説明

加熱冷却試験装置

【課題】供試体の加熱冷却に要する時間を短縮する。
【解決手段】高温側ヒータ33を有し、このヒータ33によって加熱された空気を循環させる高温側循環回路14と、熱交換器36を有し、この熱交換器36によって冷却された空気を循環させる低温側循環回路16と、高温側循環回路14を流通する空気の一部を分流する割合を調整可能に構成され、その分流された空気を試験通路12に導くための高温側分流器43と、低温側循環回路16を流通する空気の一部を分流する割合を調整可能に構成され、その分流された空気を試験通路12に導くための低温側分流器44と、高温側分流器43と低温側分流器44を制御するコントローラ58と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験槽内で供試体の加熱冷却試験を行う加熱冷却試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されているように、試験槽内で供試体の加熱冷却試験を行う加熱冷却試験装置が知られている。この特許文献に開示された試験装置では、図4に示すように、試験槽90に繋がる試験通路91に、熱風を送風する高温側通路92と、常温空気を送風する低温側通路93とが接続されている。そして、高温側通路92には、開閉ダンパー92aが設けられるとともに、開閉ダンパー92aを閉鎖したときに熱風を送風するための分岐通路94が設けられている。この分岐通路94にも開閉ダンパー94aが設けられている。一方、低温側通路93には遮断弁93aが設けられている。試験槽90内を昇温させるときには、遮断弁93aを閉鎖するとともに、開閉ダンパー92aを開放することにより、加熱された熱風のみを試験槽90内に導入するようになっている。一方、試験槽90内を降温させるときには、遮断弁93aを開放するとともに、開閉ダンパー92aを閉鎖することにより、常温空気のみを試験槽90内に導入する。
【特許文献1】特開2001−228069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1に開示された加熱冷却試験装置では、試験槽90内を高温側設定温度まで昇温させるときには熱風のみが試験槽90内に導入される一方、試験槽90内を低温側設定温度に降温させるときには常温空気のみが試験槽90内に導入されるように切り換えが行われるようになっている。すなわち、この試験装置では、試験槽内温度の設定温度に予め設定された温度に調整した空気を試験槽90に導入するものである。このため、供試体の温度が設定温度近くになると、設定温度になるまでの温度変化が鈍るため、供試体の加熱冷却に要する時間が長くなり、加熱冷却サイクルが長くなってしまうという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、供試体の加熱冷却に要する時間を短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の目的を達成するため、本発明は、所定温度に調整された空気が導入される試験槽を有する試験通路を備えた加熱冷却試験装置であって、高熱源を有し、この高熱源によって加熱された空気を循環させる高温側循環回路と、冷熱源を有し、この冷熱源によって冷却された空気を循環させる低温側循環回路と、前記高温側循環回路を流通する空気の一部を分流する割合を調整可能に構成され、その分流された空気を前記試験通路に導くための高温側分流器と、前記低温側循環回路を流通する空気の一部を分流する割合を調整可能に構成され、その分流された空気を前記試験通路に導くための低温側分流器と、前記高温側分流器と前記低温側分流器を制御する制御手段とを備えている加熱冷却試験装置である。
【0006】
本発明では、高温側分流器によって、高温側循環回路の空気の一部を試験通路に導入するとともに、低温側分流器によって、低温側循環回路の空気の一部を試験通路に導入することが可能である。このため、試験通路には、高温側循環回路から導入された空気と低温側循環回路の空気とを混合して流入させることができ、これにより設定温度に調整された空気を試験槽に導入することができる。このため、高温側循環回路では、高熱源により空気を設定温度よりも高温に加熱するとともに、この加熱された空気を循環させることができる。一方、低温側循環回路では、冷熱源により空気を設定温度よりも低温に冷却し、その冷却された空気を循環させることができる。この結果、設定温度が繰り返し変更される加熱冷却試験において、例えば高温側設定温度よりも高温の空気を高温側循環回路で循環させ、その一部を試験通路に導入することができるため、試験槽内の昇温速度を上げることができる。同様に降温速度を上げることもできる。この結果、試験槽内に配置された供試体の温度を変化させるのに要する時間を短縮することができ、加熱冷却サイクルを短縮することができる。
【0007】
ここで、本発明の加熱冷却装置において、前記制御手段は、試験槽内温度を高温側の設定温度にする際に、試験槽内温度が所定温度になるまで、前記高温側の設定温度よりも高温に調整された前記高温側循環回路の空気のみが前記試験通路に導入されるように両分流器を制御する一方、試験槽内温度を低温側の設定温度にする際に、試験槽内温度が所定温度になるまで、前記低温側の設定温度よりも低温に調整された前記低温側循環回路の空気のみが前記試験通路に導入されるように両分流器を制御するのが好ましい。
【0008】
この態様では、設定温度に調整された空気を試験槽内に導入する場合に比べ、試験槽内の昇温速度及び降温速度を上げることができる。
【0009】
また、本発明の加熱冷却装置は、前記試験通路における前記試験槽よりも下流側の部位と前記高温側循環回路とを接続する高温側帰還路と、前記試験通路における前記試験槽よりも下流側の部位と前記低温側循環回路とを接続する低温側帰還路と、を備えているのが好ましい。
【0010】
この態様では、試験通路を流通した空気を高温側循環回路及び低温側循環回路に戻すことができる。すなわち、高温側循環回路及び低温側循環回路はそれぞれ閉回路に構成されているため、試験通路と循環回路を連通する帰還路を設けるのみで、循環回路から分流されて試験通路に導入された流量に応じた流量の空気を高温側循環回路及び低温側循環回路に戻すことができる。
【0011】
この態様において、前記制御手段は、両分流器において前記試験通路に通じる開度の合計が常に一定になるように両分流器を制御するのが好ましい。
【0012】
この態様では、試験槽に導入される空気の流量を一定にすることができるとともに、両分流器による分流の際の圧損の変動を抑制することができる。この結果、各循環回路の循環流量を安定させることができる。
【0013】
本発明の加熱冷却試験装置において、前記高温側循環回路及び前記低温側循環回路には、それぞれ送風機が設けられており、これらの送風機は、同じ送風量で駆動されるのが好ましい。
【0014】
この態様では、両送風機の吸引能力が同じになるので、分流器による分流割合に影響されることなく、両循環回路の循環流量が自然と同じ流量に調整される。このため、各循環回路での循環流量を安定させることができるので、高熱源による温度調整及び冷熱源による温度調整を精度よく行うことができる。
【0015】
本発明の加熱冷却試験装置は、試験槽内の空気温度を検出する雰囲気温度検出手段と、試験槽内に配置された供試体の温度を検出する供試体温度検出手段と、を備えるのが好ましく、この場合には、前記制御手段は、両検出手段による検出結果に基づいて、両分流器を制御するのが好ましい。
【0016】
この態様では、試験槽内の空気温度及び供試体の温度を検出した結果に基づいて分流制御が行なわれるので、供試体の温度を正確に設定温度に制御することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、供試体の加熱冷却に要する時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明による加熱冷却試験装置の一実施形態を概略して示している。同図に示すように、本実施形態にかかる加熱冷却試験装置10は、試験通路12と、高温側循環回路14と、低温側循環回路16と、高温側帰還路18と、低温側帰還路20とを備えている。
【0020】
試験通路12は、主配管12aと、この主配管12aの上流端に接続される第1枝配管12bと、主配管12aの上流端に接続される第2枝配管12cとを有する。主配管12aには、試験槽であるテストエリア25が設けられている。テストエリア25は、供試体22を配置できるとともに空気を流通可能な構造になっている。供試体22としては、例えば半導体装置等が挙げられる。
【0021】
主配管12aにおけるテストエリア25よりも上流側にはヒータ27が設けられている。このヒータ27は、テストエリア25に供給される空気の温度を微調整するためのものである。また、主配管12aの下流端には、排出通路29が設けられている。この排出通路29には開閉弁29aが設けられている。
【0022】
高温側循環回路14は、空気が循環する閉回路として構成されており、この循環回路14には、高温側送風機31と、高熱源としての高温側ヒータ33とが設けられている。この送風機31は、この循環回路14に空気を循環させるために使用される。高温側ヒータ33は、高温側循環回路14を流通する空気を加熱するためのものである。このため、高温側循環回路14には、加熱された高温空気が循環する。本実施形態では、ヒータ33は送風機31の吸入側に配置されている。このヒータ33は蓄熱部としての機能も有している。
【0023】
低温側循環回路16は、空気が循環する閉回路として構成されており、この循環回路16には、低温側送風機35と、冷熱源としての熱交換器36と、低温側ヒータ37とが設けられている。この送風機35は、この循環回路16に空気を循環させるために使用される。本実施形態では、送風機35はヒータ37の下流側に配置されている。低温側送風機35は高温側送風機31と同じ機種のものが用いられており、運転時には両送風機31,35が同じ送風量で駆動される。
【0024】
熱交換器36は、冷凍機38に接続されており、低温側循環回路16を流通する空気を冷却するために使用される。熱交換器36は蓄冷部としての機能も有している。低温側ヒータ37は、低温側循環回路16の空気を加熱するためのものであり、例えば熱交換器36によって空気が設定温度よりも冷却された場合や、設定温度が変更された場合であって冷凍機38の能力を調整しない場合等に使用される。熱交換器36は、テストエリア25の温度を高温から低温に切り換えた場合に、低温側循環回路16に一時的に戻ってくる温度の高い空気を瞬時に冷やすことに利用される。
【0025】
高温側帰還路18は、試験通路12の下流端と、高温側循環回路14における高温側分流器43及び高温側ヒータ33間の部位とを接続している。この接続部には、開閉弁40が設けられている。一方、低温側帰還路20は、試験通路12の下流端と、低温側循環回路16における低温側分流器44及び熱交換器36間の部位とを接続している。この接続部には、開閉弁41が設けられている。
【0026】
本加熱冷却試験装置10には、高温側分流器43と低温側分流器44とが設けられている。これら高温側分流器43と低温側分流器44は、同じ構成及び大きさのものであり、それぞれ流入部43a,44aと第1流出部43b,44bと第2流出部43c,44cとを備えている。
【0027】
高温側分流器43は、高温側循環回路14に設けられるとともに、高温側循環回路14を循環する空気の一部を試験通路12に導入するために使用される。高温側分流器43の流入部43aと第1流出部43bは、それぞれ高温側循環回路14を構成する配管に接続され、第2流出部43cは試験通路12の第1枝配管12bに接続されている。
【0028】
高温側分流器43は、筐体内に可動体43dが配置される構成のものであり、この可動体43dが位置を変えることにより、第1流出部43bから流出する空気と第2流出部43cから流出する空気との流量割合を調整できるようになっている。例えば、高温側分流器43は図略のサーボモータによって可動体43dを駆動する構成とすることができ、可動体43dが軸回りに回動することによって分流割合が調整されるようにすることができる。
【0029】
低温側分流器44は、低温側循環回路16に設けられるとともに、低温側循環回路16を循環する空気の一部を試験通路12に導入するために使用される。低温側分流器44の流入部44aと第1流出部44bは、それぞれ低温側循環回路16を構成する配管に接続され、第2流出部44cは試験通路12の第2枝配管12cに接続されている。
【0030】
低温側分流器44は、筐体内に可動体44dが配置される構成のものであり、この可動体44dが位置を変えることにより、第1流出部44bから流出する空気と第2流出部44cから流出する空気との流量割合を調整できるようになっている。例えば、低温側分流器44は図略のサーボモータによって可動体44dを駆動する構成とすることができ、可動体44dが軸回りに回動することによって分流割合が調整されるようにすることができる。
【0031】
各分流器43,44の流入部43a,44aは、送風機31,35の吐出側から延びる配管14a,16aに接続されている。そして、分流器43,44の第1流出部43b,44bと第2流出部43c,44cとは、この配管14a,16aに沿って延びる直線に対して対称に配置されている。このような配置関係となっているのは、この配管14a,16aを流れる空気の分布に偏りが生じないようにして、可動体43d,44dの位置と分流割合との関係の精度を向上するためである。
【0032】
試験通路12には、加湿用通路47が接続されており、この加湿用通路47には、2つの開閉弁47a,47bと、これら開閉弁47a,47b間に配置された湿度発生器47cとが設けられている。加湿用通路47は、湿度試験専用回路であり、湿度試験時には分流器43,44のテストエリア側吐出口43c,44cを全閉とし、テストエリア下流の開閉弁40,41を全閉にする。次に開閉弁47a,47bを全開にして、テストエリア25を通過した空気をテストエリア25の上流に戻す。湿度発生器47cは、供試体22に水分を付与する湿度運転を行うときに使用される。
【0033】
低温側循環回路16には、ドライエア供給路49が設けられている。このドライエア供給路49には、テストエリア25にドライエアを供給するためのパージ用通路50が設けられている。パージ用通路50は、試験通路12及び両循環回路14,16を流通する空気を除湿するために使用される。パージ運転をするときには、加湿用通路47の開閉弁47a,47bが閉鎖されるとともに排出通路29の開閉弁29aが開放される。
【0034】
テストエリア25には、供試体22の温度を検出する供試体温度検出手段としての第1温度センサ51と、テストエリア25内の空気温度を検出する雰囲気温度検出手段としての第2温度センサ52とが設けられている。高温側循環回路14には、高温側送風機31から吐出された空気の温度を検出する高温側温度検出手段としての第3温度センサ53が設けられ、低温側循環回路16には、低温側送風機35から吐出された空気の温度を検出する低温側温度検出手段としての第4温度センサ54が設けられている。
【0035】
本加熱冷却試験装置10には、両分流器43,44等を制御する制御手段としてのコントローラ58が設けられている。コントローラ58は、試験通路12のヒータ27、高温側ヒータ33、低温側ヒータ37、冷凍機38及び各開閉弁40,41,47a,47bを制御する。また、コントローラ58は、両分流器43,44の可動体43d,44dが互いに同調するようにサーボモータを制御する。具体的に、コントローラ58は、両分流器43,44の第2流出部43c,44c側の開度の合計が常に一定の値になるように可動体43d,44dの位置制御を行う。このときサーボモータによって可動体43d,44dの回動角度が制御されるので、正確に開度調節を行うことができる。
【0036】
ここで、本加熱冷却試験装置10の運転動作について説明する。ここでは、テストエリア25内の温度が2つの設定温度(高温側設定温度及び低温側設定温度)に交互に調節される運転が行われる加熱冷却運転についてのみ説明する。
【0037】
図2に示すように、加熱冷却運転では、高温側設定温度及び低温側設定温度が設定されるとともに(ステップST1)、高温側送風機31及び低温側送風機35が駆動される(ステップST2)。そして、高温側循環回路14では、循環する空気が高温側設定温度よりも高い温度になるように高温側ヒータ33が制御される。この空気の温度は第3温度センサ53によって検出されている。一方、低温側循環回路16では、循環する空気が低温側設定温度よりも低い温度になるように熱交換器36、即ち冷凍機38が制御される。この空気の温度は第4温度センサ54によって検出されている。
【0038】
そして、テストエリア25内を高温側設定温度まで加熱するときには、高温側分流器43の可動体43dは、第1流出部43bが閉じられるとともに第2流出部43cが全開になるように制御され、低温側分流器44の可動体44dは、第2流出部44cが閉じられるとともに第1流出部44bが全開になるように制御される(ステップST3)。これにより、試験通路12には高温側循環回路14の空気のみが導入されて、テストエリア25内は、高温側設定温度よりも高温の空気によって加熱される(ステップST4)。テストエリア25では、第1温度センサ51によって供試体22の温度が検出され、第2温度センサ52によって供試体22周囲の空気温度が検出されている。そして、供試体の温度が目標の設定温度の±5%の偏差領域になるまで、両分流器43,44の可動体43d,44dは駆動されず(ステップST5)、供試体の温度が目標の設定温度の±5%の偏差領域になると、両分流器43,44の可動体43d,44dが同調して駆動される(ステップST6)。このとき両分流器43,44の第2流出部43c,44cの開口面積の合計が常時一定となるように両可動体43d,44dは逆向きに駆動される。すなわち、高温側分流器43では第2流出部43cの開口面積が小さくなる方向に可動体43dが駆動される一方、低温側分流器44では第2流出部44cの開口面積が大きくなる方向に可動体44dが駆動される。そして、高温側設定温度に調整された空気がテストエリア25内に導入され、供試体22の温度も高温側設定温度に調整される。
【0039】
供試体温度が高温側設定温度になってから所定時間、高温にさらし(ステップST7)、今度はテストエリア25内を低温側設定温度にまで降温させる制御が実行される。この冷却運転では、高温側分流器43の第1流出部43bが全開されるとともに第2流出部43cが全閉される一方、低温側分流器44の第2流出部44cが全開されるとともに第1流出部44bが全閉される(ステップST8)。これにより、試験通路12には低温側循環回路16の空気のみが導入されて、テストエリア25内は、低温側設定温度よりも低温の空気によって冷却される(ステップST9)。そして、供試体の温度が目標設定温度のプラスマイナス5%の偏差領域になるまで、両分流器43,44の可動体43d,44dは駆動されず(ステップST10)、供試体の温度が目標設定温度のプラスマイナス5%の偏差領域になると、両分流器43,44の可動体43d,44dが同調して駆動される(ステップST11)。このとき、両分流器43,44の第2流出部43c,44cの開口面積の合計が常時一定となるように両可動体43d,44dは逆向きに駆動される。すなわち、高温側分流器43では第2流出部43cの開口面積が大きくなる方向に可動体43dが駆動される一方、低温側分流器44では第2流出部44cの開口面積が小さくなる方向に可動体44dが駆動される。これにより、低温側設定温度に調整された空気がテストエリア25内に導入され、供試体22の温度も低温側設定温度に調整される。
【0040】
そして、供試体温度が低温側設定温度になってから所定時間、低温にさらし(ステップST12)、再び供試体を高温側設定温度まで加熱する加熱運転が実行され、以降、冷却運転及び加熱運転が繰り返し実行されて加熱冷却運転が行われる。
【0041】
加熱冷却運転による温度の推移の一例を図3に示す。図3は、横軸に時間(単位:秒)、縦軸に温度(単位:℃)をとっており、この図は、高温側設定温度は125℃、低温側設定温度は−40℃、高温側循環回路14の空気温度は155℃、低温側循環回路16の空気温度は−60℃の場合の一例である。この例では、供試体22の温度が高温側設定温度又は低温側設定温度のプラスマイナス5%の偏差領域に達したときに可動体43d,44dを駆動するようにしている。
【0042】
以上説明したように、本実施形態では、高温側分流器43によって、高温側循環回路14の空気の一部を試験通路12に導入するとともに、低温側分流器44によって、低温側循環回路16の空気の一部を試験通路12に導入することが可能である。このため、試験通路12には、高温側循環回路14から導入された空気と低温側循環回路16の空気とを混合して流入させることができ、これにより設定温度に調整された空気をテストエリア25内に導入することができる。このため、高温側循環回路14には、設定温度よりも高温の空気を循環させることができるとともに、低温側循環回路16には、設定温度よりも低温の空気を循環させることができる。この結果、設定温度が繰り返し変更される加熱冷却試験において、例えば高温側設定温度よりも高温の空気を高温側循環回路14で循環させ、その一部を試験通路12に導入することができるので、テストエリア25内の昇温速度を上げることができる。この結果、テストエリア25内に配置された供試体22の温度を変化させるのに要する時間を短縮することができ、加熱冷却サイクルを短縮することができる。
【0043】
また本実施形態では、加熱運転では高温側設定温度よりも高温の空気をテストエリア25に導入する一方、冷却運転では低温側設定温度よりも低温の空気をテストエリア25に導入するようにしたので、高温側設定温度及び低温側設定温度に調整された空気をテストエリア25内に導入する場合に比べ、試験槽内の昇温速度及び降温速度を上げることができる。
【0044】
また本実施形態では、高温側帰還路18と低温側帰還路20が設けられているので、試験通路12を流通した空気を高温側循環回路14及び低温側循環回路16に戻すことができる。すなわち、高温側循環回路14及び低温側循環回路16はそれぞれ閉回路に構成されているため、試験通路12と循環回路14,16を連通する帰還路18,20を設けるのみで、循環回路14,16から分流されて試験通路12に導入された流量に応じた流量の空気を高温側循環回路14及び低温側循環回路16に戻すことができる。
【0045】
しかも本実施形態では、両分流器43,44において第2流出部43c,44cの開口面積の合計が常に一定になるように両分流器43,44が制御される構成としたので、テストエリア25に導入される空気の流量を一定にすることができるとともに、両分流器43,44による分流の際の圧損の変動を抑制することができる。この結果、各循環回路14,16の循環流量を安定させることができる。
【0046】
さらに本実施形態では、両送風機31,35が同じ送風量で駆動されるようにしたので、両送風機31,35の吸引能力が同じになる。このため、分流器43,44による分流割合に影響されることなく、両循環回路14,16の循環流量が自然と同じ流量に調整される。このため、各循環回路14,16での循環流量を安定させることができるので、高温側ヒータ33による温度調整及び熱交換器36による温度調整を精度よく行うことができる。
【0047】
また本実施形態では、供試体温度を検出する第1温度センサ51による検出結果と、テストエリア25内の温度を検出する第2温度センサ52による検出結果に基づいて分流制御が行なわれるので、供試体22の温度を正確に設定温度に制御することができる。
【0048】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記実施形態では、2つの温度設定が行われる構成としたが、3つ以上の温度設定がなされる構成としてもよい。
【0049】
また、前記実施形態では、加湿用通路47が設けられる構成について説明したが、加湿用通路47が省略された構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態に係る加熱冷却試験装置の全体構成を概略的に示す図である。
【図2】前記加熱冷却試験装置の制御動作を示すフロー図である。
【図3】前記加熱冷却試験装置のテストエリアにおける温度推移の一例を示す特性図である。
【図4】従来の加熱冷却試験装置の構成を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0051】
12 試験通路
14 高温側循環回路
16 低温側循環回路
18 高温側帰還路
20 低温側帰還路
25 テストエリア(試験槽の一例)
31 高温側送風機
33 高温側ヒータ(高熱源の一例)
35 低温側送風機
43 高温側分流器
44 低温側分流器
51 第1温度センサ(供試体温度検出手段の一例)
52 第2温度センサ(雰囲気温度検出手段の一例)
58 コントローラ(制御手段の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定温度に調整された空気が導入される試験槽を有する試験通路を備えた加熱冷却試験装置であって、
高熱源を有し、この高熱源によって加熱された空気を循環させる高温側循環回路と、
冷熱源を有し、この冷熱源によって冷却された空気を循環させる低温側循環回路と、
前記高温側循環回路を流通する空気の一部を分流する割合を調整可能に構成され、その分流された空気を前記試験通路に導くための高温側分流器と、
前記低温側循環回路を流通する空気の一部を分流する割合を調整可能に構成され、その分流された空気を前記試験通路に導くための低温側分流器と、
前記高温側分流器と前記低温側分流器を制御する制御手段と、を備えている加熱冷却試験装置。
【請求項2】
前記制御手段は、試験槽内温度を高温側の設定温度にする際に、試験槽内温度が所定温度になるまで、前記高温側の設定温度よりも高温に調整された前記高温側循環回路の空気のみが前記試験通路に導入されるように両分流器を制御する一方、試験槽内温度を低温側の設定温度にする際に、試験槽内温度が所定温度になるまで、前記低温側の設定温度よりも低温に調整された前記低温側循環回路の空気のみが前記試験通路に導入されるように両分流器を制御する請求項1に記載の加熱冷却試験装置。
【請求項3】
前記試験通路における前記試験槽よりも下流側の部位と前記高温側循環回路とを接続する高温側帰還路と、
前記試験通路における前記試験槽よりも下流側の部位と前記低温側循環回路とを接続する低温側帰還路と、を備えている請求項1又は2に記載の加熱冷却試験装置。
【請求項4】
前記制御手段は、両分流器において前記試験通路に通じる開度の合計が常に一定になるように両分流器を制御する請求項1から3の何れか1項に記載の加熱冷却試験装置。
【請求項5】
前記高温側循環回路及び前記低温側循環回路には、それぞれ送風機が設けられており、これらの送風機は、同じ送風量で駆動される請求項1から4の何れか1項に記載の加熱冷却試験装置。
【請求項6】
試験槽内の空気温度を検出する雰囲気温度検出手段と、
試験槽内に配置された供試体の温度を検出する供試体温度検出手段と、を備え、
前記制御手段は、両検出手段による検出結果に基づいて、両分流器を制御する請求項1から5の何れか1項に記載の加熱冷却試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−232974(P2008−232974A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76084(P2007−76084)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】