説明

加湿器

【課題】水分を含んだ気化フィルタ7に送風して加湿する気化式の加湿器中でも、特に温風用ヒータ9を備えた加湿器において、気化フィルタ7の型崩れを防いで形状を維持すること。
【解決手段】気化フィルタ7は親水性繊維と疎水性繊維の混紡不織布もしくは疎水性繊維のみから構成され、混紡不織布の場合は親水性繊維より疎水性繊維の割合が高いものを用いる。疎水性繊維の割合が高くなると気化フィルタ7の強度が増すので、フィルタ枠を用いなくとも気化フィルタ形状が崩れることはない。これにより、気化フィルタ7が温風用ヒータ9に接触することを防止し、火災を引き起こすおそれのない安全な加湿器を安価に構成することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の乾燥を防止するための加湿器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加湿装置の一例として、水分を含んだ気化フィルタに送風して加湿する気化式と呼ばれる方式のものが知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
図4はこの気化式の加湿器の断面を示したものであり、本体に着脱自在な給水タンク(図示せず)を備え、この給水タンクから供給される水が一定量水槽部21に貯められるようになっている。また、水槽部21には気化フィルタ22が設置され、気化フィルタ22は水槽部21内の水を吸水して湿潤している。
【0004】
そして、気化式のなかでも特に温風用ヒータ23を備えたものはハイブリッド式とも呼ばれ、室内の乾燥した空気は、シロッコファン24の回転により吸込口25から取り入れられて温風用ヒータ23を通過する際に温風となって気化フィルタ22に送風される。つまり、乾燥した空気(温風)を気化フィルタ22を通過させることで加湿空気とし、この加湿空気を吹出口26から吹き出して室内の加湿が行われるようになっており、このように温風用ヒータ23によって気化フィルタ22を通過させる空気の温度を上げることで、気化効率の高い加湿器となるのである。
【0005】
ここで用いられる気化フィルタ22の材質には様々なものがあるが、このような気化式の加湿器では、気化フィルタ22は毛細管現象によって水を吸い上げる必要があるため、レーヨンなどの親水性繊維とポリエステルなどの疎水性繊維の混紡繊維が用いられることが多い。そして、加湿効率をあげるために気化フィルタ22を構成する材料としては、親水性繊維の割合の高い素材が用いられているが、レーヨンは水を含むことにより強度が低下してしまうため、気化フィルタ22が水に濡れた状態では自重にて形状が崩れやすく、フィルタ形状を保持することが難しいという問題があった。
【0006】
また、加湿運転により気化フィルタ22中の水分は気化するが、気化出来ないミネラル成分等は炭酸塩となり気化フィルタ22に固着してしまう。固着した炭酸塩は毛細管現象を阻害して加湿能力低下の要因となるため、定期的に気化フィルタ22の洗浄が必要となるが、洗浄を繰り返すことによりさらに気化フィルタ22の形状が崩れ変形しやすくなってしまい、変形した気化フィルタ22は水槽部21にセットするのが難しくなる。
【0007】
そして特に図4のように気化フィルタ22の近傍に温風用ヒータ23が配置されている場合、変形した気化フィルタ22が温風用ヒータ23に接触するおそれがあり、火災の原因ともなりかねないため非常に危険であった。
【0008】
これに対し、気化フィルタ22を樹脂製のケースで囲い、気化フィルタ22の変形を防止したものもあるが、樹脂ケースを用いる分コストアップしてしまうことになる(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−32139号公報
【特許文献2】特開2007−178121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためのもので、樹脂ケースを用いることなく気化フィルタの形状を維持することのできる加湿器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、本体に着脱自在に装着される水タンクと、前記水タンクから供給される水を一時的に貯える水槽部と、前記水槽部の水を気化する略直方形状の気化フィルタと、前記水槽部に形成されて気化フィルタを保持するフィルタ装着部と、前記気化フィルタに送風する送風機と、前記気化フィルタに近接して配置され送風機から気化フィルターに送られる風を加熱する温風用ヒータを備え、前記気化フィルタは親水性繊維より疎水性繊維の割合が高い、もしくは疎水性繊維のみの不織布からなることを特徴とする加湿器である。
【0012】
また、前記気化フィルタは不織布をプリーツ状に折り曲げて形成されたプリーツフィルタであって、このプリーツフィルタを所定位置で折り返して複数段のプリーツを有する形状としたことを特徴とする請求項1記載の加湿器である。
【0013】
また、前記気化フィルタは折り返して成形した際に端面を接着しないことを特徴とする請求項2記載の加湿器である。
【発明の効果】
【0014】
上述のように構成することにより、気化フィルタが変形しにくくなるため、水槽部への取り付けが簡単になるとともに、温風用ヒータが近傍に配置されていても温風用ヒータと接触することはなく、火災などの危険を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の加湿器の外観斜視図である。
【図2】本発明の加湿器の内部断面図である。
【図3】本発明の気化フィルタの成形方法を説明する図である。
【図4】従来の加湿器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好適と考える本発明の最良の形態を、本発明の作用効果を示して簡単に説明する。
【0017】
本発明の加湿器は、水槽部に設置された気化フィルタに送風することにより加湿運転を行う気化式の加湿器であって、気化フィルタの近傍には温風用ヒータが設けられており、この温風用ヒータにより送風機からの風を温風として加湿効率を上げることができるものである。
【0018】
そして、気化フィルタは親水性繊維と疎水性繊維の混紡不織布もしくは疎水性繊維のみから構成され、混紡不織布の場合は親水性繊維より疎水性繊維の割合が高いものを用いる。
【0019】
つまり、疎水性繊維の割合が高くなると気化フィルタの強度が増すので、気化フィルタは自重で形状が崩れることはなく、また、繰り返し洗浄を行っても従来のものと比べて変形しにくく、フィルタを囲う枠などを用いずとももとの形状を維持することが可能となる。そのため、気化フィルタの近傍に温風用ヒータが配置されている場合でも、気化フィルタが温風用ヒータに接触することはなく、火災を引き起こすおそれのない安全な加湿器となる。
【0020】
また、気化フィルタは所定位置から折り返すだけで複数段のプリーツを有する形状に加工することができるとともに、型崩れしにくいためフィルタ枠などを用いて補強する必要がなく、部品点数を減らしてコストダウンすることができる。
【0021】
また、気化フィルタは折り返した際に端面を接着しなくとも形状を保持することができるため、気化フィルタ成形作業の工数を減らすことができる。
【実施例1】
【0022】
以下本発明の一実施例を図面により説明する。
【0023】
図1は本発明の加湿器の外観斜視図であって、加湿器の本体1に着脱自在に設けられる水タンク2が本体1の外郭面の一部を形成している。また、本体1の側面には室内の空気を本体1内部に取り入れるための吸込口3が設けられ、上部には本体1内で加湿された空気を室内に放出するための吹出口4と、操作パネル5が設けられている。
【0024】
図2は加湿器の内部断面図であり、水タンク2から供給された水を一定水量貯える水槽部6、水槽部6内に配置され水槽部6に貯えられた水を吸水して湿潤する気化フィルタ7、室内の空気を吸込口3から取り込み湿潤している気化フィルタ7を通過させ加湿空気として吹出口4より室内に放出する送風機8、送風機8により吸込口3から取り入れられた空気を加熱する温風用ヒータ9が設けられており、気化フィルタ7と温風用ヒータ9は近接して配置されている。
【0025】
水槽部6は天面が開口した形状であり、水タンク2を取り外すと本体1から引出せるように摺動可能に設けられている。また、水槽部6には気化フィルタ7を装着するための凹状の気化フィルタ装着部6aが形成されている。
【0026】
加湿運転をおこなう場合には、まず水タンク2を本体1に挿入すると水槽部6には水タンク2から水が流れ出して一定水位の水が貯えられるので、水槽部6に設置されている気化フィルタ7は毛細管現象により水槽部6の水を吸い上げ湿潤する。この状態で、操作パネル5の運転スイッチを押下し湿度設定スイッチで目標とする湿度を選択すると、送風機8の回転により室内空気は吸込口3から本体1内に取り入れられる。そして設定された湿度と室内の湿度に基づいて、温風用ヒータ9への通電と送風機8の回転が制御されるので、吸込口3から取り込まれた空気は温風用ヒータ9で暖められて温風となり、この温風が気化フィルタ7に送られることで気化フィルタ7内の水を気化して水分を含んだ加湿空気となって、吹出口4から放出されることにより室内の加湿が行われる。図中の白矢印は室内の乾燥した空気、黒矢印は水分を含んだ加湿空気の流れを表している。
【0027】
ここで気化フィルタ7についてさらに詳細に説明すると、気化フィルタ7は不織布をプリーツ状に折り曲げて形成されたプリーツフィルタであって、接着材を塗布することでプリーツが保持されている。気化フィルタ7に塗布する接着材には種々のものがあり、本実施例ではポリオレフィン系のホットメルト樹脂を窒素により発泡させたものを使用している。
【0028】
また、気化フィルタ7の材料である不織布は、親水性繊維であるレーヨンと疎水性繊維であるポリエステルの混紡もしくはポリエステルのみからなり、混紡の場合にはその割合は疎水性繊維の方が高いものを使用する。レーヨンは水を含むことにより強度が低下してしまう性質があるが、ポリエステルの割合を高くすることにより、気化フィルタ7は水に濡れたときにでも型崩れせずにもとの形状を保持することができるため、気化フィルタ7と温風用ヒータ9が近接して配置されていても、気化フィルタ7が温風用ヒータ9に接触してしまうことはなく、火災の危険を防止することとなる。そして、そのために気化フィルタ7を囲う枠を必要としないので、部品点数を減らしてコストダウンも可能となるのである。
【0029】
なお、気化フィルタ7はポリエステルの割合が高いと毛細管現象が弱く、気化フィルタ7が水を吸水できなくなると加湿能力が低下してしまうため、ポリエステルを親水性材料でコーティングするなどして気化フィルタ7の吸水力を確保する必要がある。また、混紡割合の詳細はコーティングや加湿器に求められる加湿能力によっても異なるが、ポリエステル比率を80%以上とすることが好ましい。
【0030】
次に気化フィルタ7の成形について図3を用いて説明する。図3(a)において7aは気化フィルタ7を形成するフィルタ基材であり、シート状の不織布をプリーツ状に折り曲げてプリーツが形成され、長さ方向に対してホットメルト10を塗布することでプリーツが保持されている。そして、フィルタ基材7aの中央にはホットメルト10が塗布されていない部分があり、ここからフィルタ基材7aを折り返すことができるようになっている。
【0031】
図中の破線を中心にしてフィルタ基材7aを中央から折り返すと、図3(b)に示すように2段のプリーツを有する気化フィルタ7となる。この2段のプリーツは折返し面7bでは繋がっているが、反対側の基材端面7cでは離れた状態となっている。なお、フィルタ基材7aにホットメルト10を塗布しない箇所を増やせばプリーツの段数を変えることも容易に可能であり、例えばフィルタ基材7aの長さを3等分して2箇所にホットメルト10を塗布しないようにし、これを折り返せば3段のプリーツを有する気化フィルタ7となる。この場合でも、基材端面7cは離れた状態のままでよい。このようにして成形された気化フィルタ7は、フィルタ装着部6aに嵌めこまれて水槽部6にセットされる。
【0032】
従来の気化フィルタ7は、水槽部6にセットされて水を吸い上げると強度が低下して自重で形状が崩れてしまうため、基材端面7c同士を接着しなければ基材端面7cから外側へ開き、気化フィルタ7が倒れてしまう。そして、気化フィルタ7の近傍には温風用ヒータ9が配置されているので、倒れた気化フィルタ7が温風用ヒータ9に接触すると火災発生の原因となるおそれがあるため、基材端面7cを接着する作業が必要となっていた。しかしながら、本発明の気化フィルタ7は水に濡れても型崩れせずもとの形状を保持することができるため、基材端面7cが接着されていなくても気化フィルタ7が倒れることはない。したがって、基材端面7cの接着作業が不要となり、気化フィルタ7成形作業の工数を減らすことができる。
【0033】
また、加湿運転に伴い気化フィルタ7には炭酸塩が固着するため定期的な洗浄が必要であるが、洗浄を繰り返しても気化フィルタ7は型崩れしにくいので、水槽部6へのセットも容易に行うことができる。さらに耐久性も向上するので気化フィルタ7の交換寿命が長くなるといった効果も有する。
【符号の説明】
【0034】
1 本体
2 水タンク
6 水槽部
6a フィルタ装着部
7 気化フィルタ
8 送風機
9 温風用ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に着脱自在に装着される水タンクと、前記水タンクから供給される水を一時的に貯える水槽部と、前記水槽部の水を気化する略直方形状の気化フィルタと、前記水槽部に形成されて気化フィルタを保持するフィルタ装着部と、前記気化フィルタに送風する送風機と、前記気化フィルタに近接して配置され送風機から気化フィルターに送られる風を加熱する温風用ヒータを備え、前記気化フィルタは親水性繊維より疎水性繊維の割合が高い、もしくは疎水性繊維のみの不織布からなることを特徴とする加湿器。
【請求項2】
前記気化フィルタは不織布をプリーツ状に折り曲げて形成されたプリーツフィルタであって、このプリーツフィルタを所定位置で折り返して複数段のプリーツを有する形状としたことを特徴とする請求項1記載の加湿器。
【請求項3】
前記気化フィルタは折り返して成形した際に端面を接着しないことを特徴とする請求項2記載の加湿器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−2730(P2013−2730A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134062(P2011−134062)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000109026)ダイニチ工業株式会社 (108)
【Fターム(参考)】