説明

加水分解硬化性組成物のための調節された粒子形態を有するポリサッカライド誘導体

【課題】調節された塊評価を有する加水分解硬化性組成物の製造に使用するための調節された粒子形態を有するポリサッカライド誘導体を提供する。
【解決手段】少なくても38マイクロメートルのメジアン粒子直径DOP(50、3)および少なくても80マイクロメートルの均等粒子円のメジアン粒子直径EQPC(50、3)を有する粒子状ポリサッカライド誘導体を加水分解硬化性組成物に添加する。少なくても38マイクロメートルのメジアン粒子直径DOP(50、3)および少なくても80マイクロメートルの均等粒子円のメジアン粒子直径EQPC(50、3)を有する粒子状ポリサッカライド誘導体を添加する前に、加水分解硬化性組成物が粒子状ポリサッカライド誘導体を含んでいない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は調節された塊評価(lump rating)を有する加水分解硬化性組成物の製造に使用するための、調節された粒子形態を有するポリサッカライド誘導体に関する。本発明は、粒子状ポリサッカライド誘導体の粒子形態を調節することを含む加水分解硬化性組成物の塊評価を調節する方法、並びに加水分解硬化性組成物中の粒子状ポリサッカライドにさらに関する。さらに、本発明は、調節された粒子形態を有する粒子状ポリサッカライド誘導体を含む加水分解硬化性組成物に関する。本発明は、調節された粒子形態を有する粒子状ポリサッカライド誘導体の様々な用途およびその使用方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
ポリサッカライド誘導体、例えば、セルロースエーテルは、加水分解硬化性組成物、例えば、石膏スプレープラスター組成物における増粘剤および水保持添加剤として成功裏に使用されることができる。例えば、水の添加後の石膏の完全な湿潤は、たとえポリサッカライド誘導体が存在しない場合でさえ、石膏粒子の高い表面エネルギーのせいである程度遅れる。しかし、ポリサッカライド誘導体の存在下では、ポリサッカライド粒子が溶けるに従って、すべての石膏粒子をぬらす水は増粘される。その結果、移動水性相は石膏の湿潤における有効性がより低い。その適用中に、ぬれていない石膏塊は、スプレー後にそれが壁上に均一に広げられるに従って、プラスター中で目に見えるようになる。これらの塊は光学的欠陥であり、その後のプラスター適用の作業工程において、可能ならばそれらを完全に除去するための追加の作業およびエネルギーを必要とする。塊をなくしたもしくは最小限にした加水分解硬化性組成物、特に石膏スプレープラスターは、それがより簡単かつより速い適用を可能にするので、望ましいであろう。作業者は一日あたり、欠陥のない加水分解硬化性組成物のより多くの領域を適用することができる。
【0003】
石膏プラスター中で塊を効果的に低減させる方法の一つは顆粒状セルロースエーテル(50重量%未満が200ミクロン以下の粒子サイズを有する)の使用であろう。しかし、高い含有量の大きなセルロースエーテル粒子は壁上にスプレーされたプラスターの劣った水保持をもたらすであろう。混合とスプレーとの間の短いタイムスパン(約10秒)中に、この粗い粒子は完全に溶解しないであろうし、プラスターは不十分な水保持しか有さないであろうし、ポスト増粘が観察されるであろう。
【0004】
加水分解硬化性組成物、例えば、石膏プラスター中で塊を低減させる別の方法はセルロースエーテルのメトセル(Methocel商標)J−グレード(ミシガン州、ミッドランドのダウケミカル)の使用であろう。多量の置換基がセルロースエーテルに何らかの熱可塑性特性を与え、その結果、そのセルロースエーテルはその繊維構造をほぼ完全に失い、本発明のポリサッカライド誘導体と類似する繊維厚みおよび均等粒子円の直径を示す。残念なことに、このようなセルロースエーテルの製造コストは非常に高く、このプロセスは望ましくなくかつ取り扱いおよび/または廃棄するのにコストがかかる廃水流れを生じさせる。
【0005】
英国特許出願公開第2262527A号は、低減された塊形成のセルロースエーテルを得るために、ミリング前の湿潤セルロースエーテルフィルターケーキの前処理を記載する。この湿潤フィルターケーキは30〜80重量%の水分含量を有し、かつ40〜120℃の温度に冷却される。この例は、このプロセスがセルロースエーテルの嵩密度を増大させうることを示す。このプロセスにおいて使用される粉砕技術については何ら言及されていない。そして、平均粒子サイズは別として、粒子サイズ分布についての情報はなく、かつセルロースエーテル粉体の形態についても情報はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】英国特許出願公開第2262527A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明により取り組まれる課題は、改良された塊評価または改良された水保持挙動、またはその双方を有する加水分解硬化性組成物、例えば、モルタルもしくはプラスター組成物を提供することである。本発明によって取り組まれるさらなる課題は、塊評価および水保持から選択されるその一以上の特性が、加水分解硬化性組成物に適合した粒子状ポリサッカライド化合物を単に含ませることにより調節されることができ、この粒子状ポリサッカライド化合物が加水分解硬化性組成物に所望の特性を付与する、加水分解硬化性組成物を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、メジアン粒子直径DOP(50,3)および均等粒子円のメジアン粒子直径EQPC(50,3)で表される調節されたもしくは所望の粒子形態を有する粒子状ポリサッカライド誘導体が加水分解硬化性組成物に添加される場合に、加水分解硬化性組成物の塊評価が調節されまたは改良されうることを見いだした。
本発明の第1の形態においては、少なくとも38マイクロメートルのメジアン粒子直径DOP(50,3)および少なくとも80マイクロメートルの均等粒子円のメジアン粒子直径EQPC(50,3)を有する粒子状ポリサッカライド誘導体を加水分解硬化性組成物に添加することを含む、加水分解硬化性組成物を製造する方法が提供される。好ましくは、ポリサッカライド誘導体は少なくとも50マイクロメートル、かつ2000マイクロメートル以下、より好ましくは600マイクロメートル以下、最も好ましくは350マイクロメートル以下のメジアン粒子長さを有する。
本発明の第2の形態においては、加水分解硬化性組成物に粒子状ポリサッカライド誘導体を添加することを含み、粒子状ポリサッカライド誘導体が少なくとも38マイクロメートルのメジアン粒子直径DOP(50,3)および少なくとも80マイクロメートルの均等粒子円のメジアン粒子直径EQPC(50,3)を有することを確実にすることを当該方法がさらに含む、加水分解硬化性組成物の製造方法が提供される。
本発明の第3の形態においては、a)粒子状ポリサッカライド誘導体を含んでいない加水分解硬化性組成物を提供し;並びにb)少なくとも38マイクロメートルの調節されたメジアン粒子直径DOP(50,3)および少なくとも80マイクロメートルの均等粒子円の調節されたメジアン粒子直径EQPC(50,3)を有する粒子状ポリサッカライド誘導体を加水分解硬化性組成物に添加する;ことを含む、加水分解硬化性組成物の塊評価を調節する方法が提供される。
本発明の第4の形態においては、粒子状ポリサッカライド誘導体が少なくとも38マイクロメートルのメジアン粒子直径DOP(50,3)および少なくとも80マイクロメートルの均等粒子円のメジアン粒子直径EQPC(50,3)を有する、粒子状ポリサッカライド誘導体を含む加水分解硬化性組成物が提供される。
本発明の第5の形態においては、加水分解硬化性組成物を製造する方法もしくは加水分解硬化性組成物の塊評価を調節する方法における、少なくとも38マイクロメートルのメジアン粒子直径DOP(50,3)および少なくとも80マイクロメートルの均等粒子円のメジアン粒子直径EQPC(50,3)を有する粒子状ポリサッカライド誘導体の使用が提供される。
本発明の第6の形態においては、加水分解硬化性組成物における化合物としての、少なくとも38マイクロメートルのメジアン粒子直径DOP(50,3)および少なくとも80マイクロメートルの均等粒子円のメジアン粒子直径EQPC(50,3)を有する粒子状ポリサッカライド誘導体の使用が提供される。
【発明の効果】
【0009】
ポリサッカライド誘導体のメジアン粒子直径DOP(50,3)および均等粒子円のメジアン粒子直径EQPC(50,3)により表される粒子形態を調節することにより、このポリサッカライド誘導体が加水分解硬化性組成物に添加される場合に、加水分解硬化性組成物の塊評価が調節されうることは驚くべきことである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、一方では、加水分解硬化性組成物を製造する方法に関し、他方では加水分解硬化性組成物の塊評価を調節する方法に関する。この方法は両方とも、少なくとも38マイクロメートルのメジアン粒子直径DOP(50,3)および少なくとも80マイクロメートルの均等粒子円のメジアン粒子直径EQPC(50,3)を有する粒子状ポリサッカライド誘導体を加水分解硬化性組成物に添加する工程を含む。加水分解硬化性組成物を製造する別の方法に従って、本方法は加水分解硬化性組成物中に含まれる粒子状ポリサッカライド誘導体が少なくとも38マイクロメートルのDOP(50,3)および少なくとも80マイクロメートルのEQPC(50,3)を有するのを確実にすることを含む。
【0011】
本発明において使用されるポリサッカライド誘導体は、DOP(50,3)およびEQPC(50,3)によって表される調節された粒子形態を有し、この調節された粒子形態は、例えば、スプレープラスター装置において、配合された加水分解硬化性組成物が水と接触する際の最初の数秒間の可溶化反応速度を制御するのを助ける。ポリサッカライド誘導体粒子は、より少ない微細物質含量、より大きな繊維厚さ、および均等粒子円の特定された直径を有する。ポリサッカライドは、水が加水分解硬化性組成物粉体を完全に湿潤にするのを素早く可能にする溶液にはならない。そして、ポリサッカライド誘導体は、それがその充分な水保持能力を提供するように、混合から壁上にスプレーするまでのタイムスパンの間にできるだけ完全に溶液になる。
【0012】
驚くべきことに、ポリサッカライド誘導体のDOP(50,3)およびEQPC(50,3)によって表される粒子形態と、その調節された粒子形態を有するポリサッカライド誘導体が添加された加水分解硬化性組成物の塊評価との間に相関性があることが見いだされた。
【0013】
よって、加水分解硬化性組成物を製造する方法は、加水分解硬化性組成物に添加される粒子状ポリサッカライド誘導体のDOP(50,3)を少なくとも38マイクロメートルの値に調節することにより、およびEQPC(50,3)を少なくとも80マイクロメートルの値に調節することにより、加水分解硬化性組成物の塊評価を調節することを含むことが好ましい。
【0014】
本明細書において使用される場合「調節する」とは、その文脈中で、組成物に添加されるポリサッカライド誘導体の粒子形態が制御され、必要であれば、加水分解硬化性組成物に所望の塊評価が付与されるようなDOP(50,3)およびEQPC(50,3)を有する方法で調節されることを意味する。
【0015】
例えば、加水分解硬化性組成物の塊評価を「調節する」方法であって、a)粒子状ポリサッカライド誘導体を含んでいない加水分解硬化性組成物を提供する工程;およびb)少なくとも38マイクロメートルの「調節された」メジアン粒子直径DOP(50,3)および少なくとも80マイクロメートルの「調節された」均等粒子円のメジアン粒子直径EQPC(50,3)を有する粒子状ポリサッカライド誘導体を加水分解硬化性組成物に添加する工程;を含む方法においては、下記の工程によって「調節する」ことが行われうる:
a)粒子状ポリサッカライド誘導体を含んでいない第1の加水分解硬化性組成物、および粒子状ポリサッカライド誘導体を含んでいない第2の加水分解硬化性組成物を提供する工程、
b)第1の粒子状ポリサッカライド誘導体を第1の加水分解硬化性組成物に添加し、第2の粒子状ポリサッカライド誘導体を第2の加水分解硬化性組成物に添加する工程であって、第1および第2の粒子状ポリサッカライド誘導体のそれぞれのDOP(50,3)は少なくとも38マイクロメートルであり、第1および第2の粒子状ポリサッカライド誘導体のそれぞれのEQPC(50,3)は少なくとも80マイクロメートルであり、さらに、第1および第2の粒子状ポリサッカライド誘導体のDOP(50,3)およびEQPC(50,3)は互いに異なっている工程、
c)第1および第2の加水分解硬化性組成物の塊評価を決定する工程、
d)i)第1および第2の粒子状ポリサッカライド誘導体のそれぞれのDOP(50,3)およびEQPC(50,3)とii)第1および第2の加水分解硬化性組成物のそれぞれの塊評価との間の相関性を確定する工程、
e)確定した相関性を利用して、加水分解硬化性組成物に添加される粒子状ポリサッカライド誘導体のDOP(50,3)およびEQPC(50,3)を加水分解硬化性組成物の所望の塊評価に適合させる工程。
【0016】
本明細書において使用される場合、特定のDOPおよび/またはEQPCを「確実にする」との用語はDOPおよび/またはEQPCを測定し、必要な場合には、すなわち、DOPおよび/またはEQPCのいずれかが所望の値でない場合には、乾燥粉砕することにより、必要ならば、乾燥粉砕前の粒子状ポリサッカライドの温度および/または水分含量の調節をさらに伴って、このDOPおよび/またはEQPCを調節することを意味する。
【0017】
本発明において使用される場合「添加する」とは調節された粒子形態を有するポリサッカライド誘導体が最終的な加水分解硬化性組成物中に含まれることを意味する。ポリサッカライド誘導体はベースとなる加水分解硬化性組成物の製造中もしくは製造後にに添加されうる。それは加水分解硬化性組成物のほかの成分と組み合わせてもしくは単独で添加されうる。よって、少なくとも38マイクロメートルのDOP(50,3)および少なくとも80マイクロメートルのEQPC(50,3)を有する粒子状ポリサッカライド誘導体が最終的な加水分解硬化性組成物中に含まれることが確実にされなければならない。
【0018】
少なくとも38マイクロメートルのDOP(50,3)および少なくとも80マイクロメートルのEQPC(50,3)を有する粒子状ポリサッカライド誘導体を加水分解硬化性組成物に添加することを含む加水分解硬化性組成物を製造する方法においては、加水分解硬化性組成物は、加水分解硬化性組成物に少なくとも38マイクロメートルのDOP(50,3)および少なくとも80マイクロメートルのEQPC(50,3)を有する粒子状ポリサッカライド誘導体を添加する前に、粒子状ポリサッカライド誘導体を含んでいない。
【0019】
さらに、「添加する」の定義に関して、加水分解硬化性組成物を製造する上記方法は、もう一つの方法として、粒子状ポリサッカライド誘導体が少なくとも38マイクロメートルのDOP(50,3)および少なくとも80マイクロメートルのEQPC(50,3)を有することを確実にすることをさらに含むことができる。
【0020】
加水分解硬化性組成物に添加される粒子状ポリサッカライド誘導体のさらに高いメジアン粒子直径DOP(50,3)およびさらに高い均等粒子円のメジアン粒子直径EQPC(50,3)は加水分解硬化性組成物の向上した塊評価を導き、および逆もまた同様であることが驚くべきことに見いだされた。この知見は加水分解硬化性組成物の重要な特性を調節するのを可能にするだけでなく、塊評価について改良された加水分解硬化性組成物の生産も可能にする。
【0021】
粒子の直径はDOPと称される。DOPは好ましくは粒子サイズおよび/または形状分析と一緒になった高速イメージ分析システムによって測定される。この具体的なイメージ分析方法は、W.Witt,U.Kohler,J.List,Current Limits of Particle Size and Shape Analysis with High Speed Image Analysis,PARTEC2007に記載されている。
【0022】
メジアン粒子直径DOP(50,3)は以下のように定義される:すべての粒子サイズ分布、例えば、DOPは数(0)、長さ(1)、面積(2)もしくは体積(3)分布として表されおよび適用されうる。DOPの体積分布は累積分布Qとして計算される。粒子直径値以内の体積分布DOP(50,3)はコンマの後の数「3」によって表示される。メジアン値を反映する表示「50」は、粒子分布の直径の50%がμmでの所定の値よりも小さく、50%がより大きいことを表す。50%DOP値はイメージアナライザーソフトウェアによって計算される。高速イメージ分析システムはドイツ国、クラウスタルゼラフェルドのシンパテック(Sympatec)GmbHから、動的イメージ分析(DIA)システムQICPIC商標として市販されている。このシステムは粒子の形状を分析し、粒子の潜在的なカーリネス(curliness)を考慮する。それはほかの方法よりも真の粒子サイズのより正確な測定を提供する。動的イメージ分析(DIA)システムQICPIC商標はWitt,W.,Kohler,U.,List,J.:Direct Imaging of very fast Particles Opens the Application of Powerful(dry) Dispersion for Size and Shape Characterization,PARTEC2004、ドイツ国、ニュルンベルグに記載されている。
【0023】
粒子のEQPCはその粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径として定義される。EQPCは好ましくは、粒子サイズおよび形状分析を一緒にする高速イメージ分析システムによって測定される。この具体的なイメージ分析方法は、Witt,W.,Kohler,U.,List,J.:Direct Imaging of very fast Particles Opens the Application of Powerful(dry) Dispersion for Size and Shape Characterization,PARTEC2004、ドイツ国、ニュルンベルグにより詳細に記載されている。
【0024】
EQPC(50,3)は等しい投影面積の円のメジアン直径であり、以下のように定義される:すべての粒子サイズ分布、例えば、EQPCは数(0)、長さ(1)、面積(2)もしくは体積(3)分布として表され、適用されうる。EQPCの体積分布は累積分布Qとして計算される。等しい投影面積の円の直径内の体積分布EQPC50,3はカンマの後の数字「3」によって表示される。メジアン値を反映する表示「50」は、粒子分布のEQPCの50%がμmでの所定の値よりも小さく、50%がより大きいことを表す。50%EQPC値はイメージアナライザーソフトウェアによって計算される。
【0025】
本発明の方法に使用されるポリサッカライド誘導体は好ましくは少なくとも35マイクロメートル、より好ましくは少なくとも38マイクロメートル、さらにより好ましくは少なくとも42マイクロメートル、最も好ましくは少なくとも45マイクロメートルのメジアン粒子直径DOP(50,3)を有する。ポリサッカライド誘導体は好ましくは150マイクロメートル以下、より好ましくは100マイクロメートル以下、最も好ましくは80マイクロメートル以下のメジアン粒子直径DOP(50,3)を有する。
【0026】
本発明の方法に使用されるポリサッカライド誘導体は好ましくは少なくとも75マイクロメートル、より好ましくは少なくとも80マイクロメートル、さらにより好ましくは少なくとも85マイクロメートル、最も好ましくは少なくとも90マイクロメートルの均等粒子円(equivalent particle circle)のメジアン粒子直径EQPC(50,3)を有する。ポリサッカライド誘導体は好ましくは250マイクロメートル以下、より好ましくは200マイクロメートル以下、最も好ましくは150マイクロメートル以下のEQPC(50,3)を有する。
【0027】
本発明の方法に使用されるポリサッカライド誘導体は少なくとも35マイクロメートルのメジアン粒子直径DOP(50,3)および少なくとも75マイクロメートルの均等粒子円のメジアン粒子直径EQPC(50,3)、より好ましくは少なくとも38マイクロメートルのDOP(50,3)および少なくとも80マイクロメートルのEQPC(50,3)、最も好ましくは少なくとも42マイクロメートルのDOP(50,3)および少なくとも85マイクロメートルのEQPC(50,3)を有する。
【0028】
本発明の方法は概して加水分解硬化性組成物に関する。本発明の好ましい形態においては、このような組成物を製造し改良する方法は石膏プラスター、ライムプラスター、セメントプラスター、またはこれらプラスターの1種以上の混合物に関する。特に好ましい形態においては、組成物は石膏スプレープラスター、ライムスプレープラスター、セメントスプレープラスター、またはこれらのスプレープラスターの1種以上の混合物である。
【0029】
本方法において使用されるポリサッカライド誘導体、好ましくはセルロース誘導体は概して溶媒、好ましくは水に溶解性であるか、または少なくとも浸漬可能である。好ましいポリサッカライド誘導体はポリサッカライドエーテル及びポリサッカライドエステル、より好ましくはセルロースエーテル及びエステル、最も好ましくは水溶性セルロースエーテルである。これらは1以上の置換基、好ましくは、以下の種類の置換基であることができ:ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、メチル、エチル、プロピル、ジヒドロキシプロピル、カルボキシメチル、スルホエチル、疎水性長鎖分岐および非分岐アルキル基、疎水性長鎖分岐および非分岐アルキルアリール基もしくはアリールアルキル基、カチオン性基、これらの基のアセタート、プロピオナート、ブチラート、ラクタート、ニトラートもしくはスルファート、例えば、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、ジヒドロキシプロピルおよびラクタートがグラフトを形成することができる。本発明のポリサッカライドの置換基はこれらの基に限定されない。典型的には、ポリサッカライド誘導体はグアー誘導体、デンプン誘導体、キチンもしくはキトサン誘導体であり、好ましくはセルロース誘導体であるが、本発明のポリサッカライド誘導体はこれらに限定されない。
【0030】
セルロース誘導体の例はヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース(CMHEC)、ヒドロキシプロピルヒドロキシエチルセルロース(HPHEC)、メチルセルロース(MC)、メチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナート(HPMC−AS)、疎水性改質ヒドロキシエチルセルロース(hmHEC)、疎水性改質ヒドロキシプロピルセルロース(hmHPC)、疎水性改質エチルヒドロキシエチルセルロース(hmEHEC)、疎水性改質カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース(hmCMHEC)、疎水性改質ヒドロキシプロピルヒドロキシエチルセルロース(hmHPHEC)、疎水性改質メチルセルロース(hmMC)、疎水性改質メチルヒドロキシプロピルセルロース(hmMHPC)、疎水性改質メチルヒドロキシエチルセルロース(hmMHEC)、疎水性改質カルボキシメチルメチルセルロース(hmCMMC)、スルホエチルセルロース(SEC)、ヒドロキシエチルスルホエチルセルロース(HESEC)、ヒドロキシプロピルスルホエチルセルロース(HPSEC)、メチルヒドロキシエチルスルホエチルセルロース(MHESEC)、メチルヒドロキシプロピルスルホエチルセルロース(MHPSEC)、ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルスルホエチルセルロース(HEHPSEC)、カルボキシメチルスルホエチルセルロース(CMSEC)、疎水性改質スルホエチルセルロース(hmSEC)、疎水性改質ヒドロキシエチルスルホエチルセルロース(hmHESEC)、疎水性改質ヒドロキシプロピルスルホエチルセルロース(hmHPSEC)または疎水性改質ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルスルホエチルセルロース(hmHEHPSEC)である。特に好ましいセルロース誘導体は、水中での熱凝集点(thermal flocculation point)を有するセルロースエーテル、例えば、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースなどである。
【0031】
加水分解硬化性組成物に添加され、DOP(50,3)およびEQPC(50,3)で表される調節された粒子形態を有する粒子状ポリサッカライド誘導体は、乾燥粉砕および湿潤ポリサッカライド誘導体を乾燥粉砕する前にポリサッカライド誘導体の温度および水分含量を調節することにより好ましくは製造される。
【0032】
ポリサッカライド誘導体、好ましくはポリサッカライドエーテルおよびポリサッカライドエステルの製造は当該技術分野において知られている。典型的には、この製造方法はポリサッカライド、例えば、セルロースを、例えば、アルカリ金属水酸化物で処理することにより活性化し、このように処理されたポリサッカライドを誘導化剤、例えば、エーテル化剤もしくはエステル化剤と反応させ、さらにポリサッカライド誘導体を洗浄して副生成物を除去することを伴う。洗浄工程の後で、ポリサッカライド誘導体は一般に、湿潤ポリサッカライド誘導体の全重量を基準にして30〜60パーセント、典型的には45〜55パーセントの水分含量を有する。好ましい洗浄液はポリサッカライド誘導体の具体的な種類に応じて変化する場合があるが、好ましい洗浄液は概して、水、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、もしくはブラインである。より好ましい洗浄液は概して水もしくはブラインである。場合によっては、ポリサッカライド誘導体は、溶媒をポリサッカライド誘導体に添加する前に、水分制御のために乾燥させられるが、この手順は好ましさが低い。好ましくは、製造、洗浄および場合によっては冷却の直後に得られたポリサッカライド誘導体は本発明のための出発材料として使用される。セルロース誘導体は概して20〜120℃、好ましくは65〜95℃の温度で洗浄される。洗浄しそして洗浄液からポリサッカライド誘導体を分離した後で、溶媒湿潤、好ましくは水湿潤のフィルターケーキが得られる。湿潤ポリサッカライド誘導体は通常湿潤顆粒、湿潤塊および/または湿潤ペーストの形状で得られる。
【0033】
好ましい方法に従って、本発明の加水分解硬化性組成物に使用されるポリサッカライド誘導体は、液体、例えば、水中のその懸濁物からポリサッカライド誘導体を分離することにより得られ、その後に、乾燥粉砕装置における乾燥粉砕にかけられる。液体中の粒子の懸濁物は上述のようにポリサッカライド誘導体の製造および洗浄から生じうる。懸濁物からポリサッカライド誘導体を分離することは、遠心分離のような既知の方法で行われうる。
【0034】
別の方法に従って、乾燥ポリサッカライド誘導体および液体、例えば、水、はコンパウンダーにおいて混合されることができ、このようにして得られた湿潤ポリサッカライド誘導体はその後、本発明の方法に従って、乾燥粉砕装置における乾燥粉砕にかけられる。コンパウンダーは好ましくは完全で激しい混合を可能にする。有用なコンパウンダーは、例えば、グラニュレーター、ニーダー、押出機、プレスもしくはローラーミルであり、ポリサッカライド誘導体と液体の混合物は、2軸コンパウンダーなどで、剪断力を加え、コンパウンドすることにより均質化される。共回転および反対回転装置が好適である。2軸コンパウンダーの場合におけるような、互いに深く関与し、かつ相互のストリッピング作用を行う2つの水平に配置された攪拌ブレードを有するいわゆる分割トラフニーダー(divided trough kneaders)が特に好適である。好適な1軸連続ニーダーには、いわゆるリフレクター(Reflector登録商標)コンパウンダーがあげられ、これは多部品で加熱可能および冷却可能な混合シリンダーと一方的に取り付けられたブレードミキサーとからなるモジュラー構造の高性能ミキサーである(製造者:Lipp、ドイツ国)。また好適なのは、いわゆるピン止めシリンダー押出機、すなわち、スティフトコンベルト(Stiftconvert登録商標)押出機(製造者:ベルストルフ(Berstorff)、ドイツ国)である。ハウジング内に組み込まれるピンは、混練される材料がシャフトとともに回転するのを妨げるための橋台として機能する。水平アセンブリにおいていわゆる二重ブレードシグマ攪拌機を有するニーダーミキサー(製造者:フィマ(Fima)、ドイツ国)は特に好適である。このブレードは異なる速度で駆動し、その回転方向は逆であり得る。混練される材料が攪拌シャフトと一緒に回転するのを妨げるために、好適なフローバッフルが容器の壁上に取り付けられる場合には、垂直に配置された混合シャフトを備えた攪拌容器も好適であり、このようにして激しい混合作用が混練される材料に付与される(製造者:バイエルAG)。遊星攪拌機およびインラインホモジナイザーを備えた二重壁混合容器も好適である。
【0035】
乾燥粉砕は概して当該技術分野において、1つのユニット操作で1つのプロセス工程で同時に乾燥および粉砕をするものとして説明され、典型的には、インパクトミルもしくは空気スウェプトインパクトミルである。乾燥は典型的には加熱ガスと機械エネルギーとの組み合わせで達成される。加熱空気が最も一般的に使用されているが、加熱窒素ガスも使用されうる。加熱ガスおよび湿潤生成物流れは概して、別々の入り口を介して、典型的には、底部からの加熱ガスおよび側部入り口での湿潤生成物はミルに取り付けられた供給スクリューシステムを経由してミルに供給される。この乾燥粉砕装置の円周速度は好ましくは制御され、場合によっては35〜140m/秒、より好ましくは45〜120m/秒、最も好ましくは55〜115m/秒の範囲で変更されまたは調節される。乾燥粉砕は、概して、1つのユニット操作で1つのプロセス工程で同時に乾燥および粉砕するものとして当該技術分野において説明される。
【0036】
本発明の範囲内で、加水分解硬化性組成物中に使用され、上述のような乾燥粉砕後に入手可能である、少なくとも38マイクロメートルのDOP(50,3)および少なくとも80マイクロメートルのEQPC(50,3)の粒子状ポリサッカライド誘導体は乾燥粉砕前のポリサッカライド誘導体の温度および乾燥粉砕前のポリサッカライド誘導体の水分含量を調節することにより調節されうる。
【0037】
この文脈中で「調節する」とは、乾燥粉砕前のポリサッカライド誘導体の温度および乾燥粉砕前のポリサッカライド誘導体の水分含量が制御され、必要な場合には、少なくとも38マイクロメートルの所望のDOP(50,3)および少なくとも80マイクロメートルの所望のEQPC(50,3)が粒子状ポリサッカライド誘導体に付与されるような温度および水分含量を見いだすように調節されることを意味する。
【0038】
例えば、乾燥粉砕前のポリサッカライド誘導体の温度および水分含量を「調節する」ことは、以下の工程によって行われうる:
a)各サンプルが乾燥粉砕前の異なる温度および/または異なる水分含量を有する、湿潤ポリサッカライド誘導体の少なくとも3つのサンプル、好ましくは少なくとも4つのサンプル、より好ましくは少なくとも8つのサンプルを乾燥粉砕する工程であって、特に好ましくは、湿潤ポリサッカライド誘導体の少なくとも8サンプルを乾燥粉砕し、乾燥粉砕前に、少なくとも4つのサンプルが所定の水分含量で異なる温度を有し、かつ少なくとも4つのサンプルが所定の温度で異なる水分含量を有する工程、
b)それぞれのサンプルの乾燥粉砕後に、ポリサッカライド誘導体粒子のDOP(50,3)およびEQPC(50,3)を決定する工程、
c)i)乾燥粉砕後のポリサッカライド誘導体粒子のDOP(50,3)およびEQPC(50,3)とii)乾燥粉砕前のポリサッカライド誘導体の温度および水分含量との間の相関性を確定する工程、並びに
d)確定した相関性を利用して、乾燥粉砕前のポリサッカライド誘導体の温度および水分含量を、少なくとも38マイクロメートルの所望のDOP(50,3)および少なくとも80マイクロメートルの所望のEQPC(50,3)の乾燥粉砕後の粒子状ポリサッカライド誘導体に適合させる工程。
【0039】
本発明の文脈中で、乾燥粉砕前のポリサッカライド誘導体の温度は好ましくは5〜60℃、より好ましくは10〜55℃、さらにより好ましくは15〜50℃、最も好ましくは20〜45℃の範囲に調節される。湿潤フィルターケーキが60℃より高い温度で維持される場合には、そのセルロースエーテルはゲルでない場合がありおよび/または当初のセルロース繊維形態をとどめていない場合がある。水のような液体が乾燥粉砕前のポリサッカライド誘導体に添加される場合には、添加される液体の温度および/またはコンパウンダーのジャケット温度を制御し、および場合によって変更もしくは調節することにより、乾燥粉砕前のポリサッカライド誘導体の温度は好ましくは制御され、場合によっては変更されまたは調節される。これは乾燥粉砕プロセスを妨げることがないかどうかにかかわらず、連続的に達成されることができる。
【0040】
本発明の文脈において、所望の水分含量は、乾燥粉砕前に、湿潤ポリサッカライド誘導体の全重量を基準にして、好ましくは40パーセント以上、より好ましくは50パーセント以上、さらにより好ましくは60パーセント以上、最も好ましくは70パーセント以上である。水分量が40パーセント未満である場合には、セルロースエーテル繊維は過剰に繊維質のままである場合がある。水分含量は、乾燥粉砕前に、湿潤ポリサッカライド誘導体の全重量を基準にして、好ましくは98パーセント以下、より好ましくは90パーセント以下、さらにより好ましくは85パーセント以下、最も好ましくは80パーセント以下である。水分含量はASTM方法D−2363−79(1989年再承認)によって決定されることができるが、好ましくは、上述のように、乾燥粉砕後のポリサッカライド誘導体粒子のDOP(50,3)およびEQPC(50,3)を測定し、乾燥粉砕後のポリサッカライド誘導体粒子のDOP(50,3)およびEQPC(50,3)と、乾燥粉砕前のポリサッカライド誘導体の水分含量との間の相関性を決定することにより間接的に決定される。
【0041】
好ましくは、乾燥粉砕後のポリサッカライド誘導体粒子のDOP(50,3)およびEQPC(50,3)と、乾燥粉砕前の水分含量および/または乾燥粉砕前の粒子状ポリサッカライドの温度との間の決定された相関性が、連続乾燥粉砕プロセスにおけるインプロセス制御として使用され、この場合、乾燥粉砕前のポリサッカライド誘導体の水分含量および/または温度を設定し場合によっては適合させるために、乾燥粉砕粒子のDOP(50,3)およびEQPC(50,3)が決定され使用される。より好ましくは、インプロセス制御はオンラインで行われる。
【0042】
乾燥粉砕前のポリサッカライド誘導体に最適な水分含量を、乾燥粉砕後のポリサッカライド誘導体粒子の所望のDOP(50,3)およびEQPC(50,3)に適合させることは、乾燥粉砕後の粒子サイズの制御を向上させるだけでなく、乾燥粉砕工程に必要とされるエネルギーも最適化する。後の乾燥粉砕プロセスにおいて蒸発させられる必要があるであろう不経済な水の過剰投与、または望ましくない性能の製品を生じさせるであろう水の過小投与は本発明の方法によって回避されうる。さらに、ポリサッカライド誘導体粒子のDOP(50,3)およびEQPC(50,3)は乾燥粉砕装置もしくはプロセス、例えば、円周速度、ミルを通る空気もしくはガスフロー(m3/h)のパラメータを変えることなく調節されうる。ポリサッカライド誘導体粒子のDOP(50,3)およびEQPC(50,3)の変更が望まれる場合、またはポリサッカライド誘導体粒子のDOP(50,3)およびEQPC(50,3)が所望の生成物規格を満たさず、かつ調節されなければならない場合には、このような変化は乾燥粉砕前にポリサッカライド誘導体の水分含量を調節することにより、乾燥粉砕プロセスを妨げることなく達成されうる。このことは、本発明の方法を非常に有効にする。
【0043】
浸漬もしくは溶解するために好適な溶媒はその分子が極性基を有し、その極性基が好ましくはヘテロ原子、窒素、硫黄もしくは酸素を含む溶媒である。しかし、炭化水素およびハロゲン化炭化水素も使用されうる。好ましい溶媒には水、アルコール、例えば、メタノール、エタノールもしくはイソプロパノール、またはエステル、例えば、酢酸エチルおよび酢酸ブチルがある。特に好ましい溶媒は水である。本明細書において使用される場合、用語「溶媒」は溶媒の混合物も含む。
【0044】
乾燥粉砕前に、通常、湿潤顆粒、湿潤塊および/または湿潤ペーストの形態である湿潤ポリサッカライド誘導体は、ポリサッカライド誘導体が衝撃および/または剪断応力にかけられる既知の乾燥粉砕装置、例えば、ガススウェプトインパクトミル、好ましくはエアスウェプトインパクトミルにおいて処理されうる。好適なミルは、例えば、ハンマーミル、スクリーンタイプミル、ピンミル、ディスクミル、ジェットミル、もしくは好ましい分級ミルである。溶媒の過熱蒸気、例えば、欧州特許出願公開第EP0954536A1号および第EP1127910A1号により詳細に記載されるような、過熱水蒸気、もしくは水蒸気/不活性ガス混合物、または水蒸気/空気混合物が熱伝達ガスおよび輸送ガスとして使用されうる。本発明の乾燥粉砕プロセスにおいては、乾燥粉砕後のポリサッカライド誘導体の水分含量は典型的には、湿潤ポリサッカライド誘導体の全重量を基準にして1〜20パーセント、好ましくは1〜10パーセント、より好ましくは1〜5パーセントまで低減される。
【0045】
回転乾燥粉砕装置において乾燥粉砕が行われる好ましい場合においては、乾燥粉砕前のポリサッカライド誘導体の水分含量および温度を調節することに加えて、温度および水分含量について上述したのと同様の方法における乾燥粉砕装置の円周速度を調節することにより、乾燥粉砕後のポリサッカライド誘導体粒子のDOP(50,3)およびEQPC(50,3)は調節されうる。乾燥粉砕が回転乾燥粉砕装置において行われる場合の「調節する」とは、乾燥粉砕装置の円周速度が制御され、かつ必要な場合には、少なくとも38マイクロメートルの所望のDOP(50,3)および少なくとも80マイクロメートルの所望のEQPC(50,3)が粒子状ポリサッカライド誘導体に付与されるような乾燥粉砕装置の円周速度を見いだすように調節される。
【0046】
本発明の文脈において、乾燥粉砕装置の円周速度、すなわち、回転しているミリングナイフの先端速度は、好ましくは70m/s以上、好ましくは80m/s以上、より好ましくは90m/s以上に調節される。先端速度が60m/sより低い場合には、セルロースエーテルは粗くなりすぎる場合がある。先端速度が130m/sを超える場合には、セルロースエーテルは微細になりすぎる場合がある。
【0047】
本発明の特に好ましい形態においては、乾燥粉砕は回転乾燥粉砕装置において行われ、DOP(50,3)およびEQPC(50,3)で表される乾燥粉砕後の粒子の形態は、乾燥粉砕前のポリサッカライド誘導体の水分含量および温度を調節することに加えて、乾燥粉砕装置の円周速度によって調節される。
【0048】
本発明は以下の実施例によってさらに例示され、この実施例は本発明の範囲を限定すると解釈されない。ほかに示されない限りはすべての部およびパーセンテージは重量基準である。
【実施例】
【0049】
セルロースエーテル粉砕および形態制御プロセスの説明
市販の連続コンパウンダーが使用されて、水を乾燥WALOCEL商標MKX60000PF01セルロースエーテル(ザダウケミカルカンパニーから市販)に添加した。コンパウンダージャケットには−1℃の流体が供給された。
表1に示されるセルロースエーテルが10kg/hの供給速度でコンパウンダーに連続的に供給された。約7〜8℃の温度の水が20.8〜30.0kg/hの速度でコンパウンダーに連続的に添加され、表2に示されるように、68〜76重量%の水分量を生じさせ、温度は20〜40℃に調節された。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
湿潤生成物は輸送ベルトを介してミルフィードユニット(ドイツ国、ハムのAltenburger Maschinen Jaeckering GmbH)に連続的に移された。容器攪拌装置の下部ブレードは、容器の底に配置された単一オーガ(augur)スクリューにペーストを押しつけた。湿潤生成物は、第1および第2のグラインドステージ間のウルトラローターII「S」インパクトミル(ドイツ国、ハムのAltenburger Maschinen Jaeckering GmbH)の側部に、多孔板を通して直接向かわせられた。このミルは7つのグラインドステージを備えていた。底部の3つのグラインドステージは標準グラインドバーを備えていた。上部の4つのグラインドステージにはターボバーが取り付けられていた。12枚のブレードを備えた共回転フィンガーシフターホイールが7番目のグラインドステージの上部に取り付けられた。ミルジャケットの内部は標準アルテンバーガー波形固定グラインドプレートを有していた。
インパクトミルのローターは表2に示される円周速度で操作された。過熱ガス流れ、すなわち窒素が1020m/hでミルの下部ガス入り口に供給された。窒素から乾燥生成物を分離するためにサイクロンが使用された。最終生成物水分は2.2〜3.6重量%であった。
【0053】
石膏プラスタースプレープロセスの説明
石膏スプレープラスター配合物は100重量部の石膏スプレープラスターベースあたり0.250重量部のセルロースエーテルを含んでいる。使用されたスプレープラスター「Knauf MP75」はドイツ国、ウエストドイチェ ジプスヴェルケのKnauf(ロッテルベローデプラント)から得られる。ベース材料は入手したまま使用され、レーディゲ(Loedige)プラウシェアブレンダーを用いてセルロースエーテルと混合される。
このプラスターはスプレー装置(PETG4スプレー装置、ドイツ国PFTGmbH&Coにより製造)を用いて、320〜330リットル/1時間の水供給速度および8〜10barのホース圧力でレンガ壁上に適用される。
塊化(lumping)の評価は塊の数およびそのサイズを考慮することにより行われ、石膏プラスターの当初のレベリング(スプレー適用の5分後になされる)、およびスプレー適用の際に最も少ない数の塊を有するセルロースエーテルに対して最上の評価を与える。このサンプルは参照として機能し、すべてのほかのセルロースエーテルはその塊形成に従って評定され、少ない数の塊はより良好と評価される。
結果は表3に示される:
【0054】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも38マイクロメートルのメジアン粒子直径DOP(50,3)および少なくとも80マイクロメートルの均等粒子円のメジアン粒子直径EQPC(50,3)を有する粒子状ポリサッカライド誘導体を加水分解硬化性組成物に添加することを含む、加水分解硬化性組成物を製造する方法。
【請求項2】
少なくとも38マイクロメートルのDOP(50,3)および少なくとも80マイクロメートルのEQPC(50,3)を有する粒子状ポリサッカライド誘導体を添加する前に、加水分解硬化性組成物が粒子状ポリサッカライド誘導体を含んでいない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
加水分解硬化性組成物に添加される粒子状ポリサッカライド誘導体のDOP(50,3)およびEQPC(50,3)を調節することにより、加水分解硬化性組成物の塊評価を調節することをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
粒子状ポリサッカライド誘導体を含む加水分解硬化性組成物を製造する方法であって、粒子状ポリサッカライド誘導体が少なくとも38マイクロメートルのメジアン粒子直径DOP(50,3)および少なくとも80マイクロメートルの均等粒子円のメジアン粒子直径EQPC(50,3)を有することを確実にすることを当該方法がさらに含む、加水分解硬化性組成物を製造する方法。
【請求項5】
a)粒子状ポリサッカライド誘導体を含んでいない加水分解硬化性組成物を提供する工程、並びに
b)少なくとも38マイクロメートルの調節されたメジアン粒子直径DOP(50,3)および少なくとも80マイクロメートルの均等粒子円の調節されたメジアン粒子直径EQPC(50,3)を有する粒子状ポリサッカライド誘導体を加水分解硬化性組成物に添加する工程、
を含む、加水分解硬化性組成物の塊評価を調節する方法。
【請求項6】
a)粒子状ポリサッカライド誘導体を含んでいない第1の加水分解硬化性組成物、および粒子状ポリサッカライド誘導体を含んでいない第2の加水分解硬化性組成物を提供する工程、
b)第1の粒子状ポリサッカライド誘導体を第1の加水分解硬化性組成物に添加し、第2の粒子状ポリサッカライド誘導体を第2の加水分解硬化性組成物に添加する工程であって、第1および第2の粒子状ポリサッカライド誘導体のそれぞれのDOP(50,3)は少なくとも38マイクロメートルであり、第1および第2の粒子状ポリサッカライド誘導体のそれぞれのEQPC(50,3)は少なくとも80マイクロメートルであり、さらに、第1の粒子状ポリサッカライド誘導体のDOP(50,3)およびEQPC(50,3)と、第2の粒子状ポリサッカライド誘導体のDOP(50,3)およびEQPC(50,3)とは異なっている工程、
c)第1および第2の加水分解硬化性組成物の塊評価を決定する工程、
d)i)第1および第2の粒子状ポリサッカライド誘導体のそれぞれのDOP(50,3)およびEQPC(50,3)とii)第1および第2の加水分解硬化性組成物のそれぞれの塊評価との間の相関性を確定する工程、
e)確定した相関性を利用して、加水分解硬化性組成物に添加される粒子状ポリサッカライド誘導体のDOP(50,3)およびEQPC(50,3)を加水分解硬化性組成物の所望の塊評価に適合させる工程、
を含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
組成物が石膏プラスター、ライムプラスター、セメントプラスター、もしくはこれらプラスターの1種以上の混合物であるか、または石膏スプレープラスター、ライムスプレープラスター、セメントスプレープラスター、もしくはこれらのスプレープラスターの1種以上の混合物である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ポリサッカライド誘導体がセルロース誘導体である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも38マイクロメートルのDOP(50,3)および少なくとも80マイクロメートルのEQPC(50,3)を有する粒子状ポリサッカライド誘導体が湿潤ポリサッカライド誘導体を乾燥粉砕することにより製造され、さらに、乾燥粉砕前にポリサッカライド誘導体の温度および水分含量を調節することにより、乾燥粉砕後の前記粒子の少なくとも38マイクロメートルのDOP(50,3)および少なくとも80マイクロメートルのEQPC(50,3)が調節される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
乾燥粉砕が回転乾燥粉砕装置において行われ、乾燥粉砕前のポリサッカライド誘導体の温度および水分含量を調節することに加えて、乾燥粉砕装置の円周速度を調節することにより、乾燥粉砕後の粒子のDOP(50,3)およびEQPC(50,3)が調節される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
粒子状ポリサッカライド誘導体が少なくとも38マイクロメートルのメジアン粒子直径DOP(50,3)および少なくとも80マイクロメートルの均等粒子円のメジアン粒子直径EQPC(50,3)を有する、粒子状ポリサッカライド誘導体を含む加水分解硬化性組成物。
【請求項12】
組成物がモルタルもしくはプラスター組成物、好ましくは石膏プラスター、ライムプラスター、セメントプラスター、もしくはこれらのプラスターの1種以上の混合物であるか、または石膏スプレープラスター、ライムスプラープラスター、セメントスプレープラスター、もしくはこれらのスプレープラスターの1種以上の混合物である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
ポリサッカライド誘導体がセルロース誘導体である、請求項11または12に記載の組成物。
【請求項14】
加水分解硬化性組成物を製造する方法もしくは加水分解硬化性組成物の塊評価を調節する方法における、少なくとも38マイクロメートルのメジアン粒子直径DOP(50,3)および少なくとも80マイクロメートルの均等粒子円のメジアン粒子直径EQPC(50,3)を有する粒子状ポリサッカライド誘導体の使用。
【請求項15】
加水分解硬化性組成物における化合物としての、少なくとも38マイクロメートルのメジアン粒子直径DOP(50,3)および少なくとも80マイクロメートルの均等粒子円のメジアン粒子直径EQPC(50,3)を有する粒子状ポリサッカライド誘導体の使用。
【請求項16】
組成物が石膏プラスター、ライムプラスター、セメントプラスター、もしくはこれらのプラスターの1種以上の混合物であるか、または石膏スプレープラスター、ライムスプラープラスター、セメントスプレープラスター、もしくはこれらのスプレープラスターの1種以上の混合物である、請求項14または15に記載の使用。
【請求項17】
ポリサッカライド誘導体がセルロース誘導体である、請求項14〜16のいずれか1項に記載の使用。

【公開番号】特開2012−31056(P2012−31056A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−156199(P2011−156199)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】