説明

加湿装置及びこれを含む環境試験装置

【課題】設置スペースの大型化及びコスト上昇を抑制しつつ、低湿条件での環境試験装置の長時間の連続運転、低湿度域の拡大、及び省エネを実現する。
【解決手段】環境試験装置1に含まれる加湿装置10は、水を貯留する加湿器11、給水管18、排水管19、及び、給水管18に接続されると共にパイプヒータ21が設けられた加湿配管20を有する。加湿配管20の他端20bは、環境試験装置1の空調室1bにおいて、除湿装置4と空気ヒータ3との間に開口し、当該開口は加湿器11内に貯留される水の表面積よりも小さい。環境試験装置1の制御部100は、高湿条件では、加湿器11内に水を供給すると共にヒータ12を駆動して加湿器11内の水を加熱し、低湿条件では、加湿器11内から水を排出すると共にパイプヒータ21を駆動して加湿配管20を加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境試験装置に含まれる加湿装置、及びこれを含む環境試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な環境状況下における製品の動作信頼性を確認するための環境試験において、例えば95℃98%RHのような高温高湿状態から40℃10%RHのような低温低湿状態までの広い範囲で運転可能な空調装置が環境試験装置として用いられる。このような環境試験装置は、加湿器内に貯留された水を内蔵ヒータ等で加熱することにより加湿を行う加湿装置及び除湿を行う除湿装置を有し、試験室が一定の温湿度となるように制御される。
【0003】
また、環境試験装置においては、省エネの観点から、加湿器内の水の自然蒸発に着目して、高温高湿条件においては加湿量を多くするために加湿器内の水の表面積が大きく、低温低湿条件においては加湿量を抑えるために加湿器内の水の表面積が小さくなるよう、様々な提案がなされている。例えば特許文献1には、2台の加湿器を併設し、低湿度域では1台の加湿器内の水を排水して他の1台の加湿器を使用することで、加湿器内の水の表面積を小さくして自然蒸発による加湿量を少なくし、中高湿度域では2台の加湿器を併用するという技術が開示されている。これにより、低湿度域における除湿装置の負荷が低減される。また、特許文献2には、加湿器の縦断面を階段形状又はV字形状とすることで、水位に応じて加湿器内の水の表面積を変化させ、例えば低温低湿条件では水の表面積が小さくなるような水位を選択するという技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−318107号公報
【特許文献2】特開2002−349914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記文献1によると、2台の加湿器が必要であるため、設置スペースの大型化、コスト上昇等が問題となり、また、加湿器内の水の表面積の減少に限界があるため、低湿度域の拡大が不可能である。一方、上記文献2によると、加湿器が1台という点から文献1に比べて装置構成が簡易ではあるものの、V字形状等の加湿器内にヒータを内蔵させるために加湿器の深さを深くする必要があることから、加湿器が大型化してしまい、設置スペースの大型化が問題となる。さらに、水位の高低に応じた2以上のヒータを設ける必要があるため、コスト上昇が問題となる。また、湿度制御においては水面下にヒータが必要となるため、水位を低くして水の表面積を小さくした場合でも、当該表面積の減少に限界があり、上記文献1と同様、低湿度域の拡大が不可能である。
【0006】
さらに上記文献1及び2によると、低湿条件において、加湿器内に水が存在することから、当該水の自然蒸発による加湿によって、除湿装置への着霜が生じ易い。この場合、低湿条件において環境試験装置を長時間連続運転することができない。
【0007】
本発明の目的は、環境試験装置に含まれる加湿装置において、設置スペースの大型化及びコスト上昇を抑制しつつ、低湿条件での環境試験装置の長時間の連続運転、低湿度域の拡大、及び省エネを実現することが可能な加湿装置、及びこれを含む環境試験装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の観点によると、水を貯留すると共に、当該水が湿度制御対象空間に対向するよう配置された加湿器と、前記加湿器内に貯留された水を加熱する第1加熱手段と、前記加湿器内から水を排出する排水部と、前記加湿器内に水を供給する給水部と、一端が前記給水部に接続され、他端が前記空間に開口した加湿配管と、前記加湿配管を加熱する第2加熱手段と、を備え、前記加湿配管における前記他端の開口が、前記加湿器内に貯留される水の表面積よりも小さいことを特徴とする加湿装置が提供される。
【0009】
上記観点の加湿装置の構成によると、加湿器を2台設けたり加湿器の形状をV字形状等にしたりする必要がないため、設置スペースの大型化及びコスト上昇を抑制することができる。また、本構成によると、高湿条件では給水部により加湿器内に水を供給して第1加熱手段により加湿を行い、低湿条件では排水部により加湿器内から水を排出して加湿配管及び第2加熱手段により加湿を行うことができる。このように本構成によると、低湿条件において、加湿器内に貯留される水の表面積よりも小さい開口を有する加湿配管を用いることで、ボイラ加湿の場合と比較して、ごく少量の加湿を行うことができ、低湿度域の拡大化が実現される。また、低湿条件で用いられる第2加熱手段は、上記のように小さい開口を有する加熱配管を加熱するものであるため、ボイラ加湿の場合と比較して、応答性及び制御分解能が良好であり、制御性の向上が実現される。また本構成の加湿装置に加えて除湿装置を用いて湿度制御を行う場合では、低湿条件において加湿器内から水を排出することで、加湿器内の水の自然蒸発による加湿がなくなるため、除湿量が抑えられる。これにより、除湿装置の負荷が低減し、省エネが実現される。さらに、このような構成の加湿装置を環境試験装置に適用する場合、低湿条件において、加湿器内から水を排出することで、ボイラ加湿の場合と同様に加湿器内に水が存在しない状態となることから、加湿器内の水の自然蒸発がなく、除湿装置への着霜が防止される。そのため、低湿度域での環境試験装置の長時間の連続運転が可能となる。
【0010】
本発明の加湿装置は、前記給水部における水位及び前記加湿配管における水位を共に調整する水位調整部をさらに備えていることが好ましい。この場合、給水部及び加湿配管についてそれぞれに水位調整部を設ける場合に比べて、構成の簡略化及びコスト削減を実現することができる。
【0011】
前記加湿配管における前記他端の開口が6〜8mmの内径を有することが好ましい。この場合、低湿条件において、加湿配管の他端の開口から少量の水分が空調室内に供給され、加湿量を効果的に抑えることができる。
【0012】
前記第2加熱手段が、前記加湿配管の表面にヒータが印刷されたパイプヒータを含んでよい。この場合、低湿条件において加湿配管の加熱を迅速に行うことができる。また、加湿配管の外表面にヒータが印刷されたパイプヒータの場合、ヒータの容量調整が容易であること、電気接続が容易であること等の利点がある。一方、加湿配管の内表面にヒータが印刷されたパイプヒータの場合、制御性が良いという利点がある。
【0013】
前記排水部及び前記給水部にそれぞれ前記排出及び前記供給の許可と禁止とを切換える切換弁が設けられてよい。この場合、上記のような湿度条件に応じた加湿方法の切換を容易に行うことができる。
【0014】
本発明の加湿装置は、前記空間を基準湿度より高い湿度とする高湿条件の場合、前記給水部を介して前記加湿器内に水を供給すると共に、前記第1加熱手段が前記加湿器内の水を加熱するように前記加湿装置を制御し、前記空間を前記基準湿度以下の湿度とする低湿条件の場合、前記排水部を介して前記加湿器内から水を排出すると共に、前記第2加熱手段が前記加湿配管を加熱するように前記加湿装置を制御する制御部を備えてよい。
【0015】
本発明の加湿装置は、前記低湿条件から前記高湿条件に移行する際に、前記給水部が前記加湿器内に水を供給するように前記加湿装置を制御する給水制御手段と、前記給水制御手段による前記給水部の駆動開始から所定時間の間、前記第2加熱手段が前記加湿配管を加熱するように前記加湿装置を制御する補助加湿制御手段と、をさらに備えてよい。低湿条件から高湿条件に移行する際、先ず加湿器内に水が供給されるが、当該供給の当初は加湿器内の水温が低いため、第1加熱手段のみによっては、加湿効果が十分に期待できない。そこで、上記のように、給水部の駆動開始から所定時間の間、第2加熱手段によって加湿配管を加熱し、加湿配管内の水を蒸発させることで、補助的に加湿を行う。これにより、低湿条件から高湿条件への移行時における加湿制御の連続性を確保することができる。
【0016】
或いは、本発明の加湿装置は、前記低湿条件から前記高湿条件に移行する際に、前記給水部が前記加湿器内に水を供給するように前記加湿装置を制御する給水制御手段と、前記加湿器の加湿能力が前記高湿条件に対応可能となるまで、前記第2加熱手段が前記加湿配管を加熱するように前記加湿装置を制御する補助加湿制御手段と、をさらに備えてよい。この場合にも、上記構成の場合と同様、加湿配管内の水の蒸発により補助的に加湿を行うことで、低湿条件から高湿条件への移行時における加湿制御の連続性を確保することができる。
【0017】
本発明の別の観点によると、上記の加湿装置と、環境試験に係る試料が配置される試験室と第1及び第2開口を介して前記試験室に連通する空調室と、を備えた環境試験装置であって、前記空調室が前記湿度制御対象空間を構成することを特徴とする環境試験装置が提供される。当該環境試験装置によると、上述した加湿装置による効果と同様の効果が得られる。
【0018】
前記加湿配管における前記他端の開口が、前記空間において、除湿装置よりも気流方向下流側に配置されていることが好ましい。この場合、上記のように低湿条件における加湿量が僅かとなることに加え、加湿配管による加湿が除湿装置よりも気流方向下流側において行われることから、除湿装置への着霜をより効果的に防止することができる。したがって、低湿度域での環境試験装置の長時間の連続運転をより確実に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
先ず、図1を参照し、本発明の一実施形態に係る加湿装置10及びこれを含む環境試験装置1の構成について説明する。環境試験装置1は、環境試験において用いられるものであって、仕切り壁9によって分離され且つ下部開口5及び上部開口6を介して互いに連通した試験室1a及び空調室1bを有する。試験室1aは、所定の温度及び湿度の空気を内包し、環境試験に係る試料が配置される。
【0021】
空調室1bには、上方から順に、送風機2、例えばシーズヒータ等の電熱ヒータからなる空気ヒータ3、除湿装置4、及び、加湿装置10の加湿器11が設けられている。つまり、除湿装置4は、加湿器11よりも上部開口6に近接した位置に配置されている。試験室1aから下部開口5を介して空調室1b内に流入した空気は、順次加湿器11、除湿装置4、及び空気ヒータ3によってその温度及び湿度を調整されつつ上昇し、所定の温度及び湿度となった状態で送風機2により上部開口6から試験室1aに供給される。
【0022】
加湿装置10は、水を貯留すると共に当該水が空調室1bの空間に対向するよう配置された加湿器11、加湿器11内に貯留された水を加熱するよう加湿器11の底部に設けられたヒータ12、加湿器11の底部に接続された給排水管17を有する。加湿器11は、上方が開放された中空箱型形状を有する。つまり、加湿器11の内部空間は、略直方体状であり、高さ方向に関して一定の矩形の平面形状を有する。加湿器11には、加湿器11内の水の水位を検出するセンサ13が取り付けられている。
【0023】
給排水管17は二股に分岐しており、一方の給水管18は加湿器11への水の供給に使用されるよう電磁弁18aを介して給水タンク(図示せず)に接続され、他方の排水管19は加湿器11からの水の排出に使用されるよう電磁弁19aを介して排水タンク(図示せず)に接続されている。電磁弁18a及び電磁弁19aはそれぞれ、給水管18を介した加湿器11内への水の供給及び排水管19を介した加湿器11内からの水の排出の、許可と禁止とを切換える切換弁である。具体的には、電磁弁18a及び電磁弁19aはそれぞれ、後述の制御部100の制御により閉とされることで、給水管18及び排水管19内の水の流れに抵抗を与えて流れを堰き止める一方、制御部100の制御により開とされることで、給水管18及び排水管19内の水の流れに抵抗を与えずに自由な水の流れを許容する。
【0024】
給水管18における電磁弁18aよりも給水タンク(図示せず)に近い部分には、加湿配管20の一端20aが接続されている。加湿配管20は、全長に亘って6〜8mmの内径を有する肉薄のステンレス製配管であって、給水管18内の空間に開口した一端20aから上方に湾曲しつつ延出している。そして加湿配管20の他端20bは、空調室1bの空間に開口し、より詳細には、除湿装置4よりもさらに上部開口6に近接した位置、即ち除湿装置4よりも上方であって、除湿装置4と空気ヒータ3との間に配置されている。他端20bの開口は、加湿器11内に貯留される水の表面積よりも十分に小さい大きさである。
【0025】
加湿配管20における一端20a近傍には、パイプヒータ21が設けられている。パイプヒータ21は、加湿配管20を加熱するものであって、瞬時に加湿配管20内の水の温度を上昇させることができるような高効率のヒータ(ホーロータイプの遠赤外ヒータ等)を加湿配管20の表面に印刷したものである。例えば、燃料電池の評価装置で使用されるパイプヒータ等をパイプヒータ21として用いることができる。
【0026】
給水管18における電磁弁18aと加湿配管20の一端20aとの間には、給水管18と水位調整室30とを繋ぐ配管33が接続されている。水位調整室30は、給水管18における水位及び加湿配管20における水位を共に調整するものであり、中空箱型形状を有し、その上部は大気と連通するよう開放されている。水位調整室30の上部側壁には、オーバーフロー管32が接続されている。オーバーフロー管32は、水位調整室30内の水位が満水位置(オーバーフロー管32の一端32aの下部より若干下側の位置)に至った後さらに水位調整室30内に水が流入した場合、即ちオーバーフローした場合に、当該オーバーフロー分の水を排水するよう、排水管19に接続している。
【0027】
次いで、環境試験装置1の制御について説明する。環境試験装置1においては、試験室1a内が所定の温度及び湿度となるよう、当該装置1の制御部100によって、送風機2、空気ヒータ3、除湿装置4、及び加湿装置10が制御される。
【0028】
例えば、温度及び湿度が基準値より高い値に設定された、所謂高温高湿条件の場合、制御部100は、除湿装置4の駆動を停止すると共に、加湿装置10を以下のように制御する。
【0029】
制御部100は、先ず、電磁弁18aを開とし、電磁弁19aを閉とする。その後、給水ポンプ(図示せず)等を駆動することで、給水タンク(図示せず)から給水管18及び給排水管17を介して加湿器11内に水を供給する。そして制御部100は、センサ13から加湿器11内の水位が満水位置(図1に示す位置)に至ったとの検知信号を受信すると、給水ポンプの駆動を停止し、給水を終了する。このとき加湿装置10においては、図1に斜線で示す領域に水が存在し、加湿器11内の水位と、水位調整室30内の水位と、加湿配管20内の水位とは同じになっている。つまり、加湿器11内の水位の満水位置と、水位調整室30内の水位の満水位置と、パイプヒータ21の上端とは同一の高さに設定されている。
【0030】
制御部100は、その後、ヒータ12を駆動し、加湿器11内に貯留された水を加熱する。これにより、加湿器11内に貯留された水が加熱によりその表面から迅速に蒸発することで、湿度が上昇する。蒸発により加湿器11内の水が減少するが、水位が一定に保たれるよう、電磁弁18a,19aが制御される。
【0031】
一方、温度及び湿度が基準値以下の値に設定された、所謂低温低湿条件の場合、制御部100は、除湿装置4を駆動すると共に、加湿装置10を以下のように制御する。
【0032】
制御部100は、先ず、ヒータ12の駆動を停止する。その後、電磁弁19aを開とし、電磁弁18aを閉とする。これにより、給排水管17及び排水管19を介して加湿器11内の水が排水タンク(図示せず)へと排出される。これにより、加湿器11内が空になる。このとき加湿装置10においては、図2に斜線で示す領域に(具体的には、水位調整室30内には満水位置まで、加湿配管20内にはパイプヒータ21の上端の位置まで)水が存在している。
【0033】
制御部100は、次に、パイプヒータ21を駆動し、加湿配管20を加熱する。これにより、加湿配管20内の水が加熱されて蒸発し、他端20bの開口から空調室1bへと水蒸気が供給され、湿度が上昇する。
【0034】
なお、低温低湿条件から高温高湿条件に移行する場合には、制御部100は、加湿装置10を以下のように制御する。
【0035】
制御部100は、先ず、上述のように、電磁弁18aを開とし且つ電磁弁19aを閉とし、給水ポンプ(図示せず)等を駆動することで加湿器11内に水を供給する。さらに、給水ポンプの駆動開始から所定時間の間(例えば2〜3分間)、パイプヒータ21を駆動し、加湿配管20を加熱する。一方、給水ポンプの駆動を停止して給水を終了した後には、ヒータ12を駆動し、加湿器11内に貯留された水を加熱する。
【0036】
低温低湿条件から高温高湿条件に移行する場合、先ず加湿器11内に水が供給されるが、当該供給の当初は加湿器11内の水温が低いため、ヒータ12のみによっては、加湿効果が十分に期待できない。そこで、本実施形態では、給水ポンプの駆動開始から所定時間の間、パイプヒータ21によって加湿配管20を加熱し、加湿配管20内の水を蒸発させることにより、補助的に加湿を行う。これにより、低湿条件から高湿条件への移行時における加湿制御の連続性を確保することができる。
【0037】
なお、加湿装置10における水位は、加湿器11への給水時及び排水時を含め、常に、パイプヒータ21の上端の位置に維持されることが好ましい。
【0038】
以上に述べたように、本実施形態に係る加湿装置10及び環境試験装置1によると、加湿器を2台設けたり加湿器の形状をV字形状等にしたりする必要がないため、設置スペースの大型化及びコスト上昇を抑制することができる。また、本構成によると、高湿条件では給水ポンプ、給水管18等により加湿器11内に水を供給してヒータ12により加湿を行い、低湿条件では排水管19により加湿器11内から水を排出して加湿配管20及びパイプヒータ21により加湿を行うことができる。このように本構成によると、低湿条件において、加湿器11内に貯留される水の表面積よりも小さい開口を有する加湿配管20を用いることで、ボイラ加湿の場合と比較して、ごく少量の加湿を行うことができ、低湿度域の拡大化が実現される。また、低湿条件で用いられるパイプヒータ21は、上記のように小さい開口を有する加熱配管20を加熱するものであるため、ボイラ加湿の場合と比較して、応答性及び制御分解能が良好であり、制御性の向上が実現される。また本構成では、低湿条件において加湿器11内から水を排出することで、加湿器11内の水の自然蒸発による加湿がなくなるため、除湿量が抑えられる。これにより、除湿装置の負荷が低減し、省エネが実現される。さらに、本構成では、低湿条件において、加湿器11内から水を排出することで、ボイラ加湿の場合と同様に加湿器11内に水が存在しない状態となることから、加湿器11内の水の自然蒸発がなく、除湿装置4への着霜が防止される。そのため、低湿度域での環境試験装置1の長時間の連続運転が可能となる。
【0039】
加湿装置10は、給水管18における水位及び加湿配管20における水位を共に調整する水位調整室30を有する。この場合、給水管18及び加湿配管20についてそれぞれに水位調整部を設ける場合に比べて、構成の簡略化及びコスト削減を実現することができる。
【0040】
加湿配管20における他端20bの開口が6〜8mmの内径を有する。この場合、低湿条件において、加湿配管20の他端20bの開口から少量の水分が空調室1b内に供給され、加湿量を効果的に抑えることができる。
【0041】
加湿配管20を加熱するものとして、加湿配管20の表面にヒータが印刷されたパイプヒータ21を用いているため、低湿条件における加熱配管20の加熱を迅速に行うことができる。また、加湿配管20の外表面にヒータが印刷されたパイプヒータ21の場合、ヒータの容量調整が容易であること、電気接続が容易であること等の利点がある。一方、加湿配管20の内表面にヒータが印刷されたパイプヒータ21の場合、制御性が良いという利点がある。
【0042】
排水管19及び給水管18にそれぞれ排出及び供給の許可と禁止とを切換える電磁弁19a,18aが設けられているため、上記のような湿度条件に応じた加湿方法の切換を容易に行うことができる。
【0043】
また、本実施形態の環境試験装置1によると、加湿配管20における他端20bの開口が、空調室1bの空間において、除湿装置4よりも気流方向(図1に矢印で示すように、上方に向かう方向)の下流側に配置されている。この場合、上記のように低湿条件における加湿量が僅かとなることに加え、加湿配管20による加湿が、除湿装置4よりも気流方向下流側において行われることから、除湿装置4への着霜をより効果的に防止することができる。したがって、低湿度域での環境試験装置1の長時間の連続運転をより確実に実現することができる。
【0044】
なお、上述の実施形態において、加湿器11内に所定量の水(例えばヒータ12が被る程度の量の水)が供給された後、加湿器11への給水を終了する前に、ヒータ12の駆動を開始してよい。これにより、加湿器11への給水終了後、直ちに適切な加湿を行うことができ、低湿条件から高湿条件への移行時における加湿制御の連続性が確保される。
【0045】
また、上述の実施形態では、給水ポンプの駆動開始から所定時間の間、パイプヒータ21を駆動するが、これ限定されず、加湿器11の加湿能力が高湿条件に対応可能となるまで(具体的には、例えば、給水ポンプの駆動開始から、加湿器11内の水が所定温度に達するまで)、パイプヒータ21を駆動し続けてよい。この場合にも、上述の実施形態と同様、加湿配管20内の水の蒸発により補助的に加湿を行うことで、低湿条件から高湿条件への移行時における加湿制御の連続性を確保することができる。
【0046】
次いで、低温低湿条件から高温高湿条件に移行する場合における、環境試験装置1の制御の変形例について説明する。本変形例では、給水管18ではなくオーバーフロー管32を介して加湿器11内への給水を行う。低温低湿条件においては、上述の実施形態と同様、図2に示すようにパイプヒータ21の上端の位置まで水が存在した状態で、パイプヒータ21の駆動により、他端20bの開口から補助的に加湿が行われるものとする。
【0047】
本変形例において、低温低湿条件から高温高湿条件に移行する場合、制御部100は、電磁弁18aを閉に維持しつつ電磁弁19aを閉とし、給水ポンプ(図示せず)等を駆動する。これにより、オーバーフロー管32を介して、排水管19における電磁弁19aより加湿器11側の部分、給水管18における電磁弁18aより加湿器11側の部分、及び給排水管17が徐々に水で満たされ、加湿器11内に水が供給される。パイプヒータ21は、上述の実施形態と同様、給水ポンプの駆動開始から、所定時間の間、又は、加湿器11の加湿能力が高湿条件に対応可能となるまで、持続的に駆動する。これにより、加湿配管20内の水が蒸発し、補助的に加湿が行われる。加湿器11への給水を終了した後、制御部100は、ヒータ12を駆動し、加湿器11内に貯留された水を加熱する。
【0048】
加湿器11内への給水時においては、例えばセンサ13が無い場合でも加湿器11内の水が満水位置に至ったことを適切に判断できるよう、一定時間毎に電磁弁18aを開とすると共に、例えば水位調整室30の側壁に設けられたセンサで水位を検出しつつ、制御を行うことが好ましい。また、当該給水の間、パイプヒータ21の上端よりも下側に水位が下がらないよう、電磁弁18aを間欠的に開閉するよう制御するのが好ましい。なお、このように電磁弁18aの開閉制御を行う場合には、加湿器11内への給水を迅速に行えるよう、給水開始から所定時間は電磁弁18aの閉鎖を維持し、加湿器11内の水位がある程度まで上昇した後に、電磁弁18aの開閉制御を行うのが好ましい。
【0049】
次いで、図3及び図4を参照し、加湿装置の第1及び第2変形例について説明する。
【0050】
図3に示す第1変形例に係る加湿装置50は、給水管18が給排水管17に接続されずに配管33を介して水位調整室30に接続されている点、及び、電磁弁18aが省略されている点について、上述の加湿装置10と異なる。本変形例の場合、加湿器11への給水は、上述した変形例に係る制御に基づいて、オーバーフロー管32を介して行われる。なお、本構成の場合、給水管18に水抜き弁を設けることで、水位調整室30及び/又は加湿配管20内の水についても、給水管18を介して排出が可能となる。
【0051】
図4に示す第2変形例に係る加湿装置60は、給水管18が給排水管17に接続されずに配管33を介して水位調整室30に接続されている点、電磁弁18aが省略されている点、並びに、水位調整室30と排水管19とを繋ぐ配管16及び電磁弁16aが新たに設けられた点について、上述の加湿装置10と異なる。本変形例の場合、加湿器11内への給水は、電磁弁16aを開及び電磁弁19aを閉とした状態で給水ポンプを駆動することで、配管16を介して行われる。また、加湿器11からの排水は、電磁弁16aを閉及び電磁弁19aを開とすることで、排水管19を介して行われる。
【0052】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0053】
加湿器11の給排水の構成は任意に変更可能である。例えば、電磁弁18a,19aを省略したり、配管の接続構成を変更したりしてよい。
【0054】
加湿配管20を加熱するものとして、パイプヒータ21以外の任意の加熱手段を用いてよい。
【0055】
オーバーフロー管32を省略し、その他の方法により水位を調整してよい。また、水位調整部を給水管および加湿配管のそれぞれに設けてもよい。
【0056】
加湿器は、水を貯留可能である限り、様々な形状であってよい。例えば、上述の実施形態のように高さ方向に関して一定の矩形の平面形状を有するような略直方体形状の内部空間を有するものに限定されず、高さ方向に関して平面形状が変化するような内部空間を有してよい。
【0057】
温湿度条件に応じた環境試験装置1の各部の制御については、適宜変更可能である。例えば、低温低湿条件の場合、上述の実施形態では除湿装置4を駆動するが、除湿装置4を駆動せず、加湿器11による加湿量を低減する制御のみで、低温低湿条件を実現してもよい。
【0058】
高温高湿条件において加湿器内の水の蒸発を迅速に行うという観点からヒータ12を設けることが好ましいが、空調室1b内の空気の温度上昇に応じた加湿器内の水の自然蒸発を利用するのであれば、ヒータ12を省略してもよい。
【0059】
加湿装置各部の水位制御については、上述のような方法に限定されず、様々な方法を採用可能である。加湿器11内の水の水位を検出するセンサ13は省略してもよい。
【0060】
低湿条件において、加湿器11内の水を完全に排出する必要はなく、加湿器11の上部開口を介した水の自然蒸発を最小限に抑制できる程度(例えば、加湿器11内には水が無いが給排水管17内には水が残っている程度)であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態に係る加湿装置及びこれを含む環境試験装置を示す概略図である。
【図2】図1の環境試験装置における低温低湿条件の場合の加湿方法を説明する概略図である。
【図3】第1変形例に係る加湿装置を含む環境試験装置を示す概略図である。
【図4】第2変形例に係る加湿装置を含む環境試験装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0062】
1 環境試験装置
1a 試験室
1b 空調室
2 送風機
3 空気ヒータ
4 除湿装置
5 下部開口(第1開口)
6 上部開口(第2開口)
9 仕切り壁
10;50;60 加湿装置
11 加湿器
12 ヒータ(第1加熱手段)
18 給水管(給水部)
18a 電磁弁(切換弁)
19 排水管(排水部)
19a 電磁弁(切換弁)
20 加湿配管
20a 一端
20b 他端
21 パイプヒータ(第2加熱手段)
30 水位調整室(水位調整部)
32 オーバーフロー管
100 制御部(給水制御手段,補助加湿制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を貯留すると共に、当該水が湿度制御対象空間に対向するよう配置された加湿器と、
前記加湿器内に貯留された水を加熱する第1加熱手段と、
前記加湿器内から水を排出する排水部と、
前記加湿器内に水を供給する給水部と、
一端が前記給水部に接続され、他端が前記空間に開口した加湿配管と、
前記加湿配管を加熱する第2加熱手段と、を備え、
前記加湿配管における前記他端の開口が、前記加湿器内に貯留される水の表面積よりも小さいことを特徴とする加湿装置。
【請求項2】
前記給水部における水位及び前記加湿配管における水位を共に調整する水位調整部をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の加湿装置。
【請求項3】
前記加湿配管における前記他端の開口が6〜8mmの内径を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の加湿装置。
【請求項4】
前記第2加熱手段が、前記加湿配管の表面にヒータが印刷されたパイプヒータを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の加湿装置。
【請求項5】
前記排水部及び前記給水部にそれぞれ前記排出及び前記供給の許可と禁止とを切換える切換弁が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の加湿装置。
【請求項6】
前記空間を基準湿度より高い湿度とする高湿条件の場合、前記給水部を介して前記加湿器内に水を供給すると共に、前記第1加熱手段が前記加湿器内の水を加熱するように前記加湿装置を制御し、前記空間を前記基準湿度以下の湿度とする低湿条件の場合、前記排水部を介して前記加湿器内から水を排出すると共に、前記第2加熱手段が前記加湿配管を加熱するように前記加湿装置を制御する制御部を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の加湿装置。
【請求項7】
前記低湿条件から前記高湿条件に移行する際に、前記給水部が前記加湿器内に水を供給するように前記加湿装置を制御する給水制御手段と、
前記給水制御手段による前記給水部の駆動開始から所定時間の間、前記第2加熱手段が前記加湿配管を加熱するように前記加湿装置を制御する補助加湿制御手段と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項6に記載の加湿装置。
【請求項8】
前記低湿条件から前記高湿条件に移行する際に、前記給水部が前記加湿器内に水を供給するように前記加湿装置を制御する給水制御手段と、
前記加湿器の加湿能力が前記高湿条件に対応可能となるまで、前記第2加熱手段が前記加湿配管を加熱するように前記加湿装置を制御する補助加湿制御手段と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項6に記載の加湿装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の加湿装置と、
環境試験に係る試料が配置される試験室と第1及び第2開口を介して前記試験室に連通する空調室と、
を備えた環境試験装置であって、
前記空調室が前記湿度制御対象空間を構成することを特徴とする環境試験装置。
【請求項10】
前記加湿配管における前記他端の開口が、前記空間において、除湿装置よりも気流方向下流側に配置されていることを特徴とする請求項9に記載の環境試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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