説明

加熱素子のナノはんだ付け

小さいエリアに熱を与えるための技法と、小さいエリアに熱を与えることが可能な装置とが提供される。例示的な実施形態では、非限定的な例として、加熱素子は、一連の連続的に接続された上面が画定されるように、少なくとも1つの壁が一部から延びる基板と、導電性材料を含みかつ上面に実質的に配置された導電層とを含み、少なくとも1つの壁の最外部分は、その表面にエッチングされた部分を有する。前述の概要は単なる例示であり、いかなる方法によっても限定することを意味するものではない。上述の例示的な態様、実施形態、および特徴に加え、その他の態様、実施形態、および特徴が、図面および以下の詳細な記述を参照することによって明らかにされよう。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
非常に小さいエリアに熱を与えることは、表面での熱活性化重合、局所化学変換、およびナノはんだ付け(nanosoldering)などの多くの分野で行われている。加熱されるエリアのサイズ制限を考慮すれば、ナノテクノロジーの進歩を、非常に小さいエリアに熱を与えるための適用例に利用できると考えられる。カーボンナノチューブまたは新しい炭素材料、例えばグラフェンなどは、その高い電気伝導率と小さなサイズにより、そのような適用例において将来有望である。
【発明の概要】
【0002】
以下の詳細な記述では、本明細書の一部を形成する添付図面を参照する。これらの図面において、同様の符号は、他に文脈が指示しない限り、典型的には同様の構成要素であると見なす。詳細な記述、図面、および請求項に記述される例示的な実施形態は、限定を意味するものではない。本明細書に示される主題の精神または範囲から逸脱することなく、その他の実施形態を利用してもよく、その他の変化を加えてもよい。本明細書に概略的に記述されかつ図に例示される本発明の開示の態様は、その全てが本明細書で明確に企図される広く様々な異なる形態として構成することができ、置換することができ、組み合わせることができ、分離することができ、設計することができることが容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【図1】図1Aは、加熱素子の例示的な実施形態を示す斜視図であり、図1Bは、加熱素子の例示的な実施形態を示す正面図である。
【図2】(a)図1に示される加熱素子の壁の最外部分、および(b)カーボンナノチューブ(CNT)の格子状構造内のエッチングされた部分を示す、壁の最外部分の拡大図である。
【図3】グラフェンシートが付着された加熱素子の、例示的な実施形態を示す斜視図である。
【図4】3つの壁を有する加熱素子の、例示的な実施形態を示す斜視図である。
【図5】重合に利用された、図1に示される加熱素子の例示的な実施形態を示す、分解斜視図である。
【図6】図1に示される加熱素子がナノはんだ付けに利用される、例示的な実施形態を示す分解斜視図である。
【図7】小さいエリアに熱を与える加熱素子を製造するための方法の、例示的な実施形態を示す、フローチャートである。
【図8】少なくとも1つの壁を形成するための方法の例示的な実施形態を示す、フローチャートである。
【図9】図8に示される方法を例示する、一連の図である。
【図10】基板上に少なくとも1つの壁を形成するための方法の、別の例示的な実施形態を示す、フローチャートである。
【図11】図10に示される方法を例示する、一連の図である。
【発明を実施するための形態】
【0004】
多岐にわたる用途がある、多くの新しいデバイスを生み出すのに適切と考えられるナノ構造などの小規模構造は、それらのサイズが小さいために、製作するのが難しい。ナノスケールの加熱エリアを有する加熱素子は、表面での熱活性化重合、局所化学変換、およびナノはんだ付けなどの分野で利用することができる。本発明の開示で記述される技法は、ナノサイズの小さいエリアに熱を局所的に加える新規な加熱素子を用いる。いくつかの実施形態では、加熱素子は、その上面に配置されたCNTフィルムを有し、このCNTフィルムの少なくとも1つの突出部分は、他の残りの部分よりも低い導電率を有するようにエッチングされている。このように、電圧が加熱素子に加えられると、エッチングされた部分は抵抗として動作し、したがって選択的に加熱することができる。エッチングされた部分はナノメートル程度の幅を有するので、加熱されたエリアは著しく小さい。
【0005】
図1Aおよび1Bは、非常に小さいエリアに熱を与えるのに使用することができる加熱素子100の、例示的な実施形態の斜視図および正面図をそれぞれ示す。図1Aおよび1Bに示されるように、加熱素子100は、突出部分120(以下、「壁」と呼ぶ。)を有する基板110を含んでいてもよい。一実施形態において、壁120は、基板110の一部から、基板110のその他の部分に対して実質的に垂直な方向に延びていてもよく、連続的に接続された(contiguously connected)上面130を画定することができる。例えば、その他の部分は、壁120を形成しない基板110の部分を含んでいてもよい。一実施形態では、基板110を、シリコンウエハ、ガラス、または石英の1種を使用して製作してもよい。加熱素子100は、導電層をさらに含んでいてもよい。例えば、CNTフィルム140は導電層として働くことができ、カーボンナノチューブ(CNT)で基板110がコーティングされるように、上面130上に配置されてもよい。図1Aおよび1Bにおいて、CNTフィルム140の厚さは、例示目的のため誇張されている。CNTは、そのそれぞれがナノメートル程度の外径と約0.5ナノメートルから何十マイクロメートルという長さとを有する高アスペクト比の微視的炭素材料を含む。特に、CNTのそれぞれは、規則的に配置された炭素原子を有する中空円筒の形状を有していてもよい。上述の特徴を有するCNTは、電界集中(electric field concentration)を容易に与えることができ、高い放出電流密度を提供することができ、非常に安定な化学的および物理的特性を有することができる。壁120の最外部分150は、壁120のその他の残りの部分よりも低い導電率を有する1つまたは複数の、エッチングされた部分144を含んでいてもよい。ある電圧が外部回路(図示せず)を通して加熱素子100に加えられる場合、所定の電流が加熱素子100を流れることができ、したがって、エッチングされた部分144は抵抗として動作しかつその選択的加熱がもたらされる。
【0006】
図2は、加熱素子100の壁120の最外部分150の一部151の、例示的な実施形態の拡大図を示す。図2を参照すると、CNTフィルム140はCNTの格子状構造を有していてもよく、最外部分150上に配設されたCNTの格子状構造の少なくとも一部は破壊されて、1つまたは複数のエッチングされた部分144を形成してもよい。1つまたは複数の、エッチングされた部分144の破壊された構造は、エッチングされた部分144の抵抗率が増加するように、エッチングされた部分144の電気的性質を変化させる。このように、エッチングされた部分144の導電率は、壁120のその他の部分よりも低くすることができる。この場合、ある電圧が加熱素子100に加えられるなら、エッチングされた部分144は抵抗として動作することができかつその選択的加熱をもたらすことができる。壁120の最外部分150は、ナノメートル程度の幅を有していてもよいので、加熱素子100で加熱されたエリア(すなわち、実質的にエッチングされた部分144)は、著しく小さくすることができる。上述の構造を有する加熱素子100は、ナノはんだ付けおよび局所化学変換などの適用例で小さいエリアに熱を加えるのに適切である可能性がある。
【0007】
一実施形態では、CNTフィルム140は、その電気的性質が金属性また半導体性である様々な単層カーボンナノチューブ、すなわち半導体単層カーボンナノチューブ(SWNT)または金属性SWNTを含んでいてもよい。一実施形態では、基板110は、基板110が所望の性質を有することができるように、適切なシランによって官能化されてもよい。官能化によって、シランに含まれる化学官能基が基板110に導入されて、所望の性質が得られる。特に、基板110が、金属性SWNTと相互に作用しかつ選択的に結合することが知られているフェニル末端シランなどの芳香族分子により官能化される場合、金属性SWNTは基板110に選択的に吸収されてもよい。この場合、加熱素子100は、フェニル末端シランを含まないものに比べてより高い導電率を有していてもよい。下記は、本明細書で使用されるフェニル末端シランの式である。基板100を官能化するためのその他の芳香族分子は、ポルフィリン、フタロシアニン、またはペリレンを含んでいてもよい。
【0008】
【化1】

【0009】
一実施形態では、加熱素子100は、CNTフィルム140上に実質的に配置された保護層(図示せず)を有していてもよい。保護層は、基板110へのCNTフィルム140の接着を増大させるのに用いてもよい。保護層の存在により、電気が外部回路(図示せず)から加熱素子100に流れた場合、電子の表面障壁は、電子の放出によって実質的に増大する可能性がある。したがって、放出効率を、著しく低減させることができる。これにより、壁120を有する基板110とCNTフィルム140との間の接着強度を高めることができる。いくつかの実施形態では、保護層を、全面にわたり均一な圧力でCNTフィルム140の面に付着させて、保護層がその表面に実質的に堆積することができかつ維持できるようにしてもよい。保護層の厚さは、100nm未満であってもよい。保護層は、二酸化ケイ素(SiO2)、フルオロシリケートガラス(FSG)、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)酸化物、シラノール(SiOH)、流動性酸化物(FOx)、底面反射防止膜(BARC)、反射防止膜(ARC)、フォトレジスト(PR)、ほぼ摩擦のない炭素(near-frictionless carbon)(NFC)、炭化ケイ素(SiC)、酸炭化ケイ素(SiOC)、および/または炭素ドープ型酸化ケイ素(SiCOH)などの絶縁材料を含んでいてもよい。
【0010】
図3は、基板310上にグラフェンシート340を有する加熱素子300の、例示的な実施形態の斜視図を示す。この実施形態では、加熱素子300は、突出部分320(以下、「壁」と呼ぶ。)を有する基板310を含んでいてもよい。壁320は、図1に示される壁120と同様の構造を有し、したがって、その詳細な記述は省略する。さらに、基板310は、シリコンウエハ、ガラス、または石英の1種を使用して製作してもよい。グラフェンシート340は、基板310がグラフェンでコーティングされるように、基板310の上面330上に配置されていてもよい。グラフェンシート340は、多数の炭素原子が互いに共有結合している多環式芳香族分子を含む。共有結合された炭素原子は、反復単位として6員環を形成し、さらに、5員環および/または7員環を形成してもよい。したがって、グラフェンシート340は、あたかも共有結合した炭素原子がそれによって単層を形成するかのように見える。グラフェンシート340は、その中に含まれる5員環および/または7員環の量に応じて、様々な構造を有していてもよい。グラフェンシート340は、約100nmの厚さを有していてもよい、グラフェンの1つまたは複数の層を有していてもよい。上述の特徴を備えるグラフェンシート340は、電界集中を容易に提供することができ、高い放出電流密度を提供することができ、非常に安定な化学的および物理的特性を有することができる。
【0011】
壁320の最外部分322は、1つまたは複数の、エッチングされた部分324を有していてもよい。いくつかの実施形態では、グラフェンシート340をエッチングするのに酸素プラズマ処理を実行してもよい。グラフェンシート340は、結合した炭素のシートであるので、エッチングされた部分324の炭素のフレーム構造の一部は破壊される。このように、エッチングされた部分324の導電率は、その他の部分の導電率よりも低くすることができる。
【0012】
図4は、基板410上に複数の壁(例えば、3つの壁420、422、および424)を有する加熱素子400の、例示的な実施形態の斜視図を示す。加熱素子400は、3つの壁420、422、および424が基板410上に形成されている以外は、加熱素子100に類似しておりまたは実質的に同一である。したがって、その詳細な記述は省略する。一実施形態では、3つの壁420、422、および424は、数百ナノメートルの幅および高さを有する。加熱素子400は、連続的に接続された上面430を有し、上面430には、CNTフィルム440を配置することができる。さらに、壁420、422、および424のそれぞれは、高い抵抗率を有する1つまたは複数のエッチングされた部分433を有する。電圧が、外部回路(図示せず)を通して加熱素子400に加えられた場合、エッチングされた部分433を選択的に加熱することができる。加熱素子400に形成された任意の様々な壁を用いてもよいことが、当業者に理解されよう。
【0013】
図5は、加熱素子500が重合のために使用される実施形態を示す。一実施形態では、加熱素子500は、図1および3にそれぞれ示される加熱素子100および300のいずれか1つに類似した構造を有していてもよい。さらに、壁504の最外部分508は、図1から3に関して既に述べたものと同じ方法を使用してエッチングしてもよく、したがって最外部分508の導電率は、壁504のその他の部分の導電率よりも低くすることができる。
【0014】
重合の目的で、ポリマーフィルム510などのポリマー材料を、その1つの平面が図5に示されるように壁504の最外部分508に面するように位置決めしてもよい。一実施形態では、ポリマーフィルム510は、壁504の最外部分508に接触して位置決めされてもよく、または、最外部分508から発生した熱がポリマーフィルム510に効果的に伝達されるように、壁504の最外部分508からある距離だけ離して位置決めしてもよい。電気が外部回路520から加熱素子500まで流れるとき、壁504の最外部分508のエッチングされた部分を選択的に加熱し、最外部分508から発生した熱をポリマーフィルム510に伝達することができる。加熱素子500から熱を与えることにより、ポリマーフィルム510内の熱活性化開始剤を活性化することができ、それによって重合が実行される。
【0015】
図6は、加熱素子600がナノはんだ付けで使用される、別の実施形態を示す。一実施形態では、加熱素子600は、図1および3にそれぞれ示される加熱素子100および300のいずれか1つに類似した構造を有していてもよい。さらに、壁604の最外部分は、図1から3に関して既に述べたものと同じ方法を使用してエッチングされてもよく、したがって最外部分の導電率は、壁604のその他の部分の導電率よりも低くすることができる。
【0016】
ナノはんだ付けの目的で、はんだ付けされるナノ材料を有する物体(例えば、ナノスケール回路)を、このはんだ付けされるナノ材料が図6に示される壁604の最外部分に面するように位置決めしてもよい。一実施形態において、加熱素子600は、壁604の最外部分が、はんだ付けされる物体のエリア610に実質的に接触するように位置決めされてもよく、または、金属粒子614が、はんだ付けによって互いに連結されるようナノ材料602間に前もって配置されるような距離だけ、エリア610から離れて位置決めされてもよい。電気が外部回路620から加熱素子600に流れるとき、壁604の最外部分のエッチングされた部分は加熱されて、ナノ材料602と金属粒子614とがはんだ付けされる。一実施形態では、金属粒子614は、ナノスケールで形成されてもよい。そのような場合、金属粒子614の融点はバルク金属材料よりもさらに低いので、金属粒子614は、壁604の最外部分から少量の熱が発生する状態であっても融解しやすい。
【0017】
図7は、小さいエリアに熱を与える加熱素子を製造するための方法の、例示的な実施形態のフローチャートを示す。加熱素子は、少なくとも1つの壁を基板上に形成し(ブロック710)、壁の上面をコーティング材料でコーティングし(ブロック720)、少なくとも1つの壁の少なくとも一部をエッチングする(ブロック730)ことによって製造してもよい。図8および図9のA〜Hを参照して、図7の方法に関する詳細な記述について以下に示す。図8は、基板上に少なくとも1つの壁を形成するための方法の、例示的な実施形態のフローチャートを示す。図9のA〜Hは、図8に示される方法を例示する一連の図解を示す。
【0018】
図9Aを参照すると、化学気相成長またはフォトリソグラフィ技法などの様々な周知の製作プロセスのいずれかを使用することによって、シリコンウエハ、ガラス、または石英などの基板910上に、エッチングマスク層912が配置されている。エッチングマスク層912は、後続の処理に向けてピンホールのないエッチング障壁を提供するのに十分な厚さであってもよく、極限サブミクロン寸法(extreme submicron dimension)が正確に位置合わせされるように十分薄くてもよい。エッチングマスク層912は、Si、SiO、またはタングステンなどの材料を含んでいてもよい。図9Bに示されるように、エッチングマスク層912上にはフォトレジスト層914が配置される(ブロック820)。一実施形態では、フォトレジスト層914は、約150nmから約200nmの厚さであってもよい。図9Cを参照すると、フォトレジスト層914を、従来のリソグラフィ技法を使用して露光させて、適切なリソグラフィパターン916が形成されるようにする。フォトレジスト層914を、図9Dに示されるようにエッチングして(ブロック840)、リソグラフィパターン916がエッチングマスク層912上に残るようにする。図9Eでは、リソグラフィパターン916の下に配置されたエッチングマスク層912の部分が基板910上に残るような手法で、エッチングマスク層912をエッチングする(ブロック850)。一実施形態では、エッチングマスク層912が窒化物材料を含む場合、CFエッチャントを使用してエッチングマスク層912をエッチングしてもよい。残されたフォトレジスト層(すなわち、リソグラフィパターン916)を、図9Fに示されるように適切なエッチングプロセスによって除去する(ブロック860)。図9Gは、エッチングする前の基板910を示し、図9Gに示されるように、エッチングプロセスは、エッチングマスク層912の下に配置された基板910の部分は残されたままであり、一方、基板910のその他の部分はエッチングされるように、基板910上で行われる(ブロック870)。したがって、エッチングプロセスが終了した後、図9Gに示されるように、壁911(すなわち、突出部分)が、エッチングマスク層912と基板910のエッチングされていない部分との間に形成される。一実施形態では、ブロック840、850、および870のエッチングプロセスは、KOHエッチングプロセスまたはプラズマエッチングなどの周知のエッチング技法を使用して実行してもよい。壁911が形成されていない、露出した基板910の領域を、KOH湿式エッチングなどの高度異方性エッチングプロセスでエッチングする。あるいは、反応性イオンエッチングまたはイオンミリングなどのその他の異方性エッチングプロセスを使用してもよい。エッチングマスク層912を、図9Hに示されるように適切なエッチングプロセスにより除去し(ブロック880)、壁911が基板910上に残るようにする。壁911は、基板910の材料と同一の材料を有し、かつ基板910のいくつかの部分をエッチングすることによって形成されるので、一連の連続的に接続された上面130が基板910上に形成される。
【0019】
図7を再び参照すると、導電層が、基板および壁によって画定された上面に配置される(ブロック720)。一実施形態では、CNTフィルムなどの導電層が上面に配置されてもよい。CNTフィルムは、転写、コーティング、噴霧、またはスクリーン印刷法のいずれか1つにより形成されてもよい。あるいは、上面は、噴霧、浸漬、およびロールコーティングを含む湿式コーティング、または乾式コーティングなどの、従来のコーティング技法を使用することによって、CNTでコーティングされてもよい。別の実施形態では、グラフェンシートを導電層として使用してもよい。グラフェンシートは、ミクロ機械的方法(micromechanical method)またはSiC熱分解によって作成してもよい。ミクロ機械的方法では、黒鉛から分離したグラフェンシートは、テープ(例えば、「Scotch」という商標名で販売されているテープ)を黒鉛サンプルに接着させかつテープを剥離することによって、テープの表面上に作成することができる。SiC熱分解では、SiC単結晶を加熱して、表面のSiCを分解することによってSiを除去し、次いで残留する炭素Cがグラフェンシートを形成する。
【0020】
壁の最外部分をエッチングする(ブロック730)。一実施形態では、Oプラズマエッチングまたはメタンプラズマエッチングなどのプラズマエッチングを実施して、壁の最外部分をエッチングする。エッチングプロセスを通して、導電性材料の炭素構造、すなわちCNTまたはグラフェンが破壊され、したがって壁の最外部分の導電率は、その他の部分の導電率よりも低くなる。一実施形態では、保護層を、導電層上にさらに配置してもよい。保護層は、スパッタリングによって、または化学気相成長(CVD)などの気相成長法によって形成してもよい。
【0021】
図10は、基板上に多数の壁を形成するための方法の、別の例示的な実施形態のフローチャートを示す。図11A〜11Cは、図10に示される方法を例示する一連の図を示す。図11Aに示されるように、それぞれがケイ素またはクロムで作製されている多数のナノ構造1110が、基板1120上に位置付けられている。ナノ構造1110は、リソグラフィ、エッチング、または堆積技法などの様々な周知の製作技法のいずれかを使用して、前もって作成されてもよい。プレート1140をナノ構造1110の上方に置き(ブロック1020)、ある隙間がナノ構造1110とプレート1140との間に形成されるようにする。一実施形態では、局所スペーサ1130を、プレート1140に合わせて基板1120上に配置して、ナノ構造1110に対して所定の隙間を維持してもよい。例示の目的で、プレート1140は、残りの構造(局所スペーサ1130、ナノ構造1110、基板1120など)から取り外されるものとして示される。ナノ構造1110は、加熱によって融解し液化する(ブロック1030)。特に、図11Bに示されるように、加熱は、ある波長のレーザ光1150(フラッドまたはマスクビームのいずれかの形にある)を使用することによってプレート1140に対して行ってもよく、それによって、ある量のエネルギーがプレート1140を通して放出されて(図11Aに示されるように)、低温でナノ構造1110(固相にある)が融解される。パルスおよび連続波レーザを共に、ナノ構造1110を融解するのに使用してもよい。ナノ構造1110とプレート1140との間の相互作用によって、融解したナノ構造1110は隆起して(液体表面張力に対して)プレート1140に到達し、新しい形状のナノ構造1160を形成し、その結果、より大きな高さおよびより狭い線幅、滑らかな縁部、垂直側壁、ならびに平らな上面が得られる。ブロック1040では、冷却および除去プロセスを行い、それによってスペーサ1130およびプレート140が除去され、図11Cに示されるように基板1120上での壁1170の形成が終了する。スペーサ1130およびプレート140は、基板1120上に壁1170が形成された後は、必ずしも必要ではない。
【0022】
本明細書に開示されるこのおよびその他のプロセスおよび方法に関し、このプロセスおよび方法で発揮される機能は、異なる順序で実現してもよいことを理解すべきである。さらに、概略的に示されたステップおよび操作は、例として示されるだけであり、これらのステップおよび操作のいくつかは、任意選択であってもよく、より少ないステップおよび操作に組み合わせてもよく、または、開示された実施形態の本質から逸脱することなく追加のステップおよび操作に拡大してもよい。
【0023】
本発明の開示は、様々な態様の例示とされる、本出願に記述される特定の実施形態に関して限定されるものではない。多くの修正および変更を、その精神および範囲から逸脱することなく行うことができる。本明細書に列挙されるものに加え、この開示の範囲内にある機能的に均等な方法および装置が明らかにされよう。そのような修正および変更は、添付される特許請求の範囲内に包含されるものとする。本発明の開示は、添付される特許請求の範囲に含まれる全範囲の均等物と共に、そのような特許請求の範囲の用語によってのみ限定されるものである。この開示は、特定の方法、試薬、化合物、組成物、または生物系に限定されるものではなく、当然ながら変更できることが理解されよう。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態について記述することのみ目的とし、限定を意味するものではないことも理解されよう。
【0024】
本明細書における実質的に全ての複数形および/または単数形の用語の使用に対して、これらの用語は、状況および/または用途に適切なように、複数形から単数形に、および/または単数形から複数形に変換することを理解されたい。様々な単数形/複数形の置き換えは、理解しやすいように、本明細書で明確に説明することができる。
【0025】
通常、本明細書において、特に添付の特許請求の範囲(例えば、添付の特許請求の範囲の本体部)において使用される用語は、全体を通じて「オープンな(open)」用語として意図されていることをさらに理解されたい(例えば、用語「含む(including)」は、「含むがそれに限定されない(including but not limited to)」と解釈されるべきであり、用語「有する(having)」は、「少なくとも有する(having at least)」と解釈されるべきであり、用語「含む(includes)」は、「含むがそれに限定されない(includes but is not limited to)」と解釈されるべきである、など)。導入される請求項で具体的な数の記載が意図される場合、そのような意図は、当該請求項において明示的に記載されることになり、そのような記載がない場合、そのような意図は存在しないことをさらに理解されたい。例えば、理解の一助として、添付の特許請求の範囲は、導入句「少なくとも1つの(at least one)」および「1つまたは複数の(one or more)」を使用して請求項の記載を導くことを含む場合がある。しかし、そのような句の使用は、同一の請求項が、導入句「1つまたは複数の」または「少なくとも1つの」および「a」または「an」などの不定冠詞を含む場合であっても、不定冠詞「a」または「an」による請求項の記載の導入が、そのように導入される請求項の記載を含む任意の特定の請求項を、単に1つのそのような記載を含む実施形態に限定する、ということを示唆していると解釈されるべきではない(例えば、「a」および/または「an」は、「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」を意味すると解釈されるべきである)。同じことが、請求項の記載を導入するのに使用される定冠詞の使用にも当てはまる。また、導入される請求項の記載で具体的な数が明示的に記載されている場合でも、そのような記載は、少なくとも記載された数を意味すると解釈されるべきであることを理解されたい(例えば、他の修飾語なしでの「2つの記載(two recitations)」の単なる記載は、少なくとも2つの記載、または2つ以上の記載を意味する)。さらに、「A、BおよびC、などの少なくとも1つ」に類似の慣例表現が使用されている事例では、通常、そのような構文は、人がその慣例表現を理解するであろう意味で意図されている(例えば、「A、B、およびCの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびBを共に、AおよびCを共に、BおよびCを共に、ならびに/またはA、B、およびCを共に、などを有するシステムを含むが、それに限定されない)。「A、B、またはC、などの少なくとも1つ」に類似の慣例表現が使用されている事例では、通常、そのような構文は、人がその慣例表現を理解するであろう意味で意図されている(例えば、「A、B、またはCの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびBを共に、AおよびCを共に、BおよびCを共に、ならびに/またはA、B、およびCを共に、などを有するシステムを含むが、それに限定されない)。2つ以上の代替用語を提示する事実上いかなる離接する語および/または句も、明細書、特許請求の範囲、または図面のどこにあっても、当該用語の一方(one of the terms)、当該用語のいずれか(either of the terms)、または両方の用語(both terms)を含む可能性を企図すると理解されるべきであることをさらに理解されたい。例えば、句「AまたはB」は、「A」または「B」あるいは「AおよびB」の可能性を含むことが理解されよう。
【0026】
さらに、この開示の特徴または態様がマーカッシュグループとして記述される場合、この開示は、それによって、マーカッシュグループの任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループとしても記述されることが理解される。
【0027】
任意のおよび全ての目的で、例えば書面による説明を提供することに関しては、本明細書に開示される全ての範囲が、任意のおよび全ての可能性ある部分範囲およびそれらの部分範囲の組合せも包含することをさらに理解すべきである。任意の列挙された範囲は、十分に記述するとして、かつ同じ範囲を少なくとも均等な半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分けることができることを、容易に理解することができる。非限定的な例として、本明細書で論じられた各範囲は、下部3分の1、中部3分の1、および上部3分の1などに容易に分けることができる。「〜まで(up to)」および「少なくとも」などの全ての言語は、列挙された数を含みかつ上記にて論じられた部分範囲に引き続き分けることができる範囲を指すことも理解すべきである。最後に、ある範囲は、個々のそれぞれのメンバーを含むことも理解すべきである。したがって、例えば、1〜3個のセルを有するグループは、1、2、または3個のセルを有するグループを指す。同様に、1〜5個のセルを有するグループは、1、2、3、4、または5個のセルを有するグループを指し、以下同様である。前述の内容より、本発明の開示の様々な実施形態は例示を目的として本明細書に記述され、様々な修正が、本発明の開示の範囲および精神から逸脱することなく行うことができることが理解されよう。したがって、本明細書に開示される様々な実施形態は、限定を意味するものではなく、真の範囲および精神は、下記の特許請求の範囲によって示される。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一連の連続的に接続された上面が画定されるように、少なくとも1つの壁が一部から延びる基板と、
前記上面に実質的に配置された導電層と
を含み、前記少なくとも1つの壁の最外部分が、その表面に、エッチングされた部分を有している加熱素子。
【請求項2】
前記導電層が、少なくとも1つのグラフェンシートを含むように形成される、請求項1に記載の加熱素子。
【請求項3】
前記導電層が、少なくとも1つのCNTフィルムを含むように形成される、請求項1に記載の加熱素子。
【請求項4】
前記導電層上に実質的に配置された保護層をさらに含む、請求項1に記載の加熱素子。
【請求項5】
前記保護層が、金属材料、金属化合物、および絶縁材料の少なくとも1種を含む、請求項4に記載の加熱素子。
【請求項6】
前記少なくとも1つの壁が、前記基板に実質的に垂直に配設されている、請求項1に記載の加熱素子。
【請求項7】
前記上面と前記導電層との間に実質的に配置された絶縁層をさらに含む、請求項1に記載の加熱素子。
【請求項8】
フェニル末端シランが、前記絶縁層の少なくとも一部に付着された、請求項7に記載の加熱素子。
【請求項9】
前記少なくとも1つの壁が、数百ナノメートルの範囲内で測定される幅および高さを有する、請求項1に記載の加熱素子。
【請求項10】
基板の一部から延びるように、かつ一連の連続的に接続された上面が画定されるように、前記基板上に少なくとも1つの壁を形成することと、
前記上面を、導電性材料でコーティングすることと、
前記少なくとも1つの壁の少なくとも一部をエッチングすることと
を含む、加熱素子を製作するための方法。
【請求項11】
前記エッチングすることが、前記少なくとも1つの壁の最外部分で行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記コーティングすることが、前記上面に少なくとも1つのCNTフィルムを配置することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記コーティングすることが、前記上面に少なくとも1つのグラフェンシートを配置することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
付着されたコーティングを有する前記上面に、保護層を付着させること
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記保護層が、スパッタリングおよび気相成長法の1つによって、付着されたコーティングを有する前記上面に付着される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの壁が、エッチング技法を使用することによって製作される、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記形成することが、
前記基板上にエッチングマスク層を配置することと、
前記エッチングマスク層上にフォトレジスト層を配置することと、
前記フォトレジスト層上にリソグラフィパターンを形成することと、
前記リソグラフィパターンを取り囲むフォトレジスト層の部分をエッチングすることと、
前記エッチングマスク層の少なくとも一部をエッチングすることと、
前記フォトレジスト層から前記リソグラフィパターンを除去することと、
前記基板の少なくとも一部をエッチングすることと、
前記基板から前記エッチングマスク層を除去することと
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記形成することが液化技法を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記エッチングすることがプラズマエッチングによって実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記形成することが、
前記基板上にナノ構造を位置付けることと、
前記ナノ構造の上方にプレートを配設することと、
前記ナノ構造をエッチングし液化することと、
冷却および除去プロセスを行うことと
を含む、請求項16に記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図9G】
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【図9H】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【公表番号】特表2013−508889(P2013−508889A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534102(P2012−534102)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【国際出願番号】PCT/KR2010/006898
【国際公開番号】WO2011/046323
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(510056353)コリア・ユニバーシティ・リサーチ・アンド・ビジネス・ファウンデーション (15)
【Fターム(参考)】