説明

加工機械の安全装置

【課題】足踏み式のペダルによって操作される鍛造機その他の加工機械において、意図しないペダル操作に起因する作業者への危険要素を排除し、作業現場での安全性を向上させる。
【解決手段】本発明の加工機械の安全装置は、ペダル14の近傍に設けられた靴検知手段(ペダルカバー31に取り付けられたセンサ32)が、ペダル14上の所定位置に作業靴の存在を検知すると、その検知信号に基づいて、ロック手段(ロックピンホルダ51から出没するロックピン52)が操作機構の動作を許容し、靴検知手段が作業靴の存在を検知しなければ、ロック手段が操作機構の動作を拘束して可動体を停止させるように構成されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンマやプレス等の鍛造機、曲げ加工機、裁断機など、被加工材に物理的な外力を与えて被加工材を変形あるいは変質させる類の加工機械のうち、特に、足踏みペダルの踏下げによって操作される加工機械のための安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、長年にわたり、特許文献1〜3に記載されたようなエアスタンプハンマを製造・販売している。かかるエアスタンプハンマの基本的な構造は、基台(アンビル)上に鍛造用下型を取り付けて、その下型内に加熱した被加工素材を供給し、基台上に設置した門形フレームの左右ラムガイドに沿って昇降するラムの下面に鍛造用下型を取り付け、ラムの落下エネルギーを利用して上型で被加工素材を打撃成形するというものである。フレームの上部にはラム昇降用エアシリンダが備えられ、ラムに直結されたピストンがラム昇降用エアシリンダ内に収容されて、コンプレッサからの圧縮空気によりピストンが上下する。
【0003】
ラム昇降用エアシリンダを制御する制御弁は、足踏み式のペダルと、ラムの昇降動作に応動する弓形カムとを連接棒により連結した操作機構を介して操作される。すなわち、ペダルの踏下げによって制御弁がラムを落下させるように操作され、ラムの落下後、足を緩めてペダルを戻すとラムが上昇し、ペダルが再度、踏下げられるまではラムが所定の上限位置に停止するように構成されている。
【0004】
また、操作機構の構成は異なるが、特許文献4、5等にも、足踏み式ペダル(フットスイッチ)の踏下げによって操作される曲げ加工機やプレス加工機の構成が開示されている。
【0005】
上記のような加工機械は、その操作に重大な危険が伴うので、種々の安全対策が採られている。従来の一般的な安全対策としては、ラムその他の可動体の落下位置、特に上型と下型の間に人体を進入させないための阻止手段や、危険域に人体が接近したことを察知して作動する非常停止手段等が挙げられる。また、型内で加工トラブルが発生するなどして、その処理のために止むを得ず危険域に進入しなければならない場合があるが、このとき可動体や駆動部の誤作動を防ぐために、手動的あるいは強制的なロック手段も設けられる。本出願人が提供するエアスタンプハンマにおいても、かかるロック手段として、操作機構の一部、具体的には足踏みペダルと弓形カムとを繋ぐ連接棒に突起部を設け、この突起部に安全ピンを干渉させて連接棒の上下動を拘束する機構を採用している。安全ピンは、基台側に取り付けられた安全装置用ブラケット内に出没自在に保持され、必要時には手動で操作される。
【特許文献1】実公昭58−49150号公報
【特許文献2】実公昭62−29163号公報
【特許文献3】特開平9−32994号公報
【特許文献4】特開平11−347634号公報
【特許文献5】特開平8−243797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
加工作業中に、型内に異物が混入したり、被加工素材が脱型できなくなったりするなどのトラブルが生じた場合、本来ならば、上記のようなロック手段や主電源の切断によって安全を確保した後でなければ危険域に進入してはならない。しかしながら、作業に対する慣れや多忙さにより、つい慎重さを失って、ロック手段を講じないまま不用意に危険域に進入してしまうことがある。実際に、鍛造プレスによる作業中、型内の製品を金バサミで取り除く際に誤ってペダルを踏んでしまい、落下したラムに頭部を挟まれて死亡した災害事例も報告されている(平成17年・新潟労働局・業種別死亡災害事例)。また、トラブル処理の最中、工具や部品が偶然、ペダル上に落下するなどの外的要因によって突発的な誤作動を生じるおそれもある。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたもので、足踏み式のペダルによって操作される鍛造機その他の加工機械において、意図しないペダル操作に起因する作業者への危険要素を少しでも排除することを目的とする。具体的には、作業者に多少の油断があっても、作業者が適正な位置で正しくペダルを踏まない限り運転がロックされるような安全装置の提供を解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明者らは、ペダル上に作業靴が適正に置かれているか否かを検知して制御される安全装置を着想した。すなわち、本発明の安全装置は、作業者が足踏み式のペダルを踏下げると、該ペダルに連結された操作機構を介して可動体が動作するように構成された鍛造機その他の加工機械において、上記ペダル上における作業靴の有無を検知する靴検知手段と、該靴検知手段に接続されて上記操作機構の動作に干渉するロック手段とを備え、靴検知手段がペダル上の所定位置に作業靴の存在を検知すると、その検知信号に基づいてロック手段が上記操作機構の動作を許容し、靴検知手段が上記作業靴の存在を検知しなければ、ロック手段が上記操作機構の動作を拘束して可動体を停止させることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、加工機械の運転中に、作業者が、つい油断して危険域に進入しそうになったとしても、作業者の足がペダルから離れることによって運転が停止する。したがって、作業者が危険域に進入している最中に、例えば不自然な姿勢でペダルが押下げられたり、工具等がペダル上に落下するなどの偶発的な要因によって予期しない事故が起きるのを防止することができる。
【0010】
本発明において、ペダル上での作業靴の有無を検知する靴検知手段としては、予め設定された作業靴の所定部位を、接触式又は非接触式のセンサによって検知するものとすることができる。非接触式のセンサについては、超音波センサや光学式センサ等も利用可能であるが、作業現場の一般的状況や実用性を考慮した場合、多くの作業現場で着用されている安全靴の爪先部分に内蔵された鉄芯を、誘導型又は静電容量型の近接センサによって検知するものが特に実用的である。
【0011】
また、他の構成に係る靴検知手段として、作業靴に予め取り付けられたICタグの登録情報をタグリーダによって検知するものとすることもできる。このように、作業靴についての条件を限定し、予め定められた作業者しかペダル操作をできないようにすれば、他の作業者の予期しないペダル操作に起因する危険要素を排除することができる。
【0012】
本発明における靴検知手段の設置態様としては、ペダル近傍の作業床面に、ペダルの可動範囲を覆うようにして固定する態様と、ペダルの踏板本体に設けてペダルと一体に上下動させる態様とが考えられる。これらは、加工機械の特性や作業現場の状況に応じて選択することができる。
【0013】
本発明におけるロック手段については、ペダル又は操作機構の可動部分に対してストッパ部材を出没させることにより、操作機構の動作を拘束又は許容するものとすることができる。このような機構であれば、比較的安価に構成することができ、その動作も確実で、実用性が高い。
【0014】
また、本発明の安全装置は、運転中に作業靴がペダルから離れると操作機構の動作が拘束され、所定時間内に作業靴がペダル上に復帰すると、上記拘束状態が解除されて運転が再開されるタイマ制御手段を備えたものであってもよい。さらに、そのタイマ制御手段は、運転中に作業靴がペダルから離れて所定時間を経過すると、作業靴がペダル上に復帰しただけでは運転が再開されないタイマロック状態となり、このタイマロック状態は、タイマロック解除スイッチを手動で操作することによって解除されるように構成されてもよい。このような構成によると、作業者が、例えば部品や工具を取りに行くなどの理由でごく短時間(数秒〜十数秒程度)作業位置を離れる場合は、作業位置に戻ってペダルを踏むだけで速やかに作業を再開することができる一方、所定時間(例えば30秒程度)以上、作業位置を離れると確実なロック状態になり、安易には運転を再開できなくなる。したがって、作業現場での作業効率と安全性をバランスよく両立させることができる。
【0015】
なお、ペダル上で作業靴を検知する靴検知手段については、正常な作業の最中に、作業者の足がペダルから瞬間的に離れたり横にずれたりして、検知信号が断続的になるおそれがある。このように不確実性のある靴検知信号に対してロック手段が鋭敏に反応しすぎると、却って運転に支障を生じる。そこで、本発明の安全装置は、操作機構の所定位置にて操作機構の動作状態を継続的に監視する運転モニタ手段を備え、正常運転中は、上記運転モニタ手段が検知した正常運転信号に基づいてロック手段を動作許容状態で保持することにより、正常運転中の靴検知手段による検知誤差を補正するものとしてもよい。つまり、正常運転中は、運転モニタ手段が検知した正常運転信号が、靴検知手段の検知信号よりも優先される。このような構成より、安全性を損なわない範囲で運転操作の円滑性を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
上述のように構成される本発明の加工機械の安全装置は、ペダル上に作業靴が適正に置かれているか否かを靴検知手段が検知して、ペダルから作業靴が離れるとロック手段が操作機構の動作を拘束する電気的インターロックを具備しているので、作業者がトラブル処理等のために危険域に進入している最中、万一、誤って不自然な状態でペダルを踏んでしまったり、工具等がペダル上に落下するなどの偶発的な要因が生じても、それによる加工機械の誤動作を防止して作業員の安全を確保することができる。
【0017】
また、本発明の安全装置は、ペダル付近に設置する靴検知手段と、操作機構の一部に対して物理的に干渉するロック手段と、それらを電気的に制御する制御手段等によって構成されるので、従来一般の加工装置に対しても、加工装置本体に大きな改造を要することなく、低コストで後付けすることができる。したがって、既存の作業現場における安全性の向上にも大きく寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0019】
図1及び図2は、本発明の一実施形態に係る安全装置を設けたエアスタンプハンマ1を示す。図1は作業位置側から見たエアスタンプハンマ1の正面図であり、図2は右側面図である。基台となるアンビル2上に左右のフレーム3、3が設置されて、両フレーム3、3の上部にシリンダブロック4が設けられる。シリンダブロック4には、図示しない縦型のラム昇降用エアシリンダと、該シリンダ内に収容されたピストンとが保持される。ピストンにはピストンロッド5が結合されて、両フレーム3、3間に下向きに垂下している。ピストンロッド5の下端部にはラム6が取り付けられ、ラム6は両フレーム3、3に設けられた左右のラムガイド7に沿って昇降自在に保持される。ラム6の下面と、アンビル2上に取り付けられたソーブロック8の上面には、それぞれ図示しない鍛造用上型と鍛造用下型が取り付けられている。
【0020】
シリンダブロック4の側部には、ラム昇降用エアシリンダに連通する弁装置11が設けられている。弁装置11は、図示しないコンプレッサからの圧縮空気をラム下降側とラム上昇側とに切り換える制御弁12(図3参照)を内蔵している。図3は、エアスタンプハンマ1本体を省略して、制御弁12を動作させる操作機構の概略構成を示した図である。操作機構は、基本的には前述の特許文献2に記載されたものと同様に、作業床面13と略同レベルに設置される足踏み式のペダル14、ペダル14を保持するペダルシャフト15、ペダルシャフト15に略L字形のレバー16を介して連結されたペダル連接棒17、中間支点レバー18を介してペダル連接棒17に連結されたカムレバー21、その上部に連結されたロッカーアーム22、ロッカーアーム22に連結されてラム6の側部に摺接する弓形カム23、ロッカーアーム22に連結されて上方に延びる制御弁連接棒24、制御弁連接棒24の上端と制御弁12の弁軸25とを連結する制御弁レバー26等の部材によって構成される。ペダル14は、踏下げられない状態では踏面が作業床面13と略同レベルになるように保持されている。ペダル14の踏下げに連動して、ペダル連接棒17、カムレバー21、制御弁連接棒24が上下方向に動作し、制御弁12の弁軸25が昇降する。
【0021】
例示形態にあって、本発明の要部をなす靴検知手段は、ペダル14を上方から覆うようにして作業床面13に固定されたペダルカバー31と、該ペダルカバー31に取り付けられて作業靴の有無を検知するセンサ32とによって構成される。ペダルカバー31及びセンサ32を図4に拡大して示す。ペダルカバー31は、奥壁部33及び左右の側壁部34、34の上部に天板部35を被せた略フード状又はドーム状をなし、その開口面を作業位置側に向けている。作業者は、所定の作業位置に立ってエアスタンプハンマ1に正対する姿勢でのみ、作業靴の爪先部分をペダルカバー31の開口面内に挿入してペダル14を踏むことができる。
【0022】
センサ32は、ペダルカバー31の内側、例示形態にあっては天板部35の下面に、検知面を下向きにして取り付けられている。センサ32としては、例えば、金属を検知する誘導型又は静電容量型の近接センサが利用される。このセンサ32は、多くの作業現場で着用されている安全靴の爪先部分に内蔵された鉄芯に反応して、ペダルカバー31の内側に安全靴の爪先が適正に挿入されていることをを検知する。したがって、安全靴以外の作業靴にはセンサ32が反応しない。
【0023】
センサ32は、接続コードを介して操作ボックス41に接続されている。操作ボックス41は、作業位置に近接して作業床面13上に立設されている。操作ボックス41には、各種のスイッチ42と運転状態を表示するランプ類43、及びタイマ機能を備えた図示しない制御回路部が設けられている。センサ32によってペダル14上の作業靴が検知されると、その検知信号は制御回路部にて処理され、ロック手段へと送信される。
【0024】
例示形態におけるロック手段は、上述した操作機構を構成するペダル連接棒17の上下動に対して干渉するように設けられている。図5に該干渉部分を拡大して示す。ロック手段は、エアスタンプハンマ1のアンビル2に取り付けられたロックピンホルダ51と、該ロックピンホルダ51に出没自在に保持された、ストッパ部材としてのロックピン52によって構成される。ロックピン52は、制御回路部からの信号に基づいて横向きに出没し、突出時には、その先端を、ペダル連接棒17に突設されたストッパ突起53の下側に挿し入れる。これにより、ペダル連接棒17が上死点(上限位置)の近傍で物理的に拘束され、ラム6が落下しなくなる。ロックピンホルダ51にロックピン52を出没させる機構は特に限定しないが、迅速性や確実性が要求される点では電磁気的な機構が好適である。
【0025】
なお、上記ロック手段の近傍には、従来と同様に、制御信号に依存しない手動式の安全ピン装置も設けられている。この安全ピン装置は、アンビル2側に固定した安全装置用ブラケット54に安全ピン55を出没自在に保持したもので、作業者が運転を中断あるいは終了する際、必要に応じて手動で操作される。
【0026】
さらに、例示形態においては、上記ロック手段の近傍に、操作機構の動作状態を継続的に監視する運転モニタ手段も設けられている。運転モニタ手段は、ペダル連接棒17に突設されたストッパ突起53を監視用原点として、その位置を近接センサ56等により監視する。そして、監視用原点が正常な位置、つまり上死点と下死点との間で規則的に動作していれば、正常な運転状態と見なし、制御回路部に対して正常運転信号を送信する。
【0027】
上記のように構成された安全装置による実際の制御フローは、概ね以下のようになる。まず、休止状態から運転を開始する場合、作業者が主電源を投入して、後述するタイマロック状態を手動で解除する。そして、所定時間、例えば30秒以内に作業者がペダル14を踏下げると、ペダル連接棒17のストッパ突起53に干渉していたロックピン52が後退して、運転可能になる。運転中は、靴検知手段が常時、作業靴の有無を検知し続けるとともに、運転モニタ手段が操作機構の運転状態を監視する。運転モニタ手段が制御回路部に対して正常運転信号を送信している間は、それに基づいてロックピン52が後退した状態に保持される。
【0028】
作業者が作業を一時的に中断してペダル14から足を離すと、それを靴検知手段が検知し、制御回路部がロック手段に対してロック信号を送信する。すると、概ね1〜2秒以内にロックピン52が突出してペダル連接棒17のストッパ突起53に干渉し、操作機構の動作が拘束される。同時に、制御回路部に内蔵されたタイマ制御手段が、その時点からの経過時間の計測を開始する。
【0029】
そして、ロックピン52の突出から所定時間、例えば30秒以内に作業者がペダル14を踏み直すと、ロックピン52が後退して操作機構の拘束が解除され、運転が再開される。しかし、ペダル14の踏下げがないまま上記所定時間が経過すると、ペダル14を踏み直しただけでは解除されないタイマロック状態となり、ロックピン52は突出したまま保持される。このタイマロック状態は、例えば操作ボックス41に設けられたタイマロック解除スイッチを手動で操作することによりリセットされる。作業者が安全を確認して、タイマロック状態をリセットした後、所定時間以内に再度、ペダル14を踏むことにより、ロックピン52が後退して運転が再開される。
【0030】
上述のような安全装置の構成と制御フローにより、現場における運転操作の円滑性を損なわずに、作業の中断や再開に際しての安全性を高めることができる。ペダルカバー31によって覆われたペダル14は、作業者が正しく作業位置に立った状態でしか踏めないから、例えば型内の加工トラブルを処理する最中に誤ってペダル14を踏んでしまうような事故も防ぐことができる。また、作業者が作業位置から離れているときに、万一、工具や部品などが作業者の足元付近に落下しても、ペダルカバー31によって覆われたペダル14には衝撃が及ばない。さらに、靴検知手段は、爪先に鉄芯を入れた安全靴しか検知しないように構成されているから、安全靴を履いていない第三者が不用意にペダル14を踏んでもロック状態は解除されない。
【0031】
なお、上記実施形態に示した構成は一例であって、本発明は一部を改変した形態によっても実施可能である。例えば、靴検知手段は、作業床面13に固定するのではなく、ペダル14の踏板本体に設けて、ペダル14と一体に上下動させることもできる。この場合、例えばペダル14の爪先部分をスリッパ状に形成して、その内側にセンサ32を設ければ、作業性の確保と作業靴の確実な検知とを両立させやすい。作業靴を検知するセンサ32についても、上記のような近接センサ以外に、例えば超音波センサや光学式センサ等の非接触式センサ、あるいは公知の接触式センサを利用することができる。作業靴の検知部位や検知すべき材質等については、センサの種類に応じて設定されればよい。
【0032】
また、作業靴に予めICタグを取り付けて特定の作業者情報を登録しておき、それをペダル14又はペダルカバー31に取り付けたタグリーダで読み取るようにしてもよい。このようにして運転条件を厳しくすれば、作業現場における担当責任の明確性も担保しやすくなる。ICタグとタグリーダの構成については公知技術を適宜、利用することができる。
【0033】
ロック手段についても、操作機構側に設けるストッパ突起53等と、それに干渉するストッパ部材の形状や干渉形態等は、操作機構の特性に応じて適宜設計されればよい。ストッパ部材が、ペダル14の可動範囲内に干渉してペダル14自体の動作を拘束してもよい。制御フローについても、ペダル14上での作業靴の有無に応じてロック手段を制御するという本発明の主旨を逸脱しない限り、個々の現場における作業の実情に応じて適宜改変可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態に係る安全装置を設けたエアスタンプハンマの正面図である。
【図2】上記エアスタンプハンマの右側面図である。
【図3】上記エアスタンプハンマにおける操作機構の概略構成のみを示した斜視図である。
【図4】上記エアスタンプハンマにおける靴検知手段の構成を拡大して示す斜視図ある。
【図5】上記エアスタンプハンマにおけるロック手段の構成を拡大して示す斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
14 ペダル
6 ラム(可動体)
1 エアスタンプハンマ(加工機械)
32 センサ
13 作業床面
31 ペダルカバー
52 ロックピン(ストッパ部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が足踏み式のペダルを踏下げると、該ペダルに連結された操作機構を介して可動体が動作するように構成された鍛造機その他の加工機械において、
上記ペダル上における作業靴の有無を検知する靴検知手段と、該靴検知手段に接続されて上記操作機構の動作に干渉するロック手段とを備え、
靴検知手段がペダル上の所定位置に作業靴の存在を検知すると、その検知信号に基づいてロック手段が上記操作機構の動作を許容し、靴検知手段が上記作業靴の存在を検知しなければ、ロック手段が上記操作機構の動作を拘束して可動体を停止させることを特徴とする加工機械の安全装置。
【請求項2】
靴検知手段は、予め設定された作業靴の所定部位を、接触式又は非接触式のセンサによって検知するものであることを特徴とする請求項1に記載の加工機械の安全装置。
【請求項3】
靴検知手段は、作業靴の爪先部分に内蔵された鉄芯を、誘導型又は静電容量型の近接センサによって検知するものであることを特徴とする請求項2に記載の加工機械の安全装置。
【請求項4】
靴検知手段は、作業靴に予め取り付けられたICタグの登録情報をタグリーダによって検知するものであることを特徴とする請求項1に記載の加工機械の安全装置。
【請求項5】
靴検知手段は、ペダル近傍の作業床面に、ペダルの可動範囲を覆うようにして固定されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の加工機械の安全装置。
【請求項6】
靴検知手段は、ペダルの踏板本体に設けられてペダルと一体に上下動することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の加工機械の安全装置。
【請求項7】
ロック手段は、ペダル又は操作機構の可動部分に対してストッパ部材を出没させることにより、操作機構の動作を拘束又は許容するものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の加工機械の安全装置。
【請求項8】
運転中に作業靴がペダルから離れると操作機構の動作が拘束され、所定時間内に作業靴がペダル上に復帰すると、上記拘束状態が解除されて運転が再開されるタイマ制御手段を備えたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の加工機械の安全装置。
【請求項9】
運転中に作業靴がペダルから離れて所定時間を経過すると、作業靴がペダル上に復帰しただけでは運転が再開されないタイマロック状態となり、このタイマロック状態は、タイマ制御手段に備えられたタイマロック解除スイッチを手動で操作することにより解除されることを特徴とする請求項8に記載の加工機械の安全装置。
【請求項10】
操作機構の所定位置にて操作機構の動作状態を継続的に監視する運転モニタ手段を備え、正常運転中は、上記運転モニタ手段が検知した正常運転信号に基づいてロック手段を動作許容状態で保持することにより、正常運転中の靴検知手段による検知誤差を補正することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の加工機械の安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−309228(P2008−309228A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156764(P2007−156764)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(000149365)株式会社大谷機械製作所 (2)
【Fターム(参考)】