説明

加工装置及び加工方法

【課題】被加工物に加工力を付与するための加工力付与部材と動力発生部材とのレイアウトスペースを狭くしてコンパクトにまとめることができるようにする。
【解決手段】被加工物に外力を与えて所定形状となるように加工する加工装置1において、被加工物に接触して外力を与えるためのパンチ21、31と、パンチ21、31を被加工物に押し付けるためのバッグ23、33とを備え、バッグ23、33は、流体の給排が可能な袋状に形成され、流体の供給による膨張力によってパンチ23、33を被加工物に押し付けるように駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば金属板等を加工する際に用いられる加工装置及び加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、自動車用ドアの製造現場では2枚の金属板をヘミング加工装置を用いて接合することが行われている。この加工装置は、ドアの外周部をヘミング加工することができるとともに、ウインド開口部もヘミング加工することができるようになっている。加工装置には、ウインド開口部を構成するサッシュの上部を加工するための上部加工用パンチ、サッシュの車両前部を加工するための前部加工用パンチ、サッシュの車両後部を加工するための後部加工用パンチが設けられ、これらパンチは、サッシュの内側に配置されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−51971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ウインド開口部の大きさは車両のデザイン上、決定されている。特許文献1の加工装置のように複数のパンチをウインド開口部の内側に配置しなければならない場合には、それらパンチを配設するためのスペースの確保が問題となる。さらに、パンチを駆動するための駆動装置も配置しなければならないので、スペースの確保はより一層困難なものとなる。
【0005】
また、ドアのウインド開口部以外にも、被加工物を加工する場合に、成形型及びその駆動装置をコンパクトにまとめたいという要求がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、被加工物に加工力を付与するための加工力付与部材と動力発生部材とのレイアウトスペースを狭くしてコンパクトにまとめることができるようにすることで、様々な被加工物を加工できるようにして加工装置の適用範囲を拡大することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明では、動力発生部材を袋状にし、流体の供給による膨張力によって加工力付与部材を被加工物に押し付けて加工を行うようにした。
【0008】
第1の発明は、被加工物に外力を与えて所定形状となるように加工する加工装置において、上記被加工物に接触して外力を与えるための加工力付与部材と、上記加工力付与部材を被加工物に押し付けるための動力発生部材とを備え、上記動力発生部材は、流体の給排が可能な袋状に形成され、流体の供給による膨張力によって上記加工力付与部材を被加工物に押し付けるように駆動することを特徴とするものである。
【0009】
この構成によれば、動力発生部材が袋状であるため、流体を排出した状態では小さくなり、狭い所に容易に配設することが可能になる。これにより、加工力付与部材と動力発生部材とのレイアウトスペースが小さくて済む。
【0010】
また、動力発生部材に流体を供給して膨張させることによって加工力付与部材を被加工物に押し付け、これにより、被加工物に外力を与えて所定形状となるように加工することが可能になる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、第1加工力付与部材と、第2加工力付与部材とを備え、動力発生部材は、上記第1加工力付与部材と上記第2加工力付与部材との間に配置されていることを特徴とするものである。
【0012】
この構成によれば、動力発生部材に流体を供給することで、第1加工力付与部材と第2加工力付与部材との間で動力発生部材が膨張して第1及び第2加工力付与部材が駆動されることになる。これにより、例えば1つの動力発生部材を用いて第1加工力付与部材と第2加工力付与部材との両方を被加工物に押し付けることが可能になる。
【0013】
第3の発明は、第1または2の発明において、被加工物に第1曲げ加工と、第1曲げ加工後に最終形状とする第2曲げ加工とを行うように構成され、加工力付与部材及び動力発生部材は、少なくとも第1曲げ加工を行うものであることを特徴とするものである。
【0014】
この構成によれば、被加工物が第1曲げ加工された後、第2曲げ加工されて最終形状となる。つまり、第1曲げ加工時には、最終形状となる前までの加工を行えばよいので、比較的小さな力で加工が行える。従って、動力発生部材の膨張力が小さくて済み、動力発生部材にかかる負荷が小さくなる。
【0015】
第4の発明は、第1から3のいずれか1つの発明において、加工力付与部材は、自動車のウインド開口部を構成する部材にヘミング加工のための折り曲げ力を作用させるものであり、上記加工力付与部材及び動力発生部材は、ウインド開口部の内側に配置されるものであることを特徴とするものである。
【0016】
この構成によれば、車両のデザインにより定まるウインド開口部をヘミング加工する場合に、加工力付与部材及び動力発生部材をコンパクトにまとめてウインド開口部の内側に配置することが可能になる。
【0017】
第5の発明は、上記被加工物に接触して外力を与えるための加工力付与部材と、上記加工力付与部材を被加工物に押し付けるための袋状の動力発生部材とを用意し、上記動力発生部材に流体を供給して膨張させ、該動力発生部材の膨張力によって上記加工力付与部材を被加工物に押し付けることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
第1、5の発明によれば、動力発生部材を流体の給排が可能な袋状に形成し、流体の供給による膨張力によって加工力付与部材を被加工物に押し付けるようにしたので、加工力付与部材と動力発生部材とをコンパクトにまとめることができる。これにより、様々な被加工物を加工できるようになるので、加工装置の適用範囲を拡大できる。
【0019】
第2の発明によれば、第1加工力付与部材と第2加工力付与部材との間に動力発生部材を配置したので、1つの動力発生部材を用いて複数の加工力付与部材を動かすことができる。これにより、より一層コンパクトにまとめることができる。
【0020】
第3の発明によれば、被加工物を最終形状となる前まで加工する第1曲げ加工を動力発生部材を用いて行うようにしたので、動力発生部材にかかる負荷を小さくでき、動力発生部材を安価な構造で得ることができる。
【0021】
第4の発明によれば、自動車のウインド開口部をヘミング加工する場合に加工力付与部材及び動力発生部材をウインド開口部の内側に配置するようにしたので、加工力付与部材及び動力発生部材をコンパクトにまとめることができるという本発明の効果がより顕著なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態1にかかる加工装置の断面図である。
【図2】ドアの側面図である。
【図3】加工装置のブロック図である。
【図4】ドアをアンビルに載置した状態の図1相当図である。
【図5】予備曲げ加工が終了した状態の図1相当図である。
【図6】本曲げ加工が終了した状態の図1相当図である。
【図7】実施形態2にかかる図1相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0024】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1にかかる加工装置1を示すものである。この加工装置1は、自動車用ドア100(図2に示す)の製造現場においてヘミング加工を行うためのものである。ドア100は、自動車の側部に設けられるものであり、ドア100の略下半部を構成するドア本体101と、略上半部を構成するサッシュ102とを備えている。図4に示すように、ドア本体101は、鋼板からなるインナパネル103とアウタパネル(被加工物)104とが組み合わされて構成されている。アウタパネル104の上側の裏面には、鋼板からなるベルトラインレインフォースメント105が設けられている。ベルトラインレインフォースメント105は、アウタパネル104に重ね合わされている。図6に示すように、アウタパネル104の上縁部はヘミング加工されており、このヘミング加工によってベルトラインレインフォースメント105とアウタパネル104とが接合されている。図4に示すように、アウタパネル104のヘミング加工される部分が被加工部104aである。この被加工部104aは、本加工装置1で加工される前は、同図に示すようにインナパネル103側へ延びるように予め成形されており、本加工装置1によって図6に示すように最終的にベルトラインレインフォースメント105に沿う形状となるまで折り曲げられる。ウインド開口部は、サッシュ102の内周部及びベルトライン部で構成されている。
【0025】
また、図4に示すように、サッシュ102は、アウタ部材110と、インナ部材111と、チャンネル部材112とを備えている。インナ部材111の上部とアウタ部材110の上部とは重ね合わされている。図示しないが、アウタ部材110の上縁部はヘミング加工によってインナ部材111に接合されている。また、アウタ部材110の下部とチャンネル部材112とが接合されている。さらに、チャンネル部材112とアウタ部材110の下部とは重ね合わされている。アウタ部材110の上縁部はヘミング加工によってインナ部材111に接合されている。
【0026】
アウタ部材110のヘミング加工される部分が被加工部110aである。この被加工部110aは、本加工装置1で加工される前は、図4に示すようにインナ部材111側へ延びるように予め成形されており、本加工装置1によって図6に示すように最終的にチャンネル部材112の側部に沿う形状となるまで折り曲げられる。
【0027】
上記加工装置1は、図1に示すように、基台10と、ドア本体側加工部11と、サッシュ側加工部12と、制御装置14(図3に示す)とを備えている。ドア本体側加工部11は、ドア本体101のベルトライン部の被加工部104a(図4に示す)を加工するためのものである。サッシュ側加工部12は、サッシュ102の上縁部の被加工部110a(図4に示す)を加工するためのものである。制御装置14は、ドア本体側加工部11及びサッシュ側加工部12を制御するためのものであり、周知のマイクロコンピュータで構成されている。
【0028】
図1に示すように、ドア本体側加工部11は、ドア本体用アンビル20と、ドア本体用パンチ(加工力付与部材)21、ドア本体用パンチ21を支持するドア本体側支持機構22と、ドア本体用パンチ21を駆動するドア本体側バッグ(動力発生部材)23及びドア本体側油圧シリンダ24とを備えている。
【0029】
サッシュ側加工部12は、サッシュ用アンビル30と、サッシュ用パンチ31、サッシュ用パンチ31を支持するサッシュ側支持機構32と、サッシュ用パンチ31を駆動するサッシュ側バッグ33及びサッシュ側油圧シリンダ34とを備えている。
【0030】
ドア本体用アンビル20は基台10の上面に固定されている。図4に示すように、アウタパネル104の上側は、ドア本体用アンビル20の上面に載置されて下方から支持されるようになっている。
【0031】
ドア本体側支持機構22は、ドア本体用パンチ21を鉛直方向及び水平方向に移動可能に支持するものである。すなわち、ドア本体側支持機構22は、スライド部材22aと、スライド部材22aを水平方向に案内する案内レール22bと、案内レール22bを基台10に固定する固定部材22cと、スライド部材22aを水平方向に付勢するスプリング22dと、ドア本体用パンチ21をスライド部材22aに対してフローティングさせるためのフローティング用スプリング22eとを備えている。
【0032】
案内レール22bは、スライド部材22aを図1の左右方向にのみ案内するように配置されている。上記スプリング22dは、スライド部材22aの側面とドア本体用アンビル20の側面との間において、伸縮方向が案内レール22bの案内方向(図1左右方向)と一致するように配置され、スライド部材22aをドア本体用アンビル20から離れる方向(図1の右方向)に付勢している。
【0033】
上記フローティング用スプリング22eは、スライド部材22aの上面とドア本体用パンチ21の下面との間において、伸縮方向が上下方向となるように配置され、ドア本体用パンチ21をスライド部材22aから離れる方向(上方)に付勢している。フローティング用スプリング22eの付勢力は、外力が作用しない状態でドア本体用パンチ21がスライド部材22aから浮き上がったまま保持できるように設定されている。
【0034】
ドア本体側油圧シリンダ24は、ストローク量が数十mm程度の短ストローク型のシリンダ装置である。ドア本体側油圧シリンダ24のシリンダ部24aは、ロッド24bの伸縮方向が上下方向となるように基台10に対して取り付けられている。
【0035】
ロッド24bは、スライド部材22a及びドア本体用パンチ21を上下方向に貫通している。このロッド24bにより、スライド部材22a及びドア本体用パンチ21が連結されており、スライド部材22a及びドア本体用パンチ21は一体に左右方向に移動する一方、ドア本体用パンチ21はロッド24bの軸方向に沿ってスライド部材22aに対し接離する方向に移動する。
【0036】
ロッド24bの上端部は、ドア本体用パンチ21の上方に位置している。ロッド24bの上端部には、ドア本体用パンチ21の上面に係合する係合部24cがロッド24bの径方向に突出するように設けられている。
【0037】
ドア本体側油圧シリンダ24には、油圧配管47が接続されている。油圧配管47には、油圧ポンプ48が接続されている。油圧配管47には、油圧制御弁45が設けられている。油圧制御弁45は、制御装置14から出力される電気信号を受けて動作するようになっており、油圧配管47を開閉するように構成されている。
【0038】
ドア本体側油圧シリンダ24のロッド24bが縮むと、係合部24cがドア本体用パンチ21の上面に係合し、ドア本体用パンチ21がフローティング用スプリング22eの付勢力に抗して下方へ移動することになる。
【0039】
ベルトライン側に位置するドア本体側バッグ23は、ドア本体用パンチ21を移動させて被加工部104a(図4に示す)に押し付けるための動力発生部材である。ドア本体側バッグ23は、圧縮空気の給排が可能な袋状に形成されており、圧縮空気が供給されると図5に示すように膨張し、この膨張力によってドア本体用パンチ21を被加工部104aに押し付けるように駆動する。供給する圧縮空気の圧力によってドア本体側バッグ23の膨張力を任意に調整できる。
【0040】
ドア本体側バッグ23は、高い気密性を有するとともに柔軟性も有するシート状の部材を多数積層して構成されており、内部に圧縮空気が充填されても破裂しないようにケブラー繊維等の補強材で補強されている。ドア本体側バッグ23から空気を排出すると厚みが約10mm〜20mm程度となる。一方、ドア本体側バッグ23に圧縮空気を供給すると厚みが約70mm〜90mm程度となる。尚、この数値は例示であり、任意の形状のバッグとすることができる。
【0041】
基台10の上面には、ドア本体側バッグ23を受けるバッグ受け部材10aが固定されている。このバッグ受け部材10aにおけるスライド部材22aと対向する面10bは、案内レール22bの案内方向と略直交する方向に延びている。ドア本体側バッグ23は、バッグ受け部材10aの面10bとスライド部材22aとの間に配置されている。
【0042】
ドア本体側バッグ23は圧縮空気を排出した状態では上記したように薄くなるので、バッグ受け部材10aとスライド部材22aとの間が狭くても容易に配置することが可能である。これにより、ドア本体側加工部11がコンパクトにまとまる。
【0043】
ドア本体側バッグ23には、圧縮空気の給排管40が接続されており、この給排管40を介してドア本体側バッグ23内に圧縮空気が供給され、また、ドア本体側バッグ23内に供給された空気が排出されるようになっている。
【0044】
給排管40には、圧縮空気を供給するポンプ43が接続されている。給排管40のドア本体側バッグ23とポンプ43との間には、空気圧制御弁42が設けられている。空気圧制御弁42は、制御装置14から出力される電気信号を受けて動作するようになっており、給排管40を開いてポンプ43側と連通させる連通状態と、給排管40のドア本体側バッグ23側を大気に開放する開放状態とに切り替えるように構成されている。
【0045】
尚、給排管40には、ポンプ43以外にも圧縮空気が充填されたボンベ(図示せず)を接続するようにしてもよい。
【0046】
従って、空気圧制御弁42が連通状態になるとポンプ43により圧縮された空気が給排管40を流通してドア本体側バッグ23に流入する。一方、空気圧制御弁42が開放状態になるとドア本体側バッグ23内の空気が流出することになる。
【0047】
サッシュ側加工部12は、基本的にはドア本体側加工部11と同一構造である。すなわち、サッシュ側支持機構32は、スライド部材32aと、スライド部材32aを斜め方向に案内する案内レール32bと、案内レール32bを基台10に固定する固定部材32cと、スライド部材32aを斜め方向に付勢するスプリング32dと、サッシュ用パンチ31をスライド部材32aに対してフローティングさせるためのフローティング用スプリング32eとを備えている。
【0048】
案内レール32bは、スライド部材32aを加工装置1の右側へ向かって上昇する方向に案内するように配置されている。上記スプリング32dは、スライド部材32aの側面とサッシュ用アンビル30の側面との間において、伸縮方向が案内レール32bの案内方向と一致するように配置され、スライド部材32aをサッシュ用アンビル30から離れる方向に付勢している。
【0049】
上記フローティング用スプリング32eは、スライド部材32aの上面とサッシュ用パンチ31の下面との間において、伸縮方向が上下方向となるように配置され、サッシュ用パンチ31をスライド部材32aから離れる方向(左斜め上方)に付勢している。
【0050】
サッシュ側油圧シリンダ34のシリンダ部34aは、ロッド34bの伸縮方向が斜め上下方向となるように基台10に対して取り付けられている。サッシュ側油圧シリンダ34には、油圧配管49が接続されている。油圧配管49は、上記油圧配管47に接続されている。
【0051】
ロッド34bの上端部は、サッシュ用パンチ31の上方に位置している。ロッド34bの上端部には、サッシュ用パンチ31の上面に係合する係合部34cが設けられている。
【0052】
従って、サッシュ側油圧シリンダ34のロッド34bが縮むと、係合部34cがサッシュ用パンチ31の上面に係合し、サッシュ用パンチ31がフローティング用スプリング32eの付勢力に抗して下方へ移動することになる。
【0053】
サッシュ側バッグ33は、サッシュ用パンチ31を移動させて被加工部110a(図4に示す)に押し付けるための動力発生部材である。サッシュ側バッグ33は、膨張力によってサッシュ用パンチ31を被加工部110aに押し付けるように駆動する。
【0054】
バッグ受け部材10aにおけるスライド部材32aと対向する面10cは、案内レール32bの案内方向と略直交する方向に延びている。すなわち、面10cは、上に行くほど加工装置1の左側に位置するように傾斜している。サッシュ側バッグ33は、バッグ受け部材10aの面10cとスライド部材32aとの間に配置されている。
【0055】
サッシュ側バッグ33は圧縮空気を排出した状態では上記したように薄くなるので、バッグ受け部材10aとスライド部材32aとの間が狭くても容易に配置することが可能である。これにより、サッシュ側加工部12がコンパクトにまとまる。
【0056】
サッシュ側バッグ33には、圧縮空気の給排管41が接続されており、この給排管41を介してサッシュ側バッグ33内に圧縮空気が供給され、また、サッシュ側バッグ33内に供給された空気が排出されるようになっている。
【0057】
給排管41は、上記給排管40と接続されており、共通の空気圧制御弁42により連通状態と、開放状態とに切り替えられる。
【0058】
図3に示すように、制御装置14には、加工を開始する際に作業者が操作するスタートボタン59が接続されている。制御装置14は、スタートボタン59が押されたことを検出すると、まず、空気圧制御弁42を連通状態にし、その連通状態を保ったまま、ロッド24b、34bが縮むように油圧制御弁45を制御し、その後、ロッド24b、34bが伸びるように油圧制御弁45を制御した後、空気圧制御弁42を開放状態にするように構成されている。
【0059】
次に、上記のように構成された加工装置1を用いてドア100を加工する方法について説明する。ドア100は、ドア本体101とサッシュ102とが一体化された状態で搬送され、図4に示すように、加工装置1のドア本体用アンビル20及びサッシュ用アンビル30上に載置される。載置されたドア100は、図示しない固定装置によってアンビル20、30上で固定される。
【0060】
スタートボタン59が押されると、制御装置14は、空気圧制御弁42を連通状態にする。すると、ポンプ43から送られた圧縮空気が給排管40、41を流通してドア本体側バッグ23及びサッシュ側バッグ33に流入する。
【0061】
圧縮空気が流入したドア本体側バッグ23はバッグ受け部材10aの面10bとスライド部材22aとの間で膨張する。ドア本体側バッグ23が膨張すると、バッグ受け部材10aが基台10に固定されていて動かないので、ドア本体側バッグ23の膨張力によってスライド部材22aが図1の左側へ押される。スライド部材22aが押されると、スプリング22dの付勢力に抗して案内レール22bによって左側へ案内されながら移動し、これにより、ドア本体用パンチ21がスライド部材22aと共に左側へ移動する。すなわち、ドア本体用パンチ21及びスライド部材22aには、ロッド24bが挿通する貫通孔(図示せず)が形成されている。この貫通孔は、ドア本体用パンチ21及びスライド部材22aの左側への移動を許容するような形状とされている。
【0062】
ドア本体用パンチ21が左側へ移動すると、図5に示すように、ドア本体用パンチ21の左端部がアウタパネル104の被加工部104aを左側へ押していき、これにより被加工部104aに外力が付与されて折れ曲がる。ドア本体用パンチ21の下面の左部分が被加工部104aの真上に位置するまでドア本体用パンチ21が移動するように、ドア本体用パンチ21のストローク量が設定されている。
【0063】
圧縮空気の圧力は、アウタパネル104の被加工部104aを予備曲げできる程度にドア本体側バッグ23が膨張するように設定されている。また、この圧力に十分に耐え得るようにドア本体側バッグ23の強度が設定されている。
【0064】
また、サッシュ側バッグ33は、バッグ受け部材10aの面10cとスライド部材32aとの間で膨張する。サッシュ側バッグ33が膨張すると、バッグ受け部材10aが基台10に固定されていて動かないので、サッシュ側バッグ33の膨張力によってスライド部材32aが図1の右斜め上側へ押される。スライド部材32aが押されると、案内レール32bによって右斜め上側へ案内され、これにより、サッシュ用パンチ31がスライド部材32aと共に移動する。すなわち、サッシュ用パンチ31及びスライド部材32aには、ロッド34bが挿通する貫通孔(図示せず)が形成されている。この貫通孔は、サッシュ用パンチ31及びスライド部材32aの右側への移動を許容するような形状とされている。
【0065】
サッシュ用パンチ31が右斜め上側へ移動すると、サッシュ用パンチ31の右端部がアウタ部材110の被加工部110aを右側へ押していき、これにより被加工部110aに外力が付与されて折れ曲がる。サッシュ用パンチ31の下面の右部分が被加工部110aの真上に位置するまでサッシュ用パンチ31が移動するようにサッシュ用パンチ31のストローク量が設定されている。以上がヘミング加工における予備曲げ加工(第1曲げ加工)である。
【0066】
ドア本体側バッグ23及びサッシュ側バッグ33には圧縮空気が略同時に供給されるので、ドア本体用パンチ21及びサッシュ用パンチ31が略同時に移動し、被加工部104a、110aが略同時に予備曲げ加工される。
【0067】
その後、制御装置14は油圧制御弁45を制御してドア本体側油圧シリンダ24及びサッシュ側油圧シリンダ34のロッド24b、34bを縮める。図6に示すように、ロッド24bが縮むと、係合部24cがドア本体用パンチ21の上面に係合してドア本体用パンチ21を下方に移動させる。すると、ドア本体用パンチ21の下面の左部分が被加工部104aを下方へ押し、被加工部104aが最終形状となり、ベルトラインレインフォースメント105がアウタパネル104で挟持される。
【0068】
また、ロッド34bが縮むと、係合部34cがサッシュ用パンチ31の上面に係合してサッシュ用パンチ31を下方に移動させる。すると、サッシュ用パンチ31の下面の右部分が被加工部110aを下方へ押し、被加工部110aが最終形状となり、チャンネル部材112がアウタ部材110で挟持される。以上が本曲げ加工(第2曲げ加工)である。
【0069】
その後、制御装置14が油圧制御弁45を制御してドア本体側油圧シリンダ24及びサッシュ側油圧シリンダ34のロッド24b、34bを伸ばすと、図1に示すようにドア本体用パンチ21及びサッシュ用パンチ31はフローティング用スプリング22e、32eにより上方へ移動する。
【0070】
次いで、制御装置14が空気圧制御弁42を開放状態にすると、図1に示すようにスプリング22d、32dの付勢力によりドア本体側バッグ23及びサッシュ側バッグ33が押し潰されていき、ドア本体側バッグ23及びサッシュ側バッグ33内の空気が排出される。従って、ドア本体側バッグ23及びサッシュ側バッグ33内の空気を吸引する装置は不要である。
【0071】
尚、フローティング用スプリング22e、32e及びスプリング22d、32dは、コイルスプリングの他に、例えばガススプリング等を用いることもできる。
【0072】
以上説明したように、この実施形態1にかかる加工装置1及び加工方法によれば、圧縮空気の給排が可能なドア本体側バッグ23及びサッシュ側バッグ33を用いてパンチ21、31を被加工部104a、110aに押し付けるようにしたので、コンパクトにまとめることができる。
【0073】
また、最終形状となる前まで加工する予備曲げ加工を、ドア本体側バッグ23及びサッシュ側バッグ33を用いて行うようにしている。予備曲げ加工は、本曲げ加工に比べて小さな力で可能であり、従って、ドア本体側バッグ23及びサッシュ側バッグ33にかかる負荷を小さくできる。これにより、ドア本体側バッグ23及びサッシュ側バッグ33を安価な構造で得ることができる。
【0074】
尚、上記実施形態1では、ドア本体用パンチ21を1つのドア本体側バッグ23で駆動するようにしているが、これに限らず、複数のドア本体側バッグ23で駆動するようにしてもよい。この場合、ドア本体側バッグ23をその厚み方向に複数個重ねて配置する、いわゆる直列配置にしてもよいし、ドア本体側バッグ23をその幅方向に複数個並べて配置する、いわゆる並列配置にしてもよい。直列配置することでストローク量を大きくすることができ、また、並列配置することでバッグ23の1つ当たりの負担が軽減される。サッシュ用パンチ31についても同様である。
【0075】
(実施形態2)
図7は、本発明の実施形態2にかかる加工装置1を示すものである。実施形態2の加工装置1は、1つのバッグ25によりドア本体用パンチ(第1加工力付与部材)21及びサッシュ用パンチ(第2加工力付与部材)31を駆動するようにした点で実施形態1のものと異なっており、他の部分は実施形態1と同様であるため、以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0076】
すなわち、実施形態2では、実施形態1に比べてドア本体用パンチ21及びサッシュ用パンチ31が互いに接近している。これはサッシュ102の開口が小さいドア100を製造できるようにするためである。ドア本体用パンチ21及びサッシュ用パンチ31を接近させたことに対応してスライド部材22a、32aも接近している。
【0077】
バッグ25は、スライド部材22aとスライド部材32aとの間に配置されている。バッグ25には、給排管44が接続されている。
【0078】
この加工装置1では、バッグ25に圧縮空気を供給するとバッグ25がスライド部材22aとスライド部材32aとの間で膨張する。バッグ25が膨張すると、スライド部材22aが左側に移動するとともに、スライド部材22aが右側に移動する。
【0079】
これにより、ドア本体用パンチ21及びサッシュ用パンチ31により予備曲げ加工が行われる。その後、実施形態1と同様にして本曲げ加工が行われる。
【0080】
以上説明したように、この実施形態2にかかる加工装置1及び加工方法によれば、実施形態1と同様に、圧縮空気の給排が可能なバッグ25を用いてドア本体用パンチ21及びサッシュ用パンチ31を駆動するようにしたので、コンパクトにまとめることができる。
【0081】
また、1つのバッグ25によりドア本体用パンチ21及びサッシュ用パンチ31を駆動することができるので、より一層の小型化を図ることができる。
【0082】
尚、上記実施形態2においても、複数のバッグ25を直列配置にしてもよいし、並列配置にしてもよい。
【0083】
また、上記実施形態1、2では、ドア100のサッシュ102の内周部をヘミング加工する場合について説明したが、本発明にかかる加工装置1は、例えば、ドア100の外周部をヘミング加工する場合や、各種部品をヘミング加工する場合にも用いることができ、また、各種部品をプレス加工する場合にも用いることができる。
【0084】
また、バッグ23、25、33には圧縮空気以外にも窒素や二酸化炭素等の気体を給排してもよいし、オイル等の液体を給排してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上説明したように、本発明にかかる加工装置及び加工方法は、例えば、自動車のドアを製造する場合に適用できる。
【符号の説明】
【0086】
1 加工装置
10 基台
11 ドア本体側加工部
12 サッシュ側加工部
20 ドア本体用アンビル
21 ドア本体用パンチ(第1加工力付与部材)
22 ドア本体側支持機構
23 ドア本体側バッグ(動力発生部材)
24 ドア本体側油圧シリンダ
25 バッグ(動力発生部材)
30 サッシュ用アンビル
31 サッシュ用パンチ(第2加工力付与部材)
32 サッシュ側支持機構
33 サッシュ側バッグ(動力発生部材)
34 サッシュ側油圧シリンダ
100 ドア(被加工物)
101 ドア本体
104a 被加工部
102 サッシュ
110a 被加工部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物に外力を与えて所定形状となるように加工する加工装置において、
上記被加工物に接触して外力を与えるための加工力付与部材と、
上記加工力付与部材を被加工物に押し付けるための動力発生部材とを備え、
上記動力発生部材は、流体の給排が可能な袋状に形成され、流体の供給による膨張力によって上記加工力付与部材を被加工物に押し付けるように駆動することを特徴とする加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載の加工装置において、
第1加工力付与部材と、第2加工力付与部材とを備え、
動力発生部材は、上記第1加工力付与部材と上記第2加工力付与部材との間に配置されていることを特徴とする加工装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の加工装置において、
被加工物に第1曲げ加工と、第1曲げ加工後に最終形状とする第2曲げ加工とを行うように構成され、
加工力付与部材及び動力発生部材は、少なくとも第1曲げ加工を行うものであることを特徴とする加工装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の加工装置において、
加工力付与部材は、自動車のウインド開口部を構成する部材にヘミング加工のための折り曲げ力を作用させるものであり、
上記加工力付与部材及び動力発生部材は、ウインド開口部の内側に配置されるものであることを特徴とする加工装置。
【請求項5】
被加工物に外力を与えて所定形状となるように加工する加工方法において、
上記被加工物に接触して外力を与えるための加工力付与部材と、
上記加工力付与部材を被加工物に押し付けるための袋状の動力発生部材とを用意し、
上記動力発生部材に流体を供給して膨張させ、該動力発生部材の膨張力によって上記加工力付与部材を被加工物に押し付けることを特徴とする加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−130951(P2012−130951A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286233(P2010−286233)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000135999)株式会社ヒロテック (62)