説明

創傷の診察と治療の方法と創傷の予後の電気マーカをスクリーニングする方法

【課題】人間と動物の目標組織の現在の状態を検査する方法を提供する。
【解決手段】 本発明の方法は、(a)目標組織の領域の電気信号を検出し記録するステップと、前記電気信号は推計信号であり、(b)前記推計信号を、電圧対周波数のスペクトラムに、FFTアルゴリズムを用いて変換するステップと、(c)前記目標組織の得られたFFTレベルのグラフをベースラインのFFTレベルのグラフとを比較するステップと、(d)前記比較結果に基づいて、前記目標組織の現在の状態を決定するステップと、
を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負傷した生物組織(人間の組織を含む)の予後を、この組織内を流れる電流を検出することにより、診断する方法に関する。本発明の方法は、生体の周囲領域の電界を測定し記録し解析する方法に関し、特に、治癒状態(healing condition)、悪化状態(worsening condition)、停滞/停滞状態(stopped condition)の個別の電気プロファイルを特定し決定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気生理学は、生物組織内のイオンの流れを調べる生理学の一分野であり、この電気記録技術を用いて、イオンの流れ及びそれに関連する電位の変化を測定する。この様なイオンの流れを測定するシステムは、Power Lab System があり、AD Instruments社(Sydney,Australia.)から市販されている。
【0003】
細胞外の記録の臨床への応用は、特に、電気脳造影(electroencephalogram)と心拍曲線(elctrocardiogram)とを含む。生物医学信号を理解するためには、信号の種類と、信号の特性と、信号の統計特徴を理解する必要がある。
決定的信号(deteministic signal)は、ある時間間隔に渡り正確に予測可能である。この決定的信号は、数学的モデルで記述することができる。
推計信号或いはランダム信号(stochastic or random singals)は、それに関連するある要素の変化を有する信号であり、正確に予測することはできない。従って、推計信号を記述するには、統計特徴と確率を用いなけらばならない。実際には、生物学信号は、決定的信号成分と推計信号成分の両方を含む。
【0004】
信号振幅の統計値に関し、複数の統計値をランダム信号の中心値として用いる。複数の統計値には、次のものがある。
・平均値:時間で変化する信号の平均振幅値。
・中央値:サンプル中の観測点の半分の値。観測点の半分は中央値よりも小さく他の半分は中央値よりも大きい。中央値は、信号の中心の測定値としてしばしば用いられる。その理由は、アウトライア(異常な値)に反応しないからである。
・モード:最も頻繁に起こる信号の値
・最大振幅と最小振幅:時間間隔における信号の最大値と最小値
・範囲即ちピーク間振幅:信号の最大値と最小値の間の差
【0005】
連続時間信号対離散時間信号に関しては、信号は、独立変数が連続する時は、連続時間信号であり、その為信号は、独立変数X(t)の値の連続として定義される。アナログ信号は連続時間信号である。離散時間信号は、離散した時間のみで規定される。独立変数は、値X(n)の個別の組のみを採る。デジタル信号は、離散時間信号である。
【0006】
離散時間信号は、独立変数が本来的に離散している(例、1日あたりのカロリー摂取量)様な現象を表す。それに対し離散信号は、独立変数が、連続している元となる現象の連続的サンプルを表す。例えばデジタルカメラで撮った画像イメージは、異なる色の個別の(離散した)ピクセルからなる。
【0007】
波形の周波数と振幅を測定するには、沢山の方法がある。最も有名な方法がスペクトラム解析である。あらゆる波形は、異なる波形の和に数学的に分解できるという定理である。これはフーリエ解析とも称する。フーリエ解析は、波形を様々な成分に分解し、各周波数成分の振幅(パワー)を測定する。グラフに表されるものは、パワー(振幅)対周波数である。高速フーリエ変換或いはフーリエ変換を、以下「FFT」とも称する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
創傷の治癒と組織の再モデル化における直流電流(以下「DC」とも称する)の挙動に関する研究は長い歴史があるが、特定の周波数の交流電流(以下「AC」とも称する)の電界についてはあまり研究されてこなかった。
【0009】
特定の周波数が、傷の治癒(例、痛み、細胞代謝、細胞間連絡、骨の成長)に関連するとされる様々な生物経路(biological pathway)で検出されている。しかし適宜の測定ツールが存在しないために、所定の周波数スペクトラムのACの傷への関与の決定的な証拠は存在しない。
更に傷の治癒に対する予後を与える離散電気信号のプロファイルに基づく診断方法も、今日まで医療界では挑戦事項ではなかった。
【0010】
本発明の目的は、治癒状態、悪化状態、停滞状態の間、傷の離散電気プロファイルを特定し規定する診断方法を提供することである。本発明の目的とする方法は、適宜の電気パルス伝搬装置にリンクされ、身体の関連する組織の電界を測定することにより、負傷した組織に適用される電気セラピーをモニタし監視することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施例によれば、人間と動物の目標組織の現在の状態を検査する本発明の方法は、
(a)目標組織の領域の電気信号を検出し記録するステップと、
前記電気信号は推計信号であり、
(b)前記推計信号を、電圧対周波数のスペクトラムに、FFTアルゴリズムを用いて変換するステップと、
(c)前記目標組織の得られたFFTレベルのグラフをベースラインのFFTレベルのグラフとを比較するステップと、
(d)前記比較結果に基づいて、前記目標組織の現在の状態を決定するステップと、
を有する。
【0012】
本発明の一実施例によれば、前記(a)ステップは、AC信号を検出し記録し、前記AC信号を時間で変化する電圧として表示することにより行われる。
本発明の一実施例によれば、前記FFTレベルは、0−5000Hzの周波数スペクトラムで実行される
本発明の一実施例によれば、前記FFTレベルは、0−3000Hzの周波数スペクトラムで実行される。
本発明の一実施例によれば、前記目標組織は、患者の負傷の領域である。
本発明の一実施例によれば、前記ベースラインは、健康な負傷のない対象物のFFTレベルで行われる。
【0013】
本発明の一実施例によれば、前記ベースラインは、通常の健康な組織のFFTレベルで行われ、前記目標組織のFFTレベルの前記ベースラインのFFTレベルに対する増加量は傷の状態を示す。
本発明の一実施例によれば、前記目標組織の現在の状態は、悪化状態、治癒状態、停滞状態の内のいずれか1つである。
本発明の一実施例によれば、前記目標組織のFFTレベルは、感染により悪化状態にある傷を、治癒状態の傷と停滞状態の傷から区別する。
本発明の一実施例によれば、(e)前記目標組織の得られたFFTレベルのグラフをFFTレベル基準のマーカと比較するステップを更に有する。
本発明の一実施例によれば、前記FFTレベル基準のマーカは、悪化状態、治癒状態、停滞状態の傷を示すよう実行される。
本発明の一実施例によれば、前記FFTレベル基準のマーカは、健康体、悪化状態と診断された慢性創傷の患者、治癒状態の慢性創傷の患者、停滞状態の慢性創傷の患者からそれぞれ検出される平均的FFTレベルのプロファイルで実行される。
本発明の一実施例によれば、(f)前記目標組織の現在の状態に関するデータを、ACを目標組織に流す装置に提供するステップと、(g)AC信号を目標組織に送信するステップと、を更に有する。前記AC信号の所定の周波数スペクトラムは、前記データにより決定される。
【0014】
本発明の一実施例によれば、前記(d)ステップは、前記目標組織の予後を決定するステップを含む。
本発明の一実施例によれば、人間又は動物の傷の予後を決定する方法において、
(a)目標組織の領域の第1電気信号と前記目標組織の反対側の類似の部分である組織の第2電気信号とを検出し記録するステップと、
前記第1と第2の電気信号は推計信号であり、
(b)前記第1と第2の電気信号を、電圧対周波数のスペクトラムに、FFTアルゴリズムを用いて変換するステップと、
(c)前記第1電気信号の得られたFFTレベルのグラフを、ベースラインのFFTレベルのグラフと前記第2電気信号のFFTレベルの一方と比較するステップと、
(d)前記比較結果に基づいて、前記目標組織の予後を決定するステップと、
を有する。
【0015】
本発明の一実施例によれば、人間と動物の目標組織の傷の予後を決める本発明の方法は、
(a)目標組織の領域の電気信号を検出し記録するステップと、
前記電気信号は推計信号であり、
(b)前記推計信号を、電圧対周波数のスペクトラムに、FFTアルゴリズムを用いて変換するステップと、
(c)前記目標組織の得られたFFTレベルのグラフをFFTレベル基準のマーカと比較するステップと、
(d)前記比較結果に基づいて、前記目標組織の現在の状態を決定するステップと、
を有する。
本発明の一実施例によれば、前記FFTレベル基準のマーカは、悪化状態、治癒状態、停滞状態の傷を示すよう実行される。
本発明の一実施例によれば、前記FFTレベル基準のマーカは、健康体、悪化状態と診断された慢性創傷の患者、治癒状態の慢性創傷の患者、停滞状態の慢性創傷の患者からそれぞれ検出される平均的FFTレベルのプロファイルで実行される。
【0016】
本発明の一実施例によれば、目標組織の治療を提供する本発明の電子シミュレータ・システムは、(A)第1構成要素と、(B)第2構成要素とを有する。
前記第1構成要素は、
(a)目標組織の領域の電気信号を検出し記録し、
前記電気信号は推計信号であり、
(b)前記推計信号を、電圧対周波数のスペクトラムに、FFTアルゴリズムを用いて変換し、
(c)前記目標組織の現在の状態に関するデータを生成する為に、得られたFFTレベルを利用し、
前記第2構成要素は、電流を前記組織に流し、前記第1構成要素から、データと前記データにより決定される電流の特性を受領する。
本発明の一実施例によれば、前記特性は、特定の周波数スペクトラムを含む。
本発明の一実施例によれば、前記目標組織に流れる電流は、AC信号である。
【0017】
本発明の一実施例によれば、人間又は動物の悪化状態にある傷の感染の有無を決定する本発明の方法は、
(a)目標組織の領域の第1電気信号と前記目標組織の反対側の類似の部分である組織の第2電気信号とを検出し記録するステップと、
前記第1と第2の電気信号は推計信号であり、
(b)前記第1と第2の電気信号を、電圧対周波数のスペクトラムに、FFTアルゴリズムを用いて変換するステップと、
(c)前記第1電気信号の得られたFFTレベルのグラフを、前記第2電気信号のFFTレベルのグラフと感染のない悪化状態にある傷のFFTレベルの一方と比較するステップと、
(d)前記比較結果に基づいて、前記目標組織の感染の有無を決定するステップと、
を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】創傷の近傍に配置した電極を表す図。
【図2】創傷の近傍に配置した電極と反対側の健康な脚に配置した電極を表す図。
【図3A】健康体の生ベースラインデータのグラフ。 横軸:時間(分) 縦軸:電圧(logV)
【図3B】FFTレベルに変換した後の、図3Aのベースラインデータのグラフ。 横軸:周波数(Hz) 縦軸:振幅(logV:電圧)
【図3C】フィルタ処理した後の図3Bのベースラインデータのグラフ。 横軸:周波数(Hz) 縦軸:振幅(logV:電圧)
【図4】健康体のFFTベースラインのグラフ。 横軸:周波数(Hz) 縦軸:振幅(logV:電圧) 40:健康体の平均的FFT n=46
【図5】健康体のFFTベースラインと、慢性創傷のFFTレベルと、傷のある対象の対向側の非負傷の組織のFFTレベルを表すグラフ。 横軸:周波数(Hz) 縦軸:振幅(logV:電圧) 40:健康体の平均的FFTレベル n=46 50:慢性創傷の平均的FFTレベル n=74 52:慢性創傷の対向側の健康肢の平均的FFT n=74
【図6】健康体のFFTベースラインと、停滞状態にある傷のFFTレベルのグラフ。 横軸:周波数(Hz) 縦軸:振幅(logV:電圧) 40:健康体の平均的FFTレベル n=25 60:停滞状態の創傷の平均的FFTレベル n=14
【図7】健康体のFFTベースラインと、悪化状態にある傷のFFTレベルのグラフ。 横軸:周波数(Hz) 縦軸:振幅(logV:電圧) 40:健康体の平均G5FFTレベル n=25 70:悪化状態の創傷の平均G2FFTレベル n=9
【図8】健康体のFFTベースラインと、治癒状態にある創傷のFFTレベルのグラフ。 横軸:周波数(Hz) 縦軸:振幅(logV:電圧) 40:健康体の平均G5FFTレベル n=25 80:治癒状態の創傷の平均G3FFTレベル n=19
【図9】健康体のFFTベースラインと、停滞状態にある創傷のFFTレベルと、悪化状態にある創傷のFFTレベルと、治癒状態の創傷のFFTレベルのグラフ。 横軸:周波数(Hz) 縦軸:振幅(logV:電圧) 60:健康体の平均G1FFTレベル n=14 70:悪化状態の創傷の平均G2FFTレベル n=9 80:治癒状態の創傷の平均G3FFTレベル n=19 40:健康体の平均G5FFT n=25
【図10】グループ間の統計解析/比較の概要を表すチャート図。
【図11】慢性創傷の周囲のFFTレベルと、感染のない悪化状態の創傷を有する対象物のグループに対する対向する非負傷の組織のFFTレベルのグラフ。
【図12A】慢性創傷の周りのFFTレベルのグラフと、感染により悪化状態にある創傷を有する5つの対象物内の1つの対象物に対する対向する非負傷の組織のFFTレベルのグラフ。
【図12B】慢性創傷の周りのFFTレベルのグラフと、感染により悪化状態にある創傷を有する5つの対象物内の1つの対象物に対する対向する非負傷の組織のFFTレベルのグラフ。
【図12C】慢性創傷の周りのFFTレベルのグラフと、感染により悪化状態にある創傷を有する5つの対象物内の1つの対象物に対する対向する非負傷の組織のFFTレベルのグラフ。
【図12D】慢性創傷の周りのFFTレベルのグラフと、感染により悪化状態にある創傷を有する5つの対象物内の1つの対象物に対する対向する非負傷の組織のFFTレベルのグラフ。
【図12E】慢性創傷の周りのFFTレベルのグラフと、感染により悪化状態にある創傷を有する5つの対象物内の1つの対象物に対する対向する非負傷の組織のFFTレベルのグラフ。
【図13】目標組織の悪化状態の傷が感染しているか否かを決定する本発明の方法のフローチャート図。
【図14】人又は動物の目標組織の現在の状態を検出する本発明の方法のフローチャート図。
【図15】人又は動物の目標組織の創傷の予後を決定する本発明の第1方法のフローチャート図。
【図16】人又は動物の目標組織の創傷の予後を決定する本発明の第2方法のフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
創傷の予後を与えるために、治癒状態、悪化状態、停滞状態の創傷の個別電気プロファイルを特定し規定する診断方法に関する。本発明の方法を図面を参照しながら以下説明する。
【0020】
身体内の電流の流れは、生理学状態(physiological condition)と病理学状態(pathophysiological condition)において、大きな役目を果たす。細胞組織の負傷の間、DCは「傷の電流(current of injury)」としても知られ、傷の周りに発生する。他方、特定周波数のACは、医療分野において、神経の動きと神経の負傷に関与するが、傷にはそれ程関連しない。本発明者らの研究によれば、人間の身体内において、特定の個別のAC信号で、慢性創傷の患者と健康体(健康人)との比較を行った。同じ患者に対し、慢性創傷が存在する負傷部分(肢)と反対側の類似の部分で非負傷の肢(contralateral non injured limb)に対し、ACの測定を同時に行った。この推計信号に対し、周波数スペクトラムに変換するFFTアルゴリズムを実行し、同一の信号パターンが、創傷と患者の身体の両方に存在することを見出した。この個別の(離散した)微細電流信号が、0.5−500Hzの範囲の中で、独自の周波数プロファイルを示す。更にデブリドマン(debridement:壊死組織除去)で誘導される急性傷(acute injury)の状態の間取られた慢性創傷(chronic wound)の電気記録は、1000Hzを超える周波数パターンの瞬間的推計信号を示し、更に同一患者の健康体と急性創傷(acute wound)の周囲に同時に発生する信号が示された。これらの発見により、傷の治癒におけるAC信号の組織的な属性が強調される。これらは、この電気シグナリングが中枢神経系と傷との間の信号の漏れ(cross-talk)にリンクされることを示している。その結果、電気周波数は、創傷の治癒を研究する上で、関連するマーカとして見なされることが見出された。以下、「傷」と「創傷」とは、特に断りのない限り、同意である。
【0021】
創傷の治癒と組織の再モデル化における直流電流(以下「DC」とも称する)の挙動に関する研究は長い歴史があるが、特定の周波数の交流電流(以下「AC」とも称する)の電界については、あまり研究されてこなかった。
【0022】
特定の周波数が、創傷の治癒(例、痛み、細胞代謝、細胞間連絡、骨の成長)に関連するとされる様々な生物経路(biological pathway)で検出されている。しかし適宜の測定ツールが存在しないために、所定の周波数スペクトラムのACが創傷に関与するという決定的な証拠は存在しない。
【0023】
この研究において、本発明者の目的は、特定の周波数成分の振動特性が、人間の傷の付いた組織の周囲に存在するか否かを解明することである。本発明者は、慢性の治癒状態にない傷に隣接する部位で発生する周波数の特定スペクトラムにリンクされるACキュー(AC cues)を特定し、このACキューを急性傷の間検知できるか否かを決定することである。
この目的のために、同一の患者グループにおいて、有傷組織と無傷組織の両方に対し、電気記録を実行した。無傷組織の測定値はコントロール(対照群)として用いた。
【0024】
図1,2に示すように、電気記録を取るために、2つの電極を、有傷組織の医療軸(medical axis)の根本側と先端側の両方に、貼り付け、接地電極(第3電極)に対し信号を測定した。記録されたAC信号の特性を増幅するために、FFTアルゴリズムを用いた。この信号処理アプローチを用いて、0.5−1000Hzのフィルタ内で、振幅(電圧)又は周波数の大きな差を有する離散信号の輪郭を描いた(profile)。
【0025】
電気測定値のベースラインレベルを確立するために、健康体(無傷)を集めて、最小振幅レベル(即ちベースライン)として機能する平均的FFTレベルのグラフを得た。
【0026】
損傷を受けた組織の内因性の電気周波数(endogenous electrical frequency)の役目をテストするために、まず慢性創傷の患者を目標母集団とした。慢性創傷は、治癒の進まないフェーズにあり、組織修復の継続的段階を通して進むことはない。急性の創傷(acute wound)と比較すると、慢性創傷は、生化学的(biochemical)特性、分子(molecular)特性、機構的(mechanistic)特性の観点で、異なる。例えば、メタロプロティアーゼ阻害因子(metalloproteinase inhibitors)の減少レベルで、そして成長ファクターの活性がなくなる点で、異なる。時間と共に劇的に変化する急性傷とは異なり、慢性創傷は、比較的安定し、平均電界のプロフィールの例を提供できると考えられる。慢性創傷の周囲の平均電気測定値は、健康体のベースライン測定値より上で、極めて高い振幅(電圧)を示す。この推計信号は、0.5−500Hzの範囲の平均電気周波数スペクトラムで特徴付けられる。この信号の平均最大電圧(Vmax)は、0.5−50Hzの周波数範囲(環境電気放射とみなされる)で見出される。この信号は、指数関数的に10nVの最低電圧(Vmin)に減少し、これは500Hzで検出される。健康体のベースライングループではこの様な信号が存在しないため、この離散信号が慢性創傷に特有なものであると確認した。
【0027】
傷の周囲で検出される特定の信号が傷の部位に特有のものであることを確認するために、同一の慢性創傷の患者の反対側の健康体上で同様な測定を行った、興味深いことに同一の患者においては、傷の周囲に存在する推計信号の波形は、反対の傷のない部位で記録される信号の周波数スペクトラムと振幅が同一で重なることが、見出された。
その為、慢性創傷の患者で見出される個別の推計信号は、その身体内の組織的なパラメータとして機能すると、推論できる。図4に示すこれらの統計的な重要な結果は、慢性創傷は組織的な属性を有する局部的な組織負傷として研究できる可能性があることを、明らかにした。
【0028】
慢性創傷の周囲の局部的信号と組織的な信号の発生源を調査するためには、どの種類の推計信号が、身体内で如何に生成されるかを見出すことが必要である。「急性の傷の電流」に関する研究はこの電流はある種のDC信号であると主張するが、慢性創傷で認識される推計信号は、この慢性創傷の急性段階で生成される前のAC信号から発生すると推測する。この仮定を見極めるために、外科的な創面切開(debridement)が行われた治療された慢性創傷の患者を集めた。慢性創傷の創面切開手術の診療適合理論は、慢性創傷をその拘束状態から解放することである。これは、生育不能組織、バクテリア、他の阻害因子を取り除き、それを急性創傷に変換することにより行われる。この急性創傷は、効率的に治癒することができる。研究的予測を考慮すると、創面切開手術は、この創面切開手術の前あるいはその間の電気周波数のパターンの動きを評価する優れた例を提供する。この様な場合、有傷部位と健康な部位の両方に急性の傷を付ける前あるいは付けている間の信号の動特性を同時に解析できる。この生成された信号は、ベースライン信号の振幅レベル以上の高い振幅と、慢性創傷の信号より遙かに上の1000Hzを越える周波数スペクトラムを示す、更に本発明者によれば、同一患者の有傷肢と健康肢の両方に対する傷の信号の増加と存在が同時にあるという興味ある結果が見出された。創面切開手術が麻酔なしに行われたことを考慮すると、この急性の傷の間瞬間的に生成する信号を見出すことにより、このシグナリングにおける体性感覚の入力神経或いは出力神経の関与が示される。更に麻酔中の患者(感覚神経の阻止)の予備的な電気的記録は、切開(即ち急性の傷)の間、微弱の振幅(ベースラインレベル近傍)のAC信号が検出され、更に神経の損傷は、急性の傷の間見出されるACシグナリングに関与するということが見出された。
【0029】
中枢神経系に所定の電気周波数が存在することは、医学界で多数論文で発表されているが、これらは、脳の活性度をモニタし研究する基本的なマーカである。創傷に対する研究にもかかわらず、他の周辺の病変例えば組織の負傷における周波数の役目は、あまり研究されてこなかった。本発明者らによる研究結果によれば、身体の抹消の電気生理学の周波数の関連性が明らかとなり、慢性創傷(chronic wound)と急性の傷(acute injury)に関し研究が集中した。これらの実験状況の元では、急性の傷は、慢性創傷の周囲で検出されるよりも遙かに高い振幅と周波数のAC信号を発生する。負傷組織と未負傷組織の両方の、慢性創傷の急性傷の間(during the acute injury of chronic wound)トリガーされる個別の(離散)周波数パターンに関する発見は、報告されているDCの「負傷電流」に関する新たな予見を提供するも。
【0030】
上記の研究成果により、人間と動物の目標組織の現在の状態を検査する本発明の方法が発明された。この本発明の患者の創傷の予後を検出する方法は、目標組織の領域の電気信号を検出し記録する。特に、患者からのACを時間で変化する電圧で表示する。この電気信号は推計信号である。この推計信号を、電圧対周波数のスペクトラムに、FFTアルゴリズムを用いて変換する。FFTグラフは、0−5000Hz、特に0−1000Hzの周波数スペクトラムを含む。
【0031】
傷のサンプルのFFTレベルを、通常サンプル例えば健康体のベースラインのFFTレベルと比較する。通常のサンプルに対しFFTレベルの増加は傷の状態を示す。
その為、本発明の診断方法は、ディスクリートFFTによる診断スケールあるいは診断電気スケールであり、FFTは慢性創傷に特有なものである。これにより、悪化状態の創傷と、治癒状態の創傷と、停滞状態の創傷との間の差を見極めることができる。
【0032】
推計信号は、時間で変動する電圧と表示される信号で、ACの測定装置を用いて検出される。
FFTに変換された推計信号は、周波数対電圧で表示され、FFTレベルは、電圧対周波数のカーブで規定される。
ACプローブは、推計信号を検出するのに用いられる。この推計信号はアルゴリズムによりFFTに変換される。
ACプローブの一例は、創傷の周りに配置される電極、即ち陽極、陰極である。接地基準電極は、対向する健康な肢に配置される。
本発明の予後スケールは、健康体の平均的FFTを、ベールラインの値として用いて、慢性創傷を、悪化状態、治癒状態、停滞状態として定義する。
【0033】
本発明の予後スケールは、健康体、悪化状態の創傷、治癒状態の創傷、停滞状態の創傷から得られた基準マーカを使用して、傷の状態を規定する。
基準マーカは、健康体、悪化状態として診断された慢性創傷の患者、治癒状態として診断された慢性創傷の患者、停滞状態として診断された慢性創傷の患者でそれぞれ検出された平均的FFTプロファイル(レベル)である。
本発明の予後スケールは、AC電流を人間の組織に分配する装置に接続される。その結果、創傷の現在の状態を決定すると、前記装置は、組織に、悪化状態、治癒状態、停滞状態のそれぞれの特定の周波数スペクトラムのACを流す。
【0034】
図1,2は、本発明の電気記録手順を示す。同図において、2個の電極が、傷のある皮膚6の医療軸(medial axis)の先端側と根本側の両方に取り付けられ、電極からの信号を接地電極(図示せず)に対し測定し比較する。同時に比較するために、2個のAC記録装置を用いた、これを図2に示す。一方の装置8は、傷のある肢の周囲に配置され、他方の装置10は、対向する健康肢12に配置され、これをリアルタイムで比較する。装置8は、電気シュミレータシステムであり、目標組織への処置を提供する。この装置8は、第1構成要素と第2構成要素とを有する。
第1構成要素は、目標組織である傷のある皮膚6の領域の周囲の電気信号を検出し記録し、この信号を電圧対周波数のスペクトラムにFFTアルゴリズムを用いて変換し、この得られたFFTレベルを用いて、目標組織の現在の状態の関連するデータを生成し、このデータを第2構成要素に送る。
第2構成要素は、電流を目標組織である傷のある皮膚6に流す。
流された電流の特性は、目標組織の現在の状態に関するデータにより決定される。
【0035】
図3Aは、測定時間の間表示されるAC信号(電圧対時間)は、推計信号(ACキュー)であることを示す。この信号の特性を増幅するために、FFTのアルゴリズムを適用した。この変換により電圧対周波数スペクトラムとして検出された元の信号を、図3Bに表示する。この信号処理アプローチにより、0,5−1000Hzと最大2000Hzのフィルタ内での、振幅(電圧)又は周波数の大きな差を有する個々の信号のプロファイリングが可能となる。FFT(1秒あたり16個のサンプリングレート)のSN比を改善するために、サンプリングレートを1秒あたり1サンプル(1Hz)に減らす。その結果、図3Cに示すように、ノイズの少ない改善された信号となる。
【0036】
患者の電気測定値のベースラインレベルを確立するために、健康体(傷のない肢)に対し行われた測定と平均的FFTが、最小振幅レベル(即ちベースライン)として機能する。図4は、健康体の健康な皮膚で検出された平均周波数スペクトラム(創傷の予後のベースライン)を示す。
【0037】
図5は、健康体のFFTベースラインのグラフ40と、慢性創傷に対するFFTレベル50と、創傷を有する対象の対向する非負傷組織のFFTレベル52を示す。慢性創傷の周囲の平均電流測定値50は、健康体のベースライン測定値40より遙かに高い振幅(電圧)を示す。これらの推計信号は、0,5−1000Hzの範囲内の平均電気周波数スペクトラムで特徴付けられる。この信号の平均最大電圧(Vmax)は、0.5−50Hzの範囲内にある。50Hz周囲の周波数スパイクは、環境電気放射と考えられる。この信号は、指数関数的に、次のような最小電圧(Vmin)迄減少する。即ち慢性創傷のグループにおいて、200Hzから最大1000Hzで検出される10nV(ベースラインカーブ)と、700−1000Hzの範囲内の20nVである。ベースライン上の慢性創傷信号の高いAUC(Area Uuder the Curve)は、この離散信号は慢性創傷に特有なものであることを確認する。
【0038】
比較測定が、同一患者に対し行われた。これは、患者の対向する健康肢に対し類似の手順で行った。同図は、同一の患者に対し、傷の周囲に存在する推計信号の波形は、対向する無傷の器官52上の周波数スペクトラムと振幅で重ね合わすることができる。このことは、慢性創傷の患者で見出される個別の推計信号は、患者の組織的マーカとして機能することを意味する。
【0039】
図6は、健康体の平均的FFTレベル40と、停滞状態の創傷を有する患者のグループの平均的FFTレベル60とを示す。レベル60は、レベル40より大幅に高い振幅を示す。
図7は、健康体の平均的FFTレベル40と、悪化状態の創傷を有する患者のグループの平均的FFTレベル70とを示す。レベル70は、レベル40より大幅に高い振幅を示す。
図8は、健康体の平均的FFTレベル40と、治癒状態の創傷を有する患者のグループの平均的FFTレベル80とを示す。レベル80は、レベル40より大幅に高い振幅を示す。
図9は、図6−8のグラフの比較を示す。具体的には、健康体と、停滞状態60,悪化状態70,治癒状態80の慢性創傷を有する患者に対するFFTレベルを示す。同図は、傷の3種類の予後レベルの間に大きな差があることを示す。悪化状態と治癒状態は、停滞状態以上であり、かつこれらの3つ(悪化状態、治癒状態、停滞状態)は、健康体のベースライン40よりも高い。
【0040】
図10は、各グループの間の統計的な解析と比較を示す。0.0001以下のF値100は、停滞状態104,悪化状態108,治癒状態112の傷の間に、健康体114のベースラインと比較すると、大きな差があることを示す。このチャートは、各グループに対する対向する健康肢102,106,110の平均値は、傷の予後のマーカとして用いることができることを示す。悪化状態108と治癒状態112の平均値は、互いに近いが、対向する健康肢106,110の平均値に対するその関係は、明らかに異なる。
【0041】
図11は、感染が無く悪化状態にある創傷を有するグループに対し、慢性創傷のFFTレベル110と対向する非傷組織のFFTレベル110’を示す。
図12A−12Eは、感染により悪化状態にある傷を有する5人の検査対象に対する慢性創傷の周りのFFTレベル120と、対向する非傷組織のFFTレベル120’を示す。感染なしの悪化状態の状態にある創傷を有するグループ(図11)においては、慢性創傷の周りのFFTレベル110は、対向する無傷組織のFFTレベル110’とほぼ同一であり、慢性創傷の周りのFFTレベルのライン110は、対向する非傷組織110’のFFTレベルのライン110’に重なる。これに対し感染により悪化状態にある傷を有する5人の検査対象に対する慢性創傷のFFTレベル120と対向する非傷組織のFFTレベル120’は、両方とも統計的にも視覚的にも全く異なる。そのため本発明によれば、感染による悪化状態の傷と感染なしの悪化状態の傷との間に明白な差異がある。
【0042】
図13に示すように、人間又は動物の傷の予後を決定する本発明の方法は、以下のステップを有する。
(13−1)目標組織の領域の第1電気信号と前記目標組織の反対側の類似の部分である組織の第2電気信号とを検出し記録するステップと、
前記第1と第2の電気信号は推計信号であり、
(13−2)前記第1と第2の電気信号を、電圧対周波数のスペクトラムに、FFTアルゴリズムを用いて変換するステップと、
(13−3)前記第1電気信号の得られたFFTレベルのグラフを、感染の無い悪化状態にある傷のベースラインのFFTレベルのグラフと前記第2電気信号のFFTレベルの一方と比較するステップと、
(13−4)前記比較結果に基づいて、前記目標組織の予後を決定するステップ。
【0043】
図14に示すように、人間と動物の目標組織の現在の状態を検査する本発明の方法は、以下のステップを含む。
(14−1)目標組織の領域の電気信号を検出し記録するステップと、
前記電気信号は推計信号であり、
(14−2)前記推計信号を、電圧対周波数のスペクトラムに、FFTアルゴリズムを用いて変換するステップと、
(14−3)前記目標組織の得られたFFTレベルのグラフをベースラインのFFTレベルのグラフとを比較するステップと、
(14−4)前記比較結果に基づいて、前記目標組織の現在の状態を決定するステップ
【0044】
図15に示すように、人間又は動物の傷の予後を決定する方法の第1実施例は、以下のステップを含む。
(15−1)目標組織の領域の第1電気信号と前記目標組織の反対側の類似の部分である組織の第2電気信号とを検出し記録するステップと、
前記第1と第2の電気信号は推計信号であり、
(15−2)前記第1と第2の電気信号を、電圧対周波数のスペクトラムに、FFTアルゴリズムを用いて変換するステップと、
(15−3)前記第1電気信号の得られたFFTレベルのグラフを、ベースラインのFFTレベルのグラフと前記第2電気信号のFFTレベルの少なくとも一方と比較するステップと、
(15−4)前記比較結果に基づいて、前記目標組織の現在の状態を決定するステップ
【0045】
図16に示すように、人間と動物の目標組織の傷の予後を決める方法の第2実施例は、以下のステップを含む。
(16−1)目標組織の領域の電気信号を検出し記録するステップと、
前記電気信号は推計信号であり、
(16−2)前記推計信号を、電圧対周波数のスペクトラムに、FFTアルゴリズムを用いて変換するステップと、
(16−3)前記目標組織の得られたFFTレベルのグラフをFFTレベル基準のマーカと比較するステップと、
(16−4)前記比較結果に基づいて、前記目標組織の現在の状態を決定するステップ
【0046】
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するために用いてはならない。また、同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。用語「又は」に関して、例えば「A又はB」は、「Aのみ」、「Bのみ」ならず、「AとBの両方」を選択することも含む。特に記載のない限り、装置又は手段の数は、単数か複数かを問わない。
【符号の説明】
【0047】
2,4 電極
6 傷のある皮膚
8 装置
10
12 対向する健康肢
40 健康体
50,120 慢性創傷
60,104 停滞状態
70,108 悪化状態
80,112 治癒状態
102,106,110 健康肢
114 健康体
110 慢性創傷
110’,120’ 対向する非負傷組織

図13の翻訳
(13−1)目標組織の領域の第1電気信号と前記目標組織の反対側の類似の部分である組織の第2電気信号とを検出し記録するステップと、
前記第1と第2の電気信号は推計信号であり、
(13−2)前記第1と第2の電気信号を、電圧対周波数のスペクトラムに、FFTアルゴリズムを用いて変換するステップと、
(13−3)前記第1電気信号の得られたFFTレベルのグラフを、感染の無い悪化状態にある傷のベースラインのFFTレベルのグラフと前記第2電気信号のFFTレベルの一方と比較するステップと、
(13−4)前記比較結果に基づいて、前記目標組織の予後を決定するステップ。

図14の翻訳
(14−1)目標組織の領域の電気信号を検出し記録する
前記電気信号は推計信号であり、
(14−2)前記推計信号を、電圧対周波数のスペクトラムに、FFTアルゴリズムを用いて変換する
(14−3)前記目標組織の得られたFFTレベルのグラフをベースラインのFFTレベルのグラフとを比較する
(14−4)前記比較結果に基づいて、前記目標組織の現在の状態を決定する

図15の翻訳
(15−1)目標組織の領域の第1電気信号と前記目標組織の反対側の類似の部分である組織の第2電気信号とを検出し記録する
前記第1と第2の電気信号は推計信号であり、
(15−2)前記第1と第2の電気信号を、電圧対周波数のスペクトラムに、FFTアルゴリズムを用いて変換する
(15−3)前記第1電気信号の得られたFFTレベルのグラフを、ベースラインのFFTレベルのグラフと前記第2電気信号のFFTレベルの少なくとも一方と比較する (15−4)前記比較結果に基づいて、前記目標組織の現在の状態を決定する

図16の翻訳
(16−1)目標組織の領域の電気信号を検出し記録する
前記電気信号は推計信号であり、
(16−2)前記推計信号を、電圧対周波数のスペクトラムに、FFTアルゴリズムを用いて変換する
(16−3)前記目標組織の得られたFFTレベルのグラフをFFTレベル基準のマーカと比較する
(16−4)前記比較結果に基づいて、前記目標組織の現在の状態を決定する

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間と動物の目標組織の現在の状態を検査する方法において、
(a)目標組織の領域の電気信号を検出し記録するステップと、
前記電気信号は推計信号であり、
(b)前記推計信号を、電圧対周波数のスペクトラムに、FFTアルゴリズムを用いて変換するステップと、
(c)前記目標組織の得られたFFTレベルのグラフをベースラインのFFTレベルのグラフとを比較するステップと、
(d)前記比較結果に基づいて、前記目標組織の現在の状態を決定するステップと、
を有する
ことを特徴とする人間と動物の目標組織の現在の状態を検査する方法。
【請求項2】
前記(a)ステップは、AC信号を検出し記録し、前記AC信号を時間で変化する電圧として表示することにより行われる
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記FFTレベルは、0−5000Hzの周波数スペクトラムで実行される
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記FFTレベルは、0−3000Hzの周波数スペクトラムで実行される
ことを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記目標組織は、患者の負傷の領域である
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記ベースラインは、健康な負傷のない対象物のFFTレベルで行われる
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記ベースラインは、通常の健康な組織のFFTレベルで行われ、
前記目標組織のFFTレベルの前記ベースラインのFFTレベルに対する増加量は傷の状態を示す
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記目標組織の現在の状態は、悪化状態、治癒状態、停滞状態の内のいずれか1つである
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記目標組織のFFTレベルは、感染により悪化状態にある傷を、治癒状態の傷と停滞状態の傷から区別する
ことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
(e)前記目標組織の得られたFFTレベルのグラフをFFTレベル基準のマーカと比較するステップ
を更に有する
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記FFTレベル基準のマーカは、悪化状態、治癒状態、停滞状態の傷を示すよう実行される
ことを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記FFTレベル基準のマーカは、健康体、悪化状態と診断された慢性創傷の患者、治癒状態の慢性創傷の患者、停滞状態の慢性創傷の患者からそれぞれ検出される平均的FFTレベルのプロファイルで実行される
ことを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項13】
(f)前記目標組織の現在の状態に関するデータを、ACを目標組織に流す装置に提供するステップと、
(g)AC信号を目標組織に送信するステップと、
前記AC信号の所定の周波数スペクトラムは、前記データにより決定され
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記(d)ステップは、前記目標組織の予後を決定するステップを含む
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項15】
人間又は動物の傷の予後を決定する方法において、
(a)目標組織の領域の第1電気信号と前記目標組織の反対側の類似の部分である組織の第2電気信号とを検出し記録するステップと、
前記第1と第2の電気信号は推計信号であり、
(b)前記第1と第2の電気信号を、電圧対周波数のスペクトラムに、FFTアルゴリズムを用いて変換するステップと、
(c)前記第1電気信号の得られたFFTレベルのグラフを、ベースラインのFFTレベルのグラフと前記第2電気信号のFFTレベルの少なくとも一方と比較するステップと、
(d)前記比較結果に基づいて、前記目標組織の予後を決定するステップと、
を有する
ことを特徴とする人間又は動物の傷の予後を決定する方法。
【請求項16】
人間と動物の目標組織の傷の予後を決める方法において、
(a)目標組織の領域の電気信号を検出し記録するステップと、
前記電気信号は推計信号であり、
(b)前記推計信号を、電圧対周波数のスペクトラムに、FFTアルゴリズムを用いて変換するステップと、
(c)前記目標組織の得られたFFTレベルのグラフをFFTレベル基準のマーカと比較するステップと、
(d)前記比較結果に基づいて、前記目標組織の現在の状態を決定するステップと、
を有する
ことを特徴とする人間と動物の目標組織の傷の予後を決める方法。
【請求項17】
前記FFTレベル基準のマーカは、悪化状態、治癒状態、停滞状態の傷を示すよう実行される
ことを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記FFTレベル基準のマーカは、健康体、悪化状態と診断された慢性創傷の患者、治癒状態の慢性創傷の患者、停滞状態の慢性創傷の患者からそれぞれ検出される平均的FFTレベルのプロファイルで実行される
ことを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項19】
目標組織の治療を提供する電子シミュレータ・システムにおいて、
(A)第1構成要素と、
(B)第2構成要素と、
を有し、
前記第1構成要素は、
(a)目標組織の領域の電気信号を検出し記録し、
前記電気信号は推計信号であり、
(b)前記推計信号を、電圧対周波数のスペクトラムに、FFTアルゴリズムを用いて変換し、
(c)前記目標組織の現在の状態に関するデータを生成する為に、得られたFFTレベルを利用し、
前記第2構成要素は、電流を前記組織に流し、前記第1構成要素から、データと前記データにより決定される電流の特性を受領する
ことを特徴とする目標組織の治療を提供する電子シミュレータ・システム。
【請求項20】
前記特性は、特定の周波数スペクトラムを含む
ことを特徴とする請求項16記載の電子シミュレータ・システム。
【請求項21】
前記目標組織に流れる電流は、AC信号である
ことを特徴とする請求項19記載の電子シミュレータ・システム。
【請求項22】
人間又は動物の悪化状態にある傷の感染の有無を決定する方法において、
(a)目標組織の領域の第1電気信号と前記目標組織の反対側の類似の部分である組織の第2電気信号とを検出し記録するステップと、
前記第1と第2の電気信号は推計信号であり、
(b)前記第1と第2の電気信号を、電圧対周波数のスペクトラムに、FFTアルゴリズムを用いて変換するステップと、
(c)前記第1電気信号の得られたFFTレベルのグラフを、前記第2電気信号のFFTレベルのグラフと感染のない悪化状態にある傷のFFTレベルの一方と比較するステップと、
(d)前記比較結果に基づいて、前記目標組織の感染の有無を決定するステップと、
を有する
ことを特徴とする人間又は動物の悪化状態の傷の感染の有無を決定する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図12E】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2012−509732(P2012−509732A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538077(P2011−538077)
【出願日】平成21年10月25日(2009.10.25)
【国際出願番号】PCT/IB2009/054708
【国際公開番号】WO2010/061297
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(511127025)ライフウエーブ エルティディ. (1)
【Fターム(参考)】