説明

加熱炉の燃焼監視装置および燃焼監視方法並びに燃焼制御システム

【課題】本発明は、蓄熱式バーナに係る燃料や燃焼空気の異常(詰まりや漏洩)発生を検知可能な加熱炉の燃焼監視装置および燃焼監視方法、並びに、不完全燃焼による失火等を防止し安定燃焼を図ることが可能な燃焼制御システムを提供することを目的とする。
【解決手段】圧力スイッチ51、52、53、54に対応する配管11、12、13、14経路の燃料の圧力、配管61、62、63、64経路の燃焼空気の圧力の少なくともいずれかが所定の下限圧力値以下になった場合には、異常信号を送出する判定部140と、この判定部140から送出された異常信号に基づき警告を発報するための警告発報部142と、を備えたことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業窯炉(金属材の加熱処理炉を含む)における燃焼監視装置および燃焼監視方法並びに燃焼制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、蓄熱式切り替え燃焼を行う蓄熱式バーナは、1対を最小単位として燃焼ゾーン(加熱炉に相当する)あたり複数対で使用される。すなわち、図4に示すように、加熱炉305において、蓄熱式バーナ301と302の1対と蓄熱式バーナ303と304の1対という複数対をひとまとめにして燃料や燃焼空気、排気ガスの流量制御が行われている。
【0003】
このような蓄熱式バーナ301、302、303、304において、蓄熱から燃焼又は燃焼から蓄熱に切り替わる際に、燃料・燃焼空気・排ガスの突入流量を抑え、異常な燃焼状態を抑制することを目的にした技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記のような目的を達成するために、上記特許文献1に係る発明においては、図5に示すように、燃料切替弁321、322、323、324、燃焼空気切替弁371、372、373、374及び排ガス切替弁411、412、413、414を順次切り替えて行く際、各切替弁321、322、323、324、371、372、373、374、411、412、413、414がそれぞれ閉方向に切替を開始すると同時に、各切替弁321、322、323、324、371、372、373、374、411、412、413、414と対応する燃料流量調節弁327、燃焼空気流量調節弁377及び排ガス流量調節弁417の開度を、順次各切替弁321、322、323、324、371、372、373、374、411、412、413、414の切替タイミングに合わせてそれぞれ切り替え動作開始直前の開度から一定量閉方向に閉じて所定開度に保持し、各切替弁321、322、323、324、371、372、373、374、411、412、413、414がそれぞれ切り替わった時点で、順次各切替弁321、322、323、324、371、372、373、374、411、412、413、414に対応する各流量調節弁327、377、417の開度を、それぞれ切り替え動作開始直前の開度に戻す動作を開始し、各流量調節弁327、377、417の弁開度が切り替え直前の開度に近づいた時点で、各流量調節弁327、377、417の流量制御を再開するように構成したものである。
【0005】
図5に示すように、上記特許文献1に係る発明において、例えば、対をなす蓄熱式バーナ301、303の各バーナ本体301a、303aに詰まりが発生せず、かつ、配管311、313からの漏洩も発生しない正常状態では、バーナ本体301a前の燃料の圧力、バーナ本体303a前の燃料の圧力はそれぞれ下限圧力値30Paを超え安定している(カ点、キ点参照)。このような状態で、燃料タンク329から供給される燃料を燃料流量計328で監視し計測した場合、バーナ本体301aと303aの燃料の合計流量のプロセス量(PV)の計測実績値は、警報を発報するPV値のレベル(下限流量値)を遥かに超えている(ク点参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−196936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、図5に示すように、上記特許文献1に係る発明において、例えば、対をなす蓄熱式バーナ302、304の各バーナ本体302a、304aの内のバーナ本体304aに詰まりが発生すると、バーナ本体304a前の燃料の圧力は、下限圧力値30Pa以下になってしまう(コ点参照)虞がある。逆に、バーナ本体302a前の燃料の圧力は、バーナ本体304a前の燃料の圧力の低下を補うように下限圧力値30Paを超えるように増加する(ケ点参照)。このような異常が発生していても、燃料タンク329から供給される燃料を燃料流量計328で監視し計測した場合、バーナ本体302aと304aの燃料の合計流量のプロセス量(PV)の計測実績値は、警報を発報するPV値のレベル(下限流量値)を僅かに超えている(サ点参照)。したがって、バーナ本体302a前の燃料の圧力やバーナ本体304a前の燃料の圧力の下限圧力値30Paを監視し計測する構成を有さず、燃料流量計328で燃料の合計流量のプロセス量(PV)を監視し計測するだけの構成を備えた上記特許文献1に係る発明では、上記異常を検知できないという問題点があった。すなわち、上記異常に基づく不完全燃焼による失火等を防止することができない。以上、燃料の圧力、流量についてのみ説明したが、燃焼空気の圧力、流量についても同様のことが言える。
【0008】
本発明の目的は、蓄熱式バーナに係る燃料や燃焼空気の異常(詰まりや漏洩)発生を検知可能な加熱炉の燃焼監視装置および燃焼監視方法、並びに、不完全燃焼による失火等を防止し安定燃焼を図ることが可能な燃焼制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の発明は、
バーナ本体近傍に蓄熱機能を有する蓄熱部を設け、所定のシーケンスに基づき予め決められた時間間隔で前記蓄熱部を通過する気体の方向を切り替え、蓄熱と燃焼を交互に行いながら燃焼を継続する蓄熱式バーナが一対以上配設された加熱炉の燃焼監視装置であって、
前記各蓄熱式バーナのバーナ本体から燃料切替弁の間の配管経路と前記各蓄熱式バーナの蓄熱部から燃焼空気切替弁の間の配管経路にそれぞれ対応するように配設され、かつ、前記所定のシーケンスに基づき燃焼モード中のみ動作(ON)し、蓄熱モード中は非動作(OFF)となるように設定された第1、第2の下限リミット付圧力スイッチと、
ON状態の前記第1、第2の下限リミット付圧力スイッチに対応する前記配管経路の燃料の圧力、前記配管経路の燃焼空気の圧力が所定の下限圧力値以下になった場合には、該当する前記圧力スイッチから下限圧力値検知信号が発信され、この下限圧力値検知信号が入力されるように構成されており、少なくともいずれかの前記圧力スイッチから下限圧力値検知信号が発信されたと判断された場合には、異常信号を送出する判定部と、
この判定部から送出された異常信号に基づき警告を発報するための警告発報部と、
を備えたことを特徴とする加熱炉の燃焼監視装置である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、
バーナ本体近傍に蓄熱機能を有する蓄熱部を設け、所定のシーケンスに基づき予め決められた時間間隔で前記蓄熱部を通過する気体の方向を切り替え、蓄熱と燃焼を交互に行いながら燃焼を継続する蓄熱式バーナが一対以上配設された加熱炉の燃焼監視方法であって、
前記各蓄熱式バーナのバーナ本体から燃料切替弁の間の配管経路と前記各蓄熱式バーナの蓄熱部から燃焼空気切替弁の間の配管経路には、前記所定のシーケンスに基づき燃焼モード中のみ動作(ON)し、蓄熱モード中は非動作(OFF)となるように設定された第1、第2の下限リミット付圧力スイッチがそれぞれ配設され、
ON状態の前記第1、第2の下限リミット付圧力スイッチに対応する前記配管経路の燃料の圧力、前記配管経路の燃焼空気の圧力が所定の下限圧力値以下になった場合には、該当する前記圧力スイッチから下限圧力値検知信号が発信され、この下限圧力値検知信号が判定部に入力されるように構成されており、前記判定部で少なくともいずれかの前記圧力スイッチから下限圧力値検知信号が発信されたと判断された場合には、前記判定部より異常信号を送出する異常信号送出工程と、
この異常信号送出工程で送出された異常信号に基づき、警告発報部より警告を発報する警告発報工程と、
を有したことを特徴とする加熱炉の燃焼監視方法である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、
請求項1に記載の加熱炉の燃焼監視装置と、
前記判定部から送出された異常信号に基づき、前記配管経路の燃料の圧力または前記配管経路の燃焼空気の圧力の少なくともいずれかが所定の下限圧力値以下になった蓄熱式バーナのバーナ本体に係る燃料切替弁を少なくとも閉じるための弁閉信号を送出する弁閉信号送出部と、
を備えたことを特徴とする加熱炉の燃焼制御システムである。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明に係る加熱炉の燃焼監視装置によれば、
各蓄熱式バーナのバーナ本体から燃料切替弁の間の配管経路と前記各蓄熱式バーナの蓄熱部から燃焼空気切替弁の間の配管経路にそれぞれ対応するように配設され、かつ、所定のシーケンスに基づき燃焼モード中のみ動作(ON)し、蓄熱モード中は非動作(OFF)となるように設定された第1、第2の下限リミット付圧力スイッチと、
ON状態の前記第1、第2の下限リミット付圧力スイッチに対応する前記配管経路の燃料の圧力、前記配管経路の燃焼空気の圧力が所定の下限圧力値以下になった場合には、該当する前記圧力スイッチから下限圧力値検知信号が発信され、この下限圧力値検知信号が入力されるように構成されており、少なくともいずれかの前記圧力スイッチから下限圧力値検知信号が発信されたと判断された場合には、異常信号を送出する判定部と、
この判定部から送出された異常信号に基づき警告を発報するための警告発報部と、
を備えているため、蓄熱式バーナに係る燃料や燃焼空気の異常(詰まりや漏洩)発生を検知可能な加熱炉の燃焼監視装置を実現できる。
【0013】
また、本発明に係る加熱炉の燃焼監視方法によれば、
前記各蓄熱式バーナのバーナ本体から燃料切替弁の間の配管経路と前記各蓄熱式バーナの蓄熱部から燃焼空気切替弁の間の配管経路には、前記所定のシーケンスに基づき燃焼モード中のみ動作(ON)し、蓄熱モード中は非動作(OFF)となるように設定された第1、第2の下限リミット付圧力スイッチがそれぞれ配設され、
ON状態の前記第1、第2の下限リミット付圧力スイッチに対応する前記配管経路の燃料の圧力、前記配管経路の燃焼空気の圧力が所定の下限圧力値以下になった場合には、該当する前記圧力スイッチから下限圧力値検知信号が発信され、この下限圧力値検知信号が判定部に入力されるように構成されており、前記判定部で少なくともいずれかの前記圧力スイッチから下限圧力値検知信号が発信されたと判断された場合には、前記判定部より異常信号を送出する異常信号送出工程と、
この異常信号送出工程で送出された異常信号に基づき、警告発報部より警告を発報する警告発報工程と、
を有しているため、蓄熱式バーナに係る燃料や燃焼空気の異常(詰まりや漏洩)発生を検知可能な加熱炉の燃焼監視方法を提供可能になる。
【0014】
また、本発明に係る加熱炉の燃焼制御システムによれば、
上述した本発明に係る加熱炉の燃焼監視装置と、
判定部から送出された異常信号に基づき、配管経路の燃料の圧力または配管経路の燃焼空気の圧力の少なくともいずれかが所定の下限圧力値以下になった蓄熱式バーナのバーナ本体に係る燃料切替弁を少なくとも閉じるための弁閉信号を送出する弁閉信号送出部と、
を備えているため、不完全燃焼による失火等を防止し安定燃焼を図ることが可能な燃焼制御システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る加熱炉の燃焼監視装置および燃焼制御システムの構成を説明するためのブロック図である。
【図2】図1に示す燃料の導圧管41の長さL/直径dと圧力スイッチ51での燃料圧力の検知遅れ時間の関係を説明するためのグラフである。
【図3】図1に示す加熱炉の燃焼監視装置のタイムチャート(シーケンス)図および各バーナ本体前の燃料の圧力の推移を説明するためのグラフである。
【図4】従来の加熱炉の燃焼監視装置の構成を説明するためのブロック図である。
【図5】図4に示す加熱炉の燃焼監視装置のタイムチャート(シーケンス)図並びに燃料流量のPVの流量計328での計測実績・調整弁327のMVおよび各バーナ本体前の燃料の圧力の推移を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。図1は本発明に係る加熱炉の燃焼監視装置および燃焼制御システムの構成を説明するためのブロック図、図2は図1に示す燃料の導圧管の長さL/直径dと圧力スイッチでの燃料圧力の検知遅れ時間の関係を説明するためのグラフ、図3は図1に示す加熱炉の燃焼監視装置のタイムチャート(シーケンス)図および各バーナ本体前の燃料の圧力の推移を説明するためのグラフである。
【0017】
最初に、図1を用いて、加熱炉の燃焼監視装置および燃焼制御システムの構成を説明する。
【0018】
1はバーナ本体1aとバーナ本体1a近傍に蓄熱機能を有する蓄熱部としての蓄熱体1bから構成された蓄熱式バーナ、2はバーナ本体2aとバーナ本体2a近傍に蓄熱機能を有する蓄熱部としての蓄熱体2bから構成された蓄熱式バーナ、3はバーナ本体3aとバーナ本体3a近傍に蓄熱機能を有する蓄熱部としての蓄熱体3bから構成された蓄熱式バーナ、4はバーナ本体4aとバーナ本体4a近傍に蓄熱機能を有する蓄熱部としての蓄熱体4bから構成された蓄熱式バーナ、5は加熱炉である。加熱炉5の一方の両側面に蓄熱と燃焼を交互に行いながら燃焼を継続するように蓄熱式バーナ1、2が対向して配置され、さらに加熱炉5の他方の両側面に蓄熱と燃焼を交互に行いながら燃焼を継続するように蓄熱式バーナ3、4が対向して配置されている。
【0019】
バーナ本体1a、2a、3a、4aには、それぞれ配管11、12、13、14を介して燃料切替弁21、22、23、24が接続され、この燃料切替弁21、22、23、24は配管25を介して、燃料ゾーン遮断弁26、燃焼流量調節弁27、燃料流量計28、燃料タンク29の順番に接続されている。また、配管11、12、13、14の途中には、それぞれ導圧管41、42、43、44を介して第1の下限リミット付圧力スイッチとしての圧力スイッチ(PS)51、52、53、54、55が接続されている。
【0020】
また、蓄熱体1b、2b、3b、4bには、それぞれ配管61、62、63、64を介して燃焼空気切替弁71、72、73、74が接続され、この燃焼空気切替弁71、72、73、74は配管75を介して、燃焼空気流量調節弁77、燃焼空気流量計78、燃焼空気タンク79の順番に接続されている。また、配管61、62、63、64の途中には、それぞれ導圧管81、82、83、84を介して第2の下限リミット付圧力スイッチとしての圧力スイッチ(PS)91、92、93、94、95が接続されている。さらに、蓄熱体1b、2b、3b、4bには、配管101、102、103、104を介して排ガス切替弁111、112、113、114が接続され、この排ガス切替弁111、112、113、114は配管115を介して、排ガス流量計118、排ガス流量調節弁117、排ガスタンク119の順番に接続されている。
【0021】
圧力スイッチ(PS)51、52、53、54、55、圧力スイッチ(PS)91、92、93、94、95は、それぞれ下限圧力値検知信号を伝達する信号線121、122、123、124、131、132、133、134を介して、判定部140に接続されている。さらに、判定部140は、判定部140から送出された異常信号を伝達する信号線141を介して、警告発報部142に接続されている。また、圧力スイッチ(PS)51、52、53、54、55と圧力スイッチ(PS)91、92、93、94、95は、予め決定されている所定のシーケンスに基づき燃焼モード中のみ動作(ON)し、蓄熱モード中は非動作(OFF)となるように設定されている。
【0022】
以上により、加熱炉の燃焼監視装置150が構成される。
【0023】
上記加熱炉5用の蓄熱式バーナ(大気圧大容量バーナ)1、2、3、4は、下記条件範囲で設計されることが多い。
・バーナ燃焼量範囲 : ターンダウン1/5〜1/10(安定燃焼範囲)
・燃料供給圧力P : 3〜5kPa
・ターンダウン1/10以下、つまり最大燃焼量の1/10以下になると、不安定燃焼にて失火の恐れがある。
・圧力比{バーナ前供給圧力P/燃料供給圧力P}=燃焼量比(ターンダウン)の2乗の関係がある。
【0024】
したがって、ターンダウン1/10の場合のバーナ前供給圧力Pは、30〜50Paとなる。そこで、本実施形態においては、圧力スイッチ(PS)51で対応する配管11経路の燃料の圧力を監視し、この監視する燃料の圧力の所定の下限圧力値を例えば30Paと設定する。同じく、圧力スイッチ(PS)52、53、54により、燃料の圧力を監視する下限圧力値も30Paに設定する。また、圧力スイッチ(PS)91、92、93、94により燃焼空気の圧力を監視する下限圧力値も30Paに設定する。
【0025】
所定の下限圧力値=30Paにて圧力スイッチ(PS)51、52、53、54、91、92、93、94を使用するにあたっては、導圧管41、42、43、44、81、82、83、84の長さL/直径dと圧力スイッチ(PS)51、52、53、54、91、92、93、94の検知遅れ時間の関係を予め把握しておく必要がある。
【0026】
そこで、代表例として導圧管41の長さL/直径dと圧力スイッチ(PS)51の検知遅れ時間の関係を3水準(監視する燃料圧力の下限圧力値:20Pa、30Pa、100Pa)について、予め実験により求めておいた。その結果を図2に示す。図2より、燃料の圧力の所定の下限圧力値=30Paの場合、検知遅れ時間を3秒以下とするためには、導圧管41の長さL/直径dは約800以下とする必要がある。好ましくは、導圧管41の長さL/直径dは、300以上800以下の範囲で、出来る限り小さくするのがよい。これにより、異常検知が速くなり、異常時に後述する燃料切替弁21を閉じるタイミングも速くできる。ただし、導圧管41の長さL/直径dは、これに限定されるものではなく、監視する燃料の圧力の所定の下限圧力値(例えば、30〜50Pa)と要求される検知遅れ時間に応じて決定すればよい。本実施形態においては、導圧管41の長さL/直径d=350〜600に設定した。
【0027】
以上、圧力スイッチ(PS)51に関する導圧管41の長さL/直径dと圧力スイッチ(PS)51の検知遅れ時間の関係を説明したが、圧力スイッチ(PS)52、53、54、91、92、93、94に関する導圧管42、43、44、81、82、83、84の長さL/直径dと圧力スイッチ(PS)52、53、54、91、92、93、94の検知遅れ時間の関係も同様の結果を示す。したがって、導圧管42、43、44、81、82、83、84の長さL/直径dは、監視する燃料・燃焼空気の圧力の所定の下限圧力値(例えば、30〜50Pa)と要求される検知遅れ時間に応じて決定すればよい。本実施形態においては、導圧管42、43、44、81、82、83、84の長さL/直径dも350〜600に設定した。
【0028】
また、判定部140は、判定部140から送出された異常信号を伝達する信号線141を介して、弁閉信号送出部160に接続されている。この弁閉信号送出部160には、燃料ゾーン遮断弁26を閉じる信号送出部160a、Nパージ弁31を閉じる信号送出部160b、燃料切替弁21、22、23、24を閉じる信号送出部160c、燃焼空気切替弁71、72、73、74を閉じる信号送出部160d、排ガス切替弁111、112、113、114を閉じる信号送出部160eを有している。また、燃料遮断弁26直後の配管25には配管30が接続され、この配管30にはNパージ弁31、Nタンク32の順番に接続されている。これらが、加熱炉の燃焼監視装置150に付加されて燃焼制御システム170が構成される。
【0029】
次に、図1〜図3を用いて、加熱炉の燃焼監視装置150による燃焼監視方法と燃焼制御システム170による燃焼制御方法について説明する。
【0030】
図3に示す所定のタイムチャート(シーケンス)において、蓄熱式バーナ1、3が燃焼モードで、蓄熱式バーナ2、4が排気(蓄熱)モードの場合からまず説明する。
【0031】
上記所定のタイムチャート(シーケンス)に基づき、蓄熱式バーナ1の燃焼空気切替弁71と蓄熱式バーナ2の排ガス切替弁112が閉から開に切り替えられる。これらが完全に開に切り替わった後、次に燃料切替弁21が閉から開に切り替えられる。圧力スイッチ(PS)51での監視より、この燃料切替弁21が閉から開に完全に切り替わるまでの時間t=3(秒)の間にバーナ本体1a前の燃料の圧力が、すでに所定の下限圧力値(30Pa)を十分超えていることがわかる(ア点参照)。
【0032】
燃料切替弁21が完全に開に切り替わった後、次に蓄熱式バーナ3の燃焼空気切替弁73と蓄熱式バーナ4の排ガス切替弁114が閉から開に切り替えられる。これらが完全に開に切り替わった後、次に燃料切替弁23が閉から開に切り替えられる。圧力スイッチ(PS)53での監視より、この燃料切替弁23が閉から開に完全に切り替わるまでの時間t=3(秒)の間にバーナ本体3a前の燃料の圧力が、すでに所定の下限圧力値(30Pa)を十分超えていることがわかる(イ点参照)。
【0033】
これにより、蓄熱式バーナ1、3の各バーナ本体1a、3aに詰まりもなく、かつ、配管11、13からの漏洩もない正常状態であることがわかる。
【0034】
蓄熱式バーナ1が上記所定のタイムチャート(シーケンス)に基づき、規定時間継続して燃焼した後、燃料切替弁21が開から閉に切り替えられる。燃料切替弁21が完全に閉に切り替わった後、次に燃焼空気切替弁71と排ガス切替弁112が開から閉に切り替えられる。これらが完全に閉に切り替わった後、次に燃料切替弁23が開から閉に切り替えられ、同時に蓄熱式バーナ2の燃焼空気切替弁72と蓄熱式バーナ1の排ガス切替弁111が閉から開に切り替えられる。これらが完全に開に切り替わった後、次に燃料切替弁22が閉から開に切り替えられ、同時に燃焼空気切替弁73と排ガス切替弁114が開から閉に切り替えられる。
【0035】
燃料切替弁22が完全に開に切り替わった後、次に蓄熱式バーナ4の燃焼空気切替弁74と蓄熱式バーナ3の排ガス切替弁113が閉から開に切り替えられる。これらが完全に開に切り替わった後、次に燃料切替弁24が閉から開に切り替えられる。本シーケンスは、以上の燃焼パターンが繰り返されるように構成されている。
【0036】
上記燃料切替弁24が閉から開に切り替えられてもバーナ本体4aに詰まりが発生していると、バーナ本体4a前の燃料の圧力は、圧力スイッチ(PS)54での監視の結果、下記のようになっていることがわかる。すなわち、燃料切替弁24が閉から開に完全に切り替わるまでの時間t=3(秒)の間にバーナ本体4a前の燃料の圧力が、所定の下限圧力値(30Pa)以下になっていることがわかる(エ点参照)。したがって、圧力スイッチ(PS)54から信号線124を介して判定部140に下限圧力値検知信号が伝達され、さらに判定部140から信号線141を介して警告発報部142に異常信号が送出され、警告発報部142から監視者等に警告が発報される。また、エ点を経過後もバーナ本体4a前の燃料の圧力は、所定の下限圧力値(30Pa)以下のままであることもわかる。この異常に基づく不完全燃焼による失火等を検知することも可能である。
【0037】
上述したように、バーナ本体4aに詰まりが発生していると、逆に、バーナ本体2a前の燃料の圧力は、バーナ本体4a前の燃料の圧力の低下を補うように下限圧力値30Paを超えるように増加する(ウ点参照)ため、圧力スイッチ(PS)52から信号線122を介して判定部140に下限圧力値検知信号が伝達されることはない。
【0038】
本実施形態においては、蓄熱式バーナに係る燃料の詰まりによる異常を例に説明したが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、蓄熱式バーナに接続された配管からの燃料の漏洩や蓄熱式バーナに係る燃焼空気の異常(詰まりや漏洩)発生も上述同様の本発明の技術思想に基づき検知可能である。すなわち、ON状態の前記第1、第2の下限リミット付圧力スイッチに対応する配管経路の燃料の圧力、配管経路の燃焼空気の圧力が所定の下限圧力値以下になった場合には、該当する圧力スイッチから下限圧力値検知信号が発信され、この下限圧力値検知信号が判定部140に入力されるように構成されており、判定部140で少なくともいずれかの圧力スイッチから下限圧力値検知信号が発信されたと判断された場合には、判定部140より異常信号を送出し、この異常信号に基づき、警告発報部142より警告を発報することが可能である。
【0039】
判定部140から信号線141を介して送出された異常信号は、警告発報部142に伝達されるばかりでなく、弁閉信号送出部160にも伝達される。これにより、信号送出部160aから燃料ゾーン遮断弁26を閉じる信号が燃料ゾーン遮断弁26に送られ、燃料ゾーン遮断弁26が閉じる。同時に、信号送出部160bからNパージ弁31を閉じる信号がNパージ弁31に送られ、Nパージ弁31も閉じる。
【0040】
燃料ゾーン遮断弁26とNパージ弁31が閉じた信号を受け、信号送出部160cから燃料切替弁24を閉じる信号が燃料切替弁24に送られ、燃料切替弁24が閉じる。同時に、信号送出部160dから燃焼空気切替弁74を閉じる信号が燃焼空気切替弁74に送られ、燃焼空気切替弁74が閉じ、かつ、信号送出部160eから排ガス切替弁114を閉じる信号が排ガス切替弁114に送られ、排ガス切替弁114が閉じる。これらにより、蓄熱式バーナに係る燃料の詰まりによる異常に基づく不完全燃焼による失火等を防止し安定燃焼を図ることが可能となる。
【0041】
また、本実施形態においては、上述した燃焼監視方法の場合同様に、蓄熱式バーナに係る燃料の詰まりによる異常のみに限定されるものではない。例えば、蓄熱式バーナに接続された配管からの燃料の漏洩や蓄熱式バーナに係る燃焼空気の異常(詰まりや漏洩)発生の場合にも上述同様の本発明の技術思想に基づき、異常に基づく不完全燃焼による失火等を防止し安定燃焼を図ることが可能となる。
【0042】
また、本実施形態においては、蓄熱式バーナ4に係る燃料の詰まりによる異常に基づき、燃料ゾーン遮断弁26、Nパージ弁31、燃料切替弁24、燃焼空気切替弁74と排ガス切替弁114のすべてを閉じる例について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、さまざま形態が考えられる。すなわち、判定部140から送出された異常信号に基づき、配管経路の燃料の圧力または配管経路の燃焼空気の圧力の少なくともいずれかが所定の下限圧力値以下になった蓄熱式バーナのバーナ本体に係る燃料切替弁を少なくとも閉じるために、弁閉信号送出部160内の信号送出部160cから弁閉信号を送出するような構成になっていればよい。
【0043】
なお、本実施形態においては、蓄熱式バーナが二対配設された加熱炉の例について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、蓄熱式バーナが一対以上配設された加熱炉が本発明の対象となる。
【符号の説明】
【0044】
1、2、3、4 蓄熱式バーナ
1a、2a、3a、4a バーナ本体
1b、2b、3b、4b 蓄熱体
5 加熱炉
11、12、13、14、25、30、61、62、63、64、75、101、102、103、104、115 配管
21、22、23、24 燃料切替弁
26 燃料ゾーン遮断弁
27 燃焼流量調節弁
28 燃料流量計
29 燃料タンク
31 Nパージ弁
32 Nタンク
41、42、43、44、81、82、83、84 導圧管
51、52、53、54、91、92、93、94 圧力スイッチ(PS)
71、72、73、74 燃焼空気切替弁
77 燃焼空気流量調節弁
78 燃焼空気流量計
79 燃焼空気タンク
111、112、113,114 排ガス切替弁
117 排ガス流量調節弁
118 排ガス流量計
119 排ガスタンク
121、122、123、124、131、132、133、134、141 信号線
140 判定部
142 警告発報部
150 加熱炉の燃焼監視装置
160 弁閉信号送出部
160a、160b、160c、160d、160e 信号送出部
170 燃焼制御システム
L 導圧管の長さ
d 導圧管の直径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナ本体近傍に蓄熱機能を有する蓄熱部を設け、所定のシーケンスに基づき予め決められた時間間隔で前記蓄熱部を通過する気体の方向を切り替え、蓄熱と燃焼を交互に行いながら燃焼を継続する蓄熱式バーナが一対以上配設された加熱炉の燃焼監視装置であって、
前記各蓄熱式バーナのバーナ本体から燃料切替弁の間の配管経路と前記各蓄熱式バーナの蓄熱部から燃焼空気切替弁の間の配管経路にそれぞれ対応するように配設され、かつ、前記所定のシーケンスに基づき燃焼モード中のみ動作(ON)し、蓄熱モード中は非動作(OFF)となるように設定された第1、第2の下限リミット付圧力スイッチと、
ON状態の前記第1、第2の下限リミット付圧力スイッチに対応する前記配管経路の燃料の圧力、前記配管経路の燃焼空気の圧力が所定の下限圧力値以下になった場合には、該当する前記圧力スイッチから下限圧力値検知信号が発信され、この下限圧力値検知信号が入力されるように構成されており、少なくともいずれかの前記圧力スイッチから下限圧力値検知信号が発信されたと判断された場合には、異常信号を送出する判定部と、
この判定部から送出された異常信号に基づき警告を発報するための警告発報部と、
を備えたことを特徴とする加熱炉の燃焼監視装置。
【請求項2】
バーナ本体近傍に蓄熱機能を有する蓄熱部を設け、所定のシーケンスに基づき予め決められた時間間隔で前記蓄熱部を通過する気体の方向を切り替え、蓄熱と燃焼を交互に行いながら燃焼を継続する蓄熱式バーナが一対以上配設された加熱炉の燃焼監視方法であって、
前記各蓄熱式バーナのバーナ本体から燃料切替弁の間の配管経路と前記各蓄熱式バーナの蓄熱部から燃焼空気切替弁の間の配管経路には、前記所定のシーケンスに基づき燃焼モード中のみ動作(ON)し、蓄熱モード中は非動作(OFF)となるように設定された第1、第2の下限リミット付圧力スイッチがそれぞれ配設され、
ON状態の前記第1、第2の下限リミット付圧力スイッチに対応する前記配管経路の燃料の圧力、前記配管経路の燃焼空気の圧力が所定の下限圧力値以下になった場合には、該当する前記圧力スイッチから下限圧力値検知信号が発信され、この下限圧力値検知信号が判定部に入力されるように構成されており、前記判定部で少なくともいずれかの前記圧力スイッチから下限圧力値検知信号が発信されたと判断された場合には、前記判定部より異常信号を送出する異常信号送出工程と、
この異常信号送出工程で送出された異常信号に基づき、警告発報部より警告を発報する警告発報工程と、
を有したことを特徴とする加熱炉の燃焼監視方法。
【請求項3】
請求項1に記載の加熱炉の燃焼監視装置と、
前記判定部から送出された異常信号に基づき、前記配管経路の燃料の圧力または前記配管経路の燃焼空気の圧力の少なくともいずれかが所定の下限圧力値以下になった蓄熱式バーナのバーナ本体に係る燃料切替弁を少なくとも閉じるための弁閉信号を送出する弁閉信号送出部と、
を備えたことを特徴とする加熱炉の燃焼制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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