力検出装置
【課題】 構造を単純化し、他軸成分の干渉を排除し、力とモーメントとを区別して検出する。
【解決手段】 支持基板300上のX軸の正負およびY軸の正負の4カ所の円形領域に、電極E1〜E8,F1〜F8を形成する。各円形領域の上方には、所定距離をおいて、導電性可撓性肉薄円板を配置し、対向電極との間で容量素子を形成する。各肉薄円板の上面中央には柱状体の下端を固定し、各柱状体の上端には受力体を取り付ける。受力体に力が作用すると、4本の柱状体が傾斜したり、上下に変位したりして、各容量素子の静電容量値が変化する。電極E1〜E8によって構成される主容量素子の静電容量値の変化に基づき、各座標軸方向の力Fx,Fy,Fzと各座標軸まわりのモーメントMx,My,Mzとを検出する。このとき、電極F1〜F8によって構成される副容量素子の静電容量値の変化に基づき、他軸成分の干渉を相殺する。
【解決手段】 支持基板300上のX軸の正負およびY軸の正負の4カ所の円形領域に、電極E1〜E8,F1〜F8を形成する。各円形領域の上方には、所定距離をおいて、導電性可撓性肉薄円板を配置し、対向電極との間で容量素子を形成する。各肉薄円板の上面中央には柱状体の下端を固定し、各柱状体の上端には受力体を取り付ける。受力体に力が作用すると、4本の柱状体が傾斜したり、上下に変位したりして、各容量素子の静電容量値が変化する。電極E1〜E8によって構成される主容量素子の静電容量値の変化に基づき、各座標軸方向の力Fx,Fy,Fzと各座標軸まわりのモーメントMx,My,Mzとを検出する。このとき、電極F1〜F8によって構成される副容量素子の静電容量値の変化に基づき、他軸成分の干渉を相殺する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は力検出装置に関し、特に、力とモーメントとを独立して検出するのに適した力検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットや産業機械の動作制御を行うために、種々のタイプの力検出装置が利用されている。また、電子機器の入力装置のマン・マシンインターフェイスとしても、小型の力検出装置が組み込まれている。このような用途に用いる力検出装置には、小型化およびコストダウンを図るために、できるだけ構造を単純にするとともに、三次元空間内での各座標軸に関する力をそれぞれ独立して検出できるようにすることが要求される。
【0003】
一般に、力検出装置の検出対象には、所定の座標軸方向を向いた力成分と、所定の座標軸まわりのモーメント成分とがある。三次元空間内にXYZ三次元座標系を定義した場合、検出対象は、各座標軸方向の力成分Fx,Fy,Fzと、各座標軸まわりのモーメント成分Mx,My,Mzとの6つの成分になる。
【0004】
このような6つの力成分をそれぞれ独立して検出することができる力検出装置として、たとえば、下記の特許文献1には、比較的単純な構造をもった装置が開示されている。この特許文献1に開示された技術は、既に米国特許第6915709号・米国特許第7121147号・欧州特許第1464939号が付与されている技術であり、受力体と支持基板とを複数の柱状体で接続した構造物を用意し、各柱状体から支持基板に加わる押圧力や各柱状体の傾斜を個別に測定することにより、受力体に加わった力の各成分を検出するものである。
【0005】
また、下記の特許文献2に開示されている技術も、既に米国特許第7219561号が付与されている技術である。この技術によれば、各柱状体から支持基板に加わる押圧力や各柱状体の傾斜を個別に測定するセンサとして静電容量素子を用い、この静電容量素子を構成する特定の電極間に配線を施すことにより、受力体に加わった力の各成分を検出するための演算を単純化することが可能になる。
【0006】
一方、下記の特許文献3には、8個の容量素子のみを用いて、6つの力成分をそれぞれ独立して検出する技術が開示されている。この技術によれば、容量素子の形成に必要な電極構造をより単純化することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−354049号公報
【特許文献2】特開2004−325367号公報
【特許文献3】特開2008−096229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したとおり、特許文献1〜3に開示されている力検出装置は、比較的単純な構造により、各座標軸方向の力成分Fx,Fy,Fzと、各座標軸まわりのモーメント成分Mx,My,Mzとの6つの成分をそれぞれ独立して検出することが可能である。しかしながら、実用上は、他軸成分の干渉を完全に排除した状態で、必要な成分のみの正確な測定値を得ることは困難であり、他軸成分の干渉による測定精度の低下は避けられない。もちろん、このような他軸成分の干渉程度が、個々の用途に応じた許容誤差範囲内であれば支障はないが、最近は、様々な利用分野において、より測定精度の高い力検出装置が望まれている。
【0009】
そこで本発明は、できるたけ単純な構造をもち、しかも他軸成分の干渉を排除し、力とモーメントとを区別して検出することが可能な力検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 本発明の第1の態様は、支持基板と、この支持基板の上方に配置された受力体と、支持基板と受力体とを接続するための4本の柱状体と、を備え、支持基板を固定した状態において、受力体に作用した力を検出する力検出装置において、
4本の柱状体の各上端は、可撓性をもった部材を介して受力体に接続されており、4本の柱状体の各下端には、それぞれ可撓性をもった下端側肉薄部が接続されており、
下端側肉薄部は、支持基板の上面から所定距離をおいた上方位置に支持基板の上面に対して平行に配置されるように、その周囲が台座を介して支持基板に接続され、その上面中心部が柱状体の下端に接続されており、
XY平面が、支持基板の上面もしくはその上方に、支持基板の上面に対して平行となるように位置し、上方を正とし下方を負とするZ軸が支持基板の上面のほぼ中心位置を通るように、XYZ三次元座標系を定義したときに、
4本の柱状体は、その中心軸がいずれもZ軸に平行になるように配置されており、第1の柱状体は、その中心軸がX軸の正の部分に交差する位置に配置され、第2の柱状体は、その中心軸がX軸の負の部分に交差する位置に配置され、第3の柱状体は、その中心軸がY軸の正の部分に交差する位置に配置され、第4の柱状体は、その中心軸がY軸の負の部分に交差する位置に配置され、
第1の柱状体の下端側肉薄部とこれに対向する支持基板の上面とによって挟まれた空間内に、一方の電極が下端側肉薄部の下面に形成され、他方の電極が支持基板の上面に形成された複数の容量素子からなる第1のセンサが配置され、
第2の柱状体の下端側肉薄部とこれに対向する支持基板の上面とによって挟まれた空間内に、一方の電極が下端側肉薄部の下面に形成され、他方の電極が支持基板の上面に形成された複数の容量素子からなる第2のセンサが配置され、
第3の柱状体の下端側肉薄部とこれに対向する支持基板の上面とによって挟まれた空間内に、一方の電極が下端側肉薄部の下面に形成され、他方の電極が支持基板の上面に形成された複数の容量素子からなる第3のセンサが配置され、
第4の柱状体の下端側肉薄部とこれに対向する支持基板の上面とによって挟まれた空間内に、一方の電極が下端側肉薄部の下面に形成され、他方の電極が支持基板の上面に形成された複数の容量素子からなる第4のセンサが配置され、
第1のセンサは、XY座標系の第1象限に位置する第1の主容量素子と、XY座標系の第4象限に位置する第2の主容量素子と、を有し、
第2のセンサは、XY座標系の第2象限に位置する第3の主容量素子と、XY座標系の第3象限に位置する第4の主容量素子と、を有し、
第3のセンサは、第2の副容量素子と、第4の副容量素子と、を有し、
第4のセンサは、第1の副容量素子と、第3の副容量素子と、を有し、
各容量素子の静電容量値に基づいて、受力体に作用した力の所定方向成分を検出する検出回路を更に備え、
受力体にX軸まわりのモーメントMxが作用した場合に、第1の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、第1の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、第2の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、第2の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、第3の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、第3の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、第4の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、第4の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなるように、各容量素子が構成され、
検出回路が、第1の主容量素子の静電容量値をC1、第1の副容量素子の静電容量値をD1、第2の主容量素子の静電容量値をC2、第2の副容量素子の静電容量値をD2、第3の主容量素子の静電容量値をC3、第3の副容量素子の静電容量値をD3、第4の主容量素子の静電容量値をC4、第4の副容量素子の静電容量値をD4としたときに、受力体に作用した力のY軸方向成分Fyを、
Fy=(C1+D1)−(C2+D2)+(C3+D3)−(C4+D4)
なる演算式を利用して求めるようにしたものである。
【0011】
(2) 本発明の第2の態様は、上述の第1の態様に係る力検出装置において、
検出回路が、更に、受力体に作用した力のY軸まわりのモーメント成分Myを、
My=(C1+D1)+(C2+D2)−(C3+D3)−(C4+D4)
なる演算式を利用して求めるようにしたものである。
【0012】
(3) 本発明の第3の態様は、上述の第1または第2の態様に係る力検出装置において、
検出回路が、更に、受力体に作用した力のZ軸方向成分Fzを、
Fz=−((C1+D1)+(C2+D2)+(C3+D3)+(C4+D4))
なる演算式を利用して求めるようにしたものである。
【0013】
(4) 本発明の第4の態様は、上述の第1〜第3の態様に係る力検出装置において、
第1の主容量素子と第1の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第2の主容量素子と第2の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第3の主容量素子と第3の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第4の主容量素子と第4の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、を更に設け、
検出回路が、第1の主容量素子と第1の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C1+D1」の値として用い、第2の主容量素子と第2の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C2+D2」の値として用い、第3の主容量素子と第3の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C3+D3」の値として用い、第4の主容量素子と第4の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C4+D4」の値として用いるようにしたものである。
【0014】
(5) 本発明の第5の態様は、上述の第1〜第4の態様に係る力検出装置において、
各下端側肉薄部が導電性材料によって構成されており、この下端側肉薄部自身が、同一のセンサを構成する複数の容量素子についての共通電極として機能するようにしたものである。
【0015】
(6) 本発明の第6の態様は、上述の第5の態様に係る力検出装置において、
第1〜第4の主容量素子を構成する支持基板側の4枚の電極が、同一形状および同一サイズの電極によって構成されており、かつ、これら4枚の電極配置パターンが、XZ平面およびYZ平面の双方に関して、面対称になっているようにしたものである。
【0016】
(7) 本発明の第7の態様は、支持基板と、この支持基板の上方に配置された受力体と、支持基板と受力体とを接続するための4本の柱状体と、を備え、支持基板を固定した状態において、受力体に作用した力を検出する力検出装置において、
4本の柱状体の各上端は、可撓性をもった部材を介して受力体に接続されており、4本の柱状体の各下端には、それぞれ可撓性をもった下端側肉薄部が接続されており、
下端側肉薄部は、支持基板の上面から所定距離をおいた上方位置に支持基板の上面に対して平行に配置されるように、その周囲が台座を介して支持基板に接続され、その上面中心部が柱状体の下端に接続されており、
XY平面が、支持基板の上面もしくはその上方に、支持基板の上面に対して平行となるように位置し、上方を正とし下方を負とするZ軸が支持基板の上面のほぼ中心位置を通るように、XYZ三次元座標系を定義したときに、
4本の柱状体は、その中心軸がいずれもZ軸に平行になるように配置されており、第1の柱状体は、その中心軸がX軸の正の部分に交差する位置に配置され、第2の柱状体は、その中心軸がX軸の負の部分に交差する位置に配置され、第3の柱状体は、その中心軸がY軸の正の部分に交差する位置に配置され、第4の柱状体は、その中心軸がY軸の負の部分に交差する位置に配置され、
第1の柱状体の下端側肉薄部とこれに対向する支持基板の上面とによって挟まれた空間内に、一方の電極が下端側肉薄部の下面に形成され、他方の電極が支持基板の上面に形成された複数の容量素子からなる第1のセンサが配置され、
第2の柱状体の下端側肉薄部とこれに対向する支持基板の上面とによって挟まれた空間内に、一方の電極が下端側肉薄部の下面に形成され、他方の電極が支持基板の上面に形成された複数の容量素子からなる第2のセンサが配置され、
第3の柱状体の下端側肉薄部とこれに対向する支持基板の上面とによって挟まれた空間内に、一方の電極が下端側肉薄部の下面に形成され、他方の電極が支持基板の上面に形成された複数の容量素子からなる第3のセンサが配置され、
第4の柱状体の下端側肉薄部とこれに対向する支持基板の上面とによって挟まれた空間内に、一方の電極が下端側肉薄部の下面に形成され、他方の電極が支持基板の上面に形成された複数の容量素子からなる第4のセンサが配置され、
第1のセンサは、XY座標系の第1象限に位置する第1の主容量素子と、XY座標系の第4象限に位置する第2の主容量素子と、第6の副容量素子と、第8の副容量素子と、を有し、
第2のセンサは、XY座標系の第2象限に位置する第3の主容量素子と、XY座標系の第3象限に位置する第4の主容量素子と、第5の副容量素子と、第7の副容量素子と、を有し、
第3のセンサは、XY座標系の第1象限に位置する第5の主容量素子と、XY座標系の第2象限に位置する第6の主容量素子と、第2の副容量素子と、第4の副容量素子と、を有し、
第4のセンサは、XY座標系の第4象限に位置する第7の主容量素子と、XY座標系の第3象限に位置する第8の主容量素子と、第1の副容量素子と、第3の副容量素子と、を有し、
各容量素子の静電容量値に基づいて、受力体に作用した力の所定方向成分を検出する検出回路を更に備え、
受力体にX軸まわりのモーメントMxが作用した場合に、第1の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、第1の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、第2の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、第2の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、第3の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、第3の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、第4の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、第4の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、
受力体にY軸まわりのモーメントMyが作用した場合に、第5の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、第5の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、第6の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、第6の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、第7の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、第7の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、第8の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、第8の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなるように、各容量素子が構成され、
検出回路が、第1の主容量素子の静電容量値をC1、第1の副容量素子の静電容量値をD1、第2の主容量素子の静電容量値をC2、第2の副容量素子の静電容量値をD2、第3の主容量素子の静電容量値をC3、第3の副容量素子の静電容量値をD3、第4の主容量素子の静電容量値をC4、第4の副容量素子の静電容量値をD4、第5の主容量素子の静電容量値をC5、第5の副容量素子の静電容量値をD5、第6の主容量素子の静電容量値をC6、第6の副容量素子の静電容量値をD6、第7の主容量素子の静電容量値をC7、第7の副容量素子の静電容量値をD7、第8の主容量素子の静電容量値をC8、第8の副容量素子の静電容量値をD8、としたときに、
受力体に作用した力のY軸方向成分Fyを、
Fy=(C1+D1)−(C2+D2)+(C3+D3)−(C4+D4)
なる演算式を利用して求め、
受力体に作用した力のX軸方向成分Fxを、
Fx=(C5+D5)−(C6+D6)+(C7+D7)−(C8+D8)
なる演算式を利用して求めるようにしたものである。
【0017】
(8) 本発明の第8の態様は、上述の第7の態様に係る力検出装置において、
検出回路が、更に、受力体に作用した力のY軸まわりのモーメント成分Myを、
My=(C1+D1)+(C2+D2)−(C3+D3)−(C4+D4)
なる演算式を利用して求め、受力体に作用した力のX軸まわりのモーメント成分Mxを、
Mx=−(C5+D5)−(C6+D6)+(C7+D7)+(C8+D8)
なる演算式を利用して求めるようにしたものである。
【0018】
(9) 本発明の第9の態様は、上述の第7または第8の態様に係る力検出装置において、
検出回路が、更に、受力体に作用した力のZ軸方向成分Fzを、
Fz=−((C1+D1)+(C2+D2)+(C3+D3)+(C4+D4)+(C5+D5)+(C6+D6)+(C7+D7)+(C8+D8))
なる演算式を利用して求めるようにしたものである。
【0019】
(10) 本発明の第10の態様は、上述の第7〜第9の態様に係る力検出装置において、
検出回路が、更に、受力体に作用した力のZ軸まわりのモーメント成分Mzを、
Mz=(C1+D1)−(C2+D2)−(C3+D3)+(C4+D4)−(C5+D5)+(C6+D6)+(C7+D7)−(C8+D8)
なる演算式を利用して求めるようにしたものである。
【0020】
(11) 本発明の第11の態様は、上述の第7〜第10の態様に係る力検出装置において、
第1の主容量素子と第1の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第2の主容量素子と第2の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第3の主容量素子と第3の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第4の主容量素子と第4の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第5の主容量素子と第5の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第6の主容量素子と第6の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第7の主容量素子と第7の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第8の主容量素子と第8の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、を更に設け、
検出回路が、第1の主容量素子と第1の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C1+D1」の値として用い、第2の主容量素子と第2の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C2+D2」の値として用い、第3の主容量素子と第3の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C3+D3」の値として用い、第4の主容量素子と第4の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C4+D4」の値として用い、第5の主容量素子と第5の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C5+D5」の値として用い、第6の主容量素子と第6の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C6+D6」の値として用い、第7の主容量素子と第7の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C7+D7」の値として用い、第8の主容量素子と第8の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C8+D8」の値として用いるようにしたものである。
【0021】
(12) 本発明の第12の態様は、上述の第7〜第11の態様に係る力検出装置において、
4本の柱状体が、同一形状および同一サイズの構造体によって構成されており、かつ、これら4本の柱状体の配置パターンが、XZ平面およびYZ平面の双方に関して、面対称になっているようにしたものである。
【0022】
(13) 本発明の第13の態様は、上述の第12の態様に係る力検出装置において、
各下端側肉薄部が導電性材料によって構成されており、この下端側肉薄部自身が、同一のセンサを構成する複数の容量素子についての共通電極として機能するようにしたものである。
【0023】
(14) 本発明の第14の態様は、上述の第13の態様に係る力検出装置において、
第1〜第8の主容量素子を構成する支持基板側の8枚の電極が、同一形状および同一サイズの電極によって構成されており、かつ、これら8枚の電極の配置パターンが、XZ平面およびYZ平面の双方に関して、面対称になっているようにしたものである。
【0024】
(15) 本発明の第15の態様は、上述の第14の態様に係る力検出装置において、
第1および第2の主容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第1の柱状体の中心軸を中心にして配置された第1の環状帯をX軸に沿って切断して得られる2枚の電極によって構成され、
第3および第4の主容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第2の柱状体の中心軸を中心にして配置された第2の環状帯をX軸に沿って切断して得られる2枚の電極によって構成され、
第5および第6の主容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第3の柱状体の中心軸を中心にして配置された第3の環状帯をY軸に沿って切断して得られる2枚の電極によって構成され、
第7および第8の主容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第4の柱状体の中心軸を中心にして配置された第4の環状帯をY軸に沿って切断して得られる2枚の電極によって構成され、
第6および第8の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第1の環状帯によって囲まれた内側領域に配置され、
第5および第7の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第2の環状帯によって囲まれた内側領域に配置され、
第2および第4の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第3の環状帯によって囲まれた内側領域に配置され、
第1および第3の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第4の環状帯によって囲まれた内側領域に配置されているようにしたものである。
【0025】
(16) 本発明の第16の態様は、上述の第15の態様に係る力検出装置において、
各柱状体が円柱状構造体からなり、各下端側肉薄部が円盤状構造体からなり、各環状帯が円環状構造体からなるようにしたものである。
【0026】
(17) 本発明の第17の態様は、上述の第16の態様に係る力検出装置において、
第6および第8の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極のうち、一方が環状の形状をなす電極によって構成され、他方がその内側領域に配置された電極によって構成され、
第5および第7の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極のうち、一方が環状の形状をなす電極によって構成され、他方がその内側領域に配置された電極によって構成され、
第2および第4の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極のうち、一方が環状の形状をなす電極によって構成され、他方がその内側領域に配置された電極によって構成され、
第1および第3の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極のうち、一方が環状の形状をなす電極によって構成され、他方がその内側領域に配置された電極によって構成されているようにしたものである。
【0027】
(18) 本発明の第18の態様は、上述の第16の態様に係る力検出装置において、
第6および第8の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第1の柱状体の中心軸を中心として配置された円盤を、X軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極によって構成され、
第5および第7の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第2の柱状体の中心軸を中心として配置された円盤を、X軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極によって構成され、
第2および第4の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第3の柱状体の中心軸を中心として配置された円盤を、Y軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極によって構成され、
第1および第3の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第4の柱状体の中心軸を中心として配置された円盤を、Y軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極によって構成されているようにしたものである。
【0028】
(19) 本発明の第19の態様は、上述の第16の態様に係る力検出装置において、
第6および第8の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第1の柱状体の中心軸を中心として配置された円盤を、その中心点を通りY軸に平行な参照軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極によって構成され、
第5および第7の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第2の柱状体の中心軸を中心として配置された円盤を、その中心点を通りY軸に平行な参照軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極によって構成され、
第2および第4の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第3の柱状体の中心軸を中心として配置された円盤を、その中心点を通りX軸に平行な参照軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極によって構成され、
第1および第3の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第4の柱状体の中心軸を中心として配置された円盤を、その中心点を通りX軸に平行な参照軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極によって構成されているようにしたものである。
【0029】
(20) 本発明の第20の態様は、上述の第14〜第16の態様に係る力検出装置において、
第6および第8の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極がいずれも、第1の柱状体の中心軸を含みYZ平面に平行な参照面と、XZ平面と、の双方に関して、面対称となる形状をなし、
第5および第7の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極がいずれも、第2の柱状体の中心軸を含みYZ平面に平行な参照面と、XZ平面と、の双方に関して、面対称となる形状をなし、
第2および第4の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極がいずれも、第3の柱状体の中心軸を含みXZ平面に平行な参照面と、YZ平面と、の双方に関して、面対称となる形状をなし、
第1および第3の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極がいずれも、第4の柱状体の中心軸を含みXZ平面に平行な参照面と、YZ平面と、の双方に関して、面対称となる形状をなすようにしたものである。
【0030】
(21) 本発明の第21の態様は、上述の第14〜第16の態様に係る力検出装置において、
第6および第8の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極がいずれも、第1の柱状体の中心軸を含みYZ平面に平行な参照面に関して、面対称となる形状をなし、
第5および第7の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極がいずれも、第2の柱状体の中心軸を含みYZ平面に平行な参照面に関して、面対称となる形状をなし、
第2および第4の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極がいずれも、第3の柱状体の中心軸を含みXZ平面に平行な参照面に関して、面対称となる形状をなし、
第1および第3の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極がいずれも、第4の柱状体の中心軸を含みXZ平面に平行な参照面に関して、面対称となる形状をなすようにしたものである。
【0031】
(22) 本発明の第22の態様は、上述の第1〜第21の態様に係る力検出装置において、
主容量素子を構成する電極の面積と、これに対応する副容量素子を構成する電極の面積との比を、受力体にX軸まわりのモーメントMxもしくはY軸まわりのモーメントMyが作用した場合に、主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなるような面積比に設定したものである。
【0032】
(23) 本発明の第23の態様は、上述の第1〜第22の態様に係る力検出装置において、
4本の柱状体の各上端を受力体に接続するための可撓性をもった部材として、その周囲が受力体に接続され、その下面中心部が柱状体の上端に接続された上端側肉薄部が設けられているようにしたものである。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る力検出装置によれば、受力体と支持基板とを4本の柱状体で接続し、各柱状体から支持基板に加わる押圧力や各柱状体の傾斜を個別に測定することにより、受力体に加わった力の各成分を検出することができるため、構造が非常に単純な検出装置を実現することができる。しかも、基本的には、主容量素子を用いて各力成分をそれぞれ独立して検出する構成を採りつつ、個々の主容量素子にそれぞれ対応する副容量素子を設け、他軸成分の干渉要素をキャンセルできるようにしたため、他軸成分の干渉を排除し、力とモーメントとを区別して検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る力検出装置の基本構成を示す斜視図(一部はブロック図)である。
【図2】図1に示す力検出装置の基本的な動作原理を示す正面図である。
【図3】本発明の基本的な実施形態に係る力検出装置の上面図である。
【図4】本発明の基本的な実施形態に係る力検出装置の第1の側断面図であり、図3に示す装置をXZ平面に沿って切断した断面が示されている。
【図5】本発明の基本的な実施形態に係る力検出装置の第2の側断面図であり、図3に示す装置をYZ平面に沿って切断した断面が示されている。
【図6】図4,図5に示す力検出装置の受力体100を、X′Y′平面に沿って切断した状態を示す横断面図である。
【図7】図4,図5に示す力検出装置の中間体200を、切断線7−7に沿って切断した状態を示す横断面図である。
【図8】図4,図5に示す力検出装置の中間体200を、XY平面に沿って切断した状態を示す横断面図である。
【図9】図4,図5に示す力検出装置の支持基板300の上面図である。
【図10】本発明の実用的な実施形態に係る力検出装置のXZ側断面図である。
【図11】図10に示す力検出装置にX軸正方向の力+Fxが作用したときの構造体の変形態様を示す側断面図である。
【図12】図10に示す力検出装置にZ軸正方向の力+Fzが作用したときの構造体の変形態様を示す側断面図である。
【図13】図10に示す力検出装置にY軸まわりのモーメント+Myが作用したときの構造体の仮想的な変形態様を示す側断面図である。
【図14】図10に示す力検出装置において、8個の主容量素子C1〜C8を用いた各力成分の基本的な検出原理を示すテーブルであり、受力体に各力成分が作用したときの各主容量素子の静電容量値の変化の態様を示している(モーメントの作用に関しては、図14に示す仮想的な変形態様を前提としており、他軸干渉成分を考慮しない態様を示している)。
【図15】図14に示すテーブルに基づいて、8個の主容量素子C1〜C8の静電容量値を用いて各力成分を検出する原理を数式を用いて示す図である。
【図16】図14および図15に示す原理に基づく検出を行った場合に、X軸まわりのモーメントMxによるY軸方向の力Fyへの他軸干渉が生じる測定結果を示すグラフである。
【図17】他軸干渉成分を考慮して、図14に示すテーブルを補正したテーブルである(太線で囲った欄は、補正対象となった欄である)。
【図18】図9に示されている16枚の電極の拡大平面図である。
【図19】図10に示す力検出装置において、受力体に各力成分が作用したときの各副容量素子の静電容量値の変化の態様を示すテーブルである(太線で囲った欄は、副容量素子の静電容量値に変化が生じる欄である)。
【図20】図17に示す8個の主容量素子C1〜C8についての静電容量値の変化の態様を示す各欄と、図19に示す8個の副容量素子D1〜D8についての静電容量値の変化の態様を示す各欄と、の和を示すテーブルである(太線で囲った欄は、副容量素子の静電容量値に変化が生じる欄である)。
【図21】図20に示すテーブルに基づいて、8個の主容量素子C1〜C8および8個の副容量素子D1〜D8の静電容量値を用いて各力成分を検出する原理を数式を用いて示す図である。
【図22】主容量素子を構成する電極と副容量素子を構成する電極との面積比を決定するための実験方法の一例を示す側断面図である。
【図23】図18に示されている16枚の電極に対する配線例を示す拡大平面図である。
【図24】図18に示されている16枚の電極の第1の変形例(副容量素子を構成する8枚の電極F1〜F8の形状および配置が異なる)を示す拡大平面図である。
【図25】図24に示す第1の変形例において、受力体に各力成分が作用したときの各副容量素子D1〜D8の静電容量値の変化の態様を示すテーブルである。
【図26】図17に示す8個の主容量素子C1〜C8についての静電容量値の変化の態様を示す各欄と、図25に示す8個の副容量素子D1〜D8についての静電容量値の変化の態様を示す各欄と、の和を示すテーブルである。
【図27】図18に示されている16枚の電極の第2の変形例(副容量素子を構成する8枚の電極F1〜F8の形状および配置が異なる)を示す拡大平面図である。
【図28】図27に示す第2の変形例において、受力体に各力成分が作用したときの各副容量素子D1〜D8の静電容量値の変化の態様を示すテーブルである。
【図29】図17に示す8個の主容量素子C1〜C8についての静電容量値の変化の態様を示す各欄と、図28に示す8個の副容量素子D1〜D8についての静電容量値の変化の態様を示す各欄と、の和を示すテーブルである。
【図30】主容量素子C1を構成する電極E1に対して、副容量素子D1を構成する電極F1の配置を説明する平面図である。
【図31】主容量素子C1,C2を構成する電極E1,E2に対して、副容量素子D1,D2を構成する電極F1,F2の配置の一例(図18の実施例に対応する例)を説明する平面図である。
【図32】主容量素子C1,C2を構成する電極E1,E2に対して、副容量素子D1,D2を構成する電極F1,F2の配置の別な一例(図24の第1の変形例に対応する例)を説明する平面図である。
【図33】主容量素子C1,C2を構成する電極E1,E2に対して、副容量素子D1,D2を構成する電極F1,F2の配置の更に別な一例(図27の第2の変形例に対応する例)を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
【0036】
<<< §1. 装置の基本構造 >>>
はじめに、本発明に係る力検出装置の基本構造を説明する。なお、この基本構造それ自身は、前述した特許文献1〜3において、既に開示されているものである。
【0037】
図1に示すとおり、本発明に係る力検出装置の基本構成要素は、受力体10、第1の柱状体11、第2の柱状体12、第3の柱状体13、第4の柱状体14、支持基板20、第1のセンサ21、第2のセンサ22、第3のセンサ23、第4のセンサ24、検出回路30である。
【0038】
ここでは、説明の便宜上、XYZ三次元座標系と、これを上方に平行移動させたX′Y′Z′補助座標系を定義する。図示の例の場合、XYZ三次元座標系の原点Oは、支持基板20の上面中心位置に定義されており、支持基板20の上面がXY平面に含まれるようになっている。図の右方がX軸正方向、図の斜め奥がY軸正方向、図の上方がZ軸正方向である。一方、X′Y′Z′補助座標系の原点O′は、原点OをZ軸正方向に所定距離移動させた位置にある。具体的には、原点O′は受力体10の中心部に位置している。したがって、X軸とX′軸とは平行であり、Y軸とY′軸とは平行であり、Z軸とZ′軸とは重なり合っている。
【0039】
受力体10は、検出対象となる力を受ける構成要素であり、X′Y′Z′補助座標系の原点O′を受力体10の中心部にとったのは、この受力体10に作用する力を説明するための便宜である。図には、受力体10に対して作用する、X軸方向の力Fx、Y軸方向の力Fy、Z軸方向の力Fzを、それぞれX′軸、Y′軸、Z′軸に沿った矢印として示してあるが、もちろん、これらの力はそれぞれX軸、Y軸、Z軸にも平行な力であり、受力体10に対して加えられた力のX軸方向成分、Y軸方向成分、Z軸方向成分を示すものになる。
【0040】
このように、力Fx,Fy,Fzについては、X′Y′Z′補助座標系の各座標軸に沿った力と考えても、XYZ三次元座標系の各座標軸に沿った力と考えても、物理量としての本質に相違はないが、モーメントMx,My,Mzについては、座標系の原点位置をどこにとるかによって物理量としての本質は変わってくる。特に、本発明は、他軸成分の干渉を排除した高い測定精度をもつ力検出装置に係るものであるため、ここでは、XYZ三次元座標系とX′Y′Z′補助座標系とを明確に区別して取り扱うことにする。
【0041】
すなわち、本発明に係る力検出装置の検出対象となる力Fx,Fy,FzおよびモーメントMx,My,Mzは、あくまでもXYZ三次元座標系の各座標軸方向に作用する力および各座標軸まわりに作用するモーメントであり、図1において、モーメントMx,Myを示す矢印がそれぞれX軸およびY軸まわりに描かれているのはこのためである(Z軸とZ′軸とは重なるので、モーメントMzはZ′軸まわりのモーメントと考えても支障ない)。別言すれば、モーメントMxやMyが直接的に作用する物体は受力体10であるが、これらのモーメントは、受力体10を、その中心位置にある原点O′を中心として回転させる作用を果たすのではなく、受力体10を、XYZ三次元座標系の原点Oを中心として回転させる作用を果たすことになる。
【0042】
結局、この力検出装置は、XYZ三次元座標系において、受力体10に作用する力のX軸方向成分Fx、Y軸方向成分Fy、Z軸方向成分Fzと、X軸まわりのモーメント成分Mx、Y軸まわりのモーメント成分My、Z軸まわりのモーメント成分Mzをそれぞれ独立して検出する機能を有することになる。
【0043】
なお、本願では、「力」という文言は、特定の座標軸方向の力成分を意味する場合と、モーメント成分を含めた集合的な力を意味する場合とを、適宜使い分けることにする。たとえば、図1において、力Fx,Fy,Fzと言った場合は、モーメントではない各座標軸方向の力成分を意味しているが、6つの力Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzと言った場合は、各座標軸方向の力成分と各座標軸まわりのモーメント成分とを含む集合的な力を意味することになる。
【0044】
支持基板20は、受力体10の下方に配置され、受力体10を支持する機能を果たす構成要素である。上述したように、ここに示す例の場合、支持基板20の上面は、XY平面に含まれる。この力検出装置は、この支持基板20を固定した状態において、受力体10に作用した力を検出することになる。
【0045】
第1の柱状体11〜第4の柱状体14は、受力体10と支持基板20とを接続する部材であり、いずれもその中心軸がZ軸に平行になるように配置されている。しかも、第1の柱状体11は、その中心軸がX軸の正の部分に交差する位置に配置され、第2の柱状体12は、その中心軸がX軸の負の部分に交差する位置に配置され、第3の柱状体13は、その中心軸がY軸の正の部分に交差する位置に配置され、第4の柱状体14は、その中心軸がY軸の負の部分に交差する位置に配置されている。
【0046】
また、実用上は、第1の柱状体11〜第4の柱状体14は、全く同じ材質、全く同じ形状、全く同じサイズにするのが好ましい。これは、これらの材質・形状・サイズを同一にしておけば、第1のセンサ21〜第4のセンサ24による検出感度を同一にすることができるためである。相互の材質・形状・サイズが異なると、各センサの感度を同一にそろえることが困難になり、感度補正のための工夫が必要になる。同様の理由により、各柱状体の形状および配置のパターンは、XZ平面およびYZ平面の双方に関して、面対称になっているのが好ましい。
【0047】
なお、図1には示されていないが、各柱状体11〜14の上端は、受力体10に対して、可撓性をもった部材を介して接続されており、各柱状体11〜14の下端は、支持基板20に対して、可撓性をもった接続部材を介して接続されている。要するに、第1の柱状体11〜第4の柱状体14は、受力体10に対しても、支持基板20に対しても、可撓性をもって接続されていることになる。ここで、可撓性とは弾力性と同義であり、受力体10に対して何ら力が作用していない状態では、受力体10は支持基板20に対して定位置をとるが、受力体10に何らかの力が作用すると、可撓性をもった接続部材が弾性変形を生じ、受力体10と支持基板20との相対位置に変化が生じることになる。もちろん、受力体10に作用する力がなくなると、受力体10はもとどおりの定位置に戻る。
【0048】
結局、図1に示す例の場合、第1の柱状体11〜第4の柱状体14の上端部および下端部が、それぞれ可撓性をもった接続部材によって構成されていることになる(もちろん、第1の柱状体11〜第4の柱状体14の全体が可撓性をもった材料により構成されていてもかまわない)。そして、この接続部材が、ある程度の弾性変形を生じるため、第1の柱状体11〜第4の柱状体14は、受力体10や支持基板20に対して傾斜することができる。また、この接続部材は、図の上下方向(Z軸方向)にも伸縮することが可能であり、受力体10を図の上方向(+Z軸方向)に動かすと、接続部材が伸縮し、受力体10と支持基板20との距離は広がり、逆に、受力体10を図の下方向(−Z軸方向)に動かすと、接続部材が伸縮し、受力体10と支持基板20との距離は狭まることになる。もちろん、このような変位や傾斜の度合いは、受力体10に作用した力の大きさに応じて大きくなる。
【0049】
第1のセンサ21〜第4のセンサ24は、それぞれ第1の柱状体11〜第4の柱状体14の傾斜を検出するとともに、第1の柱状体11〜第4の柱状体14から支持基板20に向かって加えられるZ軸方向に関する力を検出する力センサである。具体的には、後述するように、これらのセンサはそれぞれ複数の容量素子から構成されている。受力体10に力が作用すると、この力は、各柱状体11〜14を介して、支持基板20へと伝達されることになる。各センサ21〜24は、こうして伝達される力によって、各柱状体11〜14の下端部近傍に生じる力学的な現象を検出する機能を有している。より具体的には、後に詳述するように、柱状体が傾斜することにより生じる力を検出することにより、柱状体の傾斜度を検知する機能と、柱状体全体が、支持基板に対して加える押圧力(図の下方−Z軸方向の力)もしくは引っ張り力(図の上方+Z軸方向の力)を検知する機能と、を有している。
【0050】
検出回路30は、各センサ21〜24を構成する複数の容量素子の静電容量値に基づいて、受力体10に作用した力もしくはモーメントを検出する処理を行う構成要素であり、XYZ三次元座標系における各座標軸方向の力成分Fx,Fy,Fzを示す信号と各座標軸まわりのモーメント成分Mx,My,Mzを示す信号を出力する。実際には、上述した柱状体の傾斜度や、支持基板に対して加えられる押圧力/引っ張り力に基づいて、力やモーメントの検出が行われる。
【0051】
<<< §2. 力とモーメントを区別して検出する原理 >>>
続いて、図2の正面図を参照しながら、図1に示す力検出装置において、力とモーメントを区別して検出することが可能な原理を説明する。なお、図2では、説明の便宜上、第1の柱状体11および第2の柱状体12の変位形態のみを示すが、第3の柱状体13および第4の柱状体14についても所定の変位が生じることになる。
【0052】
図2(a) は、この力検出装置に何ら力が作用していない状態を示しており、受力体10は、支持基板20に対して定位置を維持している。もちろん、この状態においても、受力体10などの重量が支持基板20上に加わっているので、支持基板20は、第1の柱状体11〜第4の柱状体14から、何らかの力を受けているが、この状態で受けている力は定常状態での力であり、このような力が第1のセンサ21〜第4のセンサ24によって検出されたとしても、検出回路30から出力される力やモーメントの検出値は0になるように調整されている。別言すれば、検出回路30は、このような定常状態における各センサ21〜24の検出結果を基準として、何らかの変化が生じた場合に、この変化を受力体10に作用した力もしくはモーメントとして検出する機能を有している。
【0053】
さて、ここでは、まず図2(b) に示すように、受力体10に対して、X軸正方向の力+Fxが作用した場合を考えてみる。ちょうど原点O′の位置を、図の右方向へと押すような力が加わった場合に相当する。この場合、図示のとおり、受力体10は図の右方向へとスライド運動することになり、第1の柱状体11および第2の柱状体12は、図の右方向へと傾斜することになる。ここでは、このときの第1の柱状体11の傾斜度をθ1、第2の柱状体12の傾斜度をθ2と呼ぶことにする。
【0054】
なお、図には示されていないが、このとき、第3の柱状体13および第4の柱状体14も、同様に図の右方向へと傾斜することになる。ここでは、このときの第3の柱状体13のX軸方向に関する傾斜度をθ3、第4の柱状体14のX軸方向に関する傾斜度をθ4と呼ぶ。このようにXZ平面内もしくはXZ平面に平行な平面内におけるX軸に向かう方向への傾斜の程度を示す角度θ1〜θ4を、「X軸方向に関する傾斜度」と呼ぶことにする。
【0055】
同様に、受力体10に対して、Y軸正方向の力+Fyが作用した場合は、第1の柱状体11〜第4の柱状体14は、いずれもY軸正方向(図の紙面奥行き方向)へと傾斜する。ここでは、このようにYZ平面内もしくはYZ平面に平行な平面内におけるY軸に向かう方向への傾斜の程度を示す角度を、「Y軸方向に関する傾斜度」と呼ぶことにする。図2(b) に示すように、受力体10に対して、X軸正方向の力+Fxが作用した場合、各柱状体のY軸方向の傾斜度は0である。
【0056】
なお、各柱状体11〜14が傾斜すると、受力体10と支持基板20との距離は若干縮まることになるので、厳密に言えば、受力体10はX軸方向に完全な平行移動を行うわけではなく、わずかながら−Z軸方向への移動も行うことになるが、傾斜度が比較的小さい場合、−Z軸方向への移動量は無視することができるので、ここでは説明の便宜上、受力体10がX軸方向のみに移動したものと考えることにする。
【0057】
一方、図2(c) に示すように、受力体10に対して、Y軸まわりのモーメント+Myが作用した場合を考えてみよう。図2(c) において、Y軸は原点Oの位置において紙面の裏側へと向かう垂直方向の軸であるから、図では、モーメント+Myは、原点Oを中心に、受力体10を時計まわりの方向に回転させるような力に相当する。なお、本願では、所定の座標軸の正方向に右ネジを進める場合の当該右ネジの回転方向を、当該座標軸まわりの正のモーメントと定義することにする。前述したとおり、モーメント+Myは、受力体10を原点O′を中心として回転させる力ではなく、原点Oを中心として回転させる力になる(両者の誤差が許容範囲であれば、モーメントを原点O′を中心とする回転力として取り扱っても問題ない。)。
【0058】
さて、この場合、図示のとおり、第1の柱状体11については上下方向に縮小力が作用し、第2の柱状体12については上下方向に伸張力が作用することになる。その結果、第1の柱状体11から支持基板20に対しては、押圧力(−Z軸方向の力:ここでは、力−fzと示すことにする)が作用し、第2の柱状体12から支持基板20に対しては、引っ張り力(+Z軸方向の力:ここでは、力+fzと示すことにする)が作用する。このとき、第3の柱状体13および第4の柱状体14から支持基板20に対しては、部分的に押圧力や引っ張り力が加えられるものの、加えられる力はトータルでは相殺されて零になる。
【0059】
図1に矢印で示されているとおり、受力体10に作用するX軸方向の力Fxと、Y軸まわりのモーメントMyとは、受力体10に対して似たような変位作用を及ぼすことになるが、図2に示すような動的挙動をとる構造体を有する力検出装置では、受力体10にX軸方向の力Fxが作用した場合と、Y軸まわりのモーメントMyが作用した場合とでは、4本の柱状体11〜14を介して支持基板20に伝達される力の態様が異なることになる。したがって、両者を区別して、それぞれ別個に検出することが可能である。
【0060】
すなわち、X軸方向の力Fxが作用した場合は、図2(b) に示すように、4本の柱状体11〜14は、X軸方向に傾斜し、傾斜度θ1〜θ4を生じることになり(図には、柱状体11,12の変位態様のみが例示されている)、このような傾斜に応じた力が支持基板20へと伝達される。これらの傾斜度θ1,θ2,θ3,θ4は、いずれも、X軸方向の力Fxを示す値になる。傾斜度θに符号を付して取り扱えば(たとえば、X軸正方向への傾斜の場合を正、X軸負方向への傾斜の場合を負として取り扱えば)、作用したX軸方向の力Fxを符号を含めて検出することが可能である。
【0061】
本発明では、後述するように、各柱状体11〜14の傾斜度は、各センサ21〜24によって、支持基板20に加えられる力として検出されることになる。このような検出を行うには、各柱状体から支持基板20に対して加えられる力を、個々の部分ごとに検知すればよい。たとえば、図2(b) において、第1の柱状体11と支持基板20との接続部分に生じる応力を考えてみると、第1の柱状体11の底部の右側部分と左側部分とでは、生じる応力の向きが異なることがわかる。すなわち、図示の例では、第1の柱状体11は右側に傾斜しているので、第1の柱状体11の底部の右側部分については押圧力が生じ、支持基板20の上面を下方に押圧する力が生じているのに対し、左側部分については引っ張り力が生じ、支持基板20の上面を上方へ引っ張り上げる力が生じている。このように第1の柱状体11の底部の左右の各部における応力の相違を検出することにより、第1の柱状体11の傾斜度を得ることができる。他の柱状体12,13,14の傾斜度検出も同様の方法で行うことができる。
【0062】
一方、Y軸まわりのモーメントMyが作用した場合は、図2(c) に示すように、2本の柱状体11,12から支持基板20に対して、押圧力−fzと引っ張り力+fzとが伝達される。このようにして伝達される力は、柱状体が傾斜した場合の力とは異なっている。すなわち、図2(b) に示すように柱状体が傾斜した場合は、その底部に生じる応力は、右側部分と左側部分とで異なるものとなった。ところが、図2(c) に示すようにモーメントMyが作用した場合は、第1の柱状体11全体により押圧力−fzが加えられ、第2の柱状体12全体により引っ張り力+fzが加えられることになる。
【0063】
このように、X軸方向の力Fxの作用に対しては、第1の柱状体11〜第4の柱状体14に関して、同じ方向への傾斜という同等の事象が生じるのに対して、Y軸まわりのモーメントMyの作用に対しては、図2(c) に示すように、第1の柱状体11および第2の柱状体12に関して、一方は押圧力−fzを与え、他方は引っ張り力+fzを与えるという相反する事象が生じることになる。したがって、作用したモーメントMyは、引っ張り力+fzと押圧力−fzとの差、すなわち、(+fz)−(−fz)=2fzとして求めることができる。
【0064】
結局、この力検出装置によって、Y軸まわりのモーメントMyを検出するには、第1のセンサ21には、第1の柱状体11全体から支持基板20に対して加えられる力を検知する機能をもたせ、第2のセンサ22には、第2の柱状体12全体から支持基板20に対して加えられる力を検知する機能をもたせておけばよい。第1のセンサ21が、第1の柱状体11全体から支持基板20に対して加えられるZ軸方向に関する力を検知する機能を有し、第2のセンサ22が、第2の柱状体12全体から支持基板20に対して加えられるZ軸方向に関する力を検知する機能を有していれば、検出回路30は、第1のセンサ21によって検知されたZ軸方向に関する力と、第2のセンサ22によって検知されたZ軸方向に関する力と、の差に基づいて、受力体10に作用した力のY軸まわりのモーメントMyを検出する処理を行うことができる。
【0065】
以上、図2を参照しながら、受力体10に作用するX軸方向の力Fxと、Y軸まわりのモーメントMyと、を区別して検出する原理を説明したが、この、図2の動作説明におけるX軸をY軸におきかえれば、同様の方法で、受力体10に作用するY軸方向の力Fyと、X軸まわりのモーメントMxと、を区別して検出することができる。
【0066】
また、受力体10に、Z軸負方向の力−Fzが作用した場合は、4本の柱状体11〜14のすべてから支持基板20に対して押圧力−fzが加わることになり、Z軸正方向の力+Fzが作用した場合は、4本の柱状体11〜14のすべてから支持基板20に対して引っ張り力+fzが加わることになる。したがって、作用したZ軸方向の力Fzは、4本の柱状体11〜14から加えられた押圧力−fzの和もしくは引っ張り力+fzの和として求めることができる。
【0067】
更に、受力体10に、Z軸まわりのモーメントMzが作用した場合は、4本の柱状体11〜14が、上方から観察したときに、時計まわりもしくは反時計まわりに傾斜することになるので、4本の柱状体11〜14それぞれの傾斜方向を検知することにより、モーメントMzの検出も可能である。
【0068】
<<< §3. 具体的な実施形態の構造 >>>
続いて、本発明の具体的な実施形態に係る力検出装置の主たる構造部分を、図3〜図9を用いて説明する。
【0069】
図3は、本発明の基本的な実施形態に係る力検出装置の上面図である。この装置を、XZ平面で切断した側断面図が図4に示されており、YZ平面で切断した側断面図が図5に示されている。図4もしくは図5に示されているとおり、この力検出装置の基本的な構成要素は、受力体100、中間体200、支持基板300であり、いずれも上面がXY平面に平行な正方形状をした板状の部材を基本形態としている。図4および図5は、互いに切断位置が異なる側断面図であるが、図面に現れている幾何学的な構造は全く同一である。両者の相違は、各部の符号だけである。これは、この装置の基本構造が、XZ平面に関して面対称であり、かつ、YZ平面に関しても面対称であるためである。
【0070】
§1で述べた例と同様に、この例でも、XYZ三次元座標系と、これをZ軸方向に平行移動したX′Y′Z′補助座標系とが定義されている。X′Y′Z′補助座標系は、受力体100の中心位置に原点O′をもった座標系である。一方、XYZ三次元座標系の原点Oは、支持基板300の上面中心点を、Z軸正方向に若干ずらした位置に定義されている。図4および図5において、原点Oが支持基板300の上面から若干上方にずれており、X軸およびY軸が支持基板300の上面位置から若干上方にずれているのはこのためである。
【0071】
そもそもXYZ三次元座標系は、概念的に定義された座標系であり、その原点Oをどの位置に定義しようが、この力検出装置の物理的構造に影響があるわけではない。しかしながら、この力検出装置を用いて、高精度の測定を行うことを意図している利用者に対しては、この検出装置によって正確に検出されるモーメントが、特定の原点Oをもつ座標軸まわりのモーメントであることを明確にしておく必要がある。そして、後述するように、本発明のポイントとなる他軸干渉を排除するための補正は、当該特定の原点Oをもつ座標軸まわりのモーメントについての干渉を相殺するような補正となる。したがって、本発明を実施する上では、このような補正が正確な意味をもつようにするために、特定の原点Oを設定しておく必要がある。
【0072】
この特定の原点Oは、§1で述べた例と同様に、支持基板300の上面中心点の位置に定義してもかまわない。ただ、本願発明者は、ここに図示する実施形態の場合は、この原点Oの位置を、若干上方に定義した方が、より好ましい結果が得られると考えている。これは、後述するとおり、本発明では、各センサ21〜24として、静電容量素子からなるセンサを用いて、各柱状体の下端に作用した力(傾斜度)の検出が行われるため、この容量素子の中心位置、すなわち、容量素子を構成する一対の電極間の中間位置に、XY平面が位置するような座標系を定義するのが最も好ましいと考えられるからである。したがって、ここに示す実施形態の場合、原点Oの位置は、電極の厚みを無視した場合、支持基板300の上面の中心点を、容量素子を構成する一対の電極間距離の1/2だけ上方に移動させた位置ということになる。
【0073】
もっとも、原点Oの理想的な位置を理論的に解析することは容易ではないので、実際の力検出装置の構造によっては、必ずしも上述の位置に原点Oを定義するのが最適であるとは限らない。原点Oの位置は、それほど厳密に定義する必要はなく、支持基板の中央付近の上面もしくはその上方の所定点に定義しておけば、実用上、本発明の効果は十分に得られる。
【0074】
さて、上面が正方形状をした板状の部材からなる受力体100、中間体200、支持基板300は、いずれも上下両面がXY平面に平行になるように、かつ、各辺がX軸もしくはY軸に平行になるように配置されている。
【0075】
受力体100は、図3に示すとおり、基本的には、上面が正方形状をした板状部材であるが、下面からは、4本の円柱突起部110,120,130,140が下方へと伸びている。図6は、この受力体100をX′Y′平面で切断した状態を示す横断面図である。
【0076】
図6に示されているとおり、4本の円柱突起部110,120,130,140の付け根部分の周囲には、円環状の溝部G11,G12,G13,G14が形成されており、この溝部G11,G12,G13,G14の形成により、板状の受力体100には、図3,図4,図5に示すように、可撓性をもった上端側肉薄部115,125,135,145が形成されている。結局、4本の円柱突起部110,120,130,140は、上端側肉薄部115,125,135,145を介して、板状の受力体100に接続されていることになる。
【0077】
一方、中間体200は、支持基板300の上面に接合された部材であり、基本的には、上面が正方形状をした板状部材である。図4,図5に示すように、この中間体200の上面からは、4本の円柱突起部210,220,230,240が上方へと伸びている。これら4本の円柱突起部210,220,230,240の付け根部分の周囲には、円環状の溝部G21,G22,G23,G24が形成されており、更に、この中間体200の下面には、円柱状の溝部G31,G32,G33,G34が形成されている。中間体200の上面に設けられた溝部G21,G22,G23,G24と、下面に設けられた溝部G31,G32,G33,G34とは、いずれも円柱突起部210,220,230,240の中心軸の位置を中心とした同サイズの円形の輪郭を有している。
【0078】
図4に示すとおり、溝部G21とG31との間には、下端側肉薄部215が境界壁として存在し、溝部G22とG32との間には、下端側肉薄部225が境界壁として存在する。また、図5に示すとおり、溝部G23とG33との間には、下端側肉薄部235が境界壁として存在し、溝部G24とG34との間には、下端側肉薄部245が境界壁として存在する。
【0079】
図7は、この図4,図5に示す中間体200を、切断線7−7に沿って切断した状態を示す横断面図である。4本の円柱突起部210,220,230,240の周囲に、溝部G21,G22,G23,G24が形成されている状態が明瞭に示されている。また、図8は、この図4,図5に示す中間体200を、XY平面に沿って切断した状態を示す横断面図であり、溝部G31,G32,G33,G34の配置が明瞭に示されている。
【0080】
この中間体200の下面に接合された支持基板300は、図9に示すように、上面が正方形状をした完全な板状部材であり、その上面には、固定電極E1〜E8,F1〜F8が配置されている。後述するように、固定電極E1〜E8は、それぞれ主容量素子C1〜C8を構成するために支持基板300の上面に固定された電極であり、ここでは「主固定電極」と呼ぶことにする。一方、固定電極F1〜F8は、それぞれ副容量素子D1〜D8を構成するために支持基板300の上面に固定された電極であり、ここでは「副固定電極」と呼ぶことにする。図9では、これら16枚の固定電極の形状を明瞭に示すために、各電極の内部にハッチングを施して示してある(図9におけるハッチングは、断面を示すためのものではない)。
【0081】
受力体100側から下方に伸びた4本の円柱突起部110,120,130,140の下面は、中間体200側から上方に伸びた4本の円柱突起部210,220,230,240の上面に接合されている。ここでは、図4に示すように、円柱突起部110と円柱突起部210とを接合することにより構成される円柱状の構造体を第1の柱状体T1と呼び、円柱突起部120と円柱突起部220とを接合することにより構成される円柱状の構造体を第2の柱状体T2と呼ぶことにする。また、図5に示すように、円柱突起部130と円柱突起部230とを接合することにより構成される円柱状の構造体を第3の柱状体T3と呼び、円柱突起部140と円柱突起部240とを接合することにより構成される円柱状の構造体を第4の柱状体T4と呼ぶことにする。
【0082】
図3の上面図を見ればわかるように、この4本の柱状体T1〜T4のXY平面上への投影位置を考えると、第1の柱状体T1は、その中心軸がZ軸に平行になり、かつ、その中心軸がX軸の正の部分に交差する位置に配置され、第2の柱状体T2は、その中心軸がZ軸に平行になり、かつ、その中心軸がX軸の負の部分に交差する位置に配置され、第3の柱状体T3は、その中心軸がZ軸に平行になり、かつ、その中心軸がY軸の正の部分に交差する位置に配置され、第4の柱状体T4は、その中心軸がZ軸に平行になり、かつ、その中心軸がY軸の負の部分に交差する位置に配置されている。
【0083】
また、図4に示すとおり、第1の柱状体T1の上端は、可撓性をもった上端側肉薄部115を接続部材として受力体100に接続されており、第2の柱状体T2の上端は、可撓性をもった上端側肉薄部125を接続部材として受力体100に接続されており、図5に示すとおり、第3の柱状体T3の上端は、可撓性をもった上端側肉薄部135を接続部材として受力体100に接続されており、第4の柱状体T4の上端は、可撓性をもった上端側肉薄部145を接続部材として受力体100に接続されている。このように、各上端側肉薄部115,125,135,145は、その周囲が受力体100に接続され、その下面中心部が各柱状体T1,T2,T3,T4の上端に接続されていることになる。。
【0084】
一方、図4に示すとおり、第1の柱状体T1の下面は、接続部材として機能する下端側肉薄部215の中央に接合されており、下端側肉薄部215の周囲は、中間体200を介して支持基板300に接続されており、第2の柱状体T2の下面は、接続部材として機能する下端側肉薄部225の中央に接合されており、下端側肉薄部225の周囲は、中間体200を介して支持基板300に接続されている。同様に、図5に示すとおり、第3の柱状体T3の下面は、接続部材として機能する下端側肉薄部235の中央に接合されており、下端側肉薄部235の周囲は、中間体200を介して支持基板300に接続されており、第4の柱状体T4の下面は、接続部材として機能する下端側肉薄部245の中央に接合されており、下端側肉薄部245の周囲は、中間体200を介して支持基板300に接続されている。
【0085】
下端側肉薄部215,225,235,245も、可撓性をもった円板状の部材であり、中間体200の一部が、この円板状の部材を支持基板300上に支持する台座として機能している。結局、下端側肉薄部215,225,235,245は、支持基板300の上面から所定距離をおいた上方位置に、支持基板300の上面に対して平行に配置されるように、その周囲が台座を介して支持基板300に接続されており、その上面中心部が各柱状体T1,T2,T3,T4の下端に接続されていることになる。
【0086】
図示の実施形態では、受力体100は絶縁性基板(たとえば、セラミック基板)、中間体200は導電性基板(たとえば、ステンレス、アルミニウム、チタンなどの金属基板)、支持基板300は絶縁性基板(たとえば、セラミック基板)によって構成されている。もちろん、各部の材質はこれらに限定されるものではなく、たとえば、受力体100を、ステンレス、アルミニウム、チタンなどの金属基板で構成してもかまわない。上端側肉薄部115,125,135,145や下端側肉薄部215,225,235,245は、基板の他の部分に比べて肉厚を薄くすることにより可撓性をもつように構成された部分である。
【0087】
この実施形態では、下端側肉薄部215,225,235,245は、導電性材料から構成されているため、可撓性を有するとともに導電性を有している。受力体100に力が作用すると、下端側肉薄部215,225,235,245が変形して変位を生じることになり、その結果、各柱状体T1,T2,T3,T4にも変位が生じることになる。したがって、導電性をもった下端側肉薄部215,225,235,245は、それ自身が変位電極としての機能を果たす。
【0088】
図9に示すように、支持基板300の上面には、第1の柱状体T1の下端近傍位置に主固定電極E1,E2および副固定電極F6,F8が形成されている。導電性材料からなる下端側肉薄部215は、図4に示すように、これら4枚の固定電極のすべてに対向する1枚の共通変位電極としての機能を果たすことになる。このため、個々の固定電極と、共通変位電極のこれに対向する部分と、によって、容量素子が形成される。ここでは、主固定電極E1,E2および副固定電極F6,F8と、共通変位電極(下端側肉薄部215)の対向部分とによって構成される容量素子を、それぞれ主容量素子C1,C2および副容量素子D6,D8と呼ぶことにする。
【0089】
結局、第1の柱状体T1の下端側肉薄部215とこれに対向する支持基板300の上面とによって挟まれた空間(溝部G31)内に、一方の電極(共通変位電極)が下端側肉薄部215の下面に形成され、他方の電極(主固定電極E1,E2および副固定電極F6,F8)が支持基板300の上面に形成された4個の容量素子C1,C2,D6,D8によって、第1のセンサS1が構成されている。この第1のセンサS1は、第1の柱状体T1の傾斜や、第1の柱状体T1から支持基板300に対して加えられる押圧力や引っ張り力を検出する機能を果たす。
【0090】
また、図9に示すように、支持基板300の上面には、第2の柱状体T2の下端近傍位置に主固定電極E3,E4および副固定電極F5,F7が形成されている。導電性材料からなる下端側肉薄部225は、図4に示すように、これら4枚の固定電極のすべてに対向する1枚の共通変位電極としての機能を果たすことになる。このため、個々の固定電極と、共通変位電極のこれに対向する部分と、によって、容量素子が形成される。ここでは、主固定電極E3,E4および副固定電極F5,F7と、共通変位電極(下端側肉薄部225)の対向部分とによって構成される容量素子を、それぞれ主容量素子C3,C4および副容量素子D5,D7と呼ぶことにする。
【0091】
結局、第2の柱状体T2の下端側肉薄部225とこれに対向する支持基板300の上面とによって挟まれた空間(溝部G32)内に、一方の電極(共通変位電極)が下端側肉薄部225の下面に形成され、他方の電極(主固定電極E3,E4および副固定電極F5,F7)が支持基板300の上面に形成された4個の容量素子C3,C4,D5,D7によって、第2のセンサS2が構成されている。この第2のセンサS2は、第2の柱状体T2の傾斜や、第2の柱状体T2から支持基板300に対して加えられる押圧力や引っ張り力を検出する機能を果たす。
【0092】
更に、図9に示すように、支持基板300の上面には、第3の柱状体T3の下端近傍位置に主固定電極E5,E6および副固定電極F2,F4が形成されている。導電性材料からなる下端側肉薄部235は、図5に示すように、これら4枚の固定電極のすべてに対向する1枚の共通変位電極としての機能を果たすことになる。このため、個々の固定電極と、共通変位電極のこれに対向する部分と、によって、容量素子が形成される。ここでは、主固定電極E5,E6および副固定電極F2,F4と、共通変位電極(下端側肉薄部235)の対向部分とによって構成される容量素子を、それぞれ主容量素子C5,C6および副容量素子D2,D4と呼ぶことにする。
【0093】
結局、第3の柱状体T3の下端側肉薄部235とこれに対向する支持基板300の上面とによって挟まれた空間(溝部G33)内に、一方の電極(共通変位電極)が下端側肉薄部235の下面に形成され、他方の電極(主固定電極E5,E6および副固定電極F2,F4)が支持基板300の上面に形成された4個の容量素子C5,C6,D2,D4によって、第3のセンサS3が構成されている。この第3のセンサS3は、第3の柱状体T3の傾斜や、第3の柱状体T3から支持基板300に対して加えられる押圧力や引っ張り力を検出する機能を果たす。
【0094】
同様に、図9に示すように、支持基板300の上面には、第4の柱状体T4の下端近傍位置に主固定電極E7,E8および副固定電極F1,F3が形成されている。導電性材料からなる下端側肉薄部245は、図5に示すように、これら4枚の固定電極のすべてに対向する1枚の共通変位電極としての機能を果たすことになる。このため、個々の固定電極と、共通変位電極のこれに対向する部分と、によって、容量素子が形成される。ここでは、主固定電極E7,E8および副固定電極F1,F3と、共通変位電極(下端側肉薄部245)の対向部分とによって構成される容量素子を、それぞれ主容量素子C7,C8および副容量素子D1,D3と呼ぶことにする。
【0095】
結局、第4の柱状体T4の下端側肉薄部245とこれに対向する支持基板300の上面とによって挟まれた空間(溝部G34)内に、一方の電極(共通変位電極)が下端側肉薄部245の下面に形成され、他方の電極(主固定電極E7,E8および副固定電極F1,F3)が支持基板300の上面に形成された4個の容量素子C7,C8,D1,D3によって、第4のセンサS4が構成されている。この第4のセンサS4は、第4の柱状体T4の傾斜や、第4の柱状体T4から支持基板300に対して加えられる押圧力や引っ張り力を検出する機能を果たす。
【0096】
なお、ここでは、下端側肉薄部215〜245を導電性材料によって構成し、下端側肉薄部215〜245自身を共通変位電極として用いる例を示したが、下端側肉薄部215〜245を絶縁性材料によって構成した場合には、その下面に、共通変位電極となる導電性電極層を形成すればよい。もちろん、変位電極は必ずしも共通の電極とする必要はないので、各下端側肉薄部の下面に、4枚の固定電極のそれぞれに対向する個別の変位電極を設けるようにしてもかまわない。また、下端側肉薄部に設ける変位電極を4枚の個別電極にし、支持基板300に設ける固定電極を1枚の共通電極にすることも可能である。ただ、実用上は、配線を単純化する上で、図示の実施例のように、下端側肉薄部215〜245を導電性材料によって構成し、下端側肉薄部215〜245自身を共通変位電極として用いるようにするのが好ましい。
【0097】
さて、図3〜図9を用いて説明した実施例に係る力検出装置は、結局、図1に示す力検出装置と同等の構成要素を備えていることがわかる。すなわち、板状の受力体100は受力体10に対応し、板状の支持基板300は支持基板20に対応し、各柱状体T1〜T4は各柱状体11〜14に対応し、各センサS1〜S4は各センサ21〜24に対応する。したがって、この図3〜図9に示す構造体に、検出回路30を付加すれば、図1に示した力検出装置を実現することができる。
【0098】
なお、実用上は、図10に示す例のように、中間体200の周囲輪郭部分を上方へと伸ばし、制御壁250および260を形成した構造にするのが好ましい。制御壁250は、受力体100の周囲を四方から囲む壁であり、制御壁260は、受力体100の上面の周囲を枠状に取り囲む壁である。このような構造体では、受力体100の下面と中間体200の上面との間に寸法d1の空隙部が形成され、受力体100の上面と制御壁260との間に寸法d2の空隙部が形成され、受力体100の側面と制御壁250との間に寸法d3の空隙部が形成される。したがって、受力体100に対して過度の力が加わったとしても、受力体100の下方、上方、側方への変位は、それぞれd1,d2,d3に制限されることになり、各柱状部T1〜T4等の構造部分が破損するのを防ぐことができる。
【0099】
<<< §4. 主容量素子のみを用いた検出動作 >>>
続いて、図10に示す力検出装置の基本的な検出動作を、図11〜図13を用いて説明する。§2で説明したとおり、この装置は、支持基板300を固定した状態において、受力体100に作用したX軸方向の力Fx、Y軸方向の力Fy、Z軸方向の力Fz、X軸まわりのモーメントMx、Y軸まわりのモーメントMy、Z軸まわりのモーメントMzという力の6成分を独立して検出する機能を有している。
【0100】
図9に示すとおり、支持基板300上には、8枚の主固定電極E1〜E8が形成されており、これら主固定電極E1〜E8と、対向する共通変位電極(下端側肉薄部215〜245)とによって、8個の主容量素子C1〜C8が構成されている。この§4では、これら8個の主容量素子C1〜C8のみを用いて、上記6つの力成分を検出する動作を説明する。本発明の特徴は、更に8個の副容量素子D1〜D8を利用して、他軸成分の干渉を排除した正確な検出を行う点にあるが、この特徴については、§6で述べることにする。
【0101】
さて、ここでは、図10に示す位置に原点OをとったXYZ三次元座標系において、受力体100に対して、X軸正方向の力+Fx,Y軸正方向の力+Fy,Z軸正方向の力+Fz,X軸まわりの正方向のモーメント+Mx,Y軸まわりの正方向のモーメント+My,Z軸まわりの正方向のモーメント+Mzがそれぞれ作用した場合に、8個の主容量素子C1〜C8の静電容量値の変化を考えてみる(8個の副容量素子D1〜D8の静電容量値の変化については、§6で述べる)。
【0102】
図11は、図10に示す力検出装置において、受力体100にX軸正方向の力+Fxが作用したときの構造体の変形態様を示す側断面図である。同様に、図12は、Z軸正方向の力+Fzが作用したときの変形態様を示し、図13は、Y軸まわりの正方向のモーメント+Myが作用したときの変形態様を示している。
【0103】
一方、図14は、6つの力成分が作用したときの各主容量素子C1〜C8(括弧内の符号E1〜E8は、対応する主固定電極を示す)の静電容量値の変化の態様を示すテーブルであり、「0」は変化なし、「+Δ」は増加、「−Δ」は減少を示している。なお、このテーブルにおける各欄のΔの絶対値は、たとえ作用する力の絶対値が同一であっても、必ずしもすべてが同一の値をとるわけではなく、それぞれ各容量素子の形状や配置によって決定される所定の固有値になる。
【0104】
より具体的に言えば、形状や配置に対称性が確保された容量素子についての同一行の欄に記載されたΔの絶対値は互いに等しくなるが、すべての欄についてのΔの絶対値が互いに等しいわけではない。たとえば、第3行目(+Fzの行)におけるC1〜C8の各欄に示すΔの絶対値は、これらの容量素子の形状や配置に対称性が確保されているため互いに等しくなるが、同じC1の欄のΔであっても、たとえば、第2行目の「+Δ」(力+Fyが作用したときの容量値変化分)と、第3行目の「−Δ」(力+Fzが作用したときの容量値変化分)とでは、作用した力+Fy,+Fzの絶対値が同一であったとしても、変化分Δの絶対値は異なる。
【0105】
このように、本願のテーブルに示されている符号「Δ」は、特定の値を示すものではなく、「主容量素子に生じる容量値変化」を示す符号ということになる。もっとも、図9に示すように、各固定電極が、X軸およびY軸を対称軸とした幾何学的な対称性をもつ形状および配置を採る場合は、図14のテーブルの各欄における「Δ」の値は、幾何学的条件が同一となる他のいずれかの欄の「Δ」の値と等しくなる。
【0106】
続いて、受力体100に6つの力成分が作用した場合に、各主容量素子C1〜C8の静電容量値が、図14のテーブルに示すように変化する理由を説明しよう。
【0107】
まず、受力体100に対して、X軸正方向の力+Fxが作用すると、図11に示されているように、各柱状体T1〜T4は、いずれも図の右方向(X軸正方向)に傾斜することになる(図2(b) に対応する変形態様)。このため、共通変位電極として機能する下端側肉薄部215,225,235,245は、いずれも、図における右側半分の部分は図の下方へと変形し、左側半分の部分は図の上方へと変形する。
【0108】
したがって、図9の平面図を参照すれば、下端側肉薄部が接近してくる右側半分の部分に配置されている固定電極E5,E7については、対向電極との間の距離が縮まるが、下端側肉薄部が遠ざかる左側半分の部分に配置されている固定電極E6,E8については、対向電極との間の距離が広がる。すなわち、容量素子C5,C7の電極間隔は狭まり、静電容量値が増加するのに対して、容量素子C6,C8の電極間隔は広がり、静電容量値が減少することになる。よって、図14のテーブルの「+Fx」の行におけるC5,C7の欄は「+Δ」、C6,C8の欄は「−Δ」になる。
【0109】
このとき、固定電極E1,E2,E3,E4と、その上方に位置する共通変位電極との間の距離は、その一部分(右側半分の部分)は縮まるが、別な一部分(左側半分の部分)は広がるため、トータルでは静電容量値の変化は生じない。図14のテーブルの第1行目(+Fxの行)は、各容量素子C1〜C8についてのこのような静電容量値の変化を示している。
【0110】
逆に、X軸負方向の力−Fxが作用すると、各柱状体T1〜T4は、いずれも図11に示す例とは反対の左方向(X軸負方向)に傾斜することになるので、静電容量値の増減変化の関係が逆転し、図14のテーブルの第1行目(+Fxの行)とは「+」と「−」とが逆転した結果が得られることになる。
【0111】
一方、受力体100に対して、Y軸正方向の力+Fyが作用した場合は、上述した力+Fxが作用した場合の変化態様を、上面からみて90°回転させた現象が起こることになる。すなわち、容量素子C1,C3の電極間隔は狭まり、静電容量値が増加するのに対して、容量素子C2,C4の電極間隔は広がり、静電容量値が減少することがわかる。容量素子C5〜C8については、電極間隔は一部は広がり、一部は狭まるため、トータルでは静電容量値の変化は生じない。図14のテーブルの第2行目(+Fyの行)は、各容量素子C1〜C8についてのこのような静電容量値の変化を示している。逆に、Y軸負方向の力−Fyが作用した場合は、静電容量値の増減変化の関係が逆転し、「+」と「−」とが逆転した結果が得られることになる。
【0112】
また、受力体100に対して、Z軸正方向の力+Fzが作用すると、図12に示されているように、各柱状体T1〜T4は、いずれも支持基板300の上面に対して引っ張り力を作用させることになるので、各容量素子C1〜C8の電極間隔は広がり、静電容量値は減少する。図14のテーブルの第3行目(+Fzの行)は、このような変化を示している。逆に、受力体100に対して、Z軸負方向の力−Fzが作用すると、各柱状体T1〜T4は、いずれも支持基板300の上面に対して押圧力を作用させることになるので、各容量素子C1〜C8の電極間隔は狭まり、静電容量値は増加する。したがって、図14のテーブルの第3行目(+Fzの行)に示された結果に対して、「+」と「−」とが逆転した結果が得られることになる。
【0113】
次に、受力体100に対して、モーメントが作用した場合を考えてみよう。図13には、受力体100にY軸まわりの正方向のモーメント+Myが作用した場合の変化態様が示されている。すなわち、柱状体T1から支持基板300に対しては下方への押圧力−fzが加わり、柱状体T2から支持基板300に対しては上方への引っ張り力+fzが加わっている。したがって、図9の平面図を参照すれば、容量素子C1,C2の電極間隔は狭まり、静電容量値は増加する。一方、容量素子C3,C4の電極間隔は広がり、静電容量値は減少する。図14のテーブルの第5行目(+Myの行)は、各容量素子C1〜C8についてのこのような静電容量値の変化を示している。逆に、Y軸まわりの負方向のモーメント−Myが作用すると、静電容量値の増減変化の関係が逆転し、「+」と「−」とが逆転した結果が得られることになる。
【0114】
また、受力体100にX軸まわりの正方向のモーメント+Mxが作用した場合は、上述したモーメント+Myが作用した場合の変化態様を、上面からみて90°回転させた現象が起こることになる。すなわち、柱状体T4から支持基板300に対しては下方への押圧力−fzが加わり、柱状体T3から支持基板300に対しては上方への引っ張り力+fzが加わっている。したがって、容量素子C7,C8の電極間隔は狭まり、静電容量値は増加する。一方、容量素子C5,C6の電極間隔は広がり、静電容量値は減少する。図14のテーブルの第4行目(+Mxの行)は、各容量素子C1〜C8についてのこのような静電容量値の変化を示している。逆に、X軸まわりの負方向のモーメント−Mxが作用すると、静電容量値の増減変化の関係が逆転し、「+」と「−」とが逆転した結果が得られることになる。
【0115】
最後に、受力体100に対して、Z軸まわりのモーメントMzが作用した場合を考えてみる。まず、図9を参照しながら、受力体100にZ軸まわりの正方向のモーメント+Mz(図9の平面図上では、反時計まわりのモーメントになる)が加わった場合、4本の柱状体T1〜T4がどの方向に傾斜するかを考えてみよう。
【0116】
この場合、第1の柱状体T1(図の固定電極E1,E2の上に配置されている)は、図9における上方に傾斜し、容量素子C1の電極間隔が狭まり静電容量値が増加し、容量素子C2の電極間隔が広まり静電容量値が減少する。第2の柱状体T2(図の固定電極E3,E4の上に配置されている)は、図9における下方に傾斜し、容量素子C4の電極間隔が狭まり静電容量値が増加し、容量素子C3の電極間隔が広まり静電容量値が減少する。第3の柱状体T3(図の固定電極E5,E6の上に配置されている)は、図9における左方に傾斜し、容量素子C6の電極間隔が狭まり静電容量値が増加し、容量素子C5の電極間隔が広まり静電容量値が減少する。第4の柱状体T4(図の固定電極E7,E8の上に配置されている)は、図9における右方に傾斜し、容量素子C7の電極間隔が狭まり静電容量値が増加し、容量素子C8の電極間隔が広まり静電容量値が減少する。
【0117】
結局、受力体100にZ軸まわりの正方向のモーメント+Mzが作用した場合は、図14の第6行目に示すような増減結果が得られることになる。また、受力体100にZ軸まわりの負方向のモーメント−Mzが作用した場合は、静電容量値の増減変化の関係が逆転し、「+」と「−」とが逆転した結果が得られることになる。
【0118】
この図14のテーブルに示すような結果が得られることを踏まえると、検出回路30として、8組の主容量素子C1〜C8の静電容量値(ここでは、静電容量の値自身も、同じ符号C1〜C8で示すことにする)に基づいて、図15に示す式に基づく演算を行う回路を用意しておけば、Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzの6成分を得ることができる。
【0119】
たとえば、図15に示すFx=C5−C6+C7−C8なる式は、図14のテーブルの第1行目(+Fxの行)の結果を踏まえたものである。ここで、差分(C5−C6)は、第3のセンサS3によって検知された柱状体T3のX軸方向に関する傾斜度を示し、差分(C7−C8)は、第4のセンサS4によって検知された柱状体T4のX軸方向に関する傾斜度を示している。したがって、上式は、第3および第4のセンサS3,S4によって検知された各柱状体T3,T4のX軸方向に関する傾斜度の和に基づいて、受力体100に作用した力のX軸方向成分Fxが検出できることを意味している。これは、図2(b) に示す検出原理に基づくものである。
【0120】
また、図15に示すFy=C1−C2+C3−C4なる式は、図14のテーブルの第2行目(+Fyの行)の結果を踏まえたものである。ここで、差分(C1−C2)は、第1のセンサS1によって検知された柱状体T1のY軸方向に関する傾斜度を示し、差分(C3−C4)は、第2のセンサS2によって検知された柱状体T2のY軸方向に関する傾斜度を示している。したがって、上式は、第1および第2のセンサS1,S2によって検知された各柱状体T1,T2のY軸方向に関する傾斜度の和に基づいて、受力体100に作用した力のY軸方向成分Fyが検出できることを意味している。これも、図2(b) に示す検出原理に基づくものである。
【0121】
更に、図15に示すFz=−(C1+C2+C3+C4+C5+C6+C7+C8)なる式は、図14のテーブルの第3行目(+Fzの行)の結果を踏まえたものであり、第1〜第4のセンサS1〜S4によって検知された各柱状体T1〜T4のZ軸方向に関する力の和に基づいて、受力体100に作用した力のZ軸方向成分Fzが検出できることを意味している。先頭のマイナス符号は、Z軸方向のとり方によるものである。
【0122】
一方、図15に示すMx=−C5−C6+C7+C8なる式は、図14のテーブルの第4行目(+Mxの行)の結果を踏まえたものである。ここで、−C5−C6は、第3のセンサS3によって検知された、柱状体T3から加えられたZ軸方向に関する力を示し、C7+C8は、第4のセンサS4によって検知された、柱状体T4から加えられたZ軸方向に関する力を示す。したがって、上式は、第3のセンサS3によって検知された第3の柱状体T3のZ軸方向に関する力と、第4のセンサS4によって検知された第4の柱状体T4のZ軸方向に関する力と、の差に基づいて、受力体100に作用した力のX軸まわりのモーメントMxが検出できることを意味している。
【0123】
また、図15に示すMy=C1+C2−C3−C4なる式は、図14のテーブルの第5行目(+Myの行)の結果を踏まえたものである。ここで、C1+C2は、第1のセンサS3によって検知された、柱状体T1から加えられたZ軸方向に関する力を示し、−C3−C4は、第2のセンサS2によって検知された、柱状体T2から加えられたZ軸方向に関する力を示す。したがって、上式は、第1のセンサS1によって検知された第1の柱状体T1のZ軸方向に関する力と、第2のセンサS2によって検知された第2の柱状体T2のZ軸方向に関する力と、の差に基づいて、受力体100に作用した力のY軸まわりのモーメントMyが検出できることを意味している。これは、図2(c) に示す検出原理に基づくものである。
【0124】
最後に、図15に示すMz=C1−C2−C3+C4−C5+C6+C7−C8なる式は、図14のテーブルの第6行目(+Mzの行)の結果を踏まえたものである。ここで、差分(C1−C2)は、第1のセンサS1によって検知された柱状体T1のY軸方向に関する傾斜度を示し、差分(−C3+C4)は、第2のセンサS2によって検知された柱状体T2のY軸方向に関する傾斜度を示し、差分(−C5+C6)は、第3のセンサS3によって検知された柱状体T3のX軸方向に関する傾斜度を示し、差分(C7−C8)は、第4のセンサS4によって検知された柱状体T4のX軸方向に関する傾斜度を示している。
【0125】
このように、1つの力検出装置でありながら、Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzの6成分を得ることができる装置は、産業上、極めて有用である。ロボットや産業機械の動作制御などへの用途では、力とモーメントとをはっきり区別して検出することが可能な力検出装置の需要が決して少なくない。ここに示す力検出装置は、正に、このような用途に適した装置ということができる。たとえば、図10に示す力検出装置を、ロボットの腕と手首との関節部分として利用するのであれば、支持基板300を腕側に取り付け、受力体100を手首側に取り付ければよい。そうすれば、腕に対して手首側に加えられた力およびモーメントを検出することが可能である。
【0126】
<<< §5. 他軸成分の干渉 >>>
§4では、図10に示す力検出装置において、8個の主容量素子C1〜C8のみを用いて、6つの力成分を検出する動作を説明した。このような検出原理自体は、既に、前掲の特許文献3に開示されている。
【0127】
この検出原理では、本来、他軸成分の干渉を受けることのない正確な検出値が得られるはずである。たとえば、図15に示すFx=C5−C6+C7−C8なる式を用いて得られる力Fxの検出値には、他軸成分は排除されるはずである。すなわち、図14のテーブルにおいて、力FyやモーメントMyが加わったときのC5〜C8の欄は、いずれも「0」であるから、上式によって得られる検出値Fxには、Fy,Myに起因する成分は含まれていない。一方、図14のテーブルにおいて、力FzやモーメントMx,Mzが加わったときのC5〜C8の欄は、「+Δ」もしくは「−Δ」であるが、各電極の幾何学的な対称性から、同一行に記載された「Δ」の絶対値は等しくなるので、Fx=C5−C6+C7−C8なる演算結果は0になる。結局、Fx=C5−C6+C7−C8なる式を用いて得られる値は、力Fxの成分のみを含むことになる。
【0128】
同様に、図15に示すFy=C1−C2+C3−C4なる式を用いて得られる値は、力Fyの成分のみを含むことになる。また、図15に示すFz=−(C1+C2+C3+C4+C5+C6+C7+C8)なる式を用いて得られる力Fzの検出値も、他軸成分を含まない値になる。すなわち、図14のテーブルにおいて、各電極の幾何学的な対称性から、同一行に記載された「Δ」の絶対値は等しいので、各行ごとにC1〜C8の総和をとると、Fzの行以外はすべて総和は0になる。これは、Fz=−(C1+C2+C3+C4+C5+C6+C7+C8)なる式を用いて得られる値が、力Fzの成分のみを含むことを意味する。
【0129】
次に、図15に示すMx=−C5−C6+C7+C8なる式を用いて得られるモーメントMxの検出値について考えてみる。図14のテーブルにおいて、力FyやモーメントMyが加わったときのC5〜C8の欄は、いずれも「0」であるから、上式によって得られる検出値Mxには、Fy,Myに起因する成分は含まれていない。一方、図14のテーブルにおいて、力Fx,FzやモーメントMzが加わったときのC5〜C8の欄は、「+Δ」もしくは「−Δ」であるが、各電極の幾何学的な対称性から、同一行に記載された「Δ」の絶対値は等しくなるので、Mx=−C5−C6+C7+C8なる演算結果は0になる。結局、Mx=−C5−C6+C7+C8なる式を用いて得られる値は、モーメントMxの成分のみを含むことになる。
【0130】
同様に、図15に示すMy=C1+C2−C3−C4なる式を用いて得られる値は、モーメントMyの成分のみを含むことになる。また、図15に示すMz=C1−C2−C3+C4−C5+C6+C7−C8なる式を用いて得られるモーメントMzの検出値も、他軸成分を含まない値になる。すなわち、図14のテーブルにおいて、各電極の幾何学的な対称性から、同一行に記載された「Δ」の絶対値は等しいので、各行ごとに上式に基づく演算を行うと、Mzの行以外はすべて0になる。これは、Mz=C1−C2−C3+C4−C5+C6+C7−C8なる式を用いて得られる値が、モーメントMzの成分のみを含むことを意味する。
【0131】
しかしながら、実際には、§4で述べた検出動作では、他軸成分の干渉を完全に排除した正確な検出を行うことはできない。図16は、図14および図15に示す原理に基づく検出を行った場合に、X軸まわりのモーメントMxによるY軸方向の力Fyへの他軸干渉が生じる測定結果を示すグラフである。すなわち、このグラフは、図10に示す力検出装置を試作し、受力体100に対して、X軸まわりのモーメントMxのみを作用させたときに、Mx=−C5−C6+C7+C8なる演算式に基づく演算で得られる検出値V(Mx)およびFy=C1−C2+C3−C4なる演算式に基づく演算で得られる検出値V(Fy)を示している。実際の試作品では、各容量素子の静電容量値を電圧値として検出し、検出した電圧値の加減算の結果を各検出値としているため、グラフに示す検出値V(Mx)およびV(Fy)は、いずれも電圧値として得られた値である。
【0132】
図に実線のグラフで示すとおり、作用させたモーメントMxの値を増減させると、モーメントMxの検出値V(Mx)もこれに比例して増減している。これは、モーメントMxに関しては、正しい検出値が得られていることを示している。ところが、図に破線のグラフで示すとおり、力Fyの検出値V(Fy)も、作用させたモーメントMxの値に比例して増減している。本来であれば、モーメントMxのみを作用させた場合、力Fyの検出値V(Fy)は0を維持しなければならない。結局、§4で述べた検出動作では、力Fyの検出値に、モーメントMxの成分が含まれてしまうことになる。
【0133】
もちろん、実際には、力Fyのみを作用させたときに得られる検出値V(Fy)の値に比べて、モーメントMxのみを作用させたときに得られる検出値V(Fy)の値は小さいので、図16に破線で示す検出値V(Fy)を、力Fyの検出に関する誤差成分として取り扱うことにすれば、厳密な検出を必要としない用途では支障は生じない。しかしながら、モーメント成分と力成分とを厳密に区別した高精度の検出値を必要とする用途へ利用するには問題となる。同様の問題は、力FxとモーメントMyとの間にも生じる。すなわち、§4で述べた検出動作では、力Fxの検出値に、モーメントMyの成分が含まれてしまう。
【0134】
本願発明者は、図16の破線のグラフに示すように、力Fyの検出値に、モーメントMxの成分が含まれてしまう原因を探求した。その結果、図14に示すテーブルが、厳密には正しいテーブルではなく、各容量素子C1〜C8の静電容量値の増減は、厳密には、図17に示すテーブルのようになることを見出した。
【0135】
図17のテーブルにおいて、太線で囲われた欄は、図14のテーブルとの相違部分である。すなわち、太線で囲われた8個の欄の内容は、図14のテーブルでは「0」となっていたが、厳密には「0」ではなく、「+δ」もしくは「−δ」とすべきものである。ここでは、まず、図17のテーブルの第5行目(+Myの行)の結果が得られる理由を説明しよう。
【0136】
図10の力検出装置に、Y軸まわりのモーメント+Myが作用すると、装置を構成する構造体が、図13に示すように変形することは既に述べたとおりである。その結果、柱状体T1から支持基板300に対しては下方への押圧力−fzが加わり、柱状体T2から支持基板300に対しては上方への引っ張り力+fzが加わる。したがって、容量素子C1,C2の電極間隔は狭まり、静電容量値は増加し、容量素子C3,C4の電極間隔は広がり、静電容量値は減少する。よって、図17のテーブルの第5行目(+Myの行)に示すとおり、容量素子C1,C2の静電容量値は「+Δ」となり、容量素子C3,C4の静電容量値は「−Δ」となる。
【0137】
§4の説明では、このとき、柱状体T3,T4は傾斜せず、容量素子C5〜C8の静電容量値には変化は生じないものとして取り扱った。これは、図11に示すように力+Fxが加えられると、4本の柱状体T1〜T4がいずれもX軸正方向に傾斜するが、図13に示すようにモーメントMyが加えられると、4本の柱状体T1〜T4は、いずれも傾斜せず、柱状体T1は下方へ移動し、柱状体T2は上方へ移動し、柱状体T3,T4の位置は変化しない、と考えたためである。たしかに、4本の柱状体T1〜T4の大まかな動きを捉えると、このように考えても誤りではない。
【0138】
しかしながら、厳密には、Y軸まわりのモーメント+Myが作用すると、柱状体T3,T4には、わずかながらX軸正方向への傾斜が生じるのである。もちろん、傾斜角度は、図11に示すような力+Fxが加えられたときに生じる角度に比べると小さいため、静電容量値の変化も小さい。図17のテーブルにおいて、太線で囲った欄に示されている符号「δ」は、他の欄に示されている符号「Δ」と同様に、「主容量素子に生じる容量値変化」を示す符号ではあるが、静電容量値の変化量としては小さいことを示している。以下、この符号「δ」で示す変化量成分を「他軸干渉成分」と呼ぶことにする。
【0139】
図17のテーブルの第5行目(+Myの行)の容量素子C5,C7の欄に「+δ」と記載され、容量素子C6,C8の欄に「−δ」と記載されているが、これは、Y軸まわりのモーメント+Myが作用することにより、柱状体T3,T4がX軸正方向へ若干傾斜するため、容量素子C5,C7の電極間隔がわずかながら縮み、静電容量値がわずかながら増加し、容量素子C6,C8の電極間隔がわずかながら広がり、静電容量値がわずかながら減少することを示している。
【0140】
同様に、図17のテーブルの第4行目(+Mxの行)の容量素子C2,C4の欄に「+δ」と記載され、容量素子C1,C3の欄に「−δ」と記載されているが、これは、X軸まわりのモーメント+Mxが作用することにより、柱状体T1,T2がY軸負方向へ若干傾斜するため、容量素子C1,C3の電極間隔がわずかながら広がり、静電容量値がわずかながら減少し、容量素子C2,C4の電極間隔がわずかながら縮み、静電容量値がわずかながら増加することを示している。
【0141】
図16の破線のグラフに示すように、力Fyの検出値に、モーメントMxの成分が含まれてしまう原因は、図17のテーブルの第4行目(+Mxの行)の内容に基づいて、Fy=C1−C2+C3−C4なる演算を行ったためである。図17のテーブルにおいても、各電極の幾何学的な対称性から、同一行に記載された「δ」の絶対値は等しいので、モーメントMxが作用しているとき、Fy=C1−C2+C3−C4=−4δになる。図16の破線のグラフに示す検出値V(Fy)は、この−4δ(他軸干渉成分)に対応する検出値ということになる。
【0142】
同様に、図17のテーブルの第5行目(+Myの行)の内容に基づいて、Fx=C5−C6+C7−C8なる演算を行うと、やはり同一行に記載された「δ」の絶対値は等しいので、Fx=+4δ(他軸干渉成分)になる。これが、力Fxの検出値に、モーメントMyの成分が含まれてしまう原因である。
【0143】
<<< §6. 副容量素子による補正原理 >>>
本発明の主眼は、§5で述べた理由によって生じる他軸成分の干渉を、副容量素子によって補正することにより、他軸成分の干渉を排除した正確な検出を行う点にある。別言すれば、§5で述べた理由によって主容量素子C1〜C8の静電容量値に生じる他軸干渉成分δを、副容量素子D1〜D8の静電容量値の変化分によって相殺する点にある。以下、この補正原理を説明する。
【0144】
図18は、図9に示されている16枚の電極の拡大平面図である。既に述べたとおり、8枚の主固定電極E1〜E8は、8個の主容量素子C1〜C8を構成する電極であり、8枚の副固定電極F1〜F8は、8個の副容量素子D1〜D8を構成する電極である。図に括弧書きで示されているC1〜C8およびD1〜D8は、各電極によって構成される容量素子を示す符号である。
【0145】
ここで、8個の副容量素子D1〜D8は、それぞれ8個の主容量素子C1〜C8の静電容量値に対する補正機能を有している。すなわち、主容量素子C1には副容量素子D1が対応し、主容量素子C2には副容量素子D2が対応し、... という具合に、1つの主容量素子に1つの副容量素子が対応づけられ、各容量素子は常に主副がペアの状態で取り扱われる。なお、図18では、各固定電極に8種類の異なるハッチングを施して示すが、これはペアを構成する電極に同一のハッチングを施し、対応関係を明瞭にするための便宜である。たとえば、主固定電極E1と副固定電極F1には、同一のハッチングが施されているが、これは、主固定電極E1によって構成される主容量素子C1と、副固定電極F1によって構成される副容量素子D1とが対応し、ペアを組むことを示している。
【0146】
さて、§5では、8枚の主固定電極E1〜E8によって構成される8個の主容量素子C1〜C8について、受力体100に6種類の力成分が加わったときの静電容量値の正確な変化態様が、図17のテーブルに示すようになることを説明した。そこで、ここでは、図18に示す8枚の副固定電極F1〜F8によって構成される8個の副容量素子D1〜D8について、受力体100に6種類の力成分が加わったときの静電容量値の正確な変化態様が、どのようになるかを検討してみよう。
【0147】
図19は、図10に示す力検出装置において、受力体100に各力成分が作用したときの各副容量素子D1〜D8(括弧内の符号F1〜F8は、対応する副固定電極を示す)の静電容量値の変化の態様を示すテーブルである。ここで、太線で囲った欄は、副容量素子D1〜D8の静電容量値に変化が生じる欄であり、符号「ε」は、「副容量素子に生じる容量値変化」を示す符号である。この符号「ε」は、符号「Δ」や符号「δ」と同様に、特定の値を示すものではない。ただ、図9に示すように、各固定電極が、X軸およびY軸を対称軸とした幾何学的な対称性をもつ形状および配置を採る場合は、図19のテーブルの各欄における「ε」の値は、幾何学的条件が同一となる他のいずれかの欄の「ε」の値と等しくなる。
【0148】
まず、受力体100に対して、X軸正方向の力+Fxが作用した場合の各副容量素子D1〜D8の静電容量値の変化を考えてみよう。この場合、図11に示されているように、各柱状体T1〜T4は、いずれも図の右方向(X軸正方向)に傾斜することになる(図2(b) に対応する変形態様)。このため、共通変位電極として機能する下端側肉薄部215,225,235,245は、いずれも、図における右側半分の部分は図の下方へと変位し、左側半分の部分は図の上方へと変位する。
【0149】
ここで、図18の平面図を参照すれば、各副固定電極F1〜F8の形状は、いずれも左右対称となっていることがわかる。したがって、これら各副固定電極F1〜F8と、その上方に位置する共通変位電極との間の距離は、その一部分(右側半分の部分)は縮まるが、別な一部分(左側半分の部分)は広がるため、トータルでは静電容量値の変化は生じない。図19のテーブルの第1行目(+Fxの行)の各欄が「0」となっているのは、このためである。X軸負方向の力−Fxが作用した場合も、同様に各欄は「0」になる。
【0150】
一方、受力体100に対して、Y軸正方向の力+Fyが作用した場合は、上述した力+Fxが作用した場合の変化態様を、上面からみて90°回転させた現象が起こることになるので、図19のテーブルの第2行目(+Fyの行)に示すとおり、各欄は、やはり「0」になる。Y軸負方向の力−Fyが作用した場合も同様である。
【0151】
また、受力体100に対して、Z軸正方向の力+Fzが作用すると、図12に示されているように、各柱状体T1〜T4は、いずれも支持基板300の上面に対して引っ張り力を作用させることになるので、各容量素子D1〜D8の電極間隔は広がり、静電容量値は減少する。図19のテーブルの第3行目(+Fzの行)に示す「−ε」は、このような静電容量値の減少を示している。逆に、受力体100に対して、Z軸負方向の力−Fzが作用すると、各柱状体T1〜T4は、いずれも支持基板300の上面に対して押圧力を作用させることになるので、各容量素子D1〜D8の電極間隔は狭まり、静電容量値は増加する。したがって、図19のテーブルの第3行目(+Fzの行)の各欄は「+ε」になる。
【0152】
なお、上述したとおり、「ε」は、特定の固有値を示すものではないので、図19のテーブルの第3行目(+Fzの行)に示す「−ε」の値は、必ずしもすべてが同一の値というわけではない。図18の平面図を見ればわかるとおり、副固定電極F1,F2,F5,F8は円形の電極であるのに対し、副固定電極F3,F4,F6,F7は円環状の電極であり、両者は形状や面積が異なる。したがって、図19のテーブルの第3行目(+Fzの行)に示すD1,D2,D5,D8の各欄に示す「−ε」の値は相互に等しく、D3,D4,D6,D7の各欄に示す「−ε」の値は相互に等しくなるが、前者と後者とでは値は異なる。
【0153】
次に、受力体100に対して、モーメントが作用した場合を考えてみる。図13に示されているように、受力体100にY軸まわりの正方向のモーメント+Myが作用すると、柱状体T1から支持基板300に対しては下方への押圧力−fzが加わり、柱状体T2から支持基板300に対しては上方への引っ張り力+fzが加わる。したがって、図18の平面図を参照すれば、容量素子D6,D8の電極間隔は狭まり、静電容量値は増加する。これに対して、容量素子D5,D7の電極間隔は広がり、静電容量値は減少する。図19のテーブルの第5行目(+Myの行)におけるD5〜D8の欄の「+ε」もしくは「−ε」は、このような静電容量値の増減を示している。
【0154】
このようにY軸まわりの正方向のモーメント+Myが作用したとき、柱状体T3,T4は、X軸正方向に若干傾斜することになる。ただ、Y軸上に配置されている容量素子D1〜D4については、その一部分(右側半分の部分)の電極間隔は縮まるが、別な一部分(左側半分の部分)の電極間隔は広がるため、トータルでは静電容量値の変化は生じない。図19のテーブルの第5行目(+Myの行)におけるD1〜D4の各欄が「0」となっているのは、このためである。逆に、Y軸まわりの負方向のモーメント−Myが作用すると、静電容量値の増減変化の関係が逆転し、図19のテーブルの第5行目には、「+」と「−」とが逆転した結果が得られることになる。
【0155】
また、受力体100にX軸まわりの正方向のモーメント+Mxが作用した場合は、上述したモーメント+Myが作用した場合の変化態様を、上面からみて90°回転させた現象が起こることになる。すなわち、柱状体T4から支持基板300に対しては下方への押圧力−fzが加わり、柱状体T3から支持基板300に対しては上方への引っ張り力+fzが加わっている。したがって、容量素子D1,D3の電極間隔は狭まり、静電容量値は増加する。これに対して、容量素子D2,D4の電極間隔は広がり、静電容量値は減少する。図19のテーブルの第4行目(+Mxの行)におけるD1〜D4の欄の「+ε」もしくは「−ε」は、このような静電容量値の増減を示している。
【0156】
このようにX軸まわりの正方向のモーメント+Mxが作用したとき、柱状体T1,T2は、Y軸負方向に若干傾斜することになる。ただ、X軸上に配置されている容量素子D5〜D8については、その一部分(図18における上側半分の部分)の電極間隔は広がるが、別な一部分(図18における下側半分の部分)の電極間隔は縮まるため、トータルでは静電容量値の変化は生じない。図19のテーブルの第4行目(+Mxの行)におけるD5〜D8の各欄が「0」となっているのは、このためである。逆に、X軸まわりの負方向のモーメント−Mxが作用すると、静電容量値の増減変化の関係が逆転し、図19のテーブルの第4行目には、「+」と「−」とが逆転した結果が得られることになる。
【0157】
最後に、受力体100に対して、Z軸まわりのモーメントMzが作用した場合を考えてみる。受力体100にZ軸まわりの正方向のモーメント+Mzもしくは負方向のモーメント−Mzが加わると、4本の柱状体T1〜T4が、図18における上下左右のいずれかに傾斜することになる。しかしながら、いずれの方向に傾斜したとしても、容量素子D1〜D8の電極間隔は、その一部分は広がり、他の一部分は縮まることになるので、トータルでは静電容量値の変化は生じない。図19のテーブルの第6行目(+Mzの行)におけるD1〜D8の各欄が「0」となっているのは、このためである。
【0158】
結局、図10に示す力検出装置において、受力体100に各力成分が作用したとき、主容量素子C1〜C8の静電容量値は、図17のテーブルに示すように変化し、副容量素子D1〜D8の静電容量値は、図19のテーブルに示すように変化することがわかる。ここで、両テーブルの第4行目(+Mxの行)のC1〜C4,D1〜D4の各欄と第5行目(+Myの行)のC5〜C8,D5〜D8の各欄とを相互に比較すると、符号が相補的になっていることがわかる。すなわち、前者で「−δ」となっている場合、後者では「+ε」となっており、前者で「+δ」となっている場合、後者では「−ε」となっている。これは、前者の±δを、後者の±εで相殺可能であることを意味している。
【0159】
図17のテーブルに示す値±δの絶対値は(もちろん、±Δの絶対値もそうであるが)、主容量素子C1〜C8の構成によって左右される量である。具体的には、各主容量素子を構成する一対の電極の電極間隔(何ら力が作用していない状態での電極間隔)を小さく設定すればするほど、絶対値δは大きくなる。また、これら一対の電極の面積を大きく設定すればするほど、絶対値δは大きくなる。同様に、図19のテーブルに示す値±εの絶対値は、副容量素子D1〜D8の構成によって左右される量である。具体的には、各副容量素子を構成する一対の電極の電極間隔(何ら力が作用していない状態での電極間隔)を小さく設定すればするほど、絶対値εは大きくなる。また、これら一対の電極の面積を大きく設定すればするほど、絶対値εは大きくなる。
【0160】
そこで、主容量素子C1〜C8の構成と副容量素子D1〜D8の構成とをうまく設定してやれば、図17のテーブルにおける他軸干渉成分±δを、図19のテーブルにおける±εで相殺することができる。これが、本発明の特徴となる副容量素子による補正原理である。
【0161】
この補正原理を、図20のテーブルを参照しながら説明しよう。この図20に示すテーブルは、図17に示す8個の主容量素子C1〜C8についての静電容量値の変化の態様を示す各欄と、図19に示す8個の副容量素子D1〜D8についての静電容量値の変化の態様を示す各欄と、の和を示すテーブルである。ここで、太線で囲った欄は、副容量素子D1〜D8の静電容量値に変化が生じる欄である。別言すれば、図20において、太線で囲った欄以外の各欄は、図17のテーブルと全く同じ内容になる。
【0162】
いま、この図20のテーブルにおいて、各欄内の絶対値δと絶対値εとが等しいと仮定してみよう。既に述べたとおり、このテーブル中の「δ」や「ε」は、特定の固有値を示しているわけではなく、必ずしもすべてが同一の値というわけではないが、個々の欄ごとに、それぞれδ=εが成り立っているとすれば、「−δ+ε」や「+δ−ε」と記載されている欄は「0」に置き換えることができる。すなわち、図20のテーブルの第4行目(+Mxの行)の左側4欄はいずれも「0」になり、第5行目(+Myの行)の右側4欄はいずれも「0」になる。
【0163】
結局、図20のテーブルは、第3行目(+Fzの行)を除いて、図14のテーブルと等価になる。第3行目の各欄については、図14のテーブルでは「−Δ」となっていたのが、図20のテーブルでは「−(Δ+ε)」に置き換わっているが、これは絶対値が若干変わるだけである。すなわち、力Fzの検出値のスケーリングファクターが若干変わるだけであり、本質的には、何ら支障は生じない。
【0164】
そうすると、8個の主容量素子C1〜C8の静電容量値(同じ符号C1〜C8を用いて示す)を用いた図15に示す演算式の代わりに、更に、8個の副容量素子D1〜D8の静電容量値(同じ符号D1〜D8を用いて示す)を用いた図21に示す演算式を用いることにより、6つの力成分Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzの検出が可能になることがわかる。しかも、この図21に示す演算式を用いた場合、§5で述べた他軸干渉成分±δが、副容量素子D1〜D8に生じる変化分±εによって相殺されるため、力とモーメントを厳密に区別した正確な検出値が得られることになる。
【0165】
具体的には、図21の式によれば、力Fxは、Fx=(C5+D5)−(C6+D6)+(C7+D7)−(C8+D8)なる式によって得られ、力Fyは、Fy=(C1+D1)−(C2+D2)+(C3+D3)−(C4+D4)なる式によって得られる。また、モーメントMzは、Mz=(C1+D1)−(C2+D2)−(C3+D3)+(C4+D4)−(C5+D5)+(C6+D6)+(C7+D7)−(C8+D8)なる式によって得られる。その理由は、図20のテーブルの第1行目(+Fxの行)、第2行目(+Fyの行)、第6行目(+Mzの行)の内容が、図14のテーブルの各行の内容と同一であることから、もはや説明は要さないであろう。
【0166】
一方、図21の式によれば、力Fzは、Fz=−((C1+D1)+(C2+D2)+(C3+D3)+(C4+D4)+(C5+D5)+(C6+D6)+(C7+D7)+(C8+D8))なる式によって得られる。図15に示すFzの式によって得られる力Fzの値は、図14のテーブルの第3行目の8個の欄の内容の総和「−8Δ」として与えられるのに対して、図21に示すFzの式によって得られる力Fzの値は、図20のテーブルの第3行目の8個の欄の内容の総和「−8(Δ+ε)」として与えられることになるが、前述したとおり、「−8Δ」と「−8(Δ+ε)」との相違は、単なる検出値のスケーリングの問題なので、実用上、何ら支障は生じない。
【0167】
なお、力Fzを、Fz=−((C1+D1)+(C2+D2)+(C3+D3)+(C4+D4))なる式や、Fz=−((C5+D5)+(C6+D6)+(C7+D7)+(C8+D8))なる式によって求めることも可能である。ただ、実用上は、より高い検出精度が得られると期待されるFz=−((C1+D1)+(C2+D2)+(C3+D3)+(C4+D4)+(C5+D5)+(C6+D6)+(C7+D7)+(C8+D8))なる式によって求めるのが好ましい。
【0168】
一方、図21の式によれば、モーメントMxは、Mx=−(C5+D5)−(C6+D6)+(C7+D7)+(C8+D8)なる式によって得られ、モーメントMyは、My=(C1+D1)+(C2+D2)−(C3+D3)−(C4+D4)なる式によって得られる。その理由は、上述したとおり、各欄内の絶対値δと絶対値εとが等しいと仮定すれば、図20のテーブルの第4行目(+Mxの行)の左側4欄はいずれも「0」になり、第5行目(+Myの行)の右側4欄はいずれも「0」になり、図20のテーブルの第4行目,第5行目の内容が、図14のテーブルの第4行目,第5行目の内容と同一になるためである。
【0169】
<<< §7. 容量素子の設計方法 >>>
図20のテーブルにおいて、各欄内の絶対値δと絶対値εとが等しくなるようにするには、第i番目(i=1〜8)の主容量素子Ciの構成と、これに対応する第i番目の副容量素子Diの構成とをうまく設定してやればよい。上述したとおり、容量素子の静電容量値は、これを構成する一対の電極の電極間隔および電極面積を変えることによって調整することができる。ただ、図10に示すような構造体の場合、容量素子の静電容量値を調整する方法としては、電極間距離を変える調整方法を採るよりも、電極面積を変える調整方法を採る方が簡単である。
【0170】
したがって、本発明に係る力検出装置を設計する場合、実用上は、まず、8枚の主固定電極E1〜E8の形状、サイズ、配置を決定した上で、これら主固定電極E1〜E8によって構成される主容量素子C1〜C8に生じる他軸干渉成分±δを相殺するための静電容量値の変化分±εが得られる副容量素子D1〜D8を構成する8枚の副固定電極F1〜F8の形状、サイズ、配置を決定する、という設計手法を採るのが好ましい。
【0171】
たとえば、図18に示すように、第1の柱状体11および第2の柱状体12の下端部近傍に設けられる4枚の主固定電極E1〜E4の形状、サイズ、配置が、図示のように決定されたものとしよう。この場合、4枚の副固定電極F1〜F4は、モーメントMxのみが作用した場合に、主容量素子C1〜C4に生じる静電容量値の変化分と絶対値が等しく符号が逆となる変化分が得られる副容量素子D1〜D4を構成するのに適した形状、サイズ、配置をもつ電極として定義される。同様に、第3の柱状体13および第4の柱状体14の下端部近傍に設けられる4枚の主固定電極E5〜E8の形状、サイズ、配置が、図示のように決定された場合、4枚の副固定電極F5〜F8は、モーメントMyのみが作用した場合に、主容量素子C5〜C8に生じる静電容量値の変化分と絶対値が等しく符号が逆となる変化分が得られる副容量素子D5〜D8を構成するのに適した形状、サイズ、配置をもつ電極として定義される。
【0172】
図22は、副固定電極F1〜F8の形状、サイズ、配置を決定するための実験方法の一例を示す側断面図である。図示されている装置は、試作品として実際に製造した図10に示す装置本体に、測定用治具400を取り付けたものである。この測定用治具400は、図示のとおり、接続部410、上蓋部420、側壁部430、フランジ部440からなり、装置本体の上半分をそっくりと覆うカバーを構成している。このような測定用治具400を取り付けて実験を行うのは、受力体100に対して、正確なモーメントを作用させるためである。
【0173】
既に述べたとおり、ここで述べる実施形態の場合、XYZ三次元座標系は、XY平面が、支持基板300の上面近傍に、支持基板300の上面に対して平行となるように位置し、上方を正とし下方を負とするZ軸が支持基板300の上面のほぼ中心位置を通るように定義される。より正確に言えば、XY平面が、4枚の下端側肉薄部215,225,235,245と支持基板300の上面との間に挟まれるように、XYZ三次元座標系の定義が行われている。これは、§3で述べたとおり、本願発明者は、XYZ三次元座標系のXY平面の位置を、容量素子を構成する一対の電極間の中心位置に設定するのが最も好ましいと考えているためである。このため、以下に示す実験も、このような位置に原点Oが定義されているという前提で行う場合を例にとって説明する。
【0174】
もっとも、既に述べたとおり、原点Oは概念的な位置であり、必ずしも厳密な定義を行う必要はない。実際は、支持基板300の中央付近の上面近傍の所定点に定義しておけば、実用上、本発明の効果は十分に得られる。したがって、たとえば、支持基板300の上面をXY平面とするXYZ三次元座標系を定義してもかまわない。この場合、得られた力検出装置は、そのようなXYZ三次元座標系における各座標軸に関する6成分の力を正確に検出する機能をもった装置ということになる。
【0175】
さて、図22に示すような測定用治具400を用いると、受力体100に対して、XYZ三次元座標系の各軸方向の力Fx,Fy,Fzおよび各軸まわりのモーメントMx,My,Mzを正確に作用させる実験が可能になる。たとえば、図のフランジ部440の右端の作用点P1にワイヤを取り付け、図の右方向に水平に引っ張れば、力成分+Fxを作用させることができる。逆に、フランジ部440の左端の作用点P2にワイヤを取り付け、図の左方向に水平に引っ張れば、力成分−Fxを作用させることができる。一方、Y軸方向の力成分+Fy,−Fyを作用させる場合は、図示されていないフランジ部440の手前側もしくは奥側の作用点を利用すればよい。これらの作用点は、XY平面上の位置にとられているので、作用させた各力成分は、X軸もしくはY軸方向の正確な力成分になる。
【0176】
また、上蓋部420の中心に位置する作用点P3にワイヤを取り付け、図の垂直上方に引っ張れば、力成分+Fzを作用させることができ、逆に、作用点P3の部分を、何らかの器具で図の垂直下方に押し込むようにすれば、力成分−Fzを作用させることができる。もちろん、複数の作用点を利用して、力Fx,Fy,Fzを作用させることも可能である。この場合、座標軸に関して対称性を有する位置に複数の作用点を設定すればよい。
【0177】
一方、受力体100に対して、各軸まわりのモーメントMx,My,Mzを作用させるには、座標軸に関して対称性を有する2つの作用点に相補的な力(偶力)を加えればよい。たとえば、Y軸まわりの正方向のモーメント+Myを作用させるには、作用点P1に取り付けたワイヤーを図の垂直下方に引っ張り、作用点P2に取り付けたワイヤーを図の垂直上方に引っ張るようにし、両ワイヤーを引く力の絶対値を等しくすればよい。もちろん、この場合、図示の寸法r1,r2(原点Oから作用点P1,P2までの距離)が互いに等しくなるようにしておく必要がある。ワイヤーを引く向きを左右で入れ換えれば、Y軸まわりの負方向のモーメント−Myを作用させることができる。
【0178】
同様に、X軸まわりのモーメント+Mx,−Mxを作用させる場合は、図示されていないフランジ部440の手前側もしくは奥側の作用点を利用し、一方を上方、他方を下方に引く相補的な力を加えればよい。また、Z軸まわりの正方向のモーメント+Mzを作用させる場合は、作用点P1に取り付けたワイヤーをXY平面に沿って図の奥方向に引っ張り、作用点P2に取り付けたワイヤーをXY平面に沿って図の手前方向に引っ張るようにすればよいし、Z軸まわりの負方向のモーメント−Mzを作用させる場合は、ワイヤーを引く向きを左右で入れ換えればよい。
【0179】
このような測定用治具400を用い、たとえば、図18に示すような8枚の主固定電極E1〜E8および8枚の副固定電極を備えた試作品について、X軸まわりのモーメント+Mxもしくは−Mxを作用させ、各主容量素子に生じる容量値変化分と、各副容量素子に生じる容量値変化分とを比較し、両者の絶対値が等しくなるように、各電極の面積を調整すればよい。たとえば、所定の大きさをもったモーメント+Mxを作用させたときに、主容量素子C1に生じた容量値変化分が−δであり、副容量素子D1に生じた容量値変化分が+εであり、δ>εであった場合、δ=εとなるまで、副固定電極F1の面積を大きくする修正を施せばよい。このような試作品を用いた試行錯誤を行うことにより、実用的な精度でδ=εを満たす主容量素子および副容量素子を設計することが可能である。
【0180】
以上、試作品を用いた実測により、主容量素子および副容量素子を構成する固定電極を設計する方法を説明したが、実測の代わりに、コンピュータシミュレーションによる設計を行うことも可能である。たとえば、有限要素法などの公知のコンピュータ解析法を利用すれば、物理的な実体をもつ試作品を作成する代わりに、コンピュータ上でのシミュレーションにより、実測と同等の結果を得ることができる。すなわち、図10に示す構造体各部の寸法や物理定数をパラメータとしてコンピュータに与えれば、受力体に所定の大きさをもったモーメント+Mxを作用させた場合の変形態様をシミュレートし、各容量素子に生じる静電容量値の変化分を演算によって求めることができる。実用上は、まず、このようなコンピュータシミュレーションによって、主容量素子および副容量素子を構成する固定電極を設計した後、必要に応じて、試作品による検証を行うようにすればよい。
【0181】
<<< §8. 検出回路の単純化 >>>
本発明に係る装置に用いられる検出回路は、各容量素子の静電容量値に基づいて、図21の各演算式を利用して、受力体に作用した力の所定方向成分を検出する機能を有している。この図21の各演算式は、(Ci+Di)なる項(但し、i=1〜8)の加算もしくは減算によって構成されており、これら各項は、第i番目の主容量素子の静電容量値Ciと第i番目の副容量素子の静電容量値Diとの和である。このような数値の和を求める演算は、アナログ加算器を用いて行うこともできるし、デジタル演算器を用いて行うこともできるが、「静電容量値の和」という物理的性質に着目すると、「電気的な並列接続」という単純な方法により、特別な演算器を用いることなしに、和を求めることができる。
【0182】
たとえば、2つの容量素子Ca,Cbについての静電容量値の和「Csum=Ca+Cb」を求める必要がある場合、個々の静電容量値Ca,Cbを電気的にアナログ値もしくはデジタル値として検出し、アナログ加算器やデジタル演算器を用いた演算により、Csumを得ることができる。しかしながら、2つの容量素子Ca,Cbの一方の電極同士を配線で接続し、他方の電極同士も配線で接続して、両者を並列接続した形にすれば、この並列接続された容量素子Cabについての静電容量値は、個々の静電容量値Ca,Cbの和「Csum=Ca+Cb」に等しくなる。
【0183】
このような方針に基づき、静電容量値の和を算出する対象となる複数の容量素子については、互いに電気的な並列接続がなされるような配線を施すことにより、検出回路30における和を算出する演算を省略することが可能になる。本発明を実施する場合、実用上、第i番目(但し、i=1〜8)の主容量素子と第i番目の副容量素子とを並列接続するのが極めて好ましい。
【0184】
具体的には、第1の主容量素子C1と第1の副容量素子D1とを相互に並列接続するための配線と、第2の主容量素子C2と第2の副容量素子D2とを相互に並列接続するための配線と、第3の主容量素子C3と第3の副容量素子D3とを相互に並列接続するための配線と、第4の主容量素子C4と第4の副容量素子D4とを相互に並列接続するための配線と、第5の主容量素子C5と第5の副容量素子D5とを相互に並列接続するための配線と、第6の主容量素子C6と第6の副容量素子D6とを相互に並列接続するための配線と、第7の主容量素子C7と第7の副容量素子D7とを相互に並列接続するための配線と、第8の主容量素子C8と第8の副容量素子D8とを相互に並列接続するための配線と、を設けるようにすればよい。
【0185】
そうすれば、検出回路は、図21の各演算式を利用して、受力体に作用した力の所定方向成分を検出する際に、第1の主容量素子C1と第1の副容量素子D1との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C1+D1」の値として用い、第2の主容量素子C2と第2の副容量素子D2との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C2+D2」の値として用い、第3の主容量素子C3と第3の副容量素子D3との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C3+D3」の値として用い、第4の主容量素子C4と第4の副容量素子D4との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C4+D4」の値として用い、第5の主容量素子C5と第5の副容量素子D5との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C5+D5」の値として用い、第6の主容量素子C6と第6の副容量素子D6との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C6+D6」の値として用い、第7の主容量素子C7と第7の副容量素子D7との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C7+D7」の値として用い、第8の主容量素子C8と第8の副容量素子D8との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C8+D8」の値として用いることができるので、これらの和を求める演算を省略することができる。
【0186】
図10に示す実施形態の場合、中間体200を金属などの導電性材料によって構成しておけば、各下端側肉薄部215,225,235,245が導電性をもった共通変位電極として機能し、16個の容量素子の変位電極がすべて、中間体200を介して電気的に導通した状態になる。したがって、一対の主副容量素子を並列接続するには、支持基板300側に形成された主固定電極E1〜E8と、副固定電極F1〜F8とについて、図23の平面図に示すような配線を施せばよい。
【0187】
図23に示す例では、支持基板300の上面に、電極E1/F1間、電極E2/F2間、電極E3/F3間、電極E4/F4間、電極E5/F5間、電極E6/F6間、電極E7/F7間、電極E8/F8間を接続するための配線がなされており、また、各電極E1〜E8に対しては、それぞれボンディングパッドB1〜B8への配線もなされている。したがって、たとえば、ボンディングパッドB1と、中間体200との間の静電容量値を検出する回路を設けておけば、静電容量値「C1+D1」の値を得ることができる。
【0188】
なお、図23に示す例では、支持基板300上に配線を通すため、円環状の副固定電極F3,F4,F7,F8の一部に切り欠き部を設けているが、切り欠き部の幅を小さく設定すれば、実質的な幾何学的対称性に大きな影響は及ばない。もちろん、切り欠き部を設けずに、支持基板300にスルーホールを形成し、裏面側で配線を行うようにしてもかまわない。
【0189】
<<< §9. その他の変形例 >>>
これまで、本発明を基本的実施形態について述べてきた。そもそも、本発明の基本的な発想は、前掲の特許文献3(特開2008−096229号公報)に記載された力検出装置において、図16のグラフに示すとおり、モーメントMxが力Fyの検出値に他軸成分として干渉し、同様に、モーメントMyが力Fxの検出値に他軸成分として干渉する現象を補正することを目的としてなされたものである。
【0190】
上記目的を達成するため、本発明では、力Fyの検出に用いる4個の主容量素子C1〜C4について、それぞれ4個の副容量素子D1〜D4を設け、モーメントMxの作用によって主容量素子C1〜C4に生じる他軸干渉成分δ(図17のテーブルの4行目)を、同じモーメントMxの作用によって副容量素子D1〜D4に生じる成分ε(図19のテーブルの4行目)によって相殺する構成を採る。また、力Fxの検出に用いる4個の主容量素子C5〜C8について、それぞれ4個の副容量素子D5〜D8を設け、モーメントMyの作用によって主容量素子C5〜C8に生じる他軸干渉成分δ(図17のテーブルの5行目)を、同じモーメントMyの作用によって副容量素子D5〜D8に生じる成分ε(図19のテーブルの5行目)によって相殺する構成を採る。
【0191】
このように、主容量素子の検出値に発生する他軸干渉成分δを、副容量素子の容量値εによって相殺する点が、本発明の本質的な特徴である。したがって、上記発想から逸脱しない範囲で、本発明は様々な変形態様で実施することができる。以下、本発明の変形例をいくつか述べておく。
【0192】
<9−1:柱状体の構成>
本発明に係る力検出装置は、受力体100と支持基板300とを4本の柱状体T1〜T4によって接続することを前提とする。しかも、この4本の柱状体T1〜T4は、その中心軸がいずれもZ軸に平行になるように配置されており、第1の柱状体T1は、その中心軸がX軸の正の部分に交差する位置に配置され、第2の柱状体T2は、その中心軸がX軸の負の部分に交差する位置に配置され、第3の柱状体T3は、その中心軸がY軸の正の部分に交差する位置に配置され、第4の柱状体T4は、その中心軸がY軸の負の部分に交差する位置に配置されている。
【0193】
このような配置を採る理由は、各柱状体T1〜T4の下端近傍に、それぞれセンサを設け、柱状体の所定軸方向への傾斜や、柱状体から各座標軸上へ加えられる力を検出するためである。したがって、本発明を実施する上で、4本の柱状体の形状、サイズは、設計上、任意に決定できる事項である。
【0194】
しかしながら、実用上は、4本の柱状体を、同一形状および同一サイズの構造体によって構成し、かつ、これら4本の柱状体の配置パターンが、XZ平面およびYZ平面の双方に関して、面対称になっているようにするのが好ましい。後述するように、本発明を実施する上では、主容量素子および副容量素子の形状や配置、そして受力体の変位に関する静電容量値の変動特性についても、幾何学的対称性を示すような設計をするのが好ましい。そのためには、4本の柱状体についても、同一形状および同一サイズとし、配置に対称性をもたせるような設計を行うのが好ましい。
【0195】
<9−2:主容量素子の配置>
本発明に係る力検出装置は、力Fyの検出のために4個の主容量素子C1〜C4を用いることを前提とする。ここで、第1の主容量素子C1は、XY座標系の第1象限に配置され、第2の主容量素子C2は、XY座標系の第4象限に配置され、第3の主容量素子C3は、XY座標系の第2象限に配置され、第4の主容量素子C4は、XY座標系の第3象限に配置されている必要がある。また、力Fyの検出に加えて、力Fxの検出を行う場合には、更に、4個の主容量素子C5〜C8を追加する必要がある。この場合、第5の主容量素子C5は、XY座標系の第1象限に配置され、第6の主容量素子C6は、XY座標系の第2象限に配置され、第7の主容量素子C7は、XY座標系の第4象限に配置され、第8の主容量素子C8は、XY座標系の第3象限に配置されている必要がある。
【0196】
主容量素子を上述の条件を満たすように配置すれば、原理的には、力Fyもしくは力Fxの検出が可能である。ただ、個々の主容量素子の形状がバラバラで、その配置に何ら対称性がないとすると、力の検出感度が各容量素子ごとに異なることになるので、正しい線形出力を得るためには、図21の演算式において、必要に応じて、各静電容量値に感度補正を行うための補正係数を乗じるなどの措置が必要になる。
【0197】
したがって、実用上は、4個の主容量素子C1〜C4を構成する支持基板側の4枚の電極E1〜E4、もしくは、8個の主容量素子C1〜C8を構成する支持基板側の8枚の電極E1〜E8は、同一形状および同一サイズの電極によって構成し、しかも、これら複数の電極の配置パターンが、XZ平面およびYZ平面の双方に関して、面対称になっているようにするのが好ましい。
【0198】
特に、これまで述べた基本的実施形態の場合、図18の平面図に示されているとおり、第1の主容量素子C1および第2の主容量素子C2を構成する支持基板側の2枚の電極は、第1の柱状体T1の中心軸を中心にして配置された第1の環状帯(図18の例の場合、ワッシャのような円環状の帯)をX軸に沿って切断して得られる2枚の電極E1,E2によって構成され、第3の主容量素子C3および第4の主容量素子C4を構成する支持基板側の2枚の電極は、第2の柱状体T2の中心軸を中心にして配置された第2の環状帯をX軸に沿って切断して得られる2枚の電極E3,E4によって構成されている。また、第5の主容量素子C5および第6の主容量素子C6を構成する支持基板側の2枚の電極は、第3の柱状体T3の中心軸を中心にして配置された第3の環状帯をY軸に沿って切断して得られる2枚の電極E5,E6によって構成され、第7の主容量素子C7および第8の主容量素子C8を構成する支持基板側の2枚の電極は、第4の柱状体T4の中心軸を中心にして配置された第4の環状帯をY軸に沿って切断して得られる2枚の電極E7,E8によって構成されている。
【0199】
このように、第i番目(i=1〜4)の柱状体Tiの動きを検出する第i番目のセンサに含まれる一対の主容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極を、当該柱状体Tiの中心軸を中心にして配置された環状帯をX軸もしくはY軸に沿って切断して得られる2枚の電極によって構成することは、本発明の好適な実施形態である。
【0200】
その第1の理由は、環状帯によって囲まれた内側領域に、副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極を形成するスペースが確保されるためである。図18に示す例の場合、第6の副容量素子D6および第8の副容量素子D8を構成する支持基板側の2枚の電極F6,F8は、電極E1,E2によって構成される第1の環状帯によって囲まれた内側領域に配置され、第5の副容量素子D5および第7の副容量素子D7を構成する支持基板側の2枚の電極F5,F7は、電極E3,E4によって構成される第2の環状帯によって囲まれた内側領域に配置されている。また、第2の副容量素子D2および第4の副容量素子D4を構成する支持基板側の2枚の電極F2,F4は、電極E5,E6によって構成される第3の環状帯によって囲まれた内側領域に配置され、第1の副容量素子D1および第3の副容量素子D3を構成する支持基板側の2枚の電極F1,F3は、電極E7,E8によって構成される第4の環状帯によって囲まれた内側領域に配置されている。このように、主固定電極E1〜E8を、2つに切断された環状帯の片方によって構成すれば、この環状帯の内側部分のスペースを利用して、副固定電極F1〜F8を配置することができる。
【0201】
主固定電極E1〜E8を、環状帯の片方によって構成するのが好都合な第2の理由は、主容量素子C1〜C8の検出感度を高めることができるためである。主容量素子C1〜C8は、本発明に係る力検出装置における力検出の主たる役割を果たす構成要素であり、できるだけ高い検出感度が得られるようにするのが好ましい。主固定電極E1〜E8を、図18に例示するような環状帯によって構成すると、柱状体が傾斜したときの容量素子の電極間距離の変化を大きくとることができ、静電容量値の変化として得られる検出値の感度を高めることができる。
【0202】
なお、これまで述べてきた基本的実施形態の場合、各柱状体T1〜T4が円柱状構造体からなり、各下端側肉薄部215,225,235,245が円盤状構造体からなるため、各環状帯は円環状構造体(ワッシャ状構造体)にするのが最も効率的である。
【0203】
<9−3:副容量素子の構成>
続いて、副容量素子D1〜D8の構成のバリエーション、より具体的には、8枚の副固定電極F1〜F8の形状および配置のバリエーションを述べる。
【0204】
これまで述べてきた基本的実施形態に係る力検出装置は、合計16個の主副容量素子の静電容量値に基づき、図21に示す演算式を利用して、6つの力成分を検出する機能を有している。ここで、16個の容量素子は、4つのセンサに振り分けられる。すなわち、第1のセンサは、XY座標系の第1象限に位置する第1の主容量素子C1と、XY座標系の第4象限に位置する第2の主容量素子C2と、第6の副容量素子D6と、第8の副容量素子D8と、を有し、第2のセンサは、XY座標系の第2象限に位置する第3の主容量素子C3と、XY座標系の第3象限に位置する第4の主容量素子C4と、第5の副容量素子D5と、第7の副容量素子D7と、を有し、第3のセンサは、XY座標系の第1象限に位置する第5の主容量素子C5と、XY座標系の第2象限に位置する第6の主容量素子C6と、第2の副容量素子D2と、第4の副容量素子D4と、を有し、第4のセンサは、XY座標系の第4象限に位置する第7の主容量素子C7と、XY座標系の第3象限に位置する第8の主容量素子C8と、第1の副容量素子D1と、第3の副容量素子D3と、を有している。
【0205】
ここで、副容量素子D1〜D8の形状および配置について、より詳細に説明すれば、図18に示す例の場合、副固定電極F3,F4,F6,F7は、円環状(ワッシャ状)の電極であり、副固定電極F1,F2,F8,F5は、それぞれその内側に配置された円盤状の電極になっている。しかも、いずれも、各柱状体の中心軸を中心とする配置がなされている。このような形状および配置をもった副固定電極F1〜F8によって構成される副容量素子D1〜D8には、図19のテーブルに示すような静電容量値の変化が生じることは既に述べたとおりである。そして、主容量素子C1〜C8と組み合わせることにより、図20のテーブルに示すような静電容量値の変化態様が得られ、図21に示す演算式に基づいて、6つの力成分の検出が可能になることも既に述べたとおりである。ただ、本発明を実施する上で、副容量素子D1〜D8の形状および配置は、図18に示す基本的実施形態に限定されるものではない。
【0206】
たとえば、図18において、副固定電極F3,F4,F6,F7と副固定電極F1,F2,F8,F5とをそっくり入れ替えても、図21に示す演算式に基づいて、6つの力成分の検出が可能である。要するに、第6および第8の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極のうち、一方を環状の形状をなす電極によって構成し、他方をその内側領域に配置された電極によって構成し、第5および第7の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極のうち、一方を環状の形状をなす電極によって構成し、他方をその内側領域に配置された電極によって構成し、第2および第4の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極のうち、一方を環状の形状をなす電極によって構成し、他方をその内側領域に配置された電極によって構成し、第1および第3の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極のうち、一方を環状の形状をなす電極によって構成し、他方をその内側領域に配置された電極によって構成すれば、図18に示す基本的実施形態と同じ原理で6つの力成分の検出が可能である。
【0207】
一方、図24は、図18に示されている16枚の電極の第1の変形例(副容量素子を構成する8枚の電極F1〜F8の形状および配置が異なる)を示す拡大平面図である。この変形例では、第6および第8の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第1の柱状体T1の中心軸を中心として配置された円盤を、X軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極F6,F8によって構成され、第5および第7の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第2の柱状体T2の中心軸を中心として配置された円盤を、X軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極F5,F7によって構成され、第2および第4の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第3の柱状体T3の中心軸を中心として配置された円盤を、Y軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極F2,F4によって構成され、第1および第3の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第4の柱状体T4の中心軸を中心として配置された円盤を、Y軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極F1,F3によって構成されている。ここで、電極F1〜F8は、いずれも同一形状、同一サイズの半円状電極となっている。
【0208】
この図24に示すような形状および配置をもった副固定電極F1〜F8によって構成される副容量素子D1〜D8には、図25のテーブルに示すような静電容量値の変化が生じる。この図25のテーブルを図19のテーブルと比較すると、より多くの欄に変動分±εが生じている。前述したとおり、この符号「ε」は、「副容量素子に生じる容量値変化」を示す符号であり、特定の固有値を示すものではない。
【0209】
図25のテーブルにおいて、より多くの欄に変動分±εが生じている理由は、図24に示す副固定電極F1〜F8が半円形状をなすためである。図18に示す副固定電極F1〜F8は、柱状体の中心軸を中心として配置された円形もしくは円環状の電極であるため、柱状体が傾斜した場合、各副容量素子D1〜D8についての静電容量値の変動は「0」になるが、図24に示す半円形状の副固定電極F1〜F8を用いた副容量素子D1〜D8の場合、X軸もしくはY軸方向への傾斜が検知されることになる。
【0210】
このように、図24に示す変形例では、副容量素子D1〜D8に、柱状体の傾斜を検知する変動分±εが生じることになるものの、図21に示す各演算式に基づいて、6つの力成分を検出できることに変わりはない。すなわち、電極F1〜F8は、いずれも同一形状、同一サイズの半円状電極であり、しかも一対の電極が所定軸に関して対称性をもつように配置されているため、図25のテーブルにおいて、+Fxの行に記載されているεの絶対値は相互に等しく、+Fyの行に記載されているεの絶対値は相互に等しく、+Fzの行に記載されているεの絶対値は相互に等しく、+Mzの行に記載されているεの絶対値は相互に等しくなる。また、+Mxの行のD1〜D4の各欄に記載されているεの絶対値は相互に等しく、D5〜D8の各欄に記載されているεの絶対値は相互に等しくなり、+Myの行のD1〜D4の各欄に記載されているεの絶対値は相互に等しく、D5〜D8の各欄に記載されているεの絶対値は相互に等しくなる。
【0211】
図26は、図17に示す8個の主容量素子C1〜C8についての静電容量値の変化の態様を示す各欄と、図25に示す8個の副容量素子D1〜D8についての静電容量値の変化の態様を示す各欄と、の和を示すテーブルである。正副の各容量素子対について、この図26のテーブルに示すような静電容量値の変化が生じることを前提とした場合でも、やはり、図21に示す各演算式に基づいて、6つの力成分の検出が可能である。これは、上述したように、同一形状、同一サイズの半円状電極を、対称性をもつように配置したためである。
【0212】
たとえば、図21の式に基づいて力Fxや力Fyを求める場合、図26のテーブルに示す変動分「ε」は何ら関与しないので、図20のテーブルを前提とした場合と同じ値が得られる。また、図26のテーブルの+Fzの行と図20のテーブルの+Fzの行は同じであるから、力Fzについても同じ結果が得られる。一方、モーメントMx,My,Mzに関しては、図20のテーブルにおける「Δ」が、図26のテーブルでは「Δ+ε」に置き換わるため、演算値自体としては異なる結果が得られるものの、単なるスケーリングの問題であり、実質的な検出原理に相違は生じない。結局、図18に示す電極配置の代わりに図24に示す電極配置を採る変形例においても、図21に示す各演算式に基づいて、6つの力成分を検出できる。
【0213】
また、図27は、図18に示されている16枚の電極の第2の変形例(副容量素子を構成する8枚の電極F1〜F8の形状および配置が異なる)を示す拡大平面図である。この変形例では、第6および第8の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第1の柱状体T1の中心軸を中心として配置された円盤を、その中心点を通りY軸に平行な参照軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極F6,F8によって構成され、第5および第7の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第2の柱状体T2の中心軸を中心として配置された円盤を、その中心点を通りY軸に平行な参照軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極F5,F7によって構成され、第2および第4の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第3の柱状体T3の中心軸を中心として配置された円盤を、その中心点を通りX軸に平行な参照軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極F2,F4によって構成され、第1および第3の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第4の柱状体T4の中心軸を中心として配置された円盤を、その中心点を通りX軸に平行な参照軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極F1,F3によって構成されている。
【0214】
この図27に示す第2の変形例は、いわば図24に示す第1の変形例における半円形の副固定電極F1〜F8を90°回転させたものに相当する。この図27に示すような形状および配置をもった副固定電極F1〜F8によって構成される副容量素子D1〜D8には、図28のテーブルに示すような静電容量値の変化が生じる。この図28のテーブルを図19のテーブルと比較すると、やはり多くの欄に変動分±εが生じている。これは、図27に示す第2の変形例においても、副容量素子D1〜D8に、柱状体の傾斜を検知する変動分±εが生じるためである。
【0215】
図29は、図17に示す8個の主容量素子C1〜C8についての静電容量値の変化の態様を示す各欄と、図28に示す8個の副容量素子D1〜D8についての静電容量値の変化の態様を示す各欄と、の和を示すテーブルである。正副の各容量素子対について、この図29のテーブルに示すような静電容量値の変化が生じることを前提とした場合でも、やはり、図21に示す各演算式に基づいて、6つの力成分の検出が可能である。これは、副固定電極F1〜F8として、同一形状、同一サイズの半円状電極を、対称性をもつように配置したためである。
【0216】
たとえば、図21の式に基づいて力Fxや力Fyを求める場合、図20のテーブルにおける「Δ」が、図29のテーブルでは「Δ+ε」もしくは「Δ−ε」に置き換わるが、いずれの場合も「4Δ」という同じ結果が得られる。また、図29のテーブルの+Fz,+Mx,+My,+Mzの各行と図20のテーブルの各対応行は同じであるから、力FzおよびモーメントMx,My,Mzについても同じ結果が得られる。結局、図18に示す電極配置の代わりに図27に示す電極配置を採る変形例においても、図21に示す各演算式に基づいて、6つの力成分を検出できる。
【0217】
<9−4:副容量素子の形状および配置の条件>
以上、副容量素子の形状および配置のバリエーションとして、2通りの変形例を述べたが、本発明を実施する上で、副容量素子の形状および配置のバリエーションは、この他にも様々なものを採用することができる。
【0218】
ここでは、副容量素子の形状および配置の条件を考えてみよう。本発明における副容量素子の役割は、モーメントMxもしくはMyが作用したときに、主容量素子に生じる他軸干渉成分δを相殺するための変動分εを発生させることにある。そこで、いま、図30に示す平面図において、主容量素子C1を構成する電極E1に対して、副容量素子D1を構成する電極F1の配置を考えてみる。図30は、支持基板300の平面図であり、G31〜G34は、下端側肉薄部215,225,235,245の下方に形成される溝部を示しており、それぞれセンサS1〜S4が形成される領域に対応する。
【0219】
いま、図示のとおり、溝部G31内に主固定電極E1が配置されているものとし、モーメントMxが作用した場合に、この主固定電極E1によって構成される主容量素子C1に生じる他軸干渉成分δを相殺するための変動分εを発生させる副容量素子D1の配置を考える。主副容量素子を並列接続して相殺を行うことを考えると、モーメントMxが作用した場合に、εの符号がδの符号と逆になるようにする必要がある。そうすると、副容量素子D1を構成する副固定電極F1の配置候補は、図にハッチングを施して示す領域A1,A2,A4のいずれかになる。ただ、検出感度を考慮すると、副固定電極F1の配置候補は、領域A4が最適であることがわかる。モーメントMxが作用した場合の電極間距離の変化は、領域A4が最も顕著である。
【0220】
同様に、モーメントMyが作用した場合の他軸干渉成分の相殺も考慮して各副固定電極F1〜F8の配置を考えると、電極F6,F8は溝部G31(センサS1)内に配置し、電極F5,F7は溝部G32(センサS2)内に配置し、電極F2,F4は溝部G33(センサS3)内に配置し、電極F1,F3は溝部G34(センサS4)内に配置するのが好ましいことがわかる。これまで述べてきた基本的実施形態や変形例は、いずれもこのような考え方に基づいて副固定電極F1〜F8を配置したものである。
【0221】
次に、各副固定電極F1〜F8の形状を考える。図31は、主容量素子C1,C2を構成する電極E1,E2と、副容量素子D1,D4を構成する電極F1,F4の配置の一例を説明する平面図である。主固定電極E1,E2は、第1の柱状体T1の中心軸Q1を中心にして配置された環状帯をX軸に沿って切断して得られる電極になっている。一方、主固定電極E1に対応する副固定電極F1は、第4の柱状体T4の中心軸Q4を中心にして配置された円形の電極となっており、主固定電極E4に対応する副固定電極F4は、第3の柱状体T3の中心軸Q3を中心にして配置された円環状の電極となっている。
【0222】
主固定電極と副固定電極について、このような形状を採用した実施形態が、図18に示す基本的実施形態である。このような形状を採る利点は、一対の主固定電極からなる環状帯の内部領域に、一対の副固定電極を配置できる点である。図31に示す例の場合、実際には、主固定電極E1,E2からなる環状帯の内部領域に、円環状をした副固定電極F6が配置され、更にその内部領域に、円形をした副固定電極F8が配置されることになる。1つのセンサ領域に、2枚の主固定電極と2枚の副固定電極とを配置することを考えると、図31に示す各電極形状は非常に効率的である。
【0223】
また、図31に示すとおり、副固定電極は、円形をした電極(F1)もしくは円環状をした電極(F4)になるため、柱状体の傾斜が静電容量値として検出されることはないというメリットも得られる。したがって、図19のテーブルに示されているとおり、不要な変動分εの発生は、+Fzの行のみに抑えられている。たとえば、図31に示す円形の副固定電極F1によって構成される副容量素子D1は、YZ平面と、第4の柱状体の中心軸Q4を含みXZ平面に平行な参照面X4と、の双方に関して、面対称となる形状をなす。同様に、円環状の副固定電極F4によって構成される副容量素子D4は、YZ平面と、第3の柱状体の中心軸Q3を含みXZ平面に平行な参照面X3と、の双方に関して、面対称となる形状をなす。このため、副容量素子には、柱状体の傾斜に基づく静電容量値の変化は生じない。
【0224】
結局、柱状体の傾斜が静電容量値として検出されないようにするには、第6および第8の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極F6,F8がいずれも、第1の柱状体T1の中心軸を含みYZ平面に平行な参照面と、XZ平面と、の双方に関して、面対称となる形状をなし、第5および第7の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極F5,F7がいずれも、第2の柱状体T2の中心軸を含みYZ平面に平行な参照面と、XZ平面と、の双方に関して、面対称となる形状をなし、第2および第4の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極F2,F4がいずれも、第3の柱状体T3の中心軸を含みXZ平面に平行な参照面と、YZ平面と、の双方に関して、面対称となる形状をなし、第1および第3の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極F1,F3がいずれも、第4の柱状体T4の中心軸を含みXZ平面に平行な参照面と、YZ平面と、の双方に関して、面対称となる形状をなすようにすればよい。
【0225】
一方、図32は、主固定電極E1,E2に対する副固定電極F1,F2の別な配置形態を示す平面図であり、前述した第1の変形例(図24に示す例)に対応するものである。一対の主固定電極からなる環状帯の内部領域に、一対の副固定電極を配置できる点は前述の例と同じであるが、副固定電極の形状は異なっている。なお、図24では、半円形の副固定電極を用いる例を示したが、図32では、一般論として説明するため、矩形の副固定電極F1,F2を配置した例を示す。ここで、副固定電極F1によって構成される副容量素子D1は、YZ平面に関する対称性は有していないが、第4の柱状体の中心軸Q4を含みXZ平面に平行な参照面X4に関して面対称の形状をなす。同様に、副固定電極F2によって構成される副容量素子D2は、YZ平面に関する対称性は有していないが、第3の柱状体の中心軸Q3を含みXZ平面に平行な参照面X3に関して面対称の形状をなす。
【0226】
図24に示す電極配置を採った場合、図26のテーブルに示す静電容量値の変化が生じることとなり、このような静電容量値の変化が生じることを前提とした場合にも、図21の演算式に基づき、6つの力成分の検出が可能であることは、既に述べたとおりである。ここで、図26のテーブルに示す静電容量値の変化が生じるようにするには、結局、第6および第8の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極F6,F8がいずれも、第1の柱状体T1の中心軸を含みYZ平面に平行な参照面に関して、面対称となる形状をなし、第5および第7の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極F5,F7がいずれも、第2の柱状体T2の中心軸を含みYZ平面に平行な参照面に関して、面対称となる形状をなし、第2および第4の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極F2,F4がいずれも、第3の柱状体T3の中心軸を含みXZ平面に平行な参照面に関して、面対称となる形状をなし、第1および第3の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極F1,F3がいずれも、第4の柱状体T4の中心軸を含みXZ平面に平行な参照面に関して、面対称となる形状をなすようにすればよい。
【0227】
一方、図33は、主固定電極E1,E2に対する副固定電極F1,F2の更に別な配置形態を示す平面図であり、前述した第2の変形例(図27に示す例)に対応するものである。一対の主固定電極からなる環状帯の内部領域に、一対の副固定電極を配置できる点は前述の例と同じであるが、副固定電極の形状は異なっている。なお、図27では、半円形の副固定電極を用いる例を示したが、図32では、一般論として説明するため、楕円形の副固定電極F1,F2を配置した例を示す。ここで、副固定電極F1によって構成される副容量素子D1は、YZ平面に関する対称性は有しているが、第4の柱状体の中心軸Q4を含みXZ平面に平行な参照面X4に関する対称性は有していない。同様に、副固定電極F2によって構成される副容量素子D2は、YZ平面に関する対称性は有しているが、第3の柱状体の中心軸Q3を含みXZ平面に平行な参照面X3に関する対称性は有していない。
【0228】
図27に示す電極配置を採った場合、図29のテーブルに示す静電容量値の変化が生じることとなり、このような静電容量値の変化が生じることを前提とした場合にも、図21の演算式に基づき、6つの力成分の検出が可能であることは、既に述べたとおりである。ただ、本願発明者は、実用上、第2の変形例として示した図27に示す電極配置パターンを採るよりは、基本的実施形態として示した図18に示す電極配置パターンや第1の変形例として示した図24に示す電極配置パターンを採る方がより好ましいと考えている。これは、図27に示す電極配置パターンには、検出感度の低下を招く要因があるためである。すなわち、図29の+Fx,+Fyの行には、「Δ−ε」なる項が含まれており、せっかく主容量素子で得た「Δ」なる検出値に対して、副容量素子で得た検出値「ε」を減じる操作が行われることになるので、検出感度を減じる操作を意図的に行うことになるのである。したがって、本願発明者は、本発明を実施する上で、図18の電極配置もしくは図24の電極配置を採るのが最適であると考えている。
【0229】
<9−5:他軸干渉成分δ=変動分εとする設定方法>
本発明に係る力検出装置では、受力体にX軸まわりのモーメントMxが作用した場合に、第i番目(i=1〜4)の主容量素子に生じる静電容量値の変化分±δの絶対値と、第i番目の副容量素子に生じる静電容量値の変化分±εの絶対値とが等しくなるような設定を行い、また、受力体にY軸まわりのモーメントMyが作用した場合に、第j番目(j=5〜8)の主容量素子に生じる静電容量値の変化分±δの絶対値と、第j番目の副容量素子に生じる静電容量値の変化分±εの絶対値とが等しくなるような設定を行うことになる。
【0230】
そのような設定を行う代表的な方法として、主容量素子を構成する電極の面積と、これに対応する副容量素子を構成する電極の面積との比が、受力体にX軸まわりのモーメントMxもしくはY軸まわりのモーメントMyが作用した場合に、主容量素子に生じる静電容量値の変化分±δの絶対値と、副容量素子に生じる静電容量値の変化分±εの絶対値とが等しくなるような面積比になるようにする方法を、§7で述べた。
【0231】
しかしながら、各容量素子に生じる静電容量値を調整する方法は、電極面積を調整する方法に限定されるものではない。たとえば、電極間距離を調整する方法を採ることも可能であるし、電極間に流動性をもった媒体を充填し、当該媒体の誘電率を調整する方法を採ることも可能である。ただ、量産型の商用製品として利用する場合は、これまで述べたように、電極面積を調整する方法を採るのが最も効率的である。
【符号の説明】
【0232】
10:受力体
11:第1の柱状体
12:第2の柱状体
13:第3の柱状体
14:第4の柱状体
20:支持基板
21:第1のセンサ
22:第2のセンサ
23:第3のセンサ
24:第4のセンサ
30:検出回路
100:受力体
110:円柱突起部
115:上端側肉薄部
120:円柱突起部
125:上端側肉薄部
130:円柱突起部
135:上端側肉薄部
140:円柱突起部
145:上端側肉薄部
200:中間体
210:円柱突起部
215:下端側肉薄部
220:円柱突起部
225:下端側肉薄部
230:円柱突起部
235:下端側肉薄部
240:円柱突起部
245:下端側肉薄部
250:制御壁
260:制御壁
300:支持基板
400:測定用治具
410:接続部
420:上蓋部
430:側壁部
440:フランジ部
A1〜A4:電極配置領域
B1〜B8:ボンディングパッド
C1〜C8:主容量素子/主容量素子の静電容量値
D1〜D8:副容量素子/副容量素子の静電容量値
d1〜d3:空隙寸法
E1〜E8:主容量素子を構成する電極
F1〜F8:副容量素子を構成する電極
Fx:X軸方向の力
Fy:Y軸方向の力
Fz:Z軸方向の力
fz:支持基板に対して作用する引っ張り力/押圧力
G11〜G34:溝部
Mx:X軸まわりのモーメント
My:Y軸まわりのモーメント
Mz:Z軸まわりのモーメント
O:座標系の原点
O′:補助座標系の原点
P1〜P3:作用点
Q1〜Q4:中心軸
r1,r2:原点から作用点までの長さ
S1〜S4:力センサ
T1〜T4:柱状体
V(Mx):モーメントMxの検出値
V(Fy):力Fyの検出値
XYZ:検出対象となる力を定義するための三次元座標系
X′Y′Z′:受力体の中心位置に原点をもつ補助座標系
X2,X4:X軸に平行な参照軸
Δ:主容量素子の静電容量値の変化分
δ:主容量素子の静電容量値の変化分(他軸干渉成分)
ε:副容量素子の静電容量値の変化分
θ1,θ2:柱状体11,12の傾斜角
【技術分野】
【0001】
本発明は力検出装置に関し、特に、力とモーメントとを独立して検出するのに適した力検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットや産業機械の動作制御を行うために、種々のタイプの力検出装置が利用されている。また、電子機器の入力装置のマン・マシンインターフェイスとしても、小型の力検出装置が組み込まれている。このような用途に用いる力検出装置には、小型化およびコストダウンを図るために、できるだけ構造を単純にするとともに、三次元空間内での各座標軸に関する力をそれぞれ独立して検出できるようにすることが要求される。
【0003】
一般に、力検出装置の検出対象には、所定の座標軸方向を向いた力成分と、所定の座標軸まわりのモーメント成分とがある。三次元空間内にXYZ三次元座標系を定義した場合、検出対象は、各座標軸方向の力成分Fx,Fy,Fzと、各座標軸まわりのモーメント成分Mx,My,Mzとの6つの成分になる。
【0004】
このような6つの力成分をそれぞれ独立して検出することができる力検出装置として、たとえば、下記の特許文献1には、比較的単純な構造をもった装置が開示されている。この特許文献1に開示された技術は、既に米国特許第6915709号・米国特許第7121147号・欧州特許第1464939号が付与されている技術であり、受力体と支持基板とを複数の柱状体で接続した構造物を用意し、各柱状体から支持基板に加わる押圧力や各柱状体の傾斜を個別に測定することにより、受力体に加わった力の各成分を検出するものである。
【0005】
また、下記の特許文献2に開示されている技術も、既に米国特許第7219561号が付与されている技術である。この技術によれば、各柱状体から支持基板に加わる押圧力や各柱状体の傾斜を個別に測定するセンサとして静電容量素子を用い、この静電容量素子を構成する特定の電極間に配線を施すことにより、受力体に加わった力の各成分を検出するための演算を単純化することが可能になる。
【0006】
一方、下記の特許文献3には、8個の容量素子のみを用いて、6つの力成分をそれぞれ独立して検出する技術が開示されている。この技術によれば、容量素子の形成に必要な電極構造をより単純化することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−354049号公報
【特許文献2】特開2004−325367号公報
【特許文献3】特開2008−096229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したとおり、特許文献1〜3に開示されている力検出装置は、比較的単純な構造により、各座標軸方向の力成分Fx,Fy,Fzと、各座標軸まわりのモーメント成分Mx,My,Mzとの6つの成分をそれぞれ独立して検出することが可能である。しかしながら、実用上は、他軸成分の干渉を完全に排除した状態で、必要な成分のみの正確な測定値を得ることは困難であり、他軸成分の干渉による測定精度の低下は避けられない。もちろん、このような他軸成分の干渉程度が、個々の用途に応じた許容誤差範囲内であれば支障はないが、最近は、様々な利用分野において、より測定精度の高い力検出装置が望まれている。
【0009】
そこで本発明は、できるたけ単純な構造をもち、しかも他軸成分の干渉を排除し、力とモーメントとを区別して検出することが可能な力検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 本発明の第1の態様は、支持基板と、この支持基板の上方に配置された受力体と、支持基板と受力体とを接続するための4本の柱状体と、を備え、支持基板を固定した状態において、受力体に作用した力を検出する力検出装置において、
4本の柱状体の各上端は、可撓性をもった部材を介して受力体に接続されており、4本の柱状体の各下端には、それぞれ可撓性をもった下端側肉薄部が接続されており、
下端側肉薄部は、支持基板の上面から所定距離をおいた上方位置に支持基板の上面に対して平行に配置されるように、その周囲が台座を介して支持基板に接続され、その上面中心部が柱状体の下端に接続されており、
XY平面が、支持基板の上面もしくはその上方に、支持基板の上面に対して平行となるように位置し、上方を正とし下方を負とするZ軸が支持基板の上面のほぼ中心位置を通るように、XYZ三次元座標系を定義したときに、
4本の柱状体は、その中心軸がいずれもZ軸に平行になるように配置されており、第1の柱状体は、その中心軸がX軸の正の部分に交差する位置に配置され、第2の柱状体は、その中心軸がX軸の負の部分に交差する位置に配置され、第3の柱状体は、その中心軸がY軸の正の部分に交差する位置に配置され、第4の柱状体は、その中心軸がY軸の負の部分に交差する位置に配置され、
第1の柱状体の下端側肉薄部とこれに対向する支持基板の上面とによって挟まれた空間内に、一方の電極が下端側肉薄部の下面に形成され、他方の電極が支持基板の上面に形成された複数の容量素子からなる第1のセンサが配置され、
第2の柱状体の下端側肉薄部とこれに対向する支持基板の上面とによって挟まれた空間内に、一方の電極が下端側肉薄部の下面に形成され、他方の電極が支持基板の上面に形成された複数の容量素子からなる第2のセンサが配置され、
第3の柱状体の下端側肉薄部とこれに対向する支持基板の上面とによって挟まれた空間内に、一方の電極が下端側肉薄部の下面に形成され、他方の電極が支持基板の上面に形成された複数の容量素子からなる第3のセンサが配置され、
第4の柱状体の下端側肉薄部とこれに対向する支持基板の上面とによって挟まれた空間内に、一方の電極が下端側肉薄部の下面に形成され、他方の電極が支持基板の上面に形成された複数の容量素子からなる第4のセンサが配置され、
第1のセンサは、XY座標系の第1象限に位置する第1の主容量素子と、XY座標系の第4象限に位置する第2の主容量素子と、を有し、
第2のセンサは、XY座標系の第2象限に位置する第3の主容量素子と、XY座標系の第3象限に位置する第4の主容量素子と、を有し、
第3のセンサは、第2の副容量素子と、第4の副容量素子と、を有し、
第4のセンサは、第1の副容量素子と、第3の副容量素子と、を有し、
各容量素子の静電容量値に基づいて、受力体に作用した力の所定方向成分を検出する検出回路を更に備え、
受力体にX軸まわりのモーメントMxが作用した場合に、第1の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、第1の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、第2の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、第2の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、第3の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、第3の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、第4の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、第4の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなるように、各容量素子が構成され、
検出回路が、第1の主容量素子の静電容量値をC1、第1の副容量素子の静電容量値をD1、第2の主容量素子の静電容量値をC2、第2の副容量素子の静電容量値をD2、第3の主容量素子の静電容量値をC3、第3の副容量素子の静電容量値をD3、第4の主容量素子の静電容量値をC4、第4の副容量素子の静電容量値をD4としたときに、受力体に作用した力のY軸方向成分Fyを、
Fy=(C1+D1)−(C2+D2)+(C3+D3)−(C4+D4)
なる演算式を利用して求めるようにしたものである。
【0011】
(2) 本発明の第2の態様は、上述の第1の態様に係る力検出装置において、
検出回路が、更に、受力体に作用した力のY軸まわりのモーメント成分Myを、
My=(C1+D1)+(C2+D2)−(C3+D3)−(C4+D4)
なる演算式を利用して求めるようにしたものである。
【0012】
(3) 本発明の第3の態様は、上述の第1または第2の態様に係る力検出装置において、
検出回路が、更に、受力体に作用した力のZ軸方向成分Fzを、
Fz=−((C1+D1)+(C2+D2)+(C3+D3)+(C4+D4))
なる演算式を利用して求めるようにしたものである。
【0013】
(4) 本発明の第4の態様は、上述の第1〜第3の態様に係る力検出装置において、
第1の主容量素子と第1の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第2の主容量素子と第2の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第3の主容量素子と第3の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第4の主容量素子と第4の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、を更に設け、
検出回路が、第1の主容量素子と第1の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C1+D1」の値として用い、第2の主容量素子と第2の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C2+D2」の値として用い、第3の主容量素子と第3の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C3+D3」の値として用い、第4の主容量素子と第4の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C4+D4」の値として用いるようにしたものである。
【0014】
(5) 本発明の第5の態様は、上述の第1〜第4の態様に係る力検出装置において、
各下端側肉薄部が導電性材料によって構成されており、この下端側肉薄部自身が、同一のセンサを構成する複数の容量素子についての共通電極として機能するようにしたものである。
【0015】
(6) 本発明の第6の態様は、上述の第5の態様に係る力検出装置において、
第1〜第4の主容量素子を構成する支持基板側の4枚の電極が、同一形状および同一サイズの電極によって構成されており、かつ、これら4枚の電極配置パターンが、XZ平面およびYZ平面の双方に関して、面対称になっているようにしたものである。
【0016】
(7) 本発明の第7の態様は、支持基板と、この支持基板の上方に配置された受力体と、支持基板と受力体とを接続するための4本の柱状体と、を備え、支持基板を固定した状態において、受力体に作用した力を検出する力検出装置において、
4本の柱状体の各上端は、可撓性をもった部材を介して受力体に接続されており、4本の柱状体の各下端には、それぞれ可撓性をもった下端側肉薄部が接続されており、
下端側肉薄部は、支持基板の上面から所定距離をおいた上方位置に支持基板の上面に対して平行に配置されるように、その周囲が台座を介して支持基板に接続され、その上面中心部が柱状体の下端に接続されており、
XY平面が、支持基板の上面もしくはその上方に、支持基板の上面に対して平行となるように位置し、上方を正とし下方を負とするZ軸が支持基板の上面のほぼ中心位置を通るように、XYZ三次元座標系を定義したときに、
4本の柱状体は、その中心軸がいずれもZ軸に平行になるように配置されており、第1の柱状体は、その中心軸がX軸の正の部分に交差する位置に配置され、第2の柱状体は、その中心軸がX軸の負の部分に交差する位置に配置され、第3の柱状体は、その中心軸がY軸の正の部分に交差する位置に配置され、第4の柱状体は、その中心軸がY軸の負の部分に交差する位置に配置され、
第1の柱状体の下端側肉薄部とこれに対向する支持基板の上面とによって挟まれた空間内に、一方の電極が下端側肉薄部の下面に形成され、他方の電極が支持基板の上面に形成された複数の容量素子からなる第1のセンサが配置され、
第2の柱状体の下端側肉薄部とこれに対向する支持基板の上面とによって挟まれた空間内に、一方の電極が下端側肉薄部の下面に形成され、他方の電極が支持基板の上面に形成された複数の容量素子からなる第2のセンサが配置され、
第3の柱状体の下端側肉薄部とこれに対向する支持基板の上面とによって挟まれた空間内に、一方の電極が下端側肉薄部の下面に形成され、他方の電極が支持基板の上面に形成された複数の容量素子からなる第3のセンサが配置され、
第4の柱状体の下端側肉薄部とこれに対向する支持基板の上面とによって挟まれた空間内に、一方の電極が下端側肉薄部の下面に形成され、他方の電極が支持基板の上面に形成された複数の容量素子からなる第4のセンサが配置され、
第1のセンサは、XY座標系の第1象限に位置する第1の主容量素子と、XY座標系の第4象限に位置する第2の主容量素子と、第6の副容量素子と、第8の副容量素子と、を有し、
第2のセンサは、XY座標系の第2象限に位置する第3の主容量素子と、XY座標系の第3象限に位置する第4の主容量素子と、第5の副容量素子と、第7の副容量素子と、を有し、
第3のセンサは、XY座標系の第1象限に位置する第5の主容量素子と、XY座標系の第2象限に位置する第6の主容量素子と、第2の副容量素子と、第4の副容量素子と、を有し、
第4のセンサは、XY座標系の第4象限に位置する第7の主容量素子と、XY座標系の第3象限に位置する第8の主容量素子と、第1の副容量素子と、第3の副容量素子と、を有し、
各容量素子の静電容量値に基づいて、受力体に作用した力の所定方向成分を検出する検出回路を更に備え、
受力体にX軸まわりのモーメントMxが作用した場合に、第1の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、第1の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、第2の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、第2の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、第3の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、第3の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、第4の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、第4の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、
受力体にY軸まわりのモーメントMyが作用した場合に、第5の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、第5の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、第6の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、第6の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、第7の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、第7の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、第8の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、第8の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなるように、各容量素子が構成され、
検出回路が、第1の主容量素子の静電容量値をC1、第1の副容量素子の静電容量値をD1、第2の主容量素子の静電容量値をC2、第2の副容量素子の静電容量値をD2、第3の主容量素子の静電容量値をC3、第3の副容量素子の静電容量値をD3、第4の主容量素子の静電容量値をC4、第4の副容量素子の静電容量値をD4、第5の主容量素子の静電容量値をC5、第5の副容量素子の静電容量値をD5、第6の主容量素子の静電容量値をC6、第6の副容量素子の静電容量値をD6、第7の主容量素子の静電容量値をC7、第7の副容量素子の静電容量値をD7、第8の主容量素子の静電容量値をC8、第8の副容量素子の静電容量値をD8、としたときに、
受力体に作用した力のY軸方向成分Fyを、
Fy=(C1+D1)−(C2+D2)+(C3+D3)−(C4+D4)
なる演算式を利用して求め、
受力体に作用した力のX軸方向成分Fxを、
Fx=(C5+D5)−(C6+D6)+(C7+D7)−(C8+D8)
なる演算式を利用して求めるようにしたものである。
【0017】
(8) 本発明の第8の態様は、上述の第7の態様に係る力検出装置において、
検出回路が、更に、受力体に作用した力のY軸まわりのモーメント成分Myを、
My=(C1+D1)+(C2+D2)−(C3+D3)−(C4+D4)
なる演算式を利用して求め、受力体に作用した力のX軸まわりのモーメント成分Mxを、
Mx=−(C5+D5)−(C6+D6)+(C7+D7)+(C8+D8)
なる演算式を利用して求めるようにしたものである。
【0018】
(9) 本発明の第9の態様は、上述の第7または第8の態様に係る力検出装置において、
検出回路が、更に、受力体に作用した力のZ軸方向成分Fzを、
Fz=−((C1+D1)+(C2+D2)+(C3+D3)+(C4+D4)+(C5+D5)+(C6+D6)+(C7+D7)+(C8+D8))
なる演算式を利用して求めるようにしたものである。
【0019】
(10) 本発明の第10の態様は、上述の第7〜第9の態様に係る力検出装置において、
検出回路が、更に、受力体に作用した力のZ軸まわりのモーメント成分Mzを、
Mz=(C1+D1)−(C2+D2)−(C3+D3)+(C4+D4)−(C5+D5)+(C6+D6)+(C7+D7)−(C8+D8)
なる演算式を利用して求めるようにしたものである。
【0020】
(11) 本発明の第11の態様は、上述の第7〜第10の態様に係る力検出装置において、
第1の主容量素子と第1の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第2の主容量素子と第2の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第3の主容量素子と第3の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第4の主容量素子と第4の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第5の主容量素子と第5の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第6の主容量素子と第6の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第7の主容量素子と第7の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第8の主容量素子と第8の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、を更に設け、
検出回路が、第1の主容量素子と第1の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C1+D1」の値として用い、第2の主容量素子と第2の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C2+D2」の値として用い、第3の主容量素子と第3の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C3+D3」の値として用い、第4の主容量素子と第4の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C4+D4」の値として用い、第5の主容量素子と第5の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C5+D5」の値として用い、第6の主容量素子と第6の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C6+D6」の値として用い、第7の主容量素子と第7の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C7+D7」の値として用い、第8の主容量素子と第8の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C8+D8」の値として用いるようにしたものである。
【0021】
(12) 本発明の第12の態様は、上述の第7〜第11の態様に係る力検出装置において、
4本の柱状体が、同一形状および同一サイズの構造体によって構成されており、かつ、これら4本の柱状体の配置パターンが、XZ平面およびYZ平面の双方に関して、面対称になっているようにしたものである。
【0022】
(13) 本発明の第13の態様は、上述の第12の態様に係る力検出装置において、
各下端側肉薄部が導電性材料によって構成されており、この下端側肉薄部自身が、同一のセンサを構成する複数の容量素子についての共通電極として機能するようにしたものである。
【0023】
(14) 本発明の第14の態様は、上述の第13の態様に係る力検出装置において、
第1〜第8の主容量素子を構成する支持基板側の8枚の電極が、同一形状および同一サイズの電極によって構成されており、かつ、これら8枚の電極の配置パターンが、XZ平面およびYZ平面の双方に関して、面対称になっているようにしたものである。
【0024】
(15) 本発明の第15の態様は、上述の第14の態様に係る力検出装置において、
第1および第2の主容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第1の柱状体の中心軸を中心にして配置された第1の環状帯をX軸に沿って切断して得られる2枚の電極によって構成され、
第3および第4の主容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第2の柱状体の中心軸を中心にして配置された第2の環状帯をX軸に沿って切断して得られる2枚の電極によって構成され、
第5および第6の主容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第3の柱状体の中心軸を中心にして配置された第3の環状帯をY軸に沿って切断して得られる2枚の電極によって構成され、
第7および第8の主容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第4の柱状体の中心軸を中心にして配置された第4の環状帯をY軸に沿って切断して得られる2枚の電極によって構成され、
第6および第8の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第1の環状帯によって囲まれた内側領域に配置され、
第5および第7の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第2の環状帯によって囲まれた内側領域に配置され、
第2および第4の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第3の環状帯によって囲まれた内側領域に配置され、
第1および第3の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第4の環状帯によって囲まれた内側領域に配置されているようにしたものである。
【0025】
(16) 本発明の第16の態様は、上述の第15の態様に係る力検出装置において、
各柱状体が円柱状構造体からなり、各下端側肉薄部が円盤状構造体からなり、各環状帯が円環状構造体からなるようにしたものである。
【0026】
(17) 本発明の第17の態様は、上述の第16の態様に係る力検出装置において、
第6および第8の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極のうち、一方が環状の形状をなす電極によって構成され、他方がその内側領域に配置された電極によって構成され、
第5および第7の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極のうち、一方が環状の形状をなす電極によって構成され、他方がその内側領域に配置された電極によって構成され、
第2および第4の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極のうち、一方が環状の形状をなす電極によって構成され、他方がその内側領域に配置された電極によって構成され、
第1および第3の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極のうち、一方が環状の形状をなす電極によって構成され、他方がその内側領域に配置された電極によって構成されているようにしたものである。
【0027】
(18) 本発明の第18の態様は、上述の第16の態様に係る力検出装置において、
第6および第8の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第1の柱状体の中心軸を中心として配置された円盤を、X軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極によって構成され、
第5および第7の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第2の柱状体の中心軸を中心として配置された円盤を、X軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極によって構成され、
第2および第4の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第3の柱状体の中心軸を中心として配置された円盤を、Y軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極によって構成され、
第1および第3の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第4の柱状体の中心軸を中心として配置された円盤を、Y軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極によって構成されているようにしたものである。
【0028】
(19) 本発明の第19の態様は、上述の第16の態様に係る力検出装置において、
第6および第8の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第1の柱状体の中心軸を中心として配置された円盤を、その中心点を通りY軸に平行な参照軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極によって構成され、
第5および第7の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第2の柱状体の中心軸を中心として配置された円盤を、その中心点を通りY軸に平行な参照軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極によって構成され、
第2および第4の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第3の柱状体の中心軸を中心として配置された円盤を、その中心点を通りX軸に平行な参照軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極によって構成され、
第1および第3の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第4の柱状体の中心軸を中心として配置された円盤を、その中心点を通りX軸に平行な参照軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極によって構成されているようにしたものである。
【0029】
(20) 本発明の第20の態様は、上述の第14〜第16の態様に係る力検出装置において、
第6および第8の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極がいずれも、第1の柱状体の中心軸を含みYZ平面に平行な参照面と、XZ平面と、の双方に関して、面対称となる形状をなし、
第5および第7の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極がいずれも、第2の柱状体の中心軸を含みYZ平面に平行な参照面と、XZ平面と、の双方に関して、面対称となる形状をなし、
第2および第4の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極がいずれも、第3の柱状体の中心軸を含みXZ平面に平行な参照面と、YZ平面と、の双方に関して、面対称となる形状をなし、
第1および第3の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極がいずれも、第4の柱状体の中心軸を含みXZ平面に平行な参照面と、YZ平面と、の双方に関して、面対称となる形状をなすようにしたものである。
【0030】
(21) 本発明の第21の態様は、上述の第14〜第16の態様に係る力検出装置において、
第6および第8の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極がいずれも、第1の柱状体の中心軸を含みYZ平面に平行な参照面に関して、面対称となる形状をなし、
第5および第7の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極がいずれも、第2の柱状体の中心軸を含みYZ平面に平行な参照面に関して、面対称となる形状をなし、
第2および第4の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極がいずれも、第3の柱状体の中心軸を含みXZ平面に平行な参照面に関して、面対称となる形状をなし、
第1および第3の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極がいずれも、第4の柱状体の中心軸を含みXZ平面に平行な参照面に関して、面対称となる形状をなすようにしたものである。
【0031】
(22) 本発明の第22の態様は、上述の第1〜第21の態様に係る力検出装置において、
主容量素子を構成する電極の面積と、これに対応する副容量素子を構成する電極の面積との比を、受力体にX軸まわりのモーメントMxもしくはY軸まわりのモーメントMyが作用した場合に、主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなるような面積比に設定したものである。
【0032】
(23) 本発明の第23の態様は、上述の第1〜第22の態様に係る力検出装置において、
4本の柱状体の各上端を受力体に接続するための可撓性をもった部材として、その周囲が受力体に接続され、その下面中心部が柱状体の上端に接続された上端側肉薄部が設けられているようにしたものである。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る力検出装置によれば、受力体と支持基板とを4本の柱状体で接続し、各柱状体から支持基板に加わる押圧力や各柱状体の傾斜を個別に測定することにより、受力体に加わった力の各成分を検出することができるため、構造が非常に単純な検出装置を実現することができる。しかも、基本的には、主容量素子を用いて各力成分をそれぞれ独立して検出する構成を採りつつ、個々の主容量素子にそれぞれ対応する副容量素子を設け、他軸成分の干渉要素をキャンセルできるようにしたため、他軸成分の干渉を排除し、力とモーメントとを区別して検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る力検出装置の基本構成を示す斜視図(一部はブロック図)である。
【図2】図1に示す力検出装置の基本的な動作原理を示す正面図である。
【図3】本発明の基本的な実施形態に係る力検出装置の上面図である。
【図4】本発明の基本的な実施形態に係る力検出装置の第1の側断面図であり、図3に示す装置をXZ平面に沿って切断した断面が示されている。
【図5】本発明の基本的な実施形態に係る力検出装置の第2の側断面図であり、図3に示す装置をYZ平面に沿って切断した断面が示されている。
【図6】図4,図5に示す力検出装置の受力体100を、X′Y′平面に沿って切断した状態を示す横断面図である。
【図7】図4,図5に示す力検出装置の中間体200を、切断線7−7に沿って切断した状態を示す横断面図である。
【図8】図4,図5に示す力検出装置の中間体200を、XY平面に沿って切断した状態を示す横断面図である。
【図9】図4,図5に示す力検出装置の支持基板300の上面図である。
【図10】本発明の実用的な実施形態に係る力検出装置のXZ側断面図である。
【図11】図10に示す力検出装置にX軸正方向の力+Fxが作用したときの構造体の変形態様を示す側断面図である。
【図12】図10に示す力検出装置にZ軸正方向の力+Fzが作用したときの構造体の変形態様を示す側断面図である。
【図13】図10に示す力検出装置にY軸まわりのモーメント+Myが作用したときの構造体の仮想的な変形態様を示す側断面図である。
【図14】図10に示す力検出装置において、8個の主容量素子C1〜C8を用いた各力成分の基本的な検出原理を示すテーブルであり、受力体に各力成分が作用したときの各主容量素子の静電容量値の変化の態様を示している(モーメントの作用に関しては、図14に示す仮想的な変形態様を前提としており、他軸干渉成分を考慮しない態様を示している)。
【図15】図14に示すテーブルに基づいて、8個の主容量素子C1〜C8の静電容量値を用いて各力成分を検出する原理を数式を用いて示す図である。
【図16】図14および図15に示す原理に基づく検出を行った場合に、X軸まわりのモーメントMxによるY軸方向の力Fyへの他軸干渉が生じる測定結果を示すグラフである。
【図17】他軸干渉成分を考慮して、図14に示すテーブルを補正したテーブルである(太線で囲った欄は、補正対象となった欄である)。
【図18】図9に示されている16枚の電極の拡大平面図である。
【図19】図10に示す力検出装置において、受力体に各力成分が作用したときの各副容量素子の静電容量値の変化の態様を示すテーブルである(太線で囲った欄は、副容量素子の静電容量値に変化が生じる欄である)。
【図20】図17に示す8個の主容量素子C1〜C8についての静電容量値の変化の態様を示す各欄と、図19に示す8個の副容量素子D1〜D8についての静電容量値の変化の態様を示す各欄と、の和を示すテーブルである(太線で囲った欄は、副容量素子の静電容量値に変化が生じる欄である)。
【図21】図20に示すテーブルに基づいて、8個の主容量素子C1〜C8および8個の副容量素子D1〜D8の静電容量値を用いて各力成分を検出する原理を数式を用いて示す図である。
【図22】主容量素子を構成する電極と副容量素子を構成する電極との面積比を決定するための実験方法の一例を示す側断面図である。
【図23】図18に示されている16枚の電極に対する配線例を示す拡大平面図である。
【図24】図18に示されている16枚の電極の第1の変形例(副容量素子を構成する8枚の電極F1〜F8の形状および配置が異なる)を示す拡大平面図である。
【図25】図24に示す第1の変形例において、受力体に各力成分が作用したときの各副容量素子D1〜D8の静電容量値の変化の態様を示すテーブルである。
【図26】図17に示す8個の主容量素子C1〜C8についての静電容量値の変化の態様を示す各欄と、図25に示す8個の副容量素子D1〜D8についての静電容量値の変化の態様を示す各欄と、の和を示すテーブルである。
【図27】図18に示されている16枚の電極の第2の変形例(副容量素子を構成する8枚の電極F1〜F8の形状および配置が異なる)を示す拡大平面図である。
【図28】図27に示す第2の変形例において、受力体に各力成分が作用したときの各副容量素子D1〜D8の静電容量値の変化の態様を示すテーブルである。
【図29】図17に示す8個の主容量素子C1〜C8についての静電容量値の変化の態様を示す各欄と、図28に示す8個の副容量素子D1〜D8についての静電容量値の変化の態様を示す各欄と、の和を示すテーブルである。
【図30】主容量素子C1を構成する電極E1に対して、副容量素子D1を構成する電極F1の配置を説明する平面図である。
【図31】主容量素子C1,C2を構成する電極E1,E2に対して、副容量素子D1,D2を構成する電極F1,F2の配置の一例(図18の実施例に対応する例)を説明する平面図である。
【図32】主容量素子C1,C2を構成する電極E1,E2に対して、副容量素子D1,D2を構成する電極F1,F2の配置の別な一例(図24の第1の変形例に対応する例)を説明する平面図である。
【図33】主容量素子C1,C2を構成する電極E1,E2に対して、副容量素子D1,D2を構成する電極F1,F2の配置の更に別な一例(図27の第2の変形例に対応する例)を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
【0036】
<<< §1. 装置の基本構造 >>>
はじめに、本発明に係る力検出装置の基本構造を説明する。なお、この基本構造それ自身は、前述した特許文献1〜3において、既に開示されているものである。
【0037】
図1に示すとおり、本発明に係る力検出装置の基本構成要素は、受力体10、第1の柱状体11、第2の柱状体12、第3の柱状体13、第4の柱状体14、支持基板20、第1のセンサ21、第2のセンサ22、第3のセンサ23、第4のセンサ24、検出回路30である。
【0038】
ここでは、説明の便宜上、XYZ三次元座標系と、これを上方に平行移動させたX′Y′Z′補助座標系を定義する。図示の例の場合、XYZ三次元座標系の原点Oは、支持基板20の上面中心位置に定義されており、支持基板20の上面がXY平面に含まれるようになっている。図の右方がX軸正方向、図の斜め奥がY軸正方向、図の上方がZ軸正方向である。一方、X′Y′Z′補助座標系の原点O′は、原点OをZ軸正方向に所定距離移動させた位置にある。具体的には、原点O′は受力体10の中心部に位置している。したがって、X軸とX′軸とは平行であり、Y軸とY′軸とは平行であり、Z軸とZ′軸とは重なり合っている。
【0039】
受力体10は、検出対象となる力を受ける構成要素であり、X′Y′Z′補助座標系の原点O′を受力体10の中心部にとったのは、この受力体10に作用する力を説明するための便宜である。図には、受力体10に対して作用する、X軸方向の力Fx、Y軸方向の力Fy、Z軸方向の力Fzを、それぞれX′軸、Y′軸、Z′軸に沿った矢印として示してあるが、もちろん、これらの力はそれぞれX軸、Y軸、Z軸にも平行な力であり、受力体10に対して加えられた力のX軸方向成分、Y軸方向成分、Z軸方向成分を示すものになる。
【0040】
このように、力Fx,Fy,Fzについては、X′Y′Z′補助座標系の各座標軸に沿った力と考えても、XYZ三次元座標系の各座標軸に沿った力と考えても、物理量としての本質に相違はないが、モーメントMx,My,Mzについては、座標系の原点位置をどこにとるかによって物理量としての本質は変わってくる。特に、本発明は、他軸成分の干渉を排除した高い測定精度をもつ力検出装置に係るものであるため、ここでは、XYZ三次元座標系とX′Y′Z′補助座標系とを明確に区別して取り扱うことにする。
【0041】
すなわち、本発明に係る力検出装置の検出対象となる力Fx,Fy,FzおよびモーメントMx,My,Mzは、あくまでもXYZ三次元座標系の各座標軸方向に作用する力および各座標軸まわりに作用するモーメントであり、図1において、モーメントMx,Myを示す矢印がそれぞれX軸およびY軸まわりに描かれているのはこのためである(Z軸とZ′軸とは重なるので、モーメントMzはZ′軸まわりのモーメントと考えても支障ない)。別言すれば、モーメントMxやMyが直接的に作用する物体は受力体10であるが、これらのモーメントは、受力体10を、その中心位置にある原点O′を中心として回転させる作用を果たすのではなく、受力体10を、XYZ三次元座標系の原点Oを中心として回転させる作用を果たすことになる。
【0042】
結局、この力検出装置は、XYZ三次元座標系において、受力体10に作用する力のX軸方向成分Fx、Y軸方向成分Fy、Z軸方向成分Fzと、X軸まわりのモーメント成分Mx、Y軸まわりのモーメント成分My、Z軸まわりのモーメント成分Mzをそれぞれ独立して検出する機能を有することになる。
【0043】
なお、本願では、「力」という文言は、特定の座標軸方向の力成分を意味する場合と、モーメント成分を含めた集合的な力を意味する場合とを、適宜使い分けることにする。たとえば、図1において、力Fx,Fy,Fzと言った場合は、モーメントではない各座標軸方向の力成分を意味しているが、6つの力Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzと言った場合は、各座標軸方向の力成分と各座標軸まわりのモーメント成分とを含む集合的な力を意味することになる。
【0044】
支持基板20は、受力体10の下方に配置され、受力体10を支持する機能を果たす構成要素である。上述したように、ここに示す例の場合、支持基板20の上面は、XY平面に含まれる。この力検出装置は、この支持基板20を固定した状態において、受力体10に作用した力を検出することになる。
【0045】
第1の柱状体11〜第4の柱状体14は、受力体10と支持基板20とを接続する部材であり、いずれもその中心軸がZ軸に平行になるように配置されている。しかも、第1の柱状体11は、その中心軸がX軸の正の部分に交差する位置に配置され、第2の柱状体12は、その中心軸がX軸の負の部分に交差する位置に配置され、第3の柱状体13は、その中心軸がY軸の正の部分に交差する位置に配置され、第4の柱状体14は、その中心軸がY軸の負の部分に交差する位置に配置されている。
【0046】
また、実用上は、第1の柱状体11〜第4の柱状体14は、全く同じ材質、全く同じ形状、全く同じサイズにするのが好ましい。これは、これらの材質・形状・サイズを同一にしておけば、第1のセンサ21〜第4のセンサ24による検出感度を同一にすることができるためである。相互の材質・形状・サイズが異なると、各センサの感度を同一にそろえることが困難になり、感度補正のための工夫が必要になる。同様の理由により、各柱状体の形状および配置のパターンは、XZ平面およびYZ平面の双方に関して、面対称になっているのが好ましい。
【0047】
なお、図1には示されていないが、各柱状体11〜14の上端は、受力体10に対して、可撓性をもった部材を介して接続されており、各柱状体11〜14の下端は、支持基板20に対して、可撓性をもった接続部材を介して接続されている。要するに、第1の柱状体11〜第4の柱状体14は、受力体10に対しても、支持基板20に対しても、可撓性をもって接続されていることになる。ここで、可撓性とは弾力性と同義であり、受力体10に対して何ら力が作用していない状態では、受力体10は支持基板20に対して定位置をとるが、受力体10に何らかの力が作用すると、可撓性をもった接続部材が弾性変形を生じ、受力体10と支持基板20との相対位置に変化が生じることになる。もちろん、受力体10に作用する力がなくなると、受力体10はもとどおりの定位置に戻る。
【0048】
結局、図1に示す例の場合、第1の柱状体11〜第4の柱状体14の上端部および下端部が、それぞれ可撓性をもった接続部材によって構成されていることになる(もちろん、第1の柱状体11〜第4の柱状体14の全体が可撓性をもった材料により構成されていてもかまわない)。そして、この接続部材が、ある程度の弾性変形を生じるため、第1の柱状体11〜第4の柱状体14は、受力体10や支持基板20に対して傾斜することができる。また、この接続部材は、図の上下方向(Z軸方向)にも伸縮することが可能であり、受力体10を図の上方向(+Z軸方向)に動かすと、接続部材が伸縮し、受力体10と支持基板20との距離は広がり、逆に、受力体10を図の下方向(−Z軸方向)に動かすと、接続部材が伸縮し、受力体10と支持基板20との距離は狭まることになる。もちろん、このような変位や傾斜の度合いは、受力体10に作用した力の大きさに応じて大きくなる。
【0049】
第1のセンサ21〜第4のセンサ24は、それぞれ第1の柱状体11〜第4の柱状体14の傾斜を検出するとともに、第1の柱状体11〜第4の柱状体14から支持基板20に向かって加えられるZ軸方向に関する力を検出する力センサである。具体的には、後述するように、これらのセンサはそれぞれ複数の容量素子から構成されている。受力体10に力が作用すると、この力は、各柱状体11〜14を介して、支持基板20へと伝達されることになる。各センサ21〜24は、こうして伝達される力によって、各柱状体11〜14の下端部近傍に生じる力学的な現象を検出する機能を有している。より具体的には、後に詳述するように、柱状体が傾斜することにより生じる力を検出することにより、柱状体の傾斜度を検知する機能と、柱状体全体が、支持基板に対して加える押圧力(図の下方−Z軸方向の力)もしくは引っ張り力(図の上方+Z軸方向の力)を検知する機能と、を有している。
【0050】
検出回路30は、各センサ21〜24を構成する複数の容量素子の静電容量値に基づいて、受力体10に作用した力もしくはモーメントを検出する処理を行う構成要素であり、XYZ三次元座標系における各座標軸方向の力成分Fx,Fy,Fzを示す信号と各座標軸まわりのモーメント成分Mx,My,Mzを示す信号を出力する。実際には、上述した柱状体の傾斜度や、支持基板に対して加えられる押圧力/引っ張り力に基づいて、力やモーメントの検出が行われる。
【0051】
<<< §2. 力とモーメントを区別して検出する原理 >>>
続いて、図2の正面図を参照しながら、図1に示す力検出装置において、力とモーメントを区別して検出することが可能な原理を説明する。なお、図2では、説明の便宜上、第1の柱状体11および第2の柱状体12の変位形態のみを示すが、第3の柱状体13および第4の柱状体14についても所定の変位が生じることになる。
【0052】
図2(a) は、この力検出装置に何ら力が作用していない状態を示しており、受力体10は、支持基板20に対して定位置を維持している。もちろん、この状態においても、受力体10などの重量が支持基板20上に加わっているので、支持基板20は、第1の柱状体11〜第4の柱状体14から、何らかの力を受けているが、この状態で受けている力は定常状態での力であり、このような力が第1のセンサ21〜第4のセンサ24によって検出されたとしても、検出回路30から出力される力やモーメントの検出値は0になるように調整されている。別言すれば、検出回路30は、このような定常状態における各センサ21〜24の検出結果を基準として、何らかの変化が生じた場合に、この変化を受力体10に作用した力もしくはモーメントとして検出する機能を有している。
【0053】
さて、ここでは、まず図2(b) に示すように、受力体10に対して、X軸正方向の力+Fxが作用した場合を考えてみる。ちょうど原点O′の位置を、図の右方向へと押すような力が加わった場合に相当する。この場合、図示のとおり、受力体10は図の右方向へとスライド運動することになり、第1の柱状体11および第2の柱状体12は、図の右方向へと傾斜することになる。ここでは、このときの第1の柱状体11の傾斜度をθ1、第2の柱状体12の傾斜度をθ2と呼ぶことにする。
【0054】
なお、図には示されていないが、このとき、第3の柱状体13および第4の柱状体14も、同様に図の右方向へと傾斜することになる。ここでは、このときの第3の柱状体13のX軸方向に関する傾斜度をθ3、第4の柱状体14のX軸方向に関する傾斜度をθ4と呼ぶ。このようにXZ平面内もしくはXZ平面に平行な平面内におけるX軸に向かう方向への傾斜の程度を示す角度θ1〜θ4を、「X軸方向に関する傾斜度」と呼ぶことにする。
【0055】
同様に、受力体10に対して、Y軸正方向の力+Fyが作用した場合は、第1の柱状体11〜第4の柱状体14は、いずれもY軸正方向(図の紙面奥行き方向)へと傾斜する。ここでは、このようにYZ平面内もしくはYZ平面に平行な平面内におけるY軸に向かう方向への傾斜の程度を示す角度を、「Y軸方向に関する傾斜度」と呼ぶことにする。図2(b) に示すように、受力体10に対して、X軸正方向の力+Fxが作用した場合、各柱状体のY軸方向の傾斜度は0である。
【0056】
なお、各柱状体11〜14が傾斜すると、受力体10と支持基板20との距離は若干縮まることになるので、厳密に言えば、受力体10はX軸方向に完全な平行移動を行うわけではなく、わずかながら−Z軸方向への移動も行うことになるが、傾斜度が比較的小さい場合、−Z軸方向への移動量は無視することができるので、ここでは説明の便宜上、受力体10がX軸方向のみに移動したものと考えることにする。
【0057】
一方、図2(c) に示すように、受力体10に対して、Y軸まわりのモーメント+Myが作用した場合を考えてみよう。図2(c) において、Y軸は原点Oの位置において紙面の裏側へと向かう垂直方向の軸であるから、図では、モーメント+Myは、原点Oを中心に、受力体10を時計まわりの方向に回転させるような力に相当する。なお、本願では、所定の座標軸の正方向に右ネジを進める場合の当該右ネジの回転方向を、当該座標軸まわりの正のモーメントと定義することにする。前述したとおり、モーメント+Myは、受力体10を原点O′を中心として回転させる力ではなく、原点Oを中心として回転させる力になる(両者の誤差が許容範囲であれば、モーメントを原点O′を中心とする回転力として取り扱っても問題ない。)。
【0058】
さて、この場合、図示のとおり、第1の柱状体11については上下方向に縮小力が作用し、第2の柱状体12については上下方向に伸張力が作用することになる。その結果、第1の柱状体11から支持基板20に対しては、押圧力(−Z軸方向の力:ここでは、力−fzと示すことにする)が作用し、第2の柱状体12から支持基板20に対しては、引っ張り力(+Z軸方向の力:ここでは、力+fzと示すことにする)が作用する。このとき、第3の柱状体13および第4の柱状体14から支持基板20に対しては、部分的に押圧力や引っ張り力が加えられるものの、加えられる力はトータルでは相殺されて零になる。
【0059】
図1に矢印で示されているとおり、受力体10に作用するX軸方向の力Fxと、Y軸まわりのモーメントMyとは、受力体10に対して似たような変位作用を及ぼすことになるが、図2に示すような動的挙動をとる構造体を有する力検出装置では、受力体10にX軸方向の力Fxが作用した場合と、Y軸まわりのモーメントMyが作用した場合とでは、4本の柱状体11〜14を介して支持基板20に伝達される力の態様が異なることになる。したがって、両者を区別して、それぞれ別個に検出することが可能である。
【0060】
すなわち、X軸方向の力Fxが作用した場合は、図2(b) に示すように、4本の柱状体11〜14は、X軸方向に傾斜し、傾斜度θ1〜θ4を生じることになり(図には、柱状体11,12の変位態様のみが例示されている)、このような傾斜に応じた力が支持基板20へと伝達される。これらの傾斜度θ1,θ2,θ3,θ4は、いずれも、X軸方向の力Fxを示す値になる。傾斜度θに符号を付して取り扱えば(たとえば、X軸正方向への傾斜の場合を正、X軸負方向への傾斜の場合を負として取り扱えば)、作用したX軸方向の力Fxを符号を含めて検出することが可能である。
【0061】
本発明では、後述するように、各柱状体11〜14の傾斜度は、各センサ21〜24によって、支持基板20に加えられる力として検出されることになる。このような検出を行うには、各柱状体から支持基板20に対して加えられる力を、個々の部分ごとに検知すればよい。たとえば、図2(b) において、第1の柱状体11と支持基板20との接続部分に生じる応力を考えてみると、第1の柱状体11の底部の右側部分と左側部分とでは、生じる応力の向きが異なることがわかる。すなわち、図示の例では、第1の柱状体11は右側に傾斜しているので、第1の柱状体11の底部の右側部分については押圧力が生じ、支持基板20の上面を下方に押圧する力が生じているのに対し、左側部分については引っ張り力が生じ、支持基板20の上面を上方へ引っ張り上げる力が生じている。このように第1の柱状体11の底部の左右の各部における応力の相違を検出することにより、第1の柱状体11の傾斜度を得ることができる。他の柱状体12,13,14の傾斜度検出も同様の方法で行うことができる。
【0062】
一方、Y軸まわりのモーメントMyが作用した場合は、図2(c) に示すように、2本の柱状体11,12から支持基板20に対して、押圧力−fzと引っ張り力+fzとが伝達される。このようにして伝達される力は、柱状体が傾斜した場合の力とは異なっている。すなわち、図2(b) に示すように柱状体が傾斜した場合は、その底部に生じる応力は、右側部分と左側部分とで異なるものとなった。ところが、図2(c) に示すようにモーメントMyが作用した場合は、第1の柱状体11全体により押圧力−fzが加えられ、第2の柱状体12全体により引っ張り力+fzが加えられることになる。
【0063】
このように、X軸方向の力Fxの作用に対しては、第1の柱状体11〜第4の柱状体14に関して、同じ方向への傾斜という同等の事象が生じるのに対して、Y軸まわりのモーメントMyの作用に対しては、図2(c) に示すように、第1の柱状体11および第2の柱状体12に関して、一方は押圧力−fzを与え、他方は引っ張り力+fzを与えるという相反する事象が生じることになる。したがって、作用したモーメントMyは、引っ張り力+fzと押圧力−fzとの差、すなわち、(+fz)−(−fz)=2fzとして求めることができる。
【0064】
結局、この力検出装置によって、Y軸まわりのモーメントMyを検出するには、第1のセンサ21には、第1の柱状体11全体から支持基板20に対して加えられる力を検知する機能をもたせ、第2のセンサ22には、第2の柱状体12全体から支持基板20に対して加えられる力を検知する機能をもたせておけばよい。第1のセンサ21が、第1の柱状体11全体から支持基板20に対して加えられるZ軸方向に関する力を検知する機能を有し、第2のセンサ22が、第2の柱状体12全体から支持基板20に対して加えられるZ軸方向に関する力を検知する機能を有していれば、検出回路30は、第1のセンサ21によって検知されたZ軸方向に関する力と、第2のセンサ22によって検知されたZ軸方向に関する力と、の差に基づいて、受力体10に作用した力のY軸まわりのモーメントMyを検出する処理を行うことができる。
【0065】
以上、図2を参照しながら、受力体10に作用するX軸方向の力Fxと、Y軸まわりのモーメントMyと、を区別して検出する原理を説明したが、この、図2の動作説明におけるX軸をY軸におきかえれば、同様の方法で、受力体10に作用するY軸方向の力Fyと、X軸まわりのモーメントMxと、を区別して検出することができる。
【0066】
また、受力体10に、Z軸負方向の力−Fzが作用した場合は、4本の柱状体11〜14のすべてから支持基板20に対して押圧力−fzが加わることになり、Z軸正方向の力+Fzが作用した場合は、4本の柱状体11〜14のすべてから支持基板20に対して引っ張り力+fzが加わることになる。したがって、作用したZ軸方向の力Fzは、4本の柱状体11〜14から加えられた押圧力−fzの和もしくは引っ張り力+fzの和として求めることができる。
【0067】
更に、受力体10に、Z軸まわりのモーメントMzが作用した場合は、4本の柱状体11〜14が、上方から観察したときに、時計まわりもしくは反時計まわりに傾斜することになるので、4本の柱状体11〜14それぞれの傾斜方向を検知することにより、モーメントMzの検出も可能である。
【0068】
<<< §3. 具体的な実施形態の構造 >>>
続いて、本発明の具体的な実施形態に係る力検出装置の主たる構造部分を、図3〜図9を用いて説明する。
【0069】
図3は、本発明の基本的な実施形態に係る力検出装置の上面図である。この装置を、XZ平面で切断した側断面図が図4に示されており、YZ平面で切断した側断面図が図5に示されている。図4もしくは図5に示されているとおり、この力検出装置の基本的な構成要素は、受力体100、中間体200、支持基板300であり、いずれも上面がXY平面に平行な正方形状をした板状の部材を基本形態としている。図4および図5は、互いに切断位置が異なる側断面図であるが、図面に現れている幾何学的な構造は全く同一である。両者の相違は、各部の符号だけである。これは、この装置の基本構造が、XZ平面に関して面対称であり、かつ、YZ平面に関しても面対称であるためである。
【0070】
§1で述べた例と同様に、この例でも、XYZ三次元座標系と、これをZ軸方向に平行移動したX′Y′Z′補助座標系とが定義されている。X′Y′Z′補助座標系は、受力体100の中心位置に原点O′をもった座標系である。一方、XYZ三次元座標系の原点Oは、支持基板300の上面中心点を、Z軸正方向に若干ずらした位置に定義されている。図4および図5において、原点Oが支持基板300の上面から若干上方にずれており、X軸およびY軸が支持基板300の上面位置から若干上方にずれているのはこのためである。
【0071】
そもそもXYZ三次元座標系は、概念的に定義された座標系であり、その原点Oをどの位置に定義しようが、この力検出装置の物理的構造に影響があるわけではない。しかしながら、この力検出装置を用いて、高精度の測定を行うことを意図している利用者に対しては、この検出装置によって正確に検出されるモーメントが、特定の原点Oをもつ座標軸まわりのモーメントであることを明確にしておく必要がある。そして、後述するように、本発明のポイントとなる他軸干渉を排除するための補正は、当該特定の原点Oをもつ座標軸まわりのモーメントについての干渉を相殺するような補正となる。したがって、本発明を実施する上では、このような補正が正確な意味をもつようにするために、特定の原点Oを設定しておく必要がある。
【0072】
この特定の原点Oは、§1で述べた例と同様に、支持基板300の上面中心点の位置に定義してもかまわない。ただ、本願発明者は、ここに図示する実施形態の場合は、この原点Oの位置を、若干上方に定義した方が、より好ましい結果が得られると考えている。これは、後述するとおり、本発明では、各センサ21〜24として、静電容量素子からなるセンサを用いて、各柱状体の下端に作用した力(傾斜度)の検出が行われるため、この容量素子の中心位置、すなわち、容量素子を構成する一対の電極間の中間位置に、XY平面が位置するような座標系を定義するのが最も好ましいと考えられるからである。したがって、ここに示す実施形態の場合、原点Oの位置は、電極の厚みを無視した場合、支持基板300の上面の中心点を、容量素子を構成する一対の電極間距離の1/2だけ上方に移動させた位置ということになる。
【0073】
もっとも、原点Oの理想的な位置を理論的に解析することは容易ではないので、実際の力検出装置の構造によっては、必ずしも上述の位置に原点Oを定義するのが最適であるとは限らない。原点Oの位置は、それほど厳密に定義する必要はなく、支持基板の中央付近の上面もしくはその上方の所定点に定義しておけば、実用上、本発明の効果は十分に得られる。
【0074】
さて、上面が正方形状をした板状の部材からなる受力体100、中間体200、支持基板300は、いずれも上下両面がXY平面に平行になるように、かつ、各辺がX軸もしくはY軸に平行になるように配置されている。
【0075】
受力体100は、図3に示すとおり、基本的には、上面が正方形状をした板状部材であるが、下面からは、4本の円柱突起部110,120,130,140が下方へと伸びている。図6は、この受力体100をX′Y′平面で切断した状態を示す横断面図である。
【0076】
図6に示されているとおり、4本の円柱突起部110,120,130,140の付け根部分の周囲には、円環状の溝部G11,G12,G13,G14が形成されており、この溝部G11,G12,G13,G14の形成により、板状の受力体100には、図3,図4,図5に示すように、可撓性をもった上端側肉薄部115,125,135,145が形成されている。結局、4本の円柱突起部110,120,130,140は、上端側肉薄部115,125,135,145を介して、板状の受力体100に接続されていることになる。
【0077】
一方、中間体200は、支持基板300の上面に接合された部材であり、基本的には、上面が正方形状をした板状部材である。図4,図5に示すように、この中間体200の上面からは、4本の円柱突起部210,220,230,240が上方へと伸びている。これら4本の円柱突起部210,220,230,240の付け根部分の周囲には、円環状の溝部G21,G22,G23,G24が形成されており、更に、この中間体200の下面には、円柱状の溝部G31,G32,G33,G34が形成されている。中間体200の上面に設けられた溝部G21,G22,G23,G24と、下面に設けられた溝部G31,G32,G33,G34とは、いずれも円柱突起部210,220,230,240の中心軸の位置を中心とした同サイズの円形の輪郭を有している。
【0078】
図4に示すとおり、溝部G21とG31との間には、下端側肉薄部215が境界壁として存在し、溝部G22とG32との間には、下端側肉薄部225が境界壁として存在する。また、図5に示すとおり、溝部G23とG33との間には、下端側肉薄部235が境界壁として存在し、溝部G24とG34との間には、下端側肉薄部245が境界壁として存在する。
【0079】
図7は、この図4,図5に示す中間体200を、切断線7−7に沿って切断した状態を示す横断面図である。4本の円柱突起部210,220,230,240の周囲に、溝部G21,G22,G23,G24が形成されている状態が明瞭に示されている。また、図8は、この図4,図5に示す中間体200を、XY平面に沿って切断した状態を示す横断面図であり、溝部G31,G32,G33,G34の配置が明瞭に示されている。
【0080】
この中間体200の下面に接合された支持基板300は、図9に示すように、上面が正方形状をした完全な板状部材であり、その上面には、固定電極E1〜E8,F1〜F8が配置されている。後述するように、固定電極E1〜E8は、それぞれ主容量素子C1〜C8を構成するために支持基板300の上面に固定された電極であり、ここでは「主固定電極」と呼ぶことにする。一方、固定電極F1〜F8は、それぞれ副容量素子D1〜D8を構成するために支持基板300の上面に固定された電極であり、ここでは「副固定電極」と呼ぶことにする。図9では、これら16枚の固定電極の形状を明瞭に示すために、各電極の内部にハッチングを施して示してある(図9におけるハッチングは、断面を示すためのものではない)。
【0081】
受力体100側から下方に伸びた4本の円柱突起部110,120,130,140の下面は、中間体200側から上方に伸びた4本の円柱突起部210,220,230,240の上面に接合されている。ここでは、図4に示すように、円柱突起部110と円柱突起部210とを接合することにより構成される円柱状の構造体を第1の柱状体T1と呼び、円柱突起部120と円柱突起部220とを接合することにより構成される円柱状の構造体を第2の柱状体T2と呼ぶことにする。また、図5に示すように、円柱突起部130と円柱突起部230とを接合することにより構成される円柱状の構造体を第3の柱状体T3と呼び、円柱突起部140と円柱突起部240とを接合することにより構成される円柱状の構造体を第4の柱状体T4と呼ぶことにする。
【0082】
図3の上面図を見ればわかるように、この4本の柱状体T1〜T4のXY平面上への投影位置を考えると、第1の柱状体T1は、その中心軸がZ軸に平行になり、かつ、その中心軸がX軸の正の部分に交差する位置に配置され、第2の柱状体T2は、その中心軸がZ軸に平行になり、かつ、その中心軸がX軸の負の部分に交差する位置に配置され、第3の柱状体T3は、その中心軸がZ軸に平行になり、かつ、その中心軸がY軸の正の部分に交差する位置に配置され、第4の柱状体T4は、その中心軸がZ軸に平行になり、かつ、その中心軸がY軸の負の部分に交差する位置に配置されている。
【0083】
また、図4に示すとおり、第1の柱状体T1の上端は、可撓性をもった上端側肉薄部115を接続部材として受力体100に接続されており、第2の柱状体T2の上端は、可撓性をもった上端側肉薄部125を接続部材として受力体100に接続されており、図5に示すとおり、第3の柱状体T3の上端は、可撓性をもった上端側肉薄部135を接続部材として受力体100に接続されており、第4の柱状体T4の上端は、可撓性をもった上端側肉薄部145を接続部材として受力体100に接続されている。このように、各上端側肉薄部115,125,135,145は、その周囲が受力体100に接続され、その下面中心部が各柱状体T1,T2,T3,T4の上端に接続されていることになる。。
【0084】
一方、図4に示すとおり、第1の柱状体T1の下面は、接続部材として機能する下端側肉薄部215の中央に接合されており、下端側肉薄部215の周囲は、中間体200を介して支持基板300に接続されており、第2の柱状体T2の下面は、接続部材として機能する下端側肉薄部225の中央に接合されており、下端側肉薄部225の周囲は、中間体200を介して支持基板300に接続されている。同様に、図5に示すとおり、第3の柱状体T3の下面は、接続部材として機能する下端側肉薄部235の中央に接合されており、下端側肉薄部235の周囲は、中間体200を介して支持基板300に接続されており、第4の柱状体T4の下面は、接続部材として機能する下端側肉薄部245の中央に接合されており、下端側肉薄部245の周囲は、中間体200を介して支持基板300に接続されている。
【0085】
下端側肉薄部215,225,235,245も、可撓性をもった円板状の部材であり、中間体200の一部が、この円板状の部材を支持基板300上に支持する台座として機能している。結局、下端側肉薄部215,225,235,245は、支持基板300の上面から所定距離をおいた上方位置に、支持基板300の上面に対して平行に配置されるように、その周囲が台座を介して支持基板300に接続されており、その上面中心部が各柱状体T1,T2,T3,T4の下端に接続されていることになる。
【0086】
図示の実施形態では、受力体100は絶縁性基板(たとえば、セラミック基板)、中間体200は導電性基板(たとえば、ステンレス、アルミニウム、チタンなどの金属基板)、支持基板300は絶縁性基板(たとえば、セラミック基板)によって構成されている。もちろん、各部の材質はこれらに限定されるものではなく、たとえば、受力体100を、ステンレス、アルミニウム、チタンなどの金属基板で構成してもかまわない。上端側肉薄部115,125,135,145や下端側肉薄部215,225,235,245は、基板の他の部分に比べて肉厚を薄くすることにより可撓性をもつように構成された部分である。
【0087】
この実施形態では、下端側肉薄部215,225,235,245は、導電性材料から構成されているため、可撓性を有するとともに導電性を有している。受力体100に力が作用すると、下端側肉薄部215,225,235,245が変形して変位を生じることになり、その結果、各柱状体T1,T2,T3,T4にも変位が生じることになる。したがって、導電性をもった下端側肉薄部215,225,235,245は、それ自身が変位電極としての機能を果たす。
【0088】
図9に示すように、支持基板300の上面には、第1の柱状体T1の下端近傍位置に主固定電極E1,E2および副固定電極F6,F8が形成されている。導電性材料からなる下端側肉薄部215は、図4に示すように、これら4枚の固定電極のすべてに対向する1枚の共通変位電極としての機能を果たすことになる。このため、個々の固定電極と、共通変位電極のこれに対向する部分と、によって、容量素子が形成される。ここでは、主固定電極E1,E2および副固定電極F6,F8と、共通変位電極(下端側肉薄部215)の対向部分とによって構成される容量素子を、それぞれ主容量素子C1,C2および副容量素子D6,D8と呼ぶことにする。
【0089】
結局、第1の柱状体T1の下端側肉薄部215とこれに対向する支持基板300の上面とによって挟まれた空間(溝部G31)内に、一方の電極(共通変位電極)が下端側肉薄部215の下面に形成され、他方の電極(主固定電極E1,E2および副固定電極F6,F8)が支持基板300の上面に形成された4個の容量素子C1,C2,D6,D8によって、第1のセンサS1が構成されている。この第1のセンサS1は、第1の柱状体T1の傾斜や、第1の柱状体T1から支持基板300に対して加えられる押圧力や引っ張り力を検出する機能を果たす。
【0090】
また、図9に示すように、支持基板300の上面には、第2の柱状体T2の下端近傍位置に主固定電極E3,E4および副固定電極F5,F7が形成されている。導電性材料からなる下端側肉薄部225は、図4に示すように、これら4枚の固定電極のすべてに対向する1枚の共通変位電極としての機能を果たすことになる。このため、個々の固定電極と、共通変位電極のこれに対向する部分と、によって、容量素子が形成される。ここでは、主固定電極E3,E4および副固定電極F5,F7と、共通変位電極(下端側肉薄部225)の対向部分とによって構成される容量素子を、それぞれ主容量素子C3,C4および副容量素子D5,D7と呼ぶことにする。
【0091】
結局、第2の柱状体T2の下端側肉薄部225とこれに対向する支持基板300の上面とによって挟まれた空間(溝部G32)内に、一方の電極(共通変位電極)が下端側肉薄部225の下面に形成され、他方の電極(主固定電極E3,E4および副固定電極F5,F7)が支持基板300の上面に形成された4個の容量素子C3,C4,D5,D7によって、第2のセンサS2が構成されている。この第2のセンサS2は、第2の柱状体T2の傾斜や、第2の柱状体T2から支持基板300に対して加えられる押圧力や引っ張り力を検出する機能を果たす。
【0092】
更に、図9に示すように、支持基板300の上面には、第3の柱状体T3の下端近傍位置に主固定電極E5,E6および副固定電極F2,F4が形成されている。導電性材料からなる下端側肉薄部235は、図5に示すように、これら4枚の固定電極のすべてに対向する1枚の共通変位電極としての機能を果たすことになる。このため、個々の固定電極と、共通変位電極のこれに対向する部分と、によって、容量素子が形成される。ここでは、主固定電極E5,E6および副固定電極F2,F4と、共通変位電極(下端側肉薄部235)の対向部分とによって構成される容量素子を、それぞれ主容量素子C5,C6および副容量素子D2,D4と呼ぶことにする。
【0093】
結局、第3の柱状体T3の下端側肉薄部235とこれに対向する支持基板300の上面とによって挟まれた空間(溝部G33)内に、一方の電極(共通変位電極)が下端側肉薄部235の下面に形成され、他方の電極(主固定電極E5,E6および副固定電極F2,F4)が支持基板300の上面に形成された4個の容量素子C5,C6,D2,D4によって、第3のセンサS3が構成されている。この第3のセンサS3は、第3の柱状体T3の傾斜や、第3の柱状体T3から支持基板300に対して加えられる押圧力や引っ張り力を検出する機能を果たす。
【0094】
同様に、図9に示すように、支持基板300の上面には、第4の柱状体T4の下端近傍位置に主固定電極E7,E8および副固定電極F1,F3が形成されている。導電性材料からなる下端側肉薄部245は、図5に示すように、これら4枚の固定電極のすべてに対向する1枚の共通変位電極としての機能を果たすことになる。このため、個々の固定電極と、共通変位電極のこれに対向する部分と、によって、容量素子が形成される。ここでは、主固定電極E7,E8および副固定電極F1,F3と、共通変位電極(下端側肉薄部245)の対向部分とによって構成される容量素子を、それぞれ主容量素子C7,C8および副容量素子D1,D3と呼ぶことにする。
【0095】
結局、第4の柱状体T4の下端側肉薄部245とこれに対向する支持基板300の上面とによって挟まれた空間(溝部G34)内に、一方の電極(共通変位電極)が下端側肉薄部245の下面に形成され、他方の電極(主固定電極E7,E8および副固定電極F1,F3)が支持基板300の上面に形成された4個の容量素子C7,C8,D1,D3によって、第4のセンサS4が構成されている。この第4のセンサS4は、第4の柱状体T4の傾斜や、第4の柱状体T4から支持基板300に対して加えられる押圧力や引っ張り力を検出する機能を果たす。
【0096】
なお、ここでは、下端側肉薄部215〜245を導電性材料によって構成し、下端側肉薄部215〜245自身を共通変位電極として用いる例を示したが、下端側肉薄部215〜245を絶縁性材料によって構成した場合には、その下面に、共通変位電極となる導電性電極層を形成すればよい。もちろん、変位電極は必ずしも共通の電極とする必要はないので、各下端側肉薄部の下面に、4枚の固定電極のそれぞれに対向する個別の変位電極を設けるようにしてもかまわない。また、下端側肉薄部に設ける変位電極を4枚の個別電極にし、支持基板300に設ける固定電極を1枚の共通電極にすることも可能である。ただ、実用上は、配線を単純化する上で、図示の実施例のように、下端側肉薄部215〜245を導電性材料によって構成し、下端側肉薄部215〜245自身を共通変位電極として用いるようにするのが好ましい。
【0097】
さて、図3〜図9を用いて説明した実施例に係る力検出装置は、結局、図1に示す力検出装置と同等の構成要素を備えていることがわかる。すなわち、板状の受力体100は受力体10に対応し、板状の支持基板300は支持基板20に対応し、各柱状体T1〜T4は各柱状体11〜14に対応し、各センサS1〜S4は各センサ21〜24に対応する。したがって、この図3〜図9に示す構造体に、検出回路30を付加すれば、図1に示した力検出装置を実現することができる。
【0098】
なお、実用上は、図10に示す例のように、中間体200の周囲輪郭部分を上方へと伸ばし、制御壁250および260を形成した構造にするのが好ましい。制御壁250は、受力体100の周囲を四方から囲む壁であり、制御壁260は、受力体100の上面の周囲を枠状に取り囲む壁である。このような構造体では、受力体100の下面と中間体200の上面との間に寸法d1の空隙部が形成され、受力体100の上面と制御壁260との間に寸法d2の空隙部が形成され、受力体100の側面と制御壁250との間に寸法d3の空隙部が形成される。したがって、受力体100に対して過度の力が加わったとしても、受力体100の下方、上方、側方への変位は、それぞれd1,d2,d3に制限されることになり、各柱状部T1〜T4等の構造部分が破損するのを防ぐことができる。
【0099】
<<< §4. 主容量素子のみを用いた検出動作 >>>
続いて、図10に示す力検出装置の基本的な検出動作を、図11〜図13を用いて説明する。§2で説明したとおり、この装置は、支持基板300を固定した状態において、受力体100に作用したX軸方向の力Fx、Y軸方向の力Fy、Z軸方向の力Fz、X軸まわりのモーメントMx、Y軸まわりのモーメントMy、Z軸まわりのモーメントMzという力の6成分を独立して検出する機能を有している。
【0100】
図9に示すとおり、支持基板300上には、8枚の主固定電極E1〜E8が形成されており、これら主固定電極E1〜E8と、対向する共通変位電極(下端側肉薄部215〜245)とによって、8個の主容量素子C1〜C8が構成されている。この§4では、これら8個の主容量素子C1〜C8のみを用いて、上記6つの力成分を検出する動作を説明する。本発明の特徴は、更に8個の副容量素子D1〜D8を利用して、他軸成分の干渉を排除した正確な検出を行う点にあるが、この特徴については、§6で述べることにする。
【0101】
さて、ここでは、図10に示す位置に原点OをとったXYZ三次元座標系において、受力体100に対して、X軸正方向の力+Fx,Y軸正方向の力+Fy,Z軸正方向の力+Fz,X軸まわりの正方向のモーメント+Mx,Y軸まわりの正方向のモーメント+My,Z軸まわりの正方向のモーメント+Mzがそれぞれ作用した場合に、8個の主容量素子C1〜C8の静電容量値の変化を考えてみる(8個の副容量素子D1〜D8の静電容量値の変化については、§6で述べる)。
【0102】
図11は、図10に示す力検出装置において、受力体100にX軸正方向の力+Fxが作用したときの構造体の変形態様を示す側断面図である。同様に、図12は、Z軸正方向の力+Fzが作用したときの変形態様を示し、図13は、Y軸まわりの正方向のモーメント+Myが作用したときの変形態様を示している。
【0103】
一方、図14は、6つの力成分が作用したときの各主容量素子C1〜C8(括弧内の符号E1〜E8は、対応する主固定電極を示す)の静電容量値の変化の態様を示すテーブルであり、「0」は変化なし、「+Δ」は増加、「−Δ」は減少を示している。なお、このテーブルにおける各欄のΔの絶対値は、たとえ作用する力の絶対値が同一であっても、必ずしもすべてが同一の値をとるわけではなく、それぞれ各容量素子の形状や配置によって決定される所定の固有値になる。
【0104】
より具体的に言えば、形状や配置に対称性が確保された容量素子についての同一行の欄に記載されたΔの絶対値は互いに等しくなるが、すべての欄についてのΔの絶対値が互いに等しいわけではない。たとえば、第3行目(+Fzの行)におけるC1〜C8の各欄に示すΔの絶対値は、これらの容量素子の形状や配置に対称性が確保されているため互いに等しくなるが、同じC1の欄のΔであっても、たとえば、第2行目の「+Δ」(力+Fyが作用したときの容量値変化分)と、第3行目の「−Δ」(力+Fzが作用したときの容量値変化分)とでは、作用した力+Fy,+Fzの絶対値が同一であったとしても、変化分Δの絶対値は異なる。
【0105】
このように、本願のテーブルに示されている符号「Δ」は、特定の値を示すものではなく、「主容量素子に生じる容量値変化」を示す符号ということになる。もっとも、図9に示すように、各固定電極が、X軸およびY軸を対称軸とした幾何学的な対称性をもつ形状および配置を採る場合は、図14のテーブルの各欄における「Δ」の値は、幾何学的条件が同一となる他のいずれかの欄の「Δ」の値と等しくなる。
【0106】
続いて、受力体100に6つの力成分が作用した場合に、各主容量素子C1〜C8の静電容量値が、図14のテーブルに示すように変化する理由を説明しよう。
【0107】
まず、受力体100に対して、X軸正方向の力+Fxが作用すると、図11に示されているように、各柱状体T1〜T4は、いずれも図の右方向(X軸正方向)に傾斜することになる(図2(b) に対応する変形態様)。このため、共通変位電極として機能する下端側肉薄部215,225,235,245は、いずれも、図における右側半分の部分は図の下方へと変形し、左側半分の部分は図の上方へと変形する。
【0108】
したがって、図9の平面図を参照すれば、下端側肉薄部が接近してくる右側半分の部分に配置されている固定電極E5,E7については、対向電極との間の距離が縮まるが、下端側肉薄部が遠ざかる左側半分の部分に配置されている固定電極E6,E8については、対向電極との間の距離が広がる。すなわち、容量素子C5,C7の電極間隔は狭まり、静電容量値が増加するのに対して、容量素子C6,C8の電極間隔は広がり、静電容量値が減少することになる。よって、図14のテーブルの「+Fx」の行におけるC5,C7の欄は「+Δ」、C6,C8の欄は「−Δ」になる。
【0109】
このとき、固定電極E1,E2,E3,E4と、その上方に位置する共通変位電極との間の距離は、その一部分(右側半分の部分)は縮まるが、別な一部分(左側半分の部分)は広がるため、トータルでは静電容量値の変化は生じない。図14のテーブルの第1行目(+Fxの行)は、各容量素子C1〜C8についてのこのような静電容量値の変化を示している。
【0110】
逆に、X軸負方向の力−Fxが作用すると、各柱状体T1〜T4は、いずれも図11に示す例とは反対の左方向(X軸負方向)に傾斜することになるので、静電容量値の増減変化の関係が逆転し、図14のテーブルの第1行目(+Fxの行)とは「+」と「−」とが逆転した結果が得られることになる。
【0111】
一方、受力体100に対して、Y軸正方向の力+Fyが作用した場合は、上述した力+Fxが作用した場合の変化態様を、上面からみて90°回転させた現象が起こることになる。すなわち、容量素子C1,C3の電極間隔は狭まり、静電容量値が増加するのに対して、容量素子C2,C4の電極間隔は広がり、静電容量値が減少することがわかる。容量素子C5〜C8については、電極間隔は一部は広がり、一部は狭まるため、トータルでは静電容量値の変化は生じない。図14のテーブルの第2行目(+Fyの行)は、各容量素子C1〜C8についてのこのような静電容量値の変化を示している。逆に、Y軸負方向の力−Fyが作用した場合は、静電容量値の増減変化の関係が逆転し、「+」と「−」とが逆転した結果が得られることになる。
【0112】
また、受力体100に対して、Z軸正方向の力+Fzが作用すると、図12に示されているように、各柱状体T1〜T4は、いずれも支持基板300の上面に対して引っ張り力を作用させることになるので、各容量素子C1〜C8の電極間隔は広がり、静電容量値は減少する。図14のテーブルの第3行目(+Fzの行)は、このような変化を示している。逆に、受力体100に対して、Z軸負方向の力−Fzが作用すると、各柱状体T1〜T4は、いずれも支持基板300の上面に対して押圧力を作用させることになるので、各容量素子C1〜C8の電極間隔は狭まり、静電容量値は増加する。したがって、図14のテーブルの第3行目(+Fzの行)に示された結果に対して、「+」と「−」とが逆転した結果が得られることになる。
【0113】
次に、受力体100に対して、モーメントが作用した場合を考えてみよう。図13には、受力体100にY軸まわりの正方向のモーメント+Myが作用した場合の変化態様が示されている。すなわち、柱状体T1から支持基板300に対しては下方への押圧力−fzが加わり、柱状体T2から支持基板300に対しては上方への引っ張り力+fzが加わっている。したがって、図9の平面図を参照すれば、容量素子C1,C2の電極間隔は狭まり、静電容量値は増加する。一方、容量素子C3,C4の電極間隔は広がり、静電容量値は減少する。図14のテーブルの第5行目(+Myの行)は、各容量素子C1〜C8についてのこのような静電容量値の変化を示している。逆に、Y軸まわりの負方向のモーメント−Myが作用すると、静電容量値の増減変化の関係が逆転し、「+」と「−」とが逆転した結果が得られることになる。
【0114】
また、受力体100にX軸まわりの正方向のモーメント+Mxが作用した場合は、上述したモーメント+Myが作用した場合の変化態様を、上面からみて90°回転させた現象が起こることになる。すなわち、柱状体T4から支持基板300に対しては下方への押圧力−fzが加わり、柱状体T3から支持基板300に対しては上方への引っ張り力+fzが加わっている。したがって、容量素子C7,C8の電極間隔は狭まり、静電容量値は増加する。一方、容量素子C5,C6の電極間隔は広がり、静電容量値は減少する。図14のテーブルの第4行目(+Mxの行)は、各容量素子C1〜C8についてのこのような静電容量値の変化を示している。逆に、X軸まわりの負方向のモーメント−Mxが作用すると、静電容量値の増減変化の関係が逆転し、「+」と「−」とが逆転した結果が得られることになる。
【0115】
最後に、受力体100に対して、Z軸まわりのモーメントMzが作用した場合を考えてみる。まず、図9を参照しながら、受力体100にZ軸まわりの正方向のモーメント+Mz(図9の平面図上では、反時計まわりのモーメントになる)が加わった場合、4本の柱状体T1〜T4がどの方向に傾斜するかを考えてみよう。
【0116】
この場合、第1の柱状体T1(図の固定電極E1,E2の上に配置されている)は、図9における上方に傾斜し、容量素子C1の電極間隔が狭まり静電容量値が増加し、容量素子C2の電極間隔が広まり静電容量値が減少する。第2の柱状体T2(図の固定電極E3,E4の上に配置されている)は、図9における下方に傾斜し、容量素子C4の電極間隔が狭まり静電容量値が増加し、容量素子C3の電極間隔が広まり静電容量値が減少する。第3の柱状体T3(図の固定電極E5,E6の上に配置されている)は、図9における左方に傾斜し、容量素子C6の電極間隔が狭まり静電容量値が増加し、容量素子C5の電極間隔が広まり静電容量値が減少する。第4の柱状体T4(図の固定電極E7,E8の上に配置されている)は、図9における右方に傾斜し、容量素子C7の電極間隔が狭まり静電容量値が増加し、容量素子C8の電極間隔が広まり静電容量値が減少する。
【0117】
結局、受力体100にZ軸まわりの正方向のモーメント+Mzが作用した場合は、図14の第6行目に示すような増減結果が得られることになる。また、受力体100にZ軸まわりの負方向のモーメント−Mzが作用した場合は、静電容量値の増減変化の関係が逆転し、「+」と「−」とが逆転した結果が得られることになる。
【0118】
この図14のテーブルに示すような結果が得られることを踏まえると、検出回路30として、8組の主容量素子C1〜C8の静電容量値(ここでは、静電容量の値自身も、同じ符号C1〜C8で示すことにする)に基づいて、図15に示す式に基づく演算を行う回路を用意しておけば、Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzの6成分を得ることができる。
【0119】
たとえば、図15に示すFx=C5−C6+C7−C8なる式は、図14のテーブルの第1行目(+Fxの行)の結果を踏まえたものである。ここで、差分(C5−C6)は、第3のセンサS3によって検知された柱状体T3のX軸方向に関する傾斜度を示し、差分(C7−C8)は、第4のセンサS4によって検知された柱状体T4のX軸方向に関する傾斜度を示している。したがって、上式は、第3および第4のセンサS3,S4によって検知された各柱状体T3,T4のX軸方向に関する傾斜度の和に基づいて、受力体100に作用した力のX軸方向成分Fxが検出できることを意味している。これは、図2(b) に示す検出原理に基づくものである。
【0120】
また、図15に示すFy=C1−C2+C3−C4なる式は、図14のテーブルの第2行目(+Fyの行)の結果を踏まえたものである。ここで、差分(C1−C2)は、第1のセンサS1によって検知された柱状体T1のY軸方向に関する傾斜度を示し、差分(C3−C4)は、第2のセンサS2によって検知された柱状体T2のY軸方向に関する傾斜度を示している。したがって、上式は、第1および第2のセンサS1,S2によって検知された各柱状体T1,T2のY軸方向に関する傾斜度の和に基づいて、受力体100に作用した力のY軸方向成分Fyが検出できることを意味している。これも、図2(b) に示す検出原理に基づくものである。
【0121】
更に、図15に示すFz=−(C1+C2+C3+C4+C5+C6+C7+C8)なる式は、図14のテーブルの第3行目(+Fzの行)の結果を踏まえたものであり、第1〜第4のセンサS1〜S4によって検知された各柱状体T1〜T4のZ軸方向に関する力の和に基づいて、受力体100に作用した力のZ軸方向成分Fzが検出できることを意味している。先頭のマイナス符号は、Z軸方向のとり方によるものである。
【0122】
一方、図15に示すMx=−C5−C6+C7+C8なる式は、図14のテーブルの第4行目(+Mxの行)の結果を踏まえたものである。ここで、−C5−C6は、第3のセンサS3によって検知された、柱状体T3から加えられたZ軸方向に関する力を示し、C7+C8は、第4のセンサS4によって検知された、柱状体T4から加えられたZ軸方向に関する力を示す。したがって、上式は、第3のセンサS3によって検知された第3の柱状体T3のZ軸方向に関する力と、第4のセンサS4によって検知された第4の柱状体T4のZ軸方向に関する力と、の差に基づいて、受力体100に作用した力のX軸まわりのモーメントMxが検出できることを意味している。
【0123】
また、図15に示すMy=C1+C2−C3−C4なる式は、図14のテーブルの第5行目(+Myの行)の結果を踏まえたものである。ここで、C1+C2は、第1のセンサS3によって検知された、柱状体T1から加えられたZ軸方向に関する力を示し、−C3−C4は、第2のセンサS2によって検知された、柱状体T2から加えられたZ軸方向に関する力を示す。したがって、上式は、第1のセンサS1によって検知された第1の柱状体T1のZ軸方向に関する力と、第2のセンサS2によって検知された第2の柱状体T2のZ軸方向に関する力と、の差に基づいて、受力体100に作用した力のY軸まわりのモーメントMyが検出できることを意味している。これは、図2(c) に示す検出原理に基づくものである。
【0124】
最後に、図15に示すMz=C1−C2−C3+C4−C5+C6+C7−C8なる式は、図14のテーブルの第6行目(+Mzの行)の結果を踏まえたものである。ここで、差分(C1−C2)は、第1のセンサS1によって検知された柱状体T1のY軸方向に関する傾斜度を示し、差分(−C3+C4)は、第2のセンサS2によって検知された柱状体T2のY軸方向に関する傾斜度を示し、差分(−C5+C6)は、第3のセンサS3によって検知された柱状体T3のX軸方向に関する傾斜度を示し、差分(C7−C8)は、第4のセンサS4によって検知された柱状体T4のX軸方向に関する傾斜度を示している。
【0125】
このように、1つの力検出装置でありながら、Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzの6成分を得ることができる装置は、産業上、極めて有用である。ロボットや産業機械の動作制御などへの用途では、力とモーメントとをはっきり区別して検出することが可能な力検出装置の需要が決して少なくない。ここに示す力検出装置は、正に、このような用途に適した装置ということができる。たとえば、図10に示す力検出装置を、ロボットの腕と手首との関節部分として利用するのであれば、支持基板300を腕側に取り付け、受力体100を手首側に取り付ければよい。そうすれば、腕に対して手首側に加えられた力およびモーメントを検出することが可能である。
【0126】
<<< §5. 他軸成分の干渉 >>>
§4では、図10に示す力検出装置において、8個の主容量素子C1〜C8のみを用いて、6つの力成分を検出する動作を説明した。このような検出原理自体は、既に、前掲の特許文献3に開示されている。
【0127】
この検出原理では、本来、他軸成分の干渉を受けることのない正確な検出値が得られるはずである。たとえば、図15に示すFx=C5−C6+C7−C8なる式を用いて得られる力Fxの検出値には、他軸成分は排除されるはずである。すなわち、図14のテーブルにおいて、力FyやモーメントMyが加わったときのC5〜C8の欄は、いずれも「0」であるから、上式によって得られる検出値Fxには、Fy,Myに起因する成分は含まれていない。一方、図14のテーブルにおいて、力FzやモーメントMx,Mzが加わったときのC5〜C8の欄は、「+Δ」もしくは「−Δ」であるが、各電極の幾何学的な対称性から、同一行に記載された「Δ」の絶対値は等しくなるので、Fx=C5−C6+C7−C8なる演算結果は0になる。結局、Fx=C5−C6+C7−C8なる式を用いて得られる値は、力Fxの成分のみを含むことになる。
【0128】
同様に、図15に示すFy=C1−C2+C3−C4なる式を用いて得られる値は、力Fyの成分のみを含むことになる。また、図15に示すFz=−(C1+C2+C3+C4+C5+C6+C7+C8)なる式を用いて得られる力Fzの検出値も、他軸成分を含まない値になる。すなわち、図14のテーブルにおいて、各電極の幾何学的な対称性から、同一行に記載された「Δ」の絶対値は等しいので、各行ごとにC1〜C8の総和をとると、Fzの行以外はすべて総和は0になる。これは、Fz=−(C1+C2+C3+C4+C5+C6+C7+C8)なる式を用いて得られる値が、力Fzの成分のみを含むことを意味する。
【0129】
次に、図15に示すMx=−C5−C6+C7+C8なる式を用いて得られるモーメントMxの検出値について考えてみる。図14のテーブルにおいて、力FyやモーメントMyが加わったときのC5〜C8の欄は、いずれも「0」であるから、上式によって得られる検出値Mxには、Fy,Myに起因する成分は含まれていない。一方、図14のテーブルにおいて、力Fx,FzやモーメントMzが加わったときのC5〜C8の欄は、「+Δ」もしくは「−Δ」であるが、各電極の幾何学的な対称性から、同一行に記載された「Δ」の絶対値は等しくなるので、Mx=−C5−C6+C7+C8なる演算結果は0になる。結局、Mx=−C5−C6+C7+C8なる式を用いて得られる値は、モーメントMxの成分のみを含むことになる。
【0130】
同様に、図15に示すMy=C1+C2−C3−C4なる式を用いて得られる値は、モーメントMyの成分のみを含むことになる。また、図15に示すMz=C1−C2−C3+C4−C5+C6+C7−C8なる式を用いて得られるモーメントMzの検出値も、他軸成分を含まない値になる。すなわち、図14のテーブルにおいて、各電極の幾何学的な対称性から、同一行に記載された「Δ」の絶対値は等しいので、各行ごとに上式に基づく演算を行うと、Mzの行以外はすべて0になる。これは、Mz=C1−C2−C3+C4−C5+C6+C7−C8なる式を用いて得られる値が、モーメントMzの成分のみを含むことを意味する。
【0131】
しかしながら、実際には、§4で述べた検出動作では、他軸成分の干渉を完全に排除した正確な検出を行うことはできない。図16は、図14および図15に示す原理に基づく検出を行った場合に、X軸まわりのモーメントMxによるY軸方向の力Fyへの他軸干渉が生じる測定結果を示すグラフである。すなわち、このグラフは、図10に示す力検出装置を試作し、受力体100に対して、X軸まわりのモーメントMxのみを作用させたときに、Mx=−C5−C6+C7+C8なる演算式に基づく演算で得られる検出値V(Mx)およびFy=C1−C2+C3−C4なる演算式に基づく演算で得られる検出値V(Fy)を示している。実際の試作品では、各容量素子の静電容量値を電圧値として検出し、検出した電圧値の加減算の結果を各検出値としているため、グラフに示す検出値V(Mx)およびV(Fy)は、いずれも電圧値として得られた値である。
【0132】
図に実線のグラフで示すとおり、作用させたモーメントMxの値を増減させると、モーメントMxの検出値V(Mx)もこれに比例して増減している。これは、モーメントMxに関しては、正しい検出値が得られていることを示している。ところが、図に破線のグラフで示すとおり、力Fyの検出値V(Fy)も、作用させたモーメントMxの値に比例して増減している。本来であれば、モーメントMxのみを作用させた場合、力Fyの検出値V(Fy)は0を維持しなければならない。結局、§4で述べた検出動作では、力Fyの検出値に、モーメントMxの成分が含まれてしまうことになる。
【0133】
もちろん、実際には、力Fyのみを作用させたときに得られる検出値V(Fy)の値に比べて、モーメントMxのみを作用させたときに得られる検出値V(Fy)の値は小さいので、図16に破線で示す検出値V(Fy)を、力Fyの検出に関する誤差成分として取り扱うことにすれば、厳密な検出を必要としない用途では支障は生じない。しかしながら、モーメント成分と力成分とを厳密に区別した高精度の検出値を必要とする用途へ利用するには問題となる。同様の問題は、力FxとモーメントMyとの間にも生じる。すなわち、§4で述べた検出動作では、力Fxの検出値に、モーメントMyの成分が含まれてしまう。
【0134】
本願発明者は、図16の破線のグラフに示すように、力Fyの検出値に、モーメントMxの成分が含まれてしまう原因を探求した。その結果、図14に示すテーブルが、厳密には正しいテーブルではなく、各容量素子C1〜C8の静電容量値の増減は、厳密には、図17に示すテーブルのようになることを見出した。
【0135】
図17のテーブルにおいて、太線で囲われた欄は、図14のテーブルとの相違部分である。すなわち、太線で囲われた8個の欄の内容は、図14のテーブルでは「0」となっていたが、厳密には「0」ではなく、「+δ」もしくは「−δ」とすべきものである。ここでは、まず、図17のテーブルの第5行目(+Myの行)の結果が得られる理由を説明しよう。
【0136】
図10の力検出装置に、Y軸まわりのモーメント+Myが作用すると、装置を構成する構造体が、図13に示すように変形することは既に述べたとおりである。その結果、柱状体T1から支持基板300に対しては下方への押圧力−fzが加わり、柱状体T2から支持基板300に対しては上方への引っ張り力+fzが加わる。したがって、容量素子C1,C2の電極間隔は狭まり、静電容量値は増加し、容量素子C3,C4の電極間隔は広がり、静電容量値は減少する。よって、図17のテーブルの第5行目(+Myの行)に示すとおり、容量素子C1,C2の静電容量値は「+Δ」となり、容量素子C3,C4の静電容量値は「−Δ」となる。
【0137】
§4の説明では、このとき、柱状体T3,T4は傾斜せず、容量素子C5〜C8の静電容量値には変化は生じないものとして取り扱った。これは、図11に示すように力+Fxが加えられると、4本の柱状体T1〜T4がいずれもX軸正方向に傾斜するが、図13に示すようにモーメントMyが加えられると、4本の柱状体T1〜T4は、いずれも傾斜せず、柱状体T1は下方へ移動し、柱状体T2は上方へ移動し、柱状体T3,T4の位置は変化しない、と考えたためである。たしかに、4本の柱状体T1〜T4の大まかな動きを捉えると、このように考えても誤りではない。
【0138】
しかしながら、厳密には、Y軸まわりのモーメント+Myが作用すると、柱状体T3,T4には、わずかながらX軸正方向への傾斜が生じるのである。もちろん、傾斜角度は、図11に示すような力+Fxが加えられたときに生じる角度に比べると小さいため、静電容量値の変化も小さい。図17のテーブルにおいて、太線で囲った欄に示されている符号「δ」は、他の欄に示されている符号「Δ」と同様に、「主容量素子に生じる容量値変化」を示す符号ではあるが、静電容量値の変化量としては小さいことを示している。以下、この符号「δ」で示す変化量成分を「他軸干渉成分」と呼ぶことにする。
【0139】
図17のテーブルの第5行目(+Myの行)の容量素子C5,C7の欄に「+δ」と記載され、容量素子C6,C8の欄に「−δ」と記載されているが、これは、Y軸まわりのモーメント+Myが作用することにより、柱状体T3,T4がX軸正方向へ若干傾斜するため、容量素子C5,C7の電極間隔がわずかながら縮み、静電容量値がわずかながら増加し、容量素子C6,C8の電極間隔がわずかながら広がり、静電容量値がわずかながら減少することを示している。
【0140】
同様に、図17のテーブルの第4行目(+Mxの行)の容量素子C2,C4の欄に「+δ」と記載され、容量素子C1,C3の欄に「−δ」と記載されているが、これは、X軸まわりのモーメント+Mxが作用することにより、柱状体T1,T2がY軸負方向へ若干傾斜するため、容量素子C1,C3の電極間隔がわずかながら広がり、静電容量値がわずかながら減少し、容量素子C2,C4の電極間隔がわずかながら縮み、静電容量値がわずかながら増加することを示している。
【0141】
図16の破線のグラフに示すように、力Fyの検出値に、モーメントMxの成分が含まれてしまう原因は、図17のテーブルの第4行目(+Mxの行)の内容に基づいて、Fy=C1−C2+C3−C4なる演算を行ったためである。図17のテーブルにおいても、各電極の幾何学的な対称性から、同一行に記載された「δ」の絶対値は等しいので、モーメントMxが作用しているとき、Fy=C1−C2+C3−C4=−4δになる。図16の破線のグラフに示す検出値V(Fy)は、この−4δ(他軸干渉成分)に対応する検出値ということになる。
【0142】
同様に、図17のテーブルの第5行目(+Myの行)の内容に基づいて、Fx=C5−C6+C7−C8なる演算を行うと、やはり同一行に記載された「δ」の絶対値は等しいので、Fx=+4δ(他軸干渉成分)になる。これが、力Fxの検出値に、モーメントMyの成分が含まれてしまう原因である。
【0143】
<<< §6. 副容量素子による補正原理 >>>
本発明の主眼は、§5で述べた理由によって生じる他軸成分の干渉を、副容量素子によって補正することにより、他軸成分の干渉を排除した正確な検出を行う点にある。別言すれば、§5で述べた理由によって主容量素子C1〜C8の静電容量値に生じる他軸干渉成分δを、副容量素子D1〜D8の静電容量値の変化分によって相殺する点にある。以下、この補正原理を説明する。
【0144】
図18は、図9に示されている16枚の電極の拡大平面図である。既に述べたとおり、8枚の主固定電極E1〜E8は、8個の主容量素子C1〜C8を構成する電極であり、8枚の副固定電極F1〜F8は、8個の副容量素子D1〜D8を構成する電極である。図に括弧書きで示されているC1〜C8およびD1〜D8は、各電極によって構成される容量素子を示す符号である。
【0145】
ここで、8個の副容量素子D1〜D8は、それぞれ8個の主容量素子C1〜C8の静電容量値に対する補正機能を有している。すなわち、主容量素子C1には副容量素子D1が対応し、主容量素子C2には副容量素子D2が対応し、... という具合に、1つの主容量素子に1つの副容量素子が対応づけられ、各容量素子は常に主副がペアの状態で取り扱われる。なお、図18では、各固定電極に8種類の異なるハッチングを施して示すが、これはペアを構成する電極に同一のハッチングを施し、対応関係を明瞭にするための便宜である。たとえば、主固定電極E1と副固定電極F1には、同一のハッチングが施されているが、これは、主固定電極E1によって構成される主容量素子C1と、副固定電極F1によって構成される副容量素子D1とが対応し、ペアを組むことを示している。
【0146】
さて、§5では、8枚の主固定電極E1〜E8によって構成される8個の主容量素子C1〜C8について、受力体100に6種類の力成分が加わったときの静電容量値の正確な変化態様が、図17のテーブルに示すようになることを説明した。そこで、ここでは、図18に示す8枚の副固定電極F1〜F8によって構成される8個の副容量素子D1〜D8について、受力体100に6種類の力成分が加わったときの静電容量値の正確な変化態様が、どのようになるかを検討してみよう。
【0147】
図19は、図10に示す力検出装置において、受力体100に各力成分が作用したときの各副容量素子D1〜D8(括弧内の符号F1〜F8は、対応する副固定電極を示す)の静電容量値の変化の態様を示すテーブルである。ここで、太線で囲った欄は、副容量素子D1〜D8の静電容量値に変化が生じる欄であり、符号「ε」は、「副容量素子に生じる容量値変化」を示す符号である。この符号「ε」は、符号「Δ」や符号「δ」と同様に、特定の値を示すものではない。ただ、図9に示すように、各固定電極が、X軸およびY軸を対称軸とした幾何学的な対称性をもつ形状および配置を採る場合は、図19のテーブルの各欄における「ε」の値は、幾何学的条件が同一となる他のいずれかの欄の「ε」の値と等しくなる。
【0148】
まず、受力体100に対して、X軸正方向の力+Fxが作用した場合の各副容量素子D1〜D8の静電容量値の変化を考えてみよう。この場合、図11に示されているように、各柱状体T1〜T4は、いずれも図の右方向(X軸正方向)に傾斜することになる(図2(b) に対応する変形態様)。このため、共通変位電極として機能する下端側肉薄部215,225,235,245は、いずれも、図における右側半分の部分は図の下方へと変位し、左側半分の部分は図の上方へと変位する。
【0149】
ここで、図18の平面図を参照すれば、各副固定電極F1〜F8の形状は、いずれも左右対称となっていることがわかる。したがって、これら各副固定電極F1〜F8と、その上方に位置する共通変位電極との間の距離は、その一部分(右側半分の部分)は縮まるが、別な一部分(左側半分の部分)は広がるため、トータルでは静電容量値の変化は生じない。図19のテーブルの第1行目(+Fxの行)の各欄が「0」となっているのは、このためである。X軸負方向の力−Fxが作用した場合も、同様に各欄は「0」になる。
【0150】
一方、受力体100に対して、Y軸正方向の力+Fyが作用した場合は、上述した力+Fxが作用した場合の変化態様を、上面からみて90°回転させた現象が起こることになるので、図19のテーブルの第2行目(+Fyの行)に示すとおり、各欄は、やはり「0」になる。Y軸負方向の力−Fyが作用した場合も同様である。
【0151】
また、受力体100に対して、Z軸正方向の力+Fzが作用すると、図12に示されているように、各柱状体T1〜T4は、いずれも支持基板300の上面に対して引っ張り力を作用させることになるので、各容量素子D1〜D8の電極間隔は広がり、静電容量値は減少する。図19のテーブルの第3行目(+Fzの行)に示す「−ε」は、このような静電容量値の減少を示している。逆に、受力体100に対して、Z軸負方向の力−Fzが作用すると、各柱状体T1〜T4は、いずれも支持基板300の上面に対して押圧力を作用させることになるので、各容量素子D1〜D8の電極間隔は狭まり、静電容量値は増加する。したがって、図19のテーブルの第3行目(+Fzの行)の各欄は「+ε」になる。
【0152】
なお、上述したとおり、「ε」は、特定の固有値を示すものではないので、図19のテーブルの第3行目(+Fzの行)に示す「−ε」の値は、必ずしもすべてが同一の値というわけではない。図18の平面図を見ればわかるとおり、副固定電極F1,F2,F5,F8は円形の電極であるのに対し、副固定電極F3,F4,F6,F7は円環状の電極であり、両者は形状や面積が異なる。したがって、図19のテーブルの第3行目(+Fzの行)に示すD1,D2,D5,D8の各欄に示す「−ε」の値は相互に等しく、D3,D4,D6,D7の各欄に示す「−ε」の値は相互に等しくなるが、前者と後者とでは値は異なる。
【0153】
次に、受力体100に対して、モーメントが作用した場合を考えてみる。図13に示されているように、受力体100にY軸まわりの正方向のモーメント+Myが作用すると、柱状体T1から支持基板300に対しては下方への押圧力−fzが加わり、柱状体T2から支持基板300に対しては上方への引っ張り力+fzが加わる。したがって、図18の平面図を参照すれば、容量素子D6,D8の電極間隔は狭まり、静電容量値は増加する。これに対して、容量素子D5,D7の電極間隔は広がり、静電容量値は減少する。図19のテーブルの第5行目(+Myの行)におけるD5〜D8の欄の「+ε」もしくは「−ε」は、このような静電容量値の増減を示している。
【0154】
このようにY軸まわりの正方向のモーメント+Myが作用したとき、柱状体T3,T4は、X軸正方向に若干傾斜することになる。ただ、Y軸上に配置されている容量素子D1〜D4については、その一部分(右側半分の部分)の電極間隔は縮まるが、別な一部分(左側半分の部分)の電極間隔は広がるため、トータルでは静電容量値の変化は生じない。図19のテーブルの第5行目(+Myの行)におけるD1〜D4の各欄が「0」となっているのは、このためである。逆に、Y軸まわりの負方向のモーメント−Myが作用すると、静電容量値の増減変化の関係が逆転し、図19のテーブルの第5行目には、「+」と「−」とが逆転した結果が得られることになる。
【0155】
また、受力体100にX軸まわりの正方向のモーメント+Mxが作用した場合は、上述したモーメント+Myが作用した場合の変化態様を、上面からみて90°回転させた現象が起こることになる。すなわち、柱状体T4から支持基板300に対しては下方への押圧力−fzが加わり、柱状体T3から支持基板300に対しては上方への引っ張り力+fzが加わっている。したがって、容量素子D1,D3の電極間隔は狭まり、静電容量値は増加する。これに対して、容量素子D2,D4の電極間隔は広がり、静電容量値は減少する。図19のテーブルの第4行目(+Mxの行)におけるD1〜D4の欄の「+ε」もしくは「−ε」は、このような静電容量値の増減を示している。
【0156】
このようにX軸まわりの正方向のモーメント+Mxが作用したとき、柱状体T1,T2は、Y軸負方向に若干傾斜することになる。ただ、X軸上に配置されている容量素子D5〜D8については、その一部分(図18における上側半分の部分)の電極間隔は広がるが、別な一部分(図18における下側半分の部分)の電極間隔は縮まるため、トータルでは静電容量値の変化は生じない。図19のテーブルの第4行目(+Mxの行)におけるD5〜D8の各欄が「0」となっているのは、このためである。逆に、X軸まわりの負方向のモーメント−Mxが作用すると、静電容量値の増減変化の関係が逆転し、図19のテーブルの第4行目には、「+」と「−」とが逆転した結果が得られることになる。
【0157】
最後に、受力体100に対して、Z軸まわりのモーメントMzが作用した場合を考えてみる。受力体100にZ軸まわりの正方向のモーメント+Mzもしくは負方向のモーメント−Mzが加わると、4本の柱状体T1〜T4が、図18における上下左右のいずれかに傾斜することになる。しかしながら、いずれの方向に傾斜したとしても、容量素子D1〜D8の電極間隔は、その一部分は広がり、他の一部分は縮まることになるので、トータルでは静電容量値の変化は生じない。図19のテーブルの第6行目(+Mzの行)におけるD1〜D8の各欄が「0」となっているのは、このためである。
【0158】
結局、図10に示す力検出装置において、受力体100に各力成分が作用したとき、主容量素子C1〜C8の静電容量値は、図17のテーブルに示すように変化し、副容量素子D1〜D8の静電容量値は、図19のテーブルに示すように変化することがわかる。ここで、両テーブルの第4行目(+Mxの行)のC1〜C4,D1〜D4の各欄と第5行目(+Myの行)のC5〜C8,D5〜D8の各欄とを相互に比較すると、符号が相補的になっていることがわかる。すなわち、前者で「−δ」となっている場合、後者では「+ε」となっており、前者で「+δ」となっている場合、後者では「−ε」となっている。これは、前者の±δを、後者の±εで相殺可能であることを意味している。
【0159】
図17のテーブルに示す値±δの絶対値は(もちろん、±Δの絶対値もそうであるが)、主容量素子C1〜C8の構成によって左右される量である。具体的には、各主容量素子を構成する一対の電極の電極間隔(何ら力が作用していない状態での電極間隔)を小さく設定すればするほど、絶対値δは大きくなる。また、これら一対の電極の面積を大きく設定すればするほど、絶対値δは大きくなる。同様に、図19のテーブルに示す値±εの絶対値は、副容量素子D1〜D8の構成によって左右される量である。具体的には、各副容量素子を構成する一対の電極の電極間隔(何ら力が作用していない状態での電極間隔)を小さく設定すればするほど、絶対値εは大きくなる。また、これら一対の電極の面積を大きく設定すればするほど、絶対値εは大きくなる。
【0160】
そこで、主容量素子C1〜C8の構成と副容量素子D1〜D8の構成とをうまく設定してやれば、図17のテーブルにおける他軸干渉成分±δを、図19のテーブルにおける±εで相殺することができる。これが、本発明の特徴となる副容量素子による補正原理である。
【0161】
この補正原理を、図20のテーブルを参照しながら説明しよう。この図20に示すテーブルは、図17に示す8個の主容量素子C1〜C8についての静電容量値の変化の態様を示す各欄と、図19に示す8個の副容量素子D1〜D8についての静電容量値の変化の態様を示す各欄と、の和を示すテーブルである。ここで、太線で囲った欄は、副容量素子D1〜D8の静電容量値に変化が生じる欄である。別言すれば、図20において、太線で囲った欄以外の各欄は、図17のテーブルと全く同じ内容になる。
【0162】
いま、この図20のテーブルにおいて、各欄内の絶対値δと絶対値εとが等しいと仮定してみよう。既に述べたとおり、このテーブル中の「δ」や「ε」は、特定の固有値を示しているわけではなく、必ずしもすべてが同一の値というわけではないが、個々の欄ごとに、それぞれδ=εが成り立っているとすれば、「−δ+ε」や「+δ−ε」と記載されている欄は「0」に置き換えることができる。すなわち、図20のテーブルの第4行目(+Mxの行)の左側4欄はいずれも「0」になり、第5行目(+Myの行)の右側4欄はいずれも「0」になる。
【0163】
結局、図20のテーブルは、第3行目(+Fzの行)を除いて、図14のテーブルと等価になる。第3行目の各欄については、図14のテーブルでは「−Δ」となっていたのが、図20のテーブルでは「−(Δ+ε)」に置き換わっているが、これは絶対値が若干変わるだけである。すなわち、力Fzの検出値のスケーリングファクターが若干変わるだけであり、本質的には、何ら支障は生じない。
【0164】
そうすると、8個の主容量素子C1〜C8の静電容量値(同じ符号C1〜C8を用いて示す)を用いた図15に示す演算式の代わりに、更に、8個の副容量素子D1〜D8の静電容量値(同じ符号D1〜D8を用いて示す)を用いた図21に示す演算式を用いることにより、6つの力成分Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzの検出が可能になることがわかる。しかも、この図21に示す演算式を用いた場合、§5で述べた他軸干渉成分±δが、副容量素子D1〜D8に生じる変化分±εによって相殺されるため、力とモーメントを厳密に区別した正確な検出値が得られることになる。
【0165】
具体的には、図21の式によれば、力Fxは、Fx=(C5+D5)−(C6+D6)+(C7+D7)−(C8+D8)なる式によって得られ、力Fyは、Fy=(C1+D1)−(C2+D2)+(C3+D3)−(C4+D4)なる式によって得られる。また、モーメントMzは、Mz=(C1+D1)−(C2+D2)−(C3+D3)+(C4+D4)−(C5+D5)+(C6+D6)+(C7+D7)−(C8+D8)なる式によって得られる。その理由は、図20のテーブルの第1行目(+Fxの行)、第2行目(+Fyの行)、第6行目(+Mzの行)の内容が、図14のテーブルの各行の内容と同一であることから、もはや説明は要さないであろう。
【0166】
一方、図21の式によれば、力Fzは、Fz=−((C1+D1)+(C2+D2)+(C3+D3)+(C4+D4)+(C5+D5)+(C6+D6)+(C7+D7)+(C8+D8))なる式によって得られる。図15に示すFzの式によって得られる力Fzの値は、図14のテーブルの第3行目の8個の欄の内容の総和「−8Δ」として与えられるのに対して、図21に示すFzの式によって得られる力Fzの値は、図20のテーブルの第3行目の8個の欄の内容の総和「−8(Δ+ε)」として与えられることになるが、前述したとおり、「−8Δ」と「−8(Δ+ε)」との相違は、単なる検出値のスケーリングの問題なので、実用上、何ら支障は生じない。
【0167】
なお、力Fzを、Fz=−((C1+D1)+(C2+D2)+(C3+D3)+(C4+D4))なる式や、Fz=−((C5+D5)+(C6+D6)+(C7+D7)+(C8+D8))なる式によって求めることも可能である。ただ、実用上は、より高い検出精度が得られると期待されるFz=−((C1+D1)+(C2+D2)+(C3+D3)+(C4+D4)+(C5+D5)+(C6+D6)+(C7+D7)+(C8+D8))なる式によって求めるのが好ましい。
【0168】
一方、図21の式によれば、モーメントMxは、Mx=−(C5+D5)−(C6+D6)+(C7+D7)+(C8+D8)なる式によって得られ、モーメントMyは、My=(C1+D1)+(C2+D2)−(C3+D3)−(C4+D4)なる式によって得られる。その理由は、上述したとおり、各欄内の絶対値δと絶対値εとが等しいと仮定すれば、図20のテーブルの第4行目(+Mxの行)の左側4欄はいずれも「0」になり、第5行目(+Myの行)の右側4欄はいずれも「0」になり、図20のテーブルの第4行目,第5行目の内容が、図14のテーブルの第4行目,第5行目の内容と同一になるためである。
【0169】
<<< §7. 容量素子の設計方法 >>>
図20のテーブルにおいて、各欄内の絶対値δと絶対値εとが等しくなるようにするには、第i番目(i=1〜8)の主容量素子Ciの構成と、これに対応する第i番目の副容量素子Diの構成とをうまく設定してやればよい。上述したとおり、容量素子の静電容量値は、これを構成する一対の電極の電極間隔および電極面積を変えることによって調整することができる。ただ、図10に示すような構造体の場合、容量素子の静電容量値を調整する方法としては、電極間距離を変える調整方法を採るよりも、電極面積を変える調整方法を採る方が簡単である。
【0170】
したがって、本発明に係る力検出装置を設計する場合、実用上は、まず、8枚の主固定電極E1〜E8の形状、サイズ、配置を決定した上で、これら主固定電極E1〜E8によって構成される主容量素子C1〜C8に生じる他軸干渉成分±δを相殺するための静電容量値の変化分±εが得られる副容量素子D1〜D8を構成する8枚の副固定電極F1〜F8の形状、サイズ、配置を決定する、という設計手法を採るのが好ましい。
【0171】
たとえば、図18に示すように、第1の柱状体11および第2の柱状体12の下端部近傍に設けられる4枚の主固定電極E1〜E4の形状、サイズ、配置が、図示のように決定されたものとしよう。この場合、4枚の副固定電極F1〜F4は、モーメントMxのみが作用した場合に、主容量素子C1〜C4に生じる静電容量値の変化分と絶対値が等しく符号が逆となる変化分が得られる副容量素子D1〜D4を構成するのに適した形状、サイズ、配置をもつ電極として定義される。同様に、第3の柱状体13および第4の柱状体14の下端部近傍に設けられる4枚の主固定電極E5〜E8の形状、サイズ、配置が、図示のように決定された場合、4枚の副固定電極F5〜F8は、モーメントMyのみが作用した場合に、主容量素子C5〜C8に生じる静電容量値の変化分と絶対値が等しく符号が逆となる変化分が得られる副容量素子D5〜D8を構成するのに適した形状、サイズ、配置をもつ電極として定義される。
【0172】
図22は、副固定電極F1〜F8の形状、サイズ、配置を決定するための実験方法の一例を示す側断面図である。図示されている装置は、試作品として実際に製造した図10に示す装置本体に、測定用治具400を取り付けたものである。この測定用治具400は、図示のとおり、接続部410、上蓋部420、側壁部430、フランジ部440からなり、装置本体の上半分をそっくりと覆うカバーを構成している。このような測定用治具400を取り付けて実験を行うのは、受力体100に対して、正確なモーメントを作用させるためである。
【0173】
既に述べたとおり、ここで述べる実施形態の場合、XYZ三次元座標系は、XY平面が、支持基板300の上面近傍に、支持基板300の上面に対して平行となるように位置し、上方を正とし下方を負とするZ軸が支持基板300の上面のほぼ中心位置を通るように定義される。より正確に言えば、XY平面が、4枚の下端側肉薄部215,225,235,245と支持基板300の上面との間に挟まれるように、XYZ三次元座標系の定義が行われている。これは、§3で述べたとおり、本願発明者は、XYZ三次元座標系のXY平面の位置を、容量素子を構成する一対の電極間の中心位置に設定するのが最も好ましいと考えているためである。このため、以下に示す実験も、このような位置に原点Oが定義されているという前提で行う場合を例にとって説明する。
【0174】
もっとも、既に述べたとおり、原点Oは概念的な位置であり、必ずしも厳密な定義を行う必要はない。実際は、支持基板300の中央付近の上面近傍の所定点に定義しておけば、実用上、本発明の効果は十分に得られる。したがって、たとえば、支持基板300の上面をXY平面とするXYZ三次元座標系を定義してもかまわない。この場合、得られた力検出装置は、そのようなXYZ三次元座標系における各座標軸に関する6成分の力を正確に検出する機能をもった装置ということになる。
【0175】
さて、図22に示すような測定用治具400を用いると、受力体100に対して、XYZ三次元座標系の各軸方向の力Fx,Fy,Fzおよび各軸まわりのモーメントMx,My,Mzを正確に作用させる実験が可能になる。たとえば、図のフランジ部440の右端の作用点P1にワイヤを取り付け、図の右方向に水平に引っ張れば、力成分+Fxを作用させることができる。逆に、フランジ部440の左端の作用点P2にワイヤを取り付け、図の左方向に水平に引っ張れば、力成分−Fxを作用させることができる。一方、Y軸方向の力成分+Fy,−Fyを作用させる場合は、図示されていないフランジ部440の手前側もしくは奥側の作用点を利用すればよい。これらの作用点は、XY平面上の位置にとられているので、作用させた各力成分は、X軸もしくはY軸方向の正確な力成分になる。
【0176】
また、上蓋部420の中心に位置する作用点P3にワイヤを取り付け、図の垂直上方に引っ張れば、力成分+Fzを作用させることができ、逆に、作用点P3の部分を、何らかの器具で図の垂直下方に押し込むようにすれば、力成分−Fzを作用させることができる。もちろん、複数の作用点を利用して、力Fx,Fy,Fzを作用させることも可能である。この場合、座標軸に関して対称性を有する位置に複数の作用点を設定すればよい。
【0177】
一方、受力体100に対して、各軸まわりのモーメントMx,My,Mzを作用させるには、座標軸に関して対称性を有する2つの作用点に相補的な力(偶力)を加えればよい。たとえば、Y軸まわりの正方向のモーメント+Myを作用させるには、作用点P1に取り付けたワイヤーを図の垂直下方に引っ張り、作用点P2に取り付けたワイヤーを図の垂直上方に引っ張るようにし、両ワイヤーを引く力の絶対値を等しくすればよい。もちろん、この場合、図示の寸法r1,r2(原点Oから作用点P1,P2までの距離)が互いに等しくなるようにしておく必要がある。ワイヤーを引く向きを左右で入れ換えれば、Y軸まわりの負方向のモーメント−Myを作用させることができる。
【0178】
同様に、X軸まわりのモーメント+Mx,−Mxを作用させる場合は、図示されていないフランジ部440の手前側もしくは奥側の作用点を利用し、一方を上方、他方を下方に引く相補的な力を加えればよい。また、Z軸まわりの正方向のモーメント+Mzを作用させる場合は、作用点P1に取り付けたワイヤーをXY平面に沿って図の奥方向に引っ張り、作用点P2に取り付けたワイヤーをXY平面に沿って図の手前方向に引っ張るようにすればよいし、Z軸まわりの負方向のモーメント−Mzを作用させる場合は、ワイヤーを引く向きを左右で入れ換えればよい。
【0179】
このような測定用治具400を用い、たとえば、図18に示すような8枚の主固定電極E1〜E8および8枚の副固定電極を備えた試作品について、X軸まわりのモーメント+Mxもしくは−Mxを作用させ、各主容量素子に生じる容量値変化分と、各副容量素子に生じる容量値変化分とを比較し、両者の絶対値が等しくなるように、各電極の面積を調整すればよい。たとえば、所定の大きさをもったモーメント+Mxを作用させたときに、主容量素子C1に生じた容量値変化分が−δであり、副容量素子D1に生じた容量値変化分が+εであり、δ>εであった場合、δ=εとなるまで、副固定電極F1の面積を大きくする修正を施せばよい。このような試作品を用いた試行錯誤を行うことにより、実用的な精度でδ=εを満たす主容量素子および副容量素子を設計することが可能である。
【0180】
以上、試作品を用いた実測により、主容量素子および副容量素子を構成する固定電極を設計する方法を説明したが、実測の代わりに、コンピュータシミュレーションによる設計を行うことも可能である。たとえば、有限要素法などの公知のコンピュータ解析法を利用すれば、物理的な実体をもつ試作品を作成する代わりに、コンピュータ上でのシミュレーションにより、実測と同等の結果を得ることができる。すなわち、図10に示す構造体各部の寸法や物理定数をパラメータとしてコンピュータに与えれば、受力体に所定の大きさをもったモーメント+Mxを作用させた場合の変形態様をシミュレートし、各容量素子に生じる静電容量値の変化分を演算によって求めることができる。実用上は、まず、このようなコンピュータシミュレーションによって、主容量素子および副容量素子を構成する固定電極を設計した後、必要に応じて、試作品による検証を行うようにすればよい。
【0181】
<<< §8. 検出回路の単純化 >>>
本発明に係る装置に用いられる検出回路は、各容量素子の静電容量値に基づいて、図21の各演算式を利用して、受力体に作用した力の所定方向成分を検出する機能を有している。この図21の各演算式は、(Ci+Di)なる項(但し、i=1〜8)の加算もしくは減算によって構成されており、これら各項は、第i番目の主容量素子の静電容量値Ciと第i番目の副容量素子の静電容量値Diとの和である。このような数値の和を求める演算は、アナログ加算器を用いて行うこともできるし、デジタル演算器を用いて行うこともできるが、「静電容量値の和」という物理的性質に着目すると、「電気的な並列接続」という単純な方法により、特別な演算器を用いることなしに、和を求めることができる。
【0182】
たとえば、2つの容量素子Ca,Cbについての静電容量値の和「Csum=Ca+Cb」を求める必要がある場合、個々の静電容量値Ca,Cbを電気的にアナログ値もしくはデジタル値として検出し、アナログ加算器やデジタル演算器を用いた演算により、Csumを得ることができる。しかしながら、2つの容量素子Ca,Cbの一方の電極同士を配線で接続し、他方の電極同士も配線で接続して、両者を並列接続した形にすれば、この並列接続された容量素子Cabについての静電容量値は、個々の静電容量値Ca,Cbの和「Csum=Ca+Cb」に等しくなる。
【0183】
このような方針に基づき、静電容量値の和を算出する対象となる複数の容量素子については、互いに電気的な並列接続がなされるような配線を施すことにより、検出回路30における和を算出する演算を省略することが可能になる。本発明を実施する場合、実用上、第i番目(但し、i=1〜8)の主容量素子と第i番目の副容量素子とを並列接続するのが極めて好ましい。
【0184】
具体的には、第1の主容量素子C1と第1の副容量素子D1とを相互に並列接続するための配線と、第2の主容量素子C2と第2の副容量素子D2とを相互に並列接続するための配線と、第3の主容量素子C3と第3の副容量素子D3とを相互に並列接続するための配線と、第4の主容量素子C4と第4の副容量素子D4とを相互に並列接続するための配線と、第5の主容量素子C5と第5の副容量素子D5とを相互に並列接続するための配線と、第6の主容量素子C6と第6の副容量素子D6とを相互に並列接続するための配線と、第7の主容量素子C7と第7の副容量素子D7とを相互に並列接続するための配線と、第8の主容量素子C8と第8の副容量素子D8とを相互に並列接続するための配線と、を設けるようにすればよい。
【0185】
そうすれば、検出回路は、図21の各演算式を利用して、受力体に作用した力の所定方向成分を検出する際に、第1の主容量素子C1と第1の副容量素子D1との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C1+D1」の値として用い、第2の主容量素子C2と第2の副容量素子D2との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C2+D2」の値として用い、第3の主容量素子C3と第3の副容量素子D3との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C3+D3」の値として用い、第4の主容量素子C4と第4の副容量素子D4との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C4+D4」の値として用い、第5の主容量素子C5と第5の副容量素子D5との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C5+D5」の値として用い、第6の主容量素子C6と第6の副容量素子D6との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C6+D6」の値として用い、第7の主容量素子C7と第7の副容量素子D7との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C7+D7」の値として用い、第8の主容量素子C8と第8の副容量素子D8との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C8+D8」の値として用いることができるので、これらの和を求める演算を省略することができる。
【0186】
図10に示す実施形態の場合、中間体200を金属などの導電性材料によって構成しておけば、各下端側肉薄部215,225,235,245が導電性をもった共通変位電極として機能し、16個の容量素子の変位電極がすべて、中間体200を介して電気的に導通した状態になる。したがって、一対の主副容量素子を並列接続するには、支持基板300側に形成された主固定電極E1〜E8と、副固定電極F1〜F8とについて、図23の平面図に示すような配線を施せばよい。
【0187】
図23に示す例では、支持基板300の上面に、電極E1/F1間、電極E2/F2間、電極E3/F3間、電極E4/F4間、電極E5/F5間、電極E6/F6間、電極E7/F7間、電極E8/F8間を接続するための配線がなされており、また、各電極E1〜E8に対しては、それぞれボンディングパッドB1〜B8への配線もなされている。したがって、たとえば、ボンディングパッドB1と、中間体200との間の静電容量値を検出する回路を設けておけば、静電容量値「C1+D1」の値を得ることができる。
【0188】
なお、図23に示す例では、支持基板300上に配線を通すため、円環状の副固定電極F3,F4,F7,F8の一部に切り欠き部を設けているが、切り欠き部の幅を小さく設定すれば、実質的な幾何学的対称性に大きな影響は及ばない。もちろん、切り欠き部を設けずに、支持基板300にスルーホールを形成し、裏面側で配線を行うようにしてもかまわない。
【0189】
<<< §9. その他の変形例 >>>
これまで、本発明を基本的実施形態について述べてきた。そもそも、本発明の基本的な発想は、前掲の特許文献3(特開2008−096229号公報)に記載された力検出装置において、図16のグラフに示すとおり、モーメントMxが力Fyの検出値に他軸成分として干渉し、同様に、モーメントMyが力Fxの検出値に他軸成分として干渉する現象を補正することを目的としてなされたものである。
【0190】
上記目的を達成するため、本発明では、力Fyの検出に用いる4個の主容量素子C1〜C4について、それぞれ4個の副容量素子D1〜D4を設け、モーメントMxの作用によって主容量素子C1〜C4に生じる他軸干渉成分δ(図17のテーブルの4行目)を、同じモーメントMxの作用によって副容量素子D1〜D4に生じる成分ε(図19のテーブルの4行目)によって相殺する構成を採る。また、力Fxの検出に用いる4個の主容量素子C5〜C8について、それぞれ4個の副容量素子D5〜D8を設け、モーメントMyの作用によって主容量素子C5〜C8に生じる他軸干渉成分δ(図17のテーブルの5行目)を、同じモーメントMyの作用によって副容量素子D5〜D8に生じる成分ε(図19のテーブルの5行目)によって相殺する構成を採る。
【0191】
このように、主容量素子の検出値に発生する他軸干渉成分δを、副容量素子の容量値εによって相殺する点が、本発明の本質的な特徴である。したがって、上記発想から逸脱しない範囲で、本発明は様々な変形態様で実施することができる。以下、本発明の変形例をいくつか述べておく。
【0192】
<9−1:柱状体の構成>
本発明に係る力検出装置は、受力体100と支持基板300とを4本の柱状体T1〜T4によって接続することを前提とする。しかも、この4本の柱状体T1〜T4は、その中心軸がいずれもZ軸に平行になるように配置されており、第1の柱状体T1は、その中心軸がX軸の正の部分に交差する位置に配置され、第2の柱状体T2は、その中心軸がX軸の負の部分に交差する位置に配置され、第3の柱状体T3は、その中心軸がY軸の正の部分に交差する位置に配置され、第4の柱状体T4は、その中心軸がY軸の負の部分に交差する位置に配置されている。
【0193】
このような配置を採る理由は、各柱状体T1〜T4の下端近傍に、それぞれセンサを設け、柱状体の所定軸方向への傾斜や、柱状体から各座標軸上へ加えられる力を検出するためである。したがって、本発明を実施する上で、4本の柱状体の形状、サイズは、設計上、任意に決定できる事項である。
【0194】
しかしながら、実用上は、4本の柱状体を、同一形状および同一サイズの構造体によって構成し、かつ、これら4本の柱状体の配置パターンが、XZ平面およびYZ平面の双方に関して、面対称になっているようにするのが好ましい。後述するように、本発明を実施する上では、主容量素子および副容量素子の形状や配置、そして受力体の変位に関する静電容量値の変動特性についても、幾何学的対称性を示すような設計をするのが好ましい。そのためには、4本の柱状体についても、同一形状および同一サイズとし、配置に対称性をもたせるような設計を行うのが好ましい。
【0195】
<9−2:主容量素子の配置>
本発明に係る力検出装置は、力Fyの検出のために4個の主容量素子C1〜C4を用いることを前提とする。ここで、第1の主容量素子C1は、XY座標系の第1象限に配置され、第2の主容量素子C2は、XY座標系の第4象限に配置され、第3の主容量素子C3は、XY座標系の第2象限に配置され、第4の主容量素子C4は、XY座標系の第3象限に配置されている必要がある。また、力Fyの検出に加えて、力Fxの検出を行う場合には、更に、4個の主容量素子C5〜C8を追加する必要がある。この場合、第5の主容量素子C5は、XY座標系の第1象限に配置され、第6の主容量素子C6は、XY座標系の第2象限に配置され、第7の主容量素子C7は、XY座標系の第4象限に配置され、第8の主容量素子C8は、XY座標系の第3象限に配置されている必要がある。
【0196】
主容量素子を上述の条件を満たすように配置すれば、原理的には、力Fyもしくは力Fxの検出が可能である。ただ、個々の主容量素子の形状がバラバラで、その配置に何ら対称性がないとすると、力の検出感度が各容量素子ごとに異なることになるので、正しい線形出力を得るためには、図21の演算式において、必要に応じて、各静電容量値に感度補正を行うための補正係数を乗じるなどの措置が必要になる。
【0197】
したがって、実用上は、4個の主容量素子C1〜C4を構成する支持基板側の4枚の電極E1〜E4、もしくは、8個の主容量素子C1〜C8を構成する支持基板側の8枚の電極E1〜E8は、同一形状および同一サイズの電極によって構成し、しかも、これら複数の電極の配置パターンが、XZ平面およびYZ平面の双方に関して、面対称になっているようにするのが好ましい。
【0198】
特に、これまで述べた基本的実施形態の場合、図18の平面図に示されているとおり、第1の主容量素子C1および第2の主容量素子C2を構成する支持基板側の2枚の電極は、第1の柱状体T1の中心軸を中心にして配置された第1の環状帯(図18の例の場合、ワッシャのような円環状の帯)をX軸に沿って切断して得られる2枚の電極E1,E2によって構成され、第3の主容量素子C3および第4の主容量素子C4を構成する支持基板側の2枚の電極は、第2の柱状体T2の中心軸を中心にして配置された第2の環状帯をX軸に沿って切断して得られる2枚の電極E3,E4によって構成されている。また、第5の主容量素子C5および第6の主容量素子C6を構成する支持基板側の2枚の電極は、第3の柱状体T3の中心軸を中心にして配置された第3の環状帯をY軸に沿って切断して得られる2枚の電極E5,E6によって構成され、第7の主容量素子C7および第8の主容量素子C8を構成する支持基板側の2枚の電極は、第4の柱状体T4の中心軸を中心にして配置された第4の環状帯をY軸に沿って切断して得られる2枚の電極E7,E8によって構成されている。
【0199】
このように、第i番目(i=1〜4)の柱状体Tiの動きを検出する第i番目のセンサに含まれる一対の主容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極を、当該柱状体Tiの中心軸を中心にして配置された環状帯をX軸もしくはY軸に沿って切断して得られる2枚の電極によって構成することは、本発明の好適な実施形態である。
【0200】
その第1の理由は、環状帯によって囲まれた内側領域に、副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極を形成するスペースが確保されるためである。図18に示す例の場合、第6の副容量素子D6および第8の副容量素子D8を構成する支持基板側の2枚の電極F6,F8は、電極E1,E2によって構成される第1の環状帯によって囲まれた内側領域に配置され、第5の副容量素子D5および第7の副容量素子D7を構成する支持基板側の2枚の電極F5,F7は、電極E3,E4によって構成される第2の環状帯によって囲まれた内側領域に配置されている。また、第2の副容量素子D2および第4の副容量素子D4を構成する支持基板側の2枚の電極F2,F4は、電極E5,E6によって構成される第3の環状帯によって囲まれた内側領域に配置され、第1の副容量素子D1および第3の副容量素子D3を構成する支持基板側の2枚の電極F1,F3は、電極E7,E8によって構成される第4の環状帯によって囲まれた内側領域に配置されている。このように、主固定電極E1〜E8を、2つに切断された環状帯の片方によって構成すれば、この環状帯の内側部分のスペースを利用して、副固定電極F1〜F8を配置することができる。
【0201】
主固定電極E1〜E8を、環状帯の片方によって構成するのが好都合な第2の理由は、主容量素子C1〜C8の検出感度を高めることができるためである。主容量素子C1〜C8は、本発明に係る力検出装置における力検出の主たる役割を果たす構成要素であり、できるだけ高い検出感度が得られるようにするのが好ましい。主固定電極E1〜E8を、図18に例示するような環状帯によって構成すると、柱状体が傾斜したときの容量素子の電極間距離の変化を大きくとることができ、静電容量値の変化として得られる検出値の感度を高めることができる。
【0202】
なお、これまで述べてきた基本的実施形態の場合、各柱状体T1〜T4が円柱状構造体からなり、各下端側肉薄部215,225,235,245が円盤状構造体からなるため、各環状帯は円環状構造体(ワッシャ状構造体)にするのが最も効率的である。
【0203】
<9−3:副容量素子の構成>
続いて、副容量素子D1〜D8の構成のバリエーション、より具体的には、8枚の副固定電極F1〜F8の形状および配置のバリエーションを述べる。
【0204】
これまで述べてきた基本的実施形態に係る力検出装置は、合計16個の主副容量素子の静電容量値に基づき、図21に示す演算式を利用して、6つの力成分を検出する機能を有している。ここで、16個の容量素子は、4つのセンサに振り分けられる。すなわち、第1のセンサは、XY座標系の第1象限に位置する第1の主容量素子C1と、XY座標系の第4象限に位置する第2の主容量素子C2と、第6の副容量素子D6と、第8の副容量素子D8と、を有し、第2のセンサは、XY座標系の第2象限に位置する第3の主容量素子C3と、XY座標系の第3象限に位置する第4の主容量素子C4と、第5の副容量素子D5と、第7の副容量素子D7と、を有し、第3のセンサは、XY座標系の第1象限に位置する第5の主容量素子C5と、XY座標系の第2象限に位置する第6の主容量素子C6と、第2の副容量素子D2と、第4の副容量素子D4と、を有し、第4のセンサは、XY座標系の第4象限に位置する第7の主容量素子C7と、XY座標系の第3象限に位置する第8の主容量素子C8と、第1の副容量素子D1と、第3の副容量素子D3と、を有している。
【0205】
ここで、副容量素子D1〜D8の形状および配置について、より詳細に説明すれば、図18に示す例の場合、副固定電極F3,F4,F6,F7は、円環状(ワッシャ状)の電極であり、副固定電極F1,F2,F8,F5は、それぞれその内側に配置された円盤状の電極になっている。しかも、いずれも、各柱状体の中心軸を中心とする配置がなされている。このような形状および配置をもった副固定電極F1〜F8によって構成される副容量素子D1〜D8には、図19のテーブルに示すような静電容量値の変化が生じることは既に述べたとおりである。そして、主容量素子C1〜C8と組み合わせることにより、図20のテーブルに示すような静電容量値の変化態様が得られ、図21に示す演算式に基づいて、6つの力成分の検出が可能になることも既に述べたとおりである。ただ、本発明を実施する上で、副容量素子D1〜D8の形状および配置は、図18に示す基本的実施形態に限定されるものではない。
【0206】
たとえば、図18において、副固定電極F3,F4,F6,F7と副固定電極F1,F2,F8,F5とをそっくり入れ替えても、図21に示す演算式に基づいて、6つの力成分の検出が可能である。要するに、第6および第8の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極のうち、一方を環状の形状をなす電極によって構成し、他方をその内側領域に配置された電極によって構成し、第5および第7の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極のうち、一方を環状の形状をなす電極によって構成し、他方をその内側領域に配置された電極によって構成し、第2および第4の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極のうち、一方を環状の形状をなす電極によって構成し、他方をその内側領域に配置された電極によって構成し、第1および第3の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極のうち、一方を環状の形状をなす電極によって構成し、他方をその内側領域に配置された電極によって構成すれば、図18に示す基本的実施形態と同じ原理で6つの力成分の検出が可能である。
【0207】
一方、図24は、図18に示されている16枚の電極の第1の変形例(副容量素子を構成する8枚の電極F1〜F8の形状および配置が異なる)を示す拡大平面図である。この変形例では、第6および第8の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第1の柱状体T1の中心軸を中心として配置された円盤を、X軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極F6,F8によって構成され、第5および第7の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第2の柱状体T2の中心軸を中心として配置された円盤を、X軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極F5,F7によって構成され、第2および第4の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第3の柱状体T3の中心軸を中心として配置された円盤を、Y軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極F2,F4によって構成され、第1および第3の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第4の柱状体T4の中心軸を中心として配置された円盤を、Y軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極F1,F3によって構成されている。ここで、電極F1〜F8は、いずれも同一形状、同一サイズの半円状電極となっている。
【0208】
この図24に示すような形状および配置をもった副固定電極F1〜F8によって構成される副容量素子D1〜D8には、図25のテーブルに示すような静電容量値の変化が生じる。この図25のテーブルを図19のテーブルと比較すると、より多くの欄に変動分±εが生じている。前述したとおり、この符号「ε」は、「副容量素子に生じる容量値変化」を示す符号であり、特定の固有値を示すものではない。
【0209】
図25のテーブルにおいて、より多くの欄に変動分±εが生じている理由は、図24に示す副固定電極F1〜F8が半円形状をなすためである。図18に示す副固定電極F1〜F8は、柱状体の中心軸を中心として配置された円形もしくは円環状の電極であるため、柱状体が傾斜した場合、各副容量素子D1〜D8についての静電容量値の変動は「0」になるが、図24に示す半円形状の副固定電極F1〜F8を用いた副容量素子D1〜D8の場合、X軸もしくはY軸方向への傾斜が検知されることになる。
【0210】
このように、図24に示す変形例では、副容量素子D1〜D8に、柱状体の傾斜を検知する変動分±εが生じることになるものの、図21に示す各演算式に基づいて、6つの力成分を検出できることに変わりはない。すなわち、電極F1〜F8は、いずれも同一形状、同一サイズの半円状電極であり、しかも一対の電極が所定軸に関して対称性をもつように配置されているため、図25のテーブルにおいて、+Fxの行に記載されているεの絶対値は相互に等しく、+Fyの行に記載されているεの絶対値は相互に等しく、+Fzの行に記載されているεの絶対値は相互に等しく、+Mzの行に記載されているεの絶対値は相互に等しくなる。また、+Mxの行のD1〜D4の各欄に記載されているεの絶対値は相互に等しく、D5〜D8の各欄に記載されているεの絶対値は相互に等しくなり、+Myの行のD1〜D4の各欄に記載されているεの絶対値は相互に等しく、D5〜D8の各欄に記載されているεの絶対値は相互に等しくなる。
【0211】
図26は、図17に示す8個の主容量素子C1〜C8についての静電容量値の変化の態様を示す各欄と、図25に示す8個の副容量素子D1〜D8についての静電容量値の変化の態様を示す各欄と、の和を示すテーブルである。正副の各容量素子対について、この図26のテーブルに示すような静電容量値の変化が生じることを前提とした場合でも、やはり、図21に示す各演算式に基づいて、6つの力成分の検出が可能である。これは、上述したように、同一形状、同一サイズの半円状電極を、対称性をもつように配置したためである。
【0212】
たとえば、図21の式に基づいて力Fxや力Fyを求める場合、図26のテーブルに示す変動分「ε」は何ら関与しないので、図20のテーブルを前提とした場合と同じ値が得られる。また、図26のテーブルの+Fzの行と図20のテーブルの+Fzの行は同じであるから、力Fzについても同じ結果が得られる。一方、モーメントMx,My,Mzに関しては、図20のテーブルにおける「Δ」が、図26のテーブルでは「Δ+ε」に置き換わるため、演算値自体としては異なる結果が得られるものの、単なるスケーリングの問題であり、実質的な検出原理に相違は生じない。結局、図18に示す電極配置の代わりに図24に示す電極配置を採る変形例においても、図21に示す各演算式に基づいて、6つの力成分を検出できる。
【0213】
また、図27は、図18に示されている16枚の電極の第2の変形例(副容量素子を構成する8枚の電極F1〜F8の形状および配置が異なる)を示す拡大平面図である。この変形例では、第6および第8の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第1の柱状体T1の中心軸を中心として配置された円盤を、その中心点を通りY軸に平行な参照軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極F6,F8によって構成され、第5および第7の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第2の柱状体T2の中心軸を中心として配置された円盤を、その中心点を通りY軸に平行な参照軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極F5,F7によって構成され、第2および第4の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第3の柱状体T3の中心軸を中心として配置された円盤を、その中心点を通りX軸に平行な参照軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極F2,F4によって構成され、第1および第3の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第4の柱状体T4の中心軸を中心として配置された円盤を、その中心点を通りX軸に平行な参照軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極F1,F3によって構成されている。
【0214】
この図27に示す第2の変形例は、いわば図24に示す第1の変形例における半円形の副固定電極F1〜F8を90°回転させたものに相当する。この図27に示すような形状および配置をもった副固定電極F1〜F8によって構成される副容量素子D1〜D8には、図28のテーブルに示すような静電容量値の変化が生じる。この図28のテーブルを図19のテーブルと比較すると、やはり多くの欄に変動分±εが生じている。これは、図27に示す第2の変形例においても、副容量素子D1〜D8に、柱状体の傾斜を検知する変動分±εが生じるためである。
【0215】
図29は、図17に示す8個の主容量素子C1〜C8についての静電容量値の変化の態様を示す各欄と、図28に示す8個の副容量素子D1〜D8についての静電容量値の変化の態様を示す各欄と、の和を示すテーブルである。正副の各容量素子対について、この図29のテーブルに示すような静電容量値の変化が生じることを前提とした場合でも、やはり、図21に示す各演算式に基づいて、6つの力成分の検出が可能である。これは、副固定電極F1〜F8として、同一形状、同一サイズの半円状電極を、対称性をもつように配置したためである。
【0216】
たとえば、図21の式に基づいて力Fxや力Fyを求める場合、図20のテーブルにおける「Δ」が、図29のテーブルでは「Δ+ε」もしくは「Δ−ε」に置き換わるが、いずれの場合も「4Δ」という同じ結果が得られる。また、図29のテーブルの+Fz,+Mx,+My,+Mzの各行と図20のテーブルの各対応行は同じであるから、力FzおよびモーメントMx,My,Mzについても同じ結果が得られる。結局、図18に示す電極配置の代わりに図27に示す電極配置を採る変形例においても、図21に示す各演算式に基づいて、6つの力成分を検出できる。
【0217】
<9−4:副容量素子の形状および配置の条件>
以上、副容量素子の形状および配置のバリエーションとして、2通りの変形例を述べたが、本発明を実施する上で、副容量素子の形状および配置のバリエーションは、この他にも様々なものを採用することができる。
【0218】
ここでは、副容量素子の形状および配置の条件を考えてみよう。本発明における副容量素子の役割は、モーメントMxもしくはMyが作用したときに、主容量素子に生じる他軸干渉成分δを相殺するための変動分εを発生させることにある。そこで、いま、図30に示す平面図において、主容量素子C1を構成する電極E1に対して、副容量素子D1を構成する電極F1の配置を考えてみる。図30は、支持基板300の平面図であり、G31〜G34は、下端側肉薄部215,225,235,245の下方に形成される溝部を示しており、それぞれセンサS1〜S4が形成される領域に対応する。
【0219】
いま、図示のとおり、溝部G31内に主固定電極E1が配置されているものとし、モーメントMxが作用した場合に、この主固定電極E1によって構成される主容量素子C1に生じる他軸干渉成分δを相殺するための変動分εを発生させる副容量素子D1の配置を考える。主副容量素子を並列接続して相殺を行うことを考えると、モーメントMxが作用した場合に、εの符号がδの符号と逆になるようにする必要がある。そうすると、副容量素子D1を構成する副固定電極F1の配置候補は、図にハッチングを施して示す領域A1,A2,A4のいずれかになる。ただ、検出感度を考慮すると、副固定電極F1の配置候補は、領域A4が最適であることがわかる。モーメントMxが作用した場合の電極間距離の変化は、領域A4が最も顕著である。
【0220】
同様に、モーメントMyが作用した場合の他軸干渉成分の相殺も考慮して各副固定電極F1〜F8の配置を考えると、電極F6,F8は溝部G31(センサS1)内に配置し、電極F5,F7は溝部G32(センサS2)内に配置し、電極F2,F4は溝部G33(センサS3)内に配置し、電極F1,F3は溝部G34(センサS4)内に配置するのが好ましいことがわかる。これまで述べてきた基本的実施形態や変形例は、いずれもこのような考え方に基づいて副固定電極F1〜F8を配置したものである。
【0221】
次に、各副固定電極F1〜F8の形状を考える。図31は、主容量素子C1,C2を構成する電極E1,E2と、副容量素子D1,D4を構成する電極F1,F4の配置の一例を説明する平面図である。主固定電極E1,E2は、第1の柱状体T1の中心軸Q1を中心にして配置された環状帯をX軸に沿って切断して得られる電極になっている。一方、主固定電極E1に対応する副固定電極F1は、第4の柱状体T4の中心軸Q4を中心にして配置された円形の電極となっており、主固定電極E4に対応する副固定電極F4は、第3の柱状体T3の中心軸Q3を中心にして配置された円環状の電極となっている。
【0222】
主固定電極と副固定電極について、このような形状を採用した実施形態が、図18に示す基本的実施形態である。このような形状を採る利点は、一対の主固定電極からなる環状帯の内部領域に、一対の副固定電極を配置できる点である。図31に示す例の場合、実際には、主固定電極E1,E2からなる環状帯の内部領域に、円環状をした副固定電極F6が配置され、更にその内部領域に、円形をした副固定電極F8が配置されることになる。1つのセンサ領域に、2枚の主固定電極と2枚の副固定電極とを配置することを考えると、図31に示す各電極形状は非常に効率的である。
【0223】
また、図31に示すとおり、副固定電極は、円形をした電極(F1)もしくは円環状をした電極(F4)になるため、柱状体の傾斜が静電容量値として検出されることはないというメリットも得られる。したがって、図19のテーブルに示されているとおり、不要な変動分εの発生は、+Fzの行のみに抑えられている。たとえば、図31に示す円形の副固定電極F1によって構成される副容量素子D1は、YZ平面と、第4の柱状体の中心軸Q4を含みXZ平面に平行な参照面X4と、の双方に関して、面対称となる形状をなす。同様に、円環状の副固定電極F4によって構成される副容量素子D4は、YZ平面と、第3の柱状体の中心軸Q3を含みXZ平面に平行な参照面X3と、の双方に関して、面対称となる形状をなす。このため、副容量素子には、柱状体の傾斜に基づく静電容量値の変化は生じない。
【0224】
結局、柱状体の傾斜が静電容量値として検出されないようにするには、第6および第8の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極F6,F8がいずれも、第1の柱状体T1の中心軸を含みYZ平面に平行な参照面と、XZ平面と、の双方に関して、面対称となる形状をなし、第5および第7の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極F5,F7がいずれも、第2の柱状体T2の中心軸を含みYZ平面に平行な参照面と、XZ平面と、の双方に関して、面対称となる形状をなし、第2および第4の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極F2,F4がいずれも、第3の柱状体T3の中心軸を含みXZ平面に平行な参照面と、YZ平面と、の双方に関して、面対称となる形状をなし、第1および第3の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極F1,F3がいずれも、第4の柱状体T4の中心軸を含みXZ平面に平行な参照面と、YZ平面と、の双方に関して、面対称となる形状をなすようにすればよい。
【0225】
一方、図32は、主固定電極E1,E2に対する副固定電極F1,F2の別な配置形態を示す平面図であり、前述した第1の変形例(図24に示す例)に対応するものである。一対の主固定電極からなる環状帯の内部領域に、一対の副固定電極を配置できる点は前述の例と同じであるが、副固定電極の形状は異なっている。なお、図24では、半円形の副固定電極を用いる例を示したが、図32では、一般論として説明するため、矩形の副固定電極F1,F2を配置した例を示す。ここで、副固定電極F1によって構成される副容量素子D1は、YZ平面に関する対称性は有していないが、第4の柱状体の中心軸Q4を含みXZ平面に平行な参照面X4に関して面対称の形状をなす。同様に、副固定電極F2によって構成される副容量素子D2は、YZ平面に関する対称性は有していないが、第3の柱状体の中心軸Q3を含みXZ平面に平行な参照面X3に関して面対称の形状をなす。
【0226】
図24に示す電極配置を採った場合、図26のテーブルに示す静電容量値の変化が生じることとなり、このような静電容量値の変化が生じることを前提とした場合にも、図21の演算式に基づき、6つの力成分の検出が可能であることは、既に述べたとおりである。ここで、図26のテーブルに示す静電容量値の変化が生じるようにするには、結局、第6および第8の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極F6,F8がいずれも、第1の柱状体T1の中心軸を含みYZ平面に平行な参照面に関して、面対称となる形状をなし、第5および第7の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極F5,F7がいずれも、第2の柱状体T2の中心軸を含みYZ平面に平行な参照面に関して、面対称となる形状をなし、第2および第4の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極F2,F4がいずれも、第3の柱状体T3の中心軸を含みXZ平面に平行な参照面に関して、面対称となる形状をなし、第1および第3の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極F1,F3がいずれも、第4の柱状体T4の中心軸を含みXZ平面に平行な参照面に関して、面対称となる形状をなすようにすればよい。
【0227】
一方、図33は、主固定電極E1,E2に対する副固定電極F1,F2の更に別な配置形態を示す平面図であり、前述した第2の変形例(図27に示す例)に対応するものである。一対の主固定電極からなる環状帯の内部領域に、一対の副固定電極を配置できる点は前述の例と同じであるが、副固定電極の形状は異なっている。なお、図27では、半円形の副固定電極を用いる例を示したが、図32では、一般論として説明するため、楕円形の副固定電極F1,F2を配置した例を示す。ここで、副固定電極F1によって構成される副容量素子D1は、YZ平面に関する対称性は有しているが、第4の柱状体の中心軸Q4を含みXZ平面に平行な参照面X4に関する対称性は有していない。同様に、副固定電極F2によって構成される副容量素子D2は、YZ平面に関する対称性は有しているが、第3の柱状体の中心軸Q3を含みXZ平面に平行な参照面X3に関する対称性は有していない。
【0228】
図27に示す電極配置を採った場合、図29のテーブルに示す静電容量値の変化が生じることとなり、このような静電容量値の変化が生じることを前提とした場合にも、図21の演算式に基づき、6つの力成分の検出が可能であることは、既に述べたとおりである。ただ、本願発明者は、実用上、第2の変形例として示した図27に示す電極配置パターンを採るよりは、基本的実施形態として示した図18に示す電極配置パターンや第1の変形例として示した図24に示す電極配置パターンを採る方がより好ましいと考えている。これは、図27に示す電極配置パターンには、検出感度の低下を招く要因があるためである。すなわち、図29の+Fx,+Fyの行には、「Δ−ε」なる項が含まれており、せっかく主容量素子で得た「Δ」なる検出値に対して、副容量素子で得た検出値「ε」を減じる操作が行われることになるので、検出感度を減じる操作を意図的に行うことになるのである。したがって、本願発明者は、本発明を実施する上で、図18の電極配置もしくは図24の電極配置を採るのが最適であると考えている。
【0229】
<9−5:他軸干渉成分δ=変動分εとする設定方法>
本発明に係る力検出装置では、受力体にX軸まわりのモーメントMxが作用した場合に、第i番目(i=1〜4)の主容量素子に生じる静電容量値の変化分±δの絶対値と、第i番目の副容量素子に生じる静電容量値の変化分±εの絶対値とが等しくなるような設定を行い、また、受力体にY軸まわりのモーメントMyが作用した場合に、第j番目(j=5〜8)の主容量素子に生じる静電容量値の変化分±δの絶対値と、第j番目の副容量素子に生じる静電容量値の変化分±εの絶対値とが等しくなるような設定を行うことになる。
【0230】
そのような設定を行う代表的な方法として、主容量素子を構成する電極の面積と、これに対応する副容量素子を構成する電極の面積との比が、受力体にX軸まわりのモーメントMxもしくはY軸まわりのモーメントMyが作用した場合に、主容量素子に生じる静電容量値の変化分±δの絶対値と、副容量素子に生じる静電容量値の変化分±εの絶対値とが等しくなるような面積比になるようにする方法を、§7で述べた。
【0231】
しかしながら、各容量素子に生じる静電容量値を調整する方法は、電極面積を調整する方法に限定されるものではない。たとえば、電極間距離を調整する方法を採ることも可能であるし、電極間に流動性をもった媒体を充填し、当該媒体の誘電率を調整する方法を採ることも可能である。ただ、量産型の商用製品として利用する場合は、これまで述べたように、電極面積を調整する方法を採るのが最も効率的である。
【符号の説明】
【0232】
10:受力体
11:第1の柱状体
12:第2の柱状体
13:第3の柱状体
14:第4の柱状体
20:支持基板
21:第1のセンサ
22:第2のセンサ
23:第3のセンサ
24:第4のセンサ
30:検出回路
100:受力体
110:円柱突起部
115:上端側肉薄部
120:円柱突起部
125:上端側肉薄部
130:円柱突起部
135:上端側肉薄部
140:円柱突起部
145:上端側肉薄部
200:中間体
210:円柱突起部
215:下端側肉薄部
220:円柱突起部
225:下端側肉薄部
230:円柱突起部
235:下端側肉薄部
240:円柱突起部
245:下端側肉薄部
250:制御壁
260:制御壁
300:支持基板
400:測定用治具
410:接続部
420:上蓋部
430:側壁部
440:フランジ部
A1〜A4:電極配置領域
B1〜B8:ボンディングパッド
C1〜C8:主容量素子/主容量素子の静電容量値
D1〜D8:副容量素子/副容量素子の静電容量値
d1〜d3:空隙寸法
E1〜E8:主容量素子を構成する電極
F1〜F8:副容量素子を構成する電極
Fx:X軸方向の力
Fy:Y軸方向の力
Fz:Z軸方向の力
fz:支持基板に対して作用する引っ張り力/押圧力
G11〜G34:溝部
Mx:X軸まわりのモーメント
My:Y軸まわりのモーメント
Mz:Z軸まわりのモーメント
O:座標系の原点
O′:補助座標系の原点
P1〜P3:作用点
Q1〜Q4:中心軸
r1,r2:原点から作用点までの長さ
S1〜S4:力センサ
T1〜T4:柱状体
V(Mx):モーメントMxの検出値
V(Fy):力Fyの検出値
XYZ:検出対象となる力を定義するための三次元座標系
X′Y′Z′:受力体の中心位置に原点をもつ補助座標系
X2,X4:X軸に平行な参照軸
Δ:主容量素子の静電容量値の変化分
δ:主容量素子の静電容量値の変化分(他軸干渉成分)
ε:副容量素子の静電容量値の変化分
θ1,θ2:柱状体11,12の傾斜角
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、この支持基板の上方に配置された受力体と、前記支持基板と前記受力体とを接続するための4本の柱状体と、を備え、前記支持基板を固定した状態において、前記受力体に作用した力を検出する力検出装置であって、
前記4本の柱状体の各上端は、可撓性をもった部材を介して前記受力体に接続されており、前記4本の柱状体の各下端には、それぞれ可撓性をもった下端側肉薄部が接続されており、
前記下端側肉薄部は、前記支持基板の上面から所定距離をおいた上方位置に前記支持基板の上面に対して平行に配置されるように、その周囲が台座を介して前記支持基板に接続され、その上面中心部が前記柱状体の下端に接続されており、
XY平面が、前記支持基板の上面もしくはその上方に、前記支持基板の上面に対して平行となるように位置し、上方を正とし下方を負とするZ軸が前記支持基板の上面のほぼ中心位置を通るように、XYZ三次元座標系を定義したときに、
前記4本の柱状体は、その中心軸がいずれもZ軸に平行になるように配置されており、第1の柱状体は、その中心軸がX軸の正の部分に交差する位置に配置され、第2の柱状体は、その中心軸がX軸の負の部分に交差する位置に配置され、第3の柱状体は、その中心軸がY軸の正の部分に交差する位置に配置され、第4の柱状体は、その中心軸がY軸の負の部分に交差する位置に配置され、
前記第1の柱状体の下端側肉薄部とこれに対向する前記支持基板の上面とによって挟まれた空間内に、一方の電極が下端側肉薄部の下面に形成され、他方の電極が前記支持基板の上面に形成された複数の容量素子からなる第1のセンサが配置され、
前記第2の柱状体の下端側肉薄部とこれに対向する前記支持基板の上面とによって挟まれた空間内に、一方の電極が下端側肉薄部の下面に形成され、他方の電極が前記支持基板の上面に形成された複数の容量素子からなる第2のセンサが配置され、
前記第3の柱状体の下端側肉薄部とこれに対向する前記支持基板の上面とによって挟まれた空間内に、一方の電極が下端側肉薄部の下面に形成され、他方の電極が前記支持基板の上面に形成された複数の容量素子からなる第3のセンサが配置され、
前記第4の柱状体の下端側肉薄部とこれに対向する前記支持基板の上面とによって挟まれた空間内に、一方の電極が下端側肉薄部の下面に形成され、他方の電極が前記支持基板の上面に形成された複数の容量素子からなる第4のセンサが配置され、
前記第1のセンサは、XY座標系の第1象限に位置する第1の主容量素子と、XY座標系の第4象限に位置する第2の主容量素子と、を有し、
前記第2のセンサは、XY座標系の第2象限に位置する第3の主容量素子と、XY座標系の第3象限に位置する第4の主容量素子と、を有し、
前記第3のセンサは、第2の副容量素子と、第4の副容量素子と、を有し、
前記第4のセンサは、第1の副容量素子と、第3の副容量素子と、を有し、
前記各容量素子の静電容量値に基づいて、前記受力体に作用した力の所定方向成分を検出する検出回路を更に備え、
前記受力体にX軸まわりのモーメントMxが作用した場合に、前記第1の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、前記第1の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、前記第2の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、前記第2の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、前記第3の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、前記第3の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、前記第4の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、前記第4の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなるように、各容量素子が構成され、
前記検出回路が、前記第1の主容量素子の静電容量値をC1、前記第1の副容量素子の静電容量値をD1、前記第2の主容量素子の静電容量値をC2、前記第2の副容量素子の静電容量値をD2、前記第3の主容量素子の静電容量値をC3、前記第3の副容量素子の静電容量値をD3、前記第4の主容量素子の静電容量値をC4、前記第4の副容量素子の静電容量値をD4としたときに、前記受力体に作用した力のY軸方向成分Fyを、
Fy=(C1+D1)−(C2+D2)+(C3+D3)−(C4+D4)
なる演算式を利用して求めることを特徴とする力検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の力検出装置において、
検出回路が、更に、受力体に作用した力のY軸まわりのモーメント成分Myを、
My=(C1+D1)+(C2+D2)−(C3+D3)−(C4+D4)
なる演算式を利用して求めることを特徴とする力検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の力検出装置において、
検出回路が、更に、受力体に作用した力のZ軸方向成分Fzを、
Fz=−((C1+D1)+(C2+D2)+(C3+D3)+(C4+D4))
なる演算式を利用して求めることを特徴とする力検出装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の力検出装置において、
第1の主容量素子と第1の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第2の主容量素子と第2の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第3の主容量素子と第3の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第4の主容量素子と第4の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、を更に備え、
検出回路が、前記第1の主容量素子と前記第1の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C1+D1」の値として用い、前記第2の主容量素子と前記第2の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C2+D2」の値として用い、前記第3の主容量素子と前記第3の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C3+D3」の値として用い、前記第4の主容量素子と前記第4の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C4+D4」の値として用いることを特徴とする力検出装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の力検出装置において、
各下端側肉薄部が導電性材料によって構成されており、この下端側肉薄部自身が、同一のセンサを構成する複数の容量素子についての共通電極として機能することを特徴とする力検出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の力検出装置において、
第1〜第4の主容量素子を構成する支持基板側の4枚の電極が、同一形状および同一サイズの電極によって構成されており、かつ、これら4枚の電極配置パターンが、XZ平面およびYZ平面の双方に関して、面対称になっていることを特徴とする力検出装置。
【請求項7】
支持基板と、この支持基板の上方に配置された受力体と、前記支持基板と前記受力体とを接続するための4本の柱状体と、を備え、前記支持基板を固定した状態において、前記受力体に作用した力を検出する力検出装置であって、
前記4本の柱状体の各上端は、可撓性をもった部材を介して前記受力体に接続されており、前記4本の柱状体の各下端には、それぞれ可撓性をもった下端側肉薄部が接続されており、
前記下端側肉薄部は、前記支持基板の上面から所定距離をおいた上方位置に前記支持基板の上面に対して平行に配置されるように、その周囲が台座を介して前記支持基板に接続され、その上面中心部が前記柱状体の下端に接続されており、
XY平面が、前記支持基板の上面もしくはその上方に、前記支持基板の上面に対して平行となるように位置し、上方を正とし下方を負とするZ軸が前記支持基板の上面のほぼ中心位置を通るように、XYZ三次元座標系を定義したときに、
前記4本の柱状体は、その中心軸がいずれもZ軸に平行になるように配置されており、第1の柱状体は、その中心軸がX軸の正の部分に交差する位置に配置され、第2の柱状体は、その中心軸がX軸の負の部分に交差する位置に配置され、第3の柱状体は、その中心軸がY軸の正の部分に交差する位置に配置され、第4の柱状体は、その中心軸がY軸の負の部分に交差する位置に配置され、
前記第1の柱状体の下端側肉薄部とこれに対向する前記支持基板の上面とによって挟まれた空間内に、一方の電極が下端側肉薄部の下面に形成され、他方の電極が前記支持基板の上面に形成された複数の容量素子からなる第1のセンサが配置され、
前記第2の柱状体の下端側肉薄部とこれに対向する前記支持基板の上面とによって挟まれた空間内に、一方の電極が下端側肉薄部の下面に形成され、他方の電極が前記支持基板の上面に形成された複数の容量素子からなる第2のセンサが配置され、
前記第3の柱状体の下端側肉薄部とこれに対向する前記支持基板の上面とによって挟まれた空間内に、一方の電極が下端側肉薄部の下面に形成され、他方の電極が前記支持基板の上面に形成された複数の容量素子からなる第3のセンサが配置され、
前記第4の柱状体の下端側肉薄部とこれに対向する前記支持基板の上面とによって挟まれた空間内に、一方の電極が下端側肉薄部の下面に形成され、他方の電極が前記支持基板の上面に形成された複数の容量素子からなる第4のセンサが配置され、
前記第1のセンサは、XY座標系の第1象限に位置する第1の主容量素子と、XY座標系の第4象限に位置する第2の主容量素子と、第6の副容量素子と、第8の副容量素子と、を有し、
前記第2のセンサは、XY座標系の第2象限に位置する第3の主容量素子と、XY座標系の第3象限に位置する第4の主容量素子と、第5の副容量素子と、第7の副容量素子と、を有し、
前記第3のセンサは、XY座標系の第1象限に位置する第5の主容量素子と、XY座標系の第2象限に位置する第6の主容量素子と、第2の副容量素子と、第4の副容量素子と、を有し、
前記第4のセンサは、XY座標系の第4象限に位置する第7の主容量素子と、XY座標系の第3象限に位置する第8の主容量素子と、第1の副容量素子と、第3の副容量素子と、を有し、
前記各容量素子の静電容量値に基づいて、前記受力体に作用した力の所定方向成分を検出する検出回路を更に備え、
前記受力体にX軸まわりのモーメントMxが作用した場合に、前記第1の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、前記第1の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、前記第2の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、前記第2の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、前記第3の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、前記第3の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、前記第4の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、前記第4の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、
前記受力体にY軸まわりのモーメントMyが作用した場合に、前記第5の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、前記第5の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、前記第6の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、前記第6の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、前記第7の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、前記第7の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、前記第8の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、前記第8の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなるように、各容量素子が構成され、
前記検出回路が、前記第1の主容量素子の静電容量値をC1、前記第1の副容量素子の静電容量値をD1、前記第2の主容量素子の静電容量値をC2、前記第2の副容量素子の静電容量値をD2、前記第3の主容量素子の静電容量値をC3、前記第3の副容量素子の静電容量値をD3、前記第4の主容量素子の静電容量値をC4、前記第4の副容量素子の静電容量値をD4、前記第5の主容量素子の静電容量値をC5、前記第5の副容量素子の静電容量値をD5、前記第6の主容量素子の静電容量値をC6、前記第6の副容量素子の静電容量値をD6、前記第7の主容量素子の静電容量値をC7、前記第7の副容量素子の静電容量値をD7、前記第8の主容量素子の静電容量値をC8、前記第8の副容量素子の静電容量値をD8、としたときに、
前記受力体に作用した力のY軸方向成分Fyを、
Fy=(C1+D1)−(C2+D2)+(C3+D3)−(C4+D4)
なる演算式を利用して求め、
前記受力体に作用した力のX軸方向成分Fxを、
Fx=(C5+D5)−(C6+D6)+(C7+D7)−(C8+D8)
なる演算式を利用して求めることを特徴とする力検出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の力検出装置において、
検出回路が、更に、受力体に作用した力のY軸まわりのモーメント成分Myを、
My=(C1+D1)+(C2+D2)−(C3+D3)−(C4+D4)
なる演算式を利用して求め、受力体に作用した力のX軸まわりのモーメント成分Mxを、
Mx=−(C5+D5)−(C6+D6)+(C7+D7)+(C8+D8)
なる演算式を利用して求めることを特徴とする力検出装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載の力検出装置において、
検出回路が、更に、受力体に作用した力のZ軸方向成分Fzを、
Fz=−((C1+D1)+(C2+D2)+(C3+D3)+(C4+D4)+(C5+D5)+(C6+D6)+(C7+D7)+(C8+D8))
なる演算式を利用して求めることを特徴とする力検出装置。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかに記載の力検出装置において、
検出回路が、更に、受力体に作用した力のZ軸まわりのモーメント成分Mzを、
Mz=(C1+D1)−(C2+D2)−(C3+D3)+(C4+D4)−(C5+D5)+(C6+D6)+(C7+D7)−(C8+D8)
なる演算式を利用して求めることを特徴とする力検出装置。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれかに記載の力検出装置において、
第1の主容量素子と第1の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第2の主容量素子と第2の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第3の主容量素子と第3の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第4の主容量素子と第4の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第5の主容量素子と第5の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第6の主容量素子と第6の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第7の主容量素子と第7の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第8の主容量素子と第8の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、を更に備え、
検出回路が、前記第1の主容量素子と前記第1の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C1+D1」の値として用い、前記第2の主容量素子と前記第2の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C2+D2」の値として用い、前記第3の主容量素子と前記第3の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C3+D3」の値として用い、前記第4の主容量素子と前記第4の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C4+D4」の値として用い、前記第5の主容量素子と前記第5の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C5+D5」の値として用い、前記第6の主容量素子と前記第6の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C6+D6」の値として用い、前記第7の主容量素子と前記第7の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C7+D7」の値として用い、前記第8の主容量素子と前記第8の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C8+D8」の値として用いることを特徴とする力検出装置。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれかに記載の力検出装置において、
4本の柱状体が、同一形状および同一サイズの構造体によって構成されており、かつ、これら4本の柱状体の配置パターンが、XZ平面およびYZ平面の双方に関して、面対称になっていることを特徴とする力検出装置。
【請求項13】
請求項12に記載の力検出装置において、
各下端側肉薄部が導電性材料によって構成されており、この下端側肉薄部自身が、同一のセンサを構成する複数の容量素子についての共通電極として機能することを特徴とする力検出装置。
【請求項14】
請求項13に記載の力検出装置において、
第1〜第8の主容量素子を構成する支持基板側の8枚の電極が、同一形状および同一サイズの電極によって構成されており、かつ、これら8枚の電極の配置パターンが、XZ平面およびYZ平面の双方に関して、面対称になっていることを特徴とする力検出装置。
【請求項15】
請求項14に記載の力検出装置において、
第1および第2の主容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第1の柱状体の中心軸を中心にして配置された第1の環状帯をX軸に沿って切断して得られる2枚の電極によって構成され、
第3および第4の主容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第2の柱状体の中心軸を中心にして配置された第2の環状帯をX軸に沿って切断して得られる2枚の電極によって構成され、
第5および第6の主容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第3の柱状体の中心軸を中心にして配置された第3の環状帯をY軸に沿って切断して得られる2枚の電極によって構成され、
第7および第8の主容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第4の柱状体の中心軸を中心にして配置された第4の環状帯をY軸に沿って切断して得られる2枚の電極によって構成され、
第6および第8の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、前記第1の環状帯によって囲まれた内側領域に配置され、
第5および第7の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、前記第2の環状帯によって囲まれた内側領域に配置され、
第2および第4の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、前記第3の環状帯によって囲まれた内側領域に配置され、
第1および第3の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、前記第4の環状帯によって囲まれた内側領域に配置されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項16】
請求項15に記載の力検出装置において、
各柱状体が円柱状構造体からなり、各下端側肉薄部が円盤状構造体からなり、各環状帯が円環状構造体からなることを特徴とする力検出装置。
【請求項17】
請求項16に記載の力検出装置において、
第6および第8の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極のうち、一方が環状の形状をなす電極によって構成され、他方がその内側領域に配置された電極によって構成され、
第5および第7の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極のうち、一方が環状の形状をなす電極によって構成され、他方がその内側領域に配置された電極によって構成され、
第2および第4の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極のうち、一方が環状の形状をなす電極によって構成され、他方がその内側領域に配置された電極によって構成され、
第1および第3の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極のうち、一方が環状の形状をなす電極によって構成され、他方がその内側領域に配置された電極によって構成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項18】
請求項16に記載の力検出装置において、
第6および第8の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第1の柱状体の中心軸を中心として配置された円盤を、X軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極によって構成され、
第5および第7の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第2の柱状体の中心軸を中心として配置された円盤を、X軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極によって構成され、
第2および第4の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第3の柱状体の中心軸を中心として配置された円盤を、Y軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極によって構成され、
第1および第3の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第4の柱状体の中心軸を中心として配置された円盤を、Y軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極によって構成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項19】
請求項16に記載の力検出装置において、
第6および第8の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第1の柱状体の中心軸を中心として配置された円盤を、その中心点を通りY軸に平行な参照軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極によって構成され、
第5および第7の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第2の柱状体の中心軸を中心として配置された円盤を、その中心点を通りY軸に平行な参照軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極によって構成され、
第2および第4の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第3の柱状体の中心軸を中心として配置された円盤を、その中心点を通りX軸に平行な参照軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極によって構成され、
第1および第3の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第4の柱状体の中心軸を中心として配置された円盤を、その中心点を通りX軸に平行な参照軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極によって構成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項20】
請求項14〜16のいずれかに記載の力検出装置において、
第6および第8の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極がいずれも、第1の柱状体の中心軸を含みYZ平面に平行な参照面と、XZ平面と、の双方に関して、面対称となる形状をなし、
第5および第7の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極がいずれも、第2の柱状体の中心軸を含みYZ平面に平行な参照面と、XZ平面と、の双方に関して、面対称となる形状をなし、
第2および第4の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極がいずれも、第3の柱状体の中心軸を含みXZ平面に平行な参照面と、YZ平面と、の双方に関して、面対称となる形状をなし、
第1および第3の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極がいずれも、第4の柱状体の中心軸を含みXZ平面に平行な参照面と、YZ平面と、の双方に関して、面対称となる形状をなすことを特徴とする力検出装置。
【請求項21】
請求項14〜16のいずれかに記載の力検出装置において、
第6および第8の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極がいずれも、第1の柱状体の中心軸を含みYZ平面に平行な参照面に関して、面対称となる形状をなし、
第5および第7の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極がいずれも、第2の柱状体の中心軸を含みYZ平面に平行な参照面に関して、面対称となる形状をなし、
第2および第4の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極がいずれも、第3の柱状体の中心軸を含みXZ平面に平行な参照面に関して、面対称となる形状をなし、
第1および第3の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極がいずれも、第4の柱状体の中心軸を含みXZ平面に平行な参照面に関して、面対称となる形状をなすことを特徴とする力検出装置。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれかに記載の力検出装置において、
主容量素子を構成する電極の面積と、これに対応する副容量素子を構成する電極の面積との比が、受力体にX軸まわりのモーメントMxもしくはY軸まわりのモーメントMyが作用した場合に、前記主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、前記副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなるような面積比に設定されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれかに記載の力検出装置において、
4本の柱状体の各上端を受力体に接続するための可撓性をもった部材として、その周囲が前記受力体に接続され、その下面中心部が前記柱状体の上端に接続された上端側肉薄部が設けられていることを特徴とする力検出装置。
【請求項1】
支持基板と、この支持基板の上方に配置された受力体と、前記支持基板と前記受力体とを接続するための4本の柱状体と、を備え、前記支持基板を固定した状態において、前記受力体に作用した力を検出する力検出装置であって、
前記4本の柱状体の各上端は、可撓性をもった部材を介して前記受力体に接続されており、前記4本の柱状体の各下端には、それぞれ可撓性をもった下端側肉薄部が接続されており、
前記下端側肉薄部は、前記支持基板の上面から所定距離をおいた上方位置に前記支持基板の上面に対して平行に配置されるように、その周囲が台座を介して前記支持基板に接続され、その上面中心部が前記柱状体の下端に接続されており、
XY平面が、前記支持基板の上面もしくはその上方に、前記支持基板の上面に対して平行となるように位置し、上方を正とし下方を負とするZ軸が前記支持基板の上面のほぼ中心位置を通るように、XYZ三次元座標系を定義したときに、
前記4本の柱状体は、その中心軸がいずれもZ軸に平行になるように配置されており、第1の柱状体は、その中心軸がX軸の正の部分に交差する位置に配置され、第2の柱状体は、その中心軸がX軸の負の部分に交差する位置に配置され、第3の柱状体は、その中心軸がY軸の正の部分に交差する位置に配置され、第4の柱状体は、その中心軸がY軸の負の部分に交差する位置に配置され、
前記第1の柱状体の下端側肉薄部とこれに対向する前記支持基板の上面とによって挟まれた空間内に、一方の電極が下端側肉薄部の下面に形成され、他方の電極が前記支持基板の上面に形成された複数の容量素子からなる第1のセンサが配置され、
前記第2の柱状体の下端側肉薄部とこれに対向する前記支持基板の上面とによって挟まれた空間内に、一方の電極が下端側肉薄部の下面に形成され、他方の電極が前記支持基板の上面に形成された複数の容量素子からなる第2のセンサが配置され、
前記第3の柱状体の下端側肉薄部とこれに対向する前記支持基板の上面とによって挟まれた空間内に、一方の電極が下端側肉薄部の下面に形成され、他方の電極が前記支持基板の上面に形成された複数の容量素子からなる第3のセンサが配置され、
前記第4の柱状体の下端側肉薄部とこれに対向する前記支持基板の上面とによって挟まれた空間内に、一方の電極が下端側肉薄部の下面に形成され、他方の電極が前記支持基板の上面に形成された複数の容量素子からなる第4のセンサが配置され、
前記第1のセンサは、XY座標系の第1象限に位置する第1の主容量素子と、XY座標系の第4象限に位置する第2の主容量素子と、を有し、
前記第2のセンサは、XY座標系の第2象限に位置する第3の主容量素子と、XY座標系の第3象限に位置する第4の主容量素子と、を有し、
前記第3のセンサは、第2の副容量素子と、第4の副容量素子と、を有し、
前記第4のセンサは、第1の副容量素子と、第3の副容量素子と、を有し、
前記各容量素子の静電容量値に基づいて、前記受力体に作用した力の所定方向成分を検出する検出回路を更に備え、
前記受力体にX軸まわりのモーメントMxが作用した場合に、前記第1の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、前記第1の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、前記第2の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、前記第2の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、前記第3の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、前記第3の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、前記第4の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、前記第4の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなるように、各容量素子が構成され、
前記検出回路が、前記第1の主容量素子の静電容量値をC1、前記第1の副容量素子の静電容量値をD1、前記第2の主容量素子の静電容量値をC2、前記第2の副容量素子の静電容量値をD2、前記第3の主容量素子の静電容量値をC3、前記第3の副容量素子の静電容量値をD3、前記第4の主容量素子の静電容量値をC4、前記第4の副容量素子の静電容量値をD4としたときに、前記受力体に作用した力のY軸方向成分Fyを、
Fy=(C1+D1)−(C2+D2)+(C3+D3)−(C4+D4)
なる演算式を利用して求めることを特徴とする力検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の力検出装置において、
検出回路が、更に、受力体に作用した力のY軸まわりのモーメント成分Myを、
My=(C1+D1)+(C2+D2)−(C3+D3)−(C4+D4)
なる演算式を利用して求めることを特徴とする力検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の力検出装置において、
検出回路が、更に、受力体に作用した力のZ軸方向成分Fzを、
Fz=−((C1+D1)+(C2+D2)+(C3+D3)+(C4+D4))
なる演算式を利用して求めることを特徴とする力検出装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の力検出装置において、
第1の主容量素子と第1の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第2の主容量素子と第2の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第3の主容量素子と第3の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第4の主容量素子と第4の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、を更に備え、
検出回路が、前記第1の主容量素子と前記第1の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C1+D1」の値として用い、前記第2の主容量素子と前記第2の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C2+D2」の値として用い、前記第3の主容量素子と前記第3の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C3+D3」の値として用い、前記第4の主容量素子と前記第4の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C4+D4」の値として用いることを特徴とする力検出装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の力検出装置において、
各下端側肉薄部が導電性材料によって構成されており、この下端側肉薄部自身が、同一のセンサを構成する複数の容量素子についての共通電極として機能することを特徴とする力検出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の力検出装置において、
第1〜第4の主容量素子を構成する支持基板側の4枚の電極が、同一形状および同一サイズの電極によって構成されており、かつ、これら4枚の電極配置パターンが、XZ平面およびYZ平面の双方に関して、面対称になっていることを特徴とする力検出装置。
【請求項7】
支持基板と、この支持基板の上方に配置された受力体と、前記支持基板と前記受力体とを接続するための4本の柱状体と、を備え、前記支持基板を固定した状態において、前記受力体に作用した力を検出する力検出装置であって、
前記4本の柱状体の各上端は、可撓性をもった部材を介して前記受力体に接続されており、前記4本の柱状体の各下端には、それぞれ可撓性をもった下端側肉薄部が接続されており、
前記下端側肉薄部は、前記支持基板の上面から所定距離をおいた上方位置に前記支持基板の上面に対して平行に配置されるように、その周囲が台座を介して前記支持基板に接続され、その上面中心部が前記柱状体の下端に接続されており、
XY平面が、前記支持基板の上面もしくはその上方に、前記支持基板の上面に対して平行となるように位置し、上方を正とし下方を負とするZ軸が前記支持基板の上面のほぼ中心位置を通るように、XYZ三次元座標系を定義したときに、
前記4本の柱状体は、その中心軸がいずれもZ軸に平行になるように配置されており、第1の柱状体は、その中心軸がX軸の正の部分に交差する位置に配置され、第2の柱状体は、その中心軸がX軸の負の部分に交差する位置に配置され、第3の柱状体は、その中心軸がY軸の正の部分に交差する位置に配置され、第4の柱状体は、その中心軸がY軸の負の部分に交差する位置に配置され、
前記第1の柱状体の下端側肉薄部とこれに対向する前記支持基板の上面とによって挟まれた空間内に、一方の電極が下端側肉薄部の下面に形成され、他方の電極が前記支持基板の上面に形成された複数の容量素子からなる第1のセンサが配置され、
前記第2の柱状体の下端側肉薄部とこれに対向する前記支持基板の上面とによって挟まれた空間内に、一方の電極が下端側肉薄部の下面に形成され、他方の電極が前記支持基板の上面に形成された複数の容量素子からなる第2のセンサが配置され、
前記第3の柱状体の下端側肉薄部とこれに対向する前記支持基板の上面とによって挟まれた空間内に、一方の電極が下端側肉薄部の下面に形成され、他方の電極が前記支持基板の上面に形成された複数の容量素子からなる第3のセンサが配置され、
前記第4の柱状体の下端側肉薄部とこれに対向する前記支持基板の上面とによって挟まれた空間内に、一方の電極が下端側肉薄部の下面に形成され、他方の電極が前記支持基板の上面に形成された複数の容量素子からなる第4のセンサが配置され、
前記第1のセンサは、XY座標系の第1象限に位置する第1の主容量素子と、XY座標系の第4象限に位置する第2の主容量素子と、第6の副容量素子と、第8の副容量素子と、を有し、
前記第2のセンサは、XY座標系の第2象限に位置する第3の主容量素子と、XY座標系の第3象限に位置する第4の主容量素子と、第5の副容量素子と、第7の副容量素子と、を有し、
前記第3のセンサは、XY座標系の第1象限に位置する第5の主容量素子と、XY座標系の第2象限に位置する第6の主容量素子と、第2の副容量素子と、第4の副容量素子と、を有し、
前記第4のセンサは、XY座標系の第4象限に位置する第7の主容量素子と、XY座標系の第3象限に位置する第8の主容量素子と、第1の副容量素子と、第3の副容量素子と、を有し、
前記各容量素子の静電容量値に基づいて、前記受力体に作用した力の所定方向成分を検出する検出回路を更に備え、
前記受力体にX軸まわりのモーメントMxが作用した場合に、前記第1の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、前記第1の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、前記第2の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、前記第2の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、前記第3の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、前記第3の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、前記第4の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、前記第4の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、
前記受力体にY軸まわりのモーメントMyが作用した場合に、前記第5の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、前記第5の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、前記第6の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、前記第6の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、前記第7の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、前記第7の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなり、前記第8の主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、前記第8の副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなるように、各容量素子が構成され、
前記検出回路が、前記第1の主容量素子の静電容量値をC1、前記第1の副容量素子の静電容量値をD1、前記第2の主容量素子の静電容量値をC2、前記第2の副容量素子の静電容量値をD2、前記第3の主容量素子の静電容量値をC3、前記第3の副容量素子の静電容量値をD3、前記第4の主容量素子の静電容量値をC4、前記第4の副容量素子の静電容量値をD4、前記第5の主容量素子の静電容量値をC5、前記第5の副容量素子の静電容量値をD5、前記第6の主容量素子の静電容量値をC6、前記第6の副容量素子の静電容量値をD6、前記第7の主容量素子の静電容量値をC7、前記第7の副容量素子の静電容量値をD7、前記第8の主容量素子の静電容量値をC8、前記第8の副容量素子の静電容量値をD8、としたときに、
前記受力体に作用した力のY軸方向成分Fyを、
Fy=(C1+D1)−(C2+D2)+(C3+D3)−(C4+D4)
なる演算式を利用して求め、
前記受力体に作用した力のX軸方向成分Fxを、
Fx=(C5+D5)−(C6+D6)+(C7+D7)−(C8+D8)
なる演算式を利用して求めることを特徴とする力検出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の力検出装置において、
検出回路が、更に、受力体に作用した力のY軸まわりのモーメント成分Myを、
My=(C1+D1)+(C2+D2)−(C3+D3)−(C4+D4)
なる演算式を利用して求め、受力体に作用した力のX軸まわりのモーメント成分Mxを、
Mx=−(C5+D5)−(C6+D6)+(C7+D7)+(C8+D8)
なる演算式を利用して求めることを特徴とする力検出装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載の力検出装置において、
検出回路が、更に、受力体に作用した力のZ軸方向成分Fzを、
Fz=−((C1+D1)+(C2+D2)+(C3+D3)+(C4+D4)+(C5+D5)+(C6+D6)+(C7+D7)+(C8+D8))
なる演算式を利用して求めることを特徴とする力検出装置。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかに記載の力検出装置において、
検出回路が、更に、受力体に作用した力のZ軸まわりのモーメント成分Mzを、
Mz=(C1+D1)−(C2+D2)−(C3+D3)+(C4+D4)−(C5+D5)+(C6+D6)+(C7+D7)−(C8+D8)
なる演算式を利用して求めることを特徴とする力検出装置。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれかに記載の力検出装置において、
第1の主容量素子と第1の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第2の主容量素子と第2の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第3の主容量素子と第3の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第4の主容量素子と第4の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第5の主容量素子と第5の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第6の主容量素子と第6の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第7の主容量素子と第7の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、第8の主容量素子と第8の副容量素子とを相互に並列接続するための配線と、を更に備え、
検出回路が、前記第1の主容量素子と前記第1の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C1+D1」の値として用い、前記第2の主容量素子と前記第2の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C2+D2」の値として用い、前記第3の主容量素子と前記第3の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C3+D3」の値として用い、前記第4の主容量素子と前記第4の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C4+D4」の値として用い、前記第5の主容量素子と前記第5の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C5+D5」の値として用い、前記第6の主容量素子と前記第6の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C6+D6」の値として用い、前記第7の主容量素子と前記第7の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C7+D7」の値として用い、前記第8の主容量素子と前記第8の副容量素子との並列接続によって構成される合成容量素子の静電容量値を「C8+D8」の値として用いることを特徴とする力検出装置。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれかに記載の力検出装置において、
4本の柱状体が、同一形状および同一サイズの構造体によって構成されており、かつ、これら4本の柱状体の配置パターンが、XZ平面およびYZ平面の双方に関して、面対称になっていることを特徴とする力検出装置。
【請求項13】
請求項12に記載の力検出装置において、
各下端側肉薄部が導電性材料によって構成されており、この下端側肉薄部自身が、同一のセンサを構成する複数の容量素子についての共通電極として機能することを特徴とする力検出装置。
【請求項14】
請求項13に記載の力検出装置において、
第1〜第8の主容量素子を構成する支持基板側の8枚の電極が、同一形状および同一サイズの電極によって構成されており、かつ、これら8枚の電極の配置パターンが、XZ平面およびYZ平面の双方に関して、面対称になっていることを特徴とする力検出装置。
【請求項15】
請求項14に記載の力検出装置において、
第1および第2の主容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第1の柱状体の中心軸を中心にして配置された第1の環状帯をX軸に沿って切断して得られる2枚の電極によって構成され、
第3および第4の主容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第2の柱状体の中心軸を中心にして配置された第2の環状帯をX軸に沿って切断して得られる2枚の電極によって構成され、
第5および第6の主容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第3の柱状体の中心軸を中心にして配置された第3の環状帯をY軸に沿って切断して得られる2枚の電極によって構成され、
第7および第8の主容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第4の柱状体の中心軸を中心にして配置された第4の環状帯をY軸に沿って切断して得られる2枚の電極によって構成され、
第6および第8の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、前記第1の環状帯によって囲まれた内側領域に配置され、
第5および第7の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、前記第2の環状帯によって囲まれた内側領域に配置され、
第2および第4の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、前記第3の環状帯によって囲まれた内側領域に配置され、
第1および第3の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、前記第4の環状帯によって囲まれた内側領域に配置されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項16】
請求項15に記載の力検出装置において、
各柱状体が円柱状構造体からなり、各下端側肉薄部が円盤状構造体からなり、各環状帯が円環状構造体からなることを特徴とする力検出装置。
【請求項17】
請求項16に記載の力検出装置において、
第6および第8の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極のうち、一方が環状の形状をなす電極によって構成され、他方がその内側領域に配置された電極によって構成され、
第5および第7の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極のうち、一方が環状の形状をなす電極によって構成され、他方がその内側領域に配置された電極によって構成され、
第2および第4の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極のうち、一方が環状の形状をなす電極によって構成され、他方がその内側領域に配置された電極によって構成され、
第1および第3の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極のうち、一方が環状の形状をなす電極によって構成され、他方がその内側領域に配置された電極によって構成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項18】
請求項16に記載の力検出装置において、
第6および第8の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第1の柱状体の中心軸を中心として配置された円盤を、X軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極によって構成され、
第5および第7の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第2の柱状体の中心軸を中心として配置された円盤を、X軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極によって構成され、
第2および第4の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第3の柱状体の中心軸を中心として配置された円盤を、Y軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極によって構成され、
第1および第3の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第4の柱状体の中心軸を中心として配置された円盤を、Y軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極によって構成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項19】
請求項16に記載の力検出装置において、
第6および第8の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第1の柱状体の中心軸を中心として配置された円盤を、その中心点を通りY軸に平行な参照軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極によって構成され、
第5および第7の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第2の柱状体の中心軸を中心として配置された円盤を、その中心点を通りY軸に平行な参照軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極によって構成され、
第2および第4の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第3の柱状体の中心軸を中心として配置された円盤を、その中心点を通りX軸に平行な参照軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極によって構成され、
第1および第3の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極が、第4の柱状体の中心軸を中心として配置された円盤を、その中心点を通りX軸に平行な参照軸に沿って切断して得られる2枚の半円状電極によって構成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項20】
請求項14〜16のいずれかに記載の力検出装置において、
第6および第8の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極がいずれも、第1の柱状体の中心軸を含みYZ平面に平行な参照面と、XZ平面と、の双方に関して、面対称となる形状をなし、
第5および第7の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極がいずれも、第2の柱状体の中心軸を含みYZ平面に平行な参照面と、XZ平面と、の双方に関して、面対称となる形状をなし、
第2および第4の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極がいずれも、第3の柱状体の中心軸を含みXZ平面に平行な参照面と、YZ平面と、の双方に関して、面対称となる形状をなし、
第1および第3の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極がいずれも、第4の柱状体の中心軸を含みXZ平面に平行な参照面と、YZ平面と、の双方に関して、面対称となる形状をなすことを特徴とする力検出装置。
【請求項21】
請求項14〜16のいずれかに記載の力検出装置において、
第6および第8の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極がいずれも、第1の柱状体の中心軸を含みYZ平面に平行な参照面に関して、面対称となる形状をなし、
第5および第7の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極がいずれも、第2の柱状体の中心軸を含みYZ平面に平行な参照面に関して、面対称となる形状をなし、
第2および第4の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極がいずれも、第3の柱状体の中心軸を含みXZ平面に平行な参照面に関して、面対称となる形状をなし、
第1および第3の副容量素子を構成する支持基板側の2枚の電極がいずれも、第4の柱状体の中心軸を含みXZ平面に平行な参照面に関して、面対称となる形状をなすことを特徴とする力検出装置。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれかに記載の力検出装置において、
主容量素子を構成する電極の面積と、これに対応する副容量素子を構成する電極の面積との比が、受力体にX軸まわりのモーメントMxもしくはY軸まわりのモーメントMyが作用した場合に、前記主容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値と、前記副容量素子に生じる静電容量値の変化分の絶対値とが等しくなるような面積比に設定されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれかに記載の力検出装置において、
4本の柱状体の各上端を受力体に接続するための可撓性をもった部材として、その周囲が前記受力体に接続され、その下面中心部が前記柱状体の上端に接続された上端側肉薄部が設けられていることを特徴とする力検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【公開番号】特開2010−230631(P2010−230631A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81310(P2009−81310)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(390013343)株式会社ワコー (34)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(390013343)株式会社ワコー (34)
【Fターム(参考)】
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