説明

力覚感覚調整装置及び力覚感覚の調整方法

【課題】人体に対して与えられる力覚感覚を簡単に調整することができる力覚感覚調整装置を提供する。
【解決手段】人体を支持するとともに人体に対して力覚感覚を提示する人体支持面11aを有する袋体11からなる人体支持部10とこの内部の流体量を調整する流体量調整部である蛇腹ポンプ12とを備え、人体支持部10は、その内部の流体量によって、密度の粗密を変更可能に充填材が充填されており、流体量調整部である蛇腹ポンプ12は、前記流体量を調整することによって、この充填材の密度の粗密に応じて人体支持部10の硬さを変更して人体に対して与えられる力覚感覚が調整されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力覚感覚調整装置及び力覚感覚の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人体の運動能力を維持、回復又は向上させるために、人体に対して感覚情報を提示する装置が用いられている。かかる装置としては、使用者に対して走行感覚を提示するトレッドミルなどが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のトレッドミルは、ベルトの上を走行する使用者の動きに対応して前記ベルト走行速度を自律的に変化させるように構成されている。しかしながら、特許文献1に記載のトレッドミルは、走行ベルトとして、平坦な形状を有するベルトを備えているため、このベルトを走行する使用者に対して、一定の形状の路面を走行している走行感覚を与え続けることとなり、自然環境下に走行する場合とは異なる力覚感覚を提示することとなる。
【0004】
そこで、使用者に対して、凹凸形状を有する路面を走行する走行感覚等の力覚感覚を与えることができる装置として、トレッドミルのベルトの支持ローラの鉛直方向高さをシリンダの動きにより変動させて、当該ベルトの上面の形状が任意の形状変更する歩行感覚提示装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平10−071216号公報
【特許文献2】特開2001−187166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の歩行感覚提示装置は、複雑な構造を有し、大型であるため、設置場所が制限される場合がある。また、特許文献2に記載の歩行感覚提示装置では、トレッドミルのベルトの支持ローラの鉛直方向高さを変動させることにより、ベルトの上面の形状が任意の形状に変更されるため、このベルトの硬さは一定である。そのため、特許文献2に記載の歩行感覚提示装置は、自然環境下の場合のように、路面の硬さの変化、人体が路面と接触することなどにより生じる触覚の変化などを再現することが困難であり、人体に対して与えられる力覚感覚を十分に再現することが困難である。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、人体に対して与えられる力覚感覚を簡単に調整することができる力覚感覚調整装置及び力覚感覚の調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の力覚感覚調整装置は、1つの側面では、人体に対して与えられる力覚感覚を調整する力覚感覚調整装置であって、人体を支持するとともに、当該人体に対して力覚感覚を提示する人体支持面を有する袋体からなる人体支持部と、前記人体支持部の内部の流体量を調整する流体量調整部と、を備え、前記人体支持部は、その内部の流体量によって、密度の粗密を変更可能に充填材が充填されており、前記流体量調整部は、前記流体量を調整することによって、この充填材の密度の粗密に応じて人体支持部の硬さを変更して前記人体に対して与えられる力覚感覚が調整されるように構成されていることを特徴としている。
【0009】
本発明の力覚感覚調整装置は、前記人体支持部と、前記流体量調整部とを備え、前記人体支持部は、その内部の流体量によって密度の粗密を変更可能に、充填材が充填されており、前記流体量調整部は、前記流体量を調整することによって、この充填材の密度の粗密に応じて人体支持部の硬さを変更して前記人体に対して与えられる力覚感覚が調整されるように構成されているため、人体に対して与えられる力覚感覚を簡単に調整することができる。
【0010】
前記人体支持面としては、人体の足裏を支持する面が挙げられる。この場合、本発明の力覚感覚調整装置は、足裏に対して、力覚感覚を調整して提示することができる。
【0011】
本発明の力覚感覚調整装置は、円筒状の複数のローラと、前記複数のローラに、周方向回転可能に掛け渡されるベルト体と、をさらに備え、前記ベルト体が人体支持部を備え、この人体支持部が、当該ベルト体と一体に回転するように構成されていてもよい。この場合、本発明の力覚感覚調整装置は、トレッドミルとして使用することができる。
【0012】
前記袋体は、無端帯状の袋体であってもよい。
【0013】
前記袋体の内部には、この袋体を周方向に区切っている複数の区切り部が設けられていることが好ましい。この場合、前記袋体に充填されている充填材をより均等に分散させた状態に維持することができる。
【0014】
前記区切り部は、この区切り部により区切られた互いに隣り合う第1の袋部と第2の袋部とが径方向内方で連接している連接部と、前記第1の袋部の周方向端面と前記第2の袋部の周方向端面とが径方向外方で互いに対向している端面対向部と、を有し、前記区切り部は、前記人体支持部が前記ベルト体と一体にローラの表面上を回転するに際して、前記端面対向部における前記第1の袋部の周方向端面と前記第2の袋部の周方向端面との間が離隔し、前記連接部を屈曲支点として屈曲しながら、前記ローラの表面上を前記ベルト体と一体に回動するように構成されていることが好ましい。この場合、効率よく人体支持部を回転させることができる。
【0015】
前記流体量調整部は、前記人体支持部の回転中に、この人体支持部の内部の流体量を調整して、当該人体支持部を硬化又は軟化させるように構成されていることが好ましい。
【0016】
前記流体量調整部は、前記ベルト体の鉛直方向上方に位置するように設けられている人体に対して調整された力覚感覚を提示する力覚感覚提示位置に位置する人体支持部の内部の流体量を減少させることにより当該人体支持部の硬さが第1の硬さとなるように硬化させるとともに、前記力覚感覚提示位置の回転方向下流に位置する人体支持部の内部の流体量を調整することにより、前記人体支持部の硬さが前記第1の硬さよりも柔らかい第2の硬さとなるように軟化させるように構成されていることが好ましい。
【0017】
本発明の力覚感覚調整装置は、前記人体支持部の人体支持面を変形する形状造形部をさらに備え、前記流体量調整部は、前記形状造形部により人体支持面が変形された人体支持部の内部の流体量を減少させることにより当該人体支持部を硬化させるように構成されていることが好ましい。
【0018】
本発明の力覚感覚調整装置は、他の側面では、人体に対して与えられる力覚感覚を調整する力覚感覚調整装置であって、人体を支持するとともに、当該人体に対して力覚感覚を提示する人体支持面を有する袋体からなる人体支持部と、前記人体支持部の人体支持面を変形する形状造形部と、を備え、前記人体支持部は、この人体支持部の人体支持面を可逆的に変形させて、維持する充填材が充填されており、前記形状造形部は、人体支持部の人体支持面に当接して、この人体支持面の形状を変形させて前記人体に対して与えられる力覚感覚が調整されるように構成されていることを特徴としている。
【0019】
本発明の力覚感覚調整装置は、前記人体支持部と、前記形状造形部とを備え、前記人体支持部は、この人体支持部の人体支持面を可逆的に変形させて、維持する充填材が充填されており、前記形状造形部は、人体支持部の人体支持面に当接して、この人体支持面の形状を変形させて前記人体に対して与えられる力覚感覚が調整されるように構成されているため、人体における当該人体と人体支持面との接触感覚の変化に伴う力覚の変化を作り出すことができ。これにより、本発明の力覚感覚調整装置は、人体に対して与えられる力覚感覚を簡単に調整することができる。
【0020】
本発明の力覚感覚の調整方法は、人体に対して与えられる力覚感覚の調整方法であって、流体量によって、密度の粗密を変更可能に充填材が充填されており、人体を支持するとともに、当該人体に対して力覚感覚を提示する人体支持面を有する袋体からなる人体支持部の人体支持面を変形させ、その後、この人体支持部の内部の流体量を調整することによって、前記充填材の密度の粗密に応じて前記人体支持部の硬さを変更して前記力覚感覚を調整することを特徴としている。
【0021】
本発明の力覚感覚の調整方法は、前記人体支持部の人体支持面を変形させ、その後、当該人体支持部を硬化させるため、この人体支持面を任意の形状に変形させることができるとともに、人体支持部の硬さを簡単に任意の硬さとなるように変更することができる。そのため、本発明の力覚感覚の調整方法によれば、簡単に力覚感覚を調整することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の力覚感覚調整装置及び力覚感覚の調整方法は、人体に対して与えられる力覚感覚を簡単に調整することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の力覚感覚調整装置の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の力覚感覚調整装置の一実施の形態に係るトレッドミルの概略説明図である。図2は、本発明の力覚感覚調整装置の一実施の形態に係るトレッドミルの人体支持部の変形例の鉛直方向上面の概略説明図である。図3は、本発明の力覚感覚調整装置の一実施の形態に係るトレッドミルの人体支持部の変形例の側方断面の概略説明図である。図4は、図1に示されるトレッドミルの側方断面の概略説明図である。
【0024】
図1に示されるトレッドミル1は、複数の走行ローラ23と、走行ローラ23に掛け渡された無端帯状のベルト体10,13とを備えており、ベルト体10,13は、走行ローラ23が回転することに伴って回転する。
図1に示されるトレッドミル1では、使用者は、ベルト体10,13の鉛直方向上方に位置するように設けられている人体に対して調整された力覚感覚を提示する力覚感覚提示位置16において、この力覚感覚提示位置16に位置するベルト体10,13上に乗って歩行又は走行することができる。
【0025】
ベルト体10,13は、走行ローラ23に直接掛け渡される無端帯状のベルト本体13と、このベルト本体13の外周側に設けられた人体支持部10とを備えている。
【0026】
人体支持部10は、ベルト本体13と同様に無端帯状ベルトとして構成されており、走行ローラ23の回転に伴ってベルト本体13が回転すると、人体支持部10もベルト本体13と一体に回転する。
人体支持部10は、複数の袋体11をベルト周方向に連結して構成されている。各袋体11には、その内部の流体量によって、密度の粗密を変更可能に充填材が充填されており、この充填材を保持する充填材保持部15が形成されている。これにより、人体支持部10の全体にわたって充填材が略均等に分散されるため、人体支持部10の回転が、効率よく行なわれることとなる。
前記充填材としては、例えば、樹脂ビーズ、砂などの粒体などが挙げられる。
【0027】
人体支持部は、図2に示される人体支持部90のように、袋体91の内部に、この袋体91を周方向に区切る複数の区切り部92が設けられていてもよい。
袋体91には、周方向端部のそれぞれに、当該周方向端部同士を互いに連結する連結部93,94が設けられている。袋体91は、走行ベルトの外径面に巻かれ、周方向端部それぞれの連結部93,94を互いに連結させることにより、無端帯状の袋体となる。
【0028】
また、人体支持部は、図3(a)に示される人体支持部100のように、流体量によって、密度の粗密を変更可能に充填材が充填されている袋体101からなり、その内部に、袋体101を周方向に区切っている複数の区切り部102が設けられていてもよい。
【0029】
区切り部102は、この区切り部102により区切られた互いに隣り合う第1の袋部101aと第2の袋部101bとが径方向内方で連接している連接部102と、第1の袋部101aの周方向端面101a−1と第2の袋部101bの周方向端面101b−1とが径方向外方で互いに対向している端面対向部102bとを有している。
【0030】
区切り部102は、人体支持部がベルト体と一体にローラの表面上を回転するに際して、端面対向部102bにおける第1の袋部101aの周方向端面101a−1と第2の袋部101bの周方向端面101b−1との間が離隔し、連接部102を屈曲支点として屈曲しながら、ローラの表面上をベルト体と一体に回動するように構成されている。
このように、人体支持部100がベルト体と一体にローラの表面上を回転するに際して、周方向端面101a−1と周方向端面101b−1との間が離隔し、連接部102aが屈曲支点として屈曲するため、人体支持部100は、ローラの表面上を容易に回動することができる。
また、人体支持部100は、このように、充填材が充填されている袋体101が複数の区切り部102により区切られているため、人体支持部100の回転中に、当該人体支持部100内部における充填材の偏りの発生を抑制することができる。
【0031】
人体支持部は、図3(b)に示される人体支持部110のように、袋体121の内部に、この袋体121よりも小さい袋体111が内包され、この袋体111には、密度の粗密を変更可能に充填材が充填され、この袋体111の内部に、袋体111を周方向に区切っている複数の区切り部112が設けられていてもよい。
【0032】
人体支持部110は、このように、充填材が充填されている袋体111が複数の区切り部112により区切られているため、人体支持部110の回転中に、この人体支持部110内部における充填材の偏りの発生を抑制することができる。
【0033】
図1に示されるトレッドミルにおいては、各袋体11には、袋体11の内部の流体量を調整する流体量調整部である蛇腹ポンプ12が接続されている。
この蛇腹ポンプ12は、図4に示されるように、接続部17を介して袋体11の内部の流体量を変えることができるように接続されている。これにより、蛇腹ポンプ12は、袋体11の内部の流体量を独立してそれぞれ調節することができる。
【0034】
この蛇腹ポンプ12の上面には、蛇腹ポンプ支持ベルト14が固定されている。この蛇腹ポンプ支持ベルト14は、複数の袋体11それぞれに接続されている蛇腹ポンプ12のすべてを、制御可能に支持している。これにより、1つの蛇腹ポンプ支持ベルト14により複数の袋体11それぞれに接続されている蛇腹ポンプ12のすべてを制御することができる。
【0035】
蛇腹ポンプ12の制御は、蛇腹ポンプ支持ベルト14を介して蛇腹ポンプ制御部20により行なわれる。
この蛇腹ポンプ制御部20は、図4に示されるように、蛇腹ポンプ12の上面に配設された蛇腹ポンプ支持ベルト14をガイドするガイド部21と、このガイド部21を上下に移動させるエアシリンダ22とからなる。
蛇腹ポンプ制御部20は、力覚感覚提示位置16の上方に配置されている。
【0036】
ガイド部21は、図4に示されるように、蛇腹ポンプ12の上面に配設された蛇腹ポンプ支持ベルト14を周方向に回動可能にガイドするガイドローラ21bと、このガイドローラ21bを鉛直方向上下に変更可能に支持するガイドローラ支持部21aとからなる。
ガイド部21は、図4に示されるように、エアシリンダ22と連結している。これにより、ガイド部21の鉛直方向高さは、エアシリンダ22により変更可能に設定することができる。
【0037】
トレッドミル本体25には、図4に示されるように、設けられているエアシリンダ22を支持するエアシリンダ支持部24が設けられている。これにより、エアシリンダ22は、エアシリンダ支持部24により支持されている。
【0038】
図1に示されるトレッドミル1では、力覚感覚提示位置16以外の位置に位置する人体支持部10の内部の流体量は、人体支持部10の内部の圧力を大気圧と略同圧力に調整することができる量とされている。
【0039】
蛇腹ポンプ制御部20は、力覚感覚提示位置16に移動してきて、ガイド部21のガイドローラ21bと接触している蛇腹ポンプ支持ベルト14aの鉛直方向高さを高くするようにエアシリンダ22を稼働させ、蛇腹ポンプ12を伸張させる。これにより、この力覚感覚提示位置16に位置する人体支持部10の内部の空気が引き抜かれ、この人体支持部10の内部が負圧となる。このようにして、蛇腹ポンプ制御部20は、人体支持部10を硬化させることができる。このときの人体支持部10の硬さを第1の硬さとする。
つぎに、蛇腹ポンプ制御部20は、力覚感覚提示位置16を通り過ぎ、力覚感覚提示位置16の回転方向下流に位置している蛇腹ポンプ支持ベルト14の鉛直方向高さを低くするようにエアシリンダ22を稼働させ、蛇腹ポンプ12を非伸張状態にする。これにより、この力覚感覚提示位置16に位置する人体支持部10の内部に空気が送り込まれ、この人体支持部10の内部が常圧(大気圧)となる。このようにして、蛇腹ポンプ制御部20は、人体支持部10を、前記第1の硬さよりも柔らかい硬さである第2の硬さに軟化させることができる。
【0040】
このように、図1に示されるトレッドミル1では、蛇腹ポンプ制御部20は、蛇腹ポンプ12の蛇腹間隔を伸張させることにより、人体支持部10を第1の硬さに硬化させ、蛇腹ポンプ12の蛇腹間隔を非伸張状態である平常状態とすることにより、人体支持部10を第1の硬さよりも柔らかい硬さである第2の硬さに軟化させる。
【0041】
人体支持部10の硬さの度合いは、ガイド部21の鉛直方向高さを調節することにより、適宜設定することができる。
例えば、人体支持部10の硬さを硬くする場合、ガイド部21の鉛直方向高さは、より高くなるように調節される。これにより、蛇腹ポンプ12の蛇腹間隔が伸張され、人体支持部10の内部が負圧となり、この人体支持部10の硬さがより硬くなる。また、人体支持部10の硬さを柔らかくする場合、ガイド部21の鉛直方向高さは、より低くなるように調節される。これにより、蛇腹ポンプ12の蛇腹間隔が伸張状態から非伸張状態に近づき、人体支持部10の内部が常圧に近づき、この人体支持部10の硬さが柔らかくなる。
【0042】
つぎに、図5により、図1に示される人体支持部を採用した場合における袋体の硬さを調整することによる力覚感覚の調整方法を概略的に説明する。
図5(a)は、図1に示されるトレッドミルの人体支持部の軟化状態(平常状態)を示す概略説明図である。図5(b)は、図1に示されるトレッドミルの人体支持部の硬化状態を示す概略説明図である。
【0043】
図5(a)に示される人体支持部10においては、蛇腹ポンプ12は、非伸張状態である平常状態となっている。また、人体支持部10の内部の流体量は、人体支持部10の内部の圧力を大気圧と略同圧力に調整することができる量になっている。
このとき、袋体11の走行ベルト接触面11bと人体支持面11aとの間の長さA−Bは、平常状態の長さとなっている。
【0044】
図5(b)に示される人体支持部10においては、蛇腹ポンプ12は、伸張状態となっている。また、人体支持部10の内部の流体量は、図5(a)に示される人体支持部10の内部の流体量よりも減少しており、充填材保持部15における充填材の密度が高くなっている。
このとき、また、袋体11の走行ベルト接触面11bと人体支持面11aとの間の長さA−Cは、平常状態の長さであるA−Bよりも短くなっている。これにより、人体支持部10の硬さは、軟化状態(平常状態)の人体支持部10の硬さに比べ、硬くなっている。
【0045】
人体支持部は、図6に示される人体支持部30のように、袋体31の内部に、流体量によって、密度の粗密を変更可能に充填材である粒体が充填されている充填材保持部(粒体保持部32)と、伸縮度合いにより袋体内部の流体量を調整するためのスポンジを保持しているスポンジ保持部33とが設けられ、袋体31の外部に、電磁弁34が設けられていてもよい。図6は、人体支持部の変形例を示す概略説明図である。
【0046】
この人体支持部30の硬さは、人体支持部30の袋体31を圧縮することにより、スポンジ保持部33のスポンジを圧縮するとともに、粒体保持部32の粒体間の密度を高めて人体支持部30の内部の流体量を調整する流体量調整部である流体量調整ローラ41と、人体支持部30の内部の空気を制御可能に出し入れする電磁弁34とにより調整される。
【0047】
つぎに、図7により、図6に示される人体支持部が採用された場合における力覚感覚の調整方法を概略的に説明する。
図7(a)は、図6に示されるトレッドミルの人体支持部の硬化工程を示す概略説明図である。図7(b)は、図6に示されるトレッドミルの人体支持部の硬化状態を示す概略説明図である。
【0048】
人体支持部の硬化工程では、図7(a)に示されるように、人体支持部30の人体支持面31aに、この人体支持面31aの軸方向一端側から他端の電磁弁34側に向かって流体量調整ローラ41を転動させる。このとき、電磁弁34は、開かれており、流体量調整ローラ41の転動に応じて、人体支持部30の内部から空気が排出されるようになっている。
【0049】
このように、人体支持面31a上に、流体量調整ローラ41を転動させることにより、人体支持部30の内部の空気が電磁弁34から排出される。
このとき、袋体31における流体量調整ローラ41の転動後の部分では、粒体保持部32及びスポンジ保持部33のいずれもが圧縮され、流体量調整ローラ41の転動後の袋体31の鉛直方向高さである走行ベルト接触面31bと人体支持面31aとの間の距離A−C’が、平常状態の袋体31の鉛直方向高さである走行ベルト接触面31bと人体支持面31aとの間の距離A−Bに比べて短くなる。
【0050】
つぎに、人体支持面31aの軸方向電磁弁側端部に流体量調整ローラ41が到達すると、電磁弁34が閉じられる。このとき、図7(b)に示される袋体31の鉛直方向高さA−C’は、図7(a)に示される平常状態の袋体31の鉛直方向高さA−Bと略同じとなるか、それよりも短くなる。
その後、スポンジ保持部33は、スポンジの復元力により、平常状態に戻ろうとする。このとき、図7(b)に示されるスポンジ保持部33の鉛直方向高さである走行ベルト接触面31bとスポンジ保持部上面33aとの間の距離A−E’は、図7(a)に示される流体量調整ローラ41の転動直後のスポンジ保持部33の鉛直方向高さA−Eに比べて長くなる。なお、図7(b)に示されるスポンジ保持部33の鉛直方向高さA−E’は、平常状態のスポンジ保持部33の鉛直方向高さA−Dと略同じとなるか、それよりも短くなる。
【0051】
つぎに、図8により、図6に示される人体支持部30の袋体31の硬さを制御する制御システムを説明する。
図8(a)は、図6に示されるトレッドミルの人体支持部の袋体の硬さを制御する制御システムの構成を示す概略説明図である。図8(b)は、トレッドミルの人体支持部の位置関係を示す概略説明図である。
【0052】
前記制御システムは、図8(a)に示されるように、人体支持部30の各袋体31それぞれに配設されている電磁弁34の開閉を制御する制御部36とポンプ35とを備えている。
【0053】
前記制御システムにおいて、1つの袋体31が、図8(b)に示される力覚感覚提示位置P1の上流の位置P7に移動してくると、制御部36は、この袋体31に配設されている電磁弁34を開き、当該袋体31の内部の空気を排出させるように制御する。これにより、当該袋体31の内部の流体量が減少する。
つぎに、前記袋体31が力覚感覚提示位置P1に移動してくると、制御部36は、この袋体31に配設されている電磁弁34を閉じる。これにより、当該袋体31が硬化する。
その後、制御部36は、前記袋体31が力覚感覚提示位置であるP1を通り過ぎ、力覚感覚提示位置P1の下流の位置P2に移動してくると、この袋体31に配設されている電磁弁34を開くとともに、この電磁弁34に接続されているポンプ35を稼働させ、当該袋体31の内部に空気を送り込むように制御する。
【0054】
また、人体支持部は、図9に示される人体支持部50のように、袋体51の内部に、伸縮度合いにより袋体内部の流体量を調整するためのスポンジを保持しているスポンジ保持部52が設けられ、袋体51の外部に、電磁弁54が設けられていてもよい。図9は、本発明の力覚感覚調整装置の一実施の形態に係るトレッドミルの人体支持部の変形例を示す概略説明図である。
【0055】
図9に示される人体支持部50は、図8に示される制御システムと同様のシステムにより制御することができる。
【0056】
つぎに、図10により、図9に示される人体支持部が採用された場合における袋体の硬さを調整することによる力覚感覚の調整方法を概略的に説明する。
図10(a)は、図9に示されるトレッドミルの人体支持部の硬化工程を示す概略説明図である。図10(b)は、図9に示されるトレッドミルの人体支持部の硬化状態を示す概略説明図である。
人体支持部50の袋体51の硬さは、流体量調整部である流体量調整ローラ41及び電磁弁54により調整される。
【0057】
人体支持面の硬化工程では、図10(a)に示されるように、袋体51の上面に、この袋体51の上面の軸方向一端側から他端の電磁弁54側の方向に流体量調整ローラ41を転動させる。このとき、電磁弁54は、開かれており、流体量調整ローラ41の転動に応じて、人体支持部50の内部から空気が排出されるようになっている。
【0058】
このように、袋体51の上面に、流体量調整ローラ41を転動させることにより、袋体51の内部の空気及びスポンジ保持部52に内包されている空気が電磁弁54から排出される。
このとき、平常状態の袋体51に比べ、当該袋体51の内部の流体量が減少する。その結果、袋体51全体が圧縮される。
袋体51における流体量調整ローラ41の転動後の部分では、流体量調整ローラ41の転動後の袋体51の鉛直方向高さA−Cが、平常状態の袋体31の鉛直方向高さA−Bに比べて短くなる。
【0059】
つぎに、袋体51の上面の軸方向電磁弁側端部に流体量調整ローラ41が到達すると、電磁弁54が閉じられる。このとき、袋体51は、図10(b)に示される硬化状態となる。
【0060】
袋体51では、袋体51の鉛直方向高さA−C’は、平常状態の袋体51の鉛直方向高さA−Bと略同じ高さか、それよりも低くなる。
また、硬化状態の袋体51の内部のスポンジ保持部52は、スポンジの復元力により、平常状態に戻ろうとする。このとき、スポンジ保持部52の鉛直方向高さA−E’は、流体量調整ローラ41の転動直後のスポンジ保持部33の鉛直方向高さA−Eに比べて長くなる。
【0061】
本発明においては、前記人体支持面には、立体形状を形成させてもよい。
図11は、本発明の力覚感覚調整装置の一実施の形態に係るトレッドミルの人体支持面に立体形状を形成させる形状造形部を示す概略説明図である。図11は、形状造形部をわかりやすく説明するために、袋体61の内部の流体量を調整する流体量調整部を省略して記載されている。
【0062】
図11に示されるトレッドミル80において、人体支持部60の回転方向上流に、人体支持面に凹部72aを形成させる凸状の突起部である凹部形成部82を有する略円筒状の凹凸形状造形部81が配置されている。
この凹凸形状造形部81は、走行ローラ83の回転により、走行ベルト62が回転するとともに人体支持部60の回転方向上流から移動してくる袋体61の人体支持面に凹凸形状造形部81を押し当てながら、袋体61の移動に伴い回転して、この袋体61の人体支持面に、凹部72aと凸部72bとからなる凹凸部72が形成されることになる。
これにより、人体における当該人体と凹凸部7との接触感覚の変化に伴う力覚の変化を作り出すことができる。
【0063】
なお、本発明においては、力覚感覚調整装置は、図11に示される力覚感覚調整装置であるトレッドミル80において、袋体61の内部の流体量を調整する流体量調整部を備えておらず、人体支持部60と、形状造形部である凹凸形状造形部81とを備えるものであってもよい。かかるトレッドミルでは、人体支持部60が、この人体支持部60の人体支持面を可逆的に変形させて、維持する充填材が充填され、凹凸形状造形部81は、人体支持部60の人体支持面に当接して、この人体支持面の形状を変形させて前記人体に対して与えられる力覚感覚が調整されるように構成されていればよい。
【0064】
以上のように、本発明の力覚感覚調整装置及び力覚感覚の調整方法によれば、人体に対して与えられる力覚感覚を簡単に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の力覚感覚調整装置の一実施の形態に係るトレッドミルの概略説明図である。
【図2】本発明の力覚感覚調整装置の一実施の形態に係るトレッドミルの人体支持部の変形例の鉛直方向上面の概略説明図である。
【図3】本発明の力覚感覚調整装置の一実施の形態に係るトレッドミルの人体支持部の変形例の側方断面の概略説明図である。
【図4】図1に示されるトレッドミルの側方断面の概略説明図である。
【図5】図5(a)は、図1に示されるトレッドミルの人体支持部の軟化状態(平常状態)を示す概略説明図である。図5(b)は、図1に示されるトレッドミルの人体支持部の硬化状態を示す概略説明図である。
【図6】本発明の力覚感覚調整装置の一実施の形態に係るトレッドミルの人体支持部の変形例を示す概略説明図である。
【図7】図7(a)は、図6に示されるトレッドミルの人体支持部の硬化工程を示す概略説明図である。図7(b)は、図6に示されるトレッドミルの人体支持部の硬化状態を示す概略説明図である。
【図8】図8(a)は、図6に示されるトレッドミルの人体支持部の制御システムの構成を示す概略説明図である。図8(b)は、トレッドミルの人体支持部の位置関係を示す概略説明図である。
【図9】本発明の力覚感覚調整装置の一実施の形態に係るトレッドミルの人体支持部の変形例を示す概略説明図である。
【図10】図10(a)は、図9に示されるトレッドミルの人体支持部の硬化工程を示す概略説明図である。図10(b)は、図7に示されるトレッドミルの人体支持部の硬化状態を示す概略説明図である。
【図11】本発明の力覚感覚調整装置の一実施の形態に係るトレッドミルの人体支持面に立体形状を形成させる形状造形部を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0066】
1 トレッドミル
10 ベルト体(人体支持部)
11 袋体
11a 人体支持面
11b 走行ベルト接触面
12 蛇腹ポンプ
13 ベルト体(ベルト本体)
14 蛇腹ポンプ支持ベルト
14a ガイドローラ接触部
15 充填材保持部
16 力覚感覚提示位置
17 接続部
20 蛇腹ポンプ制御部
21 ガイド部
21a ガイドローラ支持部
21b ガイドローラ
22 エアシリンダ
23 走行ローラ
24 エアシリンダ支持部
25 トレッドミル本体
26 上流ガイドローラ
27 下流ガイドローラ
30 人体支持部
31 袋体
31a 人体支持面
32 粒体保持部
33 スポンジ保持部
33a スポンジ保持部上面
34 電磁弁
35 ポンプ
36 制御部
41 流体量調整ローラ
50 人体支持部
51 袋体
52 スポンジ保持部
54 電磁弁
55 ポンプ
56 制御部
60 人体支持部
60a 平面状人体支持部
60b 凹凸状人体支持部
61 袋体
62 走行ベルト
71 平面状人体支持部
72 凹凸部
72a 凹部
72b 凸部
80 トレッドミル
81 凹凸形状造形部
82 凹部形成部
83 走行ローラ
90 人体支持部
91 袋体
92 区切り部
93 連結部
94 連結部
100 人体支持部
101 袋体
101a 第1の袋部
101a−1 周方向端面
101b 第2の袋部
101b−1 周方向端面
102 区切り部
102a 連接部
102b 端面対向部
110 人体支持部
111 袋体
112 区切り部
121 袋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体に対して与えられる力覚感覚を調整する力覚感覚調整装置であって、
人体を支持するとともに、当該人体に対して力覚感覚を提示する人体支持面を有する袋体からなる人体支持部と、
前記人体支持部の内部の流体量を調整する流体量調整部と、
を備え、
前記人体支持部は、その内部の流体量によって、密度の粗密を変更可能に充填材が充填されており、
前記流体量調整部は、前記流体量を調整することによって、この充填材の密度の粗密に応じて人体支持部の硬さを変更して前記人体に対して与えられる力覚感覚が調整されるように構成されていることを特徴とする力覚感覚調整装置。
【請求項2】
前記人体支持面が、人体の足裏を支持する面である請求項1記載の力覚感覚調整装置。
【請求項3】
円筒状の複数のローラと、
前記複数のローラに、周方向回転可能に掛け渡されるベルト体と、
をさらに備え、
前記ベルト体が人体支持部を備え、この人体支持部が、当該ベルト体と一体に回転するように構成されている請求項1又は2に記載の力覚感覚調整装置。
【請求項4】
前記袋体が、無端帯状の袋体である請求項3記載の力覚感覚調整装置。
【請求項5】
前記袋体の内部には、この袋体を周方向に区切っている複数の区切り部が設けられている請求項4に記載の力覚感覚調整装置。
【請求項6】
前記区切り部は、この区切り部により区切られた互いに隣り合う第1の袋部と第2の袋部とが径方向内方で連接している連接部と、
前記第1の袋部の周方向端面と前記第2の袋部の周方向端面とが径方向外方で互いに対向している端面対向部と、
を有しており、
前記区切り部は、前記人体支持部が前記ベルト体と一体にローラの表面上を回転するに際して、前記端面対向部における前記第1の袋部の周方向端面と前記第2の袋部の周方向端面との間が離隔し、前記連接部を屈曲支点として屈曲しながら、前記ローラの表面上を前記ベルト体と一体に回動するように構成されている請求項5記載の力覚感覚調整装置。
【請求項7】
前記流体量調整部は、前記人体支持部の回転中に、この人体支持部の内部の流体量を調整して、当該人体支持部を硬化又は軟化させるように構成されている請求項3〜6のいずれかに記載の力覚感覚調整装置。
【請求項8】
前記流体量調整部は、前記ベルト体の鉛直方向上方に位置するように設けられている人体に対して調整された力覚感覚を提示する力覚感覚提示位置に位置する人体支持部の内部の流体量を減少させることにより当該人体支持部の硬さが第1の硬さとなるように硬化させるとともに、前記力覚感覚提示位置の回転方向下流に位置する人体支持部の内部の流体量を調整することにより、前記人体支持部の硬さが前記第1の硬さよりも柔らかい第2の硬さとなるように軟化させるように構成されている請求項3〜7のいずれかに記載の力覚感覚調整装置。
【請求項9】
前記人体支持部の人体支持面を変形する形状造形部をさらに備え、
前記流体量調整部は、前記形状造形部により人体支持面が変形された人体支持部の内部の流体量を減少させることにより当該人体支持部を硬化させるように構成されている請求項3〜8のいずれかに記載の力覚感覚調整装置。
【請求項10】
人体に対して与えられる力覚感覚を調整する力覚感覚調整装置であって、
人体を支持するとともに、当該人体に対して力覚感覚を提示する人体支持面を有する袋体からなる人体支持部と、
前記人体支持部の人体支持面を変形する形状造形部と、
を備え、
前記人体支持部は、この人体支持部の人体支持面を可逆的に変形させて、維持する充填材が充填されており、
前記形状造形部は、人体支持部の人体支持面に当接して、この人体支持面の形状を変形させて前記人体に対して与えられる力覚感覚が調整されるように構成されていることを特徴とする力覚感覚調整装置。
【請求項11】
人体に対して与えられる力覚感覚の調整方法であって、
流体量によって、密度の粗密を変更可能に充填材が充填されており、人体を支持するとともに、当該人体に対して力覚感覚を提示する人体支持面を有する袋体からなる人体支持部の人体支持面を変形させ、
その後、この人体支持部の内部の流体量を調整することによって、前記充填材の密度の粗密に応じて前記人体支持部の硬さを変更して前記力覚感覚を調整することを特徴とする力覚感覚の調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−183607(P2009−183607A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29061(P2008−29061)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)