説明

加熱調理器

【課題】水滴が滴下する部位に対応した位置に的確に水滴の滴下対策を施し本体外に漏出する水滴を確実に受け止めるとともに、水滴の滴下対策上の無駄なスペース及び部材の使用を抑制する。
【解決手段】加熱室2を形成する奥壁2aと底壁2eとの接合部30から漏出する水滴が滴下する部位に、熱風ケーシング17の下部に一体的に設けた第1水受け部25を配置した構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を加熱調理する際に発生した水蒸気などが結露して外部に水滴が漏出することに対処した加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気ヒータ或いはマグネトロン(高周波)などの加熱手段に基づき、食品を加熱調理するに際して水蒸気が発生し、これが結露して加熱室を形成する側壁の接合部分に生じる隙間を通して本体外に滴下する憂いがある。加えて近年では、水を加熱して水蒸気を加熱室内に供給し加熱調理をも可能とした、所謂水蒸気供給手段を搭載した加熱調理器が広く普及しつつあるが、加熱室内では一層結露し易い状況となり水滴が本体外に漏出する傾向が強い。
【0003】
そこで、外部への水滴の滴下対策として、加熱調理器の外郭をなす外箱の底面とほぼ同じ大きさに形成された水受け皿部を設けて、加熱室内で結露し滴下した水滴を受ける構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−3150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記構成では水受け皿部は外箱の底面とほぼ同じ大きさに形成されているため、水滴が滴下しない無駄な部位が多くなり、スペースが必要以上に大きくなって、電装品などの他の部品の設置スペースが狭くなるなどの設計製造上の制約が多くなり、更に、余分なコストがかかるという問題を有している。
【0006】
本発明は、上記問題を解消するため、水滴が滴下する部位に対応した位置に的確に水滴の滴下対策を施し本体外に漏出する水滴を確実に受け止めるとともに、水滴の滴下対策上の無駄なスペース及び部材の使用を抑制することのできる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の加熱調理器は、複数の側壁の接合により形成された加熱室と、前記加熱室内に熱風を供給するために前記側壁の一つに設けられた熱風供給部と、前記熱風供給部を設けた側壁と隣接する側壁とを相互に接合した接合部の下方に設けられた樋状の第1水受け部とを備え、前記熱風供給部は、加熱手段と送風手段とこれらを収容する熱風ケーシングを具備した構成とし、前記第1水受け部は、前記熱風ケーシングの下部に設けたことを特徴とする(請求項1の発明)。
【発明の効果】
【0008】
上記手段によれば、加熱室内に生じた水滴は、加熱室を構成する接合部から漏出しようとするが、これを第1水受け部により的確に受けることができる。このため、水受け部はコンパクトに構成でき無駄なスペース及び部材の使用を減少でき、延いては設計製造上の自由度及びコスト削減に有利な加熱調理器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例を示す加熱調理器の一部を破断して示す側面図
【図2】扉を開放した状態の加熱調理器を正面上方から見た斜視図
【図3】水受けケースの全体構成を示す斜視図
【図4】ドレイン容器等の配置構成及び水の流れを概略的に表し、第三角図法で示す水受けケースの、(a)は平面図、(b)は右側面図、(c)は左側面図、及び(d)は正面図
【図5】第三角図法で示す底板の、(a)は平面図、(b)は右側面図、及び(c)は正面図
【図6】熱風ケーシング、底板、及び水受けケースの配置構成を概略的に示す図
【図7】図1中に示す熱風ケーシング下部の拡大断面図
【図8】接合部から滴下した水の流れなどの作用説明するための概略構成を示す拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施例を示す水蒸気発生装置を備えた加熱調理器につき、図1ないし図8を参照して説明する。そのうち、図1は加熱調理器の一部を破断して示す側面図で、図2は扉を開放した状態の加熱調理器を正面上方から見た斜視図である。
【0011】
図1及び図2に示すように、この加熱調理器は、内部に食品を加熱調理する加熱室2を有する矩形箱状の本体1と、加熱室2の前面開口部3を開閉可能に覆う扉4を、例えば調理設定用の操作部を有するとともに、下部を支点に前後方向に回動可能に設けている。具体的には、扉4はその背面側において、開口部3の周囲の前枠部5に接離する構成としている。
【0012】
尚、食品の加熱手段としては、周知のマグネトロン7による高周波加熱、及び加熱室2の上面に配置された電気ヒータ8によるヒータ加熱、そして後述する熱風循環ユニット16による所謂熱風によるオーブン加熱を可能とするとともに、本実施例ではスチーム加熱を可能とする水蒸気発生装置9を備えている。まず水蒸気発生装置9の概要につき説明すると、これは図1にその一部につき概略的に示すように、加熱室2の側壁に水蒸気発生部10を設け、図示しないヒータにて水を加熱し蒸気化するとともに、水蒸気供給孔11より加熱室2内に蒸気を噴き出すように供給可能としている。そして、この水蒸気発生部10に給水するための図示しないチューブが接続され、その他端は図示しないポンプ装置を経て後述するカセットタイプの貯水容器13(後述する図3参照)に接続された構成としている。
【0013】
本体1の下部には本体1底面にねじ止め固定された詳細は後述する水受けケース14(図3参照)が配置され、この水受けケース14底部の四隅部には一体に形成された筒状をなす脚部6(図1に2箇所のみ図示)が設けられ、これら脚部6が設置面に支持されることにより、加熱調理器全体が設置面に支持される。貯水容器13と後述するドレイン容器15とは、この水受けケース14の前方内部に収容され、後述する図3に示すように本体1下部の前方側に、本体1を正面から見て左右に二分するように本体1前面に対して互いに着脱可能に隣接配置されている。尚、本実施例では左側に貯水容器13が収納される構成としているが、これに限ることはなく、水受けケース14の右側に貯水容器13が収納される、つまり左右逆配置構成としてもよい。
【0014】
加熱室2は複数の側壁の接合により構成される。具体的には、加熱室2の側壁は、奥壁2a、左側壁2b、右側壁2c、天井壁2d、底壁2eからなる。底壁2eは、実質的にその底面のほとんどを占める例えばセラミックス等からなる電磁波透過部34と、この電磁波透過部34を支持し高周波を拡散するアンテナ等を収容可能な凹状の底板部35から構成される。これら側壁は電波を反射させる例えば鋼板などの部材からなる。
【0015】
隣り合う各々の前記側壁の接合部は複数箇所にかしめが施されており、該側壁は相互に接合されている。尚、該側壁の相互の接合部は、例えばスポット溶接などの溶接を複数箇所に施して相互に接合してもよい。加熱室2の奥壁2aの第1接合部30aと底壁2eの第2接合部30bとが接合する接合面Mを形成する接合部30は加熱室2の外側下方に突出させて形成されている(後述する図7参照)。底板部35の下側には、例えば高周波を伝送する導波管7aなどの電装品が収納されており、マグネトロン7により生成された高周波は導波管7aにより伝送され電磁波透過部34を透過して加熱室2内に照射される。
【0016】
加熱室2の奥壁2aの室外側(背部)に、前記した熱風循環ユニット16が設けられており以下に詳述する。図1に示すように、熱風循環ユニット16は、奥壁2aの背面に設けられた熱風ケーシング17と、この熱風ケーシング17内に配置され送風手段としてのファンモータ18にて回転駆動される熱風ファン19と、この熱風ファン19の外周囲に配置された枠状の加熱手段としての熱風ヒータ20とを具備して構成される。奥壁2aは、少なくともその上下部において、天井壁2d及び底壁2eと接合され、この奥壁2aに熱風ケーシング17の周縁部を図示しないねじ止め固定することにより、熱風循環ユニット16は加熱室2の背部に配設される。加熱室2の奥壁2aと熱風ケーシング17の周縁部との接合により接合面Nが形成される(図7参照)。奥壁2aには小孔群からなる熱風の吹出口21と吸込口22とが形成されており、加熱室2と熱風ケーシング17内とが通気可能とされ、熱風ケーシング17内で熱風ヒータ20により加熱された空気が熱風ファン19の送風作用により加熱室2内に供給され、そして吸込口22から熱風ケーシング17内に取り込まれ、改めて加熱熱風化されて再び加熱室2内に供給されるとした、所謂熱風の循環供給が行われる。
【0017】
尚、熱風ケーシング17は金属板を板金加工して形成されていて、その下端部には板金曲げ加工により左右方向に延設された樋状たる断面凹部形状(図中、凹部25bとして示す)の第1水受け部25が一体に形成されている。この第1水受け部25は、後述する図4に示すように左右両端の開放口25aがそれぞれ第2水受け部26の左右両側水受け部26a,26b上を臨む位置まで延出形成されている。第1水受け部25の底面の頂部25cは本体1の左右方向中心よりやや左側に位置している。第1水受け部25は、底部が最も高い頂部25cから左方向に左側水受け部26aの上部へ向かって下降傾斜する形状の第1傾斜部25dと、頂部25cから右方向に右側水受け部26bの上部へ向かって下降傾斜する形状の第2傾斜部25eとにより構成されている。更に、第1水受け部25の左右方向に延びた横方向の長さ寸法は、前記した接合面M、N(図7参照)の左右幅寸法と同等以上とし、また凹部25bの幅寸法(前後方向)としては接合面M、Nに生じる隙間から漏出し滴下する水滴を受けるに相応しい幅寸法としている。
【0018】
次に、主に図3及び図4を参照して水受けケース14について説明する。図3は水受けケース14の全体構成を示す斜視図であり、図4はドレイン容器15等の配置構成及び水の流れを概略的に表し、第三角図法で示す水受けケース14の、(a)は平面図、(b)は右側面図、(c)は左側面図、及び(d)は正面図である。水受けケース14は、後述する多用途に使用可能に一体に形成されたもので、全体形状としては本体1の外郭と同様の矩形をなす枠状に樹脂成形されている。
【0019】
具体的には、水受けケース14の前側には貯水容器13及びドレイン容器15を左右に隣接して収容可能な収容スペースを確保している。この収納スペースの、例えば左側に貯水容器13、右側にドレイン容器15が収容される。特に、貯水容器13はその手掛け部13aに手を掛けることにより前側から着脱可能となるカセットタイプであり、且つ収容状態では図示しないポンプ装置と連通接続する構成であるため、所定位置に収容可能なように該貯水容器13の外形形状に沿ったリブ23が突設されている。
【0020】
前記収納スペースの右側には、例えば上面が開放された矩形有底容器状のドレイン容器15が前側から着脱可能に水受けケース14に嵌合されている。ドレイン容器15の収納スペースの内方にはリブ24が形成されていてドレイン容器15はリブ24に当接することにより所定位置に収納されるとともに、例えば図示しないが水受けケース14の底面上に位置ずれ防止のため係脱可能な構造が施してある。尚、貯水容器13とドレイン容器15とが収納状態にあるときは、これらの前面は互いに略面一になる。
【0021】
更に、水受けケース14の外郭をなす枠状の周壁であって、その前側部を除く矩形コ字状の周壁上面に樋状たる断面凹状(図中、凹部26eとして示す)の第2水受け部26が一体に形成されている。水受けケース14の前側部には、本体1前方下部に位置して貯水容器13の収納スペース上部に一体に形成された樋状(図中、凹部27bとして示す)の第3水受け部27を有している。尚、第2水受け部26は、水受けケース14の左側壁上面に形成された左側水受け部26aと、同右側壁上面に形成された右側水受け部26bと、同後側壁上面に形成された後側水受け部26cとを備える。
【0022】
図4に示すように、第2水受け部26の左側水受け部26a及び右側水受け部26bには、これらの凹部26eの底面から上方へ向けて立設される左側突出片26f及び右側突出片26hが一体に形成されている。左側突出片26f及び右側突出片26hは、ともに開放部が前側に設けられた断面コ字状に形成され、これらの外側片はより上方へ突出した形状(図4中、左側突出片26f及び右側突出片26hとして示す)となっている。左側突出片26fの高さJ1は、右側突出片26hの高さJ2より高くなるように(J1>J2)設定されている(図4(b)、(c)参照)。
【0023】
第3水受け部27は、その一端にはドレイン容器15の上面開放に臨む開放口27aが形成され、その他端は左側水受け部26aと連通接続されている。この左側水受け部26aの他端は後側水受け部26cと連通接続されている。この後側水受け部26cと連通接続された右側水受け部26bは、その一端にドレイン容器15の上面開放に臨んで開放口26dが形成配置されている。
【0024】
また、図3に示すように、貯水容器13の収納スペースの後方にはリブ23を側壁の一方とする断面凹部形状の第4水受け部28が水受けケース14に一体に形成されている。第4水受け部28は、その一端は第2水受け部26の左側水受け部26aの前後方向中心よりやや前方に連通接続され(図4中、連通部28bとして示す)、その他端にドレイン容器15の上面開放に臨んで開放口28aが形成された配置構成としている。この水受け部28は、最低部位の開放口28aに至るまで下降傾斜した底面をなしている。
【0025】
以下、特に図4(a)を参照して、水受け部25〜28の水の流れについて説明する。尚、第2水受け部26の左側水受け部26aの底面は、前後方向にあって第4水受け部28との連通部28bに向かって下降傾斜する緩やかなV字形状に形成されている。その他、図4中に示す第2水受け部26の後側水受け部26c及び右側水受け部26bを流れる水は、矢印H及びDで示す方向に下降傾斜している。
【0026】
矢印Aは第1水受け部25の第1傾斜部25dを流下する水滴等の水の流れを示し、矢印Bは同第2傾斜部25eを流下する水の流れを示している。矢印Cは、前記矢印Aで示される流下する水を受け、連通部28bに向かう流下する水の流れを示している。矢印Dは、矢印Hで示される第2水受け部26の後側水受け部26cを流下する水と前記矢印Bで示される水の双方を集めた流れを示す。矢印Eは、第3水受け部27を流下する水の流れを示している。矢印Fは、第2水受け部26の左側水受け部26aを連通部28bに向かって流下する水の流れを示している。矢印Gは、前記矢印Cと前記矢印Fで示される水の双方を集めた流れを示し、矢印Gの方向に底面が傾斜し流下する構成としている。
【0027】
次に、主に図5及び図6を参照して底板32について説明する。図5は第三角図法で示す底板32の、(a)は平面図、(b)は右側面図、及び(c)は正面図であり、図6は奥壁2aを除いた熱風ケーシング17、底板32、及び水受けケース14の配置構成を示す概略構成図である。
【0028】
底板32は、本体1の底部を塞ぐ金属の板状のものであり、上下方向にあって第1水受け部25と水受けケース14との間に位置し、水受けケース14の第2水受け部26の上面を覆うように本体1底部下側に装着されている。底板32には下方に窪んだ略矩形の凹部32bが形成されていて、凹部32bは水受けケース14の内部に収納される大きさとしている(図6参照)。この凹部32b内に、本体1の底部側に装着され調理器駆動用の制御基板33などの電装品の下部の突出部分が収納配設されている。
【0029】
底板32の左右両側には、第2水受け部26の左右両側水受け部26a、26bの上側に位置する、開口部としての矩形状の穴32aが形成されている。この穴32aから左側突出片26f及び右側突出片26hが上向に突出される(図6参照)。しかして、第1水受け部25の左右両端の開放口25aは、左側突出片26f及び右側突出片26hに対向するように配置され、これにより第1水受け部25の第1傾斜部25d及び第2傾斜部25eは、実質的に第2水受け部26の左側水受け部26a及び右側水受け部26bと連通接続された形態をなす。
【0030】
第1水受け部25の第1傾斜部25dの左右の長さ寸法は、同第2傾斜部25eに比して短く形成され、これら両傾斜部25d、25eは略同一の角度で左右方向に下降傾斜しているため、底板32の凹部32bの底面から第1傾斜部25dまでの高さP1は、同第2傾斜部25eまでの高さP2に比し大きくなり(P1>P2)、第1傾斜部25dの下側のスペースは、第2傾斜部25eの下側のスペースより大きくなり、傾斜端部ほど大きくなる(図6参照)。尚、上述した左側突出片26fの高さJ1が右側突出片26hの高さJ2より高くなるように設定されているのは、高さP1側がP2側に比して大きいからである。
【0031】
次に、図6ないし図8を参照して加熱室2の奥壁2aの下方に施している本実施例の水滴の滴下対策手段につき具体的に説明する。図7は図1中に示す熱風ケーシング17下部の拡大断面図であり、図8は接合部30から滴下した水の流れなどの作用説明するための概略構成を示す拡大断面図である。
【0032】
図7に示すように、例えば加熱室2の奥壁2aに水滴Wが付着した場合、該水滴Wは、同奥壁2aの第1接合部30aと底壁2eの第2接合部30bとが接合する接合面Mを形成する接合部30に生じる隙間から下方へ滴下する。また、熱風ケーシング17内に水滴Wが付着する場合も考えられ、この場合の水滴Wは、加熱室2の奥壁2aと熱風ケーシング17の周縁部との間の接合面Nに生じる隙間から下方へ滴下する。そして、滴下したいずれの水滴Wも第1水受け部25に受け入れられる。
【0033】
そのうち、第2傾斜部25eに滴下した水滴Wは、凹部25bの下降傾斜に沿って流下し開放口25aから第2水受け部26に設けられた右側突出片26hに衝突し、底板32の穴32aを通過して右側水受け部26bに落下する(図8参照)。この右側水受け部26bに落下した水は、凹部26eの下降傾斜に沿って流下しドレイン容器15に貯留される(図4(a)中矢印D、図8参照)。
【0034】
一方、第1傾斜部25dに滴下した水滴Wは、上記第2傾斜部25eに滴下した水滴Wと同様に、凹部25bの下降傾斜に沿って流下し左側の開放口25aから第2水受け部26に設けられた左側突出片26fに衝突して受け止められ、底板32の穴32aを通過して左側水受け部26aに落下する。この左側水受け部26aに落下した水は、凹部26eの下降傾斜に沿って流下し(図4(a)中矢印Cで示す)、更に第4水受け部28を凹部28cの下降傾斜に沿って流下しドレイン容器15に貯留される(図4(a)中矢印Gで示す)。
【0035】
次に、上記構成の加熱調理器の作用について説明する。
加熱室2内に収容した食品を、高周波加熱、ヒータ加熱、或いはオーブン加熱による調理を実行する際に蒸発した水分等が結露して水滴を生じた場合、加熱室2を形成する側壁の接合部を経て漏出し、本体1の外部下方に滴下することになる。特に水蒸気発生装置9を用いて加熱室2に蒸気を供給するスチーム調理では、一層多量の水滴が生じることとなる。しかるに、水滴Wが滴下する部位に、本実施例では熱風ケーシング17と一体に形成された凹部25bを有する第1水受け部25が設けられているため、加熱室2の奥壁2a及び熱風ケーシング17内に付着した水滴Wが接合面M及びNに生じた隙間から滴下するのを常に確実に受け止めることができる。これらの水滴Wは第2水受け部26及び第4水受け部28を介して前方のドレイン容器15に導かれ貯留される。
【0036】
尚、本体1下部の水受けケース14に着脱可能に隣接して設けられた貯水容器13とドレイン容器15は、随時着脱操作される。即ち、貯水容器13は、スチーム調理に必要な水の補給時に、一方ドレイン容器15は、水滴等を貯留した水を捨てる場合等に着脱される。この場合、貯水容器13やドレイン容器15を収納した周りは第1〜第4水受け部25〜28が形成されているが、これらは水受けケース14と一体に形成され固定されているので各容器13、15の単体による着脱操作はスムースで水がこぼれることなく実施できる。
【0037】
上記実施例によれば、次のような効果を奏する。
加熱室2の奥壁2aの接合部30aと底壁2eの接合部30bとが接合する接合面Mを形成する接合部30の下方に、熱風ケーシング17の下部に一体に形成された樋状の第1水受け部25を配置しているため、接合面M及び奥壁2aと熱風ケーシング17との間の接合面Nに生じる隙間から漏出し滴下する水滴Wを的確に受けることができ、滴下する水滴Wを受ける水受け部をコンパクトに無駄なスペース及び部材を使用することなく構成することができる。
【0038】
また、接合面Mを形成する接合部30は加熱室2の外底面より下方に突出させて形成されているため、接合面M及びNから滴下する水滴Wは、この下方に突出した接合部30に沿って落下するため、加熱室2の底面側に伝って流れるようなことはなく、第1水受け部25で確実に該水滴Wを受け止めることができる。
【0039】
加熱室2の奥壁2aの第1接合部30aと底壁2eの第2接合部30bとが下方に突出しているため、これら第1,第2接合部30a,30bとを容易にかしめ接合でき、作業性を良くしている。
【0040】
第1水受け部25は、底部が最も高い頂部25cから左方向に下降傾斜する形状の第1傾斜部25dと、反対側の頂部25cから右方向に下降傾斜する形状の第2傾斜部25eとを備えている。このため、第1水受け部25の頂部25cと最低高さに設置される開放口25aとの間の高さ寸法を小さくでき、第1水受け部25全体の大きさを抑えてコンパクトに設置することができる。
【0041】
第1水受け部25の第1傾斜部25dの左右の長さ寸法は、同第2傾斜部25eに比して短く形成され、これら両傾斜部25d、25eは同一の角度で夫々左右に下降傾斜しているため、底板32の凹部32bの底面から第1傾斜部25dまでの高さP1は、同第2傾斜部25eまでの高さP2に比し大きくなる(図6参照)。このため、第1傾斜部25dの下側のスペースは、第2傾斜部25eの下側のスペースより大きくなり、例えば図6中に二点鎖線で示す導波管7aなどの比較的大きい部材を第1傾斜部25dの下側に収納することができる。
【0042】
第1水受け部25は、特に左右両側突出片26f,26hを介して第2水受け部26と確実に連通接続された形態としている。このため、第1水受け部25により受けられた水滴Wは、第2水受け部26に確実に導かれ水受けケース14に着脱可能に収納されているドレイン容器15に貯留され、容易に廃棄可能である。
【0043】
底板32は、上下方向にあって第1水受け部25と水受けケース14との間に位置している。底板32の左右両側には第2水受け部26の上側に位置する矩形状の穴32aが形成され、この穴32aから突出する左右両側突出片26f,26hが設けられているため、第1水受け部25から滴下する水滴Wを受け止め、穴32aを確実に通過することができる。ただし、穴32aは矩形状に限らず、例えば切り欠いた形状の開口部としてもよい。従って、第1水受け部25の下方に、例えば調理器駆動用の制御基板33などの電装品を配置しても、これら電装品には、水滴Wが落下してくる虞はなく、加熱室2を構成する側壁の接合部30から漏出する水の影響により故障する虞はない。このことは、加熱室2の下方の広い領域に電装品を自由に配置できる点で有利である。
【0044】
尚、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、本願発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施できる。例えば、上記実施例では、加熱室2の底壁2eに電磁波透過部34を設けマグネトロン7により発生させた高周波を下方から加熱室2へ照射する構成にしたが、これに限ることはなく、電磁波透過部を天井壁2d又は左右側壁2b、2cに設け高周波を上方又は横方から加熱室2へ照射する構成にしてもよい。また、上記実施例では、奥壁2aと底壁2eとの接合部30の下方に第1水受け部25を設けたが、これに限らず、例えば、左右側壁2b,2cと底壁2eとを接合し、その接合部の下方に水受け部を設ける構成としてもよい。その他、第1水受け部25は、熱風ケーシング17の下端部に板金曲げ加工を施して断面凹部形状に一体に形成したが、これに限らず、熱風ケーシング17の下部に、これとは別部材の第1水受け部を一体的(固定的)に設けた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0045】
図面中、2は加熱室、2aは奥壁(側壁)、2bは左側壁(側壁)、2cは右側壁(側壁)、2dは天井壁(側壁)、2eは底壁(側壁)、7aは導波管(電装品)、15はドレイン容器、16は熱風循環ユニット(熱風供給部)、17は熱風ケーシング、19は熱風ファン(送風手段)、20は熱風ヒータ(加熱手段)、25は第1水受け部、25dは第1傾斜部、25eは第2傾斜部、26は第2水受け部、30は接合部、30a,30bは第1,第2接合部、32は底板、32aは穴(開口部)、及び33は制御基板(電装品)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の側壁の接合により形成された加熱室と、
前記加熱室内に熱風を供給するために前記側壁の一つに設けられた熱風供給部と、
前記熱風供給部を設けた側壁と隣接する側壁とを相互に接合した接合部の下方に設けられた樋状の第1水受け部とを備え、
前記熱風供給部は、加熱手段と送風手段とこれらを収容する熱風ケーシングを具備した構成とし、
前記第1水受け部は、前記熱風ケーシングの下部に設けたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
側壁による接合部は、加熱室の底壁と奥壁との接合部にあって、加熱室外の下方に突出した構成としたことを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
接合部は、かしめにより接合されていることを特徴とする請求項2記載の加熱調理器。
【請求項4】
第1水受け部は、熱風ケーシングと一体に形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項5】
第1水受け部は、その底面が所定位置から下降傾斜する第1傾斜部と、前記第1傾斜部の反対方向に下降傾斜する第2傾斜部とを有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項6】
加熱手段としてマグネトロンを備えたものにおいて、
第1傾斜部の長さ寸法は、第2傾斜部に比して短く形成するとともに、前記マグネトロンの導波管を、前記第1傾斜部の下方に設けたことを特徴とする請求項5記載の加熱調理器。
【請求項7】
第1水受け部と連通接続され、該第1水受け部で受けた水滴を所定方向に移動させる第2水受け部を設けたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項8】
第1水受け部で受けた水滴を、第2水受け部を経て貯留するドレイン容器を設け、該ドレイン容器を加熱室の前方下部に着脱可能に設けたことを特徴とする請求項7記載の加熱調理器。
【請求項9】
加熱室下方に設けられ第1水受け部と第2水受け部との間に配置された底板を有し、
前記底板には、水滴が第1水受け部から第2水受け部へ移動可能な開口部が形成されていることを特徴とする請求項7又は8記載の加熱調理器。
【請求項10】
第1水受け部の下方に位置して、調理器駆動用の電装品が配設されていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−58751(P2011−58751A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210412(P2009−210412)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】