説明

加湿用パッド

【課題】肌に当てて使用する加湿用パッドに対して、温度の立上り速度が速く、所要温度を長い時間維持できるように改良を施す。
【解決手段】加湿用パッド1が、第1、第2表面シート21,22の間に発熱体26を有する。発熱体26は、金属粉と塩類と水とを含み、通気性の第1表面シート21を介して酸素が供給されると、酸化熱を発生して水を水蒸気に変えることができる。発熱体26には、塩類と水として、食塩濃度18〜22重量%の食塩水を17.5〜26重量%含浸させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、顔面やその他の肌に適度な温度の水蒸気を供給することができる加湿用パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、顔面等の肌に当てて使用し、その肌に水蒸気を供給することができる加湿用パッドは公知である。例えば、特許文献1には、この種のパッドである水蒸気発生体が開示されている。この水蒸気発生体は、金属粉、塩類および水を含有する発熱体を透湿性シートで被覆したものであって、0.01mg/cm・min以上の水蒸気を発生させることができ、その水蒸気の温度は50℃以下に制御されている。また、特許文献2には、この種パッドであって、顔面に当てて使用するのに好適な変形能力を有するものが開示されている。
【特許文献1】特許第3049707号公報
【特許文献2】特開2004−358110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
加湿用パッドが顔面等に当てて使用するものである場合には、パッドから発生する水蒸気の量や温度の他に、パッドの包装を解いてからパッドが所要の温度に到達するまでの時間(温度の立上り速度)やパッドが所要の温度を維持していることができる時間(温度の持続時間)等が重要視される。しかるに、特許文献1,2には、温度の立上り速度を速めるための手段や温度の持続時間を長くするための手段までは開示されていない。
【0004】
この発明は、温度の立上り速度を速めたり、温度の持続時間を長くしたりすることが可能な加湿用パッドの提供を課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、この発明が対象とするのは、肌に接触させる第1表面シートと、前記第1表面シートの反対側に位置する第2表面シートとの間に少なくとも金属粉と塩類と水と保水材とを含む加湿用発熱体が介在し、前記第1、第2表面シートのうちの少なくとも前記第1表面シートが通気性のものであり、前記発熱体が前記第1表面シートを介して酸素を供給されたときに生じる酸化熱によって前記水から水蒸気を発生させて前記肌を加湿することが可能であり、酸素非透過性のシートによって包装されているパッドである。
【0006】
かかるパッドにおいて、この発明が特徴とするところは、前記塩類と前記水として、食塩濃度が18〜22重量%である食塩水を前記発熱体において17.5〜26重量%含浸させてあること、にある。
【0007】
この発明の好ましい実施態様の一つにおいて、温度が20±1℃の室内において、前記パッドはその包装を解いてから取り出してから20分経過するまでの間に、少なくとも4gの前記水蒸気を発生させる。
【0008】
この発明の好ましい実施態様の他の一つにおいて、温度が20±1℃の室内において、前記パッドはその包装を解いてから3分以内に、前記第1表面シート側の温度が40℃に達する。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る加湿用パッドでは、発熱体が食塩濃度18〜22重量%の食塩水を17.5〜26重量%含むことによって、包装を解いて酸素を供給すると、第1表面シート側の温度が速やかに40℃に到達し、その後は40℃以上の温度を長い時間維持することができる。
【0010】
包装を解いてから20分経過するまでの間に少なくとも4gの水蒸気を発生させることができる態様のパッドであれば、顔面に十分な潤いを与えることができる。
【0011】
包装を解いてから3分以内に表面温度が40℃に達する態様のパッドであれば、顔面をスピーディーに温めたり、加湿したりすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
添付の図面を参照して、この発明に係る加湿用パッドの詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0013】
図1は、加湿用パッドの一例である顔面加湿用パッド1の平面図であって、パッド1はその包装(図示せず)を解かれ、図の上下左右に広げられた状態にあり、パッド1を当てるべき顔面5が仮想線で示されている。このパッド1は、左右方向の寸法Aが266mm、上下方向の寸法Bが136mmであって、顔面の中心に一致させる中心線O−Oを有し、その中心線O−Oに関して対称に作られている。かかるパッド1は、中心線O−Oを挟んで向かい合う一対の内側加湿部11a,11bを有し、内側加湿部11a,11bそれぞれの外側に外側加湿部12a,12bを有する。これら各加湿部11a,11b,12a,12bの周囲には、非加湿部15が形成されている。非加湿部15には、中心線O−O上にあって非加湿部15をその厚さ方向において貫通する矩形の通気孔16が形成されている。
【0014】
図2,3は、図1のII−II線切断面を示す図と、図2において仮想線IIIで囲まれている部分を拡大して示す図である。図2において、右内側加湿部11aと右外側加湿部12aとは、実質的に同じ厚さと同じ構造を有しており、図2における上面を形成していて加湿パッド使用者にとっての肌当接側シートである第1表面シート21(図3参照)がパッド1の使用者の顔面5に当てられる。非加湿部15は、右内側加湿部11aと右外側加湿部12aとのいずれよりも薄く、かつ、これら加湿部11a,12aが非加湿部15よりも顔面5に向かって、つまり図の上方に向かって突出した状態になるように形成されている。図2において、表面シート21の反対側に位置して図2における下面を形成している。第2表面シート22(図3参照)は、加湿部11a,12aと非加湿部15とにおいてほぼ平坦な状態にある。
【0015】
図3の右外側加湿部12aでは、第1表面シート21と第2表面シート22との間に、複数の透孔23が形成されている温度調節シート24と、発熱体26と、断熱シート27とが図示の如く順に重ねられている。第1表面シート21には、右外側加湿部12aの外側から内部へ向かっての酸素の透過と、内側から外側へ向かっての水蒸気の透過とが可能な通気性シート21aの上面に短繊維21bを静電植毛したものが使用されている。その通気性シート21aには、ポイントボンド不織布やスパンボンド不織布等の不織布が使用可能であり、短繊維21bには長さ0.5〜2mm程度の繊維が使用可能である。温度調節シート24には、発泡プラスチックシート、複数枚の紙やプラスチックフィルムを積層したもの等に直径0.5〜3mm程度の透孔23を複数形成したものが使用可能である。発熱体26は、少なくとも、第1表面シート21と温度調節シート24とを介して供給される酸素の存在下に酸化して酸化熱を発生可能な鉄やアルミ等の金属粉と、その酸化に必要な水と、その水を発熱体26の内部に保持するとともに一様に分布させるためのパルプや木粉、バーミキュライト等の保水材とを含んでいる。発熱体26は、この他に、促進剤としての活性炭、発熱体26をシート状のものにするための繊維やバインダー等を含むことが可能であり、さらにはまた、鉄粉等の粉体を通気性シート材料で被覆することも可能である。断熱シート27には、独立気泡の発泡樹脂シートやプラスチックフィルム等の断熱材料を使用可能である。シート27は、発熱体26で発生する熱や水蒸気が第2表面シート22の側から外へ出ることを防いでいる。第2表面シート22は、パッド1の取り扱いを容易にするとともにパッド1の肌触りを良好にするためのもので、それには不織布やプラスチックフィルム、不織布が外側となりプラスチックフィルムが内側となっている複合シート等を使用可能である。
【0016】
右外側加湿部12aがこのように形成されているパッド1では、その他の加湿部、すなわち右内側加湿部11aや左内側加湿部11b、左外側加湿部12bも右外側加湿部12aと同じ断面構造を有している。一方、図1,2に示されている非加湿部15は、図3に示された発熱体26を含まず、また図3に示された各シート材料、すなわち第1表面シート21、温度調節シート24、断熱シート27、第2表面シート22が加熱下に圧縮されて互いに溶着し、図2の如く薄くなっている。好ましい非加湿部15は、各加湿部11a,11b,12a,12bよりも折り曲げることが容易に形成されている。
【0017】
かようなパッド1は、それに対する外気中の酸素の進入を阻止可能な非通気性のシート材料(図示せず)によって包装された状態で使用者に供給され、使用者は、その包装を解いたなら、通気孔16を鼻筋に一致させるようにして第1表面シート21を顔面5に当てる。パッド1は、非加湿部15において折れ曲がり、各加湿部11a,11b,12a,12bでは緩やかに湾曲して、顔面5の起伏になじむとともに、右と左の外側加湿部12a,12bの一部分はそれに軽く手を当てると顔面5の側方部分に接触する。パッド1を顔面5に当てている間に、外気中の酸素が第1表面シート21と温度調節シート24とを透過して発熱体26に達する。すると、発熱体26では、鉄粉等の金属粉が、塩類と水との存在下にその酸素と反応して酸化し、酸化熱を発生する。その酸化熱によって、発熱体26における水は水蒸気となって温度調節シート24と第1の表面シート21を透過して顔面5に供給され、顔面5を温めるとともに、顔面に潤いを与えることができる。発熱体26で発生した水蒸気は、その温度が80℃程度になることがあるが、そのように高温の水蒸気は、複数の透孔23を有する温度調節シート24を透過させることによって温度を下げ、第1表面シート21の温度を50℃前後に制御することが可能である。第1表面シート21の外に出た水蒸気は、複数の短繊維21bの間を拡散することによって、顔面の広い範囲にわたって一様に供給されるようになる。なお、断熱シート27や第2表面シート22は、非通気性のものであるから、水蒸気は第2の表面シート22の外へ出ることがない。
【0018】
パッド1が顔面に5に当てて使用するものである場合、発明者が知見したところによれば、水蒸気を発生中のパッド1の表面温度、すなわち第1表面シート21の温度は40〜53℃にあることが好ましく、48〜53℃にあることがより好ましい。第1表面シート21の温度は、20±1℃、R.H.50%の室内で、日本電子(株)製の温度測定器JTG−6300のサーモグラフカメラを使用して非接触式で測定される。包装を解いた後のパッド1は、表面温度が所要の温度にまで速やかに上昇するものであることが好ましく、具体的には、包装を解いてから3分以内に40〜53℃に到達していることが好ましく、48〜53℃に到達していることがより好ましい。しかし、パッド1が54℃以上になること、または40℃に達しないことは好ましくない。換言すると、パッド1の温度上昇性能の良否は、包装を解いてから表面温度が40℃に到達するまでの所要時間によって判断することが必要であって、具体的には、その所要時間は3分以内であることが好ましく、2分以内であることがより好ましいが、3分を超えることは好ましくない。パッド1の性能の良否はまた、その表面を所要温度に維持することができる時間によっても判断することが必要である。具体的には、40℃に到達してから40℃以下に下がるまでの時間が5分以上であることが好ましい。さらに、パッド1の性能の良否は、所要時間内での水蒸気の発生量によって判断することも必要である。具体的には、包装を解いてから20分経過するまでの間の水蒸気発生量は少なくとも4gであることが好ましく、5g以上であることがより好ましい。水蒸気発生量は、包装を解いた直後のパッド1の重量と20分経過後のパッド1の重量との差として求められる。
【0019】
この発明において、かような好ましいパッド1は、各加湿部11a,11b,12a,12bの発熱体26において、食塩濃度が18〜22重量%の食塩水の含浸量が17.5〜26重量%となるように調整することによって得ることが可能である。
【実施例1】
【0020】
図1の形状のパッド1であって、寸法Cが80mm、寸法Dが112mm、第1表面シート21の面積が45.4cmの右外側加湿部12aを対象にして、加湿部としての特性を評価した。加湿部12aは、図3の断面構造を有するもので、第1表面シート21には、坪量90〜97g/m、厚さ1.5〜2.5mmの植毛不織布を使用した。温度調節シート24としては、坪量73g、厚さ3mm、発泡倍率が30倍、貫通孔23の開口率がシート24の下面において30%である発泡ポリエチレンシートを使用した。加熱部12aにおける発熱体26は、鉄粉を95重量%含む他に、残り5重量%として、保水材としてのバーミキュライトと木粉、酸化促進剤としての活性炭を5重量%含む基材と、食塩濃度20重量%の食塩水とによって作られており、その食塩水は発熱体26における含浸量が17.5〜26重量%となるように変化させた。発熱体26における食塩水の含浸量が異なる各種の加湿部12は、アルミ箔をラミネートしたポリエチレンフィルム製の非通気性の袋で包装して密封し、実施例としてのパッドとした。パッドの包装を解いてから、各加湿部についての特性を測定し、その結果を表1に示した。なお、加湿部の周囲には、幅が約5mmの非加熱部を設けておいた。
【0021】
【表1】

【0022】
表1において、「立上り時間」とは、加湿部が40℃に達するまでの時間(分)であり、○印は2分以内、△印は2〜3分、×印は3分以上であったことを示す。「持続時間」は、加湿部が40℃に到達してから40℃以下になるまでの時間(分)であり、○印はその時間が5分以上であることを示し、×印は5分未満であることを示す。「最高到達温度」は、約1時間の観測時間中における最高到達温度(℃)であって、○印は48〜53℃、△印は40〜48℃、×印は40℃未満または54℃以上であることを示す。「3分後到達温度」は、包装を解いてから3分後に到達した温度であって、○印は48〜53℃、△印は40〜48℃、×印は40℃未満または54℃以上であることを示す。「水蒸気発生量」は、パッド1の包装を解いた後の20分間で発生した水蒸気量(g)であって、4g以上であることが好ましく、5g以上であることがより好ましい。
【0023】
表1にはまた、食塩水の含浸量を26重量%以上にした場合の加湿部と、その量を15%以下にした場合の加湿部とについての測定結果が比較例1−3として示されている。
【0024】
図4,5,6は、実施例1−3,4−5、比較例1−3それぞれについての包装を解いてからの経過時間と、加湿部の表面温度との関係を示す図である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
この発明によれば、温度の立ち上がりが速やかで、所要温度を長い時間維持することができる加湿用パッドの生産が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】加湿用パッドの平面図。
【図2】図1のII−II線切断面を示す図。
【図3】図2の部分拡大図。
【図4】実施例1−3の測定結果を示す図。
【図5】実施例4−5の測定結果を示す図。
【図6】比較例の測定結果を示す図。
【符号の説明】
【0027】
1 加湿用パッド
5 顔面
21 第1表面シート
22 第2表面シート
26 発熱体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌に接触させる第1表面シートと、前記第1表面シートの反対側に位置する第2表面シートとの間に少なくとも金属粉と塩類と水と保水材とを含む加湿用発熱体が介在し、前記第1、第2表面シートのうちの少なくとも前記第1表面シートが通気性のものであり、前記発熱体が前記第1表面シートを介して酸素を供給されたときに生じる酸化熱によって前記水から水蒸気を発生させて前記肌を加湿することが可能であり、酸素非透過性のシートによって包装されているパッドであって、
前記塩類と前記水として、食塩濃度が18〜22重量%である食塩水を前記発熱体において17.5〜26重量%含浸させてあることを特徴とする前記パッド。
【請求項2】
温度が20±1℃の室内において、前記パッドはその包装を解いてから20分を経過するまでの間に、少なくとも4gの前記水蒸気を発生させる請求項1記載のパッド。
【請求項3】
温度が20±1℃の室内において、前記パッドはその包装を解いてから3分以内に前記第1表面シートの温度が40℃に達する請求項1または2記載のパッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−44164(P2007−44164A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−230104(P2005−230104)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】