創傷治癒のためのリン脂質の使用
本発明は、ヒアルロン酸分泌を誘導することによって創傷を治療するための、リン脂質およびリン脂質を含む医薬組成物を提供する;および、リン脂質を創傷に塗布する工程を含む、創傷を治療する方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創傷治癒に使用するための医薬組成物および創傷の治療方法を提供する。組成物は、リン脂質、特にpumactantとして知られているリン脂質の混合物を含む。
【背景技術】
【0002】
創傷の治癒速度を改善する方法を見出す一般的な必要性が存在する。哺乳類の胎児の組織修復は、一般的な治癒とは、根本的に異なる。大人のヒトにおいては、損傷した組織は、コラーゲンの沈積、コラーゲンのリモデリングおよび最終的な瘢痕化によって修復するのに対して、胎児の創傷治癒は、むしろ、最小限の瘢痕化または瘢痕化をもたらさない再生過程であると考えられている。大人の創傷は、過剰且つ異常に組織化されたコラーゲンからなる瘢痕を用いた正常な真皮の補給によって、治癒する。極めて対照的なことに、胎児の創傷は、持続的に多量のヒアルロン酸(または、ヒアルロナンとして知られている)を含むのに対して、コラーゲンの沈積は迅速であり過剰ではない(Bruce A Mast, M.D., Robert F. Diegelmann, Ph.D., Healing in the Mammalian Foetus, Surg. Gyn. And Ob., Vol. 174, pp. 441-451, May 1992)。
【0003】
知られていることは、ヒアルロン酸が、組織繊維芽細胞の天然の修復能力を利用し操作するのに決定的な役割を有していることと、ヒアルロン酸タンパク質複合体が、in vivoで組織化または瘢痕組織において重要な役割を果たしていることである(D. A. R. Burd, R. M. Greco, S. Regaurer, M. T. Longaker, J. W. Siebert and H. G. Garg, Hyaluronan and Wound Healing: a New Perspective, Journal of Plastic Surgery, 1991, pp. 579-584)。
【0004】
用語ヒアルロン酸には、その誘導体を含み、グルクロン酸およびN-アセチル-D-グルコサミン残基によって構成される、様々な分子量の酸性多糖類の、天然に存在する誘導体、微生物の誘導体および合成誘導体を広く言及する。
【0005】
創傷治癒工程は、羊水中で生じる治癒と比較して、大人では極めて異なる。最初の3日間の間のヒアルロン酸レベルの急激な増加が、大人の創傷治癒を特徴付ける。7日目までには、ヒアルロン酸は、検出できなくなる。
【0006】
胎児の創傷治癒は、最初の3日間のヒアルロン酸レベルの急激な増加によって特徴付けられるが、大人の創傷治癒と異なり、ヒアルロン酸のレベルは、21日間上昇し続ける。これらの知見は、Michael T. Longaker, M.D., Ernie R. Harrison, M.D.およびRobert Stern, M.D.によって実施された研究結果であり、Studies in Foetal Wound Healing: V. A. Prolonged Presence of Hyaluronic Acid Characterizes Foetal Wound Fluid, in Ann. Surg., April 1991, pp. 292-296と名付けられた論文に報告されている。
【非特許文献1】Bruce A Mast, M.D., Robert F. Diegelmann, Ph.D., Healing in the Mammalian Foetus, Surg. Gyn. And Ob., Vol. 174, pp. 441-451, May 1992
【非特許文献2】D. A. R. Burd, R. M. Greco, S. Regaurer, M. T. Longaker, J. W. Siebert and H. G. Garg, Hyaluronan and Wound Healing: a New Perspective, Journal of Plastic Surgery, 1991, pp. 579-584
【非特許文献3】Studies in Foetal Wound Healing: V. A. Prolonged Presence of Hyaluronic Acid Characterizes Foetal Wound Fluid, in Ann. Surg., April 1991, pp. 292-296
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
胎児の治癒条件のように、大人の治癒条件をもたらすことを意図して、ヒアルロン酸を、骨、皮膚潰瘍、切開および創傷に塗布することが知られている。しかしながら、これらの治療は、以前に期待されたほど有用ではなかった。
【0008】
この問題を改善する方法が、求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明により、ヒアルロン酸分泌の誘導によって創傷を治療するためのリン脂質を提供する。
【0010】
本発明により、医薬的に許容可能な希釈剤または担体とともにリン脂質を含む、ヒアルロン酸分泌の誘導によって創傷を治療するための医薬組成物を更に提供する。
【0011】
本発明により、ヒアルロン酸分泌の誘導によって創傷を治療するための医薬の製造における、本発明のリン脂質または医薬組成物の使用も提供する。
【0012】
驚くべきことに、リン脂質を創傷に塗布した場合に、ヒアルロン酸の産生が刺激されることが見出された。いかなる特定の理論に拘束されることを望むわけではなく、リン脂質は、自己のヒアルロン酸の分泌を創傷部位で誘導するので、本発明は有益であると考えられる。対照的な特性を有する多くの様々なヒアルロン酸のタイプが存在するので、本発明は、必ずしも患者に有益でないヒアルロン酸の外部からの塗布よりも、好ましい。本発明においては、創傷部位において、リン脂質を、その特徴がそれぞれの患者に特定であると予想されているヒアルロン酸を産生するために使用する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
リン脂質は、アシル基で置換されたホスファチジル基を有する。アシル基は、一般的に14から22の炭素原子を、好ましくは16から20の炭素原子を有する飽和または不飽和のアシル基を含みうる。好ましくは、リン脂質は、アシル基を経由して、飽和した基であるパルミトイル基C16:0およびステアロイル基C18:0、ならびに/または、不飽和の基であるオレオイル基C18:1およびC18:2を含みうる。ジアシル置換が好ましく、リン脂質は、より具体的には、2つの同一の飽和または不飽和のアシル基、特にジパルミトイル基およびジステアロイル基を含み、またはこのような基が多いリン脂質の混合物、特には、ジパルミトイル基が主要なジアシル成分である混合物である。
【0014】
リン脂質は、場合により、動物誘導性または植物誘導性または合成的に産生のいずれかである。人工的なリン脂質は、一般的に、天然に存在しないリン脂質であると理解されている;好ましくは、動物誘導性タンパク質を含むという危険が存在しない合成リン脂質である。
【0015】
リン脂質は、好ましくは、単一の活性成分として、創傷の治療のために使用される。したがって、本発明による医薬組成物は、好ましくは、治療剤としてリン脂質のみを含む。リン脂質は、好ましくは、コレステロールまたはトリグリセリドを実質的に含まない。
【0016】
動物誘導性リン脂質は、ブタまたはウシの肺のような哺乳類の肺を細かく切断することによって、または、このような肺の洗浄によって、通常の方法で得ることができる。使用することができる動物に由来するリン脂質の例には、細かく切断したブタの肺から産生され、99%のリン脂質および1%のサーファクタントタンパク質からなるCurosurf(Chiesi Farmaceutici);ウシの肺洗浄から得られる化合物であり、90%のリン脂質、約1%のタンパク質、3%のコレステロール、0.5%の遊離脂肪酸およびトリグリセリドを含む他の成分を含むAlveofact(Dr. Karl Thomae, Ltd., Germany);細かく切断したウシの肺の脂質抽出によってによって調製され、約84%のリン脂質、1%のタンパク質、6%の遊離脂肪酸を含むSurvanta(Abbott, Ltd., Germany);ウシの肺洗浄によって調製されるBLES(BLES Biochemicals, Canada);または、ウシの肺洗浄によって産生され、26mg/mlのホスファチジルコリン(PC)、26mg/mlのジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)である35mg/mlのリン脂質、0.65mg/mlのタンパク質および0.26mg/mlの疎水性ペプチドを含むcalfactantとしても知られているInfasurf(Forest Labs)が含まれる。
【0017】
合成リン脂質は、好ましくは、ジアシルホスファチジルコリン(DAPC)、例えばDPPC、ジオレイルホスファチジルコリン(DOPC)もしくはジステアリルホスファチジルコリン(DSPC)、ホスファチジルグリセロール(PG)、PC、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジン酸および/またはリゾリン脂質である。
【0018】
リン脂質は、好ましくは、ジアシルホスファチジルコリンおよびホスファチジルグリセロールの混合物である。ホスファチジルグリセロールは、有利には、ジアシルホスファチジルグリセロールである。ホスファチジルグリセロールのアシル基は、同一でも異なっていても良く、有利には、各脂肪酸アシル基が14から22の炭素原子を有しても良い。実際のところは、ホスファチジルグリセロールコンポーネントは、異なるアシル基を含むホスファチジルグリセロールの混合物としても良い。ホスファチジルグリセロールの脂肪酸アシル基の少なくとも一部分が、不飽和脂肪酸残基、例えば、モノ-またはジ-不飽和C18またはC20脂肪酸残基であることが好ましい。
【0019】
ホスファチジルグリセロールコンポーネントにおける好ましいアシル置換基は、パルミトイル、オレオイル、リノレオイル、リノレノイルおよびアラキドノイルである。リン脂質は、好ましくは、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびホスファチジルグリセロールを含む。
【0020】
リン脂質は、好ましくは、1:9から9:1の、好ましくは6:4から8:2の、より好ましくは約7:3の重量比率の、DPPCおよびPGの混合物である。DPPCは、Baer & Bachrea, Can. J. of Biochem. Physiol 1959, 37, page 953を使用して、グリセリルホスホリルコリンのアシル化によって合成的に調製することができ、そして、Sigma(London)Ltd.から市販されている。PGは、卵のホスファチジルコリンから、Comfurions et al., Biochem. Biophys Acta 1977, 488, page 36-42;およびDawson, Biochem J. 1967, 102, page 205-210の方法によって、または、他のホスファチジルコリン(例えば、大豆レクチン)から調製することができる。
【0021】
クロロホルムなどの一般的な溶媒を用いたDPPCとの共沈殿を行った場合、PGは、DPPCとともに細かな粉末を形成する。好ましくは、リン脂質は、卵のホスファチジルコリンに由来するホスファチジルグリセロールとDPPCとの混合物であり、C16、C18(飽和および不飽和)ならびにC20(不飽和)アシル基が入り混じって置換されたホスファチジル化合物がもたらされる。
【0022】
市販の合成リン脂質製品の例としては、26モル部のDPPC、8モル部のPOPG、5モル部の
PAおよび1モル部のKL-4を含むlucinactantとしても知られているSurfaxin(Discovery Labs);リコンビナントSP-C、DPPC、PGおよびPAを含むlusupultideとしても知られているLung Surfactant Factor LSF(Altana);DPPC(〜84%)、セチルアルコールおよびチロキサポールから構成されるExosurf(GSK, Germany);または、7:3の重量比率のDPPCおよびPGの混合物から構成されるpumactant(Britannia Pharmaceuticals)が含まれ、本発明に使用することができる。
【0023】
リン脂質は、好ましくは、ほぼ体温(治療すべきヒトまたは動物の身体の温度である)と同じまたはより低い融点を有するリン脂質またはリン脂質の混合物である。リン脂質のこのような混合物は、好ましくは、ほぼ体温と同じまたはより低い融点を有するスプレーディングリン脂質(spreading phospholipid)、例えばPG、PE、PSまたはPIを含む。
【0024】
リン脂質は、好ましくは、平方センチメートルの創傷当たり、1から、好ましくは10から、より好ましくは50から1000の、好ましくは800までの、より好ましくは300μgまでの割合で塗布する。
【0025】
リン脂質は、好ましくは、乾燥粉末の形態で塗布する。より一般的には、粉末のリン脂質は、0.5から100μmの、より適切には0.5から20μmの、好ましくは0.5から10μmの粒子サイズを有しうる。リン脂質は、好ましくは、表面活性リン脂質(SAPL)である。
【0026】
リン脂質または本発明の組成物は、好ましくは、上皮または中皮細胞において、ヒアルロン酸分泌を誘導する。
【0027】
本発明により処理すべき創傷は、好ましくは、ヒトまたは動物の身体の表面上の開口部または擦り傷である。処理すべきヒトまたは動物の身体の表面は、内部表面または外部表面のいずかであってもよい。創傷は、好ましくは、身体外傷である。創傷は、内部的または外部的な身体外傷、例えば火傷、事故による切断または非手術的な切断、暴力行為または破壊行為によってもたらされる傷または負傷であってよい。本発明によって処理される内部的な身体外傷は、事故または予期せぬ行為の結果としての負傷によってもたらされる内部的な突発的に生じる身体外傷である。本発明により処理される外部的な身体外傷は、外部的な突発的に生じる身体外傷だけでなく、手術(例えば、皮膚移植のための皮膚の除去によって引き起こされる外傷)によってもたらされる外部的な手術による身体外傷を含む。創傷は、表面の状態が、偶然に、火傷、開口または擦り傷などのように悪化しているヒトまたは動物の身体の表面の部位であってもよい。
【0028】
本発明における創傷の治療は、好ましくは、再上皮細胞化、特にケラチン生成細胞の再上皮細胞化を促進する工程を含む。言い換えれば、リン脂質は、好ましくは、再上皮細胞化を促進することによって、創傷を治療するために使用される。再上皮細胞化とは、上皮細胞または他の表面細胞の再増殖を意味する。更にその上、本発明における創傷の治療は、好ましくは、創傷閉鎖による創傷治癒を促進する。本発明によるリン脂質または医薬組成物は、好ましくは、創傷に局所的に塗布される。
【0029】
本発明による医薬組成物は、医薬的に許容可能な賦形剤を含む。任意の適合可能な賦形剤を使用しえる。賦形剤は、好ましくは水を含まない。担体または賦形剤が液体である場合、好ましくは、非水性である。賦形剤は、好ましくは、界面活性剤を含む。界面活性剤により、体温を超える融点を有するリン脂質を、組成物において使用することが可能となることから、界面活性剤は有用である。より好ましくは、界面活性剤は、医薬的に許容可能な界面活性剤または疎水性タンパク質である。このような剤の例としては、21のアミノ酸の合成ペプチドであるKL-4;非イオン性界面活性剤であるtyloxapol;セチルアルコール(もしくはヘキサデカノール);または、パルミチン酸コレステリルを含む。さらに適した賦形剤は、タンパク質、特に、アポタンパク質Bなどの吸着を改良するタンパク質である。
【0030】
組成物が液体形態で供給される場合、賦形剤は、好ましくは、リン脂質が分散しているまたは溶解している液体担体を含む。液体担体は、一般的に、体温で実質的に非揮発性であるか、または、揮発し難い担体である。適した担体には、生理学的に許容可能なグリコール、特に、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよび/またはグリセロールが含まれる。
【0031】
組成物は、液体、半液体またはペースト形態で提供されてもよい。ペーストは、単純に適した担体中でリン脂質を分散させることによって、または、適切な場合は、加熱した担体中でリン脂質を溶解し、好ましくはペーストを形成する荷重でリン脂質を冷却して粉末として沈殿させることによって、調製することができる。室温で、リン脂質をペーストとしてプロピレングリコール中で分散させることができるが、体温では可動性の溶液が形成されることから、プロピレングリコールは、特に、担体として有効である。また、室温でろう状の固体であり、体温で液体であるポリエチレングリコールを、例えばPEG600などを調製しても良い。プロピレングリコール中のリン脂質の様々な分散物は、米国特許第6133249号に開示されており、その中身全体は、参照によって本願明細書に組み込む。
【0032】
本発明によれば、創傷の治療が必要なヒトまたは動物患者に、治療上有効量のリン脂質を塗布する工程を含む、創傷を治療する方法を更に提供する。リン脂質は、好ましくは、本発明による医薬組成物の形態である。
【0033】
本発明は、以下の図面を参照に例示するが、これら図面は、特許請求の範囲を制限することを意図しない。
【0034】
ここで、本発明を、以下の実施例を参照に例示するが、これら実施例は、特許請求の範囲を制限することを意図しない。
【実施例】
【0035】
(実施例1)
6穴プレートで培養した増殖停止HPMCを、直線状に引っかいて創傷を負わせ、その後、創傷治癒が観察されるまで(96時間)、顕微鏡によって観察した。ウェルの半分を、平方センチメートル当たり500マイクログラムの乾燥したpumactantを用いて処理し、残り半分を、血清フリー状態のままとした(対照)。96時間後、各ウェルから上清を取り出し、遠心分離に供し、分析まで-70℃で保存した。上清を、製造元の取扱説明書に従って、市販のELISAキット(Corgenix Inc.)を使用して、ヒアルロン酸についてアッセイした。図1に示すように、平均的なヒアルロン酸の含量を求め、対照と比較した。
【0036】
驚くべきことに、pumactantが、中皮細胞においてヒアルロン酸の分泌を誘導することを示すことができた。
【0037】
(実施例2)
本実施例においては、pumactantの再中皮細胞化を促進する効果を、有効な中皮細胞創傷治癒モデル(Yung S, Davies M. Response of the human peritoneal mesothelial cell to injury: an in vitro model of peritoneal wound healing. Kidney Int. 1998 Dec; 54(6):2160-9)を使用して試験した。
【0038】
HPMC(腹部の手術を受けた個体患者から培養した一次細胞であるヒト腹膜中皮細胞)を、24穴培養プレートに植えた。血清フリー培地での増殖停止後に、単層を、滅菌したピペットチップを用いて機械的に直線状に引っかくことによって損傷させて、細胞または細胞外マトリクスを欠いた再生可能領域をそのままにした。ウェルを、血清フリー培地で洗浄して、分離した細胞を取り除いた。平方センチメートルの単層当たり、pumactant(500μg)を、乾燥形態で、パルスアプリケーター(SMC Pneumatics, Milton Keynes, UK)を使用してアプライし、血清フリー培地(1ml)を置換した。使用した対照は、血清フリー培地単独または2%(v/v)のFCSを添加した培地であった。各ウェルにおける露出させた領域を、顕微鏡を用いて同定し、その後のデータ収集のために、座標を記録した。
【0039】
再中皮細胞化は、コンピューター制御したXY自動スキャニングステージおよびインキュベーターが内蔵されたAxiovert 100M倒立顕微鏡を使用して、連続的にモニターした。加湿したインキュベーターを、加熱したインサートおよびベクトルエアーフロー(Carl Zeiss, Oberkochen, Germany)を用いて、37℃、5% CO2で維持した。24穴プレートの各ウェルの同じ部位から、Orca C5985デジタルビデオカメラ(Hamamatsu Photonics, Hamamatsu City, Japan)を使用して2.5倍の対物レンズ、60分間隔で、イメージをキャプチャーした。Macintosh G4コンピューターを使用したOpenlab version 3.0.8(Improvision, Ltd., Coventry, UK)を用いて、イメージを分析した。創傷閉鎖が見られるまで、60分間隔で、再中皮細胞化の速度を、露出させた領域の減少を(ピクセルで)測定することによって、計算した。
【0040】
血清フリー対照条件においては、20時間までに、中皮細胞の創傷治癒が完全に行われた(図2に見出すことができる)。乾燥粉体としてアプライしたpumactantを用いて、中皮細胞の治癒が、対照を超えて増した(図3および4に見出すことができる)。それ故、pumactantが、積極的に創傷閉塞を促進することを示すことができた。
【0041】
(実施例3)
本実施例においては、pumactantの、ヒアルロナンシンターゼ(HAS)遺伝子の上方調節に対する効果を調べた。
【0042】
6穴プレートで10%のFCSを加えたM199培地で培養した単層HPMCの増殖を停止させ、十字状に引っかいて創傷を負わせるか、または、何も行わず、その後、ウェルを血清フリー培地で洗浄し、分離した細胞を取り除いた。創傷を負わせた細胞および創傷を負わせなかった細胞の両方を、2つの処理群に分けた。この2つの処理群においては、HPMCを、パルスアプリケーターおよび血清フリー培地を使用して、平方センチメートルの単層当たり乾燥したpumactant(500μg)で、または、血清フリー培地のみのいずれかで処理した。培地を、その後、96時間にわたって観察した。96時間中に、以下の時点:0、6、12、24、48および96時間で、2つの培地から上清を取り出し、必要があるまで-20℃で保存した。
【0043】
各時点において、TRI試薬(Sigma, Poole, UK)を使用して、細胞膜を溶解することによって核内容物を放出させることによって、総RNAを、HPMCから抽出し、その後、Superscript II RNase H- reverse transcriptase(InVitrogen, Paisley, Scotland)およびランダムヘキサマー(100μm)(Amersham, Bucks, UK)を使用して、1μgの総RNAから、cDNAを逆転写させた。
【0044】
HAS遺伝子特異的(HAS I、HAS IIおよびHAS III v.1)PCR反応を、1X PCRバッファー(1.5mMのMgCl2、0.2mMのdNTP、2.5ユニットのAmplitaq Gold Taq polymeraseおよび1μMのHAS特異的オリゴヌクレオチドPCRプライマー(以下を参照))を用いて、総容量50μlで、2μlの各時点で得られたcDNA生成物を使用して実施した。
【0045】
HAS遺伝子特異的プライマー配列:
HAS I
(配列番号1) フォワード ACT GGG TAG CCT TCA ATG TGG A
(NMOO1523)
(配列番号2) リバース GAC GAG GGC GTC TCT GAG TAG
HAS II
(配列番号3) フォワード CAT AAA GAA AGC TCG CAA CAC G
(NMOO5328)
(配列番号4) リバース ACT GCT GAG GAA TGA GAT CCA G
HAS III v.1
(配列番号5) フォワード CAG CAC CTT CTC GTG CAT CA
(NMOO5329)
(配列番号6) リバース ACT GCA CAC AGC CAA AGT AGG A
【0046】
cDNAを、その後、94℃で2時間変性させ、38サイクルで増幅し(94℃で30秒間、65℃で30秒間、および、68℃で90秒間)、68℃で15分間の伸長工程で終了した。
【0047】
各時点および各処理の反応生成物を、15%アガロース電気泳動ゲル上での分離によって分析し、BioRadイメージシステムおよびQuantityOneソフトウェアを使用して、ゲルを可視化して撮影した。ゲルのネガティブイメージのデンシトメトリックスキャニングによって、図5に示すような、特異的なHAS遺伝子のmRNA発現の標準化した定量データが提供された。
【0048】
pumactantが、時間依存的に、HPMCにおいて、HAS遺伝子発現の上方調節を誘導することを示すことができた。
【0049】
(実施例4)
pumactantのケラチン生成細胞増殖に対する効果を、AlamarBlue(商標)アッセイ(Biosource)を使用して調べた。簡単に述べると、このアッセイは、REDOXインディケーター(Alamar blue)を代謝および還元する細胞の能力を測定することによって、様々なタイプの細胞の増殖を測定するようにデザインされている。REDOXインディケーターの還元により、蛍光活性の変化がもたらされる。それ故、測定した蛍光活性が、細胞増殖に比例する。
【0050】
使用した細胞は、ヒト表皮ケラチン生成細胞(大人)であった。この細胞は、TCS Cellworks LTD(Product code ZHC-1111)から購入した。
バッチナンバー: 26619T
ドナー情報: 年齢: 39歳
性別: 女性
皮膚の色: 黒い
【0051】
<増殖アッセイ>
pumactantのケラチン生成細胞増殖に対する効果を、AlamarBlue(商標)アッセイ(Biosource)を使用して調べた。簡単に述べると、このアッセイは、REDOXインディケーター(Alamar blue)を代謝および還元する細胞の能力を測定することによって、様々なタイプの細胞の増殖を測定するようにデザインされている。REDOXインディケーターの還元により、蛍光活性の変化がもたらされる。それ故、測定した蛍光活性が、細胞増殖に比例する。
【0052】
アッセイは、細胞への10%のAlamar blueの添加、および、その後の1時間のインキュベーションを含む。1時間後、細胞増殖を、540nm(波長)で、Alamar blueの蛍光活性を測定することによって定量した。
【0053】
<実験方法>
約5mg(単回投与)のpumactantを、サブコンフルエントなケラチン生成細胞(24穴プレート、passage 2)にアプライした。pumactant刺激を行わなかった細胞を、対照として使用した。増殖アッセイを、刺激した細胞および刺激を行わなかった細胞で実施した。蛍光活性を、「相対的蛍光」または「任意単位」として、図6に示す。
【0054】
<結果>
pumactant-刺激細胞は、刺激を行わなかった対照細胞よりも増殖し(p<0.05)、このことは、pumactantが、ヒトのケラチン生成細胞の増殖の促進(約10%)を誘導することができることを示唆する。これらの初歩的なデータは、ヒトの腹膜中皮細胞の増殖に関する実施例2のデータと一致している。
【0055】
<注意>
この実験は、サブコンフルエントな細胞(少数の細胞)で、早期の時点(12時間)で実施したものであり、データは、初歩的なデータとみなすべきである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】500μgのpumactant(Adsurfと称される)によって処理された創傷を受けたヒトの単層の腹膜中皮細胞によるヒアルロン酸放出を、対照と比較したグラフである。
【図2】デジタルビデオカメラを使用して撮影した、対照細胞の再中皮細胞化の連続したイメージである。図2Aは0時間で撮影され、図2Bは10時間で撮影され、図2Cは20時間で撮影され、図2Dは30時間で撮影された。
【図3】デジタルビデオカメラを使用して撮影した、pumactantで処理した細胞の再中皮細胞化の連続したイメージである。図3Aは0時間で撮影され、図3Bは5時間で撮影され、図3Cは10時間で撮影され、図3Dは15時間で撮影された。
【図4】pumactantまたはウシ胎児血清によって処理した細胞についての創傷の閉鎖の速度を、対照と比較したグラフである;グラフは、y軸に、デジタルカメラの時限イメージから得られた1時間あたりのピクセルのスケールを示す。
【図5】pumatantに曝露した増殖停止HPMCまたは対照における、RT-PCRによって評価したアルドースHAS3 v1 mRNA発現の経時変化を示すグラフである;棒グラフは、得られたゲルのネガティブイメージのデンシトメトリックスキャニングから得られた、平均のHAS 3 v1/対照(1に調整)発現を表す。
【図6】刺激を行わなかった細胞またはpumactantによって処理された細胞の増殖の測定である、Alamar Blue(商標)(Biosource)アッセイによって測定した相対的な蛍光を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、創傷治癒に使用するための医薬組成物および創傷の治療方法を提供する。組成物は、リン脂質、特にpumactantとして知られているリン脂質の混合物を含む。
【背景技術】
【0002】
創傷の治癒速度を改善する方法を見出す一般的な必要性が存在する。哺乳類の胎児の組織修復は、一般的な治癒とは、根本的に異なる。大人のヒトにおいては、損傷した組織は、コラーゲンの沈積、コラーゲンのリモデリングおよび最終的な瘢痕化によって修復するのに対して、胎児の創傷治癒は、むしろ、最小限の瘢痕化または瘢痕化をもたらさない再生過程であると考えられている。大人の創傷は、過剰且つ異常に組織化されたコラーゲンからなる瘢痕を用いた正常な真皮の補給によって、治癒する。極めて対照的なことに、胎児の創傷は、持続的に多量のヒアルロン酸(または、ヒアルロナンとして知られている)を含むのに対して、コラーゲンの沈積は迅速であり過剰ではない(Bruce A Mast, M.D., Robert F. Diegelmann, Ph.D., Healing in the Mammalian Foetus, Surg. Gyn. And Ob., Vol. 174, pp. 441-451, May 1992)。
【0003】
知られていることは、ヒアルロン酸が、組織繊維芽細胞の天然の修復能力を利用し操作するのに決定的な役割を有していることと、ヒアルロン酸タンパク質複合体が、in vivoで組織化または瘢痕組織において重要な役割を果たしていることである(D. A. R. Burd, R. M. Greco, S. Regaurer, M. T. Longaker, J. W. Siebert and H. G. Garg, Hyaluronan and Wound Healing: a New Perspective, Journal of Plastic Surgery, 1991, pp. 579-584)。
【0004】
用語ヒアルロン酸には、その誘導体を含み、グルクロン酸およびN-アセチル-D-グルコサミン残基によって構成される、様々な分子量の酸性多糖類の、天然に存在する誘導体、微生物の誘導体および合成誘導体を広く言及する。
【0005】
創傷治癒工程は、羊水中で生じる治癒と比較して、大人では極めて異なる。最初の3日間の間のヒアルロン酸レベルの急激な増加が、大人の創傷治癒を特徴付ける。7日目までには、ヒアルロン酸は、検出できなくなる。
【0006】
胎児の創傷治癒は、最初の3日間のヒアルロン酸レベルの急激な増加によって特徴付けられるが、大人の創傷治癒と異なり、ヒアルロン酸のレベルは、21日間上昇し続ける。これらの知見は、Michael T. Longaker, M.D., Ernie R. Harrison, M.D.およびRobert Stern, M.D.によって実施された研究結果であり、Studies in Foetal Wound Healing: V. A. Prolonged Presence of Hyaluronic Acid Characterizes Foetal Wound Fluid, in Ann. Surg., April 1991, pp. 292-296と名付けられた論文に報告されている。
【非特許文献1】Bruce A Mast, M.D., Robert F. Diegelmann, Ph.D., Healing in the Mammalian Foetus, Surg. Gyn. And Ob., Vol. 174, pp. 441-451, May 1992
【非特許文献2】D. A. R. Burd, R. M. Greco, S. Regaurer, M. T. Longaker, J. W. Siebert and H. G. Garg, Hyaluronan and Wound Healing: a New Perspective, Journal of Plastic Surgery, 1991, pp. 579-584
【非特許文献3】Studies in Foetal Wound Healing: V. A. Prolonged Presence of Hyaluronic Acid Characterizes Foetal Wound Fluid, in Ann. Surg., April 1991, pp. 292-296
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
胎児の治癒条件のように、大人の治癒条件をもたらすことを意図して、ヒアルロン酸を、骨、皮膚潰瘍、切開および創傷に塗布することが知られている。しかしながら、これらの治療は、以前に期待されたほど有用ではなかった。
【0008】
この問題を改善する方法が、求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明により、ヒアルロン酸分泌の誘導によって創傷を治療するためのリン脂質を提供する。
【0010】
本発明により、医薬的に許容可能な希釈剤または担体とともにリン脂質を含む、ヒアルロン酸分泌の誘導によって創傷を治療するための医薬組成物を更に提供する。
【0011】
本発明により、ヒアルロン酸分泌の誘導によって創傷を治療するための医薬の製造における、本発明のリン脂質または医薬組成物の使用も提供する。
【0012】
驚くべきことに、リン脂質を創傷に塗布した場合に、ヒアルロン酸の産生が刺激されることが見出された。いかなる特定の理論に拘束されることを望むわけではなく、リン脂質は、自己のヒアルロン酸の分泌を創傷部位で誘導するので、本発明は有益であると考えられる。対照的な特性を有する多くの様々なヒアルロン酸のタイプが存在するので、本発明は、必ずしも患者に有益でないヒアルロン酸の外部からの塗布よりも、好ましい。本発明においては、創傷部位において、リン脂質を、その特徴がそれぞれの患者に特定であると予想されているヒアルロン酸を産生するために使用する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
リン脂質は、アシル基で置換されたホスファチジル基を有する。アシル基は、一般的に14から22の炭素原子を、好ましくは16から20の炭素原子を有する飽和または不飽和のアシル基を含みうる。好ましくは、リン脂質は、アシル基を経由して、飽和した基であるパルミトイル基C16:0およびステアロイル基C18:0、ならびに/または、不飽和の基であるオレオイル基C18:1およびC18:2を含みうる。ジアシル置換が好ましく、リン脂質は、より具体的には、2つの同一の飽和または不飽和のアシル基、特にジパルミトイル基およびジステアロイル基を含み、またはこのような基が多いリン脂質の混合物、特には、ジパルミトイル基が主要なジアシル成分である混合物である。
【0014】
リン脂質は、場合により、動物誘導性または植物誘導性または合成的に産生のいずれかである。人工的なリン脂質は、一般的に、天然に存在しないリン脂質であると理解されている;好ましくは、動物誘導性タンパク質を含むという危険が存在しない合成リン脂質である。
【0015】
リン脂質は、好ましくは、単一の活性成分として、創傷の治療のために使用される。したがって、本発明による医薬組成物は、好ましくは、治療剤としてリン脂質のみを含む。リン脂質は、好ましくは、コレステロールまたはトリグリセリドを実質的に含まない。
【0016】
動物誘導性リン脂質は、ブタまたはウシの肺のような哺乳類の肺を細かく切断することによって、または、このような肺の洗浄によって、通常の方法で得ることができる。使用することができる動物に由来するリン脂質の例には、細かく切断したブタの肺から産生され、99%のリン脂質および1%のサーファクタントタンパク質からなるCurosurf(Chiesi Farmaceutici);ウシの肺洗浄から得られる化合物であり、90%のリン脂質、約1%のタンパク質、3%のコレステロール、0.5%の遊離脂肪酸およびトリグリセリドを含む他の成分を含むAlveofact(Dr. Karl Thomae, Ltd., Germany);細かく切断したウシの肺の脂質抽出によってによって調製され、約84%のリン脂質、1%のタンパク質、6%の遊離脂肪酸を含むSurvanta(Abbott, Ltd., Germany);ウシの肺洗浄によって調製されるBLES(BLES Biochemicals, Canada);または、ウシの肺洗浄によって産生され、26mg/mlのホスファチジルコリン(PC)、26mg/mlのジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)である35mg/mlのリン脂質、0.65mg/mlのタンパク質および0.26mg/mlの疎水性ペプチドを含むcalfactantとしても知られているInfasurf(Forest Labs)が含まれる。
【0017】
合成リン脂質は、好ましくは、ジアシルホスファチジルコリン(DAPC)、例えばDPPC、ジオレイルホスファチジルコリン(DOPC)もしくはジステアリルホスファチジルコリン(DSPC)、ホスファチジルグリセロール(PG)、PC、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジン酸および/またはリゾリン脂質である。
【0018】
リン脂質は、好ましくは、ジアシルホスファチジルコリンおよびホスファチジルグリセロールの混合物である。ホスファチジルグリセロールは、有利には、ジアシルホスファチジルグリセロールである。ホスファチジルグリセロールのアシル基は、同一でも異なっていても良く、有利には、各脂肪酸アシル基が14から22の炭素原子を有しても良い。実際のところは、ホスファチジルグリセロールコンポーネントは、異なるアシル基を含むホスファチジルグリセロールの混合物としても良い。ホスファチジルグリセロールの脂肪酸アシル基の少なくとも一部分が、不飽和脂肪酸残基、例えば、モノ-またはジ-不飽和C18またはC20脂肪酸残基であることが好ましい。
【0019】
ホスファチジルグリセロールコンポーネントにおける好ましいアシル置換基は、パルミトイル、オレオイル、リノレオイル、リノレノイルおよびアラキドノイルである。リン脂質は、好ましくは、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびホスファチジルグリセロールを含む。
【0020】
リン脂質は、好ましくは、1:9から9:1の、好ましくは6:4から8:2の、より好ましくは約7:3の重量比率の、DPPCおよびPGの混合物である。DPPCは、Baer & Bachrea, Can. J. of Biochem. Physiol 1959, 37, page 953を使用して、グリセリルホスホリルコリンのアシル化によって合成的に調製することができ、そして、Sigma(London)Ltd.から市販されている。PGは、卵のホスファチジルコリンから、Comfurions et al., Biochem. Biophys Acta 1977, 488, page 36-42;およびDawson, Biochem J. 1967, 102, page 205-210の方法によって、または、他のホスファチジルコリン(例えば、大豆レクチン)から調製することができる。
【0021】
クロロホルムなどの一般的な溶媒を用いたDPPCとの共沈殿を行った場合、PGは、DPPCとともに細かな粉末を形成する。好ましくは、リン脂質は、卵のホスファチジルコリンに由来するホスファチジルグリセロールとDPPCとの混合物であり、C16、C18(飽和および不飽和)ならびにC20(不飽和)アシル基が入り混じって置換されたホスファチジル化合物がもたらされる。
【0022】
市販の合成リン脂質製品の例としては、26モル部のDPPC、8モル部のPOPG、5モル部の
PAおよび1モル部のKL-4を含むlucinactantとしても知られているSurfaxin(Discovery Labs);リコンビナントSP-C、DPPC、PGおよびPAを含むlusupultideとしても知られているLung Surfactant Factor LSF(Altana);DPPC(〜84%)、セチルアルコールおよびチロキサポールから構成されるExosurf(GSK, Germany);または、7:3の重量比率のDPPCおよびPGの混合物から構成されるpumactant(Britannia Pharmaceuticals)が含まれ、本発明に使用することができる。
【0023】
リン脂質は、好ましくは、ほぼ体温(治療すべきヒトまたは動物の身体の温度である)と同じまたはより低い融点を有するリン脂質またはリン脂質の混合物である。リン脂質のこのような混合物は、好ましくは、ほぼ体温と同じまたはより低い融点を有するスプレーディングリン脂質(spreading phospholipid)、例えばPG、PE、PSまたはPIを含む。
【0024】
リン脂質は、好ましくは、平方センチメートルの創傷当たり、1から、好ましくは10から、より好ましくは50から1000の、好ましくは800までの、より好ましくは300μgまでの割合で塗布する。
【0025】
リン脂質は、好ましくは、乾燥粉末の形態で塗布する。より一般的には、粉末のリン脂質は、0.5から100μmの、より適切には0.5から20μmの、好ましくは0.5から10μmの粒子サイズを有しうる。リン脂質は、好ましくは、表面活性リン脂質(SAPL)である。
【0026】
リン脂質または本発明の組成物は、好ましくは、上皮または中皮細胞において、ヒアルロン酸分泌を誘導する。
【0027】
本発明により処理すべき創傷は、好ましくは、ヒトまたは動物の身体の表面上の開口部または擦り傷である。処理すべきヒトまたは動物の身体の表面は、内部表面または外部表面のいずかであってもよい。創傷は、好ましくは、身体外傷である。創傷は、内部的または外部的な身体外傷、例えば火傷、事故による切断または非手術的な切断、暴力行為または破壊行為によってもたらされる傷または負傷であってよい。本発明によって処理される内部的な身体外傷は、事故または予期せぬ行為の結果としての負傷によってもたらされる内部的な突発的に生じる身体外傷である。本発明により処理される外部的な身体外傷は、外部的な突発的に生じる身体外傷だけでなく、手術(例えば、皮膚移植のための皮膚の除去によって引き起こされる外傷)によってもたらされる外部的な手術による身体外傷を含む。創傷は、表面の状態が、偶然に、火傷、開口または擦り傷などのように悪化しているヒトまたは動物の身体の表面の部位であってもよい。
【0028】
本発明における創傷の治療は、好ましくは、再上皮細胞化、特にケラチン生成細胞の再上皮細胞化を促進する工程を含む。言い換えれば、リン脂質は、好ましくは、再上皮細胞化を促進することによって、創傷を治療するために使用される。再上皮細胞化とは、上皮細胞または他の表面細胞の再増殖を意味する。更にその上、本発明における創傷の治療は、好ましくは、創傷閉鎖による創傷治癒を促進する。本発明によるリン脂質または医薬組成物は、好ましくは、創傷に局所的に塗布される。
【0029】
本発明による医薬組成物は、医薬的に許容可能な賦形剤を含む。任意の適合可能な賦形剤を使用しえる。賦形剤は、好ましくは水を含まない。担体または賦形剤が液体である場合、好ましくは、非水性である。賦形剤は、好ましくは、界面活性剤を含む。界面活性剤により、体温を超える融点を有するリン脂質を、組成物において使用することが可能となることから、界面活性剤は有用である。より好ましくは、界面活性剤は、医薬的に許容可能な界面活性剤または疎水性タンパク質である。このような剤の例としては、21のアミノ酸の合成ペプチドであるKL-4;非イオン性界面活性剤であるtyloxapol;セチルアルコール(もしくはヘキサデカノール);または、パルミチン酸コレステリルを含む。さらに適した賦形剤は、タンパク質、特に、アポタンパク質Bなどの吸着を改良するタンパク質である。
【0030】
組成物が液体形態で供給される場合、賦形剤は、好ましくは、リン脂質が分散しているまたは溶解している液体担体を含む。液体担体は、一般的に、体温で実質的に非揮発性であるか、または、揮発し難い担体である。適した担体には、生理学的に許容可能なグリコール、特に、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよび/またはグリセロールが含まれる。
【0031】
組成物は、液体、半液体またはペースト形態で提供されてもよい。ペーストは、単純に適した担体中でリン脂質を分散させることによって、または、適切な場合は、加熱した担体中でリン脂質を溶解し、好ましくはペーストを形成する荷重でリン脂質を冷却して粉末として沈殿させることによって、調製することができる。室温で、リン脂質をペーストとしてプロピレングリコール中で分散させることができるが、体温では可動性の溶液が形成されることから、プロピレングリコールは、特に、担体として有効である。また、室温でろう状の固体であり、体温で液体であるポリエチレングリコールを、例えばPEG600などを調製しても良い。プロピレングリコール中のリン脂質の様々な分散物は、米国特許第6133249号に開示されており、その中身全体は、参照によって本願明細書に組み込む。
【0032】
本発明によれば、創傷の治療が必要なヒトまたは動物患者に、治療上有効量のリン脂質を塗布する工程を含む、創傷を治療する方法を更に提供する。リン脂質は、好ましくは、本発明による医薬組成物の形態である。
【0033】
本発明は、以下の図面を参照に例示するが、これら図面は、特許請求の範囲を制限することを意図しない。
【0034】
ここで、本発明を、以下の実施例を参照に例示するが、これら実施例は、特許請求の範囲を制限することを意図しない。
【実施例】
【0035】
(実施例1)
6穴プレートで培養した増殖停止HPMCを、直線状に引っかいて創傷を負わせ、その後、創傷治癒が観察されるまで(96時間)、顕微鏡によって観察した。ウェルの半分を、平方センチメートル当たり500マイクログラムの乾燥したpumactantを用いて処理し、残り半分を、血清フリー状態のままとした(対照)。96時間後、各ウェルから上清を取り出し、遠心分離に供し、分析まで-70℃で保存した。上清を、製造元の取扱説明書に従って、市販のELISAキット(Corgenix Inc.)を使用して、ヒアルロン酸についてアッセイした。図1に示すように、平均的なヒアルロン酸の含量を求め、対照と比較した。
【0036】
驚くべきことに、pumactantが、中皮細胞においてヒアルロン酸の分泌を誘導することを示すことができた。
【0037】
(実施例2)
本実施例においては、pumactantの再中皮細胞化を促進する効果を、有効な中皮細胞創傷治癒モデル(Yung S, Davies M. Response of the human peritoneal mesothelial cell to injury: an in vitro model of peritoneal wound healing. Kidney Int. 1998 Dec; 54(6):2160-9)を使用して試験した。
【0038】
HPMC(腹部の手術を受けた個体患者から培養した一次細胞であるヒト腹膜中皮細胞)を、24穴培養プレートに植えた。血清フリー培地での増殖停止後に、単層を、滅菌したピペットチップを用いて機械的に直線状に引っかくことによって損傷させて、細胞または細胞外マトリクスを欠いた再生可能領域をそのままにした。ウェルを、血清フリー培地で洗浄して、分離した細胞を取り除いた。平方センチメートルの単層当たり、pumactant(500μg)を、乾燥形態で、パルスアプリケーター(SMC Pneumatics, Milton Keynes, UK)を使用してアプライし、血清フリー培地(1ml)を置換した。使用した対照は、血清フリー培地単独または2%(v/v)のFCSを添加した培地であった。各ウェルにおける露出させた領域を、顕微鏡を用いて同定し、その後のデータ収集のために、座標を記録した。
【0039】
再中皮細胞化は、コンピューター制御したXY自動スキャニングステージおよびインキュベーターが内蔵されたAxiovert 100M倒立顕微鏡を使用して、連続的にモニターした。加湿したインキュベーターを、加熱したインサートおよびベクトルエアーフロー(Carl Zeiss, Oberkochen, Germany)を用いて、37℃、5% CO2で維持した。24穴プレートの各ウェルの同じ部位から、Orca C5985デジタルビデオカメラ(Hamamatsu Photonics, Hamamatsu City, Japan)を使用して2.5倍の対物レンズ、60分間隔で、イメージをキャプチャーした。Macintosh G4コンピューターを使用したOpenlab version 3.0.8(Improvision, Ltd., Coventry, UK)を用いて、イメージを分析した。創傷閉鎖が見られるまで、60分間隔で、再中皮細胞化の速度を、露出させた領域の減少を(ピクセルで)測定することによって、計算した。
【0040】
血清フリー対照条件においては、20時間までに、中皮細胞の創傷治癒が完全に行われた(図2に見出すことができる)。乾燥粉体としてアプライしたpumactantを用いて、中皮細胞の治癒が、対照を超えて増した(図3および4に見出すことができる)。それ故、pumactantが、積極的に創傷閉塞を促進することを示すことができた。
【0041】
(実施例3)
本実施例においては、pumactantの、ヒアルロナンシンターゼ(HAS)遺伝子の上方調節に対する効果を調べた。
【0042】
6穴プレートで10%のFCSを加えたM199培地で培養した単層HPMCの増殖を停止させ、十字状に引っかいて創傷を負わせるか、または、何も行わず、その後、ウェルを血清フリー培地で洗浄し、分離した細胞を取り除いた。創傷を負わせた細胞および創傷を負わせなかった細胞の両方を、2つの処理群に分けた。この2つの処理群においては、HPMCを、パルスアプリケーターおよび血清フリー培地を使用して、平方センチメートルの単層当たり乾燥したpumactant(500μg)で、または、血清フリー培地のみのいずれかで処理した。培地を、その後、96時間にわたって観察した。96時間中に、以下の時点:0、6、12、24、48および96時間で、2つの培地から上清を取り出し、必要があるまで-20℃で保存した。
【0043】
各時点において、TRI試薬(Sigma, Poole, UK)を使用して、細胞膜を溶解することによって核内容物を放出させることによって、総RNAを、HPMCから抽出し、その後、Superscript II RNase H- reverse transcriptase(InVitrogen, Paisley, Scotland)およびランダムヘキサマー(100μm)(Amersham, Bucks, UK)を使用して、1μgの総RNAから、cDNAを逆転写させた。
【0044】
HAS遺伝子特異的(HAS I、HAS IIおよびHAS III v.1)PCR反応を、1X PCRバッファー(1.5mMのMgCl2、0.2mMのdNTP、2.5ユニットのAmplitaq Gold Taq polymeraseおよび1μMのHAS特異的オリゴヌクレオチドPCRプライマー(以下を参照))を用いて、総容量50μlで、2μlの各時点で得られたcDNA生成物を使用して実施した。
【0045】
HAS遺伝子特異的プライマー配列:
HAS I
(配列番号1) フォワード ACT GGG TAG CCT TCA ATG TGG A
(NMOO1523)
(配列番号2) リバース GAC GAG GGC GTC TCT GAG TAG
HAS II
(配列番号3) フォワード CAT AAA GAA AGC TCG CAA CAC G
(NMOO5328)
(配列番号4) リバース ACT GCT GAG GAA TGA GAT CCA G
HAS III v.1
(配列番号5) フォワード CAG CAC CTT CTC GTG CAT CA
(NMOO5329)
(配列番号6) リバース ACT GCA CAC AGC CAA AGT AGG A
【0046】
cDNAを、その後、94℃で2時間変性させ、38サイクルで増幅し(94℃で30秒間、65℃で30秒間、および、68℃で90秒間)、68℃で15分間の伸長工程で終了した。
【0047】
各時点および各処理の反応生成物を、15%アガロース電気泳動ゲル上での分離によって分析し、BioRadイメージシステムおよびQuantityOneソフトウェアを使用して、ゲルを可視化して撮影した。ゲルのネガティブイメージのデンシトメトリックスキャニングによって、図5に示すような、特異的なHAS遺伝子のmRNA発現の標準化した定量データが提供された。
【0048】
pumactantが、時間依存的に、HPMCにおいて、HAS遺伝子発現の上方調節を誘導することを示すことができた。
【0049】
(実施例4)
pumactantのケラチン生成細胞増殖に対する効果を、AlamarBlue(商標)アッセイ(Biosource)を使用して調べた。簡単に述べると、このアッセイは、REDOXインディケーター(Alamar blue)を代謝および還元する細胞の能力を測定することによって、様々なタイプの細胞の増殖を測定するようにデザインされている。REDOXインディケーターの還元により、蛍光活性の変化がもたらされる。それ故、測定した蛍光活性が、細胞増殖に比例する。
【0050】
使用した細胞は、ヒト表皮ケラチン生成細胞(大人)であった。この細胞は、TCS Cellworks LTD(Product code ZHC-1111)から購入した。
バッチナンバー: 26619T
ドナー情報: 年齢: 39歳
性別: 女性
皮膚の色: 黒い
【0051】
<増殖アッセイ>
pumactantのケラチン生成細胞増殖に対する効果を、AlamarBlue(商標)アッセイ(Biosource)を使用して調べた。簡単に述べると、このアッセイは、REDOXインディケーター(Alamar blue)を代謝および還元する細胞の能力を測定することによって、様々なタイプの細胞の増殖を測定するようにデザインされている。REDOXインディケーターの還元により、蛍光活性の変化がもたらされる。それ故、測定した蛍光活性が、細胞増殖に比例する。
【0052】
アッセイは、細胞への10%のAlamar blueの添加、および、その後の1時間のインキュベーションを含む。1時間後、細胞増殖を、540nm(波長)で、Alamar blueの蛍光活性を測定することによって定量した。
【0053】
<実験方法>
約5mg(単回投与)のpumactantを、サブコンフルエントなケラチン生成細胞(24穴プレート、passage 2)にアプライした。pumactant刺激を行わなかった細胞を、対照として使用した。増殖アッセイを、刺激した細胞および刺激を行わなかった細胞で実施した。蛍光活性を、「相対的蛍光」または「任意単位」として、図6に示す。
【0054】
<結果>
pumactant-刺激細胞は、刺激を行わなかった対照細胞よりも増殖し(p<0.05)、このことは、pumactantが、ヒトのケラチン生成細胞の増殖の促進(約10%)を誘導することができることを示唆する。これらの初歩的なデータは、ヒトの腹膜中皮細胞の増殖に関する実施例2のデータと一致している。
【0055】
<注意>
この実験は、サブコンフルエントな細胞(少数の細胞)で、早期の時点(12時間)で実施したものであり、データは、初歩的なデータとみなすべきである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】500μgのpumactant(Adsurfと称される)によって処理された創傷を受けたヒトの単層の腹膜中皮細胞によるヒアルロン酸放出を、対照と比較したグラフである。
【図2】デジタルビデオカメラを使用して撮影した、対照細胞の再中皮細胞化の連続したイメージである。図2Aは0時間で撮影され、図2Bは10時間で撮影され、図2Cは20時間で撮影され、図2Dは30時間で撮影された。
【図3】デジタルビデオカメラを使用して撮影した、pumactantで処理した細胞の再中皮細胞化の連続したイメージである。図3Aは0時間で撮影され、図3Bは5時間で撮影され、図3Cは10時間で撮影され、図3Dは15時間で撮影された。
【図4】pumactantまたはウシ胎児血清によって処理した細胞についての創傷の閉鎖の速度を、対照と比較したグラフである;グラフは、y軸に、デジタルカメラの時限イメージから得られた1時間あたりのピクセルのスケールを示す。
【図5】pumatantに曝露した増殖停止HPMCまたは対照における、RT-PCRによって評価したアルドースHAS3 v1 mRNA発現の経時変化を示すグラフである;棒グラフは、得られたゲルのネガティブイメージのデンシトメトリックスキャニングから得られた、平均のHAS 3 v1/対照(1に調整)発現を表す。
【図6】刺激を行わなかった細胞またはpumactantによって処理された細胞の増殖の測定である、Alamar Blue(商標)(Biosource)アッセイによって測定した相対的な蛍光を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒアルロン酸分泌を誘導することによって創傷を治療するためのリン脂質。
【請求項2】
合成リン脂質である、請求項1に記載のリン脂質。
【請求項3】
ジアシルホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸および/またはリゾリン脂質である、請求項1または2に記載のリン脂質。
【請求項4】
1:9から9:1の、好ましくは6:4から8:2の、より好ましくは約7:3の重量比率の、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびホスファチジルグリセロールの混合物である、請求項1または2に記載のリン脂質。
【請求項5】
平方センチメートルの創傷当たり、1μgから、好ましくは10μgから、より好ましくは50から1000μgの、好ましくは800μgまでの、より好ましくは300μgまでの割合で使用する、請求項1から4のいずれか一項に記載のリン脂質。
【請求項6】
乾燥粉体の形態である、請求項1から5のいずれか一項に記載のリン脂質。
【請求項7】
前記リン脂質が、創傷の治療のための唯一の活性成分である、請求項1から6のいずれか一項に記載のリン脂質。
【請求項8】
前記創傷が、ヒトまたは動物の身体の内部または外部表面の開口部または擦り傷である、請求項1から7のいずれか一項に記載のリン脂質。
【請求項9】
前記動物の身体が、哺乳類の身体である、請求項8に記載のリン脂質。
【請求項10】
前記創傷が、身体外傷であり、好ましくは、前記身体外傷が、突発に生じる身体外傷または外部的な手術による身体外傷である、請求項8または9に記載のリン脂質。
【請求項11】
前記創傷の治療が、再上皮細胞化を促進することを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のリン脂質。
【請求項12】
医薬的に許容可能な賦形剤とともにリン脂質を含む、ヒアルロン酸分泌を誘導することによって創傷を治療するための医薬組成物。
【請求項13】
前記リン脂質が、請求項2から7のいずれか一項に記載のリン脂質である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記創傷が、ヒトまたは動物の身体の内部または外部表面の開口部または擦り傷である、請求項12または13に記載の組成物。
【請求項15】
前記動物の身体が、哺乳類の身体である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記創傷が、身体外傷であり、好ましくは、前記身体外傷が、突発に生じる身体外傷または外部的な手術による身体外傷である、請求項14または15に記載の組成物。
【請求項17】
前記創傷の治療が、再中皮細胞化を促進することを含む、請求項12から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記賦形剤が、界面活性剤、タンパク質および/または液体担体である、請求項12から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
ヒアルロン酸分泌を誘導することによって創傷を治療するための医薬の製造における、請求項1から7のいずれか一項に記載のリン脂質、または、請求項12から18のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項20】
前記創傷が、ヒトまたは動物の身体の内部または外部表面の開口部または擦り傷である、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記動物の身体が、哺乳類の身体である、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記創傷が、身体外傷であり、好ましくは、前記身体外傷が、突発に生じる身体外傷または外部的な手術による身体外傷である、請求項20または21に記載の使用。
【請求項23】
前記創傷の治療が、再中皮細胞化を促進することを含む、請求項19から22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
創傷の治療が必要なヒトまたは動物患者に、治療上有効量のリン脂質を塗布して、ヒアルロン酸分泌を誘導する工程を含む、創傷を治療する方法。
【請求項25】
前記リン脂質が、請求項2から7のいずれか一項に記載のリン脂質である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記リン脂質が、請求項12から18のいずれか一項に記載の医薬組成物の形態である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記創傷が、ヒトまたは動物の身体の内部または外部表面の開口部または擦り傷である、請求項24から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記動物の身体が、哺乳類の身体である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記創傷が、身体外傷であり、好ましくは、前記身体外傷が、突発に生じる身体外傷または外部的な手術による身体外傷である、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
前記リン脂質が、再中皮細胞化を促進する、請求項24から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項1】
ヒアルロン酸分泌を誘導することによって創傷を治療するためのリン脂質。
【請求項2】
合成リン脂質である、請求項1に記載のリン脂質。
【請求項3】
ジアシルホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸および/またはリゾリン脂質である、請求項1または2に記載のリン脂質。
【請求項4】
1:9から9:1の、好ましくは6:4から8:2の、より好ましくは約7:3の重量比率の、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびホスファチジルグリセロールの混合物である、請求項1または2に記載のリン脂質。
【請求項5】
平方センチメートルの創傷当たり、1μgから、好ましくは10μgから、より好ましくは50から1000μgの、好ましくは800μgまでの、より好ましくは300μgまでの割合で使用する、請求項1から4のいずれか一項に記載のリン脂質。
【請求項6】
乾燥粉体の形態である、請求項1から5のいずれか一項に記載のリン脂質。
【請求項7】
前記リン脂質が、創傷の治療のための唯一の活性成分である、請求項1から6のいずれか一項に記載のリン脂質。
【請求項8】
前記創傷が、ヒトまたは動物の身体の内部または外部表面の開口部または擦り傷である、請求項1から7のいずれか一項に記載のリン脂質。
【請求項9】
前記動物の身体が、哺乳類の身体である、請求項8に記載のリン脂質。
【請求項10】
前記創傷が、身体外傷であり、好ましくは、前記身体外傷が、突発に生じる身体外傷または外部的な手術による身体外傷である、請求項8または9に記載のリン脂質。
【請求項11】
前記創傷の治療が、再上皮細胞化を促進することを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のリン脂質。
【請求項12】
医薬的に許容可能な賦形剤とともにリン脂質を含む、ヒアルロン酸分泌を誘導することによって創傷を治療するための医薬組成物。
【請求項13】
前記リン脂質が、請求項2から7のいずれか一項に記載のリン脂質である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記創傷が、ヒトまたは動物の身体の内部または外部表面の開口部または擦り傷である、請求項12または13に記載の組成物。
【請求項15】
前記動物の身体が、哺乳類の身体である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記創傷が、身体外傷であり、好ましくは、前記身体外傷が、突発に生じる身体外傷または外部的な手術による身体外傷である、請求項14または15に記載の組成物。
【請求項17】
前記創傷の治療が、再中皮細胞化を促進することを含む、請求項12から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記賦形剤が、界面活性剤、タンパク質および/または液体担体である、請求項12から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
ヒアルロン酸分泌を誘導することによって創傷を治療するための医薬の製造における、請求項1から7のいずれか一項に記載のリン脂質、または、請求項12から18のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項20】
前記創傷が、ヒトまたは動物の身体の内部または外部表面の開口部または擦り傷である、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記動物の身体が、哺乳類の身体である、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記創傷が、身体外傷であり、好ましくは、前記身体外傷が、突発に生じる身体外傷または外部的な手術による身体外傷である、請求項20または21に記載の使用。
【請求項23】
前記創傷の治療が、再中皮細胞化を促進することを含む、請求項19から22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
創傷の治療が必要なヒトまたは動物患者に、治療上有効量のリン脂質を塗布して、ヒアルロン酸分泌を誘導する工程を含む、創傷を治療する方法。
【請求項25】
前記リン脂質が、請求項2から7のいずれか一項に記載のリン脂質である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記リン脂質が、請求項12から18のいずれか一項に記載の医薬組成物の形態である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記創傷が、ヒトまたは動物の身体の内部または外部表面の開口部または擦り傷である、請求項24から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記動物の身体が、哺乳類の身体である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記創傷が、身体外傷であり、好ましくは、前記身体外傷が、突発に生じる身体外傷または外部的な手術による身体外傷である、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
前記リン脂質が、再中皮細胞化を促進する、請求項24から29のいずれか一項に記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6】
【公表番号】特表2008−521786(P2008−521786A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−542121(P2007−542121)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【国際出願番号】PCT/GB2005/004552
【国際公開番号】WO2006/056800
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(501406967)ブリタニア ファーマシューティカルズ リミテッド (6)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【国際出願番号】PCT/GB2005/004552
【国際公開番号】WO2006/056800
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(501406967)ブリタニア ファーマシューティカルズ リミテッド (6)
【Fターム(参考)】
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