説明

加工用潤滑剤、加工用潤滑剤の製造方法及び加工方法

【課題】半液状体または液状体とすることで粘性を有し、切削や研削に必要な特性を有する加工用潤滑として使用することができ、環境、安全性などに優れる加工潤滑剤、及びその製造方法と加工方法を提供する。
【解決手段】加工用潤滑剤は、常温で溶液を凍らせ、次いで、凍らせた溶液を粉砕し、半液状体または液状体にしたものである。溶液は、水を主成分とし、または溶液は、界面活性剤と油を混合してミセルを形成してもよい。半液状体の粘度が、2cPから1000cPであり、また液状体の粘度が、1cPから500cPである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば機械加工に用いる加工用潤滑剤、加工用潤滑剤の製造方法及び加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、切削、ボール盤等による機械加工にあたっては、切削性や研削性を向上させる目的で、切削部、研削部に各種の固相、液相の剤を存在させて行われている。これらの各種の固相、液相の剤は、切削油や研削油(以下、切研削油と総称する。)と呼ばれるものであり、従来は、不水溶性切研削油剤などが広く使用されていた。
【0003】
最近、機械加工の分野においても、作業環境の改善、消防法の規制による各種油剤の不燃化、無人による工作機械の昼夜運転などが求められており、環境や安全面の理由から、切研削油剤についても、従来から広く使用されている不水溶性に代えて、水溶性の切削油が広く使用されるようになってきている。
【0004】
また、両方のメリットを生かした、界面活性剤を添加した、新たな切削油も提案されている。例えば、鉱物油、油脂、エステル、合成油などからなる基油に硫黄系や塩素系の極圧添加剤を高濃度で配合した組成物を界面活性剤によって水に乳化分散させたエマルジョンタイプのものが開発され、切削性が重要視される加工用途において使用されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−88089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば、潤滑油をそのまま、または水と混ぜる、または界面活性剤を使った乳化分散させたエマルジョンタイプのものにして使用しているが、不水溶性切研削油剤は、環境負荷が大きい、安全性が悪い、熱伝導性が悪い。水溶性切研削油剤は、環境負荷が大きい、耐酸化性が悪い、熱伝導性が悪い。界面活性剤を用いた水に乳化分散させたエマルジョンタイプは、環境負荷が大きい、耐酸化性が悪い。水は、粘度が足りない、耐酸化性が悪いなどの問題がある。このように、いずれも一長一短であり、このような課題を満足させることはできなかった。
【0007】
この発明は、かかる実情に鑑みてなされたもので、切削や研削に必要な特性を兼ね備えた加工用潤滑剤、加工用潤滑剤の製造方法及び加工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成した。
【0009】
請求項1に記載の発明は、常温で液体である溶液を凍らせ、
次いで、前記凍らせた溶液を粉砕し、半液状体または液状体にしたことを特徴とする加工用潤滑剤である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記溶液は、水を主成分とすることを特徴とする請求項1に記載の加工用潤滑剤である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記溶液は、界面活性剤と油を混合してミセルを形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の加工用潤滑剤である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、
前記半液状体の粘度が、2cPから1000cPであり、
前記液状体の粘度が、1cPから500cPであることを特徴とする請求項1に記載の加工用潤滑剤である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、常温で溶液を凍らせる冷凍工程と、
次いで、前記凍らせた溶液を粉砕し、半液状体または液状体にする粉砕工程とを有することを特徴とする加工用潤滑剤の製造方法である。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の加工用潤滑剤として使用することを特徴とする加工方法である。
【発明の効果】
【0015】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0016】
請求項1に記載の発明では、常温で液体である溶液を凍らせて粉砕し、半液状体または液状体することで、凍らせて粘度を制御することができ、かつ耐酸化性が向上し、また安全性を確保することができる。すなわち、耐酸化性と粘度を向上させるために、既存の潤滑油等を凍らせ、その氷を粉砕して、半液状体または液状体することで使用する。切削用などに使用されている油および水との混合溶液は、切削など加工の際に欠かすことのできない潤滑効果と冷却効果が必要である。油の場合は、熱による劣化および燃焼、水との混合溶液においては、廃液を処理する際にいろいろな課題がある。また、単に水を用いると切削刃が錆びる、水の粘度が低く潤滑効果が低下する恐れがあるが、水を主成分とする溶液を凍らせ、この氷を粉砕、微粉化し、液状化し、潤滑剤として用いることによって、冷却、粘度、酸化防止のすべての課題を解決することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明では、溶液は、水を主成分とすることで、容易に凍らせて粘度を制御することができ、かつ耐酸化性が向上し、また安全性を確保することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明では、溶液は、界面活性剤と油を混合してミセルを形成したものであり、容易に凍らせて粘度を制御することができ、かつ耐酸化性が向上し、また安全性を確保することができる。
【0019】
請求項4に記載の発明では、半液状体の粘度が、2cPから1000cP(1P=100cP=0.1Pa・sである)であり、また液状体の粘度が、1cPから500cPであり、例えば切削刃にまとわりつき潤滑の効果がある。
【0020】
請求項5に記載の発明では、常温で溶液を凍らせ、次いで、凍らせた溶液を粉砕し、半液状体または液状体にすることで、耐酸化性と粘性を有し、切削や研削に必要な特性を有する加工用潤滑として使用することができ、環境、安全性などに優れる加工用潤滑剤を製造することができる。
【0021】
請求項6に記載の発明では、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の加工用潤滑剤が、耐酸化性と粘性を有し、環境、安全性などに優れ、例えば、切削、ボール盤等による機械加工に最適である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】加工用潤滑剤の製造方法の工程図である。
【図2】混合装置の概略の構成を示す図である。
【図3】冷凍装置における冷凍サイクルの概略の構成を示す図である。
【図4】粉砕装置の概略の構成を示す図である。
【図5】加工方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の加工用潤滑剤、加工用潤滑剤の製造方法及び加工方法の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。
【0024】
この実施の形態の加工用潤滑剤は、例えば、切削、ボール盤等による機械加工に用いられ、常温で液体である溶液を凍らせ、次いで、凍らせた溶液を粉砕し、半液状体または液状体にしたものである。この加工用潤滑剤の製造方法を、図1に示し、常温で溶液を凍らせる冷凍工程Aと、次いで、凍らせた溶液を粉砕し、半液状体または液状体にする粉砕工程Bとを有する。
【0025】
(冷凍工程A)
この実施の形態の冷凍工程Aでは、常温で液体である溶液を凍らせるが、溶液は、水を主成分としたものなどでもよい。この溶液としては、例えば潤滑油でもよい。潤滑油として、オレイン酸、リノール酸、及びリノレン酸の不飽和脂肪酸うち少なくとも1種の不飽和脂肪酸を含む植物性潤滑油を用いることにより、硬質炭素被膜が形成された摺動部材の摩擦係数を低減すると共に耐摩耗性を向上させることができる。オレイン酸、リノール酸、又はリノレン酸は、不飽和の分子構造であり、かつ極性をもった分子構造であり、該分子構造が、摩擦係数の低減及び耐摩耗性を向上させる一因になると考えられる。また、植物性潤滑油、すなわち植物油を潤滑油に用いることにより、環境にやさしく、さらには、これらの植物油は安価に入手し易く経済的である。
【0026】
この植物性潤滑油としては、オリーブ油、カカオ油、ゴマ油、大豆油、とうもろこし油、ナタネ油、パーム油、ひまわり油、サフラワー油、こむぎ胚芽油、やし油、落花生油、またはアマニ油等を挙げることができ、これらの植物油を混合した混合油であってもよい。また、より好ましくは、これらの不飽和脂肪酸のうち少なくとも一種を主剤として含む、後述するオリーブ油、サフラワー油、アマニ油等である。
【0027】
また、溶液としては、例えば潤滑油基油があり、この潤滑油基油としては、特に限定されるものではなく、通常潤滑油の基油として使用されているものであれば鉱油系、合成系を問わず使用することができる。鉱油系潤滑油基油としては、例えば、原油を常圧蒸留および減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理を適宜組み合わせて精製したパラフィン系、ナフテン系などの油が使用できる。
【0028】
また、合成系潤滑油基油としては、例えば、ポリα−オレフィン(ポリブテン、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマーなど)、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(ジトリデシルグルタレート、ジ2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ2−エチルヘキシルセパケートなど)、ポリオールエステル(トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネートなど)、ポリオキシアルキレングリコール、ポリフェニルエーテル、シリコーン油、パーフルオロアルキルエーテルなどが使用できる。これらの基油は単独でも、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0029】
また、この実施の形態では、界面活性剤と油を混合してミセルを形成した溶液を凍らせることができ、耐酸化性と粘性を有し、例えば切削刃などが錆びることを防止することができる。また、本来の機能を害しない範囲において、アルコール等の有機溶剤、防腐剤、脂肪酸、防錆剤、界面活性剤、油、香料、消泡剤などを適時、用途に応じて添加しても問題ない。
【0030】
有機溶剤としては、アルコール、パークロルエチレン等があり、加工によって油脂で汚れた金属部品等を有機溶剤によって洗浄することができる。
【0031】
防腐剤としては、例えばパラペンやイソチアゾロン系化合物があり、このイソチアゾロン系化合物は水、アルコール類、グリコール類またはこれら混合溶媒との水溶性溶媒に溶解して使用することができる。イソチアゾロン系化合物の安定化方法としては種々の方法が提案され、例えば特開平05−221813号公報、特開平05−170608号公報、特開平05−286815号公報、特開平09−263504号にはイソチアゾロン系化合物の水溶液中に臭素酸または沃素酸のアルカリ金属塩を安定化剤として含有する製剤組成物が開示されており、長期間にわたって安定的に存在する効果が記載されている。また、例えば、ベンゾトリアゾールおよびベンゾチアジアゾールなどの金属腐食防止剤も用いることができる。
【0032】
脂肪酸としては、例えば、カプリン酸(C19COOH),ウンデカン酸(C1021COOH),ラウリン酸(C1123COOH),トリデシル酸(C1225COOH),ミリスチン酸(C1327COOH),ペンタデシル酸(C1429COOH),パルミチン酸(C1531COOH),マルガリン酸(C1633COOH),ステアリン酸(C1735COOH),ノナデシル酸(C1837COOH),アラキン酸(C1939COOH),カプロレイン酸(C17COOH),ウンデシレン酸(C1019COOH),リンデル酸(C1121COOH),トリデセン酸(C1223COOH),ミリストレイン酸(C1325COOH),ペンタデセン酸(C1427COOH),パルミトレイン酸(C1529COOH),オレイン酸(C1733COOH),エイコセン酸(C1937COOH)を挙げることができる。中でも、具体的には、ポリオキシエチレンモノラウレート,ポリオキシエチレンモノステアレート,ポリオキシエチレンモノオレエートが好適である。
【0033】
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、ソルビタンエステル、アルカノールアミン、アルキルアミン、および脂肪酸アミン塩などの防錆剤を用いることができる。
【0034】
界面活性剤としては、例えば、水と、炭酸塩及び炭酸水素塩から選ばれる化合物を10mmol/L以上、飽和溶解度以下と、陰イオン界面活性剤とを含有することができる。また、脱気処理された水に、炭酸塩及び炭酸水素塩から選ばれる化合物を10mmol/L以上、飽和溶解度以下、並びに陰イオン界面活性剤を臨界ミセル濃度の1/50の濃度以上、臨界ミセル濃度以下となるように溶解させてもよく、臨界ミセル濃度は20℃で1013.25hPaの空気と平衡状態にあるイオン交換水を用いて測定するものとする。また、例えば、ノニオン系、アニオン系、およびカチオン系界面活性剤を用いることができる。
【0035】
油としては、例えば、鉱物油が主に使用されるが、耐熱性を始めとする諸性能が乏しいため最近では基本要求特性が厳しい用途においては、目的に適した分子設計が可能な合成炭化水素や有機酸エステル類等の合成潤滑油が主に用いられる。なかでも、有機酸エステルとしては、脂肪族モノカルボン酸と一価アルコールの反応から得られるモノエステル、脂肪族二塩基酸と一価アルコールの反応から得られるジエステル、多価アルコールと脂肪族カルボン酸との反応から得られるエステル、及び多価アルコール、多塩基酸、脂肪族モノカルボン酸(及び/又は脂肪族一価アルコール)との反応から得られる複合エステル等がある。
【0036】
香料としては、例えば、有用な香料成分の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。7−アセチル−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロ−1,1,6,7−テトラメチルナフタレン、イオノンメチル、イオノンγメチル、メチルセドリロン、メチルジヒドロジャスモネート、メチル1,6,10−トリメチル−2,5,9−シクロドデカトリエン−1−イルケトン、7−アセチル−1,1,3,4,4,6−ヘキサメチルテトラリン、4−アセチル−6−tert−ブチル−1,1−ジメチルインダン、パラ−ヒドロキシ−フェニル−ブタノン、ベンゾフェノン、メチル−β−ナフチルケトン、6−アセチル−1,1,2,3,3,5−ヘキサメチルインダン、5−アセチル−3−イソプロピル−1,1,2,6−テトラメチルインダン、1−ドデカナル、4−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボキサルデヒド、7−ヒドロキシ−3,7−ジメチルオクタナル、10−ウンデセン−1−アル、イソ−ヘキセニルシクロヘキシルカルボキサルデヒド、ホルミルトリシクロデカン、ヒドロキシシトロネラルとメチルアントラニレートの縮合生成物、ヒドロキシシトロネラルとインドールの縮合生成物、フェニルアセトアルデヒドとインドールの縮合生成物、2−メチル−3−(パラ−tert−ブチルフェニル)−プロピオンアルデヒド、エチルバニリン、ヘリオトロピン、ヘキシル桂皮アルデヒド、アミル桂皮アルデヒド、2−メチル−2−(パラ−イソ−プロピルフェニル)−プロピオンアルデヒド、クマリン、デカラクトンγ、シクロペンタデカノリド、16−ヒドロキシ−9−ヘキサデセン酸ラクトン、1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−4,6,6,7,8,8−ヘキサメチルシクロペンタ−γ−2−ベンゾピラン、β−ナフトールメチルエーテル、アンブロキサン、ドデカヒドロ−3a,6,6,9a−テトラメチル−ナフト[2,1b]フラン、セドロール、5−(2,2,3−トリメチルシクロペント−3−エニル)−3−メチルペンタン−2−オール、2−エチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール、カリオフィレンアルコール、トリシクロデセニルプロピオネート、トリシクロデセニルアセテート、ベンジルサリチレート、セドリルアセテートおよびパラ−(tert−ブチル)シクロヘキシルアセテート。特に好ましい香料物質は、セルラーゼを含有する完成品組成物中に最大臭い改良を提供するものである。これらの香料としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。ヘキシル桂皮アルデヒド、2−メチル−3−(パラ−tert−ブチルフェニル)−プロピオンアルデヒド、7−アセチル−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロ−1,1,6,7−テトラメチルナフタレン、ベンジルサリチレート、7−アセチル−1,1,3,4,4,6−ヘキサメチルテトラリン、パラ−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、メチルジヒドロジャスモネート、β−ナフトールメチルエーテル、メチルβ−ナフチルケトン、2−メチル−2−(パラ−イソ−プロピルフェニル)−プロピオンアルデヒド、1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−4,6,6,7,8,8−ヘキサメチル−シクロペンタ−γ−2−ベンゾピラン、ドデカヒドロ−3a,6,6,9a−テトラメチルナフト[2,1b]フラン、アニスアルデヒド、クマリン、セドロール、バニリン、シクロペンタデカノリド、トリシクロデセニルアセテートおよびトリシクロデセニルプロピオネート。その他の香料物質としては、種々の供給源からの精油、レジノイドおよび樹脂が挙げられ、その例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。ペルーバルサム、乳香レジノイド、エゴノキ、ラブダナム樹脂、ナツメグ、カッシア油、安息香樹脂、コリアンダーおよびラバンジン。さらにその他の香料化学物質としては、フェニルエチルアルコール、テルピネオール、リナロール、リナリルアセテート、ゲラニオール、ネロール、2−(1,1−ジメチルエチル)−シクロヘキサノールアセテート、ベンジルアセテートおよびオイゲノールが挙げられる。ジエチルフタレートのような担体は、完成香料組成物中に用いられ得る。
【0037】
消泡剤としては、例えば、ポリオルガノシロキサンなどの消泡剤を用いることができる。
【0038】
この実施の形態の冷凍工程Aでは、例えば、混合装置1と冷凍装置2とを備える。この混合装置1では、常温で界面活性剤と油を混合してミセルを形成した溶液を得る。冷凍装置2は、混合装置1で得た溶液を凍らせる。溶液は、水を主成分とする。また、混合装置1は用いないで、冷凍装置2によって常温で溶液を凍らせてもよい。
【0039】
混合装置1は、図2に示すように、混合槽1aに混合羽根1bを備え、この混合槽1aに、例えば、油と、界面活性剤などの混合剤を供給して、混合羽根1bを所定の速度で回転させて混合する。
【0040】
混合した溶液は、冷凍装置2に送られる。冷凍装置において、例えば、蒸発器で気化した冷媒が、凝縮に十分な圧力にまで圧縮機によって圧縮される。この圧縮され高温高圧ガスとされた冷媒は、凝縮器にて冷却されて液化され、再び蒸発器へ供給される。凝縮器にはファンが設けられ、このファンによって冷媒ガスが通される冷却管の表面へ送風することにより、冷媒ガスの冷却が行われる。ここで、冷却管に水を散布し冷却管の表面を潤して、ファンによる送風を行うことにより冷却効率が向上することが知られている。
【0041】
この蒸発式凝縮器を用いた冷凍装置における冷凍サイクルの概略の構成を、図3に示す。この装置の冷凍サイクルは、蒸発器42、圧縮機44、凝縮器46を含み、互いが配管48によって接続され、この配管48の中を冷媒が流通する。凝縮器46に送風するファンとして室外ファン50が、また蒸発器42に送風するファンとして室内ファン52が設けられている。また、凝縮器46の近傍には、外気温度を検出する温度センサ54が設けられる。凝縮器46に向けて散水器56が設けられ、この散水器56は、電磁弁58及び給水管60を介して脱気装置に接続される。電磁弁58は温度センサ54の出力に応じて開閉される。
【0042】
この装置では、凝縮器46に高温高圧の冷媒ガスを導き、室外ファン50を運転して凝縮器46に送風する。送風された空気は凝縮器46における放熱を促進し、その凝縮器46内において冷媒ガスは熱を奪われ凝縮する。温度センサ54は外気温度を検出し、設定温度以上となると電磁弁58を開き、散水器56から凝縮器46の表面に溶液が散布される。これにより、室外ファン50のみの場合よりも凝縮器46における放熱が更に促進され、外気温度が高い場合において室外ファン54の消費電力の増大を抑制しつつ、冷凍装置の冷却効率の低下を防止することができる。
【0043】
溶液は、例えば、アルコール等の有機溶剤、防腐剤、脂肪酸、防錆剤、界面活性剤、油、香料、消泡剤などを適時、用途に応じて添加してもよいが、この場合には添加剤や、その添加量によって冷凍温度が変化する。例えば、アルコールを80%程度水に添加すると、凝固点はマイナス55℃以下になり、100%アルコールでは、凝固点はマイナス114.5℃であり、有機溶剤等を添加しますと、凝固点が降下して、0℃以下にしないと冷凍することができない。
(粉砕工程B)
この実施の形態の凍らせた溶液を粉砕し、半液状体または液状体にする粉砕工程Cでは、例えば、電動ミル、ブレンダーミル、ミル、ブレンダー、ミキサーなどを用いて粉砕することができる。粉砕装置は、例えば、図4に示すように、ボトル70内に、その下部にてモータ71を配置し、このモータ71によってカッター72を回転し、冷凍した溶液を粉砕する。冷凍した溶液は、押圧板73によって押されてカッター72により粉砕され、簡単に均一な大きさに粉砕されてボトル70内に落下する。
【0044】
凍らせた溶液を粉砕し、半液状体または液状体にし、半液体の粘度は、2cPから1000cPであり、好ましくは5cPから200cPであり、液状体の粘度は、1cPから500cPであり、好ましくは1.5cPから80cPであり、さらに好ましくは2cPから40cPであり、このような適正な粘性であり、例えば切削刃にまとわりつき潤滑の効果がある。
【0045】
この実施の形態の加工用潤滑剤の製造方法は、常温で溶液を凍らせる冷凍工程Aと、次いで、凍らせた溶液を粉砕し、半液状体または液状体にする粉砕工程Bとを有し、半液状体または液状体にした加工用潤滑剤を製造する。
【0046】
(加工方法)
この実施の形態の加工方法は、図5に示すように、貯留槽100に貯留された半液状体または液状体を駆動ポンプ101によって加工装置102に供給する。加工装置102では、モータ103によってドリル104を回転して加工するが、このドリル104の刃に半液状体または液状体を供給して非工作物105を加工する。この半液状体または液状体の加工用潤滑剤は、半液状体または液状体とすることで粘性を有し、切削や研削に必要な特性を有する加工用潤滑として使用することができ、環境、安全性、熱伝導などに優れる。
【実施例1】
【0047】
リノール酸をマイナス50℃(凝固点はマイナス12℃)で凍らせ、ブレンダーで3分間粉砕した。これを加工用潤滑剤として使用した。この加工用潤滑剤の粘度と耐酸化性を測定した。粘度は、振動式粘度計を用いて測定した。耐酸化性は、直径5ミルのドリルで剛材を切削する際の剛材の変色で確認した。この加工用潤滑剤では、剛材、ドリル刃ともに大きな変色は認められなかった。5分間の切削においても、発煙等なく、安全性が向上した。当初の粘度は、2.2cPであったが、実施例1の加工用潤滑剤によって6.8cPになった。
【実施例2】
【0048】
リノール酸1に対して水を1加え、アニオン性界面活性剤を添加し、エマルジョンタイプの潤滑剤を調合した。この液体をマイナス80℃で凍らせ、ブレンダーで4分間粉砕した。これを加工用潤滑剤として使用した。この加工用潤滑剤の粘度と耐酸化性を測定した。粘度は、振動式粘度計を用いて測定した。耐酸化性は、直径5ミルのドリルで剛材を切削する際の剛材の変色で確認した。この加工用潤滑剤では、剛材、ドリル刃ともに大きな変色は認められなかった。5分間の切削においても、発煙等なく、安全性が向上した。当初粘度は、1.7cPであったが、実施例2の加工用潤滑剤によって3.2cPになった。
【比較例】
【0049】
実施例1において、リノール酸をそのまま潤滑油として使用して同様に加工した。1分間の切削で発煙し始めた。発煙を防止するため、大量のリノール酸を流さないと使用できなかった。実施例2において、リノール酸1に対して水を1加えそのまま潤滑油として使用して同様に加工したところ、同様に発煙を防止するため、大量の潤滑油を流さないと使用できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
この発明は、例えば、機械加工に用いる加工用潤滑剤および加工方法に適用可能であり、切削や研削に必要な特性を有する加工用潤滑として使用することができ、環境、安全性などに優れる。
【符号の説明】
【0051】
A 冷凍工程
B 粉砕工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温で液体である溶液を凍らせ、
次いで、前記凍らせた溶液を粉砕し、半液状体または液状体にしたことを特徴とする加工用潤滑剤。
【請求項2】
前記溶液は、水を主成分とすることを特徴とする請求項1に記載の加工用潤滑剤。
【請求項3】
前記溶液は、界面活性剤と油を混合してミセルを形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の加工用潤滑剤。
【請求項4】
前記半液状体の粘度が、2cPから1000cPであり、
前記液状体の粘度が、1cPから500cPであることを特徴とする請求項1に記載の加工用潤滑剤。
【請求項5】
常温で溶液を凍らせる冷凍工程と、
次いで、前記凍らせた溶液を粉砕し、半液状体または液状体にする粉砕工程とを有することを特徴とする加工用潤滑剤の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の加工用潤滑剤として使用することを特徴とする加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−222481(P2010−222481A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71910(P2009−71910)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【出願人】(501141769)株式会社industria (29)
【Fターム(参考)】