説明

加温機における放熱板の取付け方法

【課題】 熱交換効率のよい放熱帯板を、既設の加温機の缶体に簡単に設置でき、しかも、缶体の温度変動によってもずり落ちることのない取り付け方法の提供。
【解決手段】 缶体表面に列された放熱用帯状金属1の特定位置にバネ材4を置き、そのバネ材4のバンド挿入穴42にバンドを通し、その両端の締付金具3を利用してバンド2を締め付ける際、バネ材4が機能し配列された放熱用帯状金属1を押さえつけて固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施設園芸栽培用ハウス内の空間やその他の類似空間を暖房するための加温機における放熱板の取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に開示されているように、施設園芸栽培用の加温機として、密閉されたケーシングの内部にケーシングの内面との間に空間を残して缶体(燃焼室とも称する)と煙管を収納配置し、ケーシング内に外気を取り込むために送風機を装着した外気吸い込み口を設け送風機によって取り込まれた外気をバーナーの炎によって内部から加熱された缶体と煙管のそれぞれの外面の周囲で加温し加温された温風をハウス内に放出してハウス内を暖房するものが知られている。
【0003】
また、缶体の外面にフィンを設け缶体の表面積を増加させることにより缶体外面の放熱効果を高め、外気への熱交換の効率を高めようとする試みもある。
【0004】
さらに、本願出願人は、放熱フィンの缶体への取り付けを容易にするために、下記特許文献2において、図5に示すように、アルミニウムその他の熱伝導性に優れた金属の帯板11を打ち抜いて、複数の放熱フィン12を一体的に設けた帯状金属放熱板1を提案した。同図において、13は帯状金属放熱板1の両縁に形成された山形縁であって、この山形縁13は、後述のように、この帯状金属1を缶体表面に配列する際に、隣接の帯状金属の山形縁と重ね合わせることによって、隣接の帯状金属との平行な配列を確実にする。
【0005】
図4は、この図5に示す帯状金属放熱板1を加温機の缶体A表面に締め付けバンド2を缶体Aの円周方向に巻き付けて取り付けた状態を示す。Bは、缶体A内部に配置したバーナーによって加熱された空気の排出管を示す。
【0006】
同図において、放熱板1は、缶体Aの長軸X方向に平行に、かつ、隣接する放熱板とは放熱フィン12の向きを交互に変えて配列し、締め付けバンド2を缶体Aの円周方向に締め込み、平行に配列した放熱板1を押さえ込む形で缶体Aに固定するものである。これによって、配列された放熱板1は缶体A上に、比較的簡単に、固定できる。
【特許文献1】特開平5−133610号公報
【特許文献2】意願2007−33859号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、加温機の缶体そのものは普通鋼で形成されており、その表面温度は常温〜300℃の温度域内を変動し、しかも、放熱板は通常、加工性がよく、熱電導性のよい安価な金属であるアルミニウム合金、ステンレス鋼で製作され、また、固定用のバンドも比較的強度の高い硬いステンレス鋼で形成されているため、缶体の基材と放熱板との熱膨張が異なる。
【0008】
そのため、缶体の軸方向に平行に配列された放熱板を幾ら強く締め付けて固定しても、放熱板の変形や、缶体表面の温度変動によってバンドは緩み、配列した放熱板が缶体表面からズレ落ちてしまう危険がある。
【0009】
本発明の課題は、熱交換効率のよい放熱板を、加温機の缶体に簡単に設置でき、しかも、缶体の温度変動によってもずり落ちることのない取り付け方法を提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、燃焼室を構成する円筒状缶体の長軸方向の外面に複数の放熱板を平行に配列し、締め付け用のバンドを、配列した放熱板の上から缶体の円周方向に巻き付け、バックルのような固定器具によって締め付け固定するに際して、配列した放熱板の上に配置したバネ材を介して締め付けるものである。
【0011】
弾性金属板からなるバネ材の形態としては、缶体外面が達する300℃程度でも弾性が維持できる金属、たとえば、銅合金、クロム鋼のバネ材を、断面を三角形、その他の多角形にして、その頂点に締め付けバンドを通す穴を設ける配列した放熱板の上に配置して、これに締め付けバンドを通して、放熱板の配列群を締め付け固定する。これによって、バンドの熱膨張による緩みの発生をバネ材の弾力による伸縮調整機能によって吸収し調整するものである。
【0012】
実験の結果、V字状の曲げ板を横置きに配置し、バンド挿通穴をV字の上端部に設けたものが、最も材料が少なくて済む上に、弾力が最も大きく発揮でき、その上取り扱いも簡単となることがわかった。
【0013】
また、配列した放熱板が軟化する恐れがある場合には、軟化による変形を防止するために、放熱板の配列箇所に強化材を配置して補強することも行われる。
【0014】
強化材としては、連接する放熱板の接合箇所に、ステンレス製の細い丸棒を配置したり、また、放熱板の接合箇所をステンレス鋼製のフレーム材によって覆うこともできる。
【発明の効果】
【0015】
バネ材の使用による固定バンドの伸縮調整と、さらには、強化材の使用によって、放熱板の軟化を防止でき、缶体表面に配列した放熱板の機能を長く維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態を農事用ハウスの缶体に適用した実施例によって説明する。
【実施例】
【0017】
本発明を、先の図4に示す長さが1550mm、直径が760mmの缶体Aに、図5に示すアルミニウム製の幅が70mm、放熱フィンの高さが38mmの放熱板1をフィン12の向きを交互に変えて平行に配列した加温機に適用した。
【0018】
図1は、先の図4の放熱板1のバンド2による固定状態を部分的に拡大して示すものである。
【0019】
同図において、それぞれの放熱板1(3本の帯状金属が図示されている。)の三角に成形された両縁部13と、図示されていないが長さ方向の隣接する帯状金属の端部は重ね合わされて、それぞれの帯状金属の配列が正確、かつ、確実に行われるようになっている。
【0020】
本発明の実施例においては、配列した放熱用帯状金属1を固定するためのバンド2を締め付けるためには、締付金具3と本発明に係るバネ材4が使用される。バンド2は、幅が20mm程度のステンレス鋼が使用される。
【0021】
図2は厚みが1.2mmで、幅が32mmのバネ材4を示す。このバネ材4には、V字状に曲げられたクッション部分41と、その先端上部に形成されたバンド挿入穴42が形成されている。
【0022】
図1に示すように配列された放熱用帯状金属1の特定位置にバネ材4を置き、そのバネ材4のバンド挿入穴42にバンドを通し、その両端の締付金具3を利用してバンド2を締め付ける際、バネ材4が機能し配列された放熱用帯状金属1を押さえつけて固定する。
【0023】
このように、固定された放熱用帯状金属1は、加温機の作動によって缶体外面の加熱による熱膨張によってバンド2の締め付けが緩んでもバネ材4が有するバネ機能によって締め付けの程度は継続することになり、配列された放熱用帯状金属1の固定は安定して持続される。
【0024】
フィンを立設した放熱板として、軟化温度の低い軟質のアルミニウム合金を使用した場合には、固定バンドで締め付けられていても軟化変形する場合がある。
【0025】
図3は、これを防止するための強化材5の態様を示す。 図3(a)に示す斜視図において、強化材5は、隣接するアルミニウム合金製の放熱板1−1と1−2の、重なり合わせ連結したそれぞれの縁部13−1と13−2を覆うステンレス鋼製の強化用フレームとして示されている。同図3(b)は、その断面から見た状態を示す。同図に示すように、放熱板1−1と1−2の配列側部に形成された山形縁13−1と13−2の重ね合わせ部分をステンレス鋼製のフレームからなる強化材5によってカバーし、重ね合わせ部分の強化によって、配列したす放熱板全体を強化する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による缶体表面に配列された放熱用帯状金属の固定要領を示す。
【図2】放熱用帯状金属の固定に使用するバネ材を示す。
【図3】強化材の配置状態を示す。
【図4】配列した放熱用帯状金属をバンドによる従来の固定状態を示す。
【図5】放熱用帯状金属の従来例を示す。
【符号の説明】
【0027】
A 加温機の缶体 B 空気の排出管
1 帯状金属放熱板
11 帯板 12 放熱フィン 13 山形縁
2 締め付けバンド
3 締付金具
4 バネ材
41 クッション部分 42 バンド挿入穴
5 強化材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加温機の燃焼室を構成する円筒状缶体の外面に、それぞれ放熱フィンを立設した放熱板を複数、長軸方向に平行に配列し、この配列した放熱板の上から缶体の円周方向に締め付け用のバンドを巻き付け固定する加温機の放熱板の取付け方法であって、
締め付け用のバンドを巻き付け固定するに際して、前記配列した放熱板の上に弾性金属板製のバネ材を配置する加温機における放熱板の取付け方法。
【請求項2】
弾性金属板製のバネ材が、V字状の曲げ板からなり、V字の一側面を下面にして配置し、V字の他側面の上面にバンド挿通穴を形成したものである請求項1に記載の加温機における放熱板の取付け方法。
【請求項3】
前記放熱フィンを立設した放熱板の両側部に山形状の縁部が形成されており、相隣り合う放熱板の山形縁部を重ね合わせて配列後、その重ね合わせ箇所に配列した放熱板の強化材を配置する請求項1に記載の加温機における放熱板の取付け方法。
【請求項4】
配列した放熱板の重ね合わせ箇所に配置する強化材が、重ね合わされた放熱板の縁部を覆う金属製フレーム材からなる請求項3に記載の加温機における放熱板の取付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−19469(P2010−19469A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179284(P2008−179284)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(502251153)株式会社第一総合企画 (1)
【Fターム(参考)】