説明

加温器及び加温器包装体

【課題】簡便に試料を加温することができる加温器を提供する。
【解決手段】容器内に発熱組成物を収容し、前記容器の底側又は開口側から前記発熱組成物に有底孔を設けたことを特徴とする。
【効果】所定の発熱時間、発熱温度に調整された発熱組成物内に、試料を入れるだけで簡単に試料の加熱を行うことができる。また、恒温槽や電気的に加熱する加熱装置に較べてコストを下げることができる。更に、使い捨て可能なために、衛生的にも優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物や菌或いは細胞等の試料を培養等するための加温器及びこれを包装した包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試験管内において細胞等を培養するために、恒温槽やニクロム線により試験管を加温するための加温装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
一方、食品の衛生検査の分野においては、調理設備や調理器具、手指の衛生状態を簡便に把握できるようにするために、検査キットが販売されている。この検査キットは、綿棒により少量の細菌(黄色ブドウ球菌、大腸菌、腸内細菌、腸炎ビブリオやサルモネラ)等を採取し、試験管の中で24時間程度恒温を保つことにより細胞を培養した後、試薬の色彩の変化により各細菌の有無を特異的に判定することができるものである。
しかしながら、上記調理設備や調理器具が設置される各検査現場において、上記恒温槽や加温装置を導入することは、費用がかかり過ぎるという問題があった。また、恒温槽や加湿装置の場合には、温度設定やタイマー等の操作が煩雑であるという問題があった。
【0003】
【特許文献1】特開2005−83944号公報((0004)〜(0005))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、簡便に試料を加温することができる加温器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべく、本発明者等は鋭意検討の結果、次の解決手段を見いだした。
即ち、本発明の加温器は、請求項1に記載の通り、容器内に発熱組成物を収容し、前記容器の底側又は開口側から前記発熱組成物に有底孔を設けたことを特徴とする。
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の加温器において、前記有底孔は、前記発熱組成物に中空の容器を埋設することにより形成されたものであることを特徴とする。
また、請求項3に記載の本発明は、請求項2に記載の加温器において、前記中空の容器の開口部側を、前記容器の底面又は開口面から突設させるようにしたことを特徴とする。
また、請求項4に記載の本発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の加温器において、前記有底孔を複数備えたことを特徴とする。
また、請求項5に記載の本発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の加温器において、前記有底孔には、熱伝導率0.01〜2w/m・Kの熱媒体を注入したことを特徴とする。
また、請求項6に記載の本発明は、請求項1乃至5の何れかに記載の加温器において、前記容器の開口側に前記有底孔に連通することになる開口部を備えた蓋体を設けたことを特徴とする。
また、請求項7に記載の本発明は、請求項1乃至6の何れかに記載の加温器において、前記有底孔の開口又は前記蓋体の前記開口部を、破口して前記有底孔に連通するようにしたことを特徴とする。
また、請求項8に記載の本発明は、請求項1乃至7の何れかに記載の加温器において、前記有底孔の開口又は前記蓋体の前記開口部を、アルミニウム箔、プラスチックフィルム又は紙により被覆したことを特徴とする。
また、請求項9に記載の本発明は、請求項1乃至8の何れかに記載の加温器において、前記容器の周面に貫通孔を設けることにより、前記容器は通気性を備えたことを特徴とする。
また、請求項10に記載の本発明は、請求項9に記載の加温器において、前記周面の貫通孔の上から更に通気性部材により被覆したことを特徴とする。
また、請求項11に記載の本発明は、請求項9又は10に記載の加温器において、前記容器の周面を通気性を備えた断熱性部材により囲繞したことを特徴とする。
また、請求項12に記載の本発明は、請求項9又は10に記載の加温器において、前記容器の周面を非通気性の断熱性部材により、前記周面との間に間隙を介して囲繞したことを特徴とする。
また、請求項13に記載の本発明は、請求項1乃至12の何れかに記載の加温器において、前記発熱組成物は、鉄粉を主剤としたものであることを特徴とする。
また、本発明の加温器包装体は、請求項14に記載の通り、請求項1乃至13の何れかに記載の加温器の前記容器の少なくとも周面又は前記通気性を備えた断熱性部材の少なくとも前記周面を、気密性部材により被覆したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、所定の発熱時間、発熱温度に調製された発熱組成物内に、試料を入れるだけで簡単に試料の加温を行うことができる。また、恒温槽や電気的に加熱する加温装置に較べてコストを下げることができる。更に、使い捨て可能なために、衛生的にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明において使用できる発熱組成物は、発熱するものであれば特に制限されるものではないが、好ましくは、鉄粉を主剤として酸素と反応して発熱する発熱組成物とする。通常の培養では、0.5ml〜20ml程度の試料溶液を約37℃の恒温で24時間程度維持する必要があるため、発熱組成物の配合としては、例えば、鉄粉100部、活性炭3〜30部、木粉3〜10部、吸水性ポリマー0.5部〜5部、塩水30〜60部とすることができる。
前記鉄粉は、例えば、鋳鉄鉄粉、アトマイズ鉄粉、電解鉄粉、還元鉄粉、スポンジ鉄粉及びそれらの鉄合金粉等を使用することができる。
また、必要に応じて他の成分を含んでもよい。一例を挙げると、鉄粉100質量部に対して、炭素成分1.0〜50質量部、反応促進剤1.0〜50質量部、水1.0〜60質量部を配合することができる。
前記炭素成分は、例えば、カーボンブラック、黒鉛、活性炭等を使用することができる。
前記反応促進剤は、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の金属ハロゲン化物や、硫酸カリウム等の金属硫酸塩類や、硝酸ナトリウム等の硝酸塩や、酢酸ナトリウム等の酢酸塩や、炭酸第一鉄等の炭酸塩等の無機電解質等を使用することができる。
【0008】
上記発熱組成物は、容器内に収容されるが、発熱組成物が鉄粉の場合には、この容器は通気性を備える必要がある。この通気性とは、筒状容器内に収容された発熱組成物に酸素を供給して発熱反応を起こさせることができる程度のものをいい、例えば、容器自体を通気性部材により構成したり、容器の一部に開口を設けるように構成することにより得られる。また、開口を設ける方法としては、容器の周面に針等により貫通孔を設けるようにすることが好ましい。容器の周面から均一に内部の発熱組成物に酸素を供給させることにより、安定した発熱状態が得られるからである。この場合の貫通孔の直径は、0.1mm〜2.0mmとすることが好ましい。また、その密度は、筒状容器の外周面に対して、1〜20個/10cm程度とすることが好ましい。空気の取り込み量を確保するのに適切だからである。
尚、貫通孔の直径と発熱組成物の粒径との関係に応じて、貫通孔の上に通気性部材を設けることが好ましい。通気性部材としては、貫通孔を介して発熱組成物に酸素を送ることができるものであれば特に制限はないが、例えば、ナイロン・ポリプロピレン・ポリエステル・ポリエチレン・レーヨンまたはその混毛等の不織布または透気性のポリエステル・ポリプロピレン・ポリエチレンフイルム等を使用することができる。
また、容器の材質は、発熱組成物がこぼれることなく、発熱の際に少なくとも開口部の形状が安定して維持できるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、プラスチックや紙等を使用することができる。
【0009】
容器に収容された発熱組成物は、試験管等の容器に入った試料を保持するとともに発熱組成物内で加温するために、容器の底側又は開口側から有底孔が形成される。この有底孔は、試験管等の容器を保持できる程度に発熱組成物に直接形成することができるが、試験管等の容器よりも一回り大きな中空の容器を発熱組成物に埋設することにより形成することが好ましい。発熱組成物に有底孔を簡単に形成することができるからである。また、発熱組成物内に直接有底孔を形成する場合には、発熱組成物からの熱は、発熱組成物から直接又は空気を介して伝達されることになるが、発熱組成物に容器を埋設する場合には、容器内に他の伝熱媒体を入れることも可能となるため、熱伝導率0.15〜0.6w/m・Kの水やエチレングリコール等の熱媒体を注入しておくことにより熱効率を高めることができる。
また、前記中空の容器の開口部側を、前記容器の底面又は開口面から突設させるようにすることが好ましい。安定して試験管等を保持することができるからである。
また、前記有底孔を複数備えるようにすることが好ましい。同時に複数の試料を加温できるからである。
【0010】
また、前記容器の開口側から有底孔を形成する場合には、前記有底孔に連通することになる開口部を備えた蓋体を設けることが好ましい。筒状容器からの発熱組成物の漏れを防ぐことができるからである。
また、前記中空の有底状の容器に、予め蓋体の開口部に設けておくことにより、蓋体を取り付ける際に、前記有底孔を形成することができるので好ましい。尚、中空の有底状の容器と蓋体とは、少なくとも蓋体と中空の有底状の容器の接合部がシールされていればよく、例えば、接着剤、ホットメルト、熱溶着、超音波溶着等により接着することができる。
【0011】
前記有底孔の開口又は前記蓋体の前記開口部を、破口して前記有底孔に連通するように構成することが好ましい。これにより、有底孔内に試料を挿入するまでは、有底孔内が清浄に保たれるからである。この場合に、前記有底孔の開口又は前記蓋体の前記開口部を、アルミニウム箔、プラスチックフィルム又は紙により被覆すればよい。また、予め熱媒体を有底孔内に入れておく場合には、輸送時に熱媒体がこぼれることがない。
【0012】
前記容器の周面を通気性を備えた断熱性部材により囲繞することが好ましい。発熱状態を安定させることができるからである。断熱性部材としては、例えば、発泡ポリエチレン、発泡ポリスチレン、発泡ポリウレタン、発泡フェノール、グラスウール、ロックウール、ウール、セルロースファイバー、炭化コルク、インシュレーションボード等を使用することができる。
また、前記断熱性部材は、前記容器の周面を空隙を介して囲繞することが好ましい。空隙から発熱反応に必要な酸素を導入できるからである。
【0013】
また、本発明の加温器包装体は、上記加温器において、容器の少なくとも周面又は前記断熱性部材の周面(外周面)を気密性部材により被覆したものである。この気密性部材により、加温器を使用開始直前まで発熱させないようにすることができる。気密性部材としては、外気を発熱組成物に接触させないものであれば特に制限されるものではなく、例えば、プラスチックフィルムや金属箔等を使用することができる。尚、気密性部材は、前記周面に剥離可能な部材として構成するか、或いは、加温器自体を囲繞することができる袋体として構成することができる。
【0014】
次に、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施の形態の加温器の製造方法を説明した図である。
同図(a)に示すものは、開口側にフランジ1aを備えた円筒状容器1であり、その周面には貫通孔2を設けることにより通気性が付与されている。
この円筒状容器1内には、同図(b)に示すように発熱組成物3を収容した後、開口側から同図(c)に示すように、蓋体4により内部の発熱組成物3を円筒状容器1内に封止する。尚、蓋体の略中央部には、開口部4aが設けられており、この開口部4aには、中空の有底の容器5が接続されている。そして、蓋体4により封止する際に、前記中空の有底の容器5により、発熱組成物3に有底孔が形成されることになる。
上記のようにして得られた加温器の発熱組成物3は、周面から酸素を内部に導入して発熱する。この状態で、同図(d)に示すように、開口部4aから、試験管6に入った試料7を挿入すれば試料を加温することができる。
【0015】
次に、本発明の他の実施の形態を図2を参照して説明する。
図2は、図1と同じく本発明の一実施の形態の加温器の製造方法を説明した図である。
同図(a)に示すものは、開口側にフランジ11aを備えた円筒状容器11であり、その周面には貫通孔12を設けることにより通気性が付与されている。そして、図1で説明した容器1とは異なり、円筒状容器11の底11b側から、中空の容器15が挿通され、固定されている。尚、中空の容器15の開口部はアルミニウム箔19により封止されている。
この円筒状容器11内の開口側から、同図(b)に示すように発熱組成物13を収容した後、同図(c)に示すように、蓋体14により内部の発熱組成物13を円筒状容器1内に封止する。
上記のようにして得られた加温器を、同図(d)に示すように上下逆さにし、開口部に設けられたアルミニウム箔19を破り、試験管16を挿入すれば、その内部の試料17を加温することができる。
本実施の形態の加温器は、予め円筒状容器11には、その底側に中空の容器15が設けられているので、図1に示すように発熱組成物3を円筒状容器1に収容してから中空の容器5を埋設する必要がないため、加温器の製造効率を高めることができる。
【0016】
また、上記の図1の説明において、発熱組成物3に埋設された中空の容器5の開口部側は、蓋体4(容器1の開口面)と略同一平面上に位置するように形成されているが、図3に示すように、蓋体4から突設されるように構成すれば、試験管6をより安定して保持することができる。
同様に、図2により説明した中空の容器15の開口部側も、図4に示すように、容器11の底面から突設されるように構成することができる。
【実施例】
【0017】
次に、図1の加温器のより具体的な実施例について次に説明する。
本実施例において、円筒状容器1は、内径60mm、高さ45mm(容量120ml)の透明のプラスチックからなるものを使用し、その周面には、直径1mmの貫通孔2を密度10個/10cmとなるようにして設けた。
発熱組成物3は、鉄粉100部、活性炭3〜30部、木粉3〜10部、吸水性ポリマー0.5部〜5部、塩水30〜60部で配合したものを60g使用した。
また、蓋体4は、直径72mm、厚さ0.15mmの円板状にプラスチック製のものを使用し、その略中央部には直径18mmの開口部4aが設けられ、この開口部4aを厚さ0.1mmのアルミニウム箔で被覆した。この蓋体4の開口部4aには、内径18mm、深さ40mm(容量9ml)のプラスチック製の試験管5が熱溶着により接続され、蓋体4と円筒状容器1とを融着することにより、発熱組成物3に直径18mm、深さ40mm(容量9ml)の有底孔を形成した。
この加温器に、図1(d)に示すように、試験管6に水1.5mlを注入したものを、開口部4aから挿入して、発熱組成物3と、水の温度変化を測定した結果を図2に示す。
図5から、試験管内の水の温度変化は36℃の恒温状態を維持することができることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0018】
上記の通り、本発明は比較的簡素な構成により恒温状態を提供できるので、微生物等の培養の分野において利用可能であるが、この分野に限られることなく、部分的に恒温状態が必要となる分野でも広く利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態の加温器の製造方法の説明図
【図2】本発明の他の実施の形態の加温器の製造方法の説明図
【図3】図1の加温器の変形例の説明図
【図4】図2の加温器の変形例の説明図
【図5】本発明の実施例の恒温状態を説明するためのグラフ
【符号の説明】
【0020】
1 円筒状容器
1a フランジ
2 貫通孔
3 発熱組成物
4 蓋体
4a 開口部
5 中空の容器
6 試験管
7 試料
11 円筒状容器
11a フランジ
12 貫通孔
15 中空の容器
16 試験管
17 試料
19 アルミニウム箔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に発熱組成物を収容し、前記容器の底側又は開口側から前記発熱組成物に有底孔を設けたことを特徴とする加温器。
【請求項2】
前記有底孔は、前記発熱組成物に中空の容器を埋設することにより形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の加温器。
【請求項3】
前記中空の容器の開口部側を、前記容器の底面又は開口面から突設させるようにしたことを特徴とする請求項2に記載の加温器。
【請求項4】
前記有底孔を複数備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の加温器。
【請求項5】
前記有底孔には、熱伝導率0.01〜2w/m・Kの熱媒体を注入したことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の加温器。
【請求項6】
前記容器の開口側に前記有底孔に連通することになる開口部を備えた蓋体を設けたことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の加温器。
【請求項7】
前記有底孔の開口又は前記蓋体の前記開口部を、破口して前記有底孔に連通するようにしたことを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の加温器。
【請求項8】
前記有底孔の開口又は前記蓋体の前記開口部を、アルミニウム箔、プラスチックフィルム又は紙により被覆したことを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の加温器。
【請求項9】
前記容器の周面に貫通孔を設けることにより、前記容器は通気性を備えたことを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の加温器。
【請求項10】
前記周面の貫通孔の上から更に通気性部材により被覆したことを特徴とする請求項9に記載の加温器。
【請求項11】
前記容器の周面を通気性を備えた断熱性部材により囲繞したことを特徴とする請求項9又は10に記載の加温器。
【請求項12】
前記容器の周面を非通気性の断熱性部材により、前記周面との間に間隙を介して囲繞したことを特徴とする請求項9又は10に記載の加温器。
【請求項13】
前記発熱組成物は、鉄粉を主剤としたものであることを特徴とする請求項1乃至12の何れかに記載の加温器。
【請求項14】
請求項1乃至13の何れかに記載の加温器の前記容器の少なくとも周面又は前記通気性を備えた断熱性部材の少なくとも前記周面を、気密性部材により被覆したことを特徴とする加温器包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−2782(P2009−2782A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163694(P2007−163694)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(000113584)マイコール株式会社 (13)
【出願人】(504293632)株式会社エムケイメディカル (5)
【Fターム(参考)】