説明

加湿装置

【課題】 インタークーラを廃止したとしても、中空糸膜の熱収縮によるインナーパイプの破損を防止することができる加湿装置を提供する。
【解決手段】 ハウジング10には、その中心部にインナーパイプ20と連結部材30とが設けられている。また、ハウジング10には、インナーパイプ20および連結部材30の外側に中空糸膜束2Aが収められている。中空糸膜2の内側に高温の乾燥ガスが導入されて中空糸膜2が熱収縮したときに、インナーパイプ20と連結部材30とが互いにスライドし、さらに第1の筒体11と第2の筒体12とが互いにスライドすることで、熱収縮を吸収できるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング内に中空糸膜束が設けられた加湿装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池自動車などに搭載される燃料電池は、固体高分子電解質膜の一面側に触媒を含むアノード極(水素極)、他面側に触媒を含むカソード極(酸素極)が設けられた膜電極構造体(MEA;Membrane Electrode Assembly)の両面に導電性のセパレータを備えた単セルが厚み方向に複数枚積層された構造をしている。この燃料電池では、アノード極に燃料ガス(例えば水素ガス)が、カソード極に酸化剤ガス(例えば空気)がそれぞれ供給されると、アノード極では触媒の作用により水素イオンが生成され、この水素イオンは、固体高分子電解質膜を介してカソード極に移動する。また、アノード極では、水素イオンが生成される際に電子が生じて、この電子が外部負荷を介してカソード極に移動する。カソード極に移動した水素イオンと電子は、カソード極の触媒の作用により空気中の酸素と反応して、水が生成される。
【0003】
この種の燃料電池に設けられる固体高分子電解質膜は、膜が乾燥するとイオン導電性が低下して発電効率が低下するため、燃料電池のカソード極に空気を供給する際に空気を加湿装置を用いて加湿することが行われている。この空気を加湿するための加湿装置としては、以下の特許文献1〜5に記載のものが提案されている。
【特許文献1】特開2002−147802号公報(段落0026〜0028、図1)
【特許文献2】特開2002−292233号公報(段落0015,0016、図1)
【特許文献3】特開2002−298883号公報(段落0014、図3)
【特許文献4】特開2003−157872号公報(段落0015,0016、図1)
【特許文献5】特開2002−289228号公報(段落0065)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、燃料電池システムでは、燃料電池に空気を送り込む際に空気をコンプレッサで圧縮して送り込むことが一般的に行われている。また、空気をコンプレッサで加圧すると空気が高温になるため、コンプレッサと加湿装置との間にインタークーラを接続して、燃料電池の発電に適した温度に冷却することが行われている。燃料電池システムのコストダウンを図るために、インタークーラを廃止して高温の空気がそのまま加湿装置に供給されたり、あるいは、インタークーラを簡単なものとして充分に冷却されない高温の空気が加湿装置に供給されたり、さらにはインタークーラを廃止せずにインタークーラに不具合が生じて冷却されない高温の空気が加湿装置に供給されると、ハウジング内に設けられた中空糸膜が熱収縮して、そのときの熱収縮力によってインナーパイプが破損したり、また場合によってはハウジング内の気密性を保つためのポッティング部が筒状のケースやインナーパイプから剥がれるおそれがあった。
【0005】
そこで、中空糸膜の熱収縮を防止するための手段として、ハウジング内に中空糸膜を組み込む前に、中空糸膜をアニール処理(中空糸膜の熱収縮を取り除く処理)し、予め熱収縮させた状態の中空糸膜を組み込むことが提案されている(特許文献5参照)。この場合、中空糸膜を十分に熱収縮させるためにアニール処理の温度を高く設定し過ぎると、中空糸膜の熱収縮を減少させることはできるが、同時に水蒸気透過係数が低下して水蒸気透過膜として十分に機能しなくなり、燃料電池に供給する空気を十分に加湿できなくなる。
【0006】
そこで、特許文献5では、水蒸気透過膜としての機能を損なわない程度に中空糸膜のアニール処理の温度を低めに設定することが提案されている。しかし、特許文献5に記載の設定温度ではインタークーラを搭載しない燃料電池システムなどに適用したときに、中空糸膜の熱収縮力を十分に吸収できずに、使用中に収縮してインナーパイプが破損したり、さらにはポッティング部の剥がれが生じる。
【0007】
また、特許文献1,3,4に記載の加湿装置は、いずれもインナーパイプが中空糸膜の両端でハウジングに支持される構造であるため、中空糸膜の熱収縮力によってインナーパイプに破損などが発生するおそれがある。また、特許文献2に記載の加湿装置は、インナーパイプの片側がハウジングに支持される構造であるため、インナーパイプの破損は防止できるもののポッティング部が剥がれるおそれがある。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、インタークーラを廃止等したとしても、中空糸膜の熱収縮に伴うインナーパイプの破損などを防止することができる加湿装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数の中空糸膜を束ねた中空糸膜束と、前記中空糸膜束を収容するハウジングと、前記ハウジング内に設けられて前記各中空糸膜の外側に第1流体を通流させるインナーパイプとが設けられ、前記各中空糸膜の内側の中空部に第2流体が通流されたときに、前記第1流体と前記第2流体との間で水分の受け渡しを行う加湿装置において、前記ハウジング内には、前記インナーパイプとスライド可能に連結される連結部材が設けられていることを特徴とする。
【0010】
前記本発明によれば、中空糸膜が熱収縮したときにインナーパイプが中空糸膜の収縮方向にスライド動作することで、中空糸膜のアニール処理によって吸収できない分の熱収縮を吸収できるようになる。
【0011】
また、前記ハウジングは、軸方向に分割された第1の筒体と第2の筒体とを有し、前記第1の筒体と前記第2の筒体とが少なくとも前記ハウジングの長さが縮む方向にスライド可能に連結されている構成を追加してもよい。
【0012】
この構成の場合も、中空糸膜が熱収縮したときに第1の筒体と第2の筒体とが互いに中空糸膜の収縮方向にスライド動作することで、中空糸膜のアニール処理によって吸収できなかった分の熱収縮を吸収できるようになる。
【0013】
また、この場合、前記第1の筒体の外周面と前記第2の筒体の内周面とが互いに対面する位置に環状のシール部材が設けられ、前記シール部材と対応する前記第1の筒体の内周面に補強部材が設けられていることが好ましい。
【0014】
これにより、シール部材による径中心方向への圧縮力によって第1の筒体が変形するのを防止できる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、インタークーラを搭載しない燃料電池システム、または簡単な機構のインタークーラを搭載する燃料電池システムなどに搭載することができ、しかも中空糸膜の熱収縮による、インナーパイプの破損やポッティング部の剥がれを防止することができる。請求項2に記載の発明によれば、より確実にインナーパイプの破損やポッティング部の剥がれを防止することができる。請求項3に記載の発明によれば、第1の筒体と第2の筒体の連結部分のシール性が損なわれるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本実施形態の加湿装置を示す断面図、図2は、図1のA−A断面図、図3は、図1のB−B断面図、図4は、図1のC−C断面図、図5は、燃料電池システムの一例を示す全体構成図、図6は、中空糸膜の動作説明図であり、(a)は動作前、(b)は動作後である。なお、図1は、説明の便宜上、中空糸膜どうしの間隔を実際よりも広げて図示している。
【0017】
図1に示すように、この加湿装置1は、複数の中空糸膜2を束ねた中空糸膜束2Aが収められるハウジング10と、インナーパイプ20と、連結部材30とを有している。
【0018】
ハウジング10は、合成樹脂などで形成された第1の筒体11と第2の筒体12とを有し、その中央部において、第1の筒体11が内側に、第2の筒体12が外側にそれぞれ位置するように軸方向にスライド可能に連結されている。具体的には、第1の筒体11の先端部11aと、第2の筒体12の先端部12aには、それぞれ段差部が形成されて、第1の筒体11の内周面11bと第2の筒体12の内周面12bとが互いに略同一面となるように両者が連結されている。
【0019】
第2の筒体12の先端部12aには、その内周面12bに周方向に沿って凹部12cが形成され、この凹部12c内に環状のシール部材として機能するO(オー)リング13(図2参照)が設けられている。このOリング13を設けることにより、第1の筒体11の先端部11aと第2の筒体12の先端部12aとの連結摺動部分のシール性が確保されている。また、第2の筒体12の基端側の周面には、図4に示すように、複数(本実施形態では8個)の開口部12dが周方向に沿って穿設されている。なお、この開口部12dの形状や個数については適宜変更可能である。
【0020】
第1の筒体11の先端部11aには、その内周面11bに周方向に沿って所定幅寸法の凹状部11cが形成されており、この凹状部11c内に金属などの板材をリング状(図2参照)に形成した補強部材14が嵌め込まれている。この補強部材14は、その表面が第1の筒体11の内周面11bと同一面となるように、さらにOリング13と対応する位置に設けられている。
【0021】
図1に示すように、インナーパイプ20は、両端に開口20a,20bを有する管形状であり、その周面に複数の貫通孔20cがメッシュ状に形成されている(図1および図3参照)。また、インナーパイプ20は、ハウジング10の長手方向(軸方向)の寸法よりも十分に短い寸法で形成され、ハウジング10内の中心部に一端側から軸方向に延びるように設置されている。
【0022】
図1と図2に示すように、連結部材30は、ハウジング10内の中心部に前記インナーパイプ20とは反対側の他端側から延びるように設置されている。また、連結部材30は、その基端部から先部に向けて前記インナーパイプ20と同じ径となるように形成され、先端にインナーパイプ20の管内に挿入される連結部31が形成されている。この連結部31は、その先端が先細りとなる円錐形状であり、これにより組付け時に連結部材30をインナーパイプ20の開口20bに挿入し易くなり、またインナーパイプ20の開口20a側から流体が導入されたときにこの流体を貫通孔20c側に振り向けることが容易になり、流体の流れを円滑にできる。
【0023】
なお、前記インナーパイプ20および連結部材30は、それぞれ同じ種類の合成樹脂材料などで形成されている。
【0024】
図1に示すように、複数の中空糸膜2を束ねた中空糸膜束2Aは、ハウジング10の内側と、インナーパイプ20の外周側および連結部材30の外周側との間の環状の空間内に収容される。また、中空糸膜束2Aの両端部には、接着材により中空糸膜2同士やハウジング10などと接着されるポッティング部15,16が設けられて、各中空糸膜2の外周面間、中空糸膜2の外周面とハウジング10の内周面との間、中空糸膜2の外周面とインナーパイプ20の端部の外周面との間、中空糸膜2の外周面と連結部材30の端部の外周面との間が、それぞれ閉塞されるようになっている。
【0025】
図5に示すように、本実施形態の加湿装置1は、自動車などの燃料電池システム40に適用することができる。この燃料電池システム40は、燃料電池FC、空気供給装置41、水素供給装置42などを備えている。
【0026】
燃料電池FCは、固体高分子型の燃料電池であり、前記背景技術で説明したものと同様に、固体高分子電解質膜mの一面側に触媒を含むアノード極(水素極)p1、他面側に触媒を含むカソード極(酸素極)p2が重ねられた膜電極構造体(MEA)の両面を導電性のセパレータ(図示せず)で挟んで構成された単セルが厚み方向に複数枚積層された構造をしている。
【0027】
空気供給装置41は、インタークーラを廃止した構成であり、前記加湿装置1と、スーパーチャージャ(S/C)43とを有している。スーパーチャージャ43は、機械式過給器であり、大気圧の空気を吸引して加圧するものである。この加圧した空気は、加湿装置1で加湿されて、燃料電池FCのカソード極p2に供給されるようになっている。
【0028】
水素供給装置42は、燃料ガスとしての水素を燃料電池FCのアノード極p1に供給するものである。水素供給装置42と燃料電池FCとの間には、エゼクタ44が設けられており、このエゼクタ44により水素供給装置42から供給される水素を再循環して使用するようになっている。これにより、燃料消費の無駄を省くことができる。
【0029】
このように構成された燃料電池システム40では、アノード極p1に水素、カソード極p2に空気(酸素)を供給すると発電可能となり、発電電流を取り出せるようになる。取り出した発電電流は、走行モータやコンプレッサ(スーパーチャージャ)43のモータなどの負荷45に供給される。また、燃料電池FCのカソード極p2では、酸素と、固体高分子電解質膜mを介して移動した水素イオンと、負荷45を経由してきた電子とが触媒の作用により反応して水が生成される。このときの生成水は、未反応の空気とともに燃料電池FCからオフガス(湿潤ガス)となって排出される。このオフガスは、加湿装置1に送られて、スーパーチャージャ43によって加圧されて乾燥ガス(空気)との間において水分の受け渡しが行われる。水分を受け取って加湿されたガスは、燃料電池FCのカソード極p2に送られる。なお、加湿装置1から排出されたオフガスは、系外に排出される。
【0030】
次に、加湿装置1内での作用について詳述する。ここでは、第1流体を、燃料電池FC(図5参照)から排出されたオフガス(湿潤ガス)faとし、第2流体を、スーパーチャージャ43(図5参照)を介して供給された乾燥した空気(乾燥ガス)fbとして説明する。
【0031】
図1に示すように、オフガスfaは、ハウジング10の右端からインナーパイプ20の内側に導入され、複数の貫通孔20cを介して各中空糸膜2の外側に送られる。さらに、オフガスfaは、各中空糸膜2の間を図示右側から左側へと流れて、第2の筒体12に形成された開口部12dからハウジング10の外部へと排出される。一方、乾燥ガスfbは、ハウジング10の左端から各中空糸膜2の内側の中空部を通るように導入され、中空糸膜2の内側を図示左側から右側へと流れて、ハウジング10の右端から排出される。各中空糸膜2には無数の毛管部が形成されているため、中空糸膜2の外側に導入されたオフガスfaに含まれる水蒸気が毛管部内で凝縮し、中空糸膜2の内側へと移動することで、水分が乾燥ガスfbへ渡されるようになっている。このような仕組みによって、加湿装置1において、オフガスfa中の水分が乾燥ガスfbへ供給され、乾燥ガスfbが加湿ガス(加湿空気)となって排出されるようになっている。
【0032】
ところで、中空糸膜2は、加熱されると熱収縮する特性があるため、ハウジング10に収める前にアニール処理する必要がある。このアニール処理の温度を高く設定し過ぎると水蒸気透過係数が低下して加湿性能が損なわれるため、加湿性能が損なわれない程度に処理温度を低く設定した状態でアニール処理が行われる。しかし、この温度でのアニール処理だけでは、使用中の中空糸膜2の熱収縮を完全に防止することができず、このため使用中に熱収縮してインナーパイプ20が破損するなどのおそれがあった。
【0033】
そこで、本実施形態では、インナーパイプ20と連結部材30とが、さらにハウジング10の第1の筒体11と第2の筒体12とが、それぞれスライド可能に連結される構造とした。この場合、中空糸膜2の熱収縮を考慮して、図6(a)に示すように、インナーパイプ20と連結部材30との間に所定のクリアランスCL1を設定し、ハウジング10の第1の筒体11と第2の筒体12との間に所定のクリアランスCL2を設定するようにした。クリアランスCL1とクリアランスCL2は、例えば同一寸法に設定され、中空糸膜2の熱収縮率に基づいて決められる。
【0034】
図6(b)に示すように、加湿装置1に設けられた各中空糸膜2の内側にアニール処理よりも高い温度の乾燥ガスfbが導入されて、各中空糸膜2が破線で示す状態から実線で示す状態へと熱収縮すると、インナーパイプ20と連結部材30とが、さらに第1の筒体11と第2の筒体12とが、それぞれ互いに接近する方向へスライド移動する。これにより、中空糸膜2の熱収縮によるインナーパイプ20などに作用する応力を吸収することができ、インナーパイプ20が破損したり、さらにはポッティング部15(図1参照)がインナーパイプ20や第1の筒体11から、またポッティング部16(図1参照)が連結部材30や第2の筒体12から、それぞれ剥がれるのを防止することができる。
【0035】
また、ハウジング10をスライド構造とした関係上、Oリング13を設けて第1の筒体11と第2の筒体12との連結部のシール性を確保している。しかし、このOリング13を設けたときに第1の筒体を補強していないと、図7に示すように、径中心方向への圧縮力Fが第1の筒体11の先端部11aに作用するため、第1の筒体11の先端部11aが変形し、第1の筒体11の先端部11aの外周面と第2の筒体12の先端部12aの内周面との間に隙間17が発生して、この隙間17を介して中空糸膜2の外側に導入されたオフガスfaがハウジング10の外部に漏れ出るおそれがある。
【0036】
そこで、本実施形態の加湿装置1では、Oリング13の内側に位置する第1の筒体11の先端部11aに、リング状の補強部材14をOリング13に対応する位置に設けることで、第1の筒体11の変形によるシール性の低下を防止することできるようになっている。また、図1に示すように、補強部材14の表面と第1の筒体11の内周面11bとが略同一面となるように補強部材14を第1の筒体11に嵌め込むことで、オフガスfaの流れに乱れが生じるのを防止でき、オフガスfaを効率よく流すことができる。
【0037】
次に、インナーパイプ20と連結部材30とのスライド構造の変形例について説明する。図8〜図12は、それぞれ第1〜第5の変形例を示している。なお、図8〜図11での変形例におけるインナーパイプ20および連結部材30A〜30Dの基本的な形状は、図1に示すインナーパイプ20と連結部材30の形状と同じである。
【0038】
図8(a)に示す第1の変形例は、連結部材30Aの連結部31の周面に凸条のガイド部31aが複数形成され、インナーパイプ20の内周面に凹条のガイド溝20dが複数形成されたものである。ガイド部31aは、図8(b)に示すように、90度間隔で突出形成され、またガイド溝20dは、ガイド部31aに対応する位置に90度間隔で形成されている。この変形例では、それぞれのガイド部31aが各ガイド溝20dに案内されながら、インナーパイプ20と連結部材30Aとが互いに接近する方向へスライド可能となっている。
【0039】
図9(a)に示す第2の変形例は、連結部材30Bの先端にインナーパイプ20の端部が挿入される環状のガイド凹部32(図9(b)参照)が形成されたものである。この変形例では、インナーパイプ20がガイド凹部32に案内されながら、インナーパイプ20と連結部材30Bとが互いに接近する方向へスライド移動可能となる。
【0040】
図10に示す第3の変形例は、連結部材30Cの先端に形成された連結部31の周面に、基端側に向けて拡径するテーパー33が形成されている。このようにテーパー33を形成することで、インナーパイプ20内を連結部材30Cの連結部31がスライドしたときに、連結部31がインナーパイプ20に圧入されて、インナーパイプ20と連結部材30Cとの間での抜けを防止できるようになっている。
【0041】
図11(a)に示す第4の変形例は、連結部材30Dの連結部31の周面にOリング34(図11(b)参照)が介装されたものである。このようにOリング34を設けることにより、インナーパイプ20と連結部材30Dとの間でのスライド動作を円滑に行うことができる。つまり、インナーパイプ20と連結部材30Dとの樹脂どうしのかじりにより、スライド機構が働かなくなるのを防止できる。
【0042】
また、前記した各変形例では、インナーパイプ20の両端が開放した構造について説明したが、このような形状に限定されるものではない。例えば、図12に示すように、インナーパイプ20Aの片側が閉塞されて、その内側の端部に円錐形状の突起部21が設けられ、連結部材30Eの先端にインナーパイプ20Aがスライド可能に案内される案内凹部35が設けられたものでもよい。このように、インナーパイプ20Aの片側を閉塞することで、インナーパイプ20Aに導入されたオフガス(第1流体)がインナーパイプ20Aに形成された貫通孔20cから確実に排出されるようになり、オフガス(第1流体)が各中空糸膜2(図1参照)の外側に効率的に導入されるようになる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態の加湿装置1は、インタークーラを搭載しない燃料電池システム40に適用することができるので、燃料電池システム40のコストダウンを図ることができる。ただし、必ずしもインタークーラを廃止した燃料電池システム40に搭載する必要はなく、コストダウンを図るために簡易なインタークーラを搭載した燃料電池システムに搭載して、冷却が充分でない空気を加湿装置1に導入するようにしてもよい。また、インタークーラを搭載する燃料電池システムにおいて、インタークーラに不具合が生じて冷却されない空気が加湿装置1に導入されたとしても不具合を生じない加湿装置1となるように構成してもよい。
【0044】
なお、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変更できる。例えば、中空糸膜2の外側を通る第1流体faを乾燥ガスとし、中空糸膜2の内側を通る第2流体fbをオフガスとしてもよい。また、第2流体fbが流れる方向は、インナーパイプ20の開口20aからハウジング10の開口部12dに向けて流れる場合を例に挙げて説明したが、第2流体fbがハウジング10の開口部12dから導入されて、インナーパイプ20の開口20aから排出されるように設定してもよい。また、スライド機構は、インナーパイプ20と連結部材30との間でのみ設けるようにしてもよい。また、インナーパイプ20と連結部材30とが、また第1の筒体11と第2の筒体12とが、伸びる方向へスライド可能となるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本実施形態の加湿装置を示す断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】図1のC−C断面図である。
【図5】燃料電池システムの一例を示す全体構成図である。
【図6】中空糸膜の動作説明図であり、(a)は動作前、(b)は動作後である。
【図7】補強部材が設けられていない場合に生じる不具合を説明するための作用図である。
【図8】(a)は、インナーパイプと連結部材とのスライド機構の第1の変形例を示す分解図、(b)は、D−D断面図である。
【図9】(a)は、インナーパイプと連結部材とのスライド機構の第2の変形例を示す分解図、(b)は、E−E断面図である。
【図10】インナーパイプと連結部材とのスライド機構の第3の変形例を示す分解図である。
【図11】(a)は、インナーパイプと連結部材とのスライド機構の第4の変形例を示す分解図、(b)は、F−F断面図である。
【図12】インナーパイプと連結部材とのスライド機構の第5の変形例を示す分解図である。
【符号の説明】
【0046】
1 加湿装置
2 中空糸膜
2A 中空糸膜束
10 ハウジング
11 第1の筒体
11a 先端部
11b 内周面
12 第2の筒体
12a 先端部
12b 内周面
12d 開口部
13 Oリング(シール部材)
14 補強部材
15,16 ポッティング部
20 インナーパイプ
20a,20b 開口
30 連結部材
31 連結部
40 燃料電池システム
41 空気供給装置
42 水素供給装置
43 スーパーチャージャ
fa オフガス(第1流体)
fb 乾燥ガス(第2流体)
FC 燃料電池
CL1,CL2 クリアランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の中空糸膜を束ねた中空糸膜束と、前記中空糸膜束を収容するハウジングと、前記ハウジング内に設けられて前記各中空糸膜の外側に第1流体を通流させるインナーパイプとが設けられ、前記各中空糸膜の内側の中空部に第2流体が通流されたときに、前記第1流体と前記第2流体との間で水分の受け渡しを行う加湿装置において、
前記ハウジング内には、前記インナーパイプとスライド可能に連結される連結部材が設けられていることを特徴とする加湿装置。
【請求項2】
前記ハウジングは、軸方向に分割された第1の筒体と第2の筒体とを有し、前記第1の筒体と前記第2の筒体とが少なくとも前記ハウジングの長さが縮む方向にスライド可能に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の加湿装置。
【請求項3】
前記第1の筒体の外周面と前記第2の筒体の内周面とが互いに対面する位置に環状のシール部材が設けられ、前記シール部材と対応する前記第1の筒体の内周面に補強部材が設けられたことを特徴とする請求項2に記載の加湿装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−64189(P2006−64189A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−243548(P2004−243548)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】