説明

加熱流路ユニット、および、液体噴射ヘッド

【課題】複数の通液流路における液体の流速を揃えて液体を効率良く加熱することができる加熱流路ユニット、および、これを備えた液体噴射ヘッドを提供する。
【解決手段】ユニット基体63の内部においてインクの流下方向に対して交差する方向に複数並列に形成され、サブタンク側からの供給流路と記録ヘッド側への導入流路とを連通する通液流路64a〜64cと、供給流路側の出口側開口周縁部と各通液流路に共通の共通入口側開口周縁部との間に配置されて両者を液密状態で接続する入口側シール部材73と、を備え、入口側シール部材は、各通液流路のうち流速が相対的に速い通液流路の個別入口側開口に対応する部分に、インクの流れを規制する流入規制部82を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式記録ヘッド等の液体噴射ヘッドに装着する加熱流路ユニット、および、これを備えた液体噴射ヘッドに係り、特に、通液流路を複数並列に有する加熱流路ユニット、および、これを備えた液体噴射ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドの代表的なものとして、例えば、記録紙等の記録媒体(噴射対象)に対して液体状のインクを吐出・着弾させて記録を行うインクジェット式プリンター(液体噴射装置の一種。以下、プリンターという。)に搭載されるインクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッドという。)を挙げることができる。この他、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタに用いられる色材、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイに用いられる有機材料、電極形成に用いられる電極材等、様々な種類の液体の噴射に液体噴射ヘッドが用いられている。
【0003】
ところで、近年、紫外線などの光のエネルギーの照射によって硬化する光硬化型インクが画像等の印刷の際に用いられることがある。この光硬化型インクは、インク吸収性の乏しい記録媒体に対しても、光を照射することで硬化して定着するので、例えば、樹脂フィルムに対する画像の記録やその他の様々な用途に用いられている。しかしながら、この光硬化型インクは、一般の水系のインクよりも粘度が高い傾向にある。例えば、水系のインクの常温(例えば、25℃)における粘度が8mPa・s未満であるのに対して、光硬化型インクの常温における粘度は8mPa・s以上である。このような所謂高粘度領域のインクを液体噴射ヘッドで噴射するには、インクの粘度を低下させる必要がある。このため、ヒーターなどの加熱手段によってインクを加熱することで、当該インクの粘度を噴射に適した粘度まで低下させてから記録媒体上に噴射するように構成された液体噴射ヘッドが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に開示されている発明は、液体供給源(自己封止弁)と記録ヘッドの間に、両者の流路を連通する通液部を有する加熱流路ユニットを設け、通液部を通過するインクをヒーターによって加熱することでインクの粘度を低下させるように構成されている。この加熱流路ユニットの本体(基体)は、金属等の熱伝導率が高い材質で作製された中空のブロック部材であり、その内部空間は仕切壁によって仕切られることで複数の通液部が複数並列に形成されている。この構成では、ヒーターからの熱が、仕切壁を含むユニット基体を伝って通液部内のインクに伝達される。このように構成することで、流路抵抗および圧力損失の増加を抑制しつつインクを加熱することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−083470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、複数並列に形成された通液流路をそれぞれ流れるインクの流速は、それよりも上流側又は下流側の流路の開口の位置との関係で、必ずしも一定とならない。即ち、上流側又は下流側の流路の開口に対して近い位置に形成された通液部を流れるインクの流速は比較的高くなる一方で、上流側又は下流側の流路の開口に対して遠い位置に形成された通液部を流れるインクの流速は比較的低くなる。一般的に、各通液部のうち中央部に形成された通液部が、上流側又は下流側の流路の開口に対して最も近くなるので、当該中央部の通液部を流れるインクの流速が、端部に位置する通液部を流れるインクの流速よりも速くなる。流速が速いほど、それだけ通液部を通過する時間が短くなるので、インクが十分に加熱され難いという問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の通液流路における液体の流速を揃えて液体を効率良く加熱することができる加熱流路ユニット、および、これを備えた液体噴射ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の加熱流路ユニットは、上記目的を達成するために提案されたものであり、液体供給源と液体噴射ヘッドとの間に配設され、当該液体噴射ヘッド側へ供給する液体をヒーターにより加熱する加熱流路ユニットであって、
ユニット基体内部において液体の流下方向に対して交差する方向に複数並列に形成され、前記液体供給源側からの供給流路と前記液体噴射ヘッド側への導入流路とを連通する通液流路と、
前記供給流路側の出口側開口周縁部と前記各通液流路に共通の共通入口側開口周縁部との間に配置されて両者を液密状態で接続する入口側シール部材と、を備え、
入口側シール部材は、前記各通液流路のうち流速が相対的に速い通液流路の個別入口側開口に対応する部分に、液体の流れを規制する流入規制部を有することを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、入口側シール部材が、流速が相対的に速い通液流路の個別入口側開口に対応する部分に液体の流れを規制する流入規制部を有するので、供給流路側の出口側開口から流れ出る液体の流下方向が、流入規制部によって入口側シール部材の面方向に一旦変換されてから各連通流路に流入する。これにより、供給流路側の出口側開口からの液体は、当該出口側開口に近い位置に配置されて流速が相対的に高くなりやすい通液流路側に流れにくくなる一方で、供給流路側の出口側開口から遠い位置に配置されている通液流路に比較的流れやすくなる。これにより、各連通流路を流れる液体の流速差が低減され、ヒーターの温度を必要以上に高く設定する必要がなく、液体を効率良く加熱することが可能となる。
【0010】
上記構成において、前記流入規制部は、前記通液流路に液体が通液していない状態で前記個別入口側開口に対して離隔した状態で配置され、液体の流速に応じて当該個別入口側開口に対して近接又は離隔する構成を採用することが望ましい。
【0011】
この構成によれば、流入規制部が、通液流路に液体が通液していない状態で個別入口側開口に対して離隔した状態で配置され、液体の流速に応じて当該個別入口側開口に対して近接又は離隔するので、即ち、通液流路全体における液体の流速が比較的低い場合、流入規制部は、流速が相対的に高い通液流路の個別入口側開口に対して少し離れて位置するのに対して、通液流路全体における液体の流速が比較的高い場合、流入規制部は、液体の流れによって押されて流速が相対的に高い通液流路の個別入口側開口に近接する。即ち、液体噴射ヘッドにおける液体の単位時間あたりの消費量が比較的低い所謂低DUTYの場合には、流速が相対的に高い通液流路に対して液体が流入し易くなる一方、液体噴射ヘッドにおける液体の単位時間あたりの消費量が比較的多い所謂高DUTYの場合には流速が相対的に高い通液流路に対して液体が流入し難くなる。これにより、通液流路全体における液体流速の高低に拘わらず、各連通流路を流れる液体の流速差がさらに低減され、液体を一層効率良く加熱することが可能となる。
【0012】
また、前記各通液流路に共通の共通出口側開口周縁部と前記導入流路側の入口側開口周縁部との間に配置されて両者を液密状態で接続する出口側シール部材を備え、
出口側シール部材は、前記各通液流路のうち流速が相対的に速い通液流路の個別出口側開口に対応する部分に、液体の流れを規制する流出規制部を有する構成を採ることができる。
【0013】
この構成によれば、出口側シール部材の流出規制部によって、各通液流路のうち流速が相対的に速い通液流路の液体の流れが規制されるので、入口側シール部材の流入規制部と、出口側シール部材の流出規制部とにより、各通液流路の液体の流れをコントロールすることができる。
【0014】
本発明の液体噴射ヘッドは、液体供給源からの液体を、導入流路を通じて導入し、導入した液体を噴射可能な液体噴射ヘッドであって、
上記各構成の加熱流路ユニットを着脱可能に備えることを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、単位時間あたりの液体消費量に拘わらず、加熱流路ユニットから安定した温度の液体が供給されるので、ノズルから噴射される液体の量や飛翔速度等の噴射特性のばらつきが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】プリンターの構成を説明する平面図である。
【図2】記録ヘッドの構成を説明する分解斜視図である。
【図3】記録ヘッドの斜視図である。
【図4】ヘッドユニットの要部断面図である。
【図5】加熱流路ユニットの斜視図である。
【図6】図5におけるA−A′断面図である。
【図7】図5におけるB−B′断面図である。
【図8】加熱流路ユニットの平面図である。
【図9】入口側シール部材の構成を説明する平面図である。
【図10】加熱流路ユニットの要部拡大断面図である。
【図11】第2実施形態における加熱流路ユニットの要部拡大断面図である。
【図12】第3実施形態における加熱流路ユニットの要部拡大断面図である。
【図13】入口側シール部材の変形例の構成を説明する平面図である。
【図14】加熱流路ユニットの変形例について説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、本実施形態では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッド)を例に挙げて説明する。
【0018】
図1は記録ヘッド10(図2)を搭載するインクジェット式記録装置(以下、プリンターという)の構成を示す平面図である。例示したプリンター1は、記録紙等の記録媒体(着弾対象:図示せず)の表面に対して液体状のインク(本発明における液体に相当)を噴射して画像等の記録を行う装置である。このプリンター1は、フレーム2と、このフレーム2内に配設されたプラテン3とを備えており、紙送りモーターの駆動により回転する紙送りローラー(何れも図示せず)によってプラテン3上に記録紙が搬送されるようになっている。また、フレーム2内には、プラテン3と平行にガイドロッド4が架設されており、このガイドロッド4には、記録ヘッド10を収容したキャリッジ5が摺動可能に支持されている。このキャリッジ5は、パルスモーター6の駆動によって回転する駆動プーリー7と、この駆動プーリー7とはフレーム2における反対側に設けられた遊転プーリー8との間に架設されたタイミングベルト9に接続されている。そして、キャリッジ5は、パルスモーター6を駆動することで、ガイドロッド4に沿って紙送り方向と直交する主走査方向に往復移動するように構成されている。
【0019】
フレーム2の一側には、インクカートリッジ13を着脱可能に搭載するカートリッジホルダー14が設けられている。インクカートリッジ13は、エアチューブ15を介してエアポンプ16と接続されており、このエアポンプ16からの空気が各インクカートリッジ13内に供給される。そして、この空気によるインクカートリッジ13内の加圧により、インク供給チューブ17を通じて記録ヘッド10側にインクが供給(圧送)されるように構成されている。
【0020】
インク供給チューブ17は、例えば、シリコーン等の合成樹脂で作製された可撓性を有する中空部材であり、このインク供給チューブ17の内部には、各インクカートリッジ13に対応するインク流路が形成されている。また、プリンター1本体側と記録ヘッド10側との間には、プリンター1本体側の制御部(図示せず)から記録ヘッド10側に駆動信号等を伝送するFFC(フレキシブルフラットケーブル)18が配線されている。
【0021】
図2及び図3は、本実施形態における記録ヘッド10の構成を説明する図であり、図2は記録ヘッド10の分解斜視図、図2は記録ヘッド10の斜視図である。また、図3は、ヘッドユニット20の要部断面図である。
本実施形態における記録ヘッド10は、ヘッドユニット20、サブタンク21(本発明における液体供給源の一種)、インナーケース22、アウターケース23、及び、加熱流路ユニット24を主な構成要素としている。
【0022】
上記ヘッドユニット20は、複数の圧電振動子25を備えたアクチュエータユニット26、共通インク室27(リザーバー又はマニホールドとも言う)からインク供給口28及び圧力室29を通ってノズル30に至る一連のインク流路を形成する流路ユニット31、及び、ヘッドケース32などを備えて概略構成されている。
【0023】
ヘッドケース32は中空箱体状のケーシングであり、その内部には、サブタンク21および加熱流路ユニット24側からのインクを共通インク室27側に導入する流路であるケース流路33と、各アクチュエータユニット26を個別に収容する収容室34とが形成されている。このヘッドケース32は、熱硬化性樹脂の一種であるエポキシ樹脂によって成型されており、流路取付面(下面)に流路ユニット31が固定される。また、流路取付面とは反対側の基端面(上面)には、導入針ユニット36(図2参照)が取り付けられる。
【0024】
上記のアクチュエータユニット26は、圧力発生手段としての圧電振動子25と、この圧電振動子25が接合される金属製の固定板38と、圧電振動子25に駆動基板37からの駆動信号を印加するフレキシブルケーブル39等から構成される。各圧電振動子25は、自由端部が固定板38の先端面よりも外側に突出した所謂片持ち梁の状態で、ステンレス鋼などの金属製板材からなる固定板38上に取り付けられている。なお、圧力発生手段としては、上記圧電振動子以外にも、静電アクチュエータ、磁歪素子、発熱素子等を用いることができる。
【0025】
流路ユニット31は、振動板40、流路基板41、及びノズル基板42からなる流路ユニット構成部材を積層した状態で接合して一体化することにより作製されている。この流路ユニット31における圧力室29は、ノズル30の列設方向(ノズル列方向)に対して直交する方向に細長い室として形成されている。また、共通インク室27は、サブタンク21側から加熱流路ユニット24を経由してきたインクが導入される室である。そして、この共通インク室27に導入されたインクは、インク供給口28を通じて各圧力室29に分配供給されるようになっている。
【0026】
流路ユニット31の底部に配置されるノズル基板42は、ドット形成密度に対応したピッチで複数のノズル30を、列状に開設した金属製の薄い板材である。本実施形態のノズル基板42は、ステンレス鋼の板材によって作製され、複数のノズル30を列設してなるノズル列(ノズル群の一種)が、記録ヘッド10の走査方向(主走査方向)に複数並べて設けられている。そして、1つのノズル列は、例えば360個のノズル30によって構成される。
【0027】
ヘッドケース32の基端面(ノズル形成面とは反対側の面)には、導入針ユニット36が配置される。この導入針ユニット36は、合成樹脂等によって成型されており、その上面にはフィルタ(図示せず)を介在させた状態でインク導入針44が複数取り付けられている。また、導入針ユニット36の上面には、後述する加熱流路ユニット24が着脱可能に装着されるようになっている。そして、加熱流路ユニット24を導入針ユニット36に装着すると、加熱流路ユニット24内にインク導入針44が挿入される。また、この導入針ユニット36の内部には、各インク導入針44に対応した集束流路(図示せず)が形成されている。この集束流路は、ヘッドケース32のケース流路33に連通し、インク導入針44から導入されたインクを、ケース流路33を通じて圧力室側に供給するようになっている。なお、後述する第2流路接続継手の導出流路を含め、インク導入針44からケース流路33を通って共通インク室27に至る流路が本発明における導入流路に相当する。
【0028】
上記サブタンク21は、上面に形成された流路接続部46にプリンター本体側からのインク供給チューブ17が接続され、このインク供給チューブ17からのインクを受け、供給圧力を調整した上で圧力室側に導入する部材である。本実施形態においては、合計4つのサブタンク21が、インナーケース22内に収容されるようになっている。1つのサブタンク21内には2つの流路が形成されており、2種類のインクに対応できるようになっている。また、各サブタンク21の底部には挿入部45が設けられており、この挿入部45内には加熱流路ユニット24の第1流路接続継手72の円筒部72b(図6参照)が挿入されるようになっている。
【0029】
また、各サブタンク21は、内部の圧力変動に応じて弁を開閉し、ヘッドユニット20側へのインクの供給を制御する。即ち、記録ヘッド10がインクの噴射をしない非記録状態(インクを消費しない状態)では、サブタンク21は、弁を閉じて記録ヘッド10側にインクが供給されないようにする。一方、記録ヘッド10が記録動作(噴射動作)時にインクを噴射することでインクを消費してサブタンク21内部の圧力調整室の圧力が低下すると、サブタンク21は弁を開いて記録ヘッド10側にインクが供給される状態にする。
【0030】
上記インナーケース22は、上下面が開口したスリーブ状の部材であり、インク導入針44を囲繞する状態でヘッドユニット20の上面側に取り付けられる。インナーケース22の開口部の平面形状は略矩形に形成されており、その内部空間は、加熱流路ユニット24とサブタンク21を収容する収容空部47となっている。また、インナーケース22の外側面には、駆動基板37が取り付けられる。
【0031】
上記アウターケース23は、インナーケース22の上部開口を被覆可能なベース面51と、当該ベース面51におけるサブタンク列設方向に直交する方向の両辺縁部から下方(ヘッドユニット20側)に延出した側壁部52とから形成された断面略門型の部材である。側壁部52は、インナーケース22の側面に固定された駆動基板37を被覆する基板被覆壁として機能する。ベース面51には、収容空部47に収容されたサブタンク21の流路接続部46に対応する部分に、当該流路接続部46を露出可能な開口部53が開設されている(図2)。また、ベース面51におけるサブタンク列設方向の両縁部には、スリット54が形成されている。そして、インナーケース22内に収容された加熱流路ユニット24のリード線55がスリット54を通してヘッド外部に引き出されるようになっている(図3)。
【0032】
さらに、アウターケース23のベース面51には、サブタンク列設方向の両辺縁部から下方に向けて、インナーケース22の係止爪56が係止可能な被係止部57が形成されている。インナーケース22にアウターケース23を取り付けると、この被係止部57の貫通孔にインナーケース22の係止爪56が係止して、インナーケース22に対してアウターケース23が固定されるようになっている。
【0033】
そして、導入針ユニット36のインク導入針44を囲繞する状態でインナーケース22をヘッドユニット20に取り付け、インナーケース22の収容空部47内に加熱流路ユニット24と各サブタンク21を順次収容し、インナーケース22の側面に駆動基板37を固定する。さらに、各サブタンク21の流路接続部46を開口部53から露出させると共にスリット54からリード線55を引き出した状態で、アウターケース23をインナーケース22の外側に取り付けて収容空部47の上部開口やインナーケース22の側面の駆動基板37をこのアウターケース23によって被覆する。なお、この被覆状態では、駆動基板37のコネクタ58が露出し、このコネクタ58にはプリンター本体側のFFC18が接続されるようになっている。
【0034】
次に、加熱流路ユニット24について説明する。
図5〜図8は、加熱流路ユニット24の一実施形態を説明する図であり、図5は加熱流路ユニット24の斜視図、図6は図5におけるA−A′断面図、図7は図5におけるB−B′断面図、図8は第1流路接続継手72が取り付けられていない状態における加熱流路ユニット24の上面図である。
【0035】
本実施形態における加熱流路ユニット24は、ユニット基体(ケーシング)63の内部に、サブタンク21の各流路にそれぞれ対応した通液部64が複数区画形成された中空箱体状の部材である。ユニット基体63は、熱伝導率が高い材質(例えば、50W/mk以上の熱伝導率を有する材質)で構成されていることが望ましく、本実施形態においては、銅、アルミニウム等の金属によって形成されている。通液部64は、サブタンク21の流路とヘッドユニット20(ヘッドケース32)のケース流路33との間を連通する流路であり、インクの流れ方向に直交する方向の寸法が、ヘッド流路(ケース流路33)の内径よりも大きく設定されている。本実施形態においては、図8に示すように、各サブタンク21の流路および各ヘッド流路に対応して2行4列の合計8つの通液部64が、ユニット基体63の内部に区画形成されている。各通液部64は、一側の内壁(例えば、図8における右側の内壁)から他側の内壁(例えば、図8における左側の内壁)に向けて延出した仕切壁70によって、インクの流下方向に交差する方向に複数の通液流路に区画されている。本実施形態においては、2枚の仕切壁70によって通液部64が複数縦割りに仕切られることで、合計3つのスリット状の通液流路64a〜64cが形成されている。この仕切壁70は、ユニット基体63と一体に成型することが望ましい。このように通液部64に複数の仕切壁70を設けることで、ユニット基体63と通液部64内のインクとの接触面積を増やすことができ、これにより、ヒーター68からの熱をより効率良くインクに伝達することができる。
【0036】
ユニット基体63の上面(サブタンク21側の面)において、各通液部64の入口側開口(即ち、同じ通液部64を構成する通液流路64a〜64cの各個別入口側開口を含む範囲の開口部であり、本発明における共通入口側開口に相当)の周縁部には、当該共通入口側開口を囲繞する状態で区画壁71が、取り付け状態のサブタンク側に向けて突設されている。そして、通液部64の共通入口側開口の周縁部と区画壁71とで囲まれた第1継手取付部71aには、サブタンク21の流路と通液部64とを連通する第1流路接続継手72が、入口側シール部材73を介在させた状態で嵌め込まれている。本実施形態においては、各通液部64に対応して合計8つの第1流路接続継手72がユニット基体63の上面側に取り付けられている。第1流路接続継手72は、ユニット基体63への取り付け状態で通液部64の共通入口側開口に対向する側の面(下面)が開口したトレイ状の拡大部72aと、共通入口側開口側とは反対側の当該拡大部72aの上面の中央部から取り付け状態のサブタンク側に向けて突設された円筒状の円筒部72bと、から成る。
【0037】
円筒部72bは、サブタンク21の装着時に挿入部45内に挿入される部分である。この円筒部72b内部には、接続流路72cが形成されている。この接続流路72cは、拡大部72aの内部空間に連通している。平面視における拡大部72aの縦(図8における上下方向)及び横(図8における左右方向)の寸法は、それぞれ第1継手取付部71aの縦横の寸法と同程度に又は僅かに小さく設定されている。また、拡大部72aの内部空間の、平面視における縦横の寸法は、円筒部72bの接続流路72cの内径よりも十分に大きく設定されており、尚かつ、それぞれ通液部64の共通入口側開口の縦横の寸法と同程度に又は僅かに大きく設定されている。即ち、接続流路72cは、通液部64の直前で、当該通液部64の共通流路開口の大きさに合わせるように流路の内径が拡大していると言える。なお、拡大部72aの内部空間は、円筒部72b側から出口側開口側に向けて内径が次第に拡大するテーパー形状としても良い。また、本実施形態においては、円筒部72bにおける接続流路72cの、拡大部72a側の出口側開口が、本発明における供給流路側の出口側開口に相当し、拡大部72aにおける内部空間の出口側開口の周縁部が、本発明における供給流路側の出口側開口周縁部に相当する。
【0038】
そして、本実施形態における第1流路接続継手72の内部に形成された接続流路72cは、本発明における供給流路の一部を構成する。この接続流路72cの出口側開口周縁部(下流側開口周縁部)と、通液部64の共通入口側開口周縁部との間に、入口側シール部材73が配設され、この入口側シール部材73により接続流路72cと通液部64(各通液流路64a〜64c)とが液密状態で連通される。この入口側シール部材73の詳細については後述する。
【0039】
一方、ユニット基体63の下面(ヘッドユニット20側の面)において、各通液部64の共通出口側開口(下流側開口)の周縁部には、図6に示すように、当該共通出口側開口を囲繞する状態で区画壁74が突設されている。そして、通液部64の共通出口側開口の周縁部と区画壁74とで囲まれた第2継手取付部74aには、通液部64と記録ヘッド10の導入流路とを連通する第2流路接続継手75が、出口側シール部材76を介在させた状態で取り付けられている。本実施形態においては、各通液部64に対応して合計8つの第2流路接続継手75が、ユニット基体63の下面側に取り付けられている。第2流路接続継手75は、ユニット基体63への取り付け状態で通液部64の共通出口側開口に対向する側の面が開口したトレイ状の拡大部75aと、当該拡大部75aの出口側開口側とは反対側の面の中央部から取り付け状態の記録ヘッド10側に向けて突設された円筒状の針接続部75bと、から成る。この針接続部75bの内部には、針挿入部77が形成されている。この針挿入部77は、針接続部75bの下面(記録ヘッド10側)の一部を上面側(通液部64側)に窪ませて拡大部75aの内部空間と連通する凹部を形成している。この凹部内にはインク導入針44の側面に弾接してインク漏れを防ぐパッキン78が配設されている。このパッキン78は、エラストマーなどの弾性材から円筒形状に形成されている。
【0040】
平面視における拡大部75aの縦及び横の寸法は、それぞれ第2継手取付部74aの縦横の寸法と同程度又は僅かに小さく設定されている。また、この拡大部75aの内部空間の平面視における縦横の寸法は、針接続部75bの内部の流路の内径よりも十分に大きく設定されており、尚かつ、それぞれ通液部64の共通出口側開口の縦横の寸法と同程度に又は僅かに大きく設定されている。そして、本実施形態における第2流路接続継手75の内部に形成された導出流路75cは、本発明における導入流路の一部を構成する。この第2流路接続継手75の入口側開口周縁部(上流側開口周縁部)と、通液部64の共通出口側開口周縁部との間に出口側シール部材76が配設され、この出口側シール部材76により導入流路と通液部64(通液流路64a〜64c)とが液密状態で連通される。出口側シール部材76は、後述する入口側シール部材73と同様に、例えばエラストマーやシリコンゴム等の耐インク性を有する弾性部材から作製されている。
【0041】
図5に示すように、ユニット基体63の側面には、シート状のヒーター68が全周に渡って貼設されている。ヒーター68は、例えば、可撓性を有する帯状の絶縁体によってニクロム線などの電熱線を封止した所謂フィルムヒーターである。本実施形態においては、2枚のヒーター68によってユニット基体63の外周を覆うように構成されている。各ヒーター68には、リード線55が設けられている。そして、加熱流路ユニット24は、リード線55を通じてヒーター68の電熱線に通電することでヒーター68を発熱させ、このヒーター68の熱をユニット基体63の構造体を通じて通液部64(通液流路64a〜64c)内を通過するインクを加熱するように構成されている。即ち、加熱流路ユニット24は、加熱機能を有する流路部材と言うことができる。
【0042】
このように構成された加熱流路ユニット24を記録ヘッド10(ヘッドユニット20の上面)に装着すると、これに伴ってインク導入針44が、第2流路接続継手75の針挿入部77に挿入され、このインク導入針44の先端部が導出流路75cに入り込む。これにより、インク導入針44の先端部に開設された図示しない導入穴を通じて、通液部64とヘッド流路とが液密状態で連通する。また、加熱流路ユニット24の上流側には、サブタンク21が装着される。このとき、第1流路接続継手72の円筒部72bは、サブタンク21の挿入部45内に挿入される。これにより、サブタンク21の内部の流路と通液部64とが第1流路接続継手72の接続流路72cを介して液密状態で連通する。サブタンク21側からのインクは、接続流路72cから通液部64の各通液流路64a〜64cを通過して第2流路接続継手75の導出流路75c及びインク導入針44の導入穴を介して記録ヘッド10のヘッド流路内に導入される。この際、通液部64の各通液流路64a〜64cを通過するインクは、ユニット基体63を介してヒーター68の熱によって加熱される。これにより、光硬化型インク等の高粘度のインク(具体的には25℃において8mPa・s以上の粘度のインク)の噴射に対応することができる。即ち、サブタンク21から導入したインクを加熱流路ユニット24によって加熱することで当該インクの粘度を低下させてからノズル30から噴射するので、一般のインクと同様な噴射特性(噴射量、噴射速度等)を得られることができる。当然ながら、光硬化型インク以外の水系及び溶剤系インクにおける高粘度のインクにも適用可能である。
【0043】
ここで、本実施形態における加熱流路ユニット24では、通液流路64a〜64cのうち中央部の通液流路64bは、接続流路72cの出口側開口に最も近い位置に配置されている。このため、本発明を適用しない構成では、当該通液流路64bを流れるインクの流速が、他の通液流路64a,64cを流れるインクの流速と比較して相対的に速くなる。インクの流速が速いほど、その分、インクが通液流路64bを通過する時間が、他の通液流路64a,64cをインクが通過する時間よりも短くなるので、通液流路64bを流れるインクが十分に加熱され難いという問題があった。例えば、ヒーター68を40℃に設定して、サブタンク21側から通液流路64a〜64cに常温(25℃)のインクを流した場合、35℃のインクが記録ヘッド10側に送られる。記録ヘッド10に導入されるインクの温度を40℃にするときは、ヒーター68の温度を45℃くらいまで高めることが必要となる。このように、ヒーター68の設定温度と、加熱流路ユニット24を通過して記録ヘッド10に導入されるインクの温度とが乖離することにより、ヒーター68を余分に発熱させる必要がある。特に、例えば、記録紙等の記録媒体に対して所定の領域をインクで隙間無く埋める所謂ベタ塗り印刷を行う場合のように、記録ヘッド10から噴射されるインクの量が比較的多くインクの流速も比較的高い場合(所謂高DUTYの場合)、インクが加熱され難いため、ヒーター68の温度をより高く設定する必要がある。ところが、高DUTY時にインクが適正温度となるようにヒーター68の温度を設定した場合、例えば、記録媒体に対してより高解像度の画像等を印刷する場合のように、記録ヘッド10から噴射されるインクの量が比較的少なくインクの流速も比較的低い場合(所謂低DUTYの場合)、通液流路64a〜64cをインクが通過する時間がより長くなるため、インクが必要以上に加熱され過ぎてしまう問題があった。この点に鑑み、本発明に係る加熱流路ユニット24は、入口側シール部材73を利用して、各通液流路64a〜64cを通過するインクの流速を一定に揃えることで、加熱効率を向上させるようにしている。以下、この点について説明する。
【0044】
図9は、入口側シール部材73の構成を説明する平面図である。また、図10は、加熱流路ユニット24の要部拡大断面図である。
入口側シール部材73は、例えばエラストマーやシリコンゴム等の耐インク性を有する弾性部材から作製されている。この入口側シール部材73は、接続流路72cの出口側開口周縁部と通液部64の共通入口側開口周縁部との間をシールする枠部80と、この枠部80の各隅角部から中央に向けてそれぞれ延出した合計4本の梁部81と、これらの梁部81が中央部で交差した部分に設けられた流入規制部82と、から構成されている。梁部81と梁部81とで囲まれた合計4つの略三角形状の部分は、インクが通過可能な空部83である。本実施形態における流入規制部82は、平面視略円形に形成されている。この流入規制部82の直径は、第1流路接続継手72の円筒部72bにおける接続流路72cの内径と同程度かこれより少し小さくなっている。
【0045】
本実施形態において、各梁部81は、図10に示すように、枠部80側から中央部側に向かうほど次第に通液部64の共通入口側開口から離れて接続流路72cの出口側開口に近づくように上り傾斜している。このため、この入口側シール部材73を、第1継手取付部71aの窪みに嵌め込んで取り付け、尚かつ、通液流路64にインクが通液されていない状態(或いは、低DUTYの時のようにインク通液流路64を流れるインクの流速が比較的低い状態)で、通液流路64a〜64cのうちの中央部の通液流路64bの個別入口側開口に対し、流入規制部82が接続流路72cの出口側開口側に少し離れた位置に配置される。このように、通液流路64bの個別入口側開口と接続流路72cの出口側開口との間に流入規制部82が配置されることで、接続流路72cの出口側開口から流れ出るインクの流下方向が、流入規制部82によって入口側シール部材73の面方向に一旦変換されてから各連通流路64a〜64cに流入する。これにより、接続流路72cの出口側開口からのインクは、未対策時には流速が相対的に高くなりやすい通液流路64b側に流れ難くなる一方で、接続流路72cの出口側開口から遠い位置に配置されている通液流路64a,64cに比較的流れ易くなる。即ち、流入規制部82は、通液流路64bに流入するインクの量を規制する。これにより、各連通流路64a〜64cを流れるインクの流速差が低減され、ヒーター68の温度を必要以上に高く設定する必要がなく、インクを効率良く加熱することが可能となる。
【0046】
そして、本実施形態における流入規制部82は、さらにインクの流速に応じて、通液流路64bの個別入口側開口に対して近接又は離隔するように構成されている。即ち、比較的流速が低い低DUTYの場合、流入規制部82は、図10において実線で示すように、通液流路64bの個別入口側開口に対して接続流路72cの出口側開口側に少し離れて位置する。これに対し、インクの流速が比較的高い高DUTYの場合、流入規制部82は、図10において破線で示すように、インクの流れによって下流側に押されて通液流路64bの個別入口側開口に近接して、当該個別入口側開口の一部を塞ぐ。即ち、インクの流速が低いほど、通液流路64bに対してインクが流入し易くなる一方、インクの流速が速いほど通液流路64bに対してインクが流入し難くなる。これにより、全体のインク流速の高低に拘わらず、各連通流路64a〜64cを流れるインクの流速差がさらに低減され、インクを一層効率良く加熱することが可能となる。
【0047】
ところで、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の変形が可能である。
【0048】
図11は、本発明の第2の実施形態の構成を説明する加熱流路ユニット24の要部断面図である。上記の第1の実施形態では、入口側シール部材73に関し、梁部81を枠部80側から中央部側に向けて上り傾斜させることで、通液流路64bの個別入口側開口に対して流入規制部82が接続流路72cの出口側開口側に少し離れた位置に配置される構成を例示したがこれには限られない。本実施形態では、入口側シール部材73の枠部80、梁部81、及び流入規制部82を同一面上に揃えた形状とする一方で、仕切壁70の上流側(入口側)の端面(図中Bで示す位置)を、共通入口側開口周縁部における入口側シール部材73が着座する面(図中Aで示す位置)よりも下流側に後退させることで、通液流路64bの個別入口側開口に対して流入規制部82を、接続流路72cの出口側開口側に少し離れた位置に配置させている点で上記第1の実施形態と異なっている。この構成においても、インクの流速に応じて、通液流路64bの個別入口側開口に対して流入規制部82が近接又は離隔するように構成することができる。
【0049】
図12は、本発明の第3の実施形態の構成を説明する加熱流路ユニット24の要部断面図である。上記の第1の実施形態では、入口側シール部材73にのみ流入規制部82を持たせる構成を例示したが、これには限られない。本実施形態では、出口側シール部材76を、入口側シール部材73と同様の寸法および形状とし、当該入口側シール部材73とは上下反転させた姿勢で、第2流路接続継手75の入口側開口周縁部と通液部64の共通出口側開口周縁部との間に配設している。また、この構成では、入口側シール部材73と出口側シール部材76の材料として、第1の実施形態で例示したものよりも剛性の高いものを採用することが望ましい。この構成では、出口側シール部材76において、入口側シール部材73の流入規制部82に相当する部分が、通液流路64bの個別入口側開口からのインクの流出を規制する流出規制部85として機能する。この流出規制部85は、通液流路64にインクが通液されていない状態で、通液流路64a〜64cのうちの中央部の通液流路64bの個別出口側開口に対して針挿入部77側に少し離れた位置に配置される。これにより、入口側シール部材73の流入規制部82と、出口側シール部材76の流出規制部85とにより、通液流路64bのインクの流れをコントロールすることができる。なお、上記第1の実施形態のように、流入規制部82および流出規制部85が、流速に応じて殆ど変位しなくても通液流路64bに対するインクの流入を規制すれば、各連通流路64a〜64cを流れるインクの流速差が低減されるので、上記第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0050】
図13は、入口側シール部材73の変形例について説明する平面図である。
同図に示す入口側シール部材73は、縦横の梁部81を格子状に交差させ、これにより形成される空部83の大きさ(開口面積)を、各通液流路64a〜64cで異ならせている。具体的には、通液流路64a〜64cのうちの中央部の通液流路64bの個別入口側開口に対応する部分の空部83の開口面積を、他の通液流路64a,64bの個別入口側開口に対応する部分の空部83の開口面積よりも小さくしている。これにより、中央部の通液流路64bの個別入口側開口に対応する部分の空部83を形成する梁部81が、通液流路64bに対してインクの流入を規制する流入規制部として機能する。要は、通液流路64bに対してインクの流入を規制する流入規制部を有するものであれば種々の形状の入口側シール部材73を採用することができる。また、出口側シール部材76についても同様である。
【0051】
また、上記第1の実施形態では、加熱流路ユニット42の通液流路64a〜64cに関し、仕切壁70によって区画されたスリット状のものを例示したが、これには限られない。例えば、図14に示すように、ユニット基体63の高さ方向を貫通した複数の円筒状の通液流路64′をマトリックス状に配置する構成を採用することも可能である。この構成においても、各通液流路64′のうち相対的にインクの流速が速い通液流路の個別入口側開口に対して、入口側シール部材73の流入規制部を配置することで、上記第1の実施形態と同様な作用効果が得られる。
【0052】
さらに、上記第1の実施形態では、ヒーター68をユニット基体63の外周に貼設した構成を例示したが、これには限られず、例えば、ヒーター68をユニット基体63の壁内(仕切壁70内)に埋設する構成を採用することもできる。この構成では、インクをより直接的に加熱することができ、加熱効率をさらに向上させることが可能となる。
【0053】
なお、上記実施形態においては、プリンター本体側からのインクをサブタンク21で受けてからヘッド流路に導入する所謂オフキャリッジタイプの構成を例示したが、勿論、オンキャリッジタイプの構成にも本発明を適用可能である。即ち、上記サブタンク21(液体導入部材)に替えてインクを貯留したインクカートリッジ(液体貯留部材)を収容空部47に収容する構成においても好適である。
【0054】
また、本発明は、加熱が必要な液体を扱う液体噴射ヘッドであれば、上記記録ヘッド10に限らず、ディスプレイ製造装置、電極製造装置、チップ製造装置、マイクロピペット等に搭載される液体噴射ヘッドにも適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
10…記録ヘッド,20…ヘッドユニット,21…サブタンク,24…加熱流路ユニット,27…共通インク室,28…インク供給口,29…圧力室,30…ノズル,31…流路ユニット,32…ヘッドケース,36…導入針ユニット,44…インク導入針,63…ユニット基体,64…通液部,64a〜64c…通液流路,68…ヒーター,70……仕切壁,71…区画壁,72…第1流路接続継手,73…入口側シール部材,76…出口側シール部材,80…枠部,81…梁部,82…流入規制部,83…空部,85…流出規制部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体供給源と液体噴射ヘッドとの間に配設され、当該液体噴射ヘッド側へ供給する液体をヒーターにより加熱する加熱流路ユニットであって、
ユニット基体内部において液体の流下方向に対して交差する方向に複数並列に形成され、前記液体供給源側からの供給流路と前記液体噴射ヘッド側への導入流路とを連通する通液流路と、
前記供給流路側の出口側開口周縁部と前記各通液流路に共通の共通入口側開口周縁部との間に配置されて両者を液密状態で接続する入口側シール部材と、を備え、
入口側シール部材は、前記各通液流路のうち流速が相対的に速い通液流路の個別入口側開口に対応する部分に、液体の流れを規制する流入規制部を有することを特徴とする加熱流路ユニット。
【請求項2】
前記流入規制部は、前記通液流路に液体が通液していない状態で前記個別入口側開口に対して離隔した状態で配置され、液体の流速に応じて当該個別入口側開口に対して近接又は離隔することを特徴とする請求項1に記載の加熱流路ユニット。
【請求項3】
前記各通液流路に共通の共通出口側開口周縁部と前記ヘッド流路側の入口側開口周縁部との間に配置されて両者を液密状態で接続する出口側シール部材を備え、
出口側シール部材は、前記各通液流路のうち流速が相対的に速い通液流路の個別出口側開口に対応する部分に、液体の流れを規制する流出規制部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の加熱流路ユニット。
【請求項4】
液体供給源からの液体を、導入流路を通じて導入し、導入した液体をノズルから噴射可能な液体噴射ヘッドであって、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の加熱流路ユニットを着脱可能に備えることを特徴とする液体噴射ヘッド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate