加圧式浸透装置
【課題】効率的にアルカリケイ酸塩浸透材をコンクリートに浸透できると共に、横向き施工又は上向き施工においてはアルカリケイ酸塩浸透材の無駄が生じにくい加圧式浸透装置を提供する。
【解決手段】
加圧式浸透装置900は、側部が蛇腹状をなし弾性変形する袋状容器100と、袋状容器100の袋底部101に設けられ剛性を有し袋状容器100の内容積を縮小するために押圧される加圧プレート300とを有する。開口縁が内側に向けて曲成されその縁部が前記開口縁に向けて肉薄になるように肉厚が変化する袋状容器100の肉薄部110が、吸水材200に含有されるアルカリケイ酸塩浸透材の漏れを防ぐ。
【解決手段】
加圧式浸透装置900は、側部が蛇腹状をなし弾性変形する袋状容器100と、袋状容器100の袋底部101に設けられ剛性を有し袋状容器100の内容積を縮小するために押圧される加圧プレート300とを有する。開口縁が内側に向けて曲成されその縁部が前記開口縁に向けて肉薄になるように肉厚が変化する袋状容器100の肉薄部110が、吸水材200に含有されるアルカリケイ酸塩浸透材の漏れを防ぐ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの劣化を防止するアルカリ珪酸塩浸透材を、効率的にコンクリートに加圧浸透させるための加圧式浸透装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート構造物の劣化は、地震力及び荷重等の外力によるものを除けば、コンクリート自体の劣化と鉄筋の腐食によるものである。それらを原因又は症状に基づいて分類すると、(1)中性化、(2)塩害、(3)硫酸塩浸食、(4)凍害、(5)アルカリ骨材反応のようになり、現実に起こる劣化はこれの複数原因又は症状が同時に進行する。
【0003】
これらの劣化は、全て、水を媒体にした物理・化学反応である。いわゆる生コンクリートは余剰の水分を含んでいるが、凝固乾燥とともに、セメント硬化体に化学的に取り込まれた水分及びセメント硬化体を構成するいわゆるC−S−Hゲルの中に捕捉又は吸着されたゲル水以外の水分は漸次蒸発し乾燥状態になる。このC−S−Hゲルは、セメントの水和反応によって生成するコンクリートの主要強度成分であり、単純な化学式では表せないが、3CaO・2SiO2・3H2Oが近いとされている。天然に存在する鉱物であるトベルモライトに近い構造を持つといわれている。
【0004】
雨水又は海水が吸水又は透水(圧力を伴う)という形で、コンクリート内部に侵入する際、種々の有害な物質を伴うので、内部の物質との間で劣化化学反応を引き起こす。また、それだけではなく、元々内部に存在している物質間(乾燥状態では安定していたにも拘わらず)での有害な化学反応が、水を媒体にして励起されたり、活性化される。
【0005】
従って、外部からの水の侵入を防止するか、又は大巾に減少させることにより、コンクリート内部を乾燥状態に保てれば、劣化の進行を止めるか、又は大巾に減少させることができる。
【0006】
コンクリートの吸水及び透水を防止してコンクリートを保護するための一般的な方法は、その表面を防水施工するか、又は仕上げ(塗装、吹付け、金属パネル、タオル等)加工を施す方法である。
【0007】
例えば、特許文献1には、珪酸ナトリウムを主成分とした無機質浸透性防水剤をコンクリートに塗布又は注入して、乾燥後に散水を数回繰り返すことによってコンクリートに浸透させる技術が記載されている。
【0008】
しかし、特許文献1に記載の技術は、コンクリートに浸透させるため、塗布又は注入して乾燥させたのち、乾燥及び散水を5〜7時間待ちながら少なくとも3回繰り返す必要があり、作業が非常に煩雑で、長時間を要するという問題点がある。
【0009】
特許文献2には、珪酸ソーダと珪酸カリとをモル比で1:1に混合し、更に水酸化ナトリウムを添加したコンクリート改質材が提案されており、水酸化ナトリウムの添加量を調節することによってゲル化の速度を調節する技術が記載されている。
【0010】
しかし、特許文献2記載の技術は、コンクリートとカルシウムとの反応を促進させるために散水を行う必要があり、作業性が良いとは言えない。
【0011】
特許文献3には、硝酸カルシウム水溶液を、アルカリ珪酸塩浸透材と相前後してコンクリートに浸透させることにより、コンクリートの半固体ゲル化反応を促進してコンクリートの劣化を防止する技術が記載されている。
【0012】
アルカリ珪酸塩浸透材は、ナトリウム珪酸塩溶液又はナトリウム珪酸塩とカリウム珪酸塩の混合溶液を主成分とし、他に少量の特殊金属酸化物を含むものである。
【0013】
コンクリートの骨材以外の部分であるセメント硬化体は多孔質の固体ゲルであり、0.01μm〜数μmの範囲の空隙を持ち、これは毛細管空隙と呼ばれる。この空隙は、セメントの水和反応によって生成したC−S−Hゲル間に残った余剰水が水和の終結と共に徐々に蒸発して空隙化したものである。コンクリート内部には、毛細管空隙の他に、(1)ひび割れ又は凝結時の分離沈降によって生じた空隙、(2)AE材使用による気泡(数10μm〜1000μm)、(3)ゲル空隙(1nm〜4nm)がある。この(1)の空隙は漏水の原因となるものであるが、この空隙は、毛細管空隙より遙かに大きく、アルカリ珪酸塩のゲル化反応では対処できない。通常、シール材又はエポキシ樹脂の注入により補修される。但し、ヘアークラックとよばれる0.1mm幅以下の空隙であれば、アルカリ珪酸塩浸透材でも対処可能である。また、(2)は独立気泡であり、(3)に含まれる水はゲルに強く拘束されていて、共に劣化化学反応には関与しない。
【0014】
コンクリート内部には、主要強度成分であるC−S−Hゲルの他に、多量(セメント量の約1/3)の水酸化カルシウムCa(OH)2の結晶が存在し、その一部(溶解度0.18g/100gH2O)は毛細管空隙内で溶解している。また、セメント中には当初からアルカリ分(酸化ナトリウムNa2O、酸化カリウムK2O)が含まれるので、毛細管空隙中に水分が存在すると、ナトリウムイオンNa+、カリウムイオンK+、水酸化物イオンOH−及びカルシウムイオンCa2+が溶解し、本来は強塩基性(pH12.5〜13.5)である。
【0015】
毛細管空隙にアルカリ珪酸塩が浸透すると、それが溶液中のカルシウムイオンを取り込んでガラス質の半固体ゲルに変化する。このゲルは水分の多い環境下では、充分な水分(ゲル水)を吸収して体積を増し、空隙を塞ぐ。この状態では、液体及び気体の出入りが遮断される。一方、乾燥時(ゲル水は通常の遊離水よりも蒸発しにくい)には、乾燥ゲルとなって体積が減少し、気体(酸素、二酸化炭素、水蒸気)はある程度、流通する。
【0016】
このような性質を利用して、水及び海水の侵入を防止又は抑制し、それによってコンクリートの劣化の進行を遅らせ、延命を図るのに使われるのがアルカリ珪酸塩浸透材である。
【0017】
アルカリ珪酸塩浸透材は、コンクリート内で生成する半固体ゲル(カルシウムアルカリ珪酸塩)が、セメント又はガラスと似た組成(酸化珪素、酸化カルシウム、酸化アルカリ)で、全て無機質であり、紫外線又は温度変化による経年変質がほとんどないという長所がある。また施工後もコンクリート表面の外観にほとんど変化がない。よって、材齢の若いコンクリートであれば、本来の肌理及び色を長期間にわたり保つことができる。
【0018】
そして、一般の防水のように薄い被膜による防水ではなく、ある厚さ(コンクリートの密実さによって数cm〜10cm)に広がった防水性のある層を形成するので、表面での機械的摩耗及び引っかき傷には強い。また、コンクリートの背面からの水圧をともなった透水(建物地中壁、地下ピット、擁壁、トンネル、水槽等)に対して、補修手段として極めて有効である。
【0019】
一般的なアルカリケイ酸塩浸透材の施工要領では、下向き施工(床施工)の場合、散布器等を使用して、床の上に厚み0.3〜1.0mmで散布される。また、横向き施工(壁施工)及び上向き施工(天井施工)の場合は、ローラ等を使用して、壁又は天井に塗布される。
【0020】
コンクリートの表面から内部への液の浸透は、物理的には、濡れと圧入の二つの現象によるものと考えられる。濡れによる浸透は、加圧の無い状態で、コンクリートの表面エネルギーと液の表面エネルギー(=表面張力)とのせめぎ合いによってコンクリート表面を濡らし、その一部が毛細管空隙に浸透することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特許第2937309号公報(第2頁)
【特許文献2】特開2002−239523号公報(第2〜3頁)
【特許文献3】特開2008−169068号公報(第7頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかし、一般的なアルカリケイ酸塩浸透材の施工要領では、下向き施工の場合、濡れと散布厚に相当する僅かの圧力(重力)による浸透が行われているところ、アルカリケイ酸塩浸透材のコンクリートへの浸透の程度が不十分である。これでは、アルカリケイ酸塩浸透材がコンクリートの深部へ浸透せず、劣化防止効果が不十分となる問題点がある。また、横向き施工又は上向き施工の場合においては、ローラ等を用いる濡れによる浸透が行われるところ、アルカリケイ酸塩浸透材のコンクリートへの浸透の程度が不十分であることに加えて、施工時に、ローラ等からアルカリケイ酸塩浸透材が垂れることがあり、アルカリケイ酸塩浸透材の一部が無駄になるため、コスト面での問題点が生じていた。
【0023】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、効率的にアルカリケイ酸塩浸透材をコンクリートに浸透できると共に、横向き施工又は上向き施工においてはアルカリケイ酸塩浸透材の無駄が生じにくい加圧式浸透装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明に係る加圧式浸透装置は、開口縁が内側に向けて曲成されその縁部が前記開口縁に向けて肉薄になるように肉厚が変化し、側部が蛇腹状をなし弾性変形する袋状容器と、前記袋状容器の内部に充填され、吸水性を有し圧縮されて排水する吸水材と、前記袋状容器の袋底部に設けられ剛性を有し前記袋状容器の内容積を縮小するために加圧される加圧プレートとを有することを特徴とする。
【0025】
この場合において、前記吸水材は、スポンジ状の多孔性弾性体であることが好ましい。
【0026】
また、前記吸水材は、繊維を織らずに絡み合わせた不織構造体又は不織布を積層させた積層不織布構造体であることが好ましい。
【0027】
また、前記袋状容器の開口部の外側に、突出するように均等間隔で形成された複数の第1蝶番軸受けと、前記加圧プレートの側面に、突出するように均等間隔で形成された複数の第2蝶番軸受けと、開き角度が一定値以下に制限されており、前記第1蝶番軸受けと前記第2蝶番軸受けとを接続する複数の蝶番ヒンジとを有する蝶番ユニットを有することが好ましい。
【0028】
また、一方の端部が前記加圧プレートに当接固定される加圧シャフトと、前記加圧シャフトの他方の端部に設けられるハンドルとを有し、前記ハンドルを加圧することにより、前記加圧シャフトが前記加圧プレートを加圧することが好ましい。
【0029】
また、一方の端部が前記加圧プレートに当接固定される複数本の加圧シャフトと、前記複数本の加圧シャフトの他方の端部に設けられるハンドルと、前記複数本の加圧シャフトを水平方向にスライド自在に支持する半円断面柱体の複数のシャフト受けと、前記複数のシャフト受けを支持する支柱と、前記支柱に設けられ水平方向に突出する定滑車と、一方の端部が前記ハンドルに取り付けられ、中間部が前記定滑車に巻掛され、他方の端部に錘が吊下られるワイヤーと、前記支柱を支持する支持台とを有することが好ましい。
【0030】
また、上述の場合において、前記錘を支える錘支持板と、前記錘支持板を上下方向に移動させる錘支持板移動部とを有することが好ましい。
【0031】
また、一方の端部が前記加圧プレートに当接固定される複数本の加圧シャフトと、前記複数本の加圧シャフトの他方の端部に設けられるハンドルと、前記複数本の加圧シャフトを水平方向にスライド自在に支持する複数の半円断面柱体のシャフト受けと、前記複数のシャフト受けを支持する支持体と、前記支持体に設けられ水平方向に突出する定滑車と、一方の端部が前記ハンドルに取り付けられ、中間部が前記定滑車に巻掛され、他方の端部に錘が吊下られるワイヤーと、同心円周上に均等間隔に設けられた複数の吸盤と、複数の連結軸が前記同心円の中央から放射状に配置されて前記複数の吸盤を連結する連結軸体と、前記連結軸体と前記支持体とを直結する結合体とを有することが好ましい。
【0032】
また、更に、溶液を貯留する液槽と、前記吸水材に前記溶液を導入する導入パスと、前記吸水材に含まれる溶液を排出する排出パスとを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、袋状容器の内部に充填された吸水材にアルカリケイ酸浸透材を含ませ、袋状容器の開口部に形成された肉薄部を浸透対象となるコンクリートに対して押し付け、加圧プレートを加圧することにより吸水材を押しつぶして、吸水材からアルカリケイ酸塩浸透材を絞り出すことにより、簡単な動作により、浸透対象となるコンクリート中に重力の方向に関係無く加圧浸透させることができる。また、袋状容器の開口縁が内側に向けて曲成されるようにして形成され、その縁部は開口縁に向けて肉薄になるように肉厚が変化して肉薄部を構成するから、肉薄部を浸透対象となるコンクリートに対して押し付けることで肉薄部がコンクリートに密着して、アルカリケイ酸塩浸透材が漏れにくく、コスト面において有利である。特に、横向き施工又は上向き施工の場合は、従来のローラーによる塗布施工と比較すると、無駄となるアルカリケイ酸塩浸透材が発生しにくいため、コスト面において非常に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(a),(b)は本発明の第1実施形態の加圧式浸透装置を示した断面図であり、(a)は第1実施形態の加圧式浸透装置本体を示した断面図であり、(b)は加圧式浸透装置の肉薄部を示した断面図である。
【図2】(a),(b)は本発明の第1実施形態の加圧式浸透装置を示した断面図であり、(a)は圧力をかけてアルカリケイ酸塩浸透材をコンクリートに浸透させる状態を示した断面図であり、(b)は肉薄部がアルカリケイ酸塩浸透材の漏れを防止する状態を示した断面図である。
【図3】セメントペースト硬化体中の各成分の体積関係を示す説明図である。
【図4】コンクリートへの浸透深さと浸透液の空隙充填率との関係を説明する説明図である。
【図5】(a),(b)は蝶番ユニットで袋状容器を補強した第2実施形態の加圧式浸透装置を示した断面図であり、(a)は第2実施形態の加圧式浸透装置本体を示した断面図であり、(b)は第2実施形態の加圧式浸透装置本体を底部から示した底面図である。
【図6】第2実施形態の加圧式浸透装置に圧力をかけてアルカリケイ酸塩浸透材をコンクリートに浸透させる状態を示した断面図である。
【図7】隅角部を丸められた断面四角の袋状容器を有する加圧式浸透装置を底部から示した底面図である。
【図8】(a),(b)はハンドルにて加圧する第3実施形態の加圧式浸透装置を示した側面図であり、(a)は第3実施形態の加圧式浸透装置本体を側面から示した側面図であり、(b)は底部から示した底面図である。
【図9】(a),(b)は支柱及び支柱台を有する第4実施形態の加圧式浸透装置を示した側面図であり、(a)は第4実施形態の加圧式浸透装置本体を側面から示した側面図であり、(b)は底部から示した底面図である。
【図10】第4実施形態の加圧式浸透装置を使用する際の様子を示した説明図である。
【図11】支持体に設けられた定滑車が進退移動する加圧式浸透装置の変形例を示した側面図である。
【図12】(a),(b)は施工面に加圧式浸透装置を取り付けるための吸盤を有する第5実施形態の加圧式浸透装置を示した側面図であり、(a)は第5実施形態の加圧式浸透装置本体を側面から示した側面図であり、(b)は底部から示した底面図である。
【図13】第5実施形態の加圧式浸透装置を使用する際の様子を示した説明図である。
【図14】溶液を貯留する液槽を有する第6実施形態の加圧式浸透装置を示した説明図である。
【図15】錘を支持する錘支持装置を有する第7実施形態の加圧式浸透装置を示した説明図である。
【図16】(a),(b)は錘支持装置の構造を説明する説明図であり、(a)は錘支持装置を上下させる機構を説明する説明図であり、(b)は錘支持装置を支柱に取り付ける構造を説明する説明図である。
【図17】作業台が並設された第9実施形態の加圧式浸透装置を示した側面図である。
【図18】液体の加圧浸透試験の装置を示した断面図である。
【図19】被験液が水の場合の浸透量を示す実験結果である。
【図20】被験液がアルカリケイ酸塩浸透材の場合の浸透量を示す実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(第1実施形態)
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明する。図1(a)は、加圧式浸透装置本体を示した断面図であり、図1(b)は、加圧式浸透装置の肉薄部を拡大して示した断面図である。図2(a)は、圧力をかけてアルカリケイ酸塩浸透材をコンクリートに浸透させる状態を示した断面図であり、(b)は肉薄部がアルカリケイ酸塩浸透材の漏れを防止する状態を示した断面図である。
【0036】
本実施形態に係る加圧式浸透装置900は、図1(a)に示すように、袋状容器100と、袋状容器100の内部に充填される吸水材200と、袋状容器100の袋底部に設けられる加圧プレート300とを有する。
【0037】
袋状容器100は袋底部101と、蛇腹状の側部と、上端の開口部102とから構成されている。この袋状容器100は、伸縮性を有し且つ気密性を有する材料で形成されており、例えば、ポリウレタンゴム若しくはクロロプレンゴム等の高分子ゴム製で形成され、加圧により縮小し且つ弾性により伸張する。袋状容器100の大きさは、特に限定されるものではないが、例えば直径が40〜120cm、高さが5〜10cm、厚みが0.1〜0.3cmとすることができる。
【0038】
図1(b)に示すように、袋状容器100の開口部102は、袋状容器100の開口縁が内側に向けて曲成されるようにして形成されており、その縁部は、開口縁に向けて肉薄になるように肉厚が変化して肉薄部110を形成している。
【0039】
吸水材200は、吸水性を有し且つ圧縮することにより排水性を有する材質であれば使用することができ、例えばスポンジ状の多孔性弾性体を用いることができる。スポンジ状の多孔性弾性体は、特に限定されるものではないが、例えば、メラミン樹脂を用いた緻密且つ空孔率の高い軟質フォームを材質として用いることができる。
【0040】
また、吸水材200としては、例えば、繊維を織らずに絡み合わせた不織構造体又は不織布を積層させた積層不織布構造体を用いることも可能である。不織構造体は、例えば、15〜100nm程度の短い繊維を所定の形状に固めて第1次成形体を作成して、その第1次成形体を接着剤等で所定形状に固めて製造することができる。積層不織布構造体は、例えば、複数枚の不織布を積層させて積層体を形成し、その積層体を接着材等で固めて製造することができる。
【0041】
加圧プレート300は、一方の主面が袋状容器100の袋底部101に当接するように取り付けられている。加圧プレート300は、剛性を有する材料で形成されており、特に限定されるものではないが、例えば硬質ポリプロピレン等により形成される。
【0042】
次に、第1実施形態に係る加圧式浸透装置900の使用態様について説明する。まず、袋状容器100に充填されている吸水材200に、アルカリケイ酸塩浸透材を吸収させる。
【0043】
アルカリケイ酸塩浸透材は、ナトリウム珪酸塩溶液又はナトリウム珪酸塩とカリウム珪酸塩の混合溶液を主成分とするものであり、その他に少量の特殊金属酸化物を含有する。
【0044】
次に、図1(a)で矢印A1にて示すように、袋状容器100の開口部102を浸透対象となるコンクリート500に向ける。
【0045】
そして、図2(a)で矢印A2にて示すように加圧プレート300を加圧して、袋状容器100の開口部102を浸透対象となるコンクリート500に対して押し付ける。これにより、矢印A3で示すように、吸水材200に含まれていたアルカリケイ酸塩浸透材が圧力を受けてコンクリート500に効率的に浸透する。なお、加圧とは、加圧プレート300によってコンクリート等の浸透対象表面に接する袋状容器100と吸水材200とに加えられる力の作用である。
【0046】
ここで、浸透対象となるコンクリート500の表面には多少の凹凸が存在するが、肉薄部110は先細り形状であるから、袋状容器100の開口部をコンクリート500に対して押し付けることで、肉薄部110はコンクリート500の表面に密着する。そのため、肉薄部110とコンクリート500との間に隙間が生じにくく、図2(b)で矢印A4にて示すように、アルカリケイ酸塩浸透材が漏れにくい。
【0047】
次に、カルシウムイオンを含有する水溶液を袋状容器100に充填させ、図2(a)で示すように、アルカリケイ酸塩浸透材と同様に、コンクリート500に対して浸透させる。アルカリケイ酸塩浸透材のゲル化に必要なカルシウムイオンは、コンクリート内部のカルシウムイオンを利用するものが主であるが、外部から別に供給するほうがよい。なぜならば、コンクリート内部のカルシウムイオンは、水酸化カルシウムの溶解によるもので、それを消費することはコンクリート自体の中性化を促進してしまうからである。
【0048】
カルシウムイオンの供給源となる物質(カルシウム塩)としては、充分に水溶性であること、次にゲル化後に残る物質(主として陰イオン)がコンクリート及び鉄筋に有害でないこと、更には大量に使用する上で高価でないことの三つの条件を満たす必要がある。これらを満足し、かつ入手しやすい物質として硝酸カルシウム及び塩化カルシウム等がある。
【0049】
このうち、塩化カルシウムは、濃度の制約がある、即ち、ゲル化反応後に残る塩化物イオン(Cl−)は、ある濃度(一般に、1.2kg/m3(コンクリート)といわれている)を超すと、鉄筋を腐食から守っている不働態(酸化)皮膜を破壊し、溶存酸素と協働して腐食させる可能性がある。このため、日本工業規格では、コンクリート中の塩化物イオン(Cl−1)量を、0.30kg/m3以下と0.60kg/m3以下の二段階で規制している。
【0050】
以上の理由から、塩化カルシウムの適用範囲が限られる。即ち、材齢の若いコンクリート(pH≧12)及び中性化の初期段階(pH=11.5乃至12)では、規制値の範囲内でのゲル化が可能であるが、中性化の最終段階(pH≦9.2前後)では、ゲル化に必要なカルシウムイオンは全て外部から供給してやる必要がある。
【0051】
コンクリート中には、細骨材に海砂が使用された場合には、多少とも除塩後の残留塩分が含まれており、また海中又は海岸の構造物では、雨風と共に、塩分がコンクリート内部に持ち込まれる。従って、外部から供給される塩化カルシウムによる塩化物イオン量が規制値内であっても、全体的には、塩化物イオン量が規制値を超える可能性がある。
【0052】
このような塩化カルシウムの濃度上の制約に対し、硝酸カルシウムCa(NO3)2の場合は、コンクリート及び鉄筋に害を及ぼす虞がなく、例えば、[Ca]/[Si]が0.9程度の高濃度でコンクリートに浸透させることができる。従って、カルシウムイオンを含有する水溶液は、硝酸カルシウム水溶液を使用する。
【0053】
硝酸カルシウムは濃度が増しても害がない。酸としての硝酸は強酸であり、コンクリートを激しく侵食するが、塩である硝酸カルシウムにはそのような毒性はない。[Ca]/[Si]が0.08乃至0.90の濃度では、コンクリートに浸透しても、殆ど無害であるばかりか、硝酸イオンは酸化作用を有するので、むしろ鉄筋の不働態皮膜(酸化被膜)の維持には、良い効果をもたらす。硝酸カルシウムCa(NO3)2は、純度が高いものは、火工品の原料として使用される危険物であるが、純度が低い粗硝酸カルシウムは、硝酸石灰とも呼ばれ、肥料に使用され、水に良く溶け、価格も安い。
【0054】
コンクリート500内に浸透したアルカリケイ酸塩浸透材は、カルシウムイオンと式1で示す反応により結合(ゲル化)が生じる。
【0055】
【化1】
【0056】
生成したゲルは化学的に極めて安定であり、その組成はコンクリートの主成分C−S−Hに類似している。この生成したゲルがコンクリート中の毛細管空隙を埋めることにより、コンクリートの劣化進行が抑制される。本発明によれば、加圧によってアルカリケイ酸塩浸透材及び硝酸カルシウムの浸透量、従って浸透深さを高めることができ、その結果コンクリートの劣化進行を効率的に抑制できると共に、仮に天井面若しくは横壁面に対する浸透施工であっても肉薄部110がアルカリケイ酸塩浸透材の漏れを防止するので、コスト面でも優れる。
【0057】
種々の化学物資の溶液若しくはコロイド等をコンクリートに浸透させて、コンクリートの表面に近い部分の性質を改善する試みが行われているが、コンクリート内部の空隙の径は極めて小さく数μm以下であり、浸透は容易ではない。水和反応によってセメントゲルが生成すると、それに化学的に組み込まれた水は圧縮されて体積減少が起こる。当初の体積の(セメントの体積+水和反応にあずかる水の体積)の約10%の減少が生じる。この減少を水和収縮というが、フレッシュコンクリートが流動性を保っている間に起こる水和収縮は、全体の体積が減少するだけであるが、凝結が終わり流動性を失うと、その後の体積減少は、大部分は内部空隙の発生という形で吸収され、ごく一部は外形体積の減少(収縮)をもたらす。これをコンクリートの自己収縮と呼ぶ。生じた内部空隙は当初水で満たされているが、水和反応の進行に伴ってこの空隙内の水も水和反応に使用されて次第に減少していく。残り少なくなると水膜の表面張力によって空隙壁面に対する収縮力が発生する。更に、水和反応がほぼ終了した後も、空隙(毛細管空隙)内の水分の蒸発は続くので、この収縮力は持続して外形体積の減少をもたらす。これを乾燥収縮と呼ぶ。実際のコンクリートの場合では、水量として水和反応に要する以上の量を加えている。これはセメントと水との練り混ぜがミクロ的には不完全であり、水和反応を完全に行わせるには余剰の水が必要であることと、フレッシュコンクリートを型枠に十分に流し込むにはある程度の流動性が求められるからである。
【0058】
図3は、水/セメント比(W/C)=0.5の場合、1gのセメント(実質0.32cm3)と0.5gの水との水和反応によって生じるセメントペースト硬化体の体積と、空隙(毛細管空隙とゲル空隙とがある)の体積との関係を示すものである。なお、1gのセメントの水和反応に要する水の量は、0.23g(0.23cm3)である。セメントに加えられた水は、硬化後に三つに分かれる。まず、硬化体に化学的に組み込まれた水和水、次に反応に関わることなく毛細管空隙に残る余剰水、その中間的存在であるゲル水である。ゲル水はセメント粒子と化学的に結合はしていないが、ゲルの層間に拘束された状態の水で、水和反応に加わることなく、移動が制約されている。常温ではほとんど蒸発せず、100℃以上に加熱して初めて蒸発する。その空隙(ゲル空隙)に外部からの液が浸透することはない。その量はセメント量の約15%で、硬化体の中でかなりの体積割合を占めている。「コンクリート構造物のマテリアルデザイン(オーム社)」には(W/C)=0.5の場合、全毛細管空隙量は、セメントペースト硬化体1cm3あたり0.29cm3/cm3である測定結果が掲出されている。一方、図3の硬化体モデルでは、同量は、(0.12+0.05)/(0.5+0.15+0.12+0.05)=0.21cm3/cm3である。なお、一般には、径1〜3nmをゲル空隙、5nm〜数nmを毛細管空隙(細孔)としている。
【0059】
10nm以下の空隙には、高分子コロイドの場合、分子の大きさからいって浸透はほとんどが不可能と思われる。また単分子溶液(電解質溶液も含む。)でも、溶媒である水の表面張力に妨げられて浸透は困難である。(W/C)=0.5の場合、コンクリート調合として標準的調合を採用すると、砂:1.2mm以下、砂利:20mm以下として、重量調合はフレッシュコンクリート1m3あたり、水:190kg/m3、セメント:380kg/m3、砂:577kg/m3、砂利:1188kg/m3となる。そして、外形体積の減少による収縮量は10−3のオーダーであるから無視することができ、図3によれば、水和生成物体積の実質体積:0.5×380=190リットル/m3、ゲル水:0.15×380=57リットル/m3、毛細管空隙:(0.05+0.12)×380=64.6リットル/m3(0.065cm3/cm3)である。即ち、上記の調合のコンクリートの毛細管空隙率は6.5%である。
【0060】
浸透液が空隙内に浸透するということは、空隙内の空気若しくは水を追い出しつつ、置き換わることである。その過程で100%追い出すことは不可能であり、液の空隙充填率も内部ほど低くなると考えられる。そこで、図4に示すように、コンクリート表面の最大充填率を80%とし、内部に向かって低減していく状態を仮定した上で、50%のところまでを浸透深さと定義する。そうすると平均充填率は、(80+2×75+2×65+50)/6=68.3(%)である。従って、浸透量S(mm/cm2)に対する深さD(mm)は、D=S/(0.065×0.683)=22.5Sとなり、浸透量(浸透厚さmm/cm2)の約23倍が浸透深さと考えられる。この計算式を用いれば、例えば後述の実施例にてコンクリート標準試験体に直管付きガラスロートを立設して浸透試験を行うが、コンクリートを破壊することなく浸透深さを概算することができる。
【0061】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について具体的に説明する。図5(a)は、第2実施形態の加圧式浸透装置本体を示した断面図であり、図5(b)は、第2実施形態の加圧式浸透装置の底面図である。図6は、第2実施形態の加圧式浸透装置の使用態様を説明する断面図である。図7は、断面四角の袋状容器を有する加圧式浸透装置を底部から示した底面図である。
【0062】
吸水材200にアルカリケイ酸塩浸透材が含有されると増加した重量の影響により、袋状容器100の形状が歪む可能性がある。袋状容器100の形状が意図しない形状に歪むと、対象のコンクリート500にアルカリケイ酸塩浸透材を正確に浸透させにくくなり、作業効率が低下する。そこで、第2実施形態に係る加圧式浸透装置900では、図5(a)に示すように、蝶番ユニット400を有する。蝶番ユニット400は、複数の第1蝶番軸受け411と、複数の第2蝶番軸受け412と、第1蝶番軸受け412と第2蝶番軸受け412とを接続する複数の蝶番ヒンジ420とを有する。蝶番ヒンジ420の開き角度θは、例えば120度等の一定値以下に制限されている。図5(b)に示すように、第1蝶番軸受け411は、袋状容器100の開口部102の外側に、突出するように均等間隔で形成されている。同様に、第2蝶番軸受け412も、加圧プレート300の側面に、突出するように均等間隔で形成されている。
【0063】
次に、第2実施形態に係る加圧式浸透装置900の使用態様について説明する。第1実施形態で説明した使用形態と同様に、まず吸水材200にアルカリケイ酸塩浸透材を吸収させ、次に図5(a)で矢印A1にて示すように袋状容器100の開口部102を浸透対象となるコンクリート500に向け、そして図6で矢印A2にて示すように加圧プレート300を加圧して、袋状容器100の開口部102を浸透対象となるコンクリート500に対して押し付ける。
【0064】
本実施形態では、上述の第1実施形態に係る発明の効果に加えて、蝶番ユニット400により袋状容器100を均等間隔で支持しているから、袋状容器100の形状が歪みにくく、そのため、浸透対象のコンクリート500にアルカリケイ酸塩浸透材を正確に浸透できる。更には、本実施形態では、蝶番ユニット400により袋状容器100を均等間隔で支持しているから、比較的撓みやすい材質で袋状容器100を製造することでき、加圧式浸透装置900の材料選択の幅が広がる。
【0065】
なお、上述の実施形態では、袋状容器100の形状は略円筒形状のものとしたが、この形状に限定されることはなく、吸水材200に含有させるアルカリケイ酸塩浸透材の質量、袋状容器100の使用し易さ等に応じて、種々の形状を使用することができる。例えば袋状容器100の形状は、断面楕円の筒状形状とすることができるし、また図7に示す断面形状のように、角柱体等とすることもできる。角柱体の断面の形状も隅角部を丸められた(隅角部をアール形状にした)正方形、長方形、菱形等の種々の形状を使用することができる。
【0066】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について具体的に説明する。図8(a)は、第3実施形態の加圧式浸透装置本体を示した断面図であり、図8(b)は、図8(a)における8b−8b一点鎖線における断面図である。
【0067】
図8(a)及び(b)に示すように、本実施形態に係る加圧式浸透装置900は、加圧シャフト310と、ハンドル320とを有する。加圧シャフト310の一方の端部は加圧プレート300に当接固定されている。加圧シャフト310の他方の端部はハンドルに取り付けられている。加圧シャフトは、同心円状に均等間隔で3本設けられている。
【0068】
次に、第3実施形態に係る加圧式浸透装置900の使用態様について説明する。第1実施形態で説明した使用形態と同様に、まず吸水材200にアルカリケイ酸塩浸透材を吸収させ、次に袋状容器100の開口部102を浸透対象に向ける。そしてハンドル320を両手で握り、加圧プレート300の方向へハンドル320を押し付ける。これにより図8(a)で矢印A4にて示す方向に加圧プレート300は加圧され、袋状容器100の開口部102からアルカリケイ酸塩浸透材が浸透対象に対して浸透する。
【0069】
本実施形態では、上述の第1実施形態に係る発明の効果に加えて、ハンドル320を両手で握ることにより操作者の加圧動作を加圧プレート300に対して伝えやすい。そのため、利便性よく浸透対象にアルカリケイ酸塩浸透材を簡単に浸透できる。更には、加圧シャフト310を加圧プレート300に取付け自在に構成すれば、ハンドル320と加圧シャフト310とを別途作業現場に輸送させることができ、本実施形態の加圧式浸透装置900の利便性が向上する。なお、上述の実施形態では加圧シャフト310は3本設けているが、この実施形態に限定されることはなく、4本以上設けることも可能である。
【0070】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について具体的に説明する。図9(a)は、第4実施形態の加圧式浸透装置本体を示した断面図であり、図9(b)は、図9(a)における9b−9b一点鎖線における断面図である。
【0071】
上述の実施形態においては、人力により加圧プレート300の加圧動作を行うものであるが、作業現場では人力による加圧動作を要せず、更に簡易に加圧プレート300の加圧動作を行うものが要請される。そこで、第4実施形態に係る加圧式浸透装置900では、図9(a)に示すように、複数本の加圧シャフト631,632,633と、ハンドル640と、複数本の加圧シャフト631,632,633を支持する複数のシャフト受け621,622,623と、支柱610と、支柱610に設けられる第1定滑車651と、ワイヤーWと、支柱610を支持する支持台670とを有する。
【0072】
加圧シャフト631,632,633は、一方の端部が加圧プレート300の他方の主面に当接固定されている。また、加圧シャフト631,632,633の他方の端部には、ハンドル640が取り付けられている。シャフト受け621,622,623は半円断面柱体の形状であり、加圧シャフト631,632,633を水平方向にスライド自在に支持する。支柱610は、複数段の柱体から構成されており、例えば第1支柱610aと、第2支柱610bと、第3支柱610cとを有する。図9(b)に示すように、第1支柱610aの中腹部には第1支柱分岐611aが設けられている。第1支柱分岐611aは例えば板状体であり、第1支柱610aを貫通して例えば溶接等により固定されている。第1支柱分岐611aの両端部には、夫々シャフト受け622,623が取り付けられており、また第1支柱610aの頂部にはシャフト受け621が取り付けられ、このようにして第1支柱610aは、シャフト受け621,622,623を支持している。第1定滑車651は、第1支柱610aに設けられており、水平方向に突出している。また、第2定滑車652は第2支柱610bに設けられており、第1定滑車651の下方に位置する。
【0073】
ワイヤWはハンドル640と錘660とを連結する。即ち、ワイヤWの一方の端部は図9(a)及び(b)で示されるように3方向に分岐しており、夫々がハンドル640に取り付けられている。3方向に分岐したワイヤWのハンドル640への取付けは種々の形態を利用することができ、例えば3方向に分岐したワイヤWの先端にフックを設け、対応するハンドル640の被取付け箇所にもフックを設ける形態を採用することができる。ワイヤWの中間部が第1定滑車651に巻掛される共に第2定滑車652に掛けられている。ワイヤWの他方の端部には錘660が吊下られている。ワイヤWの錘660への取付けも種々の形態を利用することができ、例えばワイヤWの先端にフックを設け、対応する錘の被取付け箇所にもフックを設ける形態を採用することができる。
【0074】
支持台670は、袋状容器100、ケイ酸塩浸透材を含有する吸水材200、ハンドル640、支柱610、錘660等の支持台670より上方に設けられる全ての物を安定して支えられると共に、加圧浸透時の被加圧コンクリートからの反力による転倒モーメントにも耐えられるだけの重量と大きさを有する。
【0075】
次に、第4実施形態に係る加圧式浸透装置900の使用態様について説明する。
図10(a)に示すように、支持台670の上に第3支柱610cを立設させ、その第3支柱610cに第2支柱610bを連結させ、更に第2支柱610bに第1支柱610aを連結させる。次に、図10(b)に示す加圧シャフト631,632,633を、矢印B1で示すように夫々シャフト受け621,622,623に載置する。次に図9(a)で矢印A8にて示すように袋状容器100の開口部102を浸透対象となるコンクリート500に向ける。そして、図9(a)に示すように、ワイヤWの3方向に分岐している先端をハンドル640に取り付け、中間部を第1定滑車651に巻掛される共に第2定滑車652に掛け、ワイヤWの他方の端部に錘660を取り付ける。これにより、図9(a)に矢印A5で示すように錘660によりワイヤWが鉛直下方に張力を受け、第1定滑車651に巻掛されているワイヤWが図9(a)に矢印A6で示す方向に張力を受け、図9(a)に矢印A7で示す方向にハンドル640及び加圧シャフト631,632,633が移動し、これにより加圧プレート300が全加力を受け、袋状容器100の開口部102を浸透対象となるコンクリート500に対して押し付ける。なお、全加力とは予め指定された錘660の重量に基づく加力である。加力とは、錘660に働く重力により生じるワイヤWの張力によって、加圧プレート300に伝達される加圧シャフトの圧縮力である。
【0076】
本実施形態では、上述の第1実施形態に係る発明の効果に加えて、人力による加圧動作を要せずに錘660の重力により加圧動作を行うので、より加圧動作の省力化を図ることができる。また、支柱610は複数段からなる構成であるので、作業現場に到着する前はパーツごとに輸送して、それらを作業現場にて組み立てることで、利便性よく本実施形態の加圧式浸透装置900を使用できる。更に、支柱610を使用することで、高い位置にある浸透対象に対しても容易にアルカリケイ酸塩浸透材を浸透できる。なお、上述の実施形態においては、支柱610は、三段の柱体から構成されていたが、このような形態に限定されず、浸透対象の高さに応じて種々の段数に分割構成することができる。
【0077】
また、上述の実施形態では、第2定滑車652は、第1支柱610aに対して固着されているものであったが、図11にて矢印で示すように、第2定滑車652を支える滑車軸6521は、第1支柱610aに対して垂直方向に進退自在に構成することも可能である。この変形例によれば、仮に、浸透対象が地面に対して斜めに位置する場合であっても、滑車軸6521を第1支柱610aに対して遠ざかる(進む)ように延伸することで、ワイヤWに吊り下げられている錘660が支柱610に衝突することを避けることができる。そのため、支柱610の破損が起こりにくい。
【0078】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について具体的に説明する。図12(a)は、第5実施形態の加圧式浸透装置本体を示した断面図であり、図12(b)は、図12(a)における12b−12b一点鎖線における断面図である。
【0079】
上述の第4実施形態に係る加圧式浸透装置900は、錘660の重力により加圧動作を行うと共に、支柱610を用いて高い位置にある浸透対象にアルカリケイ酸塩浸透材を浸透するものであるが、施工可能な高さには限界があり、また壁面が傾斜している場合は、垂直からの傾斜角度(勾配)にも限度がある。高さの限界は約6mであり、傾斜勾配の限度は1/5程度である。そこで、第5実施形態に係る加圧式浸透装置900では、図12(a)に示すように、複数本の加圧シャフト631,632,633と、ハンドル640と、複数本の加圧シャフト631,632,633を支持する複数のシャフト受け621,622,623と、支持体670と、支持体670に設けられる第1定滑車651と、ワイヤーWと、複数の吸盤711,712,713と、複数の吸盤711,712,713を連結する連結軸体730と、結合体680とを有する。
【0080】
加圧シャフト631,632,633は、一方の端部が加圧プレート300の他方の主面に当接固定されている。また、加圧シャフト631,632,633の他方の端部には、ハンドル640が取り付けられている。シャフト受け621,622,623は半円断面柱体の形状であり、加圧シャフト631,632,633を水平方向にスライド自在に支持する。支持体670は柱形状であり、支持体670の中腹部には支持体分岐671が設けられている。支持体分岐611aは例えば板状金属体(フラットバー)であり、支持体670を貫通して例えば溶接等により固定されている。支持体分岐671の両端部には、夫々シャフト受け622,623が取り付けられており、また支持体670の頂部にはシャフト受け621が取り付けられ、このようにして支持体670は、シャフト受け621,622,623を支持している。第1定滑車651は、支持体670に設けられており、水平方向に突出している。また、第2定滑車652も支持体670に設けられており、第1定滑車651の下方に位置する。
【0081】
ワイヤWはハンドル640と錘660とを連結する。即ち、ワイヤWの一方の端部は図11(a)及び(b)で示されるように3方向に分岐しており、夫々がハンドル640に取り付けられている。3方向に分岐したワイヤWのハンドル640への取付けは種々の形態を利用することができ、例えば第4実施形態で説明したようにフックにて取り付けることが可能である。ワイヤWの中間部が第1定滑車651に巻掛される共に第2定滑車652に掛けられている。ワイヤWの他方の端部には錘660が吊下られている。ワイヤWの錘660への取付けも種々の形態を利用することができ、例えば第4実施形態で説明したようにフックにて取り付けることが可能である。
【0082】
図12(b)に示すように、吸盤711,712,713は、後述するように、浸透対象であるコンクリート500に吸着させるためのものであり、これらは同心円周上に均等間隔に配置されている。図12(a)及び(b)に示すように、連結軸体730は、夫々が略L字形状の連結軸731a,731b,731cを中央部732から放射状に配置して構成され、吸盤711,712,713を連結する。
【0083】
図13(b)に示すように、連結軸体730の中央部732の内部には、雌溝部733が形成されている。また、支持体670の中腹部に設けられている結合体680には雄溝部681が形成されている。そして、雌溝部733に雄溝部681が嵌め込まれることにより、連結軸体730と支持体670とが直結される。
【0084】
次に、第5実施形態に係る加圧式浸透装置900の使用態様の一例について説明する。まず、図13(b)にて矢印B3で示すように、吸盤711,712,713を浸透対象であるコンクリート500に吸着させる。次に図13(b)にて矢印B2で示すように、雌溝部733に雄溝部681を嵌め込ませて、連結軸体730と支持体670とを直結させる。そして、図13(a)に示すように、加圧シャフト631,632,633を、矢印B4で示すように夫々シャフト受け621,622,623に載置する。そして、図12(a)に示すように、ワイヤWの3方向に分岐している先端をハンドル640に取り付け、中間部を第1定滑車651に巻掛される共に第2定滑車652に掛け、ワイヤWの他方の端部に錘660を取り付ける。これにより、図12(a)に矢印A5で示すように錘660によりワイヤWが鉛直下方に張力を受け、第1定滑車651に巻掛されているワイヤWが図12(a)に矢印A6で示す方向に張力を受け、図12(a)に矢印A7で示す方向にハンドル640及び加圧シャフト631,632,633が移動し、これにより加圧プレート300が加圧されて、袋状容器100の開口部102を浸透対象となるコンクリート500に対して押し付ける。なお、上述の加圧式浸透装置900の使用態様では、B3→B2→B4の順番で加圧式浸透装置900を設置したが、このような形態に限定されない。
【0085】
本実施形態では、上述の第1実施形態に係る発明の効果に加え、人力による加圧動作を要せずに錘660の重力により加圧動作を行うので、より加圧動作の省力化を図ることができる。更に、第5実施形態では各パーツに重量を要するものを使用していないので、作業現場に到着する前にパーツごとに輸送して、それらを作業現場にて組み立てることで、利便性よく本実施形態の加圧式浸透装置900を使用できる。その上、浸透対象であるコンクリート面の傾斜角度に対しても、基本的には制約を受けない長所がある。従って上向きの施工に好適に適用可能である。
【0086】
なお、浸透対象となるコンクリート500の表面には凹凸が存在することがあり、そのため吸盤711,712,713が浸透対象面に吸着しにくいことも考えられる。そのため、真空ポンプ装置を使用して、吸盤711,712,713の吸盤内部の空間を減圧させて、浸透対象面に吸盤711,712,713が吸着しやすくさせることも可能である。
【0087】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について具体的に説明する。図14は、第6実施形態の加圧式浸透装置本体を示した断面図である。
【0088】
図14に示すように、本実施形態に係る加圧式浸透装置900は、アルカリケイ酸塩浸透材を貯留する液槽880と、吸水材200にアルカリケイ酸塩浸透材を導入する導入パス910と、吸水材200に含まれるアルカリケイ酸塩浸透材を排出する排出パス920とを有する。
【0089】
導入パス910は、管路913と、ポンプ915と、三股管路914と、例えば合成ゴム製等の可撓性を有するホース912とを有する。三股管路914は、吸水材200に直結する端部914cと、別の端部914a及び914bを有する。ホース912は、三股管路914の端部914aと管路913の他方の端部とを連結する。ホース912の長さは、作業現場の状況に応じて適宜設定することができる。管路913の一方の端部は、液槽880内部に貯留されるアルカリケイ酸塩浸透材に浸漬される。三股管路914の端部914aの付近には第1弁911aが設けられ、端部914bの付近には第2弁911bが設けられる。また、管路913の他方の端部には第4弁911cが設けられる。ポンプ915は管路913の第4弁911cと液槽880の中間位置に取り付けられており、液槽880に貯留されているアルカリケイ酸塩浸透材を吸引するものである。第4弁911cは逆止弁であり、アルカリケイ酸塩浸透材の逆流を防止する。
【0090】
排出パス920は、管路923と、管路924と、例えば合成ゴム製等の可撓性を有するホース922とを有する。管路924の一方の端部の付近には第3弁924が設けられる。ホース922は、管路924の他方の端部と管路923とを連結する。ホース922の長さも、作業現場の状況に応じて適宜設定することができる。
【0091】
次に、第6実施形態に係る加圧式浸透装置900の使用態様について説明する。加圧プレート300を加圧して吸水材200に含有されるアルカリケイ酸塩浸透材を浸透対象に浸透させる際には、第1弁911a、第2弁911b、及び第3弁924は閉じられている。そして、浸透対象へのアルカリケイ酸塩浸透材の浸透が一旦終了すると、加圧プレート300の全加圧状態を維持しながら、第3弁924を開く。これにより、吸水材200に残留していたアルカリケイ酸塩浸透材が、ホース922を経由して液槽880に排出される。次に、加圧プレート300への加圧を0にして、吸水材200をほぼ空気のみが含有される状態にして、次の浸透対象位置に加圧式浸透装置900を設置させる。次に第3弁924を閉じ、第2弁911bを開き、再び全加力を加えて吸水材200中の空気を抜く。更に第2弁911bを閉じ、加力を初期加力にまで軽減してその状態を保つ。なお、ここで初期加力とは、吸水材200にポンプ915によってアルカリケイ酸塩浸透材を充填する際に、袋状容器100の肉薄部110からの液漏れを支障のない程度に抑制するために予め加えられる最小限の加力である。次に、第1弁911aを開き、ポンプ915を作動させてアルカリケイ酸塩浸透材の吸水を始める。吸水材200にアルカリケイ酸塩浸透材が十分に含有されたと判断したらポンプ915を停止する。そして第1弁911aを閉じた上で加圧プレート300に全加力を加えて吸水材200に含有されるアルカリケイ酸塩浸透材を浸透対象に浸透させる。以上が第6実施形態に係る加圧式浸透装置900の使用態様の1サイクルである。
【0092】
本実施形態では、上述の第1実施形態に係る発明の効果に加え、吸水材200へのアルカリケイ酸塩浸透材の補給がスムーズに行うことができるので、作業効率が格段に向上する。
【0093】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について具体的に説明する。図15は、第7実施形態の加圧式浸透装置本体を示した断面図である。
【0094】
上述の第4実施形態では、浸透作業を行う際はワイヤWの端部に錘660を取付け、浸透作業が終了するとワイヤWの端部から錘660を取り外していたが、錘660は例えば30〜100キログラム程度の重量を有するものであり、錘660の着脱作業は労力を要することがある。そこで、本実施形態に係る加圧式浸透装置900は、錘660を支える錘支持板855と、その錘支持板855を上下方向に自在に移動させる錘支持板移動部895とを有する。
【0095】
錘支持板移動部895は、支柱610に設けられる溝部851と、溝部851と噛み合う一対の内歯車853,854と、ケース852とを有する。錘支持板855は、ケース852に垂直方向に張り出して取り付けられている。内歯車853,854を自在に回転させることにより、ケース852が上下に移動し、それに伴い錘支持板855も上下に移動する。錘支持板855の上面には弾性マット856が設けられている。弾性マット856の材質は特に限定されないが、錘660を載置した場合にその厚みが約1/3程度になる弾性を有するものであるならば適宜使用することができ、例えば硬質スポンジ、発泡樹脂、防振ゴムパッド等を使用することができる。
【0096】
次に第7実施形態に係る加圧式浸透装置900の使用態様を説明する。まず浸透作業を行わない場合は、ワイヤW及び錘660を取り付けたままにして、錘支持板移動部895を上方向に移動させて錘660を上方向に移動させ、ワイヤWを弛ませることによりハンドル640にワイヤWの張力が係らないようにする。そして浸透作業を行う場合は、図15に示すように、錘支持板移動部895を下方向に移動させて、錘660と錘支持板856とを離間させ、ワイヤWに張力を掛ける。従って、錘660の着脱作業を行うことなく、ハンドル640にワイヤWの張力をかけることができ、加圧式浸透装置900の利便性が更に向上する。また、錘660を弾性マット856に載置させるため、ワイヤWに係る張力を微差にて調整することができる。例えば上述の第6実施形態において、吸水材200へのアルカリケイ酸塩浸透材の充填を機械的に行う場合、アルカリケイ酸塩浸透材の充填の直前に初期加力を設けることが好ましい。即ち、加力は100%又は0%ではなくその中間の数%が必要であり、しかもこの数%の加力は袋状容器100の肉薄部110からのアルカリケイ酸塩浸透材の漏れ具合を見た上での現場調整で決定される。本実施形態に係る構成によればこのような初期加力を容易に調整することができる。
【0097】
内歯車853,854を回転させ、錘支持板移動部895を上下に移動させる機構は特に限定されるものではなく種々の機構を採用することができるが、その一例として図16(a)に示すように、内歯車853と同軸の外歯車857と、内歯車854と同軸であり外歯車857と噛み合う外歯車858と、外歯車857と噛み合う小歯車8571と、小歯車8571を回転させる回転レバー859とを設けることが可能である。この錘支持板移動部895の作動は、回転レバー859を回転させることにより、小歯車8571が回転し、それに伴い外歯車857,858が回転し、それらと同軸である内歯車853,854も回転し、錘支持板移動部895が上下に移動する。小歯車8571の半径a、外歯車857,858の半径b、内歯車853,854の半径c、回転レバー859の長さA、錘660の質量Wt、回転レバー859を回転させる力F1とすると(なお、b>c>aとする。)、F1×(bA/a)>Wt×cであるような力F1を回転レバー859に加えることにより、錘支持板移動部895は上昇可能である。錘660の重量が例えば100キログラム程度の場合であっても、小歯車8571の半径a、外歯車857,858の半径b、内歯車853,854の半径c、回転レバー859の長さAを夫々適宜設計することにより、力F1を5キロ程度の加力にて錘支持板移動部895を上昇移動させることができる。そして図16(a)に示すように、錘660を弾性マット856に緩やかに接触させるように吊しながら、回転レバー859を微妙に回転調整することで、上述した初期加力を微調整することができる。
【0098】
また、図16(b)に示すように、角度調整アーム891と角度調整山形部890とを設けることも可能である。角度調整アーム891には下向きの鋸状切り込みが設けられており、角度調整山形部890の山部と噛み合う。角度調整アーム891の下端部は丁番にて錘支持板855に取り付けられている。この構成により、錘支持板855をより強固にケース852に固定できる。また、角度調整アーム891の鋸状切り込みの何れかの歯を、角度調整山形部890の山部に適宜調整して噛み合せることで、錘支持板855を任意角度にて斜めに傾かせることができる。これにより、仮に塗布対象が床面に対して傾斜しているような場合でも、錘660を錘支持板855に適切に載置させることができる。
【0099】
(第9実施形態)
次に、本発明の第9実施形態について具体的に説明する。図17は、第9実施形態の加圧式浸透装置本体を示した断面図である。
【0100】
本実施形態に係る加圧式浸透装置900は、地上支持体871に支持支柱874,875が立設されており、支持支柱874,875には第2作業場872及び第3作業場873が設けられている。地上支持体871と第2作業場872との距離は特に限定されるものではないが、例えば2.0m〜2.3mである。また、第2作業場872と第3作業場873との距離も例えば2.0m〜2.3mである。この構成によれば、高さ7m程度までのコンクリート壁面に対する浸透作業が可能になる。従って、土木分野での加圧式浸透装置900の使用は広範囲に考えられ、例えば橋脚橋梁、擁壁、防潮堤、導水路、水槽、隧道等の工事現場において種々の浸透対象に対して使用できる。一方、第3作業場873以上の高さに更なる作業場を形成することは転倒モーメントが大きくなるため、作業現場における物的及び人的安全面を考慮して、建築分野では、本実施形態による浸透作業は通常の建物では2階以下に限られることが好ましい。
【0101】
(その他の実施形態)
〔中性化したコンクリートの再生〕
上述の実施形態では、アルカリケイ酸塩浸透材をコンクリートの劣化防止のために浸透させたが、中性化したコンクリートの再生としても使用することができる。コンクリートが酸若しくは二酸化炭素の侵入によって、内部の水酸化カルシウムが溶出又は炭酸化して、pHが11.5以下になると、鉄筋の被膜が破壊され、腐食反応が始まる。中性化したコンクリートの塩基性を回復し、且つ水酸化カルシウムを補充するには、下記式2に示すように次の2剤を別個に浸透させて、内部に水酸化カルシウムの結晶と、その飽和溶液とが共存する状態を作り出せばよい。
【0102】
【化2】
【0103】
NaOH、Ca(NO3)2、NaNO3はともに水溶性であり、Ca(OH)2の水に対する溶解度は小さい(0.185g/100cm3)ので、結晶化して長期間pHを12以上に保つことができる。従来は、上記の2剤を有効にコンクリート内部に浸透させる手段は無かったが、本実施形態に係る加圧式浸透装置900を使用してNaOH水溶液及びCa(NO3)2水溶液を、順を前後して鉄筋の位置を越える深さまで浸透させることにより、中性化したコンクリートの塩基性を大幅に回復させることができる。
【0104】
〔撥水剤の加圧浸透による紫外線劣化の防止〕
コンクリート用の撥水剤としては、シラン系とシリコーン系とが使用されている。通常はこれらの撥水剤は、スプレー方式により塗布若しくは浸透がなれているものの、コンクリートへの浸透深さはシラン系でせいぜい4mm以下であり、シリコーン系はコンクリート表面に付着するだけでほとんど浸透しない。また、スプレー方式による撥水剤の塗布若しくは浸透では浸透材の無駄も生じる。更にシラン系及びシリコーン系の撥水剤は紫外線と太陽熱とによる劣化及び分解が生じる。外部環境にも依存するが、通常は速ければ3年で、大半の撥水剤は5〜10年でほとんど撥水効果がなくなる。そこで、本実施形態に係る加圧式浸透装置900を使用して、シラン系若しくはシリコーン系の撥水剤をコンクリートに浸透させることにより、1cm以上の深さまで撥水剤を浸透させることができる。その結果、外部からの紫外線又は太陽熱の影響が著しく軽減されるので、撥水材の劣化が生じにくく分解されにくい。
【実施例】
【0105】
アルカリケイ酸塩浸透材のような高分子コロイドと、硝酸カルシウム溶液のような単分子又はイオン解離性溶液とについて、コンクリートへの浸透と液圧との関係を調べるために図18に示す方法で試験をした。なお、加圧浸透装置において生ずる液圧と、この試験での被験液の液柱高さとは、(W−WL)/A=ρHの関係がある。ここで、Wは錘の重量(g)であり、WLは加圧プレートが袋状容器と吸水材そのもの(吸水材にアルカリケイ酸塩浸透材等の液体が含まれていない状態)を圧縮するのに要する力(g)であり、Aは吸水材の開口面積(cm3)であり、Hは被験液の液柱の高さ(cm)であり、ρは被験液の比重(g/cm3)である。即ち、加圧プレートへの加力から袋状容器及び吸水材そのものの圧縮に使われる力を引いたものを、吸水材の開口面積で除した値は、液に加わる圧力であり、それは被験液の液柱の高さにその比重を乗じたものに等しい。図18に示すように、コンクリート標準試験体862に、直管付きガラスロート861を立設させた。コンクリート標準試験体862は、直径100mm×200mmであった。コンクリート標準試験体862は、対セメント重量比で、砂を2.5質量%、砂利を2.7質量%含有するものであった。水(W)とセメント(C)との比W/Cは0.66であった。直管付きガラスロート861の円錐部の最大開口部分の直径は75mmであり、細管部の直径は10mmであった。直管付きガラスロート861内部には、アルカリケイ酸塩浸透材863が封入された。コンクリート標準試験体862の上端部には、周状にブチルゴム両面接着テープ865が接着されており、更にブチルゴム両面接着テープ865の上には周状に接着テープ866が巻かれた。巻かれている接着テープ866の上端は、コンクリート標準試験体862の上端部よりも僅かに上方にせり出していた。そして接着テープ866と直管付きガラスロート861との間にはシリコンシール864が充填された。コンクリート標準試験体862は、1つのロット(第1のロット)から6個用意し、また別のロット(第2のロット)から更に6個用意し、合計で12個用意した。
【0106】
ガラスロート861に所定の高さHまで被験液を注入すると同時に測定を開始し、絶えず最初に注入した高さHを維持するように被験液を補充し、測定時点でのそれまでの被験液の補充量を測定した。図18に示すように、被験液の高さHは、直管付きガラスロート861の円錐部の最大開口部分からの高さであった。この被験液の補充量を、ガラスロート861の底面積(3.75cm×3.75cm×3.14=44.2cm2)で除した数値が、単位面積あたりのその経過時間までの総浸透量になる。
【0107】
被験液は、水とアルカリケイ酸塩浸透材を使用した。被験液には、試験終了後にコンクリート標準試験体を割裂して浸透深さを目視して確認するために、着色材としてクロム酸カリウムを少量混入した。クロム酸イオンはそれ自体黄褐色を呈するので液とともに浸透してコンクリートを着色する。なお、水は単分子若しくは電解質水溶液の代表として、一方アルカリケイ酸塩浸透材は高分子コロイドの代表として試験を行った。
【0108】
被験液として水を使用し、第1のロットの試験体6個を使い、被験液の高さHが2cm、4cm、6cm、8cm、14cm、20cmの夫々についての時間経過に伴う浸透量の増加を測定した。この結果を図19に示す。高さHが2cmの場合は明らかに浸透速度が低かった。高さHが4cmと6cmと比較してみると、ごく僅かではあるが4cmの方が6cmよりも上回っているものの、これはコンクリート標準試験体862内部の構造のバラツキによるものと考察される。高さHが8cm以上の場合は、一部において逆転現象が見られるものの、浸透速度において差はほとんどなかった。
【0109】
次に、被験液としてアルカリケイ酸塩浸透材を使用し、第2ロットの試験体6個を使い、被験液の高さHが8cm、14cm、20cmの夫々についての時間経過に伴う浸透量の増加を測定した。試験は2回行い、その平均値を測定結果とした。この結果を図20に示す。なお、アルカリケイ酸塩浸透材において、〔Si〕=2.0mol/リットル,〔Na〕/〔Si〕=1.5であった。被験液がアルカリケイ酸塩浸透材の場合は被験液が水の場合と比較して、加圧力の差が明白に現れた。また、アルカリケイ酸塩浸透材の場合、圧力大きくなると浸透量は一層大きくなっていた。しかしながら、アルカリケイ酸塩浸透材の場合は水の場合と比較して、浸透量の絶対値は極めて小さく、その比も時間とともに小さくなっていた。即ち、高さHが20cmのアルカリケイ酸塩浸透材の場合でも、高さHが8〜20cmの水の場合と比較して、浸透量の比は、0.5時間で約1/3、1時間で約1/4、2時間で約1/5、4時間で約1/6のように時間とともに小さくなっていた。上記の実験結果により、アルカリケイ酸塩浸透材のような水和力の大きい高分子コロイドが如何にコンクリートに浸透しにくいかが実証された。アルカリケイ酸塩浸透材によるコンクリートの吸水抑制効果が持続するためには、2cm程度以上の深さまでのアルカリケイ酸塩とカルシウムイオンとの結合によるゲル生成が望ましい。しかし、通常の施工法つまり刷毛、ローラーによる塗布又はスプレーによる吹付けでは、垂直壁面への液の付着はせいぜい0.2mm程度であり、仮にその全量が浸透したとしても浸透深さは4mm程度に過ぎない。本発明に係る加圧式浸透装置900によれば、例えば液柱H=20mmとして約3時間の加圧により上記の目標を達成できる。まして水酸化ナトリウム、硝酸カルシウム、シラン系化合物のような単分子又はイオン解離性の溶液であれば、より少ない液圧及び加圧時間でより深く浸透させることが容易であり、例えば通常の鉄筋の位置を越える深さ(60mm以上)までの浸透も容易であり、そのため中性化したコンクリートの塩基性を回復させ、また、撥水剤の効果を著しく長期間にわたり持続させることが可能となる。上述の実施例により、本発明に係る加圧式浸透装置900が、アルカリケイ酸塩浸透材及び他の一部の有用な化学物質の溶液をコンクリートに浸透させるために極めて有益であることが示された。
【符号の説明】
【0110】
100:袋状容器
101:袋底部
102:開口部
110:肉薄部
200:吸水材
300:加圧プレート
310:加圧シャフト
320:ハンドル
411:第1蝶番軸受け
412:第2蝶番軸受け
420:蝶番ヒンジ
500:コンクリート
610:支柱
621:シャフト受け
622:シャフト受け
623:シャフト受け
631:加圧シャフト
632:加圧シャフト
633:加圧シャフト
640:ハンドル
651:第1定滑車
652:第2定滑車
660:錘
670:支持体
680:結合体
681:雄溝部
711:吸盤
712:吸盤
713:吸盤
730:連結軸体
732:中央部
733:雌溝部
851:溝部
852:ケース
853:内歯車
854:内歯車
855:錘支持板
856:弾性マット
857:外歯車
858:外歯車
859:回転レバー
861:直管付きガラスロート
862:コンクリート標準試験体
880:液槽
890:角度調整山形部
891:角度調整アーム
895:錘支持板移動部
910:導入パス
912:ホース
915:ポンプ
920:排出パス
922:ホース
900:加圧式浸透装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの劣化を防止するアルカリ珪酸塩浸透材を、効率的にコンクリートに加圧浸透させるための加圧式浸透装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート構造物の劣化は、地震力及び荷重等の外力によるものを除けば、コンクリート自体の劣化と鉄筋の腐食によるものである。それらを原因又は症状に基づいて分類すると、(1)中性化、(2)塩害、(3)硫酸塩浸食、(4)凍害、(5)アルカリ骨材反応のようになり、現実に起こる劣化はこれの複数原因又は症状が同時に進行する。
【0003】
これらの劣化は、全て、水を媒体にした物理・化学反応である。いわゆる生コンクリートは余剰の水分を含んでいるが、凝固乾燥とともに、セメント硬化体に化学的に取り込まれた水分及びセメント硬化体を構成するいわゆるC−S−Hゲルの中に捕捉又は吸着されたゲル水以外の水分は漸次蒸発し乾燥状態になる。このC−S−Hゲルは、セメントの水和反応によって生成するコンクリートの主要強度成分であり、単純な化学式では表せないが、3CaO・2SiO2・3H2Oが近いとされている。天然に存在する鉱物であるトベルモライトに近い構造を持つといわれている。
【0004】
雨水又は海水が吸水又は透水(圧力を伴う)という形で、コンクリート内部に侵入する際、種々の有害な物質を伴うので、内部の物質との間で劣化化学反応を引き起こす。また、それだけではなく、元々内部に存在している物質間(乾燥状態では安定していたにも拘わらず)での有害な化学反応が、水を媒体にして励起されたり、活性化される。
【0005】
従って、外部からの水の侵入を防止するか、又は大巾に減少させることにより、コンクリート内部を乾燥状態に保てれば、劣化の進行を止めるか、又は大巾に減少させることができる。
【0006】
コンクリートの吸水及び透水を防止してコンクリートを保護するための一般的な方法は、その表面を防水施工するか、又は仕上げ(塗装、吹付け、金属パネル、タオル等)加工を施す方法である。
【0007】
例えば、特許文献1には、珪酸ナトリウムを主成分とした無機質浸透性防水剤をコンクリートに塗布又は注入して、乾燥後に散水を数回繰り返すことによってコンクリートに浸透させる技術が記載されている。
【0008】
しかし、特許文献1に記載の技術は、コンクリートに浸透させるため、塗布又は注入して乾燥させたのち、乾燥及び散水を5〜7時間待ちながら少なくとも3回繰り返す必要があり、作業が非常に煩雑で、長時間を要するという問題点がある。
【0009】
特許文献2には、珪酸ソーダと珪酸カリとをモル比で1:1に混合し、更に水酸化ナトリウムを添加したコンクリート改質材が提案されており、水酸化ナトリウムの添加量を調節することによってゲル化の速度を調節する技術が記載されている。
【0010】
しかし、特許文献2記載の技術は、コンクリートとカルシウムとの反応を促進させるために散水を行う必要があり、作業性が良いとは言えない。
【0011】
特許文献3には、硝酸カルシウム水溶液を、アルカリ珪酸塩浸透材と相前後してコンクリートに浸透させることにより、コンクリートの半固体ゲル化反応を促進してコンクリートの劣化を防止する技術が記載されている。
【0012】
アルカリ珪酸塩浸透材は、ナトリウム珪酸塩溶液又はナトリウム珪酸塩とカリウム珪酸塩の混合溶液を主成分とし、他に少量の特殊金属酸化物を含むものである。
【0013】
コンクリートの骨材以外の部分であるセメント硬化体は多孔質の固体ゲルであり、0.01μm〜数μmの範囲の空隙を持ち、これは毛細管空隙と呼ばれる。この空隙は、セメントの水和反応によって生成したC−S−Hゲル間に残った余剰水が水和の終結と共に徐々に蒸発して空隙化したものである。コンクリート内部には、毛細管空隙の他に、(1)ひび割れ又は凝結時の分離沈降によって生じた空隙、(2)AE材使用による気泡(数10μm〜1000μm)、(3)ゲル空隙(1nm〜4nm)がある。この(1)の空隙は漏水の原因となるものであるが、この空隙は、毛細管空隙より遙かに大きく、アルカリ珪酸塩のゲル化反応では対処できない。通常、シール材又はエポキシ樹脂の注入により補修される。但し、ヘアークラックとよばれる0.1mm幅以下の空隙であれば、アルカリ珪酸塩浸透材でも対処可能である。また、(2)は独立気泡であり、(3)に含まれる水はゲルに強く拘束されていて、共に劣化化学反応には関与しない。
【0014】
コンクリート内部には、主要強度成分であるC−S−Hゲルの他に、多量(セメント量の約1/3)の水酸化カルシウムCa(OH)2の結晶が存在し、その一部(溶解度0.18g/100gH2O)は毛細管空隙内で溶解している。また、セメント中には当初からアルカリ分(酸化ナトリウムNa2O、酸化カリウムK2O)が含まれるので、毛細管空隙中に水分が存在すると、ナトリウムイオンNa+、カリウムイオンK+、水酸化物イオンOH−及びカルシウムイオンCa2+が溶解し、本来は強塩基性(pH12.5〜13.5)である。
【0015】
毛細管空隙にアルカリ珪酸塩が浸透すると、それが溶液中のカルシウムイオンを取り込んでガラス質の半固体ゲルに変化する。このゲルは水分の多い環境下では、充分な水分(ゲル水)を吸収して体積を増し、空隙を塞ぐ。この状態では、液体及び気体の出入りが遮断される。一方、乾燥時(ゲル水は通常の遊離水よりも蒸発しにくい)には、乾燥ゲルとなって体積が減少し、気体(酸素、二酸化炭素、水蒸気)はある程度、流通する。
【0016】
このような性質を利用して、水及び海水の侵入を防止又は抑制し、それによってコンクリートの劣化の進行を遅らせ、延命を図るのに使われるのがアルカリ珪酸塩浸透材である。
【0017】
アルカリ珪酸塩浸透材は、コンクリート内で生成する半固体ゲル(カルシウムアルカリ珪酸塩)が、セメント又はガラスと似た組成(酸化珪素、酸化カルシウム、酸化アルカリ)で、全て無機質であり、紫外線又は温度変化による経年変質がほとんどないという長所がある。また施工後もコンクリート表面の外観にほとんど変化がない。よって、材齢の若いコンクリートであれば、本来の肌理及び色を長期間にわたり保つことができる。
【0018】
そして、一般の防水のように薄い被膜による防水ではなく、ある厚さ(コンクリートの密実さによって数cm〜10cm)に広がった防水性のある層を形成するので、表面での機械的摩耗及び引っかき傷には強い。また、コンクリートの背面からの水圧をともなった透水(建物地中壁、地下ピット、擁壁、トンネル、水槽等)に対して、補修手段として極めて有効である。
【0019】
一般的なアルカリケイ酸塩浸透材の施工要領では、下向き施工(床施工)の場合、散布器等を使用して、床の上に厚み0.3〜1.0mmで散布される。また、横向き施工(壁施工)及び上向き施工(天井施工)の場合は、ローラ等を使用して、壁又は天井に塗布される。
【0020】
コンクリートの表面から内部への液の浸透は、物理的には、濡れと圧入の二つの現象によるものと考えられる。濡れによる浸透は、加圧の無い状態で、コンクリートの表面エネルギーと液の表面エネルギー(=表面張力)とのせめぎ合いによってコンクリート表面を濡らし、その一部が毛細管空隙に浸透することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特許第2937309号公報(第2頁)
【特許文献2】特開2002−239523号公報(第2〜3頁)
【特許文献3】特開2008−169068号公報(第7頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかし、一般的なアルカリケイ酸塩浸透材の施工要領では、下向き施工の場合、濡れと散布厚に相当する僅かの圧力(重力)による浸透が行われているところ、アルカリケイ酸塩浸透材のコンクリートへの浸透の程度が不十分である。これでは、アルカリケイ酸塩浸透材がコンクリートの深部へ浸透せず、劣化防止効果が不十分となる問題点がある。また、横向き施工又は上向き施工の場合においては、ローラ等を用いる濡れによる浸透が行われるところ、アルカリケイ酸塩浸透材のコンクリートへの浸透の程度が不十分であることに加えて、施工時に、ローラ等からアルカリケイ酸塩浸透材が垂れることがあり、アルカリケイ酸塩浸透材の一部が無駄になるため、コスト面での問題点が生じていた。
【0023】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、効率的にアルカリケイ酸塩浸透材をコンクリートに浸透できると共に、横向き施工又は上向き施工においてはアルカリケイ酸塩浸透材の無駄が生じにくい加圧式浸透装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明に係る加圧式浸透装置は、開口縁が内側に向けて曲成されその縁部が前記開口縁に向けて肉薄になるように肉厚が変化し、側部が蛇腹状をなし弾性変形する袋状容器と、前記袋状容器の内部に充填され、吸水性を有し圧縮されて排水する吸水材と、前記袋状容器の袋底部に設けられ剛性を有し前記袋状容器の内容積を縮小するために加圧される加圧プレートとを有することを特徴とする。
【0025】
この場合において、前記吸水材は、スポンジ状の多孔性弾性体であることが好ましい。
【0026】
また、前記吸水材は、繊維を織らずに絡み合わせた不織構造体又は不織布を積層させた積層不織布構造体であることが好ましい。
【0027】
また、前記袋状容器の開口部の外側に、突出するように均等間隔で形成された複数の第1蝶番軸受けと、前記加圧プレートの側面に、突出するように均等間隔で形成された複数の第2蝶番軸受けと、開き角度が一定値以下に制限されており、前記第1蝶番軸受けと前記第2蝶番軸受けとを接続する複数の蝶番ヒンジとを有する蝶番ユニットを有することが好ましい。
【0028】
また、一方の端部が前記加圧プレートに当接固定される加圧シャフトと、前記加圧シャフトの他方の端部に設けられるハンドルとを有し、前記ハンドルを加圧することにより、前記加圧シャフトが前記加圧プレートを加圧することが好ましい。
【0029】
また、一方の端部が前記加圧プレートに当接固定される複数本の加圧シャフトと、前記複数本の加圧シャフトの他方の端部に設けられるハンドルと、前記複数本の加圧シャフトを水平方向にスライド自在に支持する半円断面柱体の複数のシャフト受けと、前記複数のシャフト受けを支持する支柱と、前記支柱に設けられ水平方向に突出する定滑車と、一方の端部が前記ハンドルに取り付けられ、中間部が前記定滑車に巻掛され、他方の端部に錘が吊下られるワイヤーと、前記支柱を支持する支持台とを有することが好ましい。
【0030】
また、上述の場合において、前記錘を支える錘支持板と、前記錘支持板を上下方向に移動させる錘支持板移動部とを有することが好ましい。
【0031】
また、一方の端部が前記加圧プレートに当接固定される複数本の加圧シャフトと、前記複数本の加圧シャフトの他方の端部に設けられるハンドルと、前記複数本の加圧シャフトを水平方向にスライド自在に支持する複数の半円断面柱体のシャフト受けと、前記複数のシャフト受けを支持する支持体と、前記支持体に設けられ水平方向に突出する定滑車と、一方の端部が前記ハンドルに取り付けられ、中間部が前記定滑車に巻掛され、他方の端部に錘が吊下られるワイヤーと、同心円周上に均等間隔に設けられた複数の吸盤と、複数の連結軸が前記同心円の中央から放射状に配置されて前記複数の吸盤を連結する連結軸体と、前記連結軸体と前記支持体とを直結する結合体とを有することが好ましい。
【0032】
また、更に、溶液を貯留する液槽と、前記吸水材に前記溶液を導入する導入パスと、前記吸水材に含まれる溶液を排出する排出パスとを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、袋状容器の内部に充填された吸水材にアルカリケイ酸浸透材を含ませ、袋状容器の開口部に形成された肉薄部を浸透対象となるコンクリートに対して押し付け、加圧プレートを加圧することにより吸水材を押しつぶして、吸水材からアルカリケイ酸塩浸透材を絞り出すことにより、簡単な動作により、浸透対象となるコンクリート中に重力の方向に関係無く加圧浸透させることができる。また、袋状容器の開口縁が内側に向けて曲成されるようにして形成され、その縁部は開口縁に向けて肉薄になるように肉厚が変化して肉薄部を構成するから、肉薄部を浸透対象となるコンクリートに対して押し付けることで肉薄部がコンクリートに密着して、アルカリケイ酸塩浸透材が漏れにくく、コスト面において有利である。特に、横向き施工又は上向き施工の場合は、従来のローラーによる塗布施工と比較すると、無駄となるアルカリケイ酸塩浸透材が発生しにくいため、コスト面において非常に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(a),(b)は本発明の第1実施形態の加圧式浸透装置を示した断面図であり、(a)は第1実施形態の加圧式浸透装置本体を示した断面図であり、(b)は加圧式浸透装置の肉薄部を示した断面図である。
【図2】(a),(b)は本発明の第1実施形態の加圧式浸透装置を示した断面図であり、(a)は圧力をかけてアルカリケイ酸塩浸透材をコンクリートに浸透させる状態を示した断面図であり、(b)は肉薄部がアルカリケイ酸塩浸透材の漏れを防止する状態を示した断面図である。
【図3】セメントペースト硬化体中の各成分の体積関係を示す説明図である。
【図4】コンクリートへの浸透深さと浸透液の空隙充填率との関係を説明する説明図である。
【図5】(a),(b)は蝶番ユニットで袋状容器を補強した第2実施形態の加圧式浸透装置を示した断面図であり、(a)は第2実施形態の加圧式浸透装置本体を示した断面図であり、(b)は第2実施形態の加圧式浸透装置本体を底部から示した底面図である。
【図6】第2実施形態の加圧式浸透装置に圧力をかけてアルカリケイ酸塩浸透材をコンクリートに浸透させる状態を示した断面図である。
【図7】隅角部を丸められた断面四角の袋状容器を有する加圧式浸透装置を底部から示した底面図である。
【図8】(a),(b)はハンドルにて加圧する第3実施形態の加圧式浸透装置を示した側面図であり、(a)は第3実施形態の加圧式浸透装置本体を側面から示した側面図であり、(b)は底部から示した底面図である。
【図9】(a),(b)は支柱及び支柱台を有する第4実施形態の加圧式浸透装置を示した側面図であり、(a)は第4実施形態の加圧式浸透装置本体を側面から示した側面図であり、(b)は底部から示した底面図である。
【図10】第4実施形態の加圧式浸透装置を使用する際の様子を示した説明図である。
【図11】支持体に設けられた定滑車が進退移動する加圧式浸透装置の変形例を示した側面図である。
【図12】(a),(b)は施工面に加圧式浸透装置を取り付けるための吸盤を有する第5実施形態の加圧式浸透装置を示した側面図であり、(a)は第5実施形態の加圧式浸透装置本体を側面から示した側面図であり、(b)は底部から示した底面図である。
【図13】第5実施形態の加圧式浸透装置を使用する際の様子を示した説明図である。
【図14】溶液を貯留する液槽を有する第6実施形態の加圧式浸透装置を示した説明図である。
【図15】錘を支持する錘支持装置を有する第7実施形態の加圧式浸透装置を示した説明図である。
【図16】(a),(b)は錘支持装置の構造を説明する説明図であり、(a)は錘支持装置を上下させる機構を説明する説明図であり、(b)は錘支持装置を支柱に取り付ける構造を説明する説明図である。
【図17】作業台が並設された第9実施形態の加圧式浸透装置を示した側面図である。
【図18】液体の加圧浸透試験の装置を示した断面図である。
【図19】被験液が水の場合の浸透量を示す実験結果である。
【図20】被験液がアルカリケイ酸塩浸透材の場合の浸透量を示す実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(第1実施形態)
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明する。図1(a)は、加圧式浸透装置本体を示した断面図であり、図1(b)は、加圧式浸透装置の肉薄部を拡大して示した断面図である。図2(a)は、圧力をかけてアルカリケイ酸塩浸透材をコンクリートに浸透させる状態を示した断面図であり、(b)は肉薄部がアルカリケイ酸塩浸透材の漏れを防止する状態を示した断面図である。
【0036】
本実施形態に係る加圧式浸透装置900は、図1(a)に示すように、袋状容器100と、袋状容器100の内部に充填される吸水材200と、袋状容器100の袋底部に設けられる加圧プレート300とを有する。
【0037】
袋状容器100は袋底部101と、蛇腹状の側部と、上端の開口部102とから構成されている。この袋状容器100は、伸縮性を有し且つ気密性を有する材料で形成されており、例えば、ポリウレタンゴム若しくはクロロプレンゴム等の高分子ゴム製で形成され、加圧により縮小し且つ弾性により伸張する。袋状容器100の大きさは、特に限定されるものではないが、例えば直径が40〜120cm、高さが5〜10cm、厚みが0.1〜0.3cmとすることができる。
【0038】
図1(b)に示すように、袋状容器100の開口部102は、袋状容器100の開口縁が内側に向けて曲成されるようにして形成されており、その縁部は、開口縁に向けて肉薄になるように肉厚が変化して肉薄部110を形成している。
【0039】
吸水材200は、吸水性を有し且つ圧縮することにより排水性を有する材質であれば使用することができ、例えばスポンジ状の多孔性弾性体を用いることができる。スポンジ状の多孔性弾性体は、特に限定されるものではないが、例えば、メラミン樹脂を用いた緻密且つ空孔率の高い軟質フォームを材質として用いることができる。
【0040】
また、吸水材200としては、例えば、繊維を織らずに絡み合わせた不織構造体又は不織布を積層させた積層不織布構造体を用いることも可能である。不織構造体は、例えば、15〜100nm程度の短い繊維を所定の形状に固めて第1次成形体を作成して、その第1次成形体を接着剤等で所定形状に固めて製造することができる。積層不織布構造体は、例えば、複数枚の不織布を積層させて積層体を形成し、その積層体を接着材等で固めて製造することができる。
【0041】
加圧プレート300は、一方の主面が袋状容器100の袋底部101に当接するように取り付けられている。加圧プレート300は、剛性を有する材料で形成されており、特に限定されるものではないが、例えば硬質ポリプロピレン等により形成される。
【0042】
次に、第1実施形態に係る加圧式浸透装置900の使用態様について説明する。まず、袋状容器100に充填されている吸水材200に、アルカリケイ酸塩浸透材を吸収させる。
【0043】
アルカリケイ酸塩浸透材は、ナトリウム珪酸塩溶液又はナトリウム珪酸塩とカリウム珪酸塩の混合溶液を主成分とするものであり、その他に少量の特殊金属酸化物を含有する。
【0044】
次に、図1(a)で矢印A1にて示すように、袋状容器100の開口部102を浸透対象となるコンクリート500に向ける。
【0045】
そして、図2(a)で矢印A2にて示すように加圧プレート300を加圧して、袋状容器100の開口部102を浸透対象となるコンクリート500に対して押し付ける。これにより、矢印A3で示すように、吸水材200に含まれていたアルカリケイ酸塩浸透材が圧力を受けてコンクリート500に効率的に浸透する。なお、加圧とは、加圧プレート300によってコンクリート等の浸透対象表面に接する袋状容器100と吸水材200とに加えられる力の作用である。
【0046】
ここで、浸透対象となるコンクリート500の表面には多少の凹凸が存在するが、肉薄部110は先細り形状であるから、袋状容器100の開口部をコンクリート500に対して押し付けることで、肉薄部110はコンクリート500の表面に密着する。そのため、肉薄部110とコンクリート500との間に隙間が生じにくく、図2(b)で矢印A4にて示すように、アルカリケイ酸塩浸透材が漏れにくい。
【0047】
次に、カルシウムイオンを含有する水溶液を袋状容器100に充填させ、図2(a)で示すように、アルカリケイ酸塩浸透材と同様に、コンクリート500に対して浸透させる。アルカリケイ酸塩浸透材のゲル化に必要なカルシウムイオンは、コンクリート内部のカルシウムイオンを利用するものが主であるが、外部から別に供給するほうがよい。なぜならば、コンクリート内部のカルシウムイオンは、水酸化カルシウムの溶解によるもので、それを消費することはコンクリート自体の中性化を促進してしまうからである。
【0048】
カルシウムイオンの供給源となる物質(カルシウム塩)としては、充分に水溶性であること、次にゲル化後に残る物質(主として陰イオン)がコンクリート及び鉄筋に有害でないこと、更には大量に使用する上で高価でないことの三つの条件を満たす必要がある。これらを満足し、かつ入手しやすい物質として硝酸カルシウム及び塩化カルシウム等がある。
【0049】
このうち、塩化カルシウムは、濃度の制約がある、即ち、ゲル化反応後に残る塩化物イオン(Cl−)は、ある濃度(一般に、1.2kg/m3(コンクリート)といわれている)を超すと、鉄筋を腐食から守っている不働態(酸化)皮膜を破壊し、溶存酸素と協働して腐食させる可能性がある。このため、日本工業規格では、コンクリート中の塩化物イオン(Cl−1)量を、0.30kg/m3以下と0.60kg/m3以下の二段階で規制している。
【0050】
以上の理由から、塩化カルシウムの適用範囲が限られる。即ち、材齢の若いコンクリート(pH≧12)及び中性化の初期段階(pH=11.5乃至12)では、規制値の範囲内でのゲル化が可能であるが、中性化の最終段階(pH≦9.2前後)では、ゲル化に必要なカルシウムイオンは全て外部から供給してやる必要がある。
【0051】
コンクリート中には、細骨材に海砂が使用された場合には、多少とも除塩後の残留塩分が含まれており、また海中又は海岸の構造物では、雨風と共に、塩分がコンクリート内部に持ち込まれる。従って、外部から供給される塩化カルシウムによる塩化物イオン量が規制値内であっても、全体的には、塩化物イオン量が規制値を超える可能性がある。
【0052】
このような塩化カルシウムの濃度上の制約に対し、硝酸カルシウムCa(NO3)2の場合は、コンクリート及び鉄筋に害を及ぼす虞がなく、例えば、[Ca]/[Si]が0.9程度の高濃度でコンクリートに浸透させることができる。従って、カルシウムイオンを含有する水溶液は、硝酸カルシウム水溶液を使用する。
【0053】
硝酸カルシウムは濃度が増しても害がない。酸としての硝酸は強酸であり、コンクリートを激しく侵食するが、塩である硝酸カルシウムにはそのような毒性はない。[Ca]/[Si]が0.08乃至0.90の濃度では、コンクリートに浸透しても、殆ど無害であるばかりか、硝酸イオンは酸化作用を有するので、むしろ鉄筋の不働態皮膜(酸化被膜)の維持には、良い効果をもたらす。硝酸カルシウムCa(NO3)2は、純度が高いものは、火工品の原料として使用される危険物であるが、純度が低い粗硝酸カルシウムは、硝酸石灰とも呼ばれ、肥料に使用され、水に良く溶け、価格も安い。
【0054】
コンクリート500内に浸透したアルカリケイ酸塩浸透材は、カルシウムイオンと式1で示す反応により結合(ゲル化)が生じる。
【0055】
【化1】
【0056】
生成したゲルは化学的に極めて安定であり、その組成はコンクリートの主成分C−S−Hに類似している。この生成したゲルがコンクリート中の毛細管空隙を埋めることにより、コンクリートの劣化進行が抑制される。本発明によれば、加圧によってアルカリケイ酸塩浸透材及び硝酸カルシウムの浸透量、従って浸透深さを高めることができ、その結果コンクリートの劣化進行を効率的に抑制できると共に、仮に天井面若しくは横壁面に対する浸透施工であっても肉薄部110がアルカリケイ酸塩浸透材の漏れを防止するので、コスト面でも優れる。
【0057】
種々の化学物資の溶液若しくはコロイド等をコンクリートに浸透させて、コンクリートの表面に近い部分の性質を改善する試みが行われているが、コンクリート内部の空隙の径は極めて小さく数μm以下であり、浸透は容易ではない。水和反応によってセメントゲルが生成すると、それに化学的に組み込まれた水は圧縮されて体積減少が起こる。当初の体積の(セメントの体積+水和反応にあずかる水の体積)の約10%の減少が生じる。この減少を水和収縮というが、フレッシュコンクリートが流動性を保っている間に起こる水和収縮は、全体の体積が減少するだけであるが、凝結が終わり流動性を失うと、その後の体積減少は、大部分は内部空隙の発生という形で吸収され、ごく一部は外形体積の減少(収縮)をもたらす。これをコンクリートの自己収縮と呼ぶ。生じた内部空隙は当初水で満たされているが、水和反応の進行に伴ってこの空隙内の水も水和反応に使用されて次第に減少していく。残り少なくなると水膜の表面張力によって空隙壁面に対する収縮力が発生する。更に、水和反応がほぼ終了した後も、空隙(毛細管空隙)内の水分の蒸発は続くので、この収縮力は持続して外形体積の減少をもたらす。これを乾燥収縮と呼ぶ。実際のコンクリートの場合では、水量として水和反応に要する以上の量を加えている。これはセメントと水との練り混ぜがミクロ的には不完全であり、水和反応を完全に行わせるには余剰の水が必要であることと、フレッシュコンクリートを型枠に十分に流し込むにはある程度の流動性が求められるからである。
【0058】
図3は、水/セメント比(W/C)=0.5の場合、1gのセメント(実質0.32cm3)と0.5gの水との水和反応によって生じるセメントペースト硬化体の体積と、空隙(毛細管空隙とゲル空隙とがある)の体積との関係を示すものである。なお、1gのセメントの水和反応に要する水の量は、0.23g(0.23cm3)である。セメントに加えられた水は、硬化後に三つに分かれる。まず、硬化体に化学的に組み込まれた水和水、次に反応に関わることなく毛細管空隙に残る余剰水、その中間的存在であるゲル水である。ゲル水はセメント粒子と化学的に結合はしていないが、ゲルの層間に拘束された状態の水で、水和反応に加わることなく、移動が制約されている。常温ではほとんど蒸発せず、100℃以上に加熱して初めて蒸発する。その空隙(ゲル空隙)に外部からの液が浸透することはない。その量はセメント量の約15%で、硬化体の中でかなりの体積割合を占めている。「コンクリート構造物のマテリアルデザイン(オーム社)」には(W/C)=0.5の場合、全毛細管空隙量は、セメントペースト硬化体1cm3あたり0.29cm3/cm3である測定結果が掲出されている。一方、図3の硬化体モデルでは、同量は、(0.12+0.05)/(0.5+0.15+0.12+0.05)=0.21cm3/cm3である。なお、一般には、径1〜3nmをゲル空隙、5nm〜数nmを毛細管空隙(細孔)としている。
【0059】
10nm以下の空隙には、高分子コロイドの場合、分子の大きさからいって浸透はほとんどが不可能と思われる。また単分子溶液(電解質溶液も含む。)でも、溶媒である水の表面張力に妨げられて浸透は困難である。(W/C)=0.5の場合、コンクリート調合として標準的調合を採用すると、砂:1.2mm以下、砂利:20mm以下として、重量調合はフレッシュコンクリート1m3あたり、水:190kg/m3、セメント:380kg/m3、砂:577kg/m3、砂利:1188kg/m3となる。そして、外形体積の減少による収縮量は10−3のオーダーであるから無視することができ、図3によれば、水和生成物体積の実質体積:0.5×380=190リットル/m3、ゲル水:0.15×380=57リットル/m3、毛細管空隙:(0.05+0.12)×380=64.6リットル/m3(0.065cm3/cm3)である。即ち、上記の調合のコンクリートの毛細管空隙率は6.5%である。
【0060】
浸透液が空隙内に浸透するということは、空隙内の空気若しくは水を追い出しつつ、置き換わることである。その過程で100%追い出すことは不可能であり、液の空隙充填率も内部ほど低くなると考えられる。そこで、図4に示すように、コンクリート表面の最大充填率を80%とし、内部に向かって低減していく状態を仮定した上で、50%のところまでを浸透深さと定義する。そうすると平均充填率は、(80+2×75+2×65+50)/6=68.3(%)である。従って、浸透量S(mm/cm2)に対する深さD(mm)は、D=S/(0.065×0.683)=22.5Sとなり、浸透量(浸透厚さmm/cm2)の約23倍が浸透深さと考えられる。この計算式を用いれば、例えば後述の実施例にてコンクリート標準試験体に直管付きガラスロートを立設して浸透試験を行うが、コンクリートを破壊することなく浸透深さを概算することができる。
【0061】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について具体的に説明する。図5(a)は、第2実施形態の加圧式浸透装置本体を示した断面図であり、図5(b)は、第2実施形態の加圧式浸透装置の底面図である。図6は、第2実施形態の加圧式浸透装置の使用態様を説明する断面図である。図7は、断面四角の袋状容器を有する加圧式浸透装置を底部から示した底面図である。
【0062】
吸水材200にアルカリケイ酸塩浸透材が含有されると増加した重量の影響により、袋状容器100の形状が歪む可能性がある。袋状容器100の形状が意図しない形状に歪むと、対象のコンクリート500にアルカリケイ酸塩浸透材を正確に浸透させにくくなり、作業効率が低下する。そこで、第2実施形態に係る加圧式浸透装置900では、図5(a)に示すように、蝶番ユニット400を有する。蝶番ユニット400は、複数の第1蝶番軸受け411と、複数の第2蝶番軸受け412と、第1蝶番軸受け412と第2蝶番軸受け412とを接続する複数の蝶番ヒンジ420とを有する。蝶番ヒンジ420の開き角度θは、例えば120度等の一定値以下に制限されている。図5(b)に示すように、第1蝶番軸受け411は、袋状容器100の開口部102の外側に、突出するように均等間隔で形成されている。同様に、第2蝶番軸受け412も、加圧プレート300の側面に、突出するように均等間隔で形成されている。
【0063】
次に、第2実施形態に係る加圧式浸透装置900の使用態様について説明する。第1実施形態で説明した使用形態と同様に、まず吸水材200にアルカリケイ酸塩浸透材を吸収させ、次に図5(a)で矢印A1にて示すように袋状容器100の開口部102を浸透対象となるコンクリート500に向け、そして図6で矢印A2にて示すように加圧プレート300を加圧して、袋状容器100の開口部102を浸透対象となるコンクリート500に対して押し付ける。
【0064】
本実施形態では、上述の第1実施形態に係る発明の効果に加えて、蝶番ユニット400により袋状容器100を均等間隔で支持しているから、袋状容器100の形状が歪みにくく、そのため、浸透対象のコンクリート500にアルカリケイ酸塩浸透材を正確に浸透できる。更には、本実施形態では、蝶番ユニット400により袋状容器100を均等間隔で支持しているから、比較的撓みやすい材質で袋状容器100を製造することでき、加圧式浸透装置900の材料選択の幅が広がる。
【0065】
なお、上述の実施形態では、袋状容器100の形状は略円筒形状のものとしたが、この形状に限定されることはなく、吸水材200に含有させるアルカリケイ酸塩浸透材の質量、袋状容器100の使用し易さ等に応じて、種々の形状を使用することができる。例えば袋状容器100の形状は、断面楕円の筒状形状とすることができるし、また図7に示す断面形状のように、角柱体等とすることもできる。角柱体の断面の形状も隅角部を丸められた(隅角部をアール形状にした)正方形、長方形、菱形等の種々の形状を使用することができる。
【0066】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について具体的に説明する。図8(a)は、第3実施形態の加圧式浸透装置本体を示した断面図であり、図8(b)は、図8(a)における8b−8b一点鎖線における断面図である。
【0067】
図8(a)及び(b)に示すように、本実施形態に係る加圧式浸透装置900は、加圧シャフト310と、ハンドル320とを有する。加圧シャフト310の一方の端部は加圧プレート300に当接固定されている。加圧シャフト310の他方の端部はハンドルに取り付けられている。加圧シャフトは、同心円状に均等間隔で3本設けられている。
【0068】
次に、第3実施形態に係る加圧式浸透装置900の使用態様について説明する。第1実施形態で説明した使用形態と同様に、まず吸水材200にアルカリケイ酸塩浸透材を吸収させ、次に袋状容器100の開口部102を浸透対象に向ける。そしてハンドル320を両手で握り、加圧プレート300の方向へハンドル320を押し付ける。これにより図8(a)で矢印A4にて示す方向に加圧プレート300は加圧され、袋状容器100の開口部102からアルカリケイ酸塩浸透材が浸透対象に対して浸透する。
【0069】
本実施形態では、上述の第1実施形態に係る発明の効果に加えて、ハンドル320を両手で握ることにより操作者の加圧動作を加圧プレート300に対して伝えやすい。そのため、利便性よく浸透対象にアルカリケイ酸塩浸透材を簡単に浸透できる。更には、加圧シャフト310を加圧プレート300に取付け自在に構成すれば、ハンドル320と加圧シャフト310とを別途作業現場に輸送させることができ、本実施形態の加圧式浸透装置900の利便性が向上する。なお、上述の実施形態では加圧シャフト310は3本設けているが、この実施形態に限定されることはなく、4本以上設けることも可能である。
【0070】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について具体的に説明する。図9(a)は、第4実施形態の加圧式浸透装置本体を示した断面図であり、図9(b)は、図9(a)における9b−9b一点鎖線における断面図である。
【0071】
上述の実施形態においては、人力により加圧プレート300の加圧動作を行うものであるが、作業現場では人力による加圧動作を要せず、更に簡易に加圧プレート300の加圧動作を行うものが要請される。そこで、第4実施形態に係る加圧式浸透装置900では、図9(a)に示すように、複数本の加圧シャフト631,632,633と、ハンドル640と、複数本の加圧シャフト631,632,633を支持する複数のシャフト受け621,622,623と、支柱610と、支柱610に設けられる第1定滑車651と、ワイヤーWと、支柱610を支持する支持台670とを有する。
【0072】
加圧シャフト631,632,633は、一方の端部が加圧プレート300の他方の主面に当接固定されている。また、加圧シャフト631,632,633の他方の端部には、ハンドル640が取り付けられている。シャフト受け621,622,623は半円断面柱体の形状であり、加圧シャフト631,632,633を水平方向にスライド自在に支持する。支柱610は、複数段の柱体から構成されており、例えば第1支柱610aと、第2支柱610bと、第3支柱610cとを有する。図9(b)に示すように、第1支柱610aの中腹部には第1支柱分岐611aが設けられている。第1支柱分岐611aは例えば板状体であり、第1支柱610aを貫通して例えば溶接等により固定されている。第1支柱分岐611aの両端部には、夫々シャフト受け622,623が取り付けられており、また第1支柱610aの頂部にはシャフト受け621が取り付けられ、このようにして第1支柱610aは、シャフト受け621,622,623を支持している。第1定滑車651は、第1支柱610aに設けられており、水平方向に突出している。また、第2定滑車652は第2支柱610bに設けられており、第1定滑車651の下方に位置する。
【0073】
ワイヤWはハンドル640と錘660とを連結する。即ち、ワイヤWの一方の端部は図9(a)及び(b)で示されるように3方向に分岐しており、夫々がハンドル640に取り付けられている。3方向に分岐したワイヤWのハンドル640への取付けは種々の形態を利用することができ、例えば3方向に分岐したワイヤWの先端にフックを設け、対応するハンドル640の被取付け箇所にもフックを設ける形態を採用することができる。ワイヤWの中間部が第1定滑車651に巻掛される共に第2定滑車652に掛けられている。ワイヤWの他方の端部には錘660が吊下られている。ワイヤWの錘660への取付けも種々の形態を利用することができ、例えばワイヤWの先端にフックを設け、対応する錘の被取付け箇所にもフックを設ける形態を採用することができる。
【0074】
支持台670は、袋状容器100、ケイ酸塩浸透材を含有する吸水材200、ハンドル640、支柱610、錘660等の支持台670より上方に設けられる全ての物を安定して支えられると共に、加圧浸透時の被加圧コンクリートからの反力による転倒モーメントにも耐えられるだけの重量と大きさを有する。
【0075】
次に、第4実施形態に係る加圧式浸透装置900の使用態様について説明する。
図10(a)に示すように、支持台670の上に第3支柱610cを立設させ、その第3支柱610cに第2支柱610bを連結させ、更に第2支柱610bに第1支柱610aを連結させる。次に、図10(b)に示す加圧シャフト631,632,633を、矢印B1で示すように夫々シャフト受け621,622,623に載置する。次に図9(a)で矢印A8にて示すように袋状容器100の開口部102を浸透対象となるコンクリート500に向ける。そして、図9(a)に示すように、ワイヤWの3方向に分岐している先端をハンドル640に取り付け、中間部を第1定滑車651に巻掛される共に第2定滑車652に掛け、ワイヤWの他方の端部に錘660を取り付ける。これにより、図9(a)に矢印A5で示すように錘660によりワイヤWが鉛直下方に張力を受け、第1定滑車651に巻掛されているワイヤWが図9(a)に矢印A6で示す方向に張力を受け、図9(a)に矢印A7で示す方向にハンドル640及び加圧シャフト631,632,633が移動し、これにより加圧プレート300が全加力を受け、袋状容器100の開口部102を浸透対象となるコンクリート500に対して押し付ける。なお、全加力とは予め指定された錘660の重量に基づく加力である。加力とは、錘660に働く重力により生じるワイヤWの張力によって、加圧プレート300に伝達される加圧シャフトの圧縮力である。
【0076】
本実施形態では、上述の第1実施形態に係る発明の効果に加えて、人力による加圧動作を要せずに錘660の重力により加圧動作を行うので、より加圧動作の省力化を図ることができる。また、支柱610は複数段からなる構成であるので、作業現場に到着する前はパーツごとに輸送して、それらを作業現場にて組み立てることで、利便性よく本実施形態の加圧式浸透装置900を使用できる。更に、支柱610を使用することで、高い位置にある浸透対象に対しても容易にアルカリケイ酸塩浸透材を浸透できる。なお、上述の実施形態においては、支柱610は、三段の柱体から構成されていたが、このような形態に限定されず、浸透対象の高さに応じて種々の段数に分割構成することができる。
【0077】
また、上述の実施形態では、第2定滑車652は、第1支柱610aに対して固着されているものであったが、図11にて矢印で示すように、第2定滑車652を支える滑車軸6521は、第1支柱610aに対して垂直方向に進退自在に構成することも可能である。この変形例によれば、仮に、浸透対象が地面に対して斜めに位置する場合であっても、滑車軸6521を第1支柱610aに対して遠ざかる(進む)ように延伸することで、ワイヤWに吊り下げられている錘660が支柱610に衝突することを避けることができる。そのため、支柱610の破損が起こりにくい。
【0078】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について具体的に説明する。図12(a)は、第5実施形態の加圧式浸透装置本体を示した断面図であり、図12(b)は、図12(a)における12b−12b一点鎖線における断面図である。
【0079】
上述の第4実施形態に係る加圧式浸透装置900は、錘660の重力により加圧動作を行うと共に、支柱610を用いて高い位置にある浸透対象にアルカリケイ酸塩浸透材を浸透するものであるが、施工可能な高さには限界があり、また壁面が傾斜している場合は、垂直からの傾斜角度(勾配)にも限度がある。高さの限界は約6mであり、傾斜勾配の限度は1/5程度である。そこで、第5実施形態に係る加圧式浸透装置900では、図12(a)に示すように、複数本の加圧シャフト631,632,633と、ハンドル640と、複数本の加圧シャフト631,632,633を支持する複数のシャフト受け621,622,623と、支持体670と、支持体670に設けられる第1定滑車651と、ワイヤーWと、複数の吸盤711,712,713と、複数の吸盤711,712,713を連結する連結軸体730と、結合体680とを有する。
【0080】
加圧シャフト631,632,633は、一方の端部が加圧プレート300の他方の主面に当接固定されている。また、加圧シャフト631,632,633の他方の端部には、ハンドル640が取り付けられている。シャフト受け621,622,623は半円断面柱体の形状であり、加圧シャフト631,632,633を水平方向にスライド自在に支持する。支持体670は柱形状であり、支持体670の中腹部には支持体分岐671が設けられている。支持体分岐611aは例えば板状金属体(フラットバー)であり、支持体670を貫通して例えば溶接等により固定されている。支持体分岐671の両端部には、夫々シャフト受け622,623が取り付けられており、また支持体670の頂部にはシャフト受け621が取り付けられ、このようにして支持体670は、シャフト受け621,622,623を支持している。第1定滑車651は、支持体670に設けられており、水平方向に突出している。また、第2定滑車652も支持体670に設けられており、第1定滑車651の下方に位置する。
【0081】
ワイヤWはハンドル640と錘660とを連結する。即ち、ワイヤWの一方の端部は図11(a)及び(b)で示されるように3方向に分岐しており、夫々がハンドル640に取り付けられている。3方向に分岐したワイヤWのハンドル640への取付けは種々の形態を利用することができ、例えば第4実施形態で説明したようにフックにて取り付けることが可能である。ワイヤWの中間部が第1定滑車651に巻掛される共に第2定滑車652に掛けられている。ワイヤWの他方の端部には錘660が吊下られている。ワイヤWの錘660への取付けも種々の形態を利用することができ、例えば第4実施形態で説明したようにフックにて取り付けることが可能である。
【0082】
図12(b)に示すように、吸盤711,712,713は、後述するように、浸透対象であるコンクリート500に吸着させるためのものであり、これらは同心円周上に均等間隔に配置されている。図12(a)及び(b)に示すように、連結軸体730は、夫々が略L字形状の連結軸731a,731b,731cを中央部732から放射状に配置して構成され、吸盤711,712,713を連結する。
【0083】
図13(b)に示すように、連結軸体730の中央部732の内部には、雌溝部733が形成されている。また、支持体670の中腹部に設けられている結合体680には雄溝部681が形成されている。そして、雌溝部733に雄溝部681が嵌め込まれることにより、連結軸体730と支持体670とが直結される。
【0084】
次に、第5実施形態に係る加圧式浸透装置900の使用態様の一例について説明する。まず、図13(b)にて矢印B3で示すように、吸盤711,712,713を浸透対象であるコンクリート500に吸着させる。次に図13(b)にて矢印B2で示すように、雌溝部733に雄溝部681を嵌め込ませて、連結軸体730と支持体670とを直結させる。そして、図13(a)に示すように、加圧シャフト631,632,633を、矢印B4で示すように夫々シャフト受け621,622,623に載置する。そして、図12(a)に示すように、ワイヤWの3方向に分岐している先端をハンドル640に取り付け、中間部を第1定滑車651に巻掛される共に第2定滑車652に掛け、ワイヤWの他方の端部に錘660を取り付ける。これにより、図12(a)に矢印A5で示すように錘660によりワイヤWが鉛直下方に張力を受け、第1定滑車651に巻掛されているワイヤWが図12(a)に矢印A6で示す方向に張力を受け、図12(a)に矢印A7で示す方向にハンドル640及び加圧シャフト631,632,633が移動し、これにより加圧プレート300が加圧されて、袋状容器100の開口部102を浸透対象となるコンクリート500に対して押し付ける。なお、上述の加圧式浸透装置900の使用態様では、B3→B2→B4の順番で加圧式浸透装置900を設置したが、このような形態に限定されない。
【0085】
本実施形態では、上述の第1実施形態に係る発明の効果に加え、人力による加圧動作を要せずに錘660の重力により加圧動作を行うので、より加圧動作の省力化を図ることができる。更に、第5実施形態では各パーツに重量を要するものを使用していないので、作業現場に到着する前にパーツごとに輸送して、それらを作業現場にて組み立てることで、利便性よく本実施形態の加圧式浸透装置900を使用できる。その上、浸透対象であるコンクリート面の傾斜角度に対しても、基本的には制約を受けない長所がある。従って上向きの施工に好適に適用可能である。
【0086】
なお、浸透対象となるコンクリート500の表面には凹凸が存在することがあり、そのため吸盤711,712,713が浸透対象面に吸着しにくいことも考えられる。そのため、真空ポンプ装置を使用して、吸盤711,712,713の吸盤内部の空間を減圧させて、浸透対象面に吸盤711,712,713が吸着しやすくさせることも可能である。
【0087】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について具体的に説明する。図14は、第6実施形態の加圧式浸透装置本体を示した断面図である。
【0088】
図14に示すように、本実施形態に係る加圧式浸透装置900は、アルカリケイ酸塩浸透材を貯留する液槽880と、吸水材200にアルカリケイ酸塩浸透材を導入する導入パス910と、吸水材200に含まれるアルカリケイ酸塩浸透材を排出する排出パス920とを有する。
【0089】
導入パス910は、管路913と、ポンプ915と、三股管路914と、例えば合成ゴム製等の可撓性を有するホース912とを有する。三股管路914は、吸水材200に直結する端部914cと、別の端部914a及び914bを有する。ホース912は、三股管路914の端部914aと管路913の他方の端部とを連結する。ホース912の長さは、作業現場の状況に応じて適宜設定することができる。管路913の一方の端部は、液槽880内部に貯留されるアルカリケイ酸塩浸透材に浸漬される。三股管路914の端部914aの付近には第1弁911aが設けられ、端部914bの付近には第2弁911bが設けられる。また、管路913の他方の端部には第4弁911cが設けられる。ポンプ915は管路913の第4弁911cと液槽880の中間位置に取り付けられており、液槽880に貯留されているアルカリケイ酸塩浸透材を吸引するものである。第4弁911cは逆止弁であり、アルカリケイ酸塩浸透材の逆流を防止する。
【0090】
排出パス920は、管路923と、管路924と、例えば合成ゴム製等の可撓性を有するホース922とを有する。管路924の一方の端部の付近には第3弁924が設けられる。ホース922は、管路924の他方の端部と管路923とを連結する。ホース922の長さも、作業現場の状況に応じて適宜設定することができる。
【0091】
次に、第6実施形態に係る加圧式浸透装置900の使用態様について説明する。加圧プレート300を加圧して吸水材200に含有されるアルカリケイ酸塩浸透材を浸透対象に浸透させる際には、第1弁911a、第2弁911b、及び第3弁924は閉じられている。そして、浸透対象へのアルカリケイ酸塩浸透材の浸透が一旦終了すると、加圧プレート300の全加圧状態を維持しながら、第3弁924を開く。これにより、吸水材200に残留していたアルカリケイ酸塩浸透材が、ホース922を経由して液槽880に排出される。次に、加圧プレート300への加圧を0にして、吸水材200をほぼ空気のみが含有される状態にして、次の浸透対象位置に加圧式浸透装置900を設置させる。次に第3弁924を閉じ、第2弁911bを開き、再び全加力を加えて吸水材200中の空気を抜く。更に第2弁911bを閉じ、加力を初期加力にまで軽減してその状態を保つ。なお、ここで初期加力とは、吸水材200にポンプ915によってアルカリケイ酸塩浸透材を充填する際に、袋状容器100の肉薄部110からの液漏れを支障のない程度に抑制するために予め加えられる最小限の加力である。次に、第1弁911aを開き、ポンプ915を作動させてアルカリケイ酸塩浸透材の吸水を始める。吸水材200にアルカリケイ酸塩浸透材が十分に含有されたと判断したらポンプ915を停止する。そして第1弁911aを閉じた上で加圧プレート300に全加力を加えて吸水材200に含有されるアルカリケイ酸塩浸透材を浸透対象に浸透させる。以上が第6実施形態に係る加圧式浸透装置900の使用態様の1サイクルである。
【0092】
本実施形態では、上述の第1実施形態に係る発明の効果に加え、吸水材200へのアルカリケイ酸塩浸透材の補給がスムーズに行うことができるので、作業効率が格段に向上する。
【0093】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について具体的に説明する。図15は、第7実施形態の加圧式浸透装置本体を示した断面図である。
【0094】
上述の第4実施形態では、浸透作業を行う際はワイヤWの端部に錘660を取付け、浸透作業が終了するとワイヤWの端部から錘660を取り外していたが、錘660は例えば30〜100キログラム程度の重量を有するものであり、錘660の着脱作業は労力を要することがある。そこで、本実施形態に係る加圧式浸透装置900は、錘660を支える錘支持板855と、その錘支持板855を上下方向に自在に移動させる錘支持板移動部895とを有する。
【0095】
錘支持板移動部895は、支柱610に設けられる溝部851と、溝部851と噛み合う一対の内歯車853,854と、ケース852とを有する。錘支持板855は、ケース852に垂直方向に張り出して取り付けられている。内歯車853,854を自在に回転させることにより、ケース852が上下に移動し、それに伴い錘支持板855も上下に移動する。錘支持板855の上面には弾性マット856が設けられている。弾性マット856の材質は特に限定されないが、錘660を載置した場合にその厚みが約1/3程度になる弾性を有するものであるならば適宜使用することができ、例えば硬質スポンジ、発泡樹脂、防振ゴムパッド等を使用することができる。
【0096】
次に第7実施形態に係る加圧式浸透装置900の使用態様を説明する。まず浸透作業を行わない場合は、ワイヤW及び錘660を取り付けたままにして、錘支持板移動部895を上方向に移動させて錘660を上方向に移動させ、ワイヤWを弛ませることによりハンドル640にワイヤWの張力が係らないようにする。そして浸透作業を行う場合は、図15に示すように、錘支持板移動部895を下方向に移動させて、錘660と錘支持板856とを離間させ、ワイヤWに張力を掛ける。従って、錘660の着脱作業を行うことなく、ハンドル640にワイヤWの張力をかけることができ、加圧式浸透装置900の利便性が更に向上する。また、錘660を弾性マット856に載置させるため、ワイヤWに係る張力を微差にて調整することができる。例えば上述の第6実施形態において、吸水材200へのアルカリケイ酸塩浸透材の充填を機械的に行う場合、アルカリケイ酸塩浸透材の充填の直前に初期加力を設けることが好ましい。即ち、加力は100%又は0%ではなくその中間の数%が必要であり、しかもこの数%の加力は袋状容器100の肉薄部110からのアルカリケイ酸塩浸透材の漏れ具合を見た上での現場調整で決定される。本実施形態に係る構成によればこのような初期加力を容易に調整することができる。
【0097】
内歯車853,854を回転させ、錘支持板移動部895を上下に移動させる機構は特に限定されるものではなく種々の機構を採用することができるが、その一例として図16(a)に示すように、内歯車853と同軸の外歯車857と、内歯車854と同軸であり外歯車857と噛み合う外歯車858と、外歯車857と噛み合う小歯車8571と、小歯車8571を回転させる回転レバー859とを設けることが可能である。この錘支持板移動部895の作動は、回転レバー859を回転させることにより、小歯車8571が回転し、それに伴い外歯車857,858が回転し、それらと同軸である内歯車853,854も回転し、錘支持板移動部895が上下に移動する。小歯車8571の半径a、外歯車857,858の半径b、内歯車853,854の半径c、回転レバー859の長さA、錘660の質量Wt、回転レバー859を回転させる力F1とすると(なお、b>c>aとする。)、F1×(bA/a)>Wt×cであるような力F1を回転レバー859に加えることにより、錘支持板移動部895は上昇可能である。錘660の重量が例えば100キログラム程度の場合であっても、小歯車8571の半径a、外歯車857,858の半径b、内歯車853,854の半径c、回転レバー859の長さAを夫々適宜設計することにより、力F1を5キロ程度の加力にて錘支持板移動部895を上昇移動させることができる。そして図16(a)に示すように、錘660を弾性マット856に緩やかに接触させるように吊しながら、回転レバー859を微妙に回転調整することで、上述した初期加力を微調整することができる。
【0098】
また、図16(b)に示すように、角度調整アーム891と角度調整山形部890とを設けることも可能である。角度調整アーム891には下向きの鋸状切り込みが設けられており、角度調整山形部890の山部と噛み合う。角度調整アーム891の下端部は丁番にて錘支持板855に取り付けられている。この構成により、錘支持板855をより強固にケース852に固定できる。また、角度調整アーム891の鋸状切り込みの何れかの歯を、角度調整山形部890の山部に適宜調整して噛み合せることで、錘支持板855を任意角度にて斜めに傾かせることができる。これにより、仮に塗布対象が床面に対して傾斜しているような場合でも、錘660を錘支持板855に適切に載置させることができる。
【0099】
(第9実施形態)
次に、本発明の第9実施形態について具体的に説明する。図17は、第9実施形態の加圧式浸透装置本体を示した断面図である。
【0100】
本実施形態に係る加圧式浸透装置900は、地上支持体871に支持支柱874,875が立設されており、支持支柱874,875には第2作業場872及び第3作業場873が設けられている。地上支持体871と第2作業場872との距離は特に限定されるものではないが、例えば2.0m〜2.3mである。また、第2作業場872と第3作業場873との距離も例えば2.0m〜2.3mである。この構成によれば、高さ7m程度までのコンクリート壁面に対する浸透作業が可能になる。従って、土木分野での加圧式浸透装置900の使用は広範囲に考えられ、例えば橋脚橋梁、擁壁、防潮堤、導水路、水槽、隧道等の工事現場において種々の浸透対象に対して使用できる。一方、第3作業場873以上の高さに更なる作業場を形成することは転倒モーメントが大きくなるため、作業現場における物的及び人的安全面を考慮して、建築分野では、本実施形態による浸透作業は通常の建物では2階以下に限られることが好ましい。
【0101】
(その他の実施形態)
〔中性化したコンクリートの再生〕
上述の実施形態では、アルカリケイ酸塩浸透材をコンクリートの劣化防止のために浸透させたが、中性化したコンクリートの再生としても使用することができる。コンクリートが酸若しくは二酸化炭素の侵入によって、内部の水酸化カルシウムが溶出又は炭酸化して、pHが11.5以下になると、鉄筋の被膜が破壊され、腐食反応が始まる。中性化したコンクリートの塩基性を回復し、且つ水酸化カルシウムを補充するには、下記式2に示すように次の2剤を別個に浸透させて、内部に水酸化カルシウムの結晶と、その飽和溶液とが共存する状態を作り出せばよい。
【0102】
【化2】
【0103】
NaOH、Ca(NO3)2、NaNO3はともに水溶性であり、Ca(OH)2の水に対する溶解度は小さい(0.185g/100cm3)ので、結晶化して長期間pHを12以上に保つことができる。従来は、上記の2剤を有効にコンクリート内部に浸透させる手段は無かったが、本実施形態に係る加圧式浸透装置900を使用してNaOH水溶液及びCa(NO3)2水溶液を、順を前後して鉄筋の位置を越える深さまで浸透させることにより、中性化したコンクリートの塩基性を大幅に回復させることができる。
【0104】
〔撥水剤の加圧浸透による紫外線劣化の防止〕
コンクリート用の撥水剤としては、シラン系とシリコーン系とが使用されている。通常はこれらの撥水剤は、スプレー方式により塗布若しくは浸透がなれているものの、コンクリートへの浸透深さはシラン系でせいぜい4mm以下であり、シリコーン系はコンクリート表面に付着するだけでほとんど浸透しない。また、スプレー方式による撥水剤の塗布若しくは浸透では浸透材の無駄も生じる。更にシラン系及びシリコーン系の撥水剤は紫外線と太陽熱とによる劣化及び分解が生じる。外部環境にも依存するが、通常は速ければ3年で、大半の撥水剤は5〜10年でほとんど撥水効果がなくなる。そこで、本実施形態に係る加圧式浸透装置900を使用して、シラン系若しくはシリコーン系の撥水剤をコンクリートに浸透させることにより、1cm以上の深さまで撥水剤を浸透させることができる。その結果、外部からの紫外線又は太陽熱の影響が著しく軽減されるので、撥水材の劣化が生じにくく分解されにくい。
【実施例】
【0105】
アルカリケイ酸塩浸透材のような高分子コロイドと、硝酸カルシウム溶液のような単分子又はイオン解離性溶液とについて、コンクリートへの浸透と液圧との関係を調べるために図18に示す方法で試験をした。なお、加圧浸透装置において生ずる液圧と、この試験での被験液の液柱高さとは、(W−WL)/A=ρHの関係がある。ここで、Wは錘の重量(g)であり、WLは加圧プレートが袋状容器と吸水材そのもの(吸水材にアルカリケイ酸塩浸透材等の液体が含まれていない状態)を圧縮するのに要する力(g)であり、Aは吸水材の開口面積(cm3)であり、Hは被験液の液柱の高さ(cm)であり、ρは被験液の比重(g/cm3)である。即ち、加圧プレートへの加力から袋状容器及び吸水材そのものの圧縮に使われる力を引いたものを、吸水材の開口面積で除した値は、液に加わる圧力であり、それは被験液の液柱の高さにその比重を乗じたものに等しい。図18に示すように、コンクリート標準試験体862に、直管付きガラスロート861を立設させた。コンクリート標準試験体862は、直径100mm×200mmであった。コンクリート標準試験体862は、対セメント重量比で、砂を2.5質量%、砂利を2.7質量%含有するものであった。水(W)とセメント(C)との比W/Cは0.66であった。直管付きガラスロート861の円錐部の最大開口部分の直径は75mmであり、細管部の直径は10mmであった。直管付きガラスロート861内部には、アルカリケイ酸塩浸透材863が封入された。コンクリート標準試験体862の上端部には、周状にブチルゴム両面接着テープ865が接着されており、更にブチルゴム両面接着テープ865の上には周状に接着テープ866が巻かれた。巻かれている接着テープ866の上端は、コンクリート標準試験体862の上端部よりも僅かに上方にせり出していた。そして接着テープ866と直管付きガラスロート861との間にはシリコンシール864が充填された。コンクリート標準試験体862は、1つのロット(第1のロット)から6個用意し、また別のロット(第2のロット)から更に6個用意し、合計で12個用意した。
【0106】
ガラスロート861に所定の高さHまで被験液を注入すると同時に測定を開始し、絶えず最初に注入した高さHを維持するように被験液を補充し、測定時点でのそれまでの被験液の補充量を測定した。図18に示すように、被験液の高さHは、直管付きガラスロート861の円錐部の最大開口部分からの高さであった。この被験液の補充量を、ガラスロート861の底面積(3.75cm×3.75cm×3.14=44.2cm2)で除した数値が、単位面積あたりのその経過時間までの総浸透量になる。
【0107】
被験液は、水とアルカリケイ酸塩浸透材を使用した。被験液には、試験終了後にコンクリート標準試験体を割裂して浸透深さを目視して確認するために、着色材としてクロム酸カリウムを少量混入した。クロム酸イオンはそれ自体黄褐色を呈するので液とともに浸透してコンクリートを着色する。なお、水は単分子若しくは電解質水溶液の代表として、一方アルカリケイ酸塩浸透材は高分子コロイドの代表として試験を行った。
【0108】
被験液として水を使用し、第1のロットの試験体6個を使い、被験液の高さHが2cm、4cm、6cm、8cm、14cm、20cmの夫々についての時間経過に伴う浸透量の増加を測定した。この結果を図19に示す。高さHが2cmの場合は明らかに浸透速度が低かった。高さHが4cmと6cmと比較してみると、ごく僅かではあるが4cmの方が6cmよりも上回っているものの、これはコンクリート標準試験体862内部の構造のバラツキによるものと考察される。高さHが8cm以上の場合は、一部において逆転現象が見られるものの、浸透速度において差はほとんどなかった。
【0109】
次に、被験液としてアルカリケイ酸塩浸透材を使用し、第2ロットの試験体6個を使い、被験液の高さHが8cm、14cm、20cmの夫々についての時間経過に伴う浸透量の増加を測定した。試験は2回行い、その平均値を測定結果とした。この結果を図20に示す。なお、アルカリケイ酸塩浸透材において、〔Si〕=2.0mol/リットル,〔Na〕/〔Si〕=1.5であった。被験液がアルカリケイ酸塩浸透材の場合は被験液が水の場合と比較して、加圧力の差が明白に現れた。また、アルカリケイ酸塩浸透材の場合、圧力大きくなると浸透量は一層大きくなっていた。しかしながら、アルカリケイ酸塩浸透材の場合は水の場合と比較して、浸透量の絶対値は極めて小さく、その比も時間とともに小さくなっていた。即ち、高さHが20cmのアルカリケイ酸塩浸透材の場合でも、高さHが8〜20cmの水の場合と比較して、浸透量の比は、0.5時間で約1/3、1時間で約1/4、2時間で約1/5、4時間で約1/6のように時間とともに小さくなっていた。上記の実験結果により、アルカリケイ酸塩浸透材のような水和力の大きい高分子コロイドが如何にコンクリートに浸透しにくいかが実証された。アルカリケイ酸塩浸透材によるコンクリートの吸水抑制効果が持続するためには、2cm程度以上の深さまでのアルカリケイ酸塩とカルシウムイオンとの結合によるゲル生成が望ましい。しかし、通常の施工法つまり刷毛、ローラーによる塗布又はスプレーによる吹付けでは、垂直壁面への液の付着はせいぜい0.2mm程度であり、仮にその全量が浸透したとしても浸透深さは4mm程度に過ぎない。本発明に係る加圧式浸透装置900によれば、例えば液柱H=20mmとして約3時間の加圧により上記の目標を達成できる。まして水酸化ナトリウム、硝酸カルシウム、シラン系化合物のような単分子又はイオン解離性の溶液であれば、より少ない液圧及び加圧時間でより深く浸透させることが容易であり、例えば通常の鉄筋の位置を越える深さ(60mm以上)までの浸透も容易であり、そのため中性化したコンクリートの塩基性を回復させ、また、撥水剤の効果を著しく長期間にわたり持続させることが可能となる。上述の実施例により、本発明に係る加圧式浸透装置900が、アルカリケイ酸塩浸透材及び他の一部の有用な化学物質の溶液をコンクリートに浸透させるために極めて有益であることが示された。
【符号の説明】
【0110】
100:袋状容器
101:袋底部
102:開口部
110:肉薄部
200:吸水材
300:加圧プレート
310:加圧シャフト
320:ハンドル
411:第1蝶番軸受け
412:第2蝶番軸受け
420:蝶番ヒンジ
500:コンクリート
610:支柱
621:シャフト受け
622:シャフト受け
623:シャフト受け
631:加圧シャフト
632:加圧シャフト
633:加圧シャフト
640:ハンドル
651:第1定滑車
652:第2定滑車
660:錘
670:支持体
680:結合体
681:雄溝部
711:吸盤
712:吸盤
713:吸盤
730:連結軸体
732:中央部
733:雌溝部
851:溝部
852:ケース
853:内歯車
854:内歯車
855:錘支持板
856:弾性マット
857:外歯車
858:外歯車
859:回転レバー
861:直管付きガラスロート
862:コンクリート標準試験体
880:液槽
890:角度調整山形部
891:角度調整アーム
895:錘支持板移動部
910:導入パス
912:ホース
915:ポンプ
920:排出パス
922:ホース
900:加圧式浸透装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口縁が内側に向けて曲成されその縁部が前記開口縁に向けて肉薄になるように肉厚が変化し、側部が蛇腹状をなし弾性変形する袋状容器と、前記袋状容器の内部に充填され、吸水性を有し圧縮されて排水する吸水材と、前記袋状容器の袋底部に設けられ剛性を有し前記袋状容器の内容積を縮小するために加圧される加圧プレートとを有することを特徴とする加圧式浸透装置。
【請求項2】
前記吸水材は、スポンジ状の多孔性弾性体であることを特徴とする請求項1記載の加圧式浸透装置。
【請求項3】
前記吸水材は、繊維を織らずに絡み合わせた不織構造体又は不織布を積層させた積層不織布構造体であることを特徴とする請求項1記載の加圧式浸透装置。
【請求項4】
前記袋状容器の開口部の外側に、突出するように均等間隔で形成された複数の第1蝶番軸受けと、前記加圧プレートの側面に、突出するように均等間隔で形成された複数の第2蝶番軸受けと、開き角度が一定値以下に制限されており、前記第1蝶番軸受けと前記第2蝶番軸受けとを接続する複数の蝶番ヒンジとを有する蝶番ユニットを有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の加圧式浸透装置。
【請求項5】
一方の端部が前記加圧プレートに当接固定される加圧シャフトと、前記加圧シャフトの他方の端部に設けられるハンドルとを有し、前記ハンドルを加圧することにより、前記加圧シャフトが前記加圧プレートを加圧することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の加圧式浸透装置。
【請求項6】
一方の端部が前記加圧プレートに当接固定される複数本の加圧シャフトと、前記複数本の加圧シャフトの他方の端部に設けられるハンドルと、前記複数本の加圧シャフトを水平方向にスライド自在に支持する半円断面柱体の複数のシャフト受けと、前記複数のシャフト受けを支持する支柱と、前記支柱に設けられ水平方向に突出する定滑車と、一方の端部が前記ハンドルに取り付けられ、中間部が前記定滑車に巻掛され、他方の端部に錘が吊下られるワイヤーと、前記支柱を支持する支持台とを有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の加圧式浸透装置。
【請求項7】
前記錘を支える錘支持板と、前記錘支持板を上下方向に移動させる錘支持板移動部とを有することを特徴とする請求項6記載の加圧式浸透装置。
【請求項8】
一方の端部が前記加圧プレートに当接固定される複数本の加圧シャフトと、前記複数本の加圧シャフトの他方の端部に設けられるハンドルと、前記複数本の加圧シャフトを水平方向にスライド自在に支持する複数の半円断面柱体のシャフト受けと、前記複数のシャフト受けを支持する支持体と、前記支持体に設けられ水平方向に突出する定滑車と、一方の端部が前記ハンドルに取り付けられ、中間部が前記定滑車に巻掛され、他方の端部に錘が吊下られるワイヤーと、同心円周上に均等間隔に設けられた複数の吸盤と、複数の連結軸が前記同心円の中央から放射状に配置されて前記複数の吸盤を連結する連結軸体と、前記連結軸体と前記支持体とを直結する結合体とを有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の加圧式浸透装置。
【請求項9】
溶液を貯留する液槽と、前記吸水材に前記溶液を導入する導入パスと、前記吸水材に含まれる溶液を排出する排出パスとを有することを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の加圧式浸透装置。
【請求項1】
開口縁が内側に向けて曲成されその縁部が前記開口縁に向けて肉薄になるように肉厚が変化し、側部が蛇腹状をなし弾性変形する袋状容器と、前記袋状容器の内部に充填され、吸水性を有し圧縮されて排水する吸水材と、前記袋状容器の袋底部に設けられ剛性を有し前記袋状容器の内容積を縮小するために加圧される加圧プレートとを有することを特徴とする加圧式浸透装置。
【請求項2】
前記吸水材は、スポンジ状の多孔性弾性体であることを特徴とする請求項1記載の加圧式浸透装置。
【請求項3】
前記吸水材は、繊維を織らずに絡み合わせた不織構造体又は不織布を積層させた積層不織布構造体であることを特徴とする請求項1記載の加圧式浸透装置。
【請求項4】
前記袋状容器の開口部の外側に、突出するように均等間隔で形成された複数の第1蝶番軸受けと、前記加圧プレートの側面に、突出するように均等間隔で形成された複数の第2蝶番軸受けと、開き角度が一定値以下に制限されており、前記第1蝶番軸受けと前記第2蝶番軸受けとを接続する複数の蝶番ヒンジとを有する蝶番ユニットを有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の加圧式浸透装置。
【請求項5】
一方の端部が前記加圧プレートに当接固定される加圧シャフトと、前記加圧シャフトの他方の端部に設けられるハンドルとを有し、前記ハンドルを加圧することにより、前記加圧シャフトが前記加圧プレートを加圧することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の加圧式浸透装置。
【請求項6】
一方の端部が前記加圧プレートに当接固定される複数本の加圧シャフトと、前記複数本の加圧シャフトの他方の端部に設けられるハンドルと、前記複数本の加圧シャフトを水平方向にスライド自在に支持する半円断面柱体の複数のシャフト受けと、前記複数のシャフト受けを支持する支柱と、前記支柱に設けられ水平方向に突出する定滑車と、一方の端部が前記ハンドルに取り付けられ、中間部が前記定滑車に巻掛され、他方の端部に錘が吊下られるワイヤーと、前記支柱を支持する支持台とを有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の加圧式浸透装置。
【請求項7】
前記錘を支える錘支持板と、前記錘支持板を上下方向に移動させる錘支持板移動部とを有することを特徴とする請求項6記載の加圧式浸透装置。
【請求項8】
一方の端部が前記加圧プレートに当接固定される複数本の加圧シャフトと、前記複数本の加圧シャフトの他方の端部に設けられるハンドルと、前記複数本の加圧シャフトを水平方向にスライド自在に支持する複数の半円断面柱体のシャフト受けと、前記複数のシャフト受けを支持する支持体と、前記支持体に設けられ水平方向に突出する定滑車と、一方の端部が前記ハンドルに取り付けられ、中間部が前記定滑車に巻掛され、他方の端部に錘が吊下られるワイヤーと、同心円周上に均等間隔に設けられた複数の吸盤と、複数の連結軸が前記同心円の中央から放射状に配置されて前記複数の吸盤を連結する連結軸体と、前記連結軸体と前記支持体とを直結する結合体とを有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の加圧式浸透装置。
【請求項9】
溶液を貯留する液槽と、前記吸水材に前記溶液を導入する導入パスと、前記吸水材に含まれる溶液を排出する排出パスとを有することを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の加圧式浸透装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2010−189871(P2010−189871A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33058(P2009−33058)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(505051024)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(505051024)
【Fターム(参考)】
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