説明

加熱調理器

【課題】 トレーの出し入れをスムーズに行うことを可能にした加熱調理器を提供する。
【解決手段】 前面に開口部を有し、加熱体が配設された直方体状の調理庫40と、調理庫40内を前後にスライド自在に可動し、開口部を開閉自在に覆うグリル扉20と、グリル扉20に取付けられ、上面が開口し、開口の縁にフランジ部35が形成されたトレー30とを備え、フランジ部35と調理庫40の内壁側との間に、グリル扉20のスライド方向に沿って弾性体50を介在させたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロースターグリルを備えた加熱調理器に関し、特に、トレーを出し入れする際の機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の加熱調理器においては、トレーの出し入れをスムーズに行うことができるようにするものとして、例えば「グリル庫2とグリル皿3と、扉と把手が一体となったグリル扉5と、前記グリル皿3を保持し前記グリル扉5に固定された線状のグリル皿保持装置6と前記グリル皿保持装置6の接触部6b、6cを内接せしめるU字状溝7aを設けた前記グリル庫2に固定されたガイド金具7を備える。」ようにしたものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−27691号公報(要約、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の従来の加熱調理器は、ガイド金具のU字状溝に、グリル扉に固定された線状のグリル皿保持装置の接触部を内接させるようにしたものであるが、ガイド金具のU字状溝とグリル皿保持装置との間、特にその左右方向には隙間があり、グリル皿保持装置の出し入れの際にガタついて出し入れをスムーズに行うことができなかった。
【0004】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、トレーの出し入れをスムーズに行うことを可能にした加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る加熱調理器は、前面に開口部を有し、加熱体が配設された直方体状の調理庫と、該調理庫内を前後にスライド自在に可動し、前記開口部を開閉自在に覆うグリル扉と、該グリル扉に取付けられ、上面が開口し、該開口の縁にフランジ部が形成されたトレーとを備え、前記フランジ部と前記調理庫の内壁側との間に、前記グリル扉のスライド方向に沿って弾性体を介在させたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、フランジ部と調理庫の内壁側との間に、グリル扉のスライド方向に沿って弾性体を介在させており、フランジ部がその内側に弾性付勢されているので、ガタつきがなくなっており、このため、トレーの出し入れがスムーズに行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の斜視図であり、図2はグリル扉を引き出した状態を示す斜視図である。加熱調理器1は、上部が開口された箱状の本体部2と、周囲に枠材4が設けられ、本体部2の上部の開口部を覆って着脱可能に装着されたトッププレート(天板)3とを備えている。そして、トッププレート3上には、調理鍋等を載置する載置部5a,5b,5c、火力表示部6a,6b,6c、液晶表示部7a,7b,7c、上面操作部9a等が設けられている。また、トッププレート3の奥側には吸気口8a,排気口8bがそれぞれ設けられている。本体部2内には、何れも図示しないが、トッププレート3の載置部5a〜5cに対応して左電磁誘導加熱コイル、右電磁誘導加熱コイル及び中央ヒーター(例えばラジエントヒーター)からなる加熱部が設置されており、さらに、これら加熱部を制御する制御部、さらには加熱部や制御部を冷却する冷却ファン等が設けられている。また、本体部2の前面側には電源スイッチ等を有する正面操作部9bが設けられており、この正面操作部9bに隣接して本体部2の前面側にロースターグリル10が設けられている。
【0008】
このロースターグリル10は、グリル扉20、トレー30及び調理庫40から構成されており、調理庫40のトッププレート3側には上ヒータ(図3参照)が設けられており、下部には、底部とすき間を隔ててほぼW字状に形成された下ヒータ(図3参照)が設けられている。このロースターグリル10の構成を図3〜図7に基づいて説明する。なお、ロースターグリルはグリルロースター又はグリルとも称されるが、本実施の形態においてはロースターグリルと称するものとする。
【0009】
図3はロースターグリル10の分解斜視図、図4はグリル扉20にトレー30を載置した状態の説明図であり、図5は調理庫本体の斜視図である。なお、図5においては上ヒーター及び上ヒーターの図示は省略されている。グリル扉20は、中央部分にガラス板21aが装着された扉本体21と、扉本体21の正面下部に設けられたハンドル22と、扉本体21から延出し、トレー(焼き皿)が載置されるフレーム23とから構成されている。トレー(焼き皿)30はその上面に焼き網31が載置される凹部32が形成されており、その凹部32の表面には、焼き網固定凸部33及びトレー掛かり部34が形成されている(図4参照)。
【0010】
焼き網固定凸部33は焼き網31の位置決め又はストッパーとして機能するものであり、焼き網31の後端部が焼き網固定凸部33に係合することでその奥行き方向の位置が規定される。トレー掛かり部34は凹部状に形成されており(下方に突起している)、これは、グリル扉20を引き出したときに、後述の庫内掛かり部47と係合するものである。なお、トレー掛かり部34は焼き網固定凸部33よりも後部に形成されている。また、トレー30の凹部32の周辺部にはフランジ35が形成されている。このトレー30のフランジ35がグリル扉20のフレーム23上に載置されることによりグリル扉20にトレー30が装着されることになり、そして、トレー30の凹部32に焼き網31が載置された状態で調理庫40に挿入される。
【0011】
調理庫40は、前面に開口部41を有し、上ヒーター42及び下ヒーター43からなる加熱体が設けられた直方体状からなり、その両側壁には内側にそれぞれ突出したリブ44a,44b、45a,45bが形成されており、これらのリブ44a,44b、45a,45bにより1対のレール44,45が形成されている。また、調理庫40の奥面の下方の一部には外方に突出して形成された収納室46が形成されている。この収納室46の長さ(奥行き寸法)は、グリル扉20を引き出したときに、焼き網31が調理庫40の開口部41より外側に出るのに必要な長さにするものとする。また、調理庫40の開口部41側の底部には突起した複数の庫内掛かり部47が設けられており、これはグリル扉20を引き出したときに、トレー30のトレー掛かり部34と係合し、ストッパーとして機能する。また、調理庫40の後面に排風口48が形成されており、調理庫40内の空気が排気口8bを介して排気される。グリル扉20のフレーム23にトレー30が載置され、更に、トレー30に焼き網31が載置された状態のものが、上記のように構成された調理庫40内に挿入されるが、その状態を図6及び図7に基づいて説明する。
【0012】
図6は調理庫のレールに設けられた弾性体(案内機構)の断面説明図であり、調理庫40にトレー30及び焼き網31(図示せず)が挿入されたときの状態が示されている。図7はその部品の説明図である。弾性体(案内機構)50は、フランジ35と調理庫40の内壁側(この例は本体部2)との間に介在するように構成されており、コイルバネ(バネ部材)51と、コイルバネ51によって押圧されてレール44(45)の間から突出した当接体52とを備えている。当接体52は、金属部材で構成してもよいが、好ましくは、耐熱プラスチックで滑性を有するものが好ましい。この当接体52の先端部分は半球状に形成されており、その底部にはコイルバネ51の端部を収納する凹部が形成されている。この弾性体50は、左右のレール44,45に沿って複数個それぞれ設けるものとする。弾性体50の当接体52がトレー30の両側部のフランジ35を内側に押圧することにより、トレー30が幅方向にガタつかないようしており、その出し入れがスムーズに行われるようにしている。なお、図6においてはフレーム23がフランジ35内に収納された状態に図示されているが、フレーム23がフランジ35の端部の下に位置していてもよく、レール44,45はフレーム23及びフランジ35の高さ方向の位置を規制する機能をもっている。
【0013】
図8はグリル扉20を閉じてトレー30及び被加熱物が載置された焼き網31を調理庫40内に収納した状態を示す説明図である。但し、グリル扉20のフレーム23の図示は省略されている(このことは後述の図9も同様である。)。なお、図8では、調理庫40の上部のトッププレート3側に電磁誘導加熱コイル60が配置されている状態も併せて図示されている。トレー30はその長さが焼き網31よりも長い寸法になっており、焼き網31よりも奥側の部分が収納室46に挿入された状態になっている。この挿入状態においては、上ヒーター42が被加熱物の上部に位置し、下ヒーター43が焼き網31とトレー30との間に介在するような位置関係になっている。排風口48は排風路49を介して排気口8b(図1参照)と連通しており、調理庫40内の空気を排気口8bを介して外部に排気する。図8の状態から、利用者がグリル扉20のハンドル22を持って引き出すと図9に示されるような状態になるが、引き出す際には図6に示される弾性体50が機能してスムーズな引き出しが可能になっている。
【0014】
図9はグリル扉20を引き出した状態の説明図である。トレー30はそのトレー掛かり部34が庫内掛かり部47と係合するまで引き出されると停止するが、そのときの状態は、焼き網31の全体が調理庫40の開口部41よりも手前側(正面側)に位置している。このとき、グリル扉20のフレーム23及びトレー30のフランジ35の一部がレール44,45とまだ係合している状態になっており、少なくともトレー30はその姿勢を水平に保持している。
【0015】
以上のように実施の形態1においては、グリル扉20で調理庫40の開口部41を覆った際に、トレー30の後部が調理庫40の奥面側に形成された収納室46に収納される構成になっており、トレー30の長さはそれに載置される焼き網31の長さよりも長く、グリル扉20を手前側にスライドさせてトレー30を引き出すと、トレー30の引出し量が増大し、トレー30に載置された焼き網31の全体を調理庫40の開口部41の外側まで引き出すことができる。このため、調理物を容易に焼き網31上に配置することができ、或いは調理終了後も調理物を容易に取り出すことができる。また、調理庫40の奥側の壁に付着した油等が落下しても、トレー30に落下するので、調理庫40が汚れないで済む。
【0016】
また、調理庫40の開口部41側の内壁に庫内掛かり部45を形成し、トレー30の後部にトレー掛かり部34を形成し、グリル扉20の引き出し時に、トレー掛かり部34を庫内掛かり部47と接合させることによりグリル扉20の引き出し量を規制して脱落するのを防止している。また、グリル扉20とトレー30とを別体にし、且つ着脱自在に構成しており、これによって調理後の清掃を簡単に行うことができる。
【0017】
また、本実施の形態1においては、弾性体50をフランジ35と調理庫40の内壁側との間に介在させ、弾性体50の当接体52がトレー30の両側部のフランジ35を内側に押圧することにより、トレー30が幅方向にガタつかないようにしており、その出し入れがスムーズに行われる。また、弾性体50は、コイルバネ(バネ部材)51と当接体52とから構成され、当接体52がフランジ部35に当接するように形成されており、コイルバネ(バネ部材)51よりフランジ35を弾性付勢することによりトレー30の出し入れの際のガタつきをなくしている。更に、弾性体50をレール44,45の近傍に設けたことにより、トレー30が内側に弾性付勢されながらレール44,45により案内されるので、その出し入れがスムーズに行われる。
【0018】
実施の形態2.
図10は調理庫のレールに設けられた他の弾性体の断面説明図である。この弾性体50は、図6に示されたものとその基本構成は同じであるので、相違点を中心に説明する。本体部2の内壁側には凸状の係合部53が形成されており、その係合部53を覆うようにしてコイルバネ51の一方の端部が装着される。コイルバネ51の他方の端部には当接体52が装着される。更に、本体部2側にはこれらのコイルバネ51及び当接体52を収納する筒状の収納部54が形成されている。この収納部54の先端部はリブ44aと44bとの間の調理庫40の外壁に当接するが、収納部54の先端部には切欠き部54aが形成されており、収納部54の外側から内側に空気が流入できる構成になっている。また、調理庫40のリブ44aと44bとの間には、当接体52が挿通される開口部44cが形成されており、この開口部44cと当接体52との間には隙間55が形成されている。このようにして切欠き部54a及び隙間55を介して外部の空気が調理庫40内に流入する構成が採用されていることから、調理庫40内の例えば魚を焼いた際に発生する煙を、排風口48及び排風路49を介して排気口8bから排出する際の吸気口として機能する。また、フランジ35の下面には凸部35aが所定の間隔で複数個形成されており、トレー30の出し入れのときのフランジ35の摺動抵抗が小さくなり、出し入れがスムーズに行われるようにしている。なお、この例では調理器40側に弾性体50を設けたが、トレー30側に設けてもよい。その例を図11に基づいて説明する。
【0019】
実施の形態3.
図11はトレー30に設けられた案内機構50の説明図である。この例では、トレー30の両側部のフランジ35に、中央部分が突起した板バネ55を複数個取付けて弾性体(案内機構)50を構成しており、図6の例と同様な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の斜視図である。
【図2】図1のグリル扉を引き出した状態の斜視図である。
【図3】グリルの分解斜視図である。
【図4】グリル扉にトレーを載置した状態の説明図である。
【図5】調理庫の斜視図である。
【図6】弾性体(その1)の断面説明図である。
【図7】弾性体の部品の説明図である。
【図8】調理庫にトレー及び焼き網を収納した状態の説明図である。
【図9】グリル扉を引き出した状態の説明図である。
【図10】弾性体(その2)の断面説明図である。
【図11】弾性体(その3)の説明図である。
【符号の説明】
【0021】
1 加熱調理器、2 本体部、3 トッププレート、4 枠材、5a,5b,5c 載置部、6a,6b,6c 火力表示部、7a,7b,7c 液晶表示部、8a 吸気口、8b 排気口、9a 上面操作部、9b 正面操作部、10 ロースターグリル、20 グリル扉、21 扉本体、21a ガラス板、22 ハンドル、23 フレーム、30 トレー、31 焼き網、32 凹部、33 焼き網固定凸部、34 トレー掛かり部、35 フランジ、40 調理庫、41 開口部、42 上ヒーター、43 下ヒーター、44,45 レール、46 収納室、47 庫内掛かり部、48 排風口、50 弾性体、51 コイルバネ、52 当接体、53 板バネ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に開口部を有し、加熱体が配設された直方体状の調理庫と、
該調理庫内を前後にスライド自在に可動し、前記開口部を開閉自在に覆うグリル扉と、
該グリル扉に取付けられ、上面が開口し、該開口の縁にフランジ部が形成されたトレーとを備え、
前記フランジ部と前記調理庫の内壁側との間に、前記グリル扉のスライド方向に沿って弾性体を介在させたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記弾性体は、バネ部材と当接体とから構成され、前記当接体が前記フランジ部に当接するように形成されたことを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記調理庫の内壁に前記トレーのフランジ部をそのスライド時に案内するレールを形成し、前記弾性体を前記レール近傍に設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記弾性体を前記フランジの外面に形成したことを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−82699(P2007−82699A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−274243(P2005−274243)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】