説明

力の循環を最小限に抑える低摩擦エッジローラ

【課題】ガラス延伸プロセスにおいて、リボンから切断されるガラスシートに形または応力として現われ得る、延伸装置内の摩擦から結果的に生じる循環する力を減少させるエッジローラを提供する。
【解決手段】ガラスリボン20の周囲に配置され、内部の雰囲気圧力が第1圧力Psである延伸チャンバを画成しているシュラウド22が第1シール板56を備え、シュラウド22を貫いて延伸チャンバ内に延びている回転可能なシャフト44と延伸チャンバ内でガラスリボン20のエッジに接触する接触面40とを備えているエッジローラアセンブリにおいて、シャフト44が第2シール板66と連結される。第1および第2シール板の間の間隙74内の雰囲気圧力を第1圧力Ps以下の第2圧力Pgで維持するように間隙74にガスが注入され、さらに第1シール板56が、シャフト44の縦軸を横切る方向にシャフト44が動くことを可能にするスロット58を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス延伸プロセスにおいて力の循環を減少させる方法に関する。また、力の循環を減少させるガラス延伸装置についても開示する。
【背景技術】
【0002】
薄ガラスシートを成形する1つの方法として、溶融ガラスを入れた容器からガラスリボンを延伸する、延伸プロセスによるものが挙げられる。これは、例えば、容器から上方にリボンを延伸するアップドロープロセス(フルコールまたはコルバーンなど)や、典型的には成形本体から下方にリボンを延伸するダウンドロープロセス(スロットまたはフュージョンなど)によって実現することができる。リボンが成形されると、リボンから個々のガラスシートが切断される。
【0003】
従来のダウンドロープロセスでは、溶融ガラスは延伸チャンバの中に含まれてガラスリボンに成形され、この延伸チャンバはリボンを包囲するシュラウドにより画成されている。とりわけシュラウドは、シュラウドにより画成された、リボンを包囲している領域内の、一貫した熱環境を維持する働きをする。ローラ対がシュラウドを貫通し、リボンのエッジを挟持する。このローラを用いてリボンに牽引力を加えることもできるし、リボンに横方向の引張力を加えることもできるし、あるいは単にリボンを案内することもできる。従って、モータを用いてローラに回転力を加えてもよいし、あるいはローラを惰性で回転させて、下降するリボンでローラに回転力を加えてもよい。どちらの場合でもローラは回転する。製造ローラ機構は典型的に、ローラをガラス接触部分から水平および/または垂直に動かすことができる。これにより、ローラの形状公差、動作時の振れおよび公差変化の他、通常のガラス厚の変動に適応できる。さらに、製造ローラ機構は典型的に、整備用アクセス、プロセス再始動、および他の実施上の配慮のために、ローラを動かしてガラスから遠く離すことができる。エッジローラの自由運動に抵抗する摩擦力は、ガラスが粘性材料から弾性材料に転移するときにガラスに固定される可能性のある、望ましくない摂動または応力変化としてリボンに現われる力の循環を、生じさせる可能性がある。製造ローラ機構の別の態様は、延伸チャンバからの空気漏れを最小限に抑えるものである。各ローラのシャフトがシュラウドを貫通している部分のシールが不十分であると、過度の流れがシュラウドから出て行き―恐らく周辺機器を過度に加熱し―、シュラウドの底から入ってくる比較的低温のガスの流れを増加させる。エッジローラのシール漏れが多いと、特に経時的に変化した場合には、リボンの冷却が最適なものではなくなり、最終的な製品に望ましくない応力や歪みを生じさせる可能性がある。すなわち、シールは、シュラウドとその内部環境の高温に耐えられること、シュラウド内部から高温雰囲気が出て行くのを最小限に抑えること、そしてシャフトの縦軸を横切る方向へのローラシャフトの変位とこの軸周りでの回転運動との両方に適応することを、同時に満たすものでなければならない。現在、このようなシールは、装置に摩擦を生じさせる金属上金属(metal-on-metal)界面を備えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガラスリボンを延伸する装置、特に、リボンから切断されるガラスシートに形または応力として現われ得る、延伸装置内の摩擦から結果的に生じる循環する力を、減少させた装置を開示する。特にガラスリボンが粘弾性状態から弾性状態に転移している間に、ガラスリボンに接触するアセンブリの作動部品間に生じる摩擦を減少させることによって、この力の循環を減少させることができる。この領域は、硬化温度範囲として知られているが、ガラスが粘性に達した温度範囲よりも低く、ガラスに与えられた応力がガラス内で固定され得るような温度範囲である。さらに、ガラスリボンをこの装置から延伸し得る方法についても開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施の形態において、ガラスリボンを延伸する装置が開示され、この装置は、ガラスリボンを供給する成形本体と、リボンの周囲に配置され、内部の雰囲気圧力が第1圧力Psである延伸チャンバを画成し、第1シール板を備えているシュラウドとを含む。この装置はさらに、エッジローラアセンブリであって、シュラウドを貫いて延伸チャンバ内に延びている回転可能なシャフトと、延伸チャンバ内でガラスリボンのエッジに接触する、シャフト上に配置された接触面とを備えているエッジローラアセンブリ、および、シャフトに連結された第2シール板、を備え、第1および第2シール板の間に間隙が設けられており、この間隙内の雰囲気圧力を第1圧力Ps以下の第2圧力Pgで維持するようにこの間隙にガスが注入され、さらに、第1シール板が、シャフトの縦軸を横切る方向にこのシャフトが動くことを可能にするスロットを含み、シャフトがこのスロットを貫通して延伸チャンバ内に延びている。ガスは、第1シール板の中に形成された、この第1シール板の第2シール板に面している表面で開いている通路を通って、この間隙に注入されることが好ましい。
【0006】
成形本体は、例えば、溶融ガラス材料を受け取るトラフと合流成形面とを有しているフュージョンタイプの成形本体でもよい。溶融ガラスはトラフから溢れ出て、分離した流れの状態で合流成形面上を流れ、その後、合流成形面が交わる線で再結合すなわち融合する。あるいは、成形本体は、ガラスリボンをその中に通して延伸するスロットを備えたものでもよい。他の実施形態において、成形本体は、フルコール法で用いられるようなデビトーズでもよい。
【0007】
さらなる実施形態において、この装置は、第3シール板の開口をシャフトが貫通し、かつ第2シール板が第1シール板および第3シール板の間に配置されるように、この第3シール板を設置して備えてもよい。ガスが第2間隙に注入されるときにこのガスが通過する、第3シール板の第2シール板に面している表面で開いているガス通路を、この第3シール板がさらに備えてもよい。特定の他の実施形態において、スプリング部材を第2および第3シール板の間に設置してもよい。スプリング部材を、第2および第3シール板の間に注入されたガスとともに用いてもよいし、あるいは、ガス注入の代わりに用いてもよい。
【0008】
第1および第2シール板の間の第1間隙は、約0.254cm以下であることが好ましく、さらに第1および第2シール板の間の摩擦係数は、0.4未満であることが好ましい。例えば、第1または第2シール板は、黒鉛、または窒化ホウ素、あるいは高温耐性を有する他の低摩擦材料の層を含んでもよい。
【0009】
エッジローラアセンブリ内の摩擦をさらに減少させるため、シャフトは、シャフトの縦軸を横切る方向へのシャフトの変位を提供するエアベアリングを用いた機構によって支持される。エアベアリング(あるいは、より一般的にはガスベアリング)は、エッジローラアセンブリの設計次第で、移動または回転を支持することもできるであろう。例えば、シャフトは、シャフトの縦軸を横切る方向に平行移動することもできるし、あるいは横切る方向のままで、弧を描くこともできる。
【0010】
さらに別の実施形態において、ガラスリボンを延伸する装置が開示され、この装置は、ガラスリボンを供給する成形本体と、リボンの周囲に配置され、内部の雰囲気圧力が第1圧力Psである延伸チャンバを画成するシュラウドと、エッジローラアセンブリとを含む。エッジローラアセンブリは、シュラウドを貫いて延伸チャンバ内に延びている回転可能なシャフトと、延伸チャンバ内でガラスリボンのエッジに接触する、シャフト上に配置された接触面と、シャフトの縦軸を横切る方向へのこのシャフトの変位を可能にする、シャフトに連結されたガスベアリングとを備えている。シュラウドに取り付けられた第1シール板とシャフトに連結された第2シール板とを備えているシールアセンブリがさらに提供され、第1および第2シール板の間に間隙が設けられており、この間隙内の雰囲気圧力を第1圧力Ps以下の第2圧力Pgで維持するようにこの間隙にガスが注入され、さらに、第1シール板が、シャフトの縦軸を横切る方向へのこのシャフトの動きを受け入れるスロットを含み、シャフトがこのスロットを貫通して延伸チャンバ内に延びている。第1または第2シール板のいずれか、あるいはこの両方が、黒鉛、または窒化ホウ素、あるいは高温耐性を有する他の低摩擦材料の層を含む。第1および第2シール板の向かい合っている表面間の摩擦係数は、0.4未満であることが好ましい。
【0011】
さらに別の実施形態において、ガラスリボンを延伸する方法について説明するが、この方法は、成形本体からガラスリボンを延伸する工程であって、ガラスリボンがこのリボンの周囲に配置されたシュラウドにより画成される延伸チャンバの中を通過し、シュラウドが第1シール板を備え、かつ延伸チャンバ内部の雰囲気圧力が第1圧力Psである、工程を含む。回転可能なシャフトであって、シャフトの縦軸を横切る方向にこのシャフトが動くことを可能とする第1シール板に設けられた開口を貫通して、延伸チャンバ内に延びているシャフトと、シャフトとともに回転するようにシャフトに連結された第2シール板と、ガラスリボンのエッジに接触する、シャフト上に配置された接触面と、を備えているエッジローラアセンブリを用いて、ガラスリボンに接触する。第2シール板が第1シール板に対して回転するとき、第1および第2シール板の間の第1間隙内の雰囲気圧力PgがPs以下であるように、第1間隙に加圧ガスを注入する。シャフトに横切る方向への圧力を加える付勢力を、シャフトに連結する。これがローラのすべりを最小限に抑えるために必要なローラ対間の挟持力を生成し、そしてこれがローラからガラスリボンに与えられる引張力の重要な貢献者となる。シャフト(およびエッジローラアセンブリの他の部分)は、リボンエッジの厚さの変化または設備の寸法の変化に応じて変位する。シール板からの摩擦は、ローラが動くときにシャフトとガラスとの界面で加えられる実際の付勢力に変化を生じさせる。シール板の摩擦が減少すると、ローラが動く際の付勢力の変動が最小になる。第1および第2シール板の向かい合っている表面間の摩擦係数は、0.4未満であることが好ましい。
【0012】
動作中、接触面が実質的に一定の力をガラスリボンに対して加えるよう、シャフトの変位に抵抗する最大摩擦力は2.3kg未満であることが好ましい。摩擦の減少は、シャフトをガスベアリングで支持することによっても向上させることができる。
【0013】
特定の他の実施形態において、エッジローラアセンブリは第3シール板をさらに備えてもよく、第2シール板が第1および第3シール板の間で回転するように、第3シール板を第1シール板と相対して配置してもよい。第2および第3シール板の間の第2間隙にさらにガスを注入してもよい。
【0014】
この装置は、エッジローラのシャフトを支持しているエアベアリングと、シュラウドに取り付けられた第1シール板、およびシャフトに取り付けられた第2シール板、を備えているシールアセンブリとをさらに含み、第1および第2シール板の間に間隙が設けられており、この間隙内の雰囲気圧力を第1圧力Ps以下の第2圧力Pgで維持するようにこの間隙にガスが注入され、さらに、第1シール板が、シャフトの縦軸を横切る方向へのこのシャフトの動きを受け入れる細長いスロットを含み、シャフトがこのスロットを貫通して延伸チャンバ内に延びている。第1および第2シール板の間の間隙は、約0.254cm以下であることが好ましい。スロットが開けられた第1シール板(またはガラスリボンに対して内側のシール板)は、エッジローラのシャフトの横の動きを受け入れる。
【0015】
ガスは、第1シール板の中に形成された、この第1シール板の第2シール板に面している表面で開いている通路を通って、注入してもよい。注入されるガスは空気であることが好ましいが、例えば、窒素、またはヘリウム、あるいはこれらの混合物などの、別のガスでもよい。
【0016】
いくつかの実施形態において、第3シール板の開口をシャフトが貫通し、かつ第2シール板が第1シール板および第3シール板の間に配置されるように、この第3シール板を設置する。第3シール板は、この第3シール板の第2シール板に面している表面で開いているガス通路またはポートを含む。あるいは、第2および第3シール板の間にスプリング部材を設置してもよい。
【0017】
シール板間で接触した場合の摩擦を減少させるために、第1シール板、第2シール板、および/または、第3シール板の、任意の1つまたはこれらの組合せは、例えば、窒化ホウ素コーティング、または、黒鉛材料またはコーティングを含んでもよい。
【0018】
別の実施形態において、ガラスリボンを延伸する方法が開示され、この方法は、リボンの周囲に配置されたシュラウドにより画成される延伸チャンバの中を通過しているガラスリボンを延伸プロセスによって成形する工程であって、シュラウドが第1シール板を備え、かつ延伸チャンバ内部の雰囲気圧力が第1圧力Psである工程を含む。
【0019】
この方法はさらに、シャフトの縦軸を横切る方向へのこのシャフトの動きを受け入れる、第1シール板に設けられた細長い開口を貫通して、延伸チャンバ内に延びている回転可能なシャフトであって、シャフトとともに回転するようにこのシャフトに取り付けられたシャフトの縦軸と直角の第2シール板を含む、このシャフトと、ガラスリボンのエッジに接触する、シャフト上に配置されたセラミック接触面と、を備えているエッジローラを用いて、ガラスリボンに接触する工程を含む。
【0020】
第2シール板が第1シール板に対して回転するとき、第1および第2シール板の間の第1間隙内の雰囲気圧力PgがPs以下であるように、第1間隙に加圧ガスを注入する。
【0021】
いくつかの実施形態において、第2シール板が第1および第3シール板の間で回転するように、第3シール板を第1シール板と相対して配置する。空気、窒素、またはヘリウムなどのガスを、第2および第3シール板の間の第2間隙に注入してもよい。
【0022】
以下の説明的記述は、全く限定する意味を含まずに、添付の図面を参照して与えられるが、この説明的記述の中で、本発明はより容易に理解され、そして本発明の他の目的、特徴、詳細、および利点が、より明確に明らかになるであろう。この全ての追加のシステム、方法、特徴、および利点は、本説明に含まれ、本発明の範囲内であり、かつ添付の請求項によって保護されると意図される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態による例示的なフュージョンダウンドロープロセスを示す側面図
【図2】ガラスリボンと係合している1対のエッジローラアセンブリを示す、ガラスリボンに対するエッジ側の側面図
【図3】本発明の一実施の形態によるエッジローラおよびシールアセンブリの側面断面図
【図4A】ローラシャフトを受け入れる直線状スロットを備えている、図3のシール板の側面図
【図4B】ローラシャフトを受け入れる弓状スロットを備えている、図3のシール板の側面図
【図4C】カウンタウエイトを有し、ローラシャフトを円弧状に変位させるように配置された、例示的なエッジローラアセンブリの側面図
【図5】シール板の表面にガスを送出するガス通路を示している、シールアセンブリの側面断面図
【図6】3つのシール板を備えている、本発明の一実施の形態によるシールアセンブリの別の実施形態を示す分解図
【図7】ガス通路とガス流を示している、図6のシールアセンブリの側面断面図
【図8】複数のシール板の間にスペーサ部材を用いた、図7のシールアセンブリの変形を示す側面断面図
【図9】ガラスリボンのエッジと係合している、シールアセンブリを採用した1対のエッジローラを示し、支持部材を介してエッジローラのシャフトと連結されたエアベアリングをさらに示している上面断面図
【図10】複数のシール板の間にスプリングを用いた、シールアセンブリの別の実施形態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の詳細な説明においては、限定ではなく説明を目的として、本発明の完全な理解を実現するために、具体的詳細を開示した実施形態例について明記する。しかしながら、本開示の利益を得たことのある通常の当業者には、本発明がここで開示される具体的詳細から逸脱した他の実施形態において実施できることは明らかであろう。さらに、周知の装置、方法、および材料に関する説明は、本発明の説明を不明瞭にしないよう省略することがある。最後に、適用できる限り、同じ参照番号を用いて類似の要素を参照する。
【0025】
薄いリボン状材料を、テレビやコンピュータモニタなどの現代のディスプレイ用途に要求される厳格な平面度標準まで延伸して、約1mmより薄いガラスシートを成形するには、製造プロセスの全局面において慎重な制御を必要とする。しかしながら、ガラスリボンが粘性状態から弾性状態に転移している間には、特に注意を払わなければいけない。延伸区域内の気流や運転している設備からの振動によって生成され得るようなリボン上の小さな力変動でさえ、初期の平坦面であるべきものに摂動として現われることがある。
【0026】
例示的なフュージョンタイプのダウンドロープロセスにおいては、その上面で開いている溝を備えている成形本体に、溶融ガラスが供給される。溶融ガラスは、溝の壁から溢れ出て成形本体外側の合流面を流れ落ち、合流面が交わる線(すなわち「底部」)において、分かれていた流れが合流する。その場所で、分かれていた流れが結合すなわち融合し、成形本体から下方に流れる単一のガラスリボンとなる。リボンのエッジに沿って設置された種々のローラは、リボンを下方に延伸または牽引する働きをし、および/または、リボン幅を維持するのを助ける引張力をリボンに加える働きをする。すなわち、ローラのいくつかはモータで回転させてもよいが、一方その他のローラは惰性で回転している。
【0027】
リボンが成形本体から下降すると、溶融材料は成形本体底部での粘性状態から粘弾性状態に転移し、最終的には弾性状態となる。リボンが弾性状態まで冷却されると、リボン幅を横切って罫書きし、さらに罫書き線に沿ってリボンを分割して個別のガラスシートを生成する。
【0028】
リボンが流体、粘性状態にある間、溶融材料に与えられた応力は急速に開放される。しかしながら、リボンが冷えて粘性が増加すると、誘導された応力はそれほどすぐには開放されず、ついには誘導された応力がガラスに保持され、そしてリボンの形状がガラスに維持され得るような温度範囲に達する。この両者は、望ましくない保持応力と、最終的な製品歪みの源である。そのため、応力および形状がガラス中に凍結され得るこの時期の間、ガラスリボンに与えられる力はできるだけ一貫していることが好ましい。このような力変動の1つの要因はエッジローラからもたらされるものである。エッジローラからの力変動は、ガラス厚や他の製品属性の変動性にも繋がる可能性があることに留意されたい。これまでの経験から、力の一貫性は、例えばLCD基板シートに要求される超低応力および高平面度の達成に重要である。
【0029】
エッジローラは違う形をとったものでもよいが、夫々の事例において、1対のローラはリボンを挟持または握持する。ローラ対を、リボンの長さに沿った特定の鉛直位置(すなわち、底部からの距離)に2対のエッジローラを使用するようにして、リボンの相対するエッジに設置する。エッジローラは、電気または油圧モータなどによって駆動させてもよいし、あるいは惰性で回転するものでもよい。相対するエッジのエッジローラは、リボン幅を横切って延在する共通のシャフトを共有してもよいし、あるいは、エッジローラ夫々が、ローラ接触面を各ローラシャフトの先端に設置するために必要な程度だけ延びている、独自の個別シャフトを有してもよい。この接触面は、ガラスリボンと接触することにより生じる、時には800℃を上回る高温に長時間に亘って耐えられるように設計されており、セラミック材料を利用することが好ましい。さらに、エッジローラのシャフトは水平(延伸方向を横切る方向)である必要はなく、リボン幅方向の引張力を増加させるために水平に対して傾けることができる。
【0030】
エッジローラ対夫々は、ローラの接触面間の間隙の変化に適応するように設計されている。例えば、各接触面は、それが取り付けられているシャフトと完全に同心ではない可能性があり、この場合ローラが回転すると振れが生じる。さらに、シャフトの真直度の機械加工公差や操作温度での歪みは、動作の振れの一因となる。加えて、ローラは、リボンエッジの厚さの小さな変動に適応するように設計されている。エッジローラのこの横への(水平の)動きは、リボンがローラ対の間を下降するときに生じる可能性がある。言い換えれば、牽引ローラ対は水平に引き離すことができるものでなければならず、そしてその後ローラが動作するにつれて再び互いに近づいて延伸する。製造エッジローラ機構は、ローラの動作中にこういった動きができるように設計され、さらにガラスに加えられる挟持力が一貫性を保つように設計される。ローラは、内側、すなわちガラスリボンの面に向かって、付勢力により加圧することが好ましい。これがローラのすべりを最小限に抑えるために必要なローラ対間の挟持力を生成し、そしてこれがローラからガラスリボンに与えられる引張力の重要な貢献者となる。この付勢力を加える機構は、上述した振れの発生源からの内側および外側の動き(エッジローラ対間の間隙の拡大)に適応しなければならない。例えば、エッジローラは、エッジローラのシャフトを横方向に平行移動させる、レバー支点配置を含んでもよい。エッジローラの接触面がガラスリボンを握持できるように、カウンタウエイトを用いてレバーに十分な力を加えてもよく、さらにカウンタウエイトを用いることにより、例えば接触面の偏心の変化に応じて、ローラをリボン面の横方向に動かすことができる。しかしながら、付勢力を加える他の方法を用いることも可能であり、例えば、ローラアセンブリを所定の移動線に沿って牽引または押圧するように配置されたスプリングが挙げられる。製造ローラ系固有の問題は、ローラ機構のスライドおよびベアリング内の摩擦―並びにシール板内の摩擦―であり、この摩擦が、動きに抵抗して、ガラスに加えられる挟持力を変化させる望ましくない可変の力を伝える。リボンに与えられたローラの水平力を正確に測定すると、例えば、ローラの回転周期中10ポンド(4.536kg)超の力の変動を示した。同様に、鉛直牽引力はこの同じ発生源に影響される可能性がある。
【0031】
リボンが成形本体から下降するとき、リボンエッジの厚さの小さな変動、または、例えばエッジローラ接触面の偏心は、ガラスリボン面を突っ切る方向へのエッジローラの動きを生じさせる。付勢力によって、ローラ接触面とガラスリボンエッジとの間の接触は維持される。しかしながら、系内の摩擦力がこのような動きを妨害する。例えば、牽引ローラ対を定位置に固定してローラ接触面の回転のみを可能としたような極端な場合には、系内の変化をリボンは強く感じるであろう。例えば、接触面の一方または両方が夫々のシャフトと同心でなかったら、接触面の各回転はリボンに対して循環する力を加えるであろう。この循環する力は、時間とともに変化するリボン内の応力に直接影響を与えるであろう。すなわち、エッジローラアセンブリ内の摩擦力が減少すると、これが作用して、リボンから分割されるガラスシートの形状(平面度など)に影響を与え得るリボン内の応力変動を減少させる。
【0032】
図1に示されているのは、溝すなわちトラフ14と合流成形面16とを含む成形本体12を備えた、例示的なフュージョンダウンドロー装置10である。合流成形面16は底部18で交わる。トラフ14には、供給源(図示なし)から溶融ガラスが供給され、この溶融ガラスはトラフの壁から溢れ出て、分離した流れとして成形本体の外表面上を下降する。合流成形面16上を流れる溶融ガラスの分離した流れは底部18で交わり、そして下方の方向21に流れるガラスリボン20を成形する。
【0033】
ガラスリボン20が最終的な厚さおよび粘度に到達すると、リボン幅を横切ってリボンを分割し、個別のガラスシートすなわち板ガラス(pane)を生成する。溶融ガラスを成形本体に供給し続けてリボンが長くなると、ガラスシートがさらにリボンから分割される。
【0034】
シュラウド22は、底部18下方のリボン20の上流部を包囲し、また成形本体12を収容している上方エンクロージャ24と接続されている。シュラウド22は、リボンの温度を調整するためにその上に種々の加熱および/または冷却設備を設置することができる、プラットフォームとして働く。しかしながら、シュラウドの最上部分内が最高温度であることに加え、シュラウド内部のより高温の空気の浮力のため、内部の圧力はシュラウドの高度を超えて上昇する。シュラウド22の壁に開口や漏れがあると、シュラウドの基部(base)から上方への内部空気流が発生し、典型的にはシュラウド内部の熱的条件に著しい影響を与える。過度の漏れは、最適なリボン温度に合わせる加熱設備の性能に勝って、最終的な製品の応力や歪みに繋がる可能性がある。空気漏れが変化すると、シュラウドの冷却速度が全体的および/または局部的に変化することになり、これが最終的な製品の応力や歪みに繋がる可能性もある。製造時のシート延伸の成功のためには、開口および漏れを最小限とし、経時的に一貫性を保つことが重要である。
【0035】
エッジローラアセンブリ26は、底部18下方の所定の鉛直位置に設置される。このエッジローラアセンブリ26は、リボンに牽引力を加えるために用いられる被駆動エッジローラ、および/または、リボンを案内しかつリボン幅を横切る引張力の維持を助ける非被駆動アイドラローラ、を含んでもよい。上述したように、ローラはリボン幅に亘る共通のシャフトを共有してもよいし、あるいはローラ夫々が独自のシャフトを有してもよい。エッジローラは典型的には対で配置され、1つのローラ対の各ローラは、リボンの一方のエッジの両面に配置される。さらに、エッジローラ対自体も対で配置され、リボンエッジの所与の鉛直位置に各リボンエッジにつき1対のローラが配置される。
【0036】
その動作構造を含めてエッジローラアセンブリは、典型的な製造公差に影響される。例えば、リボンのエッジ部分34に接触するエッジローラ接触面は、夫々のシャフトと正確に同心ではない可能性がある。あるいは、エッジローラ接触面は完全な円ではないかもしれない(例えば、局部的に平面を含む)。あるいは、エッジローラのシャフトは、形成時や動作中、完全に真っ直ぐではない可能性もある。これらの因子はエッジローラの周期的な横方向の変位に繋がる可能性があり、そして、完全な円ではないタイヤのように、ローラが1回転し終える毎に周期的な動きを生じさせる可能性がある。さらに、リボンエッジ(または「ビード」)は若干球根状であり、その厚さはリボンの長さに沿って変化しているかもしれない。言い換えれば、エッジローラ対のエッジローラは、エッジローラ間の様々な間隙に適応するべきである。
【0037】
理想的には、ローラ機構は、エッジローラの動作の動きに適応するように、さらにローラ対間の一貫性のある挟持力を維持するように、設計される。しかしながら実際には、シール板と機構の内部の摩擦が挟持力を変化させる。これがさらに、ガラスリボンに加えられるローラの力の水平成分および鉛直成分を変化させる。このローラの力の循環は、応力またはそのばらつきとして、歪みまたはそのばらつきとして、または、さらにガラス厚の変化としてまで、製品に直接影響を与える可能性がある。
【0038】
図2に示されているのは、ガラスリボン20の一方のエッジ部分34の方を向いて見た、図1の装置の一部の図である。1対の向かい合ったエッジローラアセンブリ26が図示されており、各エッジローラアセンブリは、ローラシャフト44とシャフトベアリングアセンブリ46とを介してエッジローラ支持部材42と連結している、ローラ接触面40を備えている。接触面40は、エッジローラの機能次第で、粘性、粘弾性、または弾性部分を含むリボンの任意の鉛直位置でリボンと接触することができる。
【0039】
エッジローラ支持部材42は、さらにベアリング50に連結される。ベアリング50は低摩擦のベアリングであることが好ましく、かつ、直線状エアスライドまたは回転式エアベアリングのようなエアベアリングであることが好ましい。エッジローラ支持部材42はその結果、矢印52で示されているような、底部18を通過した鉛直平面を突っ切る方向への、エッジローラ支持部材42の低摩擦運動を促進する。図2に示されている付勢力54のような付勢力がエッジローラ支持部材42に加えられ、向かい合っているエッジローラアセンブリと組み合わせてエッジローラ対の接触面40間でガラスリボンを挟持するように作用する。各エッジローラ支持部材の動きは、方向52に沿った単純移動である必要なはいことに留意されたい。例えば、エッジローラの接触面が弧を描いてリボンから離れるように、各エッジローラアセンブリを軸周りで揺れ動くように構成してもよい(図4C)。この事例では、ベアリングが支持している支持部材42は、カウンタウエイト69および重力Gの動きによって、直線状の移動よりもむしろ部分的に回転を経た動きに適応するように設計されている。
【0040】
図3は、シュラウド22とリボンエッジ部分34を含むガラスリボン20との一部を図示したものである。シュラウド22は固定された第1シール板56を備えている。第1シール板56は個別の板として図示されているが、第1シール板56を単にシュラウド自体の一部とすることもできる。第1シール板56は、第1シール板の厚さに亘って延びた、板の面60において細長い形状の、開口58を画成する(図4Aおよび4B参照)。
【0041】
シュラウドによって画成される内部空間内の環境は、シュラウド外側の領域(例えば、約125℃未満)に比べて高温(例えば、600℃〜900℃)であるため、例えば被駆動ローラに用いる駆動力(例えば、電気または油圧モータ28)やエッジローラの機械的ポジショニング設備など、エッジローラのできるだけ多くの部分をシュラウド外部で保持するようにあらゆる努力がなされている。しかしながらそのためには、エッジローラアセンブリ、特にエッジローラのシャフトは、その夫々の位置でシュラウドを貫通する必要がある。緩和するものがなければ、この貫通によって、シュラウド内側の雰囲気30とシュラウド外側の雰囲気32との間でのガスの交換を許容し得る開口が生成される。一般に、高温の内部での浮力効果により、雰囲気30の圧力はシュラウドの高さとともに増加する。シュラウドのより高い位置にある開口は一般に基部からの気流を増加させて内部の熱環境を乱すため、開口の大きさと外部の圧力は慎重に制御される。すなわち、より高温の外部ガスが出て行くのを防ぐため、内部雰囲気の圧力を(外部雰囲気と比較して)同じあるいは若干プラスの圧力で維持し、かつエッジローラシャフトの回転運動と横方向の運動との両方を依然可能とするようなやり方で、各シャフトの貫通をシールすることが非常に有益であると思われる。典型的には、シュラウドの内部および外部の雰囲気は空気である。
【0042】
従って、シャフト44は、ベアリングアセンブリ46により支持され、さらにシャフト44とともに回転するようにシャフトに取り付けられた第2シール板66を含む。開口58が細長いのは、シャフト44の横方向の動き(図4Aの矢印68で表される)を受け入れるように設計されたことによるものである。しかしながら、開口58は直線状(真っ直ぐ)である必要はなく、いくつかの実施形態においてはシャフトの横方向の動きが回転成分を含む可能性があるため、いくらか曲がっていてもよい(図4B)。
【0043】
図5に示すように、第1シール板56は、ガス源(図示なし)から加圧ガスを受け取る通路70をさらに含むことが好ましい。供給された加圧ガスは通路70を通って移動し、第1シール板56の表面に形成された孔72を通って第1シール板56から出て行く。第1および第2シール板56、66間の間隙74内の圧力Pgを、シュラウドにより包囲された雰囲気30の圧力Ps以下に調整できるよう、孔72は第2シール板66に面して配置される。第2シール板66がシャフト44とともに回転するとき、第1および第2シール板が接触しないことが好ましいため、間隙74は、約0.254cm以下であることが好ましく、約0.127mm以下であることがより好ましい。
【0044】
第1および第2シール板56、66は、より高温の雰囲気がシュラウドから出て行くことを防ぐシールアセンブリ76を含む。さらに、シールアセンブリ76の設計は摩擦力を最小限に抑えるが、この摩擦力は第1および第2シール板56、66が接触してシャフト44の動きを妨害する摩擦力を生み出した場合に作用し始める可能性があるものである。従って、接触が生じる場合に備えて、シール板56、66の一方または両方は、窒化ホウ素、または他の低摩擦材料(黒鉛など)を含むことが好ましい。鋼と鋼、および鋼と鉄の摩擦係数は、典型的には約0.4〜0.8の範囲である。一方、黒鉛と鋼、または窒化ホウ素と鋼の摩擦係数は、典型的には≦0.1である。このような低摩擦材料を、例えば、第1または第2シール板の一方または両方において、接触する可能性のある表面上のコーティングまたは層71とすることができる。
【0045】
図6は別の実施形態の分解図を描いたものであり、ここでシールアセンブリ76は第3シール板78を含む。本実施形態によれば、第1シール板56および第3シール板78は箱配置を形成し、第2シール板66は第1および第3シール板56、78の間に限定される。図6および図7では、第2シール板66を収容するために必要な間隔を提供するために第1シール板56が「L」字状のエッジを有しているように描かれているが、第1シール板56を平坦としたままで、すなわち平坦な第1および第3シール板56、78の間にスペーサ部材82を含むことで(図8参照)、この機能はシール板78とともに容易に達成することができるであろう。第1シール板56と同様に第3シール板78は、これを貫通するシャフト44の横方向の動きを受け入れるため、細長い開口58を含む。さらに、第3シール板78は、第2シール板66に面して配置されて加圧ガスを供給するガスポート84を含んでもよい。ガス流は矢印43で図示されている。
【0046】
第1シール板56および第3シール板78の通路に供給された加圧ガスは、第1シール板56と第2シール板66との間の間隙74に調整用の圧力を提供することに加え、第1および第3シール板と第2シール板との間に、シール板間の接触の可能性を最小限に抑えるガスクッションを生成する役目も果たすことができる。この接触は、例えば、シャフト44のシャフト縦軸86に沿った動きに起因して生じる可能性がある。第3シール板78に供給されたガスは、第1シール板56から出ているガスによって第2シール板66に加えられた圧力の反力としての役目も果たすことができる。
【0047】
図9は、1対のエッジローラアセンブリ26の上面断面図を示したものであり、このエッジローラアセンブリ26は、その夫々の接触面40の間でガラスリボン20のエッジを挟持するように配置されている。また、夫々のシールアセンブリ76も図示されている。
【0048】
図10で描かれている別の実施形態において、第1シール板56から出ているガスによって加えられる力の反力を、第2および第3シール板66、78間の間隙90内に設置されたスプリング88によって提供することができる。しかしながら、スプリングとシール板との間の接触は、2つのシール板が互いに重なることを許容された場合にその2つのシール板間で示される可能性のある摩擦よりは少ないものの、ガラスリボンに現われ得る摩擦を依然として生成するため、これはそれほど好ましくない。
【0049】
限定するものではないが、本開示による例示的な実施形態は以下のものを含む。
【0050】
C1.ガラスリボンを延伸する装置において、ガラスリボンを供給する成形本体、リボンの周囲に配置され、内部の雰囲気圧力が第1圧力Psである延伸チャンバを画成し、第1シール板を備えているシュラウド、エッジローラアセンブリであって、シュラウドを貫いて延伸チャンバ内に延びている回転可能なシャフトと、延伸チャンバ内でガラスリボンのエッジに接触する、シャフト上に配置された接触面とを備えているエッジローラアセンブリ、および、シャフトに連結された第2シール板、を備え、第1および第2シール板の間に間隙が設けられており、この間隙内の雰囲気圧力を第1圧力Ps以下の第2圧力Pgで維持するようにこの間隙にガスが注入され、さらに、第1シール板が、シャフトの縦軸を横切る方向にこのシャフトが動くことを可能にするスロットを含み、シャフトがこのスロットを貫通して延伸チャンバ内に延びていることを特徴とする装置。
【0051】
C2.ガスが、第1シール板の中に形成された、この第1シール板の第2シール板に面している表面で開いている通路を通って、注入されることを特徴とするC1記載の装置。
【0052】
C3.第3シール板の開口をシャフトが貫通し、かつ第2シール板が第1シール板および第3シール板の間に配置されるように、この第3シール板を設置してさらに備えていることを特徴とするC1またはC2記載の装置。
【0053】
C4.ガスが注入されるときにこのガスが通過する、第3シール板の第2シール板に面している表面で開いているガス通路を、この第3シール板が備えていることを特徴とするC3記載の装置。
【0054】
C5.第2および第3シール板の間に設置されたスプリング部材をさらに備えていることを特徴とするC3記載の装置。
【0055】
C6.第1および第2シール板の間の間隙が、約0.254cm以下であることを特徴とするC1からC5いずれか1項記載の装置。
【0056】
C7.第1または第2シール板が、0.4未満の摩擦係数を有することを特徴とするC1からC6いずれか1項記載の装置。
【0057】
C8.第1シール板または第2シール板が、黒鉛または窒化ホウ素の層を備えていることを特徴とするC1からC7いずれか1項記載の装置。
【0058】
C9.シャフトが、シャフトの縦軸を横切る方向へのこのシャフトの変位を提供するエアベアリングと連結されていることを特徴とするC1からC8いずれか1項記載の装置。
【0059】
C10.ガラスリボンを延伸する装置において、ガラスリボンを供給する成形本体、リボンの周囲に配置され、内部の雰囲気圧力が第1圧力Psである延伸チャンバを画成するシュラウド、エッジローラアセンブリであって、シュラウドを貫いて延伸チャンバ内に延びている回転可能なシャフトと、延伸チャンバ内でガラスリボンのエッジに接触する、シャフト上に配置された接触面と、シャフトの縦軸を横切る方向へのこのシャフトの変位を可能にする、シャフトに連結されたエアベアリングとを備えているエッジローラアセンブリ、および、シュラウドに取り付けられた第1シール板と、シャフトに連結された第2シール板とを備えているシールアセンブリ、を備え、第1および第2シール板の間に間隙が設けられており、この間隙内の雰囲気圧力を第1圧力Ps以下の第2圧力Pgで維持するようにこの間隙にガスが注入され、さらに、第1シール板が、シャフトの縦軸を横切る方向へのこのシャフトの動きを受け入れるスロットを含み、シャフトがこのスロットを貫通して延伸チャンバ内に延びていることを特徴とする装置。
【0060】
C11.第1シール板または第2シール板が、黒鉛または窒化ホウ素の層を備えていることを特徴とするC10記載の装置。
【0061】
C12.第1および第2シール板の向かい合っている表面間の摩擦係数が0.4未満であることを特徴とするC10またはC11記載の装置。
【0062】
C13.シャフトがガスベアリングに連結されていることを特徴とするC10からC12いずれか1項記載の装置。
【0063】
C14.ガラスリボンを延伸する方法において、成形本体からガラスリボンを延伸する工程であって、ガラスリボンがこのリボンの周囲に配置されたシュラウドにより画成される延伸チャンバの中を通過し、シュラウドが第1シール板を備え、かつ延伸チャンバ内部の雰囲気圧力が第1圧力Psである工程、回転可能なシャフトであって、シャフトの縦軸を横切る方向にこのシャフトが動くことを可能とする第1シール板に設けられた開口を貫通して、延伸チャンバ内に延びているシャフトと、シャフトとともに回転するようにシャフトに連結された第2シール板と、ガラスリボンのエッジに接触する、シャフト上に配置された接触面と、を備えているエッジローラアセンブリを用いて、ガラスリボンに接触する工程、第2シール板が第1シール板に対して回転するとき、第1および第2シール板の間の第1間隙内の雰囲気圧力PgがPs以下であるように、第1間隙に加圧ガスを注入する工程、を含み、さらに、接触する工程が、シャフトの縦軸を横切る方向にこのシャフトを変位させる付勢力をシャフトに連結する工程を含むことを特徴とする方法。
【0064】
C15.シャフトの変位に抵抗する最大摩擦力が、2.3kg未満であることを特徴とするC14記載の方法。
【0065】
C16.接触面が、実質的に一定の力をガラスリボンに対して加えることを特徴とするC14またはC15記載の方法。
【0066】
C17.シャフトの変位が、シャフトをガスベアリングで支持する工程を含むことを特徴とするC14からC16いずれか1項記載の方法。
【0067】
C18.エッジローラアセンブリが第3シール板をさらに備え、第2シール板が第1および第3シール板の間で回転するように、第3シール板が第1シール板と相対して配置されることを特徴とするC14からC17いずれか1項記載の方法。
【0068】
C19.第2および第3シール板の間の第2間隙にガスを注入する工程をさらに含むことを特徴とするC14からC18いずれか1項記載の方法。
【0069】
C20.第1および第2シール板の向かい合っている表面間の摩擦係数が0.4未満であることを特徴とするC14からC19いずれか1項記載の方法。
【0070】
上述の実施形態、特に任意の「好ましい」実施形態は、本発明の原理を明確に理解するために説明したにすぎない単なる可能な実施例であることを強調したい。本発明の精神および原理から実質的に逸脱することなく、上述の実施形態の多くの変形および改変をなすこともできる。これら全ての改変および変形は、本書で本開示および本発明の範囲内に含まれ、かつ以下の請求項によって保護されると意図される。
【符号の説明】
【0071】
12 成形本体
20 ガラスリボン
22 シュラウド
26 エッジローラアセンブリ
40 接触面
44 シャフト
54 付勢力
56 第1シール板
66 第2シール板
70、84 通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスリボンを延伸する装置において、
ガラスリボン(20)を供給する成形本体(12)、
前記リボンの周囲に配置され、内部の雰囲気圧力が第1圧力Psである延伸チャンバを画成し、第1シール板(56)を備えているシュラウド(22)、
エッジローラアセンブリであって、
前記シュラウド(22)を貫いて前記延伸チャンバ内に延びている回転可能なシャフト(44)と、
前記延伸チャンバ内で前記ガラスリボン(20)のエッジ(34)と接触する、前記シャフト(44)上に配置された接触面(40)と、
を備えているエッジローラアセンブリ、および、
前記シャフト(44)に連結された第2シール板(66)、
を備え、前記第1および第2シール板の間に間隙(74)が設けられており、該間隙内の雰囲気圧力を前記第1圧力Ps以下の第2圧力Pgで維持するように該間隙にガスが注入され、さらに、前記第1シール板(56)が、前記シャフト(44)の縦軸(86)を横切る方向に該シャフト(44)が動くことを可能にするスロット(58)を含み、前記シャフトが該スロット(58)を貫通して前記延伸チャンバ内に延びていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記ガスが、前記第1シール板(56)の中に形成された、該第1シール板(56)の前記第2シール板(66)に面している表面で開いている通路(70)を通って、注入されることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
第3シール板(78)の開口を前記シャフト(44)が貫通し、かつ前記第2シール板(66)が前記第1シール板(56)および該第3シール板(78)の間に配置されるように、該第3シール板(78)を設置してさらに備えていることを特徴とする請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記ガスが前記第2および第3シール板の間の間隙に注入されるときに該ガスが通過する、前記第3シール板(78)の前記第2シール板(66)に面している表面で開いているガス通路(84)を、該第3シール板(78)が備えていることを特徴とする請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記第2および第3シール板(66,78)の間に設置されたスプリング部材(88)をさらに備えていることを特徴とする請求項3記載の装置。
【請求項6】
前記第1シール板(56)または第2シール板(66)が、黒鉛または窒化ホウ素の層(71)を備えていることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の装置。
【請求項7】
前記シャフト(44)が、前記シャフトの縦軸を横切る方向への該シャフト(44)の変位を提供するエアベアリングと連結されていることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の装置。
【請求項8】
ガラスリボンを延伸する方法において、
成形本体(12)からガラスリボン(20)を延伸する工程であって、前記ガラスリボン(20)が該リボン(20)の周囲に配置されたシュラウド(22)により画成される延伸チャンバの中を通過し、前記シュラウド(22)が第1シール板(56)を備え、かつ前記延伸チャンバ内部の雰囲気圧力が第1圧力Psである工程、
回転可能なシャフト(44)であって、該シャフトの縦軸を横切る方向に該シャフトが動くことを可能とする前記第1シール板に設けられた開口(58)を貫通して、前記延伸チャンバ内に延びているシャフトと、
前記シャフト(44)とともに回転するように前記シャフト(44)に連結された第2シール板(66)と、
前記ガラスリボン(20)のエッジに接触する、前記シャフト(44)上に配置された接触面(40)と、
を備えているエッジローラアセンブリを用いて、前記ガラスリボン(20)に接触する工程、
前記第2シール板(66)が前記第1シール板(56)に対して回転するとき、前記第1シール板(56)および第2シール板(66)の間の第1間隙内の雰囲気圧力PgがPs以下であるように、前記第1間隙に加圧ガスを注入する工程、
を含み、さらに、
前記接触する工程が、前記シャフト(44)の縦軸を横切る方向に該シャフト(44)を変位させる付勢力(54)を前記シャフト(44)に連結する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
前記接触面(40)が、実質的に一定の力を前記ガラスリボン(20)に対して加えることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記エッジローラアセンブリが第3シール板(78)をさらに備え、前記第2シール板(66)が前記第1シール板(56)および第3シール板(78)の間で回転するように、前記第3シール板(78)が前記第1シール板(56)と相対して配置されることを特徴とする請求項8または9記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−98884(P2011−98884A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−243825(P2010−243825)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【復代理人】
【識別番号】100116540
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 香
【復代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
【Fターム(参考)】