説明

加工用ミスト供給装置

【課題】 シンプルな構成で、メンテナンスフリーで低コストな加工用ミスト供給装置を提供する。
【解決手段】 圧縮空気を導入して、これによりオイルミストを生成し圧縮空気流れに混入させるルブリケータ10、20を2個、圧縮空気供給装置2から供給される圧縮空気を通すミスト供給管路1に直列に配設する。各ルブリケータでは、それぞれ貯留室12、22に蓄えられた油13および水23をミスト化する。下流側の第2のルブリケータ20の導出口21bからは、油ミスト130と水ミスト230との混合ミストが噴き出され、フレキシブルホース4を経由して噴霧ノズル5から、被加工部位8に向けて混合ミストが噴霧される。各ルブリケータには、逆流防止のためにダンパ16、26および逆止弁18、28が設けられているので、油や水が上流側へ逆流することが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工用ミスト供給装置に関し、詳しくは機械加工における被加工部位へオイルミストと水ミストとを混合して供給する加工用ミスト供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、たとえば切削加工において、被加工材全体に切削液をかけるのではなく、切削工具の刃部へ微小量の油と水のミストを噴霧することにより、少ない切削液で効率的に切削抵抗低減および摩擦熱の低減を行う加工法が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−136365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記従来技術においては、油および水のそれぞれのミストを生成する超音波装置と、生成された油および水のミストを混合するための旋回流を形成するノズルを用いるものであり、システムが複雑であるため、作動が不安定性となるばかりでなく、装置の導入コストおよびランニングコストが高価なものとなるという問題があった。
【0004】
本発明は、上記点に鑑み、シンプルな構成で、メンテナンスフリーで低コストな加工用ミスト供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、上流端より圧縮空気が供給され、下流端に設けられた噴霧ノズル(5)より圧縮空気を噴出するミスト供給管路(1)と、ミスト供給管路の上流端および下流端の中間部分に配設され、供給される圧縮空気により油および水のいずれか一方の第1の液体(13)のミスト(130)を生成し、下流側へ圧縮空気とともに第1の液体のミストを噴出する第1のルブリケータ(10)と、ミスト供給管路の第1のルブリケータの下流側に配設され、第1のルブリケータより噴出される第1の液体のミストを含む圧縮空気により油および水の他方の第2の液体(23)のミスト(230)を生成し、下流側へ第1の液体のミストを含む圧縮空気とともに第2の液体のミストを噴出する第2のルブリケータ(20)と、を備え、噴霧ノズルより圧縮空気とともに第1および第2の液体のミストの混合物を噴き出すことを特徴とする。
【0006】
この発明によれば、市販されているルブリケータを2つ、圧縮空気の供給管路に直列に接続して第1および第2のルブリケータとし、それぞれのルブリケータにおいて圧縮空気により液体である油および水のミストを生成して圧縮空気に混入させて先端の噴霧ノズルより混合ミストを噴霧することができる。ルブリケータは、流体である油および水を安定にミスト化することができる。したがって、それら第1および第2のルブリケータを1つのミスト供給管路に直列に接続するだけで油および水の混合ミストを生成、供給することができるので、シンプルな構成としてメンテナンスフリーで低コストな加工用ミスト供給装置を得ることができる。
【0007】
なお、請求項2に記載のように、ミスト供給管路の圧縮空気の上流側に配置する第1のルブリケータでは油をミスト化し、下流側に配置する第2のルブリケータでは水をミスト化することにより、上流側の液体が混入しやすい第2のルブリケータでは水の上に第1のルブリケータから排出され第2のルブリケータに侵入した油を浮かせることができ、ミスト生成に支障をきたすおそれを低減できる。
【0008】
また、請求項3に記載のように記第1および第2のルブリケータは、それぞれ、第1および第2の液体を貯留する貯留室(12、22)と、上流側からの圧縮空気の圧力を貯留室の液面(13a、23a)に作用させることにより第1および第2の液体を圧縮空気の流れに滴下する液体供給部(14、15、17、24、25、27)と、下流側より逆圧が加わるときにミスト供給管路における上流側への空気流れを阻止するダンパ(16、26)および貯留室の液面への圧力作用を阻止する逆止弁(18、28)とを備えるようにすれば、ミスト供給管路に逆圧が発生しても、各ダンパは閉じられてミストを含む圧縮空気流れの上流側への逆流は阻止され、さらに、各逆止弁は閉じられて第1および第2の流体がそれぞれ第1および第2のルブリケータよりも上流側へ逆流することが阻止される。したがって、上流側での不要な液体流入がないので、これらを取り除く必要がなく、メンテナンスフリーの効果を高めることができる。
【0009】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1に示すように、本発明を適用した実施形態の加工用ミスト供給装置は、ミスト供給管路1と、ミスト供給管路1中に直列に接続された第1のルブリケータ10および第2のルブリケータ20と、第2のルブリケータ20の下流側のミスト供給管路1に接続されたフレキシブルホース4と、フレキシブルホース4の下流側端に設けられた噴霧ノズル5とを備えている。
【0011】
ミスト供給管路1の第1のルブリケータ10より上流端側は、圧縮空気供給装置2に接続され、この圧縮空気供給装置2より供給される所定圧力の圧縮空気がミスト供給管路1を介して第1のルブリケータ10に導入される。
【0012】
第1および第2のルブリケータ10、20はともに、同一構造を備えたルブリケータを用いている。なお、本実施形態において第1および第2のルブリケータは、市販されている汎用品としてのルブリケータを用いることができる。
【0013】
第1および第2のルブリケータ10、20の上部には、それぞれ、導入口11a、21aおよび導出口11b、21bに、主管路であるミスト供給管路1が接続されている。第1のルブリケータ10の導入口11a側である上流側には、所定圧力の圧縮空気を発生、供給する圧縮空気供給装置2が接続されている。
【0014】
各ルブリケータ10、20の導入口11a、21aと導出口11b、21bとの間には、可変絞りとしてのダンパ16、26が本体に固着されている。このダンパ16、26は、たとえば可撓性材料で形成され、導入口11a、21a側の圧縮空気圧力に応じて流路面積が増加するよう下流側へ撓むものである。このダンパ16、26の撓み量、すなわち絞り量に応じて、ダンパ16、26の下流側で差圧を発生させる。なお、ダンパ16、26は、下流側(導出口11b、21b側)の圧力が高い逆圧作用時には、ストッパ(図示せず)により逆方向への撓みが阻止されるようになっており、上流側への空気流れは防止される。
【0015】
第1および第2のルブリケータ10、20は、本体下部にはそれぞれ第1および第2の液体である油13および水23を貯留する貯留室12、22を備えている。貯留室12、22には、逆止弁18、28を介して主管路であるミスト供給管路1を流れる圧縮空気の一部が流れ込み、これにより液面13a、23aが加圧される。
【0016】
貯留室12、22の底部に開口を持つサイホンチューブ14、24が鉛直上方に延設されるとともに、第1および第2のルブリケータ10、20の上部において鉛直下方に向けて滴下口15、25が、ダンパ16、26により発生する差圧部に開口している。これにより、第1および第2の液体である油13、水23がそれぞれ、サイホンチューブ14、24内を鉛直上方に加圧されて上昇し、滴下口15、25より滴下する。これらの滴下量は、液量調節ネジ19、29によりそれぞれ個別に調節される。これにより、噴霧ノズル5より噴出される混合ミストの油と水の混合比を自由に設定することができる。
【0017】
滴下口15、25から滴下する第1および第2の液体である油13および水23は、供給用小穴17、27から圧縮空気流れ内に滴下する。このとき、ダンパ16、26で形成される絞りにより流速が高められた圧縮空気により、油13および水23は微細なミスト130、230となって、それぞれ導出口11b、21bより下流側のミスト供給管路1a、1bへと噴出される。なお、サイホンチューブ14、24と、滴下口15、25および供給用小穴17、27とが、液体供給部に相当する。
【0018】
第1のルブリケータ10の導出口11bでは、圧縮空気流れ中には油ミスト130が浮遊しており、したがって、第2のルブリケータ10の導入口21aには油ミスト130を含んだ圧縮空気が供給される。そして、第2のルブリケータ20の導出口21bでは、第2のルブリケータ20において生成された水ミスト230と上流側1aより流入した油ミスト130とが混在している。この油ミスト130および水ミスト230の混在ミストは、圧縮空気流れにのって、マグネットベース3により加工機(図示せず)等に固定されたフレキシブルホース4内を通り、噴霧ノズル5より外部へ噴霧される。
【0019】
なお、ミスト供給管路1において、上流側に第1の液体である油13をミスト化する第1のルブリケータ10を配置し、その下流側に第2の液体である水23をミスト化する第2のルブリケータ20を配置したので、第2のルブリケータ20の貯留室22には、上流側からミスト化された第1の液体である油13が流入することとなる。しかし、比重の小さい油は貯留室22内において水23の表面23a上に浮くので、第2のルブリケータ20において水23のミストに油13が混入することなく、流量調節ネジ29にて調整された水の量を正確にミスト化することができる。
【0020】
もし、第2のルブリケータに油が侵入することがあっても、油を浮かせることができ、第2のルブリケータ内に溜められた水の底部から水を供給する構成を採用しているので、所要の量の水のミストの生成に支障をきたすおそれを低減できる。また、長期間の使用の結果油が溜まることがあっても、溜まった油は簡単に取り除ける。従って、所要の比率の油と水のミストを長期間にわたって生成できるとともに、長期間にわたる使用の中でも簡単な保守作業で停止期間を短くできる。
【0021】
噴霧ノズル5は、切削ツール6により切削されるワーク7の被切削部位8近傍に開口するよう配置される。これにより、噴霧ノズル5から油および水ミスト130、230の混合ミストが被切削部位8にのみ噴霧されるので、少量の切削液(油および水)で効率的に。
【0022】
なお、噴霧ノズル5は、管路径が開口部方向に小さくなるコーン形状をしており、簡単な構造で、混合ミストを噴霧できる。
【0023】
ただし、噴霧ノズル5の開口部径を小さくしているので、圧縮空気圧力の変動などによりミスト供給管路1内に逆圧が発生する場合がある。また、この逆圧は、ミスト供給管路1の全体における流路抵抗のために発生する場合がある。このような逆圧発生に対して、第1および第2のルブリケータ10、20はそれぞれダンパ16、26および逆止弁18、28を備えている。すなわち、逆圧の作用により、ダンパ16、26および逆止弁18、28はともに閉じられる。ダンパ16、26が閉じることにより、各ミスト130、230を含んだ空気の上流側への逆流は阻止され、また、逆止弁18、28が閉じることにより貯留室12、22における液面13a、23aへの逆圧は作用せず、油13、水23の貯留室12、22から下流側ミスト供給管路1への逆流が阻止される。
【0024】
このように、油13および水23のミスト供給管路1の上流側への逆流が阻止されるので、油や水の混入阻止対策を講ずる必要がなく、メンテナンスフリーのシステムを得ることができる。
【0025】
なお、本実施形態において、第1および第2ルブリケータ10、20は、いわゆる可変絞り形の全量式ルブリケータを用いたが、これに限らず、固定絞り形であっても、さらには選択式ルブリケータであってもよい。また、ルブリケータ10、20には、市販品を用いることができる。ルブリケータ10、20としては、種々の形態のものを用いることができ、上記可変絞り(ダンパ16、26)の構造や、逆止弁(18、28)の配置位置、さらには、流量調節ネジ19、29の形態が異なるものを採用することができる。また、ルブリケータ10、20内の容量に制限されずに長期間にわたる運転を可能とするために、ルブリケータ10,20のいずれか一方または両方に連続して油または水を供給する供給装置を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を適用した実施形態の加工用ミスト供給装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1…ミスト供給管路、2…圧縮空気供給装置、4…フレキシブルホース、
5…噴霧ノズル、10…第1のルブリケータ、20…第2のルブリケータ、
12、22…貯留室、13…第1の液体(油)、23…第2の液体(水)、
14、24…サイホンチューブ、15、25…滴下口、16、26…ダンパ、
18、28…逆止弁、19、29…流量調節ネジ、130…油ミスト、
230…水ミスト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流端より圧縮空気が供給され、下流端に設けられた噴霧ノズル(5)より前記圧縮空気を噴出するミスト供給管路(1)と、
前記ミスト供給管路の前記上流端および下流端の中間部分に配設され、前記供給される圧縮空気により油および水のいずれか一方の第1の液体(13)のミスト(130)を生成し、下流側へ前記圧縮空気とともに前記第1の液体のミストを噴出する第1のルブリケータ(10)と、
前記ミスト供給管路の前記第1のルブリケータの下流側に配設され、前記第1のルブリケータより噴出される前記第1の液体のミストを含む圧縮空気により前記油および水の他方の第2の液体(23)のミスト(230)を生成し、下流側へ前記第1の液体のミストを含む圧縮空気とともに前記第2の液体のミストを噴出する第2のルブリケータ(20)と、
を備え、前記噴霧ノズルより前記圧縮空気とともに前記第1および第2の液体のミストの混合物を噴き出すことを特徴とする加工用ミスト供給装置。
【請求項2】
前記第1の液体は油であり、前記第2の液体は水であることを特徴とする請求項1に記載の加工用ミスト供給装置。
【請求項3】
前記第1および第2のルブリケータは、それぞれ、前記第1および第2の液体を貯留する貯留室(12、22)と、前記上流側からの圧縮空気の圧力を前記貯留室の液面(13a、23a)に作用させることにより前記第1および第2の液体を前記圧縮空気の流れに滴下する液体供給部(14、15、17、24、25、27)と、前記下流側より逆圧が加わるときに前記ミスト供給管路における上流側への空気流れを阻止するダンパ(16、26)および前記貯留室の液面への圧力作用を阻止する逆止弁(18、28)とを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の加工用ミスト供給装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−123143(P2006−123143A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−318146(P2004−318146)
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】