説明

加工装置

【課題】断面略矩形で断面積が大きな長尺のワークであっても堅固に把持できると共に、把持したワークを自在に回動させることができ、金属材料の無駄を低減して大型の金属部品をNC加工することができる加工装置を提供する。
【解決手段】加工装置1は、ワークWを挿通させる貫通孔部15a,15bを有し外歯が周設されたリング状歯車11a,11b、外歯と噛合する複数の歯車17、同一方向に同期して回転し歯車を介してリング状歯車を回動させる複数のモータ18を備える回動装置10a,10bと、直交する二つの支持面を有するワーク支持部21a,21b、二つの支持面にそれぞれ垂直な方向に押圧体を進退させる押圧体駆動装置26を備えリング状歯車と一体回動する把持装置20a,20bと、前端を突出させた状態で把持装置に把持されたワークを回転工具41により加工するNC切削装置40と、ワークの後端を押すワーク送り装置50とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置に関するものであり、特に、金属部品をNC加工する加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、製造しようとする金属部品の大きさに合わせて金属角材を切り出し、その金属角材の端部を爪状の把持部を有するチャックに把持させた上で、チャックを所定角度回動させ、その角度位置を保持した状態で、複数の軸に沿って移動可能な回転工具によって切削するNC加工が行われている。このように、ワークを把持したまま所定角度の回動と切削とを繰り返すことにより、治具を用いることなく複雑な形状の部品を削り出すことができる。ところが、航空機部品など大型の金属部品を製造する場合は、金属角材は断面積が大きなものとなるため、従来の加工装置のチャックでは把持することが困難である。
【0003】
加えて、上記のような従来の加工装置では、チャックの把持代は加工することができないため、その部分の金属材料は廃棄対象となる。従って、大型の金属角材をチャックで把持することができたとしても、金属角材が大型となれば把持代となる部分も大きくなるため、金属資源としての無駄、及び、経済的な無駄が著しいものとなる。
【0004】
そこで、本発明者は、ネジやボルト等の小型の金属部品を製造するために従来から実施されている技術(例えば、特許文献1参照)に着目した。これは、細長いバー材を中空のチャックに挿通し、チャックから突出した部分を旋盤加工した後に切り落とし、更にバー材を先送りして、新たにチャックから突出させた部分で次の部品の加工を行うものである。この技術によれば、チャックの把持代は、バー材の先送りによって次に加工される部分となるため、金属材料の無駄を低減して金属部品を製造することができる。
【0005】
【特許文献1】特開昭63−272405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の長尺バー材を加工する従来装置は、大きくても直径が数cm程度のごく細い丸棒状のバー材を加工するものである。これに対し、大型の金属部品を製造するためには断面積の大きな材料が必要である。また、航空機部品などに一般的な形状を考慮すると、バー材から製造する場合、丸棒状のバー材より断面が矩形の角棒状のバー材の方が適している。そのため、細い丸棒状の長尺バー材を加工する従来装置をそのまま大型化したとしても、断面積の大きな角棒状のワークは加工することができないという問題があった。
【0007】
すなわち、重量は長さの三乗に比例して増大するため、長尺であることに加えて断面積が大きい金属材料の重量はかなり大きなものとなり、これを把持するチャックには極めて大きな負荷がかかる。そのため、細いバー材を対象とした従来の加工装置の構成では、断面積が大きい長尺の金属材料をしっかりと把持することはできず、まして把持した金属材料を自在に回動させることはできない。また、丸棒状のバー材用の従来装置をそのまま大型化したとしても、断面積が大きいことに加えて角棒状であるワークを、良好なバランスで堅固に把持することは困難である。
【0008】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、断面略矩形で断面積が大きな長尺のワークであっても堅固に把持できると共に、把持したワークを自在に回動させることができ、金属材料の無駄を低減して大型の金属部品をNC加工することができる加工装置の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる加工装置は、「長尺のワークを挿通させる貫通孔部を有すると共に外歯が周設されたリング状歯車、該リング状歯車の外歯とそれぞれ噛合する複数の歯車、及び、同一方向に同期して回転し複数の前記歯車を介して前記リング状歯車を任意の角度回動させる複数のモータを備える回動装置と、直交する二つの支持面を有し前記貫通孔部に挿通したワークを支持するワーク支持部、及び、二つの前記支持面の一方に垂直な方向と他方に垂直な方向に沿ってそれぞれ押圧体を進退させる押圧体駆動装置を備え、前記押圧体の前記支持面に向かう前進により前記ワーク支持部に支持されたワークを前記支持面に押圧し把持すると共に、前記リング状歯車と一体回動する把持装置と、該把持装置から前端を突出させた状態で前記把持装置に把持されたワークを回転工具によりNC加工するNC切削装置と、前記把持装置による把持が解除されている状態で前記ワーク支持部に支持されているワークの後端を押し、ワークを長軸方向に沿って前進させるワーク送り装置とを」具備するものである。
【0010】
モータが、「リング状歯車の外歯とそれぞれ噛合する複数の歯車を介して」「リング状歯車を任意の角度回動させる」構成としては、モータの回転軸に周設された歯車が「リング状歯車の外歯とそれぞれ噛合する複数の歯車」である構成、モータの回転軸に周設された歯車が「リング状歯車の外歯とそれぞれ噛合する複数の歯車」と噛合している構成を例示することができる。従って、「複数の歯車」の個数と「複数のモータ」の個数は、同一の場合も異なる場合もあり得る。
【0011】
「押圧体」及び「押圧体駆動装置」は、支持面に対して進退するピストンロッドと、ピストンロッドを駆動する油圧シリンダまたはエアシリンダによって構成させることができる。また、カム機構によって進退するロッドとカムを回転させるモータ、或いは、ラックとピニオン機構によって進退するロッドとピニオンを正逆回転させるモータによって、「押圧体」及び「押圧体駆動装置」を構成させても良い。なお、「押圧体」は、直交する二つの支持面の一方に垂直な方向に進退する押圧体と、他方の支持面に垂直な方向に進退する押圧体との二種類があることから、一つの把持装置について少なくとも二個以上が設けられる。
【0012】
「把持装置」が「リング状歯車と一体回動する」構成としては、ワーク支持部や押圧体駆動装置がリング状歯車に直接的に固着されている構成や、リング状歯車と一体化された別部材あるいはリング状歯車と一体的に形成されている部分に、ワーク支持部や押圧体駆動装置が固着されている構成を例示することができる。なお、部材と部材とを固着する、あるいは一体化する態様としては、螺子留め、ボルトとナットによる締結、溶接を例示することができる。
【0013】
ワーク送り装置が「ワークの後端を押し、ワークを長軸方向に沿って前進させる」態様としては、ワーク送り装置が直接ワークの後端に当接してワークを押す態様の他、ワークの後端に当接させた他の部材を押す態様であっても良い。例えば、次に加工されるワークをワーク送り装置が押すことによって、加工中のワークを前方に押し出す態様、或いは、ワーク押し用の棒材(プッシャ)をワーク送り装置が押すことによって、加工中のワークを前方に押し出す態様とすることができる。
【0014】
本発明の把持装置は、直交する二つの支持面でワークを載置して支持し、それぞれの支持面に対して垂直な方向にワークを押圧して把持する構成である。ここで、従来の加工装置では、三つまたは四つの爪状の把持部をワークの回転中心に向かって移動させることによって、ワークの中心をワークの回転中心に一致させて(センタリングして)、ワークを把持しているのが通常であるが、このような爪状の構成では、かなりの重量を有するワークを把持することは困難である。加えて、断面が矩形のワークで断面の縦横の長さが異なるワークを把持する場合は、センタリングしつつワークをバランスよく把持することは困難であり、ワークの重量が大きい場合は尚更に困難となる。本発明では、回転工具によってワークをNC加工するに当たっては、ワークをしっかりと把持することができさえすれば、ワークをセンタリングする必要はないとの考えに基づき、上記構成を採用したものである。
【0015】
上記構成の本発明の把持装置は、断面が略矩形で断面積が大きな長尺のワークの把持に優れている。すなわち、直交する二つの支持面でワークを載置するため、断面が略矩形のワークの直交する二側面が、把持装置の直交する二つの支持面に面的に当接して支持される。そして、その状態でそれぞれの支持面に対して垂直な二方向にワークが押圧されるため、その反力によりワークの四つの側面がそれぞれ垂直に押圧されることとなる。これにより、長尺かつ断面積が大きく、かなりの重量を有するワークであっても、本発明の把持装置によって堅固に把持することができる。なお、本発明の把持装置では、断面がほぼ矩形のワークであれば、角部が欠けたワークや、角部が丸みを帯びているワークであっても、問題なく堅固に把持することができる。
【0016】
また、本発明の回動装置は、把持装置と一体回動するリング状歯車という構成を備えており、リング状歯車と噛合する複数の歯車を介し、同期して回転する複数のモータの協働によってリング状歯車を回動させる構成である。そのため、複数のモータによってリング状歯車に大きな回転力を付与することができ、リング状歯車を介して、ワークを把持する把持装置に大きな回転力を付与することができる。これにより、長尺かつ断面積が大きく、かなりの重量を有するワークであっても、本発明の回動装置によって自在に回動させることができる。
【0017】
従って、断面が略矩形で断面積が大きな長尺のワークであっても、堅固に把持できる把持装置と、自在に回動させられる回動装置とを備える本発明の加工装置によれば、次のような加工が可能となる。すなわち、リング状歯車の貫通孔部を大径として、断面略矩形で断面積の大きな長尺のワークを挿通し、ワークの前端が把持装置から突出した状態で把持装置によってワークを把持する。そして、回動装置によって把持装置を回動させることによりワークを任意角度回動させた後、ワークが静止している状態で、把持装置から突出している部分のワークを回転工具によって加工する。このようなワークの任意角度の回動と静止状態での回転工具による加工を繰り返し、所望形状へのワークの加工が終了したら、加工済みのワークを切断する。そして、把持装置によるワークの把持を解除し、ワーク送り装置でワークの後端を押してワークを更に前進させ、新たにワークの前端が把持装置から突出した状態で、把持装置によりワークを把持する。以降は、上記の動作を繰り返すことにより、把持装置による把持代を無駄にすることなく、大型の金属部品を長尺のワークから連続的に製造することができる。
【0018】
本発明にかかる加工装置は、「二つの前記支持面は、鉛直方向に対して45度傾斜した状態で前記把持装置による把持が解除されているワークを支持する」ものとすることができる。
【0019】
上記構成により、本発明の把持装置は、断面が略矩形で断面積が大きな長尺のワークの把持により優れるものとなる。すなわち、ワークは重力によって支持面に沿って滑り落ちるため、断面がほぼ矩形のワークの場合は、自ずと二つの支持面が交差する角部にワークの角部が一致するように収まる。これにより、断面積が大きくかなりの重量を有する長尺ワークに外力を加えて移動させなくても、自ずとワークの二側面とワーク支持部の二つの支持面とが最も当接した状態でワーク支持部にワークを支持させることができ、ひいては、この状態でワークを支持面に押圧することよって、しっかりと確実にワークを把持することができる。
【0020】
本発明にかかる加工装置は、「前記リング状歯車と一体回動する長尺の筒体を更に具備し、該筒体の内部には、二つの前記支持面と同一の高さで同一角度傾斜している二つの筒体内平面が形成されている」ものとすることができる。
【0021】
「筒体」が「リング状歯車と一体回動」する構成としては、筒体の端部がリング状歯車に直接的に固着されている構成、リング状歯車と一体化された別部材あるいはリング状歯車と一体的に形成されている部分に、筒体の端部が固着されている構成を例示することができる。
【0022】
上記構成により、長尺のワークにおいて把持装置に把持されている部分以外の残部は、長尺の筒体に挿通しておくことができるため、長尺のワークのたわみを低減することができる。特に、断面積が大きくかなりの重量を有する長尺ワークの場合は、把持されていない部分にたわみが生じ易いが、筒体による支持によって有効にたわみを低減することができる。
【0023】
また、筒体はリング状歯車と一体回動する構成であり、筒体の内部には把持装置の二つの支持面と同一高さで同一角度に傾斜している二つの筒体内平面が形成されている。これにより、断面が略矩形の長尺のワークは、支持面と同一高さで同一傾斜角度の筒体内平面にワークの二側面が当接した状態で筒体によって支持されるため、ワークを常に水平に保持し易い。加えて、二つの筒体内平面にワークの二側面が当接した状態でワークが回動させられるため、把持装置の回転によってワークを回動させる際のワークのねじれを、有効に低減することができる。
【0024】
従って、上記構成の本発明によれば、断面が略矩形で長尺のワークの支持に優れており、断面積が大きくかなりの重量を有する長尺ワークの場合に生じ易いたわみやねじれを有効に低減して、精度の高いNC加工をすることが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明の効果として、断面略矩形で断面積が大きな長尺のワークであっても堅固に把持できると共に、把持したワークを自在に回動させることができ、金属材料の無駄を低減して大型の金属部品をNC加工することができる加工装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の最良の一実施形態である加工装置について、図1乃至図5に基づいて説明する。ここで、図1は本実施形態の加工装置の要部縦断面図であり、図2は図1における(a)A−A線断面図、及び(b)B−B線断面図であり、図3は図1の加工装置の全体構成を示す平面図であり、図4及び図5は図1の加工装置におけるワークの供給を説明する説明図である。なお、図4及び図5は図3におけるC−C線方向視で図示している。
【0027】
本実施形態の加工装置1は、図1乃至図3に示すように、長尺のワークWを挿通させる貫通孔部15を有すると共に外歯が周設されたリング状歯車11、リング状歯車11の外歯とそれぞれ噛合する複数の歯車17、及び、同一方向に同期して回転し複数の歯車17を介してリング状歯車11を任意の角度回動させる複数のモータ18を備える回動装置10と、直交する二つの支持面22を有し貫通孔部15に挿通したワークWを支持するワーク支持部21、及び、二つの支持面22の一方に垂直な方向と他方に垂直な方向に沿ってそれぞれ押圧体を進退させる押圧体駆動装置を備え、押圧体の支持面22に向かう前進によりワーク支持部21に支持されたワークWを支持面22に押圧し把持すると共に、リング状歯車11と一体回動する把持装置20と、把持装置20から前端を突出させた状態で把持装置20に把持されたワークWを回転工具41によりNC加工するNC切削装置40と、把持装置20による把持が解除されている状態でワーク支持部21に支持されているワークWの後端を押し、ワークWを長軸方向に沿って前進させるワーク送り装置50とを、主に具備している。また、本実施形態の加工装置1は、リング状歯車11と一体回動する長尺の筒体30を、更に具備している。なお、図1乃至図3では、各構成を被覆するカバーや各構成を載置する架台の図示は省略している。
【0028】
より詳細に説明すると、リング状歯車11は同一の直径の貫通孔部15を有する大径リング部12と、それより小径の小径リング部13とが一体化されて形成されており、小径リング部13の外周に沿って外歯(図示しない)が形成されている。リング状歯車11の外歯にはリング状歯車11の回動中心に対して等角度間隔に複数の歯車17が噛合しており、これらの歯車17はそれぞれモータ18によって回転駆動される。また、これらの複数のモータ18は、回転軸を正逆方向に回転可能であり、床面に対して固定されているケーシング19内に収容されると共に、床面に対して固定されている。
【0029】
更に、加工装置1は図示しないコンピュータを備えており、コンピュータの記憶装置には、モータ18に対して電気信号を送出し、複数のモータ18を同一方向に同期して回転させることにより、リング状歯車11の回動と静止を制御する回動制御手段としてコンピュータを機能させるプログラムが記憶されている。
【0030】
リング状歯車11の大径リング部12には、リング状の把持装置支持体34が固着されており、把持装置支持体34にはリング状歯車11の貫通孔部15と直径の等しい貫通孔部35が設けられている。また、把持装置支持体34において大径リング部12に固着されている面とは反対側の面には、断面L字形のワーク支持部21が、直交する二つの支持面22を貫通孔部35に臨ませて取り付けられている(図2(a)参照)。
【0031】
また、本実施形態では、支持面22に対して垂直方向に進退する押圧体及び押圧体を駆動する押圧体駆動装置として、ピストンロッド25(押圧体)とこれを駆動する油圧シリンダ26(押圧体駆動装置)を使用している。また、断面L字状のワーク支持部21において、二つの支持面22のうち、互いの交差線に直交する方向の幅が長い方の支持面22に対しては、それぞれピストンロッド25を駆動する油圧シリンダ26が二つ取り付けられており、前記幅が短い方の支持面22に対してはピストンロッド25を駆動する油圧シリンダ26が一つ取り付けられている。従って、本実施形態では、一つの把持装置20について、ピストンロッド25及び油圧シリンダ26が三対設けられている。そして、それぞれの油圧シリンダ26は、取付部29を介して把持装置支持体34に取り付けられている。
【0032】
上記のように、リング状歯車11に固着された把持装置支持体34に、ワーク支持部21及び油圧シリンダ26が取り付けられていることにより、把持装置支持体34を介して把持装置20と回動装置10とが一体化されている。本実施形態では、把持装置20及び回動装置10は、それぞれ一対が把持装置20を外側にして設けられている。そのため、本実施形態では、回動装置10及び把持装置20に関する構成について、一対のうちの一方と他方とを区別する必要がある場合は、各構成に付す符号について、ワークWが送られる上流側の構成についてはaを、下流側の構成についてはbを付加して区別し、両者を区別する必要がない場合は数字のみの符号で総称して説明している。
【0033】
本実施形態の筒体30は、貫通孔部15,35とほぼ同一の内径を有する円筒状であり、その両端はそれぞれリング状歯車11a及びリング状歯車11bに固着されている。これにより、上流側の貫通孔部15a,35aと下流側の貫通孔部15b、35bは、筒体30の内部空間を介して連通している。そして、筒体30の内部には、二つの支持面22と同一の高さで同一角度傾斜している二つの筒体内平面31が形成されている。
【0034】
下流側の把持装置20bの近傍には、NC切削装置40が設けられている。すなわち、回動装置10a,10bによってそれぞれ回動させられる一対の把持装置20a,20bは、NC切削装置40に対して同じ側に設けられている。ここで、NC切削装置40は、ワークWの長軸方向に平行な図示X方向、X方向に直交する高さ方向の図示Z方向、X方向及びZ方向に直交するY方向に沿って、回転工具41を移動可能に構成されていると共に、Y方向に平行な軸周りに回転工具41を回動可能(図示R方向)に構成されている。そして、NC切削装置40は、図示しないコンピュータに記憶されたNCプログラムに基づいて回転工具41の回転及び移動を制御し、ワークWのNC加工を行う。
【0035】
また、下流側の把持装置20bの近傍には、貫通孔部15b,35bに向けて進退し、ワークWの前端の位置決めを行うワークストッパ59が設けられている。なお、NC切削装置40は、切削屑やクーラント液の飛散を防止するために、ケーシング49で囲まれた空間内で切削加工を行う構成とされている。
【0036】
一方、把持装置20aの上流側には、固定配管(図示しない)から油圧シリンダ26にオイルを供給するに当たり、把持装置20の回動に伴ってオイルの配管にねじれが生じることを防止するために、ロータリージョイント38が設けられている。また、ロータリージョイント38には、ワークWを挿通可能な貫通孔部39が形成されている。
【0037】
また、図3に示すように、把持装置20a及びロータリージョイント38の更に上流側には、リング状歯車11a,11bの回動中心軸の延長線上を、把持装置20aに対して離隔接近可能なワーク送り装置50が設けられている。ここで、ワーク送り装置50は、正逆回転可能なモータ(図示しない)の駆動によって二本のレール52上を移動することにより、把持装置20aに対して離隔接近する構成とされている。また、ワーク送り装置50には、図4(d)に示すように、二つの直交する平面を有する断面y字形のワーク載置部51が設けられており、この二つの平面は鉛直方向に対して45度傾斜している。
【0038】
二本のレール52の間には、昇降可能な二つの昇降支持装置60a,60bが設けられており、それぞれの昇降支持装置60a,60bの上端にはV字形のワーク載置部61が形成されている(図4参照)。ここで、ワーク載置部61のV字を形成する二辺は、共に鉛直方向に対して45度傾斜している。また、二つの昇降支持装置60a,60bのうち、把持装置20aに近い側の昇降支持装置60bのワーク載置部61には、載置したワークWを滑らかに摺動させるためのローラ(図示しない)が取り付けられている。
【0039】
また、加工装置1は、レール52に平行に複数のワークWをストックすると共に、ワーク送り装置50にワークWを一本ずつ供給するワーク供給装置70を具備している。本実施形態のワーク供給装置70は、V字形のワーク載置部が複数連設されているワーク載置台を主な構成としており、ワーク載置台として、ワークWの幅方向にのみ移動可能な一対のワーク載置台71と、幅方向及び上下方向に移動可能な一対のワーク載置台72とを備えている。
【0040】
更に、加工装置1は、加工済みのワークWをNC切削装置40から受け取るワーク受取装置80と、ワークWを種類ごとに排出するワーク排出装置90を具備している。ここで、ワーク受取装置80は、NC切削装置40の下方に向かって進退する平板状の可動板81と、可動板81の上面に設けられた二本のレール82に沿って移動可能なワーク受け台85とを備えている。
【0041】
一方、ワーク排出装置90は、ワーク受け台85より低い位置に設けられ、それぞれ軸心周りに回転する複数の円筒状ローラ95が平行に列設されていることにより、レール82とほぼ直交する方向にワークWを搬送可能な二本のワーク排出路91,92と、ワークWの種類に応じて、二つのワーク排出路91,92の何れかとワーク受け台85とを、傾斜して架け渡す滑り板97とを備えている。
【0042】
次に、本実施形態の加工装置1の動作及び加工装置1を用いたワークWの加工について説明する。ここでは、断面が長方形の長尺のワークWを加工する場合を説明する。まず、ワークWの導入に先立ち、リング状歯車11を回動させて、ワーク支持部21の二つの支持面22が鉛直方向に対して45度傾斜した状態となるまで把持装置20を回動させる。これにより、リング状歯車11を介して把持装置20と一体化されている筒体30の二つの筒体内平面31も、鉛直方向に対して45度傾斜した状態となる。なお、この時点で、把持装置20においてピストンロッド25は後退した状態にある。
【0043】
未加工の複数のワークWは、図4(a)に示すように、一対のワーク載置台71によって支持され、ストックされている。このとき、それぞれのワークWは、それぞれ鉛直方向に対して45度傾斜している二辺で形成されたV字形のワーク載置部71s,71eに、安定して載置されている。なお、この時点では、もう一対のワーク載置台72は、ワークWに当接しない高さまで下降している。
【0044】
一対のワーク載置台71において最もワーク送り装置50側のワーク載置部71eは、他のワーク載置部71sとは独立してワーク送り装置50側に水平移動可能に構成されており、図4(b)に示すように、ワークWを昇降支持装置60a,60bの真上まで移動させることができる。そうすると、一対の昇降支持装置60a,60bが上昇し、図4(c)に示すように、ワーク載置台71のワーク載置部71eからワークWを受け取ってワーク載置部61に載置し、更にワーク載置部61の高さが把持装置20のワーク支持部21と同じ高さになるまで上昇する。一方、ワークWを昇降支持装置60a,60bに受け渡した後のワーク載置部71eは、逆方向に水平移動し、図5(a)に示すように再び元の位置に復帰する。
【0045】
一対の昇降支持装置60a,60bに支持されているワークWに対しては、ワーク支持部21と同じ高さにあるワーク送り装置50がレール52上を移動して接近し、図4(d)に示すように、断面y字形のワーク載置部51にワークWの後端を載置する。この状態で、上流側の昇降支持装置60aが下降し、ワークWはワーク送り装置50と下流側の昇降支持装置60bによって支持される。
【0046】
次に、ワーク送り装置50がレール52上を更に前進して、把持装置20aに接近する。これにより、ワークWはその後端をワーク送り装置50に押され、昇降支持装置60bのワーク載置部61上を滑るように移動する。このとき、昇降支持装置60bのワーク載置部61にはローラが設けられているため、ワーク送り装置50に押されたワークWを滑らかに前方に移動させることができる。そして、ワークWの前端が把持装置20aのワーク支持部21aに達し、ワークWが二つの支持面22a上に支持されると、昇降支持装置60bが下降する。これにより、ワークWはワーク送り装置50とワーク支持部21aによってその両端を支持される。
【0047】
この状態で、ワーク送り装置50が更に前進して把持装置20aに接近すると、ワークWはその後端をワーク送り装置50に押され、二つの支持面22a及び二つの筒体内平面31に沿って摺動し、下流側のリング状歯車11bの貫通孔部15b及び把持装置支持体34bの貫通孔部35bを通過する。このとき、ワークストッパ59は、ワークWの前端の位置決めをするために把持装置20bに近づくように移動させられており、ワークWの前端がワークストッパ59に当接すると、ワーク送り装置50によるワークWの送りが停止され、ワーク送り装置50は元の位置に復帰する。これにより、ワークWは、把持装置20bから前端を突出させた状態で、把持装置20aの二つの支持面22a、二つの筒体内平面31、及び、把持装置20bの二つの支持面22bによって支持される。
【0048】
このとき、二つの支持面22a及び二つの支持面22bは、何れも鉛直方向に対して45度傾斜した状態にあるため、ワークWは重力によって支持面22a,22bに沿って滑り落ち、自ずと支持面の交差部にワークの角部が一致するように収まる。これにより、ワークWの側面と支持面22a,22bとが、最も当接した状態となる。また、二つの筒体内平面31も、同じく鉛直方向に対して45度傾斜した状態にあるため、両端をワーク支持部21a,21bに支持されたワークWの中間部分に、たわみが生じることが有効に防止される。
【0049】
次に、上流側及び下流側の把持装置20a,20bにおいて、油圧シリンダ26の駆動によってピストンロッド25が前進し、ワークWをそれぞれ支持面22a,22bに対して押圧する。本実施形態では、断面長方形のワークWの長辺側の側面を二個のピストンロッド25で押圧し、短辺側の側面を一個のピストンロッド25で押圧する構成であるため、ワークWのほぼ全周面積に近い面積が支持面22とピストンロッド25によって押圧され、把持装置20によるワークWの把持がより堅固なものとなっている。
【0050】
把持装置20によるワークWの把持が完了すると、回動制御手段の制御により複数のモータ18が同期して同一方向に回転し、ワークWが所望の角度だけ回動させられる。そして、モータ18の停止によりワークWが静止している状態で、NC切削装置40の回転工具41によってワークWがNC加工される。回転工具41は、X方向、Y方向、及びZ方向に移動可能であると共にR方向に回動可能であるため、把持装置20によるワークWの回動と回転工具41による切削を繰り返すことにより、ワークを複雑な形状に加工することができる。
【0051】
所望形状に加工されたワークWが、未加工部分と僅かな接合部分(ミクロジョイント)のみでつながった状態となると、NC切削装置40からワーク受取装置80に加工終了信号が送出される。この信号を受け、ケーシング49の図示しない扉が開放され、ワーク受取装置80の可動板81がNC切削装置40側に移動する。これと共に、レール82上をワーク受け台85が移動し、NC切削装置40のほぼ真下にワーク受け台85が位置すると、ワーク受取装置80からNC切削装置40に受取り準備完了信号が送出される。この信号を受け、NC切削装置40によってミクロジョイントが切断され、加工済みのワークはワーク受け台85の上に落下する。
【0052】
一方、ワーク排出装置90側では、加工されたワークWの種類に応じて、ワーク搬出路91,92のうちの一方、例えば、ワーク搬出路91側に滑り板97が移動する。そして、可動板81が元の位置に復帰すると共に、ワーク受け台85がレール82上を移動し、滑り板97と並ぶ位置にワーク受け台85が到達すると、ワーク排出路91側を下向きとしてワーク受け台85が傾けられる。これにより、加工済みのワークWはワーク受け台85から滑り落ち、滑り板97を介してワーク搬出路91に落下し、更に円筒状ローラ95の回転に伴ってワーク排出路91上を搬送される。
【0053】
また、NC切削装置40では、加工済みのワークが切断された後のワークWの端面が回転工具41によって整形されると共に、ワークストッパ59が前進して、次の加工のために送られるワークWの前端の位置決めを行う。
【0054】
上記のようにワークWの加工及び加工済みワークの排出が行われている間に、ワーク供給装置70では次に加工するワークWの準備が行われる。すなわち、先に一本のワークWをワーク送り装置50へ供給したことにより、図5(a)に示すように、ワーク載置台71において最もワーク送り装置50側のワーク載置部71eにはワークWが載置されていない状態となっているため、ここに、次に加工されるワークWを供給する。
【0055】
そのために、まず、それまでワークWに当接しない高さまで下降していた一対のワーク載置台72が上昇する。これにより、図5(b)に示すように、ワークWはワーク載置台71のワーク載置部71sからワーク載置台72のワーク載置部72sに受け渡される。次に、ワーク載置台72は、図5(c)に示すように、上昇した高さ位置のまま、ワークW一つ分だけワーク送り装置50側に水平移動する。この状態でワーク載置台72が下降すると、図5(d)に示すように、一対のワーク載置台71にワークWが受け渡され、ワーク載置部71eにもワークWが載置された状態となる。
【0056】
以降は、図4(a)〜図4(d)を用いて上述した動作を行うことにより、ワーク載置部71eのワークWが昇降支持装置60a,60bに受け渡され、更にワーク送り装置50によってワークWの後端が押されて、ワークWの前端が貫通孔部15a,35aを通過して筒体30内に導入される。その結果、新たに導入されたワークWによって先のワークWの後端が押され、先のワークWの前端を再び下流側の貫通孔部15b,35bから突出させ、前のワークの加工時に把持代であった部分をNC加工することができる。
【0057】
上記のように、本実施形態の加工装置1によれば、把持装置20による把持代を無駄にすることなく、長尺のワークWから複数の金属部品を連続的に製造することができる。
【0058】
また、本実施形態の把持装置20を上記構成としたことにより、断面が長方形であって、かつ、断面積が大きく長尺でかなりの重量を有するワークWであっても、把持装置20によって堅固に把持することができる。加えて、本実施形態の回動装置10を上記構成としたことにより、断面積が大きく長尺でかなりの重量を有するワークWであっても、これを把持している把持装置20に大きな回転力を付与し、自在に回動させることができる。
【0059】
ここで、本実施形態の加工装置1は、リング状歯車11の貫通孔部15及び把持装置支持体34の貫通孔部35の直径を35cm〜45cmとすることにより、航空機部品等として一般的な大きさの大型金属部品を歩留まりよく製造し易い、長辺20cm〜35cm,短辺10cm〜20cmの長方形断面のワークの加工に適した構成とされているが、構造としては貫通孔部の直径を少なくとも15cm〜100cmの範囲とし、おおよそ長辺10cm〜75cm,短辺7cm〜45cmの長方形断面のワークを挿通して、把持装置20によって堅固に把持しつつ、回動装置10で自在に回動させることができる。
【0060】
なお、本実施形態では、長尺のワークWの長さを、定尺の板状の金属材料を一方向にのみカットすることで用意し易い350cm〜400cmとしているが、これに限定されるものではない。
【0061】
更に、本実施形態の加工装置1は、把持装置20、回動装置10、NC切削装置40に加え、ワーク供給装置70、昇降支持装置60,ワーク送り装置50、ワーク受取装置80、及び、ワーク排出装置90を具備し、未加工ワークの供給から加工済みワークの排出までが自動化されているため、極めて効率良くワークの加工を行うことができる。
【0062】
加えて、本実施形態のワーク供給装置70を、二対のワーク載置台71,72を備えた上記構成としたことにより、長尺かつ断面積が大きいためにかなりの重量を有するワークであっても、安定的に移動させて、ワーク送り装置50に供給することができる。また、昇降支持装置60a,60bのV字形のワーク載置部61、ワーク載置台71のV字形のワーク載置部71s,71e、及び、ワーク載置台72のV字形のワーク載置部72sのそれぞれにおいて、V字を形成する二辺は共に鉛直方向に対して45度傾斜しているため、長尺かつ断面積が大きいためにかなりの重量を有するワークであっても、断面長方形のワークの二側面にワーク載置部が良好に当接し、ワークを安定的に支持することができる。
【0063】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0064】
例えば、上記では、把持装置20及び回動装置10がそれぞれ一対設けられる場合を例示したがこれに限定されず、筒体30内でワークWを把持する第三の把持装置を設けることもできる。これにより、切削加工に伴う長尺のワークWの振動をより有効に抑制できると共に、筒体内平面31がワークWに対して上方側となるまで把持装置20を回動させた場合であっても、長尺のワークWのたわみをより有効に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本実施形態の加工装置の要部縦断面図である。
【図2】図1における(a)A−A線断面図、及び(b)B−B線断面図である。
【図3】図1の加工装置の全体構成を示す平面図である。
【図4】図1の加工装置におけるワークの供給を説明する説明図である。
【図5】図1の加工装置におけるワークの供給を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0066】
1 加工装置
10,10a,10b 回動装置
11,11a,11b リング状歯車
15,15a,15b 貫通孔部
17 歯車
18 モータ
20,20a,20b 把持装置
21,21a,21b ワーク支持部
22,22a,22b 支持面
25 ピストンロッド(押圧体)
26 油圧シリンダ(押圧体駆動装置)
30 筒体
31 筒体内平面
40 NC切削装置
41 回転工具
50 ワーク送り装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺のワークを挿通させる貫通孔部を有すると共に外歯が周設されたリング状歯車、該リング状歯車の外歯とそれぞれ噛合する複数の歯車、及び、同一方向に同期して回転し複数の前記歯車を介して前記リング状歯車を任意の角度回動させる複数のモータを備える回動装置と、
直交する二つの支持面を有し前記貫通孔部に挿通したワークを支持するワーク支持部、及び、二つの前記支持面の一方に垂直な方向と他方に垂直な方向に沿ってそれぞれ押圧体を進退させる押圧体駆動装置を備え、前記押圧体の前記支持面に向かう前進により前記ワーク支持部に支持されたワークを前記支持面に押圧し把持すると共に、前記リング状歯車と一体回動する把持装置と、
該把持装置から前端を突出させた状態で前記把持装置に把持されたワークを回転工具によりNC加工するNC切削装置と、
前記把持装置による把持が解除されている状態で前記ワーク支持部に支持されているワークの後端を押し、ワークを長軸方向に沿って前進させるワーク送り装置と
を具備することを特徴とする加工装置。
【請求項2】
二つの前記支持面は、鉛直方向に対して45度傾斜した状態で前記把持装置による把持が解除されているワークを支持する
ことを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
前記リング状歯車と一体回動する長尺の筒体を更に具備し、
該筒体の内部には、二つの前記支持面と同一の高さで同一角度傾斜している二つの筒体内平面が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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