説明

加熱蒸散用害虫防除材及び加熱蒸散害虫防除方法

【課題】安定した蒸散を可能とし、安定した害虫防除効果をあげることのできる加熱蒸散用害虫防除材及び加熱蒸散害虫防除方法を提供することを課題とする。
【解決手段】害虫防除成分、グリコールエーテル及び水を含有する水性害虫防除組成物と、該組成物に浸漬されるように設けられた吸液芯とを備える加熱蒸散用害虫防除材であって、グリコールエーテルの該組成物全量に対する含有量をa(重量%)とし、該芯の空隙率をb(%)としたときに、aとbとが下式を満たすことを特徴とする加熱蒸散用害虫防除材。
式:0.17≦a/b≦2.5

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱蒸散用害虫防除材及び加熱蒸散害虫防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
害虫防除成分を含有する害虫防除組成物と、該組成物に浸漬されるように設けられた吸液芯とを備える害虫防除材を用いて、該芯に害虫防除組成物を吸液させ、該芯の上部を加熱することにより、吸液された害虫防除組成物を蒸散させる加熱蒸散害虫防除方法が開発され、汎用されている。また、該方法に用いられる害虫防除組成物として、水を含有する溶媒に害虫防除成分を溶解した、いわゆる水性害虫防除組成物が、非燃焼性等の利点により実用化されるに至っている。しかしながら、水を主溶媒とする水性害虫防除組成物を用いる場合には、吸液芯の目詰まり、加熱蒸散過程における害虫防除組成物の変化等により、長時間にわたって安定した害虫防除組成物の蒸散を行い、安定した害虫防除効果を得ることが困難である場合があった。また、通常の害虫防除成分は油溶性である場合が多く、その場合には、均一な溶液を得るためには水分含量をあまり高くすることができないなどの問題があった。
このため、安定した蒸散を可能とし、安定した害虫防除効果をあげることのできる加熱蒸散用害虫防除材及び加熱蒸散害虫防除方法の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−103712
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、安定した蒸散を可能とし、安定した害虫防除効果をあげることのできる加熱蒸散用害虫防除材及び加熱蒸散害虫防除方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、種々検討した結果、本発明に至った。すなわち本発明は、下記の発明を提供する。
【0006】
[1] 害虫防除成分、グリコールエーテル及び水を含有する水性害虫防除組成物と、該組成物に浸漬されるように設けられた吸液芯とを備える加熱蒸散用害虫防除材であって、グリコールエーテルの該組成物全量に対する含有量をa(重量%)とし、該芯の空隙率をb(%)としたときに、aとbとが下式を満たすことを特徴とする加熱蒸散用害虫防除材。
式:0.17≦a/b≦2.5
[2] 吸液芯の空隙率が、20〜60%である[1]記載の加熱蒸散用害虫防除材。
[3] グリコールエーテルが、エチレングリコール系エーテル及びプロピレングリコール系エーテルからなる群より選ばれる1種以上である[1]又は[2]記載の加熱蒸散用害虫防除材。
[3a] グリコールエーテルが、エチレングリコール系エーテルである[1]又は[2]記載の加熱蒸散用害虫防除材。
[4] グリコールエーテルが、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル及びプロピレングリコールモノプロピルエーテルからなる群より選ばれる1種以上である[1]〜[3]いずれかに記載の加熱蒸散用害虫防除材。
[4a] グリコールエーテルが、エチレングリコールモノブチルエーテル及びジエチレングリコールモノブチルエーテルからなる群より選ばれる1種又は2種である[1]〜[3a]いずれかに記載の加熱蒸散用害虫防除材。
[5] グリコールエーテルの含有量が、組成物全量に対して10〜50重量%である[1]〜[4]いずれかに記載の加熱蒸散用害虫防除材。
[6] 害虫防除成分が、ピレスロイド化合物である[1]〜[5]いずれかに記載の加熱蒸散用害虫防除材。
[7] 害虫防除成分が、式(1)

〔式中、R1及びR2は同一又は相異なり水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又は塩素原子を表し、R3は水素原子、メチル基又はメトキシメチル基を表す。〕
で示されるエステル化合物である[1]〜[6]いずれかに記載の加熱蒸散用害虫防除材。
[8] 式(1)示されるエステル化合物が、[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(メトキシメチル)フェニル]メチル=2,2−ジメチル−3−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート、[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルフェニル]メチル=2,2−ジメチル−3−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート、(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)メチル=3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(メトキシメチル)フェニル]メチル=3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(メトキシメチル)フェニル]メチル=2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート及び[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(メトキシメチル)フェニル]メチル=3−(3,3,3−トリフルオロ−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレートからなる群より選ばれる1種以上である[7]に記載の加熱蒸散用害虫防除材。
[8a] 式(1)示されるエステル化合物が、[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(メトキシメチル)フェニル]メチル=2,2−ジメチル−3−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート、[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルフェニル]メチル=2,2−ジメチル−3−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート、(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)メチル=3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(メトキシメチル)フェニル]メチル=3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート及び[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(メトキシメチル)フェニル]メチル=2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレートからなる群より選ばれる1種以上である[7]に記載の加熱蒸散用害虫防除材。
[9] 水の含有量が、組成物全量に対して20〜85重量%である[1]〜[8a]いずれかに記載の加熱蒸散用害虫防除材。
[10] 水性害虫防除組成物が、グリコールをさらに含有する水性害虫防除組成物である[1]〜[9]いずれかに記載の加熱蒸散用害虫防除材。
[11] グリコールが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール及びテトラエチレングリコールからなる群より選ばれる1種以上である[10]記載の加熱蒸散用害虫防除材。
[11a] グリコールが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールからなる群より選ばれる1種以上である[10]記載の加熱蒸散用害虫防除材。
[12] グリコールが、トリエチレングリコール、プロピレングリコール及びジプロピレングリコールからなる群より選ばれる1種以上である[10]又は[11]記載の加熱蒸散用害虫防除材。
[12a] グリコールが、トリエチレングリコールである[10]〜[11a]いずれかに記載の加熱蒸散用害虫防除材。
[13] グリコールの含有量が、組成物全量に対して1〜45重量%である[10]〜[12a]いずれかに記載の加熱蒸散用害虫防除材。
[14] [1]〜[13]いずれかに記載の加熱蒸散用害虫防除材を用いた加熱蒸散害虫防除方法であって、水性害虫防除組成物中に、吸液芯の一方の端部を浸漬させ、該芯に該組成物を吸液させると共に、該芯の他方の端部の周囲を加熱して、吸液された該組成物を蒸散させることを特徴とする加熱蒸散害虫防除方法。
[15] [1]〜[13]いずれかに記載の加熱蒸散用害虫防除材を用いた加熱蒸散害虫防除装置であって、水性害虫防除組成物が充填された薬液ボトルと、該組成物に浸漬されるように設けられた吸液芯と、該芯の一部を加熱するためのヒーターとを備える吸液型加熱蒸散害虫防除装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、長時間にわたって安定して、水性害虫防除組成物を蒸散させることができ、安定した害虫防除効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の吸液型加熱蒸散害虫防除装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の加熱蒸散用害虫防除材は、害虫防除成分、グリコールエーテル及び水を含有する水性害虫防除組成物と、該組成物に浸漬されるように設けられた吸液芯とを備える加熱蒸散用害虫防除材であって、グリコールエーテルの該組成物全量に対する含有量をa(重量%)とし、該芯の空隙率をb(%)としたときに、aとbとが下式を満たすことを特徴とするものである。
式:0.17≦a/b≦2.5
【0010】
〔水性害虫防除組成物〕
本発明の水性害虫防除組成物(以下、本発明組成物と記す。)は、害虫防除成分、グリコールエーテル及び水を含有するものである。
本発明組成物は、例えば害虫防除成分、グリコールエーテル及び水、必要により後述のグリコール、増粘剤、界面活性剤、分散剤、安定化剤、香料、防腐剤、共力剤等を室温下又は加温下に混合、溶解することにより調製される。
【0011】
本発明に用いられる害虫防除成分としては、殺虫剤成分、忌避剤成分、昆虫成長制御剤成分等の害虫防除活性を有する化合物が挙げられる。かかる化合物としては、ピレスロイド化合物、有機リン化合物、カーバメイト化合物及びネオニコチノイド化合物が挙げられ、好ましくはピレスロイド化合物が挙げられる。
【0012】
本発明に用いられるピレスロイド化合物としては、好ましくは、下式(1)

〔式中、R1及びR2は同一又は相異なり、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又は塩素原子を表し、R3は水素原子、メチル基又はメトキシメチル基を表す。〕
で示されるエステル化合物であり、具体的には[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(メトキシメチル)フェニル]メチル=2,2−ジメチル−3−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート(以下、本化合物Aと記す。)、[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルフェニル]メチル=2,2−ジメチル−3−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート(以下、本化合物Bと記す。)、(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)メチル=3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート(以下、本化合物Cと記す。)、[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(メトキシメチル)フェニル]メチル=3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(メトキシメチル)フェニル]メチル=2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート及び[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(メトキシメチル)フェニル]メチル=3−(3,3,3-トリフルオロ-1-プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレートが挙げられる。該化合物は、例えば、特開2000−63329号公報、特許第2647411号明細書、特開昭57−123146号公報、特開2001−11022号公報、特開平11−222463号公報、特開2002−145828号公報に記載される化合物であり、該公報に記載の方法により製造することができる。
該化合物には、シクロプロパン環上に存在する2つの不斉炭素原子に由来する異性体、及び二重結合に由来する異性体が存在する場合があるが、本発明には活性な異性体を任意の比率で含有するものを使用することができる。
また、本発明においては、害虫防除成分は、1種又は2種以上の混合物を使用することができる。
【0013】
本発明組成物における害虫防除成分の含有量は、本発明組成物全量に対して、通常0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜4重量%、さらに好ましくは0.1〜3重量%である。
【0014】
本発明に用いられるグリコールエーテルとしては、例えば、エチレングリコール系エーテル、プロピレングリコール系エーテル、ジアルキルグリコール系エーテルが挙げられる。
エチレングリコール系エーテルとしては、例えば、下式(2)

〔式中、R4はメチル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、アリル基、フェニル基又はベンジル基を表し、nは1〜10の整数のいずれかを表す。〕
で示されるグリコールエーテルが挙げられ、具体的には例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテルが挙げられる。
プロピレングリコール系エーテルとしては、例えば、下式(3)

〔式中、R5はメチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基又はアリル基を表し、mは1〜3の整数のいずれかを表す。〕
で示されるグリコールエーテルが挙げられ、具体的には例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルが挙げられる。
ジアルキルグリコール系エーテルとしては、例えば、下式(4)

〔式中、R6及びR7は同一又は相異なり、メチル基、エチル基又はブチル基を表し、mは前記と同じ意味を表す。〕
で示されるグリコールエーテルが挙げられ、具体的には例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルが挙げられる。
本発明においては、本発明組成物中での安定性の点から、好ましくはエチレングリコール系エーテルが用いられる。また、エチレングリコール系エーテルにおいては、害虫防除成分及び水との溶解性の点で、好ましくはエチレングリコールモノブチルエーテル及びジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルが用いられる。
なお、本発明においては、グリコールエーテルは、1種又は2種以上の混合物を使用することができる。
【0015】
本発明組成物におけるグリコールエーテルの含有量a(重量%)は、本発明組成物全量に対して通常10〜50重量%、好ましくは10〜45重量%、さらに好ましくは15〜40重量%である。
【0016】
本発明組成物における水の含有量は、本発明組成物全量に対して、通常20〜85重量%、好ましくは40〜80重量%、さらに好ましくは50〜75重量%である。
【0017】
本発明組成物において、グリコールエーテルと水との重量比は通常1:0.4〜1:8.5の範囲、好ましくは1:1〜1:8.5の範囲、さらに好ましくは1:1.4〜1.3.6の範囲である。
【0018】
本発明組成物には、さらにグリコールを含有させることができる。本発明において、本発明組成物中にグリコールが含有されていると、本発明組成物の溶状が安定化し、好ましい。
本発明に用いられるグリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール
ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコールが挙げられる。溶状安定性の点から、好ましくはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールが用いられ、さらに好ましくはトリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールが用いられる。
【0019】
本発明組成物におけるグリコールの含有量は、本発明組成物全量に対して、通常1〜45重量%、好ましくは3〜40重量%、より好ましくは5〜30重量%、さらに好ましくは5〜20重量%である。
なお、本発明においては、グリコールは、1種又は2種以上の混合物を使用することができる。
グリコールを2種以上含む本発明組成物の例としては、例えば、グリコールとしてジプロピレングリコールとトリエチレングリコールとを含有する組成物、グリコールとしてエチレングリコールとトリエチレングリコールとを含有する組成物、グリコールとしてプロピレングリコールとトリエチレングリコールとを含有する組成物、グリコールとしてジプロピレングリコールとトリプロピレングリコールとを含有する組成物が挙げられる。
本発明組成物において、グリコールの量は、グリコールエーテル1重量部に対して通常4重量部以下、好ましくは0.2〜1.25重量部、さらに好ましくは0.2〜0.7重量部である。
【0020】
本発明組成物において、2種のグリコールとしてジプロピレングリコールとトリエチレングリコールとを含有する場合、本発明組成物全量に対してグリコールエーテルが20〜40重量%含まれる場合のジプロピレングリコール及びトリエチレングリコールの含有量は、通常ジプロピレングリコールは1〜10重量%、トリエチレングリコールは1〜15重量%である。
【0021】
本発明組成物には、本発明組成物の均一性を損なわない限り、必要に応じて、増粘剤、界面活性剤、分散剤、安定化剤、香料、防腐剤、共力剤等の1種以上を適宜配合することができる。
【0022】
増粘剤としては、ザンタンガム、ラムザンガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、ウエラントガム等の天然多糖類、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成高分子、カルボキシメチルセルロース等の半合成高分子、アルミニウムマグネシウムシリケート、スメクタイト、ベントナイト、ヘクトライト、乾式シリカ等の鉱物質粉末、アルミナゾル、及びグリセリンが挙げられる。
【0023】
界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、安全性の観点からはノニオン性界面活性剤が好ましい。
分散剤としては、リグニンスルホン酸誘導体、ナフタレンスルホン酸誘導体、合成水溶性高分子(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン)等が挙げられる。
【0024】
安定化剤としては、BHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)BHA(2−t−ブチル−4−メトキシフェノールと3−t−ブチル−4−メトキシフェノールとの混合物)、ビタミンC、カテキン等が挙げられる。
香料としては、天然香料、合成香料及び抽出香料が挙げられる。
【0025】
防腐剤としては、例えば安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキ安息香酸ブチル、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウム、塩酸クロルヘキシジン、過酸化水素水、グルコン酸クロルヘキシジン、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、ジンクピリチオン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、フェノキシエタノール、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアオリン−3−オン等のイソチアゾリン誘導体、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、及びサリチル酸誘導体が挙げられる。具体的には、例えばバイオホープL(ケイ・アイ化成株式会社製)、プロキセルGXL(アビシア株式会社製)が挙げられる。
【0026】
共力剤としては、例えばピペロニル ブトキサイド(piperonyl butoxide)、 セサメックス(sesamex)、スルホキシド(sulfoxide)、N−(2−エチルへキシル)−8,9,10−トリノルボルン−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド(MGK 264)、N−デクリイミダゾール(N−declyimidazole)、WARF−アンチレジスタント(WARF−antiresistant)、TBPT、TPP、IBP、PSCP、ヨウ化メチル(CH3I)、t−フェニルブテノン(t−phenylbutenone)、ジエチルマレエート(diethylmaleate)、DMC、FDMC、ETP、ETN及びd−リモネンが挙げられる。
【0027】
〔吸液芯〕
本発明に用いられる吸液芯としては、本発明組成物を吸液し、かつヒーター等による加熱に耐えうるものであれば特に制限されるものではないが、例えば、グラスウールやフェルト等の繊維を用いた吸液芯、ポリエーテルサルホンなどの樹脂粉末を成型した吸液芯、固結芯、粘結芯、焼結芯、二重層吸液芯が挙げられる。
【0028】
本発明において固結芯とは、多孔質の無機物を固結されて得られる吸液芯を意味し、具体的には例えば、グラスファイバー、石綿等の無機繊維を、石膏やベントナイト等の結合剤で固めたものが挙げられる。
本発明において粘結芯とは、多孔質の無機物を粘結されて得られる吸液芯を意味し、具体的には例えば、カオリン、活性白土、タルク、ケイソウ土、クレー、パーライト、ベントナイト、アルミナ、シリカ、アルミナシリカ、チタニア、ガラス質火山岩焼成粉末、ガラス質火山灰焼成粉末等の鉱物質粉末を単独で又は必要に応じて木粉、炭粉、活性炭等と共に結合剤で固めたものが挙げられる。なお、粘結芯に用いられる結合剤としては、例えばポリビニルアルコールを熱処理したもの、メラミン樹脂や重クロム酸アンモニウムのような耐水化剤を添加したもの、或いは架橋型デンプン、これとα−デンプンとの混合物、α−グルテンとカプロラクトンとの混合物のような耐水性結合剤が挙げられる。該結合剤としては、合成樹脂系のものを用いることもできるが、本発明組成物を吸液する際に溶出する場合があるため、通常、前記したような親水性結合剤を耐水性にした耐水性結合剤が用いられる。
本発明において焼結芯とは、セラミック粒子を焼結させて得られる吸液芯を意味し、好ましくはセラミック粒子を部分的にガラス質にて焼成、結合してなる吸液芯が挙げられる。焼結芯に用いられるセラミック粒子としては、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、コージライト粒子等が挙げられるが、性能、入手性、経済性等の点から、アルミナ粒子が好ましい。
本発明において二重層吸液芯とは、吸液芯の中心に多孔質の吸液蒸散層を有し、周囲に保持材層を有する構造の吸液芯を意味する。多孔質の吸液蒸散層に用いられる材料としては、グラスウール、石綿等の無機繊維、フェルト、木綿、パルプ、不織布、ポリエステルなどの有機繊維、吸水性の高い材木が挙げられる。また、周囲の保持材層に用いられる材料としては、チューブ状の力学的に十分な強度を有し、本発明組成物、及び熱に対して十分な耐性を有するものから選択される材料が挙げられ、具体的には例えば、陶磁器、ガラス、無機繊維、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル、フェノール樹脂等のプラスチック、銅、真鍮、鉄、ステンレス鋼、アルミニウムなどの金属が挙げられる。
【0029】
本発明において、吸液芯の空隙率b(%)は、以下のようにして求めることができる。
まず、吸液芯の半径[r(cm)]、長さ[L(cm)]、及び重量[g0(g)]を測定する。次いで、純水を入れたビーカー中に該吸液芯を投入し、該吸液芯を完全に浸水させ、室温で6時間静置する。該吸液芯を取り出し、該吸液芯の周りの余分な水を紙製のウエスで拭った後、該吸液芯の重量[g1(g)]を測定し、空隙率を下式により算出する。



0;吸液芯の空重量(g)
1;含水後の吸液芯重量(g)
ρ;純水の密度(g/cm3)=1
r:吸液芯の半径(cm)
L:吸液芯の長さ(cm)

なお、吸液芯組成や、原料の粒度、製造条件等を適宜選定することにより、種々の空隙率を有する吸液芯の製造が可能であるが、本発明に用いられる吸液芯の空隙率は、通常20〜60%、好ましくは20〜50%である。
【0030】
本発明の加熱蒸散用害虫防除材は、グリコールエーテルの本発明組成物全量に対する含有量をa(重量%)とし、吸液芯の空隙率をb(%)としたときに、aとbとが下式
式:0.17≦a/b≦2.5
を満たすことを特徴とする。この式を満たすことにより、長時間にわたって安定して、水性害虫防除組成物を蒸散させることができ、安定した害虫防除効果を得ることができる。
また、好ましくは0.2≦a/b≦2.5、より好ましくは0.5≦a/b≦1.6、さらに好ましくは0.7≦a/b≦1.3であり、この場合、安定に害虫防除成分を蒸散させることができる。
【0031】
〔吸液型加熱蒸散害虫防除装置〕
本発明の吸液型加熱蒸散害虫防除装置は、本発明の加熱蒸散用害虫防除材を用いたものであり、本発明組成物が充填された薬液ボトルと、該組成物に浸漬されるように設けられた吸液芯と、該芯の一部を加熱するためのヒーターとを備える吸液型加熱蒸散害虫防除装置である。
本発明の吸液型加熱蒸散害虫防除装置の一具体例につき、添付図面を用いて説明する。
【0032】
図1は、本発明の吸液型加熱蒸散害虫防除装置の概略図である。この装置は本発明組成物1が充填された薬液ボトル4と、吸液芯3と、この吸液芯の一部を加熱するためのヒーター2とを備える。
吸液芯3は、一方の端部を薬液ボトル4中の本発明組成物1に浸漬させるように薬液ボトル4に挿入されている。吸液芯3の他方の端部は薬液ボトル4から突出し、頂部の周辺はリング状ヒーター2で囲まれている。また上記リング状ヒーター2はこれに通電して発熱させるためのコードに連結されている。
【0033】
吸液芯3はその端部が、薬液ボトル4の内部底面から1〜5mm程度に位置するように設置されることが好ましい。
上記リング状ヒーター2と吸液芯3との間隔は、通常、0.5〜2mmの範囲であり、このリング状ヒーターの加熱温度は、150℃以下であることが望ましい。
【0034】
吸液芯3はその下端部が、通常は薬液ボトル4の内部底面から1〜5mm程度に位置するように設置される。
【0035】
薬液ボトル4の材質は、長期間経過後も本発明組成物1の漏出や滲み出しのない材質であれば特に制限されるものではないが、本発明組成物1の残存量を外部から見ることができるガラス等の透明材質が好ましい。薬液ボトル4の材質としては、例えば、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド(ナイロン等)、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート等のプラスチックを用いることもできる。
なお、薬液ボトル4の容量は、通常20〜50mLである。
【0036】
また、薬液ボトル4は使用上の安全面から、転倒時においても、ボトル内に充填されている本発明組成物1の漏出や滲み出しが生じないように構成されていることが望ましい。
【0037】
図1において、薬液ボトル4の周囲全体を覆うように外筒容器を配置することもでき、この場合、薬液ボトル4の出し入れを容易にするために、底板を円板状とし、外筒容器と脱着容易に、たとえば螺着、嵌合等が可能な構成とすることもできる。
【0038】
なお、かかる外筒容器においても外部から本発明組成物1の残存量が目視できるように、透明容器とするか、その一部に切り欠け部を設けることが望ましい。
【0039】
また、本発明の装置には、その一部に通電の有無を示すパイロットランプを設けることもできる。
【0040】
〔加熱蒸散害虫防除方法〕
本発明の加熱蒸散害虫防除方法は、本発明の加熱蒸散用害虫防除材を用いたものであり、本発明組成物中に、吸液芯の一方の端部を浸漬させ、該芯に該組成物を吸液させると共に、該芯の他方の端部の周囲を加熱して、吸液された該組成物を蒸散させることを特徴とする方法である。
【0041】
図1において、吸液芯3の薬液ボトル4に浸漬された部分は、本発明組成物を吸液する。この吸液芯3の他方の端部は薬液ボトル4から突出し、リング状ヒーター2で加熱される。加熱された本発明組成物は大気中に蒸散していく。
【0042】
本発明において、吸液芯の端部の周囲面を加熱するためのヒーターとしては、直接加熱できる発熱体、間接加熱できる発熱体のいずれであってもよいが、間接加熱できる発熱体であることが好ましく、加熱温度は、通常約40〜150℃、好ましくは85〜145℃である。間接加熱できる発熱体として、代表的には、通電により発熱するリング状の電気ヒーターが挙げられる。
【0043】
本発明により防除できる害虫としては、例えば昆虫やダニ等の節足動物が挙げられ、具体的には例えば以下の害虫等が挙げられる。
【0044】
鱗翅目害虫:ニカメイガ、コブノメイガ、ノシメコクガ等のメイガ類、ハスモンヨトウ、アワヨトウ、ヨトウガ等のヨトウ類、モンシロチョウ等のシロチョウ類、コカクモンハマキ等のハマキガ類、シンクイガ類、ハモグリガ類、ドクガ類、ウワバ類、カブラヤガ、タマナヤガ等のアグロティス属害虫(Agrotis spp.)、ヘリコベルパ属害虫(Helicoverpa spp.)、ヘリオティス属害虫(Heliothis spp.)、コナガ、イチモンジセセリ、イガ、コイガ等
【0045】
双翅目害虫:アカイエカ、コガタアカイエカ、ネッタイイエカ等のイエカ類、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ等のヤブカ類、シナハマダラカ、ガンビエハマダラカ(Anopheles gambiae)等のハマダラカ類、ユスリカ類、イエバエ、オオイエバエ、ヒメイエバエ等のイエバエ類、クロバエ類、ニクバエ類、タネバエ、タマネギバエ等のハナバエ類、ミバエ類、ショウジョウバエ類、チョウバエ類、ノミバエ類、アブ類、ブユ類、サシバエ類、ヌカカ類等
【0046】
網翅目害虫:チャバネゴキブリ、クロゴキブリ、ワモンゴキブリ、コワモンゴキブリ、トビイロゴキブリ、コバネゴキブリ等
【0047】
膜翅目害虫:アリ類、ハチ類(フタモンアシナガバチ、トガリフタモンアシナガバチ、セグロアシナガバチ、キアシナガバチ、キボシアシナガバチ、コアシナガバチ、ヤマトアシナガバチ等のアシナガバチ類、オオスズメバチ、キイロスズメバチ、コガタスズメバチ、モンスズメバチ、ヒメスズメバチ、クロスズメバチ、シダクロスズメバチ、キオビホオナガスズメバチ等のスズメバチ類、アリガタバチ類、クマバチ、ベッコウバチ、ジガバチ、ドロバチ等)
【0048】
隠翅目害虫:イヌノミ、ネコノミ、ヒトノミ等
【0049】
シラミ目害虫:ヒトジラミ、ケジラミ、アタマジラミ、コロモジラミ等
【0050】
等翅目害虫:ヤマトシロアリ、イエシロアリ等
【0051】
半翅目害虫:ヒメトビウンカ、トビイロウンカ、セジロウンカ等のウンカ類、ツマグロヨコバイ、タイワンツマグロヨコバイ等のヨコバイ類、アブラムシ類、カメムシ類、コナジラミ類、カイガラムシ類、グンバイムシ類、キジラミ類、トコジラミ類等
【0052】
鞘翅目害虫:ヒメカツオブシムシ、ヒメマルカツオブシムシ、ウエスタンコーンルートワーム、サザンコーンルートワーム等のコーンルートワーム類、ドウガネブイブイ、ヒメコガネ等のコガネムシ類、コクゾウムシ、イネミズゾウムシ、ワタミゾウムシ、アズキゾウムシ等のゾウムシ類、チャイロコメノゴミムシダマシ、コクヌストモドキ等のゴミムシダマシ類、イネドロオイムシ、キスジノミハムシ、ウリハムシ等のハムシ類、シバンムシ類、ニジュウヤホシテントウ等のエピラクナ属(Epilachna spp.)、ヒラタキクイムシ類、ナガシンクイムシ類、カミキリムシ類、アオバアリガタハネカクシ等
【0053】
総翅目害虫:ミナミキイロアザミウマ、ミカンキイロアザミウマ、ハナアザミウマ等
【0054】
直翅目害虫:ケラ、バッタ等
【0055】
ダニ類:コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニ等のヒョウヒダニ類、ケナガコナダニ、ムギコナダニ等のコナダニ類、チリニクダニ、イエニクダニ、サナアシニクダニ等のニクダニ類、クワガタツメダニ、フトツメダニ等のツメダニ類、ホコリダニ類、マルニクダニ類、イエササラダニ類、ナミハダニ、カンザワハダニ、ミカンハダニ、リンゴハダニ等のハダニ類、フタトゲチマダニ等のマダニ類。
【実施例】
【0056】
以下、製造例、試験例等により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。
【0057】
まず、本発明組成物の製造例を示す。部は重量部を示す。
【0058】
製造例1
本化合物A0.15部、エチレングリコールモノブチルエーテル29.85部及び水70部を混合し、攪拌することにより、液状組成物(以下、本発明組成物(1)と記す。)100部を得た。得られた本発明組成物(1)40gを、図1に示す薬液ボトル4に充填し、空隙率が50%である吸液芯を該組成物に浸漬されるように設置して、害虫防除材(1)を得た。
【0059】
製造例2
本化合物A0.15部、エチレングリコールモノブチルエーテル29.85部及び水70部を混合し、攪拌することにより、液状組成物(以下、本発明組成物(2)と記す。)100部を得た。得られた本発明組成物(2)40gを、図1に示す薬液ボトル4に充填し、空隙率が30%である吸液芯を該組成物に浸漬されるように設置して、害虫防除材(2)を得た。
【0060】
製造例3
本化合物A0.15部、エチレングリコールモノブチルエーテル29.85部及び水70部を混合し、攪拌することにより、液状組成物(以下、本発明組成物(3)と記す。)100部を得た。得られた本発明組成物(3)40gを、図1に示す薬液ボトル4に充填し、空隙率が20%である吸液芯を該組成物に浸漬されるように設置して、害虫防除材(3)を得た。
【0061】
製造例4
本化合物A0.15部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル29.85部及び水70部を混合し、攪拌することにより、液状組成物(以下、本発明組成物(4)と記す。)100部を得た。得られた本発明組成物(4)40gを、図1に示す薬液ボトル4に充填し、空隙率が50%である吸液芯を該組成物に浸漬されるように設置して、害虫防除材(4)を得た。
【0062】
製造例5
本化合物A0.15部、エチレングリコールモノブチルエーテル34.85部及び水65部を混合し、攪拌することにより、液状組成物(以下、本発明組成物(5)と記す。)100部を得た。得られた本発明組成物(5)40gを、図1に示す薬液ボトル4に充填し、空隙率が50%である吸液芯を該組成物に浸漬されるように設置して、害虫防除材(5)を得た。
【0063】
製造例6
本化合物B1.2部、エチレングリコールモノブチルエーテル33.8部及び水65部を混合し、攪拌することにより、液状組成物(以下、本発明組成物(6)と記す。)100部を得た。得られた本発明組成物(6)40gを、図1に示す薬液ボトル4に充填し、空隙率が50%である吸液芯を該組成物に浸漬されるように設置して、害虫防除材(6)を得た。
【0064】
製造例7
本化合物C0.6部、エチレングリコールモノブチルエーテル34.4部及び水65部を混合し、攪拌することにより、液状組成物(以下、本発明組成物(7)と記す。)100部を得た。得られた本発明組成物(7)40gを、図1に示す薬液ボトル4に充填し、空隙率が50%である吸液芯を該組成物に浸漬されるように設置して、害虫防除材(7)を得た。
【0065】
製造例8
本化合物A0.2部、エチレングリコールモノブチルエーテル19.8部、トリエチレングリコール10部及び水70部を混合し、攪拌することにより、液状組成物(以下、本発明組成物(8)と記す。)100部を得た。得られた本発明組成物(8)35gを、図1に示す薬液ボトル4に充填し、空隙率が30%である吸液芯を該組成物に浸漬されるように設置して、害虫防除材(8)を得た。
【0066】
製造例9
本化合物A0.2部、プロピレングリコールモノエチルエーテル39.8部、トリエチレングリコール10部及び水50部を混合し、攪拌することにより、液状組成物(以下、本発明組成物(9)と記す。)100部を得た。得られた本発明組成物(9)35gを、図1に示す薬液ボトル4に充填し、空隙率が30%である吸液芯を該組成物に浸漬されるように設置して、害虫防除材(9)を得た。
【0067】
製造例10
本化合物A0.2部、プロピレングリコールモノエチルエーテル39.8部、トリエチレングリコール10部及び水50部を混合し、攪拌することにより、液状組成物(以下、本発明組成物(10)と記す。)100部を得た。得られた本発明組成物(10)35gを、図1に示す薬液ボトル4に充填し、空隙率が50%である吸液芯を該組成物に浸漬されるように設置して、害虫防除材(10)を得た。
【0068】
製造例11
本化合物A0.2部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル29.8部、プロピレングリコール10部及び水60部を混合し、攪拌することにより、液状組成物(以下、本発明組成物(11)と記す。)100部を得た。得られた本発明組成物(11)35gを、図1に示す薬液ボトル4に充填し、空隙率が30%である吸液芯を該組成物に浸漬されるように設置して、害虫防除材(11)を得た。
【0069】
製造例12
本化合物A0.2部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル29.8部、ジプロピレングリコール10部及び水60部を混合し、攪拌することにより、液状組成物(以下、本発明組成物(12)と記す。)100部を得た。得られた本発明組成物(12)35gを、図1に示す薬液ボトル4に充填し、空隙率が30%である吸液芯を該組成物に浸漬されるように設置して、害虫防除材(12)を得た。
【0070】
製造例13
本化合物A0.2部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル29.8部、ジプロピレングリコール2部、トリエチレングリコール12部及び水56部を混合し、攪拌することにより、液状組成物(以下、本発明組成物(13)と記す。)100部を得た。得られた本発明組成物(13)35gを、図1に示す薬液ボトル4に充填し、空隙率が30%である吸液芯を該組成物に浸漬されるように設置して、害虫防除材(13)を得た。
【0071】
比較製造例1
本化合物A0.15部、エチレングリコールモノブチルエーテル9.85部及び水90部を混合し、攪拌することにより、液状組成物(以下、比較用組成物(1)と記す。)100部を得た。得られた比較用組成物(1)40gを、図1に示す薬液ボトル4に充填し、空隙率が65%である吸液芯を該組成物に浸漬されるように設置して、比較防除材(1)を得た。
【0072】
比較製造例2
本化合物A0.15部、エチレングリコールモノブチルエーテル53.85部及び水46部を混合し、攪拌することにより、液状組成物(以下、比較用組成物(2)と記す。)100部を得た。得られた比較用組成物(2)40gを、図1に示す薬液ボトル4に充填し、空隙率が20%である吸液芯を該組成物に浸漬されるように設置して、比較防除材(2)を得た。
【0073】
比較製造例3
本化合物A0.15部、エチレングリコールモノブチルエーテル9.85部及び水90部を混合し、攪拌することにより、液状組成物(以下、比較用組成物(3)と記す。)100部を得た。得られた比較用組成物(3)40gを、図1に示す薬液ボトル4に充填し、空隙率が70%である吸液芯を該組成物に浸漬されるように設置して、比較防除材(3)を得た。
【0074】
上記製造例により得られた害虫防除材(1)〜(7)及び比較防除材(1)〜(3)における、害虫防除成分、グリコールエーテル、及びa/bの値を、それぞれ表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
次に試験例を示す。
なお、以下の試験例においては、本化合物A、B及びCとして、以下の化合物をそれぞれ使用した。
本化合物A:[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(メトキシメチル)フェニル]メチル=(1R)−トランス−2,2−ジメチル−3−((Z)−1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート
本化合物B:[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルフェニル]メチル=(1R)−トランス−2,2−ジメチル−3−((Z)−1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート
本化合物C:(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)メチル=(1R)−トランス−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート
【0077】
試験例1
害虫防除材(1)に、図1に示すリング状ヒーターを設置して、吸液型加熱蒸散害虫防除装置を得た。図1に示すリング状ヒーター2に通電し、吸液芯の頂部周囲面を130℃に加熱した。加熱方法は、8時間連続加熱したあと、16時間加熱を止め、再び8時間連続加熱し、これを繰り返した。加熱開始後1、7及び14日目において、1時間あたりの本化合物Aの蒸散量を測定した。害虫防除材(1)の代わりに、害虫防除材(2)、(3)、(4)及び(5)、並びに、比較防除材(1)及び(2)を用いて、同様の試験を行い、本化合物Aの蒸散量を測定した。
なお、本化合物Aの蒸散量は、ヒーター全体にガラスファネルをかぶせ、ファネルに接続したシリカゲルカラムにより空気を吸収捕集し、その後、シリカゲルカラムをクロロホルムで抽出し、抽出液を濃縮したのち、ガスクロマトグラフにて内部標準法により本化合物Aを定量分析して求めた。
結果を表2に示す。
【0078】
【表2】

【0079】
試験例2
害虫防除材(5)に、図1に示すリング状ヒーターを設置して、吸液型加熱蒸散害虫防除装置を得た。図1に示すリング状ヒーター2に通電し、吸液芯の頂部周囲面を130℃に加熱した。4時間後、加熱を止め、該吸液型加熱蒸散害虫防除装置を、3.0m×4.0m×2.3mの直方体の試験室内(28m3)の床中央部に設置した。再度加熱し、加熱後すぐに、アカイエカ雌成虫約100匹を室内に放った。放虫後、一定時間後にノックダウンしたアカイエカの数を調査し、得られたデータからKT50(供試虫の50%がノックダウンするのに要する時間)を求めた。害虫防除材(5)の代わりに、害虫防除材(6)及び(7)、並びに、比較防除材(3)を用いて、同様の試験を行い、KT50を求めた。
結果を表3に示す。
【0080】
【表3】

【0081】
試験例3
害虫防除材(8)に、図1に示すリング状ヒーターを設置して、吸液型加熱蒸散害虫防除装置を得た。図1に示すリング状ヒーター2に通電し、吸液芯の頂部周囲面を130℃にて加熱した。20時間後、加熱を止め、該吸液型加熱蒸散害虫防除装置を、3.0m×4.0m×2.3mの直方体の試験室内(28m3)の床中央部に設置した。再度加熱し、加熱後すぐにアカイエカ雌成虫約100匹を室内に放った。放虫後、60分後にノックダウンしたアカイエカの数を調査し、60分後のノックダウン率を求めた。
害虫防除材(8)の代わりに、害虫防除材(9)及び(13)、並びに、比較防除材(1)を用いて、同様の試験を行い、60分後のノックダウン率を求めた。
結果を表4に示す。
【0082】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によれば、長時間にわたって安定して、水性害虫防除組成物を蒸散させることができ、安定した害虫防除効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0084】
1は水性害虫防除組成物、2はリング状ヒーター、3は吸液芯、4は薬液ボトルをそれぞれ示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
害虫防除成分、グリコールエーテル及び水を含有する水性害虫防除組成物と、該組成物に浸漬されるように設けられた吸液芯とを備える加熱蒸散用害虫防除材であって、グリコールエーテルの該組成物全量に対する含有量をa(重量%)とし、該芯の空隙率をb(%)としたときに、aとbとが下式を満たすことを特徴とする加熱蒸散用害虫防除材。
式:0.17≦a/b≦2.5
【請求項2】
吸液芯の空隙率が、20〜60%である請求項1記載の加熱蒸散用害虫防除材。
【請求項3】
グリコールエーテルが、エチレングリコール系エーテル及びプロピレングリコール系エーテルからなる群より選ばれる1種以上である請求項1又は2記載の加熱蒸散用害虫防除材。
【請求項4】
グリコールエーテルが、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル及びプロピレングリコールモノプロピルエーテルからなる群より選ばれる1種以上である請求項1〜3いずれか1項記載の加熱蒸散用害虫防除材。
【請求項5】
グリコールエーテルの含有量が、組成物全量に対して10〜50重量%である請求項1〜4いずれか1項記載の加熱蒸散用害虫防除材。
【請求項6】
害虫防除成分が、ピレスロイド化合物である請求項1〜5いずれか1項記載の加熱蒸散用害虫防除材。
【請求項7】
害虫防除成分が、式(1)

〔式中、R1及びR2は同一又は相異なり水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又は塩素原子を表し、R3は水素原子、メチル基又はメトキシメチル基を表す。〕
で示されるエステル化合物である請求項1〜6いずれか1項記載の加熱蒸散用害虫防除材。
【請求項8】
式(1)示されるエステル化合物が、[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(メトキシメチル)フェニル]メチル=2,2−ジメチル−3−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート、[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルフェニル]メチル=2,2−ジメチル−3−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート、(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)メチル=3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(メトキシメチル)フェニル]メチル=3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(メトキシメチル)フェニル]メチル=2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート及び[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(メトキシメチル)フェニル]メチル=3−(3,3,3−トリフルオロ−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレートからなる群より選ばれる1種以上である請求項7に記載の加熱蒸散用害虫防除材。
【請求項9】
水の含有量が、組成物全量に対して20〜85重量%である請求項1〜8いずれか1項記載の加熱蒸散用害虫防除材。
【請求項10】
水性害虫防除組成物が、グリコールをさらに含有する水性害虫防除組成物である請求項1〜9いずれか1項記載の加熱蒸散用害虫防除材。
【請求項11】
グリコールが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール及びテトラエチレングリコールからなる群より選ばれる1種以上である請求項10記載の加熱蒸散用害虫防除材。
【請求項12】
グリコールが、トリエチレングリコール、プロピレングリコール及びジプロピレングリコールからなる群より選ばれる1種以上である請求項10又は11記載の加熱蒸散用害虫防除材。
【請求項13】
グリコールの含有量が、組成物全量に対して1〜45重量%である請求項10〜12いずれか1項記載の加熱蒸散用害虫防除材。
【請求項14】
請求項1〜13いずれか1項記載の加熱蒸散用害虫防除材を用いた加熱蒸散害虫防除方法であって、水性害虫防除組成物中に、吸液芯の一方の端部を浸漬させ、該芯に該組成物を吸液させると共に、該芯の他方の端部の周囲を加熱して、吸液された該組成物を蒸散させることを特徴とする加熱蒸散害虫防除方法。
【請求項15】
請求項1〜13いずれか1項記載の加熱蒸散用害虫防除材を用いた加熱蒸散害虫防除装置であって、水性害虫防除組成物が充填された薬液ボトルと、該組成物に浸漬されるように設けられた吸液芯と、該芯の一部を加熱するためのヒーターとを備える吸液型加熱蒸散害虫防除装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−176947(P2012−176947A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−20551(P2012−20551)
【出願日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】