説明

加水分解安定性が改良されたポリエステルラテックスを製造するプロセス

【課題】ポリエステル樹脂からエマルションを作成し、ラテックス粒子を回収することとを含む、プロセスを提供する。
【解決手段】トナー組成物で使用するのに適したラテックスエマルションを作成するためのプロセスは、少なくとも1つの結晶性ポリエステル樹脂を、有機溶媒および安定化剤と接触させて樹脂混合物を作成することと、中和剤および脱イオン水を樹脂混合物に加えることと、生成したラテックスから溶媒を除去することと、ラテックス粒子を連続的に回収することとを含むプロセスである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
トナーを製造するための乳化凝集(EA)技術は、モノマーを加熱し、バッチ式または半連続式のエマルション重合を行なうことによってポリマーエマルションを作成することを含み得る。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルトナーは、アモルファスおよび結晶性ポリエステル樹脂を利用して調製されてきた。これらのポリエステルを組み込むには、溶媒を含有するバッチ式プロセス(例えば、溶媒フラッシュ乳化および/または溶媒系転相乳化(PIE)によって調製されたエマルションにポリマーを配合することを必要とする。いずれの場合であっても、上述の樹脂を溶解するために、ケトンまたはアルコールのような有機溶媒を用いていた。
【0003】
PIEによって作成したポリエステルエマルションは、経時変化によってポリマーが分解することがある。カルボン酸エステル基のような加水分解性基を含有するポリマーは、水系環境、殺生物剤、pH条件、イオン強度、界面活性剤およびバッファーのような他の添加剤に起因して、保存期間の安定性が良くない。ポリマーの加水分解および/または加水分解したモノマーの重合から得られる、ポリマー骨格上の加水分解した残りのモノマーおよび/またはぶら下がっている酸基は、エマルションの安定性が悪くなるにつれ、さらに加水分解しやすくなることがある。
【0004】
ポリエステルエマルションのpH調整プロセスは、エマルションを安定化し、経時変化によるポリマーの分解を阻止するために利用される。米国特許公開第2010/0143839号。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トナーを製造する前に、樹脂エマルションの分解を最低限にし、保存期間を延ばす方法が、依然として望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のプロセスは、少なくとも1つのポリエステル樹脂と、少なくとも1つの有機溶媒およびカルボジイミド含有安定化剤とを接触させて混合物を作成することと、、この混合物を混合することと、この混合物を中和剤と接触させて中和混合物を作成することと、この中和混合物を脱イオン水(DIW)と接触させてエマルションを作成することと、このエマルションからラテックス粒子を回収することとを含む。
【0007】
また、本開示のプロセスは、少なくとも1つの結晶性ポリエステル樹脂と、場合によりアモルファス樹脂と、少なくとも1つの有機溶媒および安定化剤とを接触させて樹脂混合物を作成することと、この混合物を溶融混合することと、この混合物を中和剤と接触させて中和混合物を作成することと、この中和混合物をDIWと接触させてエマルションを作成することと、このエマルションからラテックス粒子を連続して回収することと、このラテックス粒子を、場合により着色剤と、場合によりワックスと、場合によりシェル樹脂と接触させ、トナー粒子を作成することとを含む。
【0008】
本開示は、少なくとも1つの結晶性ポリエステル樹脂と、場合によりアモルファス樹脂と、少なくとも1つの有機溶媒およびカルボジイミド含有安定化剤とを接触させ、安定化した混合物を作成することと、この混合物を混合することと、この安定化した混合物を中和剤と接触させ、中和混合物を作成することと、この中和混合物をDIWと接触させてエマルションを作成することと、このエマルションから有機溶媒を留去することと、このエマルションからラテックス粒子を回収することと、このラテックス粒子を、場合により着色剤と、場合によりワックスと、場合により添加剤と、場合によりシェル樹脂と接触させ、トナー粒子を作成することとを含む、トナープロセスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本開示の実施例1の結晶性ポリエステルエマルションの加水分解安定性をpH変化率に基づいて示すグラフである。
【図2】本開示のカルボジイミドを含有する不飽和結晶性ポリエステルエマルションの分子量変化率を、比較例のエマルションと比較して示すグラフである。
【図3】本開示の実施例のカルボジイミドを含有する不飽和結晶性ポリエステルエマルションの粒径を、比較例のエマルションと比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、少なくとも1つの安定化剤(例えば、カルボジイミド)を添加することを含む、EAトナー用ポリエステルラテックス組成物の水系エマルションが分解しないように安定化させる方法を提供する。
【0011】
本開示によれば、ポリエステル樹脂を乳化する方法は、安定化剤を、ポリエステル樹脂および水を含む溶媒に溶解することによって与えられる。少なくとも2種類の溶媒(例えば、メチルエチルケトン(MEK)およびイソプロパノール(IPA))を加えることにより、溶媒プロセスでポリエステル樹脂を乳化することができる。溶媒によって、鎖の末端を再配向させ、安定化し、粒子を形成させることができ、これにより、界面活性剤を用いずに安定なラテックスが作成される。
【0012】
安定化剤は、ポリマーの溶融形態に無溶媒で加えてもよく、PIEのためにこれを冷却し、粉砕してもよい。安定化剤を、ポリマー固形分を基準として約0.01〜約20wt%、約0.1〜約10.0wt%の量で加えてもよい。
【0013】
本開示のラテックスエマルションを作成する際に、任意の樹脂が利用され得る。樹脂は、アモルファス樹脂、結晶性樹脂、および/またはこれらの組み合わせであってもよい。樹脂は、ポリエステル樹脂であってもよい。
【0014】
樹脂は、場合により触媒が存在する状態で、ジオールと二塩基酸とを反応させることによって生成するポリエステル樹脂であってもよい。
【0015】
結晶性樹脂の例としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリイソブチレート、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリプロピレン、これらの混合物などが挙げられる。
【0016】
結晶性樹脂は、例えば、トナー成分の約1〜約85重量%、約5〜約50%の量で存在してもよい。結晶性樹脂は、種々の融点を有していてもよく、例えば、約30℃〜約120℃の融点を有していてもよく、数平均分子量(M)は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で測定した場合、例えば、約1,000〜約50,000、約2,000〜約25,000であってもよく、重量平均分子量(M)は、例えば、ポリスチレン標準を用いたGPCで決定した場合、約2,000〜約100,000、約3,000〜約80,000であってもよい。結晶性樹脂の分子量分布(M/M)は、例えば、約2〜約6、約3〜約4であってもよい。
【0017】
アモルファスポリエステルを調製する際に利用される二塩基酸またはジエステルの例としては、ビニル二塩基酸、ビニルジエステル、ジカルボン酸またはジエステルが挙げられる。
【0018】
アモルファスポリエステルを作成する際に利用してもよいジオールの例としては、ビス(ヒドロキシエチル)−ビスフェノールA、ビス(2−ヒドロキシプロピル)−ビスフェノールA、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ジブチレン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0019】
結晶性ポリエステルまたはアモルファスポリエステルを作成する際に、重縮合触媒が利用され得る。このような触媒を、例えば、ポリエステル樹脂を作成するために使用される出発原料の二塩基酸またはジエステルを基準として、約0.01mol%〜約5mol%の量で利用してもよい。
【0020】
アモルファス樹脂は、例えば、トナー成分の約5〜約95重量%の量で存在してもよい。ラテックス中で利用されるアモルファス樹脂、またはアモルファス樹脂の組み合わせは、約30℃〜約80℃のTを有していてもよい。組み合わせた樹脂は、130℃での溶融粘度が約10〜約1,000,000Pa・Sであってもよい。
【0021】
1種類、2種類またはそれ以上の樹脂を設計上の選択肢として種々の比率で用いてもよい。
【0022】
樹脂は、例えば樹脂の末端部分に存在してもよい酸基を有していてもよい。存在してもよい酸基としては、カルボン酸基などが挙げられる。カルボン酸基の数は、樹脂を作成するのに用いられる材料および反応条件を調節することによって制御してもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、アモルファス樹脂は、約2mg KOH/樹脂1g〜約200mg KOH/樹脂1g、約5mg KOH/樹脂1g〜約50mg KOH/樹脂1gの酸価(AV)を有するポリエステル樹脂であってもよい。酸を含有する樹脂をテトラヒドロフラン溶液に溶解してもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、結晶性ポリエステル樹脂は、約1mg KOH/ポリマー1g〜約200mg KOH/ポリマー1g、約5mg KOH/ポリマー1g〜約50mg KOH/ポリマー1gの酸価を有する酸性基を有していてもよい。
【0025】
樹脂を溶解させるために、例えば、アルコール、エステル、エーテル、ケトン、アミン、およびこれらの組み合わせのような任意の適切な有機溶媒が、例えば、樹脂の約1wt%〜約100wt%、約10wt%〜約90wt%、約25wt%〜約85wt%の量で使用され得る。
【0026】
適切な有機溶媒(時には転相剤と呼ばれる)としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、酢酸エチル、メチルエチルケトン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。有機溶媒は、例えば、樹脂の約1wt%〜約25wt%、約2wt%〜約20wt%、約3wt%〜約15wt%の量であってもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、有機溶媒は、水に混和しなくてもよく、沸点が約30℃〜約150℃であってもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、本開示にしたがって作成したエマルションは、樹脂が溶融する温度または軟化する温度(例えば、約20℃〜約120℃、約30℃〜約100℃)で、水(例えば、DIW)を約30%〜約95%、約30%〜約60%の量で含んでいてもよい。
【0029】
ラテックス粒子を作成する際に、安定化剤(安定剤とも呼ばれる)を含むことが有益な場合がある。適切な安定剤としては、エステル基、エステル官能基を含むか、エージングによって酸を放出するポリマーまたはポリマー系を安定化させるのに有用なものが挙げられる。安定剤は、ポリエステル樹脂のエステル基が加水分解し、および/または遊離酸が中和されるのを防いでもよい。本開示の適切な安定剤系は、式RN=C=NRの官能基(すなわち、カルボジイミド)を含んでいてもよい。安定剤系は、1種以上のカルボジイミドを含んでいてもよい。カルボジイミドは、脂肪族、脂環式、芳香族のモノカルボジイミド、およびこれらの組み合わせであってもよい。適切な脂肪族カルボジイミドとしては、ジイソプロピルカルボジイミド、メチル−tert−ブチル−カルボジイミド、およびこれらの組み合わせを挙げることができる。適切な脂環式カルボジイミドとしては、ジシクロヘキシル−カルボジイミドを挙げることができる。適切な芳香族カルボジイミドとしては、ジフェニル−カルボジイミド、ジ−p−トリル−カルボジイミド、およびこれらの組み合わせを挙げることができる。いくつかの実施形態では、適切なカルボジイミドとしては、芳香族または脂環式のカルボジイミド、例えば、2位および2’位で、炭素原子が約1〜約18個のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ドデシル、オクタデシル、アリル、クロチル、オレイル、これらの組み合わせなど)、アラルキル基(例えば、ベンジル、β−フェニルエチル、キシリル、これらの組み合わせなど)、アリール基(例えば、フェニル、トリル、ナフチル、これらの組み合わせなど)、炭素原子が約1〜約18個のアルキル残基を有するアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ、これらの組み合わせなど)、ハロゲン原子(例えば、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、これらの組み合わせなど)、ニトロ基、カルボアルコキシ基(例えば、カルボメトキシ、カルボエトキシ、これらの組み合わせなど)、シアノ基、これらの組み合わせなどで置換された、芳香族または脂環式のモノカルボジイミドを挙げることができる。芳香族環または脂環式環に上述の種類以外の置換基を含むカルボジイミド、例えば、芳香族環または脂環式環の2,2’位および6,6’位で四置換されたものを使用してもよい。その他のものとしては、2,2’および6,6’で置換され、置換基がアルキルまたはアルコキシである、芳香族環または脂環式環のカルボジイミドが挙げられる。置換された芳香族および脂環式のカルボジイミドの例は、2,2’−ジメチル−ジフェニルカルボジイミド、2,2’−ジイソプロピル−ジフェニルカルボジイミド、2−ドデシル−2’−n−プロピル−ジフェニルカルボジイミド、2,2’−ジエトキシ−ジフェニルカルボジイミド、2−0−ドデシル−2’−0−エチル−ジフェニルカルボジイミド、2,2’−ジクロロジフェニルカルボジイミド、2,2’−ジトリル−ジフェニルカルボジイミド、2,2’−ジベンジルジフェニルカルボジイミド、2,2’−ジニトロ−ジフェニルカルボジイミド、2−エチル−2’−イソプロピル−ジフェニルカルボジイミド、2,6,2’,6’−テトラエチル−ジフェニルカルボジイミド、2,2’,6,6’−テトライソプロピルジフェニルカルボジイミド、2,6,2’,6’−テトラ−二級−ブチル−ジフェニルカルボジイミド、2,6,2’,6’−テトラエチル−3,3’−ジクロロ−ジフェニルカルボジイミド、2,6,2’,6’−テトライソプロピル−3,3’−ジニトロ−ジフェニルカルボジイミド、2−エチル−シクロヘキシル−2−イソプロピル−フェニルカルボジイミド、2,4,6,2’,4’,6’−ヘキサイソプロピル−ジフェニルカルボジイミド、2,2’−ジエチル−ジシクロヘキシルカルボジイミド、2,6,2’,6’−テトライソプロピル−ジシクロヘキシルカルボジイミド、2,6,2’,6’−テトラ−エチル−ジシクロヘキシルカルボジイミド、2,2’−ジクロロジシクロヘキシルカルボジイミド、2,2’−ジカルボエトキシ−ジフェニルカルボジイミド、2,2’−ジシアノ−ジフェニルカルボジイミド、これらの組み合わせなどが挙げられる。カルボジイミドは、水に混和性であってもよく、分散性であってもよい。適切なカルボジイミドとしては、立体的に嵩高いもの、水に混和性のもの、有機溶媒をほとんど含まないか、まったく含まないものが挙げられる。使用可能な市販のカルボジイミドとしては、STABAXOL(登録商標)P 200(テトラメチルキシレンジイソシアネートの反応生成物、水に分散したもの、Rhein Chemie)、STABAXOL(登録商標)P(ポリ(ニトリロメタンテトライルニトリロ(2,4,6−トリス(1−メチルエチル)−1,3−フェニレン))(Rhein Chemie)、STABAXOL(登録商標)I(テトライソプロピルジフェニルカルボジイミド)(Rhein Chemie)、UCARINK(登録商標)XL−29SE(Union Carbide)が挙げられる。他の適切なカルボジイミドとしては、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、テトラメチルキシリレンカルボジイミド、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0030】
カルボジイミドを水と反応させ、尿素を得てもよい。窒素を含有する尿素副生成物は、ポリエステルエマルションの安定性をさらに高めるのに役立つ場合がある。
【0031】
安定化剤は、少なくとも1つのポリエステル樹脂および水を含む有機溶媒に溶解され、このポリマーの溶融形態に無溶媒で加えられ、PIEのためにこれを冷却され、粉砕され得る。
【0032】
安定剤は、ポリマー固形分またはラテックス粒子を基準として約0.01〜約20wt%、約0.1〜約10.0wt%、約1〜約7wt%の量で加えられ得る。
【0033】
樹脂は弱塩基または中和剤と混合され、樹脂中の酸基を中和され得る。中和剤は、「塩基性中和剤」と呼ばれることもある。無機塩基剤および有機塩基剤のような任意の適切な塩基性中和試薬を用いてもよい。適切な塩基剤としては、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化リチウム、炭酸カリウム、これらの組み合わせなどを挙げることができる。適切な塩基剤としては、少なくとも1個の窒素原子(例えば、二級アミン)を含む単環化合物および多環化合物を挙げることができ、例えば、アジリジン、アゼチジン、ピペラジン、ピペリジン、ピリジン、ビピリジン、ターピリジン、ジヒドロピリジン、モルホリン、N−アルキルモルホリン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロウンデカン、1,8−ジアザビシクロウンデセン、ジメチル化ペンチルアミン、トリメチル化ペンチルアミン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、ピロリジノン、インドール、インドリン、インダノン、ベンズインダゾン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、イミダゾロン、イミダゾリン、オキサゾール、イソオキサゾール、オキサゾリン、オキサジアゾール、チアジアゾール、カルバゾール、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン、トリアジン、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、ピラゾリン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。単環化合物および多環化合物は、置換されていなくてもよく、環の任意の炭素位置で置換されていてもよい。
【0034】
塩基剤は、樹脂の約0.001wt%〜50wt%、約0.01wt%〜約25wt%、約0.1wt%〜5wt%の量で利用され得る。中和剤を水溶液の形態で加えてもよく、または固体として加えてもよい。
【0035】
上述の塩基性中和剤を、酸基を有する樹脂と組み合わせて利用し、約25%〜約500%、約50%〜約300%の中和比率を達成してもよい。中和比率は、樹脂中に存在する酸基を基準とした、塩基性中和剤を用いて与えられる塩基性基のモル比に100%を掛けて算出されてもよい。
【0036】
塩基性中和剤を加え、酸基を有する樹脂を含むエマルションのpHを約5〜約12、約6〜約11まで上げてもよい。酸基を中和することによって、エマルションを生成しやすくしてもよい。
【0037】
本開示のプロセスは、場合により、樹脂を溶融混合する前、または混合している間に、樹脂に界面活性剤を加えることを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、高温で樹脂を溶融混合する前に、界面活性剤が加えられてもよい。
【0038】
1種類、2種類またはそれ以上の界面活性剤が使用され得る。界面活性剤は、イオン系界面活性剤および非イオン系界面活性剤から選択されてもよい。アニオン系界面活性剤およびカチオン系界面活性は、用語「イオン系界面活性剤」に包含される。いくつかの実施形態では、界面活性剤が固体として加えられてもよく、濃度が約5重量%〜約100重量%(純粋な界面活性剤)、約10重量%〜約95重量%の溶液として加えてもよい。いくつかの実施形態では、界面活性剤が、樹脂の約0.01wt%〜約20wt%、約0.1wt%〜約16wt%の量で利用され得る。
【0039】
上述のように、本発明のプロセスは、高温で、少なくとも1つのポリエステル樹脂と、有機溶媒と、安定化剤と、場合により界面活性剤と、中和剤とを含む混合物を溶融混合し、ラテックスエマルションを作成することを含む。溶融混合する前に、樹脂をあらかじめブレンドしておいてもよい。あらかじめブレンドした樹脂に安定化剤を加えてもよい。樹脂混合物を溶融混合した後に、カルボジイミド安定化剤を加えてもよい。
【0040】
本開示のプロセスは、少なくとも1つの樹脂を、有機溶媒および安定化剤と接触させて樹脂混合物を作成することと、この樹脂混合物を加熱することと、この混合物を撹拌することと、中和剤を加え、樹脂の酸基を中和することと、転相が起こって転相したラテックスエマルションが生成するまで混合物に水を滴下することと、このラテックスを蒸留し、ラテックスから水/溶媒混合物を留分として除去することと、ラテックスを製造することと、留分中の水から溶媒を分離することと、場合により、水相に塩を加え、有機相からさらに水を抽出することとを含んでいてもよい。
【0041】
本開示のプロセスは、少なくとも1つの樹脂を有機溶媒と接触させて樹脂混合物を得ることと、この樹脂混合物を加熱することと、この混合物を撹拌することと、この樹脂混合物に安定化剤を加えることと、中和剤を加え、樹脂の酸基を中和することと、転相が起こって転相したラテックスエマルションが生成するまで混合物に水を滴下することと、このラテックスを蒸留し、ラテックスから水溶媒混合物を留分として除去することと、ラテックスを製造することと、留分中の水から溶媒を分離することと、場合により、水相に塩を加え、有機相からさらに水を抽出することとを含んでいてもよい。
【0042】
転相プロセスにおいて、ポリエステル樹脂を、溶媒中の樹脂濃度が約1wt%〜約85wt%、約5wt%〜約60wt%になるように、水に混和性の低沸点有機溶媒(例えば、IPA、酢酸エチル、MEK、およびこれらの組み合わせ)または上述の他の溶媒に溶解してもよい。
【0043】
次いで、樹脂混合物を、約25℃〜約90℃、約30℃〜約85℃の温度まで加熱する。加熱は、一定温度に保持される必要はなく、変化してもよい。例えば、望ましい温度になるまで、ゆっくりと、または一定増分で加熱を強めてもよい。
【0044】
本開示によれば、2溶媒系PIEプロセスを用い、結晶性ポリエステルラテックスおよび/またはアモルファスポリエステルラテックスを得てもよく、このプロセスには、分散工程と溶媒を除去する工程が必要である。このプロセスでは、ポリエステル樹脂を2種類の有機溶媒の組み合わせ(例えば、MEKおよびIPA)に溶解して均一な有機相を得てもよい。ポリエステル樹脂を含む溶媒、または溶解した樹脂混合物に安定化剤を加える。この有機相に所定量の塩基性溶液を加え、ポリエステル鎖の酸末端基を中和し、その後、DIWを加え、転相を経て、ポリエステル粒子の均一な水分散物を作成する。この段階では、有機溶媒も安定化剤も、ポリエステル粒子および水相にとどまっている。減圧蒸留によって、溶媒を留去する。
【0045】
溶融混合する前、溶融混合中、または溶融混合した後に、樹脂組成物の1つ以上の成分に安定化剤が加えられてもよい。
【0046】
溶融混合温度は、約25℃〜約200℃、約50℃〜約100℃、約55℃〜約90℃であってもよい。
【0047】
樹脂と、安定化剤と、中和剤と、場合により界面活性剤とを溶融混合し、次に混合物が水と接触して、ラテックスエマルションが作成される。水を加え、固形分含有量が約5%〜約50%、約10%〜約45%のラテックスを作成してもよい。水温をもっと高くすると溶解プロセスが促進される場合があるが、ラテックスは、室温程度の温度で作成することができる。水温は、約40℃〜約110℃、約50℃〜約100℃であってもよい。
【0048】
連続相が逆転したエマルションが作成され得る。アルカリ水溶液または塩基剤と、場合により界面活性剤と、および/または水との組成物を連続して加えることによって転相を行ない、樹脂組成物および安定化剤の溶融成分を含む液滴を含む分散相と、界面活性剤および/または水の組成物を含む連続相とを含む、転相エマルションを得てもよい。
【0049】
溶融混合は、当業者の常識の範囲内にある任意の手段、例えば、アンカー・ブレード・インペラを備えたガラス瓶中、押出機(すなわち、二軸スクリュー式押出機)、ニーダー(例えば、Haakeミキサー)、バッチ式反応器、またはほぼ均一な混合物を作成するための、粘性材料を十分に混合することが可能な任意の他のデバイスを利用して行ってもよい。
【0050】
必須ではないが、ラテックスの作成を促進するために任意の適切な撹拌デバイスを用いた撹拌が利用され得る。撹拌は、毎分約10回転(rpm)〜約5,000rpm、約20rpm〜約2,000rpm、約50rpm〜約1,000rpmの速度であってもよい。撹拌は一定速度である必要はなく、変化してもよい。例えば、混合物の加熱がもっと均一になるように、撹拌速度を上げてもよい。ホモジナイザ(つまり、高速剪断デバイス)を利用し、約3,000rpm〜約10,000rpmの速度で操作して、転相エマルションを作成してもよい。
【0051】
転相点は、エマルションの成分、加熱温度、撹拌速度などによって変わってもよいが、得られた樹脂が、エマルションの約5wt%〜約70wt%、約20wt%〜約65wt%、約30wt%〜約60wt%の量で存在するように、塩基性中和剤と、場合により界面活性剤と、および/または水とを加えたときに、転相が起こってもよい。
【0052】
転相した後、場合により、さらなる界面活性剤、水、および/またはアルカリ水溶液を加え、転相したエマルションを希釈してもよいが、必須ではない。さらなる安定剤を、場合により、転相後に加えてもよい。転相した後、転相したエマルションを室温まで冷却してもよい。
【0053】
有機溶媒を撹拌しつつ蒸留し、平均粒径が、例えば、約10nm〜約500nm、約120nm〜約250nmの樹脂エマルション粒子を得てもよい。
【0054】
次いで、本開示のラテックスエマルションを利用し、乳化凝集超低融点プロセスに適した粒子を得てもよい。
【0055】
水系媒体に乳化した樹脂粒子は、粒径がマイクロメートル未満であってもよく、例えば、約1μm以下、約500nm以下、例えば、約10nm〜約500nm、約50nm〜約400nm、約100nm〜約300nmであってもよい。粒径の調節は、樹脂に対する水の比率、中和比率、溶媒の濃度、溶媒の組成を変えることによって行なうことができる。
【0056】
本開示のラテックスの粗粒子含有量は、約0.01wt%〜約5wt%、約0.1wt%〜約3wt%であってもよい。本開示のラテックスの固体含有量は、約10wt%〜約50wt%、約20wt%〜約40wt%であってもよい。
【0057】
カルボジイミドは、水分と化学的に反応するにつれて、加水分解性ポリマーを安定化させる脱水剤として作用してもよく、これにより、トナーを調製する前の乳化した樹脂生成物の保存期間が延びる。
【0058】
本開示の樹脂エマルションの加水分解安定性は、保存したときの樹脂エマルションのpHまたは分子量の変化率に基づいて測定され得る。
【0059】
本開示のカルボジイミド樹脂エマルションのpH変化率は、約0〜約38日間、約1〜約28日間、約2〜約14日間保存した場合、約0〜約10%、約0.01〜約5%、約0.1〜約2%であってもよい。
【0060】
本開示のカルボジイミド樹脂エマルションのpHは、約0〜約38日間、約1〜約28日間、約2〜約14日間保存した場合、約7.1〜約7.8、約7.3〜約7.7、約7.5〜約7.6であってもよく、これに対し、安定化剤を含まないラテックス粒子では、約0〜約38日間保存した場合、pHの変化率は10%を超える。
【0061】
本開示の樹脂エマルション粒子の分子量変化率は、約0〜約70日間、約1〜約21日間、約2〜約10日間保存した場合、約0〜約30%、約0.01〜約20%、約0.1〜約10%であってもよく、これに対し、安定化剤を含まないラテックス粒子では、約0〜約70日間保存した場合、分子量変化率は、30%を超える。
【0062】
本開示の樹脂エマルションの分子量は、約0〜約70日間、約1〜約21日間、約2〜約10日間保存した場合、約18,000〜約26,000、約21,500〜約25,000、約23,000〜約24,000であってもよい。
【0063】
樹脂組成物を水と接触させてエマルションを作成し、この混合物から上述のように溶媒を除去すると、次に得られたラテックスを利用し、当業者の常識の範囲内にある任意の方法でトナーを作成してもよい。ラテックスエマルションは、着色剤(場合により分散剤の形態)と、他の添加剤と接触させ、適切なプロセス(いくつかの実施形態では、乳化凝集および融着プロセス)によって、超低融点溶融トナーを作成してもよい。
【0064】
着色剤、ワックスおよび他の添加剤を含むトナー組成物のさらなる任意成分は、樹脂を溶融混合して本開示のラテックスエマルションを作成する前、溶融混合している間、または溶融混合した後に加えられ得る。さらなる成分が、ラテックスエマルションを作成する前、作成している間、または作成した後に加えられ得る。界面活性剤を加える前に、着色剤を加えてもよい。
【0065】
種々の既知の適切な着色剤(例えば、染料、顔料、染料混合物、顔料混合物、染料と顔料の混合物など)は、トナー中に、トナーの約0.1〜約35wt%、約1〜約15wt%、約3〜約10wt%の量で含まれていてもよい。
【0066】
場合により、トナー粒子を作成するときに、ワックスが使用されてよい。ワックスは、ワックス分散剤として与えられてもよく、1種類のワックスを含んでいてもよく、2種類以上の異なるワックスの混合物を含んでいてもよい。ワックスは、トナーの特定の性質、例えば、トナー粒子の形状、トナー粒子表面にワックスが存在するか否か、帯電特性および/または融合特性、光沢、ストリッピング、オフセット特性などを高めてもよい。
【0067】
ワックスが含まれる場合、ワックスは、例えば、トナー粒子の約1wt%〜約25wt%、約5wt%〜約20wt%の量で存在してもよい。
【0068】
選択可能なワックスとしては、例えば、平均分子量が約500〜約20,000、約1,000〜約10,000のワックスのワックスが挙げられる。
【0069】
いくつかの実施形態では、ワックスが、1つ以上の水系エマルションまたは固形ワックスの水分散物の形態でトナーに組み込まれ、固形ワックスの粒径は、約100〜約300nmであってもよい。
【0070】
化学プロセス(例えば、懸濁し、カプセル化するプロセス)を含む、トナー粒子を調製する任意の適切な方法を用いてもよい。トナー組成物およびトナー粒子は、凝集し、融着するプロセスによって調製されてもよい。
【0071】
得られた混合物のpHは、酸(例えば、酢酸、硝酸など)によって調節してもよい。混合物のpHを約2〜約5に調節してもよい。混合物を、任意の適切な手段によって、例えば、約600〜約6,000rpmで混合することによって均質化してもよい。
【0072】
上述の混合物を調製した後、任意の適切な凝集剤が混合物に加えられ得る。適切な凝集剤としては、例えば、二価カチオン材料または多価カチオン材料の水溶液が挙げられる。凝集剤は、樹脂のTより低い温度で混合物に加えられてもよい。
【0073】
凝集剤がポリイオンである場合、任意の所望な数のポリイオン原子が存在し得る。例えば、適切なポリアルミニウム化合物は、約2個〜約13個、約3個〜約8個のアルミニウムイオンを有している。
【0074】
凝集剤は、例えば、混合物中の樹脂の約0.001〜約10wt%、約0.2〜約8wt%、約0.5〜約5wt%の量で加えられてもよい。
【0075】
粒子は、所定の望ましい粒径が得られるまで凝集させてもよい。所定の望ましい粒径に到達したら、成長プロセスを停止する。混合物のpHは、塩基を用いて約3〜約10、約5〜約9に調節され得る。トナーの成長を止めるのに利用される塩基としては、任意の適切な塩基が挙げられ、例えば、アルカリ金属水産化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、これらの組み合わせなど)が挙げられる。いくつかの実施形態では、pHを望ましい値に調節しやすくするために、エチレンジアミン四酢酸が加えられてもよい。
【0076】
凝集は融着と別に行なってもよい。凝集段階および融着段階が別の場合、凝集プロセスは、剪断条件下、高温、例えば、約40℃〜約90℃、約45℃〜約80℃で行なってもよく、樹脂のTより低い温度で行なってもよい。
【0077】
トナー粒子の最終粒径は、約2μm〜約12μm、約3μm〜約10μmであってもよい。
【0078】
凝集の後で融着の前に、凝集した粒子に樹脂コーティングを塗布し、粒子の上にシェルを形成してもよい。シェルを形成するために利用可能な樹脂としては、限定されないが、上述の結晶性樹脂ラテックス、および/または上述のアモルファス樹脂が挙げられる。複数の樹脂を任意の適切な量で利用してもよい。界面活性剤を使用してもよい。
【0079】
当業者の常識の範囲内にある任意の方法によって、凝集した粒子にシェル樹脂を塗布してもよい。
【0080】
約30℃〜約80℃の温度まで加熱しつつ、凝集した粒子の上にシェルを作成してもよい。約5分間から約10時間かけてシェルを作成してもよい。
【0081】
シェルは、トナー成分の約1重量%〜約80重量%、約10重量%〜約40%、約20重量%〜約35%の量で存在してもよい。
【0082】
望ましい粒径になるまで凝集させ、場合により任意のシェルを塗布した後、粒子が望ましい採取形状になるまで融着させてもよく、融着は、例えば、混合物を約45℃〜約100℃の温度(トナー粒子を作成するために利用される樹脂のT以上の温度であってもよい)まで加熱することによって行なうか、および/または、例えば、約1000rpm〜約100rpmまで撹拌を遅くすることによって行なってもよい。凝集は、約0.01〜約9時間かけて行なってもよい。
【0083】
凝集させ、および/または融着させた後、混合物を室温(例えば、20℃〜約25℃)まで冷却してもよい。所望な場合、すばやく冷却してもよく、ゆっくりと冷却してもよい。冷却した後、トナー粒子を、場合により水で洗浄し、乾燥させてもよい。
【0084】
また、トナー粒子は、場合により、所望な場合または必要な場合には、他の添加剤を含有していてもよい。例えば、トナーは、陽電荷制御剤または負電荷制御剤を、例えば、トナーの約0.1〜約10wt%の量で含んでいてもよい。適切な電荷制御剤の例としては、四級アンモニウム化合物、アルキルピリジニウム化合物、有機サルフェート組成物および有機スルホネート組成物、アルミニウム塩、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0085】
また、トナー粒子は、例えば、金属酸化物、コロイド状シリカおよびアモルファスシリカ、金属塩および脂肪酸金属塩、長鎖アルコール、およびこれらの混合物のような流動補助添加剤を含有していてもよい。
【0086】
トナーの流動性、摩擦性向上、混合制御、現像安定性および転写安定性の向上、トナーのブロキング温度の上昇のために、トナー表面にシリカが塗布され得る。相対湿度安定性の向上、摩擦性制御、現像安定性および転写安定性の向上のために、TiOを塗布してもよい。トナーとキャリア粒子との間の接触点を増やすことによって、潤滑性、現像剤の導電性、摩擦性向上、トナー電荷量および電荷安定性の向上のために、ステアレートを用いてもよい。
【0087】
これらの外部から加える添加剤は、それぞれ、トナーの約0.1wt%〜約5wt%、約0.25wt%〜約3wt%の量で存在してもよいが、添加剤の量は、これらの範囲からはずれていてもよい。
【0088】
部および割合は、他の意味であると示されていない限り、重量基準である。本明細書で使用される場合、「室温」は、約20℃〜約25℃の温度を指す。
【実施例】
【0089】
(比較例1)
結晶性ポリエステル樹脂の溶媒による乳化。1Lのガラス瓶に、IPA 58g、MEK 70g、AVが10.5mg KOH/ポリマー1gの不飽和結晶性ポリエステル樹脂(UCPE)200gを入れた。このガラス瓶を、76℃に設定した水浴に入れ、ガスケット、凝縮器、撹拌のためのアンカー・ブレード・インペラを取り付け、カバーをした。DIW約600gをコイル管で96℃まで加熱した。
【0090】
60rpmで撹拌しつつ、樹脂が76℃まで加熱された。混合物を100分間撹拌し、樹脂をほぼ溶解させた。樹脂が溶融/溶解したら、浴温を70℃まで下げ、10% NHOH 溶液6.04g(10% NHとして計算)(中和比率は約95%)を反応容器に加え、撹拌を100rpmまで速くした。
【0091】
混合物を10分間撹拌した。その後、あらかじめ加熱したDIW 400gを流速4.4g/分で約90分かけてポンプで上述の瓶に入れた。
【0092】
次いで、別個の熱いDIW200gを速度10g/分で20分かけて加えた。次いで、この混合物を室温まで冷却し、20μmふるいでふるい分けした。得られた樹脂エマルションは、固形分を30重量%含んでおり、体積平均径は、NANOTRAC(登録商標)粒径分析機で測定した場合、113nmであった。
【0093】
エマルション/溶媒溶液をガラス皿に入れ、ドラフトチャンバーに入れ、磁気撹拌棒で24時間撹拌し、樹脂エマルションからMEKおよびIPAを蒸発させた。
【0094】
(実施例1)
比較例1と同じ結晶性ポリエステル樹脂を、安定化剤を用い、溶媒によって乳化。AVが10.5mg KOH/ポリマー1gのUCPE約200g、IPA 58g、MEK 70g、テトライソプロピルジフェニルカルボジイミド(1.5wt%)(Rhein Chemie、STABAXOL(登録商標)Iとして)3gを1Lのガラス製反応容器に入れた。このガラス瓶を、76℃に設定した水浴に入れ、ガスケット、凝縮器、撹拌のためのアンカー・ブレード・インペラを取り付け、カバーをした。DIW約600gをコイル管で96℃まで加熱した。
【0095】
60rpmで撹拌しつつ、樹脂を76℃まで加熱した。混合物を120分間撹拌し、樹脂をほぼ溶解させた。樹脂が溶融/溶解したら、浴温を70℃まで下げ、10% NHOH 溶液6.04g(10% NHとして計算)(中和比率は約95%)を反応容器に加え、撹拌を100rpmまで速くした。
【0096】
混合物を10分間撹拌した。その後、あらかじめ加熱しておいたDIW 400gを流速4.4g/分で約90分かけてポンプで上述の瓶に入れた。
【0097】
次いで、別個の熱いDIW200gを速度13.7g/分で15分かけて加えた。次いで、この混合物を室温まで冷却し、20μmふるいでふるい分けした。得られた樹脂エマルションは、固形分を30重量%含んでおり、体積平均径は、148.5nmであった。
【0098】
(実施例2)
比較例1と同じ結晶性ポリエステル樹脂を、別の安定化剤を用い、溶媒によって乳化。2,2’,6,6’−テトライソプロピルジフェニルカルボジイミド(1.5wt%)(Rhein Chemie、STABAXOL(登録商標)I LFとして)3.15gを安定化剤として用い、樹脂エマルションを実施例1のように作成した。
【0099】
得られた樹脂エマルションは、固形分を30重量%含んでおり、体積平均径は、137nmであった。
【0100】
(実施例3)
比較例1と同じ結晶性ポリエステル樹脂を、別の安定化剤を用い、溶媒によって乳化。テトラメチルキシレンジイソシアネートカルボジイミド(約2wt%)(Rhein Chemie、STABAXOL(登録商標)P200として)4gを安定化剤として用い、樹脂エマルションを実施例1のように作成した。
【0101】
得られた樹脂エマルションは、固形分を30重量%含んでおり、体積平均径は、214.9nmであった。
【0102】
(実施例4)
比較例1と同じ結晶性ポリエステル樹脂を、別の安定化剤を用い、溶媒によって乳化。テトライソプロピルジフェニルカルボジイミド(5wt%)(Rhein Chemie、STABAXOL(登録商標)Iとして)10gを安定化剤として用い、樹脂エマルションを実施例1のように作成した。
【0103】
得られた樹脂エマルションは、固形分を30重量%含んでおり、体積平均径は、1.081μmであった。
【0104】
コントロール(比較例1)およびカルボジイミド含有エマルション(実施例1〜4)を、22℃(72°F)で38日間、38℃(100°F)で155日間エージングした。22℃でエージングしたエマルションのpHを測定し、分子量は、促進エージング(38℃まで加熱)したエマルションで測定した。以下の表1は、種々のカルボジイミドを含有するポリエステルエマルションのpH変化を示す。
【表1】

【0105】
表1に示されているように、比較例1のエマルションは、室温で38日経過時のpH変化が最も大きかった。コントロールのpHは、約7.40から約6.62まで低下しており、このことは、ポリエステルが加水分解によって分解したことを示す。ポリマー鎖のエステル単位は、加水分解によって開裂し、遊離カルボン酸基が生成し、これによりpHが低下した。
【0106】
図1は、加熱条件下で保存した場合、比較例1のエマルションが、加熱条件下でエージングしたカルボジイミド含有エマルションと比較して、顕著に分解していることを示す。カルボジイミド含有エマルションを、顕著な沈降が起こらないように、上部と底部の両方からサンプリングした。比較例1では、粒子が不安定化することに起因する沈降がみられ、これはエマルション分解の指標であった。この現象は、分子量を測定することによって確認され、分子量の低下は、ポリマーエステル単位の加水分解による開裂と合致していた。
【0107】
比較例1のエマルションおよびカルボジイミド含有エマルションの粒径は、室温でのエージング試験中は顕著には変化しなかった。しかし、pHデータは、水系環境では変化しており、カルボジイミドとともに乳化させていない場合には、UCPEポリエステル鎖の加水分解から生じた遊離カルボン酸基が増えていることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポリエステル樹脂を、少なくとも1つの有機溶媒およびカルボジイミド含有安定化剤と接触させることと、
前記樹脂混合物を混合することと、
前記混合物を中和剤と接触させて中和混合物を作成することと、
前記中和混合物を脱イオン水と接触させてエマルションを作成することと、
前記エマルションからラテックス粒子を回収することとを含む、プロセス。
【請求項2】
前記少なくとも1つの有機溶媒が、エステル、エーテル、ケトン、アルコール、アミン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記カルボジイミドが、ポリ(ニトリロメタンテトライルニトリロ(2,4,6−トリス(1−メチルエチル)−1,3−フェニレン)、テトライソプロピルジフェニルカルボジイミド、2,2’,6,6’−テトライソプロピルジフェニルカルボジイミド、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、テトラメチルキシレンカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、メチル−tert−ブチル−カルボジイミド、ジシクロヘキシル−カルボジイミド、ジフェニル−カルボジイミド、ジ−p−トリル−カルボジイミド、2,2’−ジメチル−ジフェニルカルボジイミド、2,2’−ジイソプロピル−ジフェニルカルボジイミド、2−ドデシル−2’−n−プロピル−ジフェニルカルボジイミド、2,2’−ジエトキシ−ジフェニルカルボジイミド、2−0−ドデシル−2’−0−エチル−ジフェニルカルボジイミド、2,2’−ジクロロジフェニルカルボジイミド、2,2’−ジトリル−ジフェニルカルボジイミド、2,2’−ジベンジルジフェニルカルボジイミド、2,2’−ジニトロ−ジフェニルカルボジイミド、2−エチル−2’−イソプロピル−ジフェニルカルボジイミド、2,6,2’,6’−テトラエチル−ジフェニルカルボジイミド、2,6,2’,6’−テトラ−二級−ブチル−ジフェニルカルボジイミド、2,6,2’,6’−テトラエチル−3,3’−ジクロロ−ジフェニルカルボジイミド、2,6,2’,6’−テトライソプロピル−3,3’−ジニトロ−ジフェニルカルボジイミド、2−エチル−シクロヘキシル−2−イソプロピル−フェニルカルボジイミド、2,4,6,2’,4’,6’−ヘキサイソプロピル−ジフェニルカルボジイミド、2,2’−ジエチル−ジシクロヘキシルカルボジイミド、2,6,2’,6’−テトライソプロピル−ジシクロヘキシルカルボジイミド、2,6,2’,6’−テトラ−エチル−ジシクロヘキシルカルボジイミド、2,2’−ジクロロジシクロヘキシルカルボジイミド、2,2’−ジカルボエトキシ−ジフェニルカルボジイミド、2,2’−ジシアノ−ジフェニルカルボジイミド、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
カルボジイミド含有安定化剤を含む前記ラテックス粒子が、約0〜約38日間保存した場合、約0〜約10%未満のpH変化率を示し、これに対し、安定化剤を含まないラテックス粒子では、約0〜約38日間保存した場合、10%を超えるpH変化率を示す、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
カルボジイミド含有安定化剤を含む前記ラテックス粒子が、約0〜約70日間保存した場合、約0〜約30%の分子量変化率を示し、これに対し、安定化剤を含まないラテックス粒子では、約0〜約70日間保存した場合、30%を超える分子量変化率を示す、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記樹脂混合物と、場合により着色剤と、場合によりワックスと、ポリエステル樹脂とを接触させ、ラテックス粒子の上にシェルを作成してトナー粒子を作ることをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記少なくとも1つのポリエステル樹脂が、酸価が約1mg KOH/ポリマー1g〜約200mg KOH/ポリマー1gの酸性基を含む結晶性樹脂を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記ラテックス粒子の固形分含有量が約5wt%〜約50wt%であるか、または粒径が約10nm〜約500nmであるか、またはその両方である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記エマルションから有機溶媒を留去することをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記中和剤が、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化リチウムまたは炭酸カリウムである、請求項1に記載のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−57155(P2012−57155A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188001(P2011−188001)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】