説明

加湿装置及び加湿給湯システム

【課題】病院などの医療施設で使用される加湿装置において、安全かつ衛生的に加湿を行うことを目的とする。
【解決手段】本発明に係る加湿装置は、屋外と屋内を連通する通気路と、通気路に屋外から空気を取り入れる吸気手段と、通気路に配置される加熱水滴下枠と、加熱水滴下枠に加熱水を滴らせるように加熱水を供給する加熱水供給手段と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院などの医療施設で用いられる加湿装置に関するものであって、特に、高温・高圧の蒸気を使用することなく加湿を行う加湿装置、並びに加湿装置を有する加湿給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、室内の湿度を適切に保つことを目的として加湿器を設置することが行われている。特許文献1には、加湿するための水を貯留する水槽内で発生する雑菌の発生を抑制するための加湿器の構造が開示されている。特許文献1に開示される加湿器は、家庭用など小規模な室内を加湿することを目的とするものであるが、病院などの医療施設においては、蒸気を用いた加湿装置が用いられることが多い。これは病院内で使用される手術用具を滅菌するための蒸気を流用するものであって、そのため蒸気を発生させるためのボイラー室から加湿装置まで、蒸気を供給するための配管が施設される。加湿装置では、室外から取り入れた空気に蒸気を直接噴霧することで加湿が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3716797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように従来、医療施設内で使用されている加湿装置では、高温の蒸気を使用することで衛生上、好ましい加湿を行うことが可能となっている。しかしながら、高圧蒸気を扱うには、ボイラーなどの熱交換機は圧力容器扱いとなり、認可の取得ならびに取り扱い責任者の設置が必要とされている。そして、配管事故などが発生した場合には、人的被害が生じる恐れも考えられる。特に、発生した蒸気を循環させてリサイクルするシステムでは、循環する蒸気に配管内に塗布されたトリハロメタンなどの有害物質が流出することも考えられ、安全性の面では細心の配慮が求められている。
【0005】
このような状況の中、蒸気を使用しない加湿装置の開発が求められているが、医療施設全体を加湿する大規模な加湿装置において、衛生的な給気を可能とするものは開発途上の段階にある。特に、免疫力の低下している患者を収容する医療施設では、室温24℃、湿度50%と、通常のオフィスの環境下よりも高温、高湿度に保つ環境が求められている。このような環境を、従来の蒸気を使用しない加湿装置で実現した場合、取り入れた外気に混入している病原微生物が繁殖しやすい状況となってしまい、衛生的な給気が求められる医療施設では、その使用が困難な状況にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため、本発明に係る加湿装置は、
屋外と屋内を連通する通気路と、
前記通気路に屋外から空気を取り入れる吸気手段と、
前記通気路に配置される加熱水滴下枠と、
前記加熱水滴下枠に加熱水を滴らせるように加熱水を供給する加熱水供給手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
さらに、本発明に係る加湿装置において、
前記加熱水供給手段が前記加熱水滴下枠に供給する加熱水の温度は、55℃以上である
ことを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明に係る加湿装置において、
前記加熱水供給手段は、前記加熱水滴滴下枠に供給する加熱水の量を調整する供給量調整手段を備えることを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明に係る加湿装置は、
前記通気路に配置され、屋外から取り入れた空気の温度を調整する温度調整手段を備えることを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明に係る加湿給湯システムは、
前述した何れかの加湿装置と、
前記加熱水供給手段が供給する加熱水を生成する自然冷媒ヒートポンプ給湯手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、病院などの医療施設において、室内の湿度条件を約50%に保つと共に、病原微生物の発生を抑制し、抵抗力の弱い患者に対して好適な室内環境を好適に保つことが可能となる。また、従来、蒸気を利用した加湿装置と異なり、加熱水を利用することで安全かつメンテナンス性に優れた加湿装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る加湿給湯システムの構成を示す図
【図2】本発明の実施形態に係る加湿装置の構成を示す図
【図3】本発明の実施形態に係る加湿器の構成を示す斜視図
【図4】本発明の他の実施形態に係る加湿器の構成を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
では、本発明に係る加湿装置及び加湿給湯システムの実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の実施形態に係る加湿給湯システムの構成を示す図である。本実施形態の加湿給湯システムは、自然冷媒ヒートポンプ給湯機1と、加湿装置2と、貯湯槽3を備えて構成され、病院などの医療施設内に配置されることとなる。
【0014】
自然冷媒ヒートポンプ給湯機1は、加熱水を生成するための装置であって、いわゆるエコキュート(登録商標)と呼ばれる給湯装置である。この自然冷媒ヒートポンプ給湯機1は、冷媒に二酸化炭素を用いており、電力を使用して大気熱を水に吸収させ、55℃〜80℃程度の加熱水(お湯)を生成することが可能である。本実施形態の加湿装置2は、この自然冷媒ヒートポンプ給湯機1にて生成した加熱水を利用し、院内の加湿とともに、院内で給湯のために使用する加熱水の生成を兼用している。また、自然冷媒ヒートポンプ給湯機1から加湿装置2の配管には加熱水が通過するため、従来、院内で使用されていた高温、高圧の蒸気の場合と異なり、安全性並びにメンテナンス性の向上が図られている。
【0015】
このように、自然冷媒ヒートポンプ給湯機1にて生成された加熱水は、給湯のため貯湯槽3に蓄えられるとともに、加湿装置2に対しても供給される。加湿装置2では取り入れた外気に対して、供給された加熱水を用いて加湿し、室内(院内)に供給することとなる。
【0016】
図2は、本発明の実施形態に係る加湿装置の構成を示す図である。本実施形態の加湿装置2は、吸気手段としての送風ファン21で取り入れた外気を、各種チェンバーで構成された通気路を通過させる際、通気路内に配置された加熱水滴下枠24を通過させることで
加湿を行う構成を有している。また、本実施形態では、通気路内に温度調整手段としての電気ヒーター22bを配置することで、吸気温度の調整も行うことが可能となっている。なお、吸気温度の調整には、電気ヒーター22bのみならず、温水コイル、直膨コイルなど、各種形態の温度調整手段を採用することが可能である。
【0017】
施設外部の空気(外気)は、まず送風ファン21によって屋外から取り入れられる。取り入れられた外気は、温風チェンバー22を通過する。温風チェンバー22内には、粉塵、微粒子を取り除くためのフィルタ22aと、温度調整のための電気ヒーター22bが設けられている。温風チェンバー22内では、フィルタ22a、電気ヒーター22bを通過することで、粉塵、微粒子などが取り除かれ、所望の温度となるように調整された後、後段の加湿チェンバー23に送風される。
【0018】
加湿チェンバー23は、外気を適切な湿度に加湿するための通気路であって、その内部には、加熱水滴下枠24、回収部25が配設されている。加熱水滴下枠24は、外気を通過させるとともに、加熱水供給手段から供給される加熱水がその表面を滴って伝わることで、通過する外気を加湿する。加熱水供給手段は、自然冷媒ヒートポンプ給湯機1から供給される加熱水の量を調整する調整バルブ26を含んで構成される。調整バルブ26で供給量が調整された加熱水は、加熱水滴下枠24に沿って滴下するように供給され、回収部25にて排水される。
【0019】
加熱水滴下枠24を通過することで外気は加湿され、室内へ給気される。本実施形態では、室内の適宜箇所に設けられた給気センサー27にて室温と湿度を計測し、制御部28が加湿装置2をフィードバック制御することで、室内の温度、湿度を好適に保つこととしている。具体的には、給気センサー27で計測した温度に基づいて電気ヒーター27を制御することで温度制御を、また、計測した湿度に基づいて調整バルブ26における加熱水の供給量を制御することで湿度調整が実行される。特に、湿度調整については、湿度を高くする場合には加熱水滴下枠24への加熱水の供給量を多く、湿度を低くする場合には加熱水の供給量を少なく、あるいは、停止することで行われる。本実施形態のように抵抗力の落ちた患者がいる室内では、温度を約24℃、湿度を約50%と、通常のオフィス(約22℃、約40%)よりも高温かつ高湿度に保つことが好ましい。
【0020】
図3は、本発明の実施形態に係る加湿器の構成を示す斜視図である。本実施形態の加熱水滴下枠24は、複数の複数の横フィン241と縦フィン242にて形成され、通気路内にて空気を連通する構成とされている。この加熱水滴下枠24の上方から加熱水を供給することで、加熱水は横フィン241、縦フィン242を伝わりつつ下方に流れ落ちる。その過程で、加熱水滴下枠24を通過する外気は加湿されて室内に供給される。本実施形態では、供給する加熱水の温度を55℃以上とすることで、レジオネラ菌などの発生が抑えられ衛生的な給気を行うことが可能となる。特に、抵抗力が落ちた患者が在室する医療施設においては、衛生的な給気を行うことで院内感染を抑制する上で効果的である。なお、加熱水滴下枠24の形状は、この実施形態のみに限定されるものではなく、外気を室内に通気させる機能と、供給される加熱水を滴らせることで空気に接触させる機能を有するものであれば各種形状を採用することができる。
【0021】
図4は、本発明の他の実施形態に係る加湿器の構成を示す斜視図である。図3の実施形態では、1つの加熱水滴下枠24を通過させることで加湿していたのに対し、図4の実施形態では2つの加熱水滴下枠24A、24Bを順に通過させることで加湿を行っている。本実施形態では、このように複数の加熱水滴下枠24A、24Bを通気させることで加湿効率の向上を図ることが可能となる。また、各加熱水滴下枠24A、24Bに対して個別に加熱水の供給量を調整することが可能となり、加湿調整が容易となる。なお、本実施形態では、同形状の加湿水滴下枠24A、24Bを2つ使用することとしたが、加熱水滴下
枠24A、24Bの形状を異なるものとすることや、使用する数は、加湿の形態に応じて任意に設計することが可能である。
【0022】
以上、加湿装置、ならびにそれを用いた加湿給湯システムについて説明したが、本実施形態の加湿装置を使用することで、医療施設の室内における湿度を好適に保つことが可能となる。また、加湿装置は加熱水を利用することで、従来の蒸気を利用した加湿装置と異なり、安全でメンテナンス性に優れたものとなっている。さらに、供給する加熱水の温度を適切に設定することで病原微生物の発生を抑制し、室内を衛生的に保つことも可能となる。
【0023】
なお、本発明はこれらの実施形態のみに限られるものではなく、それぞれの実施形態の構成を適宜組み合わせて構成した実施形態も本発明の範疇となるものである。
【符号の説明】
【0024】
1…自然冷媒ヒートポンプ給湯機(エコキュートシステム)、2…加湿装置、3…貯湯槽、21…送風ファン、22…温風チェンバー、22a…フィルタ、22b…電気ヒーター、23…加湿チェンバー、24…加熱水滴下枠、241…横フィン、242…縦フィン、25…回収部、26…調整バルブ、27…給気センサー、28…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外と屋内を連通する通気路と、
前記通気路に屋外から空気を取り入れる吸気手段と、
前記通気路に配置される加熱水滴下枠と、
前記加熱水滴下枠に加熱水を滴らせるように加熱水を供給する加熱水供給手段と、を備えることを特徴とする
加湿装置。
【請求項2】
前記加熱水供給手段が前記加熱水滴下枠に供給する加熱水の温度は、55℃以上であることを特徴とする
請求項1に記載の加湿装置。
【請求項3】
前記加熱水供給手段は、前記加熱水滴滴下枠に供給する加熱水の量を調整する供給量調整手段を備えることを特徴とする
請求項1または請求項2に記載の加湿装置。
【請求項4】
前記通気路に配置され、屋外から取り入れた空気の温度を調整する温度調整手段を備えることを特徴とする
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の加湿装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の加湿装置と、
前記加熱水供給手段が供給する加熱水を生成する自然冷媒ヒートポンプ給湯手段と、を備えることを特徴とする
加湿給湯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−36622(P2013−36622A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170248(P2011−170248)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】