲状腺ホルモン(PTH)ペプチドアナログを含む薬学的に許容できる製剤を、2μg〜60μgの1日量で投与することを含み、前記PTHペプチドアナログが低下したホスホリパーゼ−C活性を持ち、かつアデニル酸シクラーゼ活性を維持している方法を提供する。
【0011】
もう一つの実施形態において、本発明は、骨折を処置するための方法であって、処置を必要とする被験体に、副甲状腺ホルモン(PTH)ペプチドアナログを含む薬学的に許容できる製剤を、2μg〜60μgの1日量で投与することを含み、前記PTHペプチドアナログが低下したホスホリパーゼ−C活性を持ち、かつアデニル酸シクラーゼ活性を維持している方法に向けられる。
【0012】
もう一つの実施形態において、本発明は、海綿骨および皮質骨における骨形成を誘発する方法であって、誘発を必要とする被験体に、副甲状腺ホルモン(PTH)ペプチドアナログを含む薬学的に許容できる製剤を、2μg〜60μgの1日量で投与することを含み、前記PTHペプチドアナログが低下したホスホリパーゼ−C活性を持ち、かつアデニル酸シクラーゼ活性を維持している方法を提供する。
【0013】
さらにもう一つの実施形態において、本発明は、腎性骨異栄養症(ROD)および関連障害を処置または予防する方法であって、処置または予防を必要とする被験体に、副甲状腺ホルモン(PTH)ペプチドアナログを含む薬学的に許容できる製剤を、2μg〜60μgの1日量で投与することを含み、前記PTHペプチドアナログが低下したホスホリパーゼ−C活性を持ち、かつアデニル酸シクラーゼ活性を維持している方法に向けられる。
【0014】
もう一つの実施形態は、カルシウムモニタリングを必要としない、骨粗鬆症の処置、骨折の処置もしくは予防、海綿骨および皮質骨における骨形成の誘発、腎性骨異栄養症(ROD)および関連障害の処置もしくは予防、またはPTHの他の任意の治療的使用のための、本発明のPTHペプチドの使用を提供する。
【0015】
もう一つの実施形態は、骨肉腫形成に関する警告を必要としない、骨粗鬆症の処置、骨折の処置もしくは予防、海綿骨および皮質骨における骨形成の誘発、腎性骨異栄養症(ROD)および関連障害の処置もしくは予防、またはPTHの他の任意の治療的使用のための、本発明のPTHペプチドの使用を提供する。
【0016】
もう一つの実施形態において、本発明は、2〜60μgという1日投薬量範囲内の、治療有効量の副甲状腺ホルモン(PTH)ペプチドアナログ(前記PTHペプチドアナログは低下したホスホリパーゼ−C活性を持ち、かつアデニル酸シクラーゼ活性を維持している)の単位剤形と、薬学的に許容できる賦形剤、希釈剤、もしくは担体、またはそれらの組み合わせとを含む医薬製剤を提供する。
【0017】
本発明のもう一つの実施形態は、一つ以上の容器に、装置に含有された治療有効量の上記医薬組成物と、使用に関する指示が記載されたラベルまたは添付文書とを含む、骨欠乏障害を処置するためのキットである。
【0018】
PTHアナログは、適宜、N末端の最初の34アミノ酸未満を含む。本発明のPTHペプチドアナログは、完全長PTHペプチドまたは34アミノ酸残基以上の長さを持つ他のPTHペプチドアナログと比較して、体内のさまざまな部位における骨塩密度(BMD)の増加は維持しながらも、惹起するホスホリパーゼ−Cの活性化は完全ではなく、惹起する骨吸収、および高カルシウム血症の発生率または重症度も低い。
【0019】
本発明のPTHペプチドアナログの具体的実施形態として、以下のアナログが挙げられる:PTH−(1−31)NH2、Ostabolin;PTH−(1−30)NH2;PTH−(1−29)NH2;PTH−(1−28)NH2;Leu27PTH−(1−31)NH2;Leu27PTH−(1−30)NH2;Leu27PTH−(1−29)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2 Ostabolin−CTM;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−34)NH2;Leu27シクロ(Lys26−Asp30)PTH−(1−34)NH2;シクロ(Lys27−Asp30)PTH−(1−34)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2;Ala27またはNle27またはTyr27またはIle27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−32)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)OH;Leu27シクロ(26−30)PTH−(1−31)NH2;Cys22Cys26Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2;Cys22Cys26Leu27シクロ(26−30)PTH−(1−31)NH2;シクロ(27−30)PTH−(1−31)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−30)NH2;シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2;シクロ(22−26)PTH−(1−30)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−29)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−28)NH2;Glu17,Leu27シクロ(13−17)(22−26)PTH−(1−28)NH2;およびGlu17,Leu27シクロ(13−17)(22−26)PTH−(1−31)NH2。
【0020】
本発明のPTHペプチドは、さまざまな用量で投与することができ、最も好ましくは5、10、15、20、25、または30μgの1日量で投与することができる。
【0021】
以下に説明する図面では、別段の明記がない限り、Ostabolin−CTM投与後の測定を、明記した用量を15週間にわたり毎日皮下投与した後に行い、変化をベースラインと比較して測定した。本明細書にいうベースラインとは、何らかの処置を受ける前の患者の個別測定である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(発明の詳細な説明)
本発明は、さまざまな骨変性障害または骨欠乏障害を患っている被験体を処置するための方法に使用される、適切なPTHペプチドアナログを含有する医薬組成物および医薬製剤を提供する。本明細書に記載するPTHペプチドアナログは、海綿骨と皮質骨の両方で骨形成を誘発し、それによって骨塩密度を増加させ、骨を修復する。予想外なことに、本明細書に記載するPTHペプチドアナログは、骨形成を誘発する一方で、それが引き起こす骨吸収は既知のPTHアナログよりも少なく、それが示す高カルシウム血症の発生率および重症度も低い。
【0023】
本発明は、副甲状腺ホルモンを投与することによって、被験体における骨の靱性および/または剛性を増加させ、かつ/または骨折の発生率を低下させるための方法に関する。本方法は、潜在的外傷部位または現実の外傷部位における靱性および/または剛性を増加させるために使用することができる。外傷には、一般に、骨折、外科手術による外傷、関節置換術、整形外科処置などが含まれる。骨の靱性および/または剛性を増加させることには、一般に、皮質骨の無機質密度を増加させること、骨の強度を増加させること、耐荷重性を増加させることなどが含まれる。骨折の発生率を低下させることには、一般に、無処置の対照集団と比較して、ある被験体について、骨折の可能性または骨折の現実の発生率を低下させることが含まれる。
【0024】
本発明は、本明細書に記載する副甲状腺ホルモンアナログを投与することによって、海綿骨および皮質骨を含む骨の靱性および/または剛性を増加させ、かつ/または骨折の発生率および/または重症度を低下させるための方法を包含する。より具体的には、本発明は、潜在的外傷部位または現実の外傷部位における骨の靱性または剛性を増加させるための方法に関する。骨の靱性および/または剛性を増加させることは、例えば骨塩密度を増加させること、骨塩含量を増加させること、破断エネルギーを増加させることなど、当業者に知られる数多くの形で表されうる。1つの実施形態において、本発明の方法は、脊椎および/または非脊椎骨折の発生率または重症度を低下させる。本発明の方法は、そのような骨折のリスクを減少させるために、またはそのような骨折を処置するために、使用することができる。特に本発明の方法は、脊椎および/または非脊椎骨折の発生率を低下させること、脊椎骨折の重症度を低下させること、多発脊椎骨折の発生率を低下させること、骨質を改善することなどができる。
【0025】
本発明者は、低下したホスホリパーゼ−C活性を持ち、かつアデニル酸シクラーゼを維持しているPTHペプチドアナログが、驚くべきことに、約2〜約60μ/日の投薬量で、血清カルシウムレベルを有意に増加させることなく、海綿骨と皮質骨の両方において骨形成を誘発し、今までのPTHアナログよりも少ない骨吸収を引き起こすことを発見した。本発明が提供する方法は、一般に、約2〜約60μg/日の量で、ある用量のPTH化合物を、その必要がある動物に投与して、骨形成を誘発し、かつ34アミノ酸残基長以上のPTHアナログを投与した場合よりも少ない骨吸収および低い高カルシウム血症の発生率を引き起こすことによって実施される。
【0026】
本発明のPTHペプチドアナログは、単独で、または他の骨強化剤と組み合わせて、骨欠乏に関係する疾患、症状、または状態を患っている任意の哺乳動物(ヒトおよび動物を含む)を処置するために使用することができる。本発明の一実施形態では、強化された骨形成を必要とする被験体が、男性または女性などのヒト患者である。好ましい実施形態では、患者が閉経後女性である。
【0027】
(定義)
読者の助けになるように、以下に定義を示す。別段の定義がない限り、本明細書で使用する技術用語、表記および他の科学的または医学的用語または術語は全て、化学分野および医学分野の当業者に一般に理解されている意味を持つものとする。一般に理解されている意味を持つ用語を、明確に理解できるように、かつ/または手早く参照できるように、本明細書において定義する場合もあるが、本明細書にそのような定義が記載されているからといって、それが、当技術分野で一般に理解されているその用語の定義との実質的な相違を表すものであるとは、必ずしも解釈すべきでない。
【0028】
本明細書において、本発明の「PTHペプチドアナログ」は、好ましくは非天然物であるが、非天然物に限るわけではなく、組換え法で取得するか、ペプチド合成によって取得することができる。本発明のPTHアナログには、骨粗鬆症の卵巣切除ラットモデルで決定されるヒトPTH活性を持つヒト、ラット、ブタ、またはウシPTHのフラグメントまたはフラグメントの変異体が包含される。Kimmelら、Endocrinology、1993、32(4):1577。ヒトPTH活性には、海綿骨および/または皮質骨成長を増加させるというPTHの能力が含まれる。本発明のPTHアナログを、破骨細胞などの培養されたPTH受容体含有細胞に投与すると、AC活性が増加する。本発明のPTHアナログは、さらに、以下に定義する一定の機能的活性を持っている。
【0029】
本明細書において、「低下したホスホリパーゼ−C活性」を持つPTHペプチドアナログとは、完全長PTHペプチドまたは少なくとも34アミノ酸残基長である他のPTHペプチドアナログと比較して惹起するホスホリパーゼ−Cの活性化が完全ではなくなるように、トランケートされたまたは何らかの形で修飾されたPTHペプチドアナログを指す。
【0030】
本明細書において、「低下した骨吸収」をもたらすPTHペプチドアナログとは、完全長PTHペプチドまたは少なくとも34アミノ酸残基長である他のPTHペプチドアナログと比較して惹起する骨吸収が少なくなるように、トランケートされたまたは何らかの形で修飾されたPTHペプチドアナログを指す。
【0031】
本明細書において、「低下した高カルシウム血レベル」をもたらすPTHペプチドアナログとは、完全長PTHペプチドまたは少なくとも34アミノ酸残基長である他のPTHペプチドアナログと比較して惹起する高カルシウム血症の発生率が低くなるようにまたは惹起する高カルシウム血症の重症度が低くなるように、トランケートされたまたは何らかの形で修飾されたPTHペプチドアナログを指す。
【0032】
本明細書において、ある状態もしくは被験体「を処置する」またはある状態もしくは被験体「の処置」とは、有益な結果または所望の結果(臨床的結果を含む)を得るための措置を講じることを指す。本発明の場合、有益なまたは所望の臨床的結果として、骨欠乏に関係する一つ以上の疾患、症状、または状態の軽減または改善が挙げられるが、これらに限るわけではない。一般に、そのような骨欠乏性の疾患、症状、および状態は、骨塩密度(「BMD」)の増加によって測定される骨形成を誘発することによって処置される。例えば骨粗鬆症の症状には、背痛、身長の減少および猫背姿勢、湾曲した背骨(老人性円背)、または軽微な傷害で起こりうる骨折(特に股関節、脊柱、または手首の骨折)などがある。最も一般的なパジェット病の症状として骨痛が挙げられる。他の症状としては、頭痛および難聴、頸痛、神経の圧迫、頭囲拡大または脊柱の屈曲、股関節痛、関節の軟骨への損傷(これは関節炎につながりうる)、および樽状胸を挙げることができる。変形性関節症の症状としては、関節痛および鈍痛、関節可動域の制限および不安定性、関節軟骨のびらん、関節腔狭小化、軟骨下骨の硬化、および骨増殖体(骨棘)を示す放射線写真撮影による証拠を挙げることができる。慢性関節リウマチの症状としては、身体の両側(対称性)、特に手、手首、肘、足、膝、または頸の、関節の疼痛、腫脹、圧痛、硬直が挙げられる。エンドウ豆からモスボールまでの大きさを持つリウマトイド結節(瘤)が、慢性関節リウマチを持つ人々の3分の1近くに発生する。これらの結節は、通常、肘、指関節、脊柱、および下肢骨などといった体内の圧力点上に形成される。
【0033】
本明細書において、ある症状または症状群の「減少」(およびこの表現と文法上等価な表現)とは、その症状(群)の重症度または頻度の低下、またはその症状(群)の排除を意味する。
【0034】
本明細書において、ある被験体に本明細書に記載の薬物または医薬組成物もしくは医薬製剤を「投与する」、あるいはある被験体に対する本明細書に記載の薬物または医薬組成物もしくは医薬製剤「の投与」(およびこの表現と文法上等価な表現)には、直接的投与(自己投与を含む)と、間接的投与(薬物を処方する行為を含む)の両方が包含される。例えば、本明細書においては、ある薬物を自己投与するように患者に指示する医師および/またはある薬物の処方せんを患者に与える医師は、その薬物をその患者に投与していることになる。
【0035】
さまざまな投与経路を本発明に従って使用することができる。有効量の本明細書記載のペプチドは、非経口的に、経口的に、吸入によって、局所的に、直腸に、鼻に、口腔に、膣に、または植込み型リザバーを介して投与することができる。
【0036】
本発明の好ましい実施形態では、有効量の本明細書記載のペプチドを非経口的に投与する。本明細書で使用する用語「非経口」は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包内、胸骨内、髄腔内、肝内、病変内および頭蓋内注射または注入技法を包含する。より好ましくは、投与経路は皮下投与である。
【0037】
本明細書において、本明細書に記載の薬物または医薬組成物もしくは医薬製剤または薬剤の「治療有効量」は、ある疾患または状態を持つ被験体に投与した場合に、意図した治療効果(例えばその被験体におけるその疾患または状態の一つ以上の症状発現の軽減、改善、一時的寛解または排除)を持つであろう薬物または薬剤の量である。完全な治療効果は1回分の投与では必ずしも起こらず、一連の投薬後に初めて起こることもありうる。したがって治療有効量は1回以上の投薬で投与されうる。
【0038】
本明細書において、本明細書に記載の薬物または医薬組成物もしくは医薬製剤または薬剤の「予防有効量」は、被験体に投与した場合に、意図した予防効果(例えば、疾患もしくは症状の発生(もしくは再発)を予防しもしくは遅延させること、または疾患もしくは症状の発生(もしくは再発)の可能性を低下させること)を持つであろう薬物または薬剤の量である。完全な予防効果は1回分の投与では必ずしも起こらず、一連の投薬後に初めて起こることもありうる。したがって予防有効量は1回以上の投薬で投与されうる。
【0039】
本明細書に記載の薬物または医薬組成物もしくは医薬製剤「と組み合わされた」骨強化剤の投与には、並行投与(すなわち、薬物と薬剤の両方を、ある期間にわたって、被験体に投与すること、同時投与(この場合は、薬物と薬剤の両方がほぼ同時に、例えば互いに数分〜数時間以内に投与される)、および同時製剤(この場合は、薬物と薬剤の両方が、経口投与または非経口投与に適した単一の剤形中に、混和または配合される)が包含される。
【0040】
「被験体」は、哺乳動物、好ましくはヒトであるが、獣医学的処置を必要とする動物、例えば伴侶動物(例えばイヌ、ネコなど)、農用動物(例えばウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど)および実験動物(例えばラット、マウス、モルモットなど)であることもできる。
【0041】
(骨障害および骨疾患)
骨欠乏
1つの態様では、処置を必要とする被験体が、骨欠乏状態にある。これは、被験体が持つ骨量が望ましい骨量より少なくなること、または骨の密度もしくは強度が望ましい密度もしくは強度より低くなることを意味する。骨欠乏は、例えば骨折によって引き起こされるもののように局在化していてもよいし、例えば骨粗鬆症によって引き起こされるもののように全身性であってもよい。骨欠乏は、骨形成と骨吸収の間の均衡が変化して骨欠乏をもたらす骨リモデリング障害に起因しうる。そのような骨リモデリング障害の例として、例えば骨粗鬆症、パジェット病、腎性骨異栄養症、腎性くる病、変形性関節症、慢性関節リウマチ、軟骨形成不全症、骨軟骨炎、副甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、先天性低ホスファターゼ症、線維腫性病変、線維性骨異形成症、多発性骨髄腫、骨代謝回転異常、溶骨性骨疾患および歯周病が挙げられる。骨リモデリング障害には、有機基質、骨石灰化、骨リモデリング、骨格および無機質ホメオスタシスを調節する内分泌因子、栄養因子および他の因子の撹乱を特徴とする代謝性骨疾患が含まれる。そのような障害は先天性であっても後天性であってもよく、一般に全身性で、骨格系全体を冒す。
【0042】
したがって、一態様として、ヒト被験体は骨リモデリング障害を持ちうる。本明細書にいう骨リモデリングとは、破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成とが関わる骨基質および骨塩の絶え間ない代謝回転によって、古い骨が取り除かれ、新しい骨が形成されている過程を指す。
【0043】
骨粗鬆症は、骨皮質および骨梁の希薄化および増加した多孔性をもたらす、正常に石灰化された骨の骨密度の減少を特徴とする、一般的な骨リモデリング障害である。骨粗鬆症がもたらす骨格の脆弱性は、罹患者に、骨痛および増加した骨折発生率に対する素因を与える。この状態における進行性骨量減少は、初期骨格量の50%までの喪失をもたらしうる。原発性骨粗鬆症には、正常な性腺機能を持つ小児または若年成人に起こる特発性骨粗鬆症、閉経後骨粗鬆症とも記載されるI型骨粗鬆症、および主として70歳を超える人々に起こるII型骨粗鬆症、老人性骨粗鬆症が含まれる。続発性骨粗鬆症の原因は、内分泌性(例えばグルココルチコイド過剰、副甲状腺機能亢進症、性腺機能低下症)、薬物誘発性(例えばコルチコステロイド、ヘパリン、タバコ)およびその他(例えば慢性腎不全、肝疾患および吸収不良症候群骨粗鬆症)でありうる。
【0044】
本明細書で使用する「骨欠乏を発生させるリスクがある」という表現は、骨欠乏の発生に対して平均的素因よりも高い素因を持つ被験体を包含するものとする。一例として、骨粗鬆症にかかりやすい人々には、閉経後女性、高齢男性(例えば65歳を超えた人々)および副作用として骨粗鬆症を引き起こすことが知られている薬物で処置されている人々(例えばステロイド誘発性骨粗鬆症)が含まれる。骨粗鬆症のような骨リモデリング障害による骨欠乏を発生させるリスクがある人々を同定するために使用することができる一定の因子は、当技術分野ではよく知られている。骨粗鬆症のリスク因子は当技術分野では知られており、男性および女性における性腺機能低下状態、性腺機能低下を誘発する疾患または薬物、骨粗鬆症に関連する栄養因子(低カルシウムまたは低ビタミンDが最も一般的である)、喫煙、アルコール、骨梁減少に関連する薬物(例えばグルココルチコイド、チロキシン、ヘパリン、リチウム、抗痙攣薬など)、転倒しやすくなる視力低下、宇宙旅行、固定、長期の入院または床上安静、および骨粗鬆症のリスクの増加と関連づけられている他の全身性疾患が挙げられる。
【0045】
骨粗鬆症の存在の指標は当技術分野では知られており、少なくとも一つの脊椎圧迫骨折を示す放射線医学的証拠、低骨量(典型的には平均若年正常値を少なくとも1標準偏差下回る値)、および/または非外傷性骨折が挙げられる。他の重要な因子として、家族歴、生活習慣、エストロゲンまたはアンドロゲン欠乏症および負のカルシウム平衡が挙げられる。閉経後女性は骨粗鬆症を発症するリスクが特に高い。以下、骨疾患の処置に言及する場合は、文脈上別段の必要がない限り、管理および/または予防を包含するものとする。
【0046】
骨外傷
本発明の方法は、一つ以上の骨に外傷を被るかもしれない被験体または一つ以上の骨に外傷を被っている被験体にとって有益である。本方法はヒト、ウマ、イヌ、およびネコなどの哺乳動物被験体(特にヒト)に利益を与えることができる。骨外傷は、競走馬および競争犬にとっても家庭のペットにとっても問題になりうる。ヒトは、例えば事故、医学的介入、疾患、または障害などにより、さまざまな骨外傷を被りうる。若年の場合、骨外傷は、おそらく骨折、骨折を修復するための医学的介入、または例えば運動競技によって損傷した関節および結合組織の修復によるものだろう。他のタイプの骨外傷、例えば骨粗鬆症、変性骨疾患(関節炎または変形性関節炎など)、股関節置換術、または他の全身性状態の治療に関連する続発性状態(例えばグルココルチコイド骨粗鬆症、熱傷または臓器移植)によるものなどは、高齢者に最も多く見出される。
【0047】
骨粗鬆症は例えば脊椎および/または非脊椎骨折につながりうる。脊椎骨折は脊柱が関わる骨折であり、非脊椎骨折は脊柱が関わらない任意の骨折を指す。非脊椎骨折の方が脊椎の骨折より一般的であり、米国では年間700,000例の脊椎骨折に対して推定850,000例の非脊椎骨折が起こっている。非脊椎骨折には、300,000例を超える股関節骨折および250,000例の手首骨折が、他の非脊椎部位における300,000例の骨折に加えて含まれる。非脊椎骨折の他の例として、股関節骨折、前腕遠位部の骨折、上腕骨近位部の骨折、手首の骨折、橈骨の骨折、足首の骨折、上腕骨の骨折、肋骨の骨折、足の骨折、骨盤の骨折、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0048】
本発明の方法は、そのような骨折のリスクを減少させるために、またはそのような骨折を処置するために使用することができる。骨(例えば股関節、脊柱または両方の骨)の強度および/または剛性を増加させることにより、骨折のリスクが減少し、骨折の治癒が助長される。骨粗鬆症のリスクがある典型的な女性は閉経後の女性または閉経前の性腺機能低下女性である。好ましい被験体は閉経後の女性であり、併用されるホルモン補充治療(HRT)、エストロゲンもしくは等価物による治療、吸収阻害剤による治療に依存していない。本発明の方法は、骨粗鬆症のどの段階にある被験体にも利益を与えうるが、初期および進行期の被験体には特に有益である。
【0049】
本発明は、骨粗鬆症を持つ被験体または骨粗鬆症に進行するリスクがある被験体における骨折の発生を防止または減少させるのに特に有効な方法を提供する。例えば本発明は、脊椎骨折および/または非脊椎骨折の発生率を低下させ、脊椎骨折の重症度を低下させ、多発脊椎骨折の発生率を低下させ、骨質を改善することなどができる。もう一つの実施形態として、本発明の方法は、将来多発骨格骨折を起こすリスクがある低骨量の患者または骨折歴のある患者(例えば脊椎骨粗鬆症が急速に進行している可能性がある患者)に利益を与えることができる。
【0050】
他の被験体として、骨外傷のリスクがある被験体または骨外傷を患っている被験体を挙げることができ、これらの被験体は本発明の方法から利益を得ることができる。例えば、上に挙げた骨折の一つ以上を起こすリスクがある広範囲にわたるさまざまな被験体は、骨外傷をもたらす外科手術を予期することができ、あるいは骨量が異常に低い骨格部位もしくは骨構造が異常に乏しい骨格部位または無機質が不足している骨格部位にある骨を操作する整形外科処置を受ける可能性がある。例えば、関節置換術(例えば膝もしくは股関節)もしくは脊柱ブレーシングなどの外科手術または骨もしくは骨格を固定する他の処置を行った後の機能の回復は、本発明の方法によって改善されうる。本発明の方法は、例えば、骨量が異常に低い部位または骨構造が異常に乏しい部位にある骨を操作する整形外科処置であって、骨の外科的分割(截骨術を含む)を含む処置、骨構造の喪失が寛骨臼棚つくりによる再構築および人工器官浮動の予防を必要とする骨関節置換術からの回復も助長することができる。本発明の実施に適した他の被験体として、副甲状腺機能低下症もしくは脊柱後弯症の進行に関連するまたは副甲状腺機能低下症もしくは脊柱後弯症の進行によって引き起こされる外傷を被る可能性がある、副甲状腺機能低下症または脊柱後弯症を患っている被験体が挙げられる。
【0051】
骨の靱性および剛性
本発明の方法は、骨の靱性、剛性またはその両方を増加させることによって、外傷のリスクを低下させ、または外傷からの回復を助長する。一般に、骨の靱性または剛性は皮質骨および骨梁(海綿)骨の質量および強度に起因する。本発明の方法は、正常集団の範囲内またはそれを上回るレベルの骨の靱性、剛性、質量、および/または強度をもたらすことができる。好ましくは、本発明は、外傷に起因するレベルまたは外傷のリスクを引き起こすレベルと比較して増加したレベルをもたらす。靱性、剛性、または両方を増加させると、骨折のリスクまたは可能性が、無処置の対照集団と比較して低下する。
【0052】
骨の特徴には、それを増加させると、骨の靱性および/または剛性が増加するものが、いくつかある。そのような特徴として、骨塩密度(BMD)、骨塩含量(BMC)、開始頻度または骨形成速度、骨梁数、骨梁幅、骨梁その他の連結性、骨膜および皮質内骨(endocortical bone)形成、皮質多孔性、骨横断面積および骨量、耐荷重性、および/または破断エネルギーが挙げられる。これらの特徴の一つ以上の増加は本発明方法の好ましい成果である。
【0053】
骨髄腔および弾性率など、骨の特徴のいくつかは、それが減少した時に、骨の靱性および/または剛性の増加をもたらす。若い(靱性および剛性の高い)骨ほど、古い骨のクリスタライトより一般に小さいクリスタライトを持つ。したがって、一般に、骨クリスタライトのサイズを減少させると骨の靱性および剛性が増加し、骨折の発症率を減少させることができる。また、骨のクリスタライトを成熟させることで、骨に、さらなる望ましい特徴、例えば増加した骨の靱性および剛性を与え、かつ/または骨折の発生率を低下させることができる。これらの特徴の一つ以上の低下は、本発明の方法の好ましい成果でありうる。
【0054】
本発明の方法は、いくつかある骨のいずれについても、その靱性および/または剛性を増加させるのに有効である。例えば本発明は、腸骨などの寛骨、大腿骨などの下肢骨、脊柱の骨、例えば脊椎骨、または腕の骨、例えば前腕骨遠位部および上腕骨近位部の靱性および/または剛性を増加させることができる。この靱性および/または剛性の増加は、骨全体に見出されるか、骨の一定部分に局在化して見出されうる。例えば大腿骨の靱性および/または剛性は、大腿骨頸または大腿骨転子の靱性および/または剛性を増加させることによって、増加させることができる。股関節の靱性および/または剛性は、腸骨稜または腸骨棘の靱性および/または剛性を増加させることによって、増加させることができる。脊椎骨の靱性および/または剛性は、椎弓根、椎弓板、または椎体の靱性および/または剛性を増加させることによって、増加させることができる。作用は、脊柱の一定部分にある脊椎骨、例えば頸椎、胸椎、腰椎、仙椎、および/または尾椎への作用であることが、有利である。作用は、好ましくは、一つ以上の中位胸椎および/または上位腰椎への作用である。
【0055】
靱性および/または剛性の増加は、各タイプの骨に見出すことができるか、主として一タイプの骨に見出すことができる。骨のタイプには、海綿質(海綿、骨梁、または層板)骨および緻密(皮質または緻密質)骨および骨折仮骨が含まれる。本発明の方法は、好ましくは、海綿骨および皮質骨に対するその作用、または皮質骨のみに対するその作用によって、靱性および/または剛性を増加させる。結合組織が付着している骨、海綿骨も、本発明によって靱性および/または剛性を強化されうる。例えば、靱帯、腱、および/または筋の付着部位に靱性を追加することは、有利である。
【0056】
本発明のもう一つの態様では、靱性または剛性を増加させることにより、骨折の発生率を減少させることができる。この態様において、靱性または剛性を増加させることには、脊椎骨折の発生率を低下させること、重度骨折の発生率を低下させること、中等度骨折の発生率を低下させること、非脊椎骨折の発生率を低下させること、多発骨折の発生率を低下させること、またはそれらの組み合わせが包含される。
【0057】
本発明の方法は、骨欠乏が骨リモデリング障害以外の因子によって引き起こされる状態において、骨形成を強化するためにも使用することができる。そのような骨欠乏には、骨折、骨外傷、外傷骨手術後(例えば骨移植または骨癒合)、人工関節手術後、樹脂骨手術後、歯科手術後、骨化学療法、および骨放射線療法に関連する状態が含まれる。骨折には、あらゆるタイプの微視的または巨視的骨折が含まれる。骨折および/または傷害の例には、被験体の任意の骨における裂離骨折、粉砕骨折、偽関節骨折、横骨折、斜骨折、らせん骨折、分節骨折、分節間隙、転位骨折、嵌入骨折、若木骨折、膨隆骨折、疲労骨折、関節内骨折(骨端骨折)、閉鎖骨折(単純骨折)、開放骨折(複雑骨折)、骨空隙、および不顕性骨折が含まれる。
【0058】
上述のように、多種多様な骨疾患、例えば骨リモデリング周期と関係する全ての骨疾患を、本発明に従って処置することができる。そのような疾患の例として、あらゆる形態の骨粗鬆症、骨軟化症およびくる病が挙げられる。骨粗鬆症、とりわけ閉経後型、男性型、移植後型、およびステロイド誘発型の骨粗鬆症は、特に注目すべきである。また、PTHペプチドアナログには、骨促進剤およびアナボリック骨剤としての用途もある。そのような用途は本発明のもう一つの態様を形成する。
【0059】
(副甲状腺ホルモンアナログ)
本明細書に記載する薬学的に許容できる組成物または溶液は、Kimmelら、Endocrinology、1993、32(4):1577が報告した骨粗鬆症の卵巣切除ラットモデルで決定されるヒトPTH活性を持つ、ヒトPTHの、またはラット、ブタもしくはウシPTHの、フラグメント、または置換、欠失、もしくは挿入を含むフラグメントの変異体を、活性成分として含みうる。ヒトPTH活性には、海綿骨および/または皮質骨の成長を増加させるというPTHの能力が含まれる。本発明のPTHアナログを、破骨細胞などの培養されたPTH受容体含有細胞に投与すると、AC活性が増加する。本発明で使用されるPTHアナログは天然物または非天然物であり、望ましくはPTHの最初の34個未満のN末端残基を含む。
【0060】
PTHは、二つの二次メッセンジャー系、すなわちGタンパク質活性化アデニリルシクラーゼ(AC)およびGタンパク質活性化ホスホリパーゼCの活性化によって作動する。後者は、膜結合型プロテインキナーゼCs(PKC)活性の刺激をもたらす。PKC活性はPTH残基29〜32を必要とすることが示されている(Jouishommeら(1994)J.Bone Mineral Res.9、(1179−1189)。骨成長の増加、すなわち骨粗鬆症の処置に有用な作用は、AC活性を増加させるというこのペプチド配列の能力と共役することが立証されている。
【0061】
ネイティブPTH配列およびそのトランケート1−34型は、これらの活性を全て持つことが示されている。hPTH−(1−34)配列は、
【0062】
【化1】

である。
【0063】
AC活性にはこの分子の最初の数N末端残基が必要であることが示されている。したがって、本発明のこの実施形態によれば、hPTH−(1−34)分子の選択された末端部分を欠失させることにより、PKC活性に関連する生物学的活性を取り除くことができる。1つの実施形態では、これらの短縮アナログが望ましくはカルボキシル末端アミドの形態をとる。したがって本発明の一特徴は、ヒト副甲状腺アナログの変異体PTH(1−25)−NH、PTH(1−26)−NH、PTH(1−27)−NH、PTH(1−28)−NH、PTH(1−29)−NH、PTH(1−30)−NH、およびPTH(1−31)−NHを含む。
【0064】
本発明で使用されるPTHアナログのもう一つの特徴によれば、驚くべきことに、ネイティブhPTH配列中のLys27をLeuで置き換えると、AC刺激に関する活性が高まることが見出された。このアナログも、カルボキシル末端アミドの形態をとる場合に、その最大活性を示す。したがって、本発明のもう一つの特徴は、[Leu27]−PTH−(1−25)−NHから[Leu27]−PTH−(1−31)−NHまでの全ての配列を含むPTHアナログの使用を含む。
【0065】
本発明のもう一つの特徴によれば、C末端遊離アミド終末を持つか、C末端遊離カルボキシル終末を持つ、PTHアナログのラクタム(この場合、Lys27は、Leuまたは他のさまざまな疎水性残基で置き換えることができる)を、例えばGlu22およびLys26の側鎖のカップリングまたはLys26およびAsp30の側鎖のカップリングが関わる環化によって形成させる。そのような置換として、オルニチン、シトルリン、アルファ−アミノ酪酸、または側鎖中に2〜10個の炭素原子を持つ任意の直鎖または分岐鎖アルファ−アミノ脂肪族酸が挙げられ、それらのアナログはいずれも、脂肪族鎖の末端に極性基または荷電基を持つ。極性基または荷電基の例として、アミノ、カルボキシル、アセトアミド、グアニドおよびウレイドが挙げられる。Ile、ノルロイシン、Met、およびオルニチンは、最も活性であると予想される。
【0066】
このように、本発明のPTHアナログは、例えば残基Glu22とLys26の間、残基Ly26とAsp30の間、またはGlu22とLys27の間のラクタム形成を特徴とする。Lys27をLeuで置換することにより、両親媒性ヘリックスの疎水面上に、さらに疎水性の高い残基がもたらされる。これは、PTH受容体含有ラット骨肉腫(ROS)細胞株におけるアデニリルシクラーゼ刺激活性を増加させた。他のそのような置換が同じ活性または増加した活性を持つアナログをおそらくもたらすであろうことは、当業者には理解されるだろう。これらの疎水性置換には、Metまたはノルロイシンなどの残基が含まれる。置換といずれかのラクタム形成との複合作用は、アルファ−ヘリックスを安定化し、生物活性を増加させること、および分子のこの領域をタンパク質分解から保護することであると予想される。C末端におけるアミドの存在は、そのペプチドをエキソタンパク質分解からさらに保護すると予想される(Leslie,F.M.およびGoldstein,A.(1982)Neuropeptides 2、185−196)。
【0067】
本発明の好ましい一実施形態では、本方法で使用されるペプチドが、以下の配列を持つPTH(1−31)−NH2である:
【0068】
【化2】

Xaaは、Lys、Leu、Ile、NleおよびMetからなる群より選択される。好ましい実施形態では、XaaがLysである(配列番号3)。この実施形態をOSTABOLINともいう。
【0069】
本発明のもう一つの好ましい実施形態では、本方法で使用されるペプチドが、Glu22とLys26の間でラクタムの形で環化された、以下の配列を持つ、シクロ(22−26)PTH−(1−31)−NH2である:
【0070】
【化3】

XaaはLeu、Ile、NleおよびMetからなる群より選択され、YはNHまたはOHである。XaaがLeuであり、YがNHである場合(配列番号5)、そのPTHをOSTABOLIN−CTMともいう。
【0071】
このように、本発明で使用されるPTHアナログは環状または線状であることができ、C末端が適宜アミド化されていてもよい。PTH変異体の形態をした代替物は、PTHの安定性および半減期を改善する1〜5個のアミノ酸置換、例えば8番目および/または18番目にあるメチオニン残基の、ロイシンまたは酸化に対するPTHの安定性を改善する他の疎水性アミノ酸による置換、ならびに25〜27領域中のアミノ酸の、トリプシン非感受性アミノ酸、例えばヒスチジンまたはプロテアーゼに対するPTHの安定性を改善する他のアミノ酸による置換などを含む。他の適切な形態のPTHとして、PTHrP、PTHrP(1−34)、PTHrP(l−36)およびPTH1受容体を活性化するPTHまたはPTHrPのアナログが挙げられる。これらの形態のPTHは、本明細書で総称的に使用する用語「副甲状腺ホルモンアナログ」に包含される。ホルモンは、例えば参照により本明細書に組み入れられる米国特許第4,086,196号;同第5,556,940号;同第5,955,425号;同第6,541,450号;同第6,316,410号;および同第6,110,892号に記載されているような、既知の組換え法または合成法によって得ることができる。
【0072】
本発明のPTHペプチドアナログの具体的実施形態として以下のアナログが挙げられる:PTH−(1−31)NH2、Ostabolin;PTH−(1−30)NH2;PTH−(1−29)NH2;PTH−(1−28)NH2;Leu27PTH−(1−31)NH2;Leu27PTH−(1−30)NH2;Leu27PTH−(1−29)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2 Ostabolin−CTM;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−34)NH2;Leu27シクロ(Lys26−Asp30)PTH−(1−34)NH2;シクロ(Lys27−Asp30)PTH−(1−34)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2;Ala27またはNle27またはTyr27またはIle27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−32)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)OH;Leu27シクロ(26−30)PTH−(1−31)NH2;Cys22Cys26Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2;Cys22Cys26Leu27シクロ(26−30)PTH−(1−31)NH2;シクロ(27−30)PTH−(1−31)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−30)NH2;シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2;シクロ(22−26)PTH−(1−30)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−29)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−28)NH2;Glu17,Leu27シクロ(13−17)(22−26)PTH−(1−28)NH2;およびGlu17、Leu27シクロ(13−17)(22−26)PTH−(1−31)NH2。
【0073】
一般に、PTHペプチドアナログの好ましい実施形態として、投与された時に、低下したホスホリパーゼ−C活性、低下した骨吸収、および低下した高カルシウム血レベルをもたらすものが挙げられる。本明細書の定義の項で定義したとおり、「低下したホスホリパーゼ−C活性」とは、完全長PTHペプチドまたは少なくとも34アミノ酸残基長である他のPTHペプチドアナログと比較して惹起するホスホリパーゼ−Cの活性化が完全でなくなるように、トランケートされたまたは何らかの形で修飾されたPTHペプチドアナログを指し;「低下した骨吸収」とは、完全長PTHペプチドまたは少なくとも34アミノ酸残基長である他のPTHペプチドアナログと比較して惹起する骨吸収が少なくなるように、トランケートされたまたは何らかの形で修飾されたPTHペプチドアナログを指し;そして「低下した高カルシウム血レベル」とは、完全長PTHペプチドまたは少なくとも34アミノ酸残基長である他のPTHペプチドアナログと比較して惹起する高カルシウム血症の発生率が低くなるようにまたは惹起する高カルシウム血症の重症度が低くなるように、トランケートされたまたは何らかの形で修飾されたPTHペプチドアナログを指す。
【0074】
本明細書に記載する方法で投与される好ましいPTHアナログとして、[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−31)−NH、例えばZelos Therapeutics,Inc.がOSTABOLIN−CTMという商品名で推進しているもの、および[Leu27]PTH−(1−31)−NHが挙げられる。本発明のもう一つの実施形態では、本明細書に記載する方法において[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−30)−NHを使用する。もう一つの実施形態では、ホルモンが線状アナログPTH(1−31)であり、そのC末端は、遊離のカルボキシル終末を持つか、アミド化することができる。さらにもう一つの実施形態では、ホルモンが、PTH(1−30)(そのC末端は、遊離のカルボキシル終末を持つか、アミド化することができる)または[Leu27]−PTH(1−30)−NHである。本方法で使用することができるこれらのおよび他のPTHアナログの適切な安定化された溶液は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,556,940号;同第5,955,425号;同第6,541,450号;同第6,316,410号;および同第6,110,892号に記述されている。
【0075】
(本発明の方法およびそれに役立つ薬剤)
本発明が提供する方法は、一般に、骨形成を誘発し、骨量減少または骨吸収を抑制または減少させるのに有効な量の、1日量または1週間量のPTH化合物を、その必要がある動物に投与することによって実施される。
【0076】
本発明の一態様は、2μg〜60μgの1日量または14μg〜420μgの1週間量のPTHペプチドアナログ(このPTHペプチドアナログは低下したホスホリパーゼ−C活性を持つが、アデニル酸シクラーゼ活性を維持している)を含む薬学的に許容できる製剤を、処置を必要とする被験体に投与することによって骨粗鬆症を処置するための方法を提供する。1つの実施形態では、被験体がヒト男性またはヒト女性である。好ましい実施形態では女性が閉経後である。
【0077】
もう一つの実施形態では、骨粗鬆症が、進行期骨粗鬆症、性腺機能低下性骨粗鬆症、脊椎骨粗鬆症、移植誘発性骨粗鬆症、およびステロイド誘発性骨粗鬆症からなる群より選択される。
【0078】
骨形成、骨密度もしくは骨石灰化を増加させ、または骨吸収を妨げることが当技術分野で知られている骨強化剤は、本発明の方法および医薬組成物で使用することができる。適切な骨強化剤として、例えば、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、エストロゲン、アンドロゲン、カルシトニン、プロスタグランジンおよびパラソルモンなどの天然または合成ホルモン;血小板由来成長因子、インスリン様成長因子、トランスフォーミング成長因子、上皮成長因子、結合組織成長因子および線維芽細胞成長因子などの成長因子類;ビタミン類、特にビタミンD;カルシウム、アルミニウム、ストロンチウム、ランタニド(参照により本明細書に組み入れられる米国特許第7,078,059号で記載され使用されているランタン(III)化合物など)およびフッ化物などの無機質;イプリフラボンなどのイソフラボン類;プラバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチンおよびアトルバスタチンを含むスタチン薬;パラソルモン受容体、エストロゲン受容体およびプロスタグランジン受容体を含む、骨芽細胞および破骨細胞の表面にある受容体のアゴニストまたはアンタゴニスト;ビスホスホネートおよびアナボリック骨剤が挙げられることも、骨形成分野の当業者には理解される。1つの実施形態では、ビタミンD、カルシウム、またはその両方が、本発明の医薬製剤と同時に投与される。
【0079】
一般に、PTHペプチドアナログの好ましい実施形態として、投与された時に、低下したホスホリパーゼ−C活性、低下した骨吸収刺激能力、および低下した高カルシウム血レベルをもたらすものが挙げられる。本明細書の定義の項で定義したとおり、「低下したホスホリパーゼ−C活性」とは、完全長PTHペプチドまたは他のPTHペプチドアナログと比較して惹起するホスホリパーゼ−Cの活性化が完全でなくなるように、トランケートされたまたは何らかの形で修飾されたPTHペプチドアナログを指し;「低下した骨吸収」とは、完全長PTHペプチドまたは他のPTHペプチドアナログと比較して惹起する骨吸収が少なくなるように、トランケートされたまたは何らかの形で修飾されたPTHペプチドアナログを指し;そして「低下した高カルシウム血レベル」とは、完全長PTHペプチドまたは他のPTHペプチドアナログと比較して惹起する高カルシウム血症の発生率が低くなるようにまたは惹起する高カルシウム血症の重症度が低くなるように、トランケートされたまたは何らかの形で修飾されたPTHペプチドアナログを指す。
【0080】
本明細書に記載する方法で投与される好ましいPTHアナログとして、[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−31)−NH、例えばZelos Therapeutics,Inc.がOSTABOLIN−CTMという商品名で推進しているもの、およびPTH−(1−31)−NH、例えばZelos Therapeutics,Inc.がOSTABOLINTMという商品名で推進しているものが挙げられる。本発明のもう一つの実施形態では、本明細書に記載する方法において[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−30)−NHを使用する。もう一つの実施形態では、ホルモンが線状アナログPTH(1−31)であり、そのC末端は、遊離のカルボキシル終末を持つか、アミド化することができる。さらにもう一つの実施形態では、ホルモンが、PTH(1−30)(そのC末端は、遊離のカルボキシル終末を持つか、アミド化することができる)または[Leu27]−PTH(1−30)−NHである。本方法で使用することができるこれらのおよび他のPTHアナログの適切な安定化された溶液は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,556,940号;同第5,955,425号;同第6,541,450号;同第6,316,410号;および同第6,110,892号に記述されている。
【0081】
さらに、本明細書に記載する医薬組成物および医薬製剤は、以下に詳述する投与量および投与経路において、高カルシウム血症(すなわち正常レベルより高い血中カルシウムレベル)の発生率を低下させつつ、海綿骨および皮質骨における骨芽細胞分化を刺激することによって、骨形成を誘発するように作動する。
【0082】
本発明のもう一つの態様では、被験体における骨折を処置するための方法が提供される。この方法は、PTHペプチドアナログ(このペプチドアナログは低下したホスホリパーゼ−C活性を持ち、かつアデニル酸シクラーゼ活性を維持している)の薬学的に許容できる製剤の1日量を処置を必要とする被験体に投与することを含み、そのPTHペプチドアナログは骨形成を誘発する。
【0083】
本明細書に記載する薬学的製剤は、被験体の骨格の任意の骨における骨折を治癒させるために使用することができる。好ましい実施形態では、股関節、前腕、上腕骨、手首、橈骨、足首、肋骨、大腿骨、脛骨、および足の骨折を治癒させるために、本発明の医薬製剤を使用する。骨折は上述した複数のタイプであってよく、治癒は骨折しうる複数の骨で同時に起こりうる。
【0084】
もう一つの態様として、本発明は、BMDの増加によって測定される海綿骨および皮質骨における骨形成を、PTHペプチドアナログ(このペプチドアナログは低下したホスホリパーゼ−C活性を持ち、かつアデニル酸シクラーゼ活性を維持している)の薬学的に許容できる製剤の1日量をその必要がある被験体に投与することによって、誘発するための方法を提供する。
【0085】
被験体の骨格の任意の骨で骨の形成を誘発することができるが、好ましい実施形態として、脊柱、頭骨、肋骨、股関節、足首、および手首における骨形成を誘発するために、医薬製剤を使用することができる。もう一つの実施形態では、本発明のPTH医薬製剤の投与後に、血清カルシウムレベルが正常レベルを上回っている患者集団における発生率が、先行技術PTHペプチドの投与で見られるものよりも低くなる。
【0086】
さらにもう一つの態様として、本発明は、腎性骨異栄養症(ROD)および関連障害を、PTHペプチドアナログ(このペプチドアナログは低下したホスホリパーゼ−C活性を持ち、かつアデニル酸シクラーゼ活性を維持している)の薬学的に許容できる製剤の1日量をその必要がある被験体に投与することによって、処置または予防する方法を提供する。
【0087】
ある実施形態では、ROD関連障害が嚢胞性線維性骨炎および低回転骨疾患である。
【0088】
(予想外の結果)
本明細書に記載する医薬組成物および医薬製剤は、以下に詳述する投与量および投与経路において、海綿骨および皮質骨における骨芽細胞分化を刺激し、それと同時に、破骨細胞分化を(したがって骨吸収を)減少させまたは抑制することによって、骨形成を誘発するように作動する。34アミノ酸未満の長さのPTHアナログが好ましい。なぜなら、これらのトランケート型は、骨吸収の増加という負の作用を最小限に抑えつつ、骨形成の増加という正の作用を維持しているからである。骨吸収を最小限に抑えることは、皮質多孔性の低下につながる。本発明のPTHアナログをさまざまな用量で投与することにより、先行技術PTHアナログの投与と比較して、予想外の優れた結果がもたらされた。4ヶ月にわたって投与した場合、本発明のPTHアナログは、腰椎、股関節、大腿頸部、および転子のBMDの増加に対して、少なくとも1年間にわたって投与した少なくとも34アミノ酸残基長である先行技術のPTHアナログと比較して、類似する作用、またはより大きい作用を持つことが示された。先行技術PTHアナログの結果についてはNeer、N.Eng.J.Med、Vol 344、No.19、May 2001、1434−1441頁を参照されたい。これらの予想外の結果を実施例および図に詳述する。
【0089】
本発明のペプチドの投与は、皮質骨、具体的には手首(橈骨遠位部および橈骨骨幹中央部、図6および図7)にも、正の作用を持つ。歴史的に、PTHは骨吸収を増加させることが知られており、これは、皮質多孔性を増加させるので、PTHが皮質骨におけるBMDを増加させることを困難にする。本発明の投薬量および製剤は、プラセボと比較しても、テリパラチド、Forteo(登録商標)と比較しても、皮質骨成長に対して正の作用を持つ。これは、三つの活性用量についてプラセボとの統計的有意差を示す前例のない発見である。
【0090】
本発明のPTHアナログの投与は、骨形成マーカーおよび骨吸収マーカーにも、予想外の結果を持つ。骨形成マーカーとしてはP1NP、オステオカルシン、およびBSAPが挙げられ、骨吸収マーカーとしてはNTxおよびCTxが挙げられる。10、20、および30μgのOstabolin−CTMを投与した場合、骨形成マーカーは、プラセボと比較して、より大きい変化率を持つ。図8〜10。20μgおよび30μgのOstabolin−CTMを投与した場合は、骨形成マーカーの増加に、強固な作用がある。図11〜13の骨吸収マーカーは、Ostabolin−CTMの投与後に骨吸収は多少増加するものの、この増加は、先行技術のテリパラチド、Forteo(登録商標)PTHの投与後に起こるものより少ないことを示している。Neerら、2001。
【0091】
本発明のPTHペプチドの投与は、予想外にも、当技術分野で知られているPTH類と比較して、はるかに低い高カルシウム血症の発生率および重症度をもたらすことも示された。PTHペプチドを投与された患者の高カルシウム血症とは、その患者の血清カルシウム値の少なくとも一つが正常値の上限(2.64mmol/L;10.6mg/dL)を上回ることを意味する。Neerら、2001。
【0092】
Forteo(登録商標)の投与は、プラセボと比較して増加したレベルの高カルシウム血症発生率をもたらす。Forteo(登録商標)のFDA承認は、1637名の(脊椎骨折歴のある)閉経後女性を20または40μg/日のForteo(登録商標)で平均19ヶ月間処置した結果に基づいて行われた。参照によりそのまま本明細書に組み入れられるForteo(登録商標)添付文書およびNeerを参照されたい。この投薬は一般に認容性が高かったが、プラセボ群では2%だったのに対して、20μg群の被験者の11%、40μg群被験者の28%に、少なくとも1回は高カルシウム血症が見られた。対照的に、低用量の本発明PTHペプチド(5、10、および20μg)を投与した場合、高カルシウム血症の発生率の増加は、プラセボと比較して無視できるほどでしかなかった。一例として、高カルシウム血症は、プラセボ群の5%および20μg用量を投与した群の5%で少なくとも1回は見られたことから、高カルシウム血症の正味の増加はなかったことになる。これは、20μgの用量で投与したForteo(登録商標)で見られた11%とは対照的である。
【0093】
したがって、本発明のPTHアナログをさまざまな用量で投与すると、以下の予想外の結果がもたらされる:1)わずか4ヶ月にわたって投与しただけで、腰椎、股関節、大腿頸部、および転子のBDMの増加に関して、少なくとも1年にわたって与えられた先行技術のPTHアナログと比較して、類似する作用、またはより大きい作用;2)先行技術のPTHペプチドは皮質骨のBMDの減少をもたらしたのに対して、皮質骨、具体的には手首(橈骨遠位部および橈骨骨幹中央部)でのBMDの増加;および3)先行技術のPTHペプチドと比較して低下した高カルシウム血症の発生量および重症度。
【0094】
本発明のPTHペプチドは、はるかに低い高カルシウム血症の発生率および重症度をもたらす同化剤であるから、現在利用できる治療法に対して、実質的な改善をもたらす。現時点までの前臨床経験および臨床経験によれば、本PTHペプチドは、高カルシウム血症を誘発せずに骨粗鬆症を処置するための安全かつ著しく有効な同化剤である。本PTHペプチドは、骨吸収に対するその影響が少ないため、骨質に対するその作用についても、改善された臨床プロファイルを持つ。
【0095】
骨吸収の減少は、骨吸収マーカーのレベルの減少によって測定することができる。骨代謝回転の生化学的マーカーは、ある与えられた時点で骨格中に存在する量を明らかにすることはできず、したがって骨粗鬆症の診断にも、疾患の重症度を知るためにも使用することはできないが、生化学的マーカーは、(1)閉経期および閉経後女性の骨量減少を予測するため、ならびに(2)処置に対する骨格応答を監視するために、本発明の医薬組成物および医薬製剤と一緒に使用することができる。骨塩密度(BMD)測定とは異なり、生化学的マーカーは、骨代謝回転の急性変化を検出することができる。BMD試験が、典型的には、数年間の骨密度変化を検出するのに対して、マーカーは数週間または数ヶ月での骨代謝の変化を検出することができる。骨代謝回転は、さまざまな生化学的マーカーの測定によって評価することができる。マーカーには二つの基本タイプ、すなわち骨形成のマーカーと骨吸収のマーカーとがある。さらに、これらのマーカーは二つのグループ、すなわち骨芽細胞および破骨細胞から放出される物質を測定するマーカーと、骨中に見出される主要タンパク質であるコラーゲンの形成または分解中に産生される物質を測定するマーカーとに、分類することもできる。骨リモデリングが起こるときに、これらの物質は血中に放出され、最終的には、尿中に排泄される。血液(血清)でも尿でも、多くの生化学的マーカーを検出し、測定することができる。
【0096】
骨形成に関して最もよく使用されるアッセイは、骨形成時に骨芽細胞によって産生され血流中に放出されるタンパク質、骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)、オステオカルシンおよびプロコラーゲンペプチドの血清検査である。骨吸収マーカーは、典型的には、骨の主要タンパク質であるコラーゲンの分解産物を測定する。これらには、ピリジノリン、デオキシピリジノリン、尿デオキシピリジノリン(尿DPD)、I型コラーゲン架橋物のN−テロペプチド(NTX)およびC−テロペプチド(CTX)が含まれる。
【0097】
総アルカリホスファターゼおよびヒドロキシプロリンなどの古くからあるアッセイは、パジェット病などの代謝性骨疾患の監視には、今も使用されている。しかしこれらの試験には、骨粗鬆症で起こりがちなもっと微細な骨リモデリング変化の監視に使用できるほどの感度がない。というのも、この疾患を持つ個体ではレベルが正常範囲内にありがちだからである。
【0098】
もう一つの予想外の結果は、本発明のPTHペプチドの長期投与による骨肉腫形成の発生がないことである。先行技術のForteo(登録商標)は、その包装に、Forteo(登録商標)がラットで骨肉腫の発生率の増加を引き起こしたという警告ラベルを含んでいる。このラベルは、骨肉腫のベースラインリスクが高い患者にはForteo(登録商標)を処方すべきでないと警告している。これに対し、本発明のPTHペプチドの長期使用による骨肉腫発生のリスクはごくわずかである。本PTHペプチドによる骨肉腫の発生がないか少ないのは、PTH(1−34)と比べて配列が異なりシグナリングが異なることに基づくのかもしれない。本発明のPTHペプチドの投与では最小限に抑えられるホスホリパーゼ−Cおよび下流のプロテインキナーゼC活性が、骨芽細胞成長に関与しているのかもしれない。
【0099】
本発明のPTHペプチドによるもう一つの予想外の結果は、高カルシウム血症が発生していないかどうか知るために、これらのペプチドを投与されている患者の血清カルシウムレベルを監視する必要がないことである。先行技術のForteo(登録商標)を投与されている患者の血清カルシウムレベルは、処置の過程において、血液検体および/または尿検体によって監視される。Forteo(登録商標)の添付文書は、Forteo(登録商標)の投与が「高カルシウム血症を悪化させる」かもしれないと警告している。血中に多量のカルシウム(高カルシウム血症)を持つ患者、骨がんまたは他の骨障害を持つ患者には、Forteo(登録商標)の使用は推奨されない。これに対して、本発明のPTHペプチドの投与では、Forteo(登録商標)の投与と比較して高カルシウム血症の発生率が低くなる。したがって、本発明のPTHペプチドの投与では、カルシウムモニタリングは必要ないだろう。
【0100】
(医薬組成物/製剤、投薬および投与)
本発明の方法および組成物には、一連のPTHペプチドアナログ化合物を使用することができる。一般に、PTHペプチドアナログの好ましい実施形態として、投与した場合に、低下したホスホリパーゼ−C活性、低下した骨吸収、および低下した高カルシウム血症レベルをもたらすものが挙げられる。本明細書の定義の項で定義したとおり、「低下したホスホリパーゼ−C活性」とは、完全長PTHペプチドまたは少なくとも34アミノ酸残基である他のPTHペプチドアナログと比較して惹起するホスホリパーゼ−Cの活性化が完全でなくなるように、トランケートされたまたは何らかの形で修飾されたPTHペプチドアナログを指し;「低下した骨吸収」とは、完全長PTHペプチドまたは少なくとも34アミノ酸残基である他のPTHペプチドアナログと比較して惹起する骨吸収が少なくなるように、トランケートされたまたは何らかの形で修飾されたPTHペプチドアナログを指し;そして「低下した高カルシウム血レベル」とは、完全長PTHペプチドまたは少なくとも34アミノ酸残基である他のPTHペプチドアナログと比較して惹起する高カルシウム血症の発生率が低くなるようにまたは惹起する高カルシウム血症の重症度が低くなるように、トランケートされたまたは何らかの形で修飾されたPTHペプチドアナログを指す。
【0101】
本明細書に記載する方法で投与される好ましいPTHアナログとして、[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−31)−NH、例えばZelos Therapeutics,Inc.がOSTABOLIN−CTMという商品名で推進しているもの、およびPTH−(1−31)−NH、例えばZelos Therapeutics,Inc.がOSTABOLINTMという商品名で推進しているものが挙げられる。本発明のもう一つの実施形態では、本明細書に記載する方法において[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−30)−NHを使用する。もう一つの実施形態では、ホルモンが線状アナログPTH(1−31)であり、そのC末端は、遊離のカルボキシル終末を持つか、アミド化することができる。さらにもう一つの実施形態では、ホルモンが、PTH(1−30)(そのC末端は、遊離のカルボキシル終末を持つか、アミド化することができる)または[Leu27]−PTH(1−30)−NHである。本方法で使用することができるPTHペプチドアナログの適切な安定化された溶液は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,556,940号;同第5,955,425号;同第6,541,450号;同第6,316,410号;および同第6,110,892号に記述されている。
【0102】
(投薬量)
本発明で使用されるPTHペプチドアナログの有効量は、処方されたレジメンに従って投与した時に望ましい利益または治療効果を与えるであろう量である。PTHアナログの有効量の限定でない例として、約2μg/日〜約60μ/日、好ましくは約5μg/日〜約40μ/日、より好ましくは約10μ/日〜約20μ/日の範囲、さらに好ましくは5、10、15、20、25、30、または35μg/日を挙げることができる。さらなる好ましい投薬量として、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40μg/日が挙げられる。PTHアナログの有効量のさらなる例として、約14μg/週〜約420μg/週、好ましくは約35μg/週〜約280μg/週、より好ましくは約70μg/週〜約140μg/週の範囲、さらに好ましくは35、70、105、140、175、205、または245μg/週を挙げることができる。これらの投薬量を、毎日、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、または7日ごと(1回/週)に投与することができる。これらの投薬量は、生物学的利用率に合わせて補正することもできる。用量は使用するPTHペプチドの分子量を考慮してmmolの単位で測定することもできる。
【0103】
PTHアナログの有効血漿中濃度が得られるように用量を選択することもできる。PTHペプチドアナログの有効最大血漿中濃度の例として、約10pg/mL〜約400pg/mL、好ましくは約20pg/mL〜約300pg/mL;約50pg/mL〜約280pg/mL;約80pg/mL〜約250pg/mL;約100pg/mL〜約150pg/mLの範囲を挙げることができる。PTHペプチドアナログの最高血漿中濃度に関する他の適切な投薬量範囲として、20〜40pg/mL、40〜60pg/mL、60〜80pg/mL、80〜100pg/mL、100〜120pg/mL、120〜140pg/mL、140〜160pg/mL、160〜180pg/mL、180〜200pg/mL、200〜230pg/mL、230〜260pg/mL、260〜300pg/mL、300〜350pg/mL、および350〜400pg/mLが挙げられる。
【0104】
本発明のもう一つの具体的実施形態では、血漿中ペプチド濃度対時間曲線における曲線下面積(本明細書ではこれを「AUC」という)の値が5pg・時/mL〜400pg・時/mLの範囲になるような有効量で、ペプチドを投与する。より好ましくは、AUCは、10pg・時/mL〜350pg・時/mLの範囲にある。より好ましくは、AUCは、20pg・時/mL〜300pg・時/mLmの範囲にある。より好ましくは、AUCは、50pg・時/mL〜250pg・時/mLの範囲にある。より好ましくは、AUCは、70pg・時/mL〜200pg・時/mLの範囲にある。より好ましくは、AUCは、90pg・時/mL〜150pg・時/mLの範囲にある。さらに好ましくは、AUCは、95pg・時/mL〜125pg・時/mLの範囲にある。AUCの他の適切な範囲は、5pg・時/mL〜20pg・時/mL、20pg・時/mL〜50pg・時/mL、50pg・時/mL〜70pg・時/mL、70pg・時/mL〜90pg・時/mL、90pg・時/mL〜100pg・時/mL、100pg・時/mL〜110pg・時/mL、110pg・時/mL〜120pg・時/mL、120pg・時/mL〜130pg・時/mL、130pg・時/mL〜150pg・時/mL、150pg・時/mL〜175pg・時/mL、175pg・時/mL〜200pg・時/mL、200pg・時/mL〜225pg・時/mL、225pg・時/mL〜250pg・時/mL、250pg・時/mL〜275pg・時/mL、275pg・時/mL〜300pg・時/mL、300〜350pg・時/mL、または350pg・時/mL〜400pg・時/mLである。
【0105】
したがって、一態様として、本発明は、薬学的に許容できる賦形剤、希釈剤、もしくは担体、またはそれらの組み合わせと混合された、2μg〜60μgの1日投薬量範囲または14μg〜420μgの1週投薬量範囲にある治療有効量のPTHペプチドアナログ(このPTHペプチドアナログは低下したホスホリパーゼ−C活性を持ち、かつアデニル酸シクラーゼ活性を維持している)を活性成分として含む医薬製剤を提供する。
【0106】
(投与経路)
本発明のPTHペプチドアナログの投与には、直接的投与(自己投与を含む)と、間接的投与(薬物を処方する行為を含む)の両方が包含される。例えば、本明細書においては、ある薬物を自己投与するように患者に指示する医師および/またはある薬物の処方せんを患者に与える医師は、その薬物をその患者に投与していることになる。
【0107】
経口投与、局所、経皮投与、鼻腔投与、肺投与、経皮膚(transpercutaneous)投与(この場合は皮膚が機械的手段またはエネルギー的手段によって破壊されている)、直腸投与、口腔投与、膣投与、植込み型リザバーによる投与、または非経口投与など、さまざまな投与経路を、本発明に従って使用することができる。非経口には、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、関節内、滑液包内、胸骨内、髄腔内、肝内、病変内および頭蓋内注射または注入技法が包含される。より好ましくは、投与経路は皮下投与である。
【0108】
(製剤)
副甲状腺ホルモンの安定化された溶液は、安定剤、緩衝剤、保存剤、抗細菌剤などを含むことができる。溶液または組成物に組み入れられる安定剤として、ポリオール、例えば糖類、好ましくは、グルコース、トレハロース、ラフィノース、またはスクロースなどの単糖または二糖;例えばマンニトール、ソルビトールまたはイノシトールなどの糖アルコール、およびグリセリンまたはプロピレングリコールなどの多価アルコール、またはそれらの混合物が挙げられる。好ましいポリオールはマンニトールまたはプロピレングリコールである。ポリオールの濃度は、総溶液の約1〜約20重量%、好ましくは約3〜10重量%の範囲でありうる。
【0109】
本発明の溶液または組成物に使用される緩衝剤は、薬学的に許容できる任意の酸または塩の組み合わせであることができる。有用な緩衝系は、例えば酢酸イオン、酒石酸イオンまたはクエン酸イオン源である。好ましい緩衝系は酢酸イオンまたは酒石酸イオン源であり、最も好ましいのは酢酸イオン源である。緩衝剤の濃度は、約2mM〜約500mM、好ましくは約2mM〜100mMでありうる。
【0110】
本発明の安定化された溶液または組成物は、非経口的に許容できる保存剤も含みうる。そのような保存剤として、例えばクレゾール、ベンジルアルコール、フェノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロロブタノール、フェニルエチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、チメロサールならびに硝酸フェニル水銀および酢酸フェニル水銀が挙げられる。好ましい保存剤はm−クレゾールまたはベンジルアルコールであり;最も好ましい保存剤はm−クレゾールである。使用する保存剤の量は、溶液全体の約0.1〜約2重量%、好ましくは約0.3〜約1.0重量%の範囲でありうる。
【0111】
副甲状腺ホルモン組成物は、所望であれば、選択した副甲状腺ホルモン、上述の緩衝剤および安定剤を混合することによって調製した滅菌水性ホルモン溶液の凍結乾燥によって得られる2重量%を超える水を含有しない粉末の形態で提供することができる。凍結乾燥粉末を製造する際に緩衝剤としてとりわけ有用なのは、酒石酸イオン源である。とりわけ有用な安定剤として、グリシン、スクロース、トレハロースおよびラフィノースが挙げられる。
【0112】
また、タンパク質を非経口投与用に安定化し可溶化する目的で当技術分野で使用される典型的な緩衝剤および賦形剤を使用して、副甲状腺ホルモンを製剤することもできる。当技術分野で認識されている医薬担体およびそれらの製剤は、Martin「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第15版;Mack Publishing Co.、イーストン(1975)に記述されている。
【0113】
PTHペプチドアナログは、都合のよい任意の経路による投与、例えば経口投与(舌下投与を含む)、局所、経皮投与(貼付剤、軟膏(ointment)、クリーム剤、ゲル剤、軟膏剤(salve)などによる投与など、皮膚を通した組成物の経皮吸収を含む)、鼻内投与、直腸投与、または肺送達のための乾燥粉末、エアロゾル、もしくはミストとしての吸入投与に適した組成物に、製剤することもできる。
【0114】
そのような形態の本発明化合物は、エアロゾルを作り出すためのまたは乾燥粉末医薬品を投与するための従来の手段により、例えば定量吸入器、鼻噴霧器、乾燥粉末吸入器、ジェット噴霧器、または超音波噴霧器などの装置を使用して投与することができる。そのような装置は、適宜、開口部の周りに適合した吸い口を含んでもよい。しかし本発明は、PTHペプチドアナログを全身的または局所的に利用できるようにするあらゆる形態の投与を包含すると理解すべきである。
【0115】
本発明に関して「肺」は、外部環境とのガス交換をその主要機能とする部分、組織または器官に本明細書に記載の製剤を投与することという通常の意味に加えて、気道に付随する組織または空洞、特に洞も包含するものとする。肺投与には、活性剤を含有するエアロゾル製剤、手動ポンプスプレー、噴霧器または加圧定量吸入器ならびに乾燥粉末製剤が考えられる。このタイプの適切な製剤は、本願の化合物を有効なエアロゾルとして維持するために、帯電防止剤などの他の薬剤も含むことができる。
【0116】
エアロゾルを送達するための薬物送達装置は、記載の医薬エアロゾル製剤を含有するメータリングバルブ付きの適切なエアロゾルキャニスターと、そのキャニスターを保持し薬物送達を可能にするように適合させたアクチュエータハウジングとを含む。薬物送達装置中のキャニスターは、キャニスターの総体積の約15%を超える体積に相当するヘッドスペースを持つ。多くの場合、肺送達用のポリマーが、溶液、界面活性剤および噴射剤の混合物に溶解、懸濁または乳化される。その混合物は、メータリングバルブで密封されたキャニスターに加圧状態で維持される。
【0117】
経口投与可能な組成物は、所望であれば、一つ以上の生理学的に適合する担体および/または賦形剤を含有してもよく、固形または液状であることができる。被験体への鼻内投与には、被験体の鼻道または鼻腔の粘膜に治療有効量のPTHペプチドアナログを投与することが含まれる。鼻投与用の医薬組成物として、例えば鼻噴霧剤、点鼻薬、懸濁剤、ゲル剤、軟膏、クリーム剤、または粉末剤を挙げることができる。
【0118】
本明細書に記載するペプチドの薬学的に許容できる組成物は、本発明の方法に従って使用することができる。本明細書に記載する医薬組成物は、適宜、一つ以上の薬学的に許容できる賦形剤を含むことができる。そのような薬学的に許容できる賦形剤は当技術分野では周知であり、例えば塩類(硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカおよび三ケイ酸マグネシウムなど)、界面活性剤、水溶性ポリマー(ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、ポリアクリレート、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ロウおよびポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマーなど)、保存剤、抗微生物剤、酸化防止剤、凍結保護剤、湿潤剤、粘性剤、張性調整剤、研和剤、吸収促進剤、浸透促進剤、pH調整剤、粘膜付着剤、着色剤、着香剤、希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、共溶媒、緩衝剤(リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウムおよび飽和植物性脂肪酸の部分グリセライド混合物など)、血清タンパク質(ヒト血清アルブミンなど)、イオン交換体およびこれらの賦形剤の組み合わせが挙げられる。
【0119】
本発明の医薬組成物に含まれる賦形剤は、治療的応用にあたってその組成物に予想される投与経路に基づいて選択される。したがって経口、舌、舌下、口腔および口腔内投与用の組成物は、不活性希釈剤または食用可能な担体を使用して、当技術分野で周知の手段により、甚だしい実験を行わなくても製造することができる。組成物は、ゼラチンカプセルに封入するか、錠剤に圧縮することができる。治療的経口投与には、本発明の医薬組成物を賦形剤と共に組み入れて、錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、オブラート、チューイングガムなどの形態で使用することができる。
【0120】
錠剤、丸剤およびカプセル剤などの固体剤形は、一つ以上の結合剤、充填剤、懸濁化剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味剤、着香剤、保存剤、緩衝剤、湿潤剤、崩壊剤、発泡剤、および他の賦形剤も含有することができる。そのような賦形剤は当技術分野では知られている。充填剤の例は、ラクトース一水和物、ラクトース無水物、および種々のデンプンである。結合剤の例は、種々のセルロースおよび架橋ポリビニルピロリドン、微結晶セルロース、ならびにケイ酸化微結晶セルロース(SMCC)である。適切な潤滑剤(圧縮される粉末の流動性に作用する薬剤を含む)は、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、およびシリカゲルである。甘味剤の例は、任意の天然または人工甘味剤、例えばスクロース、キシリトール、サッカリンナトリウム、チクロ、アスパルテーム、およびアセスルファムKである。着香剤の例はバブルガムフレーバー、フルーツフレーバーなどである。保存剤の例は、ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸およびその塩、パラヒドロキシ安息香酸の他のエステル、例えばブチルパラベン、エチルアルコールもしくはベンジルアルコールなどのアルコール、フェノールなどのフェノール化合物、または塩化ベンザルコニウムなどの4級化合物である。適切な希釈剤として、薬学的に許容できる不活性充填剤、例えば微結晶セルロース、ラクトース、第二リン酸カルシウム、糖類、および/または前記の任意の混合物が挙げられる。希釈剤の例として、微結晶セルロース、ラクトース、例えばラクトース一水和物、ラクトース無水物、第二リン酸カルシウム、マンニトール、デンプン、ソルビトール、スクロースおよびグルコースが挙げられる。
【0121】
適切な崩壊剤として、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、および加工デンプン、クロスポビドン、グリコール酸デンプンナトリウム、およびそれらの混合物が挙げられる。発泡剤の例は、発泡性カップル、例えば有機酸と炭酸塩または重炭酸塩である。適切な有機酸として、例えばクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、コハク酸、およびアルギン酸、ならびに同無水物および酸塩が挙げられる。適切な炭酸塩および重炭酸塩として、例えば炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸グリシンナトリウム、炭酸L−リジン、および炭酸アルギニンが挙げられる。あるいは、発泡性カップルの酸構成要素だけが存在してもよい。
【0122】
他のさまざまな材料がコーティングとして、または投薬単位の物理的形態を修飾するために、存在しうる。例えば錠剤は、シェラック、糖または両方でコーティングすることができる。シロップ剤またはエリキシル剤は、活性成分の他に、甘味剤としてのスクロース、保存剤としてメチルパラベンおよびプロピルパラベン、色素およびチェリーフレーバーまたはオレンジフレーバーなどの着香剤などを含有しうる。
【0123】
本組成物は、例えば錠剤、コート錠、カプセル剤、口中錠、水性または油性懸濁剤、溶液剤、エマルション、シロップ剤、エリキシル剤、および水または他の適切な液体ビヒクルで使用前に再構成するのに適した乾燥品などといった、任意の好都合な形態をとることができる。本組成物は、有利には、投与単位形で製造することができる。本発明の錠剤およびカプセル剤は、所望であれば、従来の成分、例えば結合剤、例えばシロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガカントまたはポリビニル−ピロリドン;充填剤、例えばラクトース、糖、トウモロコシデンプン、リン酸カルシウム、ソルビトールまたはグリシン;潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコールまたはシリカ;崩壊剤、例えばバレイショデンプン;または許容できる湿潤剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムを含有することができる。錠剤は、当技術分野で周知の方法に従ってコーティングすることができる。
【0124】
液体組成物は、従来の添加剤、例えば懸濁化剤、例えばソルビトールシロップ、メチルセルロース、グルコース/糖シロップ、ゼラチン、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲルまたは水素化食用脂;乳化剤、例えばレシチン、ソルビタンモノオレートまたはアラビアゴム;食用油を含んでもよい非水性ビヒクル、例えば植物油、例えば落花生油、アーモンド油、分画ヤシ油、魚肝油、油状エステル、例えばポリソルベート80、プロピレングリコール、またはエチルアルコール;および保存剤、例えばp−ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはプロピルまたはソルビン酸を含有することができる。液体組成物は、投与単位形の物品を得るために、例えばゼラチンに都合よく封入することができる。
【0125】
経口送達用製剤は、PTHペプチドアナログが大腸に送達されるように、遅延放出製剤として製剤することができる。遅延放出製剤は当技術分野ではよく知られており、例えば遅延放出カプセル剤または時限丸剤、浸透圧送達カプセル剤などが挙げられる。
【0126】
非経口投与用の組成物は、注射可能な液状担体、例えば滅菌パイロジェンフリー水、滅菌ペルオキシドフリーオレイン酸エチル、脱水アルコールもしくはプロピレングリコールまたは脱水アルコール/プロピレングリコール混合物を使用して製剤することができ、静脈内、腹腔内、皮下または筋肉内に注射することができる。滅菌注射可能溶液は、必要量の活性化合物を、適当な溶媒に、必要に応じて上に列挙したさまざまな他の成分と共に組み入れた後、滅菌濾過することによって製造される。一般に、懸濁液は、基礎分散媒と上に列挙したものから選ばれる必要な他の成分とを含有する滅菌ビヒクルに、さまざまな滅菌活性成分を組み入れることによって製造される。滅菌注射可能溶液を製造するための滅菌粉末の場合、好ましい製造方法は、減圧乾燥および凍結乾燥技法であり、これにより、活性成分と任意の所望する追加成分との粉末が、前もって滅菌濾過したその溶液から得られる。
【0127】
直腸投与用の組成物は、従来の坐剤基材、例えばカカオ脂または他のグリセリドを使用して製剤することができる。
【0128】
局所投与用の組成物として、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、ローション剤、シャンプー、塗料、粉末剤(噴霧粉末剤を含む)、ペッサリー、タンポン、噴霧剤、浸液、エアロゾル、ポアオン剤および滴剤が挙げられる。活性成分は、例えば、適宜、親水性または疎水性基剤中に製剤することができる。
【0129】
貯蔵寿命を延ばすために、アスコルビン酸、ブチル化ヒドロキシアニソールまたはヒドロキノンなどの酸化防止剤を本発明の組成物に組み入れると有益であるかもしれない。
【0130】
(投薬レジメン)
本発明の投与は1回以上のサイクルからなりうる。これらのサイクル中に、1期間以上の破骨細胞活動および骨芽細胞活動が起こり、破骨細胞活動も骨芽細胞活動もない期間も1期間以上あるだろう。あるいは、投与は中断のないレジメンで行うこともでき、そのようなレジメンは長期レジメン、例えば永続的レジメンであってもよい
本発明による組成物の投薬量および投与の継続期間が、個々の被験体の要求に依存して変動することは理解されるだろう。正確な投薬レジメンは、担当の医師または獣医により、なかんずく体重、年齢および症状(症状がある場合)などの因子を考慮して、決定されるだろう。組成物は、所望であれば、さらなる活性成分を一つ以上含んでもよい。
【0131】
投薬レジメン中、ホルモンは定期的に(例えば毎日1回以上または毎週1回以上)、間欠的に(例えば1日または1週間の間に不定期に)、または周期的に(例えば数日間または数週間は定期的に投与した後、投与なしの期間をおく)投与することができる。定期的投与として、1日1回、2日ごとに1回、3日ごとに1回、4日ごとに1回、5日ごとに1回、6日ごとに1回、または7日ごとに1回(週1回)を挙げることができる。好ましくは、骨粗鬆症患者に、3ヶ月から最長3年の期間に対して、PTHを1〜7日間にわたって1日1回投与する。もう一つの実施形態では、PTHを8日以上投与する。本発明は、PTHが1週間ごとに投与される実施形態も包含する。
【0132】
周期的投与として、好ましくは、少なくとも2骨リモデリング周期にわたって副甲状腺ホルモンを投与し、少なくとも1骨リモデリング周期にわたって副甲状腺ホルモンを休薬することが挙げられる。周期的投与のもう一つの好ましいレジメンとして、副甲状腺ホルモンを少なくとも約12〜約24ヶ月間投与し、副甲状腺ホルモンを少なくとも6ヶ月間休薬することが挙げられる。典型的には、副甲状腺ホルモンの投与の利益が、投与期間後も持続する。数ヶ月間の投与の利益は、追加投与なしで、1年もしくは2年またはそれ以上も持続しうる。
【0133】
所望により、PTHペプチドアナログ化合物は、他の活性成分、例えば骨強化剤と同時に、または逐次的に投与することができる。これらの活性成分として、例えば、骨リモデリング周期と相互作用する能力を持つおよび/または骨折修復に役立つ他の医薬品または組成物を挙げることができる。そのような医薬品または組成物は、上述のように、例えば変形性関節症または骨粗鬆症の処置に使用されるものであることができる。
【0134】
さらにもう一つの態様として、本発明は、骨関連疾患、特に骨粗鬆症を処置または予防する方法であって、その必要がある哺乳動物(ヒトを含む)に、(a)有効量のPTHペプチドアナログを約6〜24ヶ月間投与し、(b)PTHの投与を停止した後、有効量の骨吸収阻害剤を約12〜36ヶ月間投与する方法を提供する。骨吸収阻害剤は、ビスホスホネート、例えばアレンドロネート;またはエストロゲン様作用を持つ物質、例えばエストロゲン;または選択的エストロゲン受容体モジュレーター、例えばラロキシフェン、タモキシフェン、ドロロキシフェン、トレミフェン、イドキシフェン、もしくはレボルメロキシフェン;またはカルシトニン様物質、例えばカルシトニン;またはビタミンDアナログ;またはカルシウム塩であることができる。
【0135】
ヒトに投与する場合、その調製物は、FDAが要求する滅菌性、発熱性、一般安全性および純度の規準を満たすべきである。
【0136】
(キット)
本発明は、本医薬組成物を含むキットであって、本発明の方法と共に使用されるものも包含する。このキットはバイアル(例えば乾燥型または液体型の本発明の製剤および適切な担体を含有するもの)を含むことができる。このキットはさらに、バイアル上のラベルの形態および/またはバイアルが梱包されている箱に含まれる添付文書の形態をした、本化合物の使用および投与に関する注意書きも含む。注意書きは、バイアルの梱包に使用される箱の上に印刷することもできる。注意書きには、当業者がその薬物を投与することができるように十分な投薬量および投与情報などの情報が含まれる。当業者には、その薬物を投与する可能性のある医師、看護師、もしくは技術者、またはその医薬組成物を自己投与する可能性のある患者が包含されると考えられる。
【0137】
1つの実施形態では、キットが、本明細書に記載する医薬組成物の1日量を約60日分保持する能力を持つバイアルまたはカートリッジを含有するカートリッジアセンブリを収容する医薬品送達ペン(medication delivery pen)を含む。さらなる実施形態では、そのペンが、本明細書に記載の医薬組成物の1日量を1、2、3、4、5、6、7、または8週間分保持する能力を持つ。好ましい実施形態では、ペンが、本明細書に記載する医薬組成物の1日量を2または4週間分保持する能力を持つ。そのような装置は、本明細書に記載する医薬組成物の自己投与に、使いやすさを与える。
【0138】
さらにもう一つの実施形態では、カートリッジが、液体型の医薬組成物または注射前に使用者によって再構成される凍結乾燥形態を含有することができる。医薬品送達ペン、そのための液体型または凍結乾燥形態医薬投与製剤を保持するカートリッジアセンブリ、および注射可能な組成物を凍結乾燥し密封する方法が、米国特許第5,334,162号;同第6,053,893号;および同第6,648,859号(その教示内容は参照により本明細書に組み入れられる)から明らかなように、当技術分野で知られていることは、医薬分野の当業者には理解されるだろう。
【0139】
以下の実施例は本発明の例示であって、限定を意図するものではない。
【実施例】
【0140】
(実施例1)
[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−hPTH−(1−31)−NHの合成および精製
このペプチドは、26番目および22番目をそれぞれLys−AllocおよびGlu−OA11で置き換えて、米国特許第5,955,425号(その教示内容は参照により本明細書に組み入れられる)に記述されているように合成し、精製した。Fmoc−Ser17の付加後に、ペプチド−樹脂をカラムから反応バイアル(Minivial、Applied Science)に取り出し、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.24mmol)、5%酢酸および2.5%N−メチルモルホリン(NMM)のジクロロメタン(DCM)溶液1.7mLにアルゴン下で懸濁した後、20℃で6時間振とうすることにより、アリルおよびalloc保護基を除去した(参照により本明細書に組み入れられるSole,N.A.ら(1993)Peptides:Chemistry、Structure,and Biology、Smith,J.およびHodges,R.編、ESCOMの93−94頁)。次に、ペプチド樹脂をDMF(50mL)中の0.5%ジエチルジチオカルバメート(DEDT)、0.5%NMMで洗浄し、次にDMF(50mL)およびDCM(50mL)で洗浄した。2mLのDMF中、0.06mmolの1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)/0.12mmol NMMと共に、20℃で14時間振とうすることにより、ペプチド(0.06mmol)を環化した(Carpino,L.A.(1993)J.Am.Chem.Soc.115、4397−4398)。次にペプチド樹脂を濾過し、DMFで1回洗浄し、カラムに再充填し、懸濁液から気泡が取り除かれるまで、DMFで洗浄した。N末端Fmoc基を除去しなかった点以外は、上記線状対応物と同様にして、残りの合成を行った。Fmocペプチドを上述のリエージェントK(reagent K)によって樹脂から切り離した。上記線状対応物と同様にHPLCを行い、最終HPLC前にFmoc基を除去した。
【0141】
本方法で使用することができる他の適切な安定化された溶液は、米国特許第5,556,940号;同第5,955,425号;同第6,541,450号;同第6,316、410号;および同第6,110,892号(その教示は、参照により、本明細書に組み入れられる)に記述されているように合成し、精製することができる。
【0142】
(実施例2)
[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−hPTH−(1−31)−NHはサルモデルにおいて海綿骨と皮質骨の両方で成長を促進する。
【0143】
ペプチド[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−hPTH−(1−31)−NH Ostabolin−CTMを、性腺が完全なカニクイザル(4匹/性別/群)に、0、2、10および25μg/kgの用量レベルで52週間にわたって皮下注射により、毎日投与した。サルは処置開始時に30〜40月齢(2.3〜3.5kg)だった。安楽死の15日前および5日前にカルセイングリーンで標識してから、脛骨を組織形態計測用に保持した。DXA(二重エネルギーX線吸収測定法)およびQCT(定量的コンピュータ断層撮影法)によって測定される骨量は、腰椎、大腿骨および脛骨で増加した。脊椎BMD(骨塩密度)の変化は、結果として骨強度の有意な増加につながった。ペプチド[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−hPTH−(1−31)−NHは、全ての用量で、脛骨近位部の海綿骨および皮質内骨コンパートメントにおける骨付着成長を著しく増加させた。脛骨海綿骨体積は、全てのペプチド[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−hPTH−(1−31)−NH処置群で、被験体と比較して50%以上増加し、脛骨骨幹中央部では、皮質幅および相対皮質面積の増加と同時に髄面積の減少が観察された。皮質多孔性には、最も高い2つの用量レベルでわずかな増加が観察されただけだった。骨量の増加は、骨形成の増加および破骨細胞面の有意な減少によって測定される骨吸収の減少と関係するようだった。骨形成指標の増加は骨吸収指標の減少(骨吸収マーカーの減少、破骨細胞面積の減少、極小の皮質多孔性)と関連し、これらのイベントのアンカップリング(uncoupling)と合致した。同化作用と抗同化作用のこの組み合わせは、骨粗鬆症の処置に有意義な治療的価値を持ちうる。
【0144】
(実施例3)
前臨床皮質多孔性データ
さまざまな用量のOstabolin Cおよび先行技術PTHs 1−34を使用したサル被験体における皮質骨多孔性の増加に関する比較データを以下に示す。
【0145】
【表1】

【0146】
【表2】

(実施例4)
前臨床毒性データ
以下の表は、先行技術のPTH、1−34、テリパラチド、Forteo(登録商標)がOstabolin−CTMよりも腎毒性が高く、その差はおそらく高カルシウム血状態の差に関連づけられることを示している。以下に示すように、PTH−(1−34)は、サルにおいて、そしておそらくはラットにおいても、石灰化性のネフロパシーを誘発する。NoAELはサルでは確定されなかった。Ostabolin−CTMはサルでのみ腎毒性であり、NoAELが確定された。Ostabolin−CTMはPTH−(1−34)より少なくとも4倍は安全である。
【0147】
【表3】

(実施例5)
OSTABOLIN−CTMの臨床試験
骨塩密度(BMD)が低い閉経後女性におけるOstabolin−CTMの安全性、認容性および効力を調べるために、4ヶ月間の第II相臨床試験を企てた。この試験で得た比較データは、Ostabolin−CTMの使用が、現行の治療法、すなわち1−34 PTH、テリパラチド、Forteo(登録商標)の使用に比して、多くの利点を持つことを示している。臨床プロトコールは、骨塩密度(BMD)が低い閉経後女性におけるOstabolin−CTMの安全性、認容性および効力を調べるための16週間の第II相ランダム化二重盲プラセボ対照並行群間比較用量設定試験である。この試験では、261名の患者に、プラセボおよび4つの活性群が4ヶ月間、連日投与された。活性群には、5、10、20、および30μgの用量のOstabolin−CTMの連日投与が含まれた。Ostabolin−CTMは、充填済み注射器に入れて提供される透明、無色の液体として製剤され、皮下注射(SC)される。被験者は、用量がそれぞれに割り当てられたOstabolin−CTM5、10、20もしくは30μgまたはプラセボである0.1mLの注射液を、16週間にわたり、腹部の四分円を循環しながら、連日、SCに自己投与する。被験者は中等度骨粗鬆症を持つ閉経後女性(少なくとも5年間)だった。
【0148】
この試験の主要エンドポイントには、二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA)によって評価され、ベースライン来診からの変化によって測定される、腰椎での平均BMDの変化が含まれる。ベースライン来診とは、何らかの処理を受ける前の、患者の初診である。二次エンドポイントには、ベースライン来診からの変化によって測定される以下の項目が含まれる:
DEXA:
・平均大腿頸部BMD
・平均転子BMD
・平均総股関節BMD
・平均橈骨BMD(遠位部および骨幹中央部)
・骨塩含量(BMC)
・骨面積
骨形成および吸収マーカー:
・血清オステオカルシン
・血清1型プロコラーゲンアミノ末端プロ−ペプチド(P1NP)
・骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)
・血清C−テロペプチド(CTx)
・血清N−テロペプチド(NTx)
他の測定値:
・外側胸椎、腰椎および左前後股関節放射線写真
・身長。
【0149】
(実施例6)
臨床結果−低用量(5、10、および20μg)Ostabolin−CTMの作用
上記実施例5で述べた1日量5、10、および20μgのOstabolin−CTMの投与は、脊柱、股関節、および手首を含む体内の複数部位で強固な骨同化作用を示し、過去に先行技術PTHの使用で見られた負の作用を付随しない。前例のない橈骨中央部におけるBMDの増加ならびに高カルシウム血症の低い発生率および重症度ゆえに、これらは、非常に魅力的な用量である。
【0150】
図1に示すように、15週間にわたる1日量5、10、または20μgのOstabolin−CTMの投与は腰椎BMDの増加をもたらす。図3、4、および5は、15週間にわたるOstabolin−CTMの投与後の股関節、大腿頸部、および転子BMDの軽度の増加を示している。
【0151】
図6および7は、5、10、および20μgのOstabolin−CTMの連日投与が、皮質骨、特に手首(橈骨遠位部および橈骨骨幹中央部)に対する予想外の正の作用を持つことを示している。5、10、20μgの1日量では骨吸収という負の作用を伴わずに橈骨中央部で統計的に有意な作用があった。歴史的に、PTHは骨吸収を増加させることが知られており、これは、橈骨皮質骨における皮質多孔性を増加させ、BMDを減少させる。Neerら、2001。Neerに記述されているように、先行技術のForteo(登録商標)PTH1−34を投与すると、プラセボと比較して橈骨遠位部および橈骨骨幹中央部におけるBMDの減少(皮質多孔性の増加)が起こった。これに対し、本発明の投薬量および製剤、すなわちOstabolin−CTM5、10、および20μgの投与は、プラセボと比較しても、テリパラチド、Forteo(登録商標)と比較しても、橈骨遠位部および橈骨骨幹中央部における皮質BMDを、意外にも増加させる。これは、3つの活性用量(5、10、20μg)についてプラセボとの統計的有意差を示す前例のない発見である。図8〜13は、本発明のPTHが骨形成マーカーおよび骨吸収マーカーに及ぼす作用を示している。骨形成マーカーには、P1NP、オステオカルシン、およびBSAPが含まれ、骨吸収マーカーには、NTxおよびCTxが含まれる。10および20μgのOstabolin−CTMを投与する場合、骨形成マーカーは、プラセボとの比較で、より大きい変化百分率を持つ。
【0152】
図11〜13の骨吸収マーカーは、Ostabolin−CTM投与後の骨吸収には多少の増加はあるものの、この増加は先行技術のテリパラチド、Forteo(登録商標)PTHの投与後に起こる増加よりも少ないことを示している。
【0153】
1日量5、10、および20μgのOstabolin−CTMは、当技術分野で知られるPTH類と比較して、高カルシウム血症の発生率がはるかに低いことも示された。図14は、用量20μg以下のOstabolin−CTMでは、異常血清カルシウムのパーセントに関して、プラセボと顕著な差がないことを示している。これに対し、テリパラチド、Forteo(登録商標)は、同じような用量ではるかに高い作用を持つことがわかる。Forteo(登録商標)を投与された患者の場合、20μg群被験者の11%、40μg群被験者の28%に、少なくとも1回は高カルシウム血症が見られたのに対し、プラセボ群では2%だった。Neerら、2001。対照的に、低用量の本発明のPTHペプチド(5、10、および20μg)を投与しても、プラセボと比較して高カルシウム血症の発生率に有意な増加は起こらなかった。高カルシウム血症はプラセボ群および20μg用量を投与された群の5%に少なくとも1回は見られ、正味の増加はなかった。これは、20μgの用量で投与されたForteo(登録商標)で見られた11%とは対照的である。
【0154】
したがって、上記の結果は、1日量5、10、および20μgのOstabolin−CTMが、20μgのForteo(登録商標)の投与と比較して多くの利点をもたらすことを示している。予想外の結果には、脊柱および股関節を含むさまざまな部位におけるBMDの増加によって測定される同化的骨成長を保ちつつ、プラセボと比較した、橈骨遠位部および橈骨骨幹中央部における皮質BMDの増加、先行技術PTHよりも少ない骨吸収、ならびに低い高カルシウム血症の発生率および重症度が含まれる。
【0155】
(実施例7)
前臨床結果−高用量(30μg)Ostabolin−CTMの作用
1日量30μgのOstabolin−CTMの投与は、脊柱および股関節を含むさまざまな部位で骨を構築するという予想外の能力を示し、その作用は早く発生し、軽度な高カルシウム血症シグナルしか伴わなかった。これは、先行技術のテリパラチド、Forteo(登録商標)1−34PTHに対する改善である。
【0156】
図1および2は、30μgのOstabolin−CTMが腰椎におけるBMDの増加をもたらすことを示している。図2は、20μgおよび40μgのForteo(登録商標)の投与による腰椎BMDの増加を示している。
【0157】
図3、4および5ならびに下記の表は、1日量30μgのOstabolin−CTMが、股関節、大腿頸部、および転子における骨形成に対して正の作用を持つことを示している。これは、用量30μg、15週間での統計的に有意で臨床上意味のある利益を示す予想外の発見である。下記の表は、股関節、大腿頸部、および転子BMDの変化を表し、少なくとも12ヶ月にわたるテリパラチド、Forteo(登録商標)(20μg)の投与を、15週間でのOstabolin−CTM(30μg)と比較している。後述のように、股関節および転子については、30μgのOstabolin−CTMを投与すると、少なくとも12ヶ月にわたるForteoの投与で得られた結果に似た結果が、15週間で達成された。大腿頸部の場合、Ostabolin−CTMは、より短い期間で、はるかに大きなBMDの増加を示した。
【0158】
【表5】

図8〜13は、本発明のPTHが骨形成マーカーおよび骨吸収マーカーに及ぼす作用を示している。骨形成マーカーにはP1NP、オステオカルシン、およびBSAPが含まれ、骨吸収マーカーにはNTxおよびCTxが含まれる。Ostabolin−CTMを30μgの用量で投与した場合、骨形成マーカーは、プラセボと比較して、より大きな変化百分率を持つ。Ostabolin−CTMを30μgの用量で投与した場合、骨形成マーカーの増加に強固な作用がある。図11〜13の骨吸収マーカーは、Ostabolin−CTMの投与後に骨吸収は多少増加するものの、この増加は、先行技術のテリパラチド、Forteo(登録商標)PTHの投与後に起こるものより少ないことを示している。
【0159】
したがって上記の結果は、1日量30μgのOstabolin−CTMの投与が、用量20μgおよび40μgのrhPTH1−34テリパラチド、Forteo(登録商標)の投与を上回る多くの利点をもたらすことを示している。予想外の結果には、脊柱および股関節におけるBMDの増加と、先行技術PTHよりも少ない骨吸収および低い高カルシウム血症の発生率が含まれる。
【0160】
(実施例8)
Ostabolin−Cの薬物動態(PK)評価
試験のこの部分の目的は、骨塩密度が低い閉経後女性被験者に1日1回皮下(sc)投与した場合の定常状態条件下でのOstabolin−Cの薬物動態を評価することだった。
【0161】
この試験は、閉経後女性被験者での第II相多施設ランダム化二重盲プラセボ対照並行群間比較用量設定試験だった。審査手続きと2週間のプラセボ観察期間の後、16週間にわたって1日1回、プラセボまたはOstabolin−C(5、10、20または30μg)のいずれかを被験者に投与することにした。PKパラメータを決定し、それらを先行試験と比較するために、全ての処置群について、被験者の部分集合からOstabolin−C測定用の血液を採取した。
【0162】
試験の全試験継続期間は22週間だった。これには、2週間のプラセボ観察を伴う6週間の審査期間と、その後16週間の処置が含まれる。試験のこの構成部分については、被験者の部分集合を、ベースライン時および第12週時での追加の採血を除いて、他の全ての被験者と同様に処置した。
【0163】
試験のこの構成部分については、ベースライン来診時および第12週来診時、投与の15分、30分、1時間、2時間、4時間、6時間および24時間後に、追加の血液試料をリチウム−ヘパリン含有チューブ中に集めた。6時間試料採取と24時間試料採取の間は、被験者を帰宅させ、戻ってこさせた。検証済みのELISAアッセイを使用してOstabolin−C含量の分析を行うために、血漿試料を凍結し、以下の試験所に輸送した。
Covance Laboratories Limited
イングランドHG3 1PY
ノースヨークシャー
ハロゲート、モトリーロード。
【0164】
ELISA
分析物:Ostabolin−C
・定量限界:10.0pg/mL
・試料分析較正曲線範囲:5.0pg/mL〜800pg/mL
・LoQC(50.00pg/mL)のラン間CV(精密度):7.9%
・LoQC(50.00pg/mL)のラン間公称百分率(正確度):115.8%。
【0165】
データの取扱いおよびPK分析
Cavanceによって提供された生データを、「生データ」と題する下記の表に示す。
【0166】
アッセイ検出レベル(すなわち10pg/mL)未満の値については、PKパラメータを見積るためにその値をゼロに設定した。
【0167】
プラセボ被験者から得られたデータは1点(ベースライン2時間時点)を除いて全て、アッセイの検出レベル(すなわち10pg/mL)未満だった。極めて限られた例外を除いて、治験前にプラセボ被験者から得られた値も全て検出レベル未満だった。したがって、この1つの値は検査誤差であるとみなし、このプラセボ被験者についてのPKパラメータは計算しなかった。
【0168】
ベースライン時にも第12週時にも投与前の試料を取得しなかった。全ての先行試験では、処置前値が検出レベル未満であり、40μg以下の用量では24時間時点で検出レベル未満だった。したがって、観察可能な値は予想されず、PKの計算には、ベースライン来診時の処置前値をゼロに設定した。
【0169】
第12週時の投与前についても、先行試験に基づいて値は検出レベル未満だろうと予想され、投与後24時間値によってこれが証明されるだろうと予想された。検出レベルを上回る24時間時点値は、被験者030−003のベースラインにおける投与後24時間および被験者030−0004の第12週における投与後24時間の2点だけだった。これら24時間時点の値はどちらも、アッセイの検出レベルをわずかに上回っていた。また、これらの被験者はどちらも、前日の投与後の4時間時点および6時間時点の両方で、検出レベル未満の値を持っていた。したがってこれらの値は、おそらくアーチファクトであり、真の値ではないだろう。第12週では被験者032−0001について有効な24時間試料が得られなかった。しかし、第12週時の投与後6時間時点は検出レベル未満だったので、24時間での値も検出レベル未満であると仮定して、AUC(0−24)値を見積った。したがって、PKパラメータを計算するために、第12週についての投与前値もゼロに設定した。
【0170】
ベースライン時および第12週時に見積った薬物動態パラメータは以下のとおりである:
・時刻0から時刻4時間までの薬物濃度−時間曲線下面積(AUC(0−4)
・時刻0から時刻24時間までの薬物濃度−時間曲線下面積(AUC(0−24)
・最高観測薬物濃度(Cmax
・最高薬物濃度の時刻(Tmax)。
【0171】
被験者のこの部分集合に含まれる被験者が非常に少なく、収集に使用した時点が限られていたので、他のPKパラメータは計算しなかった。
【0172】
AUC値は、各期間から台形面積の単純な和によって見積った。各用量群からのデータは、Excel(登録商標)スプレッドシート上で簡単な統計、すなわち平均(AVG)および標準偏差(STD)を使用して要約した。特に低用量と、それに伴う低血中レベル、ならびに後期の時点では、アッセイの検出限界のすぐ上の値とすぐ下の値が、AUC計算に不相応な影響を持ちうることに注意すべきである。これは計算される数字の変動性を増加させる。
【0173】
PK値
以下の表に見積られたPKパラメータを要約する。
【0174】
【表6】

試験のこの部分に実際に参加した被験者が非常に少なく、Cmax、TmaxおよびAUCの値もベースライン時と第12週時で極めて似ているようだったことから、全ての時刻に関する値を平均して、これらのパラメータのもう一つの推定値を得た。下記の表を参照されたい。この用量範囲を含む過去2回の第1相試験では、ベースラインおよび定常状態動態が平衡に達している第7日で、類似するPK値が見られている。
【0175】
【表7】

注−被験者032−0001については有効な24時間試料が得られなかったが、6時間時点は検出レベル未満だったため、24時間での値も検出レベル未満であると仮定して、AUC(0−24)値を見積った。
【0176】
【表8】

注:N=被験者の数;ベースラインのデータと第12週のデータの組み合わせ。各被験者は各パラメータについて二つの値を持った。
【0177】
maxは、この試験でも過去の試験でも、用量非依存的であるらしいことから、ベースライン時および第12週時に決定されたこの試験における全ての用量でのTmaxを平均して、全推定値0.34時間およびSTD0.21時間を得た。
【0178】
考察
この試験に関与した被験者数は極めて限られていることから、この試験でのデータから導き出される結論の統計的信頼性には限界がある。しかしデータは基本的には先行試験と合致している。
【0179】
先行試験に見られたように、蓄積を示す証拠はなかった。12週間投与した後のPKパラメータはベースライン時の1日目のそれと非常に似ていた。
【0180】
Tmaxは用量非依存的であり、全ての用量および時刻から算出される全平均は0.34時間(srd=0.21時間)だった。
【0181】
Cmax値およびAUC値は用量と共に増加した。平均データではCmax値およびAUVC値との大まかな用量関係がある。
【0182】
【表9】

【0183】
【表10】

【0184】
【表11】

【0185】
【表12】

(実施例9)
腎性骨異栄養症の処置
末期腎疾患は常に、腎性骨異栄養症(ROD)と呼ばれる骨疾患と関連する(病理発生の説明についてはPrimer on Metabolic Bone Diseases and Disorders of Mineral Metabolismの第74章を参照されたい)。RODは、高い循環PTHレベル(続発性副甲状腺機能亢進症)および過活動骨組織を特徴とする高代謝回転型として存在しうる。この状態は、しばしば骨痛、筋力低下、骨格外石灰化ならびに小児における奇形および成長遅延に関連する。これらの問題を処置するにはPTHレベルの低下が必要であると考えられる。この疾患の低代謝回転型は、低回転骨疾患とも呼ばれ、正常なまたは低い循環PTHレベルを特徴とし、続発性副甲状腺機能亢進を効果的に制御するための治療薬、例えばビタミンDステロール類、カルシウム系リン酸塩結合剤およびカルシミメティック薬などの使用が増加しているため、その発生率が増加している。組織学的には、骨表面は静止状態にあり、骨芽細胞の細胞活動はほとんどまたは全くない。この組織学的状態の臨床的帰結には、骨折リスクの増加および思春期前小児における成長遅延が含まれる。
【0186】
低回転骨疾患は現在のところ処置が困難である。副甲状腺ホルモンの使用は禁忌である。副甲状腺ホルモンレベルを低下させることは、低回転型疾患につながる治療法の重要な目標の一つだからである。高カルシウム血症は、現行の治療戦略に頻発する合併症であり、これは外来PTHの使用によって悪化しうる。したがって、この状況では正常なレベルの骨形成活性の修復を達成することが難しく、有効な治療は必要とされながらも、まだ対処されていない。環化または線状PTH(1−31)アナログによって例示される(ただし、より小さいサイズの他の環状または線状アナログおよびPTHrPのアナログも含まれる)PTH受容体のアゴニストは、骨形成を増加させるが、他のPTHフラグメントおよび天然のホルモンでみられる骨吸収を刺激する傾向を持たない。このタイプのPTH受容体アゴニストは、骨芽細胞機能および骨形成を刺激することができ、したがって高カルシウム血症のリスクを悪化させずに低回転骨疾患を有効に処置することができるだろう。低用量のこれらの薬剤の使用は、最小の骨吸収刺激活性で正常な骨芽細胞活性の修復をもたらすための低回転骨疾患の予防および処置において、とりわけ有用だろう。このタイプのPTH受容体アゴニストを、カルシミメティック薬、ビタミンDステロール類、または低回転骨疾患の発生率および/または重症度を増加させることが知られている他の薬剤と併用することで、この発生または悪化が予防される特異的処置シナリオを作り出すことができるだろう。
【0187】
PTH受容体アゴニストは、低回転骨疾患の発生を予防するために、低回転骨疾患を発症するリスクが増加している透析患者に使用することができる。上述したタイプのPTH受容体アゴニストは、低回転骨疾患による骨折のリスクが特に高い骨粗鬆症および腎疾患を持つ患者を処置するためにも使用することができるだろう。
【0188】
(実施例10)
ラット腫瘍原性試験
先行技術のPTH類は、2年間にわたって投与すると、動物に骨肉腫を引き起こす。Ostabolin−CTMおよびPTH1−30を含む本発明のPTHペプチドを、0.5、5、30、および50μg/kg/日の用量で、ラットに104週間、皮下投与する。試験物は皮下投与する。腫瘍の発生率および形態を分析することにより、2年間にわたって本発明のPTHペプチドを投与した場合に、先行技術PTHペプチドを同じような期間にわたって投与した場合と比較して、骨肉腫の発生率は低くなることが、示されるだろう。この差は、アミノ酸配列が異なることおよび/またはPTH分子によって活性化されるシグナリング経路が異なることによるのかもしれない。
【0189】
(実施例11)
OSTABOLIN−CとFORTEOの比較
下記の表は、Ostabolin−Cデータと、Dealら(2005)J.Bone Min.Res.20、1905−1991頁から得たForteoデータとの比較を例示している。以下に示すように、20μgのOstabolin−Cによる骨吸収刺激は、LS−BMDに対する作用が類似しているにもかかわらず、20μgのForteoに予想される作用の約50%である。20μgのOstabolin−Cが血清カルシウムおよび高カルシウム血症の発生率に及ぼす作用はどちらも減少する。30μgのOstabolin−Cが骨形成およびBMDに及ぼす作用は、骨吸収およびカルシウムに対する作用は類似しているにもかかわらず、20μgのForteoの作用より大きい。20μgおよび30μgのOstabolin−Cはどちらも、Forteoと比較して、改善された治療域を持つ。これらの結果を図15、16、および17にも示す。
【0190】
【表13】

LS−BMD Tスコア<−2.5の部分集合からのデータ
Dealら、J.Bone Min.Res.20、1905−1991頁に記載のグラフ化されたデータから推量
本発明を、その好ましい実施形態に関して詳しく示し説明したが、本願請求項によって包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細にさまざまな変更を加えうることは、当業者には理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0191】
【図1】[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−31)−NHを含有する医薬製剤を投与された中等度骨粗鬆症を持つ患者における腰椎骨塩密度(BMD)の変化百分率を表す棒グラフである。
【図2】hPTH−(1−34)テリパラチド、Forteo(登録商標)を含有する医薬製剤を投与された中等度骨粗鬆症を持つ患者における腰椎骨塩密度(BMD)の変化百分率を表すグラフである。
【図3】[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−31)−NHを含有する医薬製剤を投与された中等度骨粗鬆症を持つ患者における総股関節骨塩密度(BMD)の変化百分率を表す棒グラフである。
【図4】[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−31)−NHを含有する医薬製剤を投与された中等度骨粗鬆症を持つ患者における大腿頸部骨塩密度(BMD)の変化百分率を表す棒グラフである。
【図5】[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−31)−NHを含有する医薬製剤を投与された中等度骨粗鬆症を持つ患者における転子骨塩密度(BMD)の変化百分率を表す棒グラフである。
【図6】[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−31)−NHを含有する医薬製剤を投与された中等度骨粗鬆症を持つ患者における橈骨遠位部骨塩密度(BMD)の変化百分率を表す棒グラフである。
【図7】[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−31)−NHを含有する医薬製剤を投与された中等度骨粗鬆症を持つ患者における橈骨骨幹中央部骨塩密度(BMD)の変化百分率を表す棒グラフである。
【図8】[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−31)−NHを含有する医薬製剤を投与された中等度骨粗鬆症を持つ患者における骨形成マーカー、I型プロコラーゲンのアミノ末端プロペプチド(P1NP)の変化百分率を表す棒グラフである。
【図9】[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−31)−NHを含有する医薬製剤を投与された中等度骨粗鬆症を持つ患者における骨形成マーカー、オステオカルシンの変化百分率を表す棒グラフである。
【図10】[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−31)−NHを含有する医薬製剤を投与された中等度骨粗鬆症を持つ患者における骨形成マーカー、骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)の変化百分率を表す棒グラフである。
【図11】[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−31)−NHを含有する医薬製剤を投与された中等度骨粗鬆症を持つ患者における骨吸収マーカー、N−テロペプチド(NTx)の変化百分率を表す棒グラフである。
【図12】[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−31)−NHを含有する医薬製剤を投与された中等度骨粗鬆症を持つ患者における骨吸収マーカー、C−末端テロペプチド(CTx)の変化百分率を表す棒グラフである。
【図13】rhPTH−(1−34)、テリパラチド、Forteo(登録商標)を含有する医薬製剤を投与された中等度骨粗鬆症を持つ患者における骨形成マーカーおよび骨吸収マーカーの変化百分率を表すグラフである。
【図14】[Leu27]シクロ[Glu22−Lys26]−PTH−(1−31)−NHを含有する医薬製剤を投与された中等度骨粗鬆症を持つ患者における異常血清カルシウムレベルの百分率を表す棒グラフである。
【図15】Dealら(2005)J.Bone Min.Res.20、1905−1991頁から得たForteoデータを表すスライドである。
【図16】Ostabolin−CおよびForteoの有効性を表すスライドである。
【図17】Ostabolin−CおよびForteoの有効性を表すスライドである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨粗鬆症を処置するための方法であって、処置を必要とする被験体に、副甲状腺ホルモン(PTH)ペプチドアナログを含む薬学的に許容できる製剤を、2μg〜60μgの1日量で、投与することを含み、該PTHペプチドアナログが低下したホスホリパーゼ−C活性を持ち、かつアデニル酸シクラーゼ活性を維持する、方法。
【請求項2】
前記ヒト被験体が男性または女性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記女性が閉経後である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記骨粗鬆症が進行期骨粗鬆症;性腺機能低下性骨粗鬆症;脊椎骨粗鬆症;移植誘発性骨粗鬆症、およびステロイド誘発性骨粗鬆症からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
補助ビタミンDが同時に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
補助カルシウムが同時に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
補助ビタミンDおよび補助カルシウムが同時に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記PTHペプチドアナログが、PTH−(1−31)ペプチドアナログおよびPTH−(1−30)ペプチドアナログからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記PTHペプチドアナログが、PTH−(1−31)NH2;PTH−(1−30)NH2;PTH−(1−29)NH2;PTH−(1−28)NH2;Leu27PTH−(1−31)NH2;Leu27PTH−(1−30)NH2;Leu27PTH−(1−29)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2 Ostabolin−CTM;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−34)NH2;Leu27シクロ(Lys26−Asp30)PTH−(1−34)NH2;シクロ(Lys27−Asp30)PTH−(1−34)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2;Ala27またはNle27またはTyr27またはIle27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−32)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)OH;Leu27シクロ(26−30)PTH−(1−31)NH2;Cys22Cys26Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2;Cys22Cys26Leu27シクロ(26−30)PTH−(1−31)NH2;シクロ(27−30)PTH−(1−31)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−30)NH2;シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2;シクロ(22−26)PTH−(1−30)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−29)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−28)NH2;Glu17,Leu27シクロ(13−17)(22−26)PTH−(1−28)NH2;およびGlu17,Leu27シクロ(13−17)(22−26)PTH−(1−31)NH2からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記処置が、骨塩密度を増加させ、脊椎骨折および非脊椎骨折のリスクを低下させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記PTHペプチドアナログの1日量が、5μg、10μg、15μg、20μg、25μg、および30μgからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記投与されるhPTHペプチドアナログの1日量が、10〜400pg/mL、20〜300pg/mL、50〜280pg/mL、80〜250pg/mL、および100〜150pg/mLからなる群より選択される該ペプチドの最高血漿中濃度をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記投与が経口、局所、肺、経皮、鼻内、経皮膚、非経口注射および皮下注射からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記PTHペプチドアナログが骨形成を誘発し、34アミノ酸残基長以上のPTHペプチドを投与した後の骨吸収レベルより低い骨吸収レベルをもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
骨吸収が骨吸収マーカーのレベルによって測定される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記骨吸収マーカーがC−末端テロペプチド(CTx)、N−テロペプチド(NTx)、ピリジノリン、デオキシピリジノリン、ならびに尿デオキシピリジノリン(尿DPD)からなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記骨形成が骨形成マーカーのレベルによって測定される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記骨形成マーカーが、オステオカルシン、I型プロコラーゲンのアミノ末端プロペプチド(P1NP)、および骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
骨形成が増加し、血清カルシウムレベルの任意の増加がベースラインから1%〜25%未満の変化である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
骨折を処置するための方法であって、処置を必要とする被験体に、副甲状腺ホルモン(PTH)ペプチドアナログを含む薬学的に許容できる製剤を、2μg〜60μgの1日量で投与することを含み、該PTHペプチドアナログが低下したホスホリパーゼ−C活性を持ち、かつアデニル酸シクラーゼ活性を維持する、方法。
【請求項21】
前記骨折が股関節、前腕、上腕骨、手首、橈骨、脛骨、大腿骨、足首、肋骨、および足からなる群より選択される部位で起こる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記被験体が骨粗鬆症または他の骨変性疾患を持つ、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記PTHペプチドアナログがPTH−(1−31)ペプチドアナログおよびPTH−(1−30)ペプチドアナログからなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記PTHペプチドアナログがPTH−(1−31)NH2;PTH−(1−30)NH2;PTH−(1−29)NH2;PTH−(1−28)NH2;Leu27PTH−(1−31)NH2;Leu27PTH−(1−30)NH2;Leu27PTH−(1−29)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2 Ostabolin−CTM;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−34)NH2;Leu27シクロ(Lys26−Asp30)PTH−(1−34)NH2;シクロ(Lys27−Asp30)PTH−(1−34)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2;Ala27またはNle27またはTyr27またはIle27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−32)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)OH;Leu27シクロ(26−30)PTH−(1−31)NH2;Cys22Cys26Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2;Cys22Cys26Leu27シクロ(26−30)PTH−(1−31)NH2;シクロ(27−30)PTH−(1−31)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−30)NH2;シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2;シクロ(22−26)PTH−(1−30)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−29)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−28)NH2;Glu17,Leu27シクロ(13−17)(22−26)PTH−(1−28)NH2;およびGlu17,Leu27シクロ(13−17)(22−26)PTH−(1−31)NH2からなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記骨折が脊椎骨折または非脊椎骨折のいずれかである、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記PTHペプチドアナログの1日量が5μg、10μg、15μg、20μg、25μg、および30μgからなる群より選択される請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記投与されるhPTHペプチドアナログの1日量が10〜400pg/mL、20〜300pg/mL、50〜280pg/mL、80〜250pg/mL、および100〜150pg/mLからなる群より選択される該ペプチドの最高血漿中濃度をもたらす、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記投与が経口、局所、肺、経皮、鼻内、経皮膚、非経口注射または皮下注射である、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
前記PTHペプチドアナログが、骨形成を誘発し、34アミノ酸残基長以上のPTHペプチドを投与した後の骨吸収レベルより低い骨吸収レベルをもたらす、請求項20に記載の方法。
【請求項30】
骨吸収が骨吸収マーカーのレベルによって測定される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記骨吸収マーカーがC−末端テロペプチド(CTx)およびN−テロペプチド(NTx)、ピリジノリン、デオキシピリジノリン、ならびに尿デオキシピリジノリン(尿DPD)を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記骨形成が骨形成マーカーのレベルによって測定される、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記骨形成マーカーがオステオカルシン、I型プロコラーゲンのアミノ末端プロペプチド(P1NP)、および骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
骨形成が増加し、血清カルシウムレベルの任意の増加がベースラインから1%〜25%未満の変化である、請求項20に記載の方法。
【請求項35】
海綿骨および皮質骨における骨形成を誘発する方法であって、誘発を必要がある被験体に、副甲状腺ホルモン(PTH)ペプチドアナログを含む薬学的に許容できる製剤を、2μg〜60μgの1日量で投与することを含み、該PTHペプチドアナログが低下したホスホリパーゼ−C活性を持ち、かつアデニル酸シクラーゼ活性を維持する、方法。
【請求項36】
前記骨形成が脊柱、頭骨、肋骨、股関節、脛骨、腓骨(fibia)、大腿骨、上腕骨、足首、および手首からなる群より選択される部位で起こる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記被験体が骨粗鬆症または他の骨変性疾患を持つ、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記PTHペプチドアナログがPTH−(1−31)ペプチドアナログおよびPTH−(1−30)ペプチドアナログからなる群より選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記PTHペプチドアナログがPTH−(1−31)NH2;PTH−(1−30)NH2;PTH−(1−29)NH2;PTH−(1−28)NH2;Leu27PTH−(1−31)NH2;Leu27PTH−(1−30)NH2;Leu27PTH−(1−29)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2 Ostabolin−CTM;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−34)NH2;Leu27シクロ(Lys26−Asp30)PTH−(1−34)NH2;シクロ(Lys27−Asp30)PTH−(1−34)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2;Ala27またはNle27またはTyr27またはIle27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−32)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)OH;Leu27シクロ(26−30)PTH−(1−31)NH2;Cys22Cys26Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2;Cys22Cys26Leu27シクロ(26−30)PTH−(1−31)NH2;シクロ(27−30)PTH−(1−31)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−30)NH2;シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2;シクロ(22−26)PTH−(1−30)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−29)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−28)NH2;Glu17,Leu27シクロ(13−17)(22−26)PTH−(1−28)NH2;およびGlu17,Leu27シクロ(13−17)(22−26)PTH−(1−31)NH2からなる群より選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記骨形成が脊椎骨または非脊椎骨のものである、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記PTHペプチドアナログの1日量が5μg、10μg、15μg、20μg、25μg、および30μgからなる群より選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
前記PTHペプチドアナログの1日量が5μgであり、前記患者の血清カルシウムレベルの任意の増加がベースラインレベルから10%未満の変化である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記PTHペプチドアナログの1日量が10μgであり、前記患者の血清カルシウムレベルの任意の増加がベースラインレベルから5%未満の変化である、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記PTHペプチドアナログの1日量が20μgであり、前記患者の血清カルシウムレベルの任意の増加がベースラインレベルから3%未満の変化である、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記PTHペプチドアナログの1日量が30μgであり、前記患者の血清カルシウムレベルの任意の増加がベースラインレベルから25%未満の変化である、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記PTHペプチドアナログの1日量が2〜20μgであり、前記被験体における皮質骨形成のレベルがベースラインから50%〜150%増加する、請求項35に記載の方法。
【請求項47】
前記PTHペプチドアナログの1日量が20〜40μgであり、前記被験体における海綿骨形成のレベルがベースラインから50%〜150%増加する、請求項35に記載の方法。
【請求項48】
前記投与されるPTHペプチドアナログの1日量が10〜400pg/mL、20〜300pg/mL、50〜280pg/mL、80〜250pg/mL、および100〜150pg/mLからなる群より選択される該ペプチドの最高血漿中濃度をもたらす、請求項35に記載の方法。
【請求項49】
前記投与が経口、局所、肺、経皮、鼻内、経皮膚、非経口注射または皮下注射である、請求項35に記載の方法。
【請求項50】
前記PTHペプチドアナログが骨形成を誘発し、34アミノ酸残基長以上のPTHペプチドを投与した後の骨吸収レベルより低い骨吸収レベルをもたらす、請求項35に記載の方法。
【請求項51】
骨吸収が骨吸収マーカーのレベルによって測定される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記骨吸収マーカーがC−末端テロペプチド(CTx)およびN−テロペプチド(NTx)、ピリジノリン、デオキシピリジノリン、ならびに尿デオキシピリジノリン(尿DPD)を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記骨形成が前記骨形成マーカーのレベルによって測定される、請求項35に記載の方法。
【請求項54】
前記骨形成マーカーがオステオカルシン、I型プロコラーゲンのアミノ末端プロペプチド(P1NP)、および骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
腎性骨異栄養症(ROD)および関連障害を処置または予防する方法であって、処置または予防を必要とする被験体に、副甲状腺ホルモン(PTH)ペプチドアナログを含む薬学的に許容できる製剤を、2μg〜60μgの1日量で投与することを含み、該PTHペプチドアナログが低下したホスホリパーゼ−C活性を持ち、かつアデニル酸シクラーゼ活性を維持する、方法。
【請求項56】
前記関連障害が嚢胞性線維性骨炎および低回転骨疾患である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記PTHペプチドアナログがPTH−(1−31)ペプチドアナログおよびPTH−(1−30)ペプチドアナログからなる群より選択される、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記PTHペプチドアナログがPTH−(1−31)NH2;PTH−(1−30)NH2;PTH−(1−29)NH2;PTH−(1−28)NH2;Leu27PTH−(1−31)NH2;Leu27PTH−(1−30)NH2;Leu27PTH−(1−29)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2 Ostabolin−CTM;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−34)NH2;Leu27シクロ(Lys26−Asp30)PTH−(1−34)NH2;シクロ(Lys27−Asp30)PTH−(1−34)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2;Ala27またはNle27またはTyr27またはIle27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−32)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)OH;Leu27シクロ(26−30)PTH−(1−31)NH2;Cys22Cys26Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2;Cys22Cys26Leu27シクロ(26−30)PTH−(1−31)NH2;シクロ(27−30)PTH−(1−31)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−30)NH2;シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2;シクロ(22−26)PTH−(1−30)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−29)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−28)NH2;Glu17,Leu27シクロ(13−17)(22−26)PTH−(1−28)NH2;およびGlu17,Leu27シクロ(13−17)(22−26)PTH−(1−31)NH2からなる群より選択される、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記PTHペプチドアナログの1日量が5μg、10μg、15μg、20μg、25μg、および30μgからなる群より選択される、請求項55に記載の方法。
【請求項60】
前記投与されるPTHペプチドアナログの1日量が10〜400pg/mLの範囲内にある該ペプチドの最高血漿中濃度をもたらす、請求項55に記載の方法。
【請求項61】
前記投与が経口、局所、経皮、鼻内、経皮膚、非経口注射または皮下注射である、請求項55に記載の方法。
【請求項62】
前記PTHペプチドアナログが骨形成を誘発し、34アミノ酸残基長以上のPTHペプチドを投与した後の骨吸収レベルより低い骨吸収レベルをもたらす、請求項55に記載の方法。
【請求項63】
骨吸収が骨吸収マーカーのレベルによって測定される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記骨吸収マーカーがC−末端テロペプチド(CTx)、N−テロペプチド(NTx)、ピリジノリン、デオキシピリジノリン、および尿デオキシピリジノリン(尿DPD)を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記骨形成が前記骨形成マーカーのレベルによって測定される、請求項62に記載の方法。
【請求項66】
前記骨形成マーカーがオステオカルシン、I型プロコラーゲンのアミノ末端プロペプチド(P1NP)、および骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
骨形成が増加し、血清カルシウムレベルの任意の増加がベースラインから1%〜25%未満の変化である、請求項55に記載の方法。
【請求項68】
前記骨形成の増加が脊椎骨または非脊椎骨のいずれかのものである、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
a)2〜60μgの投薬量範囲にある治療有効量の副甲状腺ホルモン(PTH)ペプチドアナログの単位剤形であって、該PTHペプチドアナログが低下したホスホリパーゼ−C活性を持ち、かつアデニル酸シクラーゼ活性を維持する、単位剤形;および
b)薬学的に許容できる賦形剤、希釈剤、もしくは担体、またはその組み合わせ、
を含む医薬製剤。
【請求項70】
前記PTHペプチドアナログが、PTH−(1−31)ペプチドアナログおよびPTH−(1−30)ペプチドアナログからなる群より選択される、請求項69の医薬製剤。
【請求項71】
前記PTHペプチドアナログが、PTH−(1−31)NH2;PTH−(1−30)NH2;PTH−(1−29)NH2;PTH−(1−28)NH2;Leu27PTH−(1−31)NH2;Leu27PTH−(1−30)NH2;Leu27PTH−(1−29)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2 Ostabolin−CTM;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−34)NH2;Leu27シクロ(Lys26−Asp30)PTH−(1−34)NH2;シクロ(Lys27−Asp30)PTH−(1−34)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2;Ala27またはNle27またはTyr27またはIle27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−32)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)OH;Leu27シクロ(26−30)PTH−(1−31)NH2;Cys22Cys26Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2;Cys22Cys26Leu27シクロ(26−30)PTH−(1−31)NH2;シクロ(27−30)PTH−(1−31)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−30)NH2;シクロ(22−26)PTH−(1−31)NH2;シクロ(22−26)PTH−(1−30)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−29)NH2;Leu27シクロ(22−26)PTH−(1−28)NH2;Glu17,Leu27シクロ(13−17)(22−26)PTH−(1−28)NH2;およびGlu17,Leu27シクロ(13−17)(22−26)PTH−(1−31)NH2からなる群より選択される、請求項70の医薬製剤。
【請求項72】
前記単位投薬量が5μg;10μg;15μg、20μg;25μg、および30μgからなる群より選択される、請求項69の医薬製剤。
【請求項73】
前記治療有効量のPTHペプチドアナログが10〜400pg/mL、20〜300pg/mL、50〜280pg/mL、80〜250pg/mL、および100〜150pg/mLからなる群より選択される該ペプチドの最高血漿中濃度をもたらす、請求項69の医薬製剤。
【請求項74】
さらに一つ以上の骨強化剤を含む、請求項69の医薬製剤。
【請求項75】
前記一つ以上の骨強化剤が選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)天然または合成ホルモン;成長因子類;ビタミン類;無機質;イソフラボン類;スタチン薬;骨芽細胞および破骨細胞の表面にある受容体のアゴニストまたはアンタゴニスト;ビスホスホネート;ならびにアナボリック骨剤からなる群より選択される、請求項74の医薬製剤。
【請求項76】
一つ以上の容器に、装置に含有された治療有効量の請求項85の医薬組成物と、使用に関する指示が記載されたラベルまたは添付文書とを含む、骨欠乏障害を処置するためのキット。
【請求項77】
前記医薬組成物が液体として提供され、前記装置が一つ以上の充填済み注射器を含む、請求項76のキット。
【請求項78】
前記装置が、医薬品送達ペンと共に使用するための使い捨て可能なカートリッジアセンブリを含む、請求項76のキット。
【請求項79】
前記医薬組成物が液体または使用前に再構成される凍結乾燥形態で提供される、請求項78のキット。
【請求項80】
前記カートリッジアセンブリが1〜60日分の1日量を保持するための容積を持つ、請求項78のキット。
【請求項81】
骨粗鬆症を処置するために、骨折を処置もしくは予防するために、海綿骨および皮質骨における骨形成を誘発するために、腎性骨異栄養症(ROD)および関連障害を処置もしくは予防するために、または他の任意のPTHの治療的使用のために、請求項69の医薬製剤を、被験体に投薬する方法であって、投与後の該被験体のカルシウムモニタリングを必要としない、方法。
【請求項82】
骨粗鬆症を処置するために、骨折を処置もしくは予防するために、海綿骨および皮質骨における骨形成を誘発するために、腎性骨異栄養症(ROD)および関連障害を処置もしくは予防するために、または他の任意のPTHの治療的使用のために、請求項69の医薬製剤を被験体に投薬する方法であって、該被験体における骨肉腫形成の可能性について該被験体に警告することを必要としない、方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2009−508820(P2009−508820A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530135(P2008−530135)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/034546
【国際公開番号】WO2007/130113
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(508069280)ゼロス セラピューティクス, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】