説明

加熱調理器

【課題】受け皿の摺動性が向上するとともに操作性に優れた加熱調理器を提供すること。
【解決手段】被調理物を加熱調理するための加熱調理器において、加熱庫5に収容される受け皿66を受け皿保持体64で支持し、加熱庫5の外部に設けられ固定レールと可動レールとを有するレールユニット16a,16bを介して出し入れするようにした。また、受け皿保持体64を、可動レールと連動するための係合部76と、加熱庫5の底面と摺接する摺接部72と、受け皿66を載置するための受け皿載置部72と、受け皿66の位置決めを行う受け皿位置決め部74,78とで構成した。さらに、加熱庫5の前面に形成された開口部を開閉するドア19は、可動レールあるいは可動レールを連結するレール連結部18に装着され、ドア19を加熱庫5より引き出したとき、ドア19が可動レールあるいはレール連結部18に装着された状態で、受け皿66を受け皿保持体64に対して着脱できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚等の被調理物を焼き網の上にのせて加熱調理するための加熱庫を有する加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の加熱調理器は加熱庫を単体で用いたり、加熱庫に加え誘導加熱調理器等のこんろ部を天面に設け、システムキッチンのカウンターに組み込んで用いている。
【0003】
後者の加熱調理器のロースタ部は、加熱庫内部に、焼き網の上方から被調理物の表側(上側)を加熱調理するための上ヒータと、焼き網の下方から被調理物の裏側(下側)を加熱調理するための下ヒータを内蔵し、焼き網は加熱庫内に出し入れ自在に設置された受け皿に載置されている。加熱調理された被調理物から出てくる水や脂は受け皿に貯留され、加熱庫底面に漏れない構成になっている。
【0004】
また、調理中に発生する煙や水蒸気は外部へ通じる排気筒を介して加熱庫外へ排気される。受け皿と加熱庫は耐熱性を考慮して構成されているが、魚の脂等により汚れやすいので、汚れが落ちやすいようにホーロ処理されていることが多い。また、ステンレス等の耐熱性と耐食性のある材料をそのまま使用している場合もある。
【0005】
以上のような構成において、受け皿はフランジ部下側に金属製のアームを介して加熱庫の底面と摺接する構成のもの(例えば、特許文献1参照。)や、加熱庫の内壁にレールと滑車を設け、受け皿を直接滑動させるもの(例えば、特許文献2参照。)がある。さらに、簡易なものは、加熱庫底面に受け皿が直接載置されている。
【0006】
しかしながら、このような構成では、受け皿と連結したドアを引き出す場合、受け皿やアームが加熱庫の底面や側面に設けられた凸部上を摺動することになるので、ホーロ処理された受け皿と加熱庫間や、金属製アームと加熱庫間の摺動性が悪いばかりでなく、横方向の規制がないため、ホーロ同士が衝突し、場合によってはホーロが欠けてしまうことがあった。
【0007】
また、金属製アームを介して摺動する場合でも、摺動性が悪く、ホーロ側が欠けたり、金属の表面処理部分が摩耗して耐食性が低下し、腐食が発生する虞もある。さらに、レールを加熱庫内に設けた場合には、高温下で潤滑油が揮発して焼き付いてしまったり、魚から出る塩分や硫黄分がレールを構成する金属を腐食させる虞があった。
【0008】
このような課題を解消するために、遮熱ケースにレールの固定側を固定し、レールの固定側及び可動側を遮熱ケースと加熱庫の間に設けるようにした構成も提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0009】
この加熱調理器においては、レールを加熱庫の外部に設けることで、高温や汚れによる不具合を解消している。また、受け皿及びこの受け皿を保持する保持体をドアに着脱自在に取り付け、ドアの把手を手前に水平に引き出すことで、レールの滑動により受け皿を加熱庫から引き出すことができる。レールの前方には受け皿の飛び出しを防止するためのストッパが設けられており、ドアを上方に持ち上げてストッパを乗り越えることにより受け皿を加熱庫から取り出すことができる。
【0010】
【特許文献1】特公平8−8897号公報(図1)
【特許文献2】特許第3158091号公報(図1)
【特許文献3】特開2004−218901号公報(図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献3に記載の加熱調理器の場合、受け皿の摺動性の点でまだまだ改善の余地があり、ドアを上方に持ち上げるとともに受け皿を下方より支持して加熱庫から取り出す必要があることから、操作性の点でも改善の余地があった。
【0012】
本発明は、従来技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、受け皿の摺動性が向上するとともに操作性に優れた加熱調理器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明のうちで請求項1に記載の発明は、被調理物を加熱調理するための加熱調理器であって、内部に収容された被調理物を加熱調理する加熱庫と、該加熱庫の前面に形成された開口部を開閉するドアと、前記加熱庫に収容される受け皿と、該受け皿を出し入れするために前記加熱庫の外部に設けられ固定レールと可動レールとを有する少なくとも2組のレールユニットと、前記受け皿を支持する受け皿保持体とを備え、前記ドアは、前記可動レールに、あるいは前記可動レールに連結するレール連結部に装着され、前記受け皿保持体は、前記可動レールと連動するための係合部と、前記加熱庫の底面と摺接する摺接部と、前記受け皿を載置するための受け皿載置部と、前記受け皿の位置決めを行う受け皿位置決め部とを有し、前記ドアを前記加熱庫より引き出したとき、前記ドアが前記可動レールあるいは前記レール連結部に装着された状態で、前記受け皿を前記受け皿保持体に対して着脱できるようにしたことを特徴とする。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、前記ドアを前記加熱庫より最も引き出したとき、前記摺接部の後端が前記加熱庫の開口面の内側で支持されるとともに、前記受け皿の後端が前記開口面よりも手前側に位置するように、前記レールユニット及び前記受け皿保持体の前記受け皿位置決め部の寸法設定したことを特徴とする。
【0015】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記レール連結部は、前記可動レールの前端部を相互に連結するとともに前記受け皿保持体の前記係合部を載置して前記受け皿保持体を支持する保持体支持部が前記加熱庫側に形成されていることを特徴とする。
【0016】
また、請求項4に記載の発明は、前記ドアは、覗き窓を有するドアカバーと、前記覗き窓を覆うように前記ドアカバーにより保持されたガラス板を有し、前記ドアカバーには、前記受け皿保持体の前記係合部を載置して前記受け皿保持体を保持する保持体支持部が形成されていることを特徴とする。
【0017】
また、請求項5に記載の発明は、前記ドアは、覗き窓を有するドアカバーと、前記覗き窓を覆うように前記ドアカバーにより保持されたガラス板を有し、前記レール連結部は、前記ドアカバーと嵌合して前記ドアを支持する第1のドア支持部を有し、前記ドアを前記レール連結部に対し着脱自在に装着したことを特徴とする。
【0018】
また、請求項6に記載の発明は、前記第1のドア支持部は、前記レール連結部の前記ドアカバーとの当接面に略L字状に突設され、前記ドアカバーに形成された第1の開口部に挿入されて前記ドアを保持するようにしたことを特徴とする。
【0019】
また、請求項7に記載の発明は、前記レール連結部は、その上縁から上方に突設された第2のドア支持部を有し、該第2のドア支持部は、前記ドアカバーに形成された第2の開口部に挿入されて前記ドアを保持するようにしたことを特徴とする。
【0020】
また、請求項8に記載の発明は、前記受け皿保持体は、棒材の端部を互いに連結して形成され、前記受け皿保持体の手前側を上方に折曲して、該上方折曲部により前記受け皿の手前側の前記受け皿位置決め部を構成したことを特徴とする。
【0021】
また、請求項9に記載の発明は、前記上方折曲部を途中で下方に折曲し、該下方折曲部の前縁により前記係合部を構成したことを特徴とする。
【0022】
また、請求項10に記載の発明は、前記受け皿保持体は、棒材の端部を互いに連結して形成され、前記受け皿保持体の後端部を上方に折曲し、さらに手前側に折り返し、該折り返し部が前記受け皿と当接して前記受け皿の後方側の前記受け皿位置決め部を構成したことを特徴とする。
【0023】
また、請求項11に記載の発明は、前記受け皿は、その底面の裏面側に前記受け皿保持体と嵌合する凹部を有し、該凹部が前記受け皿の左右の位置決め手段を構成していることを特徴とする。
【0024】
また、請求項12に記載の発明は、前記受け皿は、その底面の表面側中央近傍に第1の凸部を有し、前記凹部に対応する前記受け皿の表面側の第2の凸部の高さを、前記第1の凸部の高さと略等しく設定したことを特徴とする。
【0025】
また、請求項13に記載の発明は、前記受け皿は、その外縁を外方に折曲して形成したフランジ部と、該フランジ部の前部に形成された突設部を下方に折曲して形成された垂れ下がり部とを有し、前記受け皿を前記受け皿保持体に正しく装着した場合には、前記垂れ下がり部が前記受け皿保持体の手前側の前記受け皿位置決め部の間に入り込み、前記受け皿の前後を逆にして前記受け皿保持体に装着した場合には、前記垂れ下がり部が前記受け皿保持体の後端部に乗り上げて前記受け皿の装着位置が高くなり、前記ドアが前記筐体の前記開口部を閉止する前に、前記受け皿が前記加熱庫内の部品に当接して前記ドアが前記筐体の前記開口部を閉止できないようにしたことを特徴とする。
【0026】
また、請求項14に記載の発明は、前記加熱庫内の前記部品が、前記加熱庫内部を加熱するヒータであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、受け皿の下方に受け皿を支持する受け皿保持体を設け、固定レールと可動レールとを有するレールユニットにより受け皿を受け皿保持体とともに出し入れするようにしたので、出し入れに際し、加熱庫の底面(あるいは突設部)と摺接する部材が受け皿保持体のみとなり、受け皿等の摺動性が向上する。
【0028】
また、受け皿保持体は、可動レールと連動するための係合部と、加熱庫の底面と摺接する摺接部と、受け皿を載置するための受け皿載置部と、受け皿の位置決めを行う受け皿位置決め部とを有し、ドアを加熱庫より引き出したとき、ドアがレール連結部に装着された状態で、受け皿を受け皿保持体に対して着脱できるように構成したので、受け皿の着脱の際の操作性が極めて向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1及び図2は、本発明にかかる誘導加熱調理器を示しており、この誘導加熱調理器はシステムキッチンのキャビネットに組み込んで使用する構成のものである。
【0030】
図1及び図2に示されるように、誘導加熱調理器は、本体を構成する筐体2と、筐体2の上部に設けられ鍋などの被調理物を載置するトッププレート11と、トッププレート11の前部下方に配設された加熱コイル13a,13bと、トッププレート11の後部下方に配設されたラジェントヒータ14と、加熱コイル13a,13bの駆動回路を構成する複数の回路基板24と、筐体2内の左側に形成された加熱庫5と、加熱コイル13a,13bと加熱庫5間を上下に仕切る上仕切板21と、回路基板24側と加熱庫5間を左右に仕切る中仕切板22と、回路基板24を通して加熱コイル13a,13bと加熱庫5側に冷却風を供給する冷却ファン25とを備えている。また、加熱庫5内には、上下に離間した二つのヒータ(上ヒータ6と下ヒータ7)が設けられている。
【0031】
加熱庫5の下方には、加熱庫5への被調理物の出し入れを円滑に行うための左右一対のレールユニット16a,16bと、加熱庫5とレールユニット16a,16bの間に介装され加熱庫5内で発生する熱に対しレールユニット16a,16bを遮蔽する遮熱板23とを設け、遮熱板23より下方のレールユニット16a,16bが位置する高さに対向する中仕切板22の部位には、冷却ファン25からの冷却風をレールユニット16a,16bへ導くための開口部29が形成されている。
【0032】
また、加熱庫5の外部に設けられた各レールユニット16a,16bは、固定レールと、固定レールに対し摺動自在の可動レールとを備え、筐体2の底面上における加熱庫5の両側に固定されたレール固定板17に固定レールは取り付けられている。固定レールと可動レールの間には可動中間レールが設けられており、中間レールは固定レールと可動レールの間に挿通され、中間レールの内外にはボールをリテーナにより回転自在に保持した転がり軸受が設けられている。このように構成されたレールユニットは公知なので、これ以上の説明は省略する。
【0033】
さらに、左右のレールユニット16a,16bは、可動レールの前端部が加熱庫5前方で接続金具(レール連結部)18により連結されており、加熱庫5の開口部を開閉する把手付きドア19がばね等の弾性手段を介して接続金具18に着脱自在に取り付けられている。
【0034】
また、遮熱板23は、加熱庫5の底面投影面とほぼ同等もしくはそれ以上の大きさで、加熱庫5と左右のレールユニット16a,16bの間にレールユニット16bの上方からレールユニット16aの上方まで延びている。さらに、遮熱板23は筐体2の底面に向かって凸状に形成されており、筐体2の底面と遮熱板23の間、加熱庫5の底面と遮蔽板23の間、及び、左右のレールユニット16a,16bと遮熱板23の間には所定の空間が形成されている。
【0035】
中仕切板22は、その下端部が固定された筐体2の底面から上方に向かって立設され、中仕切板22の上端部は、筐体2の左側面から略水平に延びる上仕切板21の右端部に連結されている。上仕切板21と中仕切板22は、加熱庫5と所定の空間を介して配設されており、加熱庫5と当接する部位は存在しない。
【0036】
加熱コイル13a,13bに電流を供給して駆動制御する回路基板24は、中仕切板22により隔てられた加熱庫5の右側で、加熱コイル13bの下方に設けられており、回路基板24の奥側に近接して筐体2内に冷却風を送り込む冷却ファン25が、回路基板24の前側に加熱操作設定を行う操作部26がそれぞれ設けられている。また、回路基板24の上方の加熱コイル13bは、上面に穴が穿設された加熱コイル支持台27により支持されている。
【0037】
回路基板24は、それぞれ基板保持板28に収容され、個々のユニットが3階層に積み重ねられている。基板保持板28は、回路基板24の左右側面および上下を囲い冷却ファン25に対向する側とその反対側は開口するとともに、中仕切板22の開口部29に対向する位置の側壁には開口部30が形成されている。
【0038】
筐体2には、その上面右後方に吸気口34が形成され、上面左後方に排気口35が形成されている。冷却ファン25は、筐体2の上面右後方の吸気口34の下方で、かつ回路基板24の後方に配置されている。冷却ファン25は上下に噴出し口36を有し、回路基板24の最下層に対向する位置に冷却ファンの噴出し口36の少なくとも一部分が対向するように構成されている。
【0039】
また、図3及び図4に示されるように、加熱庫5の開口部の周囲には、その端面を覆うとともに左右のレールユニット16a,16bの可動レールの貫通孔38a,38bが形成された前面パネル38が取り付けられており、前面パネル38の下部には複数のスリット39が形成されている。また、前面パネル38の下部には、前面パネル38に対し所定の角度(例えば、約90°)で形成されたフランジ41の上方に位置するように弾性体(例えば、耐熱性ゴム)からなるパッキン43が取り付けられており、パッキン43は、フランジ41の上方に位置するように取り付けられる断面円弧状の基部43aと、基部43aの両端より上方に延びる突設部43bとを備えている。突設部43bは、その裏面に形成された突起を有し、この突起が前面パネル38に形成された穴に嵌め込まれることで、パッキン43は前面パネル38に取り付けられる。なお、フランジ41は、加熱庫5の開口部の下縁部から滴下することもある水滴を受けるためのもので、その前縁部に沿って堰を設けてもよい。
【0040】
左右の可動レールの前端部を互いに連結する接続金具18は、その前面中央の下端部に略L字状に突設された第1のドア支持部40と、両端近傍の上縁部から上方に向かって突設された一対の第2のドア支持部42とを備えている。また、接続金具18の上端部裏面側には後述する受け皿保持体を支持する保持体支持部44が一体的に形成されており、保持体支持部44には断面が略U字状の保持体支持溝44aが形成されている。
【0041】
一方、接続金具18に着脱自在に取り付けられる略矩形状のドア19は、図5に示されるように、覗き窓46aを有する金属製ドアカバー(裏面カバー)46と、ドアカバー46の前面を覆うガラス板48と、ドアカバー46とガラス板48の上端部を覆う樹脂製把手50により構成されており、ガラス板48の上部は、ドアカバー46と把手50により挟持されている。また、ドアカバー46の下端部は前方に折曲され、さらに上方に折曲されることで、ガラス板48の下端部はドアカバー46の下端折曲部により保持されており、ドアカバー46とガラス板48との間には所定の空間が形成されている。
【0042】
また、ドアカバー46の下端部中央には、接続金具18の第1のドア支持部40が挿入される第1の開口部52が形成されており、覗き窓46aの両側の下端部近傍には、接続金具18の第2のドア支持部42が挿入される第2の開口部54が形成されている。さらに、第2の開口部54の外側のドアカバー46には、開口部を介して加熱庫5側に突出する一対のロック片56が取り付けられており、ロック片56は加熱庫5側に突出する方向に常時付勢されて、接続金具18に取り付けられたドア19をロックし、ロック片56の上方に加熱庫5側に突出して設けられたピン58を押圧することで、ドア19のロックは解除される。また、ロック片56の下方のドアカバー46には、開口部を介して加熱庫5側に突出する一対のばね片60が設けられており、接続金具18に取り付けられたドア19は、ばね片60が接続金具18に弾性的に当接することによりドア19のがたつきが吸収される。
【0043】
上述したように、ドア19を接続金具18に着脱自在に取り付けるようにしたので、必要に応じてドア19を接続金具18より取り外して清掃することが可能となる。
【0044】
また、ドアカバー46の加熱庫5側には、覗き窓46aを囲繞する弾性体からなるパッキン62が取り付けられており、パッキン62はドアカバー46の上縁に沿って水平に延び、その両端は覗き窓46aの両側に沿って下方に延びるとともに、覗き窓46aの下縁部近傍から外側に湾曲して、ドアカバー46の下縁部まで延び、可動レールの貫通孔38a,38bが形成された前面パネル38における貫通孔38a,38bの外側と対向するように配置されている。ドア19の閉状態においては、パッキン62の下端部に加熱庫5側に設けられたパッキン43の突設部43bが当接し、二つのパッキン43,62により加熱庫5の内部を外部からシールしている。なお、パッキン62は、ドアカバー46に設けることなく加熱庫5の開口部の少なくとも下端部端面以外の端面に設けることもできる。
【0045】
加熱庫5内には、接続金具18に形成された保持体支持部44に支持される上述した受け皿保持体64と、受け皿保持体64に支持される受け皿66と、受け皿66に載置され被調理物を載置するための焼き網68とが収容される。
【0046】
受け皿保持体64は、所定の長さの棒材を折曲するとともにループ状に形成して、その両端部を互いに連結したものである。
【0047】
図3及び図6を参照して、受け皿保持体64をさらに詳述すると、受け皿保持体64の両側には、加熱庫5の開口部側の底面に突設された一対の摺接部材70とそれぞれ摺接する一対の摺接部72が平行に形成されており、摺接部72の前端部は手前側(前方)に向かって斜め上方に折曲され、この上方折曲部により受け皿66の手前側の受け皿位置決め部74が形成されている。また、上方折曲部は途中で下方に折曲され、この下方折曲部の前縁は、接続金具18の保持体支持部44に形成された保持体支持溝44aに嵌入して可動レールと連動する係合部76を構成している。さらに、摺接部72の後端部は上方に折曲され、さらに手前側に折り返されて、この折り返し部が受け皿66と当接する後方側の受け皿位置決め部78を構成している。なお、左右の摺接部72は、受け皿66を載置する受け皿載置部としての機能も有している。
【0048】
次に、図7及び図8を参照して、受け皿保持体64に載置される受け皿66について説明する。
受け皿66は、その外縁が外方に折曲されたフランジ部80と、フランジ部80の前部に形成された突設部を下方に折曲して形成された垂れ下がり部82とを備えている。また、受け皿66の底面の裏面(下面)側には前後方向に平行に延び受け皿保持体64の摺接部72が嵌入して受け皿66の左右の位置決めを行うための2条の凹部84が形成されており、受け皿66の底面の表面(上面)側の中央近傍には、凹部84と直交する方向に延びる凸部86が形成されている。2条の凹部84は、受け皿66の底面の表面側では凸部86と同様の凸部となっており、これらの凸部84,86の高さを略等しく設定して受け皿66に注がれる水量の目安にしている。また、対向する二つの側壁の両端部近傍には、それぞれ一つの凸部88が形成されており、これらの凸部88に焼き網68が載置される。
【0049】
上記構成の本発明にかかる加熱調理器において、魚等の被調理物を加熱庫5に挿入して加熱調理するに際し、ドア19の把手50を把持して手前側に引くと、レールユニット16a,16bの可動レールが固定レールに対し摺動して加熱庫5が開放される。また、受け皿保持体64は、その係合部76が保持体支持部44に形成された保持体支持溝44aに嵌入しているので、受け皿保持体64と、受け皿保持体64に保持された受け皿66と、受け皿66に載置された焼き網68は、ドア19及び可動レールとともに一体的に引き出される。この時、受け皿保持体64の摺接部72が加熱庫5の底面に突設された摺接部材70と摺接し、摺接部材70はフッ素樹脂等の摩擦係数が極めて低い材料で形成されているので、加熱庫5の開放は円滑に行われる。
【0050】
次に、受け皿66の底面に形成された凸部84,86の高さを目安に受け皿66に注水した後、焼き網68に被調理物を載置する。なお、ドア19を加熱庫5より最も引き出した場合、受け皿保持体64の摺接部72の後端が加熱庫5の開口面の内側(摺接部材70)により支持されるとともに、受け皿66の後端が開口面よりも手前側に位置するように、レールユニット16a,16b、受け皿66及び受け皿保持体64の受け皿位置決め部74,78の寸法が設定されているので、受け皿66を持ち上げて取り出したり、逆に受け皿保持体64に受け皿66を載置するのが極めて容易になる。さらに、注水あるいは被調理物の焼き網68への載置も極めて容易である。
【0051】
その後、ドア19を加熱庫19に向かって押圧すると、焼き網68に載置された被調理物は加熱庫5内に収容され、図2に示されるように、被調理物の上方に上ヒータ6が配置されるとともに受け皿66と焼き網68との間に下ヒータ7が配置される。したがって、操作部26を操作して所定の操作を行うと、上ヒータ6及び下ヒータ7に通電され、被調理物はその両面が上ヒータ6及び下ヒータ7により加熱され調理される。
【0052】
調理中は、冷却ファン25が作動し、トッププレート11の後方に設けられた吸気口34から外気が入り、冷却ファン25の一部が最下層の回路基板24に対向している下部噴出し口36から吐出された空気は、回路基板24に向けて吹き付けられ、スイッチング素子やダイオードブリッジといった発熱部品を冷却する。さらに、基板保持板28の開口部30を介して中仕切板22の開口部29へと流れ込んだ空気や中仕切板22の周囲から流れ込んだ空気は、レールユニット16a,16b及び遮熱板23の下方の筐体2との空間へと導かれ、遮熱板23の下方の筐体2との空間を通過して、レールユニット16a,16bを冷却するとともに筐体2を冷却した後、排気口35より外部に排出される。
【0053】
なお、加熱庫5にはヒータ等の部品の取り付け等により隙間が生じやすく、この隙間を介して冷却ファン25により圧力が上昇した空気が加熱庫5の外部から庫内へと入り込み、ドア19と前面パネル38との間の隙間から漏れやすくなるが、調理中は、加熱庫5側に設けられたパッキン43がドア19に当接するとともに、ドア19に設けられたパッキン62が前面パネル38に当接しており、加熱庫5内で発生する煙は、二つのパッキン43,62により外部に漏れるのが防止されている。
【0054】
また、レールユニット16bを冷却した空気は、加熱庫5の開口部周囲の前面パネル38の下部に形成された複数のスリット39からドア19に向かって吹き付けられることで、あたかもエアーカーテンのように作用し、加熱庫5内で発生する煙が外部に漏れるのを防止している。また、ドア19に向かって吹き付けられた空気の一部は、ドアカバー46に形成された開口部52,54に向かって吹き付けられ、ドア19とドアカバー46間の空間の圧力が上昇することで、煙の外部への漏れを防止している。
【0055】
また、冷却ファン25の上部噴出し口36及び下部噴出し口36からの空気は、基板保持板28の回路基板24に向けて吹き付けられ、1階から3階までの多層に分かれ、スイッチング素子やダイオードブリッジ等の発熱部品を冷却する。その後、冷却ファン25と反対側の基板保持板28の開口部へと向かい、最上階の上部に設けられた加熱コイル支持台27の上面に形成された開口部から回路基板24を通過した空気が加熱コイル支持台27上方へ吹き出され、加熱コイル13bから加熱コイル13a及び筐体2へと冷却風が流れた後、排気口35より外部に排出される。
【0056】
被調理物の加熱調理が完了すると、ドア19の把手50を把持して手前側に引くと、レールユニット16a,16bの可動レールが固定レールに対し摺動して、受け皿保持体64と受け皿66と焼き網68が一体的に引き出されるので、被調理物を容易に取り出すことができる。また、レールユニット16a,16bを採用したことで、ドア19の上端部に把手50を設けても、被調理物の出し入れを円滑に行うことができるとともに、ドア19の上端部を樹脂製把手50で覆うことで、ユーザに対する安全性あるいは操作性が向上する。
【0057】
上述したように、ロック片56により接続金具18にロックされたドア19は、ドア19に設けられたピン58を押圧することによりロック解除され、ロック解除した後、ドア19を上方に引き上げることにより接続金具18からドア19を取り外すことができるので、ドア19が汚れた場合、ドア19を接続金具18から取り外して適宜清掃することができる。また、ドア19を加熱庫5より最も引き出した場合、受け皿66の後端が開口面よりも手前側に位置するように寸法設定がなされているので、ドア19を取り外すことなく、受け皿66に対する焼き網68の着脱、受け皿保持体64に対する受け皿66の着脱、あるいは接続金具18に対する受け皿保持体64の着脱等を極めて容易に行うことができ、必要に応じて各部材を適宜清掃することができる。
【0058】
なお、ドア19を接続金具18に着脱自在に取り付ける構成は必ずしも必要ではなく、ドア19を接続金具18に固定してもよい。また、接続金具18はレールユニット16a,16bの可動レールの前端部を相互に接続するものとして説明したが、接続金具18を設けることなくドア19を可動レールの前端部に取り付けることもできる。この場合、受け皿保持体64は、一対の可動レールの各々と係合するようにしてもよい。
【0059】
また、受け皿66は受け皿保持体64に正しく装着されると、フランジ部80の前部に形成された垂れ下がり部82が受け皿保持体64の手前側の受け皿位置決め部74の間に入り込むが、受け皿66の前後を逆にして受け皿保持体64に装着されると、垂れ下がり部82が受け皿保持体64の後端部に乗り上げるように設定されており、その結果、受け皿66の装着位置が高くなり、ドア19が筐体2の開口部を閉止する前に、受け皿66が下ヒータ7に当接してドア19が筐体2の開口部を閉止できないように構成されている。
【0060】
なお、加熱コイル13a,13bやラジェントヒータ14を使用した被調理物の加熱調理は本発明の主眼ではないので、その説明は省略する。
【0061】
また、上記実施の形態において、受け皿保持体64を支持する保持体支持部44を接続金具18の上端部裏面側に一体的に形成したが、受け皿保持体64の係合部76を載置して受け皿保持体64を保持する保持体支持部をドア19のドアカバー46に一体的に形成するようにしてもよい。
【0062】
さらに、受け皿66等の出し入れを容易にするレールユニット16a,16bは、加熱庫5の両側に一対設けるようにしたが、加熱庫5の中間部に一つもしくはそれ以上のレールユニットをさらに設けることもできる。
【0063】
また、上記実施の形態は、誘導加熱調理器を例にとり説明したが、本発明は誘導加熱調理器に限定されるものではなく、加熱庫を備えた他の加熱調理器にも適用できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明にかかる加熱調理器は、受け皿の摺動性がよく操作性に優れているので、一般家庭用の加熱調理器等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明にかかる誘導加熱調理器の分解斜視図である。
【図2】図1の誘導加熱調理器の縦断面図である。
【図3】図1の誘導加熱調理器の要部斜視図である。
【図4】図1の誘導加熱調理器に形成された加熱庫及びその近傍の斜視図である。
【図5】加熱庫の開口部を開閉するドアを背面側から見た斜視図である。
【図6】加熱庫に収容される受け皿保持体の斜視図である。
【図7】図6の受け皿保持体に保持される受け皿の斜視図である。
【図8】図7における線VIII−VIIIに沿った断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物を加熱調理するための加熱調理器であって、
内部に収容された被調理物を加熱調理する加熱庫と、該加熱庫の前面に形成された開口部を開閉するドアと、前記加熱庫に収容される受け皿と、該受け皿を出し入れするために前記加熱庫の外部に設けられ固定レールと可動レールとを有する少なくとも2組のレールユニットと、前記受け皿を支持する受け皿保持体とを備え、前記ドアは、前記可動レールに、あるいは前記可動レールに連結するレール連結部に装着され、前記受け皿保持体は、前記可動レールと連動するための係合部と、前記加熱庫の底面と摺接する摺接部と、前記受け皿を載置するための受け皿載置部と、前記受け皿の位置決めを行う受け皿位置決め部とを有し、前記ドアを前記加熱庫より引き出したとき、前記ドアが前記可動レールあるいは前記レール連結部に装着された状態で、前記受け皿を前記受け皿保持体に対して着脱できるようにしたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記ドアを前記加熱庫より最も引き出したとき、前記摺接部の後端が前記加熱庫の開口面の内側で支持されるとともに、前記受け皿の後端が前記開口面よりも手前側に位置するように、前記レールユニット及び前記受け皿保持体の前記受け皿位置決め部の寸法設定したことを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記レール連結部は、前記可動レールの前端部を相互に連結するとともに前記受け皿保持体の前記係合部を載置して前記受け皿保持体を支持する保持体支持部が前記加熱庫側に形成されていることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記ドアは、覗き窓を有するドアカバーと、前記覗き窓を覆うように前記ドアカバーにより保持されたガラス板を有し、前記ドアカバーには、前記受け皿保持体の前記係合部を載置して前記受け皿保持体を保持する保持体支持部が形成されていることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記ドアは、覗き窓を有するドアカバーと、前記覗き窓を覆うように前記ドアカバーにより保持されたガラス板を有し、前記レール連結部は、前記ドアカバーと嵌合して前記ドアを支持する第1のドア支持部を有し、前記ドアを前記レール連結部に対し着脱自在に装着したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記第1のドア支持部は、前記レール連結部の前記ドアカバーとの当接面に略L字状に突設され、前記ドアカバーに形成された第1の開口部に挿入されて前記ドアを保持するようにしたことを特徴とする請求項5に記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記レール連結部は、その上縁から上方に突設された第2のドア支持部を有し、該第2のドア支持部は、前記ドアカバーに形成された第2の開口部に挿入されて前記ドアを保持するようにしたことを特徴とする請求項5あるいは6に記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記受け皿保持体は、棒材の端部を互いに連結して形成され、前記受け皿保持体の手前側を上方に折曲して、該上方折曲部により前記受け皿の手前側の前記受け皿位置決め部を構成したことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項9】
前記上方折曲部を途中で下方に折曲し、該下方折曲部の前縁により前記係合部を構成したことを特徴とする請求項8に記載の加熱調理器。
【請求項10】
前記受け皿保持体は、棒材の端部を互いに連結して形成され、前記受け皿保持体の後端部を上方に折曲し、さらに手前側に折り返し、該折り返し部が前記受け皿と当接して前記受け皿の後方側の前記受け皿位置決め部を構成したことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項11】
前記受け皿は、その底面の裏面側に前記受け皿保持体と嵌合する凹部を有し、該凹部が前記受け皿の左右の位置決め手段を構成していることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項12】
前記受け皿は、その底面の表面側中央近傍に第1の凸部を有し、前記凹部に対応する前記受け皿の表面側の第2の凸部の高さを、前記第1の凸部の高さと略等しく設定したことを特徴とする請求項11に記載の加熱調理器。
【請求項13】
前記受け皿は、その外縁を外方に折曲して形成したフランジ部と、該フランジ部の前部に形成された突設部を下方に折曲して形成された垂れ下がり部とを有し、前記受け皿を前記受け皿保持体に正しく装着した場合には、前記垂れ下がり部が前記受け皿保持体の手前側の前記受け皿位置決め部の間に入り込み、前記受け皿の前後を逆にして前記受け皿保持体に装着した場合には、前記垂れ下がり部が前記受け皿保持体の後端部に乗り上げて前記受け皿の装着位置が高くなり、前記ドアが前記筐体の前記開口部を閉止する前に、前記受け皿が前記加熱庫内の部品に当接して前記ドアが前記筐体の前記開口部を閉止できないようにしたことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項14】
前記加熱庫内の前記部品が、前記加熱庫内部を加熱するヒータであることを特徴とする請求項13に記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−133614(P2009−133614A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31644(P2009−31644)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【分割の表示】特願2005−159463(P2005−159463)の分割
【原出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】