説明

加工ナタデココの形成方法、加工ナタデココの復元方法、及び加工ナタデココ

【課題】乾燥状態から非乾燥状態に復元した際に、例えば収縮、割れ、または亀裂等に起因した外観的な破損、及び例えば硬くなる等の物性的な変化が生じない加工ナタデココを形成する。
【解決手段】まず、第1過程では、キューブ状のナタデココを繊維間結合防止剤の水溶液に浸漬することによって、ナタデココの繊維間に繊維間結合防止剤を入り込ませる。次に、第2過程では、ナタデココを凍結乾燥する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば外観や食感等を損なうことなくナタデココを乾燥することができる加工ナタデココの形成方法、この形成方法を用いて形成される加工ナタデココの復元方法、及びこの形成方法を用いて形成される加工ナタデココに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば食品や医療品等に用いられる材料として、ナタデココが注目を集めている。
【0003】
ナタデココは、網目状に絡まり合ったセルロースの繊維を骨格としており、99.5wt%以上の水を含んで構成されたゲル状物質である。
【0004】
ところで、ナタデココを保存または保管するために、または、ナタデココの利用目的に応じて、例えばナタデココを乾燥する方法が周知である(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0005】
特許文献1では、保存性に優れた釣り用疑似餌として、ナタデココを乾燥することによって得られる乾燥疑似餌が開示されている。
【0006】
そして、この特許文献1に係る乾燥疑似餌は、水に浸漬することによって、非乾燥状態に復元して使用することが可能である。
【0007】
また、特許文献2では、ナタデココを凍結乾燥することによって形成された揮散性薬剤担持体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−322676号公報
【特許文献2】特開2004−16742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
既に説明したように、ナタデココは、セルロースの繊維を骨格として構成されている。そのため、ナタデココを乾燥する際において、このセルロースの繊維同士が水素結合することがある。
【0010】
その結果、乾燥したナタデココが収縮する、割れる、または亀裂が生じる等の問題が生じ、外観が損なわれる恐れがある。
【0011】
そのため、例えば水に浸漬する等の方法によってナタデココを非乾燥状態に復元したとき、上述した収縮、割れ、または亀裂等に起因して、外観的な破損が生じる恐れがある。
【0012】
また、乾燥したナタデココを非乾燥状態に復元したとき、上述したセルロース繊維間の水素結合に起因して、復元したナタデココが乾燥前と比して例えば硬くなる等、ナタデココの物性が変化することがある。
【0013】
従って、例えば乾燥したナタデココを、インスタント食品、すなわち乾燥状態から非乾燥状態へ復元して食用とする加工食品として供する場合に、食感が損なわれる等の問題が生じる恐れがある。
【0014】
この発明の目的は、乾燥状態から非乾燥状態に復元した際に、上述した例えば収縮、割れ、または亀裂等に起因した外観的な破損、及び例えば硬くなる等の物性的な変化が生じない加工ナタデココの形成方法、この形成方法を用いて形成される加工ナタデココの復元方法、及びこの形成方法を用いて形成される加工ナタデココを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明に係る発明者が種々検討したところ、乾燥前において、ナタデココを構成しているセルロースの繊維間に、これら繊維同士が水素結合するのを防止することが可能な物質を入り込ませることによって、復元した際に上述した外観的な破損及び物性的な変化が生じない加工ナタデココを形成できることを見出した。
【0016】
そこで、上述の目的の達成を図るため、この発明の第1の要旨による加工ナタデココの形成方法は、以下の第1過程及び第2過程の各過程を含んでいる。
【0017】
すなわち、まず、第1過程では、キューブ状のナタデココを繊維間結合防止剤の水溶液に浸漬することによって、ナタデココの繊維間に繊維間結合防止剤を入り込ませる。
【0018】
次に、第2過程では、ナタデココを凍結乾燥する。
【0019】
また、この発明の第2の要旨による加工ナタデココの復元方法は、以下の過程を行う。
【0020】
すなわち、上述した第1の要旨に係る加工ナタデココの形成方法を用いて形成した加工ナタデココを、水に浸漬することによって乾燥状態から非乾燥状態へ復元する。
【0021】
また、この発明の第3の要旨による加工ナタデココは、以下の特徴を有している。
【0022】
すなわち、第3の要旨による加工ナタデココは、キューブ状のナタデココの繊維間に繊維間結合防止剤が入り込んだ状態で、このナタデココが凍結乾燥されて形成されている。
【0023】
また、この発明の第4の要旨による加工ナタデココの形成方法は、以下の第1過程及び第2過程の各過程を含んでいる。
【0024】
すなわち、まず、第1過程では、繊維間に繊維間結合防止剤を非含有の、キューブ状のナタデココを用意する。
【0025】
次に、第2過程では、このナタデココの表面を水で被覆した後、このナタデココを凍結乾燥する。
【発明の効果】
【0026】
第1の要旨による加工ナタデココの形成方法によれば、ナタデココの繊維間に、これら繊維同士が水素結合するのを防止するための繊維間結合防止剤を入り込ませた状態で、ナタデココを凍結乾燥させる。その結果、この凍結乾燥時において、ナタデココの繊維間の水素結合が防止されるため、ナタデココの収縮、割れ、または亀裂等が生じるのを抑制することができる。
【0027】
従って、第1の要旨による加工ナタデココの形成方法を用いて形成された加工ナタデココでは、ナタデココを非乾燥状態に復元したとき、上述した収縮、割れ、または亀裂等に起因する外観的な破損を防止することができる。
【0028】
また、第1の要旨による加工ナタデココの形成方法によれば、繊維間結合防止剤によって、ナタデココの繊維間の水素結合が防止されるため、加工ナタデココの復元時に、例えば凍結乾燥前と比してナタデココが硬くなる等の物性的な変化を抑制することができる。
【0029】
また、第2の要旨による加工ナタデココの復元方法では、第1の要旨による加工ナタデココの形成方法を用いて形成した加工ナタデココを水に浸漬することによって非乾燥状態に復元する。上述したように、第1の要旨による加工ナタデココの形成方法を用いて形成した加工ナタデココでは、ナタデココの繊維間の水素結合が防止されている。
【0030】
そのため、第2の要旨による加工ナタデココの復元方法では、復元されたナタデココの外観的な破損、及び例えば硬くなる等の物性的な変化を防止することができる。
【0031】
また、第3の要旨による加工ナタデココは、第1の要旨による加工ナタデココの形成方法を用いて、すなわちナタデココの繊維間に繊維間結合防止剤が入り込んだ状態で、このナタデココが凍結乾燥されることによって形成されている。
【0032】
従って、第3の要旨による加工ナタデココは、繊維間の水素結合が防止されているため、外観的な破損、及び例えば硬くなる等の物性的な変化を防止しつつ、非乾燥状態に復元することができる。
【0033】
また、第4の要旨による加工ナタデココの形成方法では、ナタデココを凍結乾燥する前において、ナタデココの表面を水で被覆することによって、凍結乾燥中の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(A)及び(B)は、この発明の第1の実施の形態による加工ナタデココの形成方法において、ナタデココに表面から複数の孔を開口した場合の構成例を概略的に示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、この発明の好適な実施の形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、単なる好適例に過ぎず、従って、この発明の構成は、以下に説明する構成例のみに何ら限定されるものではなく、この発明の範囲を逸脱することなく、多くの変形や変更を行い得ることが明らかである。また、以下の説明において記載する例えば濃度、温度、時間等の値は、この発明の効果を達成し得る範囲内の値であり、同様の効果が得られるならば、この値の近傍の値であってもよく、何らこの数値に限定されるものではない。
【0036】
〈第1の実施の形態〉
第1の実施の形態では、加工ナタデココの形成方法及びこの加工ナタデココの形成方法によって形成された加工ナタデココについて説明する。
【0037】
この第1の実施の形態による加工ナタデココの形成方法は、第1過程及び第2過程を含んでいる。以下、第1過程から順に各工程につき説明する。
【0038】
まず、第1過程では、ナタデココを繊維間結合防止剤の水溶液に浸漬することによって、このナタデココの繊維間に繊維間結合防止剤を入り込ませる。
【0039】
ここで、第1の実施の形態による加工ナタデココの形成方法では、例えば水に浸漬する等の方法によって非乾燥状態に復元可能な、乾燥状態の加工ナタデココを形成する。形成される加工ナタデココは、非乾燥状態に復元することによって、例えば食品や医療品等の用途で使用される。そのため、形成される加工ナタデココは、使用する際の利便性を考慮し、短時間、具体的には例えば3〜10分程度の範囲内の時間で非乾燥状態に復元できることが望ましい。
【0040】
そのために、第1の実施の形態では、加工ナタデココの材料として、縦方向、横方向、及び高さ方向のそれぞれの寸法が好ましくは例えば10〜14mm程度のキューブ状のナタデココを用いる。
【0041】
なお、第1の実施の形態において、キューブ状のナタデココは、厳密な立方体である必要はなく、短時間で非乾燥状態に復元できるという効果が得られるならば、直方体を含む略立方体形状のものを用いても良い。
【0042】
そこで、第1の実施の形態では、キューブ状のナタデココとして市販のナタデココ、より具体的には、例えば周知のDietナタデココせんい(商品名:フジッコ株式会社)を用いるのが好ましい。なお、Dietナタデココせんいは、縦方向、横方向、及び高さ方向のそれぞれの寸法が14mm、14mm、及び14mm程度の立方体形状のナタデココである。
【0043】
また、このDietナタデココせんいは、ナタデココ中にシロップが浸透した状態で市販されている。そこで、例えば、周知のオートクレーブを用いてDietナタデココせんいを洗浄することによって、ナタデココからシロップを抜いておくのが好ましい。
【0044】
そして、この第1過程では、上述したキューブ状のナタデココを繊維間結合防止剤の水溶液に浸漬する。
【0045】
既に説明したように、従来のナタデココでは、乾燥時において、ナタデココを構成しているセルロース繊維同士が水素結合することによって、収縮、割れ、または亀裂等が生じる。
【0046】
また、このセルロース繊維間の水素結合に起因して、形成される加工ナタデココを非乾燥状態に復元したとき、復元したナタデココが乾燥前と比して例えば硬くなる等の物性が変化することがある。
【0047】
そこで、この第1過程において、ナタデココを構成しているセルロースの繊維間に、これら繊維同士が水素結合するのを防止することが可能な繊維間結合防止剤を入り込ませることによって、乾燥時、すなわち後述する第2過程における凍結乾燥時に、セルロースの繊維間の水素結合を防止する。
【0048】
そのために、まず、繊維間結合防止剤を水に溶解して得た繊維間結合防止剤の水溶液(以下、繊維間結合防止剤水溶液とも称する)を用意する。そして、例えばビーカー等の容器に繊維間結合防止剤水溶液を入れ、この繊維間結合防止剤水溶液中にナタデココを好ましくは例えば16〜24時間程度の範囲内の時間浸漬することによって、ナタデココ中に繊維間結合防止剤水溶液を浸透させる。これによって、ナタデココの繊維間に繊維間結合防止剤を入り込ませることができる。
【0049】
ここで、この第1過程において使用する繊維間結合防止剤は、上述したようにセルロース繊維同士が水素結合するのを防止することが可能な物質から選ばれる。また、この第1の実施の形態を用いて形成する加工ナタデココを食用として使用する場合には、繊維間結合防止剤として、人体に摂取された際に安全な物質を用いるのが好ましい。
【0050】
そこで、繊維間結合防止剤として、例えば炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、またはスクロース等を用いるのが好ましい。
【0051】
なお、セルロース繊維間の水素結合を防止するという効果を達成し得る物質であり、かつ人体に安全であれば、上述した炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、及びスクロース以外の物質、すなわち例えば塩化カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、フルクトース等の他の物質を繊維間結合防止剤として用いてもよい。
【0052】
また、この第1の実施の形態を用いて形成するナタデココを、例えば工業用等の食用以外の用途で用いる場合には、繊維間結合防止剤として、必ずしも人体に摂取された際に安全である物質を用いなくてもよい。
【0053】
なお、この第1過程においてナタデココを浸漬する繊維間結合防止剤水溶液の好適な濃度については後述する。
【0054】
ところで、後述する第2過程において、ナタデココを凍結乾燥すると、乾燥前は半透明であるナタデココが、乾燥後は不透明な白色に変色する。
【0055】
そして、既に説明したように、この乾燥されたナタデココ、すなわち加工ナタデココは、使用する際において、例えば水に浸漬され、その結果、加工ナタデココ中に水が浸透することによって非乾燥状態に復元される。復元されたナタデココ(以下、復元ナタデココとも称する)は、乾燥時の不透明な白色から再度半透明に変色する。
【0056】
しかし、この復元時に、加工ナタデココ中の全領域に確実に水が浸透しない場合、復元ナタデココでは、水が浸透しなかった部分が半透明に変色することなく白色のまま残存する。キューブ状のナタデココでは、表面から浸透する水を中心部まで行き渡らせることが困難であるため、特に中心部に白色の部分が残存し易い。このような白色部分の残存は、復元ナタデココの外観を損なうため、加工ナタデココの商品価値の低下に繋がる。
【0057】
そこで、この第1の実施の形態では、加工ナタデココを復元する際にこの加工ナタデココ中の全領域に確実に水を浸透させるために、図1(A)及び(B)に示すように、ナタデココ11にこのナタデココの表面から複数の孔を開口するのが好ましい。
【0058】
なお、図1(A)及び(B)は、ナタデココ11に表面から複数の孔13を開口した場合の構成例を概略的に示した斜視図である。なお、図1(A)及び(B)における符号A、B、C、D、E、F、及びGは、それぞれキューブ状のナタデココ11の各頂点を示している。
【0059】
この第1の実施の形態では、複数の孔13を、例えば以下のように開口するのが好ましい。
【0060】
すなわち、複数の孔13を、ナタデココの各面(面ABCD、EFGH、DCGH、ABFE、EADH、及びFBCG)からこれら各面に対して垂直方向に貫通させて開口する(図1(A)参照)。
【0061】
そのために、例えば延在方向に直交する断面が円形であり、この円形断面の直径が最大となる部分が0.58mm程度の針を用いて、互いに対向する各面の一方から他方へ、すなわち面ABCD及び面EFGHの一方から他方へ、面DCGH及び面ABFEの一方から他方へ、また、面EADH及び面FBCGの一方から他方へ、それぞれ貫通させて複数の孔13を開口するのが好ましい。
【0062】
そして、復元時において加工ナタデココ中の全領域に確実に水を浸透させるために、各面に好ましくは3つ以上、より好ましくは5つ程度の孔13を開口するのがよい。
【0063】
また、複数の孔13を、例えば以下のように開口してもよい。
【0064】
すなわち、複数の孔13を、ナタデココ11の各頂点(頂点A、B、C、D、E、F、及びG)からこれら各頂点とそれぞれ対向する頂点へ貫通させて開口する(図1(B)参照)。
【0065】
そのために、上述したのと同様の例えば延在方向に直交する断面が円形であり、この円形断面の直径が最大となる部分が0.58mm程度の針を用いて、互いに対向する各頂点の一方から他方へ、すなわち頂点A及び頂点Gの一方から他方へ、頂点B及び頂点Hの一方から他方へ、頂点C及び頂点Eの一方から他方へ、また、頂点D及び頂点Fの一方から他方へ、それぞれ貫通させて複数の孔13を開口するのが好ましい。
【0066】
このように、ナタデココ11に複数の孔13を開口することによって、この実施の形態を用いて形成される加工ナタデココでは、復元時において、中心部を含む全領域に確実に水が浸透し、その結果、白色部分の残存が防止される。
【0067】
なお、この第1の実施の形態による加工ナタデココの形成方法において、孔の開口は、続いて行われる第2過程の前、すなわちこの第1過程におけるナタデココを繊維間結合防止剤水溶液に浸漬する前または後の時点、または第2過程の後、すなわち後述する凍結乾燥の後の時点のいずれの時点で行ってもよい。
【0068】
次に、第2過程では、上述した第1過程において繊維間に繊維間結合防止剤を入り込ませたナタデココを凍結乾燥する。
【0069】
そのために、ナタデココを、例えばFDU−1200型(東京理科器械株式会社)等の凍結乾燥機を用いて、例えば−50℃程度の温度で例えば1〜3日間の範囲内の時間で凍結乾燥するのが好ましい。
【0070】
この凍結乾燥によって、ナタデココに本来的に含まれている水が凍結した後昇華し、その結果、乾燥状態の加工ナタデココが形成される。
【0071】
ここで、ナタデココは、上述したように、凍結乾燥中において、まず、ナタデココ中の表面部の水が凍結された後昇華し、その後、中心部の水が凍結される。そして、中心部の水が凍結される際、水が体積膨張し、この体積膨張の応力によって、既に乾燥され強度が低下しているナタデココの表面部に例えば割れまたは亀裂等の破損が生じる恐れがある。
【0072】
そこで、凍結乾燥中の破損を防止するために、この第2過程では、凍結乾燥を行う前に、ナタデココの表面を水で被覆するのが好ましい。
【0073】
そのために、例えばパスツールピペットを用いて、上述した寸法のナタデココに対して好ましくは2滴または3滴程度の水を滴下することによって、ナタデココの全表面を水で人為的に被覆する。
【0074】
なお、この発明に係る発明者は、より具体的な水の滴下量として、1cmのナタデココに対して、0.3〜1.5mlの範囲内の滴下量、より好適には1.1〜1.5mlの範囲内の滴下量の水を滴下することによって、ナタデココの破損を確実に防止できることを実験的に確認した。
【0075】
このように、凍結乾燥前に水で表面が被覆されたナタデココでは、凍結乾燥中において、まず、表面を被覆している水が凍結され昇華する。この表面を被覆している水が昇華している間に、ナタデココが中心部まで凍結される。従って、ナタデココは、中心部が凍結される時点においても、表面部が完全に乾燥されていないため、上述した凍結乾燥中の破損を防止することができる。
【0076】
さらに、凍結乾燥中の破損をより確実に防止するために、この第2過程では、ナタデココの表面を水で被覆した後であって、凍結乾燥を行う前に、ナタデココを冷却するのが好ましい。
【0077】
そのために、水で表面を被覆したナタデココを、例えば冷蔵庫に収納することによって、好ましくは4℃の温度で5分程度冷却する。
【0078】
このように、水で表面を被覆したナタデココを凍結乾燥する前に冷却することによって、冷却を行わない場合と比して、より確実に上述した凍結乾燥中の破損を防止することができる。
【0079】
なお、この発明に係る発明者は、凍結乾燥前において、ナタデココの表面を水で被覆することによって、また、ナタデココを冷却することによって、凍結乾燥中の破損を防止できることを実験によって確認した。この実験の結果については、後に詳細に説明する。
【0080】
また、既に説明したように、この第1の実施の形態では、第1過程において、ナタデココのセルロース繊維間に繊維間結合防止剤を入り込ませてある。そのため、この第2過程における凍結乾燥の際に、セルロース繊維間に水素結合が生じるのが防止される。従って、形成された加工ナタデココでは、セルロース繊維間の水素結合に起因する収縮、割れ、または亀裂等が防止されている。
【0081】
そのため、形成された加工ナタデココは、非乾燥状態に復元した際において、収縮、割れ、または亀裂等による外観的な破損が防止される。
【0082】
また、加工ナタデココでは、セルロース繊維間の水素結合が防止されているため、乾燥したナタデココを非乾燥状態に復元したとき、上述の水素結合に起因する、復元ナタデココが乾燥前と比して例えば硬くなる等の物性的な変化が防止される。
【0083】
ここで、この第1の実施の形態による加工ナタデココの形成方法では、上述した復元ナタデココの白色部分の残存をより確実に防止するために、第2過程の後に、以下に説明する第3過程を追加して行うのが好ましい。
【0084】
すなわち、第3過程では、ナタデココ、すなわち第2過程において凍結乾燥されて形成された加工ナタデココをオイルに浸漬する。
【0085】
ここで、ナタデココの繊維は親水基を含んで構成されている。そのため、水に浸漬することによって加工ナタデココを非乾燥状態に復元する際に、水が急激に加工ナタデココ内に浸透する。そして、加工ナタデココは、表面から浸透する水によって、まず表面部から速やかに非乾燥状態に復元される。表面部が非乾燥状態に復元されると、この復元された部分に含まれている水が、その後浸透するべき水をブロックしてしまうという問題が生じる。その結果、表面から浸透する水を中心部まで行き渡らせることが困難となり、復元ナタデココの特に中心部に白色部分が残存する恐れが大きい。
【0086】
そこで、この第3過程において、加工ナタデココをオイルに浸漬することによって、加工ナタデココ中に疎水性であるオイルを浸透させる。
【0087】
その結果、復元時における加工ナタデココへの水の浸透速度を低下させる。そして、水の浸透速度を低下させることによって、加工ナタデココの表面部が復元される速度が低下する。その結果、加工ナタデココの復元された表面部に含まれている水が、その後浸透するべき水をブロックするという現象を抑制することができる。そのため、復元時において、水を加工ナタデココの全体に浸透させることができる。
【0088】
従って、このオイルが浸透した加工ナタデココ(以下、オイル含有ナタデココとも称する)では、非乾燥状態に復元された際において、上述した復元ナタデココ中の白色部分の残存が防止される。
【0089】
そして、白色部分の残存を確実に防止するために、加工ナタデココを例えば23〜27℃の範囲内の温度において、12〜24時間の範囲内の時間、より好適には17〜24時間の範囲内の時間オイルに浸漬するのが好ましい。
【0090】
また、この第3過程において使用するオイルは、復元ナタデココ中の白色部分の残存を防止することが可能なオイルから選ばれる。また、この第1の実施の形態を用いて形成する加工ナタデココを食用として使用する場合には、人体に摂取された際に安全なオイルを用いるのが好ましい。
【0091】
そこで、加工ナタデココを浸漬するオイルとして、例えば食用として使用される周知のサラダ油、コーンサラダ油、オリーブ油、またはべに花油等を用いるのが好ましい。
【0092】
なお、復元ナタデココ中の白色部分の残存を防止するという効果を達成し得る物質であり、かつ人体に安全であれば、上述したオイル以外のオイルを用いてもよい。
【0093】
また、この第1の実施の形態を用いて形成する加工ナタデココを、例えば工業用等の食用以外の用途で用いる場合には、加工ナタデココを浸漬するオイルとして、必ずしも人体に摂取された際に安全であるオイルを用いなくてもよい。
【0094】
また、復元ナタデココ中の白色部分の残存をより確実に防止するために、この第3過程の後に、ナタデココ、すなわちオイル含有ナタデココを圧縮するのが好ましい。
【0095】
そのために、オイル含有ナタデココに対して、周知のプレス機、例えば1トンハイプレッシャージャッキ(アズワン株式会社)を用いて好ましくは50kg程度の重量で、すなわちオイル含有ナタデココに対して1.5MPa程度の圧力が加わるように加圧することによって、圧縮するのが好ましい。
【0096】
その結果、圧縮されたオイル含有ナタデココ(以下、圧縮オイル含有ナタデココとも称する)は、圧縮前のオイル含有ナタデココよりも厚みが薄くつぶされた状態となる。
【0097】
既に説明したように、オイル含有ナタデココでは、上述したように疎水性であるオイルを加工ナタデココに含有させることによって、復元時における水の浸透速度を低下させることができる。しかし、オイル含有ナタデココに含まれるオイルの量が多過ぎる場合には、復元時において、オイルの疎水性により水が疎外され、ナタデココ中に浸透すべき水が十分に浸透しない恐れがある。そのため、復元ナタデココにおいて、上述した白色部分が残存する恐れがある。
【0098】
そこで、オイル含有ナタデココを圧縮することによって、圧縮オイル含有ナタデココでは、加工ナタデココ中に浸透しているオイルが外部に排出される。その結果、圧縮オイル含有ナタデココでは、圧縮前と比して、加工ナタデココ中に含まれるオイルの量が減少する。
【0099】
その結果、圧縮オイル含有ナタデココでは、復元時における水の浸透速度を低下させつつ、かつオイルの疎水性によって浸透すべき水が疎外されるのを抑制することができる。
【0100】
従って、圧縮オイル含有ナタデココでは、オイル含有ナタデココと比して、より確実に復元ナタデココ中の白色部分の残存を防止することができる。
【0101】
また、この圧縮オイル含有ナタデココは、例えば水に浸漬され、その結果、圧縮オイル含有ナタデココ中に水が浸透することによって非乾燥状態に復元される際に、形状が圧縮状態から非圧縮状体に復元される。この圧縮状態から非圧縮状体に復元する際に生じるポンプ効果によって、圧縮オイル含有ナタデココは水を吸収する。そのため、圧縮オイル含有ナタデココは、圧縮を行わない場合と比して、復元時においてより確実にナタデココ中に水が浸透し、白色部分の残存が防止される。
【0102】
ここで、第1の実施の形態において、この第3過程、すなわち加工ナタデココをオイルに浸漬する過程を行わない場合には、上述した第2過程を行った後に、ナタデココ、すなわち第2過程において凍結乾燥されて形成された加工ナタデココに対して圧縮を行うことによって、オイル非含有であって圧縮された加工ナタデココ(以下、オイル非含有圧縮ナタデココとも称する)を形成するのが好ましい。なお、第3過程を行わない場合であっても、オイル非含有圧縮ナタデココでは、上述したポンプ効果によって白色部分の残存を抑制することができる。
【0103】
そして、第3過程を行わない場合であって、かつ上述した孔13(図1(A)及び(B))を第2過程の後、すなわちナタデココの凍結乾燥の後に開口する場合には、この孔13を、加工ナタデココを圧縮する前または後のいずれの時点において形成してもよい。
【0104】
なお、この第1の実施の形態による加工ナタデココの形成方法において、第3過程を行わない場合には、復元ナタデココ中の白色部分の残存を確実に防止するために、ナタデココに複数の孔を開口し、かつナタデココを圧縮するのが好ましい。
【0105】
なお、この発明に係る発明者は、加工ナタデココをオイルに浸漬し、加工ナタデココ中にオイルを浸透させることによって、また、加工ナタデココを圧縮することによって、復元ナタデココ中の白色部分の残存を防止できることを実験によって確認した。この実験の結果については、後述する第3の実施の形態において詳細に説明する。
【0106】
第1の実施の形態による加工ナタデココの形成方法によれば、ナタデココの繊維間に、これら繊維同士が水素結合するのを防止するための繊維間結合防止剤を入り込ませた状態で、ナタデココを凍結乾燥させる。その結果、この凍結乾燥時において、ナタデココの繊維間の水素結合が防止されるため、ナタデココの収縮、割れ、または亀裂等が生じるのを抑制することができる。
【0107】
そして、この第1の実施の形態による加工ナタデココの形成方法を用いて形成された加工ナタデココは、キューブ状のナタデココの繊維間に、例えば、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、またはスクロース等の繊維間結合防止剤が入り込んだ状態で、ナタデココが凍結乾燥されて形成されている。
【0108】
従って、第1の実施の形態による加工ナタデココでは、ナタデココを非乾燥状態に復元したとき、上述した収縮、割れ、または亀裂等に起因する外観的な破損、及び例えば硬くなる等の物性的な変化を抑制することができる。
【0109】
また、第1の実施の形態による加工ナタデココの形成方法において、上述した第3過程を追加して行った場合には、形成された加工ナタデココは、ナタデココ、すなわち加工ナタデココ中にオイルが浸透している。
【0110】
また、第3過程の後に、オイルが浸透している加工ナタデココ、すなわちオイル含有ナタデココを圧縮した場合には、形成された加工ナタデココ、すなわち圧縮オイル含有ナタデココは、圧縮する前のオイル含有ナタデココよりも厚みが薄くつぶされた状態にある。
【0111】
オイル含有ナタデココまたは圧縮オイル含有ナタデココは、既に説明したように、これらを非乾燥状態に復元する際において、ナタデココ中に白色部分の残存するのを防止することができる。
【0112】
また、第1の実施の形態による加工ナタデココの形成方法において、上述した第2過程の前または後のいずれかの時点において、ナタデココに複数の孔を開口した場合であって、かつ第3過程を行った場合には、形成された加工ナタデココ、すなわちオイル含有ナタデココまたは圧縮オイル含有ナタデココは、表面から複数の孔が開口されている。
【0113】
また、第1の実施の形態による加工ナタデココの形成方法において、第3過程を行わない場合であって、ナタデココに複数の孔を開口し、かつナタデココを圧縮した場合には、形成された加工ナタデココ、すなわちオイル非含有圧縮ナタデココは、圧縮前の加工ナタデココよりも厚みが薄くつぶされた状態にあり、かつ表面から複数の孔が開口されている。
【0114】
また、複数の孔は、例えば、加工ナタデココの各面から各面に対して垂直方向に貫通して、または、加工ナタデココの各頂点から各頂点とそれぞれ対向する頂点へ貫通して開口されている。
【0115】
このように、複数の孔が開口された加工ナタデココでは、既に説明したように、加工ナタデココを非乾燥状態に復元する際において、ナタデココ中に白色部分の残存するのを防止することができる。
【0116】
以上に説明したように、第1の実施の形態による加工ナタデココは、外観的な破損、及び例えば硬くなる等の物性的な変化を抑制しつつ、非乾燥状態に復元することができる。
【0117】
さらに、第1の実施の形態による加工ナタデココを、オイル含有ナタデココ、オイル含有圧縮ナタデココ、またはオイル非含有圧縮ナタデココとした場合には、これら加工ナタデココを復元したときに、復元ナタデココ中に白色部分の残存するのを抑制することができる。
【0118】
ここで、この発明に係る発明者は、ナタデココの繊維間に繊維間結合防止剤を入り込ませることによって、及び凍結乾燥前において、ナタデココの表面を水で被覆することによって、また、表面を水で被覆した後にナタデココを冷却することによって、凍結乾燥中の破損を防止できることを確認するための実験を行った。
【0119】
この実験では、まず、上述した第1過程を行っていないナタデココ、すなわち、繊維間に繊維間結合防止剤を非含有のナタデココ(以下、n(:normal)−ナタデココとも称する)、繊維間に繊維間結合防止剤として炭酸水素ナトリウムを入り込ませたナタデココ(以下、NaHCO−ナタデココとも称する)、及び繊維間に繊維間結合防止剤として塩化ナトリウムを入り込ませたナタデココ(以下、NaCl−ナタデココとも称する)を用意した。なお、炭酸水素ナトリウムを入り込ませたナタデココは、ナタデココを重量濃度にして3%の炭酸水素ナトリウム水溶液に浸漬することによって得た。また、塩化ナトリウムを入り込ませたナタデココは、ナタデココを重量濃度にして4%の塩化ナトリウム水溶液に浸漬することによって得た。
【0120】
そして、これらn−ナタデココ、NaHCO−ナタデココ、及びNaCl−ナタデココに対して、上述した水による被覆及び冷却の両方を行った場合(以下、条件1とも称する)、水による被覆を行わずかつ冷却を行った場合(以下、条件2とも称する)、水による被覆を行いかつ冷却を行わなかった場合(以下、条件3とも称する)、及び水による被覆及び冷却の両方を行わない場合(以下、条件4とも称する)の試料を、それぞれ作成した。
【0121】
さらに、これら各条件において得た各試料に対して、上述した第2過程に係る凍結乾燥を行うことによって、各々加工ナタデココを形成した。そして、各試料を凍結乾燥することによって得られた各加工ナタデココに収縮、割れ、または亀裂等の破損が生じているか否かを確認した。
【0122】
なお、この実験では、上述したn−ナタデココ、NaHCO−ナタデココ、及びNaCl−ナタデココから、上述した条件1〜4毎に試料をそれぞれ数個〜十数個、より具体的には少なくとも5個以上作成した。そして、これら各々を凍結乾燥して得た各加工ナタデココについて、破損せずに形成された割合、すなわち破損を防止する効果の成功率をそれぞれ算出した。
【0123】
また、この実験では、n−ナタデココ、NaHCO−ナタデココ、及びNaCl−ナタデココを用意するために、上述したDietナタデココせんいからシロップを抜いて得られたナタデココを材料として用いた。
【0124】
また、この実験における条件1及び3では、パスツールピペットを用いて、ナタデココに対して2滴または3滴程度の水、すなわち3ml程度の水を滴下することによって、ナタデココの全表面を水で被覆した。
【0125】
また、この実験における条件1及び2では、ナタデココを4℃の温度で5分程度冷却した。なお、条件1では、ナタデココの表面を水で被覆した後に、このナタデココを冷却した。
【0126】
表1にこの実験の結果を示す。
【0127】
【表1】

【0128】
表1の結果から、条件1〜4において、NaHCO−ナタデココ及びNaCl−ナタデココから形成した加工ナタデココでは、n−ナタデココから形成した加工ナタデココと比して、破損を防止する効果の成功率が向上した。
【0129】
この結果から明らかなように、ナタデココの繊維間に繊維間結合防止剤を入り込ませることが、凍結乾燥中におけるナタデココの破損を防止するに当たり有効であることが確認された。
【0130】
また、条件3において形成した各加工ナタデココは、条件4において形成した各加工ナタデココと比して、破損を防止する効果の成功率が向上した。
【0131】
この結果から明らかなように、凍結乾燥前においてナタデココの表面を水で被覆することによって、水で被覆しない場合と比して、凍結乾燥中におけるナタデココの破損をより確実に抑制できることが確認された。
【0132】
また、条件1において形成した各加工ナタデココは、条件2〜4において形成した各加工ナタデココと比して、破損を防止する効果の成功率が向上した。
【0133】
この結果から明らかなように、ナタデココの繊維間に繊維間結合防止剤を入り込ませ、かつ凍結乾燥前においてナタデココの表面を水で被覆し、さらに、表面を水で被覆した後にナタデココを冷却することによって、凍結乾燥中におけるナタデココの破損を好適に抑制できることが確認された。
【0134】
次に、この発明に係る発明者は、凍結乾燥中におけるナタデココの破損を防止するに当たり、上述した第1過程においてナタデココを浸漬する繊維間結合防止剤の水溶液の濃度の好適値を確認するための実験を行った。
【0135】
まず、繊維間結合防止剤として炭酸水素ナトリウムをナタデココの繊維間に入り込ませる場合に用いる維間結合防止剤の水溶液、すなわち炭酸水素ナトリウム水溶液の好適な濃度を確認した。
【0136】
この実験では、重量濃度にして0.1%、0.5%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、2.0%、3.0%、及び飽和溶解度である11.4%の炭酸水素ナトリウム水溶液を用意した。
【0137】
そして、上述した第1過程として、これら各濃度の炭酸水素ナトリウム水溶液中にそれぞれナタデココを一晩(すなわち16〜24時間程度の範囲内の時間)浸漬することによって、各ナタデココの繊維間に炭酸水素ナトリウムを入り込ませた。
【0138】
次に、上述した第2過程として、これら各ナタデココを−50℃程度の温度で例1〜3日間の範囲内の時間で凍結乾燥してそれぞれ加工ナタデココを得た。
【0139】
そして、得られたこれら各加工ナタデココに収縮、割れ、または亀裂等の破損が生じているか否かを確認した。
【0140】
なお、この実験では、上述した各濃度の炭酸水素ナトリウム水溶液に浸漬するナタデココをそれぞれ数個〜十数個、より具体的には少なくとも5個以上用意し、その各々から加工ナタデココを形成した。そして、浸漬した炭酸水素ナトリウム水溶液の濃度毎に得られた各加工ナタデココについて、破損せずに形成された割合、すなわち破損を防止する効果の成功率をそれぞれ算出した。
【0141】
また、この実験では、炭酸水素ナトリウム水溶液に浸漬するナタデココの試料として、上述したDietナタデココせんいからシロップを抜いて得られたナタデココを用いた。
【0142】
また、この実験では、凍結乾燥を行う前に、パスツールピペットを用いて、ナタデココに対して2滴または3滴程度の水、すなわち3ml程度の水を滴下することによって、ナタデココの全表面を水で被覆した。
【0143】
また、この実験では、凍結乾燥を行う前であって、ナタデココの表面を水で被覆した後に、このナタデココを4℃の温度で5分程度冷却した。
【0144】
表2にこの実験の結果を示す。
【0145】
【表2】

【0146】
表2の結果から、第1過程においてナタデココを0.7〜11.4%の範囲内の重量濃度の炭酸水素ナトリウム水溶液に浸漬することによって、凍結乾燥中におけるナタデココの破損を防止する効果が得られることが確認された。
【0147】
そして、この結果から、例えば少なくとも80%以上の成功率で凍結乾燥中のナタデココの破損を防止するためには、好ましくは0.9〜11.4%の範囲内の重量濃度の炭酸水素ナトリウム水溶液を用いるのが好適であることが分かった。
【0148】
次に、繊維間結合防止剤として塩化ナトリウムをナタデココの繊維間に入り込ませる場合に用いる維間結合防止剤の水溶液、すなわち塩化ナトリウム水溶液の好適な濃度を確認した。
【0149】
この実験では、重量濃度にして0.6%、0.8%、1.0%、2.0%、%、2.5%、2.6%、3.0%、4.0%、5.0%、7.0%、9.0%、10.0%、15.0%、及び飽和溶解度である26.3%の塩化ナトリウム水溶液を用意した。
【0150】
そして、上述した第1過程として、これら各濃度の塩化ナトリウム水溶液中にそれぞれナタデココを一晩(すなわち16〜24時間程度の範囲内の時間)浸漬することによって、各ナタデココの繊維間に塩化ナトリウムを入り込ませた。
【0151】
次に、上述した第2過程として、これら各ナタデココを−50℃程度の温度で例1〜3日間の範囲内の時間で凍結乾燥してそれぞれ加工ナタデココを得た。
【0152】
そして、得られたこれら各加工ナタデココに収縮、割れ、または亀裂等の破損が生じているか否かを確認した。
【0153】
なお、この実験では、上述した各濃度の塩化ナトリウム水溶液に浸漬するナタデココをそれぞれ数個〜十数個、より具体的には少なくとも4個以上用意し、その各々から加工ナタデココを形成した。そして、浸漬した塩化ナトリウム水溶液の濃度毎に得られた各加工ナタデココについて、破損せずに形成された割合、すなわち破損を防止する効果の成功率をそれぞれ算出した。
【0154】
また、この実験では、塩化ナトリウム水溶液に浸漬するナタデココの試料として、上述したDietナタデココせんいからシロップを抜いて得られたナタデココを用いた。
【0155】
また、この実験では、凍結乾燥を行う前に、パスツールピペットを用いて、ナタデココに対して2滴または3滴程度の水、すなわち3ml程度の水を滴下することによって、ナタデココの全表面を水で被覆した。
【0156】
また、この実験では、凍結乾燥を行う前であって、ナタデココの表面を水で被覆した後に、このナタデココを4℃の温度で5分程度冷却した。
【0157】
表3にこの実験の結果を示す。
【0158】
【表3】

【0159】
表3の結果から、第1過程においてナタデココを1.0〜5.0%の範囲内の重量濃度の塩化ナトリウム水溶液に浸漬することによって、凍結乾燥中におけるナタデココの破損を防止する効果が得られることが確認された。
【0160】
なお、表3に示すように、ナタデココを重量濃度にして10.0%の塩化ナトリウム水溶液に浸漬した場合において、25.0%の成功率が確認されているが、概略6%以上の塩化ナトリウム水溶液を用いた場合には、凍結乾燥中におけるナタデココの破損を防止する効果が得られないものと推定される。
【0161】
そして、この結果から、例えば少なくとも50%以上の成功率で凍結乾燥中のナタデココの破損を防止するためには、好ましくは2.0〜5.0%の範囲内の重量濃度の塩化ナトリウム水溶液を用いるのが好適であることが分かった。
【0162】
次に、繊維間結合防止剤としてスクロースをナタデココの繊維間に入り込ませる場合に用いる維間結合防止剤の水溶液、すなわちスクロース水溶液の好適な濃度を確認した。
【0163】
この実験では、重量濃度にして0.4%、0.6%、0.8%、0.9%、1.0%、2.0%、及び3.0%のスクロース水溶液を用意した。
【0164】
そして、上述した第1過程として、これら各濃度のスクロース水溶液中にそれぞれナタデココを一晩(すなわち16〜24時間程度の範囲内の時間)浸漬することによって、各ナタデココの繊維間にスクロースを入り込ませた。
【0165】
次に、上述した第2過程として、これら各ナタデココを−50℃程度の温度で例1〜3日間の範囲内の時間で凍結乾燥してそれぞれ加工ナタデココを得た。
【0166】
そして、得られたこれら各加工ナタデココに収縮、割れ、または亀裂等の破損が生じているか否かを確認した。
【0167】
なお、この実験では、上述した各濃度のスクロース水溶液に浸漬するナタデココをそれぞれ数個〜十数個、より具体的には少なくとも5個以上用意し、その各々から加工ナタデココを形成した。そして、浸漬したスクロース水溶液の濃度毎に得られた各加工ナタデココについて、破損せずに形成された割合、すなわち破損を防止する効果の成功率をそれぞれ算出した。
【0168】
また、この実験では、スクロース水溶液に浸漬するナタデココの試料として、上述したDietナタデココせんいからシロップを抜いて得られたナタデココを用いた。
【0169】
また、この実験では、凍結乾燥を行う前に、パスツールピペットを用いて、ナタデココに対して2滴または3滴程度の水、すなわち3ml程度の水を滴下することによって、ナタデココの全表面を水で被覆した。
【0170】
また、この実験では、凍結乾燥を行う前であって、ナタデココの表面を水で被覆した後に、このナタデココを4℃の温度で5分程度冷却した。
【0171】
表4にこの実験の結果を示す。
【0172】
【表4】

【0173】
表4の結果から、第1過程においてナタデココを重量濃度にして0.4〜1.0%のスクロース水溶液に浸漬することによって、凍結乾燥中におけるナタデココの破損を防止する効果が得られることが確認された。
【0174】
そして、この結果から、特に重量濃度にして1.0%程度のスクロース水溶液を用いるのが好適であることが分かった。
【0175】
〈第2の実施の形態〉
第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態とは異なる加工ナタデココの形成方法について説明する。
【0176】
なお、この第2の実施の形態による加工ナタデココの形成方法が、上述した第1の実施の形態による加工ナタデココの形成方法と相違するのは、ナタデココの繊維間に繊維間結合防止剤を入り込ませることなく、すなわち繊維間結合防止剤非含有のナタデココを材料として加工ナタデココを形成する点である。
【0177】
この第2の実施の形態による加工ナタデココの形成方法は、第1過程及び第2過程を含んでいる。以下、第1過程から順に各工程につき説明する。
【0178】
まず、第1過程では、繊維間に繊維間結合防止剤を非含有の、キューブ状のナタデココを用意する。
【0179】
ここで、第2の実施の形態による加工ナタデココの形成方法では、上述した第1の実施の形態と同様に、例えば水に浸漬することによって非乾燥状態に復元可能な、乾燥状態の加工ナタデココを形成する。形成される加工ナタデココは、非乾燥状態に復元することによって、例えば食品や医療品等の用途で使用される。そのため、形成される加工ナタデココは、使用する際の利便性を考慮し、短時間、具体的には例えば3〜10分程度の範囲内の時間で非乾燥状態に復元できることが望ましい。
【0180】
そのために、第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同用に、加工ナタデココの材料として、縦方向、横方向、及び高さ方向のそれぞれの寸法が好ましくは例えば10〜14mm程度のキューブ状のナタデココを用いる。
【0181】
なお、第2の実施の形態において、キューブ状のナタデココは、厳密な立方体である必要はなく、短時間で非乾燥状態に復元できるという効果が得られるならば、直方体を含む略立方体形状のものを用いても良い。
【0182】
そこで、この第1過程では、キューブ状であって、かつ繊維間に繊維間結合防止剤を非含有のナタデココとして市販のナタデココ、より具体的には、例えば周知のDietナタデココせんい(フジッコ株式会社)を用意するのが好ましい。なお、Dietナタデココせんいは、縦方向、横方向、及び高さ方向のそれぞれの寸法が12mm、13mm、及び14mm程度の略立方体形状のナタデココである。
【0183】
また、このDietナタデココせんいは、ナタデココ中にシロップが浸透した状態で市販されている。そこで、例えば、周知のオートクレーブを用いてDietナタデココせんいを洗浄することによって、ナタデココからシロップを抜いておくのが好ましい。
【0184】
ところで、後述する第2過程において、ナタデココを凍結乾燥すると、乾燥前は半透明であるナタデココが、乾燥後は不透明な白色に変色する。
【0185】
そして、既に説明したように、この乾燥されたナタデココ、すなわち加工ナタデココは、使用する際において、例えば水に浸漬され、その結果、加工ナタデココ中に水が浸透することによって非乾燥状態に復元される。復元されたナタデココ(以下、復元ナタデココとも称する)は、乾燥時の不透明な白色から再度半透明に変色する。
【0186】
しかし、この復元時に、加工ナタデココ中の全領域に確実に水が浸透しない場合、復元ナタデココでは、水が浸透しなかった部分が半透明に変色することなく白色のまま残存する。キューブ状のナタデココでは、表面から浸透する水を中心部まで行き渡らせることが困難であるため、特に中心部に白色の部分が残存し易い。このような白色部分の残存は、復元ナタデココの外観を損なうため、加工ナタデココの商品価値の低下に繋がる。
【0187】
そこで、第2の実施の形態においても、上述した第1の実施の形態と同様に、加工ナタデココを復元する際にこの加工ナタデココ中の全領域に確実に水を浸透させるために、ナタデココにこのナタデココの表面から複数の孔を開口するのが好ましい。
【0188】
なお、第2の実施の形態においてナタデココに開口する複数の孔は、上述した第1の実施の形態において図1(A)及び(B)を参照して説明した複数の孔と同様である。そこで、以下、これら図1(A)及び(B)を再び参照して、第2の実施の形態においてナタデココに開口する複数の孔について説明する。
【0189】
図1(A)及び(B)は、ナタデココ11に表面から複数の孔13を開口した場合の構成例を概略的に示した斜視図である。なお、図1(A)及び(B)における符号A、B、C、D、E、F、及びGは、それぞれキューブ状のナタデココ11の各頂点を示している。
【0190】
この第2の実施の形態では、複数の孔13を、例えば以下のように開口するのが好ましい。
【0191】
すなわち、複数の孔13を、ナタデココの各面(面ABCD、EFGH、DCGH、ABFE、EADH、及びFBCG)からこれら各面に対して垂直方向に貫通させて開口する(図1(A)参照)。
【0192】
そのために、例えば延在方向に直交する断面が円形であり、この円形断面の直径が最大となる部分が0.58mm程度の針を用いて、互いに対向する各面の一方から他方へ、すなわち面ABCD及び面EFGHの一方から他方へ、面DCGH及び面ABFEの一方から他方へ、また、面EADH及び面FBCGの一方から他方へ、それぞれ貫通させて複数の孔13を開口するのが好ましい。
【0193】
そして、復元時において加工ナタデココ中の全領域に確実に水を浸透させるために、各面に好ましくは3つ以上、より好ましくは5つ程度の孔13を開口するのがよい。
【0194】
また、複数の孔13を、例えば以下のように開口してもよい。
【0195】
すなわち、複数の孔13を、ナタデココ11の各頂点(頂点A、B、C、D、E、F、及びG)からこれら各頂点とそれぞれ対向する頂点へ貫通させて開口する(図1(B)参照)。
【0196】
そのために、上述したのと同様の例えば延在方向に直交する断面が円形であり、この円形断面の直径が最大となる部分が0.58mm程度の針を用いて、互いに対向する各頂点の一方から他方へ、すなわち頂点A及び頂点Gの一方から他方へ、頂点B及び頂点Hの一方から他方へ、頂点C及び頂点Eの一方から他方へ、また、頂点D及び頂点Fの一方から他方へ、それぞれ貫通させて複数の孔13を開口するのが好ましい。
【0197】
このように、ナタデココ11に複数の孔13を開口することによって、この実施の形態を用いて形成される加工ナタデココでは、復元時において、中心部を含む全領域に確実に水が浸透し、その結果、白色部分の残存が防止される。
【0198】
なお、この第2の実施の形態による加工ナタデココの形成方法において、孔の開口は、続いて行われる第2過程の前または後、すなわち後述する凍結乾燥の前または後のいずれの時点で行ってもよい。
【0199】
次に、第2過程では、上述した第1過程において用意したナタデココの表面を水で被覆する。そして、その後、ナタデココを凍結乾燥する。
【0200】
既に説明したように、ナタデココは、凍結乾燥中において、まず、ナタデココ中の表面部の水が凍結された後昇華し、その後、中心部の水が凍結される。そして、中心部の水が凍結される際、水が体積膨張し、この体積膨張の応力によって、既に乾燥され強度が低下しているナタデココの表面部に例えば割れまたは亀裂等の破損が生じる恐れがある。
【0201】
そこで、このような凍結乾燥中の破損を防止するために、この第2過程では、凍結乾燥を行う前に、ナタデココの表面を水で被覆する。
【0202】
そのために、例えばパスツールピペットを用いて、上述した寸法のナタデココに対して好ましくは2滴または3滴程度の水を滴下することによって、ナタデココの全表面を人為的に水で被覆する。
【0203】
なお、この発明に係る発明者は、より具体的な水の滴下量として、1cmのナタデココに対して、0.3〜1.5mlの範囲内の滴下量、より好適には1.1〜1.5mlの範囲内の滴下量の水を滴下することによって、ナタデココの破損を確実に防止できることを実験的に確認した。
【0204】
このように、凍結乾燥前に水で表面が被覆されたナタデココでは、凍結乾燥中において、まず、表面を被覆している水が凍結され昇華する。この表面を被覆している水が昇華している間に、ナタデココが中心部まで凍結される。従って、ナタデココは、中心部が凍結される時点においても、表面部が完全に乾燥されていないため、上述した凍結乾燥中の破損を防止することができる。
【0205】
さらに、凍結乾燥中の破損をより確実に防止するために、この第2過程では、ナタデココの表面を水で被覆した後であって、凍結乾燥を行う前に、ナタデココを冷却するのが好ましい。
【0206】
そのために、水で表面を被覆したナタデココを、例えば冷蔵庫に収納することによって、好ましくは4℃の温度で5分程度冷却する。
【0207】
このように、水で表面を被覆したナタデココを凍結乾燥する前に冷却することによって、冷却を行わない場合と比して、より確実に上述した凍結乾燥中の破損を防止することができる。
【0208】
なお、この発明に係る発明者は、凍結乾燥前において、ナタデココの表面を水で被覆することによって、また、ナタデココを冷却することによって、凍結乾燥中の破損を防止できることを実験によって確認した。この実験の結果については、後に詳細に説明する。
【0209】
そして、ナタデココの表面を水で被覆した後、または、ナタデココの表面を水で被覆し、かつこのナタデココを冷却した後、ナタデココを凍結乾燥する。
【0210】
具体的には、ナタデココを、例えばFDU−1200型(東京理科器械株式会社)等の凍結乾燥機を用いて、例えば−50℃程度の温度で例えば1〜3日間の範囲内の時間で凍結乾燥するのが好ましい。
【0211】
この凍結乾燥によって、ナタデココに含まれている水が昇華し、その結果、乾燥状態の加工ナタデココが形成される。
【0212】
ここで、この第2の実施の形態による加工ナタデココの形成方法では、上述した復元ナタデココの白色部分の残存をより確実に防止するために、上述した第1の実施の形態と同様に、第2過程の後に、以下に説明する第3過程を追加して行うのが好ましい。
【0213】
すなわち、第3過程では、ナタデココ、すなわち第2過程において凍結乾燥されて形成された加工ナタデココをオイルに浸漬する。
【0214】
ここで、既に説明したように、ナタデココの繊維は親水基を含んで構成されている。そのため、水に浸漬することによって加工ナタデココを非乾燥状態に復元する際に、水が急激に加工ナタデココ内に浸透する。そして、加工ナタデココは、表面から浸透する水によって、まず表面部から速やかに非乾燥状態に復元される。表面部が非乾燥状態に復元されると、この復元された部分に含まれている水が、その後浸透するべき水をブロックしてしまうという問題が生じる。その結果、表面から浸透する水を中心部まで行き渡らせることが困難となり、復元ナタデココの特に中心部に白色部分が残存する恐れが大きい。
【0215】
そこで、第1の実施の形態と同様に、この第3過程において、加工ナタデココをオイルに浸漬することによって、加工ナタデココ中に疎水性であるオイルを浸透させる。
【0216】
その結果、復元時における加工ナタデココへの水の浸透速度を低下させる。そして、水の浸透速度を低下させることによって、加工ナタデココの表面部が復元される速度が低下する。その結果、加工ナタデココの復元された表面部に含まれている水が、その後浸透するべき水をブロックするという現象を抑制することができる。そのため、復元時において、水を加工ナタデココの全体に浸透させることができる。
【0217】
従って、このオイルが浸透した加工ナタデココ(以下、オイル含有ナタデココとも称する)では、非乾燥状態に復元された際において、上述した復元ナタデココ中の白色部分の残存が防止される。
【0218】
そして、白色部分の残存を確実に防止するために、加工ナタデココを例えば23〜27℃の範囲内の温度において、12〜24時間の範囲内の時間、より好適には17〜24時間の範囲内の時間オイルに浸漬するのが好ましい。
【0219】
また、この第3過程において使用するオイルは、復元ナタデココ中の白色部分の残存を防止することが可能なオイルから選ばれる。また、この第2の実施の形態を用いて形成する加工ナタデココを食用として使用する場合には、人体に摂取された際に安全なオイルを用いるのが好ましい。
【0220】
そこで、加工ナタデココを浸漬するオイルとして、例えば食用として使用される周知のサラダ油、コーンサラダ油、オリーブ油、またはべに花油等を用いるのが好ましい。
【0221】
なお、復元ナタデココ中の白色部分の残存を防止するという効果を達成し得る物質であり、かつ人体に安全であれば、上述したオイル以外のオイルを用いてもよい。
【0222】
また、この第2の実施の形態を用いて形成するナタデココを、例えば工業用等の食用以外の用途で用いる場合には、加工ナタデココを浸漬するオイルとして、必ずしも人体に摂取された際に安全であるオイルを用いなくてもよい。
【0223】
また、復元ナタデココ中の白色部分の残存をより確実に防止するために、この第3過程の後に、ナタデココ、すなわちオイル含有ナタデココを圧縮するのが好ましい。
【0224】
そのために、オイル含有ナタデココに対して、周知のプレス機、例えば1トンハイプレッシャージャッキ(アズワン株式会社)を用いて好ましくは50kg程度の重量で、すなわちオイル含有ナタデココに対して1.5MPa程度の圧力が加わるように加圧することによって、圧縮するのが好ましい。
【0225】
その結果、圧縮されたオイル含有ナタデココ(以下、圧縮オイル含有ナタデココとも称する)は、圧縮前のオイル含有ナタデココよりも厚みが薄くつぶされた状態となる。
【0226】
既に説明したように、オイル含有ナタデココでは、上述したように疎水性であるオイルを加工ナタデココに含有させることによって、復元時における水の浸透速度を低下させることができる。しかし、オイル含有ナタデココに含まれるオイルの量が多過ぎる場合には、復元時において、オイルの疎水性により水が疎外され、ナタデココ中に浸透すべき水が十分に浸透しない恐れがある。そのため、復元ナタデココにおいて、上述した白色部分が残存する恐れがある。
【0227】
そこで、オイル含有ナタデココを圧縮することによって、圧縮オイル含有ナタデココでは、加工ナタデココ中に浸透しているオイルが外部に排出される。その結果、圧縮オイル含有ナタデココでは、圧縮前と比して、加工ナタデココ中に含まれるオイルの量が減少する。
【0228】
その結果、圧縮オイル含有ナタデココでは、復元時における水の浸透速度を低下させつつ、かつオイルの疎水性によって浸透すべき水が疎外されるのを抑制することができる。
【0229】
従って、圧縮オイル含有ナタデココでは、オイル含有ナタデココと比して、より確実に復元ナタデココ中の白色部分の残存を防止することができる。
【0230】
また、この圧縮オイル含有ナタデココは、例えば水に浸漬され、その結果、圧縮オイル含有ナタデココ中に水が浸透することによって非乾燥状態に復元される際に、形状が圧縮状態から非圧縮状体に復元される。この圧縮状態から非圧縮状体に復元する際に生じるポンプ効果によって、圧縮オイル含有ナタデココは水を吸収する。そのため、圧縮オイル含有ナタデココは、圧縮を行わない場合と比して、復元時においてより確実にナタデココ中に水が浸透し、白色部分の残存が防止される。
【0231】
ここで、第2の実施の形態において、この第3過程、すなわち加工ナタデココをオイルに浸漬する過程を行わない場合には、上述した第2過程を行った後に、ナタデココ、すなわち第2過程において凍結乾燥されて形成された加工ナタデココに対して圧縮を行うことによって、オイル非含有であって圧縮された加工ナタデココ(以下、オイル非含有圧縮ナタデココとも称する)を形成するのが好ましい。なお、第3過程を行わない場合であっても、オイル非含有圧縮ナタデココでは、上述したポンプ効果によって白色部分の残存を抑制することができる。
【0232】
そして、第3過程を行わない場合であって、かつ上述した孔13(図1(A)及び(B))を第2過程の後、すなわちナタデココの凍結乾燥の後に開口する場合には、この孔13を、加工ナタデココを圧縮する前または後のいずれの時点において形成してもよい。
【0233】
なお、この第1の実施の形態による加工ナタデココの形成方法において、第3過程を行わない場合には、復元ナタデココ中の白色部分の残存を確実に防止するために、ナタデココに複数の孔を開口し、かつナタデココを圧縮するのが好ましい。
【0234】
なお、この発明に係る発明者は、加工ナタデココをオイルに浸漬し、加工ナタデココ中にオイルを浸透させることによって、また、加工ナタデココを圧縮することによって、復元ナタデココ中の白色部分の残存を防止できることを実験によって確認した。この実験の結果については、後述する第3の実施の形態において詳細に説明する。
【0235】
以上に説明したように、第2の実施の形態による加工ナタデココの形成方法によれば、凍結乾燥前において、ナタデココの表面を水で被覆する。また、より好ましくは、凍結乾燥前であって表面を水で被覆した後に、ナタデココを冷却する。その結果、上述したように、繊維間に繊維間結合防止剤を非含有のナタデココであっても、凍結乾燥時における割れまたは亀裂等の破損が生じるのを抑制することができる。
【0236】
ここで、この発明に係る発明者は、繊維間に繊維間結合防止剤を非含有のナタデココにおいて、凍結乾燥前に、ナタデココの表面を水で被覆することによって、また、表面を水で被覆した後にナタデココを冷却することによって、凍結乾燥中の破損を防止できることを確認するための実験を行った。
【0237】
この実験では、上述した第1過程において用意した繊維間に繊維間結合防止剤を非含有のナタデココ、すなわちn−ナタデココに対して、上述した水による被覆及び冷却の両方を行った場合(以下、条件1とも称する)、水による被覆を行わずかつ冷却を行った場合(以下、条件2とも称する)、水による被覆を行いかつ冷却を行わなかった場合(以下、条件3とも称する)、及び水による被覆及び冷却の両方を行わない場合(以下、条件4とも称する)の試料を、それぞれ作成した。
【0238】
そして、これら各条件において得た各試料に対して、上述した第2過程に係る凍結乾燥を行うことによって、各々加工ナタデココを形成した。そして、各試料を凍結乾燥することによって得られた各加工ナタデココに収縮、割れ、または亀裂等の破損が生じているか否かを確認した。
【0239】
なお、この実験では、n−ナタデココから、上述した条件1〜4毎に試料をそれぞれ数個〜十数個、より具体的には少なくとも5個以上作成した。そして、これら各々を凍結乾燥して得た各加工ナタデココについて、破損せずに形成された割合、すなわち破損を防止する効果の成功率をそれぞれ算出した。
【0240】
また、この実験では、n−ナタデココとして、上述したDietナタデココせんいからシロップを抜いて得られたナタデココを用いた。
【0241】
また、この実験における条件1及び3では、パスツールピペットを用いて、ナタデココに対して2滴または3滴程度の水、すなわち3ml程度の水を滴下することによって、ナタデココの全表面を水で被覆した。
【0242】
また、この実験における条件1及び2では、ナタデココを4℃の温度で5分程度冷却した。なお、条件1では、ナタデココの表面を水で被覆した後に、このナタデココを冷却した。
【0243】
この実験の結果、破損を防止する効果の成功率は、条件1では75.8%、条件2では0%、条件3では40.0%、及び条件4では0%となった(表1参照)。
【0244】
この結果から、条件3において形成した各加工ナタデココは、条件4において形成した各加工ナタデココと比して、破損を防止する効果の成功率が向上した。
【0245】
この結果から明らかなように、凍結乾燥前においてナタデココの表面を水で被覆することによって、水で被覆しない場合と比して、凍結乾燥中におけるナタデココの破損を防止できることが確認された。
【0246】
また、条件1において形成した各加工ナタデココは、条件2〜4において形成した各加工ナタデココと比して、破損を防止する効果の成功率が向上した。
【0247】
この結果から明らかなように、凍結乾燥前において、ナタデココの表面を水で被覆し、その後、ナタデココを冷却することによって、凍結乾燥中におけるナタデココの破損を好適に抑制できることが確認された。
【0248】
〈第3の実施の形態〉
第3の実施の形態では、上述した第1の実施の形態または第2の実施の形態による加工ナタデココの形成方法を用いて形成された加工ナタデココを、非乾燥状態のナタデココ、すなわち復元ナタデココに復元する方法について説明する。
【0249】
この第3の実施の形態による加工ナタデココの復元方法は、以下の過程を含んでいる。
【0250】
すなわち、上述した第1の実施の形態または第2の実施の形態による加工ナタデココの形成方法を用いて形成した加工ナタデココを、水に浸漬することによって乾燥状態から非乾燥状態へ復元する。
【0251】
そのために、例えば容器に加工ナタデココを収容し、この容器中において水に浸漬するのが好ましい。その結果、乾燥状態にある加工ナタデココに水が浸透することによって、加工状体のナタデココが、非乾燥状態のナタデココ、すなわち復元ナタデココに復元される。
【0252】
ここで、加工ナタデココを短時間、具体的には例えば3〜10分程度の範囲内の時間で非乾燥状態に復元するために、加工ナタデココを浸漬する水として、例えば沸騰状体にある水を用いるのが好ましい。または、室温の加工ナタデココを水に浸漬し、例えば電子レンジ等を用いて、ナタデココを浸漬している水を高周波加熱するのが好ましい。
【0253】
第3の実施の形態による加工ナタデココの復元方法では、加工ナタデココとして、第1の実施の形態または第2の実施の形態による形成方法を用いて形成した加工ナタデココ、すなわち例えば収縮、割れ、または亀裂等の外観的な破損が抑制された加工ナタデココを用いるため、外観的な破損が防止された復元ナタデココを形成することができる。
【0254】
また、第3の実施の形態による加工ナタデココの復元方法において、加工ナタデココとして、第1の実施の形態による形成方法を用いて形成した加工ナタデココを用いる場合には、この加工ナタデココは上述したようにナタデココの繊維間の水素結合が防止されているため、外観的な破損及び、例えば硬くなる等の物性的な変化が抑制された復元ナタデココを形成することができる。
【0255】
また、第3の実施の形態による加工ナタデココの復元方法において、加工ナタデココとして、オイル含有ナタデココ、圧縮オイル含有ナタデココ、圧縮ナタデココ、またはこれら各加工ナタデココに表面から複数の孔を開口してある加工ナタデココを用いる場合には、上述した復元ナタデココ中の白色部分の残存を抑制することができる。
【0256】
ここで、この発明に係る発明者は、ナタデココ中にオイルが浸透している加工ナタデココ(すなわちオイル含有ナタデココ)、オイル含有ナタデココが、圧縮されることによって圧縮前の該オイル含有ナタデココよりも厚みが薄くつぶされた状態にある加工ナタデココ(すなわち圧縮オイル含有ナタデココ)、オイル非含有の加工ナタデココが、圧縮されることによって圧縮前の該加工ナタデココよりも厚みが薄くつぶされた状態にある加工ナタデココ(すなわち圧縮オイル非含有ナタデココ)、及びこれらの各加工ナタデココに表面から複数の孔が開口された加工ナタデココを復元して得られるそれぞれの復元ナタデココについて、上述した白色部分の残存が抑制されていることを確認する実験を行った。
【0257】
この実験では、試料として、上述した第2の実施の形態による加工ナタデココの形成方法を用いて形成された加工ナタデココ、すなわち、繊維間に繊維間結合防止剤を非含有のナタデココ(すなわちn−ナタデココ)を凍結乾燥することによって形成した加工ナタデココ、及び上述した第1の実施の形態による加工ナタデココの形成方法を用いて形成された加工ナタデココ、すなわち繊維間に繊維間結合防止剤として炭酸水素ナトリウムを入り込ませたナタデココ(すなわちNaHCO−ナタデココ)を凍結乾燥することによって形成した加工ナタデココをそれぞれ用意した。なお、NaHCO−ナタデココは、上述した第1の実施の形態における第1過程において、ナタデココを重量濃度にして1%の炭酸水素ナトリウム水溶液に浸漬することによって得た。
【0258】
また、この実験では、上述した試料としての加工ナタデココを、n−ナタデココ及びNaHCO−ナタデココを用いて、以下の各条件においてそれぞれ形成した。
【0259】
すなわち、条件1では、ナタデココ中へのオイルの浸透、ナタデココの圧縮、及び複数の孔の開口のいずれも行わずに加工ナタデココを形成した。
【0260】
また、条件2では、凍結乾燥を行う前に、複数の孔を、n−ナタデココ及びNaHCO−ナタデココの各面からこれら各面に対して垂直方向に貫通させて開口して、加工ナタデココを形成した。
【0261】
また、条件3では、凍結乾燥を行う前に、複数の孔を、n−ナタデココ及びNaHCO−ナタデココの各頂点からこれら各頂点とそれぞれ対向する頂点へ貫通させて開口して、加工ナタデココを形成した。
【0262】
また、条件4では、凍結乾燥を行った後に、n−ナタデココ及びNaHCO−ナタデココを圧縮して、加工ナタデココを形成した。
【0263】
また、条件5では、凍結乾燥を行う前に、複数の孔を、n−ナタデココ及びNaHCO−ナタデココの各面からこれら各面に対して垂直方向に貫通させて開口し、かつ凍結乾燥を行った後に、各ナタデココを圧縮して、加工ナタデココを形成した。
【0264】
また、条件6では、凍結乾燥を行う前に、複数の孔を、n−ナタデココ及びNaHCO−ナタデココの各頂点からこれら各頂点とそれぞれ対向する頂点へ貫通させて開口し、かつ凍結乾燥を行った後に、各ナタデココを圧縮して、加工ナタデココを形成した。
【0265】
また、条件7では、凍結乾を行った後に、n−ナタデココ及びNaHCO−ナタデココをオイルに浸漬して、加工ナタデココを形成した。
【0266】
また、条件8では、凍結乾を行った後に、n−ナタデココ及びNaHCO−ナタデココをオイルに浸漬し、かつその後に、複数の孔を、各ナタデココの各面からこれら各面に対して垂直方向に貫通させて開口して、加工ナタデココを形成した。
【0267】
また、条件9では、凍結乾を行った後に、n−ナタデココ及びNaHCO−ナタデココをオイルに浸漬し、かつその後に、複数の孔を、各ナタデココの各頂点からこれら各頂点とそれぞれ対向する頂点へ貫通させて開口して、加工ナタデココを形成した。
【0268】
また、条件10では、凍結乾を行った後に、n−ナタデココ及びNaHCO−ナタデココをオイルに浸漬し、かつその後に、各ナタデココを圧縮して、加工ナタデココを形成した。
【0269】
また、条件11では、凍結乾を行った後に、n−ナタデココ及びNaHCO−ナタデココをオイルに浸漬し、その後に、各ナタデココを圧縮し、さらに、この圧縮の後に、複数の孔を、各ナタデココの各面からこれら各面に対して垂直方向に貫通させて開口して、加工ナタデココを形成した。
【0270】
また、条件12では、凍結乾を行った後に、n−ナタデココ及びNaHCO−ナタデココをオイルに浸漬し、その後に、各ナタデココを圧縮し、さらに、この圧縮の後に、複数の孔を、各ナタデココの各頂点からこれら各頂点とそれぞれ対向する頂点へ貫通させて開口して、加工ナタデココを形成した。
【0271】
また、条件13では、凍結乾燥を行う前に、複数の孔を、n−ナタデココ及びNaHCO−ナタデココの各面からこれら各面に対して垂直方向に貫通させて開口し、かつ凍結乾燥を行った後に、各ナタデココをオイルに浸漬し、さらに、その後に、各ナタデココを圧縮して、加工ナタデココを形成した。
【0272】
また、条件14では、凍結乾燥を行う前に、複数の孔を、n−ナタデココ及びNaHCO−ナタデココの各頂点からこれら各頂点とそれぞれ対向する頂点へ貫通させて開口し、かつ凍結乾燥を行った後に、各ナタデココをオイルに浸漬し、さらに、その後に、各ナタデココを圧縮して、加工ナタデココを形成した。
【0273】
なお、この実験では、n−ナタデココ及びNaHCO−ナタデココをそれぞれ用意するために、上述したDietナタデココせんいからシロップを抜いて得られたナタデココを材料として用いた。
【0274】
また、この実験では、条件1〜14において、凍結乾燥を行う前に、パスツールピペットを用いて、ナタデココに対して2滴または3滴程度の水、すなわち3ml程度の水を滴下することによって、ナタデココの全表面を水で被覆し、その後、ナタデココを4℃の温度で5分程度冷却した。
【0275】
また、条件2、5、8、11、及び13では、n−ナタデココ及びNaHCO−ナタデココの各面に3〜5つ程度の範囲内の数の孔を開口し、各ナタデココに少なくとも計12の孔を開口した。
【0276】
また、条件7〜14では、ナタデココを浸漬するオイルとしてコーンサラダ油(商品名:日清食品株式会社)を用い、n−ナタデココ及びNaHCO−ナタデココの加工ナタデココを23℃の温度において、0.5mlのオイルに滴下した。
【0277】
また、条件4、5、6、及び10〜14では、n−ナタデココ及びNaHCO−ナタデココの加工ナタデココに対して、1.5MPa程度の圧力を加えることよって、圧縮した。
【0278】
そして、これら各条件において形成した各加工ナタデココを、上述した第3の実施の形態による加工ナタデココの復元方法を用いて復元することによって、各々復元ナタデココを形成した。そして、各復元ナタデココ中に白色部分が残存しているか否かを確認した。
【0279】
なお、この実験では、n−ナタデココ及びNaCl−ナタデココから、上述した条件1〜14毎に加工ナタデココをそれぞれ数個〜十数個、より具体的には少なくとも5個以上作成した。そして、これら各々を復元して得た各復元ナタデココについて、復元ナタデココにおいて残存した白色部分の占有率を目視で評価した。より具体的には、白色部分が残存しなかった復元ナタデココにはA、白色部分の占有率が小さい復元ナタデココにはB、白色部分の占有率がBよりも大きくかつDよりも小さい復元ナタデココにはC、白色部分の占有率が大きい復元ナタデココにはD、及び白色部分がナタデココ中の全体を占有した復元ナタデココ、すなわち白色部分の残存を抑制できなかった復元ナタデココにはEの評価をそれぞれ与えた。
【0280】
また、この実験では、各加工ナタデココを沸騰状体にある水に3〜10分程度の範囲内の時間浸漬することによって復元した。
【0281】
表5にこの実験の結果を示す。
【0282】
【表5】

【0283】
表5の結果から、n−ナタデココを用いて加工ナタデココを形成した場合、及びNaHCO−ナタデココを用いて加工ナタデココを形成した場合の双方において、条件5〜14では、白色部分の残存を抑制できることが分かった。
【0284】
そして、n−ナタデココを用いて加工ナタデココを形成した場合、及びNaHCO−ナタデココを用いて加工ナタデココを形成した場合の双方において、条件11〜14が最も評価が高く、次いで条件8〜10、次いで条件7、次いで条件5及び6の順に評価が低くなる、すなわち復元ナタデココ中の白色部分の占有率が大きくなった。
【0285】
この結果から明らかなように、オイル含有ナタデココ、圧縮オイル含有ナタデココ、これらオイル含有ナタデココと圧縮オイル含有ナタデココに複数の孔が開口された加工ナタデココ、及び圧縮オイル非含有ナタデココに複数の孔が開口された加工ナタデココでは、復元した際に、復元ナタデココ中の白色部分の残存を抑制できることが確認された。
【0286】
そして、この結果から、復元ナタデココ中に白色部分が残存するのを防止するに当たり、ナタデココに複数の孔を開口し、かつ凍結乾燥を行った後に、各ナタデココをオイルに浸漬し、さらに、その後に、各ナタデココを圧縮して加工ナタデココ、すなわち複数の孔が開口された圧縮オイル含有ナタデココを形成するのが最も好適であることが分かった。
【0287】
また、条件11〜14における復元ナタデココの評価がいずれもAであることから、n−ナタデココを用いて加工ナタデココを形成した場合、及びNaHCO−ナタデココを用いて加工ナタデココを形成した場合の双方において、凍結乾燥の前または後、すなわち上述した第1の実施の形態及び第2の実施の形態における第2過程の前または後のいずれの時点において複数の孔を開口した場合でも、同程度に復元ナタデココ中の白色部分の残存を防止できることが確認された。
【符号の説明】
【0288】
11:ナタデココ
13:孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キューブ状のナタデココを繊維間結合防止剤の水溶液に浸漬することによって、該ナタデココの繊維間に前記繊維間結合防止剤を入り込ませる第1過程と、
該ナタデココを凍結乾燥する第2過程と
を含むことを特徴とする加工ナタデココの形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の加工ナタデココの形成方法であって、
前記繊維間結合防止剤として炭酸水素ナトリウムを用いる
ことを特徴とする加工ナタデココの形成方法。
【請求項3】
請求項2に記載の加工ナタデココの形成方法であって、
0.7〜11.4%の範囲内の重量濃度の前記炭酸水素ナトリウムを用いる
ことを特徴とする加工ナタデココの形成方法。
【請求項4】
請求項3に記載の加工ナタデココの形成方法であって、
0.9〜11.4%の範囲内の重量濃度の前記炭酸水素ナトリウムを用いる
ことを特徴とする加工ナタデココの形成方法。
【請求項5】
請求項1に記載の加工ナタデココの形成方法であって、
前記繊維間結合防止剤として塩化ナトリウムを用いる
ことを特徴とする加工ナタデココの形成方法。
【請求項6】
請求項5に記載の加工ナタデココの形成方法であって、
1.0〜5.0%の範囲内の重量濃度の前記塩化ナトリウムを用いる
ことを特徴とする加工ナタデココの形成方法。
【請求項7】
請求項6に記載の加工ナタデココの形成方法であって、
2.0〜5.0%の範囲内の重量濃度の前記塩化ナトリウムを用いる
ことを特徴とする加工ナタデココの形成方法。
【請求項8】
請求項1に記載の加工ナタデココの形成方法であって、
前記繊維間結合防止剤としてスクロースを用いる
ことを特徴とする加工ナタデココの形成方法。
【請求項9】
請求項8に記載の加工ナタデココの形成方法であって、
1.0%の重量濃度の前記スクロースを用いる
ことを特徴とする加工ナタデココの形成方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の加工ナタデココの形成方法であって、
前記第2過程において、前記凍結乾燥を行う前に、前記ナタデココの表面を水で被覆する
ことを特徴とする加工ナタデココの形成方法。
【請求項11】
請求項10に記載の加工ナタデココの形成方法であって、
前記第2過程において、前記ナタデココの表面を水で被覆した後であって、前記凍結乾燥を行う前に、前記ナタデココを冷却する
ことを特徴とする加工ナタデココの形成方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の加工ナタデココの形成方法であって、
前記第2過程の後に、前記ナタデココをオイルに浸漬する第3過程を行う
ことを特徴とする加工ナタデココの形成方法。
【請求項13】
請求項12に記載の加工ナタデココの形成方法であって、
前記第3過程の後に、前記ナタデココを圧縮する
ことを特徴とする加工ナタデココの形成方法。
【請求項14】
請求項12または13に記載の加工ナタデココの形成方法であって、
前記第2過程の前または後のいずれかの時点において、前記ナタデココに該ナタデココの表面から複数の孔を開口する
ことを特徴とする加工ナタデココの形成方法。
【請求項15】
請求項14に記載の加工ナタデココの形成方法であって、
前記複数の孔を、前記ナタデココの各面から該各面に対して垂直方向に貫通させて開口する
ことを特徴とする加工ナタデココの形成方法。
【請求項16】
請求項14に記載の加工ナタデココの形成方法であって、
前記複数の孔を、前記ナタデココの各頂点から該各頂点とそれぞれ対向する頂点へ貫通させて開口する
ことを特徴とする加工ナタデココの形成方法。
【請求項17】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の加工ナタデココの形成方法であって、
前記第2過程の前または後のいずれかの時点において、前記ナタデココに該ナタデココの表面から複数の孔を開口し、
かつ前記第2過程の後に、前記ナタデココを圧縮する
ことを特徴とする加工ナタデココの形成方法。
【請求項18】
請求項17に記載の加工ナタデココの形成方法であって、
前記複数の孔を、前記ナタデココの各面から該各面に対して垂直方向に貫通させて開口する
ことを特徴とする加工ナタデココの形成方法。
【請求項19】
請求項17に記載の加工ナタデココの形成方法であって、
前記複数の孔を、前記ナタデココの各頂点から該各頂点とそれぞれ対向する頂点へ貫通させて開口する
ことを特徴とする加工ナタデココの形成方法。
【請求項20】
キューブ状のナタデココの繊維間に繊維間結合防止剤が入り込んだ状態で、該ナタデココが凍結乾燥されて形成されている
ことを特徴とする加工ナタデココ。
【請求項21】
請求項20に記載の加工ナタデココであって、
前記繊維間結合防止剤が炭酸水素ナトリウムである
ことを特徴とする加工ナタデココ。
【請求項22】
請求項20に記載の加工ナタデココであって、
前記繊維間結合防止剤が塩化ナトリウムである
ことを特徴とする加工ナタデココ。
【請求項23】
請求項20に記載の加工ナタデココであって、
前記繊維間結合防止剤がスクロースである
ことを特徴とする加工ナタデココ。
【請求項24】
請求項20〜23のいずれか一項に記載の加工ナタデココであって、
前記ナタデココ中にオイルが浸透している
ことを特徴とする加工ナタデココ。
【請求項25】
請求項24に記載の加工ナタデココであって、
該加工ナタデココは、前記オイルが浸透したナタデココが、該オイルが浸透したナタデココよりも厚みが薄くつぶされた状態にある
ことを特徴とする加工ナタデココ。
【請求項26】
請求項24または25に記載の加工ナタデココであって、
該加工ナタデココに該加工ナタデココの表面から複数の孔が開口されている
ことを特徴とする加工ナタデココ。
【請求項27】
請求項26に記載の加工ナタデココであって、
前記複数の孔は、該加工ナタデココの各面から該各面に対して垂直方向に貫通して開口されている
ことを特徴とする加工ナタデココ。
【請求項28】
請求項26に記載の加工ナタデココであって、
前記複数の孔は、該加工ナタデココの各頂点から該各頂点とそれぞれ対向する頂点へ貫通して開口されている
ことを特徴とする加工ナタデココ。
【請求項29】
請求項20〜23のいずれか一項に記載の加工ナタデココであって、
該加工ナタデココは、前記ナタデココが該ナタデココよりも厚みが薄くつぶされた状態にあり、
かつ該加工ナタデココに該加工ナタデココの表面から複数の孔が開口されている
ことを特徴とする加工ナタデココ。
【請求項30】
請求項29に記載の加工ナタデココであって、
前記複数の孔は、該加工ナタデココの各面から該各面に対して垂直方向に貫通して開口されている
ことを特徴とする加工ナタデココ。
【請求項31】
請求項29に記載の加工ナタデココであって、
前記複数の孔は、該加工ナタデココの各頂点から該各頂点とそれぞれ対向する頂点へ貫通して開口されている
ことを特徴とする加工ナタデココ。
【請求項32】
繊維間に繊維間結合防止剤を非含有の、キューブ状のナタデココを用意する第1過程と、
該ナタデココの表面を水で被覆した後、該ナタデココを凍結乾燥する第2過程と
を含むことを特徴とする加工ナタデココの形成方法。
【請求項33】
請求項32に記載の加工ナタデココの形成方法であって、
前記第2過程において、前記ナタデココの表面を水で被覆した後であって、前記凍結乾燥を行う前に、前記ナタデココを冷却する
ことを特徴とする加工ナタデココの形成方法。
【請求項34】
請求項32または33に記載の加工ナタデココの形成方法であって、
前記第2過程の後に、前記ナタデココをオイルに浸漬する第3過程を行う
ことを特徴とする加工ナタデココの形成方法。
【請求項35】
請求項34に記載の加工ナタデココの形成方法であって、
前記第3過程の後に、前記ナタデココを圧縮する
ことを特徴とする加工ナタデココの形成方法。
【請求項36】
請求項34または35に記載の加工ナタデココの形成方法であって、
前記第2過程の前または後のいずれかの時点において、前記ナタデココに該ナタデココの表面から複数の孔を開口する
ことを特徴とする加工ナタデココの形成方法。
【請求項37】
請求項36に記載の加工ナタデココの形成方法であって、
前記複数の孔を、前記ナタデココの各面から該各面に対して垂直方向に貫通させて開口する
ことを特徴とする加工ナタデココの形成方法。
【請求項38】
請求項36に記載の加工ナタデココの形成方法であって、
前記複数の孔を、前記ナタデココの各頂点から該各頂点とそれぞれ対向する頂点へ貫通させて開口する
ことを特徴とする加工ナタデココの形成方法。
【請求項39】
請求項32または33に記載の加工ナタデココの形成方法であって、
前記第2過程の前または後のいずれかの時点において、前記ナタデココに該ナタデココの表面から複数の孔を開口し、
かつ前記第2過程の後に、前記ナタデココを圧縮する
ことを特徴とする加工ナタデココの形成方法。
【請求項40】
請求項39に記載の加工ナタデココの形成方法であって、
前記複数の孔を、前記ナタデココの各面から該各面に対して垂直方向に貫通させて開口する
ことを特徴とする加工ナタデココの形成方法。
【請求項41】
請求項39に記載の加工ナタデココの形成方法であって、
前記複数の孔を、前記ナタデココの各頂点から該各頂点とそれぞれ対向する頂点へ貫通させて開口する
ことを特徴とする加工ナタデココの形成方法。
【請求項42】
請求項1〜19及び32〜41のいずれか一項に記載の加工ナタデココの形成方法を用いて形成した加工ナタデココを、水に浸漬することによって乾燥状態から非乾燥状態へ復元する
ことを特徴とする加工ナタデココの復元方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−155909(P2011−155909A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20455(P2010−20455)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年1月29日 立教大学理学部化学科/立教大学大学院理学研究科化学専攻発行の「2009年度 第57回 業績報告会要旨集 」に発表
【出願人】(300071579)学校法人立教学院 (42)
【Fターム(参考)】