説明

加熱調理された穀物のテクスチャを測定する方法及び装置

ダール及び米の加熱調理の終点を優れた再現性で評価する方法と装置を開示する。豆類は一般にそのダールを加熱調理して柔らかなテクスチャにした後に食される。ダール、米などの加熱調理の終点は非常に主観的な方法で測定されており現行の方法はあまり満足のいく方法ではない。ダール及び米などの加熱調理の終点を優れた再現性で評価する独創的な装置と客観的な方法を開発した。この装置と方法はダール及び米を逐次加熱調理しながらその「拡張面積」を測定しその加熱調理時間をプロットしたグラフから読み取る原理に基づいている。上記目的を目指して開発した装置は所望の圧縮力を加熱調理された穀物に加えるのに使用することができそして穀物が拡張した面積は適切なグラフ用紙から正方形のますめを計数することによって測定されその「拡張面積」を加熱調理期間に対してプロットすると逐次増大することが観察された。拡張面積が急激に増大した時間又はグラフの曲線の勾配が変化した時間(急激な屈折/一定値化)は加熱調理されている試料(ダール/米)の加熱調理時間とみなした。本願で報告した方法は機器による標準の方法によって完全に立証されている。本発明はダール及び米の加熱調理の終点を優れた再現性で評価する客観的でかつ信頼性の高い方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理された穀物のテクスチャを測定する方法及び装置に関する。詳しく述べると、本発明は、加熱調理されたダール(dhals)(さやを除いて引き割られた豆(dehusked split pulse))のテクスチャを測定する装置に関する。
【0002】
本発明は、加熱調理された穀物に所定の荷重を加えて、その穀物が拡張した面積を測定し、その面積を拡張面積(Spread Area)として計算することに基づいている。豆類(pulses)、特にレッドグラム(red gram)(tur)、ベンガルグラム(Bengal gram)(channa)、グリーングラム(green gram)(mung)及びブラックグラム(black gram)(urad)は、主として加熱調理してソフトテクスチャにした後に「ダール」(さやを除いてひき割られた豆)の形態で食される。
【背景技術】
【0003】
豆類又はダールの加熱調理特性が、異種の豆の間及び同種の豆の異なる変種の間でさえも大きく変化することが観察されている。ダールの加熱調理特性を正確に評価することは、常に難しい作業であった。現行の方法は非常に主観的である。一般に、ダールの加熱調理特性は、加熱調理時間、すなわちダールが所望の柔らかなテクスチャになって食べられるようになるまで、ダールを過剰の水中で煮沸する時間の関数である。加熱調理特性は、吸水量、加熱調理後の体積の増加、水中への固形物の分散度及び加熱調理中のテクスチャ軟化度の関数として示されて来ており、これら特性のうちいくつかは、加熱調理の指標として利用され得た。テクスチャが軟化する加熱調理の終点は、加熱調理されたダールを、2枚のスライドガラスの間で加圧することによって判定され、「硬い芯がなくなる」時間とされている。明らかにこれはまったく主観的なので、分析者ごとに変動し、また容易に定量できない。同様に、米の加熱調理の終点は、通常、加熱調理された米を2枚のスライドガラスの間で加圧することによって判定され、白色の芯が消失する時間が米の加熱調理時間とされている。しかし、これも全く主観的であり、加熱調理された穀物(ダール/米)のテクスチャを直接測定する定量法を提供していない。この特性を求めるため利用できる文献及びそれらの限界についてここで総括する。
【0004】
いくつかの種類のダールの加熱調理特性に対する加熱調理条件と化学薬剤の作用について研究したSubba Raoらの刊行物(1964年)を参照することができる。彼等は、加熱調理時間によって加熱調理特性を評価する方法について述べた。加熱調理中に分散される固形物の量が、ダールとして加熱調理されるときの豆類の加熱調理性の尺度として利用できるという提案もされた。彼等は、異なるダールが加熱調理中に異なる程度に分散し、その結果異なるダールの加熱調理性を比較する方法として利用できることを示した。しかしながら、この方法は加熱調理された穀物のテクスチャを測定する方法を提供しない。
【0005】
NarasimhaとDesikachar(1978年)は、tur豆類(Cajanus cajan)の16種類の変種由来のダールの加熱調理特性を、グリーングラムとホースグラム(horse gram)由来のダールの加熱調理特性と比較・研究して、加熱調理中に分散する固形分の百分率(%DS)がそのダールの加熱調理時間と良好に相関していることを示した。ダールとして加熱調理したときのturの加熱調理特性の客観的尺度としてこれが利用できることが示唆され、そして%DSが加熱調理されているダールの加熱調理時間と良好に相関しているため、ダールの特定の加熱処理時点での分散された固形分の測定が、異なる豆類の加熱調理性を比較するのに利用できることが示された。この方法はダールとして調理したときの異なる豆類の加熱調理性を比較する方法を提供するが、この特性を直接測定する方法を提供しない。
【0006】
ファバビーン(faba bean)(ビシア・ファバ(Vicia faba))の加熱調理特性を測定するための各種方法を調査したYusufとTabeyの刊行物(1981年)を参照することができる。それらの方法には、成熟度測定器(tenderometer)、浸透度計(penetrometer)を使用する主観的方法が含まれ、これらの方法は測定値を加熱調理特性に良好に関連付けている。しかし、これらの方法はすべて、加熱調理された穀物を圧縮したり又は水を浸透させたりすることに基づいた方法であり、全粒穀物にしか適用できず、加熱調理された穀物を50%圧縮するのに必要な力を、テクスチャに関連付けている。これらの方法は、厚さが小さいことと、全粒穀物とそのダールの間には加熱調理のパターンに差があるのでダールには適用できない。
【0007】
大豆(soya bean)由来の加熱調理されたダールの硬さ(firmness)を測定するのにChopin−INRAの粘弾性グラフを使うというPratapeとNarasimhaが提案した方法(1994年)を参照することができる。但し、この方法は、加熱調理中に形が崩れない(非分散型)ダールには一層適しているので、十分に加熱調理される前の段階のダールに適用できる。さらにその装置は、非常に精巧で高価であるから、わが国のような国のすべての研究所が容易には入手することができず、かつ取り扱うには専門知識が必要である。したがって、この装置は日常的に使用するのにあまり適していない。さらに、この方法は、圧縮抵抗及び加熱調理された穀物に加えた力を解除したときの弾性回復に基づいているので、ダールよりむしろ全粒穀物に適している。
【0008】
黄ササゲ豆(yellow cowpeas)の加熱調理性を測定する「Bean cooker」と呼称される装置について述べるMatsonの刊行物(1946年)を参照することができる。この装置は、一ロッドが加熱調理されている各豆の試料の上に配置されている100プランジャーベースのユニットからなり、その装置全体が沸騰水浴中に保持されている。逐次(progressive)加熱調理で水が浸透した豆の数を計数し、50%の穀物に水が浸透した時間を、加熱調理時間とした。このユニットの限界は、多くのダールと全粒豆が、水和作用だけによってさえ柔らかくなるので、加熱調理された場合のテクスチャに到達してなくても容易に水が浸透することである。この方法は、加熱調理時間の判定を間違えるので、加熱調理されたコチレドン(cotyledon)/ダールのテクスチャを測定する場合の要件をあまり満たしていない。Chinnan(1985年)は、電子測定装置を導入することによって、上記装置を、加熱調理された豆の硬さを測定するように改良した。しかしこの改良装置にも、やはり前記欠点がある。
【0009】
米は、加熱調理して柔らかいテクスチャにした後の穀物形態で食することが多い別のもう一つのセリアル穀物(cereal grain)である。加熱調理された米のテクスチャの柔らかさを判定する試みがいくつかなされており、ここで概説する。加熱調理された米を2枚のスライドガラスの間で圧縮してその白色の芯が消失する時間を観察して、その時間を加熱調理時間とすることを提案している、Ranghinoの刊行物(1966年)を参照することができる。しかし、この方法は、非常に主観的なので(測定者ごとに変動する)、加熱調理された米のテクスチャの定量的な尺度を提供しない。
【0010】
衝撃圧縮装置について述べているPillaiyarとMohandossの刊行物(1981年)を参照することができる。この場合、軟鋼製シャフトを、所定の高さ(10cm又は15cm)から、加熱調理された米がおかれているガラス板の上に瞬時に落下させて、生成した圧縮面積がプラニメーター(planimeter)で測定される。別途に準備したパーボイルドライス(parboiled rice)の試料について圧縮面積を測定して、それらの感覚特性が関連付けられた。彼等は、加熱調理された米の圧縮面積と対応する生の穀物のL/B比との関係を示して、この方法が、異なる方法で処理されたパーボイルドライスの試料を識別するのに使用できることを示唆した。しかし、これらの著者は、加熱調理されている米の加熱調理時間を客観的に測定する方法を提案していない。さらに、この場合に使用される衝撃システムは、加熱調理された前記穀物に大きな機械的損傷を起こしたので加熱調理の終点を判定するのに利用できなかった。
【0011】
SowbhagyaとAli(1990年)は、加熱調理された米が、約72%(wb)の最終水分になり、硬さ(%F)と粘弾性図で測定した膨張比とを良好に関連付けることができることを示唆した。その穀物は、F値が約70%になったとき「加熱調理された」とみなすことできるということが示唆された。この方法は、PratapeとNarasimhaの方法(1994年)で加熱調理された大豆の硬さを測定するのに利用できることが示された。しかし、これらの試験法は、複雑であり、装置を入手できないため、日常的に使用するのに適していない。
【0012】
したがって、日常的な評価に利用できる、米やダールなど穀物の加熱調理の終点を判定する簡単な装置と客観的な方法の発明が要望されている。先に述べた方法の大部分は、加熱調理された穀物(ダールと米)のテクスチャの柔らかさ(調理状態又は加熱調理の終点)を客観的に直接測定する方法を提供しておらず、本発明がこのギャップを埋める。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の主要な目的は、加熱調理の異なる段階で穀物を圧縮し、穀物の拡張する面積を測定して、その面積を加熱調理期間に関連付けることによって、穀物のテクスチャの柔らかさを直接測定する方法を開発することである。
【0014】
本発明の別の目的は、加熱調理期間に対する「拡張面積」(Spread Area(SA))(mm2)を得ることである。
【0015】
本発明の別の目的は、加熱調理を行った後、規格重量下で、米又はダールの拡張面積を最も適切に測定することである。
【0016】
本発明の別の目的は、「拡張面積」と「加熱調理時間」の関係を確立して、逐次加熱調理中に米のみならずダールのテクスチャを直接測定する方法を提供することである。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、各種のダール及び米などの他の穀物のテクスチャを、SAによって測定して、各種のダールの試料の拡張面積と加熱調理時間の関係を得るために開発された装置を使用することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のこれらの目的及び他の目的は、「拡張面積」(Spread Area(SA))(mm2)の加熱調理期間に対するグラフが得られるようにする装置を提供することによって達成される。拡張面積が一定になった時点、又は場合によっては前記曲線の勾配が急変したことが観察された時点が、加熱調理時間として表示される。このことは、加熱調理された穀物の「調理状態」又は加熱調理の終点を決定する全く新しい概念である。
【0019】
本発明は、特定の力又は荷重を加える新たに開発された装置を使って、加熱調理された穀物(ダール/米)の「拡張面積」が決定される、ダール(さやを除いて引き割られた各種の豆)および米などの穀物の加熱調理の終点を決定するための簡単な装置を提供する。本発明の圧縮装置は、ラム、復元ばね支柱リンク(restoring spring fulcrum link)及びレバーからなる圧縮機構からなり、その圧縮機構は鋳鉄製ハウジング、重量負荷プラットホームに取り付けられている。その圧縮機構は、除くことができる錘の所定の荷重によって作動する。拡張面積は、その画像をスクリーンに投射して、適当なグラフ用紙を重ね、次いでカウントすることによってその面積をmm2で測定する。このデータから、加熱調理時間を、曲線の傾斜が変化した時間として、グラフから読み取る。
【0020】
かくして、本発明によって、穀物の加熱調理の終点を決定するための以下のような装置が提供される。すなわち、ハウジングに取り付けられてそのハウジング内で直線的に移動するように適合されたラム又はプランジャー、そのラムに一方の末端が接続されて前記ハウジングに取り付けられそして他方の末端が自由末端でありかつ所定の荷重の錘を受け取る負荷手段を保持するレバー、一対のプレートが上に置かれている前記ハウジングの底部のプラットホームを備えてなり、加熱調理の終点を測定すべき穀物の試料所定が前記プレートの間に配置されており、所定の荷重の錘を受け取る手段に所定の荷重の錘を加えて前記レバーを下方に押し下げて、前記一対のプレートに対して下方に前記ラムを押し付けさせて、前記穀物の「拡張面積」を規則的な時間間隔で決定し測定することができるように、プレート間に入っている前記試料穀物を圧縮して拡張を生じさせるものであり、そのときに前記穀物の加熱調理時間の指標である前記拡張面積における急激な増加又は一定値の到達が観測される、装置が提供される。
【0021】
また、本発明は、試料の穀物を2枚のプレートの間に配置し、所定の荷重の錘を前記一対のプレートに対して所定の期間作用させ、前記穀物を前記一対のプレートの間で拡張させ、規則的な時間間隔をおいて前記穀物の「拡張面積」を決定し測定し、前記穀物の加熱調理時間の指標である、拡張面積の急激な増加又は一定値化が観察された時間を観察することからなる穀物の加熱調理の終点を決定する方法も提供する。
【0022】
本発明のある実施態様では、前記レバーは、支柱を通じて前記ハウジングに取り付けられている。
【0023】
本発明のある実施態様では、前記レバーは、ばね手段を通じて前記ハウジングに取り付けられ、試料の穀物に力を加えた後、ラムをその元の位置に戻す。
【0024】
好ましくは、上記要素の全アセンブリは、安定した操作と操作しやすさを目的として、木製などの便利なベースIの上に取り付けられている。
【0025】
本発明のある実施態様では、圧縮は、徐々に行われ、そして本発明の装置の機械的機構又は液圧機構などの適切な装置で達成することができ、荷重(錘)の追加又は取外しは、手作業で又は代わりの装置で行うことができる。
【0026】
本発明のある実施態様では、装置が、ラムに取り付けられた拡張ディスク上に均一な荷重を適切に配置することによって、加熱調理されたダール又は米の2つ以上の穀物を同時に圧縮するように製造される。
【0027】
本発明のある実施態様では、前記錘又は前記レバーの寸法又は前記支柱の位置又はレバーのタイプ又は本発明の装置で圧縮するために使用される上記のものすべてを変えることによって、加熱調理された穀物に加える力を変化させても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
添付図面を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。
【0029】
本発明の装置1は、下記要素で本質的に構成されている。
A: 負荷プラットホームからラムに荷重を伝達するため一方の、末端が蝶着されもう一方の末端が自由末端であるレバー
B: 所定の荷重の錘を受けとって、所望の荷重で試料を圧縮する手段(負荷プラットホーム)
C: 荷重を除いたときに、前記ラムを、元の位置に迅速に戻しやすくする復元ばね;
D: 前記荷重を、レバーAから試料に伝達するための、ラム又はピストンロッド又はプランジャー
E: 試料、すなわち所望のレベルまで加熱調理された穀物
F: 穀物を間にはさんで拡張させてその拡張面積を測定できるようにする、好ましくはガラス製のプレート
G: 構成材料が鋳鉄などの材料であり、前記要素を収納して作動しやすくしかつ安定性を確保するハウジング
H: レバーAとハウジングGを接続する支柱リンク
I: 構成材料が木材などであり、操作しやすくするため安定性を確保するベース
【0030】
図1に示す装置は、ハウジングG内で直線的に移動するラム(プランジャー、ピストン)Dを備えている。レバーAは、その一方の末端に接続された支柱リンクHを通じて前記ハウジングに蝶着され、レバーAの他方の自由末端は、上に所定の荷重の錘を置くための負荷プラットホームBなどを保持している。プラットホームBに既知の錘を加えると、レバーAは下方に押し下げられて、順に、レバーAとハウジングGの間にラムDと同心に配置されたばねCの復元力に抗して、ラムDを下方に押し付ける。このようにラムDが下方に移動すると、適切な厚さの2枚のガラス板Fの間に又は他の適切な材料の他の適切なプレートの間に保持された加熱調理された試料Eを圧縮する。前記要素の全アセンブリは、安定性と操作のしやすさを目的として木製などの便利なベースIの上に取り付けられている。
【0031】
本発明の別の実施態様では、ラムが徐々に下降して、テクスチャを測定すべき加熱調理されたダール/米が保持されているベースと緩やかに接触する。その穀物は、所定の一定荷重下で30秒間圧縮される。
【0032】
本発明の別の実施態様では、前記圧縮末端に取り付けられたディスクは、一つ以上の穀物(ダール/米)を同時に圧縮するのに十分な大きさであり得る。
【0033】
本発明の別の実施態様では、必要になったときに、種々の穀物を圧縮するのに必要な荷重に対応して、追加の錘を加えたり、又はいくつかの錘を除くことが容易に実施できるようにしても良い。
【0034】
種々の期間加熱調理された穀物(ダール又は米)を、30分間保持した後、2枚のガラス板(F)の間に配置する。そのアセンブリをラム(D)の下に保持する。圧縮するのに必要な錘(B)は、圧縮操作を行う前に、特定の穀物(ダール/米)については規格化され得る。加熱調理された穀物は、所定の錘で30秒間圧縮され、次いでフックから錘(B)を取り外すことによって圧縮操作を停止する。加熱調理されたダール又は米の「拡張面積」を一定の時間間隔(約5分間)をおいて決定して測定する。しかし、その「拡張面積」は、加熱調理されている穀物の主観的に決定された加熱調理時間(SCT)の近くで1分毎に測定される。その拡張面積が急に増大し、又は一定値になったことが観察されたときの時間を、試験中のダール又は米の試料(E)の加熱調理時間とみなした。各種穀物に必要な荷重が規格化して下記表に示されるが、その表には、それぞれの加熱調理時間における加熱調理された穀物の拡張面積を示してある。
【0035】
テクスチャ測定システム(UTM)と比べた、前記圧縮装置での加熱調理時間と最適化パラメーターの関係を下記表に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
各種のダールと米について集めたデータをプロットして加熱調理時間と拡張面積との関係を図2に示した。線の勾配が急激に変化する点が試料の加熱調理時間と一致することが分かったので、その時間を、加熱調理されているダール又は米の「加熱調理時間」とすることとができる。このことを、UTMシステムのような他の規格化された方法と比較した。加熱調理されたダールの試料を50%圧縮するのに要する力(N)の値は、前記の新しい装置を使って測定した値と良好に一致した。
【実施例】
【0038】
以下の諸実施例は、例示することを目的として提供するものであり、加熱調理されているどの穀物にも適用できるので、本発明の範囲を限定するとみなすべきではない。
【0039】
実施例1
莢を除いて洗浄したturのダールの試料を、加熱調理性の試験に供した。10gの試料を、過剰の沸騰水(100ml)中に投入し5分間隔で取り出し、先に示したような500gの選択された錘を利用し、前記圧縮装置を使って「拡張面積」を測定した。その拡張面積は、約43mm2(最初に浸漬した試料)から、25分間で59mm2まで徐々に増大し、次いで続く10分間でその59mm2から63mm2まで増大した。したがって、25分から35分まで2分間隔で試験を繰り返して、拡張面積/加熱調理時間のグラフを得た。加熱調理時間は、拡張面積が約62mm2という一定の値に到達した時間とした。加熱調理されているturのダールの試料の前記主観的な加熱調理時間は約28分であり、一定値になる傾向が図2に示すグラフに見られる時点と良好に一致したので、この方法が、加熱調理されているturのダールの加熱調理時間の客観的測定法として使用できることを示している。
【0040】
実施例2
莢を除いて洗浄したグリーングラムのダールの試料10gを、加熱調理性について、300gの選択された錘とともに先に示した上記装置を使って試験した。加熱調理したダールの試料を、5分間隔で取り出し、実施例1に示したようにして拡張面積を測定した。その拡張面積は、18分間で約25mm2まで徐々に増大し、次いで続く2分間で25mm2から28mm2まで増大した。18〜19分において約27〜28mm2の拡張面積を示して屈折が起こった時点を加熱調理時間とみなし、これは約18分というその主観的加熱調理時間と一致している(図2)。その拡張面積の測定値は、実験を繰り返して確認した。
【0041】
実施例3
莢を除いて洗浄したホースグラムのダールの試料10gの加熱調理時間に対する拡張面積を、700gの選択された錘とともに先に示した上記装置を使って測定した。その拡張面積は、40分間で20mm2から26mm2まで徐々に増大し次いで続く10分間で26mm2から36mm2まで増大し、これはほぼこの時間でテクチャの柔らかさと調理状態を達成したことを示している。このように、36mm2という拡張面積は、50分の加熱調理時間で得られたが、これはホースグラムのダールの主観的な知覚加熱調理時間と一致している(図2)。この試験は繰り返し行って試験結果を確認した。
【0042】
実施例4
洗浄した白米10gの加熱調理時間に対する拡張面積を、原料米に対して300gの選択された錘とともに上記装置を使って測定した。その拡張面積は、約16分間の加熱調理で10mm2から134mm2まで徐々に増大し、次いで18分間の加熱調理で149mm2まで増大した。拡張面積が急激に増大した時間は、グラフから、18分間の加熱調理時間と読み取ることができた。これは従来の方法で判定した加熱調理時間と正確に一致した。
【0043】
実施例5
洗浄し通常の湯通しをした米(parboiled rice)10gを、100mlの湯中で加熱調理して、500gの最適荷重とともに上記装置を使って、加熱調理時間に対する拡張面積を測定した。拡張面積は、約25分間の加熱調理によって、徐々に19mm2から94mm2まで増大し次いで27分間の加熱調理で112mm2まで増大し、そして続いて3分間加熱調理することによって約136mm2まで増大した。しかし、加熱調理35分間では、拡張面積は変化しないままであった。拡張面積が一定値になったことをグラフの曲線が示した時間は、グラフから、加熱調理時間30分と読み取ることができた。この時間は、従来の方法によって判定された加熱調理時間28分とほぼ一致した(図2)。
【0044】
拡張面積の急激な変化(又は、場合によっては一定の状態)は、加熱調理されている穀物の知覚による加熱調理時間又はその近傍で起こり、テクスチャの柔らかさと加熱調理状態が達成された時間に対応していることが上記実施例で分かる。したがって、この方法は、加熱調理された各種豆類のダールや米などの加熱調理された穀物の調理状態を評価する客観的な方法とみなすことができる。
【0045】
本発明の新規性は、加熱調理された穀物(米/ダール)の所定の荷重下での拡張面積を、加熱調理の終点を決定する客観的な方法として、初めて利用したことである。この方法は、加熱調理の終点(固い芯/不透明な領域の不在)を評価するために、これまで実施されているような指又はスライドガラスの間で加熱調理された穀物を圧縮するという主観性を排除している。
【0046】
本発明の主な利点と新規性は、以下の通りである。
1. 各種豆類由来のダール、米などの穀物を含む穀物の加熱調理特性を測定するため開発した本発明の装置は、全く簡便で操作しやすい。
2. 加熱調理された穀物を指定の錘/力で圧縮することによって、テクスチャの柔らかさを試験する際に、主観性を排除して、穀物の調理状態又は加熱調理の終点を拡張面積で直接測定できる。
3. 特定のダールの予め決定された拡張面積は、別の標準の機器による測定法を校正するのに利用できる。
4. 本発明の装置は、穀物(米の変種、各種豆類のダールなどの穀物)の加熱調理性を、実験室で日常的に評価するのに採用できる。
【0047】
文献:
1.Subba Rao PV, Ananthachar TK, Desikachar HSR (1964) Effect of certain chemicals and pressure on cookability of pulses. Indian J Technol 2 (12): 417-418.
2.Narasimha HV, Desikachar HSR (1978a) Objective methods of studying cookability of tur pulse (Cajanus cajan) and factors affecting varietal differences in cooking. J Food Sci Technol 15: 47-50.
3.Laignelet B, Feillet P 91979) use of viscoelastrgraph for measuring the texture of cooked rice. In: Proceedings of Chemical Aspects of Rice Grain Quality. International Rice Research Institute, Los Banos, Laguna, Phillippines, pp 355-361.
4.Ranghino, F. 1966. Valutazione della resistenza del riso alla cottura, in base al tempo digelatinizzazione del granelli. Riso 15: 117-127.
5.Pillayar P. and Mohandoss R (1981) A pressing device to measure the texture of cooked rice. Journal of Texture Studies, (12) 473.
6.Sowbhagya CM, Ali SZ, (1991) Effect of presoaking on cooking time and texture of raw and parboiled rice J. Food Sci. Technol 28(2) 76-80.
7.Pratape VM, Narasimha HV, (1994) Processing of soybean for use as dhal. J. Food Sci. Technol, 31 (5) 423-425.
8.Youssef MM, El-Tabey AM, (1981) Cooking Quality of faba beans (Viciafaba). Newsletter, Faba-Bean-Information-Service, No.3, 16-17.
9.Chinnan MS, (1985) Development of a device for quantifying hard-to-cook phenomenon in cereal legumes, transactions-of-the-ASAE; 28(1) 335-339.
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の装置の概略図である。
【図2】本発明の方法及び従来技術の方法によって穀物の加熱調理の終点を測定し比較して示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物の加熱調理の終点を決定する方法であって、試料穀物を2枚のプレートの間に配置すること、所定の荷重の錘を前記一対のプレートに対して所定の期間適用させて前記穀物に前記一対のプレートの間で拡張させること、前記穀物の「拡張面積」を決定すること、および規則的な時間間隔をおいてそれを測定することを含み、そのときに前記穀物の加熱調理時間の指標である、前記拡張面積における急激な増加又は一定値の到達が観測される、方法。
【請求項2】
前記穀物が、加熱調理された豆類又は米である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
穀物の加熱調理の終点を決定するための装置であって、ハウジングに取り付けられて前記ハウジング内で直線的に移動するように適合されたラム又はプランジャー、前記ラムに一方の末端が接続されて前記ハウジングに取り付けられ、そして他方の末端が自由末端でありかつ所定の荷重の錘を受け取る負荷手段を保持するレバー、一対のプレートが上に置かれている前記ハウジングの底部のプラットホーム、および前記プレートの間に配置される加熱調理の終点を測定すべき試料穀物を備えてなり、所定の荷重の錘を受け取る手段に所定の荷重の錘を加えて前記レバーを下方に押し下げて、前記一対のプレートに対して下方に前記ラムを押し付けさせて、前記穀物の「拡張面積」を規則的な時間間隔で決定し測定することができるように、プレート間に入っている前記試料穀物を圧縮して拡張を生じさせるものであり、そのときに前記穀物の加熱調理時間の指標である前記拡張面積における急激な増加又は一定値の到達が観測される、装置。
【請求項4】
前記レバーが、支柱を通じて前記ハウジングに取り付けられている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記レバーが、力を前記試料穀物に加えた後、前記ラムをその元の位置に戻すように、ばね手段を通じて前記ハウジングに取り付けられている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
ベースの上に取り付けられている、請求項4に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−528482(P2007−528482A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512742(P2005−512742)
【出願日】平成15年12月31日(2003.12.31)
【国際出願番号】PCT/IN2003/000443
【国際公開番号】WO2005/064310
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(595059872)カウンシル オブ サイエンティフィク アンド インダストリアル リサーチ (81)
【Fターム(参考)】